JP2004363425A - 受動素子内蔵基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】実用的な値を持つ受動部品の内蔵が可能で、かつ薄型化及び小型化が可能な受動部品内蔵基板を提供すること。
【解決手段】表面側の誘電体層20と裏面側の誘電体層22と中間の誘電体層21,30,31とからなる多層基板を具備し、中間の誘電体層30,31は、他の誘電体層20〜22よりも誘電率が高く、かつ、厚さが薄い高誘電率誘電体層であり、高誘電率誘電体層31を挟んでその表面側及び裏面側にそれぞれ容量極板63a及び容量極板64aを具備し、誘電体層21に形成された、容量極板63aへの電気的接続のための貫通孔50sと、誘電体層22に形成された、容量極板64aへの電気的接続のための貫通孔50rとを具備し、貫通孔50sの中心と貫通孔50rの中心が高誘電率誘電体層31の面に並行な方向に貫通孔50r,50sの直径以上にずれている。
【選択図】 図2
【解決手段】表面側の誘電体層20と裏面側の誘電体層22と中間の誘電体層21,30,31とからなる多層基板を具備し、中間の誘電体層30,31は、他の誘電体層20〜22よりも誘電率が高く、かつ、厚さが薄い高誘電率誘電体層であり、高誘電率誘電体層31を挟んでその表面側及び裏面側にそれぞれ容量極板63a及び容量極板64aを具備し、誘電体層21に形成された、容量極板63aへの電気的接続のための貫通孔50sと、誘電体層22に形成された、容量極板64aへの電気的接続のための貫通孔50rとを具備し、貫通孔50sの中心と貫通孔50rの中心が高誘電率誘電体層31の面に並行な方向に貫通孔50r,50sの直径以上にずれている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体通信端末で使用される高周波回路用の多層基板に係り、特に受動素子を基板に内蔵することによって多層基板を小型化、薄型化する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話等の移動体通信端末の小型化、薄型化に伴い、該端末に搭載される高周波回路用の多層基板の小型化及び薄型化に対する要求が強くなってきている。しかし、例えば多層基板を用いる高周波用電力増幅器モジュールについては、小型化の要求があるものの、多層基板の表面に実装する受動部品(チップ容量、チップインダクタ)の小型化が停滞しており、そのような受動部品を多数表面に実装するモジュール基板の小型化が律速されている。そのため、モジュール基板表面に実装する受動部品の一部をモジュール基板或いは半導体素子に内蔵することにより、モジュールを小型化することが必須となっている。
【0003】
そのような要求に応えるべく能動部品や受動部品を内蔵した基板の一例が特許文献1に開示されている。この例では、配線パターンを表面に形成した2枚の電気絶縁層でコア層を挟み、同コア層に配線パターンを形成すると共にその一部の上に能動部品や受動部品を実装することによって、能動部品や受動部品が内蔵される。なお、コア層は、無機質フィラーと熱硬化性樹脂の複合されたコンポジット材料による電気絶縁層からなる。また、上面の配線パターンとコア層の配線パターンがインナービアによって接続される。
【0004】
他の一例が特許文献2に開示されている。この例では、複数の絶縁体層の間にコンデンサ構成層が配置される。各層の間並びに上面及び下面に導体パターンによる電極部が備えられ、各層間の電極部の相互接続がビアホールによって行なわれる。特にコンデンサ構成層において、互いに対向するコンデンサ電極の間の領域のみが誘電体層により形成される。誘電体層の形成は、絶縁体よりなるコンデンサ構成層の該当部分にパンチにより孔を空け、その中に誘電体層を挿入することによって行なわれる。その他の領域は絶縁体層により形成される。このようにして、コンデンサ内蔵多層基板が構成される。
【0005】
更に他の一例が、特許文献3に開示されている。この例では、2層の誘電体層の外側の両面に接地導体が設けられ、2層の誘電体層の中央より接地導体に近い位置に、容量導体が設けられる。接地導体と容量導体の間には、上記誘電体層の一部、即ち厚さが薄い誘電体層が介在する。この構造により、厚さが薄い誘電体層を挟んで容量導体が接地導体と対向し、誘電体層の中にコンデンサが内蔵される。また、同特許文献3には、その他に、容量ランド(容量導体)を2枚の基板の中央に設け、容量ランドとは反対側の基板の面に接地導体を設ける例が記載されている。基板を介して2枚の接地導体が容量ランドを挟む構造が形成される。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−261449号公報(第9頁、図1)
【特許文献2】
特開平6−69663号公報(第3頁、図1)
【特許文献3】
特開平7−193401号公報(第2頁〜第3頁、図1及び図5)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1によって開示された技術では、チップ部品を基板内層に埋没させるため、基板の厚さがチップ部品の厚さに律速され、基板の薄型化が困難である。
【0008】
また、特許文献2によって開示された技術では、コンデンサ誘電体層即ち容量膜が基板内部に配置されるので、特許文献1に開示された技術に比べて多層基板の薄型化は容易となる。しかし、容量膜が基板の一部分に配置されるため、基板の各部分での密度、熱膨張率が不均一となり、基板の反りが生じやすい。更に、容量膜が基板内層に部分的に形成されるため、容量膜厚が一容量内においてばらつきを生じ易く、容量値のばらつきが大きくなることが避けられない。また更に、コンデンサ構成層は一基板になるから、厚さを薄くすることには限度があり、そのため内蔵容量値或いは容量密度を実用レベル(20pF/mm2程度)まで大きくすることができず、加えて更なる薄型化が困難である。
【0009】
また、特許文献3によって開示された技術では、均一な誘電体層を容量膜として用いているため、特許文献2に開示された技術において懸念される基板の反りは低減される。しかしながら、多層基板の上面にコンデンサが占有する面を置くことになるので、小型化の効果が低く、また、高い誘電率を持たない基板である誘電体層の一部が容量膜となるので、内蔵容量値或いは容量密度を実用レベルまで大きくすることができない。
【0010】
まして、容量素子とインダクタンス素子を直列接続した受動素子を実現することは困難である。
【0011】
本発明の主たる目的は、実用的な値を持つ受動素子の内蔵が可能で、かつ薄型化及び小型化が可能な受動素子内蔵基板を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0013】
本発明の受動素子内蔵基板は、複数の誘電体層を積層してなる多層基板を具備し、該複数の誘電体層は該多層基板の表面側の誘電体層と裏面側の誘電体層と中間の誘電体層とからなり、中間の誘電体層の内の少なくとも1つは、他の誘電体層よりも誘電率が高く、かつ、厚さが薄い高誘電率誘電体層であり、該高誘電率誘電体層を挟んでその表面側及び裏面側にそれぞれ第1の容量極板及び第2の容量極板を具備し、高誘電率誘電体層の表面側に接している誘電体層に形成された、第1の容量極板への電気的接続のための第1の貫通孔と、高誘電率誘電体層の裏面側に接している誘電体層に形成された、第2の容量極板への電気的接続のための第2の貫通孔とを具備し、第1の貫通孔の中心と第2の貫通孔の中心が高誘電率誘電体層の面に並行な方向に第1及び第2の貫通孔の直径以上にずれていることを特徴とする。
【0014】
第1の容量極板と第2の容量極板が誘電率が高くかつ薄い高誘電率誘電体層を挟むことによって実用的な値を持つ容量素子が形成され、貫通孔の中心が互いにずれている第1及び第2の容量極板と第1及び第2の貫通孔とによって実用的な値を持つインダクタンス素子が形成され、これら素子を多層基板の内部に形成することによって受動素子内蔵基板の薄型化及び小型化が可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る受動素子内蔵基板を図面に示した幾つかの発明の実施の形態を参照して更に詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0016】
本発明は、高周波回路一般や移動体通信端末等に適用可能であるが、以下の本発明の実施の形態では説明の便宜上、移動体通信端末に用いられる一段増幅構成の高周波電力増幅器モジュールを例に、本発明の実施形態の構造、動作、効果及び製造方法を説明する。
【0017】
(発明の実施の形態1)
図1は、本発明の受動素子内蔵基板を用いた高周波電力増幅器モジュールの各導体層を、多層の各誘電体層の図示を省略して示した斜視層構成図であり、図2は、図1におけるB−B線に沿って切断したモジュールを各誘電体層を含めて示した断面図であり、図3は、モジュールに搭載した高周波電力増幅器の回路図である。
【0018】
図1において、1は高周波電力増幅器モジュール、10は表面導体層、11〜14は内層導体層、15は裏面導体層である。続いて、40a〜40eは表面導体層10に形成された表層導体パターン、43bは内層導体層13に形成された内層導体パターン、50h、50g及び50r〜50uは貫通孔、61a及び61bは内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板、63a及び63bは内層導体層13に形成された基板内蔵容量極板、64a及び64bは内層導体層14に形成された基板内蔵容量極板、70aは表面導体層10に形成された接地導体パターン、72aは内層導体層12に形成された接地導体、73aは内層導体層13に形成された接地導体、75aは裏面導体層15に形成された接地導体、100は表面導体層10に実装された半導体素子、110c〜110fは同じく表面導体層10に実装された受動部品、120a〜120dはボンディングワイヤである。更に、45a〜45dは、裏面導体層15に形成された導体によるそれぞれ電力入力端子、電力出力端子、利得制御電源端子及び駆動電源端子である。
【0019】
図2において、20、21及び22は誘電体層であり、30及び31は高誘電率誘電体層である。基板内蔵容量極板63a及び基板内蔵容量極板64aとそれらの間に配置された高誘電率誘電体層31とによって基板内蔵受動素子が形成され、受動素子内蔵基板が構成される。また、容量極板63aは表面導体パターン40aに貫通孔50sを介して接続され、容量極板64aは電力入力端子45aに貫通孔50rを介して接続される。次に、図1,2において、基板内蔵容量極板63b及び基板内蔵容量極板64bとそれらの間に配置された高誘電率誘電体層31とによって基板内蔵受動素子が形成され、受動素子内蔵基板が構成される。また、容量極板63bは表面導体パターン40bに貫通孔50tを介して接続され、容量極板64bは電力出力端子45bに貫通孔50uを介して接続される。
【0020】
後で詳述する図3において、80aが容量極板63a、容量極板64a及び高誘電率誘電体層31による基板内蔵受動素子であり、80bが容量極板63b、容量極板64b及び高誘電率誘電体層31による基板内蔵受動素子である。
【0021】
先ず、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの構造を図1及び図2を用いて説明する。基板表面ソルダーレジスト(図示せず)、表面導体層10、誘電体層20、内層導体層11、高誘電率誘電体層30、内層導体層12、誘電体層21、内層導体層13、高誘電率誘電体層31、内層導体層14、誘電体層22、裏面導体層15及び基板裏面ソルダーレジスト(図示せず)が上下に積層され、多層基板が形成される。
【0022】
表面導体層10上に半導体素子100が銀ペーストなどの熱伝導性の良い導電性ペーストを用いて実装され、半導体素子100表面に形成された電極部(図示せず)と表面導体層10に形成された各表面導体パターン40a、40b及び40cとがそれぞれボンディングワイヤ120a、120b及び120cを介して接続され、表面導体層10に形成された表面導体パターン40bと表面導体パターン40eとがボンディングワイヤ120dを介して接続され、表面導体層10上に複数の受動部品110c〜110fが半田などの導電性ペーストを用いて実装される。
【0023】
そして、表面導体層10を樹脂封止(図示せず)で封止することにより、高周波電力増幅器モジュール1が完成する。封止は、その他に樹脂キャップ或いは金属キャップを用いて行なうことも可能である。
【0024】
裏面導体層15に形成された電力入力端子45aは、前述のように貫通孔50rを介して内層導体層14に形成された基板内蔵容量極板64aに接続される。基板内蔵容量極板64aは、高誘電率誘電体層31を介して基板内蔵容量極板63aと容量結合することで信号経路に直列に接続されて直流電流を遮断する基板内蔵容量(以後、直列容量と呼称する)を含む受動素子80aが形成される。基板内蔵容量極板63aは前述のように、貫通孔50sを介して表面導体パターン40aに接続され、表面導体パターン40aはボンディングワイヤ120aを介して半導体素子100表面に形成された電力入力電極部(図示せず)に接続される。
【0025】
半導体素子100表面に形成された電力出力電極部(図示せず)はボンディングワイヤ120bを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40bに接続され、表面導体パターン40bは、前述のように貫通孔50tを介して基板内蔵容量極板63bに接続される。基板内蔵容量極板63bは、前述のように高誘電率誘電体層31を介して基板内蔵容量極板64bと容量結合することで信号経路に直列に接続されて直流電流を遮断する直列容量を含む受動素子80bが形成される。基板内蔵容量極板64bは、前述のように貫通孔50uを介して裏面導体層15に形成された電力出力端子45bに接続される。
【0026】
裏面導体層15に形成された利得制御電源端子45cは貫通孔(図示せず)を介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40cに接続され、表面導体パターン40cはボンディングワイヤ120cを介して半導体素子100表面に形成された利得制御電源電極部(図示せず)に接続される。
【0027】
裏面導体層15に形成された駆動電源端子45dは貫通孔(図示せず)を介して内層導体層13に形成された内層導体パターン43bに接続され、内層導体パターン43bは貫通孔(図示せず)を介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40dに接続され、表面導体パターン40dは表面導体層10上に実装された受動部品110cを介して表面導体パターン40bに接続される。
【0028】
半導体素子100を実装するために表面導体層10に形成された表面導体パターン(符号なし)は複数の貫通孔(図示せず)を介して裏面導体層15に形成された接地導体75aに熱的及び電気的に接続される。また、表面導体層10上に形成された接地導体パターン70a、内層導体層12に形成された接地導体72a、内層導体層13に形成された接地導体73a及び裏面導体層15に形成された接地導体75aは、貫通孔(符号なし)を介して相互に接続される。
【0029】
内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板61a、内層導体層12に形成された接地導体72a及び基板内蔵容量極板61aと接地導体72aとの間に配置された高誘電率誘電体層30により基板内蔵容量130aが形成される。基板内蔵容量極板61aは貫通孔50gを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40eに接続され、表面導体パターン40eはボンディングワイヤ120dを介して表面導体パターン40bに接続される。
【0030】
同様に、内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板61b、内層導体層12に形成された接地導体72a及び基板内蔵容量極板61bと接地導体72aとの間に配置された高誘電率誘電体層30により基板内蔵容量130bが形成される。基板内蔵容量極板61bは貫通孔50hを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40bに接続され、シャント容量が形成される。
【0031】
一般に、接地導体72aは内層導体層12の形成可能な領域に形成され表面導体層10に形成された表面導体パターン40a及び40bの基準電位面となり、表面導体パターン40a及び40bはマイクロストリップ線路となる。
【0032】
本実施形態において、誘電体層20、21及び22は、比誘電率が約4.0のガラスエポキシ、エポキシ、アラミド不織布などの樹脂を主成分とし、誘電体層20及び22は厚さが150μmであり、誘電体層21は厚さが200μmである。
【0033】
誘電体層20及び22の厚さは、表面導体層10に形成される表面導体パターン40a及び40bの幅を導体損失が小さい0.3mmとした場合に同表面導体パターン40a及び40bの特性インピーダンスが50Ω以上になる誘電体厚と貫通孔50の接続信頼性が確保できる誘電体厚のトレードオフとにより決定される。一方、誘電体層21の厚さは、多層基板製造の容易性を考慮して決定される。
【0034】
また、高誘電率誘電体層30及び31は、セラミックなどの高誘電率無機材料粉末をエポキシなどの樹脂と混合した、比誘電率が約45のコンポジット材から構成され、高誘電率誘電体層30及び31の厚さは実用的な容量密度を考慮して20μmである。この場合、基板内蔵容量の容量密度は約20pF/mm2となる。
【0035】
なお、本実施形態において、誘電体層20、21及び22の比誘電率は約4.0としたが、用途に応じて4.0を越えても或いは4.0未満であっても構わない。更に、誘電体層20、21及び22、高誘電率誘電体層30及び31はともに樹脂を主成分とする材料からなる構成としたが、セラミックを主成分とする材料であっても構わない。また更に、誘電体層20及び22の厚さは150μmとしたが、用途に応じて150μmを越えても或いは150μm未満であっても構わない。同様に誘電体層21の厚さも、200μmを越えても或いは200μm未満であっても構わない。
【0036】
また、本実施形態において、説明の簡便性を考慮し、誘電体層5層、導体層6層としたが、この層数以外の任意の層数であっても構わない。
【0037】
次に、本実施形態の高周波電力増幅器モジュール1の回路動作を図3を参照して説明する。図3において、101は半導体素子100を構成するトランジスタであり、102a及び102bは半導体素子100に形成された受動部品である。トランジスタ101としてバイポーラトランジスタが用いられる。
【0038】
電力入力端子45aより入力された高周波信号は、基板内蔵容量極板64aと高誘電率誘電体層31と内蔵容量極板63aとで形成される受動素子80a、表面導体パターン40a及び受動部品102aを介して半導体素子100に形成されたトランジスタ101のベースに伝送され、トランジスタ101において増幅され、表面導体パターン40b及び、基板内蔵容量極板63bと高誘電率誘電体層31と内蔵容量極板64bとで形成される受動素子80bを介して電力出力端子45bより出力される。
【0039】
トランジスタ101の利得制御電圧或いは利得制御電流は、利得制御電源端子45cに印可され、表面導体パターン40c及び受動部品102bを介してトランジスタ101のベースに印可される。トランジスタ101の駆動電圧或いは駆動電流は、駆動電源端子45dに印加され、内層導体パターン43b、表面導体パターン40d、受動部品110c及び表面導体パターン40bを介してトランジスタ101のコレクタに印加される。トランジスタ101のエミッタは接地される。
【0040】
トランジスタ101のベースと電力入力端子45aとの間は、受動素子80a、受動部品102a、表面導体パターン40a及びシャント受動部品110fなどにより、インピーダンス整合が実現される。同様にトランジスタ101のコレクタと電力出力端子45bとの間は、受動素子80b、導体パターン40b、及びインダクタンス素子となるボンディングワイヤ120d、接地受動部品130a及び130bなどにより、インピーダンス整合が実現され、高周波電力増幅器モジュールとして機能する。
【0041】
なお、本実施形態では説明の簡便性を考慮し、利得制御電源端子45cとトランジスタ101のベースとの間には導体パターン40c及び受動部品102bのみを直列に接続したが、利得制御回路などを構成する能動素子を直列に挿入しても構わない。また、回路方式はトランジスタ101のエミッタを接地する方式としたが、ベース接地或いはエミッタフォロアなどの回路方式であっても構わない。
【0042】
更に、トランジスタ101のバイポーラトランジスタは、小型化、高性能化の観点から、GaAs、InP或いはSiGeなどの化合物半導体から構成されるHBT(Heterojunction Bipolar Transistor)が望ましいが、HEMT(High Electron Mobility Transistor)或いはMOSFET(Metal Oxide Silicon Field Effect Transistor)などの電界効果トランジスタであっても構わない。
【0043】
次に、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの基板内蔵容量に関する効果を説明する。便宜的に、高周波電力増幅器モジュールを送信周波数が2GHzの移動体通信端末に用いた場合を例として挙げる。
【0044】
基板内蔵受動素子80aを形成する部分の効果を図4を用いて説明する。比較のため、図4における受動素子80aを受動部品(容量部品)等で構成した従来の例を図4aに示す。容量部品110hの一端が誘電体層520の表面に形成された表面導体パターン540bに接続され、容量部品110hの他端が誘電体層520の表面に形成された表面導体パターン540aに接続される。表面導体パターン540bは貫通孔550を介して誘電体層530の裏面に形成された裏面電極パターン542に接続される。このような構造により、図4cの等価回路図に示した受動回路が完成する。ここで、容量部品に直列に接続されたインダクタンスは、貫通孔550と容量部品110hの有する寄生インダクタンスの和である。
【0045】
次に、基板内蔵受動素子80aの部分を改めて図4bに示す。先に述べたように、内層導体層13に形成された基板内蔵容量極板63aは、貫通孔50sを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40aに接続され、内層導体層13の下面に設けた高誘電率誘電体層31を介して同層の下面の内層導体層14に形成された基板内蔵容量極板64aに対向する。基板内蔵容量極板64aは貫通孔50rを介して裏面導体層15に形成された電力入力端子45aに接続される。ここで、貫通孔50sと貫通孔50rとが高誘電率誘電体層31の面に並行な方向に互いにずれていることが特徴である。このずれにより、基板内蔵容量極板63a,64aに寄生インダクタンスが生成される。ずれの大きさは、貫通孔50s,50rの直径以上である。上記構造において、図4cの等価回路図に示した直列受動回路が完成する。ここで、容量部品と直列に接続されたインダクタンスは貫通孔50s及び50r、更に上述の基板内蔵容量極板61a及び基板内蔵容量極板61bの有する寄生インダクタンスの和である。従って、図4a及び図4bに示した左右の構造は同等の回路である。
【0046】
送信周波数(基本波周波数)が2GHzの高周波電力増幅器モジュールの整合回路に用いられる直列容量部品110hの容量値は、一般に10〜15pF程度である。その値が選ばれる理由は、以下の通りである。まず、図4cの等価回路に示した容量CとインダクタンスLの直列受動回路は、一端から他の端までの位相回転量を周波数の関数として表すと、図5に示すように送信周波数(2GHz)において位相回転が0となるように設定される。直列受動回路は、素子の寄生抵抗分を無視すれば、その周波数において短絡状態となる。この周波数は、1/{2π√(LC)}で与えられる共振周波数f0である。そして、共振周波数f0においては、回路は短絡と等価であるので、図3に示した増幅器において、入力端子45aから半導体素子100に至る入力整合回路の設計に当たって、伝送線路40aと整合素子110fの値のみを考慮すればよく、設計が著しく簡略化される。
【0047】
いま、貫通孔550の有する寄生インダクタンスは、基板厚さ300μmとして、約0.2nHであり、容量部品110hの有する寄生インダクタンスは、容量部品の大きさを長さ0.6mm×幅0.3mmとして、約0.3nHであり、寄生インダクタンスの和は約0.5nHである。従って、基本周波数2GHzで共振する容量部品110hの容量値は23pFとなる。寄生インダクタンスの値は貫通孔径等により変化するので、容量値10〜15pFにおいて前記位相回転0の条件が満たされる。
【0048】
一方、容量素子を基板に内蔵した場合、容量部品を用いた場合と比較して表面に実装する部品数を削減可能であり、モジュールの小型化が可能である。但し、基板内蔵容量素子について、容量素子の上下から容量素子極板への電気的接触を確保するための貫通孔50sと貫通孔50rが一直線上に配置された場合は、内蔵容量素子そのものの寄生インダクタンスが他のインダクタンス成分と比較して無視できる程度に小さくなり、インダクタンス値は貫通孔50s,50rの寄生インダクタンスの和である0.2nHとなり、前記容量部品110hを用いた場合より小さくなる。このとき2GHzで共振する容量値が33pFとなり、1mm2当りの容量値20pF/mm2に対して容量素子面積が1.65mm2となる。
【0049】
一方、本発明では、図4bに示すように、基板内蔵容量素子の上下の貫通孔50sと貫通孔50rの位置をずらすことによって、基板内蔵容量極板63a及び基板内蔵容量極板64aに寄生インダクタンスを持たせることが可能となる。このことにより、2GHzで共振を起こすための容量素子の値を小さくし、基板内蔵容量の専有面積を低減することが可能になる。
【0050】
3次元電磁界解析、並びに実際に試作した基板内蔵容量素子の共振周波数の測定から、上記共振条件を満たすための容量素子の上下の貫通孔50s,50rの位置のずらし量を求めた。その結果、内蔵容量素子寸法を0.75×1.0mm(容量値15pF)とし、貫通孔50s,50rの位置のずらし量を0.7mmとすることによって、図5に示すように、2GHzにおいて裏面電極45aから表面電極40aまでの信号の位相回転を0度とすることが可能となった。このことは、基板内蔵容量素子の上下に存在する貫通孔50s,50rが一直線上に配置された場合と比較して容量値で1/2以下、即ち容量素子面積で1/2以下にすることであり、基板内蔵容量素子の上下に存在する貫通孔をずらすことによって基板内蔵容量素子面積を低減することができた。
【0051】
以上では2GHzで共振する容量素子について述べたが、同様の手法で、移動体通信に広く用いられる周波数帯において共振する容量素子を構成することができる。
【0052】
例えば、GSM900方式で用いられる900MHzにおいて、共振する容量は、寄生インダクタンス0.5nHに対して容量値を62.5pF、即ち20pF/mm2の容量密度に対して容量素子面積3.13mm2とすればよい。また、DCS1800方式で用いられる1800MHzに対しては、容量値を15.6pF、即ち20pF/mm2の容量密度に対して面積容量素子0.78mm2とすればよい。
【0053】
また、本実施例の構造で、共振の帯域幅としてどの程度を採用可能かについて述べる。図5に示したように、共振周波数f0近傍で位相変化が小さく、従って帯域幅を広くすることが可能である。図4cの等価回路の両端に各々インピーダンスが50オームとなる終端を付加してSパラメータを算出すると、不整合による反射損失が20dBとなる帯域は、基本周波数2GHzに対してほぼ1〜4GHz(1/2f0〜2f0)である。従って、特性インピーダンスが50オームの箇所、すなわち、増幅器モジュールの入・出力端子においては、本実施例の構造は±1オクターブの帯域幅を有することとなる。
【0054】
より精密な位相整合をとって反射損失を40dBとする場合には、帯域はほぼ1.8〜2.2GHz(0.9f0〜1.1f0)である。この範囲であれば、より低いインピーダンスを有する箇所、例えば5オーム程度のインピーダンスを有するバイアス線路等に本実施例の共振回路を付加しても十分短絡回路とみなすことができる。
【0055】
以上のことは、例えば900MHzにおいて共振する容量素子は、凡そ810MHzから990MHzの範囲でほぼ完全に短絡とみなせることを意味する。移動体通信システムのうち、携帯電話において使用される周波数のかなりの部分、例えば米国AMPS、米国CDMA(IS−95)、日本PDC、欧州GSM900等のシステムがこの周波数帯に含まれる。従って、900MHzで共振する容量素子は、このようなシステムの携帯電話装置に広く適用することが可能である。
【0056】
同様に、1800MHzにおいて共振する容量素子は、凡そ1620MHzから1980MHzの範囲でほぼ完全に短絡とみなせる。携帯電話において使用される周波数のうち900MHz近傍の周波数帯域以外を使用するシステムのほとんど、例えば、欧州その他のGSM1800(DCS)、米国PCS、W−CDMA等のシステムがこの周波数帯に含まれる。従って、1800MHzで共振する容量素子も、900MHz近傍の周波数帯域以外の携帯電話装置に広く適用することが可能である。
【0057】
以上、図1及び図2において、入力側の直流遮断の容量を含む受動素子80a(図3)について容量素子の上下の貫通孔50r,50sの位置をずらして寄生インダクタンスを増加させることにより、基本周波数で共振を生じさせるために必要な容量値の低減、即ち容量素子面積の低減が可能である構造を示した。
【0058】
一方、出力側の直流遮断容量を含む受動素子80bについても同様の構造が適用可能である。図6は図1の受動素子内蔵基板をC−C線に沿って切断した断面図である。裏面導体層15に形成された電力出力端子45bは、貫通孔50uを介して内層導体層14に形成された基板内蔵容量極板64bに接続され、基板内蔵容量極板64bは高誘電率誘電体層31を介して基板内蔵容量極板63bと容量結合することで直列容量等を形成し、基板内蔵容量極板63bは貫通孔50tを介して表面導体パターン40bに接続され出力側の直流遮断容量を含む受動素子80bを構成する。基本周波数で共振を生じさせる構造等は入力側と同じであり、貫通孔50uと貫通孔50tが高誘電率誘電体層31の面に並行にずれて配置される。ずれの大きさは、貫通孔50u,50tの直径以上である。
【0059】
なお、図6では、図1では図示を省略した、表面導体層10に形成した導体パターン40cと裏面導体層に形成した利得制御電源端子45cとを接続する貫通孔50dが示され、内層導体層13に形成した導体パターン43bと駆動電源端子45dとを接続する貫通孔50eが示される。
【0060】
ここで示したように、入力と出力の双方で直流を遮断するための直列容量を基板に内蔵することにより、高周波電力増幅モジュールを小型化することが可能である。また、特にその内蔵した直列容量の共振周波数を基本周波数と一致させることによりモジュール表面の導体パターン40a及び40bからそれぞれ裏面端子45a及び45bまでの位相回転を0とすることができる。
【0061】
また、一般に高周波電力増幅モジュールにおいては、入出力のインピーダンスを50オームとするが、本実施形態では基本周波数において裏面端子45a及び45bにおける入出力のインピーダンスが50オームとなるのみでなく、表面の導体パターン40a及び40bにおいても入出力のインピーダンスが50オームとなる。
【0062】
従って、製造時の検査において、高周波電力増幅モジュールの基本特性、例えば、基本周波数において入出力のインピーダンスが50オームからどれだけずれているかを示す入出力のVSWR(電圧定在波比)などの測定を表面側から行なうことが可能である。高周波の特性測定は直流の測定特性と比較して高精度の探針の位置決め・接触圧力の制御が必要であることから、裏面電極への接触のみで評価することは困難であり、表面側からの特性検査が可能となることで、より高精度の検査が可能となる効果がある。
【0063】
次に、本実施形態の受動素子内蔵基板を用いた高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法を説明する。
【0064】
本実施形態を構成する多層基板は、ビルドアップ法、シート積層法或いは印刷法などの一般的な多層基板製造方法により容易に作製可能であるが、便宜的に樹脂を主成分する誘電体を用いた多層基板製造方法について説明する。
【0065】
銅箔厚3μm、板厚0.2mmの両面銅箔張ガラスエポキシ積層に所望のドリル穴明けを行なう。この基板に超音波洗浄とアルカリ過マンガン酸液で炭化した樹脂カスを除去後、触媒付与、密着促進後無電解銅めっきを行ない、ドリル穴内壁と銅箔表面に約15μmの無電解銅めっき層を形成する。この基板表面に次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする黒化処理と、ジメチルアミノボランを主成分とする還元処理によって、粗化処理を行なう。
【0066】
この基板のドリル穴内にスクリーン印刷によりペーストタイプの熱硬化型絶縁材料を充填し、170℃で60分間の熱処理により硬化させることにより、誘電体層21の貫通孔が形成される。この基板をバフブラシにより研磨し、余分な絶縁材料を除去する。
【0067】
この基板に触媒付与、密着促進後無電解銅めっきを行ない、基板表面に約15μmの無電解銅めっき層を形成する。この基板表面に所望のエッチングレジストを形成し、不要な銅をエッチング除去して、基板内蔵容量の電極を含む回路パターン(内層導体層12及び13)を有する回路板が作製される。
【0068】
この回路板表面にロールコータを用いてペーストタイプの熱硬化型絶縁材料を基板絶縁層表面から約40μm、回路パターン表面から約5μm塗布し、170℃で60分間の熱処理により硬化さる。
【0069】
この基板をバフブラシにより回路パターン表面が現れるまで研磨し、余分な絶縁材料を除去する。このときに回路板表面の凹凸は、3μm以下である。この回路板の回路表面に次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする黒化処理と、ジメチルアミノボランを主成分とする還元処理によって、粗化処理を行なう。
【0070】
この回路板の片面に18μm銅箔の付いた高誘電率樹脂接着剤を温度170℃、圧力1.5MPa、加熱加圧時間60分のプレス条件で積層一体化することにより高誘電率誘電体層30及び31が形成される。この高誘電率樹脂接着剤は、1MHzの比誘電率が45のエポキシ樹脂系接着剤である。
【0071】
この基板の表面に所望のエッチングレジストを形成し、不要な銅箔をエッチング除去して、容量の電極を含む回路パターン(内層導体層11)を形成する。
【0072】
この回路板の回路表面に、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする黒化処理と、ジメチルアミノボランを主成分とする還元処理によって、粗化処理を行なう。
【0073】
(1)35μmキャリア銅箔付き厚み3μmの銅箔、(2)厚み80μmのフィラー入りガラスエポキシプリプレグを2枚、(3)回路板、(4)厚み80μmのフィラー入りガラスエポキシプリプレグを2枚、(5)35μmキャリア銅箔付き厚み3μmの銅箔の順に重ね、温度170℃、圧力1.5MPa、加熱加圧時間60分のプレス条件で積層一体化する。
【0074】
キャリア銅箔を剥がし、不要な基板端部を切断後、この基板の表面に所望のエッチングレジストを形成し、不要な銅箔をエッチング除去して、所望の箇所にφ0.15mmの窓穴を形成する。
【0075】
この基板表面に設けた窓穴の箇所に炭酸ガスレーザを用いて、出力パワー26mJ、パルス幅100μs、ショット数6回の条件でレーザ穴明けを行なう。超音波洗浄とアルカリ過マンガン酸液で炭化した樹脂カスを除去後、洗浄触媒付与、密着促進後無電解銅めっきを行ない、レーザ穴内壁と銅箔表面に約20μmの無電解銅めっき層を形成することにより、誘電体層20及び22の貫通孔が形成される。
【0076】
この基板表面のパッドや回路パターンなど必要な箇所にエッチングレジストを形成し、不要な銅をエッチング除去して、外層回路(表面導体層10及び裏面導体層15)を形成する。
【0077】
この基板表面にソルダーレジストをロールコータで30μm塗布、乾燥後に露光・現像して所望の箇所にソルダーレジストを形成する。その後、3μmの無電解ニッケルめっきと0.1μmの無電解金めっきを外層回路パターン露出部表面層に形成して、基板内蔵容量を有する多層基板が得られる。
【0078】
本実施形態の多層基板では、高誘電率誘電体層30及び31を多層基板面内一様に配置することにより、多層基板の反りを低減することが可能である。
【0079】
また、本実施形態の多層基板では、高誘電率誘電体層30及び31を誘電体層21の上下対称の位置に配置することにより、多層基板の反りを更に低減することが可能である。ただし、用途、コスト、多層基板製造方法によっては必ずしも高誘電率誘電体層30及び31を誘電体層21の上下対称の位置に配置しなくても構わない。また、高誘電率誘電体層30及び31のうちいずれか一方のみを配置しても構わない。
【0080】
なお、ここで述べた素子、或いは構成材料の誘電率、寸法などの数値は絶対的なものでなく、例えば2GHzにおいて共振する容量素子の容量値Cは素子に付随する寄生インダクタンスLの大きさと1/{2π√(LC)}の式から求めればよく、その容量値を実現するための寸法も、可能な加工技術の範囲で任意に選ぶことができる。
【0081】
(発明の実施の形態2)
図2で示した、樹脂を主成分とする誘電体層20,21,22をセラミックに代えた第2の実施形態を以下に説明する。本実施形態において、誘電体層20,21,22は、アルミナを主成分とする各層厚さ100μmのセラミックで構成される。また、高誘電率誘電体層30及び31は、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)を主成分とする比誘電率80、各層厚さ40μmのセラミックで構成される。これにより、高誘電率誘電体層を内層電極板で挟んで構成される容量素子の単位面積当たりの容量値は20pF/mm2となり、第1の実施形態に示した構造で2GHzで共振する容量を構成可能とした。
【0082】
基板をセラミックで構成することにより、第1の実施形態において述べた効果に加えて、吸湿性の無い、高温での信頼性の高い多層基板を提供することが可能である。
【0083】
また、本実施形態でBSTを主成分とした高誘電率誘電体層を用いたが、高誘電率材料はBSTに限定されることは無く、酸化チタン、チタン酸ストロンチウムといった高誘電率材料を用いても同様の効果が得られることは勿論である。
【0084】
(発明の実施の形態3)
図7は、本発明を適用したデュアルバンド移動体端末のブロック図であり、図8は、同移動体端末における、本発明の受動素子内蔵基板を用いた高周波電力増幅器モジュールの断面図であり、図9は、同高周波電力増幅器モジュールの回路図である。
【0085】
図7のデュアルバンド移動体端末では、2つの異なる周波数を用いた2系統の通話が可能である。図7において、200はマイクロホン、210はベースバンド信号処理装置、220は局部発信器、230a〜230dはミキサ、240a及び240bは利得可変増幅器、250a〜250dはフィルタ、260はダイプレクサ、261a及び261bはおのおのダイプレクサ260の高周波側及び低周波側の出力、265a及び265bはそれぞれ高周波側及び低周波側の送信・受信切り替えスイッチ、270はアンテナ、280a及び280bは低雑音増幅器、290はスピーカである。更に、1は、2系統の高周波電力幅器を備えた高周波電力幅器モジュール、2は、利得可変増幅器240a,240b、高周波電力幅器モジュール1及びフィルタ250a,250cより構成される送信回路である。
【0086】
本実施形態の受動素子内蔵基板の構造については第1の実施形態と重複する部分が多いので、異なる部分のみを説明する。
【0087】
図8では、左半分に一方の系統の高周波電力幅器の入力端子近傍の断面図を示し、右半分に他方の系統の高周波電力幅器の入力端子近傍の断面図を示している。図8において、32は高誘電率誘電体層、45eは裏面導体層15に形成された電力入力端子、50v及び50wは貫通孔、61eは内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板、62eは内層導体層12に形成された基板内蔵容量極板、110hは表面導体層10に実装された受動部品である。図8におけるそれ以外については図2に準じる。
【0088】
本実施形態の受動素子内蔵基板には、図8に示した以外に、2系統の増幅器を構成するように2組の表面実装部品、基板内蔵部品等が配置されているが図示を省略する。
【0089】
図9に示した増幅器は、図3に示した高周波電力増幅モジュール回路を2個並列に配置し、電源端子45c及び45dを2個の増幅器で共用したものであり、おのおの増幅器の対応する部品の機能は図3と同様である。従って、詳細な説明は省略する。後の説明の便宜上、図9の上側の増幅器(45aを入力端子とし、45bを出力端子とする回路)を第1の周波数の増幅器と称し、下側の増幅器(45eを入力端子とし、45fを出力端子とする回路)を第2の周波数の増幅器と称する。
【0090】
次に、本実施形態の移動体通信端末の動作を説明する。図7において、マイクロホン200を介して入力された音声はベースバンド信号処理装置210にて符号化変換され、局部発信器220で生成された局部発振信号とミキサ230a或いは230cで変調され、利得可変増幅器240a或いは240bを介して高周波電力増幅器モジュール1に入力される。高周波電力増幅器モジュール1で増幅された送信信号はフィルタ250a或いは250cを介し、更に送信・受信切り替えスイッチ265a或いは265bを経てダイプレクサ260に入力され、アンテナ270を介して電波として送信される。
【0091】
一方、アンテナ260を介して受信された電波は、受信信号としてダイプレクサ260に入力され、送信・受信切り替えスイッチ265a或いは265bを経て、フィルタ250b或いは250dを介して低雑音増幅器280a或いは280bに入力される。低雑音増幅器280a或いは280bから出力された信号は、局部発信器220で生成された局部発振信号とミキサ230b或いは230dで復調され、ベースバンド信号処理装置210にて複合変換されてスピーカ29から音声として出力される。
【0092】
上記で、a或いはbの符号を用いて記述した部分においては2つの通信可能な周波数帯のうちいずれの通信周波数が選ばれているかによって、信号が異なる経路を通って処理されることを意味している。この通信周波数の選択は下記のように周囲の電波状況等の端末の状況により行なわれる。
【0093】
本実施形態の移動体通信端末は通信可能な周波数を2種類有しており、1つの周波数帯において回線の混雑等の状況により通信が困難となった場合に他の周波数において通信を行なうことが可能であるという特徴を有する。このような端末においては、2つの異なる周波数帯の周波数の比は、例えばGSM900(900MHz帯)/GSM1800(1800MHz帯)の組み合わせに見られるように、2倍程度の大きな比を有する場合が多く、1個の高周波電力モジュールで2つの異なる周波数の電力増幅を行なうことは困難である。そのため、高周波電力モジュールにおいては、図7に示すように2つの周波数帯にそれぞれ対応した2個の独立した増幅系統を1個のモジュールに収めることが行なわれる。
【0094】
次に、図8において基板内蔵容量極板63a、高誘電率誘電体層31及び基板内蔵容量極板63bにより基板内蔵容量が形成され、更に基板内蔵容量極板63aは表面導体パターン40aに貫通孔50sを介して接続され、基板内蔵容量極板64aは電力入力端子45aに貫通孔50rを介して接続されることにより、直列容量を含む受動素子80aが形成される。表面導体パターン40aは受動部品110fによって接地電極70aに接続され、受動部品110fは表面電極パターン40aと共に高周波電力増幅モジュールの第1の周波数の増幅器の入力整合回路を形成する。
【0095】
続いて、基板内蔵容量極板61e、高誘電率誘電体層32及び基板内蔵容量極板62eにより基板内蔵容量が形成され、更に基板内蔵容量極板61eは表面導体パターン40gに貫通孔50wを介して接続され、基板内蔵容量極板62eは電力入力端子45eに貫通孔50vを介して接続されることにより、直列容量を含む受動素子80gが形成される。表面電極40gは受動部品110hによって接地電極70aに接続され、受動部品110hは表面電極パターン40gと共に高周波電力増幅モジュールの第2の周波数の増幅器の入力整合回路を形成する。
【0096】
本実施例のように、異なる周波数に対応した2系統の増幅器を1つの基板上に形成する場合において、入出力端子で直流遮断するための直列容量は合計4個必要となる。一例として、第1の実施形態で用いた高誘電率誘電体層を用いて前記4個の直列容量を形成することを取り上げる。
【0097】
前記GSM900/GSM1800デュアルバンド対応高出力電力増幅モジュールを形成する場合、GSM1800用直列容量は極板寸法を1.0mm×0.8mm、貫通孔50rと50sのずらし量を0.8mmとすることで自己共振周波数を周波数帯域のほぼ中心とすることが可能であるが、GSM900用には容量値を60pF程度まで増加させる必要があるため極板寸法を1.8mm×1.8mm程度まで大きくする必要がある。その結果、モジュール内の直列容量の占める面積が大きくなり、以下の問題点を生じる。
【0098】
第1に、内層接地導体面の面積が直列容量素子の占有部分だけ削られるため、接地の効果が弱くなり、そのような接地がモジュール内での電位変動等、回路の不安定要因となる。第2に、上記の大面積の容量素子を設けた基板内では内層配線の引き回しに困難が生じる。第3に、直列容量の寸法が大きくなると、容量極板の損失が無視できなくなり、特性が劣化する。
【0099】
これらの問題点を回避するために、本実施形態では、まず、第1の周波数の増幅器の直列容量と第2の周波数の増幅器の直列容量を異なる高誘電率誘電体層31と高誘電率誘電体層32を用いて形成し、接地電極の面積を大きく取れるようにした。
【0100】
また、第1の実施形態において記述したように、容量とインダクタンスの直列回路の共振周波数が1/{2π√(LC)}となることから、高誘電率誘電体層32の単位面積当たりの容量密度を高誘電率誘電体層31のそれと比較して4倍の80pF/mm2にすることで、同一寸法の容量素子と寄生インダクタンスにより生じる共振の周波数を1/2とした。これにより、極板寸法を第1の周波数の増幅器の入・出力直列容量と同一寸法の1.0mm×0.8mm、貫通孔50vと50wのずらし量を0.8mmとして、900MHzにおいて共振する素子を実現した。
【0101】
本実施形態の受動素子内蔵基板の製造方法は、第1の実施形態に準ずる。
【0102】
以上、本実施形態では、2つの異なる周波数で動作する2系統の高周波電力増幅器を有する高周波電力増幅器モジュールにおいて、入出力の直流遮断用の直列容量をすべて基板に内蔵しながら、各々の動作周波数で直列容量とその寄生インダクタンスとの共振によって受動素子での位相回転を0にしつつ、受動素子そのものの小型化を実現した。
【0103】
なお、本実施形態において2層の高誘電率誘電体層32と高誘電率誘電体層31について、より容量密度の高い高誘電率誘電体層32が表面側に配置され、容量密度の低い高誘電率誘電体層31が裏面側に配置されているが、この配置が逆転しても同様の効果があることは上記記述より明らかである。
【0104】
(発明の実施の形態4)
樹脂を主成分とする図8で示した誘電体層20,21,22をセラミックに代えた第4の実施形態を以下に説明する。本実施形態において、誘電体層20,21,22は、アルミナを主成分とする各層厚さ100μmのセラミックで構成される。また、高誘電率誘電体層32は、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)を主成分とする比誘電率80、層厚さ10μmのセラミックで構成され、高誘電率誘電体層31は、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)を主成分とする比誘電率80、層厚さ40μmのセラミックで構成される。
【0105】
これにより、高誘電率誘電体層を内層電極板で挟んで構成される容量素子の単位面積当たりの容量値は、高誘電率誘電体層32について80pF/mm2、高誘電率誘電体層31について20pF/mm2となり、第3の実施形態に示した構造で900MHz及び1.8GHzで共振する容量を構成することができた。
【0106】
本実施形態においては、基板をセラミックで構成することにより、第3の実施形態において述べた効果に加えて、吸湿性の無い、高温での信頼性の高い多層基板を提供することが可能である。
【0107】
(発明の実施の形態5)
図10は、本発明の第5の実施形態である受動素子内蔵基板の斜視層構成図であり、図11は、図10の構造の等価回路図であり、図12はその周波数特性の図である。
【0108】
図10において、20及び21は誘電体層、30は高誘電率誘電体層、40iは誘電体層20の表面に形成された表面導体パターン、61d及び62dは基板内蔵容量極板、50k及び50lは貫通孔、73bは裏面接地導体である。
【0109】
高誘電率誘電体層30及び基板内蔵容量極板61d及び62dにより基板内蔵容量が形成され、更に基板内蔵容量極板61dは表面導体パターン40iに貫通孔50kを介して接続され、基板内蔵容量極板62dは裏面接地導体73bに貫通孔50lを介して接続されることにより、容量を含む受動素子が形成される。
【0110】
その等価回路は、図11に示した接地へのシャント受動回路となる。図11において、容量部品611bと直列に接続されたインダクタンス610bは、貫通孔50k及び50lと、基板内蔵容量極板61d及び基板内蔵容量極板62dの有する寄生インダクタンスとの和であり、端子600a及び600bは表面導体パターン40iの両端を示している。
【0111】
ところで、電力増幅器においては、基本波周波数の整数倍の周波数の高調波が発生することがある。発生した高調波は、妨害波となる。そのため、高周波電力増幅器モジュールを設計する上で、高調波に減衰を与えるフィルタ回路の設置が必要になる。
【0112】
送信周波数(基本波周波数)が2GHzの増幅器では、例えば周波数が2倍の高調波に対しては、図12に示すような4GHzで減衰を持つ(通過損失の大きい)フィルタ特性が採用される。
【0113】
従来、一般的に、上記フィルタ回路は、容量性部品と誘導性部品を直列に配置して接地し、上記容量性部品の容量値及び誘導性部品のインダクタンス値を調整し、直列共振周波数を4GHzに設定することにより実現されていた。
【0114】
一方、本発明の受動素子内蔵基板を用いて構成した高周波電力増幅器モジュールにおいては、上記シャント受動回路が高調波を減衰させるためのフィルタ回路として用いられる。容量部品611bと直列に接続されたインダクタンス610bとによる共振周波数が4GHzに設定される。
【0115】
誘導性部品のインダクタンス値は、貫通孔50kと50lの高誘電率誘電体層の層に平行な方向へのずらし量により定めることができ、設計が容易である。また、容量性部品は多層基板に内蔵されているため、受動部品を多層基板表面に実装した場合に比べ小型化が可能である。従って、本発明の受動素子内蔵基板を用いた高周波電力増幅器モジュールでは、フィルタ回路、特に高調波電力低減回路を容易に形成し、かつ、モジュールの小型化が可能となる。
【0116】
(発明の実施の形態6)
図13は、電源安定化のためのシャント容量内蔵の本発明の受動素子内蔵基板を用いて構成した高周波電力増幅器モジュールの断面図である。
【0117】
図13において、20、21及び22は誘電体層、30及び33は高誘電率誘電体層、40a、40b及び40dは表面導体層10に形成された導体パターン、45aは裏面導体層15に形成された電力入力端子、45dは裏面導体層15に形成された導体による駆動電源端子、50v〜50yは貫通孔、61eは内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板、62eは内層導体層12に形成された基板内蔵容量極板、70hは表面導体層10に形成された接地導体、72bは内層導体層12に形成された接地導体、73bは内層導体層13に形成された接地導体、75bは裏面導体層15に形成された接地導体、100は半導体素子、110c及び110fは表面導体層10に実装された受動部品、120bはボンディングワイヤである。
【0118】
本実施形態において、高誘電率誘電体層30は、第1の実施形態と同様に構成され、基板内蔵容量の容量密度は約20pF/mm2となる。一方、高誘電率誘電体層33は、エポキシ、アラミド材などの材料で構成された膜厚20μmのシート上に銅配線パターンを形成し、その上にチタン酸ストロンチウムを物理的蒸着によって1μmの厚さに形成し、更にその上に再び銅を被着して形成されており、比誘電率で高誘電率誘電体層30の2倍、誘電体厚さで1/20であり、高誘電率誘電体層30の40倍の容量密度、すなわち、約800pF/mm2を有することを特徴とする。
【0119】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの構造については、図13に断面図として示した部分以外は図1に準じており、第1の実施例と重複する部分が多いので、本実施形態特有の部分のみを図13に基づいて説明する。
【0120】
図13において、基板内蔵容量極板61e、高誘電率誘電体層30及び基板内蔵容量極板62eにより基板内蔵容量が形成され、更に基板内蔵容量極板61eは表面導体パターン40aに貫通孔50wを介して接続され、基板内蔵容量極板62eは裏面導体パターン45aに貫通孔50vを介して接続されることにより直列容量を含む受動素子が形成される。
【0121】
表面導体パターン40aは受動部品110fによって接地導体70hに接続され、受動部品110fは表面導体パターン40aと共に高周波電力増幅モジュールの入力整合回路を形成する。
【0122】
裏面導電層15に形成された駆動電源端子45dは、基板内蔵容量極板64cに貫通孔50xを介して接続され、基板内蔵容量極板64cは高誘電率誘電体層33及び接地導体面73bと共に基板内蔵シャント容量を形成し、更に基板内蔵容量極板64cは表面導体パターン40dに貫通孔50yを介して接続され、表面電極40dは受動部品110cによって電極パターン40bに接続され、表面電極パターン40bはボンディングワイヤ120bにより半導体素子100に接続され、電源供給配線が形成される。
【0123】
本実施例の受動素子内蔵基板を用いて構成した高周波電力増幅器モジュールの等価回路は図3に示す通りであるが、図3中のシャント容量110dを基板に内蔵したことが第1の実施形態と異なる。シャント容量110dは、基板内蔵容量極板64c、高誘電率誘電体層33及び接地導体面73bで構成され、800pF/mm2の高い容量密度を有する高誘電率誘電体層33を適用したことにより、1.25mm2の面積で1000pFの容量を有し、2GHzで動作する高周波電力増幅器のモジュール内電源安定化のためのシャント容量として十分な容量値を持つ。
【0124】
本実施形態により、電源安定化のためのシャント容量をモジュールに内蔵し、モジュール上の表面実装部品を減らしてモジュールを小型化しつつモジュールの動作安定度を高く保つことが可能になる。
【0125】
なお、本実施例ではコレクタ側の電源安定化のためのシャント容量のみについて詳細に記述したが、ベース側の電源安定化のためのシャント容量(図3の110e)についても同様の構成で形成することができることは明らかである。
【0126】
以上の各実施形態では、主として移動体通信用端末に用いられる高周波電力増幅器モジュール或いは移動体通信端末を構成する高周波回路部分に適用した場合について説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、高周波で動作するルータなどの回路或いはCPU(central Processing Unit)などに適応することが可能である。
【0127】
【発明の効果】
本発明によれば、寄生インダクタンスを持つ容量電極と高誘電率誘電体層とによる受動素子が多層基板に内蔵されるので、受動素子内蔵基板の小型化が可能になる。更に、受動素子が薄い高誘電率誘電体層を挟んで形成されるので受動素子内蔵基板の薄型化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る受動素子内蔵基板の第1の発明の実施の形態を説明するための斜視構成図。
【図2】図1の受動素子内蔵基板をB−B線に沿って切断した断面図。
【図3】第1の実施形態の受動素子内蔵基板を用いて構成した高周波増幅モジュールを説明するための回路図。
【図4】第1の実施形態の受動素子内蔵基板における基板内蔵受動素子を説明するための図。
【図5】第1の実施形態の受動素子内蔵基板における基板内蔵受動素子の効果の説明するための曲線図。
【図6】図1の受動素子内蔵基板をC−C線に沿って切断した断面図。
【図7】本発明の第3の実施形態を説明するためのブロック図。
【図8】本発明の第3の実施形態を説明するための断面図。
【図9】本発明の第3の実施形態を説明するための回路図。
【図10】本発明の第5の実施形態を説明するための斜視構成図。
【図11】図10の構造の等価回路図。
【図12】図11に示した等価回路の信号透過量の周波数依存性を説明するための曲線図。
【図13】本発明の第6の実施形態を説明するための断面図。
【符号の説明】
1…高周波電力増幅器モジュール、2…送信回路、10…表面導体層、11,12,13,14…内層導体層、15…裏面導体層、20〜22…誘電体層、30〜33…高誘電率誘電体層、40…表面導体パターン、43…内層導体パターン、45a…電力入力端子、45b…電力出力端子、45c…利得制御電源端子、45d…駆動電源端子、50…貫通孔、61〜64…基板内蔵容量極板、70,72,73,75…接地導体、80…基板内蔵受動素子、100…半導体素子、101…トランジスタ、102,110…受動部品。
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体通信端末で使用される高周波回路用の多層基板に係り、特に受動素子を基板に内蔵することによって多層基板を小型化、薄型化する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話等の移動体通信端末の小型化、薄型化に伴い、該端末に搭載される高周波回路用の多層基板の小型化及び薄型化に対する要求が強くなってきている。しかし、例えば多層基板を用いる高周波用電力増幅器モジュールについては、小型化の要求があるものの、多層基板の表面に実装する受動部品(チップ容量、チップインダクタ)の小型化が停滞しており、そのような受動部品を多数表面に実装するモジュール基板の小型化が律速されている。そのため、モジュール基板表面に実装する受動部品の一部をモジュール基板或いは半導体素子に内蔵することにより、モジュールを小型化することが必須となっている。
【0003】
そのような要求に応えるべく能動部品や受動部品を内蔵した基板の一例が特許文献1に開示されている。この例では、配線パターンを表面に形成した2枚の電気絶縁層でコア層を挟み、同コア層に配線パターンを形成すると共にその一部の上に能動部品や受動部品を実装することによって、能動部品や受動部品が内蔵される。なお、コア層は、無機質フィラーと熱硬化性樹脂の複合されたコンポジット材料による電気絶縁層からなる。また、上面の配線パターンとコア層の配線パターンがインナービアによって接続される。
【0004】
他の一例が特許文献2に開示されている。この例では、複数の絶縁体層の間にコンデンサ構成層が配置される。各層の間並びに上面及び下面に導体パターンによる電極部が備えられ、各層間の電極部の相互接続がビアホールによって行なわれる。特にコンデンサ構成層において、互いに対向するコンデンサ電極の間の領域のみが誘電体層により形成される。誘電体層の形成は、絶縁体よりなるコンデンサ構成層の該当部分にパンチにより孔を空け、その中に誘電体層を挿入することによって行なわれる。その他の領域は絶縁体層により形成される。このようにして、コンデンサ内蔵多層基板が構成される。
【0005】
更に他の一例が、特許文献3に開示されている。この例では、2層の誘電体層の外側の両面に接地導体が設けられ、2層の誘電体層の中央より接地導体に近い位置に、容量導体が設けられる。接地導体と容量導体の間には、上記誘電体層の一部、即ち厚さが薄い誘電体層が介在する。この構造により、厚さが薄い誘電体層を挟んで容量導体が接地導体と対向し、誘電体層の中にコンデンサが内蔵される。また、同特許文献3には、その他に、容量ランド(容量導体)を2枚の基板の中央に設け、容量ランドとは反対側の基板の面に接地導体を設ける例が記載されている。基板を介して2枚の接地導体が容量ランドを挟む構造が形成される。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−261449号公報(第9頁、図1)
【特許文献2】
特開平6−69663号公報(第3頁、図1)
【特許文献3】
特開平7−193401号公報(第2頁〜第3頁、図1及び図5)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1によって開示された技術では、チップ部品を基板内層に埋没させるため、基板の厚さがチップ部品の厚さに律速され、基板の薄型化が困難である。
【0008】
また、特許文献2によって開示された技術では、コンデンサ誘電体層即ち容量膜が基板内部に配置されるので、特許文献1に開示された技術に比べて多層基板の薄型化は容易となる。しかし、容量膜が基板の一部分に配置されるため、基板の各部分での密度、熱膨張率が不均一となり、基板の反りが生じやすい。更に、容量膜が基板内層に部分的に形成されるため、容量膜厚が一容量内においてばらつきを生じ易く、容量値のばらつきが大きくなることが避けられない。また更に、コンデンサ構成層は一基板になるから、厚さを薄くすることには限度があり、そのため内蔵容量値或いは容量密度を実用レベル(20pF/mm2程度)まで大きくすることができず、加えて更なる薄型化が困難である。
【0009】
また、特許文献3によって開示された技術では、均一な誘電体層を容量膜として用いているため、特許文献2に開示された技術において懸念される基板の反りは低減される。しかしながら、多層基板の上面にコンデンサが占有する面を置くことになるので、小型化の効果が低く、また、高い誘電率を持たない基板である誘電体層の一部が容量膜となるので、内蔵容量値或いは容量密度を実用レベルまで大きくすることができない。
【0010】
まして、容量素子とインダクタンス素子を直列接続した受動素子を実現することは困難である。
【0011】
本発明の主たる目的は、実用的な値を持つ受動素子の内蔵が可能で、かつ薄型化及び小型化が可能な受動素子内蔵基板を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0013】
本発明の受動素子内蔵基板は、複数の誘電体層を積層してなる多層基板を具備し、該複数の誘電体層は該多層基板の表面側の誘電体層と裏面側の誘電体層と中間の誘電体層とからなり、中間の誘電体層の内の少なくとも1つは、他の誘電体層よりも誘電率が高く、かつ、厚さが薄い高誘電率誘電体層であり、該高誘電率誘電体層を挟んでその表面側及び裏面側にそれぞれ第1の容量極板及び第2の容量極板を具備し、高誘電率誘電体層の表面側に接している誘電体層に形成された、第1の容量極板への電気的接続のための第1の貫通孔と、高誘電率誘電体層の裏面側に接している誘電体層に形成された、第2の容量極板への電気的接続のための第2の貫通孔とを具備し、第1の貫通孔の中心と第2の貫通孔の中心が高誘電率誘電体層の面に並行な方向に第1及び第2の貫通孔の直径以上にずれていることを特徴とする。
【0014】
第1の容量極板と第2の容量極板が誘電率が高くかつ薄い高誘電率誘電体層を挟むことによって実用的な値を持つ容量素子が形成され、貫通孔の中心が互いにずれている第1及び第2の容量極板と第1及び第2の貫通孔とによって実用的な値を持つインダクタンス素子が形成され、これら素子を多層基板の内部に形成することによって受動素子内蔵基板の薄型化及び小型化が可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る受動素子内蔵基板を図面に示した幾つかの発明の実施の形態を参照して更に詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0016】
本発明は、高周波回路一般や移動体通信端末等に適用可能であるが、以下の本発明の実施の形態では説明の便宜上、移動体通信端末に用いられる一段増幅構成の高周波電力増幅器モジュールを例に、本発明の実施形態の構造、動作、効果及び製造方法を説明する。
【0017】
(発明の実施の形態1)
図1は、本発明の受動素子内蔵基板を用いた高周波電力増幅器モジュールの各導体層を、多層の各誘電体層の図示を省略して示した斜視層構成図であり、図2は、図1におけるB−B線に沿って切断したモジュールを各誘電体層を含めて示した断面図であり、図3は、モジュールに搭載した高周波電力増幅器の回路図である。
【0018】
図1において、1は高周波電力増幅器モジュール、10は表面導体層、11〜14は内層導体層、15は裏面導体層である。続いて、40a〜40eは表面導体層10に形成された表層導体パターン、43bは内層導体層13に形成された内層導体パターン、50h、50g及び50r〜50uは貫通孔、61a及び61bは内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板、63a及び63bは内層導体層13に形成された基板内蔵容量極板、64a及び64bは内層導体層14に形成された基板内蔵容量極板、70aは表面導体層10に形成された接地導体パターン、72aは内層導体層12に形成された接地導体、73aは内層導体層13に形成された接地導体、75aは裏面導体層15に形成された接地導体、100は表面導体層10に実装された半導体素子、110c〜110fは同じく表面導体層10に実装された受動部品、120a〜120dはボンディングワイヤである。更に、45a〜45dは、裏面導体層15に形成された導体によるそれぞれ電力入力端子、電力出力端子、利得制御電源端子及び駆動電源端子である。
【0019】
図2において、20、21及び22は誘電体層であり、30及び31は高誘電率誘電体層である。基板内蔵容量極板63a及び基板内蔵容量極板64aとそれらの間に配置された高誘電率誘電体層31とによって基板内蔵受動素子が形成され、受動素子内蔵基板が構成される。また、容量極板63aは表面導体パターン40aに貫通孔50sを介して接続され、容量極板64aは電力入力端子45aに貫通孔50rを介して接続される。次に、図1,2において、基板内蔵容量極板63b及び基板内蔵容量極板64bとそれらの間に配置された高誘電率誘電体層31とによって基板内蔵受動素子が形成され、受動素子内蔵基板が構成される。また、容量極板63bは表面導体パターン40bに貫通孔50tを介して接続され、容量極板64bは電力出力端子45bに貫通孔50uを介して接続される。
【0020】
後で詳述する図3において、80aが容量極板63a、容量極板64a及び高誘電率誘電体層31による基板内蔵受動素子であり、80bが容量極板63b、容量極板64b及び高誘電率誘電体層31による基板内蔵受動素子である。
【0021】
先ず、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの構造を図1及び図2を用いて説明する。基板表面ソルダーレジスト(図示せず)、表面導体層10、誘電体層20、内層導体層11、高誘電率誘電体層30、内層導体層12、誘電体層21、内層導体層13、高誘電率誘電体層31、内層導体層14、誘電体層22、裏面導体層15及び基板裏面ソルダーレジスト(図示せず)が上下に積層され、多層基板が形成される。
【0022】
表面導体層10上に半導体素子100が銀ペーストなどの熱伝導性の良い導電性ペーストを用いて実装され、半導体素子100表面に形成された電極部(図示せず)と表面導体層10に形成された各表面導体パターン40a、40b及び40cとがそれぞれボンディングワイヤ120a、120b及び120cを介して接続され、表面導体層10に形成された表面導体パターン40bと表面導体パターン40eとがボンディングワイヤ120dを介して接続され、表面導体層10上に複数の受動部品110c〜110fが半田などの導電性ペーストを用いて実装される。
【0023】
そして、表面導体層10を樹脂封止(図示せず)で封止することにより、高周波電力増幅器モジュール1が完成する。封止は、その他に樹脂キャップ或いは金属キャップを用いて行なうことも可能である。
【0024】
裏面導体層15に形成された電力入力端子45aは、前述のように貫通孔50rを介して内層導体層14に形成された基板内蔵容量極板64aに接続される。基板内蔵容量極板64aは、高誘電率誘電体層31を介して基板内蔵容量極板63aと容量結合することで信号経路に直列に接続されて直流電流を遮断する基板内蔵容量(以後、直列容量と呼称する)を含む受動素子80aが形成される。基板内蔵容量極板63aは前述のように、貫通孔50sを介して表面導体パターン40aに接続され、表面導体パターン40aはボンディングワイヤ120aを介して半導体素子100表面に形成された電力入力電極部(図示せず)に接続される。
【0025】
半導体素子100表面に形成された電力出力電極部(図示せず)はボンディングワイヤ120bを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40bに接続され、表面導体パターン40bは、前述のように貫通孔50tを介して基板内蔵容量極板63bに接続される。基板内蔵容量極板63bは、前述のように高誘電率誘電体層31を介して基板内蔵容量極板64bと容量結合することで信号経路に直列に接続されて直流電流を遮断する直列容量を含む受動素子80bが形成される。基板内蔵容量極板64bは、前述のように貫通孔50uを介して裏面導体層15に形成された電力出力端子45bに接続される。
【0026】
裏面導体層15に形成された利得制御電源端子45cは貫通孔(図示せず)を介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40cに接続され、表面導体パターン40cはボンディングワイヤ120cを介して半導体素子100表面に形成された利得制御電源電極部(図示せず)に接続される。
【0027】
裏面導体層15に形成された駆動電源端子45dは貫通孔(図示せず)を介して内層導体層13に形成された内層導体パターン43bに接続され、内層導体パターン43bは貫通孔(図示せず)を介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40dに接続され、表面導体パターン40dは表面導体層10上に実装された受動部品110cを介して表面導体パターン40bに接続される。
【0028】
半導体素子100を実装するために表面導体層10に形成された表面導体パターン(符号なし)は複数の貫通孔(図示せず)を介して裏面導体層15に形成された接地導体75aに熱的及び電気的に接続される。また、表面導体層10上に形成された接地導体パターン70a、内層導体層12に形成された接地導体72a、内層導体層13に形成された接地導体73a及び裏面導体層15に形成された接地導体75aは、貫通孔(符号なし)を介して相互に接続される。
【0029】
内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板61a、内層導体層12に形成された接地導体72a及び基板内蔵容量極板61aと接地導体72aとの間に配置された高誘電率誘電体層30により基板内蔵容量130aが形成される。基板内蔵容量極板61aは貫通孔50gを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40eに接続され、表面導体パターン40eはボンディングワイヤ120dを介して表面導体パターン40bに接続される。
【0030】
同様に、内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板61b、内層導体層12に形成された接地導体72a及び基板内蔵容量極板61bと接地導体72aとの間に配置された高誘電率誘電体層30により基板内蔵容量130bが形成される。基板内蔵容量極板61bは貫通孔50hを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40bに接続され、シャント容量が形成される。
【0031】
一般に、接地導体72aは内層導体層12の形成可能な領域に形成され表面導体層10に形成された表面導体パターン40a及び40bの基準電位面となり、表面導体パターン40a及び40bはマイクロストリップ線路となる。
【0032】
本実施形態において、誘電体層20、21及び22は、比誘電率が約4.0のガラスエポキシ、エポキシ、アラミド不織布などの樹脂を主成分とし、誘電体層20及び22は厚さが150μmであり、誘電体層21は厚さが200μmである。
【0033】
誘電体層20及び22の厚さは、表面導体層10に形成される表面導体パターン40a及び40bの幅を導体損失が小さい0.3mmとした場合に同表面導体パターン40a及び40bの特性インピーダンスが50Ω以上になる誘電体厚と貫通孔50の接続信頼性が確保できる誘電体厚のトレードオフとにより決定される。一方、誘電体層21の厚さは、多層基板製造の容易性を考慮して決定される。
【0034】
また、高誘電率誘電体層30及び31は、セラミックなどの高誘電率無機材料粉末をエポキシなどの樹脂と混合した、比誘電率が約45のコンポジット材から構成され、高誘電率誘電体層30及び31の厚さは実用的な容量密度を考慮して20μmである。この場合、基板内蔵容量の容量密度は約20pF/mm2となる。
【0035】
なお、本実施形態において、誘電体層20、21及び22の比誘電率は約4.0としたが、用途に応じて4.0を越えても或いは4.0未満であっても構わない。更に、誘電体層20、21及び22、高誘電率誘電体層30及び31はともに樹脂を主成分とする材料からなる構成としたが、セラミックを主成分とする材料であっても構わない。また更に、誘電体層20及び22の厚さは150μmとしたが、用途に応じて150μmを越えても或いは150μm未満であっても構わない。同様に誘電体層21の厚さも、200μmを越えても或いは200μm未満であっても構わない。
【0036】
また、本実施形態において、説明の簡便性を考慮し、誘電体層5層、導体層6層としたが、この層数以外の任意の層数であっても構わない。
【0037】
次に、本実施形態の高周波電力増幅器モジュール1の回路動作を図3を参照して説明する。図3において、101は半導体素子100を構成するトランジスタであり、102a及び102bは半導体素子100に形成された受動部品である。トランジスタ101としてバイポーラトランジスタが用いられる。
【0038】
電力入力端子45aより入力された高周波信号は、基板内蔵容量極板64aと高誘電率誘電体層31と内蔵容量極板63aとで形成される受動素子80a、表面導体パターン40a及び受動部品102aを介して半導体素子100に形成されたトランジスタ101のベースに伝送され、トランジスタ101において増幅され、表面導体パターン40b及び、基板内蔵容量極板63bと高誘電率誘電体層31と内蔵容量極板64bとで形成される受動素子80bを介して電力出力端子45bより出力される。
【0039】
トランジスタ101の利得制御電圧或いは利得制御電流は、利得制御電源端子45cに印可され、表面導体パターン40c及び受動部品102bを介してトランジスタ101のベースに印可される。トランジスタ101の駆動電圧或いは駆動電流は、駆動電源端子45dに印加され、内層導体パターン43b、表面導体パターン40d、受動部品110c及び表面導体パターン40bを介してトランジスタ101のコレクタに印加される。トランジスタ101のエミッタは接地される。
【0040】
トランジスタ101のベースと電力入力端子45aとの間は、受動素子80a、受動部品102a、表面導体パターン40a及びシャント受動部品110fなどにより、インピーダンス整合が実現される。同様にトランジスタ101のコレクタと電力出力端子45bとの間は、受動素子80b、導体パターン40b、及びインダクタンス素子となるボンディングワイヤ120d、接地受動部品130a及び130bなどにより、インピーダンス整合が実現され、高周波電力増幅器モジュールとして機能する。
【0041】
なお、本実施形態では説明の簡便性を考慮し、利得制御電源端子45cとトランジスタ101のベースとの間には導体パターン40c及び受動部品102bのみを直列に接続したが、利得制御回路などを構成する能動素子を直列に挿入しても構わない。また、回路方式はトランジスタ101のエミッタを接地する方式としたが、ベース接地或いはエミッタフォロアなどの回路方式であっても構わない。
【0042】
更に、トランジスタ101のバイポーラトランジスタは、小型化、高性能化の観点から、GaAs、InP或いはSiGeなどの化合物半導体から構成されるHBT(Heterojunction Bipolar Transistor)が望ましいが、HEMT(High Electron Mobility Transistor)或いはMOSFET(Metal Oxide Silicon Field Effect Transistor)などの電界効果トランジスタであっても構わない。
【0043】
次に、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの基板内蔵容量に関する効果を説明する。便宜的に、高周波電力増幅器モジュールを送信周波数が2GHzの移動体通信端末に用いた場合を例として挙げる。
【0044】
基板内蔵受動素子80aを形成する部分の効果を図4を用いて説明する。比較のため、図4における受動素子80aを受動部品(容量部品)等で構成した従来の例を図4aに示す。容量部品110hの一端が誘電体層520の表面に形成された表面導体パターン540bに接続され、容量部品110hの他端が誘電体層520の表面に形成された表面導体パターン540aに接続される。表面導体パターン540bは貫通孔550を介して誘電体層530の裏面に形成された裏面電極パターン542に接続される。このような構造により、図4cの等価回路図に示した受動回路が完成する。ここで、容量部品に直列に接続されたインダクタンスは、貫通孔550と容量部品110hの有する寄生インダクタンスの和である。
【0045】
次に、基板内蔵受動素子80aの部分を改めて図4bに示す。先に述べたように、内層導体層13に形成された基板内蔵容量極板63aは、貫通孔50sを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40aに接続され、内層導体層13の下面に設けた高誘電率誘電体層31を介して同層の下面の内層導体層14に形成された基板内蔵容量極板64aに対向する。基板内蔵容量極板64aは貫通孔50rを介して裏面導体層15に形成された電力入力端子45aに接続される。ここで、貫通孔50sと貫通孔50rとが高誘電率誘電体層31の面に並行な方向に互いにずれていることが特徴である。このずれにより、基板内蔵容量極板63a,64aに寄生インダクタンスが生成される。ずれの大きさは、貫通孔50s,50rの直径以上である。上記構造において、図4cの等価回路図に示した直列受動回路が完成する。ここで、容量部品と直列に接続されたインダクタンスは貫通孔50s及び50r、更に上述の基板内蔵容量極板61a及び基板内蔵容量極板61bの有する寄生インダクタンスの和である。従って、図4a及び図4bに示した左右の構造は同等の回路である。
【0046】
送信周波数(基本波周波数)が2GHzの高周波電力増幅器モジュールの整合回路に用いられる直列容量部品110hの容量値は、一般に10〜15pF程度である。その値が選ばれる理由は、以下の通りである。まず、図4cの等価回路に示した容量CとインダクタンスLの直列受動回路は、一端から他の端までの位相回転量を周波数の関数として表すと、図5に示すように送信周波数(2GHz)において位相回転が0となるように設定される。直列受動回路は、素子の寄生抵抗分を無視すれば、その周波数において短絡状態となる。この周波数は、1/{2π√(LC)}で与えられる共振周波数f0である。そして、共振周波数f0においては、回路は短絡と等価であるので、図3に示した増幅器において、入力端子45aから半導体素子100に至る入力整合回路の設計に当たって、伝送線路40aと整合素子110fの値のみを考慮すればよく、設計が著しく簡略化される。
【0047】
いま、貫通孔550の有する寄生インダクタンスは、基板厚さ300μmとして、約0.2nHであり、容量部品110hの有する寄生インダクタンスは、容量部品の大きさを長さ0.6mm×幅0.3mmとして、約0.3nHであり、寄生インダクタンスの和は約0.5nHである。従って、基本周波数2GHzで共振する容量部品110hの容量値は23pFとなる。寄生インダクタンスの値は貫通孔径等により変化するので、容量値10〜15pFにおいて前記位相回転0の条件が満たされる。
【0048】
一方、容量素子を基板に内蔵した場合、容量部品を用いた場合と比較して表面に実装する部品数を削減可能であり、モジュールの小型化が可能である。但し、基板内蔵容量素子について、容量素子の上下から容量素子極板への電気的接触を確保するための貫通孔50sと貫通孔50rが一直線上に配置された場合は、内蔵容量素子そのものの寄生インダクタンスが他のインダクタンス成分と比較して無視できる程度に小さくなり、インダクタンス値は貫通孔50s,50rの寄生インダクタンスの和である0.2nHとなり、前記容量部品110hを用いた場合より小さくなる。このとき2GHzで共振する容量値が33pFとなり、1mm2当りの容量値20pF/mm2に対して容量素子面積が1.65mm2となる。
【0049】
一方、本発明では、図4bに示すように、基板内蔵容量素子の上下の貫通孔50sと貫通孔50rの位置をずらすことによって、基板内蔵容量極板63a及び基板内蔵容量極板64aに寄生インダクタンスを持たせることが可能となる。このことにより、2GHzで共振を起こすための容量素子の値を小さくし、基板内蔵容量の専有面積を低減することが可能になる。
【0050】
3次元電磁界解析、並びに実際に試作した基板内蔵容量素子の共振周波数の測定から、上記共振条件を満たすための容量素子の上下の貫通孔50s,50rの位置のずらし量を求めた。その結果、内蔵容量素子寸法を0.75×1.0mm(容量値15pF)とし、貫通孔50s,50rの位置のずらし量を0.7mmとすることによって、図5に示すように、2GHzにおいて裏面電極45aから表面電極40aまでの信号の位相回転を0度とすることが可能となった。このことは、基板内蔵容量素子の上下に存在する貫通孔50s,50rが一直線上に配置された場合と比較して容量値で1/2以下、即ち容量素子面積で1/2以下にすることであり、基板内蔵容量素子の上下に存在する貫通孔をずらすことによって基板内蔵容量素子面積を低減することができた。
【0051】
以上では2GHzで共振する容量素子について述べたが、同様の手法で、移動体通信に広く用いられる周波数帯において共振する容量素子を構成することができる。
【0052】
例えば、GSM900方式で用いられる900MHzにおいて、共振する容量は、寄生インダクタンス0.5nHに対して容量値を62.5pF、即ち20pF/mm2の容量密度に対して容量素子面積3.13mm2とすればよい。また、DCS1800方式で用いられる1800MHzに対しては、容量値を15.6pF、即ち20pF/mm2の容量密度に対して面積容量素子0.78mm2とすればよい。
【0053】
また、本実施例の構造で、共振の帯域幅としてどの程度を採用可能かについて述べる。図5に示したように、共振周波数f0近傍で位相変化が小さく、従って帯域幅を広くすることが可能である。図4cの等価回路の両端に各々インピーダンスが50オームとなる終端を付加してSパラメータを算出すると、不整合による反射損失が20dBとなる帯域は、基本周波数2GHzに対してほぼ1〜4GHz(1/2f0〜2f0)である。従って、特性インピーダンスが50オームの箇所、すなわち、増幅器モジュールの入・出力端子においては、本実施例の構造は±1オクターブの帯域幅を有することとなる。
【0054】
より精密な位相整合をとって反射損失を40dBとする場合には、帯域はほぼ1.8〜2.2GHz(0.9f0〜1.1f0)である。この範囲であれば、より低いインピーダンスを有する箇所、例えば5オーム程度のインピーダンスを有するバイアス線路等に本実施例の共振回路を付加しても十分短絡回路とみなすことができる。
【0055】
以上のことは、例えば900MHzにおいて共振する容量素子は、凡そ810MHzから990MHzの範囲でほぼ完全に短絡とみなせることを意味する。移動体通信システムのうち、携帯電話において使用される周波数のかなりの部分、例えば米国AMPS、米国CDMA(IS−95)、日本PDC、欧州GSM900等のシステムがこの周波数帯に含まれる。従って、900MHzで共振する容量素子は、このようなシステムの携帯電話装置に広く適用することが可能である。
【0056】
同様に、1800MHzにおいて共振する容量素子は、凡そ1620MHzから1980MHzの範囲でほぼ完全に短絡とみなせる。携帯電話において使用される周波数のうち900MHz近傍の周波数帯域以外を使用するシステムのほとんど、例えば、欧州その他のGSM1800(DCS)、米国PCS、W−CDMA等のシステムがこの周波数帯に含まれる。従って、1800MHzで共振する容量素子も、900MHz近傍の周波数帯域以外の携帯電話装置に広く適用することが可能である。
【0057】
以上、図1及び図2において、入力側の直流遮断の容量を含む受動素子80a(図3)について容量素子の上下の貫通孔50r,50sの位置をずらして寄生インダクタンスを増加させることにより、基本周波数で共振を生じさせるために必要な容量値の低減、即ち容量素子面積の低減が可能である構造を示した。
【0058】
一方、出力側の直流遮断容量を含む受動素子80bについても同様の構造が適用可能である。図6は図1の受動素子内蔵基板をC−C線に沿って切断した断面図である。裏面導体層15に形成された電力出力端子45bは、貫通孔50uを介して内層導体層14に形成された基板内蔵容量極板64bに接続され、基板内蔵容量極板64bは高誘電率誘電体層31を介して基板内蔵容量極板63bと容量結合することで直列容量等を形成し、基板内蔵容量極板63bは貫通孔50tを介して表面導体パターン40bに接続され出力側の直流遮断容量を含む受動素子80bを構成する。基本周波数で共振を生じさせる構造等は入力側と同じであり、貫通孔50uと貫通孔50tが高誘電率誘電体層31の面に並行にずれて配置される。ずれの大きさは、貫通孔50u,50tの直径以上である。
【0059】
なお、図6では、図1では図示を省略した、表面導体層10に形成した導体パターン40cと裏面導体層に形成した利得制御電源端子45cとを接続する貫通孔50dが示され、内層導体層13に形成した導体パターン43bと駆動電源端子45dとを接続する貫通孔50eが示される。
【0060】
ここで示したように、入力と出力の双方で直流を遮断するための直列容量を基板に内蔵することにより、高周波電力増幅モジュールを小型化することが可能である。また、特にその内蔵した直列容量の共振周波数を基本周波数と一致させることによりモジュール表面の導体パターン40a及び40bからそれぞれ裏面端子45a及び45bまでの位相回転を0とすることができる。
【0061】
また、一般に高周波電力増幅モジュールにおいては、入出力のインピーダンスを50オームとするが、本実施形態では基本周波数において裏面端子45a及び45bにおける入出力のインピーダンスが50オームとなるのみでなく、表面の導体パターン40a及び40bにおいても入出力のインピーダンスが50オームとなる。
【0062】
従って、製造時の検査において、高周波電力増幅モジュールの基本特性、例えば、基本周波数において入出力のインピーダンスが50オームからどれだけずれているかを示す入出力のVSWR(電圧定在波比)などの測定を表面側から行なうことが可能である。高周波の特性測定は直流の測定特性と比較して高精度の探針の位置決め・接触圧力の制御が必要であることから、裏面電極への接触のみで評価することは困難であり、表面側からの特性検査が可能となることで、より高精度の検査が可能となる効果がある。
【0063】
次に、本実施形態の受動素子内蔵基板を用いた高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法を説明する。
【0064】
本実施形態を構成する多層基板は、ビルドアップ法、シート積層法或いは印刷法などの一般的な多層基板製造方法により容易に作製可能であるが、便宜的に樹脂を主成分する誘電体を用いた多層基板製造方法について説明する。
【0065】
銅箔厚3μm、板厚0.2mmの両面銅箔張ガラスエポキシ積層に所望のドリル穴明けを行なう。この基板に超音波洗浄とアルカリ過マンガン酸液で炭化した樹脂カスを除去後、触媒付与、密着促進後無電解銅めっきを行ない、ドリル穴内壁と銅箔表面に約15μmの無電解銅めっき層を形成する。この基板表面に次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする黒化処理と、ジメチルアミノボランを主成分とする還元処理によって、粗化処理を行なう。
【0066】
この基板のドリル穴内にスクリーン印刷によりペーストタイプの熱硬化型絶縁材料を充填し、170℃で60分間の熱処理により硬化させることにより、誘電体層21の貫通孔が形成される。この基板をバフブラシにより研磨し、余分な絶縁材料を除去する。
【0067】
この基板に触媒付与、密着促進後無電解銅めっきを行ない、基板表面に約15μmの無電解銅めっき層を形成する。この基板表面に所望のエッチングレジストを形成し、不要な銅をエッチング除去して、基板内蔵容量の電極を含む回路パターン(内層導体層12及び13)を有する回路板が作製される。
【0068】
この回路板表面にロールコータを用いてペーストタイプの熱硬化型絶縁材料を基板絶縁層表面から約40μm、回路パターン表面から約5μm塗布し、170℃で60分間の熱処理により硬化さる。
【0069】
この基板をバフブラシにより回路パターン表面が現れるまで研磨し、余分な絶縁材料を除去する。このときに回路板表面の凹凸は、3μm以下である。この回路板の回路表面に次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする黒化処理と、ジメチルアミノボランを主成分とする還元処理によって、粗化処理を行なう。
【0070】
この回路板の片面に18μm銅箔の付いた高誘電率樹脂接着剤を温度170℃、圧力1.5MPa、加熱加圧時間60分のプレス条件で積層一体化することにより高誘電率誘電体層30及び31が形成される。この高誘電率樹脂接着剤は、1MHzの比誘電率が45のエポキシ樹脂系接着剤である。
【0071】
この基板の表面に所望のエッチングレジストを形成し、不要な銅箔をエッチング除去して、容量の電極を含む回路パターン(内層導体層11)を形成する。
【0072】
この回路板の回路表面に、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする黒化処理と、ジメチルアミノボランを主成分とする還元処理によって、粗化処理を行なう。
【0073】
(1)35μmキャリア銅箔付き厚み3μmの銅箔、(2)厚み80μmのフィラー入りガラスエポキシプリプレグを2枚、(3)回路板、(4)厚み80μmのフィラー入りガラスエポキシプリプレグを2枚、(5)35μmキャリア銅箔付き厚み3μmの銅箔の順に重ね、温度170℃、圧力1.5MPa、加熱加圧時間60分のプレス条件で積層一体化する。
【0074】
キャリア銅箔を剥がし、不要な基板端部を切断後、この基板の表面に所望のエッチングレジストを形成し、不要な銅箔をエッチング除去して、所望の箇所にφ0.15mmの窓穴を形成する。
【0075】
この基板表面に設けた窓穴の箇所に炭酸ガスレーザを用いて、出力パワー26mJ、パルス幅100μs、ショット数6回の条件でレーザ穴明けを行なう。超音波洗浄とアルカリ過マンガン酸液で炭化した樹脂カスを除去後、洗浄触媒付与、密着促進後無電解銅めっきを行ない、レーザ穴内壁と銅箔表面に約20μmの無電解銅めっき層を形成することにより、誘電体層20及び22の貫通孔が形成される。
【0076】
この基板表面のパッドや回路パターンなど必要な箇所にエッチングレジストを形成し、不要な銅をエッチング除去して、外層回路(表面導体層10及び裏面導体層15)を形成する。
【0077】
この基板表面にソルダーレジストをロールコータで30μm塗布、乾燥後に露光・現像して所望の箇所にソルダーレジストを形成する。その後、3μmの無電解ニッケルめっきと0.1μmの無電解金めっきを外層回路パターン露出部表面層に形成して、基板内蔵容量を有する多層基板が得られる。
【0078】
本実施形態の多層基板では、高誘電率誘電体層30及び31を多層基板面内一様に配置することにより、多層基板の反りを低減することが可能である。
【0079】
また、本実施形態の多層基板では、高誘電率誘電体層30及び31を誘電体層21の上下対称の位置に配置することにより、多層基板の反りを更に低減することが可能である。ただし、用途、コスト、多層基板製造方法によっては必ずしも高誘電率誘電体層30及び31を誘電体層21の上下対称の位置に配置しなくても構わない。また、高誘電率誘電体層30及び31のうちいずれか一方のみを配置しても構わない。
【0080】
なお、ここで述べた素子、或いは構成材料の誘電率、寸法などの数値は絶対的なものでなく、例えば2GHzにおいて共振する容量素子の容量値Cは素子に付随する寄生インダクタンスLの大きさと1/{2π√(LC)}の式から求めればよく、その容量値を実現するための寸法も、可能な加工技術の範囲で任意に選ぶことができる。
【0081】
(発明の実施の形態2)
図2で示した、樹脂を主成分とする誘電体層20,21,22をセラミックに代えた第2の実施形態を以下に説明する。本実施形態において、誘電体層20,21,22は、アルミナを主成分とする各層厚さ100μmのセラミックで構成される。また、高誘電率誘電体層30及び31は、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)を主成分とする比誘電率80、各層厚さ40μmのセラミックで構成される。これにより、高誘電率誘電体層を内層電極板で挟んで構成される容量素子の単位面積当たりの容量値は20pF/mm2となり、第1の実施形態に示した構造で2GHzで共振する容量を構成可能とした。
【0082】
基板をセラミックで構成することにより、第1の実施形態において述べた効果に加えて、吸湿性の無い、高温での信頼性の高い多層基板を提供することが可能である。
【0083】
また、本実施形態でBSTを主成分とした高誘電率誘電体層を用いたが、高誘電率材料はBSTに限定されることは無く、酸化チタン、チタン酸ストロンチウムといった高誘電率材料を用いても同様の効果が得られることは勿論である。
【0084】
(発明の実施の形態3)
図7は、本発明を適用したデュアルバンド移動体端末のブロック図であり、図8は、同移動体端末における、本発明の受動素子内蔵基板を用いた高周波電力増幅器モジュールの断面図であり、図9は、同高周波電力増幅器モジュールの回路図である。
【0085】
図7のデュアルバンド移動体端末では、2つの異なる周波数を用いた2系統の通話が可能である。図7において、200はマイクロホン、210はベースバンド信号処理装置、220は局部発信器、230a〜230dはミキサ、240a及び240bは利得可変増幅器、250a〜250dはフィルタ、260はダイプレクサ、261a及び261bはおのおのダイプレクサ260の高周波側及び低周波側の出力、265a及び265bはそれぞれ高周波側及び低周波側の送信・受信切り替えスイッチ、270はアンテナ、280a及び280bは低雑音増幅器、290はスピーカである。更に、1は、2系統の高周波電力幅器を備えた高周波電力幅器モジュール、2は、利得可変増幅器240a,240b、高周波電力幅器モジュール1及びフィルタ250a,250cより構成される送信回路である。
【0086】
本実施形態の受動素子内蔵基板の構造については第1の実施形態と重複する部分が多いので、異なる部分のみを説明する。
【0087】
図8では、左半分に一方の系統の高周波電力幅器の入力端子近傍の断面図を示し、右半分に他方の系統の高周波電力幅器の入力端子近傍の断面図を示している。図8において、32は高誘電率誘電体層、45eは裏面導体層15に形成された電力入力端子、50v及び50wは貫通孔、61eは内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板、62eは内層導体層12に形成された基板内蔵容量極板、110hは表面導体層10に実装された受動部品である。図8におけるそれ以外については図2に準じる。
【0088】
本実施形態の受動素子内蔵基板には、図8に示した以外に、2系統の増幅器を構成するように2組の表面実装部品、基板内蔵部品等が配置されているが図示を省略する。
【0089】
図9に示した増幅器は、図3に示した高周波電力増幅モジュール回路を2個並列に配置し、電源端子45c及び45dを2個の増幅器で共用したものであり、おのおの増幅器の対応する部品の機能は図3と同様である。従って、詳細な説明は省略する。後の説明の便宜上、図9の上側の増幅器(45aを入力端子とし、45bを出力端子とする回路)を第1の周波数の増幅器と称し、下側の増幅器(45eを入力端子とし、45fを出力端子とする回路)を第2の周波数の増幅器と称する。
【0090】
次に、本実施形態の移動体通信端末の動作を説明する。図7において、マイクロホン200を介して入力された音声はベースバンド信号処理装置210にて符号化変換され、局部発信器220で生成された局部発振信号とミキサ230a或いは230cで変調され、利得可変増幅器240a或いは240bを介して高周波電力増幅器モジュール1に入力される。高周波電力増幅器モジュール1で増幅された送信信号はフィルタ250a或いは250cを介し、更に送信・受信切り替えスイッチ265a或いは265bを経てダイプレクサ260に入力され、アンテナ270を介して電波として送信される。
【0091】
一方、アンテナ260を介して受信された電波は、受信信号としてダイプレクサ260に入力され、送信・受信切り替えスイッチ265a或いは265bを経て、フィルタ250b或いは250dを介して低雑音増幅器280a或いは280bに入力される。低雑音増幅器280a或いは280bから出力された信号は、局部発信器220で生成された局部発振信号とミキサ230b或いは230dで復調され、ベースバンド信号処理装置210にて複合変換されてスピーカ29から音声として出力される。
【0092】
上記で、a或いはbの符号を用いて記述した部分においては2つの通信可能な周波数帯のうちいずれの通信周波数が選ばれているかによって、信号が異なる経路を通って処理されることを意味している。この通信周波数の選択は下記のように周囲の電波状況等の端末の状況により行なわれる。
【0093】
本実施形態の移動体通信端末は通信可能な周波数を2種類有しており、1つの周波数帯において回線の混雑等の状況により通信が困難となった場合に他の周波数において通信を行なうことが可能であるという特徴を有する。このような端末においては、2つの異なる周波数帯の周波数の比は、例えばGSM900(900MHz帯)/GSM1800(1800MHz帯)の組み合わせに見られるように、2倍程度の大きな比を有する場合が多く、1個の高周波電力モジュールで2つの異なる周波数の電力増幅を行なうことは困難である。そのため、高周波電力モジュールにおいては、図7に示すように2つの周波数帯にそれぞれ対応した2個の独立した増幅系統を1個のモジュールに収めることが行なわれる。
【0094】
次に、図8において基板内蔵容量極板63a、高誘電率誘電体層31及び基板内蔵容量極板63bにより基板内蔵容量が形成され、更に基板内蔵容量極板63aは表面導体パターン40aに貫通孔50sを介して接続され、基板内蔵容量極板64aは電力入力端子45aに貫通孔50rを介して接続されることにより、直列容量を含む受動素子80aが形成される。表面導体パターン40aは受動部品110fによって接地電極70aに接続され、受動部品110fは表面電極パターン40aと共に高周波電力増幅モジュールの第1の周波数の増幅器の入力整合回路を形成する。
【0095】
続いて、基板内蔵容量極板61e、高誘電率誘電体層32及び基板内蔵容量極板62eにより基板内蔵容量が形成され、更に基板内蔵容量極板61eは表面導体パターン40gに貫通孔50wを介して接続され、基板内蔵容量極板62eは電力入力端子45eに貫通孔50vを介して接続されることにより、直列容量を含む受動素子80gが形成される。表面電極40gは受動部品110hによって接地電極70aに接続され、受動部品110hは表面電極パターン40gと共に高周波電力増幅モジュールの第2の周波数の増幅器の入力整合回路を形成する。
【0096】
本実施例のように、異なる周波数に対応した2系統の増幅器を1つの基板上に形成する場合において、入出力端子で直流遮断するための直列容量は合計4個必要となる。一例として、第1の実施形態で用いた高誘電率誘電体層を用いて前記4個の直列容量を形成することを取り上げる。
【0097】
前記GSM900/GSM1800デュアルバンド対応高出力電力増幅モジュールを形成する場合、GSM1800用直列容量は極板寸法を1.0mm×0.8mm、貫通孔50rと50sのずらし量を0.8mmとすることで自己共振周波数を周波数帯域のほぼ中心とすることが可能であるが、GSM900用には容量値を60pF程度まで増加させる必要があるため極板寸法を1.8mm×1.8mm程度まで大きくする必要がある。その結果、モジュール内の直列容量の占める面積が大きくなり、以下の問題点を生じる。
【0098】
第1に、内層接地導体面の面積が直列容量素子の占有部分だけ削られるため、接地の効果が弱くなり、そのような接地がモジュール内での電位変動等、回路の不安定要因となる。第2に、上記の大面積の容量素子を設けた基板内では内層配線の引き回しに困難が生じる。第3に、直列容量の寸法が大きくなると、容量極板の損失が無視できなくなり、特性が劣化する。
【0099】
これらの問題点を回避するために、本実施形態では、まず、第1の周波数の増幅器の直列容量と第2の周波数の増幅器の直列容量を異なる高誘電率誘電体層31と高誘電率誘電体層32を用いて形成し、接地電極の面積を大きく取れるようにした。
【0100】
また、第1の実施形態において記述したように、容量とインダクタンスの直列回路の共振周波数が1/{2π√(LC)}となることから、高誘電率誘電体層32の単位面積当たりの容量密度を高誘電率誘電体層31のそれと比較して4倍の80pF/mm2にすることで、同一寸法の容量素子と寄生インダクタンスにより生じる共振の周波数を1/2とした。これにより、極板寸法を第1の周波数の増幅器の入・出力直列容量と同一寸法の1.0mm×0.8mm、貫通孔50vと50wのずらし量を0.8mmとして、900MHzにおいて共振する素子を実現した。
【0101】
本実施形態の受動素子内蔵基板の製造方法は、第1の実施形態に準ずる。
【0102】
以上、本実施形態では、2つの異なる周波数で動作する2系統の高周波電力増幅器を有する高周波電力増幅器モジュールにおいて、入出力の直流遮断用の直列容量をすべて基板に内蔵しながら、各々の動作周波数で直列容量とその寄生インダクタンスとの共振によって受動素子での位相回転を0にしつつ、受動素子そのものの小型化を実現した。
【0103】
なお、本実施形態において2層の高誘電率誘電体層32と高誘電率誘電体層31について、より容量密度の高い高誘電率誘電体層32が表面側に配置され、容量密度の低い高誘電率誘電体層31が裏面側に配置されているが、この配置が逆転しても同様の効果があることは上記記述より明らかである。
【0104】
(発明の実施の形態4)
樹脂を主成分とする図8で示した誘電体層20,21,22をセラミックに代えた第4の実施形態を以下に説明する。本実施形態において、誘電体層20,21,22は、アルミナを主成分とする各層厚さ100μmのセラミックで構成される。また、高誘電率誘電体層32は、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)を主成分とする比誘電率80、層厚さ10μmのセラミックで構成され、高誘電率誘電体層31は、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)を主成分とする比誘電率80、層厚さ40μmのセラミックで構成される。
【0105】
これにより、高誘電率誘電体層を内層電極板で挟んで構成される容量素子の単位面積当たりの容量値は、高誘電率誘電体層32について80pF/mm2、高誘電率誘電体層31について20pF/mm2となり、第3の実施形態に示した構造で900MHz及び1.8GHzで共振する容量を構成することができた。
【0106】
本実施形態においては、基板をセラミックで構成することにより、第3の実施形態において述べた効果に加えて、吸湿性の無い、高温での信頼性の高い多層基板を提供することが可能である。
【0107】
(発明の実施の形態5)
図10は、本発明の第5の実施形態である受動素子内蔵基板の斜視層構成図であり、図11は、図10の構造の等価回路図であり、図12はその周波数特性の図である。
【0108】
図10において、20及び21は誘電体層、30は高誘電率誘電体層、40iは誘電体層20の表面に形成された表面導体パターン、61d及び62dは基板内蔵容量極板、50k及び50lは貫通孔、73bは裏面接地導体である。
【0109】
高誘電率誘電体層30及び基板内蔵容量極板61d及び62dにより基板内蔵容量が形成され、更に基板内蔵容量極板61dは表面導体パターン40iに貫通孔50kを介して接続され、基板内蔵容量極板62dは裏面接地導体73bに貫通孔50lを介して接続されることにより、容量を含む受動素子が形成される。
【0110】
その等価回路は、図11に示した接地へのシャント受動回路となる。図11において、容量部品611bと直列に接続されたインダクタンス610bは、貫通孔50k及び50lと、基板内蔵容量極板61d及び基板内蔵容量極板62dの有する寄生インダクタンスとの和であり、端子600a及び600bは表面導体パターン40iの両端を示している。
【0111】
ところで、電力増幅器においては、基本波周波数の整数倍の周波数の高調波が発生することがある。発生した高調波は、妨害波となる。そのため、高周波電力増幅器モジュールを設計する上で、高調波に減衰を与えるフィルタ回路の設置が必要になる。
【0112】
送信周波数(基本波周波数)が2GHzの増幅器では、例えば周波数が2倍の高調波に対しては、図12に示すような4GHzで減衰を持つ(通過損失の大きい)フィルタ特性が採用される。
【0113】
従来、一般的に、上記フィルタ回路は、容量性部品と誘導性部品を直列に配置して接地し、上記容量性部品の容量値及び誘導性部品のインダクタンス値を調整し、直列共振周波数を4GHzに設定することにより実現されていた。
【0114】
一方、本発明の受動素子内蔵基板を用いて構成した高周波電力増幅器モジュールにおいては、上記シャント受動回路が高調波を減衰させるためのフィルタ回路として用いられる。容量部品611bと直列に接続されたインダクタンス610bとによる共振周波数が4GHzに設定される。
【0115】
誘導性部品のインダクタンス値は、貫通孔50kと50lの高誘電率誘電体層の層に平行な方向へのずらし量により定めることができ、設計が容易である。また、容量性部品は多層基板に内蔵されているため、受動部品を多層基板表面に実装した場合に比べ小型化が可能である。従って、本発明の受動素子内蔵基板を用いた高周波電力増幅器モジュールでは、フィルタ回路、特に高調波電力低減回路を容易に形成し、かつ、モジュールの小型化が可能となる。
【0116】
(発明の実施の形態6)
図13は、電源安定化のためのシャント容量内蔵の本発明の受動素子内蔵基板を用いて構成した高周波電力増幅器モジュールの断面図である。
【0117】
図13において、20、21及び22は誘電体層、30及び33は高誘電率誘電体層、40a、40b及び40dは表面導体層10に形成された導体パターン、45aは裏面導体層15に形成された電力入力端子、45dは裏面導体層15に形成された導体による駆動電源端子、50v〜50yは貫通孔、61eは内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板、62eは内層導体層12に形成された基板内蔵容量極板、70hは表面導体層10に形成された接地導体、72bは内層導体層12に形成された接地導体、73bは内層導体層13に形成された接地導体、75bは裏面導体層15に形成された接地導体、100は半導体素子、110c及び110fは表面導体層10に実装された受動部品、120bはボンディングワイヤである。
【0118】
本実施形態において、高誘電率誘電体層30は、第1の実施形態と同様に構成され、基板内蔵容量の容量密度は約20pF/mm2となる。一方、高誘電率誘電体層33は、エポキシ、アラミド材などの材料で構成された膜厚20μmのシート上に銅配線パターンを形成し、その上にチタン酸ストロンチウムを物理的蒸着によって1μmの厚さに形成し、更にその上に再び銅を被着して形成されており、比誘電率で高誘電率誘電体層30の2倍、誘電体厚さで1/20であり、高誘電率誘電体層30の40倍の容量密度、すなわち、約800pF/mm2を有することを特徴とする。
【0119】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの構造については、図13に断面図として示した部分以外は図1に準じており、第1の実施例と重複する部分が多いので、本実施形態特有の部分のみを図13に基づいて説明する。
【0120】
図13において、基板内蔵容量極板61e、高誘電率誘電体層30及び基板内蔵容量極板62eにより基板内蔵容量が形成され、更に基板内蔵容量極板61eは表面導体パターン40aに貫通孔50wを介して接続され、基板内蔵容量極板62eは裏面導体パターン45aに貫通孔50vを介して接続されることにより直列容量を含む受動素子が形成される。
【0121】
表面導体パターン40aは受動部品110fによって接地導体70hに接続され、受動部品110fは表面導体パターン40aと共に高周波電力増幅モジュールの入力整合回路を形成する。
【0122】
裏面導電層15に形成された駆動電源端子45dは、基板内蔵容量極板64cに貫通孔50xを介して接続され、基板内蔵容量極板64cは高誘電率誘電体層33及び接地導体面73bと共に基板内蔵シャント容量を形成し、更に基板内蔵容量極板64cは表面導体パターン40dに貫通孔50yを介して接続され、表面電極40dは受動部品110cによって電極パターン40bに接続され、表面電極パターン40bはボンディングワイヤ120bにより半導体素子100に接続され、電源供給配線が形成される。
【0123】
本実施例の受動素子内蔵基板を用いて構成した高周波電力増幅器モジュールの等価回路は図3に示す通りであるが、図3中のシャント容量110dを基板に内蔵したことが第1の実施形態と異なる。シャント容量110dは、基板内蔵容量極板64c、高誘電率誘電体層33及び接地導体面73bで構成され、800pF/mm2の高い容量密度を有する高誘電率誘電体層33を適用したことにより、1.25mm2の面積で1000pFの容量を有し、2GHzで動作する高周波電力増幅器のモジュール内電源安定化のためのシャント容量として十分な容量値を持つ。
【0124】
本実施形態により、電源安定化のためのシャント容量をモジュールに内蔵し、モジュール上の表面実装部品を減らしてモジュールを小型化しつつモジュールの動作安定度を高く保つことが可能になる。
【0125】
なお、本実施例ではコレクタ側の電源安定化のためのシャント容量のみについて詳細に記述したが、ベース側の電源安定化のためのシャント容量(図3の110e)についても同様の構成で形成することができることは明らかである。
【0126】
以上の各実施形態では、主として移動体通信用端末に用いられる高周波電力増幅器モジュール或いは移動体通信端末を構成する高周波回路部分に適用した場合について説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、高周波で動作するルータなどの回路或いはCPU(central Processing Unit)などに適応することが可能である。
【0127】
【発明の効果】
本発明によれば、寄生インダクタンスを持つ容量電極と高誘電率誘電体層とによる受動素子が多層基板に内蔵されるので、受動素子内蔵基板の小型化が可能になる。更に、受動素子が薄い高誘電率誘電体層を挟んで形成されるので受動素子内蔵基板の薄型化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る受動素子内蔵基板の第1の発明の実施の形態を説明するための斜視構成図。
【図2】図1の受動素子内蔵基板をB−B線に沿って切断した断面図。
【図3】第1の実施形態の受動素子内蔵基板を用いて構成した高周波増幅モジュールを説明するための回路図。
【図4】第1の実施形態の受動素子内蔵基板における基板内蔵受動素子を説明するための図。
【図5】第1の実施形態の受動素子内蔵基板における基板内蔵受動素子の効果の説明するための曲線図。
【図6】図1の受動素子内蔵基板をC−C線に沿って切断した断面図。
【図7】本発明の第3の実施形態を説明するためのブロック図。
【図8】本発明の第3の実施形態を説明するための断面図。
【図9】本発明の第3の実施形態を説明するための回路図。
【図10】本発明の第5の実施形態を説明するための斜視構成図。
【図11】図10の構造の等価回路図。
【図12】図11に示した等価回路の信号透過量の周波数依存性を説明するための曲線図。
【図13】本発明の第6の実施形態を説明するための断面図。
【符号の説明】
1…高周波電力増幅器モジュール、2…送信回路、10…表面導体層、11,12,13,14…内層導体層、15…裏面導体層、20〜22…誘電体層、30〜33…高誘電率誘電体層、40…表面導体パターン、43…内層導体パターン、45a…電力入力端子、45b…電力出力端子、45c…利得制御電源端子、45d…駆動電源端子、50…貫通孔、61〜64…基板内蔵容量極板、70,72,73,75…接地導体、80…基板内蔵受動素子、100…半導体素子、101…トランジスタ、102,110…受動部品。
Claims (10)
- 複数の誘電体層を積層してなる多層基板を具備し、該複数の誘電体層は該多層基板の表面側の誘電体層と裏面側の誘電体層と中間の誘電体層とからなり、
該中間の誘電体層の内の少なくとも1つは、他の誘電体層よりも誘電率が高く、かつ、厚さが薄い高誘電率誘電体層であり、
該高誘電率誘電体層を挟んでその表面側及び裏面側にそれぞれ第1の容量極板及び第2の容量極板を具備し、
該高誘電率誘電体層の表面側に接している誘電体層に形成された、該第1の容量極板への電気的接続のための第1の貫通孔と、該高誘電率誘電体層の裏面側に接している誘電体層に形成された、該第2の容量極板への電気的接続のための第2の貫通孔とを具備し、
上記第1の貫通孔の中心と上記第2の貫通孔の中心が上記高誘電率誘電体層の面に並行な方向に該第1及び第2の貫通孔の直径以上にずれていることを特徴とする受動素子内蔵基板。 - 上記第1の容量極板及び上記第2の容量極板と該第1の貫通孔及び第2の貫通孔とにより、容量素子とインダクタンス素子を直列に接続した受動素子が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の受動素子内蔵基板。
- 上記受動素子の、上記容量素子と上記インダクタンス素子による共振周波数が900MHz±90MHzの範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の受動素子内蔵基板。
- 上記受動素子の、上記容量素子と上記インダクタンス素子による共振周波数が1800MHz±180MHzの範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の受動素子内蔵基板。
- 上記第1の容量極板が上記多層基板の表面側に形成された第1の導体に上記第1の貫通孔を通って接続され、上記第2の容量極板が該多層基板の裏面側に形成された第2の導体に上記第2の貫通孔を通って接続されていることを特徴とする請求項2に記載の受動素子内蔵基板。
- 複数の誘電体層を積層してなる多層基板を具備し、該複数の誘電体層は該多層基板の表面側の誘電体層と裏面側の誘電体層と中間の誘電体層とからなり、
該中間の誘電体層の内の少なくとも2つは、他の誘電体層よりも誘電率が高く、かつ、厚さが薄い高誘電率誘電体層であり、
該少なくとも2つの高誘電率誘電体層の各高誘電率誘電体層を挟んでその表面側及び裏面側にそれぞれ第1の容量極板及び第2の容量極板を具備し、
該各高誘電率誘電体層の表面側に接している誘電体層に形成された、該第1の容量極板への電気的接続のための第1の貫通孔と、該各高誘電率誘電体層の裏面側に接している誘電体層に形成された、該第2の容量極板への電気的接続のための第2の貫通孔とを具備し、
上記第1の貫通孔の中心と上記第2の貫通孔の中心が上記各高誘電率誘電体層の面に並行な方向に該第1及び第2の貫通孔の直径以上にずれていることを特徴とする受動素子内蔵基板。 - 上記第1の容量極板及び上記第2の容量極板と該第1の貫通孔及び第2の貫通孔とにより、容量素子とインダクタンス素子を直列に接続した受動素子が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の受動素子内蔵基板。
- 上記少なくとも2つの高誘電率誘電体層の内の第1の高誘電率誘電体層の比誘電率を該第1の高誘電率誘電体層の厚さで割った値が、上記少なくとも2つの高誘電率誘電体層の内の第2の高誘電率誘電体層の比誘電率を該第2の高誘電率誘電体層の厚さで割った値の2倍以上であることを特徴とする請求項7に記載の受動素子内蔵基板。
- 上記第1の高誘電率誘電体層における上記受動素子の、上記容量素子と上記インダクタンス素子による共振周波数が900MHz±90MHzの範囲にあり、上記第2の高誘電率誘電体層における上記受動素子の、上記容量素子と上記インダクタンス素子による共振周波数が1800MHz±180MHzの範囲にあることを特徴とする請求項8に記載の受動素子内蔵基板。
- 上記少なくとも2つの高誘電率誘電体層の内の第1の高誘電率誘電体層における上記第1の容量極板が上記多層基板の表面側に形成された第1の導体に上記第1の貫通孔を通って接続され、上記第2の容量極板が該多層基板の裏面側に形成された接地導体に上記第2の貫通孔を通って接続され、
上記少なくとも2つの高誘電率誘電体層の内の第2の高誘電率誘電体層における上記第1の容量極板が上記多層基板の表面側に形成された第2の導体に上記第1の貫通孔を通って接続され、上記第2の容量極板が該多層基板の裏面側に形成された第3の導体に第2の貫通孔を通って接続されていることを特徴とする請求項6に記載の受動素子内蔵基板。
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