JP4916847B2 - 一方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、変圧器等の静止誘導器に使用される一方向性電磁鋼板の製造法に関する。特に、一次被膜にCeやLaを含むことにより、被膜密着性、特に額縁剥離性に優れた変圧器製造特性を有する高磁束密度の一方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
一方向性電磁鋼板は、主として変圧器に代表される静止誘導器に使用される。その満たすべき特性としては、(1) 交流で励磁したときのエネルギー損失すなわち鉄損が小さいこと、(2) 機器の使用励磁域での透磁率が高く容易に励磁できること、(3) 騒音の原因となる磁歪が小さいこと等があげられる。特に (1)に関しては、変圧器が据え付けられてから廃棄されるまでの長期間にわたって連続的に励磁されエネルギー損失を発生し続けることから、変圧器の価値を表わす指標であるT.O.C.(Total Owning Cost)を決定する主要なパラメータとなる。
この一方向性電磁鋼板の鉄損を低減するために、今までに多くの開発がなされてきた。すなわち、(1) ゴス方位と呼ばれる{110}<001>方位への集積を高めること、(2) 電気抵抗を高めるSi等固溶元素の含有量を高めること、(3) 鋼板の板厚を薄くすること、(4) 鋼板に面張力を与えるセラミック被膜や絶縁被膜を付与すること、(5) 結晶粒の大きさを小さくすること、(6) 線状に歪や溝を導入することにより磁区を細分化すること、等である。
磁束密度向上のための典型的な技術のひとつに、特許文献1に開示されている製造方法が挙げられる。これは、AlNとMnSを、結晶粒成長を抑制するインヒビターとして機能させ、最終冷延工程における圧下率を80%を超える強圧下とする製造方法である。この方法により、{110}<001>方位への結晶粒の方位集積度が高まり、B8 (励磁力800A/mにおける磁束密度)が1.870T以上の高磁束密度を有する一方向性電磁鋼板が得られる。更に、磁束密度を向上させる技術として、例えば特許文献2では、溶鋼に100〜5000g/TのBiを添加する方法が開示され、B8 が1.95T以上の製品が得られている。
一方、鉄損低減の方法として、特許文献3に鋼板にレーザー処理を施す方法、特許文献4に鋼板に機械的な歪を導入する方法等、磁区を細分化する様々な方法や優れた鉄損特性を示す材料が開示されている。
なお、特許文献5には、MgOを主成分とする焼鈍分離剤として、La、La化合物、Ce、Ce化合物のうちから選ばれた1種または2種以上をLa、Ce化合物としての合計量でMgOに対し0.1〜3.0%添加し、かつ、SもしくはS化合物をSとしてMgOに対し0.01〜1.0%添加したものを用いる一方向性珪素鋼板の製造方法が開示されている。この方法は、Sとの親和力が強いLa、Ceを共存させることで、1次再結晶の粒成長に対する抑制作用と表面層から成長する2次再結晶粒の方位を厳密に制御する作用により磁気特性を改善するものである。
また、特許文献6には、酸化マグネシウムを基材とする粒配向形けい素鋼ストリップ用焼きなまし分離剤において、希土類酸化物を単独で、または金属けい酸塩とともに含有せしめたことを特徴とする、焼きなまし分離剤が開示されている。また、これによりストリップの表皮の下に小さい不連続性(小さい孔のくぼみ部分)のない製品が得られ、低い磁気ひずみ率、良好な表面抵抗力および付着性が得られることが開示されている。
特公昭40−15644号公報 特開平6−88171号公報 特公昭57−2252号公報 特公昭58−2569号公報 特開昭60−141830号公報 特公昭61−15152号公報 特開平8−295937号公報 特開平9−118921号公報
以上の方法により、素材としては優れた鉄損特性を示す材料が得られるようになってきたが、変圧器を製造するためのスリット剪断、斜角剪断を施したときに額縁剥離と呼ばれる表面被膜の剥離が生じ、変圧器に組み上げた際に素材の鉄損特性が十分に発揮できないという問題がある。
特許文献5は、被膜性能の改善による被膜密着性の改善を主眼においたものではないので、被膜密着性に関する情報は少なく、La、Ceをあわせて添加量がMgO重量比3.0%を越えると曲げ密着性が劣化するということのみ記載されており、曲げ密着性の程度や額縁剥離性については記載されていない。さらに、当該特許文献に記載されている鋼スラブ成分は、高磁束密度実現に有効なAlを含有しておらず、一次被膜の密着性、特に額縁剥離性に大きく影響を与えるAlの影響についての言及はなされていない。
また、特許文献6は、被膜性能の改善で被膜密着性、特に額縁剥離性の改善を主眼におかれたものではなく、実施例も含め鋼成分について全く触れられていない。
本発明者らは、MgOを主成分とする焼鈍分離剤中へ、Ce化合物若しくはLa化合物、又はCe化合物とLa化合物の両方を添加することにより、一次被膜中に、Ce若しくはLa、又はCeとLaの両方を含有する一方向性電磁鋼板が得られ、該一次被膜が被膜密着性、特に額縁剥離性に優れることを見出した。そして、これに基づいて、3倍周波鉄損特性W17/50に優れた一方向性電磁鋼板が得られ、変圧器を製造するためのスリット剪断、斜角剪断を施したときに額縁剥離と呼ばれる表面被膜の剥離が生じる問題を解決する方法を提案した。
このように一次被膜中に、Ce若しくはLa、又はCeとLaの両方を含有することで額縁剥離性等の被膜密着性が向上することを見出したが、一次被膜中に前記元素を含有させるために焼鈍分離剤に前記元素の化合物を添加することが必須であり、前記方法では焼鈍分離剤の塗布量や塗布斑、鋼板直上での雰囲気の差によって一次被膜中のCeやLaの含有量を均一にさせることが難しいという課題がある。また、焼鈍分離剤に添加されたCeやLaの全てが一次被膜中に含有されるわけではないので、前記元素が効率よく使用されないという課題がある。
本発明は、上記課題を効果的に解決するもので、一次被膜中に、Ce若しくはLa、又はCeとLaの両方を効率よく含有させて、該一次被膜が被膜密着性、特に額縁剥離性に優れる一方向性電磁鋼板の経済的な製造方法を提供するものである。
本発明は、上記課題を解決するため、鋼中に、Ce若しくはLa、又はCeとLaの両方を予め含有させ、焼鈍中の一次被膜形成とともに、鋼中の前記元素を表面に拡散させて一次被膜中に、Ce若しくはLa、又はCeとLaの両方を含有させる方法であり、その要旨とするところは、以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.10%以下、Si:2〜7%、Mn:0.02〜0.30%、SおよびSeのうちから選んだ1種または2種の合計:0.001〜0.040%、酸可溶性Al:0.010〜0.065%、N:0.0030〜0.0150%、CeおよびLaのうちから選んだ1種または2種の合計:0.001〜0.1%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を熱延板し、熱延板焼鈍を施し、1回あるいは2回以上または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、次いで脱炭焼鈍を施し、その後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布、乾燥し仕上げ焼鈍を行うことにより、Ce若しくはLa、又はCeとLaの両方を0.01〜10000mg/m2含む一次被膜を形成することを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
(2)前記鋼が、さらに、質量%でBi:0.0005〜0.05%を含むことを特徴とする前記(1)に記載の一方向性電磁鋼板の製造方法。
(3)前記鋼が、さらに、質量%でSn、Cu、As、Mo、Cr、P、Ni、B、Te、Pb、V、Geの1種または2種以上を合計で0.003〜0.5%含むことを特徴とする前記(1)乃至(2)のいずれかに記載の一方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明の製造方法では、一次被膜に含有させるCeやLaは、予め鋼中に前記元素を含有させ、鋼中から一次被膜に供給させるので、高価な希土類のCeやLaを無駄なく効率よく供給でき、かつ焼鈍分離剤の塗布量や塗布斑に依存せず、鋼板直上での雰囲気の斑にも依存せず、一次被膜中のCeやLaの含有量を均一させることができる。
その結果、被膜密着性、特に額縁剥離性及び3倍周波鉄損特性W17/50 に優れた方向性電磁鋼板が得られ、変圧器を製造するためのスリット剪断、斜角剪断を施したときに額縁剥離と呼ばれる表面被膜の剥離を防ぐことができ、市場より求められる高効率の変圧器を工業的、安定的に製造することが可能となる。
まず、本発明で用いる鋼の含有成分について詳細に説明する。なお、含有量の%は質量%である。
Siは鋼の電気抵抗を高めて、鉄損の一部を構成する渦電流損失を低減するのに極めて有効な元素であるが、2%未満では製品の渦電流損失を抑制できない。また7%を超えた場合では、加工性が著しく劣化するので好ましくない。
Cは0.10%を超えた場合では、冷延後の脱炭焼鈍において脱炭時間が長時間必要となり経済的でないばかりでなく、脱炭が不完全となりやすく、製品での磁気時効と呼ばれる磁性不良を起こすので好ましくない。
Mnは二次再結晶を左右するインヒビターと呼ばれるMnSやMnSeを形成する重要な元素である。0.02%未満では、二次再結晶を生じさせるのに必要なMnS、MnSeの絶対量が不足するので好ましくない。また、0.30%を超えた場合は、スラブ加熱時の固溶が困難になるばかりでなく、熱延時の析出サイズが粗大化しやすくインヒビターとしての最適サイズ分布が損なわれて好ましくない。
S及びSeは上述したMnとMnSやMnSeを形成する重要な元素である。上記規定した範囲を逸脱すると充分なインヒビター効果が得られないので、S及びSeのうちから選んだ1種または2種の合計を0.001〜0.040%に限定する必要がある。
酸可溶性Alは、高磁束密度一方向性電磁鋼板のための主要インヒビター構成元素であり、0.010%未満では、量的に不足してインヒビター強度が不足するので好ましくない。一方、0.065%を超えると、インヒビターとして析出させるAlNが粗大化し、結果としてインヒビター強度を低下させるので好ましくない。
Nは上述した酸可溶性AlとAlNを形成する重要な元素である。上記規定した範囲を逸脱すると充分なインヒビター効果が得られないので、0.0030〜0.0150%に限定する必要がある。
本発明において、一次被膜に含有させるために、予め鋼中に含有させるCeおよびLaのうちから選ばれる1種または2種の合計は、0.001〜0.1%に限定する必要がある。0.001%未満では、鋼中から供給されて一次被膜中に含有するCeやLaの量が少なすぎ、一次被膜の被膜密着性、特に額縁剥離性が得られない。一方、0.1%を越えると、一次被膜へのCeやLaの供給量は十分であるが、残存するCeやLaが多くなり、十分な純化が困難となることにより磁気特性の低下を招く。好ましくは0.001〜0.05%、さらにより好ましくは0.005〜0.02%である。
これらのCeやLaは、それぞれの金属やこれらを含有するミッシュメタル、さらにはFeとの合金等の形態で溶鋼に導入することができる。
鋼中に含有させたCeやLaは、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を施して焼鈍してフォルステライトの一次被膜が形成される過程で、一次被膜に含有される。CeやLaは低酸化雰囲気でも酸化されるために鋼表面のCeやLaが酸化されて、鋼表面付近のCeやLaの化学ポテンシャルの低下を招き(CeやLa濃度の減少)、化学ポテンシャルの高い鋼中のCeやLa(相対的にCeやLaの濃度が高くなる)は、表面へ拡散することになる。このようにして、鋼中からCeやLaが一次被膜中に供給されると考えられる。
またCeやLaが鋼中成分のSやSeと共存することにより、鋼中で高温安定なS化物やSe化合物を形成し、強固なインヒビター成分として寄与して二次再結晶温度の高温化を誘起し、B8を向上させる効果も得られる。
本発明では、さらに、Biを添加してもよい。Biは超高磁束密度の一方向性電磁鋼板の安定製造において、極めて有用な元素である。0.0005%未満ではその効果が充分に得られず、また0.05%を超えた場合は磁束密度向上効果が飽和し、熱延コイルの端部に割れが発生する場合もある。
この他、二次再結晶を安定化させる元素として、Sn、Cu、As、Mo、Cr、P、Ni、B、Te、Pb、V、Geの1種または2種以上を合計で0.003〜0.5%含有させることも有用である。これら元素の添加量としては、0.003%未満では二次再結晶安定化の効果が充分でなく、また0.5%を超えると効果が飽和するためにコストの観点から0.5%に限定する。
次に、製造工程について説明する。
上記のごとく成分を調整した一方向性電磁鋼板製造用溶鋼は、通常の方法で鋳造する。特に鋳造方法に限定はない。次いで通常の熱間圧延工程を経て熱延コイルに圧延される。通常は、MnS(MnSe)、AlNのインヒビター成分を充分に溶体化させるため1300℃を超える高温でスラブ加熱を行うが、生産性、コストを優先させるために1250℃程度のスラブ加熱温度すること、鋼板状態での外部からの窒化過程を用いて後工程でインヒビターを増強させる場合には普通鋼並みのスラブ加熱を行うことも本発明の思想を損なうものではない。以上により一方向性電磁鋼熱延板が得られる。
引き続いて、熱延板焼鈍後仕上げ冷延、あるいは中間焼鈍を含む複数回の冷延、あるいは熱延板焼鈍後中間焼鈍を含む複数回の冷延によって製品板厚に仕上げるわけであるが、仕上げ冷延前の焼鈍では結晶組織の均質化と、AlNの析出制御を行う。
以上最終製品厚まで圧延されたストリップに脱炭焼鈍を施す。脱炭焼鈍は通常行われるように、湿水素中での熱処理により鋼板中のCを製品板の磁気時効劣化がない領域まで下げ、同時に冷延したストリップを一次再結晶させ二次再結晶の準備をする。この脱炭焼鈍に先立ち、前段で特許文献7や特許文献8に開示されるように80℃/sec以上の加熱速度で再結晶させることも鉄損を向上させるために好ましい。
さらに、一次被膜形成、二次再結晶、純化を目的として1100℃以上の仕上げ焼鈍を行う。この仕上げ焼鈍はストリップを巻取ったコイルの形態で行うが、鋼板表面にはストリップの焼付き防止と一次被膜形成の目的でMgO粉末が塗布される。MgO粉末は一般に水スラリーの状態で鋼板表面に塗布、乾燥されるが、静電塗布法を用いることもできる。
焼鈍分離剤中に、MgO以外にTi化合物を含んでもよい。Ti換算でMgOに対して0.5〜10質量%の範囲で添加すると被膜密着性がさらに向上する。Ti換算での添加量は、0.5質量%未満であると額縁剥離性向上の効果が得られないことがあり、10質量%を超えると製品板の鉄損特性が劣化することがあるので、Ti化合物の添加量を前記範囲とすることが好ましい。Ti化合物の形態としては、TiO2 、Ti35 、Ti23 、TiO、TiC、TiN、TiB2 、TiSi2 等があるが、いずれの形態でも額縁剥離性向上に効果がある。Ti換算での添加量として、好適には1〜8質量%、更に好ましくは2〜6質量%である。Tiが一次被膜中含まれ、鋼中から一次被膜中に供給されたCeやLaと共存することで、額縁剥離性の向上に相乗的に作用するものと考えられる。
また、焼鈍分離剤中にSr、Ca、Baの化合物を1種または2種以上含有させることも額縁剥離性を更に向上させるのに有効である。化合物の形態は酸化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩等何れの形態でもよい。好ましい化合物の含有量としては、これら元素の合計がMgOに対して質量%換算で0.1%以下であると額縁剥離性向上が充分でないことがあり、また10%を超えるとかえって被膜を劣化させることがあるために0.1〜10%とすることが好ましい。Sr、Ca、Baが一次被膜中含まれ、鋼中から一次被膜中に供給されたCeやLaと共存することで、額縁剥離性の向上に相乗的に作用するものと考えられる。
本発明では、一次被膜中に含有させるCeやLaは、予め鋼中に含有させたCeやLaから供給させるのであるが、同時に焼鈍分離剤中に、Ce化合物若しくはLa化合物、又はCe化合物とLa化合物の両方を含んでもよい。Ce化合物、La化合物としては、例えば、酸化物、硫化物、硫酸塩、燐酸塩、水酸化物、炭酸塩、塩化物、フッ化物等が挙げられるが、どの形態であってもどのように組み合わせて使用してもよい。
さらに、仕上げ焼鈍においては、MgO中の水分除去を目的として二次再結晶焼鈍前に700℃以下の低温でH2 濃度を20%以上とした還元雰囲気で保持する脱水工程を付与することが望ましい。
多くの場合、最終仕上げ焼鈍後、一次被膜の上にさらに絶縁被膜を施す。特に燐酸塩とコロイダルシリカを主体とするコーティング液を鋼板面に塗布し、焼付けることによって得られる絶縁被膜は、鋼板に対する付与張力が大きく、更なる鉄損改善に有効である。
さらに、必要に応じ、上記一方向性電磁鋼板に、レーザー照射、プラズマ照射、歯型ロールやエッチングによる溝加工等のいわゆる磁区細分化処理を施すことが望ましい。
以上により、フォルステライトを主成分とする一次被膜を有する額縁剥離性、3倍周波鉄損特性W17/150に優れた方向性電磁鋼板が得られる。
こうして得られた一方向性電磁鋼板は、変圧器に加工される際に、1m程度の原コイル幅からスリッターの丸刃剪断で圧延方向に平行に所定の幅に剪断され、また大型の積鉄心変圧器では圧延方向と45°の角度でシア剪断される。これらの剪断は何れもシア加工であり、一般的な被膜密着性の評価方法とされる数十mmφの曲げ密着性試験に比べて著しい強加工である。
額縁剥離性とは、シア剪断を行った際の剪断端部の被膜剥離した部分の平均幅を言う。額縁剥離性は、1mm以下、好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下がよい。
従来の被膜密着性評価では、セロハン(登録商標)テープ剥離による等、静的な加工での剥離挙動に耐用できる被膜で十分であったが、本発明の様に額縁剥離性になると、剪断時の衝撃に耐えられる所謂、動的な加工での剥離挙動に耐用できる被膜が必要である。この額縁剥離性が、一次被膜中にCeやLaが含有されることで改善される理由としては定かではないが、一次被膜のフォルステライト中の構造が衝撃性に耐えられるものとなることが予測され、さらに、鋼板とフォルステライトの界面構造の変化も額縁剥離性に影響を及ぼすものと予測される。本発明では、額縁剥離性に優れた被膜性能とすることで、3倍周波鉄損特性W17/150に優れた一方向性電磁鋼板となる。
また、電磁鋼板素材の鉄損は、JIS C2550にあるようなエプスタイン測定枠を用いる方法、JIS C2556にあるような単板測定枠を用いて測定されるが、この測定値と方向性電磁鋼板を剪断、積層して作製した変圧器鉄心の測定値は異なり(ビルディングファクターBFと称す)、一般に鉄心の損失の方が大きくなる。本発明者らは3倍周波鉄損特性W17/50 を小さくすれば、このBFを低減できることを見出した。
しかるに、Siを2〜7%含有する一方向性電磁鋼板のフォルステライト系の一次被膜にCeやLaを含有させることにより、上記の額縁剥離性と3倍周波鉄損特性W17/150を同時に改善できることが判った。
スラブや熱延板中に含有されているCeとLa量の測定は、部分的に切り出しを行った後、例えば王水で溶解し、未分解残渣をフッ酸と硫酸の混合液で溶解し合わせるなどして完全溶解させ、その溶解度をICP発光分析法、ICP-MSなどによって行う。あるいはFe中に規定量のCeやLaを含む標準試料を用いて、蛍光X線分析における検量線を作成し、実サンプルの蛍光X線強度からその濃度を算出する方法を用いることができる。
額縁剥離性改善の観点から、一次被膜には、Ce若しくはLa、又はCeとLaの両方を、0.01〜100mg/m2の範囲で含有するのが好ましい。0.01mg/m2 未満であると額縁剥離性の改善効果が充分でなく、あるいはまた3倍周波鉄損特性W17/150の改善効果が見られない。一方、100mg/m2 を超えると、3倍周波鉄損特性W17/150が劣化し被膜形成が却って阻害される。さらに好ましくは1〜50mg/m2 の範囲であり、最も好ましくは1〜10mg/m2 の範囲である。
本発明の製造方法によれば、一次被膜中に、CeとLaの合計として0.01〜1000mg/m2の範囲で含有させることができる。
額縁剥離性をさらに向上させるためには、一次被膜中のTi目付量を3〜800mg/m2 とすると良好となる。Ti目付量の測定法は上述したCeやLaの含有量の測定法と同様である。Ti目付量を3mg/m2 未満とすると額縁剥離性の更なる向上が得られず、800mg/m2 を超えると鉄損が劣化する。
一次被膜中のSr,Ca,Baの目付量を制御することも額縁剥離性を更に向上させるには有効である。これら元素の目付量を1種または2種以上の合計で0.01〜1000mg/m2 とすることで額縁剥離性が更に向上する。
なお、ここで標記した目付量とは鋼板片面の一次被膜の一定面積あたりに存在する元素の質量を示し、これらもICP発光分光分析や蛍光X線分析を含む種々の方法で測定することが可能である。
以下、本発明の実施例を説明するが、実施例で採用した条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するための一例であり、本発明は、この例に限定されるものではなく、本発明を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1に示す成分(残部はFe)の鋼のスラブを、1350℃で加熱後、2.5mm厚まで熱間圧延した熱延板を1120℃で1分間焼鈍した。この後、冷間圧延により最終板厚0.27mmに圧延し、湿水素中で840℃で2分間の脱炭焼鈍を施した。その後、MgOを主成分とし、MgOに対して質量比4%のTiO2を含有する焼鈍分離剤を塗布して、最高到達温度1200℃で20時間、水素ガス雰囲気中で高温焼鈍を施した。
得られた製品板の特性を表2に示す。
表2のNo.1−2〜1−6、1−8に示すように、鋼中に、Ce若しくはLa、又はCeとLaの両方を予め含有させて焼鈍中に一次被膜形成させると、一次被膜中に前記元素を均一に含ませることができ、その結果、被膜密着性、特に額縁剥離性と磁気特性に優れた一方向性電磁鋼板が製造できる。
比較例のNo.1−1、1−7では、一次被膜中にCeが存在しないので被膜密着性が悪い。また、比較例のNo.1−9では、一次被膜中にCeが存在するが、鋼中にもCeが残存し、磁気特性が悪くなっている。
Figure 0004916847
Figure 0004916847
質量%で、C:0.077%、Si:3.2%、Mn:0.75%、S:0.025%、酸可溶性Al:0.025%、N:0.008%、Bi:0.003%、残部Feからなる成分にさらに表3に示す成分を含ませた鋼のスラブを2.3mm厚にまで熱間圧延させた熱延板に、1100℃で1分間焼鈍を施した。この後、冷間圧延により最終板厚0.23mmにまで圧延した。
得られたストリップを850℃まで300℃/sの通電加熱法により昇温したのち、820℃の均一温度、湿潤水素中で脱炭焼鈍し、MgOを主成分として、TiO2を5%配合した焼鈍分離剤を塗布した後、700℃×20hのMgO中水分除去処理を行ったのち、1200℃に20時間、水素ガス雰囲気中で高温焼鈍を行った。得られた鋼板の余剰MgOを除去し、形成されたフォルステライト被膜上にコロイダルシリカと燐酸塩を主体とする絶縁皮膜を形成させ、レーザーを照射して磁区細分化処理を施して製品とした。
ここで、フォルステライト被膜を蛍光X先分析法で分析した結果、表4のNo.2−2〜2−13でCeがフォルステライト被膜中に均一に存在していることが確認された。
得られた製品特性を表4に示す。本発明の製造方法で得られたコイルは、被膜密着性、額縁剥離性と磁気特性に優れた方向性電磁鋼板となっている。
Figure 0004916847
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質量%で、C:0.084%、Si:3.4%、Mn:0.1%、S:0.025%、酸可溶性Al:0.028%、N:0.008%、Sn:0.12%、Bi:0.01%、Ce:0.01%、残部Feからなる成分の鋼のスラブを2.0mm厚にまで熱間圧延させた熱延板に、1120℃で1分間焼鈍を施した。この後、冷間圧延により最終板厚0.23mmにまで圧延した。
さらに、得られたストリップを、835℃の均一温度、湿潤水素中で脱炭焼鈍し、MgOを主成分として、表5に示す添加剤を含む焼鈍分離剤を塗布した後、700℃×20hのMgO中水分除去処理を行ったのち、1200℃に20時間、水素ガス雰囲気中で高温焼鈍を行った。得られた鋼板の余剰MgOを除去し、形成されたフォルステライト被膜上にコロイダルシリカと燐酸塩を主体とする絶縁皮膜を形成させ製品とした。
ここで、フォルステライト被膜を蛍光X先分析法で分析した結果、表6のNo.3−1〜3−6でCeがフォルステライト被膜中に均一に存在していることが確認された。
得られた製品特性を表6に示す。本発明の製造法で得られたコイルは、被膜密着性、額縁剥離性と磁気特性に優れた方向性電磁鋼板となっている。
Figure 0004916847
Figure 0004916847

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.10%以下、Si:2〜7%、Mn:0.02〜0.30%、SおよびSeのうちから選んだ1種または2種の合計:0.001〜0.040%、酸可溶性Al:0.010〜0.065%、N:0.0030〜0.0150%、CeおよびLaのうちから選んだ1種または2種の合計:0.001〜0.1%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を熱延板にし、熱延板焼鈍を施し、1回あるいは2回以上または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、次いで脱炭焼鈍を施し、その後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布、乾燥し仕上げ焼鈍を行うことにより、鋼板表面にCe若しくはLa、又はCeとLaの両方を0.01〜1000mg/m2含む一次被膜を形成することを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記鋼が、さらに、質量%でBi:0.0005〜0.05%を含むことを特徴とする請求項1に記載の一方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記鋼が、さらに、質量%でSn、Cu、As、Mo、Cr、P、Ni、B、Te、Pb、V、Geの1種または2種以上を合計で0.003〜0.5%含むことを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の一方向性電磁鋼板の製造方法。
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