JP2020122210A - 焼鈍分離剤および方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

焼鈍分離剤および方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】磁気特性を改善するために、鋼中または焼鈍分離剤中に特定のインヒビター成分を添加した条件においても、被膜特性に優れた方向性電磁鋼板を製造する方法を提供すること【解決手段】マグネシアを主剤とし、Clを0.035質量%以下に抑制し、ヨウ素化合物をI換算で0.002質量%以上0.03質量%以下含有するとともに、Bi、P、Pb、Tl、W、およびVからなる群から選ばれる1種または2種以上を、合計で0.6質量%以上8質量%以下含有する、方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤。【選択図】図1

Description

本発明は、変圧器その他の電気機器の鉄心等に用いられる方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特に一次再結晶焼鈍後に塗布する焼鈍分離剤に改良を加えることにより、鉄損特性、磁束密度、および被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板を製造する方法と、該製造方法において用いることができる焼鈍分離剤を提案するものである。
方向性電磁鋼板は、一般的に、所定の成分組成に調整した鋼スラブを、熱間圧延後、冷間圧延した後、一次再結晶焼鈍を施し、次いで二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる仕上焼鈍を施すことによって製造される。この二次再結晶焼鈍において、鋼中のインヒビターの作用により、鋼中で圧延方向に磁化容易軸が揃った粗大結晶粒が生成する。二次再結晶を起こさせて磁気特性に優れた鋼板を得るためには、上記二次再結晶焼鈍を、高温にて長時間行う必要がある。二次再結晶焼鈍においては、しばしば鋼板をコイル状に巻いた状態で焼鈍を行うため、コイル状に巻かれた鋼板同士が高温によって焼付く虞がある。そこで、鋼板の焼付防止を目的として、二次再結晶焼鈍前に、マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を、水と懸濁させてスラリーとした上で、鋼板表面に塗布することが行われている。
マグネシアは、かような焼鈍分離剤としての役割のほかに、一次再結晶焼鈍によって鋼板表面に生成したSiO2を主体とした酸化層と反応することによって、フォルステライト(MgSiO)質の被膜(以下、フォルステライト被膜とも称する)を形成するという働きもある。かように形成されたフォルステライト被膜は、後の工程で上塗りされるリン酸塩系の絶縁コーティングと地鉄部分とを強固に密着させる一種のバインダーとして働くほか、絶縁被膜としての働きも有し、さらには、鋼板に張力を付与することにより鋼板の磁気特性を改善する働きも有する。従って、磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を製造するためには、鋼板表面に鋼板との密着性に優れたフォルステライト被膜を形成することが重要である。
さらに、焼鈍分離剤は、上述した働きを有する他、二次再結晶焼鈍中に、鋼板中の析出物の生成、成長、および結晶粒の成長挙動を変化させて、鋼板の磁気特性に影響を及ぼす。例えば、焼鈍分離剤スラリー中の水分量が多すぎると、鋼板が酸化されて磁気特性が劣化したり、被膜に点状欠陥が生成したりする。また、焼鈍分離剤中のマグネシアに含まれる不純物が焼鈍中に鋼板に侵入することにより、二次再結晶挙動が変化することなども知られている。したがって、焼鈍分離剤の成分組成は、方向性電磁鋼板の磁気特性および被膜特性を左右する重要な要因といえる。
このため、従来、焼鈍分離剤の品質改良のための様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には、焼鈍分離剤に金属ヨウ化物を含有させることにより、被膜形成を抑え、鏡面化する技術が開示されている。また、特許文献2には、焼鈍分離剤中の塩素、臭素、およびヨウ素の量を特定の範囲内に収めることにより、被膜特性を改善する方法が開示されている。特許文献3には、特定の副インヒビター成分を含有させた鋼板に対し、アルカリ金属を含有させた焼鈍分離剤添加物を塗布することにより、被膜特性に優れた鋼板を提供する方法が開示されている。また、特許文献4には、アルカリ土類金属と、希土類金属元素と、硫黄を含む化合物とを含有させることにより、被膜密着性を改善する方法が開示されている。
特表2018-504517号公報 特開2003-213338号公報 特開2003-342642号公報 国際公開第2008/062853号
上述したような焼鈍分離剤の改善により、電磁鋼板の被膜特性は、ある程度までは改善されてきた。しかし、現実には、焼鈍分離剤中に含有されるマグネシアの粉体特性および不純物濃度を制御しているにも拘わらず、被膜特性、および鋼板の磁気特性に、バラツキが発生していた。特に、近年、磁気特性の改善のために、種々の微量元素を、鋼中または焼鈍分離剤中に添加することが行われており、これらの添加物に起因して被膜が劣化することも多かった。
本発明の目的は、磁気特性を改善するために、鋼中または焼鈍分離剤中に特定のインヒビター成分を添加した条件においても、被膜特性に優れた方向性電磁鋼板を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、磁気特性を改善するために、鋼中または焼鈍分離剤中に対し種々の添加物を添加した条件においても、被膜特性を安定的に向上させることのできる方法を探るために、二次再結晶焼鈍後の方向性電磁鋼板の磁気特性及び表面状態に影響を及ぼす焼鈍分離剤の特性について、種々検討した。その結果、種々の添加物を添加した条件においては、焼鈍分離剤中に不可避的に混入する微量のClが、被膜品質および磁気特性を劣化させることを見出した。これに対して、種々の添加物を添加した条件においては、焼鈍分離剤中のClの含有量を0.035質量%以下に抑制し、かつヨウ素化合物をごく微量に含有させることにより、被膜特性が改善されることを知見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)マグネシアを主剤とし、Clを0.035質量%以下に抑制し、ヨウ素化合物をI換算で0.002質量%以上0.03質量%以下含有するとともに、
Bi、P、Pb、Tl、W、およびVからなる群から選ばれる1種または2種以上を、合計で0.6質量%以上8質量%以下含有する、方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤。
(2)前記ヨウ素化合物は、アルカリ金属のヨウ化物、アルカリ土類金属のヨウ化物、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化アンモニウム、およびヨウ化亜鉛からなる群から選ばれる1種または2種以上である、上記(1)に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤。
(3)質量%で、
C:0.01〜0.10%、
Si:2.0〜5.0%および
Mn:0.01〜1.0%
を含有するとともに、
Bi:0.002〜0.08%、
P:0.005〜0.08%、
Pb:0.001〜0.050%、
Tl:0.001〜0.05%、
W:0.001〜0.05%および
V:0.001〜0.05%
からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1300℃以下にて加熱し、
前記加熱後の鋼スラブに熱間圧延を施して熱延鋼板とし、
前記熱延鋼板に、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚を有する冷延鋼板とし、
前記冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施し、
前記一次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記焼鈍分離剤は、マグネシアを主剤とし、Clを0.035質量%以下に抑制し、ヨウ素化合物をI換算で0.002質量%以上0.03質量%以下含有する、方向性電磁鋼板の製造方法。
(4)質量%で、
C:0.01〜0.10%、
Si:2.0〜5.0%および
Mn:0.01〜1.0%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1300℃以下にて加熱し、
前記加熱後の鋼スラブに熱間圧延を施して熱延鋼板とし、
前記熱延鋼板に、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚を有する冷延鋼板とし、
該冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施し、
前記一次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記焼鈍分離剤は、マグネシアを主剤とし、Clを0.035質量%以下に抑制し、ヨウ素化合物をI換算で0.002質量%以上0.03質量%以下含有するとともに、
Bi、P、Pb、Tl、W、およびVからなる群から選ばれる1種または2種以上を、それぞれ0.6質量%以上8質量%以下含有する、方向性電磁鋼板の製造方法。
(5)前記ヨウ素化合物は、アルカリ金属のヨウ化物、アルカリ土類金属のヨウ化物、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化アンモニウム、およびヨウ化亜鉛からなる群から選ばれる1種または2種以上である、上記(3)または(4)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(6)前記鋼スラブの成分組成は、さらに、
質量%で、
Al:0.010〜0.040%および
N:0.003〜0.012%を含有する、上記(3)〜(5)のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(7)前記鋼スラブの成分組成は、さらに、
質量%で、
SおよびSeからなる群から選ばれる1種または2種を、合計で0.01〜0.03%含有し、
前記Mnの含有量が0.03%以上である、上記(3)〜(6)のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(8)前記鋼スラブの成分組成は、さらに、
質量%で、
Al:0.010%未満、
N:0.005%未満、
S:0.005%未満および
Se:0.005%未満
を含有する、上記(3)〜(5)のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(9)前記鋼スラブの成分組成は、さらに、
質量%で、
Ni:0.010〜1.50%、
Cr:0.01〜0.50%、
Cu:0.01〜0.50%、
Sb:0.005〜0.50%、
Sn;0.005〜0.50%、
Mo:0.005〜0.100%、
B:0.0002〜0.0025%、
Te:0.0005〜0.0100%、
Ti:0.001〜0.010%、
Nb:0.002〜0.08%および
Ta:0.002〜0.08%
からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する、上記(3)〜(8)のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、磁気特性を改善するために、鋼中または焼鈍分離剤中に特定のインヒビター成分を添加した条件においても、被膜特性に優れた方向性電磁鋼板を製造する方法を提供することができる。
焼鈍分離剤中のClおよびIの含有量と、磁束密度との関係を示したグラフである。 焼鈍分離剤中のClおよびIの含有量と、鉄損との関係を示したグラフである。 焼鈍分離剤中のClおよびIの含有量と、被膜密着性との関係を示したグラフである。
以下、本発明を開発する契機となった実験について説明する。なお、本明細書中において、各成分元素の含有量を示す「%」は、特に断らない限り、「質量%」を意味する。まず、マグネシアを主剤として、TiOを2%配合し、さらにヨウ化アンモニウムまたは塩化アンモニウムをそれぞれ種々の量、添加して、焼鈍分離剤を作製した。なお、マグネシアとしては、事前に700℃にて30分間の熱処理を施すことにより、不純物のCl濃度を0.003%まで低減したものを用いた。作製した焼鈍分離剤を、20℃にて60分間水和させてスラリー化した。
C:0.045%、Si:3.25%、Mn:0.07%、Al:0.02%、N:0.007%、Se:0.02%、およびTl:0.002%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、1380℃にて30分間スラブ加熱した後、熱間圧延して板厚2.2mmに圧延した。その後、1050℃における1分間の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延により最終板厚0.23mmに仕上げた。次いで、800℃×2分間の一次再結晶焼鈍を施してから、上述した焼鈍分離剤のスラリーを鋼板表面に対し両面で12g/m塗布し、乾燥させた。その後、830℃にて50時間保持後、830℃から1150℃まで30℃/hの昇温速度にて加熱する二次再結晶焼鈍を施し、引き続き1200℃にて10時間の純化焼鈍を施した。
上記実験で得られた鋼板の磁気特性および被膜密着性を評価した。磁気特性(磁束密度および鉄損)はJIS C2550に準拠して測定した。また、被膜密着性については、上記実験で得られた鋼板に対し、800℃において2時間の歪取焼鈍を施したのちに、径の異なる丸棒に対して鋼板を巻きつけ、被膜に欠陥または剥離が発生しない最小径(曲げ剥離径)を求めることによって評価した。結果を図1〜3および表1に示す。図1は、焼鈍分離剤中のClおよびIの含有量と、磁束密度との関係を示したグラフであり、図2は、焼鈍分離剤中のClおよびIの含有量と、鉄損との関係を示したグラフであり、図3は、焼鈍分離剤中のClおよびIの含有量と、曲げ剥離径との関係を示したグラフである。なお、図1の各グラフにおいて、横軸の上段および下段は、それぞれ焼鈍分離剤中のI及びClの含有量を質量%で表示したものである。
Figure 2020122210
図3から明らかなように、Cl含有量を0.003%まで低減した場合、焼鈍分離剤中にIを微量に添加することにより、被膜密着性が著しく改善することがわかる。また、図1および2から明らかなように、磁気特性についても、焼鈍分離剤中に微量のヨウ素を含有した条件においては良好な値が得られている。さらに、ヨウ化アンモニウムをヨウ素換算で0.03%を超えて焼鈍分離剤中に添加すると、被膜密着性および磁気特性は逆に劣化していくことがわかった。
また、図1〜3から明らかなように、焼鈍分離剤中にIを微量に添加することにより、焼鈍分離剤中のCl含有量を0.035%以下の範囲内で変化させても、良好な被膜密着性および磁気特性が得られることがわかった。なお、Cl含有量が0.035%を超えると、被膜密着性および磁気特性ともに劣化することがわかった。
これに対し、図1〜3から明らかなように、焼鈍分離剤中にIを添加しない条件においては、Cl含有量を0.035%以下としても良好な被膜密着性および磁気特性が得られず、Clの含有量が増えるとともに、被膜密着性および磁気特性が劣化していくことがわかる。また、Clの含有量が0.04%を超えると、鋼板表面にフォルステライト被膜がほとんど形成されなかった。
従来、焼鈍分離剤中に含有されているClが被膜特性に及ぼす影響についてはよく調べられており、Clが焼鈍分離剤中に微量に存在することにより、被膜特性が改善することが示されていた。しかしながら、上記実験により、鋼板に特定の副インヒビター成分を含有させた条件においては、(i)微量のClは必ずしも被膜特性を改善することがないこと、および(ii)焼鈍分離剤中へヨウ素化合物を添加することによって被膜特性が改善することが新規に知見された。
このように、特定の副インヒビター成分の非存在下においては、Clが焼鈍分離剤中に微量に存在することにより、被膜特性が改善するのに対し、特定の副インヒビター成分の存在下においては、焼鈍分離剤中のClおよびIの含有量に応じてフォルステライト被膜の被膜特性が変化する。この理由については明らかでないが、本発明者らは次のように考える。
副インヒビター成分として本実験で使用したTlは、仕上焼鈍の途中に鋼板表面において酸化されてTlとして存在していると考えられる。Tlは融点が700℃程度であり、液相(融液)を形成している。この融液中にMgイオンは溶解できないため、Mgイオンが地鉄表面に到達できず、被膜形成が不良となる。他の副インヒビター成分Bi,P,Pb,W,およびVを用いた場合も上記Tlと同様にMgイオンの地鉄表面への拡散を阻害して被膜形成が不良となると考えられる。
これに対して、焼鈍分離剤中に塩素化合物を添加することにより被膜形成が促進されるメカニズムは、塩素化合物が溶融物を形成するためであると考えられている。塩素化合物の溶融物はMgイオンを溶解させる。よって、MgOとSiOとの液相焼結により、被膜形成が促進されるものと考えられる。
ヨウ化物を焼鈍分離剤中に添加した場合も、塩素化合物を添加した場合と同様に、ヨウ素化合物の溶融物がMgイオンを溶解させて、被膜形成を促進させると考えられる。ただし、被膜形成促進に関して、IとClとには以下の二点の違いがある。
一点目は、一般的に塩素化合物よりもヨウ素化合物の方が融点が高いことである。塩素化合物は主に被膜形成が起こる800℃よりも低い温度で溶融し、塩化鉄を生成する。塩化鉄の沸点は351℃程度であるため、被膜形成が起こる800℃までに塩化鉄が散逸して溶融物が少なくなり、上述した液相焼結の効果を減じると考えられる。よって、塩素化合物を用いた場合、被膜形成促進効果は限定的にとどまる。これに対し、ヨウ素化合物は被膜形成が起こる800℃付近で溶融して溶融物を形成するため、より効果的な被膜形成促進効果が得られる。
二点目は、Iの方がClよりも酸化力が低いことである。Clは仕上焼鈍中に鋼板表面に到達してFeを腐食および酸化させることにより、鋼板表面の凹凸を失わせる。さらに、FeとClとの反応によって生じる塩化鉄(II)は昇華性の物質であることから、ガスとして鋼板表面から抜けていく。これらの現象により、被膜‐地鉄界面のアンカー効果が損なわれることで、被膜密着力が失われやすくなる。これに対して、Iは酸化力が小さいためにFeを酸化させる能力は低く、かつFeと反応して昇華性の物質を生成するわけでもない。よって、Iを焼鈍分離剤中に含有させても、Clのように被膜‐地鉄界面のアンカー効果を損なう虞はない。
上記のClとIとの違いがあることを踏まえた上で、Tlのような副インヒビター成分が存在する条件下における被膜形成を考える。まず焼鈍分離剤中にClを含有させた場合には、仕上焼鈍において、低温時に鋼板表面にClイオン、Mgイオン、およびOイオンが侵入して(Mg,Fe)OCl等の溶融物が生じる。そして徐々に高温になるにしたがって、溶融物中の塩化鉄が揮発していき、その代わりにTlが酸化されて溶融物を形成して被膜形成を抑える。すなわち、塩素化合物が溶融酸化Tlの形成を促進させる効果をもたらすことによって、被膜形成が劣化する。
これに対してヨウ素化合物を用いた場合には、ヨウ素化合物の酸化力が弱いため、(Mg、Fe)OIのような溶融物質は形成されず、導入したヨウ素化合物がそのまま溶融する。この溶融物は酸素を含まず、また鋼板表面に濡れ広がるため、焼鈍分離剤から鋼板表面への酸素の供給が防げられる。結果として、Tl酸化物の形成が抑えられる。よって、Tl酸化物による被膜劣化も起こりにくくなるとともに、Tlの鋼中副インヒビター成分としての効果も失われないために、磁気特性が改善される。
なお、焼鈍分離剤中にIを用いる技術は、上述した特許文献1および特許文献2にも記載されているが、特許文献1は、多量のヨウ化物を用いて被膜を剥離し、鏡面化させる技術であり、本発明とは根本的に異なる。
また、特許文献2に記載の技術は、Cl、Br、およびIの含有量を特定の範囲内とする技術だが、この技術においてはCl、Br、およびIが同じ作用効果を持つとの単純な思想しかなかった。本発明のように副インヒビター成分を用いる系においては、焼鈍分離剤中のClとIとは異なる作用を有すること、特に被膜特性を改善する観点からは、Clはむしろ有害で、Iが有益であるという正反対の効果を有することは、特許文献2からは類推できず、今回新規な知見として得られた。
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1に係る方向性電磁鋼板の製造方法について具体的に説明する。なお、本明細書中において、各成分元素の含有量を示す「%」、および「ppm」は、特に断らない限り、それぞれ「質量%」、および「質量ppm」を意味する。
まず、本実施形態に係る焼鈍分離剤が有利に適合する鋼板について、成分の限定理由を述べる。
C:0.01〜0.10%
Cは、熱延板の組織を改善するのに有用な元素であるだけでなく、ゴス方位結晶粒の発生に有用な元素であり、かかる目的を達成するためには少なくとも0.01%の含有を必要とするが、0.10%を超えると脱炭焼鈍において脱炭不良を起こすので、0.01%以上0.10%以下とする。
Si:2.0〜5.0%
Siは、鋼板の比抵抗を高め、鉄損を低減するために必須の成分である。含有量が2.0%未満では鉄損の低減効果が弱まり、また5.0%を超えると冷延性が損なわれるため、2.0〜5.0%の範囲とする。
Mn:0.01〜1.0%
Mnは、鋼の熱間加工性を改善するために必要な元素である。熱間加工性の改善のためには、0.01%未満では十分ではなく、一方、1.0%を超えると、製品板の磁束密度が低下するようになる。よって、Mnは0.01〜1.0%の範囲とする。
Bi:0.002〜0.08%、P:0.005〜0.08%、Pb:0.001〜0.050%、Tl:0.001〜0.05%、W:0.001〜0.05%およびV:0.001〜0.05%からなる群から選ばれる1種または2種以上
上述した成分の他に、磁化容易軸に沿って高度に揃った二次再結晶粒を形成させるため、Bi、P、Pb、Tl、W、およびV等の副インヒビター成分を鋼板に含有させることが有効である。本実施形態においては、これら副インヒビター成分のうちのいずれか1種もしくは2種以上を必須成分とする。各成分を添加する場合の含有量は、Bi:0.002〜0.08%、P:0.005〜0.08%、Pb:0.001〜0.050%、Tl:0.001〜0.05%、W:0.001〜0.05%、V:0.001〜0.05%とする。それぞれ、下限値を下回ると副インヒビターとしての効果がなく、上限値を超えると、抑制力が強くなりすぎて磁気特性が劣化するため、上記の範囲とする。
Al:0.010〜0.040%およびN:0.003〜0.012%
SおよびSeからなる群から選ばれる1種または2種:合計で0.01〜0.03%
一般的なインヒビター(主インヒビター)としては、AlN,MnSe,MnS等がよく知られており、これらインヒビターを単独にてまたは複数組み合わせて鋼中に含有させることができる。AlNをインヒビターとして用いる場合は、Alを、0.01〜0.04%の範囲で含有させる。Nについては、製造工程途中に窒化処理を施すことで含有させることもできるが、製鋼時にあらかじめNを含有させる場合には、0.003〜0.012%の含有量とする。AlおよびNの少なくとも一方の含有量が、上述した下限よりも低い場合には、インヒビターとしての効果が発揮できず、逆にAl及びNの含有量が両方とも上述した上限よりも高い場合には、二次再結晶が不安定になる虞がある。インヒビターとして、MnSおよびMnSeの少なくとも一方を用いる場合には、SおよびSeからなる群から選ばれる1種または2種の含有量を合計で0.01〜0.03%とし、かつ上述したMnの含有量を0.03%以上とする。なお、鋼中に添加されたMnのうち、0.03%以上0.10%以下の量がインヒビターとしての効果に寄与する。(i)Mn、並びに(ii)SおよびSeからなる群から選ばれる1種もしくは2種の含有量のうち、少なくとも一方が、上述した下限よりも低い場合には、インヒビターとしての効果が発揮できず、逆に、(i)Mn、並びに(ii)SおよびSeからなる群から選ばれる1種または2種の含有量が、両方とも上述した上限よりも高い場合には、二次再結晶が不安定になる虞がある。
なお、近年、インヒビターを含まず、粒界易動度差を利用して二次再結晶を行わせる技術が開発されている。この技術を利用する場合には、Alは100ppm未満、N、S、およびSeについてはそれぞれ50ppm未満とする。
また、鋼中には、上記の主インヒビター、副インヒビター成分の他に、さらにNi、Cr、Cu、Sb、Sn、Mo、B、Te、Ti、Nb、およびTaなどの成分も、補助的に添加することができる。これら成分の有効な含有量は、Ni:0.010〜1.50%、Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Sn:0.005〜0.50%、Mo:0.005〜0.100%、B:0.0002〜0.0025%、Te:0.0005〜0.0100%、Ti:0.001〜0.010%、Nb:0.002〜0.08%、Ta:0.002〜0.08%である。これらの各インヒビター成分は、1種または2種以上を鋼中に含有させることができる。
〔焼鈍分離剤〕
次に、本実施形態に係る焼鈍分離剤について説明する。
焼鈍分離剤は、マグネシアを主剤とする。なお、本明細書中において、「マグネシアを主剤とする」とは、焼鈍分離剤中のマグネシアの含有量が50%以上であることを意味する。このとき、マグネシア中のClの含有量を減らすことにより焼鈍分離剤中のClの含有量を低減し、かつ焼鈍分離剤中のIの含有量を増やすことが、本発明の重要な構成要件の一つである。
Cl:0.035%以下
Clの含有量は、焼鈍分離剤全体に対して0.035%以下に抑制する。Clの含有量が0.035%より多いと、鉄を腐食させて被膜−地鉄界面の凹凸を減らし、地鉄と被膜との密着性を劣化させる虞があるためである。Clの含有量は、好ましくは、0.025%以下であり、最も好ましくは、0%である。
なお、焼鈍分離剤中のCl濃度は、マグネシアに300〜1000℃にて5〜120分間の熱処理を施して、マグネシア中の不純物のCl濃度を低減することにより、低減させることができる。その他、原料として水酸化マグネシウムを用いる場合は、水酸化マグネシウムを湯洗したり、水洗の回数を増やしたりすることによっても、マグネシア中のCl濃度を低減させることができる。
ヨウ素化合物:I換算で0.002%以上0.03%以下
ヨウ素化合物の含有量は焼鈍分離剤全体に対してI換算で0.002%以上0.03%以下とする。ヨウ素化合物の含有量がI換算で0.002%を下回ると、上述した被膜形成促進効果が十分に発揮されず、0.03%を超えると、IがFeを腐食させて被膜密着性を劣化させる。好ましくは、ヨウ素化合物の含有量は焼鈍分離剤全体に対してI換算で0.005%以上であり;0.025%以下である。ヨウ素化合物としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、アンモニウム、および亜鉛等のヨウ化物を焼鈍分離剤中に添加することが好ましい。これらのヨウ化物は、単独で、または複数組み合わせて焼鈍分離剤中に添加することができる。
焼鈍分離剤には、主剤のマグネシアおよびヨウ素化合物以外にも、添加剤として、Mn,Mg,Sn,Ti,Cu,Nb,Sr,およびFe等の成分を、例えば酸化物、水酸化物、および硫酸塩等の化合物として含有させることができる。これらの添加剤の添加量は、焼鈍分離剤に対して、各成分換算で、合計で0.3〜20%とすることが好ましい。0.3%未満では添加の効果がなく、20%を超えると、却って被膜特性および磁気特性を低下させる虞があるためである。これらの添加剤は、単独で、または複数組み合わせて焼鈍分離剤中に含有させることができる。
〔方向性電磁鋼板の製造方法〕
次に、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
まず、一般的な製造方法に従って、上記成分組成を有する鋼スラブを製造する。
次に、公知の方法に従い、鋼スラブを、1300℃以下にて加熱し、加熱後の鋼スラブに熱間圧延を施して熱延鋼板とする。次に、熱延鋼板に、1回又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延により最終板厚を有する冷延鋼板にする。なお、必要に応じて、熱延鋼板に熱延板焼鈍を施すことも可能である。
次に、最終板厚にした冷延鋼板に、一次再結晶焼鈍を施す。一次再結晶焼鈍は脱炭焼鈍を兼ねていてもよい。
次に、上述した焼鈍分離剤を、水と懸濁してスラリーとしたのち、一次再結晶焼鈍後の冷延鋼板の表面に所定の塗布量で塗布し、乾燥させる。塗布量は、鋼板両面に対して、乾燥後の重量で4g/m〜18g/mとすることが望ましい。塗布量が少なすぎると、被膜形成に必要なマグネシアの量が不足する虞がある。逆に、塗布量が多すぎるとコストがかかる上、焼鈍分離剤スラリーによって鋼板表面に持ち込まれる水和水分が多くなりすぎて、鋼板が酸化され、磁性が劣化する。
なお、焼鈍分離剤の水和は、通常用いられている条件にしたがって行えばよく、例えば焼鈍分離剤を水と混同して、10〜50℃にて、10〜100分程度撹拌することによって行えばよい。
その後、公知の方法で、二次再結晶焼鈍および続く純化焼鈍からなる仕上焼鈍を行い、さらに必要に応じて、絶縁被膜コーティング、および平坦化焼鈍を施し、最終製品に仕上げる。必要に応じてレーザーや電子ビーム等で磁区細分化処理を行うことも可能である。
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る焼鈍分離剤、および方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。本実施形態においては、(i)副インヒビター成分であるBi,P,Pb,Tl,W,およびVを鋼中添加せずに、焼鈍分離剤中に添加する点、および(ii)これらの副インヒビター成分の添加量が、実施形態1とは相違する。その余の点については実施形態1と同様である。
すなわち、本実施形態において有利に適合する鋼板は、C:0.01〜0.10%、Si:2.0〜5.0%およびMn:0.01〜1.0%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する。この他、鋼板は、主インヒビター成分として、Al:0.010〜0.040%およびN:0.003〜0.012%を含有していてもよく、またSe:0.003〜0.030%および/またはS:0.003〜0.030%を含有していてもよい。さらに、鋼板は、Ni:0.010〜1.50%、Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Sn:0.005〜0.50%、Mo:0.005〜0.100%、B:0.0002〜0.0025%、Te:0.0005〜0.0100%、Ti:0.001〜0.010%、Nb:0.002〜0.08%、Ta:0.002〜0.08%からなる群から選ばれる1種または2種以上を含んでいてもよい。これらの成分組成の限定理由は、実施形態1において記載した通りである。
また、本実施形態に係る焼鈍分離剤は、マグネシアを主剤とし、Clを0.035質量%以下に抑制し、ヨウ素化合物をI換算で0.002質量%以上0.03質量%以下含有するとともに、Bi、P、Pb、Tl、W、およびVからなる群から選ばれる1種または2種以上を、合計で0.6質量%以上8質量%以下含有する。また、焼鈍分離剤は、添加剤として、Mn,Mg,Sn,Ti,Cu,Nb,Sr,およびFe等の成分を、各成分換算で、合計で0.3〜20%含有していてもよい。マグネシア、Cl、ヨウ素化合物、および添加剤については、実施形態1において説明したため、ここでは説明を省略する。
Bi、P、Pb、Tl、W、およびVからなる群から選ばれる1種または2種以上を、合計で0.6質量%以上8質量%以下含有
本実施形態においては、これらの副インヒビター成分を、鋼中添加せずに、焼鈍分離剤中に添加する。これらの副インヒビター成分元素は、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、および硝酸塩等の化合物として、焼鈍分離剤中に添加することができる。副インヒビター成分は、単独で、または複数組み合わせて焼鈍分離剤中に添加することができる。これらの成分元素の含有量は、好ましくは、各金属換算で、合計で0.6〜8%とする。これらの成分元素の含有量が合計で0.6%より低いと添加の効果がなく、8%より高いとインヒビション効果が高まりすぎて、かえって磁気特性が劣化する虞があるためである。なお、実施形態1のように、副インヒビター成分を鋼中添加する場合、添加した量が全量地鉄中に均一に分散するのに対し、本実施形態のように、副インヒビター成分を焼鈍分離剤中に添加する場合、添加量の一部のみが仕上焼鈍中に鋼板表面近傍に浸入する。従って、本実施形態においては、実施形態1に比べて副インヒビター成分元素の添加量を多く規定している。
また、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法は、鋼板および焼鈍分離剤を本実施形態で規定する通りとしたこと以外は、実施形態1と同様である。
〔焼鈍分離剤の作製〕
不純物としてのCl濃度を0.003%に低減したマグネシアを主剤として、酸化チタンを2%、硫酸マグネシウムを1%、及び各種ヨウ素化合物および必要に応じて塩素化合物を添加して焼鈍分離剤を作製した。各種ヨウ素化合物および塩素化合物は、焼鈍分離剤中のClおよびIが表2に示す含有量となるように添加した。該焼鈍分離剤を、水と懸濁して、水和温度20℃、水和時間40分にて水和し、焼鈍分離剤スラリーとした。
〔方向性電磁鋼板の製造〕
C:0.07%、Si:3.4%、Mn:0.07%、(不可避的不純物として)Al:0.006%、Sb:0.026%、Tl:0.01%、(不可避的不純物として)N:0.003%およびCr:0.031%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、1250℃にて40分間スラブ加熱した後、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板を得た。該熱延板に対し、1000℃にて60秒間の熱延板焼鈍を行った。その後、タンデム圧延機による冷間圧延により、最終板厚0.23mmの冷延板とした。この鋼板に一次再結晶焼鈍を施した後、焼鈍分離剤スラリーを塗布し、乾燥させ、コイル状に巻き取った。焼鈍分離剤の塗布量は、鋼板両面に対し、乾燥後の重量で13g/mとした。その後、二次再結晶焼鈍として、800℃から1100℃まで10℃/hにて昇温し、続いて1200℃にて10時間の純化焼鈍を施した。続いて、鋼板表面に絶縁コーティングを塗布し、ヒートフラットニングを兼ねて900℃にて60秒間焼付けた後、電子ビーム照射により磁区細分化処理を施した。
上記実験で得られた鋼板の磁気特性および被膜特性について評価した。磁気特性はJIS C2550に準拠して測定した。また、被膜密着性については、上記実験で得られた鋼板に対し、800℃×2時間の歪取焼鈍を施したのちに、5mm刻みで径の異なる丸棒に対して鋼板を巻きつけ、被膜に欠陥または剥離が発生しない最小径(曲げ剥離径)を求めることによって評価した。評価結果を表2に示す。
Figure 2020122210
表2からわかるように、本発明に規定するCl含有量およびI含有量を満たす焼鈍分離剤においては、優れた磁気特性および被膜特性が得られている。これに対し、Cl含有量が高すぎる焼鈍分離剤を用いた例では、いずれも被膜密着性が劣化しており、鋼板の磁気特性も低下傾向にある。
〔焼鈍分離剤の作製〕
不純物としてのCl濃度を0.003%に低減したマグネシアを主剤として、酸化チタンを1%、硫酸マグネシウムを1%、およびヨウ化アンモニウムをI換算で焼鈍分離剤全体に対して0.02%となるように添加した。さらに、各種副インヒビター成分の化合物を、添加剤として表3に示す量添加して、焼鈍分離剤を作製した。該焼鈍分離剤を、水と懸濁して、水和温度20℃、水和時間40分にて水和し、焼鈍分離剤スラリーとした。
〔方向性電磁鋼板の製造〕
C:0.06%、Si:3.3%、Mn:0.07%、(不可避的不純物として)Al:0.006%、Sb:0.05%、(不可避的不純物として)N:0.003%、Sn:0.05%、および表3に示す各種副インヒビター成分を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、1250℃にて40分間スラブ加熱した後、熱間圧延して板厚2.0mmに圧延した。その後、1000℃×60sの熱延板焼鈍行い、タンデム圧延機による冷間圧延により、最終板厚0.23mmの冷延板とした。この鋼板に脱炭焼鈍を兼ねる一次再結晶焼鈍を施した後、焼鈍分離剤スラリーを塗布し、乾燥させ、コイル状に巻き取った。焼鈍分離剤の塗布量は、鋼板両面に対し、乾燥重量で13g/m2とした。その後、二次再結晶焼鈍として、800℃から1100℃まで10℃/hにて昇温し、続いて1200℃にて10時間の純化焼鈍を行った。続いて、絶縁コーティングを塗布し、ヒートフラットニングを兼ねて900℃において60秒間焼付けた後、電子ビーム照射により磁区細分化処理を行った。
上記実験で得られた鋼板の磁気特性および被膜特性について、実施例1と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
Figure 2020122210
表3に示すように、焼鈍分離剤中に副インヒビター成分を含む化合物を添加して、かつClおよびIを本発明で規定する量とすることにより、優れた磁気特性が得られ、かつ被膜密着性も良好であった。
〔焼鈍分離剤の作製〕
不純物としてのCl濃度が0.01%のマグネシアを主剤とし、ヨウ化カリウムを焼鈍分離剤全体に対してI換算で0.03%の含有量となるように添加して、焼鈍分離剤を作製した。該焼鈍分離剤を、水と懸濁して、水和温度20℃、水和時間40分にて水和し、焼鈍分離剤スラリーとした。
〔方向性電磁鋼板の製造〕
表4に示す各種成分を有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、1400℃にて60分間スラブ加熱した後、熱間圧延により板厚2.0mmの熱延板を得た。該熱延板に対し、200℃の温間圧延により最終板厚0.30mmに仕上げた。この冷延板に対して、焼鈍分離剤スラリーを、鋼板両面に対し、乾燥後の重量で13g/m2塗布し、乾燥させた。その後、コイル状に巻き取り、二次再結晶焼鈍として、800℃から1100℃まで10℃/hで昇温した後、引き続き1200℃にて10時間の純化焼鈍を施した。続いて、鋼板表面に絶縁コーティングを塗布し、ヒートフラットニングを兼ねて900℃にて60秒間焼付けた。さらに、電子ビーム照射により磁区細分化処理を施した。
上記実験で得られた鋼板の磁気特性および被膜特性について、実施例1と同様に評価した。評価結果を表4に示す。
表4からわかるように、本発明で規定する範囲内の成分組成の鋼材を用いることにより、良好な磁気特性、および被膜密着性が得られている。
Figure 2020122210
以上説明したように、本発明によれば、特殊な副インヒビター成分を含む鋼素材または焼鈍分離剤組成を用いる条件においても、焼鈍分離剤中のCl量を低減するとともにヨウ素を適正量含有させることにより、被膜特性および磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を安定して製造することが可能となる。

Claims (9)

  1. マグネシアを主剤とし、Clを0.035質量%以下に抑制し、ヨウ素化合物をI換算で0.002質量%以上0.03質量%以下含有するとともに、
    Bi、P、Pb、Tl、W、およびVからなる群から選ばれる1種または2種以上を、合計で0.6質量%以上8質量%以下含有する、方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤。
  2. 前記ヨウ素化合物は、アルカリ金属のヨウ化物、アルカリ土類金属のヨウ化物、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化アンモニウム、およびヨウ化亜鉛からなる群から選ばれる1種または2種以上である、請求項1に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤。
  3. 質量%で、
    C:0.01〜0.10%、
    Si:2.0〜5.0%および
    Mn:0.01〜1.0%
    を含有するとともに、
    Bi:0.002〜0.08%、
    P:0.005〜0.08%、
    Pb:0.001〜0.050%、
    Tl:0.001〜0.05%、
    W:0.001〜0.05%および
    V:0.001〜0.05%
    からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1300℃以下にて加熱し、
    前記加熱後の鋼スラブに熱間圧延を施して熱延鋼板とし、
    前記熱延鋼板に、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚を有する冷延鋼板とし、
    前記冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施し、
    前記一次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記焼鈍分離剤は、マグネシアを主剤とし、Clを0.035質量%以下に抑制し、ヨウ素化合物をI換算で0.002質量%以上0.03質量%以下含有する、方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 質量%で、
    C:0.01〜0.10%、
    Si:2.0〜5.0%および
    Mn:0.01〜1.0%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1300℃以下にて加熱し、
    前記加熱後の鋼スラブに熱間圧延を施して熱延鋼板とし、
    前記熱延鋼板に、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚を有する冷延鋼板とし、
    該冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施し、
    前記一次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記焼鈍分離剤は、マグネシアを主剤とし、Clを0.035質量%以下に抑制し、ヨウ素化合物をI換算で0.002質量%以上0.03質量%以下含有するとともに、
    Bi、P、Pb、Tl、W、およびVからなる群から選ばれる1種または2種以上を、それぞれ0.6質量%以上8質量%以下含有する、方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 前記ヨウ素化合物は、アルカリ金属のヨウ化物、アルカリ土類金属のヨウ化物、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化アンモニウム、およびヨウ化亜鉛からなる群から選ばれる1種または2種以上である、請求項3または4に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  6. 前記鋼スラブの成分組成は、さらに、
    質量%で、
    Al:0.010〜0.040%および
    N:0.003〜0.012%を含有する、請求項3〜5のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  7. 前記鋼スラブの成分組成は、さらに、
    質量%で、
    SおよびSeからなる群から選ばれる1種または2種を、合計で0.01〜0.03%含有し、
    前記Mnの含有量が0.03%以上である、請求項3〜6のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  8. 前記鋼スラブの成分組成は、さらに、
    質量%で、
    Al:0.010%未満、
    N:0.005%未満、
    S:0.005%未満および
    Se:0.005%未満
    を含有する、請求項3〜5のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  9. 前記鋼スラブの成分組成は、さらに、
    質量%で、
    Ni:0.010〜1.50%、
    Cr:0.01〜0.50%、
    Cu:0.01〜0.50%、
    Sb:0.005〜0.50%、
    Sn;0.005〜0.50%、
    Mo:0.005〜0.100%、
    B:0.0002〜0.0025%、
    Te:0.0005〜0.0100%、
    Ti:0.001〜0.010%、
    Nb:0.002〜0.08%および
    Ta:0.002〜0.08%
    からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項3〜8のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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