JP6544344B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、変圧器の鉄心材料に好適な方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
方向性電磁鋼板は、変圧器や発電機の鉄心材料として用いられる軟磁性材料で、鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有するものである。このような集合組織は、方向性電磁鋼板の製造工程中、二次再結晶焼鈍の際にいわゆるゴス(Goss)方位と称される{110}<001>方位の結晶粒を優先的に巨大成長させる、二次再結晶を通じて形成される。
この方向性電磁鋼板については、インヒビターと呼ばれる析出物を使用して仕上焼鈍中にGoss方位を有する粒を二次再結晶させることが一般的な技術として使用されている。例えば、特許文献1記載のAlNを使用する方法、特許文献2記載のMnS、MnSeを使用する方法などが開示され、工業的に実用化されている。これらのインヒビターを用いる方法は、1300℃超と高温でのスラブ加熱を必要とするが、安定して二次再結晶粒を発達させるのに極めて有用な方法であった。
これらのインヒビターを用いる方法は安定して二次再結晶粒を発達させるのに有用な方法であるが、インヒビターを鋼中に微細分散させるために、1300℃超の高温でスラブ加熱を行い、インヒビター形成成分を一度固溶させることが必要であった。また、二次再結晶後には磁気特性を劣化させる原因となることから、純化焼鈍を1100℃以上の高温とし、かつ雰囲気を制御することで地鉄中からインヒビターなどの析出物および介在物を除去する必要があった。
一方、インヒビター形成成分を含有させずに、ゴス方位結晶粒を二次再結晶により発達させる技術が特許文献3に提案されている。これは、インヒビター形成成分のような不純物を極力排除する事で、一次再結晶時の結晶粒界が持つ粒界エネルギーの粒界方位差角依存性を顕在化させ、インヒビターを用いずともGoss方位を有する粒を二次再結晶させる技術であり、その効果をテクスチャーインヒビション効果と呼んでいる。この方法では、インヒビターを純化する工程が不必要となるために、純化焼鈍を高温化する必要がないこと、さらにインヒビターの鋼中微細分散が必要ではないため、当該微細分散のために必須であった高温スラブ加熱も必要としないことなど、コスト面でもメンテナンス面でも大きなメリットを供する方法である。
特公昭40-15644号公報 特公昭51-13469号公報 特開2000-129356号公報
しかしながら、インヒビター形成成分を含有しない素材ではコイルの中での磁性ばらつきが大きい問題が顕在化した。この原因について鋭意調査した結果、インヒビター形成成分を含有しない素材では、一次再結晶焼鈍時に粒成長を抑制し、一定の粒径にそろえる機能を有するインヒビターが存在しない。そのため、工程条件や素材成分が若干変わっただけで一次再結晶後の鋼板の結晶粒径の変動が大きかったり、不均一な粒径分布になることが原因と推定された。このような変動は、コイル内でも生じる可能性があり、これが原因で磁気特性がばらつくものと考えられた。このように、これまで提案されてきたインヒビター形成成分を含有しない素材を用いた方向性電磁鋼板の製造方法では、良好な磁気特性を安定的に実現することは必ずしも容易ではなかった。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、インヒビター形成成分を使用せずにスラブから製造された方向性電磁鋼板について、優れた磁気特性を安定して得ることを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、インヒビターレス素材において、偏析元素をさらに含有させ、かつ熱延板焼鈍の冷却初期に緩やかに冷却させることで、磁気特性を向上させかつ磁気特性のばらつきを低減できることを新規に知見した。以下本発明を導くに至った実験について説明する。
<実験>
質量%でC:0.024%、Si:3.42%、Mn:0.060%、Al:0.0018%、N:0.0013%、S:0.0011%、Se:0.0010%、Sb:0.055%を含み残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブAとC:0.025%、Si:3.40%、Mn:0.060%、Al:0.0020%、N:0.0010%、S:0.0010%、Se:0.0010%を含みSbは含有せず、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブBとを連続鋳造にて製造し、1230℃で70分均熱するスラブ加熱した後、熱間圧延により2.7mmの厚さに仕上げた。その後、1075℃で30秒、乾燥窒素雰囲気の熱延板焼鈍を施した。その際、1075℃で温度保持後900℃までの冷却速度を種々変更した。900℃以下の温度域の冷却速度は35℃/sとした。
その後、冷間圧延で0.23mmの板厚に仕上げ、さらに、850℃で100秒、50%H2-50%N2、露点50℃の湿潤雰囲気下での脱炭をともなう一次再結晶焼鈍を施した。さらにMgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、1200℃で5時間、水素雰囲気下で保定する二次再結晶焼鈍を行った。
得られたサンプルのB8(800A/mで励磁した時の磁束密度)をJIS C2550に記載の方法で測定した。本実験では、コイル内の磁性ばらつきを評価するため、コイルの長手方向両端部、中心部、さらに両端部と中心部の中間の位置の計5箇所で評価し、5箇所の中の最大値と最小値を評価した。この両者の乖離が大きいと、ばらつきが大きいといえる。得られた磁束密度と熱延板焼鈍の冷却工程における900℃までの冷却速度との関係を図1に示す。この図から、Sbを含有する鋼スラブAにおいて、冷却速度が1〜10℃/sの範囲で磁束密度が良好でかつばらつきが小さいことがわかる。
このように、インヒビターレス素材において、Sbを含有し、かつ熱延板焼鈍の冷却において900℃までは冷却速度が比較的遅い領域で磁気特性が良好となりかつばらつきも低減するメカニズムは必ずしも明らかにはなってはいないが、発明者らは次のように考えている。
Sbは鋼の結晶粒界に偏析しやすい元素として知られている。本実験の場合、1075℃で焼鈍している際は、高温のために偏析量は多くないと考えられる。続いて冷却過程では、900℃までを10℃/sを超えた冷却速度で冷却した場合には、Sbが偏析する時間が少なく、熱延板焼鈍後の粒界偏析量が少ないと考えられる。一方10℃/s以下であれば、多くのSbが粒界に偏析した状態になったと考えられる。Sbが粒界に偏析すると、次工程の冷間圧延でGoss核を含んだ変形帯が数多く発生し、最終製品でのGoss方位先鋭性がアップして磁気特性が良好となり、かつばらつきも低減したものと考えられる。
このように考えると、900℃よりも低温まで冷却速度を遅くする方が偏析量が増加して、より磁性向上効果が発揮されるようにも思われる。しかしながら、インヒビターを含まない成分組成としても、Al、N、S、およびSeは、本実験レベルの量程度が不可避に含まれる可能性が高い。これらは、微量であるため高温では固溶しているが、900℃未満となるとAlN、MnS、およびMnSeなどの析出物として鋼中に出現してくる。この析出物が後の一次再結晶焼鈍時の再結晶組織に影響を与え、磁気特性を劣化させる可能性があると推測される。逆に考えると、Al、N、S、およびSe元素が多いと900℃以上でも析出物が形成される可能性があるため、これらインヒビター形成成分をできるだけ低減する必要がある。
また、本実験ではSbを含有させたが、同様の偏析能を有するSn、Mo、およびPを含有させても同じ効果が得られた。
以上のように本発明者らは、インヒビターレス素材において、上記偏析能を有する元素(偏析元素)をさらに含有させ、かつ熱延板焼鈍の冷却初期に緩やかに冷却させることで、磁気特性を向上させかつばらつきを低減することに成功した。
本発明は、上記の新規な知見に立脚するものであり、その要旨構成は、以下のとおりである。
1.質量%で、
C:0.002%以上0.100%以下、
Si:2.00%以上8.00%以下および
Mn:0.005%以上1.000%以下を含有し、
Sn:0.010%以上0.400%以下、Sb:0.010%以上0.400%以下、Mo:0.010%以上0.200%以下およびP:0.010%以上0.200%以下のうちから選ばれる1種または2種以上をさらに含有し、
Al:0.0100%未満、N:0.0050%未満、S:0.0050%未満およびSe:0.0050%未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する、スラブを1300℃以下で加熱してから熱間圧延を施して熱延鋼板とし、
該熱延鋼板に熱延板焼鈍を施して熱延焼鈍板とし、
該熱延焼鈍板に、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚を有する冷延鋼板とし、
該冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施し、
該一次再結晶焼鈍後の冷延鋼板に二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記熱延板焼鈍での保持温度を1000℃以上1150℃以下とし、保持後の冷却における、該保持温度から900℃までの冷却速度を1℃/s以上10℃/s以下とする方向性電磁鋼板の製造方法。
2.前記保持温度から900℃までの冷却速度を1℃/s以上5℃/s以下とする、上記1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
3.前記冷却における、900℃から350℃までの冷却速度を20℃/s以上とする、上記1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
4.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
Cr:0.01%以上0.50%以下、
Cu:0.01%以上0.50%以下、
Ni:0.01%以上0.50%以下、
Bi:0.005%以上0.500%以下、
B:0.0002%以上0.0025%以下および
Nb:0.0010%以上0.0100%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、上記1から3のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、インヒビター形成成分を使用せずにスラブから製造された方向性電磁鋼板について、優れた磁気特性を安定して得ることができる。
熱延板焼鈍の冷却工程における900℃までの冷却速度と磁束密度B8との関係を示すグラフである。
[成分組成]
以下、本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板およびその製造方法について説明する。まず、鋼の成分組成の限定理由について述べる。なお、本明細書において、各成分元素の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
C:0.002%以上0.100%以下
Cは0.100%を超えると、脱炭焼鈍後に磁気時効の起こらない0.005%以下に低減することが困難になるので0.100%以下に限定される。一方、0.002%に満たないと、Cによる粒界強化効果が失われ、スラブにクラックが生じるなど、操業性に支障がでる欠陥を引き起こす。従って、Cは0.002%以上0.100%以下とする。好ましくは、0.010%以上0.050%以下である。
Si:2.00%以上8.00%以下
Siは鋼の比抵抗を高め、鉄損を改善させるために必要な元素であるが、2.00%未満であると効果がなく、8.00%を超えると鋼の加工性が劣化し、圧延が困難となることから2.00%以上8.00%以下とする。好ましくは、2.50%以上4.50%以下である。
Mn:0.005%以上1.000%以下
Mnは熱間加工性を良好にするために必要な元素であるが、0.005%未満であると効果がなく、1.000%を超えると製品板の磁束密度が低下するので、0.005%以上1.000%以下とする。好ましくは、0.040%以上0.200%以下である。
Sn:0.010%以上0.400%以下、Sb:0.010%以上0.400%以下、Mo:0.010%以上0.200%以下およびP:0.010%以上0.200%以下のうちから選ばれる1種または2種以上
磁気特性を大幅に向上させるために、偏析元素であるSn:0.010%以上0.400%以下、Sb:0.010%以上0.400%以下、Mo:0.010%以上0.200%以下、P:0.010%以上0.200%以下の少なくとも一種類を含有することが必須である。それぞれ、下限値よりも量が少ないと磁性向上効果がなく、上限値よりも量が多いと鋼が脆化して製造途中に破断等が発生するリスクが高まる。好ましくは、Sn:0.020%以上0.100%以下、Sb:0.020%以上0.100%以下、Mo:0.020%以上0.070%以下、P:0.012%以上0.100%以下である。
インヒビター形成成分であるAl、N、SおよびSeの含有量は極力低減し、Al:0.0100%未満、N:0.0050%未満、S:0.0050%未満およびSe:0.0050%未満に制限される。好ましくは、Al:0.0070%未満、N:0.0040%未満、S:0.0030%未満、Se:0.0030%未満である。
本発明における基本成分は、上記したとおりであり、残部はFeおよび不可避的不純物である。かかる不可避的不純物としては、原料、製造設備等から不可避的に混入する不純物が挙げられる。また、本発明では、その他にも以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
本発明では、磁気特性の改善を目的として、質量%で、Cr:0.01%以上0.50%以下、Cu:0.01%以上0.50%以下、Ni:0.01%以上0.50%以下、Bi:0.005%以上0.500%以下、B:0.0002%以上0.0025%以下およびNb:0.0010%以上0.0100%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を適宜含有させることができる。各成分組成の添加量が下限量より少ない場合には、磁気特性の向上効果がなく、上限量を超える場合には、二次再結晶粒の発達が抑制されて磁気特性が劣化する。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
所定の成分調整がなされた溶鋼を通常の造塊法もしくは連続鋳造法でスラブを製造する。100mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造してもよいが、その場合には、以下の加熱および熱間圧延工程は行わない。任意添加成分は、途中工程で加えることは困難であることから、溶鋼段階で添加する。
[加熱]
スラブは通常の方法で加熱して熱間圧延するが、本成分系ではインヒビターを固溶させるための高温焼鈍を必要としないため、1300℃以下の低温で加熱する。これにより、コストを低減することができる。好ましくは1250℃以下である。均熱時間は、スラブを内部まで加熱させるため5分以上が望ましく、コストの観点から120分以下とするのが望ましい。
[熱間圧延]
上記加熱後に、熱間圧延を行う。熱間圧延温度は、仕上圧延開始温度を900℃以上、終了温度を750℃以上とすることが、特性向上のため望ましい。ただし、終了温度は、熱延スケール特性が変化するため、1000℃以下とすることが望ましい。
[熱延板焼鈍]
上記熱間圧延後に、熱延板焼鈍を行う。不可避に含まれ得る、Al、S、Se、およびNを固溶させるために、熱延板焼鈍での保持温度は1000℃以上が必須である。ただし、熱延板焼鈍の保持温度が1150℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化しすぎるため、所望の一次再結晶組織が得られない。よって、熱延板焼鈍の保持温度は1150℃以下とする。好ましくは1025℃以上1100℃以下である。保持時間は、同様の理由により、5秒以上300秒以下が好ましい。
また、上述の理由により、熱延板焼鈍後の冷却は、保持温度から900℃までの冷却速度を1℃/s以上10℃/s以下とすることが必須である。好ましくは、1℃/s以上5℃/s以下である。さらに900℃から350℃までの冷却については20℃/s以上の急冷とするほど好ましい。これらの冷却速度は区間平均とする。上記冷却の方法は限定されるものではないが、900℃までは水蒸気ミスト冷却を行い、急冷は水を鋼板に噴射して行うことが望ましい。
[冷間圧延]
熱延板焼鈍後に、中間焼鈍を必要に応じて挟む1回以上の冷間圧延を施して最終板厚を有する冷延鋼板とする。中間焼鈍温度は950℃以上1200℃以下が好適である。950℃未満であると不可避に含まれ得る、Al、S、Se、およびNの固溶が進まない。また、1200℃を超えると、焼鈍後の粒径が粗大になりすぎるため所望の一次再結晶組織が得られない。また、中間焼鈍時間は、10秒以上、300秒以下程度とすることが同様の理由により好ましい。最終冷間圧延では、冷間圧延の温度を100〜300℃に上昇させて行うこと、および冷間圧延途中で100〜300℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことが、再結晶集合組織を変化させて磁気特性を向上させるため有効である。
[一次再結晶焼鈍]
上記冷間圧延後に一次再結晶焼鈍を施す。当該一次再結晶焼鈍は、脱炭焼鈍を兼ねることとしてもよい。一次再結晶焼鈍は、800℃以上900℃以下が脱炭性の観点から有効である。さらに脱炭の観点からは、雰囲気は湿潤雰囲気とすることが望ましい。また、焼鈍時間は、20秒〜300秒程度とすることが好ましい。ただし、脱炭が不要なC:0.005%以下しか含有していない場合はこの限りではない。
[焼鈍分離剤の塗布]
上記一次再結晶焼鈍後の鋼板に、必要に応じて焼鈍分離剤を塗布する。ここで、鉄損を重視してフォルステライト被膜を形成させる場合には、MgOを主体とする焼鈍分離剤を適用することで、その後、純化焼鈍を兼ねて二次再結晶焼鈍を施すことにより二次再結晶組織を発達させると共にフォルステライト被膜を形成することができる。打ち抜き加工性を重視してフォルステライト被膜を必要としない場合には、焼鈍分離剤を適用しないか、適用する場合でもフォルステライト被膜を形成するMgOは使用せずに、シリカやアルミナ等を用いる。これらの焼鈍分離剤を塗布する際は、水分を持ち込まない静電塗布等を行うことが有効である。耐熱無機材料シート(シリカ、アルミナ、マイカ)を用いてもよい。
[二次再結晶焼鈍]
上記一次再結晶焼鈍後または焼鈍分離剤塗布後に二次再結晶焼鈍を行う。二次再結晶焼鈍は、純化焼鈍を兼ねることとしてもよい。純化焼鈍を兼ねた二次再結晶焼鈍は、二次再結晶発現のために800℃以上で行うことが望ましい。また、二次再結晶を完了させるために800℃以上の温度で20時間以上保持させることが望ましい。打ち抜き性を重視してフォルステライト被膜を形成させない場合には、二次再結晶が完了すればよいので保持温度は850〜950℃が望ましく、この温度域での保持までで焼鈍を終了することも可能である。鉄損を重視する場合や、トランスの騒音を低下させるためにフォルステライト被膜を形成させる場合は、1200℃程度まで昇温させることが望ましい。
[平坦化焼鈍]
上記二次再結晶焼鈍後に、必要に応じて平坦化焼鈍を行う。焼鈍分離剤を適用した場合には、水洗やブラッシング、酸洗を行い、付着した焼鈍分離剤を除去する。その後、平坦化焼鈍を行い形状を矯正することが鉄損低減のために有効である。平坦化焼鈍温度は、750〜1000℃程度が形状矯正の観点から好適である。
[絶縁コーティング]
鋼板を積層して使用する場合には、鉄損を改善するために、平坦化焼鈍前もしくは後に、鋼板表面に絶縁コーティングを施すことが有効である。コーティングとしては、鉄損低減のために鋼板に張力を付与できるものが望ましい。バインダーを介した張力コーティング塗布方法や、物理蒸着法や化学蒸着法により無機物を鋼板表層に蒸着させてコーティングとする方法を採用することが好ましい。これらの方法は、コーティング密着性に優れ、かつ著しい鉄損低減効果が得られるためである。
[磁区細分化処理]
上記平坦化焼鈍後に、鉄損低減のために、磁区細分化処理を行うことが有効である。処理方法としては、例えば、一般的に実施されているような、最終製品板に溝をいれる方法、レーザーや電子ビームにより線状に熱歪や衝撃歪を導入する方法、最終仕上板厚に達した冷間圧延板などの中間製品にあらかじめ溝をいれる方法が挙げられる。
その他の製造条件は、方向性電磁鋼板の一般的な製造方法に従えばよい。
(実施例1)
質量%でC:0.009%、Si:3.11%、Mn:0.040%、Al:0.0020%、N:0.0009%、S:0.0015%、Se:0.0020%、P:0.150%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1230℃で80分均熱するスラブ加熱を施した後、熱間圧延により2.0mmの厚さに仕上げた。その後、1000℃で20秒、乾燥窒素雰囲気の熱延板焼鈍を施した。その際、1000℃で温度保持後900℃までの冷却速度および900℃から350℃までの冷却速度を種々変更した。その後、冷間圧延で0.18mmの板厚に仕上げ、さらに、800℃で70秒、52%H2-48%N2、露点60℃の湿潤雰囲気下での脱炭をともなう一次再結晶焼鈍を施した。
その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、1225℃で10時間、水素雰囲気下で保定する二次再結晶焼鈍を行った。得られたサンプルのB8(800A/mで励磁した時の磁束密度)をJIS C2550に記載の方法で測定した。本実験では、コイル内の磁性ばらつきを評価するため、コイルの長手方向両端部、中心部、さらに両端部と中心部の中間の位置の計5箇所で評価し、5箇所の中の最大値と最小値を評価した。この両者の乖離が大きいと、ばらつきが大きいといえる。得られた磁束密度B8との熱延板焼鈍工程の冷却速度との関係を表1に示す。表1から明らかなように、本発明範囲内の冷却速度条件において、良好でばらつきの小さい磁気特性が得られることがわかる。
Figure 0006544344
(実施例2)
表2記載の成分を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1150℃で35分均熱するスラブ加熱を施した後、熱間圧延により2.3mmの厚さに仕上げた。その後、1125℃で20秒、乾燥窒素雰囲気の熱延板焼鈍を施した。その際、1125℃で温度保持後900℃までの冷却速度を5℃/s、900℃から350℃までの冷却速度を40℃/sとした。その後、冷間圧延で0.23mmの板厚に仕上げ、さらに、840℃で150秒、55%H2-45%N2、露点60℃の湿潤雰囲気下での脱炭をともなう一次再結晶焼鈍を施した。
その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、1200℃で10時間、水素雰囲気下で保定する二次再結晶焼鈍を行った。得られたサンプルのB8(800A/mで励磁した時の磁束密度)をJIS C2550に記載の方法で測定した。本実験では、コイル内の磁性ばらつきを評価するため、コイルの長手方向両端部、中心部、さらに両端部と中心部の中間の位置の計5箇所で評価し、5箇所の中の最大値と最小値を評価した。この両者の乖離が大きいと、ばらつきが大きいといえる。得られた磁束密度B8と熱延板焼鈍工程の冷却速度との関係を表2に併記する。表2から明らかなように、本発明範囲内の冷却速度条件において、良好でばらつきの小さい磁気特性が得られることがわかる。
Figure 0006544344

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.002%以上0.100%以下、
    Si:2.00%以上8.00%以下および
    Mn:0.005%以上1.000%以下を含有し、
    Sn:0.010%以上0.400%以下、Sb:0.010%以上0.400%以下、Mo:0.010%以上0.200%以下およびP:0.010%以上0.200%以下のうちから選ばれる1種または2種以上をさらに含有し、
    Al:0.0100%未満、N:0.0050%未満、S:0.0050%未満およびSe:0.0050%未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する、スラブを1300℃以下で加熱してから熱間圧延を施して熱延鋼板とし、
    該熱延鋼板に熱延板焼鈍を施して熱延焼鈍板とし、
    該熱延焼鈍板に、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚を有する冷延鋼板とし、
    該冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施し、
    該一次再結晶焼鈍後の冷延鋼板に二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記熱延板焼鈍での保持温度を1000℃以上1150℃以下とし、保持後の冷却における、該保持温度から900℃までの冷却速度を1℃/s以上10℃/s以下とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記保持温度から900℃までの冷却速度を1℃/s以上5℃/s以下とする、請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記冷却における、900℃から350℃までの冷却速度を20℃/s以上とする、請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    Cr:0.01%以上0.50%以下、
    Cu:0.01%以上0.50%以下、
    Ni:0.01%以上0.50%以下、
    Bi:0.005%以上0.500%以下、
    B:0.0002%以上0.0025%以下および
    Nb:0.0010%以上0.0100%以下
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1から3のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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