JPH11343579A - 超低鉄損一方向性珪素鋼板およびその製造方法 - Google Patents

超低鉄損一方向性珪素鋼板およびその製造方法

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JPH11343579A
JPH11343579A JP10148269A JP14826998A JPH11343579A JP H11343579 A JPH11343579 A JP H11343579A JP 10148269 A JP10148269 A JP 10148269A JP 14826998 A JP14826998 A JP 14826998A JP H11343579 A JPH11343579 A JP H11343579A
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silicon steel
iron loss
unidirectional silicon
ultra
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JP10148269A
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Masao Iguchi
征夫 井口
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 仕上焼鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面
に、Fe, AlおよびTiのうちから選んだ少なくとも一種を
少量含有するSi−N−O−C系のセラミック張力被膜を
被成する。 【効果】 従来に比較して、Si系セラミック被膜の膜質
および被膜密着性が改善されるだけでなく、鉄損特性が
格段に向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超低鉄損一方向性
珪素鋼板およびその製造方法に関し、特に仕上焼鈍済み
の珪素鋼板の表面または線状の凹領域をそなえる仕上焼
鈍済みの珪素鋼板の表面に、Si系のセラミック張力被膜
を被成して鉄損特性を改善するに際し、プラズマ・コ−
ティングの際に使用するタ−ゲットを工夫することによ
り、鉄損特性の有利な改善を製造コストの低減に併せて
達成しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】一方向性珪素鋼板は、主として変圧器そ
の他の電機機器の鉄心として利用され、磁化特性として
磁束密度(B8 値で代表される)が高く、鉄損(W
17/50 で代表される)が低いことが要求される。
【0003】一方向性珪素鋼板の磁気特性を向上させる
ためには、第一に鋼板中の2次再結晶粒の〈001〉軸
を圧延方向に高度に揃える必要があり、第二には最終製
品中に残存する不純物や析出物をできるだけ少なくする
必要がある。
【0004】このため、N.P.Gossによって一方向性珪素
鋼板の2段冷延による基本的な製造技術が提案されて以
来、その製造技術に数多くの改良が重ねられ、一方向性
珪素鋼板の磁束密度および鉄損値は年を追って改善され
てきた。その中で特に代表的なものは、SbとMnSeまたは
MnSとをインヒビターとして利用する特公昭51-13469号
公報に記載の方法、もう一つはAlNとMnSをインヒビタ
ーとして利用する特公昭33−4710号公報、特公昭40-156
44号公報および特公昭46-23820号公報等に記載の方法で
あり、これらの方法によればB8 が1.88Tを超える高磁
束密度を有する製品が得られるようになった。
【0005】さらに高磁束密度の製品を得るために、特
公昭57-14737号公報では素材中にMoを複合添加したり、
また特公昭62-42968号公報では素材中にMoを複合添加さ
せたのち、最終冷延直前の中間焼鈍後に急冷処理を施す
などの改良を加えて、B8 が1.90T以上の高磁束密度
で、かつ鉄損W17/50 が 1.05 W/kg(製品板厚:0.30m
m) 以下の低鉄損が得られることが、開示提案されてい
るが、なお十分な低鉄損化については改善すべき余地が
残されていた。
【0006】とくに、十数年前のエネルギー危機を境と
して電力損失を極力低減することへの要請が著しく強ま
り、それに伴って鉄心材料の用途においても、より一層
の改善が望まれている。そのため、渦電流損をできる限
り小さくすることを目的として、製品板厚を薄くした0.
23mm厚(9mil)以下のものが数多く使用されるようにな
ってきた。
【0007】上記した技術はいずれも、主に冶金学的な
手法であるが、これらの方法とは別に、特公昭57−2252
号公報に提案されているような、仕上焼鈍後の鋼板の表
面にレーザー照射やプラズマ照射(B.Fukuda, K.Sato,
T.Sugiyama, A.Honda and Y.Ito : Proc. of ASM Con.
of Hard and Soft Magnetic Materials, 8710-008,(US
A), (1987) )を行い、人為的に 180°磁区幅を減少さ
せて鉄損を低減する方法(磁区細分化技術)が開発され
た。この技術の開発により、一方向性珪素鋼板の鉄損
は、大幅に低減された。しかしながら、この技術は、高
温での焼鈍に耐え得ないという欠点があり、用途が歪取
焼鈍を必要としない積鉄心変圧器に限定されるという問
題があった。
【0008】この点、歪取焼鈍に耐え得る磁区細分化技
術として、一方向性珪素鋼板の仕上焼鈍後の鋼板表面
に、線状の溝を導入し、溝による反磁界効果を応用して
磁区の細分化を図る方法が工業化された(H.Kobayashi,
E.Sasaki, M.Iwasaki and N.Takahashi : Proc. SMM-
8., (1987), P.402 )。また、これとは別に、一方向性
珪素鋼板の最終冷延板に局所的な電解エッチングを施す
ことによって溝を形成し、磁区を細分化する方法(特公
平8−6140号公報)も開発され、工業化されている。
【0009】さらに、上記した珪素鋼板の製造方法とは
別に、特公昭55-19976号公報、特開昭56−127749号公報
および特開平2−3213号公報に開示されているように、
非晶質合金が通常の電力用トランスや高周波トランス等
の材料として注目されている。しかしながら、このよう
な非晶質材料では、通常の一方向性珪素鋼板に比較して
非常に優れた鉄損特性が得られる反面、熱的安定性に欠
ける、占積率が悪い、切断が容易でない、あまりにも薄
く脆いためトランスの組み立て工数のコストアップが大
きい等実用上の不利が多いことから、現状では大量に使
用されるまでには至っていない。
【0010】その他にも、特公昭52-24499号公報におい
て、珪素鋼板の仕上焼鈍後に形成されるフォルステライ
ト下地被膜を除去し、鋼板表面を研磨した後、この鋼板
表面に金属メッキを施すことからなる方法が提案されて
いる。しかしながら、この方法は、低温では低鉄損が得
られるものの、高温処理を施すと金属が珪素鋼板中に拡
散するため、かえって鉄損が劣化するという欠点があっ
た。
【0011】この点、発明者らは先に、上記の不利を解
消するものとして、特公昭63-54767号公報等において、
研磨により平滑化した一方向性珪素鋼板上にCVDやイ
オンプレーティング, イオンインプランテーション等の
ドライプレーティング(PVD)により、Si, Mn, Cr,
Ni, Mo, W,V,Ti, Nb, Ta, Hf, Al,Cu, ZrおよびB
の窒化物、炭化物のうちから選んだ1種または2種以上
の張力被膜を被成させることによって超低鉄損が得られ
ることを開示した。この製造法により、電力用トランス
や高周波トランス等の材料として非常に優れた鉄損特性
が得られるようになったが、それでもなお、最近の低鉄
損化に対する要求に対しては十分に応えているとはいい
難かった。
【0012】そこで、発明者らは、従来に比べて鉄損の
一層の低減を図るべく、あらゆる観点から根本的な再検
討を加えた。すなわち、発明者は、安定した工程で平滑
化した一方向性珪素鋼板表面上に種々の窒化物、炭化物
のうちから選んだ1種または2種以上の張力被膜を被成
させて超低鉄損の製品を得るためには、一方向性珪素鋼
板の素材成分から最終の処理工程に至るまでの根本的な
再検討が必要であるとの認識に立って、珪素鋼板の集合
組織の追跡から、鋼板表面の平滑度や最終のCVDやP
VD処理工程に至るまで鋭意検討を重ねた。その結果、
以下に述べる知見を得た。
【0013】(1) 珪素鋼板に被覆したセラミック (代表
例として TiN膜を使用) の薄膜は、1.5 μm 以上の厚み
に被成しても、鉄損向上の度合いは少なくなる。すなわ
ち1.5 μm 以上の厚みのTiN 膜は、鉄損については僅か
の向上しか期待できず、むしろ占積率および磁束密度の
劣化を招く。 (2) この場合の TiNの役割は、セラミック特有の張力付
加に加えて、珪素鋼板との密着性の役割の方がより重要
である。すなわち TiN横断面の透過電子顕微鏡観察 (井
口征夫:日本金属学会誌, 60 (1996), P.781〜786 参
照) では、10nmの横縞が観察され、これは珪素鋼板の
〔011〕方向のFe−Fe原子の5原子層に相当する。 (3) TiN 被覆領域および化学研磨領域のX線による二層
の集合組織の同時測定(Y.Inokuti:ISIJ Internationa
l, 36 (1996), P.347〜352 参照) では、研磨領域のFe
の{200}ピーク形状は円形である。しかし TiN被覆
領域でのFeの{200}ピーク形状は楕円形であり、珪
素鋼板の〔100〕si-steel方向に強力に張力付加され
た状況になっている。 (4) TiN 薄膜の張力 (井口征夫、鈴木一弘、小林康宏:
日本金属学会誌、60 (1996), P.674〜678 参照) は8〜
10 MPaで、これにより 0.014〜0.016 T程度の磁束密度
の向上が期待できる。(これは約1°のGoss方位集積度
を向上させたことに相当する。)
【0014】以上が、セラミック被覆についての新規知
見であるが、さらにセラミック膜と鋼板の表面状態に関
し、以下に述べる知見を得た。 (5) 珪素鋼板の最終冷延板に局所的な電解エッチングを
施すことによって溝を形成し、さらに2次再結晶処理後
の鋼板表面を研磨により平滑化した後、 TiNセラミック
膜を被覆した場合には、導入した溝に起因した反磁界効
果による磁区細分化に加えて、さらにセラミック被膜に
よる張力付加により、効果的に鉄損が低減する。 (6) セラミック被覆前に、鋼板表面上に凹状の溝を形成
した場合の引張りによる鉄損の低減効果は、通常の研磨
により平滑化した珪素鋼板の場合よりも大きい(特公平
3-32889号公報参照)。すなわち、溝を導入した場合に
は珪素鋼板表面上に異張力が作用し、引張り張力による
鉄損の低減度合いが増大する。 (7) 凹状の溝を形成した珪素鋼板上にセラミック膜を被
覆した場合は、通常の研磨により平滑化しセラミック膜
を被覆した場合よりも、鉄損の低減効果がより効果的で
ある。すなわち、線状の溝を導入し、溝による反磁界効
果を応用して磁区を細分化したのち、セラミック張力被
膜を被成して、さらに 180°主磁区を細分化する方が一
層効果的で、超低鉄損が得られる。 (8) 珪素鋼板の最終冷延板に局所的な電解エッチングを
施すことによって溝を形成した場合は、2次再結晶処理
を施した後の鋼板表面を研磨により平滑化しない表面状
態で TiNセラミック膜を被成した場合であっても、かな
りの鉄損低減効果が発揮される。すなわち、研磨により
平滑化しない状態、例えば酸洗処理等により表面に小さ
な凹凸が存在する状態であっても、熱膨張係数の小さな
セラミック膜を被覆することによって、珪素鋼板の表面
に強力な張力を付加することが可能であり、これによっ
て鉄損を有利に低減することができる。
【0015】そこで、発明者は、上記の新規知見を基
に、所期した目的を達成すべく数多くの実験と検討を重
ねた結果、表面を平滑化した珪素鋼板および線状の溝を
導入した珪素鋼板いずれであっても、該珪素鋼板の表面
に被成するセラミック張力被膜を複数種とし、しかもこ
のセラミック張力被膜について、その熱膨張係数が外側
にいくほど小さくすることが、鉄損の低減に極めて有効
であることの知見を得、これに基づき極めて鉄損の低い
一方向性珪素鋼板を新たに開発した(特願平9−328042
号明細書)。
【0016】かくして得られた一方向性珪素鋼板は、極
めて薄く、かつ密着性に優れたセラミック膜の張力被膜
をそなえ、超低鉄損の達成が可能なだけでなく、絶縁性
を具備し、しかも占積率にも優れているため、まさに理
想的な珪素鋼板といえる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな緻密なセラミック膜を被成するには、高真空中でプ
ラズマ雰囲気下での処理が不可欠なだけでなく、プラズ
マ・コ−ティングの際に使用する材料(例えば TiNの成
膜に際しては純Ti材料、 Si3N4の成膜に際しては高純度
Si等)が非常に高価なため、工業化に際して、コストア
ップを余儀なくされるところに問題を残していた。ま
た、Si3N4 やSiC等のSi系セラミック被膜は、その熱膨
張係数は小さいものの、膜質に若干の問題があり、剪断
または 180°曲げ試験を行った場合に、膜の脆さのため
コ−ティング膜にクラックが入り易いことが指摘されて
いる。
【0018】
【課題を解決するための手段】そこで、発明者らは、製
造コストの低減と共に、膜質の改善を図るべく、さらに
研究を進めた。さて、現行の Si3N4やSiC等のセラミッ
クコ−ティングにおいては、マグネトロン・スパッタ法
がセラミックの膜質、被膜の均一性、成膜速度および長
時間連続コ−ティングの安定性等の観点から最も信頼性
があるため、一般的に使用されているが、現在このマグ
ネトロン・スパッタ法に使用されているSiタ−ゲットの
純度は、Siウエハに使用した残り(99.9999999%から 9
9.9999%程度の高純度Si)を出発材料として使用してい
る。そして、このような高純度Si素材を再溶解する際
に、Si中に微量のPやBを添加し、タ−ゲットの所定の
電気抵抗を確保して、Si3N4 やSiC等のセラミック・コ
−ティングに安定使用している。
【0019】しかしながら、Siウエハに使用した残りと
いえども99.9999999%から99.9999%程度の高純度Siを
使用することは、プラズマ・コ−ティングの材料のコス
トアップにつながるため、このSiタ−ゲットのコストダ
ウンの解決が大きな問題点として指摘されていた。そこ
で、発明者らは、上記の問題を解決すべく、種々のシリ
コン材料について検討を加えた。その中で、製鋼段階で
の鉄鋼製品の成分調整用に一般的に使用されている極め
て安価なフェロ−シリコンやメタ−シリコンをSiタ−ゲ
ット材料として用いてみたところ、これらのシリコン材
料は単に安価というだけではなく、セラミック被膜の膜
質および密着性を効果的に高め、ひいては鉄損特性の改
善にも有効に寄与することの知見を得た。本発明は、上
記の知見に立脚するものである。
【0020】すなわち、本発明の要旨構成は次のとおり
である。 1.板厚が0.05〜0.5 mmの仕上焼鈍済みの一方向性珪素
鋼板の表面に、Fe, AlおよびTiのうちから選んだ少なく
とも一種を少量含有するSi−N−O−C系のセラミック
張力被膜をそなえることを特徴とする超低鉄損一方向性
珪素鋼板。
【0021】2.上記1において、仕上焼鈍済みの一方
向性珪素鋼板の表面に、圧延方向と交差する向きに2〜
10mmの間隔で、幅:50〜500 μm 、深さ:0.1 〜50μm
の線状の凹領域を設けたことを特徴とする超低鉄損一方
向性珪素鋼板。
【0022】3.上記1または2において、Si−N−O
−C系のセラミック張力被膜の熱膨張係数が外側にいく
ほど小さく、かつ最外側は絶縁性を有することを特徴と
する超低鉄損一方向性珪素鋼板。
【0023】4.上記1,2または3において、仕上焼
鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面が、平滑化処理を施し
た表面である超低鉄損一方向性珪素鋼板。
【0024】5.上記1,2または3において、仕上焼
鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面が、平滑化処理を施さ
ない、酸洗処理ままの表面である超低鉄損一方向性珪素
鋼板。
【0025】6.板厚が0.05〜0.5 mmの仕上焼鈍済みの
一方向性珪素鋼板の表面に、プラズマ・コーティングに
よってSi系のセラミック張力被膜を被成して超低鉄損一
方向性珪素鋼板を製造するに際し、プラズマ・コ−ティ
ングの際のSiタ−ゲットとして、Fe,AlおよびTiのうち
から選んだ少なくとも一種を適量含有するシリコン材料
を用いることを特徴とする超低鉄損一方向性珪素鋼板の
製造方法。
【0026】7.上記6において、仕上焼鈍済みの一方
向性珪素鋼板の表面に、圧延方向と交差する向きに2〜
10mmの間隔で、幅:50〜500 μm 、深さ:0.1 〜50μm
の線状の凹領域を設けたことを特徴とする超低鉄損一方
向性珪素鋼板の製造方法。
【0027】8.上記6または7において、Siタ−ゲッ
トがフェロ−シリコンであることを特徴とする超低鉄損
一方向性珪素鋼板の製造方法。
【0028】9.上記6または7において、Siタ−ゲッ
トがメタ−シリコンであることを特徴とする超低鉄損一
方向性珪素鋼板の製造方法。
【0029】10. 上記6〜9のいずれかにおいて、Si系
のセラミック張力被膜の熱膨張係数が外層側にいくほど
小さく、かつ最外層のセラミック張力被膜は絶縁性を有
することを特徴とする超低鉄損一方向性珪素鋼板の製造
方法。
【0030】11. 上記6〜10のいずれかにおいて、仕
上焼鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面が、平滑化処理を
施した表面である超低鉄損一方向性珪素鋼板の製造方
法。
【0031】12. 上記6〜10のいずれかにおいて、仕
上焼鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面が、平滑化処理を
施さない酸洗処理ままの表面である超低鉄損一方向性珪
素鋼板の製造方法。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明す
る。まず、本発明を由来するに至った実験結果について
説明する。実験1 C:0.072 wt%、Si:3.39wt%、Mn:0.072 wt%、Se:
0.020 wt%、Sb:0.023 wt%、Al:0.019 wt%、N:0.
0072wt%およびMo:0.012 wt%を含有し、残部は実質的
にFeの組成になる珪素鋼連鋳スラブを、1360℃、4時間
の加熱処理後、熱間圧延を施して板厚:2.0 mmの熱延板
とした。この熱延板に1050℃、3分間の均一化焼鈍を施
した後、1020℃の中間焼鈍を挟む2回の圧延を施して板
厚:0.23mmの最終冷延板とした。
【0033】その後、最終冷延板は次のように処理し
た。この最終冷延板の表面に、アルキド系樹脂を主成分
とするエッチングレジストインキをグラビアオフセット
印刷により、非塗布部が圧延方向にほぼ直角に幅:200
μm 、間隔:4mmで線状に残存するように塗布したの
ち、200 ℃で3分間焼き付けた。このときのレジスト厚
は2μm であった。このようにしてエッチングレジスト
を塗布した鋼板に、電解エッチングを施すことにより、
幅:200 μm 、深さ:20μm の線状の溝を形成し、つい
で有機溶剤中に浸漬してレジストを除去した。このとき
の電解エッチングは、NaCl電解液中で電流密度:10 A/d
m2、処理時間:20秒の条件で行った。
【0034】その後、 840℃の湿H2中で脱炭・1 次再結
晶焼鈍を行った後、鋼板表面に MgO(10%), Al2O3(65%),
CaSiO3(5%), SiO2(20%)の組成になる焼鈍分離剤をスラ
リ−塗布し、ついで 850℃で15時間の焼鈍後、 850℃か
ら12℃/hの速度で1150℃まで昇温してゴス方位に強く集
積した2次再結晶粒を発達させた後、1220℃の乾H2中で
純化処理した。
【0035】かくして得られた製品の表面被膜を除去
し、ついで化学研磨により珪素鋼板の表面を平滑化した
のち、珪素鋼板表面上に、マグネトロン・スパッタ法
(PVD法の一手法)を用いて約 0.5μm 厚のSi系セラ
ミック被膜を被成した。その際に使用したSiタ−ゲット
は、以下に述べる3つの方法で作製した。 (A) フェロ−シリコン素材を、100 kgの真空溶解炉で溶
解した後、10mm×127 mm×476mm に剪断し、ついでボン
ディング処理を行った。このボンディング処理は、Si基
板の片面をCuメッキ後、Inを用いてCuの基板 (この水冷
されたCu基板の裏側にマグネットを設置できるようにな
っている) 上に張り付けることによってSiタ−ゲットと
して使用するために行うものである。なお、このフェロ
−シリコン・タ−ゲットの主成分は、Si:91.5wt%, F
e:8.0 wt%, Al:0.1 wt%, Ti:0.08wt%, C:0.05w
t%およびO:0.052 wt%で、その他微量元素を若干含
有する。このフェロ−シリコン・タ−ゲットをマグネト
ロン・スパッタ装置に装入して、電圧:400 V、電流:
50Aの操作電力を用いてマグネトロン・スパッタ法によ
り珪素鋼板の表面に約 0.5μm 厚のSi系セラミック膜を
被成した。
【0036】(B) メタ−シリコン素材を、100 kgの真空
溶解炉で溶解した後、10mm×127 mm×476 mmに剪断し、
ついでボンディング処理を行った。このボンディング処
理は、Si基板の片面をCuメッキ後、Inを用いてCuの基板
上に張り付けることによってSiタ−ゲットとして使用す
るために行うものである。なお、このメタ−シリコン・
タ−ゲットの主成分は、Si:97.5wt%, Fe:1.5 wt%,
Al:0.08wt%,Ti:0.07wt%, C:0.08wt%およびO:
0.11wt%で、その他微量元素を若干含有する。このメタ
−シリコン・タ−ゲットをマグネトロン・スパッタ装置
に装入して、電圧:400 V、電流:50Aの操作電力を用
いてマグネトロン・スパッタ法により珪素鋼板の表面に
約 0.5μm 厚のSi系セラミック膜を被成した。
【0037】(C) Siウエハに使用した残り(99.9999999
wt%の高純度Si)を出発材料として、再溶解し、その中
にP:0.05wt%,B:0.02wt%を不純物として添加して
高純度Siタ−ゲットとした。この高純度Siタ−ゲットを
マグネトロン・スパッタ装置に装入して、電圧:400
V、電流:50Aの操作電力を用いてマグネトロン・スパ
ッタ法により珪素鋼板の表面に約 0.5μm 厚の Si3N4
をコ−ティングした。
【0038】かくして得られた珪素鋼板の磁気特性およ
びセラミック被膜の密着性について調べた結果を表1に
示す。また、同表には、密着性測定後の走査型電顕観察
によるセラミック被膜表面の形態観察結果およびX線光
電子顕微鏡分光装置(X-rayPhotoelectron Spectroscop
y, XPS法) により測定した被膜成分についての調査
結果も併せて示す。
【0039】
【表1】
【0040】表1から明らかなように、珪素鋼板上に
(A) のフェロ−シリコン・タ−ゲットおよび(B) のメタ
−シリコン・タ−ゲットを用いて成膜した場合、得られ
た被膜は、1000 cps以上のSi, N, OおよびCと、同じ
く1000 cps程度のFeが含有された状態、換言するとSi−
N−O−C系セラミック被膜中に少量のFeが含有された
状態になっていることが判明した。そして、このような
被膜においては、磁気特性とくに鉄損W17/50が0.49
および0.51 W/kg と極めて低い値を呈しただけでなく、
珪素鋼板の密着性も 10 mmφと格段に優れていることが
注目される。また、密着性測定後に、走査型電顕観察に
よってセラミック被膜表面を形態観察した結果でも、ク
ラックの発生は全く観察されず、膜質も改善されている
ことが確認された。
【0041】一方、(C) の高純度Siを用いた場合にはSi
−N系(Si3N4)の被膜が形成され、その鉄損W17/50
は 0.68 W/kg程度にすぎず、しかも密着性も 40 mmφ程
度と劣っていた。また、密着性測定後の走査型電顕によ
るセラミック被膜表面の形態観察では、被膜に数多くの
クラックが存在し、従来の Si3N4膜は比較的脆いという
指摘を裏付ける結果が得られた。
【0042】このようにプラズマ・コ−ティングの際の
ターゲットとして、材料コストの安価な(A) のフェロ−
シリコンおよび(B) のメタ−シリコンを用いて成膜した
場合に、珪素鋼板の膜質、密着性さらには磁気特性とく
に鉄損特性が向上する理由は、次のとおりと考えられ
る。まず、セラミック被膜の膜質が改善された理由は、
膜中にOやCが混入したことによるものと考えられる。
また、密着性については、これらO,Cに加えて、Feが
重要な役割を果たしているものと考えられる。そして、
被膜中にかようなFeが含有され、しかも上述したとおり
被膜の膜質や密着性が改善された結果、張力付与効果が
向上し、その結果、鉄損特性の格段の向上が達成された
ものと考えられる。なお、被膜成分として、TiやAlにつ
いても調査したが、XPSによるセラミック膜の分析で
は検出することができなかった。しかしながら、タ−ゲ
ットの化学分析では検出されているので、微量のAl, Ti
も膜中に存在しているものと考えられる。
【0043】これに対し、(C) の高純度Siタ−ゲットを
用いた場合には、セラミック膜中にこれらの元素が存在
していないために密着性の向上を図ることができず、結
果として強力な引張張力を珪素鋼板に付加することがで
きないために鉄損の低減度合いが小さくなるものと考え
られる。
【0044】図1および図2に、(A) のフェロ−シリコ
ン・タ−ゲットおよび(B) のメタ−シリコン・タ−ゲッ
トを用いて、プラズマ・コ−ティングを施したときのSi
系セラミック膜の透過型電子顕微鏡写真を示す。両者共
に、アモルファスの電子回折パタ−ンが得られるが、、
図1のフェロ−シリコン・タ−ゲット(ダブルグラニュ
ラ−構造)による膜と図2のメタ−シリコン・タ−ゲッ
ト(グラニュラ−構造)による膜とではアモルファスの
構造が異なることが注目される。
【0045】また、(A) の元素分析の結果、小さい粒子
の構造では主にSi, Feが検出され、その粒界では、大量
のN, O, CおよびSiと、少量のFe, Alが検出された。
さらに、粒界から離れた位置では、Si, Feと若干のN,
O, Cが検出された。この場合、両者ともSi系セラミッ
ク膜の絶縁性が確保されるだけでなく、珪素鋼板と被膜
の界面に、N, O, CやFe, Ti, Alが有効に存在するた
めに密着性の向上を図ることが可能なわけである。また
セラミック膜中にこれらの元素が存在することによっ
て、密着性や膜質(剪断等の際における被膜のクラック
の防止)が改善されるものと考えられる。
【0046】実験2 C:0.068 wt%、Si:3.36wt%、Mn:0.067 wt%、Se:
0.020 wt%、Sb:0.023 wt%、Al:0.020 wt%、N:0.
0074wt%およびMo:0.012 wt%を含有し、残部は実質的
にFeの組成になる珪素鋼連鋳スラブを、1350℃、5 時間
の加熱処理後、熱間圧延を施して板厚:2.2 mmの熱延板
とした。この熱延板に1000℃、3分間の均一化焼鈍を施
した後、1050℃の中間焼鈍を挟む2回の圧延を施して板
厚:0.23mmの最終冷延板とした。
【0047】その後、実験1と同様にして、鋼板表面に
線状溝を形成した後、脱炭・1次再結晶焼鈍、ついで2
次再結晶焼鈍と純化焼鈍からなる最終仕上焼鈍を施し
た。ついで、得られた製品の表面被膜を除去し、化学研
磨により珪素鋼板の表面を平滑化したのち、マグネトロ
ン・スパッタ法によるセラミック被膜形成処理を行っ
た。その際に使用したSiターゲットは、フェロ−シリコ
ン素材を、100 kgの真空溶解炉で溶解した後、10mm×12
7 mm×476mm に剪断し、ついでボンディング処理を行っ
て得たものである。なお、このフェロ−シリコン・タ−
ゲットの主成分は、Si:92.5wt%, Fe:7.0 wt%, Al:
0.1 wt%, Ti:0.09wt%, C:0.04wt%およびO:0.05
2 wt%で、その他微量元素を若干含有する。
【0048】そして、このフェロ−シリコン・タ−ゲッ
トをマグネトロン・スパッタ装置に装入し、5kWの投入
電力を用いて珪素鋼板の表面に約 0.5μm 厚のSi系セラ
ミック被膜をコ−ティングした。このときのコ−ティン
グ条件は、次のとおりである。 (1) 全期間にわたり、N2ガス:100 sccm中で行った。 (2) 全期間にわたり、N2ガス:90sccm、O2ガス:10sccm
中で行った。 (3) 前半の成膜は、N2ガス:90sccm、O2ガス:10sccm
中、そして後半の成膜は、N2ガス:80sccm、O2ガス:20
sccm中で行った。 (4) 前半の成膜は、N2ガス:85sccm、O2ガス:10sccm、
C2H2ガス:5sccm中、そして後半の成膜は、N2ガス:70
sccm、O2ガス:20sccm、C2H2ガス:10sccm中で行った。
【0049】かくして得られた珪素鋼板の磁気特性、密
着性およびX線光電子顕微鏡分光装置(XPS)を用い
て測定したセラミック被膜の成分についての調査結果を
表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】表2から明らかなように、フェロ−シリコ
ン・タ−ゲットを用い、しかも(2)〜(4) の条件ように
雰囲気中にO2ガスやC2H2ガスを混入した場合には、(1)
の条件で処理した場合よりも膜中におけるOさらにはC
が大幅に増加し、その結果、さらに鉄損特性および密着
性が向上することが注目される。
【0052】特に(3), (4)は、セラミック被膜の厚みが
増すにつれて、すなわち被膜の外側に行くほど、被膜中
における酸素の量を増大させるようにしたものである
が、かような処理を施すことによって熱膨張係数も外側
に行くほど小さくなる、すなわち傾斜機能を有すること
が明らかになった。また、この場合には、最外側では良
好な絶縁性を有していることが確認された。
【0053】以上、実験1,2では、Siターゲットとし
て、フェロ−シリコンやメタ−シリコンなど、Si中に主
にFeが存在する材料を用いた場合について説明したが、
その他Si中にAlやTiを適量添加した材料をSiターゲット
として用い、被膜中にAlやTiを混入させた場合にも、同
様の効果が得られることが確かめられている。
【0054】
【作用】本発明の素材である含珪素鋼としては、従来公
知の成分組成いずれもが適合するが、代表組成を掲げる
と次のとおりである。 C:0.01〜0.08wt% Cは、0.01wt%より少ないと熱延集合組織の抑制が不十
分となって大きな伸長粒が形成されるため磁気特性が劣
化し、一方0.08wt%より多いと脱炭工程で脱炭に時間が
かかり経済的でないので、0.01〜0.08wt%程度とするの
が好ましい。
【0055】Si:2.0 〜4.0wt % Siは、 2.0wt%より少ないと十分な電気抵抗が得られな
いため渦電流損が増大して鉄損の劣化を招き、一方 4.0
wt%より多いと冷延の際に脆性割れが生じ易くなるの
で、 2.0〜4.0 wt%程度の範囲とすることが好ましい。
【0056】Mn:0.01〜0.2 wt% Mnは、一方向性珪素鋼板の2次再結晶を左右する分散析
出相としてのMnSあるいはMnSeを決定する重要な成分で
ある。Mn量が0.01wt%を下回ると2 次再結晶を生じさせ
るのに必要なMnS等の絶対量が不足し、不完全2次再結
晶を起こすと同時に、ブリスタ−と呼ばれる表面欠陥が
増大する。一方、 0.2wt%を超えると、スラブ加熱等に
おいてMnS等の解離固溶が行われたとしても、熱延時に
析出する分散析出相が粗大化し易く、抑制剤として望ま
れる最適サイズ分布が損なわれて磁気特性が劣化するの
で、Mnは0.01〜0.2 wt%程度とすることが好ましい。
【0057】S:0.008 〜0.1 wt%、Se:0.003 〜0.1
wt% SおよびSeはいずれも、 0.1wt%以下、中でもSは 0.0
08〜0.1 wt%、またSeは 0.003〜0.1 wt%の範囲とする
ことが好ましい。というのは、これらが 0.1wt%を超え
ると熱間および冷間加工性が劣化し、一方それぞれ下限
値に満たないとMnS、MnSeとしての1 次粒成長抑制機能
に格別の効果を生じないからである。その他、インヒビ
タ−として従来公知のAl, Sb, Cu, SnおよびB 等を複合
添加しても、本発明の効果を妨げるものではない。
【0058】次に、本発明に従う超低鉄損一方向性珪素
鋼板の製造工程について説明する。まず、素材を溶製す
るには、LD転炉、電気炉、平炉、その他公知の製鋼炉
を用い得ることは勿論のこと、真空溶解やRH脱ガス処
理を併用することもできる。
【0059】本発明に従い、素材中に含有されるS、Se
あるいはその他の1 次粒成長抑制剤を溶鋼中に微量添加
する方法としては、従来公知の何れの方法を用いても良
く、例えばLD転炉、RH脱ガス終了時あるいは造塊時
の溶鋼中に添加することができる。また、スラブ製造
は、コスト低減、さらにはスラブ長手方向における成分
あるいは品質の均一性等の経済的・技術的利点のため連
続鋳造法の採用が有利ではあるが、従来の造塊スラブの
使用を妨げるものではない。
【0060】連続鋳造スラブは、スラブ中のインヒビタ
−を解離・固溶させるために、1300℃以上の温度に加熱
される。その後、このスラブは熱間粗圧延ついで熱間仕
上圧延が施されて、通常厚み 1.3〜3.3 mm程度の熱延板
とされる。
【0061】次に熱延板は、必要に応じ 850〜1100℃程
度の温度範囲で熱延板焼鈍(均一化焼鈍ともいう)を施
したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を
施して最終板厚とするが、高磁束密度で低鉄損の特性を
有する製品を得るには最終冷延率(通常55〜90%)に注
意を払う必要がある。このとき、珪素鋼板の渦電流損を
できるかぎり小さくする観点から、製品厚の上限は0.5
mmに、またヒステリシス損の弊害を避けるために板厚の
下限は0.05mmに限定した。
【0062】鋼板表面に線状の溝を形成する場合には、
この最終冷延を終え製品板厚となった鋼板に対して行う
のがとりわけ有利である。すなわち、最終冷延板または
2次再結晶前後の鋼板の表面に、圧延方向と交差する向
きに2〜10mmの間隔で、幅:50〜500 μm 、深さ:0.1
〜50μm の線状の凹領域を形成させるのである。ここ
に、線状凹領域の間隔を2〜10mmの範囲に限定したの
は、2mmに満たないと鋼板凹凸があまりにも顕著で磁束
密度が低下し経済的でなくなり、一方10mmを超えると磁
区細分化効果が小さくなるからである。また、凹領域の
幅が50μm に満たないと反磁界効果を利用することが困
難となり、一方 500μm を超えると磁束密度が低下し経
済的でなくなるので、凹領域の幅は50〜500 μm の範囲
に限定した。さらに、凹領域の深さが 0.1μm に満たな
いと反磁界効果を効果的に利用することができず、一方
50μm を超えると磁束密度が低下し経済的でなくなるの
で、凹領域の深さは 0.1〜50μm の範囲に限定した。な
お、線状凹領域の形成方向は、圧延方向と直角方向すな
わち板幅方向とするのが最適であるが、板幅方向に対し
±30°以内であればほぼ同様の効果を得ることができ
る。
【0063】さらに、線状凹領域の形成方法としては、
最終冷延板の表面に、印刷によりエッチングレジストを
塗布、焼き付けた後、エッチング処理を施し、しかるの
ち該レジストを除去する方法が、従来のナイフの刃先や
レーザー等を用いる方法に比較して、工業的に安定して
実施できる点、および引張り張力により一層効果的に鉄
損を低減できる点で有利である。
【0064】以下、上記のエッチングによる線状溝形成
技術の典型例について具体的に説明する。最終冷延板の
表面に、アルキド系樹脂を主成分とするエッチングレジ
ストインキをグラビアオフセット印刷により、非塗布部
が圧延方向にほぼ直角に幅:200μm 、間隔:4mmで線
状に残存するように塗布したのち、 200℃で約20秒間焼
き付ける。このとき、レジスト厚は2μm 程度とする。
このようにしてエッチングレジストを塗布した鋼板に、
電解エッチングまたは化学エッチングを施すことによ
り、幅:200 μm 、深さ:20μm の線状の溝を形成し、
ついで有機溶剤中に浸漬してレジストを除去する。この
時の電解エッチング条件は、NaCl電解液中で電流密度:
10 A/dm2、処理時間:20秒程度、また化学エッチング条
件は、HNO3液中で浸漬時間:10秒間程度とすれば良い。
【0065】ついで、鋼板には脱炭焼鈍が施される。こ
の焼鈍は、冷延組織を1次再結晶組織にすると同時に、
最終焼鈍(仕上焼鈍とも呼ばれる)で{110}〈00
1〉方位の2次再結晶粒を発達させる場合に有害なCを
除去することを目的とし、例えば 750〜880 ℃の湿水素
中で行う。
【0066】最終焼鈍は、{110}〈001〉方位の
2次再結晶粒を十分発達させるために施されるもので、
通常箱焼鈍によって直ちに1000℃以上に昇温し、その温
度に保持することによって行われる。この最終焼鈍は通
常、マグネシア等の焼鈍分離剤を塗布して行い、表面に
フォルステライトと呼ばれる下地被膜も同時に形成す
る。しかしながら、本発明では、フォルステライト下地
被膜を形成させたとしても、次工程でこの下地被膜を除
去するため、かようなフォルステライト下地被膜を形成
させないような焼鈍分離剤の方が有利である。すなわ
ち、フォルステライト下地被膜を形成させる MgOの含有
比率を低減し(50%以下)、代わってかかる被膜を形成
させない CaO, Al2O3, CaSiO3, SiO2 等の含有比率を高
く(50%以上)した焼鈍分離剤が有利である。
【0067】本発明において{110}〈001〉方位
に高度に集積した2次再結晶組織を発達させるために
は、 820℃から900 ℃の低温で保定焼鈍する方が有利で
あるが、その他、例えば 0.5〜15℃/h程度の昇温速度の
徐熱焼鈍でも良い。
【0068】この純化焼鈍後に、鋼板表面のフォルステ
ライト下地被膜や酸化物被膜は、公知の酸洗などの化学
的方法や切削、研磨などの機械的方法またはそれらの組
み合わせにより除去して、鋼板表面を平滑化する。すな
わち、鋼板表面の種々の被膜を除去した後、化学研磨、
電解研磨等の化学研磨やバフ研磨等の機械的研磨あるい
はそれらの組み合わせなど従来の手法により、中心線平
均粗さRaで 0.4μm 以下程度まで鋼板表面を平滑化す
る。
【0069】なお、本発明では、珪素鋼板の表面を必ず
しも平滑化する必要はない。従ってこの場合には、コス
トアップを伴う平滑化処理を行わなくても、酸洗処理の
みで十分な鉄損低減効果を発揮できるという利点があ
る。とはいえ、やはり平滑化処理を施すことが有利であ
ることに変わりはない。また、この段階で鋼板表面に凹
形状の溝を導入することもできる。溝の導入方法は、最
終冷延板または2次再結晶前後の鋼板の表面に施す場合
と同じ方法を用いれば良い。
【0070】上記の処理後、鋼板表面にプラズマ・コー
ティング法を用いて、本発明に従うSi系のセラミック膜
を被成する。本発明では、このようなセラミック膜を被
成する際のSiタ−ゲットとして、Si中にFe,Al,Tiのう
ちから選んだ少なくとも一種を適量含有するシリコン材
料を用いることが重要である。ここに、プラズマ・コー
ティング法としては、マグネトロン・スパッタ法が特に
有利に適合するが、その他、HCD法(イオンプレーテ
ィング法の一種)やプラズマCVD法、(EB+RF)
法、マルティアーク法等も使用できる。
【0071】また、Siターゲット中におけるFe,Alおよ
びTi等の好適量は、Fe:1.0 〜25.0wt%、Al:0.01〜2.
0 wt%、Ti:0.01〜1.0 wt%である。というのは、各成
分の含有量が下限に満たないと、セラミック被膜の膜質
および密着性ひいては鉄損特性の改善効果に乏しく、一
方上限を超えると、熱膨張係数が大きくなって張力付与
効果が小さくなり、その結果、鉄損改善効果が低下する
からである。
【0072】そして、かようなシリコン材料としては、
市販されている安価なフェロ−シリコンおよびメタ−シ
リコンがとりわけ有利に適合し、ここに、従来高価なSi
ウエハを用いていたためコストアップを余儀なくされて
いたSiターゲットについて、その大幅なコストダウン
が、鉄損特性の改善に併せて実現されたのである。な
お、実際にSiターゲットを作製するには、フェロ−シリ
コンやメタ−シリコンを溶解し、所定の大きさに剪断
後、ボンディング処理を施してやれば良い。
【0073】また、被膜中のN,O,C等の元素を調製
するには、N2ガスを主体とするコーティング雰囲気中に
O2ガスやC2H2ガスを適量混入させることも有用である。
この場合の雰囲気ガス成分としては、N2ガス:30〜95 v
ol%、O2ガス:1〜50vol%、C2H2ガス:1〜30 vol%
程度が好適である。
【0074】また、かような被膜形成に際しては、被膜
の熱膨張係数を外側にいくほど小さくすることが有用で
あるが、そのためには被膜厚が増すにつれて次第に雰囲
気中への混入酸素量を増大し、被膜中における酸素含有
量を多くしてやれば良い。なお、Si−N−O−C系のセ
ラミック被膜は、基本的に絶縁性を有するので、この点
についてはさほど心配する必要はないが、酸素含有量を
増大させることは絶縁性を向上させる上でも有利であ
る。
【0075】かくして、Fe, AlおよびTiのうちから選ん
だ少なくとも一種を少量含有するSi−N−O−C系セラ
ミック張力被膜をそなえ、被膜の膜質、密着性ひいては
鉄損特性に優れた一方向性珪素鋼板が得られるのであ
る。ここに、被膜中における各成分の割合は、Si:40〜
60%、N:30〜70%、O:10〜50%、C:5〜20%、F
e:0.1 〜15%、Al:0.05〜2%、Ti:0.05〜2%程度
とすることが好ましい。
【0076】
【実施例】実施例1 C:0.072 wt%, Si:3.35wt%, Mn:0.072 wt%, Se:
0.020 wt%, Sb:0.025 wt%, Al:0.020 wt%, N:0.
072 wt%およびMo:0.012 wt%を含有し、残部は実質的
にFeの組成になる珪素鋼連鋳スラブを、1350℃で4時間
の加熱処理後、熱間圧延を施して厚み:2.2 mmの熱延板
とした。ついで1020℃の均一化焼鈍を施した後、1050℃
の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して0.23mm厚の最
終冷延板とした。ついで、 840℃の湿H2中で脱炭・1次
再結晶焼鈍を行った後、鋼板表面にMgO(20%), Al2O3(70
%), CaSiO3(10%)の組成になる焼鈍分離剤をスラリ−塗
布し、ついで 850℃で15時間の焼鈍後、 850℃から12℃
/hの速度で1180℃まで昇温してゴス方位に強く集積した
2次再結晶粒を発達させた後、1220℃の乾H2中で純化処
理を施した。
【0077】かくして得られた珪素鋼板の表面の酸化物
被膜を除去し、一部についてはさらに化学研磨を施して
表面を平滑化した。ついで、珪素鋼板の表面に、マグネ
トロン・スパッタ法を用いてSi系セラミック膜を 0.6μ
m 厚被成した。この時、プラズマ・コ−ティングに使用
するSiタ−ゲットは、次のようにして作製した。フェロ
−シリコン素材を、100kg の真空溶解炉で溶解したの
ち、10mm×127 mm×476mm に剪断し、ついでボンディン
グ処理を行った。なお、このフェロ−シリコン・タ−ゲ
ットの主成分は、Si:91.1wt%, Fe:8.2 wt%, Al:0.
09wt%, Ti:0.08wt%であった。このフェロ−シリコン
・タ−ゲットをマグネトロン・スパッタ装置に装入し
て、電圧:400 V、電流:50Aの操作電力を用いてマグ
ネトロン・スパッタ法(雰囲気ガス:N2ガス)により珪
素鋼板の表面に約 0.6μm 厚のSi−N−O−C系のセラ
ミック被膜をコ−ティングした。
【0078】かくして得られた製品の磁気特性および密
着性は次のとおりであった。 平滑化処理を施した場合 磁気特性 B8 : 1.95 T W17/50 : 0.58 W/kg 密着性 直径:10mmの丸棒上で 180°曲げを行っても剥離が無く、良好で あった。 酸洗処理を施した場合 磁気特性 B8 : 1.94 T W17/50 : 0.63 W/kg 密着性 直径:10mmの丸棒上で 180°曲げを行っても剥離が無く、良好で あった。
【0079】また、このとき得られたセラミック被膜の
成分をXPS法で測定したところ、Si:4200 cps、N:
5800 cps、O:2900 cps、C:600 cps 、Fe:400 cps
であった。
【0080】実施例2 C:0.068 wt%, Si:3.42wt%, Mn:0.071 wt%, Se:
0.020 wt%, Sb:0.025 wt%, Al:0.022 wt%, N:0.
068 wt%およびMo:0.012 wt%を含有し、残部は実質的
にFeの組成になる珪素鋼連鋳スラブを、1350℃で5時間
の加熱処理後、熱間圧延を施して厚み:2.0 mmの熱延板
とした。ついで1000℃の均一化焼鈍を施した後、1050℃
の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して0.23mm厚の最
終冷延板とした。ついで、最終冷延板の表面に、アルキ
ド系樹脂を主成分とするエッチングレジストインキをグ
ラビアオフセット印刷により、非塗布部が圧延方向とほ
ぼ直角な方向に幅:200 μm 、圧延方向の間隔:4mmで
線状に残存するように塗布したのち、200 ℃で約20秒間
焼付けた。このときのレジスト厚は2μm であった。こ
のようにしてエッチングレジストを塗布した鋼板に、電
解エッチングを施すことにより、幅:200 μm 、深さ:
20μm の線状の溝を形成し、ついで有機溶剤中に浸漬し
てレジストを除去した。この時の電解エッチングは、Na
Cl電解液中で電流密度:10 A/dm2、処理時間:20秒間の
条件で行った。
【0081】その後、 840℃の湿H2中で脱炭・1次再結
晶焼鈍を行った後、鋼板表面にMgO(25%), Al2O3(70%),
CaSiO3(5%) の組成になる焼鈍分離剤をスラリ−塗布
し、ついで 850℃で15時間の焼鈍後、 850℃から10℃/h
の速度で1150℃まで昇温してゴス方位に強く集積した2
次再結晶粒を発達させた後、1220℃の乾H2中で純化処理
を施した。
【0082】かくして得られた珪素鋼板の表面の酸化物
被膜を除去たのち、化学研磨により表面を平滑化した。
ついで、珪素鋼板の表面に、マグネトロン・スパッタ法
を用いてSi系セラミック膜を 0.5μm 厚被成した。この
時、プラズマ・コ−ティングに使用するSiタ−ゲット
は、次のようにして作製した。メタ−シリコン素材を、
100kg の真空溶解炉で溶解したのち、10mm×127 mm×47
6mm に剪断してから、ボンディング処理を行った。な
お、このメタ−シリコン・タ−ゲットの主成分は、Si:
96.7wt%, Fe:2.1 wt%, Al:0.10wt%, Ti:0.09wt%
であった。このメタ−シリコン・タ−ゲットをマグネト
ロン・スパッタ装置に装入して、電圧:400 V、電流:
50Aの操作電力を用いてマグネトロン・スパッタ法(雰
囲気ガス:N2ガス)により珪素鋼板の表面に約 0.5μm
厚のSi−N−O−C系のセラミック被膜をコ−ティング
した。
【0083】かくして得られた製品の磁気特性および密
着性は次のとおりであった。 磁気特性 B8 : 1.91 T W17/50 : 0.52 W/kg 密着性 直径:10mmの丸棒上で 180°曲げを行っても剥離が無く、良好で あった。
【0084】また、化学研磨をせず、酸洗処理ままの鋼
板の表面に、上記と同様にして、セラミック被膜を被成
して得た製品の磁気特性および密着性は次のとおりであ
った。 磁気特性 B8 : 1.91 T W17/50 : 0.58 W/kg 密着性 直径:10mmの丸棒上で 180°曲げを行っても剥離が無く、良好で あった。
【0085】また、このとき得られたセラミック被膜の
成分をXPS法で測定したところ、Si:5200 cps、N:
5100 cps、O:3200 cps、C:1300 cps、Fe:450 cps
であった。
【0086】実施例3 C:0.043 wt%, Si:3.31wt%, Mn:0.070 wt%, Se:
0.020 wt%, Sb:0.025 wt%およびMo:0.012 wt%を含
有し、残部は実質的にFeの組成になる珪素鋼連鋳スラブ
を、1340℃で5時間加熱処理後、熱間圧延を施して厚
み:2.4 mmの熱延板とした。ついで、 950℃の均一化焼
鈍後、 980℃の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して
0.23mm厚の最終冷延板とした。その後、最終冷延板の表
面に、アルキド系樹脂を主成分とするエッチングレジス
トインキをグラビアオフセット印刷により、非塗布部が
圧延方向とほぼ直角な方向に幅:200 μm 、圧延方向の
間隔:4mmで線状に残存するように塗布したのち、200
℃で約20秒間焼付けた。このときのレジスト厚は2μm
であった。このようにしてエッチングレジストを塗布し
た鋼板に、電解エッチングを施すことにより、幅:200
μm 、深さ:20μm の線状の溝を形成し、ついで有機溶
剤中に浸漬してレジストを除去した。この時の電解エッ
チングは、NaCl電解液中で電流密度:10 A/dm2、処理時
間:20秒間の条件で行った。
【0087】ついで、830 ℃の湿H2中で脱炭・1次再結
晶焼鈍を行った後、鋼板表面にMgO(25%), Al2O3(70%),
CaSiO3(5%) の焼鈍分離剤をスラリ−塗布し、ついで 85
0℃で50時間の保定焼鈍によりゴス方位に強く集積した
2次再結晶粒を発達させた後、1200℃の乾H2中で純化処
理を施した。
【0088】かくして得られた珪素鋼板の表面の酸化物
被膜を除去たのち、化学研磨により表面を平滑化した。
ついで、珪素鋼板の表面に、マグネトロン・スパッタ法
を用いてSi系セラミック膜を 0.5μm 厚被成した。この
時、プラズマ・コ−ティングに使用するSiタ−ゲット
は、次のようにして作製した。フェロ−シリコン素材
を、100kg の真空溶解炉で溶解した後、10mm×127 mm×
476mm に剪断してから、ボンディング処理を行った。な
お、このフェロ−シリコン・タ−ゲットの主成分は、S
i:90.8wt%, Fe:8.2 wt%, Al:0.12wt%, Ti:0.10w
t%であった。このフェロ−シリコン・タ−ゲットをマ
グネトロン・スパッタ装置に装入して、電圧:400 V、
電流:50Aの操作電力を用いてマグネトロン・スパッタ
法(雰囲気ガス:N2ガス)により珪素鋼板の表面に約
0.5μm 厚のSi−N−O−C系のセラミック被膜をコ−
ティングした。
【0089】かくして得られた製品の磁気特性および密
着性は次のとおりであった。 磁気特性 B8 : 1.88 T W17/50 : 0.62 W/kg 密着性 直径:10mmの丸棒上で 180°曲げを行っても剥離が無く、良好で あった。
【0090】また、化学研磨をせず、酸洗処理ままの鋼
板の表面に、上記と同様にして、極薄のSiを含む窒化・
酸化物層を形成したのち、リン酸塩系の張力絶縁被膜を
被成して得た製品の磁気特性および密着性は次のとおり
であった。 磁気特性 B8 : 1.88 T W17/50 : 0.66 W/kg 密着性 直径:10mmの丸棒上で 180°曲げを行っても剥離が無く、良好で あった。
【0091】なお、このとき得られたセラミック被膜の
表面の成分をXPS法で測定したところ、Si:6200 cp
s、N:5900 cps、O:3300 cps、C:1100 cps、Fe:8
20cpsであった。
【0092】実施例4 磁区細分化処理を施した仕上焼鈍済みの一方向性けい素
鋼板(C:0.072 wt%, Si:3.46wt%, Mn:0.081 wt
%, Se:0.020 wt%, Sb:0.025 wt%, Al:0.02wt%,
Mo:0.013 wt%およびN:0.076 wt%)の表面酸化膜を
除去したのち、化学研磨により表面を平滑化した(板
厚:0.23mm)。ついで、珪素鋼板の表面に、メタ−シリ
コン中にAl:1.5 wt%およびTi:2.0wt%を添加したも
のをSiターゲットとして用い、マグネトロン・スパッタ
法によりSi系セラミック膜を 0.7μm 厚被成した。な
お、この時の反応ガス条件は、N2ガス:85 sccm 、O2
ス:15 sccm の一定とした。
【0093】かくして得られた製品の磁気特性および密
着性は次のとおりであった。 磁気特性 B8 : 1.91 T W17/50 : 0.52 W/kg 密着性 直径:10mmの丸棒上で 180°曲げを行っても剥離が無く、良好で あった。 また、このとき得られたセラミック被膜の成分をXPS
法で測定したところ、Si:5600 cps、N:4800 cps、
O:3600 cps、C:800 cps 、Fe:320 cps 、Al:180
cps 、Ti:280 cps であった。
【0094】実施例5 C:0.073 wt%, Si:3.36wt%, Mn:0.071 wt%, Se:
0.020 wt%, Sb:0.025 wt%, Al:0.020 wt%, N:0.
077 wt%およびMo:0.012 wt%を含有し、残部は実質的
にFeの組成になる珪素鋼連鋳スラブを、1350℃で4 時間
の加熱処理後、熱間圧延を施して厚み:2.2 mmの熱延板
とした。ついで1000℃の均一化焼鈍を施した後、1050℃
の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して0.23mm厚の最
終冷延板とした。ついで、最終冷延板の表面に、アルキ
ド系樹脂を主成分とするエッチングレジストインキをグ
ラビアオフセット印刷により、非塗布部が圧延方向とほ
ぼ直角な方向に幅:200 μm 、圧延方向の間隔:4mmで
線状に残存するように塗布したのち、200 ℃で約20秒間
焼付けた。このときのレジスト厚は2μm であった。こ
のようにしてエッチングレジストを塗布した鋼板に、電
解エッチングを施すことにより、幅:200 μm 、深さ:
20μm の線状の溝を形成し、ついで有機溶剤中に浸漬し
てレジストを除去した。この時の電解エッチングは、Na
Cl電解液中で電流密度:10 A/dm2、処理時間:20秒間の
条件で行った。
【0095】その後、 840℃の湿H2中で脱炭・1次再結
晶焼鈍を行った後、鋼板表面にMgO(25%), Al2O3(50%),
CaSiO3(5%), SiO2(20%)の組成になる焼鈍分離剤をスラ
リ−塗布し、ついで 850℃で15時間の焼鈍後、 850℃か
ら12℃/hの速度で1150℃まで昇温してゴス方位に強く集
積した2次再結晶粒を発達させた後、1220℃の乾H2中で
純化処理を施した。
【0096】かくして得られた珪素鋼板の表面の酸化物
被膜を除去たのち、化学研磨により表面を平滑化した。
ついで、珪素鋼板の表面に、マグネトロン・スパッタ法
を用いて、Si系セラミック膜を 0.6μm 厚被成した。こ
の時、プラズマ・コ−ティングに使用するSiタ−ゲット
は、次のようにして作製した。フェロ−シリコン素材
を、100kg の真空溶解炉で溶解した後、10mm×127 mm×
476mm に剪断してから、ボンディング処理を行った。な
お、このフェロ−シリコン・タ−ゲットの主成分は、S
i:92.3wt%, Fe:6.5 wt%, Al:0.12wt%, Ti:0.11w
t%, O:0.068 wt%およびC:0.068 wt%であった。
【0097】このフェロ−シリコン・タ−ゲットをマグ
ネトロン・スパッタ装置に装入して、5kWの投入電力を
用いてマグネトロン・スパッタ法により珪素鋼板の表面
に約μm 厚のSi−N−O−C系のセラミック被膜をコ−
ティングした。なお、コ−ティングの前半の成膜は、N2
ガス:85sccm、O2ガス:10sccm、C2H2ガス:5sccm中、
そして後半の成膜は、N2ガス:70sccm、O2ガス:20scc
m、C2H2ガス:10sccm中で行った。
【0098】かくして得られた製品の磁気特性および密
着性は次のとおりであった。 磁気特性 B8 : 1.91 T W17/50 : 0.48 W/kg 密着性 直径:5mm の丸棒上で 180°曲げを行っても剥離が無く、良好で あった。 また、このとき得られたセラミック被膜の成分をXPS
法で測定したところ、Si:4400 cps、N:5400 cps、
O:3900 cps、C:2100 cps、Fe:1200 cpsであった。
【0099】
【発明の効果】かくして、本発明によれば、従来材に比
較して、被膜の膜質および密着性に優れ、しかも鉄損特
性にも優れた超低鉄損一方向性珪素鋼板を、極めて安価
に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フェロ−シリコン・タ−ゲットを用いて成膜し
たときのSi系セラミック膜の透過電子顕微鏡写真であ
る。
【図2】メタ−シリコン・タ−ゲットを用いて成膜した
ときのSi系セラミック膜の透過電子顕微鏡写真である。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 板厚が0.05〜0.5 mmの仕上焼鈍済みの一
    方向性珪素鋼板の表面に、Fe, AlおよびTiのうちから選
    んだ少なくとも一種を少量含有するSi−N−O−C系の
    セラミック張力被膜をそなえることを特徴とする超低鉄
    損一方向性珪素鋼板。
  2. 【請求項2】 請求項1において、仕上焼鈍済みの一方
    向性珪素鋼板の表面に、圧延方向と交差する向きに2〜
    10mmの間隔で、幅:50〜500 μm 、深さ:0.1 〜50μm
    の線状の凹領域を設けたことを特徴とする超低鉄損一方
    向性珪素鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、Si−N−O
    −C系のセラミック張力被膜の熱膨張係数が外側にいく
    ほど小さく、かつ最外側は絶縁性を有することを特徴と
    する超低鉄損一方向性珪素鋼板。
  4. 【請求項4】 請求項1,2または3において、仕上焼
    鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面が、平滑化処理を施し
    た表面である超低鉄損一方向性珪素鋼板。
  5. 【請求項5】 請求項1,2または3において、仕上焼
    鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面が、平滑化処理を施さ
    ない、酸洗処理ままの表面である超低鉄損一方向性珪素
    鋼板。
  6. 【請求項6】 板厚が0.05〜0.5 mmの仕上焼鈍済みの一
    方向性珪素鋼板の表面に、プラズマ・コーティングによ
    ってSi系のセラミック張力被膜を被成して超低鉄損一方
    向性珪素鋼板を製造するに際し、 プラズマ・コ−ティングの際のSiタ−ゲットとして、F
    e,AlおよびTiのうちから選んだ少なくとも一種を適量
    含有するシリコン材料を用いることを特徴とする超低鉄
    損一方向性珪素鋼板の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項6において、仕上焼鈍済みの一方
    向性珪素鋼板の表面に、圧延方向と交差する向きに2〜
    10mmの間隔で、幅:50〜500 μm 、深さ:0.1 〜50μm
    の線状の凹領域を設けたことを特徴とする超低鉄損一方
    向性珪素鋼板の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項6または7において、Siタ−ゲッ
    トがフェロ−シリコンであることを特徴とする超低鉄損
    一方向性珪素鋼板の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項6または7において、Siタ−ゲッ
    トがメタ−シリコンであることを特徴とする超低鉄損一
    方向性珪素鋼板の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項6〜9のいずれかにおいて、Si
    系のセラミック張力被膜の熱膨張係数が外層側にいくほ
    ど小さく、かつ最外層のセラミック張力被膜は絶縁性を
    有することを特徴とする超低鉄損一方向性珪素鋼板の製
    造方法。
  11. 【請求項11】 請求項6〜10のいずれかにおいて、
    仕上焼鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面が、平滑化処理
    を施した表面である超低鉄損一方向性珪素鋼板の製造方
    法。
  12. 【請求項12】 請求項6〜10のいずれかにおいて、
    仕上焼鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面が、平滑化処理
    を施さない酸洗処理ままの表面である超低鉄損一方向性
    珪素鋼板の製造方法。
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