JP2004316729A - 多段変速遊星歯車列 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両用として好ましい変速比が得られ、円滑な変速制御が容易に可能でありながら摩擦要素の少ない多段変速遊星歯車列を得る。
【解決手段】ダブルピニヨン型の第1遊星歯車組14とシングルピニヨン型の第2、第3遊星歯車組16、18とを備え、第2リングギヤ32と第3キャリヤ48とを連結し、該両者を入力軸10と連結可能かつケース52に固定可能とし、第2キャリヤ38を出力軸12と連結し、第2サンギヤ30を第3サンギヤ40と連結可能かつケース52に固定可能とし、第3リングギヤ42を第1リングギヤ22と連結するか、または連結可能とし、第3遊星歯車組18を一体化可能とし、第1キャリヤ28と第1サンギヤ20のうちの一方を入力軸10と連結するか、または連結可能とした。
【選択図】 図1
【解決手段】ダブルピニヨン型の第1遊星歯車組14とシングルピニヨン型の第2、第3遊星歯車組16、18とを備え、第2リングギヤ32と第3キャリヤ48とを連結し、該両者を入力軸10と連結可能かつケース52に固定可能とし、第2キャリヤ38を出力軸12と連結し、第2サンギヤ30を第3サンギヤ40と連結可能かつケース52に固定可能とし、第3リングギヤ42を第1リングギヤ22と連結するか、または連結可能とし、第3遊星歯車組18を一体化可能とし、第1キャリヤ28と第1サンギヤ20のうちの一方を入力軸10と連結するか、または連結可能とした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用自動変速機に用いる、前進6段以上の変速比を有する多段変速遊星歯車列に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の前進6段以上の変速比を有する多段変速遊星歯車列としては、シングルピニヨン型遊星歯車組を3組備え、複数のメンバー間の連結や固定の組み合わせにより、前進6段の変速比を得、ワンウエイクラッチ(以下、「OC」という)を2個用いて変速時のショックが出にくい構造としている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−257203号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の多段変速遊星歯車列にあっては、前進方向に7種類の変速比を得られる構成でありながら、うち2種類の変速比(3rd、3rd’)が互いに近似した値になってしまうため、実質的に6段の変速比しか使用できず、前進7段の変速機にはならないという問題があった。
【0005】
また、変速時のショックを出にくくするため、2個のOCを適用する場合にクラッチやブレーキといった摩擦要素の数が8個必要になってしまい、スペース、重量、製造コストの面、ならびに当該摩擦要素が非作動の際の引きずりトルクに起因する燃費の悪化や潤滑油温上昇を招く、という問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、3組の遊星歯車組を用いて車両用変速機に適した前進7段の変速比をも得ることができ、前進6段とした場合には2個のOCを適用した場合のクラッチやブレーキなどの摩擦要素を6個に減らすことが可能な多段変速遊星歯車列を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1、第2および第3の遊星歯車組とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2リングギヤと第3キャリヤとを連結し、該両者を入力軸と連結可能かつケースに固定可能とし、第2キャリヤを出力軸と連結し、第2サンギヤを第3サンギヤと連結可能かつケースに固定可能とし、第3リングギヤを第1リングギヤと連結するか、または連結可能とし、第3遊星歯車の第3サンギヤ、第3リングギヤ、第3キャリヤを一体化可能とし、第1キャリヤと第1サンギヤのうちの一方を入力軸と連結するか、または連結可能とし、他方をケースに固定可能としたことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、第3リングギヤをケースに固定可能としたことを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため、請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、第1サンギヤをケースに第1ワンウエイクラッチを介して固定可能とするとともに、第2サンギヤを第3サンギヤに第2ワンウエイクラッチを介して連結したことを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため、請求項4に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、第3キャリヤを、第1クラッチおよびドッグクラッチを介して、ケースに固定することと入力軸と連結することとのいずれかを選択的に可能としたことを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するため、請求項5に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、第3キャリヤをケースに、第2クラッチおよびドッグクラッチを介して固定することと第3サンギヤと連結することとのいずれかを選択的に可能としたことを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、請求項6に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、前進第2速と第3速の変速比間の比と、前進第3速と第4速の変速比間の比が10%以下の差であることを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため、請求項7に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1、第2および第3の遊星歯車組とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2キャリヤと第3リングギヤとを連結し、該両者を入力軸と連結可能かつケースに固定可能とし、第3キャリヤを出力軸と連結かつ第2リングギヤと連結可能とし、第1サンギヤを第1リングギヤと連結するか、または連結可能とし、第2遊星歯車の第2サンギヤ、第2リングギヤ、第2キャリヤを一体化可能とし、第1キャリヤと第1サンギヤのうちの一方を入力軸と連結するか、または連結可能とし、他方をケースに固定可能としたことを特徴とする。
【0014】
【作用】
請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1、第2および第3の遊星歯車組とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2リングギヤと第3キャリヤとを連結し、該両者を入力軸と連結可能かつケースに固定可能とし、第2キャリヤを出力軸と連結し、第2サンギヤを第3サンギヤと連結可能かつケースに固定可能とし、第3リングギヤを第1リングギヤと連結するか、または連結可能とし、第3遊星歯車の第3サンギヤ、第3リングギヤ、第3キャリヤを一体化可能とし、第1キャリヤと第1サンギヤのうちの一方を入力軸と連結するか、または連結可能とし、他方をケースに固定可能としたため、各クラッチおよびブレーキの締結の組み合わせにより、前進6段以上後進1段の変速比を得て駆動する。
【0015】
請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、第3リングギヤをケースに固定可能としたため、第3リングギヤをケースに固定することで前進第7速の変速比で駆動する。
【0016】
請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、第1サンギヤをケースに第1ワンウエイクラッチを介して固定可能とするとともに、第2サンギヤを第3サンギヤに第2ワンウエイクラッチを介して連結したため、前進第1速乃至第3速において車両を駆動する方向にのみ第1サンギヤをケースに固定し、前進第1速において車両を駆動する方向にのみ第2サンギヤを第3サンギヤに連結して、それぞれの変速比で駆動する。
【0017】
請求項4に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、第3キャリヤを、第1クラッチおよびドッグクラッチを介して、ケースに固定することと入力軸と連結することとのいずれかを選択的に可能としたため、ドッグクラッチをケースに固定した場合に第1クラッチは第4ブレーキの役目を果たし、ドッグクラッチを入力軸と連結した場合には第1クラッチは本来のクラッチの役目を果たす。
【0018】
請求項5に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、第3キャリヤをケースに、第2クラッチおよびドッグクラッチを介して固定することと第3サンギヤと連結することとのいずれかを選択的に可能としたため、ドッグクラッチをケースに固定した場合に第2クラッチは第4ブレーキの役目を果たし、ドッグクラッチを入力軸と連結した場合には第2クラッチは本来のクラッチの役目を果たす。
【0019】
請求項6に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、前進第2速と第3速の変速比間の比と、前進第3速と第4速の変速比間の比が10%以下の差であるように構成したため、前進第2速乃至第5速の変速比が等比級数に近い値になる。
【0020】
請求項7に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1、第2および第3の遊星歯車組とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2キャリヤと第3リングギヤとを連結し、該両者を入力軸と連結可能かつケースに固定可能とし、第3キャリヤを出力軸と連結かつ第2リングギヤと連結可能とし、第1サンギヤを第1リングギヤと連結するか、または連結可能とし、第2遊星歯車の第2サンギヤ、第2リングギヤ、第2キャリヤを一体化可能とし、第1キャリヤと第1サンギヤのうちの一方を入力軸と連結するか、または連結可能とし、他方をケースに固定可能としたため、各クラッチおよびブレーキの締結の組み合わせにより、前進6段以上後進1段の変速比を得て駆動する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多段変速遊星歯車列における実施の形態を、図に基づき説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列を表すスケルトン図である。
なお、同図は同心とした入力軸10と出力軸12の軸心より上側半分を描いてある。
【0022】
この多段変速遊星歯車列は、入力軸10と出力軸12とが同心に配置され、これらと同じ軸心上に3組の遊星歯車組、すなわち第1遊星歯車組14、第2遊星歯車組16、および第3遊星歯車組18が配置されている。
第1遊星歯車組14は、一般的にダブルピニヨン型と呼ばれるものであり、第1サンギヤ20と、第1リングギヤ22と、第1リングギヤ22に噛み合った第1アウタピニヨン24と、第1アウタピニヨン24および第1サンギヤ20に噛み合った第1インナピニヨン26と、第1インナピニヨン26および第1アウタピニヨン24を軸支する第1キャリヤ28とで構成されている。
【0023】
第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18は、ともにシングルピニヨン型であり、それぞれ第2、第3サンギヤ30、40と、第2、第3リングギヤ32、42と、これらと噛み合う第2、第3ピニヨン34、44と、これを軸支する第2、第3キャリヤ38、48とから構成されている。
【0024】
第1キャリヤ28は入力軸10と連結されており、第1サンギヤ20は第1ブレーキ50によりケース52に固定可能であるとともに、第1OC54および第2ブレーキ56により一回転方向にのみケース52に固定可能である。
第1リングギヤ22と第3リングギヤ42とは連結されており、これら両者は第3ブレーキ58によりケース52に固定可能である。
【0025】
第2リングギヤ32と第3キャリヤ48とは連結されるとともに、これら両者は第1クラッチ60により入力軸10と連結可能であり、第4ブレーキ62によってケース52に固定可能である。
第2キャリヤ38は出力軸12と連結されている。
【0026】
第3サンギヤ40は第2クラッチ64により第3キャリヤ48と連結可能であるとともに、第2サンギヤ30と第2OC66を介して一回転方向のみ常時連結され、また第3クラッチ68によっても連結可能である。
第2サンギヤ30は第5ブレーキ70によってケース52に固定可能である。
【0027】
次に、図1に示した多段変速遊星歯車列の作動を、図2に示した作動表と図3の(a)に示した共通速度線図を参考にしながら説明する。
以下の説明では、クラッチやブレーキを摩擦要素と呼び、OCを含めて回転メンバー同士の連結機能を有するもの全体を総称して締結要素と呼ぶ。
【0028】
なお、図2の作動表において、横方向の欄にはクラッチやブレーキおよびOCなどの締結要素が割り当ててあり、C−1は第1クラッチ60を、B−1は第2ブレーキ56を、OC1は第1OC54をといった具合に、それぞれ表す。なお、これらの記号と各締結要素の番号との関係は、図1に記してある。
【0029】
縦方向の欄には図示しない操作レバーの「Dレンジ」および「Lレンジ」に分け、前進第1速(1st)乃至第7速(7th)、および後進(Rev)の各変速段を割り当ててある。
なお、Lレンジは、後述するエンジンブレーキ時のように出力軸12側から入力軸側を駆動することも可能である。
図2の作動表中、○印は各締結要素の締結を、また空欄は各締結要素の解放を表す。
また、(○)は締結したままであっても差し支えないが、動力伝達には関係ないことを表す。
【0030】
図3に示した共通速度線図は、縦方向は入力軸10の回転数を1とした場合の各回転メンバーの回転数を表し、横方向は上記した各遊星歯車の歯数比に応じた間隔に各回転メンバーを割り振って各メンバーごとに縦線を描いてある。
共通速度線図の上方に書いた各回転メンバー、すなわちサンギヤはS、リングギヤはR、キャリヤはCで、またその後の数字1、2、3はそれぞれ各回転メンバーが属する第1、第2、第3の遊星歯車組を表し、たとえばS1、R1、C1は、それぞれ第1遊星歯車組14の第1サンギヤ20、第1リングギヤ22、第1キャリヤ28を表すようになっている。
【0031】
ここで、各遊星歯車組の歯数比は、リングギヤの歯数(Zr)に対するサンギヤの歯数(Zs)の比(Zs/Zr)であり、第1遊星歯車組14の歯数比をα1、第2遊星歯車組16の歯数比をα2、第3遊星歯車組18の歯数比をα3とする。
尚、共通速度線図を含めて変速比の計算には、α1を0.5、α2を0.414、α3を0.56とした場合について説明する。
【0032】
図2の共通速度線図は、各回転メンバーの縦線と太線との交点の高さが、各回転メンバーの回転数を表す。また、2点鎖線の水平線は同じ回転数であることを表す。
分かりやすくするため、出力軸12と連結された第2キャリヤ38の縦線における交点は○印で表示した。
また、図3の(b)にはα1、α2、α3を上記の値とした場合の各変速比およびそれら間の各段間比を示してある。
【0033】
始めに、前進第1速(1st)は、第2ブレーキ56と第5ブレーキ70の締結により第1サンギヤ20と第2サンギヤ30および第3サンギヤ40とをケース52に固定することで得る。
【0034】
すなわち、第1サンギヤ20は第1OC54の作用で車両を加速する駆動方向においてケース52に固定されるようになっており、第3サンギヤ40は第2OC66により車両を加速する駆動方向において第2サンギヤ30と連結される。
したがって、車両を加速する場合には、全てのサンギヤ20、30、40がケース52に固定されることになる。
このとき、前進第1速の変速比(入力軸10の回転数/出力軸12の回転数)は、(1+α2)(1+α3)/(1−α1)になり、上記の値に設定した歯数比においては4.412になる。
【0035】
これを共通速度線図で説明すると、左側の第1遊星歯車組14において入力軸10と連結された第1キャリヤ28(C1)の回転数を1として、第1サンギヤ20(S1)がケース52に固定されているので回転数が0であり、両者を結んだ斜線(太線)と第1リングギヤ22(R1)の縦線との交点が第1リングギヤ22の回転数になる。
【0036】
第1リングギヤ22と連結した右側の第3リングギヤ42(R3)が同じ回転数にあって、第2サンギヤ30(S2)、第3サンギヤ40(S3)がケース52に固定されて回転数が0であり、両者を結ぶ線が1stと書かれた斜線(太線)になって、この斜線と第2キャリヤ38(C2)の縦線との交点が出力軸12の回転数になる。
【0037】
次に、第2速(2nd)への変速は、前述の第1速での第2ブレーキ56と第5ブレーキ70の締結に加えて、第2クラッチ64を締結することにより第3遊星歯車組18が一体になることで行われる。
このときに、第3サンギヤ40と第2サンギヤ30との連結は、第2OC66の作用で自動的に解除される。
【0038】
第3遊星歯車組18が一体になったため、第1遊星歯車組14で減速された第1リングギヤ22の回転は第2リングギヤ32に伝わり、第2サンギヤ30が引き続いてケース52に固定されているので、第2遊星歯車組16で減速されて第2キャリヤ38に伝達される。
【0039】
共通速度線図においては2ndの斜線が示すように、第2速の変速比は、(1+α2)/(1−α1)になり、上記した歯数比においては2.828になる。前述のように、前進第1速から第2速への変速は、第2OC66の作用があるため、第2クラッチ64の締結を追加するだけで済む。
したがって、変速時のいわゆる変速ショックは、第2クラッチ64(C−2)の締結を緩やかに行うように制御するだけで抑えることができ、容易に円滑な変速を行うことができる。
【0040】
次に、第3速(3rd)への変速は、第2速での第2ブレーキ56と第5ブレーキ70および第2クラッチ64の締結に加えて、第3クラッチ68を締結することにより第2遊星歯車組16と第3遊星歯車組18が一体になることで行われる。
【0041】
したがって、第2遊星歯車組16と第3遊星歯車組18が一体になるため、第1遊星歯車組14での減速比が第3速の変速比になり、上記した歯数比においては2.000になり、共通速度線図の右側においては3rdの水平線になる。
【0042】
続いて第4速(4th)への変速は、第3速における第3クラッチ68の締結を解除して、第1クラッチ60および第5ブレーキ70を締結することで行われる。
このときに、第1サンギヤ20の固定は、第1OC54の作用で自動的に解除される。
なお、第2クラッチ64は締結したままで差し支えないが、動力伝達には関係しない。
【0043】
共通速度線図においては4thの斜線が示すように、第2遊星歯車組16による減速のみで行われ、第4速の変速比は(1+α2)になる。
上記した歯数比においては1.414になる。
第3速から第4速への変速は、第1OC54の作用があるため、第1クラッチ56および第5ブレーキ70の2つを締結する必要があるものの、容易に制御することができる。
また、第2ブレーキ56は締結したままで差し支えないが、動力伝達には関係しない。
【0044】
次に、第5速(5th)への変速は、第4速における第1クラッチ60、第2クラッチ64の締結に加えて、第5ブレーキ70を解除して第3クラッチ68を締結することで行われる。
【0045】
これにより、全ての遊星歯車組14、16、18が一体になる。
したがって、共通速度線図においては水平な線で示されるように、変速比は上記の歯数比とは無関係に1.000になる。
【0046】
続いて、第6速(6th)への変速は、第5速における第2クラッチ64を解除して第1ブレーキ50を締結することで行われる。
共通速度線図においては6thの斜線が示すように、第2リングギヤ(R2)32と第3キャリヤ(C3)48の回転数が入力軸10と同じ1で、第3リングギヤ(R3)42の回転数が第1リングギヤ(R1)22と同じになるので、両者を結んだものになる。
第6速の変速比は、α3(1+α2)/{α3(1+α2)+α1・α2}になり、上記した歯数比においては0.793の増速(オーバードライブ)になる。
【0047】
次に第7速への変速は、第6速における第1ブレーキ50の締結を解除して、第3ブレーキ58を締結して第3リングギヤ42をケース52に固定することで行われる。
【0048】
共通速度線図では7thの斜線が示すように、第3リングギヤ(R3)42の回転数が0になるので、第6速より急勾配になる。また、左側の第1遊星歯車組14において第1リングギヤ22(R1)が固定されて回転数が0になるため、第1サンギヤ20(S1)は逆転する。
第7速の変速比は、α3(1+α2)/{α3(1+α2)+α2}になり、上記した歯数比においては0.657の増速になる。
【0049】
また、後進(Rev)の駆動は、第3クラッチ68と第1ブレーキ50および第4ブレーキ62を締結することで行われる。
共通速度線図はRevの斜線に示すようになり、変速比は−α3(1+α2)/α2(1−α1)になって、上記した歯数比においては−3.825になる。
【0050】
前述のように、第1、第2OC54、66はそれぞれ車両を加速する方向においてのみ自動的に締結されるので、エンジンブレーキ時のように出力軸12側から駆動する場合には、これらと併設されている第1ブレーキ50および第3クラッチ68を図2に示す作動表のように締結する。
【0051】
以上の変速比を図3の(b)にまとめる。
隣り合った変速比同士の比を段間比と呼ぶが、図3に見るように第2速から第5速まで同じ段間比であることがわかる。
段間比も変速比と同様に各遊星歯車組14、16、18の歯数比で決まる。
【0052】
第2速と第3速との段間比と、第4速と第5速との段間比は第2遊星歯車組16の歯数比で決まって自動的に同じ値になるので、上記のように第2速から第5速までを同じ段間比にするためには、第1遊星歯車組14と第2遊星歯車組16の歯数比の関係を適切に設定すればよい。
すなわち、α1を1−1/{(1+α2)^2}に設定すると、第2速から第5速までを同じ段間比にすることができる。
【0053】
歯数比は、歯数が整数である関係で完全に自由にはならないが、上記のように第2速から第5速までの変速比が等比級数に極力近くなるように、それぞれの歯数に設定することは容易にできる。
これにより、第2速と第3速との段間比と第3速と第4速との段間比の差を10%以内に抑えれば、車両用としてスムーズな加速が可能な変速比にすることができる。
また、高速段においては段間比が小さくなっており、全般に車両用変速機の変速比として好ましい値になっている。
【0054】
以上が、図1に示した前進7段後進1段の多段遊星歯車列における作動と変速比であるが、前述のように2個の第1OC54、第2OC66の作用で、円滑な変速制御を容易に行うことができるとともに、車両用変速機として好ましい変速比を得ることができる。
【0055】
また、2個のOC54、65を用いながら従来の前進6段の歯車列と同じ数の摩擦要素で成り立っていることも特徴であり、製造コスト、スペース、重量の面での低減は無論のこと、摩擦要素の数が多くないということは燃費や発熱による潤滑油温にも好影響が期待できる。
【0056】
さらに、7段変速ができることと相まって、第1速と最高段の第7速の変速比同士の比(Spread)が6.718で幅広く、燃費をよくするのに適した変速比が得られることも特徴である。
【0057】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第2の実施態様のスケルトンを図4に示す。また、作動表を図5に示す。
以下に示す図は、図1の実施の形態と同様の機能を有する構成部品に、基本的に同じ符号を割り当てて書いてある。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0058】
図4の実施の形態における第1の違いは、第1遊星歯車組14の連結関係が図1と異なることである。
すなわち、第1サンギヤ20と第1キャリヤ28の連結関係が入れ替わり、第1サンギヤ20が入力軸10と連結され、第1キャリヤ28が第1ブレーキ50または第1OC54を介して第2ブレーキ56によりケース52に固定可能になっている。
【0059】
一般にダブルピニヨン型の遊星歯車組の場合は、サンギヤとキャリヤがほぼ同等の機能を有しているので、入れ替えても機能的な差はなく、変速比の計算式が変わることになる。
たとえば、前進第1速の変速比でいうと、(1+α2)(1+α3)/α1になる。ここで図1の計算式と比較すると、α1を0.5とした場合は結果的に変速比は同じになる。
2速以降の変速比は以下のようになる。
第2速:(1+α2)/α1
第3速:1/α1
第4速:(1+α2)
第5速:1
第6速:α3(1+α2)/{α3(1+α2)+α2(1−α1)}
第7速:α3(1+α2)/{α3(1+α2)+α2}
後進:−α3(1+α2)/α2・α1
また、第2速から第5速までを同じ段間比にするためには、α1を1/{(1+α2)^2}に設定すればよい。
【0060】
このように、第1サンギヤ20と第1キャリヤ28の連結関係が入れ替わっても、図1の実施の形態と同様に前進7段後進1段の変速比が得られるが、共通速度線図および詳細の説明は省略する。
【0061】
第2の違いは第3キャリヤ48の連結手段である。
すなわち、第3キャリヤ48は第2クラッチ64を介してドッグクラッチ(以下、DCという)72に連結しており、DC72はケース52と第3サンギヤ40のいずれかと選択的に連結可能になっている。
【0062】
したがって、図5に示す作動表のDCの部分に表示したが、図4でドッグクラッチ72が右側へ移動して第3サンギヤ40と連結している場合は、第2クラッチ64の機能は図1における実施の形態と同じであり、左側へ移動してケース52と連結した場合は、第2クラッチ64が図1における第4ブレーキ62の機能を果たすことになる。
【0063】
このため、図1における第4ブレーキ62がなくなり、摩擦要素がひとつ減ることになる。これにより、図1における第4ブレーキ62が締結しない変速段での第4ブレーキ62のひきずりトルク相当分が減少して、車両の燃費が向上するとともに潤滑油の油温上昇が抑えられるというメリットがある。
その他の機能は図1に示した実施の形態と同様であり、円滑な変速制御を容易に行うことができるとともに、車両用変速機として好ましい変速比を得ることができる。
【0064】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第3の実施の形態のスケルトンを図6に示す。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0065】
図1と大きく異なるのは第2、第3遊星歯車組16、18の連結関係である。すなわち、第2キャリヤ38と第3リングギヤ42とは連結されるとともに、これら両者は第1クラッチ60により入力軸10と連結可能であり、第4ブレーキ62によってケース52に固定可能である。
第3キャリヤ48は第2リングギヤ32と第2OC66または第3クラッチ68により連結可能であるとともに、出力軸12と連結している。
【0066】
第2サンギヤ30は第1リングギヤ22と連結され、これら両者は第3ブレーキ58によってケース52に固定可能であるとともに、第2クラッチ64によって第2キャリヤ38と連結可能である。
第3サンギヤ40は第5ブレーキ70によってケース52に固定可能である。
第1遊星歯車組14の他の連結関係は図1と同じである。
【0067】
図6の実施の形態における各締結要素の作用は、図1の実施の形態における同じ符号のものと同じであり、作動表も図2にしめしたものと同じであるため省略する。
説明を省略した変速比の計算式は図1と異なるが、前進7段後進1段の変速比を得ることができるのは同じである。
また、2個の第1OC54、第2OC66の作用で、円滑な変速制御を容易に行うことができるとともに、車両用変速機として好ましい変速比を得ることができる。
【0068】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第4の実施の形態のスケルトンを図7に示す。また、作動表を図8に示す。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0069】
図1とは、第1遊星歯車組14の締結要素との連結関係が異なる。
すなわち、第1キャリヤ28は、第4クラッチ74により入力軸10と連結可能になっているとともに、第3ブレーキ58によってケース52に固定可能である。
また、第1サンギヤ20は第1ブレーキ52によってケース52に固定可能である点は変わらないが、第1OC54により常に一回転方向のみケース52に固定されている。
【0070】
このため、図1の第2ブレーキ56の機能を第4クラッチ74が果たし、第3ブレーキ58が固定する対象が図1と異なるが機能は図1と同じである。
すなわち、第1ブレーキ50と第3ブレーキ58とを締結すると、第3リングギヤ42をケース52に固定することができる。
【0071】
詳細の説明は省略するが、図8に示す作動表のように各締結要素を作用させることで、前進7段後進1段の変速比を得ることができる。
変速比の計算式も図1の実施の形態と同様である。
図7に示した実施の形態も、2個の第1OC54、第2OC66の作用で、円滑な変速制御を容易に行うことができるとともに、車両用変速機として好ましい変速比を得ることができる。
【0072】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第5の実施の形態のスケルトンを図9に示す。また、作動表を図10に示す。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0073】
構造面での図1との違いは、図1における第2ブレーキ56がなく、第1サンギヤ20が第3OC74によって常に一回転方向にケース52に固定されることである。また、第3ブレーキ58もない。
図10に示した作動表に見るように、図6の実施の形態では前進6段後進1段の変速比を得ることができる。
変速比の計算式は図1の実施の形態における第1速乃至第6速と同じである。
【0074】
つまり、第3ブレーキ58がないため、第3リングギヤ42を固定することができず、第7速の変速比は得られないが、第1サンギヤ20が逆回転することがないので、第2ブレーキ56を廃止できたものである。
【0075】
詳細の説明は省略するが、第1OC54、第2OC66の作用は同様であり、容易に円滑な変速を行うことが可能になる。
このように、従来の前進6段の歯車列と比較した場合、2個の第1、第2OC54、66を活用できることが可能でありながら、6個の摩擦要素で対応できるため、従来例より摩擦要素が2個少なく済むのが特徴である。
前進6段ではあるが、車両用変速機に適した変速比が得られるとともに、円滑な変速が可能な多段遊星歯車列といえる。
【0076】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第6の実施の形態のスケルトンを図11に示す。また、作動表を図12に示す。
図11の実施の形態も図9と同様に前進6段である。
ここでは、図1、図9に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0077】
図11に示す実施の形態は、図9とは第3キャリヤ48の連結関係が異なる。すなわち、第3キャリヤ48は第1クラッチ60を介してDC(ドッグクラッチ)72と連結しており、DC72は入力軸10またはケース52と選択的に連結可能になっている。
【0078】
したがって、図12に示す作動表に見るように、前進段においてはDC72が左側へ移動して入力軸10と連結しているため、第1クラッチ60は図9における第1クラッチ60と同じ機能を発揮する。
後進の際にはDC72が逆に右側へ移動してケース52と連結するため、第1クラッチ60は図9における第4ブレーキ62の機能を果たすことになる。
【0079】
このため、図4に示した実施の形態と同様に摩擦要素をひとつ減らすことが可能になり、前進走行において図9における第4ブレーキ62がないのと同じになる。
したがって、特に高速走行における第4ブレーキ62の引きずりトルク相当分が減るので、燃費がよくなるとともに、それに起因する潤滑油温の上昇を抑えることができる。
【0080】
図11に示した実施の形態においても、摩擦要素が5個でありながら、従来例と同じ第1、第2OC54、66を活用できることが特徴である。
前進6段ではあるが、車両用変速機に適した変速比が得られるとともに、円滑な変速が可能な多段遊星歯車列というメリットも図9と同様である。
【0081】
以上、説明したように本発明の多段変速遊星歯車列によれば、以下のような効果が得られるとともに、当業者の一般的な知識に基づいて、DCの部分に同期装置を追加するなどの改良を加えた態様で実施することができる。
【0082】
【発明の効果】
以上、説明してきたように、本発明の多段変速遊星歯車列によれば、以下のような効果を得ることができる。
請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、3組の遊星歯車組を用いて車両用変速機に適した前進7段の変速比をも得ることができ、前進6段とした場合には2個のOCを適用した場合のクラッチやブレーキなどの摩擦要素を6個に減らすことを可能にするべく、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1、第2および第3の遊星歯車組とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2リングギヤと第3キャリヤとを連結し、該両者を入力軸と連結可能かつケースに固定可能とし、第2キャリヤを出力軸と連結し、第2サンギヤを第3サンギヤと連結可能かつケースに固定可能とし、第3リングギヤを第1リングギヤと連結するか、または連結可能とし、第3遊星歯車の第3サンギヤ、第3リングギヤ、第3キャリヤを一体化可能とし、第1キャリヤと第1サンギヤのうちの一方を入力軸と連結するか、または連結可能とし、他方をケースに固定可能としたため、車両用に適した前進7段までの変速比を得ることができるとともに、2個のOCを活用可能でありながら、従来より摩擦要素の数を減らすことが可能になる。
【0083】
請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、第3リングギヤをケースに固定可能としたため、燃費に有利な前進7段の変速比が得られるとともに、2個のOCを活用できる構成でありながら、従来の前進6段と同じ8個の摩擦要素で済むので、スペース、重量、製造コストの面で削減ができる。
【0084】
請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、第1サンギヤをケースに第1ワンウエイクラッチを介して固定可能とするとともに、第2サンギヤを第3サンギヤに第2ワンウエイクラッチを介して連結したため、第1速から第2速への変速制御および第3速から第4速への変速制御において、円滑な変速を容易に行うことができる。
【0085】
請求項4に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、第3キャリヤを、第1クラッチおよびドッグクラッチを介して、ケースに固定することと入力軸と連結することとのいずれかを選択的に可能としたため、実質的に第4ブレーキをなくすることができるため、第4ブレーキが非作動な変速段における第4ブレーキの引きずりトルク相当分が削減されるので、燃費が向上するうえに、潤滑油の上昇を抑えることができる。
【0086】
請求項5に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、第3キャリヤをケースに、第2クラッチおよびドッグクラッチを介して固定することと第3サンギヤと連結することとのいずれかを選択的に可能としたため、実質的に第4ブレーキをなくすることができるため、第4ブレーキが非作動な変速段における第4ブレーキの引きずりトルク相当分が削減されるので、燃費が向上するうえに、潤滑油の上昇を抑えることができる。
【0087】
請求項6に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、前進第2速と第3速の変速比間の比と、前進第3速と第4速の変速比間の比が10%以下の差であるように構成したため、変速比が車両用として適切になるため、スムーズで燃費の良好な駆動を行うことができる。
【0088】
請求項7に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1、第2および第3の遊星歯車組とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2キャリヤと第3リングギヤとを連結し、該両者を入力軸と連結可能かつケースに固定可能とし、第3キャリヤを出力軸と連結かつ第2リングギヤと連結可能とし、第1サンギヤを第1リングギヤと連結するか、または連結可能とし、第2遊星歯車の第2サンギヤ、第2リングギヤ、第2キャリヤを一体化可能とし、第1キャリヤと第1サンギヤのうちの一方を入力軸と連結するか、または連結可能とし、他方をケースに固定可能としたため、前進7段までの車両用に適した変速比を得ることができるとともに、2個のOCを活用可能でありながら、従来より摩擦要素の数を減らすことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図2】図1に示した多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【図3】図1に示した多段変速遊星歯車列の共通速度線図および変速比の例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図5】図4に示した多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図8】図7に示した多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図10】図9に示した多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図12】図11に示した多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【符号の説明】
10:入力軸
12:出力軸
14:第1遊星歯車組
16:第2遊星歯車組
18:第3遊星歯車組
20:第1サンギヤ
22:第1リングギヤ
24:第1ピニヨンA
26:第1ピニヨンB
28:第1キャリヤ
30:第2サンギヤ
32:第2リングギヤ
34:第2ピニヨン
38:第2キャリヤ
40:第3サンギヤ
42:第3リングギヤ
44:第3ピニヨン
48:第3キャリヤ
50:第1ブレーキ
52:ケース
54:第1OC
56:第2ブレーキ
58:第3ブレーキ
60:第1クラッチ
62:第4ブレーキ
64:第2クラッチ
66:第2OC
68:第3クラッチ
70:第5ブレーキ
72:ドッグクラッチ
74:第4クラッチ
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用自動変速機に用いる、前進6段以上の変速比を有する多段変速遊星歯車列に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の前進6段以上の変速比を有する多段変速遊星歯車列としては、シングルピニヨン型遊星歯車組を3組備え、複数のメンバー間の連結や固定の組み合わせにより、前進6段の変速比を得、ワンウエイクラッチ(以下、「OC」という)を2個用いて変速時のショックが出にくい構造としている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−257203号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の多段変速遊星歯車列にあっては、前進方向に7種類の変速比を得られる構成でありながら、うち2種類の変速比(3rd、3rd’)が互いに近似した値になってしまうため、実質的に6段の変速比しか使用できず、前進7段の変速機にはならないという問題があった。
【0005】
また、変速時のショックを出にくくするため、2個のOCを適用する場合にクラッチやブレーキといった摩擦要素の数が8個必要になってしまい、スペース、重量、製造コストの面、ならびに当該摩擦要素が非作動の際の引きずりトルクに起因する燃費の悪化や潤滑油温上昇を招く、という問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、3組の遊星歯車組を用いて車両用変速機に適した前進7段の変速比をも得ることができ、前進6段とした場合には2個のOCを適用した場合のクラッチやブレーキなどの摩擦要素を6個に減らすことが可能な多段変速遊星歯車列を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1、第2および第3の遊星歯車組とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2リングギヤと第3キャリヤとを連結し、該両者を入力軸と連結可能かつケースに固定可能とし、第2キャリヤを出力軸と連結し、第2サンギヤを第3サンギヤと連結可能かつケースに固定可能とし、第3リングギヤを第1リングギヤと連結するか、または連結可能とし、第3遊星歯車の第3サンギヤ、第3リングギヤ、第3キャリヤを一体化可能とし、第1キャリヤと第1サンギヤのうちの一方を入力軸と連結するか、または連結可能とし、他方をケースに固定可能としたことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、第3リングギヤをケースに固定可能としたことを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため、請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、第1サンギヤをケースに第1ワンウエイクラッチを介して固定可能とするとともに、第2サンギヤを第3サンギヤに第2ワンウエイクラッチを介して連結したことを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため、請求項4に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、第3キャリヤを、第1クラッチおよびドッグクラッチを介して、ケースに固定することと入力軸と連結することとのいずれかを選択的に可能としたことを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するため、請求項5に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、第3キャリヤをケースに、第2クラッチおよびドッグクラッチを介して固定することと第3サンギヤと連結することとのいずれかを選択的に可能としたことを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、請求項6に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、前進第2速と第3速の変速比間の比と、前進第3速と第4速の変速比間の比が10%以下の差であることを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため、請求項7に記載した本発明の多段変速遊星歯車列は、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1、第2および第3の遊星歯車組とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2キャリヤと第3リングギヤとを連結し、該両者を入力軸と連結可能かつケースに固定可能とし、第3キャリヤを出力軸と連結かつ第2リングギヤと連結可能とし、第1サンギヤを第1リングギヤと連結するか、または連結可能とし、第2遊星歯車の第2サンギヤ、第2リングギヤ、第2キャリヤを一体化可能とし、第1キャリヤと第1サンギヤのうちの一方を入力軸と連結するか、または連結可能とし、他方をケースに固定可能としたことを特徴とする。
【0014】
【作用】
請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1、第2および第3の遊星歯車組とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2リングギヤと第3キャリヤとを連結し、該両者を入力軸と連結可能かつケースに固定可能とし、第2キャリヤを出力軸と連結し、第2サンギヤを第3サンギヤと連結可能かつケースに固定可能とし、第3リングギヤを第1リングギヤと連結するか、または連結可能とし、第3遊星歯車の第3サンギヤ、第3リングギヤ、第3キャリヤを一体化可能とし、第1キャリヤと第1サンギヤのうちの一方を入力軸と連結するか、または連結可能とし、他方をケースに固定可能としたため、各クラッチおよびブレーキの締結の組み合わせにより、前進6段以上後進1段の変速比を得て駆動する。
【0015】
請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、第3リングギヤをケースに固定可能としたため、第3リングギヤをケースに固定することで前進第7速の変速比で駆動する。
【0016】
請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、第1サンギヤをケースに第1ワンウエイクラッチを介して固定可能とするとともに、第2サンギヤを第3サンギヤに第2ワンウエイクラッチを介して連結したため、前進第1速乃至第3速において車両を駆動する方向にのみ第1サンギヤをケースに固定し、前進第1速において車両を駆動する方向にのみ第2サンギヤを第3サンギヤに連結して、それぞれの変速比で駆動する。
【0017】
請求項4に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、第3キャリヤを、第1クラッチおよびドッグクラッチを介して、ケースに固定することと入力軸と連結することとのいずれかを選択的に可能としたため、ドッグクラッチをケースに固定した場合に第1クラッチは第4ブレーキの役目を果たし、ドッグクラッチを入力軸と連結した場合には第1クラッチは本来のクラッチの役目を果たす。
【0018】
請求項5に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、第3キャリヤをケースに、第2クラッチおよびドッグクラッチを介して固定することと第3サンギヤと連結することとのいずれかを選択的に可能としたため、ドッグクラッチをケースに固定した場合に第2クラッチは第4ブレーキの役目を果たし、ドッグクラッチを入力軸と連結した場合には第2クラッチは本来のクラッチの役目を果たす。
【0019】
請求項6に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、前進第2速と第3速の変速比間の比と、前進第3速と第4速の変速比間の比が10%以下の差であるように構成したため、前進第2速乃至第5速の変速比が等比級数に近い値になる。
【0020】
請求項7に記載した本発明の多段変速遊星歯車列にあっては、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1、第2および第3の遊星歯車組とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2キャリヤと第3リングギヤとを連結し、該両者を入力軸と連結可能かつケースに固定可能とし、第3キャリヤを出力軸と連結かつ第2リングギヤと連結可能とし、第1サンギヤを第1リングギヤと連結するか、または連結可能とし、第2遊星歯車の第2サンギヤ、第2リングギヤ、第2キャリヤを一体化可能とし、第1キャリヤと第1サンギヤのうちの一方を入力軸と連結するか、または連結可能とし、他方をケースに固定可能としたため、各クラッチおよびブレーキの締結の組み合わせにより、前進6段以上後進1段の変速比を得て駆動する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多段変速遊星歯車列における実施の形態を、図に基づき説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列を表すスケルトン図である。
なお、同図は同心とした入力軸10と出力軸12の軸心より上側半分を描いてある。
【0022】
この多段変速遊星歯車列は、入力軸10と出力軸12とが同心に配置され、これらと同じ軸心上に3組の遊星歯車組、すなわち第1遊星歯車組14、第2遊星歯車組16、および第3遊星歯車組18が配置されている。
第1遊星歯車組14は、一般的にダブルピニヨン型と呼ばれるものであり、第1サンギヤ20と、第1リングギヤ22と、第1リングギヤ22に噛み合った第1アウタピニヨン24と、第1アウタピニヨン24および第1サンギヤ20に噛み合った第1インナピニヨン26と、第1インナピニヨン26および第1アウタピニヨン24を軸支する第1キャリヤ28とで構成されている。
【0023】
第2遊星歯車組16および第3遊星歯車組18は、ともにシングルピニヨン型であり、それぞれ第2、第3サンギヤ30、40と、第2、第3リングギヤ32、42と、これらと噛み合う第2、第3ピニヨン34、44と、これを軸支する第2、第3キャリヤ38、48とから構成されている。
【0024】
第1キャリヤ28は入力軸10と連結されており、第1サンギヤ20は第1ブレーキ50によりケース52に固定可能であるとともに、第1OC54および第2ブレーキ56により一回転方向にのみケース52に固定可能である。
第1リングギヤ22と第3リングギヤ42とは連結されており、これら両者は第3ブレーキ58によりケース52に固定可能である。
【0025】
第2リングギヤ32と第3キャリヤ48とは連結されるとともに、これら両者は第1クラッチ60により入力軸10と連結可能であり、第4ブレーキ62によってケース52に固定可能である。
第2キャリヤ38は出力軸12と連結されている。
【0026】
第3サンギヤ40は第2クラッチ64により第3キャリヤ48と連結可能であるとともに、第2サンギヤ30と第2OC66を介して一回転方向のみ常時連結され、また第3クラッチ68によっても連結可能である。
第2サンギヤ30は第5ブレーキ70によってケース52に固定可能である。
【0027】
次に、図1に示した多段変速遊星歯車列の作動を、図2に示した作動表と図3の(a)に示した共通速度線図を参考にしながら説明する。
以下の説明では、クラッチやブレーキを摩擦要素と呼び、OCを含めて回転メンバー同士の連結機能を有するもの全体を総称して締結要素と呼ぶ。
【0028】
なお、図2の作動表において、横方向の欄にはクラッチやブレーキおよびOCなどの締結要素が割り当ててあり、C−1は第1クラッチ60を、B−1は第2ブレーキ56を、OC1は第1OC54をといった具合に、それぞれ表す。なお、これらの記号と各締結要素の番号との関係は、図1に記してある。
【0029】
縦方向の欄には図示しない操作レバーの「Dレンジ」および「Lレンジ」に分け、前進第1速(1st)乃至第7速(7th)、および後進(Rev)の各変速段を割り当ててある。
なお、Lレンジは、後述するエンジンブレーキ時のように出力軸12側から入力軸側を駆動することも可能である。
図2の作動表中、○印は各締結要素の締結を、また空欄は各締結要素の解放を表す。
また、(○)は締結したままであっても差し支えないが、動力伝達には関係ないことを表す。
【0030】
図3に示した共通速度線図は、縦方向は入力軸10の回転数を1とした場合の各回転メンバーの回転数を表し、横方向は上記した各遊星歯車の歯数比に応じた間隔に各回転メンバーを割り振って各メンバーごとに縦線を描いてある。
共通速度線図の上方に書いた各回転メンバー、すなわちサンギヤはS、リングギヤはR、キャリヤはCで、またその後の数字1、2、3はそれぞれ各回転メンバーが属する第1、第2、第3の遊星歯車組を表し、たとえばS1、R1、C1は、それぞれ第1遊星歯車組14の第1サンギヤ20、第1リングギヤ22、第1キャリヤ28を表すようになっている。
【0031】
ここで、各遊星歯車組の歯数比は、リングギヤの歯数(Zr)に対するサンギヤの歯数(Zs)の比(Zs/Zr)であり、第1遊星歯車組14の歯数比をα1、第2遊星歯車組16の歯数比をα2、第3遊星歯車組18の歯数比をα3とする。
尚、共通速度線図を含めて変速比の計算には、α1を0.5、α2を0.414、α3を0.56とした場合について説明する。
【0032】
図2の共通速度線図は、各回転メンバーの縦線と太線との交点の高さが、各回転メンバーの回転数を表す。また、2点鎖線の水平線は同じ回転数であることを表す。
分かりやすくするため、出力軸12と連結された第2キャリヤ38の縦線における交点は○印で表示した。
また、図3の(b)にはα1、α2、α3を上記の値とした場合の各変速比およびそれら間の各段間比を示してある。
【0033】
始めに、前進第1速(1st)は、第2ブレーキ56と第5ブレーキ70の締結により第1サンギヤ20と第2サンギヤ30および第3サンギヤ40とをケース52に固定することで得る。
【0034】
すなわち、第1サンギヤ20は第1OC54の作用で車両を加速する駆動方向においてケース52に固定されるようになっており、第3サンギヤ40は第2OC66により車両を加速する駆動方向において第2サンギヤ30と連結される。
したがって、車両を加速する場合には、全てのサンギヤ20、30、40がケース52に固定されることになる。
このとき、前進第1速の変速比(入力軸10の回転数/出力軸12の回転数)は、(1+α2)(1+α3)/(1−α1)になり、上記の値に設定した歯数比においては4.412になる。
【0035】
これを共通速度線図で説明すると、左側の第1遊星歯車組14において入力軸10と連結された第1キャリヤ28(C1)の回転数を1として、第1サンギヤ20(S1)がケース52に固定されているので回転数が0であり、両者を結んだ斜線(太線)と第1リングギヤ22(R1)の縦線との交点が第1リングギヤ22の回転数になる。
【0036】
第1リングギヤ22と連結した右側の第3リングギヤ42(R3)が同じ回転数にあって、第2サンギヤ30(S2)、第3サンギヤ40(S3)がケース52に固定されて回転数が0であり、両者を結ぶ線が1stと書かれた斜線(太線)になって、この斜線と第2キャリヤ38(C2)の縦線との交点が出力軸12の回転数になる。
【0037】
次に、第2速(2nd)への変速は、前述の第1速での第2ブレーキ56と第5ブレーキ70の締結に加えて、第2クラッチ64を締結することにより第3遊星歯車組18が一体になることで行われる。
このときに、第3サンギヤ40と第2サンギヤ30との連結は、第2OC66の作用で自動的に解除される。
【0038】
第3遊星歯車組18が一体になったため、第1遊星歯車組14で減速された第1リングギヤ22の回転は第2リングギヤ32に伝わり、第2サンギヤ30が引き続いてケース52に固定されているので、第2遊星歯車組16で減速されて第2キャリヤ38に伝達される。
【0039】
共通速度線図においては2ndの斜線が示すように、第2速の変速比は、(1+α2)/(1−α1)になり、上記した歯数比においては2.828になる。前述のように、前進第1速から第2速への変速は、第2OC66の作用があるため、第2クラッチ64の締結を追加するだけで済む。
したがって、変速時のいわゆる変速ショックは、第2クラッチ64(C−2)の締結を緩やかに行うように制御するだけで抑えることができ、容易に円滑な変速を行うことができる。
【0040】
次に、第3速(3rd)への変速は、第2速での第2ブレーキ56と第5ブレーキ70および第2クラッチ64の締結に加えて、第3クラッチ68を締結することにより第2遊星歯車組16と第3遊星歯車組18が一体になることで行われる。
【0041】
したがって、第2遊星歯車組16と第3遊星歯車組18が一体になるため、第1遊星歯車組14での減速比が第3速の変速比になり、上記した歯数比においては2.000になり、共通速度線図の右側においては3rdの水平線になる。
【0042】
続いて第4速(4th)への変速は、第3速における第3クラッチ68の締結を解除して、第1クラッチ60および第5ブレーキ70を締結することで行われる。
このときに、第1サンギヤ20の固定は、第1OC54の作用で自動的に解除される。
なお、第2クラッチ64は締結したままで差し支えないが、動力伝達には関係しない。
【0043】
共通速度線図においては4thの斜線が示すように、第2遊星歯車組16による減速のみで行われ、第4速の変速比は(1+α2)になる。
上記した歯数比においては1.414になる。
第3速から第4速への変速は、第1OC54の作用があるため、第1クラッチ56および第5ブレーキ70の2つを締結する必要があるものの、容易に制御することができる。
また、第2ブレーキ56は締結したままで差し支えないが、動力伝達には関係しない。
【0044】
次に、第5速(5th)への変速は、第4速における第1クラッチ60、第2クラッチ64の締結に加えて、第5ブレーキ70を解除して第3クラッチ68を締結することで行われる。
【0045】
これにより、全ての遊星歯車組14、16、18が一体になる。
したがって、共通速度線図においては水平な線で示されるように、変速比は上記の歯数比とは無関係に1.000になる。
【0046】
続いて、第6速(6th)への変速は、第5速における第2クラッチ64を解除して第1ブレーキ50を締結することで行われる。
共通速度線図においては6thの斜線が示すように、第2リングギヤ(R2)32と第3キャリヤ(C3)48の回転数が入力軸10と同じ1で、第3リングギヤ(R3)42の回転数が第1リングギヤ(R1)22と同じになるので、両者を結んだものになる。
第6速の変速比は、α3(1+α2)/{α3(1+α2)+α1・α2}になり、上記した歯数比においては0.793の増速(オーバードライブ)になる。
【0047】
次に第7速への変速は、第6速における第1ブレーキ50の締結を解除して、第3ブレーキ58を締結して第3リングギヤ42をケース52に固定することで行われる。
【0048】
共通速度線図では7thの斜線が示すように、第3リングギヤ(R3)42の回転数が0になるので、第6速より急勾配になる。また、左側の第1遊星歯車組14において第1リングギヤ22(R1)が固定されて回転数が0になるため、第1サンギヤ20(S1)は逆転する。
第7速の変速比は、α3(1+α2)/{α3(1+α2)+α2}になり、上記した歯数比においては0.657の増速になる。
【0049】
また、後進(Rev)の駆動は、第3クラッチ68と第1ブレーキ50および第4ブレーキ62を締結することで行われる。
共通速度線図はRevの斜線に示すようになり、変速比は−α3(1+α2)/α2(1−α1)になって、上記した歯数比においては−3.825になる。
【0050】
前述のように、第1、第2OC54、66はそれぞれ車両を加速する方向においてのみ自動的に締結されるので、エンジンブレーキ時のように出力軸12側から駆動する場合には、これらと併設されている第1ブレーキ50および第3クラッチ68を図2に示す作動表のように締結する。
【0051】
以上の変速比を図3の(b)にまとめる。
隣り合った変速比同士の比を段間比と呼ぶが、図3に見るように第2速から第5速まで同じ段間比であることがわかる。
段間比も変速比と同様に各遊星歯車組14、16、18の歯数比で決まる。
【0052】
第2速と第3速との段間比と、第4速と第5速との段間比は第2遊星歯車組16の歯数比で決まって自動的に同じ値になるので、上記のように第2速から第5速までを同じ段間比にするためには、第1遊星歯車組14と第2遊星歯車組16の歯数比の関係を適切に設定すればよい。
すなわち、α1を1−1/{(1+α2)^2}に設定すると、第2速から第5速までを同じ段間比にすることができる。
【0053】
歯数比は、歯数が整数である関係で完全に自由にはならないが、上記のように第2速から第5速までの変速比が等比級数に極力近くなるように、それぞれの歯数に設定することは容易にできる。
これにより、第2速と第3速との段間比と第3速と第4速との段間比の差を10%以内に抑えれば、車両用としてスムーズな加速が可能な変速比にすることができる。
また、高速段においては段間比が小さくなっており、全般に車両用変速機の変速比として好ましい値になっている。
【0054】
以上が、図1に示した前進7段後進1段の多段遊星歯車列における作動と変速比であるが、前述のように2個の第1OC54、第2OC66の作用で、円滑な変速制御を容易に行うことができるとともに、車両用変速機として好ましい変速比を得ることができる。
【0055】
また、2個のOC54、65を用いながら従来の前進6段の歯車列と同じ数の摩擦要素で成り立っていることも特徴であり、製造コスト、スペース、重量の面での低減は無論のこと、摩擦要素の数が多くないということは燃費や発熱による潤滑油温にも好影響が期待できる。
【0056】
さらに、7段変速ができることと相まって、第1速と最高段の第7速の変速比同士の比(Spread)が6.718で幅広く、燃費をよくするのに適した変速比が得られることも特徴である。
【0057】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第2の実施態様のスケルトンを図4に示す。また、作動表を図5に示す。
以下に示す図は、図1の実施の形態と同様の機能を有する構成部品に、基本的に同じ符号を割り当てて書いてある。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0058】
図4の実施の形態における第1の違いは、第1遊星歯車組14の連結関係が図1と異なることである。
すなわち、第1サンギヤ20と第1キャリヤ28の連結関係が入れ替わり、第1サンギヤ20が入力軸10と連結され、第1キャリヤ28が第1ブレーキ50または第1OC54を介して第2ブレーキ56によりケース52に固定可能になっている。
【0059】
一般にダブルピニヨン型の遊星歯車組の場合は、サンギヤとキャリヤがほぼ同等の機能を有しているので、入れ替えても機能的な差はなく、変速比の計算式が変わることになる。
たとえば、前進第1速の変速比でいうと、(1+α2)(1+α3)/α1になる。ここで図1の計算式と比較すると、α1を0.5とした場合は結果的に変速比は同じになる。
2速以降の変速比は以下のようになる。
第2速:(1+α2)/α1
第3速:1/α1
第4速:(1+α2)
第5速:1
第6速:α3(1+α2)/{α3(1+α2)+α2(1−α1)}
第7速:α3(1+α2)/{α3(1+α2)+α2}
後進:−α3(1+α2)/α2・α1
また、第2速から第5速までを同じ段間比にするためには、α1を1/{(1+α2)^2}に設定すればよい。
【0060】
このように、第1サンギヤ20と第1キャリヤ28の連結関係が入れ替わっても、図1の実施の形態と同様に前進7段後進1段の変速比が得られるが、共通速度線図および詳細の説明は省略する。
【0061】
第2の違いは第3キャリヤ48の連結手段である。
すなわち、第3キャリヤ48は第2クラッチ64を介してドッグクラッチ(以下、DCという)72に連結しており、DC72はケース52と第3サンギヤ40のいずれかと選択的に連結可能になっている。
【0062】
したがって、図5に示す作動表のDCの部分に表示したが、図4でドッグクラッチ72が右側へ移動して第3サンギヤ40と連結している場合は、第2クラッチ64の機能は図1における実施の形態と同じであり、左側へ移動してケース52と連結した場合は、第2クラッチ64が図1における第4ブレーキ62の機能を果たすことになる。
【0063】
このため、図1における第4ブレーキ62がなくなり、摩擦要素がひとつ減ることになる。これにより、図1における第4ブレーキ62が締結しない変速段での第4ブレーキ62のひきずりトルク相当分が減少して、車両の燃費が向上するとともに潤滑油の油温上昇が抑えられるというメリットがある。
その他の機能は図1に示した実施の形態と同様であり、円滑な変速制御を容易に行うことができるとともに、車両用変速機として好ましい変速比を得ることができる。
【0064】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第3の実施の形態のスケルトンを図6に示す。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0065】
図1と大きく異なるのは第2、第3遊星歯車組16、18の連結関係である。すなわち、第2キャリヤ38と第3リングギヤ42とは連結されるとともに、これら両者は第1クラッチ60により入力軸10と連結可能であり、第4ブレーキ62によってケース52に固定可能である。
第3キャリヤ48は第2リングギヤ32と第2OC66または第3クラッチ68により連結可能であるとともに、出力軸12と連結している。
【0066】
第2サンギヤ30は第1リングギヤ22と連結され、これら両者は第3ブレーキ58によってケース52に固定可能であるとともに、第2クラッチ64によって第2キャリヤ38と連結可能である。
第3サンギヤ40は第5ブレーキ70によってケース52に固定可能である。
第1遊星歯車組14の他の連結関係は図1と同じである。
【0067】
図6の実施の形態における各締結要素の作用は、図1の実施の形態における同じ符号のものと同じであり、作動表も図2にしめしたものと同じであるため省略する。
説明を省略した変速比の計算式は図1と異なるが、前進7段後進1段の変速比を得ることができるのは同じである。
また、2個の第1OC54、第2OC66の作用で、円滑な変速制御を容易に行うことができるとともに、車両用変速機として好ましい変速比を得ることができる。
【0068】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第4の実施の形態のスケルトンを図7に示す。また、作動表を図8に示す。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0069】
図1とは、第1遊星歯車組14の締結要素との連結関係が異なる。
すなわち、第1キャリヤ28は、第4クラッチ74により入力軸10と連結可能になっているとともに、第3ブレーキ58によってケース52に固定可能である。
また、第1サンギヤ20は第1ブレーキ52によってケース52に固定可能である点は変わらないが、第1OC54により常に一回転方向のみケース52に固定されている。
【0070】
このため、図1の第2ブレーキ56の機能を第4クラッチ74が果たし、第3ブレーキ58が固定する対象が図1と異なるが機能は図1と同じである。
すなわち、第1ブレーキ50と第3ブレーキ58とを締結すると、第3リングギヤ42をケース52に固定することができる。
【0071】
詳細の説明は省略するが、図8に示す作動表のように各締結要素を作用させることで、前進7段後進1段の変速比を得ることができる。
変速比の計算式も図1の実施の形態と同様である。
図7に示した実施の形態も、2個の第1OC54、第2OC66の作用で、円滑な変速制御を容易に行うことができるとともに、車両用変速機として好ましい変速比を得ることができる。
【0072】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第5の実施の形態のスケルトンを図9に示す。また、作動表を図10に示す。
ここでは、図1に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0073】
構造面での図1との違いは、図1における第2ブレーキ56がなく、第1サンギヤ20が第3OC74によって常に一回転方向にケース52に固定されることである。また、第3ブレーキ58もない。
図10に示した作動表に見るように、図6の実施の形態では前進6段後進1段の変速比を得ることができる。
変速比の計算式は図1の実施の形態における第1速乃至第6速と同じである。
【0074】
つまり、第3ブレーキ58がないため、第3リングギヤ42を固定することができず、第7速の変速比は得られないが、第1サンギヤ20が逆回転することがないので、第2ブレーキ56を廃止できたものである。
【0075】
詳細の説明は省略するが、第1OC54、第2OC66の作用は同様であり、容易に円滑な変速を行うことが可能になる。
このように、従来の前進6段の歯車列と比較した場合、2個の第1、第2OC54、66を活用できることが可能でありながら、6個の摩擦要素で対応できるため、従来例より摩擦要素が2個少なく済むのが特徴である。
前進6段ではあるが、車両用変速機に適した変速比が得られるとともに、円滑な変速が可能な多段遊星歯車列といえる。
【0076】
次に、本発明の多段変速遊星歯車列における第6の実施の形態のスケルトンを図11に示す。また、作動表を図12に示す。
図11の実施の形態も図9と同様に前進6段である。
ここでは、図1、図9に示した実施の形態と異なる部分を中心に説明し、実質的に同じ部分の説明を省略する。
【0077】
図11に示す実施の形態は、図9とは第3キャリヤ48の連結関係が異なる。すなわち、第3キャリヤ48は第1クラッチ60を介してDC(ドッグクラッチ)72と連結しており、DC72は入力軸10またはケース52と選択的に連結可能になっている。
【0078】
したがって、図12に示す作動表に見るように、前進段においてはDC72が左側へ移動して入力軸10と連結しているため、第1クラッチ60は図9における第1クラッチ60と同じ機能を発揮する。
後進の際にはDC72が逆に右側へ移動してケース52と連結するため、第1クラッチ60は図9における第4ブレーキ62の機能を果たすことになる。
【0079】
このため、図4に示した実施の形態と同様に摩擦要素をひとつ減らすことが可能になり、前進走行において図9における第4ブレーキ62がないのと同じになる。
したがって、特に高速走行における第4ブレーキ62の引きずりトルク相当分が減るので、燃費がよくなるとともに、それに起因する潤滑油温の上昇を抑えることができる。
【0080】
図11に示した実施の形態においても、摩擦要素が5個でありながら、従来例と同じ第1、第2OC54、66を活用できることが特徴である。
前進6段ではあるが、車両用変速機に適した変速比が得られるとともに、円滑な変速が可能な多段遊星歯車列というメリットも図9と同様である。
【0081】
以上、説明したように本発明の多段変速遊星歯車列によれば、以下のような効果が得られるとともに、当業者の一般的な知識に基づいて、DCの部分に同期装置を追加するなどの改良を加えた態様で実施することができる。
【0082】
【発明の効果】
以上、説明してきたように、本発明の多段変速遊星歯車列によれば、以下のような効果を得ることができる。
請求項1に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、3組の遊星歯車組を用いて車両用変速機に適した前進7段の変速比をも得ることができ、前進6段とした場合には2個のOCを適用した場合のクラッチやブレーキなどの摩擦要素を6個に減らすことを可能にするべく、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1、第2および第3の遊星歯車組とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2リングギヤと第3キャリヤとを連結し、該両者を入力軸と連結可能かつケースに固定可能とし、第2キャリヤを出力軸と連結し、第2サンギヤを第3サンギヤと連結可能かつケースに固定可能とし、第3リングギヤを第1リングギヤと連結するか、または連結可能とし、第3遊星歯車の第3サンギヤ、第3リングギヤ、第3キャリヤを一体化可能とし、第1キャリヤと第1サンギヤのうちの一方を入力軸と連結するか、または連結可能とし、他方をケースに固定可能としたため、車両用に適した前進7段までの変速比を得ることができるとともに、2個のOCを活用可能でありながら、従来より摩擦要素の数を減らすことが可能になる。
【0083】
請求項2に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、第3リングギヤをケースに固定可能としたため、燃費に有利な前進7段の変速比が得られるとともに、2個のOCを活用できる構成でありながら、従来の前進6段と同じ8個の摩擦要素で済むので、スペース、重量、製造コストの面で削減ができる。
【0084】
請求項3に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、第1サンギヤをケースに第1ワンウエイクラッチを介して固定可能とするとともに、第2サンギヤを第3サンギヤに第2ワンウエイクラッチを介して連結したため、第1速から第2速への変速制御および第3速から第4速への変速制御において、円滑な変速を容易に行うことができる。
【0085】
請求項4に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、第3キャリヤを、第1クラッチおよびドッグクラッチを介して、ケースに固定することと入力軸と連結することとのいずれかを選択的に可能としたため、実質的に第4ブレーキをなくすることができるため、第4ブレーキが非作動な変速段における第4ブレーキの引きずりトルク相当分が削減されるので、燃費が向上するうえに、潤滑油の上昇を抑えることができる。
【0086】
請求項5に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、第3キャリヤをケースに、第2クラッチおよびドッグクラッチを介して固定することと第3サンギヤと連結することとのいずれかを選択的に可能としたため、実質的に第4ブレーキをなくすることができるため、第4ブレーキが非作動な変速段における第4ブレーキの引きずりトルク相当分が削減されるので、燃費が向上するうえに、潤滑油の上昇を抑えることができる。
【0087】
請求項6に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、前進第2速と第3速の変速比間の比と、前進第3速と第4速の変速比間の比が10%以下の差であるように構成したため、変速比が車両用として適切になるため、スムーズで燃費の良好な駆動を行うことができる。
【0088】
請求項7に記載した本発明の多段変速遊星歯車列によれば、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸との間に設けられ、入力軸の回転数を出力軸の回転数へ変換する第1、第2および第3の遊星歯車組とを有し、第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、第2キャリヤと第3リングギヤとを連結し、該両者を入力軸と連結可能かつケースに固定可能とし、第3キャリヤを出力軸と連結かつ第2リングギヤと連結可能とし、第1サンギヤを第1リングギヤと連結するか、または連結可能とし、第2遊星歯車の第2サンギヤ、第2リングギヤ、第2キャリヤを一体化可能とし、第1キャリヤと第1サンギヤのうちの一方を入力軸と連結するか、または連結可能とし、他方をケースに固定可能としたため、前進7段までの車両用に適した変速比を得ることができるとともに、2個のOCを活用可能でありながら、従来より摩擦要素の数を減らすことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図2】図1に示した多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【図3】図1に示した多段変速遊星歯車列の共通速度線図および変速比の例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図5】図4に示した多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図8】図7に示した多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図10】図9に示した多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列のスケルトンを示す図である。
【図12】図11に示した多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【符号の説明】
10:入力軸
12:出力軸
14:第1遊星歯車組
16:第2遊星歯車組
18:第3遊星歯車組
20:第1サンギヤ
22:第1リングギヤ
24:第1ピニヨンA
26:第1ピニヨンB
28:第1キャリヤ
30:第2サンギヤ
32:第2リングギヤ
34:第2ピニヨン
38:第2キャリヤ
40:第3サンギヤ
42:第3リングギヤ
44:第3ピニヨン
48:第3キャリヤ
50:第1ブレーキ
52:ケース
54:第1OC
56:第2ブレーキ
58:第3ブレーキ
60:第1クラッチ
62:第4ブレーキ
64:第2クラッチ
66:第2OC
68:第3クラッチ
70:第5ブレーキ
72:ドッグクラッチ
74:第4クラッチ
Claims (7)
- 入力軸と、
出力軸と、
前記入力軸と前記出力軸との間に設けられ、前記入力軸の回転数を前記出力軸の回転数へ変換する第1、第2および第3の遊星歯車組とを有し、
前記第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび前記第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび前記第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、
前記第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび前記第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、
前記第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび前記第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、
前記第2リングギヤと前記第3キャリヤとを連結し、該両者を前記入力軸と連結可能かつケースに固定可能とし、
前記第2キャリヤを出力軸と連結し、
前記第2サンギヤを前記第3サンギヤと連結可能かつ前記ケースに固定可能とし、
前記第3リングギヤを前記第1リングギヤと連結するか、または連結可能とし、
前記第3遊星歯車の第3サンギヤ、第3リングギヤ、第3キャリヤを一体化可能とし、
前記第1キャリヤと前記第1サンギヤのうちの一方を前記入力軸と連結するか、または連結可能とし、他方を前記ケースに固定可能としたことを特徴とする多段変速遊星歯車列。 - 前記第3リングギヤを前記ケースに固定可能としたことを特徴とする請求項1に記載の多段変速遊星歯車列。
- 前記第1サンギヤを前記ケースに第1ワンウエイクラッチを介して固定可能とするとともに、前記第2サンギヤを前記第3サンギヤに第2ワンウエイクラッチを介して連結したことを特徴とする請求項1または2に記載した多段変速遊星歯車列。
- 前記第3キャリヤを、第1クラッチおよびドッグクラッチを介して、前記ケースに固定することと前記入力軸と連結することとのいずれかを選択的に可能としたことを特徴とする請求項1に記載の多段変速遊星歯車列。
- 前記第3キャリヤを前記ケースに、第2クラッチおよびドッグクラッチを介して固定することと前記第3サンギヤと連結することとのいずれかを選択的に可能としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の多段変速遊星歯車列。
- 前進第2速と第3速の変速比間の比と、前進第3速と第4速の変速比間の比が10%以下の差であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の多段変速遊星歯車列。
- 入力軸と、
出力軸と、
前記入力軸と前記出力軸との間に設けられ、前記入力軸の回転数を前記出力軸の回転数へ変換する第1、第2および第3の遊星歯車組とを有し、
前記第1遊星歯車組が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤに噛み合った第1アウタピニヨンと、該第1アウタピニヨンおよび前記第1サンギヤに噛み合った第1インナピニヨンと、該第1インナピニヨンおよび前記第1アウタピニヨンを軸支する第1キャリヤとを備え、
前記第2遊星歯車組が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび前記第2サンギヤに噛み合った第2ピニヨンと、該第2ピニヨンを軸支する第2キャリヤとを備え、
前記第3遊星歯車組が、第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび前記第3サンギヤに噛み合った第3ピニヨンと、該第3ピニヨンを軸支する第3キャリヤとを備え、
前記第2キャリヤと前記第3リングギヤとを連結し、該両者を前記入力軸と連結可能かつケースに固定可能とし、
前記第3キャリヤを出力軸と連結かつ前記第2リングギヤと連結可能とし、
前記第1サンギヤを前記第1リングギヤと連結するか、または連結可能とし、前記第2遊星歯車の第2サンギヤ、第2リングギヤ、第2キャリヤを一体化可能とし、
前記第1キャリヤと前記第1サンギヤのうちの一方を前記入力軸と連結するか、または連結可能とし、他方を前記ケースに固定可能としたことを特徴とする多段変速遊星歯車列。
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2003
- 2003-04-15 JP JP2003109678A patent/JP2004316729A/ja active Pending
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