JP2004339195A - 低級脂肪族カルボン酸アルケニル及びアルケニルアルコールの製造方法並びに該製造方法で得られた低級脂肪族カルボン酸アルケニル及びアルケニルアルコール - Google Patents
低級脂肪族カルボン酸アルケニル及びアルケニルアルコールの製造方法並びに該製造方法で得られた低級脂肪族カルボン酸アルケニル及びアルケニルアルコール Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 高効率で長期間にわたり安定して低級脂肪族カルボン酸アルケニルの製造を可能とする方法を提供する。
【解決手段】 アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物と、周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物と、及びパラジウムとを含む触媒成分を担体に担持した触媒の存在下に、気相で、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素とを反応させて低級脂肪族カルボン酸アルケニルを製造する方法であって、低級脂肪族カルボン酸の転化率が80%以下である方法を用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】 アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物と、周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物と、及びパラジウムとを含む触媒成分を担体に担持した触媒の存在下に、気相で、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素とを反応させて低級脂肪族カルボン酸アルケニルを製造する方法であって、低級脂肪族カルボン酸の転化率が80%以下である方法を用いる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、低級脂肪族カルボン酸アルケニル及びアルケニルアルコールの製造方法並びに該製造方法で得られた低級脂肪族カルボン酸アルケニル及びアルケニルアルコールに関する。本発明は、特に、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素とからの低級脂肪族カルボン酸アルケニルの製造方法、それによって得られる低級脂肪族カルボン酸アルケニル、この低級脂肪族カルボン酸アルケニルの加水分解によるアルケニルアルコールの製造方法及びそれにより得られるアルケニルアルコールに関する。
低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素とを原料とし、気相反応によって低級脂肪族カルボン酸アルケニルを得る低級脂肪族カルボン酸アルケニルの製造方法においては、パラジウムを主触媒成分とし、助触媒としてアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物を担体に担持した触媒が広く用いられている。たとえば、特開平2−91045号公報には、パラジウム/酢酸カリウム/銅を担体に担持した触媒を用いる酢酸アリルの製造方法が開示されている。
この触媒系を用いた酢酸アリルの製造において、触媒の一成分であるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物あるいはそれに由来する成分(以下これらをあわせて「アルカリ成分」と記す。)が反応中に触媒から脱離し、流出する現象が見られ、触媒失活の一因と考えられている。脱離のメカニズムの詳細は不明であるが、その1つとしては原料中の低級脂肪族カルボン酸とアルカリ成分が反応することで新たな化合物(以下「低級脂肪族カルボン酸化合物」と記す。)を生成し、この低級脂肪族カルボン酸化合物が触媒中に存在するアルカリ成分よりも容易に触媒外に出やすくなるためと考えられる。
そのような問題を解決するため、特開平2−91045号公報には、パラジウム/酢酸カリウム/銅からなる触媒の存在下に酢酸アリルを製造する際に、触媒から脱離する酢酸カリウムの量を保つために、供給ガスに酢酸カリウムを加えて系内に混入させることが記載されている。また、特開昭61−238759号公報には、パラジウム/酢酸カリウム触媒の存在下に酢酸アリルを製造するに際して、原料酢酸に20ppmの酢酸カリウムを添加することが記載されている。
このようにして、流出するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物、特に酢酸アリルの製造の際の酢酸カリウムの流出による触媒の活性低下の防止に関しては一応の成果を得ることができた。しかし、上記公報に記載されているように、原料中に加える酢酸カリウムの量を制御するだけでは高効率で工業的に安定した製造を長期間続けることは困難な場合があった。すなわち、例えば、添加した酢酸カリウムが反応器内で部分的に堆積することにより触媒層の一部分で反応が局所的に進行し、その結果反応成績全体が悪化したり、触媒の劣化が部分的に進行して結果として触媒寿命を縮めたり、さらには前述した触媒から流出した酢酸カリウムが一部に堆積することにより反応管の閉塞や流通抵抗の上昇などを生じ、長期に安定した製造を行うことが困難な場合があった。
本発明は、より高効率でさらに長期間にわたり安定して低級脂肪族カルボン酸アルケニルの製造を可能とする方法を提供することを目的とする。
本発明は、また、この方法によって製造された低級脂肪族カルボン酸アルケニルを加水分解することによって効率的にアルケニルアルコールを得ることが可能となる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、単に流出するアルカリ成分を原料に添加してその追加を図るだけでなく、触媒に含まれているアルカリ成分に対しその流出量を制御し、その流出量に見合う量を添加することにより触媒の活性と寿命を保持し、しかもより長期に安定な運転が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明(I)は、(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物と、(b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物と、及び(c)パラジウムとを含む触媒成分を担体に担持した触媒の存在下に、気相で、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素とを反応させて低級脂肪族カルボン酸アルケニルを製造する方法であって、式(1)で示される低級脂肪族カルボン酸の転化率が80%以下であることを特徴とする、低級脂肪族カルボン酸アルケニルの製造方法である。
転化率(%)={(反応器入口での低級脂肪族カルボン酸量(mol)−反応器出口
での低級脂肪族カルボン酸量(mol))/反応器入口での低級脂肪族カルボン酸量
(mol)}×100 (1)
本発明(II)は、上記本発明(I)の製造方法により製造されたことを特徴とする低級脂肪族カルボン酸アルケニルである。
での低級脂肪族カルボン酸量(mol))/反応器入口での低級脂肪族カルボン酸量
(mol)}×100 (1)
本発明(II)は、上記本発明(I)の製造方法により製造されたことを特徴とする低級脂肪族カルボン酸アルケニルである。
また、本発明(III)は、上記本発明(II)の低級脂肪族カルボン酸アルケニルを、酸触媒の存在下に加水分解してアルケニルアルコールを得ることを含むことを特徴とするアルケニルアルコールの製造方法及びそれにより製造されたアルケニルアルコールである。
かかる構成を有する本発明は、例えば、以下の事項からなる。
〔1〕 (a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物と、(b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物と、及び(c)パラジウムとを含む触媒成分を担体に担持した触媒の存在下に、気相で、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素とを反応させて低級脂肪族カルボン酸アルケニルを製造する方法であって、式(1)で示される低級脂肪族カルボン酸の転化率が80%以下であることを特徴とする、低級脂肪族カルボン酸アルケニルの製造方法。
転化率(%)={(反応器入口での低級脂肪族カルボン酸量(mol)−反応器出口
での低級脂肪族カルボン酸量(mol))/反応器入口での低級脂肪族カルボン酸量
(mol)}×100 (1)
〔2〕 (a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物と、(b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物と、及び(c)パラジウムとを含む触媒成分を担体に担持した触媒の存在下に、気相で、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素とを反応させて低級脂肪族カルボン酸アルケニルを製造する方法であって、反応器出口での低級脂肪族カルボン酸の濃度が0.5mol%以上であることを特徴とする、低級脂肪族カルボン酸アルケニルの製造方法。
での低級脂肪族カルボン酸量(mol))/反応器入口での低級脂肪族カルボン酸量
(mol)}×100 (1)
〔2〕 (a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物と、(b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物と、及び(c)パラジウムとを含む触媒成分を担体に担持した触媒の存在下に、気相で、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素とを反応させて低級脂肪族カルボン酸アルケニルを製造する方法であって、反応器出口での低級脂肪族カルボン酸の濃度が0.5mol%以上であることを特徴とする、低級脂肪族カルボン酸アルケニルの製造方法。
〔3〕 式(2)で表される(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の時間当たり流出割合が1.0×10-5〜0.01%/hの範囲であることを特徴とする、上記〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
流出割合(%)/h={検出されたアルカリ金属又はアルカリ土類金属質量(kg/
h)/全充填触媒中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属質量(kg)}×100
(2)
〔4〕 (a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物が、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む化合物であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
h)/全充填触媒中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属質量(kg)}×100
(2)
〔4〕 (a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物が、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む化合物であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕 (a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物が、低級脂肪族カルボン酸の塩であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
〔6〕 低級脂肪族カルボン酸の塩が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸及びメタクリル酸のリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウムの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、上記〔5〕に記載の製造方法。
〔7〕 (b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物が、銅及び/又は金のいずれか1種以上の元素又はその化合物であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の製造方法。
〔8〕 水の存在下に低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素とを反応させることを特徴とする、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の製造方法。
〔9〕 上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載した製造方法により製造されたことを特徴とする低級脂肪族カルボン酸アルケニル。
〔10〕 低級脂肪族カルボン酸が酢酸であり、低級オレフィンがエチレンであり、かつ、得られる低級脂肪族カルボン酸アルケニルが酢酸ビニルであることを特徴とする、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の製造方法。
〔11〕 上記〔10〕に記載した製造方法により製造されたことを特徴とする酢酸ビニル。
〔12〕 低級脂肪族カルボン酸が酢酸であり、低級オレフィンがプロピレンであり、かつ、得られる低級脂肪族カルボン酸アルケニルが酢酸アリルであることを特徴とする、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の製造方法。
〔13〕 上記〔12〕に記載した製造方法により製造されたことを特徴とする酢酸アリル。
〔14〕 上記〔9〕に記載した低級脂肪族カルボン酸アルケニルを、酸触媒の存在下に加水分解してそのアルコールを得ることを含むことを特徴とするアルケニルアルコールの製造方法。
〔15〕 酸触媒がイオン交換樹脂であることを特徴とする、上記〔14〕に記載の製造方法。
〔16〕 低級脂肪族カルボン酸アルケニルが酢酸アリルであり、かつ、得られるアルケニアルコールがアリルアルコールであることを特徴とする、上記〔14〕又は〔15〕に記載の製造方法。
〔17〕 上記〔14〕〜〔16〕のいずれかに記載した製造方法により製造されたことを特徴とするアルケニルアルコール。
〔18〕 上記〔16〕に記載した製造方法により製造されたことを特徴とするアリルアルコール。
本発明によれば、低級脂肪族カルボン酸と低級オレフィン、酸素から低級脂肪族カルボン酸アルケニルを製造するにあたり、触媒成分であるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の反応中の流出をコントロールすることで、触媒活性を損なうことなく、長期に安定製造運転が可能である。
以下、本発明の好ましい態様についてより詳細に説明する。
本発明(I)で用いる触媒における(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物は、特に限定されるものではなく、IUPAC無機化学命名法改訂版(1989)による周期律表における第1族及び2族元素のうちの少なくとも一種を含む化合物を含む。好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物であり、より好ましくは低級脂肪族カルボン酸の塩である。さらに好ましくは、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸及びメタクリル酸のリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウムの塩の少なくとも1種であり、特に好ましくは酢酸塩であり、最も好ましくは酢酸カリウムである。
本発明(I)で用いる触媒における(b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物としては、IUPAC無機化学命名法改訂版(1989)による周期律表における11族元素単体、11族元素の硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物などが挙げられる。好ましくは銅及び金から選ばれる1種以上の元素またはその化合物である。最も好ましくは銅単体および/または金単体が挙げられる。
本発明(I)で用いる触媒における(c)パラジウムは、いずれの価数を持つものでもかまわないが, 好ましくは金属パラジウムである。ここでいう「金属パラジウム」とは、0価の価数をもつものである。通常、2価及び/又は4価のパラジウムイオンを、還元剤であるヒドラジン、水素、エチレンを用いて還元することで得ることができる。この際、全てのパラジウムが金属状態でなくても構わない。(c)パラジウムの原料には特に制限はない。金属パラジウム、金属パラジウムに転化可能なパラジウム塩を用いることも可能である。金属パラジウムに転化可能なパラジウム塩の例としては、塩化パラジウム、塩化パラジウム酸ナトリウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウムなどがあるがこれに限定されるものではない。
本発明(I)で用いる触媒で用いる担体は、一般に用いられている多孔質物質であればよい。好ましくはシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、珪藻土、モンモリロナイト、チタニア、ジルコニア等が挙げられ、より好ましくはシリカである。ここでいうシリカとは、SiO2 のみでなく、不純物がふくまれていてもよい。また、担体の形状には特に制限はなく、粉末状、球状、ペレット状等が挙げられるが、好ましくは球状である。
さらに、用いられる担体の大きさには特に制限はない。担体の大きさは形状や反応形式によって最適値が異なる。例えば、担体が球状の場合、粒子直径は特に制限はない。好ましくは1〜10mmの範囲であり、より好ましくは3〜8mmである。管状反応器に触媒を充填して反応を行う場合、粒子直径が1mmより小さいとガスを流通させるときに大きな圧力損失が生じ、有効にガス循環ができなくなる恐れがある。また、粒子直径が10mmより大きいと、触媒内部まで反応ガスが拡散できなくなり、有効に触媒反応が進まなくなる恐れがある。
担体の細孔構造は、その平均細孔直径が0.1〜1000nmにあることが好ましく、0.2〜500nmの間がより好ましく、0.5〜200nmの間が最も好ましい。平均細孔直径が0.1nmより小さいと、ガスの拡散が困難となることがある。また、1000nmより大きいと、担体の表面積が小さくなりすぎて触媒活性が低下する恐れがある。
担体と(c)パラジウムとの比率は、質量比にして、担体:(c)パラジウム=10〜1000:1の範囲が好ましく、より好ましくは担体:(c)パラジウム=30〜500:1の範囲である。担体と(c)パラジウムとの比率が、担体:(c)パラジウム=10:1よりも担体質量が小さい場合、担体に対して、パラジウム量が多くなりすぎて、パラジウム分散状態が悪化し、反応成績が低下する恐れがある。また、担体と(c)パラジウムの比率が、担体:(c)パラジウム=1000:1よりも担体質量が大きい場合、担体質量が重くなりすぎて実用的でなくなることがある。
(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物、(b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物、及び(c)パラジウムの比率としては、質量比にして(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物:(b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物:(c)パラジウム=0.1〜100:0.001〜10:1が好ましく、より好ましくは(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物:(b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物:(c)パラジウム=1〜50:0.05〜5:1である。
本発明(I)で用いる触媒は、(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物、(b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物及び(c)パラジウムを担体に担持することにより得られる。この場合、(a)、(b)、(c)成分のいづれの担持方法も特に制限はないが、例としては次の工程(1)〜工程(6)を順次に実施する方法が挙げられる。
工程(1)
パラジウム塩と(b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物の水溶液に担体を含浸させて、触媒前駆体Aを得る工程
工程(2)
工程(1)で得た触媒前駆体Aを乾燥させずにアルカリ金属塩の水溶液と接触させて、触媒前駆体Bを得る工程
工程(3)
工程(2)で得た触媒前駆体Bをヒドラジン、ホルマリン等の還元剤と接触させ、触媒前駆体Cを得る工程
工程(4)
工程(3)で得られた触媒前駆体Cを水で洗浄する工程
工程(5)
工程(4)で得られた触媒前駆体Cを(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物と接触させて触媒を得る工程
工程(6)
工程(5)で得られた触媒を乾燥する工程 本発明(I)で用いられる触媒は、例えば、上記の方法で製造された、比表面積10〜250m2 /gであり、細孔容積0.1〜1.5ml/gであるものが好適である。
パラジウム塩と(b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物の水溶液に担体を含浸させて、触媒前駆体Aを得る工程
工程(2)
工程(1)で得た触媒前駆体Aを乾燥させずにアルカリ金属塩の水溶液と接触させて、触媒前駆体Bを得る工程
工程(3)
工程(2)で得た触媒前駆体Bをヒドラジン、ホルマリン等の還元剤と接触させ、触媒前駆体Cを得る工程
工程(4)
工程(3)で得られた触媒前駆体Cを水で洗浄する工程
工程(5)
工程(4)で得られた触媒前駆体Cを(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物と接触させて触媒を得る工程
工程(6)
工程(5)で得られた触媒を乾燥する工程 本発明(I)で用いられる触媒は、例えば、上記の方法で製造された、比表面積10〜250m2 /gであり、細孔容積0.1〜1.5ml/gであるものが好適である。
本発明(I)で用いる低級オレフィンには特に制限はない。好ましくは炭素数2〜4の不飽和炭化水素であり、より好適にはエチレン、プロピレンを挙げることができる。エチレン、プロピレンについては特に制限はない。これらにはエタン、メタン、プロパン等の低級飽和炭化水素、ブタジエン等の低級不飽和炭化水素が混入していてもよい。好ましくは高純度の不飽和炭化水素である。
本発明(I)で用いる低級脂肪族カルボン酸には特に制限はない。好ましくは炭素数1〜4の低級脂肪族カルボン酸であり、さらに好ましくは蟻酸、酢酸、プロピオン酸であり、もっとも好ましくは酢酸である。低級脂肪族カルボン酸は通常市販されているものであれば用いることができる。
本発明(I)で用いる酸素は特に制限はなく、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈されたもの、例えば、空気の形として供給できるが、好適には99%以上の純度の酸素を用いるのがよい。
本発明(I)で用いる低級脂肪族カルボン酸、低級オレフィン、酸素の比率は、モル比として低級脂肪族カルボン酸:低級オレフィン:酸素=1:0.08〜16:0.01〜4であるのが好ましく、低級オレフィンがエチレンの場合は低級脂肪族カルボン酸:エチレン:酸素=1:0.2〜9:0.07〜2であるのが好適である。また、低級オレフィンがプロピレンの場合は、低級脂肪族カルボン酸:プロピレン: 酸素=1:1〜12:0.5〜2が好ましい。
本発明(I)で用いる反応原料ガスは、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素を含み、さらに必要に応じて窒素、二酸化炭素又は希ガスなどを希釈剤として使用することができる。低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素とを反応原料とすると、反応原料と希釈剤との比率は、モル比として反応原料:希釈剤=1:0.05〜9であるのが好ましく、より好ましくは反応原料:希釈剤=1:0.1〜3である。
本発明(I)で用いる反応原料ガスは、標準状態において、空間速度10〜15000hr-1、特に300〜8000hr-1で触媒に通すのが好ましい。空間速度が10hr-1より小さい場合、反応熱の除去が困難となる可能性がある。また、空間速度が15000hr-1より大きい場合、コンプレッサー等の設備が大きくなりすぎて、実用的でなくなることがある。
本発明(I)で用いる反応原料ガス中には水を0.5〜20mol%添加することができる。さらに好適には、水を1〜18mol%添加する。系内に水が存在することによって、理由は明かではないが触媒からの(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の流出が減少する。一方、水を20mol%より多く添加しても、上記効果は向上しないばかりか、酢酸アルケニルの加水分解が進む恐れがあるため、大量の水が存在するのは好ましくない。
本発明(I)の製造方法において、触媒の存在下に、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素との反応は、気相であれば、従来公知のいかなる形態で行ってもよいが、好ましくは固定床流通反応であることが望ましい。
本発明(I)の製造方法を行う際に用いられる反応器の材質については特に制限はないが、好ましくは耐食性を有する材料で構成された反応器である。
本発明(I)の製造方法を行う際の反応温度は100〜300℃であり、好適には120〜250℃である。反応温度が100℃より低い場合、反応速度が遅くなりすぎる可能性があり、好ましくない。反応温度が300℃よりも高い場合、反応熱の除熱が困難となる可能性があり、好ましくない。
本発明(I)の製造方法を行う際の反応圧力は0〜3MPaG、より好ましくは0.1〜1.5MPaGである。反応圧力が0MPaGより小さい場合、反応速度が低下する恐れがあり、好ましくない。反応圧力が3MPaGより大きい場合、反応管等の設備が高価になり、実用的ではない。
本発明(I)における低級脂肪族カルボン酸の転化率は、80%以下である。低級脂肪族カルボン酸濃度と(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の出口付近での堆積量とには相関がみられ、低級脂肪族カルボン酸濃度が低い場合、(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の堆積量が増加する。低級脂肪族カルボン酸の転化率を80%より高くすると、反応器出口付近での低級脂肪族カルボン酸濃度が低下するため、(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の堆積が起こり、反応閉塞や、触媒性能の低下を招く。
あるいは、本発明(I)の製造方法において、反応器出口での低級脂肪族カルボン酸の濃度は0.5mol%以上である。低級脂肪族カルボン酸濃度と(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の出口付近での堆積量とには相関がみられ、低級脂肪族カルボン酸濃度が低い場合、(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の堆積量が増加する。低級脂肪族カルボン酸濃度が0.5mol%より低いと、(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の堆積が起こり、反応閉塞や、触媒性能の低下を招く。
本発明(I)で用いる触媒中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の触媒からの、式(2)で規定される流出割合は、1.0×10-5〜0.01%/hの範囲であるのが好ましい。この流出割合が1.0×10-5%/hより小さい場合、触媒の細孔の閉塞や、触媒上でのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の堆積が起こる恐れがあり、結果として反応管の閉塞が起こるなどして安定に製造を行うことができなくなる可能性がある。また、0.01%/hより大きい場合、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の流出が大きく、触媒性能の低下速度が大きくなる恐れがあり、好ましくない。この場合、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の流出に見合う量のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物を反応器入口からフィードすることで活性を保つことはできるが非経済的である。
式(2)中の流出アルカリ金属又はアルカリ土類金属質量とは、反応器出口ガス中に含まれているアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の質量である。ここでいうアルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素とは、触媒成分として触媒に含まれているアルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素である。
流出割合(%)/h={検出されたアルカリ金属又はアルカリ土類金属質量(kg/
h)/全充填触媒中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属質量(kg)}×100
(2)
例えば、酢酸アリルの製造方法においては、助触媒として、一般に、酢酸カリウムが使用される。酢酸カリウムは、反応中に反応管から流出して反応器出口ガス中にカリウム又はカリウム化合物として含まれるため、反応中にも適宜に反応器に添加される。この場合、本発明の流出割合を算出する際に用いる検出されたアルカリ金属又はアルカリ土類金属質量(kg/h)は、反応器出口ガス中に含まれるカリウム質量を指す。この場合のカリウムは、触媒に担持された酢酸カリウムに由来するもの、反応中に反応器入口から添加されたカリウム化合物に由来するものどちらでもよい。検出されたカリウムがどのような形態であってもよい。
h)/全充填触媒中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属質量(kg)}×100
(2)
例えば、酢酸アリルの製造方法においては、助触媒として、一般に、酢酸カリウムが使用される。酢酸カリウムは、反応中に反応管から流出して反応器出口ガス中にカリウム又はカリウム化合物として含まれるため、反応中にも適宜に反応器に添加される。この場合、本発明の流出割合を算出する際に用いる検出されたアルカリ金属又はアルカリ土類金属質量(kg/h)は、反応器出口ガス中に含まれるカリウム質量を指す。この場合のカリウムは、触媒に担持された酢酸カリウムに由来するもの、反応中に反応器入口から添加されたカリウム化合物に由来するものどちらでもよい。検出されたカリウムがどのような形態であってもよい。
ここでいう「充填触媒」とは、反応器に充填された反応原料ガスを通す前の触媒をいう。この場合、1つの装置(プロセス)に2つ以上の反応器が直列あるいは並列に存在する場合は、その全ての反応器充填された触媒の総量を表す。
反応器出口ガス中のアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素の検出にはどのような方法を用いてもよい。例えば、反応器出口ガスを分離、精製する際に、凝縮液として検出する方法、又はイオン交換樹脂等に反応混合物を接触させ、吸着させる方法などが挙げられる。具体例としては、反応器出口ガスが凝縮する程度にまで冷却することで得られる凝縮液中のカリウム濃度を、誘導結合プラズマ発光分光分析法(以下「ICP分光分析法」と記す。)、原子吸光法等の分析手段によって定量する方法が挙げられる。ICP分光分析法を用いる定量方法としては、特に制限はないが、例えば、絶対検量線法等が挙げられる。
本発明(I)で用いる流出割合における、全充填触媒中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属質量とは、反応器に充填される全触媒中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の質量である。具体的には、反応に使用する前の、充填触媒中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の質量をいう。反応中に流出やフィード成分の堆積によって触媒中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属質量は変化するが、ここでいうアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属質量は、反応前の触媒を基に算出する。
流出割合(%/h)は、反応温度、反応圧力、原料成分等の反応条件によってコントロールが可能であり、流出割合が所望の範囲になるように反応条件を設定する。コントロール方法には特に制限はない。例えば、反応温度を上げたり、原料成分中の低級脂肪族カルボン酸の割合をあげることで、流出割合を高くすることが可能である。
触媒の活性を維持するためには、反応中に、流出したアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属質量にみあう量の(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物を、反応器入口からフィードすることが必要である。好ましくは、流出したアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属質量に対して、0.01〜200質量%のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物として添加する。特に好ましくは、流出したアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属質量に対して、等量以上の(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物を添加する。その理由は不明であるが、等量以上の(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物を添加すると、反応成績の低下が少なくなる。
(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の添加方法としてはどのような方法を採用してもよい。好ましくは、反応原料ガス中に混合する方法が挙げられる。
次に、本発明(II)について説明する。本発明(II)は、本発明(I)の低級脂肪族カルボン酸アルケニルの製造方法により製造されたことを特徴とする低級脂肪族カルボン酸アルケニルである。本発明(II)の低級脂肪族カルボン酸アルケニルは、液相ワッカー法で製造された低級脂肪族カルボン酸アルケニルと比較して、反応系内にハロゲンを添加しないため、製品にハロゲンの混入がないものであり、原料として使用した場合に、ハロゲン混入がないために装置腐食等の問題が発生しにくい。また、原料として使用する際に、ハロゲン除去等の工程が不要となり、好ましい。
次に、本発明(III)について説明する。本発明(III)は、本発明(II)の低級脂肪族カルボン酸アルケニルを、酸触媒の存在下に加水分解してアルケニルアルコールを得ることを含むことを特徴とするアルケニルアルコールの製造方法及びそれにより製造されたことを特徴とするアルケニルアルコールである。
本発明(III)で用いる低級脂肪族カルボン酸アルケニルは、本発明(I)の製造方法によって得られた低級脂肪族カルボン酸アルケニルであれば特に限定されるものではなく、不純物を含んでいてもよい。特に好ましくは、酢酸アリルである。
加水分解反応の圧力は特に制限はないが、例えば、0.0〜1.0MPaGの範囲で行うことが可能である。
加水分解反応の反応温度は、特に制限はないが、好ましくは20〜300℃、より好ましくは50〜250℃の範囲である。
本発明(III)で用いる加水分解反応は、気相反応、液相反応、固液反応などのあらゆる反応方式で行うことが可能である。
低級脂肪族カルボン酸アルケニルの加水分解反応の転化率を上げるためには、低級脂肪族カルボン酸アルケニルに水を添加して加水分解反応を行うことが好ましい。添加する水の量は, 好ましくは1.0〜60質量%、より好ましくは5〜40質量%である。
また、生成したアルケニルアルコールを反応系外に除去しながら反応を行うことが好ましい。アルケニルアルコールを反応系外に除去する方法としては、特に限定されないが、例えば、アルケニルアルコールと共沸混合物を形成しうる物質を添加し、反応中に蒸留を行いながらアルケニルアルコールを系外に除去する方法がある。
低級脂肪族カルボン酸アルケニルの加水分解反応に用いる酸触媒としては、例えば、有機酸、無機酸、固体酸、及びそれらの塩を例示することができる。具体的には、蟻酸、酢酸、プロピロン酸、酒石酸、シュウ酸、酪酸、テレフタル酸、フマル酸、ヘテロポリ酸、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、シリカアルミナ、シリカチタニア、シリカマグネシア、酸性陽イオン交換樹脂、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩及びアルミニウム塩を挙げることができるが、反応後のアルケニルアルコールとの分離の容易さや酸性度を勘案すると、固体酸性陽イオン交換樹脂が最も好適である。さらに好適には、例えば、スチレン・ジビニルベンゼン樹脂骨格でスルホン酸基等の酸性活性官能基を結合したイオン交換樹脂が挙げられる。
本発明(III)で用いられる加水分解反応装置は、特に制限はないが、固定床流通型反応装置が好ましい。また、2基以上の反応器を並列して使用することは、連続的に一定量のアルケニルアルコールを得ることができるので、好ましい。
本発明(III)で行われる酸性陽イオン交換樹脂を加水分解触媒とした固定床流通型反応装置によるアルコールの製造方法は何ら制限されるものではない。好適には、低級脂肪族カルボン酸アルケニルと水を含む反応液を反応器の下部から上昇流により反応器系内に通過させることが好ましい。この場合、反応液を上部から下部へ流通させた場合に生じる可能性があるイオン交換樹脂の凝集、反応原料の偏流が抑制される。
次に、本発明(III)のアルケニルアルコールについて説明する。このアルコールは、原料である低級脂肪族カルボン酸アルケニルにハロゲンが含まれていないので、このアルコールにもハロゲンの混入がないという利点を有する。そのため、このアルコールを原料として用いる場合、装置腐食の原因となるハロゲンを除去する等の工程が不要となり、工程が簡略化できるなどのメリットがある。
以下に本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
反応器出口ガスの分析は、以下の方法を用いて行った。
1.プロピレン
絶対検量線法を用い、流出ガスを50ml採取し、ガスクロマトグラフィーに付属した1mlのガスサンプラーに全量流し、以下の条件で分析を行った。
絶対検量線法を用い、流出ガスを50ml採取し、ガスクロマトグラフィーに付属した1mlのガスサンプラーに全量流し、以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:島津ガスクロマトグラフ用ガスサンプラ−(MGS−4:計量管1ml)付ガスクロマトグラフィー(島津製作所製GC−7B)
カラム:パックドカラムUnibeads IS 長さ3m
キャリアーガス:ヘリウム(流量35ml/min.)
温度条件:検出器温度が100℃及び気化室温度が140℃、カラム温度は140℃一定
検出器:TCD(He圧125kPaG、Current125mA)
2.酸素
絶対検量線法を用い、流出ガスを50ml採取し、ガスクロマトグラフィーに付属した1mlのガスサンプラーに全量流し、以下の条件で分析を行った。
カラム:パックドカラムUnibeads IS 長さ3m
キャリアーガス:ヘリウム(流量35ml/min.)
温度条件:検出器温度が100℃及び気化室温度が140℃、カラム温度は140℃一定
検出器:TCD(He圧125kPaG、Current125mA)
2.酸素
絶対検量線法を用い、流出ガスを50ml採取し、ガスクロマトグラフィーに付属した1mlのガスサンプラーに全量流し、以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:島津ガスクロマトグラフ用ガスサンプラ−(MGS−4:計量管1ml)付ガスクロマトグラフィー(島津製作所製GC−14B)
カラム:MS−5A IS 60/80mesh(3mmΦ×3m)
キャリアーガス:ヘリウム(流量20ml/min.)
温度条件:検出器温度、気化室温度が110℃、カラム温度は70℃一定
検出器:TCD(He圧70kPaG、Current100mA)
3.酢酸
内部標準法を用い、反応液10mlに対し、内部標準として1,4−ジオキサンを1ml添加したものを分析液として、そのうちの0.2μlを注入して以下の条件で分析を行った。
カラム:MS−5A IS 60/80mesh(3mmΦ×3m)
キャリアーガス:ヘリウム(流量20ml/min.)
温度条件:検出器温度、気化室温度が110℃、カラム温度は70℃一定
検出器:TCD(He圧70kPaG、Current100mA)
3.酢酸
内部標準法を用い、反応液10mlに対し、内部標準として1,4−ジオキサンを1ml添加したものを分析液として、そのうちの0.2μlを注入して以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:島津製作所製GC−14B
カラム:パックドカラムThermon 3000(長さ3m、内径0.3mm)
キャリアーガス:窒素(流量20ml/min.)
温度条件:検出器温度、気化室温度が180℃、カラム温度は分析開始から6分間は50℃保持、その後10℃/minの昇温速度で150℃まで昇温し、150℃で10分間保持
検出器:FID(H2 圧40kPaG、空気圧100kPaG)
4.酢酸アリル
内部標準法を用い、反応液25gに対し、内部標準として酢酸ペンチルを1g添加したものを分析液として、そのうちの0.3μlを注入して以下の条件で分析を行った。
カラム:パックドカラムThermon 3000(長さ3m、内径0.3mm)
キャリアーガス:窒素(流量20ml/min.)
温度条件:検出器温度、気化室温度が180℃、カラム温度は分析開始から6分間は50℃保持、その後10℃/minの昇温速度で150℃まで昇温し、150℃で10分間保持
検出器:FID(H2 圧40kPaG、空気圧100kPaG)
4.酢酸アリル
内部標準法を用い、反応液25gに対し、内部標準として酢酸ペンチルを1g添加したものを分析液として、そのうちの0.3μlを注入して以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:島津製作所製GC−9A
カラム:キャピラリーカラムTC−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.5μm)
キャリアーガス:窒素(流量30ml/min.)
温度条件:検出器温度、気化室温度が200℃、カラム温度は分析開始から2分間は45℃保持、その後4℃/minの昇温速度で130℃まで昇温し、130℃で15分間保持し、その後25℃/minの昇温速度で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持
検出器:FID(H2 圧60kPaG、空気圧100kPaG)
5.アリルアルコール
内部標準法を用い、反応液10mlに対し、内部標準として酢酸n−アミンをを200μl添加したものを分析液として、そのうちの0.1μlを注入して以下の条件で分析を行った。
カラム:キャピラリーカラムTC−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.5μm)
キャリアーガス:窒素(流量30ml/min.)
温度条件:検出器温度、気化室温度が200℃、カラム温度は分析開始から2分間は45℃保持、その後4℃/minの昇温速度で130℃まで昇温し、130℃で15分間保持し、その後25℃/minの昇温速度で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持
検出器:FID(H2 圧60kPaG、空気圧100kPaG)
5.アリルアルコール
内部標準法を用い、反応液10mlに対し、内部標準として酢酸n−アミンをを200μl添加したものを分析液として、そのうちの0.1μlを注入して以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:島津製作所製GC−14B
カラム:パックドカラムThermon 3000(長さ3m、内径0.3mm)
キャリアーガス:窒素(流量2.0ml/min.)
温度条件:検出器温度、気化室温度が180℃、カラム温度は分析開始から5分間は45℃保持、その後7℃/minの昇温速度で130℃まで昇温し、130℃で13分間保持
検出器:FID(H2 圧98kPaG、空気圧98kPaG)実施例1
6.酢酸ビニル
分析は内部標準法を用い、反応液6gに対し、内部標準として酢酸n−プロピルを1g添加したものを分析液として、そのうちの0.3μlを注入して以下の条件で分析した。
カラム:パックドカラムThermon 3000(長さ3m、内径0.3mm)
キャリアーガス:窒素(流量2.0ml/min.)
温度条件:検出器温度、気化室温度が180℃、カラム温度は分析開始から5分間は45℃保持、その後7℃/minの昇温速度で130℃まで昇温し、130℃で13分間保持
検出器:FID(H2 圧98kPaG、空気圧98kPaG)実施例1
6.酢酸ビニル
分析は内部標準法を用い、反応液6gに対し、内部標準として酢酸n−プロピルを1g添加したものを分析液として、そのうちの0.3μlを注入して以下の条件で分析した。
ガスクロマトグラフィー:島津製作所製GC−9A
カラム:キャピラリーカラムTC−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.5μm)
キャリアーガス:窒素(流量30ml/min.)
温度条件:検出器温度、気化室温度が200℃、カラム温度は分析開始から2分間は45℃保持、その後4℃/minの昇温速度で130℃まで昇温し、130℃で15分間保持し、その後25℃/minの昇温速度で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持
検出器:FID(H2 圧60kPaG、空気圧100kPaG)
実施例1
触媒Aの調製
塩化パラジウム酸ナトリウム結晶56.4mmol、塩化第二銅・2水和物8.50mmolおよび塩化亜鉛18.4mmolを純水に溶かした後、溶液を担体の吸水量の97%までメスアップした。
カラム:キャピラリーカラムTC−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.5μm)
キャリアーガス:窒素(流量30ml/min.)
温度条件:検出器温度、気化室温度が200℃、カラム温度は分析開始から2分間は45℃保持、その後4℃/minの昇温速度で130℃まで昇温し、130℃で15分間保持し、その後25℃/minの昇温速度で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持
検出器:FID(H2 圧60kPaG、空気圧100kPaG)
実施例1
触媒Aの調製
塩化パラジウム酸ナトリウム結晶56.4mmol、塩化第二銅・2水和物8.50mmolおよび塩化亜鉛18.4mmolを純水に溶かした後、溶液を担体の吸水量の97%までメスアップした。
上記金属塩水溶液をあらかじめ110℃、4時間乾燥させたシリカ担体(Sud−chemi AG社製KA−160)に均一含浸させた。
次に、メタ珪酸ナトリウム・9水和物を純水に溶解させ、溶液量を担体の吸水量の2倍となるように調整した。含浸した担体に溶液を加え、室温で20時間放置して触媒を得た。
上記液にさらにヒドラジン・1水和物720mmolを加え、室温で4時間攪拌したのち、触媒を純水で洗浄し、熱風乾燥機で110℃、4時間乾燥した。
次に、酢酸カリウム509mmolを純水に溶かし、担体の吸水量の約97%までメスアップした溶液を、上記触媒に均一担持した後、110℃、4時間乾燥して反応用触媒Aを得た。
反応
得られた触媒20mlを内径21.4mmのステンレス製反応管に充填し、プロピレン30mol%、酸素7.0mol%、酢酸5.5mol%、水14.0mol%、及び窒素43.5mol%の混合ガスを供給し、反応温度135℃、圧力0.8MPaGの条件で反応を行った。結果を表2に示す。反応液中の各成分はガスクロマトグラフィー分析装置を用いて濃度を測定した。酢酸転化率は、前述した式(1)を用いて算出した。流出割合(%/h)は、反応管出口ガスを冷却して得られた凝縮液中のカリウム重量および使用前触媒中のカリウム重量から前述した式(2)を用いて算出した。
得られた触媒20mlを内径21.4mmのステンレス製反応管に充填し、プロピレン30mol%、酸素7.0mol%、酢酸5.5mol%、水14.0mol%、及び窒素43.5mol%の混合ガスを供給し、反応温度135℃、圧力0.8MPaGの条件で反応を行った。結果を表2に示す。反応液中の各成分はガスクロマトグラフィー分析装置を用いて濃度を測定した。酢酸転化率は、前述した式(1)を用いて算出した。流出割合(%/h)は、反応管出口ガスを冷却して得られた凝縮液中のカリウム重量および使用前触媒中のカリウム重量から前述した式(2)を用いて算出した。
カリウムの分析
1.使用前触媒の分析
使用前の触媒をメノウ乳鉢で細かく粉砕した後、110℃で2時間乾燥させ、粉末試料を作成した。粉末試料1gに純水100mlを加え、さらに35%塩酸10mlを加えてサンドバス上で2時間煮沸した。放冷後、純水を加えて液量を500mlとした後、ろ過したろ液をセイコーインスルメンツ社製SPS1700HURを用いて、以下の条件でICP分光分析し、カリウム量を算出した。
測定方法:絶対検量線法
測光高さ:15nm
高周波出力:1.3kw
キャリア圧力:0.22MPa
プラズマ流量:16L/min
ホトマル電圧:H
補助流量:0.5L/min
1.使用前触媒の分析
使用前の触媒をメノウ乳鉢で細かく粉砕した後、110℃で2時間乾燥させ、粉末試料を作成した。粉末試料1gに純水100mlを加え、さらに35%塩酸10mlを加えてサンドバス上で2時間煮沸した。放冷後、純水を加えて液量を500mlとした後、ろ過したろ液をセイコーインスルメンツ社製SPS1700HURを用いて、以下の条件でICP分光分析し、カリウム量を算出した。
測定方法:絶対検量線法
測光高さ:15nm
高周波出力:1.3kw
キャリア圧力:0.22MPa
プラズマ流量:16L/min
ホトマル電圧:H
補助流量:0.5L/min
2.反応器出口以降で検出されたカリウムの分析
反応ガスを常温、常圧で回収し、得られた凝縮液を上記1.使用前触媒の分析の場合と同条件でICP分光分析し、カリウム量を算出した。
結果を表2に示す。
反応ガスを常温、常圧で回収し、得られた凝縮液を上記1.使用前触媒の分析の場合と同条件でICP分光分析し、カリウム量を算出した。
結果を表2に示す。
実施例2
表1に示すように酢酸転化率が78%になるように反応条件を変更した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
表1に示すように酢酸転化率が78%になるように反応条件を変更した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
実施例3
反応中に酢酸カリウムを反応管入口から流出割合(%/h)相当量をフィードしながら実施例1と同様に反応を行った。結果を表2に示す。
反応中に酢酸カリウムを反応管入口から流出割合(%/h)相当量をフィードしながら実施例1と同様に反応を行った。結果を表2に示す。
実施例4
触媒B調製
塩化パラジウム酸ナトリウム結晶47.0mmol、塩化金酸・4水和物10.2molを含有する水溶液を純水に溶かした後、溶液を担体の吸水量の90%までメスアップした。
触媒B調製
塩化パラジウム酸ナトリウム結晶47.0mmol、塩化金酸・4水和物10.2molを含有する水溶液を純水に溶かした後、溶液を担体の吸水量の90%までメスアップした。
上記金属塩水溶液をあらかじめ110℃、4時間乾燥させたシリカ担体(KA−160)に均一含浸させた。
次にメタ珪酸ナトリウム・9水和物135mmolを純水に溶解させ、溶液量は担体の吸水量の2倍となるように調製した。含浸した担体に溶液を加え、室温で20時間放置して触媒を得た。
上記液にさらにヒドラジン・1水和物538mmolを加え、室温で4時間攪拌したのち、触媒を純水で洗浄し、熱風乾燥機で110℃、4時間乾燥した。
次に酢酸カリウム33gを純水に溶かし、担体の吸水量の約90%までメスアップした溶液を、上記触媒に均一担持した後、110℃、4時間乾燥して反応用触媒Bを得た。
反応は、表1に示すように反応条件を変更した以外は、実施例1と同様に行った。分析は実施例1と同様に行った。
比較例1
原料中のプロピレン濃度を25mol%、酢酸濃度を2.5mol%、水濃度を25mol%、窒素濃度を39.5mol%、反応温度を165℃で反応を行った。結果を表2に示す。反応後触媒を抜き出したところ、反応管出口付近に酢酸カリウムが滞留しており、STYの低下率も大きかった。
原料中のプロピレン濃度を25mol%、酢酸濃度を2.5mol%、水濃度を25mol%、窒素濃度を39.5mol%、反応温度を165℃で反応を行った。結果を表2に示す。反応後触媒を抜き出したところ、反応管出口付近に酢酸カリウムが滞留しており、STYの低下率も大きかった。
本発明は、低級脂肪族カルボン酸と低級オレフィン、酸素から低級脂肪族カルボン酸アルケニルを製造するのに有用であり、触媒成分であるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の反応中の流出をコントロールすることで、触媒活性を損なうことなく、長期に安定製造運転を可能にする。
Claims (18)
- (a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物と、(b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物と、及び(c)パラジウムとを含む触媒成分を担体に担持した触媒の存在下に、気相で、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素とを反応させて低級脂肪族カルボン酸アルケニルを製造する方法であって、式(1)で示される低級脂肪族カルボン酸の転化率が80%以下であることを特徴とする、低級脂肪族カルボン酸アルケニルの製造方法。
転化率(%)={(反応器入口での低級脂肪族カルボン酸量(mol)−反応器出口
での低級脂肪族カルボン酸量(mol))/反応器入口での低級脂肪族カルボン酸量
(mol)}×100 (1) - (a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物と、(b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物と、及び(c)パラジウムとを含む触媒成分を担体に担持した触媒の存在下に、気相で、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素とを反応させて低級脂肪族カルボン酸アルケニルを製造する方法であって、反応器出口での低級脂肪族カルボン酸の濃度が0.5mol%以上であることを特徴とする、低級脂肪族カルボン酸アルケニルの製造方法。
- 式(2)で表される(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物の時間当たり流出割合が1.0×10-5〜0.01%/hの範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
流出割合(%)/h={検出されたアルカリ金属又はアルカリ土類金属質量(kg/
h)/全充填触媒中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属質量(kg)}×100
(2) - (a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物が、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- (a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物が、低級脂肪族カルボン酸の塩であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 低級脂肪族カルボン酸の塩が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸及びメタクリル酸のリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウムの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
- (b)周期律表第11族の元素又はその少なくとも1種を有する化合物が、銅及び/又は金のいずれか1種以上の元素又はその化合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 水の存在下に低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸と酸素とを反応させることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載した製造方法により製造されたことを特徴とする低級脂肪族カルボン酸アルケニル。
- 低級脂肪族カルボン酸が酢酸であり、低級オレフィンがエチレンであり、かつ、得られる低級脂肪族カルボン酸アルケニルが酢酸ビニルであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項10に記載した製造方法により製造されたことを特徴とする酢酸ビニル。
- 低級脂肪族カルボン酸が酢酸であり、低級オレフィンがプロピレンであり、かつ、得られる低級脂肪族カルボン酸アルケニルが酢酸アリルであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項12に記載した製造方法により製造されたことを特徴とする酢酸アリル。
- 請求項9に記載した低級脂肪族カルボン酸アルケニルを、酸触媒の存在下に加水分解してそのアルコールを得ることを含むことを特徴とするアルケニルアルコールの製造方法。
- 酸触媒がイオン交換樹脂であることを特徴とする、請求項14に記載の製造方法。
- 低級脂肪族カルボン酸アルケニルが酢酸アリルであり、かつ、得られるアルケニアルコールがアリルアルコールであることを特徴とする、請求項14又は15に記載の製造方法。
- 請求項14〜16のいずれかに記載した製造方法により製造されたことを特徴とするアルケニルアルコール。
- 請求項16に記載した製造方法により製造されたことを特徴とするアリルアルコール。
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