JP2004339589A - ホローカソードガン - Google Patents
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Abstract
【課題】大口径のホローカソードガンを用い、大電流でHCDを行った場合であっても、異常放電の発生なしに安定して高速成膜を実施することができるホローカソードガンを提供する。
【解決手段】L型ホローカソードガンにおいて、該L型ホローカソードガンのスティンガーロッド端部からL型曲げ開始位置までの距離(a)とL型曲げ部からカソード先端までの距離(b)の比a/bを 1.5以内とする。
【選択図】 図4
【解決手段】L型ホローカソードガンにおいて、該L型ホローカソードガンのスティンガーロッド端部からL型曲げ開始位置までの距離(a)とL型曲げ部からカソード先端までの距離(b)の比a/bを 1.5以内とする。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、HCDイオンプレーティングに用いて好適なホローカソードガンに関し、特に大蒸発量を得るためにホローカソードガンの口径を大口径とした場合に懸念される異常放電の発生を効果的に防止しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
ホローカソード(HCD;Hollow Cathode Discharge)法を用いたイオンプレーティングは、イオン化率が極めて高いことから、通常のエレクトロンビーム(EB;Electron Beam)法によるイオンプレーティングよりも、蒸着膜質が良好で、基板との密着性にも優れている。また、このHCD法には、反応ガス流量、真空度、バイアス電圧、基板温度および基板の前処理条件などが多少変動したとしても、容易にしかもスムーズに蒸着が行えるという、大きな利点がある。
通常、このHCD法でコーティングを行う場合は、投入電流が 200〜300 A程度で、ホローカソードガンとしては、Ta製で直径:8mm、長さ:80mm程度のストレート形状のものが使用される(例えば非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0003】
上記したような投入電流が 200〜300 A程度で、使用するTaカソードガンが小型小口径の場合には、プラズマ発生時において、Taカソードガンのスティンガーロッド部と先端部の温度差が大きいため、コーティング中における異常放電の発生は少なくかつ小さいという特徴があるが、難点として成膜速度が小さいことが挙げられる。
【0004】
これに対し、大蒸発量を得るために、大口径のTaカソードガンを用いて、大電流でHCDを行った場合には、異常放電が発生し易く、特に異常放電がTaカソードガンに発生した場合には、図1に黒矢印で示すように、カソードガンに穴が開き、そこからArプラズマが漏れて使用不能となるだけでなく、この異常放電発生によるサブストレイトへの悪影響が懸念される。
そして、このようなTaカソードガンにおける異常放電は、図2に示すような二重曲げを行った長尺大口径のTaカソードガンで特に発生し易かった。
【0005】
【非特許文献1】
「井口征夫、鈴木一弘、大久保治、高橋夏木:日本金属学会会報、32 (1993)、P.226 」
【非特許文献2】
「井口征夫、鈴木一弘、小林康宏、大久保治、高橋夏木:真空、38 (1995) 、 P.639 」
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、大口径のホローカソードガンを使用した場合であっても、異常放電を伴わずに長時間の安定したコーティングを実施することができるホローカソードガンを提案することを目的とする。
なお、本発明において、大口径とは、Taカソードの先端部の直径が16mm以上、25mm以下程度のものを意味する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
さて,発明者らは、まず異常放電の発生原因について調査したところ、長尺大口径のTaカソードガンでは、長手方向に温度分布の差およびArガス濃度の差が生じて、異常放電が発生し易い状況となることが判明した。
そこで、次に発明者らは、かような異常放電の発生を防止すべく鋭意検討を重ねた結果、ホローカソードガンの冷却能をできる限り増大させるガン設計とすることが有効であるとの知見を得た。
また、カソードガンの先端部を太くしてプラズマ発生の最先端領域を増大させると、カソードガンの最先端部の消耗が抑制されるとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0008】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.L型ホローカソードガンにおいて、該L型ホローカソードガンのスティンガーロッド端部からL型曲げ開始位置までの距離(a)とL型曲げ部からカソード先端までの距離(b)の比a/bを 1.5以内としたことを特徴とするホローカソードガン。
【0009】
2.上記1において、前記L型ホローカソードガンの先端部の径を、スティンガーロッド端部の根元部の径の 1.2〜3.0 倍とすることを特徴とするホローカソードガン。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
被処理材として、常法に従ってフォルステライト被膜を有しない一方向性珪素鋼板(膜無し珪素鋼板と呼ぶ)を製造した。
この膜無し珪素鋼板の表面に、図3に模式で示すような Air−to−Air 方式の連続セラミックコーティングラインにおいて、大容量HCD法により、0.1 μm厚のTiNO膜を被成した。
【0011】
図3において、aおよびdゾーンは、差動排気系(Dynamic sealing stage ofentrance)で、差圧シール室11が連続して複数設置され、またbゾーンには予熱室(Pre−heating stage)が設置され、さらにc1 〜c4 ゾーンには、それぞれ蒸着室12が一つずつ設置されている。
図中、番号13は膜無し珪素鋼板、14はシールローラ、15は真空ポンプである。また、16は、膜無し珪素鋼板13を予熱可能なホットローラ、17は電子ビームを走査可能な予熱用電子ビームガンであり、この予熱用電子ビームにより蒸着前の膜無し珪素鋼板13の表面浄化を図っている。
【0012】
イオンプレーティングを行う際には、真空ポンプ15を駆動させることにより、蒸着室12内を真空度:1.3 ×10−1〜6.7 ×10−2Paとし、その後蒸着室内にTiNO膜を形成するのに必要な窒素と酸素の混合ガスを導入し、蒸着室内真空度を 2.0×10−1〜1.3 ×10−1Paとする。また、c1 ゾーン入口の膜無し珪素鋼板13の温度を100 〜400 ℃程度に予熟すると共に、膜無し珪素鋼板13にバイアス電圧:−20〜−200 Vを印加する。なお、定常時には、反応ガスの流量は1000〜4000 cm3/minとした。
【0013】
図4に、c1 〜c4 ゾーンに設置した蒸着室12の一例を示す。同図は、本発明に係るHCDイオンプレーティング装置の蒸着室の構成を示す模式図でもある。また、図4に示す蒸着室は、図3の蒸着室12内をその室内における鋼板進行方向から見た概略構成図であって、図4において左右方向が、被処理材である膜無し珪素鋼板13の幅方向である。
図中、番号1は本発明に係るTa製のL型ホローカソードガン、2はスティンガーロッド、3はセラミックカバー、4はチャック、5はイオンコレクター、6は反応窒素ガスの導入口、7は集束コイル、8は坩堝、9は溶融Ti、そして10がプラズマビームである。
【0014】
本発明では、図4中に示すように、L型ホローカソードガンのスティンガーロッド端部からL型曲げ開始位置までの距離(a)とL型曲げ部から坩堝上のカソード先端までの距離(b)の比a/bを 1.5以内としたところに特長がある。
すなわち、領域aは、スティンガーロッドによる冷却が及ぶ領域、一方領域bは高温領域であり、従って比a/bは、冷却領域と高温領域の比でもある。
ここに、上記の比a/bの値を 1.5以内としたのは、a/b比が 1.5超になると、領域aに対するスティンガーロッドによる冷却力が低下するため、やはりプラズマ発生時に、カソード長手方向に温度分布の差およびArガス濃度の差が生じて、異常放電が発生し易い状況となるからである。
【0015】
また、本発明では、L型ホローカソードガンのスティンガーロッド端部からL型曲げ開始位置までの間をセラミックまたはグラファイトで被覆保護することが好ましい。というのは、これらセラミックまたはグラファイトで保護することにより、直接、蒸気流によるTaカソードへのアタックがなくなり、異常放電の防止と共に、Taカソードへの蒸気流の付着を効果的に防止することができるからである。なお、被覆セラミックとしては、TiN,TiCN,TiC,CrN,TiAlNなどが有利に適合する。
【0016】
さらに、本発明では、プラズマビームを発生するホローカソードガンの先端部の径を、スティンガーロッド端部の根元部のカソード径よりも大きくして、カソードガンの最先端部の消耗を小さくしたところにも特長がある。
ここに、この径比が、 1.2倍に満たないとカソードガン最先端部の消耗抑制効果が小さく、一方 3.0を超えるとスティンガーロッドとチャックとの間が高温となり、Taカソードが加熱されるので、この径比は 1.2〜3.0 倍の範囲に収めることが好適である。
【0017】
実際、図4に示した、本発明に従うホローカソードガン(ガン先端部径:20mm、a/b=1.2 )を使用した場合には、プラズマコーティング中における異常放電の発生は皆無であった。
これに対し、図2に示した従来の二重曲げのTaカソードガンを使用した場合には、プラズマ発生時に4回の異常放電が発生した。
【0018】
また、本発明に従うホローカソードガン(ガン先端部径:20mm、a/b=1.1、先端部の径/根元部の径=1.2 )を使用して10回のプラズマコーティングを実施した場合には、カソードガン最先端部の消耗は0.5 mmであったの対し、同じ条件で従来の二重曲げのTaカソードガンを使用した場合におけるカソードガン最先端部の消耗は15mmであった。
【0019】
上述したとおり、本発明に従えば、スティンガーロッド部と短いTaカソード部を接合した構造になるので、図2に示した従来の二重曲げのTaカソードに比較して、カソードガン本体の冷却能を大幅に高めることができるため、異常放電の発生を格段に低減することができる。
また、プラズマビームのビーム径を太くすることにより、プラズマビーム発生端であるカソードガン最先端部の消耗を小さくすることができる。
その結果、1000Aにも及ぶ大電流下でのプラズマコーティングの安定した実施が、初めて可能となった。
【0020】
【実施例】
C:0.077 mass%,Si:3.39mass%,Mn:0.076 mass%,Se:0.020 mass%,Sb:0.025 mass%,Al:0.020 mass%,N:0.0071mass%およびMo:0.011 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる珪素鋼連鋳スラブを、1340℃で4時間の加熱処理後、熱間圧延を施して厚み:2.1 mmの熱延板とした。ついで1100℃の均一化焼鈍を施した後、1050℃の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して0.23mm厚の最終冷延板とした。
【0021】
その後、この最終冷延板の表面に、アルキド系樹脂を主成分とするエッチングレジストインキをグラビアオフセット印刷により、非塗布部が圧延方向にほぼ直角に幅:200 μm 、間隔:4mmで線状に残存するように塗布した後、200 ℃で3分間焼き付けた。このときのレジスト厚は2μm であった。このようにしてエッチングレジストを塗布した鋼板に、電解エッチングを施すことにより、幅:200μm 、深さ:20μm の線状の溝を形成し、ついで有機溶剤中に浸漬してレジストを除去した。この時の電解エッチングは、NaCl電解液中で電流密度:10 A/dm2、処理時間:20秒の条件で行った。
【0022】
ついで、840 ℃の湿H2中で脱炭・1次再結晶焼鈍後、鋼板表面にMgO (70mass%), Al203(5mass%), Sr(OH)(5mass%), SbCl3(15mass%), SiO2(5mass%)の組成になる焼鈍分離剤を塗布し、ついで 850℃で15時間の焼鈍後、850 ℃から10℃/hの速度で1050℃まで昇温してゴス方位に強く集積した2次再結晶粒を発達させた後、1220℃の乾H2中で純化処理を施して膜無し一方向性珪素鋼板を作成した。
【0023】
かくして得られた珪素鋼板のコイル表面に、図3および図4に示したような、 Air−to−Air 方式の連続HCDイオンプレーティング装置を用いてTiNO膜(0.1 μm 厚)を被成した。
ホローカソードガンとしては、表1示すものを用いた。
【0024】
ついで、上記のTiNOをコーティングした後の珪素鋼板の表面に、マグネトロン・スパッタ法を用いて SiNX 膜(0.2 μm 厚)を成膜した。
その後、鋼板表面に燐酸塩とコロイダルシリカを主成分とする絶縁コーティング処理液を塗布した後、乾燥し、さらに 815℃の窒素中で1分間焼付け処理後、800 ℃の窒素中で3時間の焼鈍を施した。
【0025】
かくして得られた製品の磁気特性(磁束密度、鉄損)および被膜密着性について調べた結果を表1に併記する。
また、表1には、各ホローカソードガンを用いた場合の異常放電の発生回数およびガン最先端部の消耗量について調べた結果も併せて示す。
なお、ホローカソードガンの最先端部の消耗量については、同様なコーティング処理を5回実施した後の消耗量で評価した。
【0026】
【表1】
【0027】
同表から明らかなように、本発明に従うホローカソードガンを用いた場合はいずれも、異常放電の発生は全くなく、正常な放電を長時間にわたって安定して行うことができた。また、ホローカソードガンの最先端部の消耗量も軽微であった。特に、ホローカソードガンのスティンガーロッド端部からL型曲げ開始位置までの間をグラファイトで保護した場合には、異常放電の発生は全くなく、またホローカソードガンの最先端部の消耗も軽微であり、さらにTaカソードガンへのTi蒸気の付着は全くなかった。
【0028】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、大口径のホローカソードガンを用い、大電流でHCDイオンプレーティングを行った場合であっても異常放電の発生なしに安定して高速成膜を実施することができ、またホローカソードガンの寿命を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】異常放電の痕跡が残るホローカソードガンを示した写真である。
【図2】二重曲げの長尺大口径のホローカソードガンの写真である。
【図3】Air−to−Air 方式の連続セラミック・コーティングラインの模式図である。
【図4】本発明のホローカソードガンを適用したHCDイオンプレーティング装置の模式図である。
【符号の説明】
1 L型ホローカソードガン
2 スティンガーロッド
3 セラミックカバー
4 チャック
5 イオンコレクター
6 反応窒素ガスの導入口
7 集束コイル
8 坩堝
9 溶融Ti
10 プラズマビーム
11 差圧シール室11
12 蒸着室
13 膜無し珪素鋼板
14 シールローラ
15 真空ポンプ
16 ホットローラ
17 予熱用電子ビームガン
【発明の属する技術分野】
本発明は、HCDイオンプレーティングに用いて好適なホローカソードガンに関し、特に大蒸発量を得るためにホローカソードガンの口径を大口径とした場合に懸念される異常放電の発生を効果的に防止しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
ホローカソード(HCD;Hollow Cathode Discharge)法を用いたイオンプレーティングは、イオン化率が極めて高いことから、通常のエレクトロンビーム(EB;Electron Beam)法によるイオンプレーティングよりも、蒸着膜質が良好で、基板との密着性にも優れている。また、このHCD法には、反応ガス流量、真空度、バイアス電圧、基板温度および基板の前処理条件などが多少変動したとしても、容易にしかもスムーズに蒸着が行えるという、大きな利点がある。
通常、このHCD法でコーティングを行う場合は、投入電流が 200〜300 A程度で、ホローカソードガンとしては、Ta製で直径:8mm、長さ:80mm程度のストレート形状のものが使用される(例えば非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0003】
上記したような投入電流が 200〜300 A程度で、使用するTaカソードガンが小型小口径の場合には、プラズマ発生時において、Taカソードガンのスティンガーロッド部と先端部の温度差が大きいため、コーティング中における異常放電の発生は少なくかつ小さいという特徴があるが、難点として成膜速度が小さいことが挙げられる。
【0004】
これに対し、大蒸発量を得るために、大口径のTaカソードガンを用いて、大電流でHCDを行った場合には、異常放電が発生し易く、特に異常放電がTaカソードガンに発生した場合には、図1に黒矢印で示すように、カソードガンに穴が開き、そこからArプラズマが漏れて使用不能となるだけでなく、この異常放電発生によるサブストレイトへの悪影響が懸念される。
そして、このようなTaカソードガンにおける異常放電は、図2に示すような二重曲げを行った長尺大口径のTaカソードガンで特に発生し易かった。
【0005】
【非特許文献1】
「井口征夫、鈴木一弘、大久保治、高橋夏木:日本金属学会会報、32 (1993)、P.226 」
【非特許文献2】
「井口征夫、鈴木一弘、小林康宏、大久保治、高橋夏木:真空、38 (1995) 、 P.639 」
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、大口径のホローカソードガンを使用した場合であっても、異常放電を伴わずに長時間の安定したコーティングを実施することができるホローカソードガンを提案することを目的とする。
なお、本発明において、大口径とは、Taカソードの先端部の直径が16mm以上、25mm以下程度のものを意味する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
さて,発明者らは、まず異常放電の発生原因について調査したところ、長尺大口径のTaカソードガンでは、長手方向に温度分布の差およびArガス濃度の差が生じて、異常放電が発生し易い状況となることが判明した。
そこで、次に発明者らは、かような異常放電の発生を防止すべく鋭意検討を重ねた結果、ホローカソードガンの冷却能をできる限り増大させるガン設計とすることが有効であるとの知見を得た。
また、カソードガンの先端部を太くしてプラズマ発生の最先端領域を増大させると、カソードガンの最先端部の消耗が抑制されるとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0008】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.L型ホローカソードガンにおいて、該L型ホローカソードガンのスティンガーロッド端部からL型曲げ開始位置までの距離(a)とL型曲げ部からカソード先端までの距離(b)の比a/bを 1.5以内としたことを特徴とするホローカソードガン。
【0009】
2.上記1において、前記L型ホローカソードガンの先端部の径を、スティンガーロッド端部の根元部の径の 1.2〜3.0 倍とすることを特徴とするホローカソードガン。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
被処理材として、常法に従ってフォルステライト被膜を有しない一方向性珪素鋼板(膜無し珪素鋼板と呼ぶ)を製造した。
この膜無し珪素鋼板の表面に、図3に模式で示すような Air−to−Air 方式の連続セラミックコーティングラインにおいて、大容量HCD法により、0.1 μm厚のTiNO膜を被成した。
【0011】
図3において、aおよびdゾーンは、差動排気系(Dynamic sealing stage ofentrance)で、差圧シール室11が連続して複数設置され、またbゾーンには予熱室(Pre−heating stage)が設置され、さらにc1 〜c4 ゾーンには、それぞれ蒸着室12が一つずつ設置されている。
図中、番号13は膜無し珪素鋼板、14はシールローラ、15は真空ポンプである。また、16は、膜無し珪素鋼板13を予熱可能なホットローラ、17は電子ビームを走査可能な予熱用電子ビームガンであり、この予熱用電子ビームにより蒸着前の膜無し珪素鋼板13の表面浄化を図っている。
【0012】
イオンプレーティングを行う際には、真空ポンプ15を駆動させることにより、蒸着室12内を真空度:1.3 ×10−1〜6.7 ×10−2Paとし、その後蒸着室内にTiNO膜を形成するのに必要な窒素と酸素の混合ガスを導入し、蒸着室内真空度を 2.0×10−1〜1.3 ×10−1Paとする。また、c1 ゾーン入口の膜無し珪素鋼板13の温度を100 〜400 ℃程度に予熟すると共に、膜無し珪素鋼板13にバイアス電圧:−20〜−200 Vを印加する。なお、定常時には、反応ガスの流量は1000〜4000 cm3/minとした。
【0013】
図4に、c1 〜c4 ゾーンに設置した蒸着室12の一例を示す。同図は、本発明に係るHCDイオンプレーティング装置の蒸着室の構成を示す模式図でもある。また、図4に示す蒸着室は、図3の蒸着室12内をその室内における鋼板進行方向から見た概略構成図であって、図4において左右方向が、被処理材である膜無し珪素鋼板13の幅方向である。
図中、番号1は本発明に係るTa製のL型ホローカソードガン、2はスティンガーロッド、3はセラミックカバー、4はチャック、5はイオンコレクター、6は反応窒素ガスの導入口、7は集束コイル、8は坩堝、9は溶融Ti、そして10がプラズマビームである。
【0014】
本発明では、図4中に示すように、L型ホローカソードガンのスティンガーロッド端部からL型曲げ開始位置までの距離(a)とL型曲げ部から坩堝上のカソード先端までの距離(b)の比a/bを 1.5以内としたところに特長がある。
すなわち、領域aは、スティンガーロッドによる冷却が及ぶ領域、一方領域bは高温領域であり、従って比a/bは、冷却領域と高温領域の比でもある。
ここに、上記の比a/bの値を 1.5以内としたのは、a/b比が 1.5超になると、領域aに対するスティンガーロッドによる冷却力が低下するため、やはりプラズマ発生時に、カソード長手方向に温度分布の差およびArガス濃度の差が生じて、異常放電が発生し易い状況となるからである。
【0015】
また、本発明では、L型ホローカソードガンのスティンガーロッド端部からL型曲げ開始位置までの間をセラミックまたはグラファイトで被覆保護することが好ましい。というのは、これらセラミックまたはグラファイトで保護することにより、直接、蒸気流によるTaカソードへのアタックがなくなり、異常放電の防止と共に、Taカソードへの蒸気流の付着を効果的に防止することができるからである。なお、被覆セラミックとしては、TiN,TiCN,TiC,CrN,TiAlNなどが有利に適合する。
【0016】
さらに、本発明では、プラズマビームを発生するホローカソードガンの先端部の径を、スティンガーロッド端部の根元部のカソード径よりも大きくして、カソードガンの最先端部の消耗を小さくしたところにも特長がある。
ここに、この径比が、 1.2倍に満たないとカソードガン最先端部の消耗抑制効果が小さく、一方 3.0を超えるとスティンガーロッドとチャックとの間が高温となり、Taカソードが加熱されるので、この径比は 1.2〜3.0 倍の範囲に収めることが好適である。
【0017】
実際、図4に示した、本発明に従うホローカソードガン(ガン先端部径:20mm、a/b=1.2 )を使用した場合には、プラズマコーティング中における異常放電の発生は皆無であった。
これに対し、図2に示した従来の二重曲げのTaカソードガンを使用した場合には、プラズマ発生時に4回の異常放電が発生した。
【0018】
また、本発明に従うホローカソードガン(ガン先端部径:20mm、a/b=1.1、先端部の径/根元部の径=1.2 )を使用して10回のプラズマコーティングを実施した場合には、カソードガン最先端部の消耗は0.5 mmであったの対し、同じ条件で従来の二重曲げのTaカソードガンを使用した場合におけるカソードガン最先端部の消耗は15mmであった。
【0019】
上述したとおり、本発明に従えば、スティンガーロッド部と短いTaカソード部を接合した構造になるので、図2に示した従来の二重曲げのTaカソードに比較して、カソードガン本体の冷却能を大幅に高めることができるため、異常放電の発生を格段に低減することができる。
また、プラズマビームのビーム径を太くすることにより、プラズマビーム発生端であるカソードガン最先端部の消耗を小さくすることができる。
その結果、1000Aにも及ぶ大電流下でのプラズマコーティングの安定した実施が、初めて可能となった。
【0020】
【実施例】
C:0.077 mass%,Si:3.39mass%,Mn:0.076 mass%,Se:0.020 mass%,Sb:0.025 mass%,Al:0.020 mass%,N:0.0071mass%およびMo:0.011 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる珪素鋼連鋳スラブを、1340℃で4時間の加熱処理後、熱間圧延を施して厚み:2.1 mmの熱延板とした。ついで1100℃の均一化焼鈍を施した後、1050℃の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して0.23mm厚の最終冷延板とした。
【0021】
その後、この最終冷延板の表面に、アルキド系樹脂を主成分とするエッチングレジストインキをグラビアオフセット印刷により、非塗布部が圧延方向にほぼ直角に幅:200 μm 、間隔:4mmで線状に残存するように塗布した後、200 ℃で3分間焼き付けた。このときのレジスト厚は2μm であった。このようにしてエッチングレジストを塗布した鋼板に、電解エッチングを施すことにより、幅:200μm 、深さ:20μm の線状の溝を形成し、ついで有機溶剤中に浸漬してレジストを除去した。この時の電解エッチングは、NaCl電解液中で電流密度:10 A/dm2、処理時間:20秒の条件で行った。
【0022】
ついで、840 ℃の湿H2中で脱炭・1次再結晶焼鈍後、鋼板表面にMgO (70mass%), Al203(5mass%), Sr(OH)(5mass%), SbCl3(15mass%), SiO2(5mass%)の組成になる焼鈍分離剤を塗布し、ついで 850℃で15時間の焼鈍後、850 ℃から10℃/hの速度で1050℃まで昇温してゴス方位に強く集積した2次再結晶粒を発達させた後、1220℃の乾H2中で純化処理を施して膜無し一方向性珪素鋼板を作成した。
【0023】
かくして得られた珪素鋼板のコイル表面に、図3および図4に示したような、 Air−to−Air 方式の連続HCDイオンプレーティング装置を用いてTiNO膜(0.1 μm 厚)を被成した。
ホローカソードガンとしては、表1示すものを用いた。
【0024】
ついで、上記のTiNOをコーティングした後の珪素鋼板の表面に、マグネトロン・スパッタ法を用いて SiNX 膜(0.2 μm 厚)を成膜した。
その後、鋼板表面に燐酸塩とコロイダルシリカを主成分とする絶縁コーティング処理液を塗布した後、乾燥し、さらに 815℃の窒素中で1分間焼付け処理後、800 ℃の窒素中で3時間の焼鈍を施した。
【0025】
かくして得られた製品の磁気特性(磁束密度、鉄損)および被膜密着性について調べた結果を表1に併記する。
また、表1には、各ホローカソードガンを用いた場合の異常放電の発生回数およびガン最先端部の消耗量について調べた結果も併せて示す。
なお、ホローカソードガンの最先端部の消耗量については、同様なコーティング処理を5回実施した後の消耗量で評価した。
【0026】
【表1】
【0027】
同表から明らかなように、本発明に従うホローカソードガンを用いた場合はいずれも、異常放電の発生は全くなく、正常な放電を長時間にわたって安定して行うことができた。また、ホローカソードガンの最先端部の消耗量も軽微であった。特に、ホローカソードガンのスティンガーロッド端部からL型曲げ開始位置までの間をグラファイトで保護した場合には、異常放電の発生は全くなく、またホローカソードガンの最先端部の消耗も軽微であり、さらにTaカソードガンへのTi蒸気の付着は全くなかった。
【0028】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、大口径のホローカソードガンを用い、大電流でHCDイオンプレーティングを行った場合であっても異常放電の発生なしに安定して高速成膜を実施することができ、またホローカソードガンの寿命を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】異常放電の痕跡が残るホローカソードガンを示した写真である。
【図2】二重曲げの長尺大口径のホローカソードガンの写真である。
【図3】Air−to−Air 方式の連続セラミック・コーティングラインの模式図である。
【図4】本発明のホローカソードガンを適用したHCDイオンプレーティング装置の模式図である。
【符号の説明】
1 L型ホローカソードガン
2 スティンガーロッド
3 セラミックカバー
4 チャック
5 イオンコレクター
6 反応窒素ガスの導入口
7 集束コイル
8 坩堝
9 溶融Ti
10 プラズマビーム
11 差圧シール室11
12 蒸着室
13 膜無し珪素鋼板
14 シールローラ
15 真空ポンプ
16 ホットローラ
17 予熱用電子ビームガン
Claims (2)
- L型ホローカソードガンにおいて、該L型ホローカソードガンのスティンガーロッド端部からL型曲げ開始位置までの距離(a)とL型曲げ部からカソード先端までの距離(b)の比a/bを 1.5以内としたことを特徴とするホローカソードガン。
- 請求項1において、前記L型ホローカソードガンの先端部の径を、スティンガーロッド端部の根元部の径の 1.2〜3.0 倍とすることを特徴とするホローカソードガン。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003140076A JP2004339589A (ja) | 2003-05-19 | 2003-05-19 | ホローカソードガン |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003140076A JP2004339589A (ja) | 2003-05-19 | 2003-05-19 | ホローカソードガン |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004339589A true JP2004339589A (ja) | 2004-12-02 |
Family
ID=33528909
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003140076A Pending JP2004339589A (ja) | 2003-05-19 | 2003-05-19 | ホローカソードガン |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004339589A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109457222A (zh) * | 2018-11-28 | 2019-03-12 | 合肥如真空设备有限公司 | 高温真空蒸发离化镀膜装置及其操作方法 |
-
2003
- 2003-05-19 JP JP2003140076A patent/JP2004339589A/ja active Pending
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