JP4126771B2 - 方向性珪素鋼板用のマグネトロン・スパッタ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、方向性珪素鋼板用のマグネトロン・スパッタ装置に関し、特に高温雰囲気下に保持された方向性珪素鋼板に対して、被膜密着性および膜質に優れたセラミック膜を効果的に被成しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、Si3N4 、SiO2、Si系(Si−N−O−C)等のセラミック膜を被成するに際して、マグネトロン・スパッタ法を用いたコ−ティング法が、低電圧・大電流特性を有するホローカソード電子銃の電子ビーム発生装置(Hollow Cathode Discharge, HCD)に代わって盛んに使用されるようになってきた。
特に電磁鋼板の分野では、表面を平滑化した一方向性珪素鋼板の表面に、マグネトロン・スパッタ法を用いて薄いSi系(Si−N−O−C)等のセラミック膜を被成すると超低鉄損を示すことが見出され、このマグネトロン・スパッタ装置を利用したコ−ティング方法が注目されている。
【0003】
上記したマグネロン・スパッタ法によるコ−ティングの利点としては、次の事項が挙げられる。
▲1▼ 比較的高速の成膜が可能である。
▲2▼ 大きなタ−ゲットを使用すれば、大表面積を有する鋼板表面に均一な膜厚分布での成膜が可能である。
▲3▼ タ−ゲットと鋼板の距離が比較的小さく、他のイオンプレ−ティング法(約 15〜20%)に比較して蒸着効率(約75%以上)が優れている。
▲4▼ 投入パワ−と反応ガス導入の簡単な制御の成膜条件で、他のイオンプレ−ティング法に比較して長時間安定した成膜が可能である。
▲5▼ 安価なタ−ゲットを使用すれば、他のイオンプレ−ティング法(例えば HCD法では高価なTaガンや集束コイルの使用が不可欠) に比較して、コ−ティングコストを格段に低減できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般にマグネトロン・スパッタ法は、被処理材に対して、常温下に処理を施すものであるが、方向性珪素鋼板の場合には、ある程度の高温下で処理を施す必要がある。
というのは、鋼板の表面にSi系(Si−N−O−C)等のセラミック膜を被成することによって鉄損が低減する理由は、珪素鋼板に引張り応力が付与されることによるものであるが、珪素鋼板にかような張力を付与するためには、珪素鋼板を高温に加熱し、鋼板が伸長した状態でセラミック膜を被成する必要があるからである。
【0005】
本発明は、上述したような高温下で処理する場合に用いて好適なもので、700 ℃以下程度の高温でマグネトロン・スパッタ処理を施す場合であっても、被膜密着性および膜質に優れ、方向性珪素鋼板に対して強力な張力を付与することができる方向性珪素鋼板用のマグネトロン・スパッタ装置を提案することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、被処理材である方向性珪素鋼板の裏側に近接して磁場集束用の磁石を設置すると共に、同じく珪素鋼板の裏側において、上記磁石を取り囲む形で被処理材加熱用のヒーターを設置したことを特徴とする方向性珪素鋼板用のマグネトロン・スパッタ装置である。
【0007】
本発明において、磁場集束用の磁石としては、電磁石コイルを用いることが好ましい。
また、かような磁場集束用の磁石による珪素鋼板の裏側における磁場強度については、50〜500 Gauss 程度とすることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に従い具体的に説明する。
図1に、本発明に従う好適マグネトロン・スパッタ装置を模式的に示す。
図中、番号1は真空槽、2は高真空引き口、そして3が被処理材である方向性珪素鋼板である。また、4は被処理材3の裏側に近接して配置された磁場集束用の磁石であり、かような磁石4を被処理材の裏側に配置することによって膜質に優れたセラミック膜が得られるのである。5はこの磁石4を冷却するための水冷管である。さらに6は被処理材加熱用のヒーターであって、図示のように、被処理材3の裏側で磁場集束用の磁石4を取り囲むような形で配置されている。
なお、7はシャッター、8、8’はN2ガス導入管、9、9’はArガス導入管、10はSiタ−ゲット、11はCu板、12は水冷管、13は磁石である。
【0009】
実験
C:0.076 wt%、Si:3.43wt%、Mn:0.076 wt%、Se:0.020 wt%、Sb:0.023 wt%、Al:0.022 wt%、Mo:0.012 wt%およびN:0.0073wt%を含有し、残部は実質的にFeの組成になる珪素鋼スラブを、1340℃で5時間加熱後、熱間圧延を施し、ついで1050℃の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して0.23mm厚の最終冷延板とした。その後、圧延方向にほぼ直角方向に4mm間隔で、幅:200 μm 、深さ:20μm の溝を形成する磁区細分化処理を施したのち、 840℃の湿水素中で脱炭焼鈍を行い、ついで鋼板表面にCaSiO3(30wt%), Al2O3(40wt%), MgO(15wt%), SiO2(15wt%)を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、 850℃で15時間保持後、12℃/hで1050℃まで昇温してGoss方位の2次再結晶粒を優先成長させた後、1200℃の乾水素中で純化焼鈍を施した。
【0010】
ついで、この珪素鋼板表面の酸化物を除去したのち、化学研磨による平滑化処理を施してから、図1に示したマグネトロン・スパッタ装置を用いてSi系セラミック膜(Si−N−O系)を 0.6μm 厚被成した。
なお、比較のため、上記のコ−ティングの際、4の磁場集束用磁石を使用しない場合についても実験を行った。
(A) 磁石4を使用した場合の磁気特性
磁束密度 B8 = 1.91 T
鉄 損 W17/50 = 0.48 W/kg
(B) 磁石4を使用しない場合の磁気特性
磁束密度 B8 = 1.91 T
鉄 損 W17/50 = 0.54 W/kg
【0011】
上記の比較から明らかなように、被処理材3の裏側に磁石4を設置した場合、方向性珪素鋼板の磁気特性のうち磁束密度は同じであるが、鉄損が 0.06 W/kgと大幅に向上することが注目される。
すなわち、図1のマグネトロン・スパッタ装置を用いて、被処理材の裏側に磁石を設置してSi系セラミック膜を被成した場合には、珪素鋼板の表面に強力な張力付加が可能なセラミック膜を被成することができるのである。
【0012】
【作 用】
このように、被処理材の裏側に、加熱用のヒーターを配置すると共に、磁場集束用の磁石を設置することによって、プラズマ雰囲気をより高プラズマ化することが可能となり、その結果、高温下にある方向性珪素鋼板に対してもその表面に強力な張力付加が可能なセラミック膜を密着性良く被成することができるのである。
ここに、方向性珪素鋼板の裏側における磁場の強さは、50〜500 Gauss 程度とするのが最適である。
また、方向性珪素鋼板の処理温度は 700℃程度以下好ましくは 200〜500 ℃程度とするのが望ましい。
さらに、本発明の上記の実験例では、磁場集束用の磁石として永久磁石を用いた場合について主に説明したが、その他、電磁石コイルを用いた場合でも同等の効果が得られることが確かめられている。
また、本発明では、セラミック膜として主にSi系について説明したが、これだけに限られるものではなく、珪素鋼板用のセラミック膜であれば従来公知のものいずれもが適合する。
【0013】
【実施例】
実施例1
C:0.073 wt%、Si:3.32wt%、Mn:0.078 wt%、Se:0.021 wt%、Sb:0.025 wt%、Al:0.020 wt%、Mo:0.012 wt%およびN:0.0077wt%を含有し、残分は実質的にFeの組成になる珪素鋼スラブを、1360℃で3時間加熱後、熱間圧延を施し、ついで1020℃の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して0.23mm厚の最終冷延板とした。その後、圧延方向にほぼ直角方向に4mm間隔で、幅:200 μm 、深さ:20μm の溝を形成する磁区細分化処理を施したのち、 840℃の湿水素中で脱炭焼鈍を行い、ついで鋼板表面にCaSiO3(30wt%), Al2O3(40wt%), MgO(15wt%), SiO2(15wt%)を主成分とする焼鈍分離剤を塗布したのち、 850℃で15時間保持後、10℃/hで1050℃まで昇温してGoss方位の2次再結晶粒を優先成長させたのち、1220℃の湿水素中で純化焼鈍を施した。
【0014】
ついで、この珪素鋼板表面の酸化物を除去したのち、化学研磨による平滑化処理を施してから、図1に示したマグネトロン・スパッタ装置を用いてSi系セラミック膜(Si−N系)を 0.6μm 厚被成した。
なお、このコ−ティングに際し、磁場集束用の磁石として (a)永久磁石、 (b)電磁石コイルの両者を使用した場合ついて調査した。
(a) 永久磁石を使用した場合の磁気特性
磁束密度 B8 = 1.92 T
鉄 損 W17/50 = 0.47 W/kg
(b) 電磁宿コイルを使用した場合の磁気特性
磁束密度 B8 = 1.91 T
鉄 損 W17/50 = 0.49 W/kg
【0015】
【発明の効果】
かくてし、本発明のマグネトロン・スパッタ装置によれば、被処理材である方向性珪素鋼板の裏側に被処理材加熱用のヒーターを設置すると共に、磁場集束用の磁石を併せて設置することによって、より高プラズマ雰囲気中でのコ−ティングが可能となり、その結果、膜質の優れたセラミック膜を密着性良く被成することができ、ひいては方向性珪素鋼板の鉄損の低減に大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う好適マグネトロン・スパッタ装置の模式図である。
【符号の説明】
1 真空槽
2 高真空引き口
3 被処理材
4 磁場集束用の磁石
5 上記磁石を冷却するための水冷管
6 被処理材加熱用のヒーター
7 シャッター
8,8’ N2ガス導入管
9,9’ Arガス導入管
10 Siタ−ゲット
11 Cu板
12 水冷管
13 磁石
Claims (3)
- 被処理材である方向性珪素鋼板の裏側に近接して磁場集束用の磁石を設置すると共に、同じく珪素鋼板の裏側において、上記磁石を取り囲む形で被処理材加熱用のヒーターを設置したことを特徴とする方向性珪素鋼板用のマグネトロン・スパッタ装置。
- 請求項1において、磁場集束用の磁石が、電磁石コイルであることを特徴とする方向性珪素鋼板用のマグネトロン・スパッタ装置。
- 請求項1または2において、磁場集束用の磁石による珪素鋼板の裏側における磁場強度が、50〜500 Gauss であることを特徴とする方向性珪素鋼板用のマグネトロン・スパッタ装置。
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