JP3357602B2 - 磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法

Info

Publication number
JP3357602B2
JP3357602B2 JP13338698A JP13338698A JP3357602B2 JP 3357602 B2 JP3357602 B2 JP 3357602B2 JP 13338698 A JP13338698 A JP 13338698A JP 13338698 A JP13338698 A JP 13338698A JP 3357602 B2 JP3357602 B2 JP 3357602B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
annealing
grain
steel sheet
electrical steel
magnetic properties
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP13338698A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH11323438A (ja
Inventor
邦浩 千田
俊人 高宮
光正 黒沢
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP13338698A priority Critical patent/JP3357602B2/ja
Priority to US09/309,240 priority patent/US6280534B1/en
Priority to EP99109527A priority patent/EP0957180A2/en
Priority to KR1019990017273A priority patent/KR100580356B1/ko
Publication of JPH11323438A publication Critical patent/JPH11323438A/ja
Priority to US09/908,136 priority patent/US20020005231A1/en
Application granted granted Critical
Publication of JP3357602B2 publication Critical patent/JP3357602B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、変圧器やその他
の電気機器の鉄心に用いて好適な方向性電磁鋼板の製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】変圧器や発電機、回転機の鉄心材料とし
て使用される方向性電磁鋼板には、高磁束密度かつ低鉄
損であることが最も重要な特性として要求される。今日
まで方向性電磁鋼板の低鉄損化を実現するために様々な
手段が講じられてきたが、そのなかでも結晶方位を、ゴ
ス方位と呼ばれる{110}〈001〉方位に高度に集
積させることは、最も重要視されてきた開発目標のひと
つである。というのは、鉄結晶の磁化容易軸方向である
結晶方位〈001〉が圧延方向に高度に集積することに
より、圧延方向への磁化に要する磁化力が小さくなり、
保磁力が低下するためにヒステリシス損が低下し、よっ
て鉄損を低下させることができるからである。
【0003】また、結晶方位をゴス方位に揃えること
は、方向性電磁鋼板の重要な要求特性である磁化した際
の騒音が小さいことも大いに向上する。すなわち、変圧
器から生じる騒音の原因として、鉄心素材の磁歪振動や
電磁振動があることが知られているが、結晶方位のゴス
方位への集積度が向上することにより、この磁歪振動の
原因となる90°磁区の生成が抑制されると同時に、励磁
電流が低下して電磁振動が抑制され、これらの結果とし
て、騒音が低減される。
【0004】以上のように、方向性電磁鋼板にとって結
晶方位〈001〉を圧延方向へ集積させることは最も重
要な課題であるといえる。ここで、結晶方位の集積度の
指標としては、B8(磁化力800A/mにおける磁束密度)が
用いられる場合が多く、そのため、方向性電磁鋼板の開
発はB8の向上を大きな目標として推進されている。ま
た、鉄損特性の指標としては、励磁磁束密度1.7 T 、励
磁周波数50Hzの場合のエネルギー損失であるW17/50が代
表的に使用される。
【0005】このような方向性電磁鋼板のゴス方位に集
積させた結晶粒組織は、最終仕上げ焼鈍中の二次再結晶
と呼ばれる現象を通じて形成される。この二次再結晶に
よりゴス方位の結晶粒を優先的に巨大成長させて集積度
を高め、所望の磁気特性を有する製品を得ている。
【0006】上記の二次再結晶粒の集積を効果的に促進
させるためには、一次再結晶粒の成長を選択的に抑制す
るインヒビターと呼ばれる析出分散相を、鋼中に均一か
つ適正なサイズで形成することが重要である。このイン
ヒビターの存在により一次再結晶粒の正常粒成長が抑制
され、仕上げ焼鈍中に高温まで細かい一次再結晶粒の状
態が保たれるとともに、良好な方位の結晶粒の成長に対
する選択性が高まるため、ゴス方位結晶粒の集積度が高
まり、高磁束密度が実現される。一般に、インヒビター
が強力で正常粒成長抑制力が強いほど、高い方位集積度
が得られると考えられている。
【0007】このようなインヒビターとしては、MnS, M
nSe, Cu2-xS, Cu2-xSe, AlN 等、鋼への溶解度の小さい
物質が用いられる。例えば、特公昭33-4710 号公報や、
特公昭40-15644号公報には、素材中にAlを含有させ、最
終冷延圧下率を81〜95%の高圧下とするとともに最終冷
延前に焼鈍を施すことによって、強力なインヒビターで
あるAlN を析出させる技術が開示されている。
【0008】また、上記のインヒビター成分に加えて、
Sn, As, Bi, Sb, B,Pb, Mo, Te,V, Ge等を付加的に
添加することは、二次再結晶粒の方位集積度の向上に対
して有効であることが知られている。
【0009】これらの付加的インヒビター成分のなか
で、元素の周期律表で5B族元素に分類されるP,As, S
b, Biは、結晶粒界に偏析することで、主インヒビター
であるMnS, MnSe, Cu2-xS, Cu2-xSe, AlN 等と共同して
正常粒成長抑制力を強化し、磁気特性を高めることが知
られている。そして、これらの成分の中でも、特にBiは
鉄に対する溶解度が低いことから、粒界偏析効果による
正常粒成長抑制力強化成分として有望視されている。
【0010】このBi添加による磁気特性向上技術として
は、特公昭51-29496号公報や特公昭54-32412号公報に開
示されている技術などが公知である。また、特公昭62-5
6924号公報や特再平2-813673号公報、特公平7-62176 号
公報には、AlN, MnSe, MnS等とBiを複合的に鋼中に添加
する方法が開示されている。これらの技術は、確かにBi
による抑制力強化作用を利用してはいるが、Biを添加し
た素材に対する最適な製造条件を確立するには至ってお
らず、高い磁気特性を有する方向性電磁鋼板を安定的に
得るには不十分であった。
【0011】同様に、特開平6-88171 号公報、特開平6-
88172 号公報、特開平6-88173 号公報、特開平6-88174
号公報等には、Al系のインヒビターにBiを付加させるこ
とにより、磁束密度の大幅な向上が可能であると述べら
れているが、Biの添加の効果自体は従来より公知である
ばかりでなく、磁気特性向上効果を安定的に引き出すに
は至っていない。
【0012】また、Biを添加した材料の脱炭焼鈍に関す
る技術について、例えば特開平6-158169号公報に開示が
ある。しかし、この特開平6-158169号公報に開示の技術
においてBiは、低S, Se含有材を低温でスラブ加熱し、
一次再結晶組織及び被膜改善のために脱炭焼鈍後段を還
元性の雰囲気とする製造方法における、二次再結晶を安
定化させるための成分としてしか位置づけられてない。
また、この特開平6-158169号公報に開示の技術では被膜
の改善を意図して脱炭焼鈍後段雰囲気の規定がなされて
いるのみであるから、Bi添加材の二次再結晶を安定化さ
せるための脱炭焼鈍方法としては不十分である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】方向性電磁鋼板の磁気
特性の向上に対してBiの添加は非常に有望な方法である
と考えられているものの、その一方で、Biの添加は、種
々の要因により鋼板の二次再結晶不良を生じやすく、よ
って高い磁気特性を安定的に得ることが困難であるとい
う問題点を残していた。この発明は、Biを添加した方向
性電磁鋼板の二次再結晶を安定させ、透磁率と鉄損に優
れる方向性電磁鋼板を製造することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】発明者らは上記の問題を
解決すべく、鋭意研究を行った結果、Biを含有させた材
料では、熱延などの上工程の製造条件のみならず、脱炭
焼鈍条件の適正化が重要であり、特に、かかるBiを含有
させた方向性電磁鋼板素材に対して、脱炭焼鈍の雰囲気
を適正に制御することにより磁気特性の高位安定化が可
能であることを見出し、この発明に至った。
【0015】この発明は、 C:0.03〜0.10wt%, Si:2.0 〜5.0 wt%, Mn:0.04〜0.15wt%, S及びSeのうちから選んだ1種又は2種:0.01〜0.03wt
%, sol.Al:0.015 〜0.035 wt%, N:0.0050〜0.010 wt% を含み、かつ、 Bi:0.001 〜0.07wt% を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる
けい素鋼スラブを1300℃以上の温度に加熱したのち、熱
間圧延し、次いで焼鈍処理と冷間圧延処理とを組み合わ
せて最終板厚にしたのち、脱炭焼鈍を施し、次いで最終
仕上げ焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の
製造方法において、熱間圧延終了直後から5秒後までの
熱延板の平均冷却速度を30℃/秒〜120 ℃/秒に制御す
るとともに、脱炭焼鈍の均熱温度を800 ℃から900 ℃の
範囲とし、均熱過程における雰囲気中の水素分圧に対す
る水蒸気分圧の比: PH2O /PH2を0.45〜0.70とすること
を特徴とする磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方
法である。またこの発明では、さらに、けい素鋼スラブ
中にインヒビター成分として、 Sb:0.001 〜0.10wt%, As:0.001 〜0.10wt%, Mo:0.001 〜0.20wt%, Cu:0.01〜0.30wt%, P:0.010 〜0.030 wt%, Sn:0.005 〜0.20wt%, Ge:0.005 〜0.20wt%, B:0.0010〜0.010 wt%, V:0.005 〜0.10wt%, Nb:0.005 〜0.10wt%および Te:0.005 〜0.10wt% のうちから選んだ1種または2種以上を含有させること
ができる。
【0016】この発明においては、・脱炭焼鈍の昇温過
程における PH2O /PH2を均熱過程における PH2O /PH2
り低くすること、・脱炭焼鈍の昇温過程における雰囲気
中の PH2O /PH2を、脱炭焼鈍の均熱過程における雰囲気
中の PH2O /PH2との関係で、下記の式(1) X2−0.25≦X1≦X2−0.05‥‥‥‥‥(1) ここに、X1:昇温過程における雰囲気中の PH2O /PH2 X2:均熱過程における雰囲気中の PH2O /PH2 に適合する範囲内とすること、及び・脱炭焼鈍の均熱過
程に引き続き、脱炭焼鈍の後段部を設け、この後段部の
温度を 820〜920 ℃、後段部の雰囲気中の PH2O /PH2
0.15以下、この後段部の滞留時間を5〜200 秒とするこ
とが、より好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、この発明に至る実験の詳細
を示す。 (実験1) 主要成分として、C:0.06wt%, Si:3.2 wt%, Mn:0.
07wt%, Se:0.02wt%, S:0.005 wt%, Al:0.022 wt
%, N:0.0085wt%含有し、かつBiを0.035 wt%含有
し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼塊を
1400℃に加熱し、30分間保持したのち、熱間圧延を施し
て2.5 mmの板厚とした。この際、熱間圧延終了直後から
5秒後までの熱延板の平均冷却速度を20℃/秒及び40℃
/秒の二種類とした。続いて1000℃で30秒の熱延板焼鈍
を施し、酸洗後、一次冷間圧延を施して1.6 mm厚の鋼板
とした。続いて1100℃で1分間の中間焼鈍を施し、これ
を酸洗してから、二次冷間圧延により0.23mmの最終板厚
とした。続いて、均熱温度850 ℃,100 秒の脱炭焼鈍を
行った。このとき、均熱過程の雰囲気中の水素分圧に対
する水蒸気分圧の比(酸化ポテンシャル) PH2O /PH2
0.30〜0.80の範囲で種々に変化させ、昇温過程の PH2O
/PH2も均熱過程と同じ値とした。これらの材料にMgO を
主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、最高到達温度
1200℃,5時間の仕上げ焼鈍を施した。以上の工程によ
り得られた仕上げ焼鈍板から試験片(幅30mm,長さ280
mm) 8枚を採取し、エプスタイン試験法により磁束密度
B8を測定した。
【0018】図1に昇温過程及び均熱過程の PH2O /PH2
と磁束密度B8との関係を示す。この図から、熱延終了直
後の冷却速度を高くし、さらに脱炭焼鈍雰囲気の PH2O
/PH2を0.45〜0.7 の範囲に制御することでB8≧1.965 T
の高いB8が得られることが明らかになった。一方、 P
H2O /PH2が0.45〜0.7 の範囲内であっても、熱延終了直
後の冷却速度が低い場合、得られるB8が低く、その値も
安定していない。
【0019】(実験2)実験1と同様の工程において、
熱延終了直後(5秒間)の冷却速度を60℃/秒とし、脱
炭焼鈍の均熱過程の PH2O /PH2を0.35〜0.80の範囲で種
々に変化させ、かつ、脱炭焼鈍の昇温過程の雰囲気を均
熱過程とは独立に制御して、この昇温過程における P
H2O /PH2を0.20〜0.75の範囲で変化させた。ここに、昇
温過程は板温度255 ℃〜765 ℃に相当する炉内領域と
し、この領域での平均の PH2O /PH2を測定して昇温過程
の PH2O /PH2とした。
【0020】図2に昇温過程の雰囲気の PH2O /PH2とB8
の関係を均熱過程の PH2O /PH2=0.40、0.50及び0.60の
場合について示す。実験1と同様に均熱過程の PH2O /P
H2が0.5 もしくは0.6 の場合に高い磁束密度が得られて
いるが、同時に昇温過程の P H2O /PH2を均熱過程の P
H2O /PH2よりも低くすることにより、さらにB8が向上し
ている。
【0021】図3に昇温過程及び均熱過程の PH2O /PH2
と仕上げ焼鈍後のB8の関係を示す。図3から、脱炭焼鈍
の昇温過程の PH2O /PH2を均熱過程の PH2O /PH2よりも
0.05〜0.25程度低くすることでB8が1.97 Tを超える極め
て高い磁束密度が得られていることが分かる。
【0022】この実験から、脱炭焼鈍の加熱過程の P
H2O /PH2を均熱過程の PH2O /PH2よりも低い一定範囲の
値とすることにより、さらに優れた磁気特性が得られる
ことが明らかになった。
【0023】(実験3)実験1と同様の条件にて、脱炭
焼鈍の均熱温度と製品の磁気特性の関係を調べた。この
実験で、熱延終了直後(5秒間)の平均冷却速度は60℃
/秒とした。図4には、脱炭焼鈍の昇温過程の PH2O /P
H2を0.40、均熱過程の PH2O /PH2を0.60とし、均熱温度
を750 ℃〜950 ℃としたときの磁束密度B8の変化を示
す。脱炭焼鈍の均熱温度を800 ℃〜900 ℃とすることに
より、安定した高い磁束密度が得られている。
【0024】(実験4)実験1と同様の条件にて、熱延
終了後の冷却速度と製品の磁気特性の関係を調べた。熱
延終了直後から5秒間の平均冷却速度と磁束密度B8の関
係を図5に示す。この実験では、脱炭焼鈍での昇温過程
の PH2O /PH2を0.40、均熱過程の PH2O/PH2を0.60と
し、均熱温度を850 ℃とした。図5から、熱延終了直後
の冷却速度を30〜120 ℃/秒に制御することにより、安
定して高い磁束密度が得られることが分かる。熱延直後
の冷却速度が120 ℃/sを超えた場合、熱延板の形状不良
が顕著になった。
【0025】(実験5)実験1と同様の条件にて素材へ
のBi添加量と製品の磁気特性の関係を調べた。このと
き、脱炭焼鈍の均熱過程の PH2O /PH2=0.55、昇温過程
の PH2O /PH2=0.35とした。図6に素材Bi量と磁束密度
B8の関係を示す。図6からBi添加量0.001〜0.07wt%の
範囲で磁束密度の向上効果が顕著であることが分かる。
【0026】(実験6) 実験1と同様の条件(熱延直後の冷却速度60℃/秒、均
熱温度850 ℃)において、脱炭焼鈍の均熱過程の PH2O
/PH2を0.60又は0.30、引き続く脱炭焼鈍後段(20秒)の
PH2O /PH2を0.05又は均熱過程と同じ値とし、この領域
の温度を 770℃〜970 ℃の範囲で変化させた。図7に脱
炭焼鈍の後段温度とB8の関係を示す。脱炭焼鈍後段の温
度を 820℃〜920 ℃の範囲内とし、この領域の PH2O /P
H2を0.05とすることにより、このような脱炭焼鈍後段の
処理を施さない場合に比べてB8が向上している。ただ
し、脱炭焼鈍の均熱過程の PH2O /PH2が0.30程度である
場合は後段の処理の有無に拘わらず、B8は低いレベルに
ある。この実験より、脱炭焼鈍の均熱過程の PH2O /PH2
を0.45〜0.70の範囲内とすると同時に、後段に還元性の
雰囲気帯を設けることにより、昇温過程の雰囲気を低酸
化性側に制御するのと同等に磁束密度が向上することが
明らかになった。
【0027】以上の結果から、Biを添加した材料に関し
て、熱延時の冷却条件とともに脱炭焼鈍の雰囲気と温度
を適正に制御することにより、高い磁束密度が得られる
ことが判明し、この発明に至った。
【0028】以下、この発明において、素材の成分組成
を前記の範囲に限定した理由について説明する。まず、
この発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる素材の成分組
成範囲の限定理由について説明する。
【0029】(C:0.03〜0.10wt%)Cは変態を利用し
て熱延組織を改善するのに有用な成分であるとともに、
ゴス方位結晶粒の発生に有用な成分であり、かかる作用
を十分に発揮させるためには0.03wt%以上の含有を必要
とするが、0.10wt%を超える含有量では脱炭焼鈍での脱
炭が十分行われず、製品の磁気特性を劣化させるので、
Cは0.03〜0.10wt%の範囲に限定した。 (Si:2.0 〜5.0 wt%)Siは、電気抵抗を高めて鉄損を
低下させるとともに、鉄のBCC 組織を安定化させて高温
の熱処理を可能とするために必要な成分であり、そのた
めには少なくとも2.0 wt%を必要とするが、5.0 wt%を
超える含有量では冷間圧延が困難となるので、2.0 〜5.
0 wt%に限定した。
【0030】(Mn:0.04〜0.15wt%)Mnは鋼の熱間脆性
の改善に有効に寄与するだけでなく、SやSeが混在して
いる場合には、MnS やMnSe等の析出物を形成し抑制剤
(インヒビター)としての機能を発揮する。Mnの含有量
が0.04wt%より少ないと上記の効果が不十分であり、一
方、0.15wt%を超えるとMnSe等の析出物の粒径が粗大化
してインヒビターとしての効果が失われるため、Mnは0.
04〜0.15wt%の範囲に限定した。 (S及び/又はSe:0.01〜0.03wt%)Se又はSは、Mnや
Cuと結合してMnSe,MnS, Cu2-xSe,Cu2-x S を形成し、
鋼中の分散第二相としてインヒビターの作用を発揮する
有用成分である。これらSe,Sの合計の含有量が0.01wt
%に満たないとその添加効果に乏しく、一方、0.04wt%
を超える場合はスラブ加熱時の固溶が不完全となるだけ
でなく、製品表面の欠陥の原因ともなるため、単独添加
または複合添加いずれの場合も0.01〜0.03wt%の範囲に
限定した。
【0031】(sol.Al:0.015 〜0.035 wt%) Alは鋼中でAlN を形成して分散第二相としてインヒビタ
ーの作用をする有用成分であるが、添加量が0.015 wt%
に満たないと十分に析出量が確保できず、一方、0.035
wt%を超えて添加するとAlN が粗大に析出してインヒビ
ターとしての作用が失われるため、sol.Alとして 0.015
〜0.035 wt%の範囲に限定した。(N:0.0050〜0.010
wt%)NもAlと同様にAlN を形成するために必要な成分
である。添加量が0.0050wt%を下回るとAlN の析出が不
十分であり、0.010 wt%を超えて添加するとスラ加熱
時にふくれ等を生じるため、0.0050〜0.010 wt%の範囲
に限定した。
【0032】(Bi:0.001 〜0.070 wt%) Biは1次再結晶粒の粒界に優先的に濃化し、焼鈍中の粒
界の移動度を低下させることにより正常粒成長を抑制
し、磁束密度を向上させる作用がある。このような効果
はSb, As等と類似であるが、Biは鉄に対する溶解度が特
に低く、かつ融点が271 ℃と非常に低いため、Sb, Asと
比較して粒界に偏析する作用が高いと考えられる。この
ために正常粒成長抑制力の付与効果が高く、方位集積度
向上に有効に作用すると考えられる。またBiは、Sb等と
同様に、粒界偏析型の抑制力強化成分であるために、Mn
Se, MnS あるいは AlN+(MnSe, MnS) のようなインヒビ
ー系を用いた方向性電磁鋼板の磁気特性を一律に向上
させる効果を有すると考えられる。ここに、Biの添加含
有量に関しては、0.001 wt%に満たないと、上記の粒界
偏析による正常粒成長抑制効果が発揮されないため、添
加量を0.001 wt%以上とした。また、Biは鉄に対する溶
解度が非常に低いため、0.07wt%を超えて添加させるこ
とが難しいので、添加量の上限を0.07wt%とした。
【0033】以上、必須成分について説明したが、この
他にも抑制力の補強のために、Sb,As, Mo, Cu, P,Sn,
Ge, B,Te, V, Nb等を単独もしくは複合的に添加す
ることは磁気特性をさらに向上させるために有効であ
る。Sb, Asは、Biと同様に粒界に偏析して抑制力を高め
る効果を有しており、いずれも0.001 〜0.10wt%の範囲
で添加することが望ましい。Moは二次粒の核をゴス方位
に先鋭化させる効果を有し、0.001 〜0.20wt%の範囲で
その効果が顕著である。CuはMnと同様、SeやSと結合し
て、析出物を形成し抑制力を高める成分であり、その効
果は0.01〜0.30wt%の範囲で顕著である。PはSbと同
様、粒界に偏析して抑制力を高める成分であるが、0.01
0 wt%未満では添加効果に乏しく、一方0.030 wt%を超
えると磁気特性、表面性状を不安定化させるので、0.01
0 〜0.030 wt%とすることが好ましい。Sn, Geは、二次
再結晶粒の生成頻度を高めることによって鉄損の低減に
有効に作用する成分であり、いずれも0.005 〜0.20wt%
の範囲で含有させることがよい。また、B,Te,V,Nb
は鋼中でBN,MnTe, VN, NbN, NbC等の析出物を形成する
ことによって正常粒成長抑制力をさらに高める働きがあ
り、Bにあっては0.0010〜0.010 wt%の範囲で、また、
V,Nb,Teはそれぞれ0.005 〜0.10wt%の範囲で添加さ
せることが望ましい。
【0034】なお上記の各成分において、C,S,Se,
N,Al,P,Te等は各機能を果たした後、Cは主として
脱炭焼鈍において、またS,Se,N,Al,Pは仕上げ焼
鈍後半の純化焼鈍において除去されるので、製品の地鉄
中には不純物として残存することはほとんどない。
【0035】次に、この発明の主要な製造工程について
説明する。この発明では、Biを含有する方向性電磁板ス
ラブ素材を熱間圧延する場合に、圧延終了後から5秒間
の平均冷却速度を30〜120 ℃/秒の範囲とし、脱炭焼鈍
の均熱温度を800 ℃〜900 ℃の範囲に限定するととも
に、脱炭焼鈍の均熱過程の P H2O /PH2を0.45〜0.70と
し、さらに望ましくは脱炭焼鈍の昇温過程の PH2O /PH2
を均熱過程の PH2O /PH2よりも低い一定範囲の値に制御
するか、もしくは脱炭焼鈍の後段に還元性の雰囲気帯を
設けることにより、安定して磁気特性に優れた製品を得
ようとするものであるが、上記の熱延直後の冷却速度と
脱炭焼鈍に関する限定範囲は、先に説明した図1〜7に
示した実験結果に基づいている。
【0036】製造条件を上記の範囲に限定することによ
り、所望の効果が得られる理由は必ずしも明らかでない
が、以下のように推察される。まず、熱延条件に関して
は、熱延時の冷却速度が十分でない場合、熱延板内部で
Biが均一に分散せず、このため素材の抑制力の劣化や不
均一化が起こるため、磁気特性が不安定になると考えら
れる。このため、熱延直後(5秒間)の平均冷却速度は
30℃/秒以上が必要である。一方、熱延直後から5秒間
の冷却速度が120 ℃/秒を超えると鋼帯の形状不良が生
じやすいため、上限を120 ℃/秒とする。
【0037】続いて、脱炭雰囲気の条件について述べ
る。Biを添加した材料の二次再結晶は、仕上げ焼鈍中の
雰囲気の影響を受けやすいことが発明者らの研究により
明らかになっているが、脱炭焼鈍の均熱過程の PH2O /P
H2を通常よりも高く保つことにより、脱炭焼鈍板のサ
スケール(表面酸化層)が十分に形成され、板厚表層部
のBiの酸化が抑制されるため、二次再結晶が安定になる
と考えられる。一方、 PH2O /PH2が高くなりすぎるとサ
ブスケールが不均一化するため、再びBiの酸化を促進す
ると予想される。このような理由から、均熱過程の P
H2O /PH2を0.45〜0.70とする必要があると考えられる。
【0038】また、脱炭焼鈍の均熱温度は、脱炭性及び
脱炭焼鈍板の一次粒径に影響を与えると考えられ、この
均熱温度を、800 ℃から900 ℃の範囲とすることによ
り、鋼中の炭素が十分に除去されるとともに、脱炭焼鈍
板の一次粒径が二次再結晶にとって適正な値となること
から、安定して高い磁束密度が得られると考えられる。
そして、脱炭焼鈍時の均熱温度が800 ℃に満たない場
合、また、900 ℃を超える場合には、鋼中に残留する炭
素が多くなるとともに、一次粒径が過小又は過大となっ
て理想的な二次再結晶組織が得られず、製品の磁気特性
が劣化する。このような理由から、脱炭焼鈍時の均熱温
度を800 〜900 ℃の範囲にする必要があると考えられ
る。
【0039】また、脱炭焼鈍の昇温過程の PH2O /PH2
均熱過程の PH2O /PH2よりも低くし、さらには均熱過程
の PH2O /PH2よりも一定値だけ低い値とすることで、脱
炭焼鈍板のサブスケールの均一性が向上し、前述の表層
Biの酸化抑制効果が高まることで磁束密度が向上すると
考えられる。このような効果を得るために、昇温過程の
PH2O /PH2を均熱過程の PH2O /PH2よりも低くし、さら
に望ましくは昇温過程における雰囲気中の PH2O /PH2
X1、均熱過程における雰囲気中の PH2O /PH2をX2とする
とき、X2−0.25≦X1≦X2−0.05を満足する範囲内に制御
するのがよい。なお、昇温過程の雰囲気の PH2O /PH2
評価方法としては、例えば、均熱温度(摂氏)の30%〜
90%程度の温度域に相当する領域の PH2O /PH2の平均値
をとればよい。
【0040】脱炭焼鈍後段の温度を 820℃〜920 ℃と
し、 PH2O /PH2を0.15以下の還元性の雰囲気とすること
によってもB8が向上する理由は、脱炭焼鈍板最表面の酸
化層が還元されることによっても脱炭焼鈍板のサブスケ
ールの級密性が向上するからであると考えられ、このた
めに、脱炭焼鈍後段の温度を 820〜920 ℃、雰囲気の P
H2O /PH2を0.15以下とするのがよいと推定される。この
ような処理の時間が5秒を下回った場合、脱炭焼鈍板最
表面の還元が十分に行われず、また200 秒を超えた場合
は、酸化性雰囲気での処理時間を十分に確保することが
難しいため、5〜200 秒の範囲に限定した。また、脱炭
焼鈍の後段部を還元性雰囲気とするとともに、昇温過程
の雰囲気のPH2O /PH2を均熱過程のそれよりも低くする
(最も望ましくは PH2O /PH2を0.05〜0.25だけ低くす
る)ことは、昇温過程の適正化によるサブスケールの均
一化とサブスケール表面の還元処理の相乗効果によっ
て、よりいっそう緻密性を向上させ、二次再結晶をさら
に理想的な状態に近づける作用を有する。
【0041】以上の効果は、熱延板焼鈍や中間焼鈍を省
略した場合であっても十分に磁性向上に作用するため、
熱延板焼鈍や中間焼鈍工程の有無は特に限定されない。
したがって、この発明では、熱延板焼鈍を施してから中
間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延により最終板厚にする
場合、熱延板焼鈍を施さずに中間焼鈍を含む2回以上の
冷間圧延により最終板厚にする場合,熱延板焼鈍を施し
てから1回の冷間圧延により最終板厚にする場合等、い
ずれの場合も行うことができる。
【0042】なお、この発明法において、熱間圧延終了
直後の平均冷却速度及び脱炭焼鈍の温度・雰囲気を適正
に制御すること以外は、従来公知の条件に従って処理す
ればよい。また、以上の製造条件により生産された方向
性電磁鋼板に対して、特公昭57-2252 号公報に開示され
ているレーザー光や特開昭62-96617号公報に開示されて
いるプラズマ炎などによって線状の歪を導入する方法、
あるいは、特公昭3-69968号公報に開示されている仕上
げ焼鈍以前に圧延方向とほぼ直交する方向の線状の刻み
目を導入することは、鉄損を低滅するうえで極めて有用
である。また、本発明に対して、化学研磨や電解研磨に
よる仕上げ焼鈍板表面の鏡面化、もしくは仕上げ焼鈍中
のサーマルエッチングによる鏡面化を組み合わせること
によって極めて鉄損の低い材料が得られ、更に、前記の
磁区細分化処理を組み合わせることにより、よりいっそ
うの低鉄損化を図ることが可能である。
【0043】
【実施例】(実施例1) C:0.060 wt%, Si:3.30wt%, Mn:0.070 wt%, Al:
0.020 wt%, N:0.0075wt%,Sb:0.030 wt%,Mo:0.
020 wt%,Se:0.020 wt%,S:0.005 wt%を含み、か
つBiを0.035 wt%含有し、残部はFeおよび不可避的不純
物の組成になるけい素鋼スラブを1400℃,60分間誘導加
熱により加熱した後、熱間圧延によって板厚2.5 mmの熱
延板とした。このとき熱間圧延の最終パス終了直後から
5秒間の平均冷却速度を60℃/秒とした。この後、950
℃で1分間の熱延板焼鈍を施し、次いで酸洗、一次冷間
圧延を施して厚さ1.6 mmとした後、1050℃,1分間の中
間焼鈍を施してから、酸洗後、二次冷間圧延により0.23
mmの最終板厚とした。この後、昇温過程(板温度255 ℃
〜765 ℃の領域)の平均の PH2O /PH2を0.25,0.35,0.
45の3水準、均熱過程の PH2O /PH2を0.40,0.55,0.75
の3水準、均熱温度を 850℃、均熱時間を100 秒とする
脱炭焼鈍を行った。この後、MgO を主成分とする焼鈍分
離剤を塗布してから最高到達温度1200℃×5時間の仕上
げ焼鈍を施した。続いて、コロイダルシリカを主成分と
する絶縁張力コーティングを施して製品とした。また、
この製品に対して、プラズマ炎によって圧延方向となす
角度90°の線状の歪領域を、圧延方向に対して5mm間隔
にて導入した。以上のようにして得られた製品からエプ
スタイン試験片 500 g相当を切り出し、エプスタイン試
験法により磁束密度B8と鉄損W17/50を測定した。表1に
得られた製品の磁気特性を示す。この発明に適合する条
件にて製造された方向性電磁鋼板において極めて磁束密
度B8の高い製品が得られていることが分かる。
【0044】
【表1】
【0045】(実施例2) C:0.065 wt%, Si:3.40wt%, Mn:0.065 wt%, Cu:
0.05wt%, Al:0.025wt%, N:0.0075wt%, Sb:0.030
wt%,Mo:0.020 wt%,Se:0.015 wt%,S:0.010 w
t%を含み、かつ、Biを0wt%,0.020 wt%及び0.050 w
t%の3水準で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物
の組成になるけい素スラブを1400℃,60分間誘導加熱に
より加熱した後、熱間圧延によって板厚2.5 mmの熱延板
とした。このとき熱間圧延の最終パス終了直後から5秒
間の冷却速度を25℃/秒,60℃/秒の2水準とした。こ
の後、950 ℃, 1分間の熱延板焼鈍を施してから、酸洗
処理し、一次冷間圧延して、厚さ1.5 mmとした後、1050
℃, 1分間の中間焼鈍を施してから酸洗し、二次冷間圧
延により0.23mmの最終板厚とした。この後、レジストエ
ッチングにより、圧延方向となす角度90°、圧延方向の
間隔3.0 mm ,幅100μm , 深さ25μm の溝を形成した。
続いて、昇温過程の PH2O /PH2=0.60、均熱過程の P
H2O /PH2=0.60にて、850 ℃,100 秒間の脱炭焼鈍を施
し、この後、MgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布して
から最高到達温度1200℃×5時間の仕上げ焼鈍を施した
のち、コロイダルシリカを主成分とする絶縁コーティン
グを施して製品とした。以上の工程により得られた製品
からエプスタイン試験片500 g 相当を切り出し、エプス
タイン試験法により磁束密度B8と鉄損W17/50を測定し
た。表2に得られた製品の磁気特性を示す。この発明に
適合する条件にて製造された方向性電磁鋼板において、
極めて優れた磁気特性の製品が安定的に得られている。
【0046】
【表2】
【0047】(実施例3) C:0.065 wt%,Si:3.40wt%, Mn:0.065 wt%, Cu:
0.05wt%,Al:0.025wt%, N:0.0075wt%, Sb:0.030
wt%, Mo:0.020 wt%,Se:0.015 wt%,S:0.010 w
t%を含み、かつ、Bi:0wt%もしくは0.020 wt%を含
有し、残部Feおよび不可避的不純物の組成になるけい
素鋼スラブを1400℃,60分間誘導加熱により加熱した
後、熱間圧延によって板厚2.7 mmの熱延板とした。この
とき熱間圧延の最終パス終了直後から5秒間の冷却速度
を80℃/秒とした。続いて 950℃,1分の熱延板焼鈍
後、酸洗処理してから一次冷間圧延により1.8 mmの厚さ
とした。この後、950 ℃,100 秒間の中間焼鈍後、酸洗
処理し、続いて冷間圧延により0.23mmの最終板厚とし
た。この後、昇温過程(板温度 250〜740 ℃の領域)で
の平均の PH2O /PH2=0.40、昇温過程の PH2O /PH2=0.
40もしくは0.60にて、820℃,120 秒の脱炭焼鈍を施し
た。続いて、Al203 を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し
てから、最高到達温度1200℃×5時間の仕上げ焼鈍を施
した。この後、NaCl浴による電解研磨により、鋼板表面
を鏡面化処理してから鋼板表面にTiN を蒸着させて鋼板
に張力を付与させたのち、コロイダルシリカを主成分と
する絶縁コーティングを施して、さらにプラズマ炎によ
って圧延方向となす角度85°の線状の歪領域を、圧延方
向に対して5mm間隔にて導入して製品とした。以上のよ
うにして得られた製品からエプスタイン試験片500 g 相
当を切り出し、エプスタイン試験法により磁束密度B8
鉄損W17/50を測定した。表3に得られた製品の磁気特性
を示す。この発明に適合する条件にて製造された方向性
電磁鋼板において極めて優れた磁気特性の製品が安定的
に得られている。
【0048】
【表3】
【0049】(実施例4) C:0.065 wt%,Si:3.30wt%, Mn:0.070 wt%,Cu:
0.10wt%, Al:0.025wt%, N:0.0085wt%,Sb:0.040
wt%,Mo:0.020 wt%,Se:0.022 wt%を含み、か
つ、Biを0wt%又は0.030 wt%含有し、残部はFeおよび
不可避的不純物の組成になるけい素鋼スラブを1400℃,
60分間誘導加熱により加熱した後、熱間圧延によって板
厚2.6 mmの熱延板とした。このとき熱間圧延の最終パス
終了直後から5秒間の冷却速度を70℃/秒とした。この
後、熱延板焼鈍を施さずに、酸洗処理し、一次冷間圧延
して厚さ1.7 mmとした後、1100℃,1分間の中間焼鈍を
施し、続いて酸洗後、二次冷間圧延して、厚さ0.22mmの
製品板厚とした。続いて、レジストエッチングにより、
圧延方向となす角度90°、圧延方向の間隔3.0 mm,幅10
0 μm ,深さ25μm の溝を形成したのち、820 ℃,120
秒間の脱炭焼鈍を施した。この際、昇温過程(板温度 2
50〜740 ℃の領域)の平均の PH2O /PH2=0.40、均熱過
程の PH2O /PH2=0.40もしくは0.60とした。この後、Mg
O を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから最高到達温
度1200℃×5時間の仕上げ焼鈍を施したのち、コロイダ
ルシリカを主成分とする絶縁コーティングを施して製品
とした。以上の工程により得られた製品からエプスタイ
ン試験片500 g 相当を切り出し、エプスタイン試験法に
より磁束密度B8と鉄損W17/50を測定した。表4に得られ
た製品の磁気特性を示す。この発明に適合する条件にて
製造された方向性電磁鋼板において極めて優れた磁気特
性の製品が安定的に得られている。
【0050】
【表4】
【0051】(実施例5) C:0.065 wt%, Si:3.30wt%, Mn:0.070 wt%,Cu:
0.10wt%, Al:0.025wt%,N:0.0085wt%, Sb:0.040
wt%,Mo:0.020 wt%, Se:0.022 wt%を含み、か
つ、Biを0wt%,0.030 wt%含有し、残部はFeおよび不
可避的不純物の組成になるけい素鋼スラブを1400℃,60
分間誘導加熱により加熱した後、熱間圧延によって板厚
2.2 mmの熱延板とした。このとき熱間圧延の最終パス終
了直後から5秒間の冷却速度を70℃/秒とした。この
後、1000℃,1分間の熱延板焼鈍を施した後、酸洗処理
し、冷間圧延により、厚さ0.35mmの製品板厚とした。続
いて、850 ℃,100 秒間の脱炭焼鈍を施した。このと
き、昇温過程(板温度 255〜765℃の領域)の平均の P
H2O /PH2=0.45、均熱過程の PH2O /PH2=0.40もしくは
0.60とした。この後、MgO を主成分とする焼鈍分離剤を
塗布してから最高到達温度1200℃×5時間の仕上げ焼鈍
を施したのち、コロイダルシリカを主成分とする絶縁コ
ーティングを施して製品とした。以上の工程により得ら
れた製品からエプスタイン試験片500 g 相当を切り出
し、エプスタイン試験法により磁束密度B8と鉄損W17/50
を測定した。表5に得られた製品の磁気特性を示す。こ
の発明に適合する条件にて製造された方向性電磁鋼板に
おいて極めて優れた磁気特性の製品が安定的に得られて
いる。
【0052】
【表5】
【0053】(実施例6) C:0.065 wt%,Si:3.30wt%,Mn:0.065 wt%,Al:
0.023 wt%,N:0.0080wt%,Sb:0.040 wt%,Mo:0.
015 wt%,Se:0.018 wt%を含み、かつ、Biを0wt%又
は0.020 wt%含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の
組成になるけい素鋼スラブを1400℃,60分間誘導加熱に
より加熱した後、熱間圧延によって板厚2.5 mmの熱延板
とした。このとき熱間圧延の最終パス終了直後から5秒
間の乎均冷却速度を50℃/秒とした。この後、950 ℃で
1分間の熱延板焼鈍を施し、次いで酸洗、一次冷間圧延
を施し、厚さ1.6 mmとした後、1000℃,1分間の中間焼
鈍を施してから、酸洗後、二次冷間圧延により0.23mmの
最終板厚とした。この後の脱炭焼鈍において、均熱過程
の温度を 850℃,時間を100 秒、 PH2O /PH2を0.40, 0.
60, 0.75の各条件とし、均熱過程に引き続く脱炭焼鈍後
段(50秒)の雰囲気の PH2O /PH2を0.05, 0.10, 0.20又
は均熱過程と同じの各条件とし、昇温過程のPH2O /PH2
を均熱過程と同じか、もしくは均熱過程の PH2O /PH2
り0.10だけ低い値とした。この後、MgO を主成分とする
焼鈍分離剤を塗布してから最高到達温度1200℃×5時間
の仕上げ焼鈍を施した。続いて、コロイダルシリカを主
成分とする絶縁張力コーティングを施したのち、プラズ
マ炎によって圧延方向となす角度90°の線状の歪領域
を、圧延方向に対して5mm間隔にて導入し製品とした。
以上のようにして得られた製品からエプスタイン試験片
500 g 相当を切り出し、エプスタイン試験法により磁束
密度B8と鉄損W17/50を測定した。表6に得られた製品の
磁気特性を示す。この発明に適合する条件にて製造され
た方向性電磁鋼板において極めて磁束密度B8の高い製品
が得られており、請求項4に適合する条件(6I、6
J、6K、6L)では、特に優れた磁気特性が得られて
いる。
【0054】
【表6】
【0055】
【発明の効果】この発明によれば、極めて磁気特性に優
れる方向性電磁鋼板を安定して製造することが可能であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱炭焼鈍の PH2O /PH2とB8との関係を示す図で
ある。
【図2】脱炭焼鈍の昇温過程、均熱過程の PH2O /PH2
最終仕上げ焼鈍後のB8との関係を示す図である。
【図3】昇温過程及び均熱過程の PH2O /PH2と仕上げ焼
鈍後のB8のとの関係示す図である。
【図4】脱炭焼鈍均熱温度と磁束密度B8との関係を示す
図である。
【図5】熱延終了直後から5秒間の冷却速度と磁束密度
B8との関係を示す図である。
【図6】Bi添加量とB8との関係を示す図である。
【図7】脱炭焼鈍後段の温度とB8との関係を示す図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−143970(JP,A) 特開 平10−110218(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/12 C21D 9/46 501 C22C 38/00 - 38/60 H01F 1/16 - 1/18

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.03〜0.10wt%, Si:2.0 〜5.0 wt%, Mn:0.04〜0.15wt%, S及びSeのうちから選んだ1種又は2種:0.01〜0.03wt
    %, sol.Al:0.015 〜0.035 wt%, N:0.0050〜0.010 wt% を含み、かつ、 Bi:0.001 〜0.07wt% を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる
    けい素鋼スラブを1300℃以上の温度に加熱したのち、熱
    間圧延し、次いで焼鈍処理と冷間圧延処理とを組み合わ
    せて最終板厚にしたのち、脱炭焼鈍を施し、次いで最終
    仕上げ焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の
    製造方法において、 熱間圧延終了直後から5秒後までの熱延板の平均冷却速
    度を30℃/秒〜120 ℃/秒に制御するとともに、脱炭焼
    鈍の均熱温度を 800℃から 900℃の範囲とし、均熱過程
    における雰囲気中の水素分圧に対する水蒸気分圧の比:
    PH2O /PH2を0.45〜0.70とすることを特徴とする磁気特
    性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 けい素鋼スラブが、さらに Sb:0.001 〜0.10wt%, As:0.001 〜0.10wt%, Mo:0.001 〜0.20wt%, Cu:0.01〜0.30wt%, P:0.010 〜0.030 wt%, Sn:0.005 〜0.20wt%, Ge:0.005 〜0.20wt%, B:0.0010〜0.010 wt%, V:0.005 〜0.10wt%, Nb:0.005 〜0.10wt%および Te:0.005 〜0.10wt% のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成に
    なることを特徴とする請求項1記載の磁気特性に優れる
    方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 脱炭焼鈍の昇温過程における PH2O /PH2
    を均熱過程における PH2O /PH2より低くすることを特徴
    とする請求項1または2記載の磁気特性に優れる方向性
    電磁鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 脱炭焼鈍の昇温過程における雰囲気中の
    PH2O /PH2を、脱炭焼鈍の均熱過程における雰囲気中の
    PH2O /PH2との関係で、下記の式(1) に適合する範囲内
    とすることを特徴とする請求項1または2記載の磁気特
    性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法。 X2−0.25≦X1≦X2−0.05‥‥‥‥‥(1) ここに、X1:昇温過程における雰囲気中の PH2O /PH2 X2:均熱過程における雰囲気中の PH2O /PH2
  5. 【請求項5】 脱炭焼鈍の均熱過程に引き続き、脱炭焼
    鈍の後段部を設け、この後段部の温度を 820〜920 ℃、
    後段部の雰囲気中の PH2O /PH2を0.15以下、この後段部
    の滞留時間を5〜200 秒とすることを特徴とする請求項
    1〜のいずれかに記載の磁気特性に優れる方向性電磁
    鋼板の製造方法。
JP13338698A 1998-05-15 1998-05-15 磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法 Expired - Fee Related JP3357602B2 (ja)

Priority Applications (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP13338698A JP3357602B2 (ja) 1998-05-15 1998-05-15 磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法
US09/309,240 US6280534B1 (en) 1998-05-15 1999-05-10 Grain oriented electromagnetic steel sheet and manufacturing thereof
EP99109527A EP0957180A2 (en) 1998-05-15 1999-05-12 Grain oriented electromagnetic steel sheet and manufacturing thereof
KR1019990017273A KR100580356B1 (ko) 1998-05-15 1999-05-14 자기특성이 우수한 방향성 전자강판 및 그 제조방법
US09/908,136 US20020005231A1 (en) 1998-05-15 2001-07-18 Grain oriented electromagnetic steel sheet and manufacturing thereof

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP13338698A JP3357602B2 (ja) 1998-05-15 1998-05-15 磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH11323438A JPH11323438A (ja) 1999-11-26
JP3357602B2 true JP3357602B2 (ja) 2002-12-16

Family

ID=15103536

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP13338698A Expired - Fee Related JP3357602B2 (ja) 1998-05-15 1998-05-15 磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3357602B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003008654A1 (fr) 2001-07-16 2003-01-30 Nippon Steel Corporation Tole magnetique unidirectionnelle a densite de flux magnetique tres elevee, a caracteristiques de pertes dans le fer et de revetement dans un champ magnetique puissant excellentes, et procede de production associe
DE102011107304A1 (de) * 2011-07-06 2013-01-10 Thyssenkrupp Electrical Steel Gmbh Verfahren zum Herstellen eines kornorientierten, für elektrotechnische Anwendungen bestimmten Elektrostahlflachprodukts
CN103834856B (zh) * 2012-11-26 2016-06-29 宝山钢铁股份有限公司 取向硅钢及其制造方法
KR101919521B1 (ko) * 2016-12-22 2018-11-16 주식회사 포스코 방향성 전기강판 및 이의 제조방법
JP6859935B2 (ja) * 2017-11-29 2021-04-14 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH11323438A (ja) 1999-11-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2983128B2 (ja) 極めて低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板の製造方法
JP2002220642A (ja) 鉄損の低い方向性電磁鋼板およびその製造方法
KR101683693B1 (ko) 방향성 전자 강판의 제조 방법
KR20140044928A (ko) 철손 특성이 우수한 방향성 전기 강판의 제조 방법
JP3456862B2 (ja) 極めて低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板の製造方法
KR100580356B1 (ko) 자기특성이 우수한 방향성 전자강판 및 그 제조방법
JP3392669B2 (ja) 極めて低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板の製造方法
JP3359449B2 (ja) 超高磁束密度一方向性電磁鋼板の製造方法
JP3392664B2 (ja) 極めて低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板の製造方法
JP3357602B2 (ja) 磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法
JP3386742B2 (ja) 磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法
JP3392579B2 (ja) 極めて低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板の製造方法
JPH055126A (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
WO2020149341A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP5712652B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP2001303131A (ja) 表面欠陥が極めて少なくかつ磁気特性に優れる高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法
JP2560579B2 (ja) 高透磁率を有する高珪素鋼板の製造方法
JP3474741B2 (ja) 磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法
JP2001049351A (ja) 磁束密度の高い一方向性電磁鋼板の製造方法
JP7465975B2 (ja) 方向性電気鋼板、及びその製造方法
JPH06256846A (ja) 高磁束密度が安定して得られる方向性電磁薄鋼板の製造方法
JPH06256847A (ja) 磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法
JPS6347332A (ja) 鋼板形状、打抜き性および磁性の優れた無方向性電磁鋼板の製造法
JP3498978B2 (ja) 極めて低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板の製造方法
JP3392699B2 (ja) 極低鉄損特性を有する方向性電磁鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20020903

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081004

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091004

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101004

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101004

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111004

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111004

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121004

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121004

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131004

Year of fee payment: 11

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees