JP2003342642A - 磁気特性および被膜特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
磁気特性および被膜特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法Info
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Abstract
じる被膜欠陥を効果的に防止して、外観および密着性に
優れるフォルステライト被膜を有しかつ磁気特性に優れ
た方向性電磁鋼板を提供する。 【解決手段】 マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤中
に、アルカリ金属化合物を、マグネシア:100 重量部に
対し該金属換算で 0.001〜1.5 重量部の範囲で含有させ
る。
Description
被膜特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特
に高磁束密度を達成するために副インヒビターを含有さ
せた場合に懸念されるフォルステライト被膜の劣化を効
果的に防止しようとするものである。
れる方向性電磁鋼板には、高磁束密度でかつ低鉄損であ
ることが最も重要な特性として要求される。今日まで、
方向性電磁鋼板の低鉄損化を実現するために様々な手段
が講じられてきたが、その中でも最終仕上げ焼鈍後の鋼
板の結晶方位を、ゴス方位と呼ばれる{110}<00
1>方位に高度に集積させることは、最も重要視されて
きた開発目標の一つである。というのは、鉄結晶の磁化
容易軸方向である結晶方位<001>が圧延方向に高度
に集積することにより、圧延方向への磁化に要する磁化
力が小さくなり、保磁力が低下する結果、ヒステリシス
損ひいては鉄損が低減するからである。
として、磁化した際の騒音が小さいことが挙げられる
が、この問題も結晶方位をゴス方位に揃えることによっ
て大幅に改善される。すなわち、変圧器で生じる騒音の
主な原因は、鉄心素材の磁歪振動や電磁振動であること
が知られているが、結晶方位のゴス方位への集積度を向
上させると、磁歪振動の原因となる90°磁区の生成が抑
制されると同時に、励磁電流が低下して電磁振動が抑制
され、これらの結果として騒音が低減されるからであ
る。
晶方位<001>を圧延方向へ集積させることは最も重
要な課題であるといえる。ここで、結晶方位の集積度の
指標としては、B8 (磁化力:800 A/m における磁束密
度)が用いられる場合が多く、方向性電磁鋼板の開発は
このB8 の向上を大きな目標として推進されている。ま
た、鉄損の代表的な値としては、励磁磁束密度:1.7
T, 励磁周波数:50Hzの場合におけるエネルギー損失で
あるW17/50 が主に使用される。
組織は、最終仕上げ焼鈍中の二次再結晶と呼ばれる現象
を通じて形成され、この二次再結晶によりゴス方位の結
晶粒を優先的に巨大成長させて、所望の磁気特性を有す
る製品を得る。上記したような二次再結晶粒の集積を効
果的に促進させるためには、一次再結晶粒の成長を選択
的に抑制するインヒビターと呼ばれる析出分散相を均一
かつ適正なサイズで形成することが重要である。このイ
ンヒビターの存在により、一次再結晶粒の正常粒成長が
抑制され、最終仕上げ焼鈍中に高温まで細かい一次再結
晶の状態が保持されると共に、良好な方位の結晶粒の成
長に対する選択性が高まるため、高磁束密度が実現され
るのである。一般に、インヒビターが強力で正常粒成長
抑制力が強いほど高い方位集積度が得られると考えられ
ている。
MnSe, Cu2-XS, Cu2-XSe, AlNおよびBN等、鋼への
溶解度の小さい物質が用いられる。例えば、特公昭33−
4710号公報や特公昭40−15644 号公報には、素材中にAl
を含有させ、最終冷延圧下率を81〜95%の高圧下にする
と共に最終冷延前の焼鈍で強力なインヒビターであるAl
Nを析出させる技術が開示されている。
Ni、Sb、P、Cr、Te、BiおよびPb等を付加的に添加する
ことは、二次再結晶粒の方位集積度の向上に対して有効
であることが知られている。これらの付加的な副インヒ
ビター元素は、結晶粒界上や鋼板表面に偏析することに
よって、主インヒビターであるMnS、MnSe、 Cu2-xS、
Cu2-xSe、AlN等と共同して正常粒成長抑制力を強化
し、磁気特性を高めることが知られている。
含有する鋼材を素材として用いた場合、最終仕上げ焼鈍
中に鋼板表面に生じるフォルステライト被膜の形成が不
良となり、製品の被膜外観や絶縁コーティングの密着性
が劣化することが知られている。このため、このような
フォルステライト被膜の形成不良に対しては、最終仕上
げ焼鈍の際に用いる焼鈍分離剤の含水率を 0.3〜3%の
範囲に調節する方法(特開平11−229036号公報)、脱炭
焼鈍板の酸素目付量を 550〜850ppmの範囲に調整する方
法(特開平10−152725号公報)、焼鈍分離剤に用いるMg
OのIg−Loss値を0.4 〜1.5 %に調整する方法(特開平
10−25516 号公報)、最終仕上げ焼鈍における雰囲気ガ
ス流量を適正に調整する方法(特開平9−3542号公報)
など多くの改善策が提案されているものの、いずれも満
足いくほどの被膜改善効果を得ることはできなかった。
すなわち、上記した従来技術を用いることによって、幾
分かの被膜改善効果は期待できるものの、副インヒビタ
ーに起因した被膜の劣化を完全に防止することはでき
ず、外観の良好な製品を製造するには至っていないのが
現状である。
ような副インヒビターを含有させた場合に生じる被膜欠
陥を効果的に防止することにより、外観および密着性に
優れるフォルステライト被膜を有しかつ磁気特性に優れ
た方向性電磁鋼板の有利な製造方法を提案することを目
的とする。
ンヒビターを含有させた素材におけるフォルステライト
被膜の劣化原因を調査したところ、最終仕上げ焼鈍中に
表層部で副インヒビター元素の濃化が起こり、このよう
な表層の濃化がフォルステライト被膜形成反応を妨害す
る結果、被膜の劣化が生じることが究明された。また、
上記の原因による被膜の劣化を防止するためには、焼鈍
分離剤中にアルカリ金属を極微量含有させること、また
より一層の改善のためには焼鈍分離剤の主剤であるマグ
ネシアの活性度分布を適正化すること、さらには脱炭焼
鈍工程における加熱領域での雰囲気条件を調整すること
により、被膜形成に有害な元素の表層部への濃化を抑制
することが有効であるとの知見を得た。この発明は、上
記の知見に立脚するものである。
りである。 1.C:0.01〜0.10mass%およびSi:1.0 〜5.0 mass%
を含み、かつ主インヒビター成分として窒化物、硫化物
およびセレン化物のうちの少なくともいずれか一種を形
成する成分を含有すると共に、副インヒビター成分を含
有する組成になる珪素鋼スラブを、熱間圧延し、ついで
焼鈍処理を含む1回または2回以上の冷間圧延で最終板
厚にしたのち、一次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離
剤を鋼板表面に塗布してから、最終仕上げ焼鈍を施す一
連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
副インヒビター成分として、Ni:0.01〜1.50mass%、S
b:0.005 〜0.50mass%、P:0.005 〜0.50mass%、C
r:0.02〜1.50mass%、Te:0.003 〜1.50mass%、Bi:
0.003 〜1.50mass%およびPb:0.003 〜1.50mass%のう
ちから選んだ少なくとも一種を含有させると共に、マグ
ネシアを主剤とする焼鈍分離剤中に、アルカリ金属化合
物を、マグネシア:100 重量部に対し該金属換算で 0.0
01〜1.5 重量部含有させることを特徴とする磁気特性お
よび被膜特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法。
算で、リチウム化合物:0.01〜1.5 重量部、ナトリウム
化合物:0.001 〜1.0 重量部およびカリウム化合物:0.
001 〜1.5 重量部のうちから選んだ一種または二種以上
で、かつこれらの合計量:0.001 〜1.5 重量部であるこ
とを特徴とする上記1記載の方向性電磁鋼板の製造方
法。
O含有量が 0.2〜1.2 mass%、ハロゲン元素含有量が合
計で 0.005〜0.10mass%であり、またCAA(クエン酸
活性度)20%が20〜50s、CAA40%が50〜110 s、C
AA60%が70〜200 sであることを特徴とする上記1ま
たは2記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
含む雰囲気中で行い、加熱領域の露点を40〜70℃の範囲
に規制した上で、雰囲気の水素−水蒸気分圧(P[H2O]/
P[H2])が0.25〜0.70となるようにH2分圧を調整するこ
とを特徴とする上記1,2または3記載の方向性電磁鋼
板の製造方法。なお、ここで加熱領域とは、脱炭焼鈍加
熱時の 650℃から均熱温度−5℃までの領域をいう。
2段階に分け、前段部と後段部で雰囲気および/または
温度を変更することを特徴とする上記4記載の方向性電
磁鋼板の製造方法。
いて説明する。 C:0.06mass%、Si:3.3 mass%、Mn:0.07mass%、S
e:0.02mass%、Al:0.022 mass%、N:0.0082mass%
およびCu:0.15mass%を含有し、かつ副インヒビター成
分としてBi:0.010 mass%を含有し、残部はFeおよび不
可避的不純物の組成になる珪素鋼スラブを、常法に従い
処理して得られた板厚:0.23mmの冷延板に対して、加熱
領域の露点を56℃、雰囲気酸化性(P[H2O]/P[H2])を
0.35、また均熱領域の露点を59℃、雰囲気酸化性(P[H
2O]/P[H2])を0.41として、 860℃、2分間の脱炭焼鈍
を行った。ついで、クエン酸活性度(CAA)および微
量含有物が図1, 2にa,cで示す粉体特性になるマグ
ネシアを主剤とし、このマグネシア:100 重量部に対
し、添加剤として水酸化ナトリウムを種々の割合で添加
した焼鈍分離剤を、鋼板の表面に塗布した後、乾燥し
た。この時の塗布条件は、水和が20℃で30分、目付け量
が両面で12 g/m2 とした。その後、最終仕上げ焼鈍とし
て 800℃まで46時間かけて昇温し、 800℃で20時間保定
した後、 800〜1150℃を25℃/hの平均昇温速度で昇温
し、1150〜1200℃での滞留時間を20時間とする焼鈍を施
した。
よび磁束密度について調べた結果を、焼鈍分離剤中のNa
濃度との関係で示す。なお、図中のNa量は、マグネシア
不純物中のNaと添加した水酸化ナトリウム中のNaのトー
タル量を重量部換算したものである。また、被膜密着性
は、リン酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成分と
する絶縁コーティングを被覆した後、5mm間隔の種々の
直径の丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小
径により評価した。図3から明らかなように、Naを 0.0
05〜1.0 重量部含有させることによって、磁気特性およ
び被膜密着性とも良好な値が得られた。
明確に解明されたわけではないが、発明者らは以下のよ
うに考えている。この発明の副インヒビターは、結晶粒
の粒界や表面に優先的に濃化し、焼鈍中の粒界の移動度
を低下させることによって、二次再結晶温度を上昇させ
磁束密度を向上させる働きがある。ただし、最終仕上げ
焼鈍時にはマグネシアの水和水により露点が上昇し、高
酸化性雰囲気で焼鈍されるために、鋼板表層では副イン
ヒビターは酸化されてしまうが、この酸化物が液相を形
成して脱炭焼鈍時に生成した内部酸化膜中のSi02を地鉄
−被膜界面に凝集させ、これにより地鉄−被膜間の凹凸
がなくなることにより、被膜が剥落し、被膜不良とな
る。従って、二次再結晶が終了した後は、このような元
素は系外に放出させ、被膜への悪影響を防ぐ必要があ
る。
リ金属を極く微量添加することにより被膜改善効果は顕
著に増大する。これらのアルカリ金属は、従来は被膜に
対して有害であるとされており、例えば特公昭54−1456
6 号公報に見られるように、これらの金属元素は可及的
に低減させることが必要とされていた。さもないと、脱
炭焼鈍時に形成された内部酸化膜中のSi02が最終仕上げ
焼鈍中に鋼板表面に浮上して、被膜欠陥や部分的な被膜
剥離が起こり易くなる弊害が認められていた。しかしな
がら、この発明のような副インヒビターを用いる場合
は、アルカリ金属を微量に存在させることによって、こ
れらが鋼板表面へのSi02の濃化を促進させると共に、こ
の濃化したSi02がバリアとなって雰囲気中の酸素分の影
響が受けにくくし、その結果副インヒビター添加による
被膜への悪影響が回避されるものと考えられる。
広く調整することにより、さらに被膜の改善効果がもた
らされる。これは、活性度分布が広いことにより、高活
性部がアルカリ金属によりエッチングされる結果、より
反応性が高まり、被膜形成が促進すると共に、低活性部
が水和量を下げて最終仕上げ焼鈍中の追加酸化を抑制す
るためと考えられる。
含む化合物を添加することにより、珪酸マグネシウムお
よびLiを含む酸化膜を形成させる方法が開示されている
が、この発明のような副インヒビターを含む鋼板に単純
にこの技術を適用しても必ずしも良好な被膜特性および
磁気特性は得られなかった。というのは、特開昭49−29
305 号公報に開示の方法では、Li添加量が多かったり、
Li化合物として有機化合物塩、ホウ酸塩等の有害元素も
同時に導入したりするために、MgO−Si02−LiO2系の被
膜が形成されるが、これは通常のMgO−Si02系の被膜よ
りも安定性が低下するため、副インヒビターの表層への
移動により被膜が損傷を受けるからである。この点、こ
の発明では、被膜形成を促進させるために極く微量のア
ルカリ金属を含有させるだけなので、アルカリ金属成分
をほとんど含まないMgO−Si02系の被膜が形成され、こ
のMgO−Si02系被膜は化学的に安定であり、副インヒビ
ター成分による損傷を受けにくいために、良好な被膜が
維持できるものと考えられる。
ネシア−シリカを主成分とする焼鈍分離剤中にホウ素化
合物とアルカリ金属化合物を含有させる技術が、特開昭
55−164025号公報には、非水和酸化マグネシウムにB化
合物とアルカリ金属化合物を含有させる技術がそれぞれ
開示されているが、これらの方法を用いてもやはり、副
インヒビターとして被膜形成を阻害する元素を含む鋼板
では、被膜改善効果を十分に発揮させることはできなか
った。というのは、特開昭50−37632 号公報の方法で
は、不定形のマグネシア−シリカ錯体が形成され、これ
が副インヒビター成分による損傷を受けるためであり、
また特開昭55−164025号公報の方法では、酸化マグネシ
ウムを非水和として反応性を低下させているために被膜
形成反応が最終仕上げ焼鈍の低温域で進みにくく、副イ
ンヒビターによる被膜形成抑制効果が補いきれないため
と考えられる。
害な副インヒビターを用いても、従来どおりのマグネシ
アを用いて、ホウ素化合物添加による脆弱な被膜を形成
させることなく、通常のフォルステライトを主体とする
被膜を良好に形成させることができるのである。
することによって、脱炭焼鈍により形成される内部酸化
膜が最終仕上げ焼鈍中に変質して被膜改善に寄与すると
考えられることから、この内部酸化膜を焼鈍分離剤条件
に合わせて調節することによって磁気特性や被膜特性が
さらに改善すると考えられるので、これについても検討
を行った。以下、検討内容について説明する。
07mass%、Se:0.02mass%、Al:0.024 mass%、N:0.
0078mass%およびCu:0.14mass%を含有し、かつ副イン
ヒビター元素としてTe:0.010 mass%およびMo:0.035
mass%含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成に
なる珪素鋼スラブを、常法に従い処理して得られた板
厚:0.23mmの冷延板に対して、加熱、均熱領域の露点お
よび雰囲気酸化性(P[H 2O]/P[H2])を種々に変更して
860℃、2分間の脱炭焼鈍を行った。ついで、図1,2
にaで示す粉体特性になるマグネシアを主剤とし、かか
るマグネシアをそのまま、またはこのマグネシア:100
重量部に対し、添加剤として硫酸リチウムを 0.5重量部
(Li換算)添加した焼鈍分離剤をそれぞれ、鋼板の表面
に塗布したのち、乾燥した。この時の塗布条件は、水和
が20℃で30分、目付け量が両面で12g/m2 とした。その
後、最終仕上げ焼鈍として、800 ℃までを46時間かけて
昇温し、 800℃に20時間保定したのち、 800〜1150℃を
25℃/hの平均昇温速度で昇温し、1150〜1200℃での滞留
時間を20時間とする焼鈍を施した。表1に、最終仕上げ
焼鈍後の被膜密着性および磁束密度について調べた結果
を示す。
添加すると共に、脱炭焼鈍の加熱領域の露点を40〜70℃
とし、また雰囲気の水素−水蒸気分圧(P[H2O]/P
[H2])を0.25〜0.70とした時に被膜形成は最も促進さ
れ、良好な被膜が得られた。また、加熱領域の水素−水
蒸気分圧が0.25〜0.70の好適範囲であっても、露点が40
〜70℃の範囲に満たないと、被膜の改善効果はさほど認
められないという特徴的な傾向が認められた。
しも明らかではないが、発明者らは次のように考えてい
る。酸化被膜が形成され始めるのは、脱炭焼鈍時の加熱
領域においてである。従来の考え方では、雰囲気の酸化
性として水素−水蒸気分圧(P[H2O]/P[H2])により内
部酸化膜の形成状態が変化するとされており、これを高
めることにより初期被膜が緻密化され、良好な被膜が得
られることが知られていた。しかしながら、この雰囲気
酸化性(P[H2O]/P[H2])は、平衡状態での酸化物生成
挙動にとっての支配的因子ではあるものの、被膜形成の
ような非平衡状態では雰囲気酸化性以外に水蒸気の量そ
のものが被膜形成に影響を強く及ぼすと考えられる。つ
まり、雰囲気の水素−水蒸気分圧とは別に、雰囲気の露
点そのものを制御することにより初期酸化の性状が決定
されると考えられるのである。
副インヒビターを添加した場合、この副インヒビター成
分の影響により、Si02が地鉄−被膜界面に濃化して粗雑
な被膜が形成され易くなる。これを防ぐために、焼鈍分
離剤中にアルカリ金属を微量添加するが、この効果をさ
らに大きく発揮させるためには脱炭焼鈍時に緻密な酸化
膜を形成させる必要があり、そのために初期酸化被膜を
できるだけ緻密に形成させることが有効で、その手段と
して雰囲気の露点を高めることが効果的なのである。
インヒビターが存在しない場合は、被膜形成が容易に起
こるために露点そのものの影響はさほど生じない。これ
に対し、この発明のように副インヒビターが存在する場
合には、単に加熱領域の雰囲気酸化性のみを制御するの
みでなく、露点そのものをも制御して、これを高めなけ
ればならないのである。そして、このようにして良好な
酸化被膜が形成された場合に、焼鈍分離剤中にアルカリ
金属化合物を微量含有させることにより、一層優れた被
膜が得られるのである。
成や製造方法に関して、この発明の効果を得るための要
件とその範囲および作用について述べる。まず、素材の
成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明す
る。 C:0.01〜0.10mass% Cは、変態を利用して熱延組織を改善するのに有用な元
素であるだけでなく、ゴス方位結晶粒の発生に有用な元
素であり、かかる目的を達成するためには少なくとも0.
01mass%の含有を必要とするが、0.10mass%を超えると
脱炭焼鈍において脱炭不良を起こすので、Cは0.01〜0.
10mass%の範囲に限定した。
α相を安定化させて高温の熱処理を可能とするために必
要な元素であり、少なくとも 1.0mass%の含有を必要と
するが、5.0 mass%を超えると冷延が困難となるので、
Cは 1.0〜5.0mass%の範囲に限定した。
成成分を添加する。かかる主インヒビターとしては、Al
N,BN,MnS,MnSe等がよく知られているが、これら
のいずれを用いてもよく、またこれらを二種以上複合し
て用いてもよい。主インヒビターとして、MnSおよび/
またはMnSeを用いる場合には、Mn:0.03〜0.10mass%、
SとSeの合計量:0.01〜0.03mass%程度とすることが好
ましい。一方、AlNを主インヒビターとして用いる場合
には、Al:0.01〜0.04mass%、N:30〜120ppm、BNを
主インヒビターとして用いる場合には、B:0.001 〜0.
015 mass%、N:30〜120ppm程度とすることが好まし
い。いずれの場合も、含有量が下限に満たないとインヒ
ビターとしての効果に乏しく、一方上限を超えると二次
再結晶が不安定となる。
他に、副インヒビター成分として、Ni:0.01〜1.50mass
%、Sb:0.005 〜0.50mass%、P:0.005 〜0.50mass
%、Cr:0.02〜1.50mass%、Te:0.003 〜1.50mass%、
Bi:0.003 〜1.50mass%およびPb:0.003 〜1.50mass%
のうちから選んだ少なくとも一種を含有させる必要があ
る。これらの元素はいずれも、一次再結晶粒の粒界に優
先的に濃化し、焼鈍中の粒界の移動度を低下させること
によって二次再結晶開始温度を上昇させ、磁束密度を向
上させる作用がある。またこれらは、MnS,MnSe, Cu
2-XS, Cu2-XSe, AlNおよびBNのような析出分散型
の主インヒビターと同時に鋼中に存在させることによ
り、磁気特性の向上により有効に作用する。ここに、上
記した各元素の含有量が、それぞれ下限に満たないと、
上記の粒界への濃化による正常粒成長抑制効果が発揮さ
れず、一方上限を超えて添加するとこの発明の技術をも
ってしても被膜外観の劣化を防止できないため、適正範
囲として上記の範囲に限定した。また、これらは、単独
使用、複合使用のいずれもが可能である。
も、さらに磁気特性や被膜特性を改善するために種々の
元素を添加することができる。かような元素としては、
Cu、Mo、B、VおよびNb等がある。これらはいずれも、
0.005 mass%を下回ると上記の改善効果が小さく、一方
0.5mass%を超えて添加するとかえって製品の磁気特性
および被膜被膜の劣化が生じるため、いずれも0.005〜
0.50mass%の範囲で含有させることが好ましい。
る。上記の好適成分組成に調整された珪素鋼スラブは、
インヒビター成分の固溶のため1350℃以上の高温に加熱
される。しかしながら、窒化等により後工程でインヒビ
ターを補強する場合は、この加熱温度を1280℃以下とす
ることができる。その後、熱間圧延したのち、焼鈍処理
と冷間圧延を組み合わせて最終板厚とし、脱炭焼鈍つい
で最終仕上げ焼鈍を施したのち、絶縁張力コーティング
を焼き付けて製品とする。
含む2回以上の冷間圧延で最終板厚とする方法、 2)熱間圧延後、ノルマ焼鈍を施したのち、1回の冷間
圧延で最終板厚とする方法、 3)熱間圧延後、ノルマ焼鈍を施さずに、中間焼鈍を含
む2回以上の冷間圧延で最終板厚とする方法 があるが、この発明ではこれらいずれの工程を採ること
も可能である。また、ノルマ焼鈍や中間焼鈍で焼鈍雰囲
気を酸化性にして、表層を弱脱炭する処理を施したり、
焼鈍の冷却過程を急冷として鋼中の固溶Cを増加させる
処理や、これに引き続き鋼中に微細炭化物を析出させる
ための低温保持処理を行うことは、製品の磁気特性を向
上させる上で有効である。さらに、冷間圧延を 100〜30
0 ℃の温間で行ったり、パス間での時効処理を施すこと
も磁気特性を向上させるのに有利に作用する。またさら
に、磁区細分化のために、鋼板の圧延方向とほぼ直交す
る向きに線状の溝を複数本設けることは、鉄損のさらな
る向上を図る上で有用である。
晶開始までの間に鋼中に300ppm以下の範囲でNを含ませ
る窒化処理を施す技術も、公知のように抑制力補強のた
めに有効であり、この発明と組み合わせることで被膜特
性と磁気特性の優れた製品を製造することが可能であ
る。
で行う。この時、加熱領域の露点と雰囲気の水素−水蒸
気分圧(P[H2O]/P[H2])をそれぞれ個別に管理して、
露点を40〜70℃、雰囲気の水素−水蒸気分圧(P[H2O]/
P[H2])を0.25〜0.70とすることにより、焼鈍分離剤中
へのアルカリ金属添加と併せて、磁気特性および被膜特
性がより効果的に改善される。露点や雰囲気の水素−水
蒸気分圧が、上記の下限に満たないと初期酸化膜が粗雑
となり、その後の均熱領域でこれがさらに助長される結
果、良好な酸化被膜が得られず、焼鈍分離剤中にアルカ
リ金属化合物を微量添加しても被膜改善効果は限定され
る。一方、これらの値が上限を超えると、酸化鉄を主体
とする過酸化な被膜が形成され、かえって被膜が粗雑と
なり、やはり焼鈍分離剤中にアルカリ金属化合物を微量
添加しても被膜改善効果は限定されたものとなる。
おりである。均熱領域の温度は 750〜900 ℃程度とする
ことが望ましい。というのは、 900℃を超えると一次再
結晶粒の粒成長が進行しすぎて二次再結晶不良となり、
一方750℃未満では逆に一次再結晶粒の粒成長が進まず
に二次再結晶粒方位が不安定となる原因になるからであ
る。昇温速度は室温から 700℃までは5〜80℃/s程度と
することが好ましい。というのは、5℃/sより低いと脱
炭が加熱領域で進行しすぎて望ましい集合組織が得られ
ず、一方80℃/sより速いと初期酸化が不安定となり良好
な被膜形成が行われなくなるからである。均熱時間は20
〜240 s程度とすることが好ましい。というのは、20s
未満では脱炭不良となり、一方 240sを超えると一次再
結晶粒成長が進行していずれも磁気特性劣化の要因とな
るからである。均熱領域の雰囲気酸化性(P[H2O]/P[H
2])は 0.3〜0.85とすることが好ましい。というのは、
0.3 未満では脱炭不良となり磁気特性が劣化し、一方0.
85を超えるとFeOを主体とする過酸化な膜が形成され、
被膜が劣化するからである。露点は40〜80℃程度とする
ことが好ましい。というのは、40℃未満では脱炭不良と
なり、一方80℃を超えると被膜不良となるからである。
なお、均熱領域の露点と雰囲気酸化性(P[H2O]/P
[H2])を個別に管理することは、加熱領域の場合ほど大
きい影響はないが、効果は認められるため、これを行う
ことも可能である。
ために脱炭焼鈍の均熱領域を2段階に分け、前段に比べ
後段をより低露点としたり、高温にすることにより、内
部酸化膜表層を緻密化して良好な被膜を得る方法がある
が、この発明においてもこの方法を用いることにより、
被膜の改善効果を一層高めることができる。この場合に
おける、焼鈍前段の条件は前述したとおりであるが、後
段は前段よりも温度を高める場合には前段よりも10〜10
0 ℃高くする。というのは、10℃より低いと効果がな
く、一方 100℃より高いと一次再結晶が進行しすぎるか
らである。また、前段に比べて後段をより低露点にする
場合には、雰囲気の酸化性(P[H2O]/P[H2])を 0.3以
下とする。というのは、これより大きいと効果がないか
らである。特に後段を前段よりも高温にし、さらに低露
点にすると一層効果が高まる。なお、いずれの場合に
も、後段の均熱時間は5〜60sとする。5s未満では効
果がなく、一方60sを超えると一次粒成長が進みすぎて
二次再結晶不良となるからである。
焼鈍分離剤を塗布する。ここに、焼鈍分離剤は、マグネ
シアを主剤とする。そして、かかるマグネシア中にアル
カリ金属化合物を微量含有させることが、この発明の最
も重要な要件の一つである。アルカリ金属の添加量につ
いては、リチウム化合物であればマグネシア:100重量
部に対してLi換算で0.01〜1.5 重量部、ナトリウム化合
物であればNa換算で0.005〜1重量部、カリウム化合物
であればK換算で 0.001〜0.5 重量部が好適であり、合
計量は 0.001〜1.5 重量部とする必要がある。また、こ
れらは単独添加でも複合添加でもいずれでもかまわな
い。これらのアルカリ金属を上記の範囲で微量添加する
ことにより、緻密なフォルステライトを主体とする被膜
が形成される。しかしながら、添加量が上記した下限値
に満たないと少なすぎて十分な効果が得られず、一方上
限値を超えるとこれらの金属を含む被膜が最終仕上げ焼
鈍途中で形成され、副インヒビター成分によりこの被膜
が損傷を受ける結果、点状の被膜欠陥や被膜密着性の低
下などの被膜不良が生じる。さらに、磁気特性について
も最終仕上げ焼鈍途中で粗雑な被膜となる結果、鋼板が
雰囲気の影響を受けやすくなり、副インヒビター添加に
よる磁性改善効果は失われる。従って、アルカリ金属の
添加量は 0.001〜1.5 重量部の範囲に限定した。
については、CaO含有量が 0.2〜1.2 mass%、ハロゲン
元素含有量が合計で 0.005〜0.10mass%、またCAA
(クエン酸活性度)20%が20〜50s、CAA40%が50〜
110 s、CAA60%が70〜200sの特性を有するものが
とりわけ有利に適合する。ここで、CAAの測定法は、
特公昭57−45472 号公報に記載の方法とした。CaO含有
量が0.2 mass%に満たないと過酸化な被膜が形成され、
一方1.2 mass%を超えると被膜形成量が低下して、いず
れも被膜不良となる。また、ハロゲン含有量が0.005 ma
ss%未満では反応性が低下し、一方0.10mass%を超える
と被膜−地鉄界面に溶融物が生成して、被膜が剥離し易
くなる。
は、副インヒビターを含有した成分で、焼鈍分離剤にア
ルカリ金属を含有させ、被膜改善効果を十分に発現させ
るためには重要な要件である。活性度分布を上記の範囲
に広げることにより、水和が過剰になることを防ぎつ
つ、高い反応性を維持することができる。この点、CA
A20%、40%の値が下限値よりも低いと、水と懸濁して
スラリーとしたときの水和が進行しすぎて仕上げ焼鈍中
に水蒸気が発生して被膜を損傷させる。一方、CAA20
%、40%の値が上限値より高いと、アルカリ金属の存在
下においても反応性が低下して、被膜形成が十分に行わ
れない。また、CAA60%の値が上限値より高いと、焼
結が進行しすぎた粗大なMgO粒子がコイルに塗布される
ことにより、押し疵や点状被膜欠陥のような外観不良が
発生し、一方CAA60%の値が下限値より低いと、水和
が進行しすぎて上述のとおり被膜不良となる。
金属以外の添加剤を含有させることも可能である。これ
は、公知の条件でよく、Mg,Ca,Sr,Ti,Mn,Fe,Cu,
Sn,Sb,Zn,Si,Al等の化合物が用いられる。添加量と
してはマグネシア:100 重量部に対して 0.5〜15重量部
程度が好適である。その他、焼鈍分離剤の塗布量や水和
量は従来どおり、5〜15g/m2(両面)、 0.5〜5%程度
でよい。
知の方法で最終仕上げ焼鈍を施したのち、必要に応じて
張力付与コーティングや絶縁コーティングを鋼板表面に
焼き付け、ついで平坦化焼鈍を施して製品とする。ま
た、磁区細分化による鉄損低減を目的として、平坦化焼
鈍後の鋼板にプラズマジェットやレーザー照射を線状に
施したり、突起ロールによる線状に凹みを設ける処理や
最終冷延後にエッチングなどにより圧延方向とほぼ直行
する溝を形成させる処理を施すこともできる。さらに、
最終仕上げ焼鈍後、ゾルゲル法、TiN蒸着など公知の方
法で張力被膜を形成させる技術を組み合わせることも鉄
損低減のために有効である。
P:0.003 mass%、S:0.003 mass%、Al:0.023mass
%、Se:0.020 mass%、Cu:0.05mass%およびN:0.00
82mass%を含有し、かつ副インヒビターとしてNi:0.02
0 mass%およびSb:0.040 mass%を含有し、残部はFeお
よび不可避的不純物の組成になる珪素鋼スラブを、ガス
加熱炉に装入して1230℃まで加熱し、60分保定後、誘導
加熱により1400℃、30分間の加熱を施したのち、熱間圧
延により 2.5mm厚の熱延板とした。ついで、1000℃,1
分の熱延板焼鈍後、酸洗し、一次冷間圧延により厚さ:
1.6mmとしたのち、1000℃、1分間の中間焼鈍を施して
から、酸洗後、最高到達温度:220 ℃の二次冷間圧延に
よって0.23mmの最終板厚とした。ついで、加熱領域の露
点:58℃、雰囲気酸化性(P[H2O]/P[H2]):0.40の条
件で 850℃まで加熱し、引き続き均熱領域の露点:59
℃、雰囲気酸化性(P[H2O]/P[H2]):0.45の条件で 8
50℃, 100 秒間の均熱を行う脱炭焼鈍を施した後、焼鈍
分離剤を鋼板両面当たり:14g/m2塗布してから、コイル
に巻き取った。この時、焼鈍分離剤の主剤としては、前
掲図1,2にa〜fで示す粉体特性になる種々のマグネ
シアを用い、また添加剤として炭酸リチウムを、マグネ
シア:100 重量部に対して0または0.1重量部、酸化チ
タンを4重量部(いずれも金属換算)含有させた。その
後、800 ℃までを46時間かけて昇温し、この温度に20時
間保定したのち、 800〜1150℃を25℃/hの平均昇温速度
で昇温し、1150〜1200℃の滞留時間を20時間とする最終
仕上げ焼鈍を施した。ついで、未反応の焼鈍分離剤を水
洗により除去したのち、コロイダルシリカを含有するリ
ン酸マグネシウムを主成分とする絶縁張力コーティング
を塗布し、平坦化焼鈍の後、製品板とした。
長さ:500mm 、圧延直角方向の長さ:500mm の試片を採
取し、SST(単板磁気試験器)による磁気測定を行っ
た。また、被膜外観および被膜密着性の測定を行った。
鈍分離剤としてマグネシア中に適正量の炭酸リチウムを
添加した場合には、被膜外観および被膜密着性に優れる
だけでなく、磁気特性にも優れた製品板を得ることがで
きた。
P:0.002 mass%、S:0.002 mass%、Al:0.025 mass
%、Cu:0.10mass%およびN:0.0082mass%を含有し、
かつ副インヒビターとしてCr:0.06mass%およびPb:0.
010 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の
組成になる珪素鋼スラブを、ガス加熱炉で1200℃、60分
加熱し、ついで誘導加熱炉で1380℃、30分間の加熱を施
したのち、熱間圧延により2.2 mm厚の熱延板とした。つ
いで、 950℃, 1分の熱延板焼鈍後、酸洗し、一次冷間
圧延により厚さ:1.5 mmとしたのち、1050℃、1分間の
中間焼鈍を施してから、酸洗後、最高板温:210 ℃の二
次冷間圧延により0.23mmの最終板厚とした。次に、レジ
ストエッチングにより、圧延方向との角度:75°、圧延
方向における間隔:3.5 mm、深さ:12μm 、幅:70μm
の線状溝を形成した後、加熱領域の露点:59℃、雰囲気
酸化性(P[H2O]/P[H2]):0.44の条件で 850℃まで加
熱し、ついで均熱領域前段の露点:59℃、雰囲気酸化性
(P[H2O]/P[H 2]):0.46の条件で 850℃, 100 秒間の
処理後、引き続き均熱領域後段について雰囲気酸化性
(P[H2O]/P[H2]):0.15の条件で 880℃, 20秒間処理
する脱炭焼鈍を施した。また、比較のため、後段の保定
焼鈍を行わない条件で脱炭焼鈍を施した。ついで、焼鈍
分離剤として、図1, 2にcで示す粉体特性になるマグ
ネシアを主剤とし、かかるマグネシアをそのまま、また
はこのマグネシア:100 重量部に対し、添加剤としてリ
ン酸ナトリウムをNa換算で0.05重量部添加したものを鋼
板の表面に塗布した後、乾燥した。この時の塗布条件
は、水和が20℃で30分、目付け量が両面で14g/m2とし
た。その後、700 ℃まで40時間かけて昇温したのち、 7
00〜1150℃間を25℃/hの平均昇温速度で昇温し、1150〜
1200℃の滞留時間を20時間とする最終仕上げ焼鈍を施し
た。ついで、未反応の分離剤を水洗により除去した後、
コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成
分とする絶縁張力コーティングを塗布し、平坦化焼鈍の
後、製品とした。
長さ:500mm 、圧延直角方向の長さ:500mm の試片を採
取し、SST(単板磁気試験器)による磁気測定を行っ
た。また、被膜外観および被膜密着性の測定を行った。
得られた結果を表3に示す。
鈍分離剤としてマグネシア中に適正量のリン酸ナトリウ
ムを添加した場合には、被膜外観および被膜密着性に優
れるだけでなく、磁気特性にも優れた製品板が得られて
いる。特に、脱炭焼鈍の後段を高温・低露点とすること
により、一層優れた被膜外観・密着性および磁気特性を
得ることができた。
S:0.003 mass%、B:0.008 mass%、Se:0.020 mass
%およびN:0.0082mass%を含有し.かつ副インヒビタ
ーとしてBi:0.022 mass%およびP:0.08mass%を含有
し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる珪素鋼
スラブを、誘導加熱により1410℃、30分間加熱したの
ち、熱間圧延により2.2 mm厚の熱延板とした。ついで、
1050℃, l分の熱延板焼鈍後、酸洗し、最高板温:200
℃の冷間圧延を施して厚さ:0.27mmの最終板厚としたの
ち、加熱領域の露点:55℃、雰囲気酸化性(P[H2O]/P
[H2]):0.37の条件で 830℃まで加熱し、ついで均熱領
域の露点:59℃、雰囲気酸化性(P[H2O]/P[H2]):0.
46の条件で 830℃, 100 秒間の均熱を行う脱炭焼鈍を施
した。その後、焼鈍分離剤の主剤として、不純物として
のNa含有量が0.003 mass%、CaO含有量が0.4 mass%、
ハロゲン元素含有量が0.025 mass%で、CAA20%が28
s、CAA40%が62s、CAA60%が89sのマグネシア
を用い、このマグネシアに種々の助剤を添加して、水
和:20℃, 30分、目付け量(両面):14g/m2で塗布し
た。ついで、800 ℃までを46時間かけて昇温し、800 ℃
で20時間保定したのち、 800〜1150℃を25℃/hの平均昇
温速度で昇温し、1150〜1200℃の滞留時間を20時間とす
る最終仕上げ焼鈍を施した。ついで、未反応の焼鈍分離
剤を水洗により除去したのち、コロイダルシリカを含有
するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁張力コーテ
ィングを塗布し、平坦化焼鈍の後、製品とした。
長さ:500mm 、圧延直角方向の長さ:500mm の試片を採
取し、SST(単板磁気試験器)による磁気測定を行っ
た。また、被膜外観および被膜密着性の測定を行った。
得られた結果を表4に示す。
グネシア中に適正量のアルカリ金属化合物を添加した焼
鈍分離剤を用いた場合には、被膜外観および被膜密着性
に優れるだけでなく、磁気特性にも優れた製品板を得る
ことができた。
インヒビター成分を含有する場合であっても、被膜特性
に優れ、かつ磁気特性に優れる方向性電磁鋼板を安定し
て製造することができる。
ある。
度と焼鈍分離剤中のNa濃度との関係で示す図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 C:0.01〜0.10mass%およびSi:1.0 〜
5.0 mass%を含み、かつ主インヒビター成分として窒化
物、硫化物およびセレン化物のうちの少なくともいずれ
か一種を形成する成分を含有すると共に、副インヒビタ
ー成分を含有する組成になる珪素鋼スラブを、熱間圧延
し、ついで焼鈍処理を含む1回または2回以上の冷間圧
延で最終板厚にしたのち、一次再結晶焼鈍を施し、つい
で焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布してから、最終仕上げ焼
鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法
において、 副インヒビター成分として、Ni:0.01〜1.50mass%、S
b:0.005 〜0.50mass%、P:0.005 〜0.50mass%、C
r:0.02〜1.50mass%、Te:0.003 〜1.50mass%、Bi:
0.003 〜1.50mass%およびPb:0.003 〜1.50mass%のう
ちから選んだ少なくとも一種を含有させると共に、 マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤中に、アルカリ金属
化合物を、マグネシア:100 重量部に対し該金属換算で
0.001〜1.5 重量部含有させることを特徴とする磁気特
性および被膜特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項2】 前記アルカリ金属化合物が、該金属換算
で、リチウム化合物:0.01〜1.5 重量部、ナトリウム化
合物:0.001 〜1.0 重量部およびカリウム化合物:0.00
1 〜1.5 重量部のうちから選んだ一種または二種以上
で、かつこれらの合計量:0.001 〜1.5 重量部であるこ
とを特徴とする請求項1記載の方向性電磁鋼板の製造方
法。 - 【請求項3】 前記マグネシアの粉体特性として、CaO
含有量が 0.2〜1.2 mass%、ハロゲン元素含有量が合計
で 0.005〜0.10mass%であり、またCAA(クエン酸活
性度)20%が20〜50s、CAA40%が50〜110 s、CA
A60%が70〜200sであることを特徴とする請求項1ま
たは2記載の方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 前記脱炭焼鈍工程を水蒸気およびH2を含
む雰囲気中で行い、加熱領域の露点を40〜70℃の範囲に
規制した上で、雰囲気の水素−水蒸気分圧(P[H 2O]/P
[H2])が0.25〜0.70となるようにH2分圧を調整すること
を特徴とする請求項1,2または3記載の方向性電磁鋼
板の製造方法。 - 【請求項5】 前記脱炭焼鈍工程における均熱領域を2
段階に分け、前段部と後段部で雰囲気および/または温
度を変更することを特徴とする請求項4記載の方向性電
磁鋼板の製造方法。
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