JP6900977B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、変圧器の鉄心材料として好適な方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、変圧器や大型発電機の鉄心材料として用いられる軟磁性材料で、鉄の磁化容易軸である結晶方位の<001>軸が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶集合組織を有している。かような集合組織は、二次再結晶により、Goss方位と称される{110}<001>方位の結晶粒を優先的に巨大成長させることで得られる。
このような方向性電磁鋼板の製造方法としては、インヒビターと呼ばれる析出物を利用して仕上焼鈍中にGoss方位を有する結晶粒を二次再結晶させることが一般的な技術として知られている。
例えば、インヒビターと呼ばれる析出物を利用する方法として、特許文献1にはAlN、MnSを利用する方法が、また特許文献2にはMnS、MnSeを利用する方法が開示され、それぞれ工業的に実用化されている。これらのインヒビターを用いる方法は、インヒビター成分の完全固溶のために1300℃以上と高温でのスラブ加熱を必要とするものの、安定して二次再結晶粒を発達させるためには極めて有用な方法であった。
さらに、これらのインヒビターの働きを強化するために、特許文献3にはPb、Sb、Nb、Teを利用する方法が、また特許文献4にはZr、Ti、B、Nb、Ta、V、Cr、Moを利用する方法が開示されている。
またさらに、特許文献5には、酸可溶性Al(sol.Al)を0.010〜0.060質量%含有させ、スラブ加熱を低温に抑え、脱炭焼鈍工程で適正な窒化雰囲気下で窒化を行うことにより、二次再結晶焼鈍中に(Al,Si)Nを析出させてインヒビターとして用いる方法が提案されている。このような途中工程で窒化処理を行い、(Al,Si)NあるいはAlNをインヒビターとして利用する方法は窒化法と称して数多く提案されている。
一方、インヒビター成分を含有しない素材において、Goss方位結晶粒を二次再結晶により発達させる技術が特許文献6等に開示されている。この技術は、インヒビター成分のような不純物を極力排除することで、一次再結晶時の結晶粒界が持つ粒界エネルギーの粒界方位差角依存性を顕在化させ、インヒビターを用いずともGoss方位を有する結晶粒を二次再結晶させる技術であり、その効果をテクスチャーインヒビション効果と呼んでいる。この方法では、インヒビターの鋼中微細分散が必要ではないため、従来必須とされた高温スラブ加熱が必要でないなど、コスト面でもメンテナンス面でも大きなメリットを有する方法である。
特公昭40−15644号公報 特公昭51−13469号公報 特公昭38−8214号公報 特開昭52−24116号公報 特許第2782086号公報 特開2000−129356号公報 特開2017−160489号公報
ただし、インヒビター成分を含有しない素材を用いる方法では、一次再結晶焼鈍時に正常粒成長を抑制し、一定の粒径にそろえ、さらに二次再結晶時にGoss方位の先鋭性を高める機能を有するインヒビターが存在しないために、インヒビターを利用する方法よりも、最終的な磁気特性が劣る場合が散見された。
この問題の解決策として、特許文献7には、熱延板焼鈍における昇温速度を速くすることで、インヒビター成分を含有しない素材においても高い磁束密度を有することを可能とする技術が開示されている。
しかしながら、この技術を適用していく過程で、鉄損が悪化するという課題が新たに認められた。この原因は、最終製品板の粒径が粗大となるためと考えられた。
本発明は、熱延板焼鈍の昇温速度を極力速くした場合、磁束密度は向上するものの、鉄損が悪化するという前述の問題を、二次再結晶焼鈍の加熱パターンを規制すると共に、雰囲気を制御することにより解決するものである。
以下、本発明を成功に至らしめた実験について説明する。
<実験1>
質量%で、C:0.020%、Si:3.08%、Mn:0.26%、および質量ppmで、N:18ppm、sol.Al:36ppm、S:11ppmおよびSe:20ppmを含有する鋼スラブを、連続鋳造にて製造し、1220℃で30分均熱するスラブ加熱を施したのち、熱間圧延により2.2mmの厚さに仕上げた。ついで、乾燥窒素雰囲気中にて1025℃で30秒の熱延板焼鈍を施した。この際、昇温過程において、常温から400℃に到達するまでの昇温速度を75℃/sとし、引き続き400℃から900℃に到達するまでの時間を50秒とした。熱延板焼鈍後、酸洗にて表面のスケールを除去したのち、冷間圧延により0.23mmの最終板厚に仕上げた。さらに、最終板厚に仕上げた鋼板に、50%H2-50%N2、露点50℃の湿潤雰囲気中にて850℃で120秒の脱炭を伴う一次再結晶焼鈍を施した。その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶焼鈍を施し、製品板とした。
二次再結晶のパターンは、条件A:1200℃で5時間、H2雰囲気下で保定、条件B:850℃で40時間、N2雰囲気中で保定したのち、1200℃で5時間、H2雰囲気下で保定、条件C:850℃で40時間保定し、保定時間が20時間まではN2雰囲気とし、20時間から40時間まではAr雰囲気中(非N2雰囲気下)で保定したのち、1200℃で5時間、H2雰囲気下で保定する、の3条件とした。
かくして得られた方向性電磁鋼板からサンプルを切り出し、磁束密度B8(800A/mで励磁した時の磁束密度)と鉄損W17/50(交流50Hzで1.7Tまで励磁したときの鉄損)をJISC 2550に記載の方法で測定した。
得られた磁束密度B8と鉄損W17/50を図1(a)、(b)に示す。
同図に示したとおり、磁束密度B8はどの条件もほぼ同等であったが、鉄損W17/50は条件Cが最も低く良好であることが判明した。
<実験2>
質量%で、C:0.070%、Si:3.45%、Mn:0.15%、および質量ppmで、N:20ppm、sol.Al:34ppmおよびS:25ppmを含有する鋼スラブを、連続鋳造にて製造し、1260℃で45分均熱するスラブ加熱を施したのち、熱間圧延により2.0mmの厚さに仕上げた。ついで、N2雰囲気中にて1050℃で90秒の熱延板焼鈍を施した。この際、昇温過程において、常温から400℃に到達するまでの昇温速度を100℃/sとし、引き続き400℃から900℃に到達するまでの時間を70秒とした。熱延板焼鈍後、酸洗にて表面のスケールを除去したのち、冷間圧延により0.20mmの最終板厚に仕上げた。さらに、最終板厚に仕上げた鋼板に、60%H2-40%N2、露点55℃の湿潤雰囲気中にて840℃で90秒の脱炭を伴う一次再結晶焼鈍を施した。その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶焼鈍を施し、製品板とした。
二次再結晶焼鈍は、一次均熱として900℃で50時間保定したのち、二次均熱として1200℃で10時間、水素雰囲気下で保定するパターンとした。この時、一次均熱の雰囲気は、初めにN2雰囲気とし、種々のタイミングでAr雰囲気(非N2雰囲気)に切り替えた。
得られたサンプルの磁束密度B8と鉄損W17/50をJIS C 2550に記載の方法で測定した。
得られた磁束密度B8および鉄損W17/50をN2の切り替えタイミングで整理した結果を、図2(a)、(b)に示す。なお、N2からAr雰囲気への切り替えタイミングは、一次均熱期間(すなわち本実験では50時間)におけるN2雰囲気焼鈍期間の割合で評価した。
その結果、図2に示したとおり、N2雰囲気割合が、10%以下の場合は磁束密度B8および鉄損W17/50とも大きく劣化する一方、90%を超えると磁束密度B8は同等であったが、鉄損W17/50が悪化する結果となった。
熱延板焼鈍において常温から400℃までを急速に加熱することで磁束密度が向上する理由は、特許文献7に記されている。このような状況下で、二次再結晶焼鈍の一次均熱期間におけるN2雰囲気導入割合を規定することで鉄損が低減する理由は、必ずしも明らかではないが、発明者らは次のように考えている。
鉄損低減の原因を探るべく、実験1で得られたサンプルを85℃の5%HCl水溶液に浸漬して被膜を除去し、二次粒の外観が確認できる状態として、二次粒径を算出したところ、条件Cの粒径が最も小さい結果となった。一般的にも、二次粒径が小さいほど、鉄損が低い傾向があるので、鉄損低減効果は、二次粒細粒化の効果であったといえる。
もともと熱延板焼鈍の急熱の効果は、鋼中のAlN析出物の分布が密にかつ析出物径が小さくなり、二次再結晶後のGoss方位の先鋭性が高まるために発現すると記されている。特に、今回のような中間焼鈍を含まない冷延1回法では、このAlNの分布は二次再結晶焼鈍開始時まで保持されていると考えられる。
まず、実験1の条件Aの、一次保定がなく1200℃でH2雰囲気下に保定される場合、昇温中に析出物の分解がH2雰囲気により促進され、その最中に二次再結晶が開始されると考えられる。しかし、この二次再結晶開始後も、焼鈍温度は上昇し続けるため、熱エネルギーが二次再結晶粒粒成長の駆動力となって、結晶粒が極めて大きくなった結果、磁束密度は高いが鉄損が劣化したものと推定される。
次に、条件Bの、一次均熱がありその区間はすべてN2雰囲気で焼鈍した場合であるが、800〜950℃で長時間焼鈍されると、雰囲気からNが鋼中に侵入し、固溶Alやその他窒化物形成元素が窒化物を形成し析出すると考えられる。この析出物の影響で、二次再結晶が開始するまでの一次再結晶粒は焼鈍されているにもかかわらず粒成長をほとんどしないといえる。すなわち、二次再結晶が開始した時点では、一次粒は粒径が小さく、二次再結晶粒の粒成長の駆動力が高い状態にあり、ある場所で二次再結晶が開始するとその二次粒の粒成長は速く進行し、粒径が大きく成長してしまうことが推測される。
これに対し、条件Cでは、一次均熱で非N2雰囲気を導入するため、その際は、逆に脱窒が起こり、AlN等の分解が生じると考えられる。分解が起こると、一次粒が若干粒成長するため、二次再結晶粒の粒成長の駆動力を低下させ、二次再結晶が開始しても、その成長が抑制され、結果的に二次粒径が小さくなると推定される。すなわち、二次粒径を小さくし、鉄損を低減するためには、実験2で得られた結果のように、少なくともN2雰囲気導入期間は一次均熱期間の90%以下とし、非N2雰囲気の期間を10%以上導入する必要があるといえる。また、N2雰囲気導入期間が10%以下で磁気特性が大きく劣化したのは、上述のとおり非N2雰囲気により脱窒が進むことで一次粒の粒成長が過剰に促進され、二次再結晶の駆動力が大幅に低下して二次再結晶が不安定になってしまったためと推測される。
上述したとおり、本発明者らは、インヒビターレス素材において、熱延板焼鈍の昇温過程における昇温速度や900℃までの到達時間を短時間化すると共に、二次再結晶焼鈍の一次均熱において非N2雰囲気を活用することで、磁気特性を向上させることに成功した。
本発明は上記の知見を基にさらに鋭意研究を重ねて完成したものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、C:0.002〜0.100%、Si:1.5〜4.5%およびMn:0.02〜1.00%を含有し、質量ppmで、S,NおよびSeをそれぞれ50ppm以下、sol.Alを100 ppm未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブを、1300℃以下の温度に再加熱後、熱間圧延により熱延板としたのち、熱延板焼鈍を施し、ついで1回の冷間圧延により最終板厚の冷延板とし、ついで該冷延板を一次再結晶焼鈍後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶焼鈍を行う方向性電磁鋼板の製造方法において、
上記熱延板焼鈍における均熱温度を950℃以上とし、その昇温過程において室温から400℃までの温度域を50℃/s以上の速度で昇温し、
上記二次再結晶焼鈍を、800〜950℃で5時間以上保定する一次均熱工程と、1100℃以上で2時間以上保定する二次均熱工程を有するパターンとし、さらに該一次均熱工程において、N2雰囲気で焼鈍する期間を一次均熱期間の20%以上90%以下とし、それ以外は非N2雰囲気で焼鈍することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
2.前記一次均熱工程における非N2雰囲気をAr雰囲気とすることを特徴とする、前記1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
3.前記一次均熱工程における非N2雰囲気をAr雰囲気とArを含むかまたはAr以外の非N2雰囲気とし、該Ar雰囲気で焼鈍する期間を前記一次均熱期間の10%以上60%以下とすることを特徴とする前記1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
4.前記鋼スラブが、質量%でさらに、Sb:0.01〜0.50%、Sn:0.01〜0.50%、Ni:0.005〜1.5%、Cu:0.005〜1.5%、Cr:0.005〜0.1%、P:0.005〜0.5%、Mo:0.005〜0.5%およびNb:0.0005〜0.1%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、インヒビターレス素材において、熱延板焼鈍の昇温過程における昇温速度や900℃までの到達時間を短時間化すると共に、二次再結晶焼鈍の一次均熱において非N2雰囲気を活用して二次再結晶粒を細粒化し、もって磁束密度の向上と同時に鉄損の低減を図ることができる。
二次再結晶パターンが磁気特性(B8、W17/50)に及ぼす影響を示した図である。 二次再結晶焼鈍の一次均熱期間におけるN2雰囲気の割合と磁束密度B8および鉄損W17/50との関係を示した図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において鋼スラブの成分組成を前記の範囲に限定した理由について述べる。なお、成分に関する「%」表示は質量%、「ppm」表示は質量ppmをそれぞれ表すものとする。
C:0.002〜0.100%
C量が0.100%を超えると、脱炭焼鈍で磁気時効の起こらない0.005%以下に低減することが困難となる。一方、C量が0.002%未満では熱間脆化が顕著となり、スラブ鋳込みや熱間圧延でのトラブルが多発する。よって、C量は0.002〜0.100%の範囲とする。好ましくは0.020〜0.070%の範囲である。
Si:1.5〜4.5%
Siは、鋼の比抵抗を高め、鉄損を低減するのに必要な元素である。この効果は、Si量が1.5%未満では十分ではなく、一方4.5%を超えると加工性が低下し、圧延して製造すること困難となる。よって、Si量は1.5〜4.5%の範囲とする。好ましくは2.5〜4.0%の範囲である。
Mn:0.02〜1.00%
Mnは、鋼の熱間加工性を改善するために必要な元素である。この効果は、Mn量が0.02%未満では十分ではなく、一方1.00%を超えると製品板の磁束密度が低下するようになる。よって、Mn量は0.02〜1.00%の範囲とする。好ましくは0.04〜0.30%の範囲である。
また本発明では、インヒビター形成元素であるAl、S、NおよびSeは極力除くことが望ましい。しかしながら、工業的には完全に除去することは不可能であることから、S、NおよびSeはそれぞれ50ppm以下、またsol.Alは100 ppm未満であれば残存を許容するものとした。
さらに本発明では、磁束密度を向上させる目的で、Sb:0.01〜0.50%、Sn:0.01〜0.50%、Ni:0.005〜1.5%、Cu:0.005〜1.5%、Cr:0.005〜0.1%、P:0.005〜0.5%、Mo:0.005〜0.5%およびNb:0.0005〜0.1%のうちから選んだ1種または2種以上を、単独または複合して含有させることができる。各元素の含有量が下限値より少ない場合には磁束密度の向上効果に乏しく、一方上限値を超えると二次再結晶不良を招き、磁気特性の劣化をきたす。
次に、本発明の製造方法について述べる。製造方法は一般的な電磁鋼板を製造する方法を利用できる。
すなわち、所定の成分調整がなされた溶鋼を、通常の造塊法もしくは連続鋳造法で鋼スラブとする。前述した添加成分については、途中工程で加えることは困難であるので、溶鋼段階で添加することが望ましい。鋼スラブは、通常の方法で加熱して熱間圧延に供される。本発明の成分系では、AlやNが低減されているため、これらを固溶させるための高温加熱を必要とせず、1300℃以下の低温とすることができ、これによりコスト低減が達成される。なお、加熱温度の下限は1100℃程度が好適である。
次いで、熱延板焼鈍を施すが、この熱延板焼鈍においては。前述した理由により、昇温過程において室温から400℃までの温度域における昇温速度を50℃/s以上とすることが必要である。また、400℃から900℃に到達するまでの時間は100秒以下とすることが望ましい。さらに望ましくは、昇温速度は100℃/s以上であり、400℃から900℃までの到達時間は60秒以下である。なお、昇温速度の上限は300℃/s程度とするのが好ましい。
さらに、鋼中のSi3N4析出物からAlN析出物への置換を確実とするために、熱延板焼鈍における均熱温度を950℃以上とすることも不可欠である。均熱温度は望ましくは、1000℃以上1100℃以下である。1000℃未満では析出物の置換が十分でなく、磁性が劣化する可能性がある。一方、1100℃超では二次再結晶が不安定となる可能性がある。
加熱方法については特に制限はないが、50℃/s以上の昇温速度を達成させるためには、従来のヒーターやバーナーによる加熱方法の他、誘導加熱方法や通電加熱方法が考えられる。
上記の熱延板焼鈍後、冷間圧延により最終板厚の冷延板である鋼板としたのち、一次再結晶焼鈍を行う。この冷間圧延では、鋼板温度を100〜300℃に上昇させて行うことや、冷間圧延の途中で100〜300℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことが、再結晶集合組織を変化させて磁気特性を向上させる上で有効である。また、本発明では、前述した理由により、冷間圧延法は中間焼鈍を挟まない冷延1回法に限定される。
一次再結晶焼鈍では、鋼板の脱炭を兼ねさせてもよい。焼鈍温度は、800℃以上900℃以下が脱炭性の観点から好適である。また脱炭の観点からは、雰囲気は湿潤雰囲気とすることが望ましい。ただし、脱炭が不要なCを0.005%以下しか含有していない場合は、上記以外の条件でも問題ない。さらに、一次再結晶焼鈍における保定温度までの昇温速度は50℃/s以上400℃/s以下とすることが最終磁気特性を良好とする上で望ましい。
ついで、鋼板正面にMgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶焼鈍を施してGoss方位を有する二次粒を発達させると共に、フォルステライト被膜を形成させる。
ここに、二次再結晶焼鈍は、800〜950℃で5時間以上保定する一次均熱工程と1100℃以上で2時間以上保定する二次均熱工程を有するものとし、さらに一次均熱工程において、N2雰囲気で焼鈍する期間を一次均熱期間の20%以上90%以下とし、それ以外は非N2雰囲気で焼鈍する、すなわち非N2雰囲気で焼鈍する期間は一次均熱期間の10%以上80%以下とすることが重要である。
一次均熱温度が800℃未満の場合は二次再結晶が起こらず、一方950℃を超えると磁束密度B8が劣化する。一次均熱時間が5時間に満たないと二次再結晶が十分でない。また、一次均熱は20時間以上行うことが二次再結晶の発現安定化のために有効である。なお一次均熱時間の上限は100時間が好ましい。また、二次均熱が1100℃未満の場合は、純化不足となり、鉄損が大幅に低下する。そして、二次均熱は1175℃以上で5時間以上保定とすることが安定して純化を達成する観点から極めて有効である。なお、二次均熱時間の上限は20時間とするのが好ましい。また二次均熱における雰囲気はH2雰囲気とすることが好ましい。
さらに、一次均熱工程におけるN2導入期間は、全期間の50%以上70%未満とすることが好ましい。また、一次均熱工程における非N2雰囲気としては、前述したArの他、H2やHeなどが有利に適合し、これらの混合ガスや、これら非N2雰囲気ガスを切り替えて使用しても問題はない。特に、後述する実施例の通り、非N2雰囲気ガスをAr雰囲気とし、かかるAr雰囲気で焼鈍する期間を一次均熱期間の10%以上60%以下とすると、さらに鉄損が低減するため望ましい。なお、ArやH2、Heを用いる場合、ArやH2、He等を適宜切り替える、または混合する等して、併せて用いることができる。この場合は、非N2雰囲気ガス全体で一次均熱期間の10%以上80%以下とすれば本発明の効果を得られるが、Ar雰囲気で焼鈍する期間は一次均熱期間の10%以上60%以下とするのが鉄損低減の観点から望ましい。また、非N2雰囲気がAr雰囲気のときはかかるAr雰囲気の期間を10〜60%、残りの一次均熱工程の期間をN2雰囲気とすることがより好ましい。
上記の二次再結晶焼鈍後は、付着した焼鈍分離剤を除去するため、水洗やブラッシング、酸洗を行うことが有用である。その後、さらに平坦化焼鈍を行って形状を矯正することが鉄損低減のために有効である。
鋼板を積層して使用する場合には、鉄損を改善するために、平坦化焼鈍前もしくは後に、鋼板表面に絶縁コーティングを施すことが有効である。この場合、鋼板に張力を付与できるコーティングとすることが鉄損低減の面で望ましい。このとき、バインダーを介した張力コーティング塗布方法や物理蒸着法や化学蒸着法により無機物を鋼板表層に蒸着させコーティングとする方法を採用すると、コーティング密着性に優れ、かつ著しい鉄損低減効果があるため望ましい。
(実施例1)
C:0.015%、Si:2.78%、Mn:0.04%、sol.Al:50ppm、N:27ppm、S:9ppmおよびSe:40ppmを含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブを、連続鋳造にて製造し、1170℃でスラブ加熱後、熱間圧延により1.6mmの厚さに仕上げた。ついで、90vol%N2+10vol%CO2、露点40℃の雰囲気中にて975℃で80秒の熱延板焼鈍を施した。その際、昇温過程において、常温から400℃に到達するまでの昇温速度を表1に示すように種々に変更した。ついで、酸洗にて表面のスケールを除去したのち、冷間圧延により0.23mmの最終板厚に仕上げた。その後、50vol%H2-50vol%N2、露点50℃の湿潤雰囲気中にて850℃で60秒の脱炭を伴う一次再結晶焼鈍を施した。さらに、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、900℃で40時間の一次均熱後に、H2雰囲気中にて1220℃で5時間の二次均熱を施す二次再結晶焼鈍を行った。一次均熱の際、一部はN2雰囲気とし、それ以外はAr雰囲気とし、一次均熱期間においてN2雰囲気で焼鈍する割合を表1に示すとおり種々変化させた。ただし、6-2は、Ar雰囲気の一部をさらに、H2雰囲気とした。すなわち、6-2は、一次均熱期間においてN2雰囲気が20%、Ar雰囲気が60%、H2雰囲気が20%である。また、6-3は、Ar雰囲気の一部をさらに、30vol%ArのH2雰囲気とした。すなわち、6-3は、一次均熱期間においてN2雰囲気が20%、Ar雰囲気が60%、30vol%Ar+70vol%H2雰囲気が20%である。
得られたサンプルの磁束密度B8および鉄損W17/50について調べた結果を表1に併記する。
Figure 0006900977
同表から明らかなように、本発明に従う条件で製造した方向性電磁鋼板はいずれも、良好な磁束密度B8と鉄損W17/50を得ることができた。また、発明例の中でも、特に、同表の条件No.6-1の結果と比較して、No.6-2、6-3、7、8、9、10、13、16の結果の方が良好な鉄損値を示していることから、Ar雰囲気の期間が10〜60%の範囲内の場合、さらに良好な鉄損が得られることがわかる。
(実施例2)
表2に示す成分を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブを、連続鋳造にて製造し、1200℃でスラブ加熱後、熱間圧延により2.4mmの厚さに仕上げた。ついで、N2雰囲気中にて1060℃で45秒の熱延板焼鈍を施した。その際、昇温過程において、常温から400℃に到達するまでの昇温速度を100℃/sとした。ついで、熱延板焼鈍後、酸洗にて表面のスケールを除去したのち、150℃の温間圧延にて0.27mmの最終板厚に仕上げた。その後、55vol%H2-45vol%N2、露点50℃の湿潤雰囲気下の850℃で150秒の脱炭を伴う一次再結晶焼鈍を施した。さらに、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、920℃で30時間の一次均熱後に、H2雰囲気中にて1200℃で10時間の二次均熱を施す二次再結晶焼鈍を行った。一次均熱の際、一部はN2雰囲気としそれ以外はH2雰囲気とした。また、一次均熱期間にN2雰囲気で焼鈍する期間の割合は75%とした。
得られたサンプルの磁束密度B8および鉄損W17/50について調べた結果を表2に併記する。
Figure 0006900977
同表に示したとおり、成分組成が本発明の範囲を満足する場合には、良好な磁束密度B8と鉄損W17/50が得られている。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.002〜0.100%、Si:1.5〜4.5%およびMn:0.02〜1.00%を含有し、質量ppmで、S、NおよびSeをそれぞれ50ppm以下、sol.Alを100ppm未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブを、1300℃以下の温度に再加熱後、熱間圧延により熱延板としたのち、熱延板焼鈍を施し、ついで1回の冷間圧延により最終板厚の冷延板とし、該冷延板を一次再結晶焼鈍後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶焼鈍を行う方向性電磁鋼板の製造方法において、
    上記熱延板焼鈍における均熱温度を950℃以上とし、その昇温過程において室温から400℃までの温度域を50℃/s以上の速度で昇温し、
    上記二次再結晶焼鈍を、800〜950℃で5時間以上保定する一次均熱工程と、1100℃以上で2時間以上保定する二次均熱工程を有するものとし、さらに該一次均熱工程において、N2雰囲気で焼鈍する期間を一次均熱期間の20%以上90%以下とし、それ以外は非N2雰囲気で焼鈍し、鉄損W 17/50 が0.887(W/kg)以下の鋼板とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記一次均熱工程における非N2雰囲気をAr雰囲気とすることを特徴とする請求項1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記一次均熱工程における非N2雰囲気をAr雰囲気とArを含むかまたはAr以外の非N2雰囲気とし、該Ar雰囲気で焼鈍する期間を前記一次均熱期間の10%以上60%以下とすることを特徴とする請求項1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記鋼スラブが、質量%でさらに、Sb:0.01〜0.50%、Sn:0.01〜0.50%、Ni:0.005〜1.5%、Cu:0.005〜1.5%、Cr:0.005〜0.1%、P:0.005〜0.5%、Mo:0.005〜0.5%およびNb:0.0005〜0.1%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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