JP2004340318A - 多段変速遊星歯車列 - Google Patents
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Abstract
【課題】入力軸と出力軸と同じ軸心上に3列の遊星歯車組を設け、前進8段の変速比を得る遊星歯車列において、下流側遊星歯車組群の構成の自由度を拡大し、変速比の設定自由度をを広げる。
【解決手段】上流側遊星歯車組をダブルピニヨン型の第1遊星歯車組14として、下流側遊星歯車組群が、回転メンバーとして第1回転メンバー、第2回転メンバー、第3回転メンバー、および第4回転メンバーとを備え、第1サンギヤ20を入力軸10と連結し、第1キャリヤ28をケース52に固定し、第1回転メンバーを第1リングギヤ22と連結可能とし、第2回転メンバーをケース52に固定可能であるとともに入力軸10と連結可能とし、第3回転メンバーを第1キャリヤ28を介してケース52に固定可能であるとともに第1リングギヤ22、入力軸10とそれぞれ連結可能とし、第4回転メンバーを出力軸12と連結した。
【選択図】 図1
【解決手段】上流側遊星歯車組をダブルピニヨン型の第1遊星歯車組14として、下流側遊星歯車組群が、回転メンバーとして第1回転メンバー、第2回転メンバー、第3回転メンバー、および第4回転メンバーとを備え、第1サンギヤ20を入力軸10と連結し、第1キャリヤ28をケース52に固定し、第1回転メンバーを第1リングギヤ22と連結可能とし、第2回転メンバーをケース52に固定可能であるとともに入力軸10と連結可能とし、第3回転メンバーを第1キャリヤ28を介してケース52に固定可能であるとともに第1リングギヤ22、入力軸10とそれぞれ連結可能とし、第4回転メンバーを出力軸12と連結した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用自動変速機に用いる、前進8段の変速比を有する多段変速遊星歯車列に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の前進8段の変速比を有する多段変速遊星歯車列としては、それぞれ回転メンバーを備えた第1列のダブルピニヨンプラネタリギヤ(上流側遊星歯車組)と、ラビニヨ式ギヤユニット(下流側遊星歯車組群)とを備え、6個の摩擦要素による上記複数の回転メンバー間の連結や固定の組み合わせにより、前進8段の変速比を得ている(例えば、特許文献1参照)。
また、それぞれ回転メンバーを備えたダブルピニヨン型の第1変速部(上流側遊星歯車組)と、シングルピニヨン型の第2遊星歯車装置およびダブルピニヨン型の第3遊星歯車装置とからなる下流側遊星歯車組群とを備え、6個の摩擦要素による上記複数の回転メンバー間の連結や固定の組み合わせにより、前進8段の変速比を得ている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−182785号公報
【特許文献2】
特開2003−130152号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の多段変速遊星歯車列にあっては、特許文献1の図2のように、下流側遊星歯車組群をラビニヨ式として前進第1速においてサンギヤに入力する構成に特定されてしまうため、変速比の採れる範囲が狭くなってしまう。
特許文献2の場合も、下流側遊星歯車組群の一方をダブルピニヨン型遊星歯車装置として、前進第1速においてサンギヤに入力するので同様のことが言える。
【0005】
すなわち、遊星歯車はリングギヤの歯数に対するサンギヤの歯数の比によって変速比が定まるが、歯の強度との関係などから一般に0.4〜0.6の範囲内の値に設定する例が多く、下流側遊星歯車組群において上記のラビニヨ式やダブルピニヨン型でサンギヤ入力場合は採りうる変速比の自由度が低いという問題があった。
【0006】
また、特許文献2における下流側遊星歯車組群のうち一方の第3遊星歯車装置がダブルピニヨン型であり、シングルピニヨン型のみで構成した場合に比べて部品点数が多くなって製造コストが高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、3列の遊星歯車組を用いて前進8段の変速比を得る場合でも、採り得る変速比の範囲を上記従来のものより広げることを可能にした前進8段の変速比を有する多段変速遊星歯車列を得るとともに、製造コストを安くすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群とを有し、上流側遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、下流側遊星歯車組群が、回転メンバーとして第1回転メンバー、第2回転メンバー、第3回転メンバー、および第4回転メンバーを備え、第1サンギヤは入力軸と連結し、第1キャリヤはケースに固定するか、または固定可能であり、第1回転メンバーは少なくとも前進第1速において第1リングギヤと連結可能であり、第2回転メンバーは前進第1速および後進においてケースに固定可能であるとともに、前進第5速以上の高速段において入力軸と連結可能であり、第3回転メンバーは少なくとも前進第2速において第1キャリヤと連結することによりケースに固定可能であるとともに、少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能であり、第4回転メンバーは出力軸と連結したことを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため、請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、下流側遊星歯車組群が、第2遊星歯車組および第3遊星歯車組からなり、第2遊星歯車組は、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組は、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3キャリヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤと第3サンギヤとが連結して第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤと第3リングギヤとが連結して第4回転メンバーを構成したことを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため、請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、下流側遊星歯車組群が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンおよび第3リングギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3リングギヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤが第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤが第4回転メンバーを構成したことを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するため、請求項4に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群とを有し、上流側遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、下流側遊星歯車組群が、回転メンバーとして第1回転メンバー、第2回転メンバー、第3回転メンバー、第4回転メンバー、および第5回転メンバーを備え、第1キャリヤは入力軸と連結し、第1サンギヤはケースに固定するか、または固定可能であり、第1回転メンバーは少なくとも前進第1速において第1リングギヤと連結可能であり、第2回転メンバーは前進第1速および後進においてケースに固定可能であるとともに、前進第5速以上の高速段において入力軸と連結可能であり、第3回転メンバーは少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能であり、第4回転メンバーは前記出力軸と連結し、第5回転メンバーは少なくとも前進第2速においてケースに固定可能であることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、請求項5に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、下流側遊星歯車組群が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンおよび第3リングギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤと、第2ピニヨンと噛み合った第3サンギヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3リングギヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤが第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤが第4回転メンバーを構成し、第3サンギヤが第5回転メンバーを構成したことを特徴とする。
【0013】
【作用】
請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、入力軸に入力された入力トルクは上流側遊星歯車組にて減速され、そのトルクが増大されて下流側遊星歯車組群に入力される。下流側遊星歯車組群では、少なくとも前進第1速時に上記増大されたトルクが第1回転メンバーに入力される。第1速では、さらに第2回転メンバーがケースに固定されて、第1回転メンバーに入力されたトルクはさらに増大されて第4回転メンバーからこれが連結された出力軸に出力される。第2回転メンバーはさらに第5速以上の高速段において入力軸と連結される。また、第3回転メンバーが少なくとも前進第2速において第1キャリヤと連結することによりケースに固定可能であるとともに、少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能である。これらにより前進第2速以上を得る。また、後進にあっては、第2回転メンバーがケースに固定可能となる。その結果、上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群の各回転メンバー間の連結・固定の組み合わせにより前進8段、後進2段の変速比で変速する。
【0014】
請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、下流側遊星歯車組群が、第2遊星歯車組および第3遊星歯車組からなり、第2遊星歯車組は、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組は、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3キャリヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤと第3サンギヤとが連結して第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤと第3リングギヤとが連結して第4回転メンバーを構成したため、第1回転メンバー乃至第3回転メンバーと上流側遊星歯車組の回転メンバーもしくはケースとを選択的に連結することで前進8段、後進2段の変速比で変速する。
【0015】
請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、下流側遊星歯車組群が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンおよび第3リングギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3リングギヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤが第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤが第4回転メンバーを構成したため、第1回転メンバー乃至第3回転メンバーと上流側遊星歯車組の回転メンバーもしくはケースとを選択的に連結することで前進8段、後進2段の変速比で変速する。
【0016】
請求項4に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、入力軸に入力された入力トルクは上流側遊星歯車組にて減速され、そのトルクが増大されて下流側遊星歯車組群に入力される。下流側遊星歯車組群では、少なくとも前進第1速時に上記増大されたトルクが第1回転メンバーに入力される。第1速では、さらに第2回転メンバーがケースに固定されて、第1回転メンバーに入力されたトルクはさらに増大されて第4回転メンバーからこれが連結された出力軸に出力される。第2回転メンバーはさらに第5速以上の高速段において入力軸と連結される。また、第3回転メンバーが少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能である。さらに第5回転メンバーが少なくとも前進第2速においてケースに固定可能である。これらにより前進第2速以上を得る。また、後進にあっては、第2回転メンバーがケースに固定可能となる。その結果、上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群の各回転メンバー間の連結・固定の組み合わせにより前進8段、後進2段の変速比で変速する。
【0017】
請求項5に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、下流側遊星歯車組群が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンおよび第3リングギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤと、第2ピニヨンと噛み合った第3サンギヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3リングギヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤが第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤが第4回転メンバーを構成し、第3サンギヤが第5回転メンバーを構成したため、第1メンバー回転乃至第3回転メンバーおよび第5回転メンバーと上流側遊星歯車組の回転メンバーもしくはケースとを選択的に連結することで前進8段、後進2段の変速比で変速する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多段変速遊星歯車列における実施の形態を、図に基づき説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列を表すスケルトン図である。
なお、同図は同心とした入力軸10と出力軸12の軸心より上側半分を描いてある。
【0019】
この多段変速遊星歯車列は、入力軸10と出力軸12とが同心に配置され、これらと同じ軸心上に3組の遊星歯車組、すなわち第1遊星歯車組14、第2遊星歯車組16、および第3遊星歯車組18が配置されている。
なお、以下の説明において、第1遊星歯車組14を上流側遊星歯車組と呼び、他の第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18を下流側遊星歯車組群と、区別して呼ぶことがある。
【0020】
第1遊星歯車組14は、一般的にダブルピニヨン型と呼ばれるものであり、第1サンギヤ20と、第1リングギヤ22と、第1リングギヤ22に噛み合った第1アウタピニヨン24と、これら第1アウタピニヨン24および第1サンギヤ20に噛み合った第1インナピニヨン26と、第1インナピニヨン26および第1アウタピニヨン24を回転自在に軸支する第1キャリヤ28とで構成されている。
【0021】
第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18は、ともにシングルピニヨン型であり、それぞれ第2、第3サンギヤ30、40と、第2、第3リングギヤ32、42と、これらと噛み合う第2、第3ピニヨン34、44と、この第2、第3ピニヨン34、44を回転自在に軸支する第2、第3キャリヤ38、48とから構成されている。なお、上記下流側遊星歯車組群は一般にシンプソン歯車列と称されているものである。
【0022】
第1サンギヤ20は入力軸10と連結されており、第1キャリヤ28はケース52に固定されるとともに、第1ブレーキ(B−1)54を介して第2サンギヤ30と連結可能である。
【0023】
第2サンギヤ30と第3サンギヤ40とは常に連結され一体になっており、ともに本発明の第3メンバーを構成する。
前述のように第1キャリヤ28はケース52に固定されているので、これと連結可能な第2サンギヤ30および第3サンギヤ40はケース52に固定可能であることになる。
第3キャリヤ48は、本発明の第2メンバーを構成し、第2ブレーキ56によりケース52に固定可能であるとともに、ワンウエイクラッチ(OC)58により一回転方向のみ常にケース52に固定される。
【0024】
第1リングギヤ22は、第1クラッチ(C−1)60を介して本発明の第1メンバーを構成する第2リングギヤ32と、第2クラッチ(C−2)62を介して第2サンギヤ30および第3サンギヤ40と、それぞれ連結可能である。
入力軸10は、第3クラッチ(C−3)64により第2サンギヤ30および第3サンギヤ40と、第4クラッチ(C−4)66により第3キャリヤ48と、それぞれ連結可能である。
【0025】
第2キャリヤ38と第3リングギヤ42とは常に連結され、ともに本発明の第4メンバーを構成するとともに、出力軸12とも連結している。
出力軸12には出力歯車12aが一体的に設けてあり、出力歯車12aは図示しない車軸等を駆動する。
【0026】
次に、図1に示した多段変速遊星歯車列の作動を、図2に示した作動表と図3の(a)に示した共通速度線図を参考にしながら説明する。
以下の説明では、クラッチやブレーキを摩擦要素と呼び、ワンウエイクラッチを含めて回転メンバー同士の連結機能を有するもの全体を総称して締結要素と呼ぶ。
【0027】
なお、図2の作動表において、横方向の欄にはクラッチやブレーキおよびワンウエイクラッチなどの締結要素が割り当ててあり、C−1は第1クラッチ60を、B−1は第1ブレーキ54を、OCはワンウエイクラッチ58をといった具合に、それぞれ表す。なお、これらの記号と各締結要素の番号との関係は、図1に記してある。
【0028】
縦方向の欄には図示しない操作レバーの「Dレンジ」「Rレンジ」および「Lレンジ」に分け、Dレンジは前進第1速(1st)乃至第8速(8th)を表し、Rレンジは後進第1速(R−1)と第2速(R−2)の各変速段を割り当ててある。
なお、Lレンジでは、後述するエンジンブレーキ時のように出力軸12側から入力軸10側を駆動することが可能である。
図2の作動表中、○印は各締結要素の締結を、また空欄は各締結要素の解放を表す。
【0029】
図3に示した共通速度線図は、縦方向が入力軸10の回転数を1とした場合の各回転メンバーの回転数を表し、横方向は上記した各遊星歯車の歯数比に応じた間隔に各回転メンバーを割り振って各回転メンバーごとに縦線を描いてある。
【0030】
共通速度線図の上方に書いた記号は、サンギヤはS、リングギヤはR、キャリヤはCで、またその後の数字1、2、3はそれぞれが属する3列のうち第1、第2、第3の遊星歯車組を表し、例えばS1、R1、C1は、それぞれ第1遊星歯車組14の第1サンギヤ20、第1リングギヤ22、第1キャリヤ28を表すようになっている。
また、その上に書いてある丸で囲んだ数字は、後述する第1回転メンバー乃至第4回転メンバーを表すものであり、例えば▲1▼は第1回転メンバーを表す。
【0031】
ここで、各遊星歯車組の歯数比は、リングギヤの歯数(Zr)に対するサンギヤの歯数(Zs)の比Zs/Zrであり、第1遊星歯車組14の歯数比をα1、第2遊星歯車組16の歯数比をα2、第3遊星歯車組18の歯数比をα3とする。
なお、共通速度線図を含めて変速比の計算には、α1を0.52、α2を0.50、α3を0.45とした場合について説明する。
【0032】
図2の共通速度線図は、各縦線と太線との交点の高さがそれぞれの回転メンバーの回転数を表す。また、2点鎖線の水平線は回転メンバー同士が同じ回転数で結ばれていることを表す。
分かりやすくするため、出力軸12と連結された第2キャリヤ38(C2)および第3リングギヤ42(R3)の縦線における交点は○印で表示した。
また、図3の(b)にはα1、α2、α3を上記の値とした場合の各変速比およびそれら間の各段間比を示してある。
【0033】
始めに、上流側遊星歯車組の第1遊星歯車組14は、第1キャリヤ28がケース52に固定されているので、第1リングギヤ22は常に入力軸10より低い回転数に減速駆動されており、その減速比は1/α1である。
【0034】
前進第1速(1st)は、図2に示した作動表に見るように、第1クラッチ60の締結で第1リングギヤ22と第2リングギヤ32とを連結することと、ワンウエイクラッチ58が自動的に締結されて第3キャリヤ48がケース52に固定されることで実現する。
【0035】
すなわち、第3キャリヤ48はワンウエイクラッチ58の作用で車両を加速する駆動方向においてケース52に固定されるようになっている。
このため、Dレンジの第1速では、いわゆるエンジンブレーキのように出力軸12から入力軸10への駆動はできない。
【0036】
第1速は、上流側遊星歯車組(第1遊星歯車組14)で減速された第1リングギヤ22が第1クラッチ60を経て、下流側遊星歯車組群の第2リングギヤ32を駆動する。
そして、さらに下流側遊星歯車組群で減速されて出力軸12に出力する。
このとき、第1速の変速比(入力軸10の回転数/出力軸12の回転数)は、{(1+α2)+α2/α3}/α1になり、上記の値に設定した歯数比においては5.021になる。
【0037】
これを図3の共通速度線図で説明すると、左側の第1遊星歯車組14において入力軸10と連結された第1サンギヤ20(S1)の回転数を1として、第1キャリヤ28(C1)がケース52に固定されているので回転数が0であり、両者を結んだ斜線(太線)と第1リングギヤ22(R1)の縦線との交点の高さが第1リングギヤ22の回転数になる。
【0038】
第1リングギヤ22と連結した右側の第2リングギヤ32(R2)が同じ回転数にあって、第3キャリヤ48(C3)がケース52に固定されて回転数が0であり、両者を結ぶ線が1stと書かれた斜線(太線)になって、この斜線と第2キャリヤ38(C2)および第3リングギヤ42(R3)の縦線との交点の高さが出力軸12の回転数になる。
【0039】
なお、第2リングギヤ32のように、第1速において第1リングギヤ22と連結される回転メンバーを第1回転メンバーと呼ぶ。なお、第1回転メンバーは第5速まで第1リングギヤ22との連結を維持される。
また、第3キャリヤ48のように、第1速においてケース52に固定される回転メンバーを第2回転メンバーと呼ぶ。
第2回転メンバーは後述するように、後進においてもケース52に固定されるとともに、第5速以上の高速段において入力軸10と連結される。
【0040】
次に、第2速(2nd)への変速は、前述の第1速での第1クラッチ60の締結に加えて、第1ブレーキ54を締結することにより第2サンギヤ30および第3サンギヤ40がケース52に固定されることで行われる。
このときに、第3キャリヤ48のケース52への固定は、ワンウエイクラッチ58の作用で自動的に解除される。
【0041】
第2サンギヤ30および第3サンギヤ40がケース52に固定されたことにより、下流側遊星歯車組群での減速比が第1速から変化して歯車列全体の変速比が変化する。
【0042】
共通速度線図においては2ndの斜線が示すように、第2サンギヤ30(S2)および第3サンギヤ40(S3)の回転数を0とした斜線になり、第2速の変速比は、(1+α2)/α1になる。
上記した歯数比においては2.885である。
【0043】
前述のように、前進第1速から第2速への変速は、ワンウエイクラッチ58の作用があるため、第1ブレーキ54の締結を追加するだけで済む。
したがって、変速時のいわゆる変速ショックは、第1ブレーキ54の締結を緩やかに行うように制御するだけで抑えられるので、円滑な変速を容易に行うことができる。
【0044】
なお、第2サンギヤ30および第3サンギヤ40のように、第2速において第1キャリヤ28と連結することによってケース52に固定する回転メンバーを第3回転メンバーと呼び、この第3回転メンバーは後述するように第8速においてもケース52に固定されるとともに、第3速、第7速および後進第1速において第1リングギヤ22と連結され、第4速、第6速および後進第2速において入力軸10と連結される。
【0045】
次に、第3速(3rd)への変速は、第2速での第1ブレーキ54の締結を解除して第2クラッチ62を締結することで行われる。
この段階で第3回転メンバーである第2サンギヤ30および第3サンギヤ40は、第1リングギヤ22と連結される。
【0046】
したがって、第1クラッチ60と第2クラッチ62の締結で下流側遊星歯車組群全体が一体になるため、第1遊星歯車組14での減速比1/α1が第3速の変速比になって、上記した歯数比においては1.923であり、共通速度線図の右側においては3rdの水平線になる。
【0047】
続いて第4速(4th)への変速は、第3速における第2クラッチ62の締結を解除して、第3クラッチ64を締結することで行われる。
この段階で第3回転メンバーである第2サンギヤ30および第3サンギヤ40は入力軸10と連結される。
【0048】
共通速度線図においては4thの斜線が示すように、第3回転メンバーである第2サンギヤ30および第3サンギヤ40が入力軸10と同じ回転数1となってこれと第1回転メンバーである第2リングギヤ32とを結んだ斜線になる。
ここで、α2(1+α3)をAとおいた場合、第4速の変速比は(1+α3+A)/(α1+α1・α3+A)になる。
上記した歯数比においては1.471になる。
【0049】
次に、第5速(5th)への変速は、第4速における第3クラッチ64の締結を解除して第4クラッチ66を締結することで行われる。
この段階で第2回転メンバーである第3キャリヤ48は入力軸10と連結され、以降の高速段において連結を維持される。
【0050】
共通速度線図においては5thの斜線が示すように、第3キャリヤ48が入力軸10と同じ回転数1となってこれと第1回転メンバーである第2リングギヤ32とを結んだ斜線になる。
第5速の変速比は(A+α3)/{α1(A+α3)+A(1−α1)}になる。
上記した歯数比においては1.225になる。
【0051】
次に、第6速(6th)への変速は、第5速までにおける第1クラッチ60の締結を解除して再び第3クラッチ64を締結することで行われる。
この段階で第3回転メンバーである第2サンギヤ30および第3サンギヤ40は、再び入力軸10と連結される。
【0052】
これにより下流遊星歯車群の第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18は一体になるとともに、入力軸10と連結されて直結になり、変速比は歯数比にかかわらず1になる。
共通速度線図の右側においては6thの水平線になる。
【0053】
次に、第7速(7th)への変速は、第6速における第3クラッチ64の締結を解除して再び第2クラッチ62を締結することで行われる。
共通速度線図においては7thの斜線が示すように、第2サンギヤ30および第3サンギヤ40の回転数が第1リングギヤ22と同じになり、これと第3キャリヤ48の回転数1とを結んだものになる。
第7速の変速比は、1/(1+α3−α1・α3)になり、上記した歯数比においては0.822の増速(オーバードライブ)になる。
【0054】
次に第8速への変速は、第7速における第2クラッチ62の締結を解除して、第1ブレーキ54を締結することで、第3回転メンバーである第2サンギヤ30および第3サンギヤ40をケース52に固定して行われる。
【0055】
共通速度線図では8thの斜線が示すように、第2サンギヤ30および第3サンギヤ40を0として、これと第3キャリヤ48の回転数1とを結んだものになり、変速比は、1/(1+α3)になる。
上記した歯数比においては0.690の増速になる。
【0056】
次に、Rレンジの後進第1速(R−1)の駆動は、第2クラッチ62と第2ブレーキ56を締結することで行われる。
ここでは、第2回転メンバーである第3キャリヤ48がケース52に固定される。
また、第3回転メンバーである第3サンギヤ40が第1リングギヤ22と連結され、下流側遊星歯車組群への入力回転メンバーになる。
共通速度線図はR−1の斜線に示すようになり、変速比は−1/(α1・α3)になって、上記した歯数比においては−4.274になる。
【0057】
また、後進第2速(R−2)への変速は、後進第1速における第2クラッチ62の締結を解除して、第3クラッチ64を締結して第3回転メンバーである第3サンギヤ40を入力軸10と連結することで行われる。
これにより、第3回転メンバーである第3サンギヤ40が入力軸10と同じ回転数1になって、これと第3キャリヤ48の回転数0とを結んだ斜線になり、変速比は−1/α3になって、上記した歯数比においては−2.222になる。
【0058】
前述のように、Dレンジの第1速においてワンウエイクラッチ58は車両を加速する方向にのみ自動的に締結されるので、エンジンブレーキ時のように出力軸12側から駆動する場合には、これと併設されている第2ブレーキ56を図2の作動表のLレンジにおける1stに示すように締結する。
これにより、トルクが作用する方向を問わずに第3キャリヤ48がケース52に固定され、前進第1速の変速比を得ることができる。
【0059】
以上の変速比を図3の(b)にまとめる。
なお、隣り合った変速比同士の比が段間比である。
これに見るように、全般に高速段側にいくほど段間比が小さくなっており、内燃機関で駆動する車両用変速機の変速比として好ましい傾向になっている。
【0060】
以上が、図1に示した前進8段後進2段の多段遊星歯車列における作動と変速比であるが、前述のようにワンウエイクラッチ58の作用で円滑な変速制御を容易に行うことができるとともに、車両用変速機として好ましい変速比を得ることができる。
【0061】
また、6個の摩擦要素により前進8段の歯車列が得られるとともに、上流側遊星歯車組により増大された大きなトルクが作用する前進第1速における下流側遊星歯車組群への入力が、直径の大きな第2リングギヤ32であるため、ギヤの歯元応力が大きくなることを回避できるので、歯車列全体をコンパクトにすることができる。
【0062】
さらに、下流側遊星歯車組群のシンプソン歯車列は変速比の自由度が高いので、前述の各変速比を幅広い範囲で変化させた設定にすることができる。
変速比は加速性能や燃費のために、一般に車両重量や内燃機関の特性に応じた設定にする必要があるが、各変速比を幅広い範囲で設定できることは乗用車から商用車まで応用が可能であり、各変速段の変速比をきめ細かく設定して排気対策もやりやすくなるメリットが得られる。
【0063】
また、これらのメリットを有する多段変速遊星歯車列全体を、入力軸10および出力軸12と同じ軸心上に配置するうえで、下流側遊星歯車組群の構成に左右されないことが従来にない本発明の基本的な特徴である。
これは、第3メンバーの第2サンギヤ30および第3サンギヤ40のケース52への固定を、第1キャリヤ28を介して行う構成にしたためにできたことである。
【0064】
したがって、以下、第2乃至第5の実施の態様で説明するように、下流側遊星歯車組群の構成を自由に選択することができる。
さらに下流側遊星歯車組群を2組のシングルピニヨン型遊星歯車で構成したため、ダブルピニヨン型遊星歯車組を含むより部品点数が少なく、製造コストを抑えることができる。
なお、図1は遊星歯車列の右側から入力するように、入力軸10が右側へ延びているが、反対側へ延ばして左側から駆動することもできる。
【0065】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第2の実施態様のスケルトンを図4に示す。また、作動表は図2と同じである。
以下に示す図は、図1の実施の形態と同様の機能を有する構成部品に、基本的に同じ符号を割り当てて書いてある。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0066】
図4の実施の形態における違いは、下流側遊星歯車組群の構成が異なることである。
すなわち、第2ピニヨン34が右側へ延びて、これおよび第3リングギヤ42と噛み合う第3ピニヨン44があって、これら第2、第3ピニヨン34、44を回転自在に軸支する第2キャリヤ38がある。
【0067】
また、上流側遊星歯車組との連結関係は以下のようになる。
第2リングギヤ32が第1回転メンバーを構成するのは図1と同じであり、第1速乃至第5速において第1リングギヤ22と連結されるのも同様である。
第3リングギヤ42が第2回転メンバーを構成するのが図1とは異なり、これは第1速および後進において第1キャリヤ28を介してケース52に固定されるとともに、第5速以上の高速段において入力軸10と連結される。
【0068】
第2サンギヤ30が第3回転メンバーを構成し、第2速および第8速において第1キャリヤ28を介してケース52に固定されるとともに、第3速、第7速および後進第1速において第1リングギヤ22と連結され、第4速、第6速および後進第2速において入力軸10と連結する。
また、第2キャリヤ38が常に出力軸12と連結されて第4回転メンバーを構成するのが図1と異なる。
【0069】
このように、第2回転メンバーおよび第4回転メンバーの構成が図1と異なるが、各締結要素の連結関係は図1の実施の形態と同じであり、上述のように作動表は図2と共通である。
詳細の説明は省略するが、共通速度線図については図3に示した右側の下流側遊星歯車組群の部分で、第1回転メンバー乃至第4回転メンバーを上記のように置き換えれば同様に描くことができる。
したがって、変速比の計算式は図1に示した実施の形態と異なるが、下流側遊星歯車組群の歯数比を適切に設定して、第1回転メンバー乃至第4回転メンバーを示す縦軸同士の間隔を図3と同じにすれば、変速比の値は図1の実施の形態と同じになる。
【0070】
図4に示した実施の形態も、6個の摩擦要素で前進8段後進2段の変速比が得られ、その場合に採り得る変速比の範囲の自由度を拡大できるとともに、前進第1速における下流側遊星歯車組群への入力が、第2リングギヤ32であるため、ギヤの歯元応力が大きくなることを回避することができる。
また、下流側遊星歯車組群は複合型の遊星歯車であるが、ダブルピニヨン型の遊星歯車を含む構成より全体としての部品点数が少なく、製造コストも安い。
【0071】
図4に示した実施の形態も変速比の採れる範囲が広いので、変速比の設定自由度が拡大する。
入力軸10、出力軸12と同じ軸心上に上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群を配置することができるのも同様である。
なお、図4においても、入力軸10を左側へ延ばして左側から駆動することもできる。
【0072】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第3の実施の形態のスケルトンを図5に示す。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。なお、作動表は図2に示したものと同じである。
【0073】
図1との違いは、入力軸10が左側へ延びているとともに、第2の実施の形態と同様に、下流側遊星歯車組群の構成が異なることである。
すなわち、第3サンギヤ40が第1回転メンバーを構成し、第1速乃至第5速において第1リングギヤ22と連結される。
【0074】
また、第2キャリヤ38と第3リングギヤ42とが連結して第2回転メンバーを構成し、これらは第1速および後進においてケース52に固定されるとともに、第5速以上の高速段において入力軸10と連結される。
【0075】
第2サンギヤ30が第3回転メンバーを構成し、第2速および第8速において第1キャリヤ28を介してケース52に固定されるとともに、第3速、第7速および後進第1速において第1リングギヤ22と連結され、第4速、第6速および後進第2速において入力軸10と連結する。
さらに、第2リングギヤ32と第3キャリヤ48とが連結して第4回転メンバーを構成し、常に出力軸12と連結している。
【0076】
第1回転メンバー乃至第4回転メンバーの構成は図1と異なるが、各第1回転メンバー乃至第4回転メンバーと上流側遊星歯車組との連結関係は図1の実施の形態と同じであり、上述のように作動表も図2と共通である。
【0077】
変速比の計算式は図1に示した実施の形態と異なるが、第1回転メンバー乃至第4回転メンバーと共通速度線図の関係は図3と同様であり、前進8段後進2段の変速比を得ることができる。
詳細の説明は省略したが、図5に示した実施の形態も、6個の摩擦要素で前進8段後進2段の変速比が得られ、従来例に比べて採り得る変速比の範囲の自由度を拡大することができる。
また、入力軸10、出力軸12と同じ軸心上に上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群を配置することができる。
【0078】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第4の実施の形態のスケルトンを図6に示す。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。なお、作動表は図2に示したものと同じである。
【0079】
図1との違いは、入力軸10が左側へ延びているとともに、第3の実施の形態と同様に、下流側遊星歯車組群の構成が異なることである。
すなわち、第3サンギヤ40と第2リングギヤ32が連結して第1回転メンバーを構成し、第1速乃至第5速において第1リングギヤ22と連結される。
そして、第3リングギヤ42が第2回転メンバーを構成し、第1速および後進においてケース52に固定されるとともに、第5速以上の高速段において入力軸10と連結される。
【0080】
また、第2サンギヤ30が第3回転メンバーを構成し、第2速および第8速において第1キャリヤ28を介してケース52に固定されるとともに、第3速、第7速および後進第1速において第1リングギヤ22と連結され、第4速、第6速および後進第2速において入力軸10と連結する。
さらに、第2キャリヤ38と第3キャリヤ48とが連結して第4回転メンバーを構成し、常に出力軸12と連結している。
【0081】
第1回転メンバー乃至第4回転メンバーの構成は図1と異なるが、各第1回転メンバー乃至第4回転メンバーと上流側遊星歯車組との連結関係は図1の実施の形態と同じであり、上述のように作動表も図2と共通である。
【0082】
変速比の計算式は図1に示した実施の形態と異なるが、第1回転メンバー乃至第4回転メンバーと共通速度線図の関係は図3と同様であり、前進8段後進2段の変速比を得ることができる。
詳細の説明は省略したが、図6に示した実施の形態も、6個の摩擦要素で前進8段後進2段の変速比が得られ、採り得る変速比の範囲の自由度を従来例に比べて拡大することができる。
また、入力軸10、出力軸12と同じ軸心上に上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群を配置することができる。
【0083】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第5の実施の形態のスケルトンを図7に示す。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。なお、作動表は図2に示したものと同じである。
【0084】
図1との違いは、入力軸10が左側へ延びているとともに、第3乃至第4の実施の形態と同様に、下流側遊星歯車組群の構成が異なることである。
すなわち、第2リングギヤがないとともに第2ピニヨン34が右側へ伸びて第3リングギヤ42と噛み合っており、第3ピニヨン44は第2ピニヨン34および第3サンギヤ40と噛み合っている。
【0085】
次に各回転メンバーの構成を説明する。
第2サンギヤ30が第1回転メンバーを構成し、第1速乃至第5速において第1リングギヤ22と連結される。
そして、第2リングギヤ32が第2回転メンバーを構成し、第1速および後進においてケース52に固定されるとともに、第5速以上の高速段において入力軸10と連結される。
【0086】
また、第3サンギヤ40が第3回転メンバーを構成し、第2速および第8速において第1キャリヤ28を介してケース52に固定されるとともに、第3速、第7速および後進第1速において第1リングギヤ22と連結され、第4速、第6速および後進第2速において入力軸10と連結される。
さらに、第2キャリヤ38が第4回転メンバーを構成し、常に出力軸12と連結している。
【0087】
第1回転メンバー乃至第4回転メンバーの構成は図1と異なるが、各第1回転メンバー乃至第4回転メンバーと上流側遊星歯車組との連結関係は図1の実施の形態と同じであり、上述のように作動表も図2と共通である。
【0088】
変速比の計算式は図1に示した実施の形態と異なるが、第1回転メンバー乃至第4回転メンバーと共通速度線図の関係は図3と同様であり、前進8段後進2段の変速比を得ることができる。
詳細の説明は省略したが、図7に示した実施の形態も、6個の摩擦要素で前進8段後進2段の変速比が得られるとともに、入力軸10、出力軸12と同じ軸心上に上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群を配置することができる。
【0089】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第6の実施態様のスケルトンを図8に示す。また、作動表は図2と同じである。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0090】
図8の実施の形態における違いは、第1に上流側遊星歯車組の連結関係が異なり、第1キャリヤ28が入力軸10と連結され、第1サンギヤ20がケース52に固定されていることである。
すなわち、図1とは第1キャリヤ28と第1サンギヤ20が入れ替わっているが、第1リングギヤ22が入力軸10の回転より低くなる減速駆動が行われることは変わりない。
【0091】
第2の相違点は下流側遊星歯車組群の構成が異なることである。
すなわち、第2ピニヨン34が右側へ延びて、この第2ピニヨン34および第3リングギヤ42と噛み合う第3ピニヨン44があって、これら第2、第3ピニヨン34、44を回転自在に軸支する第2キャリヤ38があり、さらに第2ピニヨン34の右側と噛み合う第3サンギヤ40がある。
第2遊星歯車組群の構成は図4に示した実施の形態と似ているが、図8は図4の第2サンギヤ30を分割して一方を第3サンギヤ40にした構成になっており、両者の間から第2キャリヤ28が出力軸12と連結している。
【0092】
これに関連して、入力軸10が左側にあって、出力軸が右側へ出ている点も図1と異なる。
さらに第2遊星歯車組群には回転メンバーが第1乃至第5の実施の形態に比べて1個多い5個あることも相違点であり、後述するように上記の第3サンギヤ40が5番目の第5回転メンバーである。
【0093】
また、上流側遊星歯車組との連結関係は以下のようになる。
第2リングギヤ32が第1回転メンバーを構成するのは図1、図4と同じであり、第1速乃至第5速において第1リングギヤ22と連結されるのも同様である。
第3リングギヤ42が第2回転メンバーを構成するのが図1とは異なり、これは第1速および後進においてケース52に固定されるとともに、第5速以上の高速段において入力軸10と連結される。
【0094】
第2サンギヤ30が第3回転メンバーを構成するが、第1乃至第5の実施の形態と違って、ケースに固定されることはなく、第3速、第7速および後進第1速において第1リングギヤ22と連結され、第4速、第6速および後進第2速において入力軸10と連結される。
【0095】
そして、追加された第5回転メンバーを構成する第3サンギヤ40が、第1ブレーキ54により第2速および第8速においてケース52に固定される。
また、第2キャリヤ38が常に出力軸12と連結されて第4回転メンバーを構成するのは図4と同じであるが、前述のように入力軸10とは反対の方向へ出力するようになっている。
【0096】
このように、第2回転メンバーおよび第4回転メンバーの構成が図1と異なり、第5回転メンバーが追加されているが、各締結要素の連結関係は図1の実施の形態と同じであり、上述のように作動表は図2と共通である。
詳細の説明は省略するが、共通速度線図については図3に示した左側の上流側遊星歯車組については第1サンギヤと第1キャリヤとを入れ替え、右側の下流側遊星歯車組群の部分では、第1回転メンバー乃至第4回転メンバーを上記のように置き換え、かつ第5回転メンバーを第3回転メンバーと同じ位置に配置すれば同様に描くことができる。
【0097】
したがって、変速比の計算式は図1に示した実施の形態と異なるが、下流側遊星歯車組群の歯数比を適切に設定して、第1回転メンバー乃至第4回転メンバーおよび第5回転メンバーを示す縦軸同士の間隔を図3と同じにすれば、変速比の値は図1の実施の形態と同じになる。
【0098】
図8に示した実施の形態も、6個の摩擦要素で前進8段後進2段の変速比が得られ、その場合に採り得る変速比の範囲の自由度を拡大できるとともに、前進第1速における下流側遊星歯車組群への入力が、第2リングギヤ32であるため、ギヤの歯元応力が大きくなることを回避することができる。
【0099】
図8に示した実施の形態も変速比の採れる範囲が広いので、変速比の設定自由度が拡大する。
入力軸10、出力軸12と同じ軸心上に上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群を配置することができるのも同様であるとともに、入力軸10と出力軸12とを互いに反対側へ出すことができるので、車両前部に内燃機関を配置して後輪を駆動する変速機に適用することが可能になる。
【0100】
以上、第1乃至第5の実施の形態にあって共通することは、6個の摩擦要素で前進8段後進2段の変速比が得られるとともに、ニーズに応じて下流側遊星歯車組群の歯車列を選択できるので、採り得る変速比の幅が広がるとともに、サンギヤに大きなトルクが作用しない歯車列、例えば図1、図4のようなものを選択することができる。
【0101】
また、図8に示した実施の態様は、入力軸10と出力軸12とを互いに逆方向に配置する構成でありながら、前進第1速における第2遊星歯車組群への入力が第2リングギヤ32であり、歯元応力が低いので小型軽量にできるとともに、第2遊星歯車組群にダブルピニヨン型の遊星歯車組を用いないので部品点数が減り、製造コストを安くすることができる。
【0102】
以上説明したように、本発明の各実施の形態に係る多段変速遊星歯車列によれば、特に図示はしなかったが、入力軸10を遊星歯車列の左側に延ばした構成の場合は、内燃機関と入力軸10の間にトルクコンバータまたは流体カップリングを設け、第3クラッチ64をこれらの中に配置して、第2回転メンバーと内燃機関の出力軸とを直結可能にすることもできる。
この場合は、第5速以上の高速段において、機械的な伝達と流体を介した伝達の混在になるとともに、構造面では歯車列のまわりにおける摩擦要素を1個減らすことができる。
【0103】
また、本発明の各実施の形態に係る多段変速遊星歯車列によれば、上記以下のような効果が得られるほかに、さらに当業者の一般的な知識に基づいて、例えば第3回転メンバーと第1キャリヤ28を連結する第2ブレーキ56と並列に第2ワンウエイクラッチと第3ブレーキを配置して2速から3速への変速ショックを出にくくするなどの改良を加えた態様で実施することができる。
【0104】
【発明の効果】
以上、説明してきたように、本発明の多段変速遊星歯車列によれば、以下のような効果を得ることができる。
請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群とを有し、上流側遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、下流側遊星歯車組群が、回転メンバーとして第1回転メンバー、第2回転メンバー、第3回転メンバー、および第4回転メンバーを備え、第1サンギヤは入力軸と連結し、第1キャリヤはケースに固定するか、または固定可能であり、第1回転メンバーは少なくとも前進第1速において第1リングギヤと連結可能であり、第2回転メンバーは前進第1速および後進においてケースに固定可能であるとともに、前進第5速以上の高速段において入力軸と連結可能であり、第3回転メンバーは少なくとも前進第2速において第1キャリヤと連結することによりケースに固定可能であるとともに、少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能であり、第4回転メンバーは出力軸と連結したため、3列の遊星歯車組で前進8段の変速比を得ることができ、その場合採り得る変速比の範囲が拡大するとともに、下流側遊星歯車組群にダブルピニヨン型の遊星歯車組を用いない構成にして製造コストを安くすることも可能になる。
【0105】
請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、下流側遊星歯車組群が、第2遊星歯車組および第3遊星歯車組からなり、第2遊星歯車組は、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組は、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3キャリヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤと第3サンギヤとが連結して第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤと第3リングギヤとが連結して第4回転メンバーを構成したため、幅広い範囲の変速比が設定可能になるとともに、第1速などにおける下流側遊星歯車組群への入力が直径の大きなリングギヤになって、ギヤの歯元応力が小さくなるので、歯車列全体をコンパクトにすることができる。
【0106】
請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、下流側遊星歯車組群が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンおよび第3リングギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3リングギヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤが第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤが第4回転メンバーを構成したため、幅広い範囲の変速比が設定可能になるとともに、第1速などにおける下流側遊星歯車組群への入力が直径の大きなリングギヤになって、ギヤの歯元応力が小さくなるので、歯車列全体をコンパクトにすることができる。
【0107】
請求項4に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群とを有し、上流側遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、下流側遊星歯車組群が、回転メンバーとして第1回転メンバー、第2回転メンバー、第3回転メンバー、第4回転メンバー、および第5回転メンバーを備え、第1キャリヤは入力軸と連結し、第1サンギヤはケースに固定するか、または固定可能であり、第1回転メンバーは少なくとも前進第1速において第1リングギヤと連結可能であり、第2回転メンバーは前進第1速および後進においてケースに固定可能であるとともに、前進第5速以上の高速段において入力軸と連結可能であり、第3回転メンバーは少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能であり、第4回転メンバーは前記出力軸と連結し、第5回転メンバーは少なくとも前進第2速においてケースに固定可能に構成したため、採り得る変速比の範囲が拡大するとともに、前進第1速などでの下流側遊星歯車組群への入力回転メンバーに作用する歯元応力を低減することができるので、変速機の小型軽量化が可能になり、さらに下流側遊星歯車組群にダブルピニヨン型の遊星歯車組を用いないので製造コストを安くすることも可能になる。
【0108】
請求項5に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、下流側遊星歯車組群が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンおよび第3リングギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤと、第2ピニヨンと噛み合った第3サンギヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3リングギヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤが第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤが第4回転メンバーを構成し、第3サンギヤが第5回転メンバーを構成したため、幅広い範囲の変速比が設定可能になるとともに、第1速などにおける下流側遊星歯車組群への入力が直径の大きなリングギヤになって、ギヤの歯元応力が小さくなるので、歯車列全体をコンパクトにすることが可能になり、さらに流側遊星歯車組群はダブルピニヨン型遊星歯車組を用いないので製造コストを安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図2】図1に示した多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【図3】図1に示した多段変速遊星歯車列の共通速度線図および変速比の例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【符号の説明】
10:入力軸
12:出力軸
14:第1遊星歯車組
16:第2遊星歯車組
18:第3遊星歯車組
20:第1サンギヤ
22:第1リングギヤ
24:第1インナピニヨン
26:第1アウタピニヨン
28:第1キャリヤ
30:第2サンギヤ
32:第2リングギヤ
34:第2ピニヨン
38:第2キャリヤ
40:第3サンギヤ
42:第3リングギヤ
44:第3ピニヨン
48:第3キャリヤ
50:第1ブレーキ
52:ケース
54:第1ブレーキ
56:第2ブレーキ
58:ワンウエイクラッチ
60:第1クラッチ
62:第2クラッチ
64:第3クラッチ
66:第4クラッチ
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用自動変速機に用いる、前進8段の変速比を有する多段変速遊星歯車列に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の前進8段の変速比を有する多段変速遊星歯車列としては、それぞれ回転メンバーを備えた第1列のダブルピニヨンプラネタリギヤ(上流側遊星歯車組)と、ラビニヨ式ギヤユニット(下流側遊星歯車組群)とを備え、6個の摩擦要素による上記複数の回転メンバー間の連結や固定の組み合わせにより、前進8段の変速比を得ている(例えば、特許文献1参照)。
また、それぞれ回転メンバーを備えたダブルピニヨン型の第1変速部(上流側遊星歯車組)と、シングルピニヨン型の第2遊星歯車装置およびダブルピニヨン型の第3遊星歯車装置とからなる下流側遊星歯車組群とを備え、6個の摩擦要素による上記複数の回転メンバー間の連結や固定の組み合わせにより、前進8段の変速比を得ている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−182785号公報
【特許文献2】
特開2003−130152号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の多段変速遊星歯車列にあっては、特許文献1の図2のように、下流側遊星歯車組群をラビニヨ式として前進第1速においてサンギヤに入力する構成に特定されてしまうため、変速比の採れる範囲が狭くなってしまう。
特許文献2の場合も、下流側遊星歯車組群の一方をダブルピニヨン型遊星歯車装置として、前進第1速においてサンギヤに入力するので同様のことが言える。
【0005】
すなわち、遊星歯車はリングギヤの歯数に対するサンギヤの歯数の比によって変速比が定まるが、歯の強度との関係などから一般に0.4〜0.6の範囲内の値に設定する例が多く、下流側遊星歯車組群において上記のラビニヨ式やダブルピニヨン型でサンギヤ入力場合は採りうる変速比の自由度が低いという問題があった。
【0006】
また、特許文献2における下流側遊星歯車組群のうち一方の第3遊星歯車装置がダブルピニヨン型であり、シングルピニヨン型のみで構成した場合に比べて部品点数が多くなって製造コストが高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、3列の遊星歯車組を用いて前進8段の変速比を得る場合でも、採り得る変速比の範囲を上記従来のものより広げることを可能にした前進8段の変速比を有する多段変速遊星歯車列を得るとともに、製造コストを安くすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群とを有し、上流側遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、下流側遊星歯車組群が、回転メンバーとして第1回転メンバー、第2回転メンバー、第3回転メンバー、および第4回転メンバーを備え、第1サンギヤは入力軸と連結し、第1キャリヤはケースに固定するか、または固定可能であり、第1回転メンバーは少なくとも前進第1速において第1リングギヤと連結可能であり、第2回転メンバーは前進第1速および後進においてケースに固定可能であるとともに、前進第5速以上の高速段において入力軸と連結可能であり、第3回転メンバーは少なくとも前進第2速において第1キャリヤと連結することによりケースに固定可能であるとともに、少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能であり、第4回転メンバーは出力軸と連結したことを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため、請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、下流側遊星歯車組群が、第2遊星歯車組および第3遊星歯車組からなり、第2遊星歯車組は、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組は、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3キャリヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤと第3サンギヤとが連結して第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤと第3リングギヤとが連結して第4回転メンバーを構成したことを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため、請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、下流側遊星歯車組群が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンおよび第3リングギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3リングギヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤが第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤが第4回転メンバーを構成したことを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するため、請求項4に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群とを有し、上流側遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、下流側遊星歯車組群が、回転メンバーとして第1回転メンバー、第2回転メンバー、第3回転メンバー、第4回転メンバー、および第5回転メンバーを備え、第1キャリヤは入力軸と連結し、第1サンギヤはケースに固定するか、または固定可能であり、第1回転メンバーは少なくとも前進第1速において第1リングギヤと連結可能であり、第2回転メンバーは前進第1速および後進においてケースに固定可能であるとともに、前進第5速以上の高速段において入力軸と連結可能であり、第3回転メンバーは少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能であり、第4回転メンバーは前記出力軸と連結し、第5回転メンバーは少なくとも前進第2速においてケースに固定可能であることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、請求項5に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、下流側遊星歯車組群が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンおよび第3リングギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤと、第2ピニヨンと噛み合った第3サンギヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3リングギヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤが第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤが第4回転メンバーを構成し、第3サンギヤが第5回転メンバーを構成したことを特徴とする。
【0013】
【作用】
請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、入力軸に入力された入力トルクは上流側遊星歯車組にて減速され、そのトルクが増大されて下流側遊星歯車組群に入力される。下流側遊星歯車組群では、少なくとも前進第1速時に上記増大されたトルクが第1回転メンバーに入力される。第1速では、さらに第2回転メンバーがケースに固定されて、第1回転メンバーに入力されたトルクはさらに増大されて第4回転メンバーからこれが連結された出力軸に出力される。第2回転メンバーはさらに第5速以上の高速段において入力軸と連結される。また、第3回転メンバーが少なくとも前進第2速において第1キャリヤと連結することによりケースに固定可能であるとともに、少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能である。これらにより前進第2速以上を得る。また、後進にあっては、第2回転メンバーがケースに固定可能となる。その結果、上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群の各回転メンバー間の連結・固定の組み合わせにより前進8段、後進2段の変速比で変速する。
【0014】
請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、下流側遊星歯車組群が、第2遊星歯車組および第3遊星歯車組からなり、第2遊星歯車組は、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組は、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3キャリヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤと第3サンギヤとが連結して第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤと第3リングギヤとが連結して第4回転メンバーを構成したため、第1回転メンバー乃至第3回転メンバーと上流側遊星歯車組の回転メンバーもしくはケースとを選択的に連結することで前進8段、後進2段の変速比で変速する。
【0015】
請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、下流側遊星歯車組群が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンおよび第3リングギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3リングギヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤが第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤが第4回転メンバーを構成したため、第1回転メンバー乃至第3回転メンバーと上流側遊星歯車組の回転メンバーもしくはケースとを選択的に連結することで前進8段、後進2段の変速比で変速する。
【0016】
請求項4に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、入力軸に入力された入力トルクは上流側遊星歯車組にて減速され、そのトルクが増大されて下流側遊星歯車組群に入力される。下流側遊星歯車組群では、少なくとも前進第1速時に上記増大されたトルクが第1回転メンバーに入力される。第1速では、さらに第2回転メンバーがケースに固定されて、第1回転メンバーに入力されたトルクはさらに増大されて第4回転メンバーからこれが連結された出力軸に出力される。第2回転メンバーはさらに第5速以上の高速段において入力軸と連結される。また、第3回転メンバーが少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能である。さらに第5回転メンバーが少なくとも前進第2速においてケースに固定可能である。これらにより前進第2速以上を得る。また、後進にあっては、第2回転メンバーがケースに固定可能となる。その結果、上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群の各回転メンバー間の連結・固定の組み合わせにより前進8段、後進2段の変速比で変速する。
【0017】
請求項5に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、下流側遊星歯車組群が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンおよび第3リングギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤと、第2ピニヨンと噛み合った第3サンギヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3リングギヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤが第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤが第4回転メンバーを構成し、第3サンギヤが第5回転メンバーを構成したため、第1メンバー回転乃至第3回転メンバーおよび第5回転メンバーと上流側遊星歯車組の回転メンバーもしくはケースとを選択的に連結することで前進8段、後進2段の変速比で変速する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多段変速遊星歯車列における実施の形態を、図に基づき説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列を表すスケルトン図である。
なお、同図は同心とした入力軸10と出力軸12の軸心より上側半分を描いてある。
【0019】
この多段変速遊星歯車列は、入力軸10と出力軸12とが同心に配置され、これらと同じ軸心上に3組の遊星歯車組、すなわち第1遊星歯車組14、第2遊星歯車組16、および第3遊星歯車組18が配置されている。
なお、以下の説明において、第1遊星歯車組14を上流側遊星歯車組と呼び、他の第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18を下流側遊星歯車組群と、区別して呼ぶことがある。
【0020】
第1遊星歯車組14は、一般的にダブルピニヨン型と呼ばれるものであり、第1サンギヤ20と、第1リングギヤ22と、第1リングギヤ22に噛み合った第1アウタピニヨン24と、これら第1アウタピニヨン24および第1サンギヤ20に噛み合った第1インナピニヨン26と、第1インナピニヨン26および第1アウタピニヨン24を回転自在に軸支する第1キャリヤ28とで構成されている。
【0021】
第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18は、ともにシングルピニヨン型であり、それぞれ第2、第3サンギヤ30、40と、第2、第3リングギヤ32、42と、これらと噛み合う第2、第3ピニヨン34、44と、この第2、第3ピニヨン34、44を回転自在に軸支する第2、第3キャリヤ38、48とから構成されている。なお、上記下流側遊星歯車組群は一般にシンプソン歯車列と称されているものである。
【0022】
第1サンギヤ20は入力軸10と連結されており、第1キャリヤ28はケース52に固定されるとともに、第1ブレーキ(B−1)54を介して第2サンギヤ30と連結可能である。
【0023】
第2サンギヤ30と第3サンギヤ40とは常に連結され一体になっており、ともに本発明の第3メンバーを構成する。
前述のように第1キャリヤ28はケース52に固定されているので、これと連結可能な第2サンギヤ30および第3サンギヤ40はケース52に固定可能であることになる。
第3キャリヤ48は、本発明の第2メンバーを構成し、第2ブレーキ56によりケース52に固定可能であるとともに、ワンウエイクラッチ(OC)58により一回転方向のみ常にケース52に固定される。
【0024】
第1リングギヤ22は、第1クラッチ(C−1)60を介して本発明の第1メンバーを構成する第2リングギヤ32と、第2クラッチ(C−2)62を介して第2サンギヤ30および第3サンギヤ40と、それぞれ連結可能である。
入力軸10は、第3クラッチ(C−3)64により第2サンギヤ30および第3サンギヤ40と、第4クラッチ(C−4)66により第3キャリヤ48と、それぞれ連結可能である。
【0025】
第2キャリヤ38と第3リングギヤ42とは常に連結され、ともに本発明の第4メンバーを構成するとともに、出力軸12とも連結している。
出力軸12には出力歯車12aが一体的に設けてあり、出力歯車12aは図示しない車軸等を駆動する。
【0026】
次に、図1に示した多段変速遊星歯車列の作動を、図2に示した作動表と図3の(a)に示した共通速度線図を参考にしながら説明する。
以下の説明では、クラッチやブレーキを摩擦要素と呼び、ワンウエイクラッチを含めて回転メンバー同士の連結機能を有するもの全体を総称して締結要素と呼ぶ。
【0027】
なお、図2の作動表において、横方向の欄にはクラッチやブレーキおよびワンウエイクラッチなどの締結要素が割り当ててあり、C−1は第1クラッチ60を、B−1は第1ブレーキ54を、OCはワンウエイクラッチ58をといった具合に、それぞれ表す。なお、これらの記号と各締結要素の番号との関係は、図1に記してある。
【0028】
縦方向の欄には図示しない操作レバーの「Dレンジ」「Rレンジ」および「Lレンジ」に分け、Dレンジは前進第1速(1st)乃至第8速(8th)を表し、Rレンジは後進第1速(R−1)と第2速(R−2)の各変速段を割り当ててある。
なお、Lレンジでは、後述するエンジンブレーキ時のように出力軸12側から入力軸10側を駆動することが可能である。
図2の作動表中、○印は各締結要素の締結を、また空欄は各締結要素の解放を表す。
【0029】
図3に示した共通速度線図は、縦方向が入力軸10の回転数を1とした場合の各回転メンバーの回転数を表し、横方向は上記した各遊星歯車の歯数比に応じた間隔に各回転メンバーを割り振って各回転メンバーごとに縦線を描いてある。
【0030】
共通速度線図の上方に書いた記号は、サンギヤはS、リングギヤはR、キャリヤはCで、またその後の数字1、2、3はそれぞれが属する3列のうち第1、第2、第3の遊星歯車組を表し、例えばS1、R1、C1は、それぞれ第1遊星歯車組14の第1サンギヤ20、第1リングギヤ22、第1キャリヤ28を表すようになっている。
また、その上に書いてある丸で囲んだ数字は、後述する第1回転メンバー乃至第4回転メンバーを表すものであり、例えば▲1▼は第1回転メンバーを表す。
【0031】
ここで、各遊星歯車組の歯数比は、リングギヤの歯数(Zr)に対するサンギヤの歯数(Zs)の比Zs/Zrであり、第1遊星歯車組14の歯数比をα1、第2遊星歯車組16の歯数比をα2、第3遊星歯車組18の歯数比をα3とする。
なお、共通速度線図を含めて変速比の計算には、α1を0.52、α2を0.50、α3を0.45とした場合について説明する。
【0032】
図2の共通速度線図は、各縦線と太線との交点の高さがそれぞれの回転メンバーの回転数を表す。また、2点鎖線の水平線は回転メンバー同士が同じ回転数で結ばれていることを表す。
分かりやすくするため、出力軸12と連結された第2キャリヤ38(C2)および第3リングギヤ42(R3)の縦線における交点は○印で表示した。
また、図3の(b)にはα1、α2、α3を上記の値とした場合の各変速比およびそれら間の各段間比を示してある。
【0033】
始めに、上流側遊星歯車組の第1遊星歯車組14は、第1キャリヤ28がケース52に固定されているので、第1リングギヤ22は常に入力軸10より低い回転数に減速駆動されており、その減速比は1/α1である。
【0034】
前進第1速(1st)は、図2に示した作動表に見るように、第1クラッチ60の締結で第1リングギヤ22と第2リングギヤ32とを連結することと、ワンウエイクラッチ58が自動的に締結されて第3キャリヤ48がケース52に固定されることで実現する。
【0035】
すなわち、第3キャリヤ48はワンウエイクラッチ58の作用で車両を加速する駆動方向においてケース52に固定されるようになっている。
このため、Dレンジの第1速では、いわゆるエンジンブレーキのように出力軸12から入力軸10への駆動はできない。
【0036】
第1速は、上流側遊星歯車組(第1遊星歯車組14)で減速された第1リングギヤ22が第1クラッチ60を経て、下流側遊星歯車組群の第2リングギヤ32を駆動する。
そして、さらに下流側遊星歯車組群で減速されて出力軸12に出力する。
このとき、第1速の変速比(入力軸10の回転数/出力軸12の回転数)は、{(1+α2)+α2/α3}/α1になり、上記の値に設定した歯数比においては5.021になる。
【0037】
これを図3の共通速度線図で説明すると、左側の第1遊星歯車組14において入力軸10と連結された第1サンギヤ20(S1)の回転数を1として、第1キャリヤ28(C1)がケース52に固定されているので回転数が0であり、両者を結んだ斜線(太線)と第1リングギヤ22(R1)の縦線との交点の高さが第1リングギヤ22の回転数になる。
【0038】
第1リングギヤ22と連結した右側の第2リングギヤ32(R2)が同じ回転数にあって、第3キャリヤ48(C3)がケース52に固定されて回転数が0であり、両者を結ぶ線が1stと書かれた斜線(太線)になって、この斜線と第2キャリヤ38(C2)および第3リングギヤ42(R3)の縦線との交点の高さが出力軸12の回転数になる。
【0039】
なお、第2リングギヤ32のように、第1速において第1リングギヤ22と連結される回転メンバーを第1回転メンバーと呼ぶ。なお、第1回転メンバーは第5速まで第1リングギヤ22との連結を維持される。
また、第3キャリヤ48のように、第1速においてケース52に固定される回転メンバーを第2回転メンバーと呼ぶ。
第2回転メンバーは後述するように、後進においてもケース52に固定されるとともに、第5速以上の高速段において入力軸10と連結される。
【0040】
次に、第2速(2nd)への変速は、前述の第1速での第1クラッチ60の締結に加えて、第1ブレーキ54を締結することにより第2サンギヤ30および第3サンギヤ40がケース52に固定されることで行われる。
このときに、第3キャリヤ48のケース52への固定は、ワンウエイクラッチ58の作用で自動的に解除される。
【0041】
第2サンギヤ30および第3サンギヤ40がケース52に固定されたことにより、下流側遊星歯車組群での減速比が第1速から変化して歯車列全体の変速比が変化する。
【0042】
共通速度線図においては2ndの斜線が示すように、第2サンギヤ30(S2)および第3サンギヤ40(S3)の回転数を0とした斜線になり、第2速の変速比は、(1+α2)/α1になる。
上記した歯数比においては2.885である。
【0043】
前述のように、前進第1速から第2速への変速は、ワンウエイクラッチ58の作用があるため、第1ブレーキ54の締結を追加するだけで済む。
したがって、変速時のいわゆる変速ショックは、第1ブレーキ54の締結を緩やかに行うように制御するだけで抑えられるので、円滑な変速を容易に行うことができる。
【0044】
なお、第2サンギヤ30および第3サンギヤ40のように、第2速において第1キャリヤ28と連結することによってケース52に固定する回転メンバーを第3回転メンバーと呼び、この第3回転メンバーは後述するように第8速においてもケース52に固定されるとともに、第3速、第7速および後進第1速において第1リングギヤ22と連結され、第4速、第6速および後進第2速において入力軸10と連結される。
【0045】
次に、第3速(3rd)への変速は、第2速での第1ブレーキ54の締結を解除して第2クラッチ62を締結することで行われる。
この段階で第3回転メンバーである第2サンギヤ30および第3サンギヤ40は、第1リングギヤ22と連結される。
【0046】
したがって、第1クラッチ60と第2クラッチ62の締結で下流側遊星歯車組群全体が一体になるため、第1遊星歯車組14での減速比1/α1が第3速の変速比になって、上記した歯数比においては1.923であり、共通速度線図の右側においては3rdの水平線になる。
【0047】
続いて第4速(4th)への変速は、第3速における第2クラッチ62の締結を解除して、第3クラッチ64を締結することで行われる。
この段階で第3回転メンバーである第2サンギヤ30および第3サンギヤ40は入力軸10と連結される。
【0048】
共通速度線図においては4thの斜線が示すように、第3回転メンバーである第2サンギヤ30および第3サンギヤ40が入力軸10と同じ回転数1となってこれと第1回転メンバーである第2リングギヤ32とを結んだ斜線になる。
ここで、α2(1+α3)をAとおいた場合、第4速の変速比は(1+α3+A)/(α1+α1・α3+A)になる。
上記した歯数比においては1.471になる。
【0049】
次に、第5速(5th)への変速は、第4速における第3クラッチ64の締結を解除して第4クラッチ66を締結することで行われる。
この段階で第2回転メンバーである第3キャリヤ48は入力軸10と連結され、以降の高速段において連結を維持される。
【0050】
共通速度線図においては5thの斜線が示すように、第3キャリヤ48が入力軸10と同じ回転数1となってこれと第1回転メンバーである第2リングギヤ32とを結んだ斜線になる。
第5速の変速比は(A+α3)/{α1(A+α3)+A(1−α1)}になる。
上記した歯数比においては1.225になる。
【0051】
次に、第6速(6th)への変速は、第5速までにおける第1クラッチ60の締結を解除して再び第3クラッチ64を締結することで行われる。
この段階で第3回転メンバーである第2サンギヤ30および第3サンギヤ40は、再び入力軸10と連結される。
【0052】
これにより下流遊星歯車群の第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18は一体になるとともに、入力軸10と連結されて直結になり、変速比は歯数比にかかわらず1になる。
共通速度線図の右側においては6thの水平線になる。
【0053】
次に、第7速(7th)への変速は、第6速における第3クラッチ64の締結を解除して再び第2クラッチ62を締結することで行われる。
共通速度線図においては7thの斜線が示すように、第2サンギヤ30および第3サンギヤ40の回転数が第1リングギヤ22と同じになり、これと第3キャリヤ48の回転数1とを結んだものになる。
第7速の変速比は、1/(1+α3−α1・α3)になり、上記した歯数比においては0.822の増速(オーバードライブ)になる。
【0054】
次に第8速への変速は、第7速における第2クラッチ62の締結を解除して、第1ブレーキ54を締結することで、第3回転メンバーである第2サンギヤ30および第3サンギヤ40をケース52に固定して行われる。
【0055】
共通速度線図では8thの斜線が示すように、第2サンギヤ30および第3サンギヤ40を0として、これと第3キャリヤ48の回転数1とを結んだものになり、変速比は、1/(1+α3)になる。
上記した歯数比においては0.690の増速になる。
【0056】
次に、Rレンジの後進第1速(R−1)の駆動は、第2クラッチ62と第2ブレーキ56を締結することで行われる。
ここでは、第2回転メンバーである第3キャリヤ48がケース52に固定される。
また、第3回転メンバーである第3サンギヤ40が第1リングギヤ22と連結され、下流側遊星歯車組群への入力回転メンバーになる。
共通速度線図はR−1の斜線に示すようになり、変速比は−1/(α1・α3)になって、上記した歯数比においては−4.274になる。
【0057】
また、後進第2速(R−2)への変速は、後進第1速における第2クラッチ62の締結を解除して、第3クラッチ64を締結して第3回転メンバーである第3サンギヤ40を入力軸10と連結することで行われる。
これにより、第3回転メンバーである第3サンギヤ40が入力軸10と同じ回転数1になって、これと第3キャリヤ48の回転数0とを結んだ斜線になり、変速比は−1/α3になって、上記した歯数比においては−2.222になる。
【0058】
前述のように、Dレンジの第1速においてワンウエイクラッチ58は車両を加速する方向にのみ自動的に締結されるので、エンジンブレーキ時のように出力軸12側から駆動する場合には、これと併設されている第2ブレーキ56を図2の作動表のLレンジにおける1stに示すように締結する。
これにより、トルクが作用する方向を問わずに第3キャリヤ48がケース52に固定され、前進第1速の変速比を得ることができる。
【0059】
以上の変速比を図3の(b)にまとめる。
なお、隣り合った変速比同士の比が段間比である。
これに見るように、全般に高速段側にいくほど段間比が小さくなっており、内燃機関で駆動する車両用変速機の変速比として好ましい傾向になっている。
【0060】
以上が、図1に示した前進8段後進2段の多段遊星歯車列における作動と変速比であるが、前述のようにワンウエイクラッチ58の作用で円滑な変速制御を容易に行うことができるとともに、車両用変速機として好ましい変速比を得ることができる。
【0061】
また、6個の摩擦要素により前進8段の歯車列が得られるとともに、上流側遊星歯車組により増大された大きなトルクが作用する前進第1速における下流側遊星歯車組群への入力が、直径の大きな第2リングギヤ32であるため、ギヤの歯元応力が大きくなることを回避できるので、歯車列全体をコンパクトにすることができる。
【0062】
さらに、下流側遊星歯車組群のシンプソン歯車列は変速比の自由度が高いので、前述の各変速比を幅広い範囲で変化させた設定にすることができる。
変速比は加速性能や燃費のために、一般に車両重量や内燃機関の特性に応じた設定にする必要があるが、各変速比を幅広い範囲で設定できることは乗用車から商用車まで応用が可能であり、各変速段の変速比をきめ細かく設定して排気対策もやりやすくなるメリットが得られる。
【0063】
また、これらのメリットを有する多段変速遊星歯車列全体を、入力軸10および出力軸12と同じ軸心上に配置するうえで、下流側遊星歯車組群の構成に左右されないことが従来にない本発明の基本的な特徴である。
これは、第3メンバーの第2サンギヤ30および第3サンギヤ40のケース52への固定を、第1キャリヤ28を介して行う構成にしたためにできたことである。
【0064】
したがって、以下、第2乃至第5の実施の態様で説明するように、下流側遊星歯車組群の構成を自由に選択することができる。
さらに下流側遊星歯車組群を2組のシングルピニヨン型遊星歯車で構成したため、ダブルピニヨン型遊星歯車組を含むより部品点数が少なく、製造コストを抑えることができる。
なお、図1は遊星歯車列の右側から入力するように、入力軸10が右側へ延びているが、反対側へ延ばして左側から駆動することもできる。
【0065】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第2の実施態様のスケルトンを図4に示す。また、作動表は図2と同じである。
以下に示す図は、図1の実施の形態と同様の機能を有する構成部品に、基本的に同じ符号を割り当てて書いてある。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0066】
図4の実施の形態における違いは、下流側遊星歯車組群の構成が異なることである。
すなわち、第2ピニヨン34が右側へ延びて、これおよび第3リングギヤ42と噛み合う第3ピニヨン44があって、これら第2、第3ピニヨン34、44を回転自在に軸支する第2キャリヤ38がある。
【0067】
また、上流側遊星歯車組との連結関係は以下のようになる。
第2リングギヤ32が第1回転メンバーを構成するのは図1と同じであり、第1速乃至第5速において第1リングギヤ22と連結されるのも同様である。
第3リングギヤ42が第2回転メンバーを構成するのが図1とは異なり、これは第1速および後進において第1キャリヤ28を介してケース52に固定されるとともに、第5速以上の高速段において入力軸10と連結される。
【0068】
第2サンギヤ30が第3回転メンバーを構成し、第2速および第8速において第1キャリヤ28を介してケース52に固定されるとともに、第3速、第7速および後進第1速において第1リングギヤ22と連結され、第4速、第6速および後進第2速において入力軸10と連結する。
また、第2キャリヤ38が常に出力軸12と連結されて第4回転メンバーを構成するのが図1と異なる。
【0069】
このように、第2回転メンバーおよび第4回転メンバーの構成が図1と異なるが、各締結要素の連結関係は図1の実施の形態と同じであり、上述のように作動表は図2と共通である。
詳細の説明は省略するが、共通速度線図については図3に示した右側の下流側遊星歯車組群の部分で、第1回転メンバー乃至第4回転メンバーを上記のように置き換えれば同様に描くことができる。
したがって、変速比の計算式は図1に示した実施の形態と異なるが、下流側遊星歯車組群の歯数比を適切に設定して、第1回転メンバー乃至第4回転メンバーを示す縦軸同士の間隔を図3と同じにすれば、変速比の値は図1の実施の形態と同じになる。
【0070】
図4に示した実施の形態も、6個の摩擦要素で前進8段後進2段の変速比が得られ、その場合に採り得る変速比の範囲の自由度を拡大できるとともに、前進第1速における下流側遊星歯車組群への入力が、第2リングギヤ32であるため、ギヤの歯元応力が大きくなることを回避することができる。
また、下流側遊星歯車組群は複合型の遊星歯車であるが、ダブルピニヨン型の遊星歯車を含む構成より全体としての部品点数が少なく、製造コストも安い。
【0071】
図4に示した実施の形態も変速比の採れる範囲が広いので、変速比の設定自由度が拡大する。
入力軸10、出力軸12と同じ軸心上に上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群を配置することができるのも同様である。
なお、図4においても、入力軸10を左側へ延ばして左側から駆動することもできる。
【0072】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第3の実施の形態のスケルトンを図5に示す。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。なお、作動表は図2に示したものと同じである。
【0073】
図1との違いは、入力軸10が左側へ延びているとともに、第2の実施の形態と同様に、下流側遊星歯車組群の構成が異なることである。
すなわち、第3サンギヤ40が第1回転メンバーを構成し、第1速乃至第5速において第1リングギヤ22と連結される。
【0074】
また、第2キャリヤ38と第3リングギヤ42とが連結して第2回転メンバーを構成し、これらは第1速および後進においてケース52に固定されるとともに、第5速以上の高速段において入力軸10と連結される。
【0075】
第2サンギヤ30が第3回転メンバーを構成し、第2速および第8速において第1キャリヤ28を介してケース52に固定されるとともに、第3速、第7速および後進第1速において第1リングギヤ22と連結され、第4速、第6速および後進第2速において入力軸10と連結する。
さらに、第2リングギヤ32と第3キャリヤ48とが連結して第4回転メンバーを構成し、常に出力軸12と連結している。
【0076】
第1回転メンバー乃至第4回転メンバーの構成は図1と異なるが、各第1回転メンバー乃至第4回転メンバーと上流側遊星歯車組との連結関係は図1の実施の形態と同じであり、上述のように作動表も図2と共通である。
【0077】
変速比の計算式は図1に示した実施の形態と異なるが、第1回転メンバー乃至第4回転メンバーと共通速度線図の関係は図3と同様であり、前進8段後進2段の変速比を得ることができる。
詳細の説明は省略したが、図5に示した実施の形態も、6個の摩擦要素で前進8段後進2段の変速比が得られ、従来例に比べて採り得る変速比の範囲の自由度を拡大することができる。
また、入力軸10、出力軸12と同じ軸心上に上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群を配置することができる。
【0078】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第4の実施の形態のスケルトンを図6に示す。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。なお、作動表は図2に示したものと同じである。
【0079】
図1との違いは、入力軸10が左側へ延びているとともに、第3の実施の形態と同様に、下流側遊星歯車組群の構成が異なることである。
すなわち、第3サンギヤ40と第2リングギヤ32が連結して第1回転メンバーを構成し、第1速乃至第5速において第1リングギヤ22と連結される。
そして、第3リングギヤ42が第2回転メンバーを構成し、第1速および後進においてケース52に固定されるとともに、第5速以上の高速段において入力軸10と連結される。
【0080】
また、第2サンギヤ30が第3回転メンバーを構成し、第2速および第8速において第1キャリヤ28を介してケース52に固定されるとともに、第3速、第7速および後進第1速において第1リングギヤ22と連結され、第4速、第6速および後進第2速において入力軸10と連結する。
さらに、第2キャリヤ38と第3キャリヤ48とが連結して第4回転メンバーを構成し、常に出力軸12と連結している。
【0081】
第1回転メンバー乃至第4回転メンバーの構成は図1と異なるが、各第1回転メンバー乃至第4回転メンバーと上流側遊星歯車組との連結関係は図1の実施の形態と同じであり、上述のように作動表も図2と共通である。
【0082】
変速比の計算式は図1に示した実施の形態と異なるが、第1回転メンバー乃至第4回転メンバーと共通速度線図の関係は図3と同様であり、前進8段後進2段の変速比を得ることができる。
詳細の説明は省略したが、図6に示した実施の形態も、6個の摩擦要素で前進8段後進2段の変速比が得られ、採り得る変速比の範囲の自由度を従来例に比べて拡大することができる。
また、入力軸10、出力軸12と同じ軸心上に上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群を配置することができる。
【0083】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第5の実施の形態のスケルトンを図7に示す。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。なお、作動表は図2に示したものと同じである。
【0084】
図1との違いは、入力軸10が左側へ延びているとともに、第3乃至第4の実施の形態と同様に、下流側遊星歯車組群の構成が異なることである。
すなわち、第2リングギヤがないとともに第2ピニヨン34が右側へ伸びて第3リングギヤ42と噛み合っており、第3ピニヨン44は第2ピニヨン34および第3サンギヤ40と噛み合っている。
【0085】
次に各回転メンバーの構成を説明する。
第2サンギヤ30が第1回転メンバーを構成し、第1速乃至第5速において第1リングギヤ22と連結される。
そして、第2リングギヤ32が第2回転メンバーを構成し、第1速および後進においてケース52に固定されるとともに、第5速以上の高速段において入力軸10と連結される。
【0086】
また、第3サンギヤ40が第3回転メンバーを構成し、第2速および第8速において第1キャリヤ28を介してケース52に固定されるとともに、第3速、第7速および後進第1速において第1リングギヤ22と連結され、第4速、第6速および後進第2速において入力軸10と連結される。
さらに、第2キャリヤ38が第4回転メンバーを構成し、常に出力軸12と連結している。
【0087】
第1回転メンバー乃至第4回転メンバーの構成は図1と異なるが、各第1回転メンバー乃至第4回転メンバーと上流側遊星歯車組との連結関係は図1の実施の形態と同じであり、上述のように作動表も図2と共通である。
【0088】
変速比の計算式は図1に示した実施の形態と異なるが、第1回転メンバー乃至第4回転メンバーと共通速度線図の関係は図3と同様であり、前進8段後進2段の変速比を得ることができる。
詳細の説明は省略したが、図7に示した実施の形態も、6個の摩擦要素で前進8段後進2段の変速比が得られるとともに、入力軸10、出力軸12と同じ軸心上に上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群を配置することができる。
【0089】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第6の実施態様のスケルトンを図8に示す。また、作動表は図2と同じである。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0090】
図8の実施の形態における違いは、第1に上流側遊星歯車組の連結関係が異なり、第1キャリヤ28が入力軸10と連結され、第1サンギヤ20がケース52に固定されていることである。
すなわち、図1とは第1キャリヤ28と第1サンギヤ20が入れ替わっているが、第1リングギヤ22が入力軸10の回転より低くなる減速駆動が行われることは変わりない。
【0091】
第2の相違点は下流側遊星歯車組群の構成が異なることである。
すなわち、第2ピニヨン34が右側へ延びて、この第2ピニヨン34および第3リングギヤ42と噛み合う第3ピニヨン44があって、これら第2、第3ピニヨン34、44を回転自在に軸支する第2キャリヤ38があり、さらに第2ピニヨン34の右側と噛み合う第3サンギヤ40がある。
第2遊星歯車組群の構成は図4に示した実施の形態と似ているが、図8は図4の第2サンギヤ30を分割して一方を第3サンギヤ40にした構成になっており、両者の間から第2キャリヤ28が出力軸12と連結している。
【0092】
これに関連して、入力軸10が左側にあって、出力軸が右側へ出ている点も図1と異なる。
さらに第2遊星歯車組群には回転メンバーが第1乃至第5の実施の形態に比べて1個多い5個あることも相違点であり、後述するように上記の第3サンギヤ40が5番目の第5回転メンバーである。
【0093】
また、上流側遊星歯車組との連結関係は以下のようになる。
第2リングギヤ32が第1回転メンバーを構成するのは図1、図4と同じであり、第1速乃至第5速において第1リングギヤ22と連結されるのも同様である。
第3リングギヤ42が第2回転メンバーを構成するのが図1とは異なり、これは第1速および後進においてケース52に固定されるとともに、第5速以上の高速段において入力軸10と連結される。
【0094】
第2サンギヤ30が第3回転メンバーを構成するが、第1乃至第5の実施の形態と違って、ケースに固定されることはなく、第3速、第7速および後進第1速において第1リングギヤ22と連結され、第4速、第6速および後進第2速において入力軸10と連結される。
【0095】
そして、追加された第5回転メンバーを構成する第3サンギヤ40が、第1ブレーキ54により第2速および第8速においてケース52に固定される。
また、第2キャリヤ38が常に出力軸12と連結されて第4回転メンバーを構成するのは図4と同じであるが、前述のように入力軸10とは反対の方向へ出力するようになっている。
【0096】
このように、第2回転メンバーおよび第4回転メンバーの構成が図1と異なり、第5回転メンバーが追加されているが、各締結要素の連結関係は図1の実施の形態と同じであり、上述のように作動表は図2と共通である。
詳細の説明は省略するが、共通速度線図については図3に示した左側の上流側遊星歯車組については第1サンギヤと第1キャリヤとを入れ替え、右側の下流側遊星歯車組群の部分では、第1回転メンバー乃至第4回転メンバーを上記のように置き換え、かつ第5回転メンバーを第3回転メンバーと同じ位置に配置すれば同様に描くことができる。
【0097】
したがって、変速比の計算式は図1に示した実施の形態と異なるが、下流側遊星歯車組群の歯数比を適切に設定して、第1回転メンバー乃至第4回転メンバーおよび第5回転メンバーを示す縦軸同士の間隔を図3と同じにすれば、変速比の値は図1の実施の形態と同じになる。
【0098】
図8に示した実施の形態も、6個の摩擦要素で前進8段後進2段の変速比が得られ、その場合に採り得る変速比の範囲の自由度を拡大できるとともに、前進第1速における下流側遊星歯車組群への入力が、第2リングギヤ32であるため、ギヤの歯元応力が大きくなることを回避することができる。
【0099】
図8に示した実施の形態も変速比の採れる範囲が広いので、変速比の設定自由度が拡大する。
入力軸10、出力軸12と同じ軸心上に上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群を配置することができるのも同様であるとともに、入力軸10と出力軸12とを互いに反対側へ出すことができるので、車両前部に内燃機関を配置して後輪を駆動する変速機に適用することが可能になる。
【0100】
以上、第1乃至第5の実施の形態にあって共通することは、6個の摩擦要素で前進8段後進2段の変速比が得られるとともに、ニーズに応じて下流側遊星歯車組群の歯車列を選択できるので、採り得る変速比の幅が広がるとともに、サンギヤに大きなトルクが作用しない歯車列、例えば図1、図4のようなものを選択することができる。
【0101】
また、図8に示した実施の態様は、入力軸10と出力軸12とを互いに逆方向に配置する構成でありながら、前進第1速における第2遊星歯車組群への入力が第2リングギヤ32であり、歯元応力が低いので小型軽量にできるとともに、第2遊星歯車組群にダブルピニヨン型の遊星歯車組を用いないので部品点数が減り、製造コストを安くすることができる。
【0102】
以上説明したように、本発明の各実施の形態に係る多段変速遊星歯車列によれば、特に図示はしなかったが、入力軸10を遊星歯車列の左側に延ばした構成の場合は、内燃機関と入力軸10の間にトルクコンバータまたは流体カップリングを設け、第3クラッチ64をこれらの中に配置して、第2回転メンバーと内燃機関の出力軸とを直結可能にすることもできる。
この場合は、第5速以上の高速段において、機械的な伝達と流体を介した伝達の混在になるとともに、構造面では歯車列のまわりにおける摩擦要素を1個減らすことができる。
【0103】
また、本発明の各実施の形態に係る多段変速遊星歯車列によれば、上記以下のような効果が得られるほかに、さらに当業者の一般的な知識に基づいて、例えば第3回転メンバーと第1キャリヤ28を連結する第2ブレーキ56と並列に第2ワンウエイクラッチと第3ブレーキを配置して2速から3速への変速ショックを出にくくするなどの改良を加えた態様で実施することができる。
【0104】
【発明の効果】
以上、説明してきたように、本発明の多段変速遊星歯車列によれば、以下のような効果を得ることができる。
請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群とを有し、上流側遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、下流側遊星歯車組群が、回転メンバーとして第1回転メンバー、第2回転メンバー、第3回転メンバー、および第4回転メンバーを備え、第1サンギヤは入力軸と連結し、第1キャリヤはケースに固定するか、または固定可能であり、第1回転メンバーは少なくとも前進第1速において第1リングギヤと連結可能であり、第2回転メンバーは前進第1速および後進においてケースに固定可能であるとともに、前進第5速以上の高速段において入力軸と連結可能であり、第3回転メンバーは少なくとも前進第2速において第1キャリヤと連結することによりケースに固定可能であるとともに、少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能であり、第4回転メンバーは出力軸と連結したため、3列の遊星歯車組で前進8段の変速比を得ることができ、その場合採り得る変速比の範囲が拡大するとともに、下流側遊星歯車組群にダブルピニヨン型の遊星歯車組を用いない構成にして製造コストを安くすることも可能になる。
【0105】
請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、下流側遊星歯車組群が、第2遊星歯車組および第3遊星歯車組からなり、第2遊星歯車組は、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組は、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3キャリヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤと第3サンギヤとが連結して第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤと第3リングギヤとが連結して第4回転メンバーを構成したため、幅広い範囲の変速比が設定可能になるとともに、第1速などにおける下流側遊星歯車組群への入力が直径の大きなリングギヤになって、ギヤの歯元応力が小さくなるので、歯車列全体をコンパクトにすることができる。
【0106】
請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、下流側遊星歯車組群が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンおよび第3リングギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3リングギヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤが第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤが第4回転メンバーを構成したため、幅広い範囲の変速比が設定可能になるとともに、第1速などにおける下流側遊星歯車組群への入力が直径の大きなリングギヤになって、ギヤの歯元応力が小さくなるので、歯車列全体をコンパクトにすることができる。
【0107】
請求項4に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群とを有し、上流側遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、下流側遊星歯車組群が、回転メンバーとして第1回転メンバー、第2回転メンバー、第3回転メンバー、第4回転メンバー、および第5回転メンバーを備え、第1キャリヤは入力軸と連結し、第1サンギヤはケースに固定するか、または固定可能であり、第1回転メンバーは少なくとも前進第1速において第1リングギヤと連結可能であり、第2回転メンバーは前進第1速および後進においてケースに固定可能であるとともに、前進第5速以上の高速段において入力軸と連結可能であり、第3回転メンバーは少なくとも前進第3速において第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において入力軸と、それぞれ連結可能であり、第4回転メンバーは前記出力軸と連結し、第5回転メンバーは少なくとも前進第2速においてケースに固定可能に構成したため、採り得る変速比の範囲が拡大するとともに、前進第1速などでの下流側遊星歯車組群への入力回転メンバーに作用する歯元応力を低減することができるので、変速機の小型軽量化が可能になり、さらに下流側遊星歯車組群にダブルピニヨン型の遊星歯車組を用いないので製造コストを安くすることも可能になる。
【0108】
請求項5に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、下流側遊星歯車組群が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンおよび第3リングギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤと、第2ピニヨンと噛み合った第3サンギヤとを備え、第2リングギヤが第1回転メンバーを構成し、第3リングギヤが第2回転メンバーを構成し、第2サンギヤが第3回転メンバーを構成し、第2キャリヤが第4回転メンバーを構成し、第3サンギヤが第5回転メンバーを構成したため、幅広い範囲の変速比が設定可能になるとともに、第1速などにおける下流側遊星歯車組群への入力が直径の大きなリングギヤになって、ギヤの歯元応力が小さくなるので、歯車列全体をコンパクトにすることが可能になり、さらに流側遊星歯車組群はダブルピニヨン型遊星歯車組を用いないので製造コストを安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図2】図1に示した多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【図3】図1に示した多段変速遊星歯車列の共通速度線図および変速比の例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【符号の説明】
10:入力軸
12:出力軸
14:第1遊星歯車組
16:第2遊星歯車組
18:第3遊星歯車組
20:第1サンギヤ
22:第1リングギヤ
24:第1インナピニヨン
26:第1アウタピニヨン
28:第1キャリヤ
30:第2サンギヤ
32:第2リングギヤ
34:第2ピニヨン
38:第2キャリヤ
40:第3サンギヤ
42:第3リングギヤ
44:第3ピニヨン
48:第3キャリヤ
50:第1ブレーキ
52:ケース
54:第1ブレーキ
56:第2ブレーキ
58:ワンウエイクラッチ
60:第1クラッチ
62:第2クラッチ
64:第3クラッチ
66:第4クラッチ
Claims (5)
- 入力軸と、
出力軸と、
前記入力軸と前記出力軸との間に設けられ、前記入力軸の回転数を前記出力軸の回転数へ変換する上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群とを有し、
前記上流側遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび前記第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび前記第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、
前記下流側遊星歯車組群が、回転メンバーとして第1回転メンバー、第2回転メンバー、第3回転メンバー、および第4回転メンバーを備え、
前記第1サンギヤは前記入力軸と連結し、
前記第1キャリヤはケースに固定するか、または固定可能であり、
前記第1回転メンバーは少なくとも前進第1速において前記第1リングギヤと連結可能であり、
前記第2回転メンバーは前進第1速および後進において前記ケースに固定可能であるとともに、前進第5速以上の高速段において前記入力軸と連結可能であり、前記第3回転メンバーは少なくとも前進第2速において前記第1キャリヤと連結することにより前記ケースに固定可能であるとともに、少なくとも前進第3速において前記第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において前記入力軸と、それぞれ連結可能であり、
前記第4回転メンバーは前記出力軸と連結したことを特徴とする多段変速遊星歯車列。 - 前記下流側遊星歯車組群が、第2遊星歯車組および第3遊星歯車組からなり、
前記第2遊星歯車組は、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび前記第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、
前記第3遊星歯車組は、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび前記第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、
前記第2リングギヤが前記第1回転メンバーを構成し、前記第3キャリヤが前記第2回転メンバーを構成し、前記第2サンギヤと前記第3サンギヤとが連結して前記第3回転メンバーを構成し、前記第2キャリヤと前記第3リングギヤとが連結して前記第4回転メンバーを構成したことを特徴とする請求項1に記載の多段変速遊星歯車列。 - 前記下流側遊星歯車組群が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび前記第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンおよび第3リングギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび前記第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、
前記第2リングギヤが前記第1回転メンバーを構成し、前記第3リングギヤが前記第2回転メンバーを構成し、前記第2サンギヤが前記第3回転メンバーを構成し、前記第2キャリヤが前記第4回転メンバーを構成したことを特徴とする請求項1に記載の多段変速遊星歯車列。 - 入力軸と、
出力軸と、
前記入力軸と前記出力軸との間に設けられ、前記入力軸の回転数を前記出力軸の回転数へ変換する上流側遊星歯車組と下流側遊星歯車組群とを有し、
前記上流側遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび前記第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび前記第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、
前記下流側遊星歯車組群が、回転メンバーとして第1回転メンバー、第2回転メンバー、第3回転メンバー、第4回転メンバー、および第5回転メンバーを備え、
前記第1キャリヤは前記入力軸と連結し、
前記第1サンギヤはケースに固定するか、または固定可能であり、
前記第1回転メンバーは少なくとも前進第1速において前記第1リングギヤと連結可能であり、
前記第2回転メンバーは前進第1速および後進において前記ケースに固定可能であるとともに、前進第5速以上の高速段において前記入力軸と連結可能であり、前記第3回転メンバーは少なくとも前進第3速において前記第1リングギヤと、少なくとも前進第4速において前記入力軸と、それぞれ連結可能であり、
前記第4回転メンバーは前記出力軸と連結し、
前記第5回転メンバーは少なくとも前進第2速において前記ケースに固定可能であることを特徴とする多段変速遊星歯車列。 - 前記下流側遊星歯車組群が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび前記第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンおよび第3リングギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンおよび前記第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤと、前記第2ピニヨンと噛み合った第3サンギヤとを備え、
前記第2リングギヤが前記第1回転メンバーを構成し、前記第3リングギヤが前記第2回転メンバーを構成し、前記第2サンギヤが前記第3回転メンバーを構成し、前記第2キャリヤが前記第4回転メンバーを構成し、前記第3サンギヤが前記第5回転メンバーを構成したことを特徴とする請求項4に記載の多段変速遊星歯車列。
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