JP2004347075A - 多段変速遊星歯車列 - Google Patents
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Abstract
【課題】3組の遊星歯車組による前進8段の変速比を得る遊星歯車列において、出力軸と連結した遊星歯車に作用するトルクを減らして小型化をはかるとともに、騒音の発生を抑える。
【解決手段】ダブルピニヨン型の第1遊星歯車組14、第2遊星歯車組16とシングルピニヨン型の遊星歯車組18とを有して、第1キャリヤ28は入力軸10と、第3キャリヤ48は出力軸12とそれぞれ連結し、第1サンギヤ20は固定し、第2キャリヤ38と第3サンギヤ40とは連結するとともに固定可能であり、かつ第1リングギヤ22および入力軸10とも選択的に連結可能であり、第2リングギヤ32は固定可能であるとともに入力軸10と連結可能であり、第2サンギヤ30と第3リングギヤ40とは連結するとともに第1リングギヤ22と連結可能に構成した。
【選択図】 図1
【解決手段】ダブルピニヨン型の第1遊星歯車組14、第2遊星歯車組16とシングルピニヨン型の遊星歯車組18とを有して、第1キャリヤ28は入力軸10と、第3キャリヤ48は出力軸12とそれぞれ連結し、第1サンギヤ20は固定し、第2キャリヤ38と第3サンギヤ40とは連結するとともに固定可能であり、かつ第1リングギヤ22および入力軸10とも選択的に連結可能であり、第2リングギヤ32は固定可能であるとともに入力軸10と連結可能であり、第2サンギヤ30と第3リングギヤ40とは連結するとともに第1リングギヤ22と連結可能に構成した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用自動変速機に用いる、前進8段の変速比を有する多段変速遊星歯車列に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の前進8段の変速比を有する多段変速遊星歯車列としては、それぞれ回転メンバーを備えたダブルピニヨン型の第1変速部(第1遊星歯車組)と、シングルピニヨン型の第2遊星歯車組およびダブルピニヨン型の第3遊星歯車組とを備え、6個の摩擦要素による上記複数の回転メンバー間の連結や固定の組み合わせにより、前進8段の変速比を得ている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2003−130152号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の多段変速遊星歯車列にあっては、第2遊星歯車組の第2リングギヤが出力軸と連結されており、第3リングギヤには出力軸のトルクが全て作用するため、第3リングギヤの強度を確保するために直径を大きくするか軸方向長さを長くする必要があり、製造コスト、所用スペース、重量の面で問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、3組の遊星歯車組を用いて前進8段の変速比を得ながら、特に第3リングギヤに作用するトルクを減らすことにより、より小さい遊星歯車組で成り立つようにして、製造コスト、所用スペース、重量の面で改善することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1遊星歯車組、第2遊星歯車組および第3遊星歯車とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備えたダブルピニヨン型であり、第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤに噛み合った第2アウタピニヨンと、該第2アウタピニヨンおよび第2サンギヤに噛み合った第2インナピニヨンと、該第2インナピニヨンおよび第2アウタピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備えたダブルピニヨン型であり、第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備えたシングルピニヨン型であり、第1キャリヤは入力軸と連結し、第3キャリヤは出力軸と連結し、第1サンギヤはケースに固定するか、または固定可能であり、第2キャリヤと第3サンギヤとは連結するとともにケースに固定可能であり、かつ第1リングギヤおよび入力軸とも選択的に連結可能であり、第2リングギヤはケースに固定可能であるとともに入力軸と連結可能であり、第2サンギヤと第3リングギヤとは連結するとともに第1リングギヤと連結可能であることを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、第1遊星歯車組と第2遊星歯車組とは、サンギヤの歯数をリングギヤの歯数で割った歯数比が同一であることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1遊星歯車組、第2遊星歯車組および第3遊星歯車とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備えたダブルピニヨン型であり、第2遊星歯車組と第3遊星歯車組とが複合しており、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンと噛み合った第3リングギヤと、第2ピニヨンおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第1サンギヤは入力軸と連結し、第2キャリヤは前記出力軸と連結し、第1キャリヤはケースに固定するか、または固定可能であり、第2リングギヤはケースに固定可能であり、第2サンギヤは第1リングギヤと連結可能であり、第3サンギヤはケースに固定可能であり、かつ第1リングギヤおよび入力軸とも選択的に連結可能であり、第3リングギヤは入力軸と連結可能であることを特徴とする。
【0009】
【作用と効果】
請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、ダブルピニヨン型の第1遊星歯車組、第2遊星歯車組16およびシングルピニヨン型の第3遊星歯車組18を有し、第1キャリヤは入力軸と連結し、第3キャリヤは出力軸と連結し、第1サンギヤはケースに固定し、第2キャリヤと第3サンギヤとは連結するとともにケースに固定可能であり、かつ第1リングギヤおよび入力軸とも選択的に連結可能であり、第2リングギヤはケースに固定可能であるとともに入力軸と連結可能であり、第2サンギヤと第3リングギヤとは連結するとともに第1リングギヤと連結可能に構成したため、入力軸に入力された入力トルクは第1遊星歯車組にて減速され、そのトルクが増大されて第2、第3遊星歯車組に入力される。第2、第3遊星歯車組では、少なくとも前進第1速時に上記増大されたトルクが第2サンギヤおよび第3リングギヤに入力される。第1速では、第2リングギヤがケースに固定されるので、トルクはさらに増大されて第3キャリヤからこれが連結された出力軸に出力される。第2リングギヤはさらに第5速以上の高速段において入力軸と連結される。また、第2キャリヤおよび第3サンギヤが少なくとも前進第2速においてケースに固定可能であるとともに、少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能である。これらにより前進第2速以上を得る。また、後進にあっては、第2リングギヤがケースに固定される。その結果、第1乃至第3遊星歯車組の各回転メンバー間の連結・固定の組み合わせにより前進8段、後進2段の変速比で変速する。また、第3遊星歯車組に作用するトルクが小さくなるので、これを小型にすることができるので、製造コスト・スペース・重量の面で有利になる。
【0010】
請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、第1遊星歯車組と第2遊星歯車組とは、サンギヤの歯数をリングギヤの歯数で割った歯数比を同一としたため、第3遊星歯車組を含めた各回転メンバーの連結・固定の組み合わせで車両用変速機に好適な前進8段、後進2段の変速比で変速するとともに、第1遊星歯車組と第2遊星歯車組を製造する工具やジグを共通化するか、両遊星歯車組全体を共通化することのどちらかが可能になり、製造コストを削減することができる。
【0011】
請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、ダブルピニヨン型の第1遊星歯車組と、複合型の第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18を有し、第1サンギヤは入力軸と連結し、第2キャリヤは出力軸と連結し、第1キャリヤはケースに固定し、第3サンギヤはケースに固定可能であり、かつ第1リングギヤおよび入力軸とも選択的に連結可能であり、第2リングギヤはケースに固定可能であり、第3リングギヤは入力軸と連結可能であり、第2サンギヤを第1リングギヤと連結可能に構成したため、入力軸に入力された入力トルクは第1遊星歯車組にて減速され、そのトルクが増大されて第2、第3遊星歯車組に入力される。第2、第3遊星歯車組では、少なくとも前進第1速時に上記増大されたトルクが第2サンギヤに入力される。第1速では、第2リングギヤがケースに固定されるので、トルクはさらに増大されて第2キャリヤからこれが連結された出力軸に出力される。第3リングギヤは第5速以上の高速段において入力軸と連結される。また、第3サンギヤが少なくとも前進第2速においてケースに固定可能であるとともに、少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能である。これらにより前進第2速以上を得る。また、後進にあっては、第2リングギヤがケースに固定される。その結果、第1乃至第3遊星歯車組の各回転メンバー間の連結・固定の組み合わせにより前進8段、後進2段の変速比で変速する。また、第2、第3遊星歯車組に作用するトルクが小さくなるので、これを小型にすることができるので、製造コスト・スペース・重量の面で有利になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多段変速遊星歯車列における実施の形態を、図に基づき説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列を表すスケルトン図である。
なお、同図は同心とした入力軸10と出力軸12の軸心より上側半分を描いてある。
【0013】
この多段変速遊星歯車列は、入力軸10と出力軸12とが同軸心に配置され、これらと同軸上に3組の遊星歯車組、すなわち第1遊星歯車組14、第2遊星歯車組16、および第3遊星歯車組18が配置されている。
【0014】
第1遊星歯車組14は、一般的にダブルピニヨン型と呼ばれるものであり、第1サンギヤ20と、第1リングギヤ22と、第1リングギヤ22に噛み合った第1アウタピニヨン24と、これら第1アウタピニヨン24および第1サンギヤ20に噛み合った第1インナピニヨン26と、第1インナピニヨン26および第1アウタピニヨン24を回転自在に軸支する第1キャリヤ28とで構成されている。
【0015】
第2遊星歯車組16もダブルピニヨン型であり、第2サンギヤ30と、第2リングギヤ32と、第2リングギヤ32に噛み合った第2アウタピニヨン34と、これら第2アウタピニヨン34および第2サンギヤ30に噛み合った第2インナピニヨン36と、第2インナピニヨン36および第2アウタピニヨン34を回転自在に軸支する第2キャリヤ38とで構成されている。
【0016】
第3遊星歯車組16はシングルピニヨン型であり、第3サンギヤ40、第3リングギヤ42と、これらと噛み合う第3ピニヨン44と、該第3ピニヨン34を回転自在に軸支する第3キャリヤ48とから構成されている。
【0017】
第1遊星歯車組14、第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18の各回転メンバーは以下のように連結されているか、または連結可能である。
入力軸10は第1キャリヤ28と、出力軸12は第3キャリヤ48と、それぞれ連結されており、第1サンギヤ20はケース52(静止部)に常時固定されている。
【0018】
第2キャリヤ38と第3サンギヤ40は常に連結されているとともに、第1ブレーキ54によりケース52に固定可能であり、第2リングギヤ32は第2ブレーキ56によりケース52に固定可能であるとともに、ワンウエイクラッチ(OC)58でも常に一回転方向にケース52に固定されている。
【0019】
第1リングギヤ22は、第1クラッチ60により第2サンギヤ30および第3リングギヤ42と、第2クラッチ62により第2キャリヤ38および第3サンギヤ40と、それぞれ選択的に連結可能である。
入力軸10はまた、第1キャリヤ28を介して、第3クラッチ64により第2キャリヤ38および第3サンギヤ40と、第4クラッチ66により第2リングギヤ32と、それぞれ連結可能である。
【0020】
次に、図1に示した多段変速遊星歯車列の作動を、図2に示した作動表と図3の(a)に示した共通速度線図を参考にしながら説明する。
以下の説明では、クラッチやブレーキを摩擦要素と呼び、ワンウエイクラッチを含めて回転メンバー同士の連結機能を有するもの全体を総称して締結要素と呼ぶ。
【0021】
なお、図2の作動表において、横方向の欄にはクラッチやブレーキおよびワンウエイクラッチなどの締結要素が割り当ててあり、C−1は第1クラッチ60を、B−1は第1ブレーキ54を、OCはワンウエイクラッチ58をといった具合に、それぞれ表す。なお、これらの記号と各締結要素の番号との関係は、図1に記してある。
【0022】
縦方向の欄には図示しない操作レバーの「Dレンジ」「Rレンジ」および「Lレンジ」に分け、Dレンジは前進第1速(1st)乃至第8速(8th)を表し、Rレンジは後進第1速(R−1)と第2速(R−2)の各変速段を割り当ててある。
なお、Lレンジでは、後述するエンジンブレーキ時のように出力軸12側から入力軸10側を駆動することが可能である。
図2の作動表中、○印は各締結要素の締結を、また空欄は各締結要素の解放を表す。
【0023】
図3に示した共通速度線図は、縦方向が入力軸10の回転数を1とした場合の各回転メンバーの回転数を表し、横方向は上記した各遊星歯車の歯数比に応じた間隔に各回転メンバーを割り振って各回転メンバーごとに縦線を描いてある。
【0024】
共通速度線図の上方に書いた記号は、サンギヤはS、リングギヤはR、キャリヤはCで、またその後の数字1、2、3はそれぞれが属する3組の第1、第2、第3の遊星歯車組を表し、例えばS1、R1、C1は、それぞれ第1遊星歯車組14の第1サンギヤ20、第1リングギヤ22、第1キャリヤ28を表すようになっている。
【0025】
ここで、各遊星歯車組の歯数比は、リングギヤの歯数(Zr)に対するサンギヤの歯数(Zs)の比Zs/Zrであり、第1遊星歯車組14の歯数比をα1、第2遊星歯車組16の歯数比をα2、第3遊星歯車組18の歯数比をα3とする。
なお、共通速度線図を含めて変速比の計算には、α1、α2、α3を全て0.45とした場合について説明する。
【0026】
共通速度線図は、各縦線と太線との交点の高さがそれぞれの回転メンバーの回転数を表す。また、2点鎖線の水平線は回転メンバー同士が同じ回転数で結ばれていることを表す。
分かりやすくするため、出力軸12と連結された第3キャリヤ48(C3)の縦線における交点は○印で表示した。
図3の(b)にはα1、α2、α3を上記の値とした場合の各変速比およびそれら間の各段間比を示してある。
また、以下の変速比の計算式を簡素化するため、α2(1+α3)をAとする。
【0027】
始めに、第1遊星歯車組14は、第1サンギヤ20がケース52に固定されているので、第1リングギヤ22は常に入力軸10より低い回転数に減速駆動されており、その減速比(入力軸10の回転数/第1リングギヤ22の回転数)は1/(1−α1)である。
【0028】
前進第1速(1st)は、図2に示した作動表に見るように、第1クラッチ60の締結で第1リングギヤ22と第2サンギヤ30および第3リングギヤ42とを連結することと、ワンウエイクラッチ58が自動的に締結されて第2リングギヤ32がケース52に固定されることで実現する。
【0029】
すなわち、第2リングギヤ32はワンウエイクラッチ58の作用で車両を加速する駆動方向においてケース52に固定されるようになっている。
このため、Dレンジの第1速では、いわゆるエンジンブレーキのように出力軸12から入力軸10への駆動はできない。
【0030】
第1速は、第1遊星歯車組14で減速された第1リングギヤ22が第1クラッチ60を経て第2サンギヤ30および第3リングギヤ42を駆動する。
そして、さらに第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18で減速されて出力軸12に出力する。
【0031】
このとき、第1速の変速比(入力軸10の回転数/出力軸12の回転数)は、(1+α3−A)/{(1−α1)(1−A)}になり、上記の値に設定した歯数比においては4.173になる。
【0032】
これを図3の共通速度線図で説明すると、左側の第1遊星歯車組14において入力軸10と連結された第1キャリヤ28(C1)の回転数を1として、第1サンギヤ20(S1)がケース52に固定されているので回転数が0であり、両者を結んだ斜線(太線)と第1リングギヤ22(R1)の縦線との交点の高さが第1リングギヤ22の回転数になる。
【0033】
第1リングギヤ22と連結した右側の第2サンギヤ30(S2)および第3リングギヤ42(R3)が同じ回転数にあって、第2リングギヤ32が固定されて回転数0であり、両者を結ぶ線が1stと書かれた斜線(太線)になって、この斜線と第3キャリヤ48(C3)の縦線との交点の高さが出力軸12の回転数になる。
【0034】
次に、第2速(2nd)への変速は、前述の第1速での第1クラッチ60の締結に加えて、第1ブレーキ54を締結することにより第2キャリヤ38および第3サンギヤ40がケース52に固定されることで行われる。
このときに、第2リングギヤ32のケース52への固定は、ワンウエイクラッチ58の作用で自動的に解除される。
【0035】
第2キャリヤ38および第3サンギヤ40がケース52に固定されたことにより、第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18での減速比が第1速から変化して歯車列全体の変速比が変化する。
【0036】
共通速度線図においては2ndの斜線が示すように、第2キャリヤ38(C2)および第3サンギヤ40(S3)の回転数を0とした斜線になり、第2速の変速比は、(1+α3)/(1−α1)になる。
上記した歯数比においては2.636である。
【0037】
前述のように、前進第1速から第2速への変速は、ワンウエイクラッチ58の作用があるため、第1ブレーキ54の締結を追加するだけで済む。
したがって、変速時のいわゆる変速ショックは、第1ブレーキ54の締結を緩やかに行うように制御するだけで抑えられるので、円滑な変速を容易に行うことができる。
【0038】
次に、第3速(3rd)への変速は、第2速での第1ブレーキ54の締結を解除して第2クラッチ62を締結することで行われる。
これにより、第1クラッチ60と第2クラッチ62の締結で第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18全体が一体になるため、第1遊星歯車組14での減速比1/(1−α1)が第3速の変速比になって、上記した歯数比においては1.818であり、共通速度線図の右側においては3rdの水平線になる。
【0039】
続いて第4速(4th)への変速は、第3速における第2クラッチ62の締結を解除して、第3クラッチ64を締結することで行われる。
この段階で第2キャリヤ38および第3サンギヤ40は入力軸10と連結される。
【0040】
共通速度線図においては4thの斜線が示すように、第2キャリヤ38(C2)および第3サンギヤ40(S3)が入力軸10と同じ回転数1となってこれと第2サンギヤ30(S2)および第3リングギヤ42(R3)とを結んだ斜線になる。
第4速の変速比は(1+α3)/{(1−α1)(1+α3)+α1・α3}になる。
上記した歯数比においては1.450になる。
【0041】
次に、第5速(5th)への変速は、第4速における第3クラッチ64の締結を解除して第4クラッチ66を締結することで行われる。
この段階で第2リングギヤ32は入力軸10と連結され、以降の高速段において連結を維持される。
【0042】
共通速度線図においては5thの斜線が示すように、第2リングギヤ32(R2)が入力軸10と同じ回転数1となってこれと第2サンギヤ30(S2)および第3リングギヤ42(R3)とを結んだ斜線になる。
第5速の変速比は(1+α3−A)/{(1−α1)(1+α3−A)+α1・α3}になる。
上記した歯数比においては1.244になる。
【0043】
次に、第6速(6th)への変速は、第5速までにおける第1クラッチ60の締結を解除して再び第3クラッチ64を締結することで行われる。
この段階で第2キャリヤ38および第3サンギヤ40は再び入力軸10と連結される。
【0044】
これにより第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18は一体になるとともに、入力軸10と連結されて直結になり、変速比は歯数比にかかわらず1になる。
共通速度線図の右側においては6thの水平線になる。
【0045】
次に、第7速(7th)への変速は、第6速における第3クラッチ64の締結を解除して再び第2クラッチ62を締結することで行われる。
共通速度線図においては7thの斜線が示すように、第2キャリヤ38(C2)および第3サンギヤ40(S3)の回転数が第1リングギヤ22と同じになり、これと第2リングギヤ32(R2)の回転数1とを結んだものになる。
第7速の変速比は、A/{A(1−α1)+α1)になり、上記した歯数比においては0.807の増速(オーバードライブ)になる。
【0046】
次に第8速への変速は、第7速における第2クラッチ62の締結を解除して、第1ブレーキ54を締結することで、第2キャリヤ38および第3サンギヤ40をケース52に固定して行われる。
【0047】
共通速度線図では8thの斜線が示すように、第2キャリヤ38(C2)および第3サンギヤ40(S3)の回転数を0として、これと第2リングギヤ32(R2)の回転数1とを結んだものになり、変速比は、Aになる。
上記した歯数比においては0.653の増速になる。
【0048】
次に、Rレンジの後進第1速(R−1)の駆動は、第2クラッチ62と第2ブレーキ56を締結することで行われる。
これにより、第2キャリヤ38および第3サンギヤ40が第1リングギヤ22と連結され、第2リングギヤ32がケース52に固定される。
共通速度線図はR−1の斜線に示すようになり、変速比は−A/{(1−α1)(1−A)}になって、上記した歯数比においては−3.414になる。
【0049】
また、後進第2速(R−2)への変速は、後進第1速における第2クラッチ62の締結を解除して、第3クラッチ64を締結して第2キャリヤ38および第3サンギヤ40を入力軸10と連結することで行われる。
これにより、第2キャリヤ38(C2)および第3サンギヤ40(S3)が入力軸10と同じ回転数1になって、これと第3キャリヤ48(C3)の回転数0とを結んだ斜線になり、変速比はA/(A−1)になって、上記した歯数比においては−1.878になる。
【0050】
前述のように、Dレンジの第1速においてワンウエイクラッチ58は車両を加速する方向にのみ自動的に締結されるので、エンジンブレーキ時のように出力軸12側から駆動する場合には、これと併設されている第2ブレーキ56を図2の作動表のLレンジにおける1stに示すように締結し、Dレンジの前進第1速と同様に第1クラッチ60を締結する。
これにより、トルクが作用する方向を問わずに第2リングギヤ32がケース52に固定され、前進第1速の変速比を得ることができる。
【0051】
以上の変速比を図3の(b)にまとめる。
なお、隣り合った変速比同士の比が段間比である。
これに見るように、全般に高速段側にいくほど段間比が小さくなっており、内燃機関で駆動する車両用変速機の変速比として好ましい傾向になっている。
【0052】
以上が、図1に示した前進8段後進2段の多段遊星歯車列における作動と変速比であるが、前述のようにワンウエイクラッチ58の作用で円滑な変速制御を容易に行うことができるとともに、車両用変速機として好ましい変速比を得ることができる。
【0053】
また、出力軸12と連結している回転メンバーが第3キャリヤ48であるため、従来例のようにリングギヤが出力軸と連結した場合より歯車にかかるトルクが小さくなる。
すなわち、出力軸12のトルクを同じとして比較すると、従来例ではこれの全てがリングギヤに作用するが、図1のように第3キャリヤ48に出力軸12のトルクがかかった場合、第3リングギヤ42に1/(1+α3)のトルクが、第3サンギヤ40にはα3/(1+α3)のトルクが、それぞれ作用する。
【0054】
これに前述のα3の値0.45を当てはめると、第3リングギヤ42には出力軸12のトルクの0.69倍が作用することになり、従来例より約30%低くなる。
このため、第3遊星歯車組18をその分だけ小さく設計できるので、製造コスト、所用スペース、重量の面でメリットが生ずることになる。
【0055】
一方、第1遊星歯車組14と第2遊星歯車組16の歯数比を同一としても、車両用の変速機に好適な変速比が得られるため、これらを製造する工具やジグを共通化することができる。さらに進めると両方の遊星歯車組全体を共通化することも可能であり、製造コストの削減効果が期待できる。
【0056】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第2の実施の形態のスケルトンを図4に示す。また、作動表は図2と同じである。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0057】
図4の実施の形態における第1の違いは、第1遊星歯車14の第1サンギヤ20と第1キャリヤ28の連結関係が逆になっていることである。
すなわち、第1サンギヤ20が入力軸10と連結され、第1キャリヤ28が常にケース52に固定されている。このように、両者が逆の連結関係になっても第1リングギヤ22が入力軸10に減速駆動される関係は変わらない。
第2の違いは、第2遊星歯車組16と第3遊星歯車組18とが複合した構成になっていることである。
【0058】
すなわち、第2ピニヨン34が右側へ延びて、この第2ピニヨン34および第2サンギヤ30と噛み合う第3ピニヨン44があって、これら第2、第3ピニヨン34、44を回転自在に軸支する第2キャリヤ38があり、さらに第2ピニヨン44の右側と噛み合う第3リングギヤ42がある。
したがって、第2リングギヤ32と第3リングギヤ42の歯数を同一にできるとともに、両者の間から第2キャリヤ38が出力軸12と連結している。
【0059】
また、第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18の各回転メンバーと第1遊星歯車組14との連結関係は以下のようになる。
第2サンギヤ30が第1クラッチ60により第1リングギヤ22と連結可能である。
第2リングギヤ32が第2ブレーキ56によりケース52に固定可能であるとともに、ワンウエイクラッチ58により一回転方向にケース52に固定されている。
第3リングギヤ42は第4クラッチにより入力軸10と連結される。
【0060】
第3サンギヤ40は、第1ブレーキ54により第1キャリヤ28を介してケース52に固定可能であるとともに、第2クラッチ62により第1リングギヤ22と、第3クラッチ64により入力軸10と、それぞれ選択的に連結可能である。
【0061】
このように、第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18の構成および各回転メンバーの連結関係が図1と異なっているが、各締結要素の連結関係は図1の実施の形態と同じであり、上述のように作動表は図2と共通である。
詳細の説明は省略するが、共通速度線図については図3に示した右側の第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18の部分において、右端の縦線から順に第3サンギヤ30、第2リングギヤ32および第3リングギヤ42、第2キャリヤ38、第2サンギヤ40にそれぞれ置き換えて同様に描くことができる。
【0062】
したがって、変速比の計算式は図1に示した実施の形態と異なるが、第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18の歯数比を適切に設定して、各縦線同士の間隔が図3と同じになるようにすれば、変速比の値は図1の実施の形態と同じになる。
【0063】
図4に示した実施の形態も、6個の摩擦要素で前進8段後進2段の変速比が得られ、その場合に出力軸12と連結している回転メンバーが第2キャリヤ38であるため、図1の実施の形態と同様に、リングギヤが出力軸と連結した従来例より歯車にかかるトルクが小さくなる。
このため、第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18をその分だけ小さく設計できるので、製造コスト、所用スペース、重量の面でメリットがある。
【0064】
本発明に係る多段変速遊星歯車列によれば、上記したような効果が得られるほかに、さらに当業者の一般的な知識に基づいて、例えば第2キャリヤ38および第3サンギヤ40を固定する第2ブレーキ56と並列に第2のワンウエイクラッチと第3のブレーキを配置して2速から3速への変速ショックを出にくくするなどの改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図2】図1に示した多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【図3】図1に示した多段変速遊星歯車列の共通速度線図および変速比の例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【符号の説明】
10:入力軸
12:出力軸
14:第1遊星歯車組
16:第2遊星歯車組
18:第3遊星歯車組
20:第1サンギヤ
22:第1リングギヤ
24:第1アウタピニヨン
26:第1インナピニヨン
28:第1キャリヤ
30:第2サンギヤ
32:第2リングギヤ
34:第2アウタピニヨン、第2ピニヨン
36:第2インナピニヨン、
38:第2キャリヤ
40:第3サンギヤ
42:第3リングギヤ
44:第3ピニヨン
48:第3キャリヤ
50:第1ブレーキ
52:ケース
54:第1ブレーキ
56:第2ブレーキ
58:ワンウエイクラッチ
60:第1クラッチ
62:第2クラッチ
64:第3クラッチ
66:第4クラッチ
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用自動変速機に用いる、前進8段の変速比を有する多段変速遊星歯車列に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の前進8段の変速比を有する多段変速遊星歯車列としては、それぞれ回転メンバーを備えたダブルピニヨン型の第1変速部(第1遊星歯車組)と、シングルピニヨン型の第2遊星歯車組およびダブルピニヨン型の第3遊星歯車組とを備え、6個の摩擦要素による上記複数の回転メンバー間の連結や固定の組み合わせにより、前進8段の変速比を得ている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2003−130152号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の多段変速遊星歯車列にあっては、第2遊星歯車組の第2リングギヤが出力軸と連結されており、第3リングギヤには出力軸のトルクが全て作用するため、第3リングギヤの強度を確保するために直径を大きくするか軸方向長さを長くする必要があり、製造コスト、所用スペース、重量の面で問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、3組の遊星歯車組を用いて前進8段の変速比を得ながら、特に第3リングギヤに作用するトルクを減らすことにより、より小さい遊星歯車組で成り立つようにして、製造コスト、所用スペース、重量の面で改善することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1遊星歯車組、第2遊星歯車組および第3遊星歯車とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備えたダブルピニヨン型であり、第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤに噛み合った第2アウタピニヨンと、該第2アウタピニヨンおよび第2サンギヤに噛み合った第2インナピニヨンと、該第2インナピニヨンおよび第2アウタピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備えたダブルピニヨン型であり、第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備えたシングルピニヨン型であり、第1キャリヤは入力軸と連結し、第3キャリヤは出力軸と連結し、第1サンギヤはケースに固定するか、または固定可能であり、第2キャリヤと第3サンギヤとは連結するとともにケースに固定可能であり、かつ第1リングギヤおよび入力軸とも選択的に連結可能であり、第2リングギヤはケースに固定可能であるとともに入力軸と連結可能であり、第2サンギヤと第3リングギヤとは連結するとともに第1リングギヤと連結可能であることを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、第1遊星歯車組と第2遊星歯車組とは、サンギヤの歯数をリングギヤの歯数で割った歯数比が同一であることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1遊星歯車組、第2遊星歯車組および第3遊星歯車とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備えたダブルピニヨン型であり、第2遊星歯車組と第3遊星歯車組とが複合しており、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンと噛み合った第3リングギヤと、第2ピニヨンおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第1サンギヤは入力軸と連結し、第2キャリヤは前記出力軸と連結し、第1キャリヤはケースに固定するか、または固定可能であり、第2リングギヤはケースに固定可能であり、第2サンギヤは第1リングギヤと連結可能であり、第3サンギヤはケースに固定可能であり、かつ第1リングギヤおよび入力軸とも選択的に連結可能であり、第3リングギヤは入力軸と連結可能であることを特徴とする。
【0009】
【作用と効果】
請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、ダブルピニヨン型の第1遊星歯車組、第2遊星歯車組16およびシングルピニヨン型の第3遊星歯車組18を有し、第1キャリヤは入力軸と連結し、第3キャリヤは出力軸と連結し、第1サンギヤはケースに固定し、第2キャリヤと第3サンギヤとは連結するとともにケースに固定可能であり、かつ第1リングギヤおよび入力軸とも選択的に連結可能であり、第2リングギヤはケースに固定可能であるとともに入力軸と連結可能であり、第2サンギヤと第3リングギヤとは連結するとともに第1リングギヤと連結可能に構成したため、入力軸に入力された入力トルクは第1遊星歯車組にて減速され、そのトルクが増大されて第2、第3遊星歯車組に入力される。第2、第3遊星歯車組では、少なくとも前進第1速時に上記増大されたトルクが第2サンギヤおよび第3リングギヤに入力される。第1速では、第2リングギヤがケースに固定されるので、トルクはさらに増大されて第3キャリヤからこれが連結された出力軸に出力される。第2リングギヤはさらに第5速以上の高速段において入力軸と連結される。また、第2キャリヤおよび第3サンギヤが少なくとも前進第2速においてケースに固定可能であるとともに、少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能である。これらにより前進第2速以上を得る。また、後進にあっては、第2リングギヤがケースに固定される。その結果、第1乃至第3遊星歯車組の各回転メンバー間の連結・固定の組み合わせにより前進8段、後進2段の変速比で変速する。また、第3遊星歯車組に作用するトルクが小さくなるので、これを小型にすることができるので、製造コスト・スペース・重量の面で有利になる。
【0010】
請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、第1遊星歯車組と第2遊星歯車組とは、サンギヤの歯数をリングギヤの歯数で割った歯数比を同一としたため、第3遊星歯車組を含めた各回転メンバーの連結・固定の組み合わせで車両用変速機に好適な前進8段、後進2段の変速比で変速するとともに、第1遊星歯車組と第2遊星歯車組を製造する工具やジグを共通化するか、両遊星歯車組全体を共通化することのどちらかが可能になり、製造コストを削減することができる。
【0011】
請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、ダブルピニヨン型の第1遊星歯車組と、複合型の第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18を有し、第1サンギヤは入力軸と連結し、第2キャリヤは出力軸と連結し、第1キャリヤはケースに固定し、第3サンギヤはケースに固定可能であり、かつ第1リングギヤおよび入力軸とも選択的に連結可能であり、第2リングギヤはケースに固定可能であり、第3リングギヤは入力軸と連結可能であり、第2サンギヤを第1リングギヤと連結可能に構成したため、入力軸に入力された入力トルクは第1遊星歯車組にて減速され、そのトルクが増大されて第2、第3遊星歯車組に入力される。第2、第3遊星歯車組では、少なくとも前進第1速時に上記増大されたトルクが第2サンギヤに入力される。第1速では、第2リングギヤがケースに固定されるので、トルクはさらに増大されて第2キャリヤからこれが連結された出力軸に出力される。第3リングギヤは第5速以上の高速段において入力軸と連結される。また、第3サンギヤが少なくとも前進第2速においてケースに固定可能であるとともに、少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能である。これらにより前進第2速以上を得る。また、後進にあっては、第2リングギヤがケースに固定される。その結果、第1乃至第3遊星歯車組の各回転メンバー間の連結・固定の組み合わせにより前進8段、後進2段の変速比で変速する。また、第2、第3遊星歯車組に作用するトルクが小さくなるので、これを小型にすることができるので、製造コスト・スペース・重量の面で有利になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多段変速遊星歯車列における実施の形態を、図に基づき説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列を表すスケルトン図である。
なお、同図は同心とした入力軸10と出力軸12の軸心より上側半分を描いてある。
【0013】
この多段変速遊星歯車列は、入力軸10と出力軸12とが同軸心に配置され、これらと同軸上に3組の遊星歯車組、すなわち第1遊星歯車組14、第2遊星歯車組16、および第3遊星歯車組18が配置されている。
【0014】
第1遊星歯車組14は、一般的にダブルピニヨン型と呼ばれるものであり、第1サンギヤ20と、第1リングギヤ22と、第1リングギヤ22に噛み合った第1アウタピニヨン24と、これら第1アウタピニヨン24および第1サンギヤ20に噛み合った第1インナピニヨン26と、第1インナピニヨン26および第1アウタピニヨン24を回転自在に軸支する第1キャリヤ28とで構成されている。
【0015】
第2遊星歯車組16もダブルピニヨン型であり、第2サンギヤ30と、第2リングギヤ32と、第2リングギヤ32に噛み合った第2アウタピニヨン34と、これら第2アウタピニヨン34および第2サンギヤ30に噛み合った第2インナピニヨン36と、第2インナピニヨン36および第2アウタピニヨン34を回転自在に軸支する第2キャリヤ38とで構成されている。
【0016】
第3遊星歯車組16はシングルピニヨン型であり、第3サンギヤ40、第3リングギヤ42と、これらと噛み合う第3ピニヨン44と、該第3ピニヨン34を回転自在に軸支する第3キャリヤ48とから構成されている。
【0017】
第1遊星歯車組14、第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18の各回転メンバーは以下のように連結されているか、または連結可能である。
入力軸10は第1キャリヤ28と、出力軸12は第3キャリヤ48と、それぞれ連結されており、第1サンギヤ20はケース52(静止部)に常時固定されている。
【0018】
第2キャリヤ38と第3サンギヤ40は常に連結されているとともに、第1ブレーキ54によりケース52に固定可能であり、第2リングギヤ32は第2ブレーキ56によりケース52に固定可能であるとともに、ワンウエイクラッチ(OC)58でも常に一回転方向にケース52に固定されている。
【0019】
第1リングギヤ22は、第1クラッチ60により第2サンギヤ30および第3リングギヤ42と、第2クラッチ62により第2キャリヤ38および第3サンギヤ40と、それぞれ選択的に連結可能である。
入力軸10はまた、第1キャリヤ28を介して、第3クラッチ64により第2キャリヤ38および第3サンギヤ40と、第4クラッチ66により第2リングギヤ32と、それぞれ連結可能である。
【0020】
次に、図1に示した多段変速遊星歯車列の作動を、図2に示した作動表と図3の(a)に示した共通速度線図を参考にしながら説明する。
以下の説明では、クラッチやブレーキを摩擦要素と呼び、ワンウエイクラッチを含めて回転メンバー同士の連結機能を有するもの全体を総称して締結要素と呼ぶ。
【0021】
なお、図2の作動表において、横方向の欄にはクラッチやブレーキおよびワンウエイクラッチなどの締結要素が割り当ててあり、C−1は第1クラッチ60を、B−1は第1ブレーキ54を、OCはワンウエイクラッチ58をといった具合に、それぞれ表す。なお、これらの記号と各締結要素の番号との関係は、図1に記してある。
【0022】
縦方向の欄には図示しない操作レバーの「Dレンジ」「Rレンジ」および「Lレンジ」に分け、Dレンジは前進第1速(1st)乃至第8速(8th)を表し、Rレンジは後進第1速(R−1)と第2速(R−2)の各変速段を割り当ててある。
なお、Lレンジでは、後述するエンジンブレーキ時のように出力軸12側から入力軸10側を駆動することが可能である。
図2の作動表中、○印は各締結要素の締結を、また空欄は各締結要素の解放を表す。
【0023】
図3に示した共通速度線図は、縦方向が入力軸10の回転数を1とした場合の各回転メンバーの回転数を表し、横方向は上記した各遊星歯車の歯数比に応じた間隔に各回転メンバーを割り振って各回転メンバーごとに縦線を描いてある。
【0024】
共通速度線図の上方に書いた記号は、サンギヤはS、リングギヤはR、キャリヤはCで、またその後の数字1、2、3はそれぞれが属する3組の第1、第2、第3の遊星歯車組を表し、例えばS1、R1、C1は、それぞれ第1遊星歯車組14の第1サンギヤ20、第1リングギヤ22、第1キャリヤ28を表すようになっている。
【0025】
ここで、各遊星歯車組の歯数比は、リングギヤの歯数(Zr)に対するサンギヤの歯数(Zs)の比Zs/Zrであり、第1遊星歯車組14の歯数比をα1、第2遊星歯車組16の歯数比をα2、第3遊星歯車組18の歯数比をα3とする。
なお、共通速度線図を含めて変速比の計算には、α1、α2、α3を全て0.45とした場合について説明する。
【0026】
共通速度線図は、各縦線と太線との交点の高さがそれぞれの回転メンバーの回転数を表す。また、2点鎖線の水平線は回転メンバー同士が同じ回転数で結ばれていることを表す。
分かりやすくするため、出力軸12と連結された第3キャリヤ48(C3)の縦線における交点は○印で表示した。
図3の(b)にはα1、α2、α3を上記の値とした場合の各変速比およびそれら間の各段間比を示してある。
また、以下の変速比の計算式を簡素化するため、α2(1+α3)をAとする。
【0027】
始めに、第1遊星歯車組14は、第1サンギヤ20がケース52に固定されているので、第1リングギヤ22は常に入力軸10より低い回転数に減速駆動されており、その減速比(入力軸10の回転数/第1リングギヤ22の回転数)は1/(1−α1)である。
【0028】
前進第1速(1st)は、図2に示した作動表に見るように、第1クラッチ60の締結で第1リングギヤ22と第2サンギヤ30および第3リングギヤ42とを連結することと、ワンウエイクラッチ58が自動的に締結されて第2リングギヤ32がケース52に固定されることで実現する。
【0029】
すなわち、第2リングギヤ32はワンウエイクラッチ58の作用で車両を加速する駆動方向においてケース52に固定されるようになっている。
このため、Dレンジの第1速では、いわゆるエンジンブレーキのように出力軸12から入力軸10への駆動はできない。
【0030】
第1速は、第1遊星歯車組14で減速された第1リングギヤ22が第1クラッチ60を経て第2サンギヤ30および第3リングギヤ42を駆動する。
そして、さらに第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18で減速されて出力軸12に出力する。
【0031】
このとき、第1速の変速比(入力軸10の回転数/出力軸12の回転数)は、(1+α3−A)/{(1−α1)(1−A)}になり、上記の値に設定した歯数比においては4.173になる。
【0032】
これを図3の共通速度線図で説明すると、左側の第1遊星歯車組14において入力軸10と連結された第1キャリヤ28(C1)の回転数を1として、第1サンギヤ20(S1)がケース52に固定されているので回転数が0であり、両者を結んだ斜線(太線)と第1リングギヤ22(R1)の縦線との交点の高さが第1リングギヤ22の回転数になる。
【0033】
第1リングギヤ22と連結した右側の第2サンギヤ30(S2)および第3リングギヤ42(R3)が同じ回転数にあって、第2リングギヤ32が固定されて回転数0であり、両者を結ぶ線が1stと書かれた斜線(太線)になって、この斜線と第3キャリヤ48(C3)の縦線との交点の高さが出力軸12の回転数になる。
【0034】
次に、第2速(2nd)への変速は、前述の第1速での第1クラッチ60の締結に加えて、第1ブレーキ54を締結することにより第2キャリヤ38および第3サンギヤ40がケース52に固定されることで行われる。
このときに、第2リングギヤ32のケース52への固定は、ワンウエイクラッチ58の作用で自動的に解除される。
【0035】
第2キャリヤ38および第3サンギヤ40がケース52に固定されたことにより、第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18での減速比が第1速から変化して歯車列全体の変速比が変化する。
【0036】
共通速度線図においては2ndの斜線が示すように、第2キャリヤ38(C2)および第3サンギヤ40(S3)の回転数を0とした斜線になり、第2速の変速比は、(1+α3)/(1−α1)になる。
上記した歯数比においては2.636である。
【0037】
前述のように、前進第1速から第2速への変速は、ワンウエイクラッチ58の作用があるため、第1ブレーキ54の締結を追加するだけで済む。
したがって、変速時のいわゆる変速ショックは、第1ブレーキ54の締結を緩やかに行うように制御するだけで抑えられるので、円滑な変速を容易に行うことができる。
【0038】
次に、第3速(3rd)への変速は、第2速での第1ブレーキ54の締結を解除して第2クラッチ62を締結することで行われる。
これにより、第1クラッチ60と第2クラッチ62の締結で第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18全体が一体になるため、第1遊星歯車組14での減速比1/(1−α1)が第3速の変速比になって、上記した歯数比においては1.818であり、共通速度線図の右側においては3rdの水平線になる。
【0039】
続いて第4速(4th)への変速は、第3速における第2クラッチ62の締結を解除して、第3クラッチ64を締結することで行われる。
この段階で第2キャリヤ38および第3サンギヤ40は入力軸10と連結される。
【0040】
共通速度線図においては4thの斜線が示すように、第2キャリヤ38(C2)および第3サンギヤ40(S3)が入力軸10と同じ回転数1となってこれと第2サンギヤ30(S2)および第3リングギヤ42(R3)とを結んだ斜線になる。
第4速の変速比は(1+α3)/{(1−α1)(1+α3)+α1・α3}になる。
上記した歯数比においては1.450になる。
【0041】
次に、第5速(5th)への変速は、第4速における第3クラッチ64の締結を解除して第4クラッチ66を締結することで行われる。
この段階で第2リングギヤ32は入力軸10と連結され、以降の高速段において連結を維持される。
【0042】
共通速度線図においては5thの斜線が示すように、第2リングギヤ32(R2)が入力軸10と同じ回転数1となってこれと第2サンギヤ30(S2)および第3リングギヤ42(R3)とを結んだ斜線になる。
第5速の変速比は(1+α3−A)/{(1−α1)(1+α3−A)+α1・α3}になる。
上記した歯数比においては1.244になる。
【0043】
次に、第6速(6th)への変速は、第5速までにおける第1クラッチ60の締結を解除して再び第3クラッチ64を締結することで行われる。
この段階で第2キャリヤ38および第3サンギヤ40は再び入力軸10と連結される。
【0044】
これにより第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18は一体になるとともに、入力軸10と連結されて直結になり、変速比は歯数比にかかわらず1になる。
共通速度線図の右側においては6thの水平線になる。
【0045】
次に、第7速(7th)への変速は、第6速における第3クラッチ64の締結を解除して再び第2クラッチ62を締結することで行われる。
共通速度線図においては7thの斜線が示すように、第2キャリヤ38(C2)および第3サンギヤ40(S3)の回転数が第1リングギヤ22と同じになり、これと第2リングギヤ32(R2)の回転数1とを結んだものになる。
第7速の変速比は、A/{A(1−α1)+α1)になり、上記した歯数比においては0.807の増速(オーバードライブ)になる。
【0046】
次に第8速への変速は、第7速における第2クラッチ62の締結を解除して、第1ブレーキ54を締結することで、第2キャリヤ38および第3サンギヤ40をケース52に固定して行われる。
【0047】
共通速度線図では8thの斜線が示すように、第2キャリヤ38(C2)および第3サンギヤ40(S3)の回転数を0として、これと第2リングギヤ32(R2)の回転数1とを結んだものになり、変速比は、Aになる。
上記した歯数比においては0.653の増速になる。
【0048】
次に、Rレンジの後進第1速(R−1)の駆動は、第2クラッチ62と第2ブレーキ56を締結することで行われる。
これにより、第2キャリヤ38および第3サンギヤ40が第1リングギヤ22と連結され、第2リングギヤ32がケース52に固定される。
共通速度線図はR−1の斜線に示すようになり、変速比は−A/{(1−α1)(1−A)}になって、上記した歯数比においては−3.414になる。
【0049】
また、後進第2速(R−2)への変速は、後進第1速における第2クラッチ62の締結を解除して、第3クラッチ64を締結して第2キャリヤ38および第3サンギヤ40を入力軸10と連結することで行われる。
これにより、第2キャリヤ38(C2)および第3サンギヤ40(S3)が入力軸10と同じ回転数1になって、これと第3キャリヤ48(C3)の回転数0とを結んだ斜線になり、変速比はA/(A−1)になって、上記した歯数比においては−1.878になる。
【0050】
前述のように、Dレンジの第1速においてワンウエイクラッチ58は車両を加速する方向にのみ自動的に締結されるので、エンジンブレーキ時のように出力軸12側から駆動する場合には、これと併設されている第2ブレーキ56を図2の作動表のLレンジにおける1stに示すように締結し、Dレンジの前進第1速と同様に第1クラッチ60を締結する。
これにより、トルクが作用する方向を問わずに第2リングギヤ32がケース52に固定され、前進第1速の変速比を得ることができる。
【0051】
以上の変速比を図3の(b)にまとめる。
なお、隣り合った変速比同士の比が段間比である。
これに見るように、全般に高速段側にいくほど段間比が小さくなっており、内燃機関で駆動する車両用変速機の変速比として好ましい傾向になっている。
【0052】
以上が、図1に示した前進8段後進2段の多段遊星歯車列における作動と変速比であるが、前述のようにワンウエイクラッチ58の作用で円滑な変速制御を容易に行うことができるとともに、車両用変速機として好ましい変速比を得ることができる。
【0053】
また、出力軸12と連結している回転メンバーが第3キャリヤ48であるため、従来例のようにリングギヤが出力軸と連結した場合より歯車にかかるトルクが小さくなる。
すなわち、出力軸12のトルクを同じとして比較すると、従来例ではこれの全てがリングギヤに作用するが、図1のように第3キャリヤ48に出力軸12のトルクがかかった場合、第3リングギヤ42に1/(1+α3)のトルクが、第3サンギヤ40にはα3/(1+α3)のトルクが、それぞれ作用する。
【0054】
これに前述のα3の値0.45を当てはめると、第3リングギヤ42には出力軸12のトルクの0.69倍が作用することになり、従来例より約30%低くなる。
このため、第3遊星歯車組18をその分だけ小さく設計できるので、製造コスト、所用スペース、重量の面でメリットが生ずることになる。
【0055】
一方、第1遊星歯車組14と第2遊星歯車組16の歯数比を同一としても、車両用の変速機に好適な変速比が得られるため、これらを製造する工具やジグを共通化することができる。さらに進めると両方の遊星歯車組全体を共通化することも可能であり、製造コストの削減効果が期待できる。
【0056】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第2の実施の形態のスケルトンを図4に示す。また、作動表は図2と同じである。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0057】
図4の実施の形態における第1の違いは、第1遊星歯車14の第1サンギヤ20と第1キャリヤ28の連結関係が逆になっていることである。
すなわち、第1サンギヤ20が入力軸10と連結され、第1キャリヤ28が常にケース52に固定されている。このように、両者が逆の連結関係になっても第1リングギヤ22が入力軸10に減速駆動される関係は変わらない。
第2の違いは、第2遊星歯車組16と第3遊星歯車組18とが複合した構成になっていることである。
【0058】
すなわち、第2ピニヨン34が右側へ延びて、この第2ピニヨン34および第2サンギヤ30と噛み合う第3ピニヨン44があって、これら第2、第3ピニヨン34、44を回転自在に軸支する第2キャリヤ38があり、さらに第2ピニヨン44の右側と噛み合う第3リングギヤ42がある。
したがって、第2リングギヤ32と第3リングギヤ42の歯数を同一にできるとともに、両者の間から第2キャリヤ38が出力軸12と連結している。
【0059】
また、第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18の各回転メンバーと第1遊星歯車組14との連結関係は以下のようになる。
第2サンギヤ30が第1クラッチ60により第1リングギヤ22と連結可能である。
第2リングギヤ32が第2ブレーキ56によりケース52に固定可能であるとともに、ワンウエイクラッチ58により一回転方向にケース52に固定されている。
第3リングギヤ42は第4クラッチにより入力軸10と連結される。
【0060】
第3サンギヤ40は、第1ブレーキ54により第1キャリヤ28を介してケース52に固定可能であるとともに、第2クラッチ62により第1リングギヤ22と、第3クラッチ64により入力軸10と、それぞれ選択的に連結可能である。
【0061】
このように、第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18の構成および各回転メンバーの連結関係が図1と異なっているが、各締結要素の連結関係は図1の実施の形態と同じであり、上述のように作動表は図2と共通である。
詳細の説明は省略するが、共通速度線図については図3に示した右側の第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18の部分において、右端の縦線から順に第3サンギヤ30、第2リングギヤ32および第3リングギヤ42、第2キャリヤ38、第2サンギヤ40にそれぞれ置き換えて同様に描くことができる。
【0062】
したがって、変速比の計算式は図1に示した実施の形態と異なるが、第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18の歯数比を適切に設定して、各縦線同士の間隔が図3と同じになるようにすれば、変速比の値は図1の実施の形態と同じになる。
【0063】
図4に示した実施の形態も、6個の摩擦要素で前進8段後進2段の変速比が得られ、その場合に出力軸12と連結している回転メンバーが第2キャリヤ38であるため、図1の実施の形態と同様に、リングギヤが出力軸と連結した従来例より歯車にかかるトルクが小さくなる。
このため、第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18をその分だけ小さく設計できるので、製造コスト、所用スペース、重量の面でメリットがある。
【0064】
本発明に係る多段変速遊星歯車列によれば、上記したような効果が得られるほかに、さらに当業者の一般的な知識に基づいて、例えば第2キャリヤ38および第3サンギヤ40を固定する第2ブレーキ56と並列に第2のワンウエイクラッチと第3のブレーキを配置して2速から3速への変速ショックを出にくくするなどの改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図2】図1に示した多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【図3】図1に示した多段変速遊星歯車列の共通速度線図および変速比の例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【符号の説明】
10:入力軸
12:出力軸
14:第1遊星歯車組
16:第2遊星歯車組
18:第3遊星歯車組
20:第1サンギヤ
22:第1リングギヤ
24:第1アウタピニヨン
26:第1インナピニヨン
28:第1キャリヤ
30:第2サンギヤ
32:第2リングギヤ
34:第2アウタピニヨン、第2ピニヨン
36:第2インナピニヨン、
38:第2キャリヤ
40:第3サンギヤ
42:第3リングギヤ
44:第3ピニヨン
48:第3キャリヤ
50:第1ブレーキ
52:ケース
54:第1ブレーキ
56:第2ブレーキ
58:ワンウエイクラッチ
60:第1クラッチ
62:第2クラッチ
64:第3クラッチ
66:第4クラッチ
Claims (3)
- 入力軸と、
出力軸と、
前記入力軸と前記出力軸との間に設けられ、前記入力軸の回転数を前記出力軸の回転数へ変換する第1遊星歯車組、第2遊星歯車組および第3遊星歯車とを有し、
前記第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび前記第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび前記第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備えたダブルピニヨン型であり、
前記第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤに噛み合った第2アウタピニヨンと、該第2アウタピニヨンおよび前記第2サンギヤに噛み合った第2インナピニヨンと、該第2インナピニヨンおよび前記第2アウタピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備えたダブルピニヨン型であり、前記第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび前記第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備えたシングルピニヨン型であり、
前記第1キャリヤは前記入力軸と連結し、
前記第3キャリヤは前記出力軸と連結し、
前記第1サンギヤはケースに固定するか、または固定可能であり、
前記第2キャリヤと前記第3サンギヤとは連結するとともに前記ケースに固定可能であり、かつ前記第1リングギヤおよび前記入力軸とも選択的に連結可能であり、
前記第2リングギヤは前記ケースに固定可能であるとともに前記入力軸と連結可能であり、
前記第2サンギヤと前記第3リングギヤとは連結するとともに前記第1リングギヤと連結可能であることを特徴とする多段変速遊星歯車列。 - 前記第1遊星歯車組と前記第2遊星歯車組とは、サンギヤの歯数をリングギヤの歯数で割った歯数比が同一であることを特徴とする請求項1に記載の多段変速遊星歯車列。
- 入力軸と、
出力軸と、
前記入力軸と前記出力軸との間に設けられ、前記入力軸の回転数を前記出力軸の回転数へ変換する第1遊星歯車組、第2遊星歯車組および第3遊星歯車とを有し、
前記第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび前記第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび前記第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備えたダブルピニヨン型であり、
前記第2遊星歯車組と前記第3遊星歯車組とが複合しており、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび前記第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンと噛み合った第3リングギヤと、前記第2ピニヨンおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび前記第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、
前記第1サンギヤは前記入力軸と連結し、
前記第2キャリヤは前記出力軸と連結し、
前記第1キャリヤはケースに固定するか、または固定可能であり、
前記第2リングギヤは前記ケースに固定可能であり、
前記第2サンギヤは前記第1リングギヤと連結可能であり、
前記第3サンギヤは前記ケースに固定可能であり、かつ前記第1リングギヤおよび前記入力軸とも選択的に連結可能であり、
前記第3リングギヤは前記入力軸と連結可能であることを特徴とする多段変速遊星歯車列。
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