JP3280898B2 - 超低鉄損一方向性けい素鋼板 - Google Patents

超低鉄損一方向性けい素鋼板

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、トランス、その
他電機機器の鉄心材料としての用途に供して好適な超低
鉄損一方向性けい素鋼板に関し、特に平滑化したけい素
鋼板の表面または線状の凹領域をそなえるけい素鋼板の
表面に、窒化物および/または炭化物からなる2層以上
のセラミック張力被膜を被成することにより、鉄損特性
の一層の改善を図ったものである。
【0002】
【従来の技術】一方向性けい素鋼板は、主として変圧器
その他の電機機器の鉄心として利用され、磁化特性とし
て磁束密度(B8 値で代表される)が高く、鉄損(W
17/50 で代表される)が低いことが要求される。
【0003】一方向性けい素鋼板の磁気特性を向上させ
るためには、第一に鋼板中の2次再結晶粒の〈001〉
軸を圧延方向に高度に揃える必要があり、第二には最終
製品中に残存する不純物や析出物をできるだけ少なくす
る必要がある。
【0004】このため、N.P.Gossによって一方向性けい
素鋼板の2段冷延による基本的な製造技術が提案されて
以来、その製造技術に数多くの改良が重ねられ、一方向
性けい素鋼板の磁束密度および鉄損値は年を追って改善
されてきた。その中で特に代表的なものは、SbとMnSeま
たはMnSとをインヒビターとして利用する特公昭51-134
69号公報に記載の方法、もう一つはAlNとMnSをインヒ
ビターとして利用する特公昭33−4710号公報、特公昭40
-15644号公報および特公昭46-23820号公報等に記載の方
法であり、これらの方法によればB8 が1.88Tを超える
高磁束密度を有する製品が得られるようになった。
【0005】さらに高磁束密度の製品を得るために、特
公昭57-14737号公報では素材中にMoを複合添加したり、
また特公昭62-42968号公報では素材中にMoを複合添加さ
せたのち、最終冷延直前の中間焼鈍後に急冷処理を施す
などの改良を加えて、B8 が1.90T以上の高磁束密度
で、かつ鉄損W17/50 が 1.05 W/kg(製品板厚:0.30m
m) 以下の低鉄損が得られることが、開示提案されてい
るが、なお十分な低鉄損化については改善すべき余地が
残されている。
【0006】とくに、十数年前のエネルギー危機を境と
して電力損失を極力低減することへの要請が著しく強ま
り、それに伴って鉄心材料の用途でもより一層の改善が
望まれている。そのため、渦電流損をできる限り小さく
することを目的として、製品板厚を薄くした0.23mm厚
(9mil)以下のものが数多く使用されるようになってき
た。
【0007】上記した技術はいずれも、主に冶金学的な
手法であるが、これらの方法とは別に、特公昭57−2252
号公報に提案されているような、仕上焼鈍後の鋼板の表
面にレーザー照射やプラズマ照射(B.Fukuda, K.Sato,
T.Sugiyama, A.Honda and Y.Ito : Proc. of ASM Con.
of Hard and Soft Magnetic Materials, 8710-008,(US
A), (1987) )を行い、人為的に 180°磁区幅を減少さ
せて鉄損を低減する方法(磁区細分化技術)が開発され
た。この技術の開発により、一方向性けい素鋼板の鉄損
は、大幅に低減された。しかしながら、この技術は、高
温での焼鈍に耐え得ないという欠点があり、用途が歪取
焼鈍を必要としない積鉄心変圧器に限定されるという問
題があった。
【0008】この点、歪取焼鈍に耐え得る磁区細分化技
術として、一方向性けい素鋼板の仕上焼鈍後の鋼板表面
に線状の溝を導入し、溝による反磁界効果を応用して磁
区の細分化を図る方法が工業化された(H.Kobayashi,
E.Sasaki, M.Iwasaki and N.Takahashi : Proc. SMM-
8., (1987), P.402 )。また、これとは別に、一方向性
けい素鋼板の最終冷延板に局所的な電解エッチングを施
すことによって溝を形成し、磁区を細分化する方法(特
公平8−6140号公報)も開発され、工業化されている。
【0009】さらに、上記したけい素鋼板の製造方法と
は別に、特公昭55-19976号公報、特開昭56−127749号公
報および特開平2−3213号公報に開示されているよう
に、非晶質合金が通常の電力用トランスや高周波トラン
ス等の材料として注目されている。このような非晶質材
料では、通常の一方向性けい素鋼板に比較して非常に優
れた鉄損特性が得られる反面、熱的安定性に欠ける、占
積率が悪い、切断が容易でない、あまりにも薄く脆いた
めトランスの組み立て工数のコストアップが大きい等実
用上の不利が多いことから、現状では大量に使用される
までには至っていない。
【0010】この点、発明者らは先に、上記の不利を解
消するものとして、特公昭63-54767号公報等において、
研磨により平滑化した一方向性けい素鋼板上にCVDや
イオンプレーティング, イオンインプランテーション等
のドライプレーティングにより、Si, Mn, Cr, Ni, Mo,
W,V,Ti, Nb, Ta, Hf, Al,Cu, ZrおよびBの窒化
物、炭化物のうちから選んだ1種または2種以上の張力
被膜を被成させることによって超低鉄損が得られること
を開示した。この製造法により、電力用トランスや高周
波トランス等の材料として非常に優れた鉄損特性が得ら
れるようになったが、それでもなお、最近の低鉄損化に
対する要求に対しては十分に応えているとはいい難かっ
た。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記の要
請に有利に応じるもので、従来に比べて鉄損の一層の低
減を実現した超低鉄損一方向性けい素鋼板を提案するこ
とを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】さて、発明者は、上記の
要請に応えるべく、あらゆる観点から根本的な再検討を
加えた。すなわち、発明者は、安定した工程で平滑化し
た一方向性けい素鋼板表面上に種々の窒化物、炭化物の
うちから選んだ1種または2種以上の張力被膜を被成さ
せて超低鉄損の製品を得るためには、一方向性けい素鋼
板の素材成分から最終の処理工程に至るまでの根本的な
再検討が必要であるとの認識に立って、けい素鋼板の集
合組織の追跡から、鋼板表面の平滑度や最終のCVDや
PVD処理工程に至るまで鋭意検討を重ねた。その結
果、以下に述べる知見を得た。
【0013】(1) けい素鋼板に被覆したセラミック (代
表例として TiN膜を使用) の薄膜は、1.5 μm 以上の厚
みに被成しても、鉄損向上の度合いは少なくなる。すな
わち1.5 μm 以上の厚みのTiN 膜は、占積率の劣化と磁
束密度の劣化と鉄損の僅かの向上しか期待できない。 (2) この場合の TiNの役割は、セラミック特有の張力付
加に加えて、けい素鋼板との密着性の役割の方がより重
要である。すなわち TiN横断面の透過電子顕微鏡観察
(井口征夫:日本金属学会誌, 60 (1996), P.781〜786
参照) では、10nmの横縞が観察され、これはけい素鋼板
の〔011〕方向のFe−Fe原子の5原子層に相当する。 (3) TiN 被覆領域および化学研磨領域のX線による二層
の集合組織の同時測定(Y.Inokuti:ISIJ Internationa
l, 36 (1996), P.347〜352 参照) では、研磨領域のFe
の{200}ピーク形状は円形である。しかし TiN被覆
領域でのFeの{200}ピーク形状は楕円形であり、け
い素鋼板の〔100〕si-steel方向に強力に張力付加さ
れた状況になっている。 (4) TiN 薄膜の張力 (井口征夫、鈴木一弘、小林康宏:
日本金属学会誌、60 (1996), P.674〜678 参照) は8〜
10 MPaで、これは磁束密度差ΔB8 =0.014 〜0.016T
の向上が期待できる。(これは約1°のGoss方位集積度
を向上させたことに相当する。)
【0014】以上が、セラミック被覆についての新規知
見であるが、さらにセラミック膜と鋼板の表面状態に関
し、以下に述べる知見を得た。 (5) けい素鋼板の最終冷延板に局所的な電解エッチング
を施すことによって溝を形成し、さらに2次再結晶処理
後の鋼板表面を研磨により平滑化した後、 TiNセラミッ
ク膜を被覆した場合には、導入した溝に起因した反磁界
効果による磁区細分化に加えて、さらにセラミック被膜
による張力付加により、効果的に鉄損が低減する。 (6) セラミック被覆前に、鋼板表面上に凹状の溝を形成
した場合の引張りによる鉄損の低減効果は、通常の研磨
により平滑化したけい素鋼板の場合よりも大きい(特公
平3-32889号公報および図1参照)。すなわち、溝を導
入した場合にはけい素鋼板表面上に異張力が作用し、引
張り張力による鉄損の低減度合いが増大する。 (7) 凹状の溝を形成したけい素鋼板上にセラミック膜を
被覆した場合は、通常の研磨により平滑化しセラミック
膜を被覆した場合よりも、鉄損の低減効果がより効果的
である。すなわち、図2に模式で示すように、線状の溝
を導入し(同図b)、溝による反磁界効果を応用して磁
区を細分化したのち、セラミック張力被膜を被成して
(同図c)、さらに 180°主磁区を細分化する方が一層
効果的で、超低鉄損が得られる。 (8) けい素鋼板の最終冷延板に局所的な電解エッチング
を施すことによって溝を形成した場合は、2次再結晶処
理を施した後の鋼板表面を研磨により平滑化しない表面
状態で TiNセラミック膜を被成した場合であっても、か
なりの鉄損低減効果が発揮される。すなわち、研磨によ
り平滑化しない状態、例えば酸洗処理等により表面に小
さな凹凸が存在する状態であっても、熱膨張係数の小さ
なセラミック膜を被覆することによって、けい素鋼板の
表面に強力な張力を付加することが可能であり、これに
よって鉄損を有利に低減することができる。
【0015】そこで、発明者は、上記の新規知見を基
に、所期した目的を達成すべく数多くの実験と検討を重
ねた結果、表面を平滑化したけい素鋼板および線状の溝
を導入したけい素鋼板いずれであっても、該けい素鋼板
の表面に被成するセラミック張力被膜を複数種とし、し
かもこのセラミック張力被膜について、その熱膨張係数
が外側にいくほど小さく、かつその膜厚が外層側にいく
ほど厚くすることが、所期した目的の達成に関し、極め
て有効であることの知見を得た。この発明は、上記の知
見に立脚するものである。
【0016】すなわち、この発明は、板厚が0.05〜0.5
mmの仕上焼鈍済み一方向性けい素鋼板の平滑化した表面
上に、窒化物および/または炭化物からなる2層以上の
セラミック張力被膜を有し、該セラミック張力被膜は、
その熱膨張係数が外層側にいくほど小さく、かつその膜
厚が外層側にいくほど厚く、さらに最外層のセラミック
張力被膜は絶縁性を有することを特徴とする超低鉄損一
方向性けい素鋼板(第1発明)である。
【0017】また、この発明は、板厚が0.05〜0.5 mmの
仕上焼鈍済み一方向性けい素鋼板の表面に、圧延方向に
対しほぼ直角方向に2〜10mmの間隔で線状に形成した、
幅:50〜500 μm 、深さ:0.1 〜50μm の線状凹領域を
有し、さらにかかる鋼板の表面上に、窒化物および/ま
たは炭化物からなる2層以上のセラミック張力被膜を有
し、該セラミック張力被膜は、その熱膨張係数が外層側
にいくほど小さく、かつその膜厚が外層側にいくほど厚
く、さらに最外層のセラミック張力被膜は絶縁性を有す
ることを特徴とする超低鉄損一方向性けい素鋼板(第2
発明)である。
【0018】上記した第2発明において、仕上焼鈍済み
一方向性けい素鋼板の表面は、平滑化処理を施した表面
であっても、平滑化処理を施さない、酸洗処理ままの表
面であってもいずれでも良い。また、上記した第1発明
および第2発明においては、被膜厚を薄くして、鋼板断
面において地鉄部分が占める面積率で規定される占積率
を98%以上とすることが有利である。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、この発明による成功が導か
れるに至った経過および発明内容を具体的に説明する。
図3(a), (b), (c) にそれぞれ、(a) 現行の一方向性け
い素鋼板、(b)TiN被覆一方向性けい素鋼板および (c)こ
の発明の超低鉄損一方向性けい素鋼板の表面近傍の断面
を比較して模式で示す。なお、各図上の( )内は占積
率を、また各図中の数字は熱膨張係数 (10-6/K)を示
したものである。さて、(a) の現行の一方向性けい素鋼
板は、熱膨張係数が13×10-6/Kのけい素鋼板の上に熱
膨張係数が11×10-6/Kのフォルステライト下地被膜を
被成し、さらにその上に熱膨張係数が5×10-6/Kの絶
縁被膜を被成して低鉄損化と磁歪特性の改善を図ったも
のである。この場合のけい素鋼板の占積率は96.5%程度
である。また、(b) のTiN 被覆一方向性けい素鋼板は、
けい素鋼板の上に約1μm 厚程度の薄TiN 被膜を被成
し、さらにその上に絶縁被膜を被成したものであるが、
この場合 TiN被膜の熱膨張係数は8×10-6/Kで、フォ
ルステライト下地被膜の熱膨張係数:11×10-6/Kより
も低く、けい素鋼板により強い張力付加が可能であるた
め、一層の低鉄損化と磁歪特性の改善が可能である。こ
の場合のけい素鋼板の占積率は97.5%程度で約1%程度
向上している。これに対し、(c) のこの発明の超低鉄損
けい素鋼板は、けい素鋼板の表面に薄TiN(0.01〜0.5
μm )を被成した上に、さらに熱膨張係数が3×10-6
Kと極めて小さく、かつ絶縁性を有するSi3N4 (0.3〜1.
5 μm )を、下地膜である TiN膜よりも厚く被成した二
層構造の薄窒化物系セラミック被覆を有する超低鉄損け
い素鋼板である。この場合のけい素鋼板の占積率は99%
程度で究極のけい素鋼板と言える。
【0020】図4は、図5(a), (b)に示す2種類の薄窒
化物系セラミック被覆をそなえるけい素鋼板の引張りに
よる鉄損の変化を比較して示したものである。図4に示
したとおり、(a) のけい素鋼板上に単に TiN被膜を被成
した場合に比較して、(b) のこの発明に従い TiN−Si3N
4 二層の薄窒化物系セラミック被膜を被成した場合は、
引張りによる鉄損の変化が小さいことが注目される。す
なわち、(b) の場合においては、より効果的な張力がけ
い素鋼板に付与されているために、超低鉄損化が達成さ
れていることが判る。
【0021】次に、上記した第1発明を具体的実験例で
説明する。 C:0.072 wt%(以下単に%で示す),Si:3.44%, M
n:0.085 %, Se:0.023 %, Sb:0.028 %, Al:0.025
%,N:0.0082%及びMo:0.013 %を含有し、残部は
実質的にFeの組成になるけい素鋼連鋳スラブを、1360
℃,4時間の加熱処理後、熱間圧延を施して板厚:2.0
mmの熱延板とした。この熱延板に 980℃,3分間の均一
化焼鈍を施した後、960 ℃の中間焼鈍をはさむ2回の圧
延を行って板厚:0.23mmの最終冷延板とした。その後、
840℃の湿水素中で脱炭・1次再結晶焼鈍を行った後、
鋼板表面に MgOを主成分とする焼鈍分離剤をスラリー塗
布し、ついで 850℃から8℃/hの速度で1050℃まで昇
温してゴス方位に強く集積した2次再結晶粒を発達させ
た後、1220℃の乾水素中で純化処理を施した。
【0022】かくして得られた製品の表面被膜を除去し
た後、化学研磨によりけい素鋼板の表面を平滑化した
後、けい素鋼板表面上にTiN (HCD法によるイオンプレー
ティング) を約 0.2μm の厚みに被成した後、さらにそ
の上に Si3N4を厚み:0.5 μm被成した。このときのけ
い素鋼板の磁気特性を測定した結果を表1に示す。ま
た、表1には、比較のため、TiN 被覆けい素鋼板、
現行のけい素鋼板 (何れも磁区細分化後) の磁気特性値
も併せて示す。
【0023】
【表1】
【0024】表1から明らかなように、の現行のけい
素鋼板(比較材)のW17/50(W/kg)=0.80 W/kg に比較し
て、のTiN 被覆けい素鋼板はW17/50(W/kg)が 0.62 W/
kgと優れている。しかしながら、の第1発明に従い T
iNとSi3N4 の二層( 0.7μm )のセラミック被膜を被成
したけい素鋼板では、W17/50(W/kg)が 0.55 W/kgと格段
に向上している。また、この場合には、占積率も99.0%
と, に比較して格段に優れていることが注目され
る。
【0025】上述したとおり、第1発明における磁気特
性の顕著な向上は、Goss方位に強く集積した2次再結晶
粒を発達させたけい素鋼板の表面を平滑化して磁壁の移
動を容易にし、さらにその上に TiN+Si3N4 の二層(
0.7μm )のセラミック被膜を被成させることによって
達成される。
【0026】以上がけい素鋼板の表面上に被成すべきセ
ラミック膜についての内容であるが、次にけい素鋼板の
表面状態とセラミック膜との関係について述べる。図6
に、表面状態が種々に異なるけい素鋼板に張力を付与し
た時の鉄損の推移について調査した結果を示す。図中、
(a)〜(e) はそれぞれ、次のような鉄損低減曲線であ
る。 (a) 一方向性けい素鋼板の最終冷延板の表面上に、圧延
方向に対しほぼ直角方向に4mmの間隔で、幅:200 μm
、深さ:20μm の線状の凹領域を形成し、ついで仕上
焼鈍を施して(110)〔001〕方位の2次再結晶を
発達させた後、鋼板表面を化学研磨後に張力を付加した
時の鉄損低減曲線(実線)。 (b) 一方向性けい素鋼板の仕上焼鈍後の表面を化学研磨
により平滑化した後、鋼板表面上に圧延方向に対しほぼ
直角方向に4mmの間隔で、幅:200 μm 、深さ:20μm
の線状の凹領域を形成し、ついで張力を付加した時の鉄
損低減曲線(一点鎖線)。 (c) 一方向性けい素鋼板の最終冷延板の表面上に、圧延
方向に対しほぼ直角方向に4mmの間隔で、ナイフを用い
て線状の凹領域を形成し、ついで仕上焼鈍を施した後、
鋼板表面を化学研磨後に張力を付加した時の鉄損低減曲
線(二点鎖線)。 (d) 一方向性けい素鋼板の仕上焼鈍後の表面を化学研磨
により平滑化した後、鋼板表面上に圧延方向に対しほぼ
直角方向に4mmの間隔で、ナイフを用いて線状の凹領域
を形成し、ついで張力を付加した時の鉄損低減曲線(三
点鎖線)。 (e) 一方向性けい素鋼板の仕上焼鈍後の表面を化学研磨
により平滑化した後、張力を付加した時の鉄損低減曲線
(点線)。
【0027】同図に示したとおり、これら引張り張力下
での鉄損低減曲線では、 (a)と(b)の条件において引張
り張力によるけい素鋼板の鉄損低減度合いが最も大き
く、ついで (c)と(d) の条件、 (e)の条件となってい
る。ここに (a)と(b) の条件では、前掲図2に示したよ
うに、鋼板表面近傍の異張力が効果的に作用するため、
鉄損の低減度合いが最も大きくなるものと考えられる。
【0028】次に、上記した第2発明を具体的実験例で
説明する。 C:0.074 %,Si:3.35%, Mn:0.069 %, Se:0.021
%, Sb:0.025 %, Al:0.025 %,N:0.0072%および
Mo:0.012 %を含有し、残部は実質的にFeの組成になる
けい素鋼連鋳スラブを、1350℃,4時間の加熱処理後、
熱間圧延を施して板厚:2.0 mmの熱延板とした。この熱
延板に 970℃,3分間の均一化焼鈍を施した後、1050℃
の中間焼鈍をはさむ2回の圧延を行って板厚:0.23mmの
最終冷延板とした。
【0029】その後、最終冷延板を次のように処理し
た。 この最終冷延板の表面に、アルキド系樹脂を主成分
とするエッチングレジストインキをグラビアオフセット
印刷により、非塗布部が圧延方向にほぼ直角に幅:200
μm 、間隔:4mmで線状に残存するように塗布したの
ち、 200℃で3分間焼き付けた。このときのレジスト厚
は2μm であった。このようにしてエッチングレジスト
を塗布した鋼板に、電解エッチングを施すことにより、
幅:200 μm 、深さ:20μm の線状の溝を形成し、つい
で有機溶剤中に浸漬してレジストを除去した。この時の
電解エッチングは、NaCl電解液中で電流密度:10A/m2
処理時間:20秒の条件で行った。 比較のため、の処理を行わない最終冷延板も同時
に用意した。
【0030】その後、これらの鋼板はいずれも、 840℃
の湿水素中で脱炭・1次再結晶焼鈍を行った後、鋼板表
面に MgO(25%)、 Al2O3(70%)、CaSiO3(5%)の
成分組成になる焼鈍分離剤をスラリー塗布し、ついで 8
50℃で15時間焼鈍後、10℃/hの速度で1150℃まで昇温
してゴス方位に強く集積した2次再結晶粒を発達させた
後、1200℃の乾水素中で純化処理を施した。
【0031】かくして得られた製品の表面被膜を除去し
た後、化学研磨によりけい素鋼板の表面を平滑化した
後、けい素鋼板表面上にTiN (HCD法によるイオンプレー
ティング) を約 0.2μm の厚みに被成した後、さらにそ
の上に Si3N4を厚み:0.5 μm被成した。このときのけ
い素鋼板の磁気特性を測定した結果を表2に示す。ま
た、表2には、比較のため、TiN のみを被覆したけい
素鋼板の磁気特性値も併せて示す。
【0032】
【表2】
【0033】表2から明らかなように、に従い、凹状
の線状溝を鋼板表面に形成し、さらにその上に TiN (0.
2 μm)+Si3N4 (0.5μm)の二層セラミック被膜を被成し
た場合には、磁束密度はやに較べて0.04〜0.05T低
減したものの、鉄損W17/50は 0.45 W/kgと格段に低減
していることが注目される。
【0034】上述したとおり、第2発明における磁気特
性の顕著な向上は、セラミック被覆前にけい素鋼板の表
面に凹形状の線状溝を形成させ、この溝による反磁界効
果を応用して磁区の細分化を行ったのち、さらにその上
に TiN+Si3N4 の二層( 0.7μm )のセラミック被膜を
被成させることによって一層効果的に磁区細分化を行わ
せることにより達成される。
【0035】ここに、けい素鋼板表面に被成するセラミ
ック被膜は、Si, Mn, Cr, Ni, Mo,W,V,Ti, Nb, Ta,
Hf, Al,Cu, ZrおよびBの窒化物または炭化物のうち
から選ばれるが、ここで重要なことは、 外層側にい
くほど熱膨張係数を小さくし、かつ膜厚を厚くする、
最外層のセラミック被膜には絶縁性を具備させること
である。
【0036】また、この場合に、セラミック被膜の合計
厚みは、 0.3〜2μm 程度とするのが好適である。とい
うのは、膜厚が 0.3μm 未満では引張効果が小さいため
鉄損の改善効果が小さく、一方2μm を超えると占積率
および磁束密度の低下を招くからである。
【0037】以上述べたとおり、この発明は、従来のけ
い素鋼板に比較して、鉄損および占積率に優れるのはい
うまでもなく、磁歪、耐熱性および絶縁性にも優れた画
期的な超低鉄損一方向性けい素鋼板である。
【0038】
【作用】この発明の素材である含けい素鋼としては、従
来公知の成分組成いずれもが適合するが、代表組成を掲
げると次のとおりである。
【0039】C:0.01〜0.08 Cは、0.01%より少ないと熱延集合組織抑制が不十分と
なって大きな伸長粒が形成されるため磁気特性が劣化
し、一方0.08%より多いと脱炭工程で脱炭に時間がかか
り経済的でないので、0.01〜0.08%程度とするのが好ま
しい。
【0040】Si:2.0 〜4.0 % Siは、2.0 %より少ないと十分な電気抵抗が得られない
ため渦電流損失が増大して鉄損の劣化を招き、一方 4.0
%より多いと冷延の際に脆性割れが生じ易くなるので、
2.0〜4.0 %程度の範囲とすることが好ましい。
【0041】Mn:0.01〜0.2 % Mnは、一方向性けい素鋼板の2次再結晶を左右する分散
析出相としてのMnSあるいはMnSeを決定する重要な成分
である。Mn量が0.01%を下回ると2次再結晶を生じさせ
るのに必要なMnS 等の絶対量が不足し、不完全2次再結
晶を起こすと同時に、ブリスターと呼ばれる表面欠陥が
増大する。一方、0.2 %を超えると、スラブ加熱等にお
いてMnS などの解離固溶が行われたとしても、熱延時に
析出する分散析出相が粗大化し易く、抑制剤として望ま
れる最適サイズ分布が損なわれて磁気特性が劣化するの
で、Mnは0.01〜0.2 %程度とすることが好ましい。
【0042】S:0.008 〜0.1 %、Se:0.003 〜0.1 % S,Seはいずれも 0.1%以下、中でもSは 0.008〜0.1
%、またはSeは0.003〜0.1 %の範囲とすることが好ま
しい。というのは、これらが 0.1%を超えると熱間およ
び冷間加工性が劣化し、一方それぞれ下限値に満たない
とMnS, MnSeとしての1次粒成長抑制機能に格別の効果
を生じないからである。その他、インヒビターとして従
来公知のAl, Sb, Cu, SnおよびB等を複合添加しても、
この発明の効果を妨げるものではない。
【0043】次に、この発明に従う超低鉄損一方向性け
い素鋼板の製造工程について説明する。まず素材を溶製
するには、LD転炉、電気炉、平炉、その他公知の製鋼
炉を用い得ることは勿論のこと、真空溶解やRH脱ガス
処理を併用することもできる。
【0044】この発明に従い、素材中に含有されるS,
Seあるいはその他の1次粒成長抑制剤を溶鋼中に微量添
加する方法としては、従来公知の何れの方法を用いても
良く、例えばLD転炉、RH脱ガス終了時あるいは造塊
時の溶鋼中に添加することができる。また、スラブ製造
は、コスト低減、さらにはスラブ長手方向における成分
あるいは品質の均一性等の経済的・技術的利点のため連
続鋳造法の採用が有利ではあるが、従来の造塊スラブの
使用を妨げるものではない。
【0045】連続鋳造スラブは、スラブ中のインヒビタ
ーを解離、固溶させるために、1300℃以上の温度に加熱
される。その後、このスラブは熱間粗圧延ついで熱間仕
上圧延を施されて、通常厚み 1.3〜3.3mm 程度の熱延板
とされる。
【0046】次に熱延板は、必要に応じ 850〜1100℃の
温度範囲の中間焼鈍を挟み2回の冷間圧延を実施して最
終板厚とするが、高磁束密度で低鉄損の特性を有する製
品を得るには最終冷延率(通常55〜90%程度)に注意を
払う必要がある。この時、けい素鋼板の渦電流損をでき
るかぎり小さくする観点から製品厚の上限は 0.5mmに、
またヒステリシス損の弊害を避けるために板厚の下限は
0.05mmに限定した。
【0047】第2発明に従い、鋼板表面に線状の溝を形
成する場合には、この最終冷延を終え製品板厚となった
鋼板に対して行うのがとりわけ有利である。すなわち、
最終冷延板または2次再結晶前後の鋼板の表面に、圧延
方向に対しほぼ直角方向に2〜10mmの間隔で、幅:50〜
500 μm 、深さ:0.1 〜50μm の線状の凹領域を形成さ
せるのである。ここに、線状凹領域の間隔を2〜10mmの
範囲に限定したのは、2mmに満たないと鋼板凹凸があま
りにも顕著で磁束密度が低下し経済的でなくなり、一方
10mmを超えると磁区細分化効果が小さくなるからであ
る。また、凹領域の幅が50μm に満たないと反磁界効果
を利用することが困難となり、一方 500μm を超えると
磁束密度が低下し経済的でなくなるので、凹領域の幅は
50〜500 μm の範囲に限定した。さらに、凹領域の深さ
が 0.1μm に満たないと反磁界効果を効果的に利用する
ことができず、一方50μm を超えると磁束密度が低下し
経済的でなくなるので、凹領域の深さは 0.1〜50μm の
範囲に限定した。
【0048】なお、線状凹領域の形成方法としては、最
終冷延板の表面に、印刷によりエッチングレジストを塗
布、焼き付けた後、エッチング処理を施し、しかるのち
該レジストを除去する方法が、従来のナイフの刃先やレ
ーザー等を用いる方法に比較して、工業的に安定して実
施できる点、および引張り張力により一層効果的に鉄損
を低減できる点で有利である。
【0049】以下、上記のエッチングによる線状溝形成
技術の典型例について具体的に説明する。最終冷延板の
表面に、アルキド系樹脂を主成分とするエッチングレジ
ストインキをグラビアオフセット印刷により、非塗布部
が圧延方向にほぼ直角に幅:200μm 、間隔:4mmで線
状に残存するように塗布したのち、 200℃で約20秒間焼
き付ける。このとき、レジスト厚は2μm 程度とする。
このようにしてエッチングレジストを塗布した鋼板に、
電解エッチングまたは化学エッチングを施すことによ
り、幅:200 μm 、深さ:20μm の線状の溝を形成し、
ついで有機溶剤中に浸漬してレジストを除去する。この
時の電解エッチング条件は、NaCl電解液中で電流密度:
10A/m2、処理時間:20秒程度、また化学エッチング条件
は、HNO3液中で浸漬時間:10秒間程度とすれば良い。
【0050】ついで、鋼板には脱炭焼鈍が施される。こ
の焼鈍は、冷延組織を1次再結晶組織にすると同時に、
最終焼鈍(仕上焼鈍とも呼ばれる)で{110}〈00
1〉方位の2次再結晶粒を発達させる場合に有害なCを
除去することを目的とし、例えば 750〜880 ℃の湿水素
中で行う。
【0051】最終焼鈍は、{110}〈001〉方位の
2次再結晶粒を十分発達させるために施されるもので、
通常箱焼鈍によって直ちに1000℃以上に昇温し、その温
度に保持することによって行われる。この最終焼鈍は通
常、マグネシア等の焼鈍分離剤を塗布して行い、表面に
フォルステライトと呼ばれる下地被膜も同時に形成す
る。しかしながら、この発明では、フォルステライト下
地被膜を形成させたとしても、次工程でこの下地被膜を
除去するため、かようなフォルステライト下地被膜を形
成させないような焼鈍分離剤の方が有利である。すなわ
ち、フォルステライト下地被膜を形成させる MgOの含有
比率を低減し(50%以下)、代わってかかる被膜を形成
させない Al2O3, CaSiO3等の含有比率を高く(50%以
上)した焼鈍分離剤が有利である。
【0052】この発明において{110}〈001〉方
位に高度に集積した2次再結晶組織を発達させるために
は、 820℃から900 ℃の低温で保定焼鈍する方が有利で
あるが、その他、例えば 0.5〜15℃/h程度の昇温速度の
徐熱焼鈍でも良い。
【0053】この純化焼鈍後に、鋼板表面のフォルステ
ライト下地被膜や酸化物被膜は、公知の酸洗などの化学
的方法や切削、研磨などの機械的方法またはそれらの組
み合わせより除去して、鋼板表面を平滑化する。すなわ
ち、鋼板表面の種々の被膜を除去した後、化学研磨、電
解研磨等の化学研磨やバフ研磨等の機械的研磨あるいは
それらの組み合わせなど従来の手法により、中心線平均
粗さRaで 0.4μm 以下程度まで鋼板表面を平滑化する。
【0054】なお、第2発明に従い、けい素鋼板の表面
に線状の凹領域を形成する場合には、鋼板表面は必ずし
も平滑化する必要はない。従って、この場合には、コス
トアップを伴う平滑化処理を行わなくても、酸洗処理の
みで十分な鉄損低減効果を発揮できるという利点があ
る。とはいえ、この第2発明でも、平滑化処理を施すこ
とが有利であることに変わりはない。
【0055】ついで、平滑化処理後のけい素鋼板表面
に、PVD,CVDまたはスパッタリング等の種々の方
法を用いて、Si, Mn, Cr, Ni, Mo, W,V,Ti, Nb, T
a, Hf,Al,Cu, ZrおよびBの窒化物または炭化物のうち
から選んだ1種または2種以上からなる張力被膜を少な
くとも二層被成させることによってセラミック張力被膜
を形成させる。かかるセラミック張力被膜の形成におい
て、留意すべきは、前述したとおり 外層側にいくほ
ど熱膨張係数を小さくし、かつ膜厚を厚くする、 最
外層のセラミック被膜には絶縁性を具備させることであ
る。ここに、かようなセラミック張力被膜の合計厚み
は、前述したとおり 0.3〜2μm 程度とするのが好まし
い。
【0056】なお、上記したセラミック張力被膜の形成
に関し、前掲図3(c) 、図5(b)では、被成したセラ
ミック被膜が明確に2層に分かれている場合について示
したが、この発明では、セラミック層の境界が必ずしも
このように明確になっている必要はなく、各層の成分が
相互に他の層の内部へ拡散した状態になっていても良
く、要は、被膜の熱膨張係数が外層側にいくほど小さく
なっていれば良いのである。
【0057】
【実施例】
実施例1 C:0.073 %,Si:3.42%, Mn:0.073 %, Se:0.021
%, Sb:0.026 %, Al:0.025 %およびMo:0.014 %を
含有し、残部は実質的にFeの組成になるけい素鋼連続鋳
造スラブを、1340℃,4時間の加熱処理後、熱間圧延を
施して、厚み:1.8 mmの熱延板とした。ついで 900℃の
均一化焼鈍を施したのち、 950℃の中間焼鈍をはさむ2
回の冷間圧延を施して厚み:0.23mmの最終冷延板とし
た。なお、圧延に際しては350 ℃の温間圧延を行った。
その後、 820℃の湿水素中で脱炭・1次再結晶焼鈍を施
したのち、鋼板表面上に MgOをスラリー塗布してから、
850℃, 50時間の2次再結晶焼鈍を行った後、1220℃の
乾水素中で鈍化焼鈍を行った。
【0058】ついで、鋼板表面を、酸洗、化学研磨処理
により平滑化した後、PVD法およびマグネトロンスパ
ッタ法を用いて、種々のセラミック被膜を二層被成した
のち磁区細分化処理を施した。かくして得られた製品の
磁気特性について調査した結果を表3に示す。なお、表
3には、比較のため、TiN 被覆けい素鋼板および現行の
けい素鋼板 (何れも磁区細分化後) の磁気特性について
調べた結果も併記する。
【0059】
【表3】
【0060】同表より明らかなように、この発明に従い
得られたけい素鋼板はいずれも、従来材と比較して、一
層優れた鉄損値および占積率が得られている。
【0061】実施例2 C:0.074 %, Si:3.46%, Mn:0.077 %, sol.Al:0.
025 %, N:0.0074%, Se:0.021 %, Mo:0.011 %,
Cu:0.21%およびSb:0.023 %を含有し、残部は実質的
にFeの組成になるけい素鋼連続鋳造スラブを、1260℃で
40%の再圧処理後、昇温速度:1.5 ℃/minで1360℃まで
徐熱し、引き続きこの温度に4時間保定する均熱処理を
施した後、熱間圧延を施して厚み:1.8 mmの熱延板とし
た。ついで、1050℃の均一化焼鈍後、1000℃の中間焼鈍
を挟む2回の冷間圧延を施して0.23mm厚の最終冷延板と
した。なお、圧延に際しては、300 ℃の温間圧延を実施
した。その後、 840℃の湿水素中で脱炭・1次再結晶焼
鈍後、鋼板表面上にMgO をスラリー塗布したのち、 850
℃から12℃/hの昇温速度で1080℃まで昇温して2次再結
晶させたのち、1220℃の乾H2中で鈍化焼鈍を行った。
【0062】その後、鋼板表面は酸洗、化学研磨処理に
より平滑化した後、マグネトロンスパッタ法を用いて、
TiN+Si3N4 の二層( 0.2+ 0.4= 0.6μm )を被成
し、磁区細分化処理を施したのちの製品の鉄損および占
積率を測定したところ W17/50 = 0.53 W/kg 占積率 = 99.1 % という、優れた特性値が得られた。
【0063】実施例3 C:0.069 %,Si:3.39%, Mn:0.077 %, Se:0.022
%, Sb:0.025 %, Al:0.020 %, N:0.071 %および
Mo:0.012 %を含有し、残部は実質的にFeの組成になる
けい素鋼連続鋳造スラブを、1350℃,5時間の均熱処理
後、熱間圧延を施して、厚み:2.1 mmの熱延板とした。
ついで 950℃の均一化焼鈍を施した後、1050℃の中間焼
鈍をはさむ2回の冷間圧延を施して厚み:0.23mmの最終
冷延板とした。
【0064】その後、鋼板表面に次の3つの処理を施し
た。 最終冷延板の表面に、アルキド系樹脂を主成分とす
るエッチングレジストインキをグラビアオフセット印刷
により、非塗布部が圧延方向にほぼ直角に幅:200 μm
、間隔:4mmで線状に残存するように塗布したのち、
200℃で約20秒間焼き付けた。このときのレジスト厚は
2μm であった。かようにしてエッチングレジストを塗
布した鋼板に、電解エッチングを施すことにより、幅:
200μm 、深さ:20μm の線状の溝を形成し、ついで有
機溶剤中に浸漬してレジストを除去した。この時の電解
エッチングは、NaCl電解液中で電流密度:10A/m2、処理
時間:20秒の条件で行った。その後、 840℃の湿水素中
で脱炭・1次再結晶焼鈍を行った後、鋼板表面にMgO(2
5%)、 Al2O3(70%)、CaSiO3(5%)の成分組成に
なる焼鈍分離剤をスラリー塗布し、ついで 850℃で15時
間焼鈍後、10℃/hの速度で1150℃まで昇温してゴス方
位に強く集積した2次再結晶粒を発達させた後、1200℃
の乾水素中で純化処理を施した。 最終冷延板に、 840℃の湿水素中で脱炭・1次再結
晶焼鈍を施した後、と同じ方法で、脱炭・1次再結晶
焼鈍板の表面上に線状溝を形成した。その後、鋼板表面
に MgO(25%)、 Al2O3(70%)、CaSiO3(5%)の成
分組成になる焼鈍分離剤をスラリー塗布し、ついで 850
℃で15時間焼鈍後、10℃/hの速度で1150℃まで昇温し
てゴス方位に強く集積した2次再結晶粒を発達させた
後、1200℃の乾水素中で純化処理を施した。 最終冷延板に、 840℃の湿水素中で脱炭・1次再結
晶焼鈍を施した後、と同様にして、最終焼鈍により
(110)〔001〕方位の2次再結晶粒を発達させた
のちの鋼板について、表面の酸化物膜を除去し、ついで
化学研磨によって表面を平滑化したのち、,と同じ
方法で線状溝を形成した。
【0065】ついで、鋼板の表面上に、PVD法および
マグネトロンスパッタ法を用いて、種々のセラミック被
膜を二層被成した。かくして得られた製品の磁気特性に
ついて調査した結果を表4に示す。なお、表4には、比
較のため、TiN 被覆けい素鋼板および現行のけい素鋼板
(何れも磁区細分化後) の磁気特性について調べた結果
も併記する。
【0066】
【表4】
【0067】同表より明らかなように、この発明に従い
得られたけい素鋼板はいずれも、従来材と比較して、一
段と優れた鉄損特性が得られている。
【0068】実施例4 C:0.043 %, Si:3.34%, Mn:0.068 %, Se:0.020
%, Sb:0.025 %およびMo:0.012 %を含有し、残部は
実質的にFeの組成になるけい素鋼連続鋳造スラブを、13
30℃で3時間加熱後、熱間圧延を施して厚み:2.4 mmの
熱延板とした。ついで、 900℃の均一化焼鈍後、 950℃
の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して0.23mm厚の最
終冷延板とした。その後、最終冷延板の表面に、アルキ
ド系樹脂を主成分とするエッチングレジストインキをグ
ラビアオフセット印刷により、非塗布部が圧延方向にほ
ぼ直角に幅:200 μm 、間隔:4mmで線状に残存するよ
うに塗布したのち、 200℃で約20秒間焼き付けた。この
ときのレジスト厚は2μm であった。このようにしてエ
ッチングレジストを塗布した鋼板に、電解エッチングを
施すことにより、幅:200μm 、深さ:20μm の線状の
溝を形成し、ついで有機溶剤中に浸漬してレジストを除
去した。この時の電解エッチングは、NaCl電解液中で電
流密度:10A/m2、処理時間:20秒の条件で行った。その
後、 840℃の湿水素中で脱炭・1次再結晶焼鈍を施し、
ついで鋼板表面にMgO(25%)、 Al2O3(70%)、CaSiO
3(5%)の成分組成になる焼鈍分離剤をスラリー塗布
したのち、 850℃で50時間の保定焼鈍により(110)
〔001〕方位に強く集積した2次再結晶粒を発達させ
た後、1200℃の乾水素中で純化処理を施した。
【0069】かくして得られたけい素鋼板の表面の酸化
物被膜を除去し、ついで化学研磨により表面を平滑化し
た後、マグネトロンスパッタ法を用いて TiN+Si3N4
二層( 0.3+ 0.4= 0.7μm )を被成した。かくして得
られた製品の鉄損および占積率を測定したところ W17/50 = 0.49 W/kg 占積率 = 98.8 % という、優れた特性値が得られた。
【0070】
【0071】
【0072】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、従来材に
比較して、鉄損および占積率が格段に優れた超低鉄損一
方向性けい素鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】化学研磨処理および溝導入処理を施した一方向
性けい素鋼板の引張り張力と鉄損との関係を示したグラ
フである。
【図2】(a) 通常のゴス方位2次再結晶組織、(b) この
組織に線状溝を導入した場合、(c) さらにセラミック張
力被膜を被成した場合における磁区模様を示した図であ
る。
【図3】(a) 現行の一方向性けい素鋼板、(b)TiN被覆一
方向性けい素鋼板および (c)この発明の超低鉄損一方向
性けい素鋼板の表面近傍の断面を比較して示した模式図
である。
【図4】引張り張力と鉄損特性の関係を示したグラフで
ある。
【図5】(a) けい素鋼板上に単に TiN被膜を被成した一
方向性けい素鋼板および (b)この発明に従い TiN−Si3N
4 二層の薄窒化物系セラミック被膜を被成した一方向性
けい素鋼板の表面近傍の断面を示した模式図である。
【図6】表面状態が種々に異なるけい素鋼板に張力を付
与した時の引張り張力と鉄損との関係を示したグラフで
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 - 22/86 H01F 1/16

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 板厚が0.05〜0.5 mmの仕上焼鈍済み一方
    向性けい素鋼板の平滑化した表面上に、窒化物および/
    または炭化物からなる2層以上のセラミック張力被膜を
    有し、該セラミック張力被膜は、その熱膨張係数が外層
    側にいくほど小さく、かつその膜厚が外層側にいくほど
    厚く、さらに最外層のセラミック張力被膜は絶縁性を有
    することを特徴とする超低鉄損一方向性けい素鋼板。
  2. 【請求項2】 板厚が0.05〜0.5 mmの仕上焼鈍済み一方
    向性けい素鋼板の表面に、圧延方向に対しほぼ直角方向
    に2〜10mmの間隔で線状に形成した、幅:50〜500 μm
    、深さ:0.1 〜50μm の線状凹領域を有し、さらにか
    かる鋼板の表面上に、窒化物および/または炭化物から
    なる2層以上のセラミック張力被膜を有し、該セラミッ
    ク張力被膜は、その熱膨張係数が外層側にいくほど小さ
    く、かつその膜厚が外層側にいくほど厚く、さらに最外
    層のセラミック張力被膜は絶縁性を有することを特徴と
    する超低鉄損一方向性けい素鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項2において、仕上焼鈍済み一方向
    性けい素鋼板の表面が、平滑化処理を施した表面である
    超低鉄損一方向性けい素鋼板。
  4. 【請求項4】 請求項2において、仕上焼鈍済み一方向
    性けい素鋼板の表面が、平滑化処理を施さない、酸洗処
    理ままの表面である超低鉄損一方向性けい素鋼板。
  5. 【請求項5】 請求項1または2において、鋼板断面に
    おいて地鉄部分が占める面積率で規定される占積率が98
    %以上である超低鉄損一方向性けい素鋼板。
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