JP2004356196A - 酸化物半導体発光素子 - Google Patents

酸化物半導体発光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】エピタキシャル層の欠陥を低減出来、高信頼性と高発光効率とを有する酸化物半導体発光素子を提供する。
【解決手段】サファイア基板101とCd0.05Zn0.95O発光層105との間に、ZnInバッファ層102およびn型ZnOバッファ層103を形成している。このZnInバッファ層102は、ウルツ鉱型結晶構造を有するZnO系半導体との親和性に優れると共に、低電気抵抗で透明なn型半導体である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば発光ダイオードや半導体レーザなどの半導体発光素子に関し、さらに詳しくは、信頼性に優れ、低電圧で動作する酸化物半導体発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化亜鉛(ZnO)は、約3.4eVのバンドギャップエネルギーを有する直接遷移型半導体で、励起子結合エネルギーが60meVと極めて高く、また原材料が安価、環境や人体に無害で成膜手法が簡便であるなどの特徴を有し、高効率・低消費電力で環境性に優れた発光デバイスを実現出来る可能性がある。
【0003】
なお、以下においてZnO系半導体とは、ZnOおよびこれを母体としたMgZnOあるいはCdZnOなどで表される混晶を含めるものとする。
【0004】
ZnO系半導体は、青色〜紫外領域の発光素子として既に実用化されているIII族窒化物半導体と同じ六方晶の結晶構造を有し、熱膨張係数や格子定数がGaNに極めて近いことから、III族窒化物半導体デバイスで一般に用いられているサファイアやSiなどの基板上にエピタキシャル成長し、発光素子を作製する研究がなされている。
【0005】
例えば、特開2001−44499号公報(特許文献1)には、Si基板上にシリコン窒化膜を形成した後、このシリコン窒化膜上にZnO系半導体薄膜を結晶成長する技術が開示されている。また、特開2001−44500号公報(特許文献2)には、A面(11−20)を主面とするサファイア基板上にZnO系半導体薄膜を結晶成長する技術が開示されている。
【0006】
これらSiやサファイアはコストが低く、極めて高品質な基板結晶を得ることが出来るが、ZnO系半導体とは格子定数差が十数%以上と極めて大きく、ZnO系半導体のエピタキシャル層中には多くの結晶欠陥が発生する。
【0007】
このような基板とエピタキシャル層との格子不整合による欠陥を低減するために、半導体デバイスにおいては、基板とエピタキシャル層との間にバッファ層を介在させ、格子歪や成長初期の表面荒れを低減させて、良質なZnO系半導体のエピタキシャル層を得る技術が一般的に用いられている。
【0008】
例えば、国際公開第00/16411号パンフレット(特許文献3)では、MgZnO、Al、低温成長させたZnOまたは低温成長させたAlGaNなどのバッファ層を用いて、ZnO系半導体のエピタキシャル層を得る技術が開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−44499号公報
【特許文献2】
特開2001−44500号公報
【特許文献3】
国際公開第00/16411号パンフレット
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献3のバッファ層では、界面エネルギーの減少割合が小さいため、格子定数差の大きい上記基板上にエピタキシャル成長したZnO系半導体の結晶性が顕著に改善されないという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の課題は、エピタキシャル層の欠陥を低減出来、高信頼性と高発光効率とを有する酸化物半導体発光素子を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ZnO系半導体を用いた発光素子について、格子歪などに起因したエピタキシャル層の結晶欠陥を低減する技術について鋭意検討した結果、αβO(ZnO)で表されるZnO系半導体(α,β:III族元素、n:1以上の自然数)を含むバッファ層を設けることが、結晶欠陥の抑制に極めて効果的であることを見い出し本発明に至った。
【0013】
第1の発明の酸化物半導体発光素子は、基板上に、ZnO系半導体から成る活性層が形成された酸化物半導体発光素子において、上記基板と上記活性層との間に形成され、αβO(ZnO)で表されるZnO系半導体(α,β:III族元素、n:1以上の自然数)を含むn型バッファ層を備えたことを特徴としている。
【0014】
上記構成の酸化物半導体発光素子によれば、上記αβO(ZnO)で表されるZnO系半導体は、ウルツ鉱型結晶構造を有するZnO系半導体との親和性に優れると共に、低電気抵抗で透明なn型半導体である。したがって、上記αβO(ZnO)で表されるZnO系半導体を含むn型バッファ層上に、ZnO系半導体から成るエピタキシャル層を形成した場合、エピタキシャル層において格子歪を緩和して欠陥の増殖を抑止出来る。
【0015】
また、上記αβO(ZnO)で表されるZnO系半導体は、低電気抵抗で透明なn型半導体であるから、基板およびエピタキシャル層との導電性を保つと共に、発光効率を向上させることが出来る。
【0016】
以上より、信頼性に優れ発光効率の高い酸化物半導体発光素子を作製出来る。
【0017】
上記α,βを構成するIII族元素は、IIIB族元素であることが好ましく、InあるいはGaであることが更に好ましい。
【0018】
なお、上記「活性層」は、発光ダイオード素子の場合には「発光層」と称されるが、発光を司る層という意味において同義であるので、以下においては特に区別しない。
【0019】
第2の発明の酸化物半導体発光素子は、基板上に、ZnO系半導体から成る活性層が形成された酸化物半導体発光素子において、上記基板と上記活性層との間に、ZnInx+3で表されるZnO系半導体を含むn型バッファ層を備えたことを特徴としている。
【0020】
上記構成の酸化物半導体発光素子によれば、上記ZnInx+3で表わされるInとZnOとの混晶は、ウルツ鉱型結晶構造を有するZnO系半導体との親和性に優れる。したがって、上記ZnInx+3で表されるZnO系半導体を含むn型バッファ層上に、ZnO系半導体から成るエピタキシャル層を形成した場合、高品質なエピタキシャル層を得ることが出来る。
【0021】
また、上記ZnO系半導体との面内格子定数差が異なる基板を用いた場合でも、高品質なエピタキシャル層をn型バッファ層上に成長出来る。
【0022】
また、完全格子整合基板であるZnOを用いる場合でも、熱膨張係数差による格子歪がn型バッファ層上のエピタキシャル層に生じるのを抑止出来る。
【0023】
また、InはZnとイオン半径が近く弾性定数が小さいので、エピタキシャル層において格子歪を緩和して欠陥の増殖を抑止する効果が極めて高い。
【0024】
以上より、信頼性に優れ発光効率の高い酸化物半導体発光素子を作製出来る。
【0025】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記第1または第2の発明の酸化物半導体発光素子において、上記n型バッファ層と上記活性層との間に形成され、ZnO系半導体から成るn型クラッド層と、上記活性層上に形成され、ZnO系半導体から成るp型クラッド層と、上記p型クラッド層上に形成され、ZnO系半導体から成るp型コンタクト層とを備えている。
【0026】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、上記n型クラッド層とp型クラッド層とで活性層を挟んでいるので、発光効率を更に高めることが出来る。
【0027】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記第2の発明の酸化物半導体発光素子において、上記ZnInx+3はZnInである。
【0028】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、上記ZnInx+3で表わされる混晶の中で、ZnInは最も安定して得られる組成であり、結晶性に優れる。したがって、ZnIn上に成長したZnO系半導体も結晶性に優れる。つまり、結晶性に優れたZnO系半導体結晶をn型バッファ層上に得ることが出来る。
【0029】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記第2の発明の酸化物半導体発光素子において、上記ZnInx+3のZn組成比xは3以上15以下の奇数である。
【0030】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、上記ZnInx+3で表わされる混晶の中で、Zn組成比xが3〜15の範囲内の奇数である混晶は、結晶成長条件を制御することで安定に得られるため結晶性に優れる。したがって、上記Zn組成比xが3以上15以下の奇数であるZnInx+3上に成長したZnO系半導体も結晶性に優れる。つまり、結晶性に優れたZnO系半導体結晶をn型バッファ層上に得ることが出来る。
【0031】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記第1または第2の発明の酸化物半導体発光素子において、上記n型バッファ層の層厚は1nm以上3μm以下である。
【0032】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、上記n型バッファ層は、厚みが1nm以上であると、バッファ層として十分な機能を有する。
【0033】
また、上記n型バッファ層は、厚みが3μm以下であると、不純物散乱による発光特性低下を生じない。
【0034】
したがって、上記n型バッファ層厚を1nm以上3μm以下にすることにより、n型バッファ層のバッファ機能が損なわれるのを阻止出来、かつ、不純物散乱による発光特性の低下を阻止出来る。
【0035】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記第1または第2の発明の酸化物半導体発光素子において、上記基板は、ZnO、GaN、SiおよびSiCのうちの1つから成っている。
【0036】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、上記基板は、ZnO、GaN、SiおよびSiCのうちの1つから成っているので、導電性を有し、電気抵抗が低い。したがって、上記基板に直接電極を形成することが出来ると共に、素子の電気抵抗を下げることが出来る。
【0037】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記第1または第2の発明の酸化物半導体発光素子において、上記基板は絶縁性基板であり、上記n型バッファ層は、上記活性層の側方において露出された露出部を有し、上記露出部上にn型オーミック電極が形成されている。
【0038】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、高品質で安価な絶縁性基板を用いる場合でも、n型バッファ層の一部である露出部上にn型オーミック電極を形成することにより、動作電圧の上昇を抑えて信頼性と発光特性に優れた酸化物半導体発光素子を作製することが出来る。
【0039】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記露出部はZnOから成っている。
【0040】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、上記露出部上にn型オーミック電極を形成する場合、例えばZnInx+3上に直接電極を形成するよりも、ZnO上に電極を形成する方が、n型オーミック電極の接触抵抗を低減出来る。したがって、省電力性に優れた酸化物半導体発光素子を作製することが出来る。
【0041】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記絶縁性基板は、サファイア、スピネルおよびLiGaOのうちの1つから成っている。
【0042】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、上記サファイアやスピネルから成る基板は安価で高品質な絶縁性異種基板である。また、上記LiGaOはZnO系半導体との格子不整合が極めて小さい。したがって、上記サファイア、スピネルおよびLiGaOのうちの少なくとも1つを含む絶縁性基板を用いることにより、より結晶性に優れたZnO系半導体結晶をn型バッファ層上に得ることが出来る。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の酸化物半導体発光素子を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0044】
(実施形態1)
本実施形態1では、ZnO系発光ダイオード素子に本発明を適用について説明する。
【0045】
図1に、本実施形態1の発光ダイオード素子の模式断面図を示す。
【0046】
上記発光ダイオード素子では、サファイアC面(0001)を主面とするサファイア基板101上に、厚さ0.1μmのZnInバッファ層102、Ga(ガリウム)が3×1018cm−3の濃度でドーピングされた厚さ0.1μmのn型ZnOバッファ層103、Gaが1×1018cm−3の濃度でドーピングされた厚さ1μmのn型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層104、ノンドープで厚さ0.1μmのCd0.05Zn0.95O発光層105、N(窒素)が1×1020cm−3の濃度でドーピングされた厚さ1μmのp型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層106、Nが5×1020cm−3の濃度でドーピングされた厚さ0.3μmのp型ZnOコンタクト層107がこの順で積層されている。
【0047】
本実施形態1では、サファイア基板101が基板の一例に、n型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層104がn型クラッド層の一例に、Cd0.05Zn0.95O発光層105が活性層の一例に、p型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層106がp型クラッド層の一例に、p型ZnOコンタクト層107がp型コンタクト層の一例にそれぞれ相当する。また、上記ZnInバッファ層102とn型ZnOバッファ層103とがn型バッファ層の一例を構成している。
【0048】
上記n型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層104から図中上側(サファイ基板101とは反対側)に向ってp型ZnOコンタクト層107までの層を形成するためのエピタキシャル層の一部がエッチングされて、n型ZnOバッファ層103の一部が露出している。つまり、上記n型ZnOバッファ層103は、Cd0.05Zn0.95O発光層105の側方において露出した露出部103aを有している。この露出部103aの表面上には、n型オーミック電極の一例としての厚さ100nmのn型オーミック電極110を形成している。上記n型オーミック電極110はAl(アルミニウム)で構成している。
【0049】
上記p型ZnOコンタクト層107の主表面全面には、Ni(ニッケル)から成る透光性の厚さ15nmのp型オーミック電極108が積層されている。そして、上記p型オーミック電極108には、厚さ100nmのボンディング用Au(金)パッド電極109がp型オーミック電極108より小さい面積で形成されている。
【0050】
本発明は、基板とn型クラッド層との間に、αβO(ZnO)で表されるZnO系半導体(α,β:III族元素、n:1以上の自然数)を含むn型バッファ層が形成されていることに特徴を有している。特に、上記n型バッファ層は、ZnInx+3で表されるZnO系半導体を含むn型バッファ層である。
【0051】
本実施形態1の発光ダイオード素子をチップ状に分離し、Ag(銀)ペーストでリードフレームに取り付けてモールドし発光させたところ、発光ピーク波長400nmの青紫色発光が得られた。
【0052】
図2に、ZnInバッファ層102の層厚と発光ダイドード素子の発光強度との関係を示すと共に、ZnInバッファ層102の層厚と動作電圧との関係を示す。なお、図2において、上記発光ダイドード素子の発光強度の変化を実線で、上記動作電圧の変化を点線でそれぞれ図示している。
【0053】
図2から判るように、上記ZnInバッファ層102の層厚の増大に伴って発光強度と動作電圧が向上する。しかし、上記ZnInバッファ層102の層厚が3μmを越えると、発光強度が急激に低下する。また、上記ZnInバッファ層102の層厚が厚くなり過ぎると、ZnInバッファ層102において散乱損失が生じたり結晶性がかえって悪化してしまう。
【0054】
また、上記ZnInバッファ層102の層厚が1nm未満だと、ZnInバッファ層102はバッファ層としての機能を十分に発揮することができない。つまり、上記ZnInバッファ層102上に形成したエピタキシャル層の欠陥を低減することが出来ない。
【0055】
したがって、上記ZnInバッファ層102の層厚は1nm以上3μm以下が好ましい。
【0056】
比較例として、n型ZnOバッファ層103を形成せずZnInバッファ層102上に直接n型オーミック電極110を形成した以外は本実施形態と同様にして発光ダイオード素子を作製した。この比較例は、本実施形態1に比べて動作電圧が0.1V増大していた。
【0057】
本実施形態1において、n型ZnOバッファ層103はn型コンタクト層としての役割も兼ねている。したがって、上記n型オーミック電極110の接触抵抗を低減させる観点上、上記ZnInバッファ層102上に直接n型オーミック電極110を形成するよりも、n型ZnOバッファ層103上にn型オーミック電極110を形成する方が好ましい。
【0058】
本実施形態1で用いたサファイア基板101は、低コストで品質に優れた絶縁性基板であるが、ZnO系半導体の格子不整合が大きく、従来は結晶性に優れたZnO系半導体層をエピタキシャル成長することが困難であった。しかし、本発明のZnInx+3バッファ層を形成することによって格子歪や結晶欠陥が抑止され、特性に優れた発光素子を作製出来る。
【0059】
また、その他の絶縁体基板材料として、スピネルやLiGaOなどから成る基板を用いた場合においても、本発明のZnInx+3バッファ層を形成することによって本実施形態1と同様の効果が得られる。
【0060】
更に、基板に入射した発光を乱反射させるために、研磨やエッチングなどの公知の手法で基板裏面に凹凸を形成すれば、光取り出し効率が向上するので好ましい。
【0061】
以下、本実施形態において本発明の効果を最大限に得るための他の構成について記すが、その他の実施形態において任意に組み合わせて用いてもよい。
【0062】
本発明の酸化物半導体発光素子は、固体あるいは気体原料を用いたMBE(分子線エピタキシ)法、レーザMBE法、MOCVD(有機金属気相成長)法などの結晶成長手法で作製することが出来る。これらの方法の中で、レーザMBE法は、原料ターゲットと、この原料ターゲットの表面をアブレーションすることで成長させた薄膜との間において組成ずれが小さく、またZnGaなどの意図しない副生成物の生成を抑えることが出来るので特に好ましい。
【0063】
p型ZnO系半導体層にドーピングするアクセプタ不純物としては、I族元素のLi、Cu(銅)およびAgや、V族元素のN、As(砒素)およびP(リン)などを用いることが出来るが、本発明の効果を最大限に得るためには、活性化率が高いN、LiおよびAgが特に好ましく、更にNはNをプラズマ化し結晶成長中に照射する手法によって、結晶性を良好に保って高濃度ドーピングが行えるので好ましい。
【0064】
n型ZnO系半導体層にドーピングするドナー不純物にはIII族元素のB(ホウ素)、Al、GaおよびIn(インジウム)などを用いることが出来るが、ZnO系半導体中での活性化率が高いGaまたはAlが好ましい。
【0065】
発光ダイオード素子の発光効率を向上させるには、p型クラッド層上に直接p型オーミック電極を形成せず、p型コンタクト層を設けて低電気抵抗化し電流広がりを均一化することが好ましい。つまり、上記p型クラッド層とp型オーミック電極との間にp型コンタクト層を形成すると、素子の電気抵抗を低減出来ると共に、電流広がりを均一化出来るので好ましい。
【0066】
コンタクト層の材料には、結晶性に優れキャリア濃度を高く出来るZnOを用いることが好ましい。
【0067】
また、p型ZnOコンタクト層に過剰にアクセプタ不純物ドーピングすると結晶性劣化が顕著となり、本発明の効果が減少するので、p型ZnOコンタクト層は5×1016〜5×1019cm−3のキャリア濃度範囲となるようドーピングされることが好ましい。
【0068】
p型オーミック電極の材料には、Ni、Pt(白金)、Pd(パラジウム)およびAuなどを用いることが出来るが、Ni、Pt(白金)、PdおよびAuなどの中でも低電気抵抗で密着性の良いNiが好ましい。また、上記p型オーミック電極は、複数の金属材料を合金化して形成してもよい。
【0069】
また、高い発光効率を得るためには、本実施形態1で示したように、p型オーミック電極が透光性を有するよう形成して光取り出し効率を向上させることが好ましい。良好なオーミック特性と高い透光性を両立するp型オーミック電極の厚みとしては5〜200nmの範囲が好ましく、30〜100nmの範囲が更に好ましい。
【0070】
p型オーミック電極の形成後にアニール処理を行うと、p型オーミック電極の密着性が向上すると共に、p型オーミック電極の接触抵抗が低減するので好ましい。このようなアニール効果を、ZnO結晶に欠陥を生じずに得るには、アニール処理の温度は300〜400℃の範囲内が好ましい。また、上記アニール処理における雰囲気はOまたは大気雰囲気中が好ましく、Nでは逆に抵抗が増大するので好ましくない。
【0071】
パッド電極は、透光性p型オーミック電極上の一部に、p型オーミック電極より小さな面積で形成すれば、透光性電極の効果を損なわずにリードフレームへの実装プロセスが容易になるので好ましい。そして、上記パッド電極の材料としてはボンディングが容易でZnO中へ拡散してもドナー不純物とならないAuが好ましい。また、上記p型オーミック電極とパッド電極との間に密着性や光反射性を向上させる目的で他の金属層を介してもよい。
【0072】
n型オーミック電極の材料には、Ti(チタン)、Cr(クロム)およびAlなどを用いることが出来る。Ti、CrおよびAlなどの中でも、低電気抵抗でコストの低いAlまたは密着性の良いTiが好ましい。また、上記n型オーミック電極は、Ti、CrおよびAlなどの複数の金属材料を合金化して形成してもよい。
【0073】
Al電極は青〜紫外光の反射率が高いため、裏面全面に形成しても光取り出し効率は高いが、電極を任意の形状にパターニングし、露出した基板裏面をAgペーストなどでリードフレームに接着しても良く、Agの方が青〜紫外光の反射率がAlより高いため好ましい。
【0074】
その他の構成は任意であり、本実施形態によって限定されるものではない。
【0075】
(実施形態2)
本実施形態2では、上記実施形態1のZnInx+3バッファ層102におけるInとZnOとの混晶比を変化させ、発光ダイオード素子の素子寿命を調べた。
【0076】
図3に、上記ZnInx+3バッファ層102のZn組成比xと発光ダイオード素子の寿命との関係を示す。ここで素子寿命は、20mAの動作電流における輝度が20%に低減する時間とし、バッファ層102がZnO(すなわち、ZnInx+3混晶においてInの比率が0)の場合を基準値(100)とした。
【0077】
図3から、ZnInをバッファ層として用いた場合が最も信頼性が高く、次いでZn組成比が3以上15以下の奇数である場合に素子寿命が向上することが判った。
【0078】
これらの混晶は、ZnInx+3の中で安定に得られる相であり、結晶性に優れているため、その上に成長したZnO系半導体層も結晶性に優れ、素子寿命が向上したものと考えられる。
【0079】
(実施形態3)
図4に、本実施形態3の発光ダイオード素子の模式断面図を示す。
【0080】
上記発光ダイオード素子では、亜鉛面を主面とするZnO単結晶基板201上に、ZnInバッファ層202、Gaが3×1018cm−3の濃度でドーピングされたn型ZnOバッファ層203、Gaが1×1018cm−3の濃度でドーピングされたn型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層204、ノンドープでCd0.05Zn0.95O発光層205、Nが1×1020cm−3の濃度でドーピングされたp型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層206、Nが5×1020cm−3の濃度でドーピングされたp型ZnOコンタクト層207がこの順で積層されている。
【0081】
本実施形態3では、ZnO単結晶基板201が基板の一例に、n型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層204がn型クラッド層の一例に、Cd0.05Zn0.95O発光層105が活性層の一例に、p型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層206がp型クラッド層の一例に、p型ZnOコンタクト層207がp型コンタクト層の一例にそれぞれ相当する。また、上記ZnInバッファ層202とn型ZnOバッファ層203とがn型バッファ層の一例を構成している。
【0082】
上記p型ZnOコンタクト層207の主表面全面には、Niから成る透光性のp型オーミック電極208を形成している。また、上記p型オーミック電極208上には、Auから成るパッド電極209をp型オーミック電極208より小さい面積で形成している。
【0083】
更に、上記ZnO単結晶基板201の導電性を生かしてn型オーミック電極210をZnO単結晶基板201の裏面下に形成している。
【0084】
本実施形態3の発光ダイオード素子をチップ状に分離し、Agペーストでリードフレームに取り付けてモールドし発光させたところ、発光ピーク波長400nmの青紫色発光が得られ、ZnInバッファ層102を形成しない場合に比べて発光強度が5%増大し、動作電圧が0.5V低減し、素子寿命が10%向上した。
【0085】
本実施形態3のように導電性基板を用いると、基板裏面にn型オーミック電極を形成出来、電極の接触抵抗が低くなって動作電圧が低減するので好ましい。
【0086】
このような基板には、SiやGaN、SiCなどを用いることが出来るが、ZnO系半導体が有する高い発光効率を最大限に得るためには、下記(1),(2)の条件を満たすことが好ましい。
(1) ZnOとの面内格子定数差が3%以内であり、非発光中心となる欠陥を低減出来る。
(2) 発光波長に対応する吸収係数が低い。
【0087】
本実施形態3で用いたZnO単結晶基板201は、上記(1),(2)の条件を全て満し、最も好ましい。
【0088】
ZnO単結晶基板上に成長されたZnO系半導体は格子歪を殆んど有しないが、MgZnOやCdZnOなどの混晶は、ZnO基板との間に若干乍ら格子定数差と熱膨張係数差を有し、これが結晶欠陥などを生じる要因となる。本発明のZnInx+3バッファ層を形成することによって結晶欠陥が抑止され、特性に優れた発光素子を作製出来る。
【0089】
(実施形態4)
本実施形態4では、ZnO系半導体レーザ素子に本発明を適用した例について説明する。
【0090】
図5に、本実施形態4のZnO系半導体レーザ素子の模式斜視図を示す。
【0091】
上記半導体レーザ素子は、Si(0001)面を主面としたn型6H−SiC単結晶基板301上に、厚さ0.1μmのZnInバッファ層302、Gaドーピング濃度が1×1018cm−3で厚さ1.0μmのn型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層303、Gaドーピング濃度が5×1017cm−3で厚さ30nmのn型ZnO光ガイド層304、ノンドープ量子井戸活性層305、Nドーピング濃度が5×1018cm−3で厚さ30nmのp型ZnO光ガイド層306、Nドーピング濃度が1×1020cm−3で厚さ1.2μmのp型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層307、Nドーピング濃度が5×1020cm−3で厚さ0.5μmのp型ZnOコンタクト層308が積層されている。
【0092】
上記量子井戸活性層305は、厚さ5nmのZnO障壁層と、厚さ6nmのCd0.1Zn0.9O井戸層とが交互に積層されて成っている。上記ZnO障壁層は2層ある一方、Cd0.1Zn0.9O井戸層は3層ある。
【0093】
上記p型ZnOコンタクト層308、および、p型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層307の上部は、リッジストライプ形状にエッチング加工され、側面がGaが1×1018cm−3の濃度でドーピングされたMg0.3Zn0.7Oより成るn型電流ブロック層309によって埋め込まれている。つまり、リッジストライプ形状の部分の両側には、n型電流ブロック層309を形成している。
【0094】
また、上記n型6H−SiC基板301の下にはn型オーミック電極310が形成され、p型ZnOコンタクト層308の上にはp型オーミック電極311が形成されている。
【0095】
本実施形態4の構造を作製後、n型6H−SiC基板301を劈開して端面ミラーを形成し、保護膜を真空蒸着した後、素子を300μmに分離した。
【0096】
本実施形態4の半導体レーザ素子に電流を流したところ、端面から波長400nmの青色発振光が得られ、ZnInバッファ層302を形成しない場合に比べて発振閾値電流が15%減少し、動作電圧が0.2V低減し、素子寿命(光出力5mWにおいて動作電流が20%増大する時間で定義した)が30%向上した。
【0097】
本実施形態4にて示したように、本発明は発光ダイオード素子のみならず、半導体レーザ素子のようにエネルギー密度が高く欠陥が増殖し易い発光素子においても信頼性向上に絶大が効果を発揮する。
【0098】
本実施形態4では、ZnInバッファ層302上に直接n型MgZnOクラッド層303を成長したが、実施形態3におけるのと同様にn型ZnOバッファ層を介在させてもよい。
【0099】
本発明は、ダブルへテロ構造の酸化物半導体発光素子に適用してもよいし、シングルへテロ構造の酸化物半導体発光素子に適用してもよい。つまり、本発明の酸化物半導体発光素子は、ダブルへテロ構造を有してもよいし、シングルへテロ構造を有してもよい。
【0100】
【発明の効果】
以上より明らかなように、第1の発明の酸化物半導体発光素子によれば、基板上に少なくとも、ZnO系半導体で構成されるn型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型コンタクト層を備えた酸化物半導体発光素子であって、上記基板と上記n型クラッド層の間に、αβO(ZnO)で表されるZnO系半導体(α,β:III族元素、n:1以上の自然数)を含むn型バッファ層が形成されているので、基板およびエピタキシャル層との導電性を保って格子歪を緩和し欠陥の増殖を抑止し、信頼性に優れ発光効率の高い酸化物半導体発光素子を作製出来る。
【0101】
また、本発明の第2の酸化物半導体発光素子によれば、基板上に少なくとも、ZnO系半導体で構成されるn型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型コンタクト層を備えた酸化物半導体発光素子において、上記基板と上記n型クラッド層の間に、ZnInx+3で表されるZnO系半導体を含むn型バッファ層が形成されているので、格子歪や欠陥増殖が抑止された高品質なZnO系半導体エピタキシャル薄膜を得ることが出来、信頼性に優れ発光効率の高い酸化物半導体発光素子を作製出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施形態1の発光ダイオード素子の模式断面図である。
【図2】図2はZnInバッファ層の層厚と発光ダイドード素子の発光強度および動作電圧との関係を示すグラフである。
【図3】図3はZnInx+3バッファ層のZn組成比xと発光ダイオード素子の寿命を示すグラフである。
【図4】図4は本発明の実施形態3の発光ダイオード素子の模式断面図である。
【図5】図5は本発明の実施形態4のZnO系半導体レーザ素子の模式斜視図である。
【符号の説明】
101 サファイア基板
102,202 ZnInバッファ層
103,203 n型ZnOバッファ層
105,205 Cd0.05Zn0.95O発光層
201 ZnO単結晶基板
301 6H−SiC単結晶基板
302 ZnInバッファ層
305 量子井戸活性層

Claims (10)

  1. 基板上に、ZnO系半導体から成る活性層が形成された酸化物半導体発光素子において、
    上記基板と上記活性層との間に形成され、αβO(ZnO)で表されるZnO系半導体(α,β:III族元素、n:1以上の自然数)を含むn型バッファ層を備えたことを特徴とする酸化物半導体発光素子。
  2. 基板上に、ZnO系半導体から成る活性層が形成された酸化物半導体発光素子において、
    上記基板と上記活性層との間に、ZnInx+3で表されるZnO系半導体を含むn型バッファ層を備えたことを特徴とする酸化物半導体発光素子。
  3. 請求項1または2に記載の酸化物半導体発光素子において、上記n型バッファ層と上記活性層との間に形成され、ZnO系半導体から成るn型クラッド層と、
    上記活性層上に形成され、ZnO系半導体から成るp型クラッド層と、
    上記p型クラッド層上に形成され、ZnO系半導体から成るp型コンタクト層とを備えたことを特徴とする酸化物半導体発光素子。
  4. 請求項2に記載の酸化物半導体発光素子において、
    上記ZnInx+3はZnInであることを特徴とする酸化物半導体発光素子。
  5. 請求項2に記載の酸化物半導体発光素子において、
    上記ZnInx+3のZn組成比xは3以上15以下の奇数であることを特徴とする酸化物半導体発光素子。
  6. 請求項1または2に記載の酸化物半導体発光素子において、上記n型バッファ層の層厚は1nm以上3μm以下であることを特徴とする酸化物半導体発光素子。
  7. 請求項1または2に記載の酸化物半導体発光素子において、上記基板は、ZnO、GaN、SiおよびSiCのうちの1つから成っていることを特徴とする酸化物半導体発光素子。
  8. 請求項1または2に記載の酸化物半導体発光素子において、
    上記基板は絶縁性基板であり、
    上記n型バッファ層は、上記活性層の側方において露出された露出部を有し、
    上記露出部上にn型オーミック電極が形成されていることを特徴とする酸化物半導体発光素子。
  9. 請求項8に記載の酸化物半導体発光素子において、
    上記露出部はZnOから成っていることを特徴とする酸化物半導体発光素子。
  10. 請求項8に記載の酸化物半導体発光素子において、
    上記絶縁性基板は、サファイア、スピネルおよびLiGaOのうちの1つから成っていることを特徴とする酸化物半導体発光素子。
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