JP2004355957A - スパークプラグ - Google Patents

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Abstract

【課題】中心電極および接地電極の少なくとも一方の対向部をPtを主成分とする貴金属チップにより構成したスパークプラグにおいて、当該貴金属チップにてより高温雰囲気まで白金粒の成長を抑制できるようにする。
【解決手段】中心電極30と、中心電極30の外側に設けられた絶縁体20と、絶縁体30の外側に設けられた取付金具10と、取付金具10に一端が結合され他端側が放電ギャップ50を隔てて中心電極30と対向するように配置された接地電極40とを備え、接地電極40および中心電極30における互いに対向する部位の少なくとも一方は、電極母材に接合されたPtと他の元素との合金からなる貴金属チップ43であるスパークプラグ100において、貴金属チップ43は、合金の第1成分をPtとし、第2成分をReとしたものである。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、対向する中心電極および接地電極の少なくとも一方の対向部を貴金属チップにより構成したスパークプラグに関し、特に、ガスエンジン等に用いられ、高温での使用に適したスパークプラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、スパークプラグは、中心電極と、この中心電極の外側に設けられた絶縁体と、この絶縁体の外側に設けられた取付金具と、この取付金具に一端が結合され、他端側が放電ギャップを隔てて中心電極と対向するように配置された接地電極とを備えており、自動車のエンジンやガスエンジン等における点火栓として適用されている。
【0003】
そして、電極の耐久性向上等のために、接地電極および中心電極における互いに対向する部位の少なくとも一方を、電極母材に接合された貴金属チップとして構成したものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。このような電極間の対向部を構成する貴金属チップとしては、Pt(白金)合金チップ、またはIr(イリジウム)合金チップが一般に採用される。
【0004】
ここで、Pt合金チップは、電極母材に対して抵抗溶接により接合され、Ir合金チップは、電極母材に対してレーザ溶接により接合されるのが一般的な構成である。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−92432号公報
【0006】
【特許文献2】
特開2002−83663号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、貴金属チップにおいては、一般に、電極母材に対してレーザ溶接により接合されたIr合金チップは、電極母材に対して抵抗溶接により接合されたPt合金チップよりも高温での接合信頼性が低い。
【0008】
例えば、レーザ溶接によるIr合金チップは、電極温度が約900℃未満までは、接合信頼性が確保されるが、それ以上の電極温度では、接合信頼性の確保が不十分となる。それに対し、抵抗溶接によるPt合金チップは、電極温度が約900℃以上であっても接合信頼性を十分に確保できる。
【0009】
そのため、Ir合金チップでは接合信頼性が確保できないような高温雰囲気に用いられるスパークプラグにおいては、貴金属チップと電極母材との接合信頼性を確保するためにPt合金チップが選択されて用いられる。
【0010】
例えば、ガソリンエンジン用のスパークプラグでは、常用使用での接地電極温度が700℃以下であるのに対し、コージェネレーション等の最近の開発エンジンのガスエンジン用では、常用使用での接地電極温度が約850℃〜950℃の高温になる。そのため、ガスエンジン用のスパークプラグの接地電極においては、高温で高い接合信頼性を有する貴金属チップとしてPt合金チップが選択されている。
【0011】
しかしながら、Pt合金チップは、電極母材との接合信頼性に優れるものの、高温雰囲気で白金粒が生じ、この白金粒によって電極間の短絡が発生するという問題がある。この問題に関して、本発明者が検討した具体例について図5を参照して述べる。
【0012】
図5は、本発明者の実験および観察の結果に基づいて放電部近傍を模式的に示す図であり、(a)は初期状態を示し、(b)はガスエンジンにおける高温雰囲気での使用に伴う白金粒の成長の様子を示す。
【0013】
ここでは、ガスエンジンでの使用状態において、中心電極30の温度は900℃以下であるため、中心電極30における対向部は、電極母材にレーザ溶接されたIr合金チップ32として構成している。
【0014】
一方、接地電極40の温度は850〜950℃程度であるため、接地電極40における対向部は、電極母材に抵抗溶接されたPt合金チップJ43として構成している。そして、Pt合金チップJ43とIr合金チップ32との間に、放電ギャップ50が形成されている。ガスエンジン用のスパークプラグの場合、この放電ギャップ50の寸法は0.15mm〜0.6mm程度である。
【0015】
具体的に、接地電極40側のPt合金チップJ43は、20重量%Irおよび残部PtからなるPt−20Irからなるものとした。なお、接地電極40および中心電極30の電極母材は、インコネル(登録商標)等のNi(ニッケル)基合金である。
【0016】
図5(a)に示すように、初期状態では、接地電極40側のPt合金チップJ43の内部は、ほぼ全体が層状組織となっている。そして、図5(b)に示すように、使用に伴ってPt合金チップJ43における放電面側の部分が再結晶化して、白金粒70が析出し、層状組織から粒状組織へと変化する。
【0017】
この転位が起こるときに、放電のスパッタが影響して白金粒70が成長し、この白金粒70は、チップの放電面から析出し、図5(b)中の矢印に示す放電経路に沿って成長する。この成長した白金粒70が、対向する中心電極30側のIr合金チップ32にまで到達すると、両電極30、40間の短絡に至るのである。
【0018】
特に、ガスエンジン用のスパークプラグにおいては、要求される放電電圧が高いので、ガソリンエンジンのスパークプラグにおける初期放電ギャップ(例えば1mm程度)に比べて、0.15〜0.6mm程度と狭い初期放電ギャップが要求される。そのため、上記の成長する白金粒70によって電極30、40間の短絡が発生しやすくなる。
【0019】
本発明は上記問題に鑑み、中心電極および接地電極の少なくとも一方の対向部をPtを主成分とする貴金属チップにより構成したスパークプラグにおいて、当該貴金属チップにてより高温雰囲気まで白金粒の成長を抑制できるようにすることを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Pt合金チップの融点を上げたり、硬度を大きくすれば、白金粒の成長が抑制できると考え、鋭意検討した結果、実験的に見出されたものである。
【0021】
すなわち、請求項1に記載の発明では、中心電極(30)と、この中心電極の外側に設けられた絶縁体(20)と、この絶縁体の外側に設けられた取付金具(10)と、この取付金具に一端が結合され、他端側が放電ギャップ(50)を隔てて中心電極と対向するように配置された接地電極(40)とを備え、接地電極および中心電極における互いに対向する部位の少なくとも一方は、電極母材に接合されたPtと他の元素との合金からなる貴金属チップ(43)であるスパークプラグにおいて、貴金属チップは、合金の第1成分をPtとし、第2成分をReとしたものであることを特徴とする。
【0022】
ここで、第1成分とは、貴金属チップ(43)を構成するPt合金に含有される最も多量の成分であり、第2成分とは2番目に多量の成分である。
【0023】
Ptと他の元素との合金からなる貴金属チップ(43)を本発明のようなRe(レニウム)を含んだ構成とすることにより、当該貴金属チップの融点や硬度が大きくなるので、白金粒がチップの放電面に析出しにくくなると考えられ、実際に、従来のPt合金チップに比べて、白金粒(70)の成長が抑制できることを確認した(図3、図4参照)。
【0024】
よって、本発明によれば、中心電極(30)および接地電極(40)の少なくとも一方の対向部をPtを主成分とする貴金属チップ(43)により構成したスパークプラグにおいて、当該貴金属チップにてより高温雰囲気まで白金粒の成長を抑制することができる。
【0025】
請求項2に記載の発明では、貴金属チップ(43)は、第1成分としてのPtを50重量%以上含有するものであることを特徴とする。
【0026】
ここで、請求項2に記載の発明のように、貴金属チップ(43)としては、第1成分としてのPtを50重量%以上含有するものにできる。
【0027】
また、請求項3に記載の発明のように、貴金属チップ(43)における第2成分としてのReの含有量は、5重量%以上50重量%未満であれば、上記請求項1の発明の効果を適切に実現でき、好ましい。
【0028】
請求項4に記載の発明では、貴金属チップ(43)は、粒状組織にて構成されていることを特徴とする。
【0029】
それによれば、初期状態において貴金属チップ(43)が層状組織ではなく、粒状組織となったものにできる。そのため、貴金属チップが初期的に層状組織である場合に比べて、より白金粒の成長を抑制しやすくできる。
【0030】
請求項5に記載の発明では、貴金属チップ(43)は、常温での硬度Hv0.5が200以上のものであることを特徴とする。
【0031】
ここで、常温とは一般に言われるように25℃程度であり、硬度Hv0.5とは、0.5kgの荷重を印加したときのビッカース硬度として定義される。そして、上記請求項1に記載の発明のような貴金属チップにおいては、硬度Hv0.5は200以上のものにすることができる。
【0032】
また、請求項6に記載の発明のように、上記請求項1に記載の発明のような貴金属チップとした場合、その貴金属チップ(43)の融点は1850℃以上のものにすることが好ましい。
【0033】
また、白金粒の成長を抑制して電極間の短絡を防止することは、請求項7に記載の発明のように、放電ギャップ(50)の寸法が、0.15mm以上0.6mm以下であるような狭ギャップ化したスパークプラグに対して効果的である。
【0034】
請求項8に記載の発明では、貴金属チップ(43)と電極母材との間に、Ptと電極母材との中間の熱膨張係数を有するPt系材料からなる緩和層(60)が介在しており、貴金属チップと電極母材とは、緩和層を介して抵抗溶接されていることを特徴とする。
【0035】
ここで、Pt系材料とはPtを含む合金であるが、本発明のように、緩和層(60)を設けることは、電極母材からの貴金属チップ(43)の脱落防止効果が大きくなるため、好ましい。
【0036】
請求項9に記載の発明では、緩和層(60)は、粒状組織にて構成されていることを特徴とする。
【0037】
緩和層が層状組織である場合、層に沿って緩和層の剥離が生じやすいが、緩和層を粒状組織とすれば、緩和層の剥離を抑制し、結果、電極母材からの貴金属チップの脱落防止効果を大きいものにできる。
【0038】
また、このような緩和層(60)としても、請求項10に記載の発明のように、常温での硬度Hv0.5が200以上のものであることが好ましい。
【0039】
上記各手段における作用効果は、請求項11に記載の発明のように、ガスエンジンに適用されるスパークプラグに対して、適切に発揮される。
【0040】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。本実施形態は、コージェネレーションにおける発電機のガスエンジン用のスパークプラグとして用いられる。図1は本実施形態に係るスパークプラグ100の全体構成を示す半断面図であり、図2(a)は図1中の丸で囲んだA部分の詳細説明図である。
【0042】
スパークプラグ100は、円筒形状の取付金具(ハウジング)10を有しており、この取付金具10は、図示しないエンジンブロックに固定するための取付ネジ部11を備えている。取付金具10の内部には、アルミナセラミック(Al)等からなる絶縁体20が固定されており、この絶縁体20の先端部21は、取付金具10の一端面12から露出するように設けられている。
【0043】
絶縁体20の内孔22には、柱状の中心電極30がその先端部31を絶縁体20の先端部21から露出させるように固定されており、この中心電極30は絶縁体20を介して取付金具10に絶縁保持されている。
【0044】
中心電極30は、内材がCu等の熱伝導性に優れた金属材料、外材がNi基合金等の耐熱性および耐食性に優れた金属材料により構成されたもので、上記先端部31には、貴金属チップ32(以下、中心電極側チップ32という)が溶接等により取り付けられ、この中心電極側チップ32は中心電極30の一部を構成している。
【0045】
本例では、中心電極側チップ32は、円板状のIr合金からなるIr合金チップであり、中心電極30における電極母材である先端部31に対してレーザ溶接によって接合されている。
【0046】
また、取付金具10の一端面12には、Ni基合金等よりなる柱状の接地電極40が溶接等により結合され固定されている。接地電極40は、取付金具10の一端面12に固定された一端41から途中で略L字に曲げられて他端42側の部位にて中心電極30の先端部31と対向して配置されている。
【0047】
また、接地電極40の他端42において、中心電極30の先端部31に設けられた中心電極側チップ32と対向する部位には、貴金属チップ43(以下、接地電極側チップ43という)が溶接等により取り付けられ、この接地電極側チップ43は接地電極40の一部を構成している。
【0048】
本例では、接地電極側チップ43は、円板状のPtと他の元素との合金からなるPt合金チップであり、接地電極40における電極母材である他端42に対して抵抗溶接によって接合されている。
【0049】
また、本例では、図2に示すように、接地電極側チップ43と電極母材との間に、Ptと電極母材との中間の熱膨張係数を有するPt系材料からなる緩和層60が介在しており、接地電極側チップ43と電極母材とは、この緩和層60を介して抵抗溶接されている。
【0050】
このように、緩和層60を設けることは、電極母材からの接地電極側チップ43の脱落防止効果が大きくなるため、好ましい。例えば、緩和層60としては20重量%Niおよび残部PtからなるPt−20Niからなるものを採用できる。また、緩和層60としても、常温での硬度Hv0.5が200以上のものであることが好ましい。なお、緩和層60が無いものであってもよい。
【0051】
そして、上記両チップ32、43が対向する部分の空隙が放電ギャップ50を構成している。この放電ギャップ50の寸法ΔGは、ガスエンジン用のスパークプラグにおける要求値として0.15mm以上0.6mm以下としている。
【0052】
ここにおいて、接地電極側チップ43は、合金中に含有される最も多量の成分である第1成分がPtであり、2番目に多量の成分である第2成分がRe(レニウム)である。もちろん、接地電極側チップ43としては、3番目に多い成分としてIr等の他の元素を含有したものであってもよい。
【0053】
具体的には、接地電極側チップ43としては、第1成分としてのPtを50重量%以上含有するものとできる。また、第2成分としてのReの含有量は5重量%以上50重量%未満であることが好ましい。このような接地電極側チップ43とすることにより、その硬度Hv0.5を200以上のものにできる。また、その融点は1850℃以上のものにできる。
【0054】
例えば、接地電極側チップ43としては、PtとReとの2成分系であって10重量%Reおよび残部PtからなるPt−10Reや、20重量%Reおよび残部PtからなるPt−20Re等を採用することができる。
【0055】
具体的にPt−10Reでは、硬度Hv0.5は230〜250であり、融点は約1880℃であり、Pt−20Reでは、硬度Hv0.5は200以上であり、融点は約2000℃である。なお、融点はPtの融点1769℃、Reの融点3166℃から求められる。
【0056】
また、本実施形態では、中心電極側チップ32はIr合金チップとし、接地電極側チップ43はPt合金チップとしているが、これは、中心電極30の温度は900℃程度であるのに対し、接地電極40の温度は850〜950℃程度であるためである。
【0057】
かかるスパークプラグ100においては、コージェネレーションにおけるエンジンの燃焼室(図示せず)内に、放電ギャップ50側を挿入し、取付金具10と中心電極30との間に放電用高電圧をかけることにより、放電ギャップ50に火花放電を発生させ、上記燃焼室内の燃料気体を燃焼させるようになっている。高電圧は接地電極側がアースされた状態で中心電極側にマイナス電圧を印加する。
【0058】
ところで、本実施形態では、Ptと他の元素との合金からなる接地電極側チップ43を合金の第1成分をPtとし、第2成分をReとした独自の構成にしたことを主たる特徴としている。
【0059】
それにより、当該接地電極側チップ43の融点や硬度が大きくなるので、白金粒がチップの放電面に析出しにくくなると考えられる。実際に、図3(a)、(b)に示すように、本実施形態では、従来のPt合金チップに比べて、白金粒70の成長を抑制できることを確認した。
【0060】
図3は、コージェネレーションのガスエンジンに本実施形態のスパークプラグ100を取り付け、エンジン負荷100%、エンジン回転数750rpmとした条件にて試験を行い、白金粒70の成長長さLを調べたものである。ここで、成長長さLは、放電経路に沿って白金粒70が成長した長さLである。
【0061】
図3では、本発明者の実験および観察の結果に基づいて放電部近傍を模式的に示しており、(a)は接地電極側チップ43としてPt−10Reを採用した場合、(b)は接地電極側チップ43としてPt−20Reを採用した場合である。そして、放電ギャップ50の寸法ΔGは、ここでは0.3mmとしている。また、緩和層60としてPt−20Niを採用している。
【0062】
図3(a)、(b)に示すように、本実施形態では接地電極側チップ43を上記した独自の構成とすることにより、上記図5に示した従来のPt合金チップJ43に比べて、白金粒70の放電面からの成長を抑制できている。なお、図3と図5では、同じ試験時間後の様子を示している。
【0063】
図4は、本実施形態における白金粒70の成長長さLの抑制効果を具体的に示すものであり、接地電極側チップ43としてPt−10Reを採用した場合、Pt−20Reを採用した場合、さらに従来のPt−20Irを採用した場合について、成長長さLと上記試験時間との関係を調べた結果を示す図である。図4から、本実施形態における白金粒70の成長抑制の効果が顕著に現れていることがわかる。
【0064】
また、上記図3に示す例では、本実施形態の接地電極側チップ43は、粒状組織にて構成されている。それによれば、初期状態において接地電極側チップ43が層状組織ではなく、粒状組織となったものにできる。そのため、接地電極側チップ43が初期的に層状組織である場合に比べて、より白金粒70の成長を抑制しやすくできる。
【0065】
このような粒状組織となった接地電極側チップ43は、チップ43やチップ43の素材を熱処理して再結晶化することで、層状組織から粒状組織への転位を発生させることにより作成可能である。例えば、熱処理条件としては、真空中またはAr(アルゴン)等の不活性ガス中にて1200℃、1時間の条件とすることができる。
【0066】
さらに、上記図3に示す例では、緩和層60は、粒状組織にて構成されている。緩和層60が層状組織である場合、層に沿って緩和層60の剥離が生じやすいが、緩和層60を粒状組織とすれば、緩和層60の剥離を抑制し、結果、電極母材からの接地電極側チップ43の脱落防止効果を大きいものにできる。
【0067】
このような粒状組織となった緩和層60は、緩和層60の素材を熱処理して再結晶化することで、層状組織から粒状組織への転位を発生させることにより作成可能である。例えば、熱処理条件としては、真空中またはAr(アルゴン)等の不活性ガス中にて1100℃、1時間の条件とすることができる。
【0068】
なお、本実施形態においては、上記図3のように、接地電極側チップ43を予め粒状組織にせず初期的に層状組織とした場合や、緩和層60を初期的に層状組織とした場合、さらには、緩和層60が無い場合であっても、接地電極側チップ43を上記した独自の構成とすることにより、従来に比べて、白金粒70の成長を抑制することができることは確認されている。
【0069】
また、本実施形態において、中心電極側チップ32も、電極母材に抵抗溶接され、Ptと他の元素との合金からなるPt合金チップであって且つ合金の第1成分をPtとし、第2成分をReとしたものとしてもよい。そして、この場合も、中心電極30に上記緩和層を介在させてよい。
【0070】
このように、本実施形態によれば、中心電極30および接地電極40のどちらか一方の対向部、または両方の対向部をPtを主成分とする貴金属チップ32、43により構成したスパークプラグ100において、当該貴金属チップ32、43にてより高温雰囲気まで白金粒の成長を抑制することができる。
【0071】
そして、このような効果は、本実施形態のような、放電ギャップ50の寸法が、0.15mm以上0.6mm以下であるような狭ギャップ化したガスエンジンに適用されるスパークプラグに対して、適切に発揮される。
【0072】
もちろん、本発明は、対向する中心電極および接地電極の少なくとも一方の対向部を貴金属チップにより構成したスパークプラグであれば、ガスエンジン用以外のスパークプラグに用いても同様の効果が発揮されることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るスパークプラグの全体構成を示す半断面図である。
【図2】図1中のA部分の詳細説明図である。
【図3】実施形態における白金粒の成長抑制の様子を具体的に示す図である。
【図4】実施形態における白金粒の成長抑制効果を示す図である。
【図5】従来のスパークプラグにおける白金粒の成長による電極間の短絡の様子を具体的に示す図である。
【符号の説明】
10…取付金具、20…絶縁体、30…中心電極、40…接地電極、
43…貴金属チップとしての接地電極側チップ、50…放電ギャップ、
60…緩和層。

Claims (11)

  1. 中心電極(30)と、
    この中心電極の外側に設けられた絶縁体(20)と、
    この絶縁体の外側に設けられた取付金具(10)と、
    この取付金具に一端が結合され、他端側が放電ギャップ(50)を隔てて前記中心電極と対向するように配置された接地電極(40)とを備え、
    前記接地電極および前記中心電極における互いに対向する部位の少なくとも一方は、電極母材に接合されたPtと他の元素との合金からなる貴金属チップ(43)であるスパークプラグにおいて、
    前記貴金属チップは、前記合金の第1成分をPtとし、第2成分をReとしたものであることを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記貴金属チップ(43)は、前記第1成分としてのPtを50重量%以上含有するものであることを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグ。
  3. 前記貴金属チップ(43)は、前記第2成分としてのReを5重量%以上50重量%未満含有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のスパークプラグ。
  4. 前記貴金属チップ(43)は、粒状組織にて構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載のスパークプラグ。
  5. 前記貴金属チップ(43)は、常温での硬度Hv0.5が200以上のものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載のスパークプラグ。
  6. 前記貴金属チップ(43)は、融点が1850℃以上のものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載のスパークプラグ。
  7. 前記放電ギャップ(50)の寸法は、0.15mm以上0.6mm以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載のスパークプラグ。
  8. 前記貴金属チップ(43)と前記電極母材との間に、Ptと前記電極母材との中間の熱膨張係数を有するPt系材料からなる緩和層(60)が介在しており、
    前記貴金属チップと前記電極母材とは、前記緩和層を介して抵抗溶接されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載のスパークプラグ。
  9. 前記緩和層(60)は、粒状組織にて構成されていることを特徴とする請求項8に記載のスパークプラグ。
  10. 前記緩和層(60)は、常温での硬度Hv0.5が200以上のものであることを特徴とする請求項8または9に記載のスパークプラグ。
  11. ガスエンジン用のスパークプラグとして適用されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一つに記載のスパークプラグ。
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