JP6859935B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関し、具体的には、高磁束密度、低鉄損で、かつ、工程生産における磁気特性の劣化が小さい方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
電磁鋼板は、変圧器やモータの鉄心等に広く用いられている軟磁性材料であり、中でも方向性電磁鋼板は、結晶方位がGoss方位と呼ばれる{110}<001>方位に高度に集積することで優れた磁気特性を示すため、主として大型変圧器の鉄心材料等に使用されている。そのため、従来における方向性電磁鋼板の主な開発課題は、変圧器における無負荷損(エネルギーロス)を低減するため、鋼板を励磁した際に生じる損失すなわち鉄損を低減するということにあった。
方向性電磁鋼板の一般的な製造方法は、成分組成を適正範囲に調整した鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、必要に応じて熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、一次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍を施し、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布した後、二次再結晶させるとともに、必要に応じて純化処理する仕上焼鈍を施す一連の工程からなるのが一般的である。
上記方向性電磁鋼板の鉄損を低減する方法としては、従来から、Si含有量の増加や、板厚の低減、結晶方位の配向性向上、鋼板への張力付与、鋼板表面の平滑化、二次再結晶組織の細粒化などが有効であることが知られている。そして、上記目的を達成するため、上記脱炭焼鈍条件を適正範囲に調整する技術が数多く提案されている。
例えば、特許文献1には、脱炭焼鈍の加熱過程、均熱過程における雰囲気の酸化度、具体的には、酸素ポテンシャルPH2O/PH2の範囲を特定し、かつ、連続焼鈍炉の後部にいくほどPH2O/PH2が高くなるように変動させること、および、少なくとも鋼板中の残留C量が30ppm以下となる時間の脱炭焼鈍を施すことにより、工業的規模における生産時の磁束密度の劣化を防止する技術が開示されている。
また、特許文献2には、一次再結晶焼鈍の加熱途中に短時間の保定を加えるとともに、均熱過程の温度、時間および雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2を特定し、さらに、均熱過程をN段(N:2以上の整数)に分け、第1段〜(N−1)段までと、最終N段における温度、時間および雰囲気のPH2O/PH2をそれぞれ特定の範囲に制御することによって、内部酸化層を改善し、磁気特性のバラつきを抑える技術が開示されている。
また、特許文献3には、最終冷間圧延後の鋼板の表面粗度を特定し、脱炭焼鈍前に脱脂処理するとともに、脱炭焼鈍における均熱温度および雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2を特定の範囲とし、かつ、焼鈍炉炉長方向のPH2O/PH2の変動量を抑えることによって、高磁束密度の方向性電磁鋼板を安定的に生産する技術が開示されている。
また、特許文献4には、脱炭焼鈍工程を前段と後段とに分離し、前段と後段の均熱温度TおよびTを、それぞれ特定の式の範囲に制御することによって脱炭性を改善し、さらに、焼鈍分離剤にアルミナを用いることにより、鏡面を有する方向性電磁鋼板を製造する技術が開示されている。
さらに、特許文献5には、一次再結晶焼鈍工程の加熱過程と均熱過程における雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2を特定の式で規定する領域で焼鈍することにより、鋼板の表面酸化層を制御し、その後の窒化処理において鋼板を効果的に窒化させて鉄損を改善する技術が開示されている。
特開平11−199939号公報 特開2014−152392号公報 特開平09−041042号公報 特開2003−55717号公報 特開平02−305921号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術では、磁気特性は改善するものの、その効果が安定せず、ある頻度で磁気特性の劣化が発生し、製品歩留まりが低下するという問題があった。また、鋼板中の残留C量を低下させるため、長時間の焼鈍を行う必要があり、生産性の低下を招くという問題もある。
また、特許文献2に開示の技術では、加熱過程の途中で施す保定処理中に、僅かな酸素が混入して鋼板表面が外部酸化し、サブスケール構造が劣化するという問題があった。また、均熱前段の温度を後段よりも高く設定した場合には、脱炭し難くなるという問題もある。
また、特許文献3に開示の技術では、炉内雰囲気の露点がその時々の炉況により変動し、雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2の変動を抑止できないという問題があった。また、ある頻度で磁気特性の劣化が発生し、製品歩留まりが低下するという問題もあった。
また、特許文献4に開示の技術は、フォルステライト被膜を有しない鏡面化のための脱炭焼鈍条件を提示するものであり、フォルステライト被膜を形成させる通常の工程にこの技術を適用した場合には、被膜特性が劣化してしまう。
さらに、特許文献5に開示の技術では、鋼素材の成分組成の微妙なバラつきによって、脱炭不良が発生することがあった。また、脱炭焼鈍における加熱過程と均熱過程の雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2を特定範囲に制御するだけでは、必ずしも十分な磁気特性の改善効果が得られないという問題があった。
上記に説明したように、上記の従来技術を適用したとしても、工程生産時には脱炭不良や磁気特性の劣化がある頻度で発生し、製品歩留まりが低下することがあり、工業的に良好な脱炭性と優れた磁気特性を安定的に確保することが難しいというのが実情である。また、上記従来技術の適用により、磁気特性は徐々に改善されてきてはいるものの、近年における磁気特性の改善要求に対してはまだ十分なレベルとはいえないという問題もある。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来技術に比べて脱炭性が良好でかつ工程生産における磁気特性の劣化の小さい高磁束密度低鉄損の方向性電磁鋼板の有利な製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向け、脱炭焼鈍条件が脱炭性および磁気特性に及ぼす影響に着目して鋭意検討を重ねた。その結果、脱炭焼鈍の加熱過程における雰囲気の酸化度、ならびに、均熱過程の温度と雰囲気の酸化度を適正化することにより、脱炭性が改善されるとともに鋼板の酸素目付量を適正範囲に制御することができ、ひいては、優れた磁気特性を安定して実現できることを見出した。さらに、上記脱炭焼鈍の均熱過程終了後、引き続き還元処理を施すことにより、内部酸化層の形態を改善し、磁気特性をより改善することができることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜1.0mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、加熱過程、均熱過程および冷却過程からなる、一次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍を施した後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、上記脱炭焼鈍の均熱過程を少なくとも2段に分けるとともに、上記脱炭焼鈍の加熱過程の760℃から均熱温度までの雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2をP、均熱過程の均熱開始から少なくとも40s間の前段の温度をT、その雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2をP、および、均熱過程の均熱終了前の少なくとも40s間の後段の温度をT、その雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2をPとしたとき、上記P、PおよびPをそれぞれ0.2〜0.5、Tを780〜820℃およびTを80〜920℃の範囲とし、かつ、上記TおよびTに応じて、下記(1)式および(2)式;
2T+T≦240(2P+P+P)+2160 ・・・(1)
+T≧400(3P+3P+P)+640 ・・・(2)
を満たすよう、P、PおよびPを調節することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。
本発明の上記方向性電磁鋼板の製造方法は、上記脱炭焼鈍の均熱過程に引き続いて、酸素ポテンシャルPH2O/PH2が0.2以下の雰囲気下で、820〜920℃の温度に5〜40s間保持する還元処理を施すことを特徴とする。
また、本発明の上記方向性電磁鋼板の製造方法は、上記脱炭焼鈍後のC含有量を0.0040mass%以下、酸素目付量を0.7〜1.1g/mの範囲とすることを特徴とする。
また、本発明の上記方向性電磁鋼板の製造方法に用いる上記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、Al:0.010〜0.050mass%およびN:0.003〜0.020mass%を含有する、あるいは、Se:0.005〜0.030mass%および/またはS:0.005〜0.03mass%を含有する、あるいは、Al:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%、Se:0.005〜0.030mass%および/またはS:0.005〜0.030mass%を含有することを特徴とする。
また、本発明の上記方向性電磁鋼板の製造方法に用いる上記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、Al:0.010mass%未満、N:0.0050mass%未満、S:0.0050mass%未満およびSe:0.0050mass%未満を含有することを特徴とする。
また、本発明の上記方向性電磁鋼板の製造方法に用いる上記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、Ni:0.010〜0.50mass%、Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Sn:0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.100mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.0100mass%、Nb:0.0010〜0.0100mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
本発明によれば、脱炭焼鈍の加熱過程および均熱過程における温度と雰囲気の酸化度を適正化することで、脱炭性が改善され、かつ、酸素目付量を適正範囲に制御することができるので、磁気特性に優れる方向性電磁鋼板を工業的に安定して生産することが可能となる。
(1´)式の左辺と脱炭焼鈍後のC含有量との関係を示すグラフである。 (2´)式の左辺と脱炭焼鈍後の酸素目付量との関係を示すグラフである。 (2´)式の左辺と製品板の磁束密度Bとの関係を示すグラフである。
発明者らは、先述した課題を達成するため、脱炭焼鈍条件が、脱炭性、酸素目付量および磁気特性等に及ぼす影響を調査するため、以下の実験を行った。
先ず、脱炭焼鈍条件が磁気特性に及ぼす影響を調査するため、以下の実験を行った。
C:0.05mass%、Si:3.2mass%およびMn:0.06mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるインヒビター形成成分を含まない鋼を溶製し、連続鋳造法で鋼スラブとした後、1220℃に再加熱し、熱間圧延して板厚2.4mmの熱延板とし、1000℃×60sの熱延板焼鈍を施した後、一次冷間圧延して中間板厚を1.8mmとし、1100℃×80sの中間焼鈍を施した後、二次冷間圧延して最終板厚0.23mmの冷延板とした。
次いで、上記冷延板に加熱過程、均熱過程および冷却過程からなる脱炭焼鈍を施した。この際、上記加熱過程の500〜700℃間における加熱速度を60℃/s、均熱過程の均熱時間を80sとし、該均熱時間は、前段の40sと、後段の40sの2つに分けた。そして、加熱過程の760℃から均熱温度までの雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2をP、均熱過程前段の温度をT、酸素ポテンシャルPH2O/PH2をP、均熱過程後段の温度をT、酸素ポテンシャルPH2O/PH2をPとし、上記P,P,P,TおよびTのそれぞれを独立因子として種々の範囲に変化させた。
なお、上記脱炭焼鈍後の鋼板については、分析用のサンプルを採取し、脱炭焼鈍後のC含有量および酸素目付量を分析した。ここで、上記酸素目付量とは、鋼板全板厚の酸素含有量を分析し、得られた酸素量を、鋼板の単位表面積(両面)あたりの酸素量として換算したものである(以降、同様とする)。
次いで、上記脱炭焼鈍後の鋼板表面にMgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、乾燥した後、二次再結晶させた後、水素雰囲気下で1200℃×7時間の純化処理を行う仕上焼鈍を施し、製品板とした。
斯くして得た製品板の磁気特性を、実機トランスに近い条件で評価するため、板幅方向に、幅100mm×長さ400mmの試験片を各条件で10枚ずつ採取し、一度、150mmφの曲げ棒で曲げて、曲げ戻した後、800℃×3hrの歪取焼鈍を施し、その後、JIS C2556:1996に記載の方法で磁束密度B(T)および鉄損W17/50(W/kg)を測定し、それぞれの平均値を求めた。
上記測定の結果を表1に示した。これらのデータを詳細に解析したところ、2×T+Tが240×(2P+P+P)+2160よりも小さい、すなわち、下記(1)式;
2T+T≦240(2P+P+P)+2160 ・・・(1)
さらに言い換えれば、下記(1´)式;
(2T+T)−{240(2P+P+P)+2160}≦0 ・・・(1´)
を満たしているときに脱炭が促進されて、脱炭焼鈍後の鋼板中のC含有量が40massppm以下となり、鉄損も改善されていることがわかった。
また、T+Tが400×(3P+3P+P)+640よりも大きい、すなわち、下記(2)式;
+T≧400(3P+3P+P)+640 ・・・(2)
さらに言い換えれば、下記(2´)式;
(T+T)−{400(3P+3P+P)+640}≧0 ・・・(2´)
を満たしているときに、脱炭焼鈍後の酸素目付量が1.10g/m以下に低下し、磁束密度Bが1.90T以上に向上するということがわかった。
Figure 0006859935
Figure 0006859935
したがって、脱炭焼鈍におけるP,P,P,TおよびTを、上記(1)式((1´)式)および(2)式((2´)式)を満たすよう制御することによって、脱炭焼鈍後の鋼板中のC含有量を40massppm以下、酸素目付量を1.10g/m以下とし、製品板の磁束密度Bを1.90T以上、鉄損を0.86W/kg以下にすることができることがわかる。因みに、上記(1´)式の左辺と脱炭焼鈍後のC含有量との関係を図1に、上記(2´)式の左辺と脱炭焼鈍後の酸素目付量および製品板の磁束密度Bとの関係を図2および図3に示した。
上記のように、脱炭焼鈍の加熱過程雰囲気の酸化度、均熱過程の温度と雰囲気の酸化度を上記(1)式((1´)式)および(2)式((2´)式)を満たすよう制御することによって、脱炭焼鈍での脱炭性が改善され、酸素目付量が低減して、製品板の磁気特性、特に磁束密度が向上する原因について、発明者らは以下のように考えている。
脱炭焼鈍においては、脱炭反応が進行して鋼板中のC量が低下するとともに、鋼板表面が酸化されて内部酸化層が形成される。上記内部酸化層は、薄く緻密なほど、仕上焼鈍中における追加酸化を抑えて、磁束密度を高める効果があることから、磁気特性を向上させるためには、薄く緻密な内部酸化層を形成する必要がある。しかし、脱炭性を改善するために、脱炭焼鈍における雰囲気の酸化度を高めるだけでは、脱炭反応は促進されるが、酸素目付量が高くなる。そのため、脱炭性の改善と酸素目付量の低減とを両立させることはできない。
そこで、発明者らは、脱炭焼鈍における均熱温度を変化させ、脱炭性および酸素目付量に及ぼす影響について調査した。その結果、脱炭焼鈍の均熱温度を低くすると、脱炭が促進され、酸素目付量が微増する傾向があることがわかった。これは、均熱温度の低下により、鋼板表面の初期の酸化が抑えられ、脱炭初期に形成される酸化膜が薄くなったことにより、その後の脱炭と酸化に対するバリヤ効果が低減したためと考えられる。従って、均熱温度も、脱炭性と酸素目付量とはトレードオフの関係となっており、両立させることは難しいことがわかった。
そこで、発明者らは、脱炭焼鈍の均熱過程を、前段と後段の2段に分割し、それぞれの段が脱炭性および酸素目付量に及ぼす寄与度を調査した。その結果、脱炭性に対しては均熱過程前段の影響が大きく、一方、酸素目付量に対しては均熱過程後段の影響が大きいことがわかった。さらに、発明者らは、加熱過程の雰囲気が脱炭性および酸素目付量に及ぼす影響を調査した結果、加熱過程の雰囲気の酸化度も、均熱過程前段の酸化度よりも脱炭性や酸素目付量に大きく影響していることわかった。そこで、これらを組み合わせる、具体的には、加熱過程および均熱過程の前段で脱炭性を改善し、均熱過程の後段で酸素目付量の低減を図ることで、両者を同時に達成できることが明らかとなった。
ここで、上記に示した(1)式は、表1や図1から判るように脱炭促進条件を示しており、同式の左辺(2・T+T)は、脱炭焼鈍の均熱過程前段の温度Tの重み付けが大きくなっているように、脱炭焼鈍の均熱過程前段の温度Tが重要で、これを低めることにより鋼板の脱炭が促進されることを表している。また、同式の右辺(2P+P+P)は、脱炭焼鈍の加熱過程の雰囲気の酸素ポテンシャルPの重み付けが大きくなっているように、加熱過程の雰囲気の酸素ポテンシャルPを高めることにより鋼板の脱炭がより促進されることを表している。
また、上記に示した(2)式は、表1や図2から判るように酸素目付量抑制条件を示しており、右辺(3P+3P+P)では、脱炭焼鈍の加熱過程および均熱過程前段の雰囲気の酸素ポテンシャルPおよびPの重み付けが大きくなっているように、脱炭焼鈍の加熱過程および均熱過程前段の雰囲気の酸素ポテンシャルPおよびPを低めることにより酸素目付量の増大が抑制されることを表している。
したがって、これらの(1)式および(2)式の両方を満たすように脱炭焼鈍条件を制御することにより、従来技術では不可能であった脱炭性の促進と酸素目付量の低減の両立を安定して実現することが可能となり、ひいては、残留C量による磁気時効に起因した鉄損の劣化を防止しつつ、方位集積度向上による磁気特性の改善を同時に達成することができる。
本発明は、上記の新規な知見に基づくものである。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材(スラブ)が有すべき成分組成について説明する。
C:0.01〜0.10mass%
Cは、0.01mass%に満たないと、Cによる粒界強化効果が失われるため、スラブに割れが生じるなどして、製造に支障をきたすようになる。一方、0.10mass%を超えると、製造工程の脱炭焼鈍において、Cを磁気時効が起こらない0.0040mass%以下に低減することが困難となる。よって、Cは0.01〜0.10mass%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.08mass%、より好ましくは0.025〜0.08mass%の範囲である。
Si:2.5〜4.5mass%
Siは、鋼の比抵抗を高めて鉄損を低減するのに必要な元素である。上記効果は、2.5mass%未満では十分ではなく、一方、4.5mass%を超えると、加工性が低下し、圧延して製造すること困難となる。よって、Siは2.5〜4.5mass%の範囲とする。好ましくは2.8〜3.7mass%の範囲である。
Mn:0.01〜0.5mass%
Mnは、鋼の熱間加工性を改善するのに必要な元素である。上記効果は、0.01mass%未満では十分ではなく、一方、0.5mass%を超えると、製品板の磁束密度が低下するようになる。よって、Mnは0.01〜0.5mass%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.20mass%の範囲である。
上記C,SiおよびMn以外の成分については、二次再結晶を起こさせるために、インヒビターを利用する場合としない場合とで異なる。さらに、インヒビターを利用する場合には、インヒビターとしてAlNを利用するとき(AlN系)と、MnSおよび/またはMnSeを利用するとき(MnS・MnSe系)と、上記の両インヒビターを利用するとき(AlN+MnS・MnSe系)とで異なる。
具体的には、AlN系の場合には、AlおよびNをそれぞれAl:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%の範囲で含有させることが好ましい。また、MnS・MnSe系の場合には、S:0.0050〜0.030mass%および/またはSe:0.0050〜0.030mass%を含有させることが好ましい。また、AlN+MnS・MnSe系の場合には、Al:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%に加えて、S:0.0050〜0.030mass%および/またはSe:0.0050〜0.030mass%を含有させることが好ましい。それぞれの添加量が、上記下限値より少ないと、インヒビター効果が十分に得られず、一方、上記上限値を超えると、析出したインヒビターがスラブ加熱時に未固溶のまま残存し、インヒビター効果が低減するため、二次再結晶が不安定化し、十分な磁気特性が得られなくなる。
一方、二次再結晶を起こさせるためにインヒビターを利用しない場合には、上述したインヒビター形成成分であるAl,N,SおよびSeの含有量を極力低減する、具体的には、Al:0.010mass%未満、N:0.0050mass%未満、S:0.0050mass%未満およびSe:0.0050mass%未満に低減することが好ましい。
本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材は、上記成分以外の残部は、基本的にFeおよび不可避的不純物である。ただし、磁気特性のさらなる改善を目的として、上記基本成分に加えて、Ni:0.010〜0.50mass%、Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Sn:0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.100mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.0100mass%、Nb:0.0010〜0.0100mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することができる。それぞれの元素の添加量が上記下限値より少ない場合には、磁気特性の向上効果が十分に得られず、一方、上記上限値を超える場合には、二次再結晶が阻害されたり、二次再結晶粒の成長が抑止されたりして、磁気特性が劣化するようになる。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
前述した成分組成を有する鋼を常法の精錬プロセスで溶製した後、常法の連続鋳造法または造塊−分塊圧延法で鋼素材(スラブ)を製造するのが好ましい。なお、鋼溶製後、直接鋳造法で100mm以下の厚さの薄鋳片としてもよい。上記鋼素材は、常法に従い、例えば、インヒビター形成成分を含有する場合には、1320℃以上の温度まで再加熱した後、また、インヒビター形成成分を含まない場合には、1280℃以下の温度に再加熱した後、熱間圧延に供する。なお、インヒビター形成成分を含有しないときは、鋳造後、再加熱することなく直ちに熱間圧延してもよい。また、薄鋳片の場合、熱間圧延してもよいし、熱間圧延を省略して、以降の工程に進めてもよい。
上記熱間圧延は、常法の条件で行なえばよく、特に制限はないが、熱間圧延の仕上圧延終了温度は700〜1100℃、巻取温度は400〜800℃の範囲とするのが好ましい。仕上圧延終了温度が700℃未満では、鋼板に割れが生じたり、形状不良が発生したりし、一方、1100℃を超えると、鋼中に望ましくない析出物が形成されて磁気特性の悪化を招く。また、巻取温度が400℃未満では、鋼板に割れが発生したり、形状不良が発生したりし、一方、800℃を超えると、同じく鋼板に割れや形状不良が発生する。
さらに、微量元素の析出形態が変わることにより、磁気特性も劣化する。
上記熱間圧延して得た熱延板は、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。この熱延板焼鈍の焼鈍温度は、良好な磁気特性を得るためには、800〜1150℃の範囲とするのが好ましい。800℃未満では、熱延板焼鈍の効果が十分ではなく、熱間圧延で形成されたバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなり、二次再結晶の発達が阻害されるおそれがある。一方、1150℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化し過ぎて、やはり、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなる。
上記熱延後または熱延板焼鈍後の熱延板は、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とする。上記中間焼鈍の焼鈍温度は、900〜1200℃の範囲とするのが好ましい。900℃未満では、中間焼鈍後の再結晶粒が細かくなり、その後の一次再結晶組織におけるGoss核が減少して製品板の磁気特性が劣化するおそれがある。一方、1200℃を超えると、熱延板焼鈍と同様、結晶粒が粗大化し過ぎて、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなる。
また、最終板厚とする最終の冷間圧延は、鋼板温度を100〜300℃に高めて圧延する温間圧延とする、あるいは、冷間圧延の途中で、100〜300℃の温度に保持する時効処理を1回または複数回施すことが好ましい。これにより、一次再結晶集合組織が改善され、磁気特性がさらに向上する。
最終板厚とした冷延板は、その後、加熱過程、均熱過程および冷却過程からなる一次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍を施す。ここで、本発明において重要なことは、上記均熱過程を少なくとも2段に分けて、加熱過程ならびに均熱過程の少なくとも前段および後段のそれぞれを適正な条件に制御する必要があるということである。
具体的には、加熱過程の760℃から均熱温度までの雰囲気の酸化度(酸素ポテンシャルPH2O/PH2)をP、均熱過程の均熱開始から少なくとも40s間の前段の温度をT、その雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2をP、ならびに、均熱過程の均熱終了前の少なくとも40s間の後段の温度をT、その雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2をPとしたとき、上記P、PおよびPをそれぞれ0.2〜0.5の範囲、TおよびTをそれぞれ780〜820℃および820〜920℃の範囲とし、かつ、上記TおよびTが下記(1)および(2)式;
2T+T≦240(2P+P+P)+2160 ・・・(1)
+T≧400(3P+3P+P)+640 ・・・(2)
を満たすようP、PおよびPを調節する必要がある。
上記均熱過程の前段の温度Tを780〜820℃、および、後段の温度Tを820〜920℃の範囲とする理由は、温度Tが780℃未満では、初期酸化がTの温度域、即ち、均熱過程の後段から開始するため、脱炭不足となり、一方、820℃超えでは、酸化が進み過ぎて脱炭不良となるとともに酸素目付量も過多となる。また、温度Tが820℃未満では、酸素目付量が過少となり、一方、820℃超えでは、酸素目付量が高くなり過ぎるからである。
また、温度TおよびTが上記下限値より低いと、一次再結晶粒が細粒化し過ぎる傾向があり、一方、温度TおよびTが上記上限値より高いと、却って一次再結晶粒が粗大化し過ぎる傾向があり、いずれも磁気特性の劣化を招く。
また、加熱過程の760℃から均熱温度までの雰囲気および均熱過程前段および後段の雰囲気の酸化度P、PおよびPを、酸素ポテンシャルPH2O/PH2で0.2〜0.5の範囲に制限する理由は、0.2より低いと、脱炭反応が十分に進行せず、鋼板中のCを磁気時効が起こらない0.0040mass%以下に脱炭することが難しくなり、一方、0.5より高いと酸素目付量が高くなり過ぎ、磁気特性を改善することが難しくなる。なお、雰囲気の酸素ポテンシャルP、PおよびPは、湿水素雰囲気中のH濃度および露点を調整することにより行うことができる。
また、上記雰囲気の酸化度P、PおよびPは、上記範囲にあることに加えて、脱炭焼鈍の均熱過程前段の温度Tおよび均熱過程後段の温度Tとともに、前述した(1)式および(2)式を満たすことも重要である。(2・T+T)が、{240・(2P+P+P)+2160}よりも大きいと、脱炭が不十分となって磁気時効特性や磁気特性が劣化する。また、(T+T)が{400・(3P+3P+P)+640}よりも小さいと、酸素目付量が高くなり過ぎ、磁気特性の改善が図れない。
その他の脱炭焼鈍条件として、加熱速度は特に制限しないが、加熱過程の500〜700℃間における加熱速度を50℃/s以上とすると、二次再結晶粒が微細化して鉄損特性が改善されるので好ましい。また、均熱過程の均熱時間は、80〜200sの範囲とするのが好ましい。80s未満では、均熱過程の前段および後段の保持時間を40s以上確保することができず、均熱過程を2段以上に分割する効果が十分に得られない。一方、200sを超えると、生産性が低下するので望ましくない。
なお、上記のように、本発明では均熱過程を少なくとも2段に分割しているが、均熱過程の前段と後段の温度TおよびTならびに酸素ポテンシャルPおよびPが前述した条件を満たしている限り、前段内や後段内をさらに分割して制御することも可能である。この場合、その分割した時間に応じて温度と酸素ポテンシャルを按分して代表させる。たとえば、前段をさらに780℃×30秒、酸素ポテンシャル0.3の前段(1/2)と、800℃×20秒、酸素ポテンシャル0.2の前段(2/2)とに分割したときは、前段のTは(780×30+800×20)/50で788℃、前段のPは(0.3×30+0.2×20)/50で0.26とする。後段も同様である。
上記に説明した脱炭焼鈍条件を満たすことにより、十分な脱炭性を確保できるとともに、酸素目付量が低く、磁気特性の改善に有利な薄くて緻密な内部酸化膜を鋼板表層部に形成することができる。
ここで、上記脱炭焼鈍後のC含有量は、製品板が磁気時効を起こさないようにする観点から、0.0040mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.0035mass%以下である。
また、上記脱炭焼鈍後の酸素目付量は、優れた磁気特性を得る観点から、0.7〜1.1g/mの範囲とするのが好ましい。1.1g/mを超えると、内部酸化膜の形態が劣化するため、仕上焼鈍中に、焼鈍雰囲気中の水分の影響を受けて鋼板が酸化され易くなる。一方、0.7g/m未満では、逆に、薄くて緻密な内部酸化膜を形成させるのに不十分だからである。より好ましくは0.75〜1.05g/mの範囲である。
また、本発明の製造方法においては、脱炭焼鈍における均熱過程の終了後、温度を下げることなく、引き続き、還元処理を施すことが好ましい。この還元処理により、内部酸化層の形態が改善されて、インヒビター効果の低減を抑止することができるので、磁気特性をさらに改善することができる。上記還元処理は、温度は820〜920℃で、雰囲気の酸化度は酸素ポテンシャルPH2O/PH2で0.2以下として実施するのが好ましい。還元処理温度が820℃より低いと、磁気特性の改善効果が小さく、一方、920℃を超えると、一次再結晶粒が粗大化し、却って磁気特性が劣化する。また、雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2が0.2より大きいと、還元雰囲気ではなくなり、内部酸化層の形態を改善する効果がなくなってしまう。
なお、二次再結晶にインヒビターを利用する場合、上記インヒビターの効果を積極的に補強する手段として、上記脱炭焼鈍と同時に、あるいは脱炭焼鈍の前または後の工程において、窒化処理を施してもよい。
次いで、上記脱炭焼鈍を施した鋼板は、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布、乾燥した後、仕上焼鈍を施し、Goss方位に高度に集積させた二次再結晶組織を発達させるとともに、フォルステライト被膜を形成させる。
上記仕上焼鈍は、二次再結晶を発現させるためには800℃以上の温度に加熱することが、また、二次再結晶を完了させるためには1100℃の温度まで加熱することが好ましい。さらに上記二次再結晶焼鈍に引き続いて、フォルステライト被膜を形成させるため、および/または、二次再結晶を起こさせるためにインヒビターを利用している場合には、上記インヒビター形成成分を製品板から除去するため、水素雰囲気下で、1200℃程度、具体的には、1150〜1240℃の温度に2〜50hr保持する純化処理を施すことが好ましい。
上記仕上焼鈍後の鋼板は、その後、鋼板表面に付着した未反応の焼鈍分離剤を除去する水洗やブラッシング、酸洗等を行った後、鉄損低減のため、平坦化焼鈍を施して形状矯正を行うことが好ましい。これは、仕上焼鈍はコイル状態で行うのが一般的であるため、コイルの巻き癖によって磁気特性が劣化するのを防止するためである。
さらに、鋼板を積層して使用する場合には、上記平坦化焼鈍において、または、その前後において、鋼板表面に絶縁被膜を被成するのが好ましい。この際、鉄損をより低減するためには、絶縁被膜として、鋼板に張力を付与することができる張力付与被膜を適用するのが好ましい。また、被膜密着性に優れかつ鉄損低減効果が大きい張力付与被膜を被成するためには、バインダーを介して張力被膜を塗布する方法や、物理蒸着法や化学蒸着法で無機物を鋼板表層に蒸着させてから張力被膜を塗布する方法を採用するのが好ましい。
さらに、鉄損をより低減するためには、磁区細分化処理を施すことが好ましい。磁区細分化の方法としては、一般的に実施されている、最終製品板の表面に電子ビームやレーザービーム、プラズマ等の熱エネルギーを照射して線状または点状の熱歪を導入する方法、最終製品板の表面に線状または点状の圧痕やスクラッチ等の加工歪を導入する方法、最終板厚に冷間圧延した鋼板表面に、中間工程でエッチング加工を施して線状または点状の溝を形成する方法等を用いることができる。
C:0.070mass%、Si:3.35mass%、Mn:0.10mass%、Al:0.025mass%、Se:0.025mass%およびN:0.012mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成の鋼スラブを連続鋳造法で製造し、1420℃の温度に再加熱した後、熱間圧延して、板厚2.4mmの熱延板とし、1000℃×50sの熱延板焼鈍を施した後、一次冷間圧延により1.8mmの中間板厚とし、1100℃×20sの中間焼鈍を施した後、二次冷間圧延して最終板厚が0.23mmの冷延板とした後、一次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍を施した。ここで、上記脱炭焼鈍における均熱過程は、前段の40sと後段の40sの2段に分け、加熱過程、均熱過程前段および後段それぞれの温度、雰囲気の酸化(酸素ポテンシャルPH2O/PH2)を、表2に示した脱炭条件A〜Cのいずれかの条件に設定した。さらに、上記均熱過程に引き続き、かつ、温度を780℃以下に降温することなく、雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2を0.01〜0.3とした還元雰囲気下で、800〜950℃の温度で1〜50s間均熱する還元処理を施した。その後、上記脱炭焼鈍後の鋼板から、サンプルを採取し、脱炭焼鈍後のC含有量および酸素目付量を分析した。
Figure 0006859935
次いで、上記脱炭焼鈍後の鋼板表面にMgOを主体とした焼鈍分離剤を塗布、乾燥した後、二次再結晶させた後、さらに1200℃×10時間の純化処理する仕上焼鈍を施した。この際、上記仕上焼鈍の雰囲気は、純化処理する1200℃保定時はH、それ以外の加熱時および降温時はNとした。
上記のようにして得た仕上焼鈍後の鋼板の磁気特性を、実機トランスに近い条件で評価するため、板幅方向に、幅100mm×長さ400mmの試験片を各条件で10枚ずつ採取し、一度、150mmφの曲げ棒で曲げて、曲げ戻した後、800℃×3hrの歪取焼鈍を施し、その後、JIS C2556:1996に記載の方法で磁束密度B(T)および鉄損W17/50(W/kg)を測定し、それぞれの平均値を求めた。その結果を表3に示す。同表から、脱炭焼鈍の均熱過程終了後、さらに還元処理を施すことで、高磁束密度で低鉄損の方向性電磁鋼板が得られることがわかる。
Figure 0006859935
表4に記載した種々の成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを連続鋳造法で製造し、1380℃の温度に再加熱した後、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とし、1030℃×10sの熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延して最終板厚が0.23mmの冷延板に仕上げた。その後、前述した表2に記載したA〜Cのいずれかの条件で脱炭焼鈍を施した。なお、上記脱炭焼鈍後の鋼板から、サンプルを採取し、脱炭焼鈍後のC含有量および酸素目付量を分析した。
Figure 0006859935
次いで、上記脱炭焼鈍後の鋼板表面にMgOを主体とした焼鈍分離剤を塗布、乾燥した後、二次再結晶させた後、さらに1220℃×4時間の純化処理する仕上焼鈍を施した。この際、上記仕上焼鈍の雰囲気は、純化処理する1220℃保定時はH、それ以外の加熱時および降温時はArとした。
上記のようにして得た仕上焼鈍後の鋼板の磁気特性を、実機トランスに近い条件で評価するため、板幅方向に、幅100mm×長さ400mmの試験片を各条件で10枚ずつ採取し、一度、150mmφの曲げ棒で曲げて、曲げ戻した後、800℃×3hrの歪取焼鈍を施し、その後、JIS C2556:1996に記載の方法で磁束密度Bおよび鉄損W17/50を測定し、それぞれの平均値を求めた。その結果を表4に併記した。同表から、本発明に適合する条件において、十分に脱炭するとともに、高磁束密度で、鉄損の低い方向性電磁鋼板が得られていることがわかる。

Claims (5)

  1. C:0.01〜0.10mass%、Si:2.5〜4.5mass%およびMn:0.01〜0.5mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、加熱過程、均熱過程および冷却過程からなる、一次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍を施した後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
    上記脱炭焼鈍の均熱過程を少なくとも2段に分けるとともに、
    上記脱炭焼鈍の加熱過程の760℃から均熱温度までの雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2をP、均熱過程の均熱開始から少なくとも40s間の前段の温度をT、その雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2をP、および、均熱過程の均熱終了前の少なくとも40s間の後段の温度をT、その雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2をPとしたとき、上記P、PおよびPをそれぞれ0.2〜0.5、T1を780〜820℃およびT2を830〜920℃の範囲とし、かつ、上記T1およびT2に応じて、下記(1)式および(2)式を満たすよう、P0、P1およびPを調節し、上記脱炭焼鈍後のC含有量を0.0040mass%以下、酸素目付量を0.7〜1.1g/mの範囲とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。

    2T+T≦240(2P+P+P)+2160 ・・・(1)
    +T≧400(3P+3P+P)+640 ・・・(2)
  2. 上記脱炭焼鈍の均熱過程終了後、引き続いて、酸素ポテンシャルPH2O/PH2が0.2以下の雰囲気下で820〜920℃の温度に5〜40s間保持する還元処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 上記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、Al:0.010〜0.050mass%およびN:0.003〜0.020mass%を含有する、あるいは、
    Se:0.0050〜0.030mass%および/またはS:0.0050〜0.030mass%を含有する、あるいは、
    Al:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%、Se:0.0050〜0.030mass%および/またはS:0.0050〜0.030mass%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 上記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、Al:0.010mass%未満、N:0.0050mass%未満、S:0.0050mass%未満およびSe:0.0050mass%未満を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 上記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、Ni:0.010〜0.50mass%、Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Sn:0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.100mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.0100mass%、Nb:0.0010〜0.0100mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちか
    ら選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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