JP2001303131A - 表面欠陥が極めて少なくかつ磁気特性に優れる高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

表面欠陥が極めて少なくかつ磁気特性に優れる高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法

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JP2001303131A JP2000123907A JP2000123907A JP2001303131A JP 2001303131 A JP2001303131 A JP 2001303131A JP 2000123907 A JP2000123907 A JP 2000123907A JP 2000123907 A JP2000123907 A JP 2000123907A JP 2001303131 A JP2001303131 A JP 2001303131A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 方向性電磁鋼板の製造に際し、インヒビター
としてBiを利用した場合に懸念された2次再結晶の不安
定性を解消して、極めて高い磁束密度B8 を達成すると
共に、Bi含有鋼に本質的に内在する被膜特性不良を効果
的に解消する。 【解決手段】 方向性電磁鋼板の製造工程中、特に熱間
圧延に際し、粗圧延開始前に、1125℃以上の温度で1時
間以上、10時間以下の加熱処理を、平均酸素濃度:100
〜50000 ppm の雰囲気中で行い、かつ粗圧延開始から仕
上げ圧延終了までの時間を30秒以上 300秒以内とし、さ
らに上記の圧延中、圧延材の表面温度を板厚中心温度よ
り常に低い状態に保持する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、変圧器や発電機等
の鉄心に用いて好適な方向性電磁鋼板の製造方法に関
し、特に表面性状および磁気特性の有利な改善を図ろう
とするものである。
【0002】
【従来の技術】Siを含有し、かつ製品の結晶方位が{1
10}<001>方位に配向した方向性電磁鋼板は、優
れた軟磁気特性を呈することから、商用周波数域での各
種鉄心材料として広く使用されている。かような電磁鋼
板に要求される特性としては、50Hzの周波数で 1.7Tに
磁化させた時の鉄損値W17/50 (W/kg)が低いことが特に
重要とされる。
【0003】一般に電磁材料の鉄損を低減するには、渦
電流損の低減に有効なSiの含有量を増加して電気抵抗を
高める方法、鋼板板厚を薄くする方法、製品の結晶粒径
を小さくする方法、さらには結晶方位の集積度を高めて
磁束密度を向上させる方法等が知られている。このう
ち、Si含有量を増加させる方法については、Siを過度に
含有させると圧延性や加工性を劣化させるために限界が
あり、またこれ以上鋼板板厚を薄くする方法や結晶粒径
を小さくする方法は、製造コストの極端な増大を招くの
で好ましくない。
【0004】残る磁束密度を向上させる方法について
は、これまでよく研究されていて、その特徴は、2次再
結晶を支配するインヒビターと呼ばれる析出物の種類の
選定と、それに伴う形態制御技術に尽きるといっても過
言ではない。インヒビターの制御は、主に熱延工程にお
ける均一微細分散によるところが大きいが、他の工程も
常にその形態制御を第一とする条件が選択されているの
が実状である。
【0005】代表的なインヒビターとしては、これまで
MnS,MnSeおよびAlN等が実用化されている。中でも、
AlNを主インヒビターとする場合、冷延工程で圧下率を
80%以上と高くすることにより{110}<001>方
位の2次再結晶に好適な集合組織を得ることができるこ
とから、高い磁束密度を工業的に実現している。また、
最近では、インヒビター機能の一層の強化を目的とし
て、例えば特公昭60−48886 号公報には鋼中にCuやSnを
添加する方法が、また特開平2−115319号公報にはSbや
Moを添加する方法が、それぞれ提案されている。
【0006】さらに、特公昭62−45285 号公報には、素
材中のSやSe量を低減して途中工程で窒化処理を行う方
法が開示されている。この方法によれば、インヒビター
の制御に必須とされたスラブの高温加熱を省略すること
が可能なため、従来行われてきた高温加熱に伴う様々な
欠陥を根本的に解決できる利点がある。そのため、この
方法に従えば、例えば特公昭57−41526 号公報に開示さ
れたような、連続鋳造スラブを製造する段階において電
磁撹拌を用いることによりスラブの結晶組織を改善し
て、次工程の高温加熱によるスラブの粒成長に起因した
2次再結晶不良を解消する方法等は、必ずしも必要な
い。
【0007】以上述べたように、方向性電磁鋼板の磁気
特性は大きく改善されてきたが、世界的な環境保護気運
が高まる中で、トランス製造メーカーの特性改善に対す
る要求はますます強まりつつある。
【0008】ところで、特開昭51−41624 号公報に開示
されているように、インヒビターの機能強化に極めて効
果の高い元素として古くからBiが良く知られている。し
かしながら、インヒビター機能の強化元素としてのBiの
効果は優れるものの 1)2次再結晶が不安定で磁気特性が安定しない、 2)方向性電磁鋼板に固有のフォルステライト被膜の生
成が阻害されるという欠陥があった。この点、特開平8
−232019号公報には、脱炭焼純後の酸素量を制御すると
共に、焼鈍分離剤中に特定の化合物等を添加することか
らなる被膜改善方法が開示されているが、この方法は未
解決な部分が多く、未だ工業的には実施されていないの
が実状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の現状
に鑑み開発されたもので、公知のインヒビターとりわけ
AlとNと共に、Biを併せて含有する方向性電磁鋼板を製
造する場合における2次再結晶の不安定性を解消して、
極めて高い磁束密度B8 が得られるだけでなく、Bi含有
鋼に本質的に内在する被膜特性不良を効果的に解消する
ことができる、表面欠陥が極めて少なくかつ磁気特性に
優れる高磁束密度方向性電磁鋼板の有利な製造方法を提
案することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上記
の目的を達成すべく、Biの2次再結晶および被膜形成に
及ぼす影響について鋭意研究を進めた結果、熱間圧延工
程における温度履歴が被膜特性および磁気特性に対して
極めて重要であることを新たに知見し、本発明の完成さ
せるに至ったのである。
【0011】すなわち、本発明の要旨構成は次のとおり
である。 1.Si:2.5 〜4.5 mass%と、CとNiのうちから選んだ
1種または2種を0.03≦C+(Ni/30) ≦0.10mass%の範
囲で含み、かつBi:0.005 〜0.05mass%と、インヒビタ
ー元素を含有する組成になる鋼スラブを、熱間圧延、冷
間圧延および熱処理を組み合わせた一連の工程によって
処理してなる方向性電磁鋼板の製造方法において、熱間
圧延に際し、粗圧延開始前に、1125℃以上の温度で1時
間以上、10時間以下の加熱処理を、平均酸素濃度:100
〜50000 ppm の雰囲気中で行い、かつ粗圧延開始から仕
上げ圧延終了までの時間を30秒以上 300秒以内とし、し
かも上記の圧延中、圧延材の表面温度を板厚中心温度よ
り常に低い状態に保持することを特徴とする、表面欠陥
が極めて少なくかつ磁気特性に優れる高磁束密度方向性
電磁鋼板の製造方法。
【0012】2.Si:2.5 〜4.5 mass%と、CとNiのう
ちから選んだ1種または2種を0.03≦C+(Ni/30) ≦0.
10mass%の範囲で含み、かつBi:0.005 〜0.05mass%お
よびMn:0.05〜1.5 mass%を含有し、さらにインヒビタ
ー元素として、Sおよび/またはSe:0.010 〜0.040 ma
ss%、sol.Al:0.015 〜0.050 mass%およびN:0.005
〜0.015 mass%を含有し、かつインヒビター補強元素と
して、Cu:0.05〜0.5 mass%、Sn:0.05〜0.5 mass%、
Sb:0.005 〜0.10mass%、As:0.005 〜0.10mass%、M
o:0.005 〜0.10mass%、Te:0.005 〜0.10mass%、
P:0.005 〜0.10mass%およびB:0.001 〜0.01mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成に
なる鋼スラブを、1350℃以上に加熱後、熱延板とし、必
要に応じて熱延板焼鈍を施し、酸洗後、1回または中間
焼純を含む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上
げたのち、1次再結晶を兼ねた脱炭焼鈍を施し、ついで
MgOを主成分とする焼純分離剤を塗布してから、2次再
結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施す
一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法におい
て、熱間圧延に際し、粗圧延開始前に、1125℃以上の温
度で1時間以上、10時間以下の加熱処理を、平均酸素濃
度:100 〜50000 ppm の雰囲気中で行い、かつ粗圧延開
始から仕上げ圧延終了までの時間を30秒以上 300秒以内
とし、しかも上記の圧延中、圧延材の表面温度を板厚中
心温度より常に低い状態に保持することを特徴とする、
表面欠陥が極めて少なくかつ磁気特性に優れる高磁束密
度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0013】3.Si:2.5 〜4.5 mass%と、CとNiのう
ちから選んだ1種または2種を0.03≦C+(Ni/30) ≦0.
10mass%の範囲で含み、かつBi:0.005 〜0.05mass%お
よびMn:0.05〜1.5 mass%を含有し、さらにインヒビタ
ー元素として、Sおよび/またはSe:0.010 〜0.040 ma
ss%、sol.Al:0.015 〜0.050 mass%およびN:0.005
〜0.015 mass%を含有し、かつインヒビター補強元素と
して、Cu:0.05〜0.5 mass%、Sn:0.05〜0.5 mass%、
Sb:0.005 〜0.10mass%、As:0.005 〜0.10mass%、M
o:0.005 〜0.10mass%、Te:0.005 〜0.10mass%、
P:0.005 〜0.10mass%およびB:0.001 〜0.01mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成に
なる鋼スラブを、1250℃以下に加熱後、熱延板とし、必
要に応じて熱延板焼鈍を施し、酸洗後、1回または中間
焼純を含む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上
げたのち、1次再結晶を兼ねた脱炭焼鈍を施し、ついで
MgOを主成分とする焼純分離剤を塗布してから、2次再
結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施
し、しかも熱間圧延終了後、2次再結晶開始前までのい
ずれかの工程にて窒化処理を行う一連の工程からなる方
向性電磁鋼板の製造方法において、熱間圧延に際し、粗
圧延開始前に、平均酸素濃度:100 〜50000 ppm の雰囲
気中において、1125℃以上の温度で1時間以上、10時間
以下の加熱処理を行い、かつ粗圧延開始から仕上げ圧延
終了までの時間を30秒以上 300秒以内とし、しかも上記
の圧延中、圧延材の表面温度を板厚中心温度より常に低
い状態に保持することを特徴とする、表面欠陥が極めて
少なくかつ磁気特性に優れる高磁束密度方向性電磁鋼板
の製造方法。
【0014】4.上記1,2または3において、良好な
フォルステライト被膜を生成するために、鋼スラブ中に
さらに、Cr:0.05〜0.50mass%を含有させることを特徴
とする、表面欠陥が極めて少なくかつ磁気特性に優れる
高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の基礎となった実験
結果について説明する。まず、Bi添加鋼の磁気特性に及
ぼす熱延条件の影響を明らかにする目的で、次の実験を
行った。なお、以後、各元素の含有量の表示に用いる
「%」は、特に断わりがない限り質量百分率(mass%)
を表すものとする。C:0.06%, Si:3.33%, Mn:0.06
%, Se:0.024 %, Al:0.028 %, N:0.0090%, Bi:
0.025 %およびCu:0.08%を含有する組成になる連鋳ス
ラブを、表1に示す種々のスラブ加熱条件および熱延条
件で 2.7mm厚の熱延板とした。スラブ加熱は、ガス加熱
炉で加熱後、引き続き電気式(誘導式)加熱炉で加熱し
た。ついで、 950℃, 1分間の熱延板焼鈍を施し、急冷
処理を経てから、酸洗し、ついで冷間圧延により 1.8mm
の中間厚としたのち、1120℃,120 秒間の中間焼鈍およ
び35℃/sの冷却速度での急冷処理を経て、 200℃の温間
圧延を含む冷間圧延(圧延ロール径:70mm)によって最
終板厚:0.22mmの冷延板に仕上げた。その後、 840℃で
2分間の脱炭焼鈍後、860 ℃で表面層をSiO2に還元した
後、MgOを主成分とする焼純分離剤を片面当たり6g/m2
塗布してから、窒素雰囲気中で 850℃まで8℃/hの速度
で昇温し、その後窒素:25 vol%と水素:75 vol%の雰
囲気中にて10℃/hの昇温速度で1200℃まで加熱し、1200
℃で5時間のH2純化焼鈍を行った。
【0016】かくして得られた方向性電磁鋼板の磁気特
性および被膜特性について調べた結果を、表2に示す。
なお、磁気特性は、800 A/m で磁化したときの磁束密度
8(T)および磁束密度:1.7 T、周波数:50Hzにおけ
る鉄損W17/50(W/kg) で評価した。また、被膜特性は、
製品板を丸棒に巻付けた時の被膜の剥離限界直径で判断
する曲げ剥離特性で評価した。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】表2に示したとおり、Bi添加鋼において
は、従来から管理されてきた仕上げ入側温度やコイル巻
取り温度などよりも、むしろスラブ加熱時における雰囲
気や熱間圧延時の時間および熱延板の表面と中心部との
温度差といった、従来あまり管理されていなかった項目
がある一定条件で組み合わされた時に、良好な被膜特性
と磁気特性が得られることが判明した。
【0020】上記の実験において、被膜特性が良好とな
った理由は、熱延工程でその表面が改質されたためと考
えられる。そこで、スラブ加熱時における加熱温度と雰
囲気の酸素濃度がスラブ表面に及ぼす影響を明らかにす
るために、次の実験を行った。供試鋼成分として、C:
0.05%, Si:3.15%, Mn:0.055 %, Bi:0.015 %,A
l:0.022 %, N:0.0075%およびS:0.020 %を含有
する組成になる鋼を、連続鋳造によってスラブとしたの
ち、 100mm×100mm ×100mm のサンプルを切り出した。
このサンプルを、加熱雰囲気中の酸素濃度と加熱温度を
種々に変化させて、3時間均熱炉に装入した。その後、
地鉄表層のBi量を蛍光X線を用いて測定した結果を、加
熱雰囲気中の酸素濃度との関係で図1に示す。
【0021】同図に示したように、ある特定範囲すなわ
ち、加熱雰囲気中の平均酸素濃度が100 ppm 以上で、か
つ加熱温度が1125℃以上の場合に、地鉄表層のBi量が母
材のそれに比べて 1/2以下まで低減することが明らかと
なった。また、加熱雰囲気中の平均酸素濃度が 50000 p
pmを超える加熱では、表面から5mm深い箇所でもBi濃度
が中心部のそれの 1/2以下まで低減することが判明し
た。
【0022】次に、スラブ加熱時における加熱温度と加
熱時間の関係を明らかにするために、雰囲気中の酸素濃
度は 2000ppmの一定とし、加熱温度と加熱時間を種々に
変化させた場合における地鉄表層のBi量について調査し
た。得られた結果を図2に示す。同図に示したとおり、
1125℃以上の温度で、1時間以上加熱することによっ
て、表面のBi濃度は中心部のそれの1/2 以下まで低減す
ることが判明した。
【0023】上記のようなスラブ加熱処理によって、被
膜特性と磁気特性が改善される理由は、次のように考え
られる。すなわち、Biは、鉄に対する固溶量が非常に少
ないため、鋼を連続鋳造でスラブとした場合、極めて均
一に分散し、スラブ表層にも板厚中心部と同じ濃度でBi
が存在する。このため、二次再結晶焼鈍時に表面層に存
在するBiがフォルステライトの生成を阻害し、著しい被
膜欠陥を引き起こすと共に、被膜欠陥により気相雰囲気
が鋼中に過度の作用をもたらし、鋼中のインヒビターの
分解挙動が大きく変動して、正常な二次再結晶が生じな
くなる。また、二次再結晶焼鈍は通常、コイル状に巻い
て行うため、鋼板の幅方向、長手方向で気相雰囲気との
接触の仕方が異なり、場所によって被膜形成と二次再結
晶のあり方が変化することから、均一な製品を作ること
が極めて困難となる。
【0024】従って、表層のBi濃度は、インヒビター強
度に影響を及ぼさない範囲で低下させる必要があると考
えられる。すなわち、前掲図1,2に示したように、ス
ラブ加熱を、平均酸素濃度が 100〜50000 ppm の雰囲気
中にて、1125℃以上の加熱温度で1時間以上行うことに
よって、表面に存在するBiをスケールと共に除去するこ
とが重要である。なお、この際、必要以上の高温保持は
表面層のみならず内部のBi濃度も低下するので、好まし
くない。
【0025】また、熱間圧延によって板厚を減じる際
は、表層からの過剰なBiの散逸を防止するため、表層の
温度を中心より常に低く保持することが重要と考えられ
る。すなわち、熱間圧延中は、圧延により鋼中に転位が
多量に導入されるため、拡散係数が非常に高くなるが、
表層の温度を低下させてやれば、表面での拡散速度を中
心層に対して遅くすることができ、その結果、中心層か
らのBiの拡散を抑えることができるものと考えられる。
【0026】さらに、熱間圧延時間に要する時間を所定
の範囲に制限することによって、Bi濃度を適切に制御す
ることができ、これにより板厚中心部に一定濃度以上の
Bi濃度を確保することで、二次再結晶時に必要な抑制力
を確保することが可能となる。かくして、従来のBi添加
による2次再結晶の不安定性が解消され、被膜特性の改
善と磁気特性の安定化の両立が可能になったものと考え
られる。
【0027】次に、発明者らは、Bi添加材のフォルステ
ライト被膜生成を如何にして改善するかについて鋭意研
究を重ねた結果、鋼中へのCr添加が極めて有効であるこ
とを見出した。以下、この知見事実を、Crの添加量を変
更しつつ、Biとの複合添加について行った実験結果に基
づいて説明する。C:0.05%, Ni:0.10%, Si:3.30
%, Mn:0.06%, Se:0.014 %, Sb:0.045 %, Bi:0.
025 %, Al:0.027 %, N:0.0095%, Cu:0.09%およ
びSn:0.1%をベースとし、Crをそれぞれ 0.03, 0.05,
0.15, 0.2, 0.5, 0.7%含有させたスラブを作製した。か
かるスラブを、酸素濃度:500ppmの雰囲気中にて1200℃
で2時間加熱後、電気式加熱炉にて1400℃で1時間の加
熱を酸素濃度:1500 ppmの雰囲気で行った。その後、粗
圧延の1パス目を表面温度:1350℃、中心温度:1360℃
で圧下率:50%、ついで2パス目を表面温度:1300℃、
中心温度:1320℃で圧下率:35%、3パス目を表面温
度:1250℃、中心温度:1290℃で行ったのち、仕上げ圧
延を、入側表面温度:1100℃、中心温度:1120℃で、か
つ、出側表面温度:990 ℃、中心温度:995 ℃で行い
2.2mm厚の熱延板としたのち、巻取り温度:575 ℃でコ
イルに巻き取った。
【0028】ついで 950℃で2分間の均熱後、 300℃ま
では平均速度:25℃/sで冷却する熱延板焼鈍を行ったの
ち、酸洗し、1.5 mmまで冷間圧延した。引き続き1070℃
で1分間の中間焼鈍後、 250℃の温間圧延を含む冷間圧
延により0.22mmの板厚としたのち、 840℃で2分間の脱
炭焼純を施した。その後、MgOを主成分とする焼純分離
剤を塗布してから、窒素雰囲気で 850℃まで10℃/hで昇
温し、15時間の保定焼鈍を行ったのち、窒素:25 vol%
と水素:75 vol%の雰囲気中で1200℃まで30℃/hの昇温
速度で加熱する仕上げ焼鈍を行った。かくして得られた
製品板の磁気特性および被膜特性について調べた結果を
表3に示す。なお、被膜特性は、40%のコロイダルシリ
カを含有するリン酸マグネシウムをコート剤として塗布
し、850 ℃で焼付けたのち、丸棒に巻付ける屈曲試験に
より被膜の剥離限界直径で評価した。
【0029】
【表3】
【0030】表3から明らかなように、Crを0.05%以上
添加することにより、熱延における表層Biの低減処置に
加えて、より一層の被膜改善効果が認められた。このよ
うな良好な被膜の生成は、二次再結晶中での気相雰囲気
との相互作用を適切なものとし、磁気特性の向上効果も
達成される。また、フォルステライトが鋼板へ張力を付
与するため鉄損の改善にも大きく寄与している。なお、
Crの効果については必ずしも明らかではないが、Cr添加
した素材では脱炭焼鈍板のサブスケールの構造が変化
し、二次再結晶焼鈍中のMgOとの反応が効果的に促進さ
れるためと考えられる。しかしながら、過剰のCr添加は
磁束密度の低下を招く。
【0031】次に、本発明に従う、方向性電磁鋼板の好
適製造条件について説明する。まず、素材成分について
述べる。 Si:2.5 〜4.5 % Siは、電気抵抗を増加させて鉄損を低減するために不可
欠の元素であり、このためには 2.5%以上の含有が必要
であるが、4.5 %を超えると加工性が劣化し、製造その
ものや、製品の加工が極めて困難になるので、Si量は
2.5〜4.5 %の範囲に限定した。
【0032】0.03≦C+(Ni/30) ≦0.10% CとNiの含有量を(C+Ni/30)の式で0.10%以下とする
ことが、本発明の特徴である。というのは、(C+Ni/3
0)が0.10%を超えるとγ変態量が過剰となり、熱間圧延
中に析出するMnSe、MnSなどのインヒビターの分布の均
一性が阻害される。また、脱炭焼鈍の負荷も増大し脱炭
不良を発生し易くなる不利もある。一方(C+Ni/30)が
0.03%未満では組織改善効果が得られず、2次再結晶が
不完全となり、同じく磁気特性が劣化する。従って、C
とNiは、単独または複合含有いずれの場合においても
(C+Ni/30)式で0.03〜0.10%の範囲に限定した。
【0033】Bi:0.005 〜0.05% Biの添加は、本発明の特徴の一つである。ここに、Bi量
が 0.005%未満では、上記したような期待する効果が得
られず、一方0.05%を超えると均一分散が困難となるの
で、Biは 0.005〜0.05%の範囲で含有させるものとし
た。なお、このBiは、酸化反応を強く抑制し、脱炭焼鈍
板に形成されるSiO2の形態を大きく変えてしまうため、
従来技術の延長では被膜生成が困難になると予想された
元素である。
【0034】Mn:0.05〜1.5 % Mnも、Siと同様、電気抵抗を高めて鉄損を低減させるだ
けでなく、製造時の熱間加工性を向上させる点でも有用
な元素である。この目的のためには0.05%以上の含有が
必要であるが、1.5 %を超えて含有させた場合、γ変態
を誘起して磁気特性が劣化するので、Mn量は0.05〜1.5
%の範囲に限定した。
【0035】インヒビター元素については、次のとおり
である。 S, Se:0.010 〜0.040 %または 0.010未満 インヒビター成分として、Se, Sを単独または複合して
含有させることができる。これらの成分は、鋼中にMn化
合物あるいはCu化合物として析出するが、抑制効果を維
持するには合計で 0.010%以上含有させる必要がある
が、 0.040%を超えると高温のスラブ加熱でも完全に固
溶させることができず粗大な析出物となり、かえって有
害となるので、 0.010〜0.040 %の範囲に限定した。一
方、高温のスラブ加熱を省略する場合には、Se, Sは少
ないほど固溶温度が低下するため好適に作用する。従っ
て、その場合には、両者併せて 0.010%未満とする。
【0036】sol.Al:0.015 〜0.050 %およびN:0.00
5 〜0.015 % 最終冷延圧下率が80%以上の場合、2次再結晶温度が非
常に高くなるため、鋼中にはこれらの元素の他に高温で
安定なインヒビター成分の含有が必要で、かようなイン
ヒビター成分としては、AlおよびNが好適である。この
うち、Alはsol.Al (酸可溶Al) として 0.015〜0.050 %
含有させる必要がある。というのは、sol.Al量が 0.015
%未満の場合、析出するAlNの量が不足して良好な2次
再結晶を得ることができず、一方 0.050%を超えるとイ
ンヒビターとして機能するサイズへの均一分散が困難と
なるからである。また、Nは、0.005 %以上の含有を必
要とするが、0.015 %を超えて含有させると鋼中でガス
化しフクレなどの欠陥をもたらすので、Nは 0.005〜0.
015 %の範囲で含有させるものとする。
【0037】また、インヒビター補強元素については次
のとおりである。すなわち、Cu, Sn, Sb, Mo, B, As,
Te, PおよびB等は、公知のインヒビターの抑制力を強
化する補助的働きを有するので、鋼中に随時添加するこ
とが好ましい。このために必要な好適添加量について
は、Cu, Snは0.05〜0.5 %、Sb, As, Mo, Te, Pは 0.0
05〜0.10%、Bは0.0010〜0.01%である。その他の添加
元素については、例えばGe, Co等は、鋼板の表面性状を
改善する効果があるので適宜含有させることが好まし
い。
【0038】Cr:0.05〜0.50% 上述したとおり、Biは、酸化反応を強く抑制し、脱炭焼
鈍板に形成されるSiO2の形態を大きく変えてしまうた
め、従来技術では被膜生成が困難とされた元素であっ
た。しかしながら、適量のCrを併せて含有させると上記
の問題を解消することができる。今回、Crを複合添加す
ることで被膜生成が可能となったのは、CrがBiの酸化抑
制効果を打ち消して脱炭焼鈍板のSiO2形態を良好に改善
する効果を持つためか、あるいはフォルステライト生成
反応を促進するためか、さらには両方の効果を有すため
と考えられる。ここに、含有量が0.05%未満ではその添
加効果に乏しく、一方0.50%を超えても被膜改善効果は
飽和し、むしろコスト高となり、しかも磁束密度が低下
する傾向があるので、Cr量は0.05〜0.50%の範囲に限定
した。
【0039】次に、本発明に従う製造条件について具体
的に説明する。上述した好適成分組成に調整された溶鋼
は、通常、連続鋳造法または造塊−分塊法によってスラ
ブとするついで、このスラブは、通常スラブ加熱に供さ
れたのち、熱間圧延により熱延コイルとされるが、この
時スラブ加熱温度を1350℃以上とすることが重要であ
る。というのは、スラブ加熱温度が1350℃に満たないと
インヒビターの固溶が十分でなく、Mn(Se+S) ,AlN
等の微細均一な分散析出状態が得られないからである。
一方、SeやSのように溶体化に高温を必要とする組成を
制限し、高温のスラブ加熱を省略する方法では、スラブ
加熱温度は、粒成長が生じない1250℃以下とすること
が、熱延組繊の均質化ひいては磁気特性の改善の面で効
果的である。なお、熱間圧延に際し、スラブ加熱前後に
おいて組織均一化のための厚み低減処理や幅圧下処理な
どの公知の技術を随時加えることは有効である。
【0040】本発明の特徴である熱間圧延は、スラブ加
熱を平均酸素濃度 100〜50000 ppmの雰囲気中にて1125
℃以上の温度で1時間以上行うことにより、表面に存在
するBiをスケールと共に加熱炉内で剥離除去することで
ある。この際、10時間以上の高温保持は、表面層だけで
なく内部までBi濃度が低減するので好ましくない。ま
た、熱間圧延により板厚を減じる際は、表層からの過剰
なBiの散逸を防止するため、表層の温度を中心より常に
低く保ち続ける必要がある。また、熱間圧延中は、圧延
により鋼中に転位が多量に導入され、拡散係数が非常に
高くなっているので、この面でも、表層の温度を低下し
て、表面での拡散速度を中心層よりも遅くしておけば、
中心層からのBiの拡散を抑えることができる。さらに、
熱間圧延時間に要する時間を30〜300 秒に制限すること
によって、Bi濃度を適切に制御することができ、これに
より板厚中心部に一定濃度以上のBi濃度を確保すること
ができるので、二次再結晶時に必要な抑制力を確保する
ことが可能となる。かくして、従来、Biを添加する場合
に懸念された2次再結晶の不安定性が解消され、磁気特
性の安定化が可能となる。
【0041】冷延工程については、熱延板焼鈍後、1回
の冷間圧延により最終板厚とする冷延1回法、または必
要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、中間焼鈍を挟む2
回以上の冷間圧延を施す冷延2回法を採用できる。冷間
圧延の圧下率については、従来公知なように冷延2回法
の第1回目の圧延は15〜60%程度とすることが好まし
い。というのは、圧下率が15%未満の場合は圧延再結晶
の機構が作用せず結晶組織の均一化が得られず、一方60
%を超えると集合粗繊の集積化が起り第2回目の圧延の
効果が得られなくなるからである。また、最終圧延の圧
下率は80〜90%程度とすることが好ましい。というの
は、圧下率が90%を超えた場合、2次再結晶が困難とな
り、一方80%未満では良好な2次再結晶粒の方位が得ら
れず製品の磁束密度が低下するからである。
【0042】また、熱延板焼鈍および中間焼鈍におい
て、焼鈍温度が過度に低い場合、圧延後の再結晶組織に
おいて2次再結晶の核となる(110)粒の頻度が不足
し、良好な方位の2次再結晶組織が得られなくなる。
(110)粒の強度を得るためには熱延板焼鈍後の結晶
組織を一定サイズ以上に粗大化する必要があり、このた
めには 800℃以上の温度まで昇温することが不可欠であ
る。一方、焼鈍温度の上限については微細に析出したMn
(Se+S) ,AlNを再固溶あるいはオストワルド成長さ
せないことが肝要なため、1200℃以下の焼鈍が好まし
い。なお、かような焼純の冷却過程については、とくに
制限されることはないが、焼純後の鋼中の固溶Cを増加
させる点から急冷処理を行ったり、鋼中の微細カーバイ
ドを析出させるための急冷低温保持処理を行ったりする
ことは、製品の磁気特性を向上させる上で有効である。
また、焼鈍の雰囲気の酸化性を高めて鋼板表層部を脱炭
する公知の手段も有効な働きをする。
【0043】さらに、最終冷間圧延を、公知のように 1
00〜350 ℃での温間圧延としたり、または 100〜350 ℃
で10〜60分間のパス間時効処理を付加することにより、
1次再結晶の集合組織を一層改善することができる。ま
た、最終冷間圧延後、公知のように磁区細分化のため鋼
板表面に線状の溝を設ける処理を行うことも可能であ
る。
【0044】ついで、最終板厚とした鋼板は、公知の手
法による脱炭・1次再結晶焼鈍を施したのち、MgOを主
成分とする焼純分離剤を鋼板表面に塗布してから最終仕
上げ焼鈍に供されるが、その時Ti化合物を添加したり、
CaやBを焼鈍分離剤中に含有させることは磁気特性をさ
らに向上させる効果があり、好ましい。
【0045】最終仕上げ焼鈍において、昇温途中少なく
とも1050℃以上、好ましくは 900℃以上の温度域につい
ては、H2 を含有する雰囲気中で昇温することが必要で
ある。 すなわち、H2 雰囲気は、最終仕上げ焼鈍中に形
成される被膜中の酸化物や窒化物の形成に重要な作用を
及ぼし、 900℃以上の焼鈍の中期から後期において特に
還元性を強めておくことが有効である。最終仕上げ焼鈍
後は、未反応分離剤を除去したのち、鋼板表面に絶縁コ
ーティングを塗布して製品とするが、必要に応じてコー
ティング塗布前に鋼板表面を鏡面化してもよいし、また
絶縁コーティングとして張力コーティングを用いてもよ
い。さらに、コーティングの塗布焼き付処理を平坦化処
理と兼ねてもよい。また、2次再結晶後の鋼板には鉄損
低減効果を得るため、公知の磁区細分化処理、すなわち
プラズマジェットやレーザー照射を線状領域に施した
り、突起ロールによる線状のへこみ領域を設けたりする
処理を施すこともできる。
【0046】
【実施例】実施例1 C:0.08%, Si:3.50%, Mn:0.075 %, Se:0.022
%, Sb:0.045 %, Al:0.027 %, N:0.0088%, Bi:
0.025 %, Cr:0.20%, Cu:0.10%およびMo:0.022 %
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる
溶鋼を、連続鋳造によりスラブとした。このスラブを、
ガス炉で加熱後、誘導加熱式(電気式)の炉で1400℃に
加熱したのち、熱延により 2.0mm厚の熱延板とし、550
℃でコイルに巻き取った。この時のスラブ加熱条件およ
び熱延条件を表4に示す。ついで、この鋼板を1150℃ま
で昇温し、均熱時間が90秒間の熱延板焼鈍を施し、25℃
/sの速度で急冷後、酸洗し、冷間圧延と 200℃の温間圧
延を組み合わせて0.22mm厚に1回の圧延で仕上げた。そ
の後、脱脂処理を施したのち、 850℃で4分間の脱炭焼
鈍を施した。
【0047】ついで、MgOに SrSO4を2%、TiO2を5%
添加した焼純分離剤を鋼板に10g/m2の塗布量で塗布し、
最終仕上げ焼純として、 850℃までN2 中で30℃/hの速
度で、また 850℃から1050℃まで(25vol%N2+75vol%
H2)の混合雰囲気中で12.5℃/hの速度で、その後はH2
中で25℃/hの速度で1200℃まで昇温し、1200℃で8時間
保持した後、 600℃までH2 中で降温し 600℃からはAr
雰囲気中で降温した。上記の最終仕上げ焼純後、未反応
の焼純分離剤を除去した後、50%コロイダルシリカを含
有するリン酸マグネシウムを張力コーティングとして塗
布したのち、840 ℃で30秒間焼き付けて製品板とした。
かくして得られた製品板の磁気特性および被膜特性につ
いて調べた結果を、表5に示す。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】表5に示したとおり、本発明に従って得ら
れた電磁鋼板は、磁気特性および被膜特性が飛躍的に向
上している。
【0051】実施例2 C:0.06%,Si:3.15%,Mn:0.075 %,S:0.020
%,Sn:0.025 %,Al:0.025 %,N:0.0095%,Bi:
0.030 %およびCu:0.10%を含有し、残部はFeおよび不
可避的不純物の組成になる溶鋼を、連続鋳造によりスラ
ブとした。このスラブを、表6に示す条件でスラブ加熱
および熱間圧延を行って、2.2 mm厚の熱延板としたの
ち、570 ℃でコイルに巻き取った。スラブ加熱は、ガス
加熱炉に引き続き電気式(誘導式)加熱炉で加熱を行っ
た。ついで、この鋼板を、1150℃まで昇温し、90秒間均
熱したのち35℃/sの速度で400℃まで急冷する熱延板焼
純を施し、引き続き酸洗後、冷間圧延と 200℃の温間圧
延を組み合わせて0.26mm厚に1回の圧延で仕上げた。そ
の後、脱脂処理を施したのち、850 ℃で3分間の脱炭焼
純を施した。
【0052】、ついで、MgOに MgSO4:2%添加したも
のを焼純分離剤として鋼板に塗布し、最終仕上げ焼鈍と
して、850 ℃までN2 中で30℃/hの速度で、また 850℃
から1050℃まで(25vol%N2+75vol%H2)の混合雰囲気中
で12.5℃/hの速度で、その後はH2 中で25℃/hの速度で
1180℃まで昇温し、1180℃で4時間保持した後、 600℃
までH2 中で降温し 600℃からはAr雰囲気中で降温し
た。上記の最終仕上げ焼鈍後、未反応の焼純分離剤を除
去した後、50%コロイダルシリカを含有するリン酸マグ
ネシウムを張力コーティングとして塗布したのち、840
℃で30秒間焼き付けて製品板とした。かくして得られた
製品板の磁気特性および被膜特性について調べた結果
を、表7に示す。
【0053】
【表6】
【0054】
【表7】
【0055】表7に示したとおり、本発明に従って得ら
れた電磁鋼板は、磁気特性および被膜特性が飛躍的に向
上している。
【0056】実施例3 表8に示す成分組成になる溶鋼を、連続鋳造によりスラ
ブとした。このスラブを表9,10に示す条件でスラブ加
熱および熱間圧延を行って、2.4 mm厚の熱延板とした。
スラブ加熱は、ガス加熱炉に引き続き電気式(誘導式)
加熱炉で加熱を行った(一部についてはガス炉のみ)。
ついで、この鋼板を、950 ℃まで昇温し、55秒間均熱し
たのち37℃/sの速度で急冷する熱延板焼鈍を施し、酸洗
後、1回目の冷延で 1.8mm厚に仕上げた。ついで、1150
℃まで昇温し90秒間の中間焼鈍を施し、30℃/sの速度で
急冷した。その後、250 ℃の温間圧延で0.27mm厚に仕上
げた。その後、脱脂処理を施し、脱炭焼鈍を昇温速度:
35℃/s、均熱温度:830 ℃、均熱時間:3分間、露点:
59℃、水素濃度:50 vol%、窒素濃度:50 vol%の雰囲
気中で行った後、アンモニアガス雰囲気での窒化処理に
よりN含有量を0.0180%まで富化した。
【0057】ついで、0.12%のCaと0.05%のBを含有す
るMgOに Sr(OH)2を 3.5%、 TiO2を10%、 SrSO4を1
%添加したものを焼純分離剤として鋼板に12g/m2塗布
し、最終仕上げ焼鈍として、 900℃までN2 中で30℃/h
の速度で、また 900℃から1050℃まで(25vol%N2+75vo
l%H2)の混合雰囲気中で12.5℃/hの速度で、その後はH
2 中で25℃/hの速度で1200℃まで昇温し、1200℃で8時
間保持したのち、 600℃までH2 中で降温し 600℃から
はN2 雰囲気中で降温した。上記の最終仕上げ焼鈍後、
未反応の焼純分離剤を除去した後、50%コロイダルシリ
カを含有するリン酸アルミニウムを張力コーティングと
して塗布したのち、850 ℃で焼き付け、その後磁区細分
化処理としてレーザーを 7.5mmピッチで照射し製品とし
た。かくして得られた製品板の磁気特性および被膜特性
について調べた結果を、表11に示す。
【0058】
【表8】
【0059】
【表9】
【0060】
【表10】
【0061】
【表11】
【0062】表11に示したとおり、本発明に従って得ら
れた電磁鋼板は、磁気特性および被膜特性が飛躍的に向
上している。
【0063】
【発明の効果】かくして、本発明によれば、極めて優れ
た鉄損特性を有し、かつ被膜欠陥がない高磁束密度方向
性電磁鋼板を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 加熱温度と酸素濃度が、鋼板表層のBi濃度、
中心層のBi濃度および表層から5mm深い箇所のBi濃度に
及ばす影響を示した図である。
【図2】 加熱温度と加熱時間が鋼板表層のBi濃度に及
ぼす影響を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 千田 邦浩 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 黒沢 光正 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 Fターム(参考) 4K033 RA04 SA02 SA03 TA01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si:2.5 〜4.5 mass%と、CとNiのうち
    から選んだ1種または2種を0.03≦C+(Ni/30) ≦0.10
    mass%の範囲で含み、かつBi:0.005 〜0.05mass%と、
    インヒビター元素を含有する組成になる鋼スラブを、熱
    間圧延、冷間圧延および熱処理を組み合わせた一連の工
    程によって処理してなる方向性電磁鋼板の製造方法にお
    いて、 熱間圧延に際し、粗圧延開始前に、1125℃以上の温度で
    1時間以上、10時間以下の加熱処理を、平均酸素濃度:
    100 〜50000 ppm の雰囲気中で行い、かつ粗圧延開始か
    ら仕上げ圧延終了までの時間を30秒以上 300秒以内と
    し、しかも上記の圧延中、圧延材の表面温度を板厚中心
    温度より常に低い状態に保持することを特徴とする、表
    面欠陥が極めて少なくかつ磁気特性に優れる高磁束密度
    方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 Si:2.5 〜4.5 mass%と、CとNiのうち
    から選んだ1種または2種を0.03≦C+(Ni/30) ≦0.10
    mass%の範囲で含み、かつBi:0.005 〜0.05mass%およ
    びMn:0.05〜1.5 mass%を含有し、さらにインヒビター
    元素として、Sおよび/またはSe:0.010 〜0.040 mass
    %、sol.Al:0.015 〜0.050 mass%およびN:0.005 〜
    0.015 mass%を含有し、かつインヒビター補強元素とし
    て、Cu:0.05〜0.5 mass%、Sn:0.05〜0.5 mass%、S
    b:0.005 〜0.10mass%、As:0.005〜0.10mass%、Mo:
    0.005 〜0.10mass%、Te:0.005 〜0.10mass%、P:0.
    005〜0.10mass%およびB:0.001 〜0.01mass%のうち
    から選んだ1種または2種以上を含有する組成になる鋼
    スラブを、1350℃以上に加熱後、熱延板とし、必要に応
    じて熱延板焼鈍を施し、酸洗後、1回または中間焼純を
    含む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたの
    ち、1次再結晶を兼ねた脱炭焼鈍を施し、ついでMgOを
    主成分とする焼純分離剤を塗布してから、2次再結晶焼
    鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施す一連の
    工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、 熱間圧延に際し、粗圧延開始前に、1125℃以上の温度で
    1時間以上、10時間以下の加熱処理を、平均酸素濃度:
    100 〜50000 ppm の雰囲気中で行い、かつ粗圧延開始か
    ら仕上げ圧延終了までの時間を30秒以上 300秒以内と
    し、しかも上記の圧延中、圧延材の表面温度を板厚中心
    温度より常に低い状態に保持することを特徴とする、表
    面欠陥が極めて少なくかつ磁気特性に優れる高磁束密度
    方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 Si:2.5 〜4.5 mass%と、CとNiのうち
    から選んだ1種または2種を0.03≦C+(Ni/30) ≦0.10
    mass%の範囲で含み、かつBi:0.005 〜0.05mass%およ
    びMn:0.05〜1.5 mass%を含有し、さらにインヒビター
    元素として、Sおよび/またはSe:0.010 mass%未満、
    sol.Al:0.015 〜0.050 mass%およびN:0.005 〜0.01
    5 mass%を含有し、かつインヒビター補強元素として、
    Cu:0.05〜0.5 mass%、Sn:0.05〜0.5 mass%、Sb:0.
    005 〜0.10mass%、As:0.005 〜0.10mass%、Mo:0.00
    5 〜0.10mass%、Te:0.005 〜0.10mass%、P:0.005
    〜0.10mass%およびB:0.001 〜0.01mass%のうちから
    選んだ1種または2種以上を含有する組成になる鋼スラ
    ブを、1250℃以下に加熱後、熱延板とし、必要に応じて
    熱延板焼鈍を施し、酸洗後、1回または中間焼純を含む
    2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、
    1次再結晶を兼ねた脱炭焼鈍を施し、ついでMgOを主成
    分とする焼純分離剤を塗布してから、2次再結晶焼鈍お
    よび純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施し、しかも熱
    間圧延終了後、2次再結晶開始前までのいずれかの工程
    にて窒化処理を行う一連の工程からなる方向性電磁鋼板
    の製造方法において、 熱間圧延に際し、粗圧延開始前に、平均酸素濃度:100
    〜50000 ppm の雰囲気中において、1125℃以上の温度で
    1時間以上、10時間以下の加熱処理を行い、かつ粗圧延
    開始から仕上げ圧延終了までの時間を30秒以上 300秒以
    内とし、しかも上記の圧延中、圧延材の表面温度を板厚
    中心温度より常に低い状態に保持することを特徴とす
    る、表面欠陥が極めて少なくかつ磁気特性に優れる高磁
    束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1,2または3において、良好な
    フォルステライト被膜を生成するために、鋼スラブ中に
    さらに、Cr:0.05〜0.50mass%を含有させることを特徴
    とする、表面欠陥が極めて少なくかつ磁気特性に優れる
    高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
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