JP2004332071A - 高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】BiとBNとをインヒビターとして使用した場合において問題となる、被膜特性および機械的特性の劣化を、効果的に改善することにより、外観および密着性に優れるフォルステライト被膜を有し、また機械的特性に優れ、しかも磁気特性にも優れた方向性電磁鋼板の有利な製造方法を提供する。
【解決手段】インヒビター形成成分として、少なくともBi:0.0005〜0.100mass%、B:0.0020〜0.0050mass%およびN:0.005〜0.015mass%を含有する鋼スラブに、熱間圧延を施し、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、脱炭焼鈍、次いで焼鈍分離剤を塗布してから、2次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上焼鈍を施す、一連の工程によって方向性電磁鋼板を製造するに当たり、焼鈍分離剤として、MgO:100質量部に対して、アルカリ金属化合物を該金属換算で0.001〜1.5質量部およびMo化合物をMo換算で0.7〜10質量部で含有させたものを用いるとともに、最終仕上焼鈍における1050℃以上の純化焼鈍後の700℃に到る冷却速度を5℃/h以上とする。
【選択図】 なし
【解決手段】インヒビター形成成分として、少なくともBi:0.0005〜0.100mass%、B:0.0020〜0.0050mass%およびN:0.005〜0.015mass%を含有する鋼スラブに、熱間圧延を施し、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、脱炭焼鈍、次いで焼鈍分離剤を塗布してから、2次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上焼鈍を施す、一連の工程によって方向性電磁鋼板を製造するに当たり、焼鈍分離剤として、MgO:100質量部に対して、アルカリ金属化合物を該金属換算で0.001〜1.5質量部およびMo化合物をMo換算で0.7〜10質量部で含有させたものを用いるとともに、最終仕上焼鈍における1050℃以上の純化焼鈍後の700℃に到る冷却速度を5℃/h以上とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、変圧器や発電機等の鉄心として用いられる高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法に開し、高磁束密度電磁鋼板を安定して製造する技術を提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
Siを含有し、かつ製品の結晶方位が{110}〈001〉方位、いわゆるゴス方位に配向した方向性電磁鋼板は、優れた軟磁気特性を示すことから、変圧器や発電機等の鉄心として用いられている。かかる電磁鋼板の特性として基本的に重要なのは、鉄損値が低いことである。磁束密度の高い電磁鋼板は鉄損が低く、かつ変圧器の小型化に有利なことと、低騒音の変圧器を製作可能であることから、近年の省エネルギー指向および低騒音環境指向により、年々その使用量が増加しており、さらに磁束密度を高めた方向性電磁鋼板の開発が望まれている。
【0003】
一般に、電磁鋼板の鉄損を低減するには、渦電流損の低減に有効なSiの含有量を増加して電気抵抗を高める方法、鋼板板厚を薄くする方法、製品の結晶粒径を小さくする方法、さらには結晶方位の集積度を高めて磁束密度を向上させる方法等が知られている。
【0004】
しかしながら、現状のSi含有量を増加させる方法は、Siを過度に含有させると圧延性や加工性を劣化させるため、含有量の増加は限界となっており、また鋼板板厚を薄くする方法や製品の結晶粒径を小さくする方法も、製造コストの極端な増大を招くため、自ずと限界が生じる。
【0005】
一方、磁束密度を向上させる方法は、これまでよく知られており、インヒビターと呼ばれる析出物の種類の選定と、その形態の制御とによって、二次再結晶粒のゴス方位への集積度を高めるといったものが主である。
【0006】
この析出物は高温熱処理における結晶粒界の移動を妨げ、1次再結晶粒の成長を抑制することによって、2次再結晶粒の急激な成長を促進する役割を果たす。析出物による1次再結晶粒の成長抑制力は、いわゆるZenerの式で一般に与えられることが知られており、析出物の体積分率が大きいほど、また同一の体積分率の場合には、微細に分散して析出しているほど、抑制力は強いと評価される。
【0007】
従って、インヒビターの形態としては均一かつ微細に分散することが、重要である。このため、従来、熱間圧延前のスラブ加熱においては、高温加熱を行ってインヒビターを完全に固溶させ、熱間圧延工程以降の二次再結晶までの過程でこのインヒビターを微細分散析出させる方法がとられている。
【0008】
なお、インヒビターとしては、Cu2−xS、MnS、Cu2−xSe、AlNおよびBN等の、硫化物、セレン化物または窒化物であり、一般に鋼中への溶解度が極めて小さい物質が用いられている。
【0009】
例えば、インヒビターにAlNを用いる技術として、特許文献1や特許文献2に記載された技術があるが、二次再結晶時にAlNが雰囲気の影響を受けやすいことから磁気特性が不安定になりやすく、更に酸化し易いAlの含有は、脱炭焼鈍でのサブスケールの生成、そして最終仕上焼鈍でのフォルステライト被膜の生成を著しく困難にするため、工業的に十分な技術とはいえなかった。ちなみに、特許文献3には、Al含有量が多くなると被膜外観が白っぽく変化し劣化すると記載されている。
【0010】
また、インヒビターにBNを用いる技術として、例えば特許文献4には、0.0006〜0.0080mass%のBと0.0100mass%以下のNとを含有する鋼を用いる技術が開示されている。しかしながら、この特許文献4に開示されている技術で得られる、材料の磁束密度は、B8の値で高々1.89T程度であり、磁束密度は十分ではなく、鉄損もさほど良好なものとはいえなかった。
【0011】
特許文献5および特許文献6には、0.0003〜0.0035mass%のBと0.0030〜0.0070mass%のNとを含有する鋼を用いて、それぞれMn/Sを1.8以下あるいは2.1以下とすることにより、B8で1.85Tから1.92Tの磁束密度を得る技術が開示されている。このBNをインヒビターとする方法は、高い磁束密度が得られる可能性はあるが、Mnを低くすることがコスト上昇に繋がるばかりか、熱延工程において熱間割れを引き起こすため、工業化が困難な技術であった。
【0012】
更に、特許文献7には、必要B量を0.0018%以下まで低減することにより、Mn/Sを1.8以上あるいは2.5以上とする技術が開示されているが、磁束密度の低下は免れない。一方、特許文献8には、BがBNとして析出するのに必要な当量分のNを除いた、残りのN量を溶解N量と定義し、これを0.0020%以下とすることにより、Mn/Sを2.1以上としても高磁束密度が得られることが開示されているが、この技術をもっても良好な二次再結晶組織を有する方向性電磁鋼板を安定して得ることはできなかった。
【0013】
ここで、インヒビターの作用を有するものとして、上述の析出物のみではなく、結晶粒界に偏析する元素もよく知られている。これは、結晶粒界に偏析し、粒界エネルギーを低下させて粒界移動を抑制する機構を利用したものである。この偏析元素について、例えば特許文献9には鋼中にCuやSnを添加する方法が、特許文献10にはSbやMoを添加する方法が、また特許文献11および特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15および特許文献16にはBiを添加する方法が、それぞれ提案されている。しかしながら、これらの偏析元素の単独の偏析効果による抑制作用はさはど大きくはないので、MnSeとSbやAlNとSbおよびAlNとSnなどのように、析出物と偏析元素の偏析との複合作用を利用する場合が多い。この種の方法では、偏析元素の粒界偏析効果のみならず、偏析元素が析出物界面にも析出し析出物のオストワルド成長をも抑制するという利点が存在する。
【0014】
しかしながら、、粒界に偏析するインヒビターは、粒界だけでなく鋼板表面にも偏析をするため、最終仕上焼鈍中に鋼板表面に生成するフォルステライト被膜の特性に多大な影響を与える。すなわち、通常は、偏析型のインヒビターを添加すると、製品の被膜外観や絶縁コーティングの密着性が劣化する。
【0015】
このようなフォルステライト被膜の特性不良に対しては、最終仕上焼鈍の際に用いる焼鈍分離剤の含水率を0.3〜3%の範囲に調整する方法(特許文献17)、脱炭焼鈍板の酸素目付量を550〜850ppmの範囲に調整する方法(特許文献18)、焼鈍分離剤に用いるMgOのlg−Loss値を0.4〜1.5%に調整する方法(特許文献19),最終仕上焼鈍における雰囲気ガス流量を適正に調整する方法(特許文献20)など多くの改善策が提案されているものの、いずれも十分な被膜改善効果を得ることはできなかった。
【0016】
すなわち、上記の従来技術を用いることによって、幾らかの被膜改善効果が期待できるものの、偏析型のインヒビターに起因した被膜劣化を完全に防止することはできず、外観の良好な製品を製造するには至っていないのが現状である。
【0017】
ところで、一般にインヒビターが強力で正常粒成長の抑制力が強いほど、高い方位集積度が得られると考えられている。したがって、通常はインヒビターとしては、複数の種類の物質が用いられている。また、粒成長は高温ほど顕著となるため、高温での抑制力を強くすることが重要である。
ここに、最終仕上焼鈍における高温域の抑制力として有効に作用するインヒビターとして、Biが知られている(例えば、特許文献21参照)。
【0018】
【特許文献1】
特公昭56−21331号公報
【特許文献2】
特公平7−62176号公報
【特許文献3】
特開2000−160304号公報
【特許文献4】
特公昭58−43445号公報
【特許文献5】
特公昭58−42244号公報
【特許文献6】
特公昭60−55570号公報
【特許文献7】
特公平7−68581号公報
【特許文献8】
特開昭57−114615号公報
【特許文献9】
特公昭60−48886号公報
【特許文献10】
特開平2−115319号公報
【特許文献11】
特公昭51−29496号公報
【特許文献12】
特開昭49−119817号公報
【特許文献13】
特公昭53−39852号公報
【特許文献14】
特公昭59−30771号公報
【特許文献15】
特公昭56−18044号公報
【特許文献16】
特公昭56−21331号公報
【特許文献17】
特開平11−229036号公報
【特許文献18】
特開平10−152725号公報
【特許文献19】
特開平10−25516号公報
【特許文献20】
特開平9−3542号公報
【特許文献21】
特開平11−335736号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、高温域の抑制力を高めるには、インヒビターにBiを用いることが好ましいが、上述のように鋼中にBiを含有すると、被膜特性が劣化することから、被膜に悪影響を及ぼすAlNはインヒビターとして用いず、同じ析出型のインヒビターとしてBNを用いることが有利である。
しかしながら、インヒビターとして、BiそしてBNを用いて製造した電磁鋼板には、製品板の被膜特性および繰返し曲げ特性に代表される機械的特性が劣化することが、新たな問題として浮上した。
【0020】
従って、この発明は、BiとBNとをインヒビターとして使用した場合において問題となる、被膜特性および機械的特性の劣化を、効果的に改善することにより、外観および密着性に優れるフォルステライト被膜を有し、また機械的特性に優れ、しかも磁気特性にも優れた方向性電磁鋼板の有利な製造方法について提案することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、BiとBNとをインヒビターとした場合に生ずる、被膜特性不良および繰返し曲げ特性不良を解消する手段について、鋭意究明したところ、焼鈍分離剤の配合並びに最終仕上焼鈍条件を規制することが有効であるのを見出し、この発明を完成するに到った。
【0022】
すなわち、この発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)Si:2.5〜4.5mass%を含み、さらにインヒビター形成成分として、少なくともBi:0.0005〜0.100mass%、B:0.0020〜0.0050mass%およびN:0.005〜0.015mass%を含有し、かつAl:0.012mass%以下に抑制した、鋼スラブに、熱間圧延を施し、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、脱炭焼鈍、次いで焼鈍分離剤を塗布してから、2次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上焼鈍を施す、一連の工程によって方向性電磁鋼板を製造するに当たり、
焼鈍分離剤として、MgO:100質量部に対して、アルカリ金属化合物を該金属換算で0.001〜1.5質量部およびMo化合物をMo換算で0.7〜10質量部で含有させたものを用いるとともに、最終仕上焼鈍における1050℃以上の純化焼鈍後の700℃に到る冷却速度を5℃/h以上とすることを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0023】
(2)上記(1)において、鋼スラブが、さらにC:0.03〜0.10mass%およびMn:0.050〜1.5mass%を含有することを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0024】
(3)上記(1)または(2)において、鋼スラブが、さらにSおよびSeの1種または2種を合計で0.010〜0.040mass%含有することを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0025】
(4)上記(1)、(2)または(3)において、鋼スラブが、さらにNi:0.05〜0.5mass%、Cu:0.05〜0.5mass%、Sn:0.05〜0.5mass%、Sb:0.005〜0.10mass、As:0.005〜0.10mass%、Mo:0.005〜0.10mass%、Te:0.005〜0.10mass%およびP:0.005〜0.10mass%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0026】
(5)上記(1)ないし(4)のいずれかにおいて、鋼スラブが、さらにCr:0.01〜0.50mass%を含有することを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の基礎となった実験およびその結果について説明する。
すなわち、Bi、BおよびNを含有する種々の鋼塊を用いて種々の実験を行ったが、繰返し曲げ特性は良好な場合もあれば不良となる場合もあった。繰返し曲げ特性に影響を及ぼす実験条件が何にあるのかを詳細に調べた結果、最終仕上焼鈍の冷却速度が遅くなると、繰返し曲げ特性が劣化する傾向にあることを見出した。
そこで、最終仕上焼鈍の冷却速度と繰返し曲げ特性との関係を明らかにするために、以下に示す実験を行った。
【0028】
(実験1)
C:0.06mass%、Si:3.5mass%、Mn:0.07mass%、Cu:0.1mass%、Se:0.02mass%、N:0.008mass%、B:0.003mass%およびBi:0.01mass%を含有する鋼塊を1360℃に加熱した後、熱間圧延により2.5mm厚の熱延板とした。次いで、1000℃で60秒の熱延板焼鈍を行って酸洗し、冷間圧延により1.8mmの中間厚としたのち、1050℃で120秒間の中間焼鈍を経て、220℃の温間圧延を含む冷間圧延によって最終板厚が0.22mmの冷延板に仕上げた。
【0029】
その後、820℃で120秒間の脱炭焼鈍後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を片面あたり7g/m2塗布してから、窒素雰囲気中で850℃まで35℃/hの速度で昇温し、850℃で25時間保持した後、窒素:25vol%と水素:75vol%の雰囲気中にて10℃/hの昇温速度で1200℃まで加熱し、1200℃で5時間の水素雰囲気中での純化焼鈍を行った後、Ar雰囲気中で冷却した。その際、1200℃〜700℃間の冷却速度は、4℃/h〜50℃/hの範囲で変更した。
【0030】
かくして最終仕上焼鈍の冷却速度を異ならせて得た、方向性電磁鋼板に対して繰返し曲げ試験をJIS C2550に準拠して行った。
その結果を図1に示すように、最終仕上焼鈍の冷却速度が遅くなると、繰返し曲げ特性が劣化することが明白となった。
【0031】
次に、最終仕上焼鈍の冷却速度が遅くなると繰返し曲げ特性が劣化する原因を明らかにするため、繰返し曲げ試験での破断面を調査した。すなわち、破断面を走査型電子顕微鏡におけるEDX(Energy Dispersive X−ray spectroscopy, エネルギー分散型X線分光法)分析の結果、鋼板の表層にFeとBとからなる析出物が観察された。一方、最終仕上焼鈍板の被膜を除去した後の試料のB含有量を化学分析により分析したが、B含有量は最終仕上焼鈍の冷却速度に依存していなかった。すなわち、冷却速度が速くなると、FeとBとからなる析出が生じにくくなるため、繰返し曲げ特性が改善すると考えられる。
【0032】
以上の結果から、繰返し曲げ特性の改善には最終仕上焼鈍の冷却中にFeおよびBからなる析出物の析出を抑制することが有効であると考えられる。一般に、析出とは、母相での析出元素の化学ポテンシャルが、析出相での析出元素の化学ポテンシャルよりも高い場合に生じるものである。
【0033】
さて、熱力学的平衡状態において、ある温度における析出物中の元素の化学ポテンシャルを変化させるには、析出物の組成あるいは圧力を変えなければならない。従って、FeとBからなる析出物中のFeまたはBの化学ポテンシャルを変化させるのは困難である。同様に、地鉄(母相)中のFeの化学ポテンシャルを低くするのも、Feが主成分であるため困難である。
そこで、発明者らは、地鉄(母相)中のBの化学ポテンシャルを低下させることを考えた。
【0034】
上述したように、FeとBとからなる析出物は、鋼板の表層に観察されたことから、特に鋼板の表層におけるBの化学ポテンシャルを低下させることを考えた。すなわち、最終仕上焼鈍時に生成する被膜中でのBの化学ポテンシャルを低下させることを考え、脱炭焼鈍板に塗布する焼鈍分離剤中のBの化学ポテンシャルを低下することを考えた。しかしながら、通常の焼鈍分離剤中には、Bは不純物レベルとしてしか含有されていないため、Bの含有量をこれ以上低下させることはできない。
そこで、Bと化合物を生成する元素を焼鈍分離剤中に添加することを考えた。
【0035】
また、鋼中にはBiが含まれ被膜特性に不利であることから、焼鈍分離剤中に添加する元素として被膜特性の改善効果があるMoに着目し、以下の実験を行った。なお、Moの添加は、特開昭58−177474号公報にあるように、被膜改善効果があることが知られている。
【0036】
(実験2)
C:0.07mass%、Si:3.3mass%、Mn:0.07mass%、Cu:0.1mass%、Se:0.02mass%、N:0.008mass%、B:0.003mass%およびBi:0.02mass%を含有する鋼塊を用いて、実験1と同様の条件で脱炭焼鈍までを行った。
その後、MgO:100質量部に対して、TiO2を5質量部(Ti換算で3質量部)、SrSO4を2質量部(Sr換算で0.5質量部)、MoO3を0、1、2、4および8質量部(Mo換算で0、0.7、1.3、2.7および5.3質量部)添加した、焼鈍分離剤を脱炭焼鈍板の両面に、片面当たり7g/m2の塗布量で塗布した。そして、最終仕上焼鈍として、窒素雰囲気中で850℃まで8℃/hの速度で昇温し、850℃で25時間保持した後、窒素:25vol%と水素:75vol%の雰囲気中にて10℃/hの昇温速度で1200℃まで加熱し、1200℃で5時間の水素雰囲気中での純化焼鈍を行った後、Ar雰囲気中で1200℃〜700℃の冷却速度を4℃/hとして冷却した。
【0037】
このようにして得られた方向性電磁鋼板に対して、JIS C2550に準拠して繰返し曲げ試験を行った。その結果を図2に示すように、焼鈍分離剤中にMoO3を添加すると繰返し曲げ特性が改善することが判明した。しかしながら、被膜外観にはむらがあり、良好であるとは言い難い結果であった。
【0038】
この被膜劣化の原因としては、最終仕上焼鈍中にマグネシアの水和水により鋼板の表層でBiが酸化され液相になり、脱炭焼鈍で生成したSiO2の界面に濃化するため、地鉄表面の凹凸が消失し、被膜が剥落しやすくなったと考えられる。したがって、Biの酸化を抑制すれば被膜特性が改善すると考えられ、その1つの方法として、最終仕上焼鈍における鋼板表面へのSiO2の濃化を促進させて、表面のSiO2によりマグネシアの水和水と地鉄中のBiの反応を低減することが考えられる。
【0039】
ここで、焼鈍分離剤中のアルカリ金属の含有量が増加すると、脱炭焼鈍板の内部酸化層中のSiO2は最終仕上焼鈍中に鋼板表面に浮上しやすくなることが知られている(例えば、特公昭54−14566号公報参照)。そこで、焼鈍分離剤中にアルカリ金属化合物を添加する実験を行った。
【0040】
(実験3)
C:0.07mass%、Si:3.4mass%、Mn:0.07mass%、Cu:0.1mass%、Se:0.02mass%、N:0.008mass%、B:0.003mass%およびBi:0.04mass%を含有する鋼塊を用いて、実験1と同様の条件で脱炭焼鈍まで行った。
その後、MgO:100質量部に対してTiO2を5質量部(Ti換算で3質量部)、SrSO4を2質量部(Sr換算で0.5質量部)、MoO3を0および2質量部(Mo換算で0および1.3質量部)、水酸化Liを0、0.2、0.4および0.6質量部(Li換算で0、0.06、0.12および0.18質量部)添加した、焼鈍分離剤を脱炭焼鈍板の両面に、片面当たり7g/m2の塗布量で塗布した。そして、最終仕上焼鈍として、窒素雰囲気中で850℃まで8℃/hの速度で昇温し、その後窒素:25vol%と水素:75vol%の雰囲気中にて10℃/hの昇温速度で1200℃まで加熱し、1200℃で5時間の水素雰囲気中での純化焼鈍を行った後、Ar雰囲気中で1200℃〜700℃間の冷却速度を8℃/hとして冷却した。その後、未反応の焼鈍分離剤を除去し、50%のコロイダルシリカを含有するりん酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティングを塗布して800℃で焼付けた。
【0041】
このようにして得られた方向性電磁鋼板に対して、JIS C2550に準拠して繰返し曲げ試験を行った。また、被膜密着性を、丸棒に巻付ける屈曲試験により被膜の剥離限界直径として評価した。
その結果を図3に示すように、焼鈍分離剤中に水酸化Liを添加すると被膜外観が改善し、被膜密着性が改善することが判明した。
【0042】
また、図4に示すように、MoO3を2質量部添加した場合は、水酸化Liを添加すると、繰り返し曲げ特性も改善することが判明した。一方、MoO3を添加しなかった場合では、水酸化Liの添加量に関係無く繰返し曲げ特性は不良であった。
これは、水酸化Liを添加することにより被膜密着性が改善し、焼鈍分離剤中のMoによるFeとBとの析出抑制効果が助長されたためと考えられる 。
【0043】
なお、特開昭49−29305号公報には、アルカリ金属であるLiを含む化合物を添加することにより、珪酸マグネシウムおよびLiを含む酸化膜を形成させる方法が開示されているが、この発明で対象とするBiを含む電磁鋼板に、単純にこの技術を適用しても必ずしも良好な被膜特性および磁気特性は得られなかった。というのは、特開昭49−29305号公報に開示の方法では、Li添加量が多かったり、Li化合物として有機化合物塩、ホウ酸塩等の有害元素も同時に導入したりするために、MgO−SiO2−LiO2系の被膜が形成されるが、これは通常のMgO−SiO2系の被膜よりも安定性が低下するため、Biの表層への移動により被膜が損傷を受けるからである。
【0044】
この点、この発明では、被膜形成を促進させるに有効な程度の極微量のアルカリ金属を含有させるだけであるため、アルカリ金属成分をほとんど含まないMgO−SiO2系の被膜が形成される。このMgO−SiO2系被膜は化学的に安定であり、Biによる損傷を受けにくいために、良好な被膜が維持できるものと考えられる。
【0045】
以下、この発明の構成要件毎に、詳しく説明する。
まず、成分組成範囲を挙げると、以下のとおりである。
Si:2.5〜4.5mass%
Siは、鋼板の比抵抗を高め、鉄損を下げるのに有効な成分であるが、4.5mass%を上回る含有量では冷延性が損なわれ、一方2.5mass%に満たない含有量では、比抵抗が低下するだけでなく、二次再結晶および純化のために行われる最終仕上焼鈍中にα→γ変態によって結晶方位のランダム化を生じ、十分な鉄損低減効果が得られなくなる。従って、Si含有量は2.5〜4.5mass%の範囲に限定した。
【0046】
C:0.03〜0.10mass%
Cの含有量は、0.03〜0.10mass%とするのが好ましい。即ち、0.10mass%を超えると、γ変態量が過剰となり、熱間圧延中に析出するMnSe、MnSなどのインヒビターの分布均一性を阻害することになる。また、脱炭焼鈍の負荷も増大し脱炭不良を発生しやすくなる。一方0.03mass%未満では、組織改善効果が得られず2次再結晶が不完全となり、同じく磁気特性が劣化する。従って、Cは0.03〜0.10mass%の範囲にするのが望ましい。
【0047】
Cr:0.01〜0.50mass%
Bi添加材は、フォルステライト被膜の生成を困難とするため、特開2000−96149号公報に記載されているように、その改善のためにCrを添加してもよい。その効果は、0.01mass%未満では十分でなく、0.50mass%を超えると効果は飽和してコスト高となるため、Crの範囲は0.01〜0.50mass%とすることが好ましい。
【0048】
Mn:0.05〜0.15mass%
Mnは、熱間脆性を防止するためには、少なくとも0.05mass%の添加が好ましいが、Mn含有量があまりに多すぎると磁気特性の劣化を引き起こすため、上限は0.15mass%程度にするのが望ましい。
【0049】
Al:0.012mass%以下
不純物としてのAl含有量が多くなると、脱炭焼鈍でのサブスケールの生成や、仕上焼鈍でのフォルステライトの生成を困難にするという側面がある。これらの劣化を防ぐためには、Alを0.012mass%以下に制限する必要がある。
【0050】
インヒビター形成成分については、次のとおりである。
B:0.0020〜0.0050mass%およびN:0.005〜0.015mass%
この発明においては、主たるインヒビター成分として、サブスケールの安定生成と、それによる良好な下地被膜の生成とのために、BNを用いる。特に、最終冷間圧延圧下率が80%以上の場合、二次再結晶温度が非常に高くなるため、鋼中には高温で安定なインヒビター成分として、B及びNを含有させることが必須である。
【0051】
このうち、Bは0.0020〜0.0050mass%の範囲で含有させる。すなわち、Bの含有量が0.0020mass%未満の場合、析出するBNの量が不足し良好な二次再結晶を得ることができず、一方0.0050mass%を超える場合、固溶温度が増加し、通常の加熱では熱間圧延前にBNを完全に固溶させることが不可能となるためである。
【0052】
Nの含有量は0.005mass%以上が必要であり、N量が0.005mass%未満では析出するBNの量が不足する。また、N量が0.015mass%を超えると、鋼中でガス化して膨れなどの欠陥が生ずるため、0.005〜0.015mass%の範囲とする。
【0053】
Bi:0.0005〜0.100mass%
Bi添加は、この発明の特徴の一つである。すなわち、Biの添加量が0.0005mass%未満では、この発明でBiに期待する効果は得られず、一方0.100mass%を超えると均一分散が困難となる。したがってBiは0.0005〜0.100mass%の範囲で含有させることとする。
【0054】
S、Se:0.01〜0.04mass%
インヒビター成分として、SeおよびSを単独もしくは複合で含有することができる。これらの成分は、鋼中にMn化合物あるいはCu化合物として析出するが、抑制効果を維持するには、いずれか1種または2種の合計で0.010mass%以上が必要である。一方、0.040mass%を超えると、高温のスラブ加熱でも完全に固溶させることができず粗大な析出物となるため、かえって有害になる。従って、0.010〜0.040massの範囲とする。
このとき、Mn/(Se+S)が2.5より小さいと、熱間圧延中に粒界割れや耳荒れが著しく増加するため、Mn/(Se+S)≧2.5とすることが実用上好ましい。
【0055】
また、インヒビター補強元素については、次のとおりである。
すなわち、Ni、Cu、Sn、Sb、Mo、As、TeおよびP等は、公知のインヒビターの抑制力を強化する補助的働きを有するため、鋼中に随時添加することが好ましい。このために必要な好適添加量については、Ni、CuおよびSnがそれぞれ0.05〜0.50mass%、Sb、Mo、Te、AsおよびPがそれぞれ0.005〜0.10mass%である。いずれも、下限未満では、正常粒成長の抑制効果が発揮されず、一方上限を超えると、この発明の技術をもってしても被膜特性の劣化を防止できないため、適正範囲として上記の範囲に限定した。
【0056】
その他の添加元素については、例えば、Ge、Coの添加などは鋼板の表面性状を改善する効果があるので適宜含有させることができる。
【0057】
次に、製造条件について具体的に説明する。
上述した成分に調整された溶鋼は、通常、連続鋳造法または造魂−分塊法によってスラブとする。
ついで、このスラブは加熱された後、熱間圧延により熱延コイルとされるが、この時スラブの加熱は、鋼中のインヒビターの固溶のために高温で行う。通常は、加熱温度を1350℃以上とすることが好ましい。というのは、スラブ加熱温度が1350℃に満たないと、インヒビター成分の固溶が十分でなく、Mn(Se,S)やBN等の微細かつ均一な分散析出が得られないからである。なお、熱間圧延に関しては、スラブ加熱前後において、組織均一化のための厚み低減処理や幅圧下処理など、公知の技術を随時加えることが可能である。
【0058】
冷間圧延工程は、熱延板焼鈍後、1回の冷間圧延により最終板厚とする冷延1回法、あるいは必要に応じて熱延板焼鈍を施した後、中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施す冷延2回法のいずれかを採用できる。
【0059】
冷間圧延の圧下率については、従来公知の範囲、例えば冷延2回法の第1回目の圧延を15〜60%程度とすることが好ましい。というのは、圧下率が15%未満の場合は、圧延再結晶の機構が作用しないため結晶組織の均一化が得られず、一方60%を超えると集合組織の集積化が起こり、第2回目の圧延の効果が得られなくなるからである。
さらに、最終圧延の圧下率は80〜90%程度とするのが好ましい。というのは、圧下率が90%を超えた場合、2次再結晶が困難となり、一方80%未満では良好な2次再結晶粒の方位が得られず、製品の磁束密度が低下するからである。
【0060】
また、熱延板焼鈍または中間焼鈍において、焼鈍温度が過度に低い場合、圧延後の再結晶組織において2次再結晶の核となる(110)粒の強度が不足し、良好な方位の2次再結晶組織が得られなくなる。(110)粒の強度を得るためには、熱延板焼鈍後の結晶組織を一定サイズ以上に粗大化する必要があり、このためには800℃以上の温度まで昇温することが不可欠である。一方、焼鈍温度の上限については、微細に析出したMn(Se,S)およびBN等のインヒビターを再固溶あるいはオストワルド成長させないことが肝要なため、1200℃とすることが好ましい。
【0061】
なお、かような熱延板焼鈍または中間焼鈍の冷却過程については、特に制限されることはないが、焼鈍後の鋼中の固溶Cを増加させる点から急冷処理を行ったり、鋼中の微細カーバイトを析出させるための急冷低温保持処理を行ったりすることは、製品の磁気特性を向上させる上で有効である。また、焼鈍の雰囲気の酸化性を高めて鋼板表層部を脱炭する手段も有効な働きをする。
【0062】
さらに、最終冷間圧延を、公知のように100〜350℃での温間圧延としたり、または100〜350℃で10〜60分間のパス間時効処理を付加することにより、1次再結晶の集合組織を一層改善することができる。
また、最終冷間圧延後、磁区細分化のため、鋼板表面に線状の溝を設ける処理を行うことも可能である。
【0063】
ついで、最終板厚とした鋼板は、公知の手法による脱炭焼鈍を施した後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布してから最終仕上焼鈍に供されるが、その時MgOを主成分とする焼鈍分離剤にMo化合物と微量のアルカリ金属化合物を含有させることが、この発明の要件の1つである。
【0064】
ここに、Mo化合物の添加量については、、MgOに対する質量の比率として、Mo換算で0.7〜10質量部とする必要がある。
すなわち、Mo化合物を上記の範囲で添加することにより、繰返し曲げ特性が改善する。しかしながら、添加量が、上記した下限値に満たないと十分な効果が得られず、一方上限値を越えると主成分であるMgOの含有率が低下するため、被膜特性が劣化する。したがって、Mo化合物の添加量は、0.7〜10質量部の範囲に限定した。
【0065】
アルカリ金属の添加量については、MgOに対する質量の比率として、リチウム化合物であればLi換算で0.0l〜1.5質量部、ナトリウム化合物であればNa換算で0.005〜1質量部、カリウム化合物であればK換算で0.001〜0.5質量部が好適である。これら化合物は単独添加でも複合添加でもいずれでも構わないが、単独または複合の合計で0.001〜1.5質量部(アルカリ金属換算)とする必要がある。
【0066】
すなわち、これらのアルカリ金属を上記の範囲で微量添加することにより、緻密なフォルステライトを主体とする被膜が形成され、さらにMo化合物添加による繰り返し曲げ特性の改善効果が、顕著に発揮される。しかしながら、添加量が上記した下限値に満たないと十分な効果が得られず、一方上限値を超えると、これらの金属を含む被膜が最終仕上焼鈍途中で形成され、副インヒビター成分によりこの被膜が損傷を受ける結果、点状の被膜欠陥や被膜密着性の低下などの被膜不良が生じる。さらに磁気特性についても最終仕上焼鈍途中で粗雑な被膜となる結果、鋼板が雰囲気の影響を受けやすくなり、副インヒビター添加による磁性改善効果は失われる。したがって、アルカリ金属の添加量は、0.001〜1.5質量部の範囲に限定した。
【0067】
また、焼鈍分離剤中に、上記したアルカリ金属以外の添加剤を含有させることも可能である。たとえば、Mg,Ca,Sr,Ti,Mn,Fe,Cu,Sn,Sb,Zn,SiおよびAl等の化合物を用いることができる。その添加量としては、MgOに対する質量の比率として、単独または複合の合計が0.5〜15質量部程度とすることが好適である。その他、焼鈍分離剤の塗布量や水和量は従来どおり、5〜15g/m2(両面)、0.5〜5質量部程度でよい。
【0068】
さらに、1次再結晶焼鈍後かつ2次再結晶開始までの間において、鋼中に550massppm以下の範囲でNを含ませる窒化処理を行うことも、鋼中の抑制力が弱い場合には適切であり、この技術の適用を妨げるものではない。窒化の方法としては、1次再結晶焼鈍後、NH3を含む雰囲気中で鋼板を熱処理する方法や、焼鈍分離剤中に分解性の窒化物を含有させるといった方法などが適合する。
【0069】
最終仕上焼鈍において、その昇温途中の少なくとも1050℃以上、好ましくは900℃以上の温度域については、H2を含有する雰囲気中で昇温することが有利である。すなわち、H2雰囲気は、最終仕上焼鈍中に形成される被膜中の酸化物や窒化物の形成に重要な作用を及ぼし、900℃以上の焼鈍の中期から後期において特に還元性を強めておくことが有効である。
【0070】
この際、最終仕上焼鈍における1050℃以上の純化焼鈍後の700℃までの冷却速度を5℃/h以下とすることが、繰返し曲げ特性の改善のために必要である。
ここで、冷却速度とは、1050℃以上の純化焼鈍において最高温度に達してから、最高温度より50℃低い温度をT1とし、その時刻をt1、また700℃まで温度が低下した時刻をt2とすると、(T1−700)÷(t2−t1)と表すことができる。
【0071】
最終仕上焼鈍後は、未反応の焼鈍分離剤を除去した後、鋼板表面に絶縁コーティングを塗布して製品とするが、必要に応じてコーティング塗布前に鋼板表面を鏡面化してもよいし、また絶縁コーティングとして張力コーティングを用いてもよい。さらに、コーティングの塗布焼付処理を平坦化処理と兼ねてもよい。
【0072】
また、2次再結晶後の鋼板には、鉄損低減効果を得るため、磁区細分化処理、すなわちプラズマジェットやレーザ照射を線状に施したり、突起ロールによる線状のへこみ領域を設けたりする処理を施すこともできる。
【0073】
【実施例】
実施例1
C:0.07mass%、Si:3.2mass%、Mn:0.07mass%、Cu:0.1mass%、Bi:0.004mass%、Se:0.02mass%、N:0.0085mass%およびAl:0.0080mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物になる、厚さ250mmの鋼スラブを、ガス加熱炉に装入し、酸素濃度が10vol%の雰囲気中で1100℃および80分間加熱した後、誘導加熱炉で1400℃に加熱した。その後、粗圧延に引き続いて仕上圧延を行い2.6mm厚の熱延板とした。
その後、熱延板に1000℃で45秒間の焼鈍を施し、35℃/sの速度で急冷後に酸洗し、1回目の冷間圧延で1.6mm厚に仕上げた。次いで、1050℃で60秒間の中間焼鈍を行い、35℃/sの速度で急冷した後、240℃の温間圧延で0.22mm厚に仕上げた。
【0074】
次いで、脱脂処理を施した後、820℃で2分間、露点が56℃、水素濃度が50vol%、窒素濃度が50vol%の雰囲気中で脱炭焼鈍を施した。その後、MgOに表1に示す添加剤を添加した焼鈍分離剤を鋼板の両面に、片面の塗布量を7g/m2として塗布し、最終仕上焼鈍として、850℃までN2ガス中で30℃/hの速度で昇温し、850℃で10時間保持した後、850℃から1050℃までをN2を25vol%、H2を75vol%の混合ガス中で12.0℃/hの速度で、その後はH2ガス中で10℃/hの速度で1200℃まで昇温し、1200℃で8時間保持した後、冷却速度を6℃/hとして、700℃までArガス中で冷却し、700℃からはN2ガス中で冷却した。
【0075】
上述の最終仕上焼鈍後、末反応の焼鈍分離剤を除去した後、50%のコロイダルシリカを含有するりん酸マグネシウムを張力コーティングして塗布した後、840℃で30秒間焼き付け、磁区細分化処理としてレーザを7.5mm間隔で線状に照射し製品板とした。
【0076】
このようにして得られた製品板に対してJIS C2550に準拠する繰返し曲げ試験を行った。また、被膜密着性を、丸棒に巻付ける屈曲試験により被膜の剥離限界直径として評価し、磁気特性を、800A/mで磁化したときの磁束密度B8(T)、そして周波数50Hzおよび磁束密度1.7Tにおける鉄損W17/50(W/kg)で評価した。
その結果を表2に示すように、この発明に従う例では、被膜外観、被膜密着性、繰返し曲げ特性および磁気特性が全て良好であることがわかる。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
実施例2
表3に示す成分組成になる溶鋼から、連続鋳造により220mm厚および1300mm幅のスラブを鋳込んだ。
これらスラブをガス加熱炉で酸素濃度が5vol%の雰囲気中で1125℃および80分間加熱し、その後プレス機による幅圧下でスラブ幅を1100mmにし、水平圧下により200mm厚さにした。次いで、誘導加熱炉で1400℃に加熱した。その後、粗圧延で厚さ40mmのシートバーとし、引き続いて、仕上圧延を行い2.4mm厚の熱延板とした。
【0080】
さらに、これらの鋼板に950℃および60秒間の焼鈍を施し、30℃/sの速度で急冷後に酸洗し、1回目の冷間圧延で1.7mm厚に仕上げた。次いで、1000℃で70秒の中間焼鈍を行って、30℃/sの速度で急冷した。その後、250℃の温間圧延で0.22mm厚に仕上げた。
【0081】
ついで、MgO:100質量部に対して、TiO2を5質量部(Ti換算で3質量部)、SrSO4を2質量部(Sr換算で0.5質量部)、MoO3を6質量部(Mo換算で4質量部)、水酸化Liを0.4質量部(Li換算で0.12質量部)添加した、焼鈍分離剤を脱炭焼鈍板の両面に、片面の塗布量を7g/m2として塗布した。その後、最終仕上焼鈍として、850℃までN2ガス中で30℃/hの速度で昇温し850℃で25時間保持した後、また850℃から1150℃までをN2を25vol%、H2を75vol%の混合ガス中で10.0℃/hの速度で、その後はH2ガス中で7℃/hの速度で1200℃まで昇温し、1200℃で8時間保持した後、冷却速度を8℃/hとして700℃までArガス中で冷却し、700℃からはN2ガス中で冷却した。
【0082】
上述の最終仕上焼鈍後、未反応の焼鈍分離剤を除去した後、50%のコロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを張力コーティングして塗布した後、840℃で30秒間焼き付け、磁区細分化処埋としてレーザを7.5mm間隔で照射し製品板とした。
【0083】
このようにして得られた製品板に対して、JIS C2550に準拠して繰返し曲げ試験を行った。また、被膜密着性を、丸棒に巻付ける屈曲試験により被膜の剥繊限界直径として評価し、磁気特性を、800A/mで磁化したときの磁束密度B8(T)、および周波数50Hz、磁束密度1.7Tにおける鉄損W17/50(W/kg)で評価した。その結果を表4に示すように、この発明に従う例では、被膜外観、被膜密着性、繰返し曲げ特性および磁気特性が全て良好であることがわかる。
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
実施例3
表3に示した記号B、CおよびFの組成を有する鋼スラブを、ガス炉により1250℃に加熱後、誘導式加熱炉に装入し1420℃で10分間均熱した。その後、粗圧延により35mmの厚みとし、さらに仕上圧延により2.6mmの厚みの熱間圧延コイルとした。
ついで、これらのコイルは、1000℃で50秒間の熱延板焼鈍を施し、ミスト水を噴射し30℃/sの急冷を行って常温まで冷却して酸洗し、1回目の冷間圧延で1.6mm厚とした。その後、1050℃で80秒間の中間焼鈍を施し、ミスト水を噴射し30℃/sの急冷を行って常温まで冷却してから、240℃の温間圧延で0.22mm厚に仕上げた。その後、脱脂処理を行い、830℃で2分間の脱炭焼鈍を500〜750℃の昇温速度を15℃/sとして施した。
【0087】
次に、MgO:100質量部に対して、TiO2を8質量部(Ti換算で5質量部)、SrSO4を1質量部(Sr換算で0.3質量部)、MoO3を3質量部(Mo換算で2質量部)、水酸化Liを0.4質量部(Li換算で0.12質量部)添加した、焼鈍分離剤を脱炭焼鈍板の両面に、片面の塗布量を7g/m2として塗布した。このようにして、各組成ごとに各3コイル、計9コイルを製造した。
【0088】
その後、最終仕上焼鈍は、N2中で35℃/hの昇温速度で850℃まで昇温し、その後850℃で25時間保持し、その後1100℃までは25%N2と75%H2の混合雰囲気、以後H2単独雰囲気で1180℃まで昇温後5時間保持した後、700℃までArガス中で冷却し、700℃からはN2ガス中で冷却した。その際、各組成ごとの各3コイルの冷却速度を、それぞれ4、6および8℃/hとした。
最終仕上焼鈍後、未反応の焼鈍分離剤を除去した後、50%のコロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを張力コーティングして塗布した後、840℃で30秒間焼き付け、磁区細分化処理としてレーザを7.5mm間隔で線状に照射し製品板とした。
【0089】
このようにして得られた製品板に対して、JIS C2550に準拠して繰返し曲げ試験を行った。また、被膜密着性を、丸棒に巻付ける屈曲試験により被膜の剥離限界直径として評価し、磁気特性を、800A/mで磁化したときの磁束密度B8(T)、および周波数50Hz、磁束密度1.7Tにおける鉄損W17/50(W/kg)で評価した。
その結果を表5に示すように、この発明に従う例では、被膜外観、被膜密着性、繰返し曲げ特性および磁気特性が全て良好であることがわかる。
【0090】
【表5】
【0091】
【発明の効果】
この発明によれば、BiとBNをインヒビターとした場合にあっても、外観および密着性に優れるフォルステライト被膜を有し、また繰返し曲げ特性に優れ、かつ磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】最終仕上焼鈍の冷却速度と繰返し曲げ特性の関係を示すグラフである。
【図2】焼鈍分離剤中MoO3添加量と繰返し曲げ特性の関係を示すグラフである。
【図3】焼鈍分離剤中水酸化Li添加量と被膜密着性の関係を示すグラフである。
【図4】焼鈍分離剤中水酸化Li添加量と繰返し曲げ特性の関係を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
この発明は、変圧器や発電機等の鉄心として用いられる高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法に開し、高磁束密度電磁鋼板を安定して製造する技術を提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
Siを含有し、かつ製品の結晶方位が{110}〈001〉方位、いわゆるゴス方位に配向した方向性電磁鋼板は、優れた軟磁気特性を示すことから、変圧器や発電機等の鉄心として用いられている。かかる電磁鋼板の特性として基本的に重要なのは、鉄損値が低いことである。磁束密度の高い電磁鋼板は鉄損が低く、かつ変圧器の小型化に有利なことと、低騒音の変圧器を製作可能であることから、近年の省エネルギー指向および低騒音環境指向により、年々その使用量が増加しており、さらに磁束密度を高めた方向性電磁鋼板の開発が望まれている。
【0003】
一般に、電磁鋼板の鉄損を低減するには、渦電流損の低減に有効なSiの含有量を増加して電気抵抗を高める方法、鋼板板厚を薄くする方法、製品の結晶粒径を小さくする方法、さらには結晶方位の集積度を高めて磁束密度を向上させる方法等が知られている。
【0004】
しかしながら、現状のSi含有量を増加させる方法は、Siを過度に含有させると圧延性や加工性を劣化させるため、含有量の増加は限界となっており、また鋼板板厚を薄くする方法や製品の結晶粒径を小さくする方法も、製造コストの極端な増大を招くため、自ずと限界が生じる。
【0005】
一方、磁束密度を向上させる方法は、これまでよく知られており、インヒビターと呼ばれる析出物の種類の選定と、その形態の制御とによって、二次再結晶粒のゴス方位への集積度を高めるといったものが主である。
【0006】
この析出物は高温熱処理における結晶粒界の移動を妨げ、1次再結晶粒の成長を抑制することによって、2次再結晶粒の急激な成長を促進する役割を果たす。析出物による1次再結晶粒の成長抑制力は、いわゆるZenerの式で一般に与えられることが知られており、析出物の体積分率が大きいほど、また同一の体積分率の場合には、微細に分散して析出しているほど、抑制力は強いと評価される。
【0007】
従って、インヒビターの形態としては均一かつ微細に分散することが、重要である。このため、従来、熱間圧延前のスラブ加熱においては、高温加熱を行ってインヒビターを完全に固溶させ、熱間圧延工程以降の二次再結晶までの過程でこのインヒビターを微細分散析出させる方法がとられている。
【0008】
なお、インヒビターとしては、Cu2−xS、MnS、Cu2−xSe、AlNおよびBN等の、硫化物、セレン化物または窒化物であり、一般に鋼中への溶解度が極めて小さい物質が用いられている。
【0009】
例えば、インヒビターにAlNを用いる技術として、特許文献1や特許文献2に記載された技術があるが、二次再結晶時にAlNが雰囲気の影響を受けやすいことから磁気特性が不安定になりやすく、更に酸化し易いAlの含有は、脱炭焼鈍でのサブスケールの生成、そして最終仕上焼鈍でのフォルステライト被膜の生成を著しく困難にするため、工業的に十分な技術とはいえなかった。ちなみに、特許文献3には、Al含有量が多くなると被膜外観が白っぽく変化し劣化すると記載されている。
【0010】
また、インヒビターにBNを用いる技術として、例えば特許文献4には、0.0006〜0.0080mass%のBと0.0100mass%以下のNとを含有する鋼を用いる技術が開示されている。しかしながら、この特許文献4に開示されている技術で得られる、材料の磁束密度は、B8の値で高々1.89T程度であり、磁束密度は十分ではなく、鉄損もさほど良好なものとはいえなかった。
【0011】
特許文献5および特許文献6には、0.0003〜0.0035mass%のBと0.0030〜0.0070mass%のNとを含有する鋼を用いて、それぞれMn/Sを1.8以下あるいは2.1以下とすることにより、B8で1.85Tから1.92Tの磁束密度を得る技術が開示されている。このBNをインヒビターとする方法は、高い磁束密度が得られる可能性はあるが、Mnを低くすることがコスト上昇に繋がるばかりか、熱延工程において熱間割れを引き起こすため、工業化が困難な技術であった。
【0012】
更に、特許文献7には、必要B量を0.0018%以下まで低減することにより、Mn/Sを1.8以上あるいは2.5以上とする技術が開示されているが、磁束密度の低下は免れない。一方、特許文献8には、BがBNとして析出するのに必要な当量分のNを除いた、残りのN量を溶解N量と定義し、これを0.0020%以下とすることにより、Mn/Sを2.1以上としても高磁束密度が得られることが開示されているが、この技術をもっても良好な二次再結晶組織を有する方向性電磁鋼板を安定して得ることはできなかった。
【0013】
ここで、インヒビターの作用を有するものとして、上述の析出物のみではなく、結晶粒界に偏析する元素もよく知られている。これは、結晶粒界に偏析し、粒界エネルギーを低下させて粒界移動を抑制する機構を利用したものである。この偏析元素について、例えば特許文献9には鋼中にCuやSnを添加する方法が、特許文献10にはSbやMoを添加する方法が、また特許文献11および特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15および特許文献16にはBiを添加する方法が、それぞれ提案されている。しかしながら、これらの偏析元素の単独の偏析効果による抑制作用はさはど大きくはないので、MnSeとSbやAlNとSbおよびAlNとSnなどのように、析出物と偏析元素の偏析との複合作用を利用する場合が多い。この種の方法では、偏析元素の粒界偏析効果のみならず、偏析元素が析出物界面にも析出し析出物のオストワルド成長をも抑制するという利点が存在する。
【0014】
しかしながら、、粒界に偏析するインヒビターは、粒界だけでなく鋼板表面にも偏析をするため、最終仕上焼鈍中に鋼板表面に生成するフォルステライト被膜の特性に多大な影響を与える。すなわち、通常は、偏析型のインヒビターを添加すると、製品の被膜外観や絶縁コーティングの密着性が劣化する。
【0015】
このようなフォルステライト被膜の特性不良に対しては、最終仕上焼鈍の際に用いる焼鈍分離剤の含水率を0.3〜3%の範囲に調整する方法(特許文献17)、脱炭焼鈍板の酸素目付量を550〜850ppmの範囲に調整する方法(特許文献18)、焼鈍分離剤に用いるMgOのlg−Loss値を0.4〜1.5%に調整する方法(特許文献19),最終仕上焼鈍における雰囲気ガス流量を適正に調整する方法(特許文献20)など多くの改善策が提案されているものの、いずれも十分な被膜改善効果を得ることはできなかった。
【0016】
すなわち、上記の従来技術を用いることによって、幾らかの被膜改善効果が期待できるものの、偏析型のインヒビターに起因した被膜劣化を完全に防止することはできず、外観の良好な製品を製造するには至っていないのが現状である。
【0017】
ところで、一般にインヒビターが強力で正常粒成長の抑制力が強いほど、高い方位集積度が得られると考えられている。したがって、通常はインヒビターとしては、複数の種類の物質が用いられている。また、粒成長は高温ほど顕著となるため、高温での抑制力を強くすることが重要である。
ここに、最終仕上焼鈍における高温域の抑制力として有効に作用するインヒビターとして、Biが知られている(例えば、特許文献21参照)。
【0018】
【特許文献1】
特公昭56−21331号公報
【特許文献2】
特公平7−62176号公報
【特許文献3】
特開2000−160304号公報
【特許文献4】
特公昭58−43445号公報
【特許文献5】
特公昭58−42244号公報
【特許文献6】
特公昭60−55570号公報
【特許文献7】
特公平7−68581号公報
【特許文献8】
特開昭57−114615号公報
【特許文献9】
特公昭60−48886号公報
【特許文献10】
特開平2−115319号公報
【特許文献11】
特公昭51−29496号公報
【特許文献12】
特開昭49−119817号公報
【特許文献13】
特公昭53−39852号公報
【特許文献14】
特公昭59−30771号公報
【特許文献15】
特公昭56−18044号公報
【特許文献16】
特公昭56−21331号公報
【特許文献17】
特開平11−229036号公報
【特許文献18】
特開平10−152725号公報
【特許文献19】
特開平10−25516号公報
【特許文献20】
特開平9−3542号公報
【特許文献21】
特開平11−335736号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、高温域の抑制力を高めるには、インヒビターにBiを用いることが好ましいが、上述のように鋼中にBiを含有すると、被膜特性が劣化することから、被膜に悪影響を及ぼすAlNはインヒビターとして用いず、同じ析出型のインヒビターとしてBNを用いることが有利である。
しかしながら、インヒビターとして、BiそしてBNを用いて製造した電磁鋼板には、製品板の被膜特性および繰返し曲げ特性に代表される機械的特性が劣化することが、新たな問題として浮上した。
【0020】
従って、この発明は、BiとBNとをインヒビターとして使用した場合において問題となる、被膜特性および機械的特性の劣化を、効果的に改善することにより、外観および密着性に優れるフォルステライト被膜を有し、また機械的特性に優れ、しかも磁気特性にも優れた方向性電磁鋼板の有利な製造方法について提案することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、BiとBNとをインヒビターとした場合に生ずる、被膜特性不良および繰返し曲げ特性不良を解消する手段について、鋭意究明したところ、焼鈍分離剤の配合並びに最終仕上焼鈍条件を規制することが有効であるのを見出し、この発明を完成するに到った。
【0022】
すなわち、この発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)Si:2.5〜4.5mass%を含み、さらにインヒビター形成成分として、少なくともBi:0.0005〜0.100mass%、B:0.0020〜0.0050mass%およびN:0.005〜0.015mass%を含有し、かつAl:0.012mass%以下に抑制した、鋼スラブに、熱間圧延を施し、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、脱炭焼鈍、次いで焼鈍分離剤を塗布してから、2次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上焼鈍を施す、一連の工程によって方向性電磁鋼板を製造するに当たり、
焼鈍分離剤として、MgO:100質量部に対して、アルカリ金属化合物を該金属換算で0.001〜1.5質量部およびMo化合物をMo換算で0.7〜10質量部で含有させたものを用いるとともに、最終仕上焼鈍における1050℃以上の純化焼鈍後の700℃に到る冷却速度を5℃/h以上とすることを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0023】
(2)上記(1)において、鋼スラブが、さらにC:0.03〜0.10mass%およびMn:0.050〜1.5mass%を含有することを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0024】
(3)上記(1)または(2)において、鋼スラブが、さらにSおよびSeの1種または2種を合計で0.010〜0.040mass%含有することを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0025】
(4)上記(1)、(2)または(3)において、鋼スラブが、さらにNi:0.05〜0.5mass%、Cu:0.05〜0.5mass%、Sn:0.05〜0.5mass%、Sb:0.005〜0.10mass、As:0.005〜0.10mass%、Mo:0.005〜0.10mass%、Te:0.005〜0.10mass%およびP:0.005〜0.10mass%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0026】
(5)上記(1)ないし(4)のいずれかにおいて、鋼スラブが、さらにCr:0.01〜0.50mass%を含有することを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の基礎となった実験およびその結果について説明する。
すなわち、Bi、BおよびNを含有する種々の鋼塊を用いて種々の実験を行ったが、繰返し曲げ特性は良好な場合もあれば不良となる場合もあった。繰返し曲げ特性に影響を及ぼす実験条件が何にあるのかを詳細に調べた結果、最終仕上焼鈍の冷却速度が遅くなると、繰返し曲げ特性が劣化する傾向にあることを見出した。
そこで、最終仕上焼鈍の冷却速度と繰返し曲げ特性との関係を明らかにするために、以下に示す実験を行った。
【0028】
(実験1)
C:0.06mass%、Si:3.5mass%、Mn:0.07mass%、Cu:0.1mass%、Se:0.02mass%、N:0.008mass%、B:0.003mass%およびBi:0.01mass%を含有する鋼塊を1360℃に加熱した後、熱間圧延により2.5mm厚の熱延板とした。次いで、1000℃で60秒の熱延板焼鈍を行って酸洗し、冷間圧延により1.8mmの中間厚としたのち、1050℃で120秒間の中間焼鈍を経て、220℃の温間圧延を含む冷間圧延によって最終板厚が0.22mmの冷延板に仕上げた。
【0029】
その後、820℃で120秒間の脱炭焼鈍後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を片面あたり7g/m2塗布してから、窒素雰囲気中で850℃まで35℃/hの速度で昇温し、850℃で25時間保持した後、窒素:25vol%と水素:75vol%の雰囲気中にて10℃/hの昇温速度で1200℃まで加熱し、1200℃で5時間の水素雰囲気中での純化焼鈍を行った後、Ar雰囲気中で冷却した。その際、1200℃〜700℃間の冷却速度は、4℃/h〜50℃/hの範囲で変更した。
【0030】
かくして最終仕上焼鈍の冷却速度を異ならせて得た、方向性電磁鋼板に対して繰返し曲げ試験をJIS C2550に準拠して行った。
その結果を図1に示すように、最終仕上焼鈍の冷却速度が遅くなると、繰返し曲げ特性が劣化することが明白となった。
【0031】
次に、最終仕上焼鈍の冷却速度が遅くなると繰返し曲げ特性が劣化する原因を明らかにするため、繰返し曲げ試験での破断面を調査した。すなわち、破断面を走査型電子顕微鏡におけるEDX(Energy Dispersive X−ray spectroscopy, エネルギー分散型X線分光法)分析の結果、鋼板の表層にFeとBとからなる析出物が観察された。一方、最終仕上焼鈍板の被膜を除去した後の試料のB含有量を化学分析により分析したが、B含有量は最終仕上焼鈍の冷却速度に依存していなかった。すなわち、冷却速度が速くなると、FeとBとからなる析出が生じにくくなるため、繰返し曲げ特性が改善すると考えられる。
【0032】
以上の結果から、繰返し曲げ特性の改善には最終仕上焼鈍の冷却中にFeおよびBからなる析出物の析出を抑制することが有効であると考えられる。一般に、析出とは、母相での析出元素の化学ポテンシャルが、析出相での析出元素の化学ポテンシャルよりも高い場合に生じるものである。
【0033】
さて、熱力学的平衡状態において、ある温度における析出物中の元素の化学ポテンシャルを変化させるには、析出物の組成あるいは圧力を変えなければならない。従って、FeとBからなる析出物中のFeまたはBの化学ポテンシャルを変化させるのは困難である。同様に、地鉄(母相)中のFeの化学ポテンシャルを低くするのも、Feが主成分であるため困難である。
そこで、発明者らは、地鉄(母相)中のBの化学ポテンシャルを低下させることを考えた。
【0034】
上述したように、FeとBとからなる析出物は、鋼板の表層に観察されたことから、特に鋼板の表層におけるBの化学ポテンシャルを低下させることを考えた。すなわち、最終仕上焼鈍時に生成する被膜中でのBの化学ポテンシャルを低下させることを考え、脱炭焼鈍板に塗布する焼鈍分離剤中のBの化学ポテンシャルを低下することを考えた。しかしながら、通常の焼鈍分離剤中には、Bは不純物レベルとしてしか含有されていないため、Bの含有量をこれ以上低下させることはできない。
そこで、Bと化合物を生成する元素を焼鈍分離剤中に添加することを考えた。
【0035】
また、鋼中にはBiが含まれ被膜特性に不利であることから、焼鈍分離剤中に添加する元素として被膜特性の改善効果があるMoに着目し、以下の実験を行った。なお、Moの添加は、特開昭58−177474号公報にあるように、被膜改善効果があることが知られている。
【0036】
(実験2)
C:0.07mass%、Si:3.3mass%、Mn:0.07mass%、Cu:0.1mass%、Se:0.02mass%、N:0.008mass%、B:0.003mass%およびBi:0.02mass%を含有する鋼塊を用いて、実験1と同様の条件で脱炭焼鈍までを行った。
その後、MgO:100質量部に対して、TiO2を5質量部(Ti換算で3質量部)、SrSO4を2質量部(Sr換算で0.5質量部)、MoO3を0、1、2、4および8質量部(Mo換算で0、0.7、1.3、2.7および5.3質量部)添加した、焼鈍分離剤を脱炭焼鈍板の両面に、片面当たり7g/m2の塗布量で塗布した。そして、最終仕上焼鈍として、窒素雰囲気中で850℃まで8℃/hの速度で昇温し、850℃で25時間保持した後、窒素:25vol%と水素:75vol%の雰囲気中にて10℃/hの昇温速度で1200℃まで加熱し、1200℃で5時間の水素雰囲気中での純化焼鈍を行った後、Ar雰囲気中で1200℃〜700℃の冷却速度を4℃/hとして冷却した。
【0037】
このようにして得られた方向性電磁鋼板に対して、JIS C2550に準拠して繰返し曲げ試験を行った。その結果を図2に示すように、焼鈍分離剤中にMoO3を添加すると繰返し曲げ特性が改善することが判明した。しかしながら、被膜外観にはむらがあり、良好であるとは言い難い結果であった。
【0038】
この被膜劣化の原因としては、最終仕上焼鈍中にマグネシアの水和水により鋼板の表層でBiが酸化され液相になり、脱炭焼鈍で生成したSiO2の界面に濃化するため、地鉄表面の凹凸が消失し、被膜が剥落しやすくなったと考えられる。したがって、Biの酸化を抑制すれば被膜特性が改善すると考えられ、その1つの方法として、最終仕上焼鈍における鋼板表面へのSiO2の濃化を促進させて、表面のSiO2によりマグネシアの水和水と地鉄中のBiの反応を低減することが考えられる。
【0039】
ここで、焼鈍分離剤中のアルカリ金属の含有量が増加すると、脱炭焼鈍板の内部酸化層中のSiO2は最終仕上焼鈍中に鋼板表面に浮上しやすくなることが知られている(例えば、特公昭54−14566号公報参照)。そこで、焼鈍分離剤中にアルカリ金属化合物を添加する実験を行った。
【0040】
(実験3)
C:0.07mass%、Si:3.4mass%、Mn:0.07mass%、Cu:0.1mass%、Se:0.02mass%、N:0.008mass%、B:0.003mass%およびBi:0.04mass%を含有する鋼塊を用いて、実験1と同様の条件で脱炭焼鈍まで行った。
その後、MgO:100質量部に対してTiO2を5質量部(Ti換算で3質量部)、SrSO4を2質量部(Sr換算で0.5質量部)、MoO3を0および2質量部(Mo換算で0および1.3質量部)、水酸化Liを0、0.2、0.4および0.6質量部(Li換算で0、0.06、0.12および0.18質量部)添加した、焼鈍分離剤を脱炭焼鈍板の両面に、片面当たり7g/m2の塗布量で塗布した。そして、最終仕上焼鈍として、窒素雰囲気中で850℃まで8℃/hの速度で昇温し、その後窒素:25vol%と水素:75vol%の雰囲気中にて10℃/hの昇温速度で1200℃まで加熱し、1200℃で5時間の水素雰囲気中での純化焼鈍を行った後、Ar雰囲気中で1200℃〜700℃間の冷却速度を8℃/hとして冷却した。その後、未反応の焼鈍分離剤を除去し、50%のコロイダルシリカを含有するりん酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティングを塗布して800℃で焼付けた。
【0041】
このようにして得られた方向性電磁鋼板に対して、JIS C2550に準拠して繰返し曲げ試験を行った。また、被膜密着性を、丸棒に巻付ける屈曲試験により被膜の剥離限界直径として評価した。
その結果を図3に示すように、焼鈍分離剤中に水酸化Liを添加すると被膜外観が改善し、被膜密着性が改善することが判明した。
【0042】
また、図4に示すように、MoO3を2質量部添加した場合は、水酸化Liを添加すると、繰り返し曲げ特性も改善することが判明した。一方、MoO3を添加しなかった場合では、水酸化Liの添加量に関係無く繰返し曲げ特性は不良であった。
これは、水酸化Liを添加することにより被膜密着性が改善し、焼鈍分離剤中のMoによるFeとBとの析出抑制効果が助長されたためと考えられる 。
【0043】
なお、特開昭49−29305号公報には、アルカリ金属であるLiを含む化合物を添加することにより、珪酸マグネシウムおよびLiを含む酸化膜を形成させる方法が開示されているが、この発明で対象とするBiを含む電磁鋼板に、単純にこの技術を適用しても必ずしも良好な被膜特性および磁気特性は得られなかった。というのは、特開昭49−29305号公報に開示の方法では、Li添加量が多かったり、Li化合物として有機化合物塩、ホウ酸塩等の有害元素も同時に導入したりするために、MgO−SiO2−LiO2系の被膜が形成されるが、これは通常のMgO−SiO2系の被膜よりも安定性が低下するため、Biの表層への移動により被膜が損傷を受けるからである。
【0044】
この点、この発明では、被膜形成を促進させるに有効な程度の極微量のアルカリ金属を含有させるだけであるため、アルカリ金属成分をほとんど含まないMgO−SiO2系の被膜が形成される。このMgO−SiO2系被膜は化学的に安定であり、Biによる損傷を受けにくいために、良好な被膜が維持できるものと考えられる。
【0045】
以下、この発明の構成要件毎に、詳しく説明する。
まず、成分組成範囲を挙げると、以下のとおりである。
Si:2.5〜4.5mass%
Siは、鋼板の比抵抗を高め、鉄損を下げるのに有効な成分であるが、4.5mass%を上回る含有量では冷延性が損なわれ、一方2.5mass%に満たない含有量では、比抵抗が低下するだけでなく、二次再結晶および純化のために行われる最終仕上焼鈍中にα→γ変態によって結晶方位のランダム化を生じ、十分な鉄損低減効果が得られなくなる。従って、Si含有量は2.5〜4.5mass%の範囲に限定した。
【0046】
C:0.03〜0.10mass%
Cの含有量は、0.03〜0.10mass%とするのが好ましい。即ち、0.10mass%を超えると、γ変態量が過剰となり、熱間圧延中に析出するMnSe、MnSなどのインヒビターの分布均一性を阻害することになる。また、脱炭焼鈍の負荷も増大し脱炭不良を発生しやすくなる。一方0.03mass%未満では、組織改善効果が得られず2次再結晶が不完全となり、同じく磁気特性が劣化する。従って、Cは0.03〜0.10mass%の範囲にするのが望ましい。
【0047】
Cr:0.01〜0.50mass%
Bi添加材は、フォルステライト被膜の生成を困難とするため、特開2000−96149号公報に記載されているように、その改善のためにCrを添加してもよい。その効果は、0.01mass%未満では十分でなく、0.50mass%を超えると効果は飽和してコスト高となるため、Crの範囲は0.01〜0.50mass%とすることが好ましい。
【0048】
Mn:0.05〜0.15mass%
Mnは、熱間脆性を防止するためには、少なくとも0.05mass%の添加が好ましいが、Mn含有量があまりに多すぎると磁気特性の劣化を引き起こすため、上限は0.15mass%程度にするのが望ましい。
【0049】
Al:0.012mass%以下
不純物としてのAl含有量が多くなると、脱炭焼鈍でのサブスケールの生成や、仕上焼鈍でのフォルステライトの生成を困難にするという側面がある。これらの劣化を防ぐためには、Alを0.012mass%以下に制限する必要がある。
【0050】
インヒビター形成成分については、次のとおりである。
B:0.0020〜0.0050mass%およびN:0.005〜0.015mass%
この発明においては、主たるインヒビター成分として、サブスケールの安定生成と、それによる良好な下地被膜の生成とのために、BNを用いる。特に、最終冷間圧延圧下率が80%以上の場合、二次再結晶温度が非常に高くなるため、鋼中には高温で安定なインヒビター成分として、B及びNを含有させることが必須である。
【0051】
このうち、Bは0.0020〜0.0050mass%の範囲で含有させる。すなわち、Bの含有量が0.0020mass%未満の場合、析出するBNの量が不足し良好な二次再結晶を得ることができず、一方0.0050mass%を超える場合、固溶温度が増加し、通常の加熱では熱間圧延前にBNを完全に固溶させることが不可能となるためである。
【0052】
Nの含有量は0.005mass%以上が必要であり、N量が0.005mass%未満では析出するBNの量が不足する。また、N量が0.015mass%を超えると、鋼中でガス化して膨れなどの欠陥が生ずるため、0.005〜0.015mass%の範囲とする。
【0053】
Bi:0.0005〜0.100mass%
Bi添加は、この発明の特徴の一つである。すなわち、Biの添加量が0.0005mass%未満では、この発明でBiに期待する効果は得られず、一方0.100mass%を超えると均一分散が困難となる。したがってBiは0.0005〜0.100mass%の範囲で含有させることとする。
【0054】
S、Se:0.01〜0.04mass%
インヒビター成分として、SeおよびSを単独もしくは複合で含有することができる。これらの成分は、鋼中にMn化合物あるいはCu化合物として析出するが、抑制効果を維持するには、いずれか1種または2種の合計で0.010mass%以上が必要である。一方、0.040mass%を超えると、高温のスラブ加熱でも完全に固溶させることができず粗大な析出物となるため、かえって有害になる。従って、0.010〜0.040massの範囲とする。
このとき、Mn/(Se+S)が2.5より小さいと、熱間圧延中に粒界割れや耳荒れが著しく増加するため、Mn/(Se+S)≧2.5とすることが実用上好ましい。
【0055】
また、インヒビター補強元素については、次のとおりである。
すなわち、Ni、Cu、Sn、Sb、Mo、As、TeおよびP等は、公知のインヒビターの抑制力を強化する補助的働きを有するため、鋼中に随時添加することが好ましい。このために必要な好適添加量については、Ni、CuおよびSnがそれぞれ0.05〜0.50mass%、Sb、Mo、Te、AsおよびPがそれぞれ0.005〜0.10mass%である。いずれも、下限未満では、正常粒成長の抑制効果が発揮されず、一方上限を超えると、この発明の技術をもってしても被膜特性の劣化を防止できないため、適正範囲として上記の範囲に限定した。
【0056】
その他の添加元素については、例えば、Ge、Coの添加などは鋼板の表面性状を改善する効果があるので適宜含有させることができる。
【0057】
次に、製造条件について具体的に説明する。
上述した成分に調整された溶鋼は、通常、連続鋳造法または造魂−分塊法によってスラブとする。
ついで、このスラブは加熱された後、熱間圧延により熱延コイルとされるが、この時スラブの加熱は、鋼中のインヒビターの固溶のために高温で行う。通常は、加熱温度を1350℃以上とすることが好ましい。というのは、スラブ加熱温度が1350℃に満たないと、インヒビター成分の固溶が十分でなく、Mn(Se,S)やBN等の微細かつ均一な分散析出が得られないからである。なお、熱間圧延に関しては、スラブ加熱前後において、組織均一化のための厚み低減処理や幅圧下処理など、公知の技術を随時加えることが可能である。
【0058】
冷間圧延工程は、熱延板焼鈍後、1回の冷間圧延により最終板厚とする冷延1回法、あるいは必要に応じて熱延板焼鈍を施した後、中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施す冷延2回法のいずれかを採用できる。
【0059】
冷間圧延の圧下率については、従来公知の範囲、例えば冷延2回法の第1回目の圧延を15〜60%程度とすることが好ましい。というのは、圧下率が15%未満の場合は、圧延再結晶の機構が作用しないため結晶組織の均一化が得られず、一方60%を超えると集合組織の集積化が起こり、第2回目の圧延の効果が得られなくなるからである。
さらに、最終圧延の圧下率は80〜90%程度とするのが好ましい。というのは、圧下率が90%を超えた場合、2次再結晶が困難となり、一方80%未満では良好な2次再結晶粒の方位が得られず、製品の磁束密度が低下するからである。
【0060】
また、熱延板焼鈍または中間焼鈍において、焼鈍温度が過度に低い場合、圧延後の再結晶組織において2次再結晶の核となる(110)粒の強度が不足し、良好な方位の2次再結晶組織が得られなくなる。(110)粒の強度を得るためには、熱延板焼鈍後の結晶組織を一定サイズ以上に粗大化する必要があり、このためには800℃以上の温度まで昇温することが不可欠である。一方、焼鈍温度の上限については、微細に析出したMn(Se,S)およびBN等のインヒビターを再固溶あるいはオストワルド成長させないことが肝要なため、1200℃とすることが好ましい。
【0061】
なお、かような熱延板焼鈍または中間焼鈍の冷却過程については、特に制限されることはないが、焼鈍後の鋼中の固溶Cを増加させる点から急冷処理を行ったり、鋼中の微細カーバイトを析出させるための急冷低温保持処理を行ったりすることは、製品の磁気特性を向上させる上で有効である。また、焼鈍の雰囲気の酸化性を高めて鋼板表層部を脱炭する手段も有効な働きをする。
【0062】
さらに、最終冷間圧延を、公知のように100〜350℃での温間圧延としたり、または100〜350℃で10〜60分間のパス間時効処理を付加することにより、1次再結晶の集合組織を一層改善することができる。
また、最終冷間圧延後、磁区細分化のため、鋼板表面に線状の溝を設ける処理を行うことも可能である。
【0063】
ついで、最終板厚とした鋼板は、公知の手法による脱炭焼鈍を施した後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布してから最終仕上焼鈍に供されるが、その時MgOを主成分とする焼鈍分離剤にMo化合物と微量のアルカリ金属化合物を含有させることが、この発明の要件の1つである。
【0064】
ここに、Mo化合物の添加量については、、MgOに対する質量の比率として、Mo換算で0.7〜10質量部とする必要がある。
すなわち、Mo化合物を上記の範囲で添加することにより、繰返し曲げ特性が改善する。しかしながら、添加量が、上記した下限値に満たないと十分な効果が得られず、一方上限値を越えると主成分であるMgOの含有率が低下するため、被膜特性が劣化する。したがって、Mo化合物の添加量は、0.7〜10質量部の範囲に限定した。
【0065】
アルカリ金属の添加量については、MgOに対する質量の比率として、リチウム化合物であればLi換算で0.0l〜1.5質量部、ナトリウム化合物であればNa換算で0.005〜1質量部、カリウム化合物であればK換算で0.001〜0.5質量部が好適である。これら化合物は単独添加でも複合添加でもいずれでも構わないが、単独または複合の合計で0.001〜1.5質量部(アルカリ金属換算)とする必要がある。
【0066】
すなわち、これらのアルカリ金属を上記の範囲で微量添加することにより、緻密なフォルステライトを主体とする被膜が形成され、さらにMo化合物添加による繰り返し曲げ特性の改善効果が、顕著に発揮される。しかしながら、添加量が上記した下限値に満たないと十分な効果が得られず、一方上限値を超えると、これらの金属を含む被膜が最終仕上焼鈍途中で形成され、副インヒビター成分によりこの被膜が損傷を受ける結果、点状の被膜欠陥や被膜密着性の低下などの被膜不良が生じる。さらに磁気特性についても最終仕上焼鈍途中で粗雑な被膜となる結果、鋼板が雰囲気の影響を受けやすくなり、副インヒビター添加による磁性改善効果は失われる。したがって、アルカリ金属の添加量は、0.001〜1.5質量部の範囲に限定した。
【0067】
また、焼鈍分離剤中に、上記したアルカリ金属以外の添加剤を含有させることも可能である。たとえば、Mg,Ca,Sr,Ti,Mn,Fe,Cu,Sn,Sb,Zn,SiおよびAl等の化合物を用いることができる。その添加量としては、MgOに対する質量の比率として、単独または複合の合計が0.5〜15質量部程度とすることが好適である。その他、焼鈍分離剤の塗布量や水和量は従来どおり、5〜15g/m2(両面)、0.5〜5質量部程度でよい。
【0068】
さらに、1次再結晶焼鈍後かつ2次再結晶開始までの間において、鋼中に550massppm以下の範囲でNを含ませる窒化処理を行うことも、鋼中の抑制力が弱い場合には適切であり、この技術の適用を妨げるものではない。窒化の方法としては、1次再結晶焼鈍後、NH3を含む雰囲気中で鋼板を熱処理する方法や、焼鈍分離剤中に分解性の窒化物を含有させるといった方法などが適合する。
【0069】
最終仕上焼鈍において、その昇温途中の少なくとも1050℃以上、好ましくは900℃以上の温度域については、H2を含有する雰囲気中で昇温することが有利である。すなわち、H2雰囲気は、最終仕上焼鈍中に形成される被膜中の酸化物や窒化物の形成に重要な作用を及ぼし、900℃以上の焼鈍の中期から後期において特に還元性を強めておくことが有効である。
【0070】
この際、最終仕上焼鈍における1050℃以上の純化焼鈍後の700℃までの冷却速度を5℃/h以下とすることが、繰返し曲げ特性の改善のために必要である。
ここで、冷却速度とは、1050℃以上の純化焼鈍において最高温度に達してから、最高温度より50℃低い温度をT1とし、その時刻をt1、また700℃まで温度が低下した時刻をt2とすると、(T1−700)÷(t2−t1)と表すことができる。
【0071】
最終仕上焼鈍後は、未反応の焼鈍分離剤を除去した後、鋼板表面に絶縁コーティングを塗布して製品とするが、必要に応じてコーティング塗布前に鋼板表面を鏡面化してもよいし、また絶縁コーティングとして張力コーティングを用いてもよい。さらに、コーティングの塗布焼付処理を平坦化処理と兼ねてもよい。
【0072】
また、2次再結晶後の鋼板には、鉄損低減効果を得るため、磁区細分化処理、すなわちプラズマジェットやレーザ照射を線状に施したり、突起ロールによる線状のへこみ領域を設けたりする処理を施すこともできる。
【0073】
【実施例】
実施例1
C:0.07mass%、Si:3.2mass%、Mn:0.07mass%、Cu:0.1mass%、Bi:0.004mass%、Se:0.02mass%、N:0.0085mass%およびAl:0.0080mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物になる、厚さ250mmの鋼スラブを、ガス加熱炉に装入し、酸素濃度が10vol%の雰囲気中で1100℃および80分間加熱した後、誘導加熱炉で1400℃に加熱した。その後、粗圧延に引き続いて仕上圧延を行い2.6mm厚の熱延板とした。
その後、熱延板に1000℃で45秒間の焼鈍を施し、35℃/sの速度で急冷後に酸洗し、1回目の冷間圧延で1.6mm厚に仕上げた。次いで、1050℃で60秒間の中間焼鈍を行い、35℃/sの速度で急冷した後、240℃の温間圧延で0.22mm厚に仕上げた。
【0074】
次いで、脱脂処理を施した後、820℃で2分間、露点が56℃、水素濃度が50vol%、窒素濃度が50vol%の雰囲気中で脱炭焼鈍を施した。その後、MgOに表1に示す添加剤を添加した焼鈍分離剤を鋼板の両面に、片面の塗布量を7g/m2として塗布し、最終仕上焼鈍として、850℃までN2ガス中で30℃/hの速度で昇温し、850℃で10時間保持した後、850℃から1050℃までをN2を25vol%、H2を75vol%の混合ガス中で12.0℃/hの速度で、その後はH2ガス中で10℃/hの速度で1200℃まで昇温し、1200℃で8時間保持した後、冷却速度を6℃/hとして、700℃までArガス中で冷却し、700℃からはN2ガス中で冷却した。
【0075】
上述の最終仕上焼鈍後、末反応の焼鈍分離剤を除去した後、50%のコロイダルシリカを含有するりん酸マグネシウムを張力コーティングして塗布した後、840℃で30秒間焼き付け、磁区細分化処理としてレーザを7.5mm間隔で線状に照射し製品板とした。
【0076】
このようにして得られた製品板に対してJIS C2550に準拠する繰返し曲げ試験を行った。また、被膜密着性を、丸棒に巻付ける屈曲試験により被膜の剥離限界直径として評価し、磁気特性を、800A/mで磁化したときの磁束密度B8(T)、そして周波数50Hzおよび磁束密度1.7Tにおける鉄損W17/50(W/kg)で評価した。
その結果を表2に示すように、この発明に従う例では、被膜外観、被膜密着性、繰返し曲げ特性および磁気特性が全て良好であることがわかる。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
実施例2
表3に示す成分組成になる溶鋼から、連続鋳造により220mm厚および1300mm幅のスラブを鋳込んだ。
これらスラブをガス加熱炉で酸素濃度が5vol%の雰囲気中で1125℃および80分間加熱し、その後プレス機による幅圧下でスラブ幅を1100mmにし、水平圧下により200mm厚さにした。次いで、誘導加熱炉で1400℃に加熱した。その後、粗圧延で厚さ40mmのシートバーとし、引き続いて、仕上圧延を行い2.4mm厚の熱延板とした。
【0080】
さらに、これらの鋼板に950℃および60秒間の焼鈍を施し、30℃/sの速度で急冷後に酸洗し、1回目の冷間圧延で1.7mm厚に仕上げた。次いで、1000℃で70秒の中間焼鈍を行って、30℃/sの速度で急冷した。その後、250℃の温間圧延で0.22mm厚に仕上げた。
【0081】
ついで、MgO:100質量部に対して、TiO2を5質量部(Ti換算で3質量部)、SrSO4を2質量部(Sr換算で0.5質量部)、MoO3を6質量部(Mo換算で4質量部)、水酸化Liを0.4質量部(Li換算で0.12質量部)添加した、焼鈍分離剤を脱炭焼鈍板の両面に、片面の塗布量を7g/m2として塗布した。その後、最終仕上焼鈍として、850℃までN2ガス中で30℃/hの速度で昇温し850℃で25時間保持した後、また850℃から1150℃までをN2を25vol%、H2を75vol%の混合ガス中で10.0℃/hの速度で、その後はH2ガス中で7℃/hの速度で1200℃まで昇温し、1200℃で8時間保持した後、冷却速度を8℃/hとして700℃までArガス中で冷却し、700℃からはN2ガス中で冷却した。
【0082】
上述の最終仕上焼鈍後、未反応の焼鈍分離剤を除去した後、50%のコロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを張力コーティングして塗布した後、840℃で30秒間焼き付け、磁区細分化処埋としてレーザを7.5mm間隔で照射し製品板とした。
【0083】
このようにして得られた製品板に対して、JIS C2550に準拠して繰返し曲げ試験を行った。また、被膜密着性を、丸棒に巻付ける屈曲試験により被膜の剥繊限界直径として評価し、磁気特性を、800A/mで磁化したときの磁束密度B8(T)、および周波数50Hz、磁束密度1.7Tにおける鉄損W17/50(W/kg)で評価した。その結果を表4に示すように、この発明に従う例では、被膜外観、被膜密着性、繰返し曲げ特性および磁気特性が全て良好であることがわかる。
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
実施例3
表3に示した記号B、CおよびFの組成を有する鋼スラブを、ガス炉により1250℃に加熱後、誘導式加熱炉に装入し1420℃で10分間均熱した。その後、粗圧延により35mmの厚みとし、さらに仕上圧延により2.6mmの厚みの熱間圧延コイルとした。
ついで、これらのコイルは、1000℃で50秒間の熱延板焼鈍を施し、ミスト水を噴射し30℃/sの急冷を行って常温まで冷却して酸洗し、1回目の冷間圧延で1.6mm厚とした。その後、1050℃で80秒間の中間焼鈍を施し、ミスト水を噴射し30℃/sの急冷を行って常温まで冷却してから、240℃の温間圧延で0.22mm厚に仕上げた。その後、脱脂処理を行い、830℃で2分間の脱炭焼鈍を500〜750℃の昇温速度を15℃/sとして施した。
【0087】
次に、MgO:100質量部に対して、TiO2を8質量部(Ti換算で5質量部)、SrSO4を1質量部(Sr換算で0.3質量部)、MoO3を3質量部(Mo換算で2質量部)、水酸化Liを0.4質量部(Li換算で0.12質量部)添加した、焼鈍分離剤を脱炭焼鈍板の両面に、片面の塗布量を7g/m2として塗布した。このようにして、各組成ごとに各3コイル、計9コイルを製造した。
【0088】
その後、最終仕上焼鈍は、N2中で35℃/hの昇温速度で850℃まで昇温し、その後850℃で25時間保持し、その後1100℃までは25%N2と75%H2の混合雰囲気、以後H2単独雰囲気で1180℃まで昇温後5時間保持した後、700℃までArガス中で冷却し、700℃からはN2ガス中で冷却した。その際、各組成ごとの各3コイルの冷却速度を、それぞれ4、6および8℃/hとした。
最終仕上焼鈍後、未反応の焼鈍分離剤を除去した後、50%のコロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを張力コーティングして塗布した後、840℃で30秒間焼き付け、磁区細分化処理としてレーザを7.5mm間隔で線状に照射し製品板とした。
【0089】
このようにして得られた製品板に対して、JIS C2550に準拠して繰返し曲げ試験を行った。また、被膜密着性を、丸棒に巻付ける屈曲試験により被膜の剥離限界直径として評価し、磁気特性を、800A/mで磁化したときの磁束密度B8(T)、および周波数50Hz、磁束密度1.7Tにおける鉄損W17/50(W/kg)で評価した。
その結果を表5に示すように、この発明に従う例では、被膜外観、被膜密着性、繰返し曲げ特性および磁気特性が全て良好であることがわかる。
【0090】
【表5】
【0091】
【発明の効果】
この発明によれば、BiとBNをインヒビターとした場合にあっても、外観および密着性に優れるフォルステライト被膜を有し、また繰返し曲げ特性に優れ、かつ磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】最終仕上焼鈍の冷却速度と繰返し曲げ特性の関係を示すグラフである。
【図2】焼鈍分離剤中MoO3添加量と繰返し曲げ特性の関係を示すグラフである。
【図3】焼鈍分離剤中水酸化Li添加量と被膜密着性の関係を示すグラフである。
【図4】焼鈍分離剤中水酸化Li添加量と繰返し曲げ特性の関係を示すグラフである。
Claims (5)
- Si:2.5〜4.5mass%
を含み、さらにインヒビター形成成分として、少なくとも
Bi:0.0005〜0.100mass%、
B:0.0020〜0.0050mass%および
N:0.005〜0.015mass%
を含有し、かつ
Al:0.012mass%以下
に抑制した、鋼スラブに、熱間圧延を施し、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、脱炭焼鈍、次いで焼鈍分離剤を塗布してから、2次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上焼鈍を施す、一連の工程によって方向性電磁鋼板を製造するに当たり、
焼鈍分離剤として、MgO:100質量部に対して、アルカリ金属化合物を該金属換算で0.001〜1.5質量部およびMo化合物をMo換算で0.7〜10質量部で含有させたものを用いるとともに、最終仕上焼鈍における1050℃以上の純化焼鈍後の700℃に到る冷却速度を5℃/h以上とすることを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項1において、鋼スラブが、さらに
C:0.03〜0.10mass%および
Mn:0.050〜1.5mass%
を含有することを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項1または2において、鋼スラブが、さらに
SおよびSeの1種または2種を合計で0.010〜0.040mass%
含有することを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項1、2または3において、鋼スラブが、さらに
Ni:0.05〜0.5mass%、
Cu:0.05〜0.5mass%、
Sn:0.05〜0.5mass%、
Sb:0.005〜0.10mass、
As:0.005〜0.10mass%、
Mo:0.005〜0.10mass%、
Te:0.005〜0.10mass%および
P:0.005〜0.10mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項1ないし4のいずれかにおいて、鋼スラブが、さらに
Cr:0.01〜0.50mass%
を含有することを特徴とする高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
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