JP2004010532A - アリルアルコールの製造方法及び該製造方法により製造されたアリルアルコール - Google Patents
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Abstract
【課題】酢酸アリルの加水分解反応によりアリルアルコールを効率的に製造するプロセスの長期安定運転を達成し、安価にアリルアルコールを得ること。
【解決手段】酢酸アリル法によるアリルアルコール製造用の酢酸として、エチレンと酸素との直接反応により得られたハロゲン化物と接触することのない製造方法で得られた実質的にハロゲン化物を含有することのない酢酸を用いることを特徴とするアリルアルコールの製造方法及び該製造方法で得られたアリルアルコールの提供。
【選択図】 無し
【解決手段】酢酸アリル法によるアリルアルコール製造用の酢酸として、エチレンと酸素との直接反応により得られたハロゲン化物と接触することのない製造方法で得られた実質的にハロゲン化物を含有することのない酢酸を用いることを特徴とするアリルアルコールの製造方法及び該製造方法で得られたアリルアルコールの提供。
【選択図】 無し
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエチレンと酸素とを直接反応させて得た酢酸を用いた、プロピレンと酸素と酢酸とを直接反応させて得た酢酸アリルを用いた、アリルアルコールを製造する方法及び該製造方法により製造されたアリルアルコールに関する。
【0002】
さらに詳しくは、エチレンと酸素とを直接反応させる実質的に反応にハロゲンが関与しない製造方法により実質的にハロゲンを含まない酢酸を得、これを原料として酢酸アリルを得て、その後アリルアルコールを得ることを特徴とするアリルアルコールの製造方法、及び該製造方法で得たことを特徴とするアリルアルコールに関する。
【0003】
【従来の技術】
アリルアルコールは、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート原料、ポリマー改質用の希釈モノマー、シランカップリング剤原料として用いられている重要な工業材料である。
【0004】
アリルアルコール製造方法として工業的に用いられている方法は、アリルクロライド法、アクロレイン法、プロピレンオキサイド法、酢酸アリル法がある。
【0005】
その中でアリルクロライド法は、アリルクロライドを製造する際に使用する塩素の2分の1は塩素として回収されるが、アリルクロライドに含有された2分の1の塩素はアルカリとの反応により塩として廃棄されてしまう問題点がある。
【0006】
また、アクロレイン法は、ケトンとの併産であるため生成物の消費バランスをとる必要があることと、アリルアルコールの収率が低いという欠点がある。
【0007】
さらに、プロピレンオキサイド法は、主な副生物として、特に、n−プロパノールとアリルアルコールとの分離が困難であり、アリルアルコール中に約1%程度含有されるという問題点がある。
【0008】
これらの問題点を解決した方法として、酢酸アリル法が提案されている。この製造方法はプロピレンを酢酸の存在下で酸素により酸化して酢酸アリルを合成し、さらに加水分解することによりアリルアルコールを得る方法である。
【0009】
酢酸アリル法によるアリルアルコールの製造において、酢酸は酢酸アリルを製造するための重要な原料である。
【0010】
酢酸アリル製造用の原料として用いる酢酸の代表的な工業的製造方法の一つとして、触媒の存在下にメタノールと一酸化炭素とを反応させる方法が挙げられる。例えば、具体的には特公昭60−54294号公報を挙げることができる。
【0011】
しかし、この方法では、その酢酸製造用触媒に塩素又は沃素等のハロゲン化物を使用するために、反応器及び周辺機器に耐腐食性の高い高価な素材を使用せざるを得ず、これが酢酸の製造コスト上昇の原因になる。
【0012】
さらに、当該ハロゲン化物は少量でも酢酸アリル製造用触媒に対して阻害効果を有することが知られており(例えば、特公昭47−14208号公報)、酢酸アリル製造用の酢酸として用いるには精製工程にて該ハロゲン化物を充分に除去することが必要であり、これがさらに酢酸の製造コストを引き上げることになり、ひいてはアリルアルコールの製造コストの上昇に繋がることになる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のように酢酸アリル法による酢酸アリル製造用原料として用いる酢酸をより安価に製造することで酢酸アリル及びアリルアルコールの製造コストの低減を計り、さらには実質的にハロゲン化物を含まない酢酸を原料として用いることで酢酸アリル製造用触媒の寿命をより長く安定に保ち、得られた酢酸アリルの加水分解反応によりアリルアルコールを効率的に製造する製造プロセスの長期安定運転を達成することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する方法として、本発明者らは鋭意検討を行った。その結果、酢酸アリル法によるアリルアルコール製造用の酢酸として、エチレンと酸素との直接反応により得られたハロゲン化物と接触することのない製造方法で得られた、実質的にハロゲン化物を含有することのない酢酸を用いることにより、該ハロゲン化物による酢酸アリル製造用触媒の劣化を抑え、ひいては該触媒の寿命を延ばし、且つ該アリルアルコール製造プロセスをより長期に安定して運転できる事を可能にし、また、アリルアルコールを効率的に得られることを見いだし本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明(I)は、エチレンと酸素との直接反応により得られた実質的にハロゲン化物の存在しない酢酸を原料として用いることを特徴とするアリルアルコールの製造方法である。
【0016】
また、本発明(II)は、本発明(I)のアリルアルコール製造方法により製造されたことを特徴とするアリルアルコールである。
【0017】
さらに本発明は、例えば以下の事項からなる。
〔1〕 以下の第一工程〜第三工程を有することを特徴とするアリルアルコールの製造方法。
第一工程:触媒(A)の存在下、エチレンと酸素を反応させて酢酸を得る工程
第二工程:触媒(B)の存在下、第一工程で得た酢酸とプロピレン及び酸素を反応させて酢酸アリルを得る工程
第三工程:第二工程で得た酢酸アリルを加水分解反応によりアリルアルコールを得る工程
【0018】
〔2〕 第一工程及び/又は第二工程が気相反応であることを特徴とする〔1〕に記載のアリルアルコールの製造方法。
【0019】
〔3〕 触媒(A)が
(a)パラジウム
及び
(b)ヘテロポリ酸及び/又はその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物
を含むことを特徴とする〔1〕又は〔2〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0020】
〔4〕 (b)ヘテロポリ酸及び/又はその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物が、タングステン系ヘテロポリ酸及び/又はその塩であることを特徴とする〔3〕に記載のアリルアルコールの製造方法。
【0021】
〔5〕 タングステン系ヘテロポリ酸が、ケイタングステン酸、ホウタングステン酸及びリンタングステン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする〔4〕に記載のアリルアルコールの製造方法。
【0022】
〔6〕 タングステン系ヘテロポリ酸塩が、ケイタングステン酸、ホウタングステン酸及びリンタングステン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、銅塩及びガリウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする〔4〕又は〔5〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0023】
〔7〕 第一工程の温度が、100℃〜300℃の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0024】
〔8〕 第一工程の圧力が、0.0MPa(ゲージ圧)〜3.0MPa(ゲージ圧)の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0025】
〔9〕 水の存在下に第一工程を行うことを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0026】
〔10〕 水の濃度が、第一工程の原料ガスの総量に対して1容量%〜50容量%の範囲であることを特徴とする〔9〕に記載のアリルアルコールの製造方法。
【0027】
〔11〕 触媒(B)が
(c)パラジウム、
(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物、
及び
(e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物
を含むことを特徴とする〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0028】
〔12〕 (d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物が、銅を有する化合物であることを特徴とする〔11〕に記載のアリルアルコールの製造方法。
【0029】
〔13〕 (e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物が、酢酸カリウムであることを特徴とする〔11〕又は〔12〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0030】
〔14〕 第二工程の温度が、100℃〜300℃の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔13〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0031】
〔15〕 第二工程の圧力が、0.0MPa(ゲージ圧)〜3.0MPa(ゲージ圧)の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔14〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0032】
〔16〕 第三工程が液相反応であることを特徴とする〔1〕〜〔15〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0033】
〔17〕 第三工程の温度が、20℃〜300℃の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔16〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0034】
〔18〕 第三工程の加水分解触媒が、酸触媒であることを特徴とする〔1〕〜〔17〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0035】
〔19〕 酸触媒が酸性陽イオン交換樹脂であることを特徴とする〔18〕に記載のアリルアルコールの製造方法。
【0036】
〔20〕 第三工程の圧力が、0.0MPa(ゲージ圧)〜1.0MPa(ゲージ圧)の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔19〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0037】
〔21〕 第三工程において、加水分解反応と生成物の蒸留による分離とを同時に行うことを特徴とする〔1〕〜〔20〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0038】
〔22〕 第三工程を行う反応器が、固定床流通型反応器であることを特徴とする〔1〕〜〔21〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0039】
〔23〕 固定床流通型反応器において、酢酸アリルと水を含む反応液を反応器の上部から下降流により反応器内を通過させることを特徴とする〔22〕に記載のアリルアルコールの製造方法。
【0040】
〔24〕 〔1〕〜〔23〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法により製造されたことを特徴とするアリルアルコール。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について説明する。まず本発明(I)について説明する。
本発明(I)は、以下の第一工程〜第三工程を有することを特徴とするアリルアルコールの製造方法である。
第一工程
触媒(A)の存在下、エチレンと酸素を反応させて酢酸を得る工程
第二工程
触媒(B)の存在下、第一工程で得た酢酸とプロピレン及び酸素を反応させて酢酸アリルを得る工程
第三工程
第二工程で得た酢酸アリルを加水分解反応によりアリルアルコールを得る工程
【0042】
まず、第一工程について説明する。
第一工程で用いるエチレンとしては特に制限はない。エタン、メタン等の低級飽和炭化水素が混入していても差し支えない。好ましくは、高純度のエチレンを用いることができる。
【0043】
また、酸素にも特に制限はない。窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈されたもの、例えば、空気の形として供給できるが、反応ガスを循環させる場合には、一般には高純度、好適には99%以上の純度の酸素を用いる方が有利である。
【0044】
第一工程で得られる酢酸は、触媒(A)の存在下、エチレンと酸素との反応により得られた実質的にハロゲン化物を含有しない酢酸であれば特に制限はない。
【0045】
エチレンと酸素との反応形式には特に制限はなく従来公知の反応形式を選ぶことができる。一般には用いる触媒に最適な方法があり、その形式で行うことが好ましい。従って、例えばフランス特許第1448361号公報に開示されたパラジウム−コバルト、鉄などの金属イオン対の酸化還元触媒を用いた反応では、液相法を、特開平7−89896号公報、特開平9−67298号公報で開示されたパラジウムとヘテロポリ酸及び/又はそれらの塩から選ばれた少なくとも一種以上の化合物を含有する触媒を用いた反応では気相法を選択することができる。好ましくは生産性の点などから工業的には気相法である。
【0046】
第一工程に用いる触媒(A)としては、ハロゲン化物を含有しないものであれば特に制限はなく、エチレンと酸素とを反応させて酢酸を得る能力のあるものであれば、公知の物でかまわない。好ましくは(a)パラジウム、及び(b)ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物を含むことを特徴とする触媒である。
【0047】
(a)パラジウムとしては、いずれの価数を持つものでも構わないが、好ましくは金属パラジウムである。ここで言う「金属パラジウム」とは、0価の価数を持つものである。金属パラジウムは、通常、2価及び/又は4価のパラジウムイオンを、還元剤であるヒドラジン、水素等を用いて、還元することで得ることができる。この際、全てのパラジウムが、金属状態でなくても構わない。
【0048】
(a)パラジウムの原料に、特に制限はない。金属パラジウムを用いることはもちろん、金属パラジウムに転化可能なパラジウム化合物を用いることも可能である。金属パラジウムに転化可能なパラジウム化合物の例としては、塩化パラジウム等のハロゲン化物、酢酸パラジウム等の有機酸塩、硝酸パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム及びテトラクロロパラジウム酸ナトリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
また、(b)群化合物の一つであるヘテロポリ酸としては、二種以上の無機酸素酸が縮合したものであれば特に制限はない。そのヘテロ原子としては、リン、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、ゲルマニウム、チタニウム、ジルコニウム、セリウム、コバルト、及びクロムであり、又、ポリ原子としては、タングステン、ニオブ、タンタル等を挙げることができる。
【0050】
ケギン型構造として知られるタングステン系ヘテロポリ酸が実用上好ましいが、触媒上のヘテロポリ酸が全てこの構造を取り得なくても構わない。また、ケギン構造以外のヘテロポリ酸としては、ウエルス−ドーソン型、アンダーソン−エバンス−ペアロフ構造などが知られている。ヘテロポリ酸はまた「ポリオキソアニオン」、「ポリオキソ金属塩」または「酸化金属クラスター」として知られている。ヘテロポリ酸は、通常高分子量、例えば500〜10000の範囲の分子量を有し、二量体錯体、三量体錯体等、複数体錯体も含む。詳しくは、「ポリ酸の化学 (社団法人日本化学会編、季刊化学総説No.20、1993年)」に記載がある。
【0051】
(b)群化合物として使用可能なヘテロポリ酸の具体例としては、
ケイタングステン酸 H4[SiW12O40]・xH2O
リンタングステン酸 H3[PW12O40]・xH2O
リンモリブデン酸 H3[PMo12O40]・xH2O
ケイモリブデン酸 H4[SiMo12O40]・xH2O
ケイバナドタングステン酸 H4+n[SiVnW12−nO40]・xH2O
リンバナドタングステン酸 H3+n[PVnW12−nO40]・xH2O
リンバナドモリブデン酸 H3+n[PVnMo12−nO40]・xH2O
ケイバナドモリブデン酸 H4+n[SiVnMo12−nO40]・xH2O
ケイモリブドタングステン酸 H4[SiMonW12−nO40]・xH2O
リンモリブドタングステン酸 H3[PMonW12−nO40]・xH2O
(式中、nは1〜11の整数であり、xは1以上の整数である)
などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0052】
より具体的には、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、ホウタングステン酸を挙げることができる。さらに好ましくはケイタングステン酸、リンタングステン酸である。
【0053】
さらに(b)群化合物の一つであるヘテロポリ酸の塩は、二種以上の無機酸素酸が縮合して生成した酸の水素原子の一部、又は全部を置換した金属塩あるいはオニウム塩である。ヘテロポリ酸の水素原子を置換した金属は、周期律表における1族元素、2族元素、11族元素、及び13族元素よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の元素であり、又、ヘテロポリ酸のオニウム塩としては、アンモニウムやアミン類とのアンモニウム塩などが例示される。これらヘテロポリ酸の中でも、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、バリウム、銅、金、及びガリウムの金属塩が特に好ましい。
【0054】
(a)パラジウムと、(b)ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物の比率としては、質量比にして、(a):(b)=1:0.01〜900が好ましく、より好ましくは(a):(b)=1:0.2〜100の比率である。
【0055】
(a)パラジウムと、(b)ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物を含むことを特徴とする触媒には、さらに第三の元素を含有していてもかまわない。具体的には、例えばモリブデン、タングステン、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、セレン、テルル、クロム、マンガン、レニウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、ニッケル、金、及び亜鉛等を挙げることができる。これらは、その元素そのものであっても、その元素を含む化合物であっても良い。また、それぞれ単独であっても、二種以上が含まれていてもかまわない。
【0056】
(a)パラジウムと第三の元素の比率としては、質量比にして、(a)パラジウム:第三の元素=1:0.001〜50が好ましく、より好ましくは(a)パラジウム:第三の元素=1:0.01〜4の比率である。
【0057】
(a)パラジウム、及び(b)ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物を含むことを特徴とする触媒(A)の形態は、公知のいかなる物も使用可能である。好ましくは担持型である。
【0058】
ここで用いられる担体に特に制限はない。一般に担体として用いられている多孔質物質であれば良い。好ましくはシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、珪藻土、モンモリロナイト又はチタニア等が挙げられ、より好ましくはシリカである。また担体の形状には特に制限はない。具体的には、粉末状、球状、ペレット状等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
さらに、用いられる担体の粒子直径に特に制限はない。好ましくは、1mm〜10mmの範囲であるのが好ましく、より好ましくは3mm〜8mmである。管状反応器に触媒を充填して反応を行う場合、粒子直径が1mmより小さいとガスを流通させるときに大きな圧力損失が生じ、有効にガス循環ができなくなる恐れがある。また粒子直径が10mmより大きいと、触媒内部まで反応ガスが拡散できなくなり、有効に触媒反応が進まなくなる恐れがある。担体の細孔構造は、その細孔直径が1nm〜1000nmにあることが好ましく、2nm〜800nmの間がより好ましい。
【0060】
(a)パラジウムと、担体の質量比は、(a)パラジウム:担体=1:10〜1000が好ましく、より好ましくは(a)パラジウム:担体=1:20〜200の比率である。
【0061】
(a)パラジウム、及び(b)ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物の担体への担持の方法には、特に制限はない。いかなる方法で行っても良く、例えば金属パラジウムに転化可能なパラジウム化合物を担持する場合は、水またはアセトンなどの適当な溶媒、塩酸、硝酸、酢酸などの無機酸または有機酸、或いはそれらの溶液に該パラジウム化合物を溶解し、これに担体を含浸した後、乾燥するなどの方法で担体に担持する事が可能である。
【0062】
本発明(I)の第一工程において、酢酸を製造する際の反応温度には特に制限はない。好ましくは、100℃〜300℃であり、更に好ましくは、120℃〜250℃である。また、反応圧力は設備の点から0.0MPa(ゲージ圧)〜3.0MPa(ゲージ圧)であることが実用上有利であるが特に制限はない。より好ましくは、0.1MPa(ゲージ圧)〜1.5MPa(ゲージ圧)の範囲である。
【0063】
本発明(I)の第一工程において用いる反応原料ガスは、エチレンと酸素を含み、更に必要に応じて窒素、二酸化炭素、または、希ガスなどを稀釈剤として使用することができる。反応原料ガスに対して、エチレンは5vol%〜80vol%、好ましくは8vol%〜50vol%の割合となる量で、酸素は1vol%〜15vol%、好ましくは3vol%〜12vol%の割合となる量で酢酸生成反応器に供給する。また、触媒によっては、水を反応ガス中に存在させることにより、酢酸生成活性の向上および触媒の活性維持に効果がある。この場合、水蒸気は反応ガス中に1vol%〜50vol%の範囲で含まれることが好適であり、好ましくは5vol%〜40vol%である。
【0064】
反応原料ガスについては、標準状態において、空間速度10hr−1〜15000hr−1、特に、300hr−1〜8000hr−1で触媒(A)に通すのが好ましい。
【0065】
(a)パラジウム、及び(b)ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物を含むことを特徴とする触媒、該触媒を用いた低級脂肪族カルボン酸、特に酢酸を得る方法に関しては、詳しくは特開平7−89896号公報、特開平9−67298号公報、特開平11−347412号公報等にその記載がある。
【0066】
酢酸の製造方法としてのメタノールと一酸化炭素との反応では、その酢酸製造用触媒に塩素又は沃素等のハロゲン化物を使用するため、生成酢酸中にハロゲン化物が含まれる。当該ハロゲン化物は少量でも酢酸アリル製造用触媒に対して阻害効果を有することから、酢酸アリル製造用の酢酸として用いるには精製工程にて該ハロゲン化物を十分に除去することが必要である。精製方法としては、例えば、活性炭を用いた方法(特開2001−187342号公報)や精留塔を用いた方法(特公昭60−54294号公報)等を上げることができる。しかし、これらの精製を行うことにより酢酸の歩留まりが低下し、これが酢酸の製造コストを引き上げることになり、ひいてはアリルアルコールの製造コストの上昇に繋がることになる。
【0067】
しかし、本発明(I)の第一工程の酢酸の製造方法によれば、生成酢酸中にハロゲン化物が含まれることはなく、このためハロゲン化物を除去する精製工程は必要ない。よって酢酸アリル製造用原料として用いる酢酸を、より安価に製造し、ひいてはアリルアルコールの製造コストをより小さくすることができる。もちろん、引き続き行われる第二工程との間に、ハロゲン化物を除去することを目的とする精製工程、或いはそれ以外を目的とする精製工程があっても構わない。
【0068】
次に本発明(I)の第二工程について説明する。
第二工程は触媒(B)の存在下、第一工程で得た酢酸とプロピレン及び酸素を反応させて酢酸アリルを得る工程である。
【0069】
第二工程に用いる酢酸は、触媒(B)の存在下でエチレンと酸素との反応により得られた実質的にハロゲン化物を含有しない酢酸であれば特に制限はない。
【0070】
また、第二工程で用いるプロピレンとしては特に制限はない。プロパン、エタン等の低級飽和炭化水素が混入していても差し支えない。好ましくは、高純度のプロピレンを用いることができる。
【0071】
さらに、酸素にも特に制限はない。窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈されたもの、例えば、空気の形として供給できるが、反応ガスを循環させる場合には、一般には高純度、好適には99%以上の純度の酸素を用いる方が有利である。
【0072】
第二工程に用いる触媒(B)としては、プロピレンと酢酸と酸素とを反応させて酢酸アリルを得る能力があればいかなるものでもかまわない。好ましくは、
(c)パラジウム、
(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物、
及び
(e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物
を含有することを特徴とする触媒である。
【0073】
(c)パラジウムとしては、いずれの価数を持つものでも構わないが、好ましくは金属パラジウムである。ここで言う「金属パラジウム」とは、0価の価数を持つものである。金属パラジウムは、通常、2価及び/又は4価のパラジウムイオンを、還元剤であるヒドラジン、水素等を用いて、還元することで得ることができる。この際、全てのパラジウムが、金属状態でなくても構わない。
【0074】
(c)パラジウムの原料には特に制限はない。金属パラジウムを用いることはもちろん、金属パラジウムに転化可能なパラジウム塩を用いることも可能である。金属パラジウムに転化可能なパラジウム塩の例としては、塩化パラジウム、塩化ナトリウムパラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウムなどがあるがこれに限定されるものではない。
【0075】
また、(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物としては、これらの元素の硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物などの可溶性塩を使用することができる。一般には、入手しやすく、水溶性に優れている塩化物が望ましい。好ましい元素としては「銅」が挙げられる。
【0076】
特に、(c)パラジウム、及び(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物の比率としては、モル比にして(c)パラジウム:(d)=1:0.05〜10が好ましく、より好ましくは(c)パラジウム:(d)=1:0.1〜5の比率である。
【0077】
さらに、(e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物としては、好ましくはアルカリ金属酢酸塩であり、より具体的にはリチウム、ナトリウム、及びカリウムの酢酸塩を挙げることができる。より好ましくは酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムであり、もっとも好ましくは酢酸カリウムである。
【0078】
アルカリ金属酢酸塩の担持量については特に制限はなく、希望する担持量とするために、アルカリ金属の酢酸塩を、例えば、水溶液または酢酸の溶液として供給ガスに添加することなどのような方法によって反応器中に加えても良い。
【0079】
(c)パラジウム、(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物、及び(e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の酢酸塩を含有することを特徴とする触媒(B)の形態には特に制限はなく、公知のいかなる物も使用可能である。好ましくは担持型である。
【0080】
ここで用いられる担体に特に制限はない。一般に担体として用いられている多孔質物質であれば良い。好ましくはシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、珪藻土、モンモリロナイト又はチタニア等が挙げられ、より好ましくはシリカである。また担体の形状には特に制限はない。具体的には、粉末状、球状、ペレット状等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
担体と(c)パラジウムの比率としては、質量比にして、担体:(c)パラジウム=1:0.1〜5.0の比率が好ましく、より好ましくは、担体:(c)パラジウム=1:0.3〜1.0の比率である。
【0082】
さらに、用いられる担体の粒子直径に特に制限はない。好ましくは、1mm〜10mmの範囲であるのが好ましく、より好ましくは3mm〜8mmである。管状反応器に触媒を充填して反応を行う場合、粒子直径が1mmより小さいとガスを流通させるときに大きな圧力損失が生じ、有効にガス循環ができなくなる恐れがある。また粒子直径が10mmより大きいと、触媒内部まで反応ガスが拡散できなくなり、有効に触媒反応が進まなくなる恐れがある。担体の細孔構造は、その細孔直径が1nm〜1000nmにあることが好ましく、2nm〜800nmの間がより好ましい。
【0083】
(c)パラジウム、(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物、及び(e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の酢酸塩の担体への担持の方法には、特に制限はない。いかなる方法で行っても良い。
【0084】
具体的には例えば、パラジウム塩及び(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物の水溶液を担体に含浸させた後、アルカリ金属塩の水溶液で処理する。触媒液が含浸された担体を乾燥することなくアルカリ処理をする。アルカリ金属塩水溶液による処理時間は、触媒液が含浸された担体に含まれる触媒成分の塩が水に不溶な化合物に完全に変換されるのに必要な時間であり通常20時間で十分である。
【0085】
次に、触媒担体の表面層に沈殿された触媒成分金属の水酸化物を還元剤で処理する。還元は通常、例えば、ヒドラジンまたはホルマリンのような還元剤の添加により、液相において行われる。その後、塩素イオンが検出されなくなるまで水洗し、乾燥後、アルカリ金属酢酸塩を担持し、さらに乾燥する。以上のような方法で担持する事が可能である。もちろんこれに限定されるわけではない。
【0086】
触媒(B)の存在下に、酢酸、プロピレン及び酸素との反応を行う際の反応形式には特に制限はなく、従来公知の反応形式を選ぶことができる。一般には用いる触媒に最適な方法があり、その形式で行うことが好ましい。具体的には、例えば触媒(B)に、(c)パラジウム、(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物及び(e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の酢酸塩を含有することを特徴とする触媒を用いる場合は、当該触媒(B)を反応器に充填した固定床流通反応を採用することが実用上有利である。
【0087】
反応器の材質については特に制限はないが、好ましくは耐食性を有する材料で構成された反応器である。
【0088】
第二工程において、酢酸アリルを製造する際の反応温度に特に制限はない。好ましくは、100℃〜300℃であり、更に好ましくは、120℃〜250℃である。また、反応圧力は設備の点から0.0MPa(ゲージ圧)〜3.0MPa(ゲージ圧)であることが実用上有利であるが特に制限はない。より好ましくは、0.1MPa(ゲージ圧)〜1.5MPa(ゲージ圧)の範囲である。
【0089】
第二工程において用いる反応原料ガスは、酢酸、プロピレン及び酸素とを含み、更に必要に応じて窒素、二酸化炭素、または、希ガスなどを稀釈剤として使用することができる。反応原料ガス全量に対して、酢酸は4vol%〜20vol%、好ましくは6vol%〜10vol%の割合となる量で、プロピレンは5vol%〜50vol%、好ましくは10vol%〜40vol%の割合となる量で、また酸素は3vol%〜15vol%、好ましくは5vol%〜10vol%の割合となる量で、、酢酸アリル生成反応器に供給する。
【0090】
特に、酢酸、プロピレン、酸素の比率としては、モル比にして酢酸:プロピレン:酸素=1:0.25〜13:0.15〜4の比率が好ましく、より好ましくは、酢酸:プロピレン:酸素=1:1〜7:0.5〜2の比率である。
【0091】
反応原料ガスについては、標準状態において、空間速度10hr−1〜15000hr−1、特に、300hr−1〜8000hr−1で触媒(B)に通すのが好ましい。
【0092】
次に本発明(I)の第三工程について説明する。
第三工程は、第二工程で得た酢酸アリルを加水分解してアリルアルコールを得る工程である。
【0093】
本発明の第三工程で用いる酢酸アリルは、第二工程から得られた酢酸アリルであれば特に限定されるものでは無く、また、第二工程から得られた酢酸アリルが他の不純物を含んでいても構わない。第二工程から得られた酢酸アリルが、第二工程の原料化合物である酢酸を含んでいても、或は、酢酸アリルを公知の方法により分離精製して第三工程を行っても構わない。さらに、酢酸アリルの加水分解反応により、アリルアルコール及び酢酸を得る方法は何ら制限されるものでは無く、従来公知の方法を用いて加水分解反応を行うことが出来る。
【0094】
第三工程の加水分解反応の圧力は何ら制限されるものではないが、例えば0.0MPaG〜1.0MPaG範囲で行うことが可能である。更に、第三工程の加水分解反応はどのような反応温度で行っても良いが、十分な反応速度を得るために好ましくは20℃〜300℃、より好ましくは50℃〜250℃の範囲を例示することが出来る。
【0095】
本発明の第三工程の反応形式は特に限定されず、気相反応、液相反応、液固反応などあらゆる反応形式で行うことが可能であり、好ましい反応形式として、気相反応又は液相反応を例示することが出来る。
【0096】
第三工程の原料化合物である酢酸アリル及び水と加水分解反応の生成物であるアリルアルコール及び酢酸には反応平衡があり、十分な酢酸アリル転化率を得る為に、第二工程から得られた酢酸アリルへ水を添加して加水分解反応を行うことが好ましい。添加する水の量は特に制限されないが、第三工程における好ましい原料中の水の濃度は1.0質量%〜60質量%、より好ましくは5質量%〜40質量%である。また、一般に知られている方法を用いて、反応の平衡が生成物側へ有利になる様に生成物を随時反応系外に除去しながら反応を行うことが好ましい。生成物を反応系外に除去する方法は特に限定されないが、例えばアリルアルコールと共沸混合物を形成する成分を添加し反応中に蒸留を行いながらアリルアルコールを反応系外に除去する方法を挙げることが出来る。
【0097】
本発明の第三工程では、原料化合物である酢酸アリル及び水と、生成物である酢酸及びアリルアルコールのみで酢酸アリル加水分解反応を行うことが可能であり、又、公知のエステル加水分解触媒存在下で反応を行っても良く何ら制限されるものではないが、十分な反応速度を得る為に、公知のエステル加水分解触媒存在下で酢酸アリル加水分解を行うことが好ましい。
【0098】
本発明で用いることが可能なエステル加水分解触媒として、酸性物質、及びアルカリ性物質を例示することが出来るが、これに限定されるものでは無い。好ましい酸性物質として、有機酸、無機酸、固体酸、及びそれらの塩を例示することができ、具体的には例えば有機酸として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、シュウ酸、酪酸、テレフタル酸、及びフマル酸等、無機酸として、ヘテロポリ酸、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、臭化水素酸、及びフッ化水素酸等、固体酸として、シリカアルミナ、シリカチタニア、シリカマグネシア、酸性陽イオン交換樹脂等、又、それらの塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩を挙げることができる。
【0099】
一方、酢酸アリル加水分解反応の触媒として使用することが可能な塩基性物質は特に限定されないが、好ましい塩基性物質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及びアルカリ性陰イオン交換樹脂等を例示することが出来る。酸性物質の場合と同様にこれらの塩基性物質はそれぞれ単独で使用しても、少なくとも2種類以上を混合して用いても良いことは言うまでもない。
【0100】
本発明の第三工程では、加水分解触媒とアリルアルコールを任意の方法を用いて分離することが可能であり特に制限されるものではないが、例えば加水分解触媒として硫酸の様な均一系触媒を用いた場合、均一反応混合物からアリルアルコールと硫酸を分離する必要があり大きなエネルギーが必要である。
【0101】
酸性イオン交換樹脂に代表される固体触媒による不均一触媒反応では、濾過等の簡便な方法により反応混合物から触媒とアリルアルコールを分離することが可能であり、酢酸アリル加水分解触媒としてより好ましい。又、固体酸性物質酸性陽イオン交換樹脂は、酸性度が大きく酢酸アリル加水分解速度が良好であるといった特徴に加えて触媒寿命が長く本発明の第三工程における加水分解触媒として最も好ましい。
【0102】
用いることができる酸性陽イオン交換樹脂として、例えばスチレンとジビニルベンゼンのスルフォン化した共重合体を挙げることができる。これに制限されるものでは無いが、強酸性を示す陽イオン交換樹脂を用いることが望ましい。
【0103】
本発明の第三工程において酸性陽イオン交換樹脂を加水分解触媒として使用する際の反応装置は特に制限されるものでは無い。第三工程における加水分解反応の反応装置が固定床型反応装置の場合、酸性陽イオン交換樹脂は反応器に保持されたまま、反応装置出口から酸性陽イオン交換樹脂を含まない反応混合物が容易に得ることができる点から、固定床流通型反応装置が好ましい。
【0104】
酸性陽イオン交換樹脂を加水分解触媒とした固定床流通型反応装置によるアリルアルコールの製造方法は何ら制限されるものでは無く、酢酸アリル及び水を含んだ液体を固定床流通型反応器の上部から下降流で反応器内を通過させても、或は酢酸アリル及び水を含んだ液体を固定床流通型反応器の下部から上昇流で反応器内を通過させても構わない。一般には、酢酸アリル及び水を含んだ液体を反応器の上部から下降流で反応器内を通過させる方法が、反応混合物が自重で反応器内を通過することができ、反応器の下部から上昇流で反応器内を通過させる方法でに対してポンプ等の動力を必要としないため好ましい。
【0105】
しかし、酢酸アリルと水を含む反応原料を下降流により反応器内に通過させる方法の場合、その条件によってはイオン交換樹脂の凝集、反応原料の偏流などによる反応速度の低下、あるいは反応器内の圧力損失の増加などの現象が起こる恐れがある。これらの現象を抑制、解消する簡便な方法としては、一時的に酢酸アリルと水を含む反応液を反応器の下部から上昇流により反応器内に通過させることが有効であり好ましい。
【0106】
また、2基以上の反応器を並列して使用することは、連続的に一定量のアリルアルコールを得ることができる点からより好ましい。
【0107】
次に本発明(II)について説明する。
本発明(II)は、本発明(I)のアリルアルコールの製造方法により製造されたことを特徴とするアリルアルコールである。
【0108】
本発明(I)のアリルアルコールは、触媒(A)の存在下にエチレンと酸素との直接反応により得られた実質的にハロゲン化物の存在しない酢酸を原料として用いる製造方法により得られる物である。
【0109】
触媒(A)の存在下にエチレンと酸素とを反応させて得た酢酸は、従来のメタノールと一酸化炭素との反応による方法と異なり、原料、あるいは、触媒系から直接酢酸にハロゲン化物が持ち込まれることがない。
【0110】
この酢酸を原料として得た酢酸アリルを使用し、加水分解反応によりアリルアルコールを製造することにより、ハロゲン化物による酢酸アリル製造用触媒(B)の劣化を抑え、生産性を向上するとともに、ひいては、該触媒寿命を延ばし、かつ該アリルアルコール製造プロセスをより長期に安定して運転することができる。
【0111】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細な説明行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0112】
反応器出口ガスの分析は、以下の方法を用いて行った。
1.プロピレン
分析は絶対検量線法を用い、分析は流出ガスを50ml採取し、ガスクロマトグラフィーに付属した1mlのガスサンプラーに全量流し、以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:島津ガスクロマトグラフ用ガスサンプラー(MGS−4;計量管1.5ml)付ガスクロマトグラフィー(島津製作所製GC−7B)
カラム:パックドカラムUnibeads IS 長さ3m
キャリアーガス:ヘリウム(流量35ml/min)
温度条件:検出器温度が100℃及び気化室温度が140℃、カラム温度は140℃で一定
検出器:TCD(He圧125kPaG、Current 125mA)
【0113】
2.酸素
分析は絶対検量線法を用い、分析は流出ガスを50ml採取し、ガスクロマトグラフィーに付属した1mlのガスサンプラーに全量流し、以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:島津ガスクロマトグラフ用ガスサンプラー(MGS−4;計量管1ml)付ガスクロマトグラフィー(島津製作所製GC−14B)
カラム:MS−5A IS 60/80mesh(3mmφ×3m)
キャリアーガス:ヘリウム(流量20ml/min)
温度条件:検出器及び気化室温度が110℃、カラム温度は70℃一定
検出器:TCD(He圧70kPaG、Current 100mA)
【0114】
3.酢酸
分析は内部標準法を用い、反応液10mlに対し、内部標準として1,4−ジオキサンを1ml添加したものを分析液として、その内の0.2μlを注入して行った。
ガスクロマトグラフィー:島津製作所GC−14B
カラム:パックドカラムThermon3000(長さ3m、内径0.3mm)
キャリアーガス:窒素(流量20ml/min)
温度条件:検出器及び気化室温度は180℃で一定とし、カラム温度は分析開始から6分間は50℃に保持し、その後10℃/minの昇温速度で150℃まで昇温し、150℃で10分間保持
検出器:FID(H2圧40kPaG、空気圧100kPaG)
【0115】
4.酢酸アリル
分析は内部標準法を用い、反応液25gに対し、内部標準として酢酸ペンチルを1g添加したものを分析液として、その内の0.3μlを注入して行った。
ガスクロマトグラフィー:島津製作所GC−9A
カラム:キャピラリーカラムTC−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.5μm)
キャリアーガス:窒素(流量30ml/min)
温度条件:検出器及び気化室温度は200℃で一定とし、カラム温度は分析開始から2分間は45℃に保持し、その後4℃/minの昇温速度で130℃まで昇温し、130℃で15分間保持し、その後25℃/minの昇温速度で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持
検出器:FID(H2圧60kPaG、空気圧100kPaG)
【0116】
5.アリルアルコール
分析は内部標準法を用い、反応液10mlに対し、内部標準として酢酸n−アミンを200μl添加したものを分析液として、その内の0.1μlを注入して行った。
ガスクロマトグラフィー:島津製作所GC−14B
カラム:キャピラリーカラムTC−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.5μm)
キャリアーガス:窒素(流量2.0ml/min)
温度条件:検出器及び気化室温度は200℃で一定とし、カラム温度は分析開始から5分間は45℃に保持し、その後7℃/minの昇温速度で130℃まで昇温し、130℃で13分間保持
検出器:FID(H2圧98kPaG、空気圧98kPaG)
【0117】
酢酸製造用触媒(A)の製造方法
テトラクロロパラジウム酸ナトリウム2.81g、塩化金酸1.05g、及び塩化亜鉛0.1402gを計りとり、ここに純水を加えて溶解し45mlとし、水溶液(1)を調製した。シリカ担体(ズードヘミー社製KA−1担体、5mmφ)69.6gを水溶液(1)を調製したビーカーに加え、水溶液(1)の全量をシリカ担体に吸水した。
【0118】
別のビーカーにメタケイ酸ナトリウム8.00gを計り取り、ここに純水100gを加え溶解し水溶液(2)を調製した。水溶液(1)を吸収したシリカ担体を、水溶液(2)を調製したビーカーに加え、室温下で20時間静置した。次いでこれに、撹拌しつつ室温下で徐々にヒドラジン一水和物8.00gを加えた。ヒドラジン1水和物を添加した後4時間撹拌した。その後触媒を濾取し40時間、純水を流通させ洗浄した後、空気気流下110℃で4時間乾燥した。
【0119】
次に、亜テルル酸ナトリウム0.266gを計り取り、ここに純水45gを加えて水溶液(3)を調製した。上記金属パラジウム担持触媒を水溶液(3)に加え水溶液(3)の全量を吸収させた。その後、空気気流下110℃4時間乾燥して、テルル添加金属パラジウム担持触媒を得た。
【0120】
更に別のビーカーに、ケイタングステン酸26水和物23.98gを計り取り、ここに純水を加え溶解し45mlとし、水溶液(4)を調製した。酸性溶液で洗浄した金属パラジウム担持触媒を、水溶液(4)を調製したビーカーに加え、水溶液(4)の全量を吸収した。その後、空気気流下110℃で4時間乾燥して、酢酸製造用触媒(A)を得た。
【0121】
酢酸アリル製造用触媒(B)の製造方法
テトラクロロパラジウム酸ナトリウム(Na2PdCl4)0.912gと塩化銅(CuCl2)0.104gを含有する水溶液36ml(担体の吸水量の90%相当)に、粒径5mmのシリカ担体100mlを加え、溶液を完全に含浸させた。次にこれを水酸化ナトリウム(NaOH)0.519gを含有する水溶液80ml(担体の吸水量の2倍相当)に添加し、室温で20時間、アルカリ処理した後、ヒドラジンヒドラートを加えて還元処理した。還元後、触媒を塩素イオンが認められなくなるまで水洗し、次いで110℃で4時間乾燥後、酢酸カリウム(KOAc)3gを含有する水溶液36ml中に投入し、全容液を吸収させた後、再び110℃で20時間乾燥して酢酸アリル製造用触媒(B)を得た。
【0122】
アリルアルコール製造用触媒(C)
酢酸アリルの加水分解には強酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ:AMBERLYT31WET)を使用した。
【0123】
実施例1
酢酸製造用触媒(A)の製造方法で得た酢酸製造用触媒(A)66m3を充填した酢酸製造用反応器に、エチレン4,390kg/hr、酸素5,319kg/hrを反応温度184℃、反応圧力0.79MPaG、酢酸製造用反応器入口での水濃度30.4vol%、空間速度1,961hr−1の条件下で流通して反応を行った。酢酸製造用反応器の出口ガスの流量は以下の通りであった。
エチレン 9,800kg/hr
酸素 6,838kg/hr
酢酸 8,866kg/hr
水 31,792kg/hr
この酢酸製造用反応器出口ガスから気液分離器によりエチレン、酸素、炭酸ガスを非凝縮性物質として分離し、残った凝集性物質である酢酸、水及びその他を蒸留及び抽出操作により、最終的に酢酸純度99.9質量%の反応液(1)を8,875kg/hrで得た。
【0124】
次に、酢酸アリル製造用触媒(B)の製造方法で得た酢酸アリル製造用触媒(B)30m3を充填した酢酸アリル製造用反応器に、反応液(1)6,746kg/hr、プロピレン26,074kg/hr、酸素4,889kg/hrを反応温度158.8℃、反応圧力0.75MPaG、酢酸アリル反応器入口での水濃度14.0vol%、空間速度1,507hr−1の条件下で流通して反応を行った。酢酸アリル製造用反応器の出口ガスの流量は以下の通りであった。
プロピレン 22,736kg/hr
酸素 3,103kg/hr
酢酸アリル 7,745kg/hr
酢酸 2,226kg/hr
水 6,649kg/hr
この酢酸アリル製造用反応器出口ガスから気液分離器によりプロピレン、酸素を非凝縮性物質として分離し、残った凝集性物質である酢酸、水、酢酸アリル及びその他を含む凝縮液(1)を16,620kg/hrで得た。
【0125】
さらに、アリルアルコール製造用イオン交換樹脂(C)15m3を充填したアリルアルコール製造用反応器に、凝縮液(1)13,277kg/hrを反応温度80℃、反応圧力0.5MPaG、空間速度100hr−1の条件下で流通して反応を行った。アリルアルコール製造用反応器の出口液の流量は以下の通りであった。
アリルアルコール 2,139kg/hr
酢酸アリル 2,499kg/hr
酢酸 4,995kg/hr
水 3,990kg/hr
【0126】
比較例1
特公昭60−54294号公報の例1及び例2に記載の酢酸の精製方法を用いて、酢酸中の沃素濃度が20ppb以下の酢酸純度99.9%以上の反応液(2)を20.34kg/hrで得た。
【0127】
次に、酢酸アリル製造用触媒(B)の製造方法で得た酢酸アリル製造用触媒(B)0.05m3を充填した酢酸アリル製造用反応器に、実施例1に記載の酢酸アリル製造方法の反応ガス組成が同一となるように反応液(2)10.37kg/hr、プロピレン43.46kg/hr、酸素8.15kg/hrを反応温度158.8℃、反応圧力0.75MPaG、酢酸アリル反応器入口での水濃度14.0vol%、空間速度1,507hr−1の条件下で流通して反応を行った。酢酸アリル製造用反応器の出口ガスの流量は以下の通りであった。
プロピレン 38.28kg/hr
酸素 5.25kg/hr
酢酸アリル 11.93kg/hr
水 10.93kg/hr
酢酸 3.42kg/hr
この酢酸アリル製造用反応器出口ガスから気液分離器によりプロピレン、酸素を非凝縮性物質として分離し、残った凝集性物質である酢酸、水、酢酸アリル及びその他を含む凝縮液(1)を26.28kg/hrで得た。
【0128】
さらに、アリルアルコール製造用イオン交換樹脂(C)0.02m3を充填したアリルアルコール製造用反応器に、実施例1に記載のアリルアルコール製造方法と同じ反応条件となるように凝縮液(1)17.71kg/hrを反応温度80℃、反応圧力0.5MPaG、空間速度100hr−1の条件下で流通して反応を行った。アリルアルコール製造用反応器の出口液の流量は以下の通りであった。
アリルアルコール 2.84kg/hr
酢酸アリル 3.13kg/hr
酢酸 5.25kg/hr
水 6.48kg/hr
酢酸アリル製造用の酢酸原料として、実施例1に記載の反応液(1)と比較例1に記載の反応液(2)を用いた場合の酢酸アリル製造用触媒(B)1m3当たりの酢酸アリル製造量を比較する。反応液(1)を用いた場合は258.2kg/m3hrであり、反応液(2)を用いた場合は238.6kg/m3hrであった。本発明により製造した反応液(1)を酢酸アリル製造用の酢酸原料に用いることで、酢酸アリル製造用触媒(B)の1m3当たりの酢酸製造量が約19.6kg/m3hr向上することを確認した。さらに、実施例1に記載の凝縮液(1)と比較例1に記載の凝縮液(2)を用いた場合において、酢酸アリルからアリルアルコールへの転化率を比較する。凝縮液(1)を用いた場合は27.6%であり、凝縮液(2)を用いた場合は23.8%であった。本発明により、未反応の酢酸アリルを減少する事ができた。つまり、アリルアルコールを効率的に得ることができることを確認した。
【0129】
【発明の効果】
本発明、すなわち実質的にハロゲン化物を含有しない酢酸を得、これを原料としてプロピレンと酸素と酢酸との反応から得た酢酸アリルを加水分解することによりアリルアルコールを得る製造方法により、酢酸アリル製造用触媒の活性を長く維持し生産性を向上することが可能になることは明らかであり、また、アリルアルコールを効率的に得ることが可能になることは明らかである。また、酢酸アリル製造用触媒の触媒毒となるハロゲン化物を実質的に含まない酢酸を原料として用いることから、当該プロセスを安定して維持することが可能となることも明らかである。
【発明の属する技術分野】
本発明はエチレンと酸素とを直接反応させて得た酢酸を用いた、プロピレンと酸素と酢酸とを直接反応させて得た酢酸アリルを用いた、アリルアルコールを製造する方法及び該製造方法により製造されたアリルアルコールに関する。
【0002】
さらに詳しくは、エチレンと酸素とを直接反応させる実質的に反応にハロゲンが関与しない製造方法により実質的にハロゲンを含まない酢酸を得、これを原料として酢酸アリルを得て、その後アリルアルコールを得ることを特徴とするアリルアルコールの製造方法、及び該製造方法で得たことを特徴とするアリルアルコールに関する。
【0003】
【従来の技術】
アリルアルコールは、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート原料、ポリマー改質用の希釈モノマー、シランカップリング剤原料として用いられている重要な工業材料である。
【0004】
アリルアルコール製造方法として工業的に用いられている方法は、アリルクロライド法、アクロレイン法、プロピレンオキサイド法、酢酸アリル法がある。
【0005】
その中でアリルクロライド法は、アリルクロライドを製造する際に使用する塩素の2分の1は塩素として回収されるが、アリルクロライドに含有された2分の1の塩素はアルカリとの反応により塩として廃棄されてしまう問題点がある。
【0006】
また、アクロレイン法は、ケトンとの併産であるため生成物の消費バランスをとる必要があることと、アリルアルコールの収率が低いという欠点がある。
【0007】
さらに、プロピレンオキサイド法は、主な副生物として、特に、n−プロパノールとアリルアルコールとの分離が困難であり、アリルアルコール中に約1%程度含有されるという問題点がある。
【0008】
これらの問題点を解決した方法として、酢酸アリル法が提案されている。この製造方法はプロピレンを酢酸の存在下で酸素により酸化して酢酸アリルを合成し、さらに加水分解することによりアリルアルコールを得る方法である。
【0009】
酢酸アリル法によるアリルアルコールの製造において、酢酸は酢酸アリルを製造するための重要な原料である。
【0010】
酢酸アリル製造用の原料として用いる酢酸の代表的な工業的製造方法の一つとして、触媒の存在下にメタノールと一酸化炭素とを反応させる方法が挙げられる。例えば、具体的には特公昭60−54294号公報を挙げることができる。
【0011】
しかし、この方法では、その酢酸製造用触媒に塩素又は沃素等のハロゲン化物を使用するために、反応器及び周辺機器に耐腐食性の高い高価な素材を使用せざるを得ず、これが酢酸の製造コスト上昇の原因になる。
【0012】
さらに、当該ハロゲン化物は少量でも酢酸アリル製造用触媒に対して阻害効果を有することが知られており(例えば、特公昭47−14208号公報)、酢酸アリル製造用の酢酸として用いるには精製工程にて該ハロゲン化物を充分に除去することが必要であり、これがさらに酢酸の製造コストを引き上げることになり、ひいてはアリルアルコールの製造コストの上昇に繋がることになる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のように酢酸アリル法による酢酸アリル製造用原料として用いる酢酸をより安価に製造することで酢酸アリル及びアリルアルコールの製造コストの低減を計り、さらには実質的にハロゲン化物を含まない酢酸を原料として用いることで酢酸アリル製造用触媒の寿命をより長く安定に保ち、得られた酢酸アリルの加水分解反応によりアリルアルコールを効率的に製造する製造プロセスの長期安定運転を達成することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する方法として、本発明者らは鋭意検討を行った。その結果、酢酸アリル法によるアリルアルコール製造用の酢酸として、エチレンと酸素との直接反応により得られたハロゲン化物と接触することのない製造方法で得られた、実質的にハロゲン化物を含有することのない酢酸を用いることにより、該ハロゲン化物による酢酸アリル製造用触媒の劣化を抑え、ひいては該触媒の寿命を延ばし、且つ該アリルアルコール製造プロセスをより長期に安定して運転できる事を可能にし、また、アリルアルコールを効率的に得られることを見いだし本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明(I)は、エチレンと酸素との直接反応により得られた実質的にハロゲン化物の存在しない酢酸を原料として用いることを特徴とするアリルアルコールの製造方法である。
【0016】
また、本発明(II)は、本発明(I)のアリルアルコール製造方法により製造されたことを特徴とするアリルアルコールである。
【0017】
さらに本発明は、例えば以下の事項からなる。
〔1〕 以下の第一工程〜第三工程を有することを特徴とするアリルアルコールの製造方法。
第一工程:触媒(A)の存在下、エチレンと酸素を反応させて酢酸を得る工程
第二工程:触媒(B)の存在下、第一工程で得た酢酸とプロピレン及び酸素を反応させて酢酸アリルを得る工程
第三工程:第二工程で得た酢酸アリルを加水分解反応によりアリルアルコールを得る工程
【0018】
〔2〕 第一工程及び/又は第二工程が気相反応であることを特徴とする〔1〕に記載のアリルアルコールの製造方法。
【0019】
〔3〕 触媒(A)が
(a)パラジウム
及び
(b)ヘテロポリ酸及び/又はその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物
を含むことを特徴とする〔1〕又は〔2〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0020】
〔4〕 (b)ヘテロポリ酸及び/又はその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物が、タングステン系ヘテロポリ酸及び/又はその塩であることを特徴とする〔3〕に記載のアリルアルコールの製造方法。
【0021】
〔5〕 タングステン系ヘテロポリ酸が、ケイタングステン酸、ホウタングステン酸及びリンタングステン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする〔4〕に記載のアリルアルコールの製造方法。
【0022】
〔6〕 タングステン系ヘテロポリ酸塩が、ケイタングステン酸、ホウタングステン酸及びリンタングステン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、銅塩及びガリウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする〔4〕又は〔5〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0023】
〔7〕 第一工程の温度が、100℃〜300℃の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0024】
〔8〕 第一工程の圧力が、0.0MPa(ゲージ圧)〜3.0MPa(ゲージ圧)の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0025】
〔9〕 水の存在下に第一工程を行うことを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0026】
〔10〕 水の濃度が、第一工程の原料ガスの総量に対して1容量%〜50容量%の範囲であることを特徴とする〔9〕に記載のアリルアルコールの製造方法。
【0027】
〔11〕 触媒(B)が
(c)パラジウム、
(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物、
及び
(e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物
を含むことを特徴とする〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0028】
〔12〕 (d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物が、銅を有する化合物であることを特徴とする〔11〕に記載のアリルアルコールの製造方法。
【0029】
〔13〕 (e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物が、酢酸カリウムであることを特徴とする〔11〕又は〔12〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0030】
〔14〕 第二工程の温度が、100℃〜300℃の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔13〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0031】
〔15〕 第二工程の圧力が、0.0MPa(ゲージ圧)〜3.0MPa(ゲージ圧)の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔14〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0032】
〔16〕 第三工程が液相反応であることを特徴とする〔1〕〜〔15〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0033】
〔17〕 第三工程の温度が、20℃〜300℃の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔16〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0034】
〔18〕 第三工程の加水分解触媒が、酸触媒であることを特徴とする〔1〕〜〔17〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0035】
〔19〕 酸触媒が酸性陽イオン交換樹脂であることを特徴とする〔18〕に記載のアリルアルコールの製造方法。
【0036】
〔20〕 第三工程の圧力が、0.0MPa(ゲージ圧)〜1.0MPa(ゲージ圧)の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔19〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0037】
〔21〕 第三工程において、加水分解反応と生成物の蒸留による分離とを同時に行うことを特徴とする〔1〕〜〔20〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0038】
〔22〕 第三工程を行う反応器が、固定床流通型反応器であることを特徴とする〔1〕〜〔21〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
【0039】
〔23〕 固定床流通型反応器において、酢酸アリルと水を含む反応液を反応器の上部から下降流により反応器内を通過させることを特徴とする〔22〕に記載のアリルアルコールの製造方法。
【0040】
〔24〕 〔1〕〜〔23〕のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法により製造されたことを特徴とするアリルアルコール。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について説明する。まず本発明(I)について説明する。
本発明(I)は、以下の第一工程〜第三工程を有することを特徴とするアリルアルコールの製造方法である。
第一工程
触媒(A)の存在下、エチレンと酸素を反応させて酢酸を得る工程
第二工程
触媒(B)の存在下、第一工程で得た酢酸とプロピレン及び酸素を反応させて酢酸アリルを得る工程
第三工程
第二工程で得た酢酸アリルを加水分解反応によりアリルアルコールを得る工程
【0042】
まず、第一工程について説明する。
第一工程で用いるエチレンとしては特に制限はない。エタン、メタン等の低級飽和炭化水素が混入していても差し支えない。好ましくは、高純度のエチレンを用いることができる。
【0043】
また、酸素にも特に制限はない。窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈されたもの、例えば、空気の形として供給できるが、反応ガスを循環させる場合には、一般には高純度、好適には99%以上の純度の酸素を用いる方が有利である。
【0044】
第一工程で得られる酢酸は、触媒(A)の存在下、エチレンと酸素との反応により得られた実質的にハロゲン化物を含有しない酢酸であれば特に制限はない。
【0045】
エチレンと酸素との反応形式には特に制限はなく従来公知の反応形式を選ぶことができる。一般には用いる触媒に最適な方法があり、その形式で行うことが好ましい。従って、例えばフランス特許第1448361号公報に開示されたパラジウム−コバルト、鉄などの金属イオン対の酸化還元触媒を用いた反応では、液相法を、特開平7−89896号公報、特開平9−67298号公報で開示されたパラジウムとヘテロポリ酸及び/又はそれらの塩から選ばれた少なくとも一種以上の化合物を含有する触媒を用いた反応では気相法を選択することができる。好ましくは生産性の点などから工業的には気相法である。
【0046】
第一工程に用いる触媒(A)としては、ハロゲン化物を含有しないものであれば特に制限はなく、エチレンと酸素とを反応させて酢酸を得る能力のあるものであれば、公知の物でかまわない。好ましくは(a)パラジウム、及び(b)ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物を含むことを特徴とする触媒である。
【0047】
(a)パラジウムとしては、いずれの価数を持つものでも構わないが、好ましくは金属パラジウムである。ここで言う「金属パラジウム」とは、0価の価数を持つものである。金属パラジウムは、通常、2価及び/又は4価のパラジウムイオンを、還元剤であるヒドラジン、水素等を用いて、還元することで得ることができる。この際、全てのパラジウムが、金属状態でなくても構わない。
【0048】
(a)パラジウムの原料に、特に制限はない。金属パラジウムを用いることはもちろん、金属パラジウムに転化可能なパラジウム化合物を用いることも可能である。金属パラジウムに転化可能なパラジウム化合物の例としては、塩化パラジウム等のハロゲン化物、酢酸パラジウム等の有機酸塩、硝酸パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム及びテトラクロロパラジウム酸ナトリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
また、(b)群化合物の一つであるヘテロポリ酸としては、二種以上の無機酸素酸が縮合したものであれば特に制限はない。そのヘテロ原子としては、リン、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、ゲルマニウム、チタニウム、ジルコニウム、セリウム、コバルト、及びクロムであり、又、ポリ原子としては、タングステン、ニオブ、タンタル等を挙げることができる。
【0050】
ケギン型構造として知られるタングステン系ヘテロポリ酸が実用上好ましいが、触媒上のヘテロポリ酸が全てこの構造を取り得なくても構わない。また、ケギン構造以外のヘテロポリ酸としては、ウエルス−ドーソン型、アンダーソン−エバンス−ペアロフ構造などが知られている。ヘテロポリ酸はまた「ポリオキソアニオン」、「ポリオキソ金属塩」または「酸化金属クラスター」として知られている。ヘテロポリ酸は、通常高分子量、例えば500〜10000の範囲の分子量を有し、二量体錯体、三量体錯体等、複数体錯体も含む。詳しくは、「ポリ酸の化学 (社団法人日本化学会編、季刊化学総説No.20、1993年)」に記載がある。
【0051】
(b)群化合物として使用可能なヘテロポリ酸の具体例としては、
ケイタングステン酸 H4[SiW12O40]・xH2O
リンタングステン酸 H3[PW12O40]・xH2O
リンモリブデン酸 H3[PMo12O40]・xH2O
ケイモリブデン酸 H4[SiMo12O40]・xH2O
ケイバナドタングステン酸 H4+n[SiVnW12−nO40]・xH2O
リンバナドタングステン酸 H3+n[PVnW12−nO40]・xH2O
リンバナドモリブデン酸 H3+n[PVnMo12−nO40]・xH2O
ケイバナドモリブデン酸 H4+n[SiVnMo12−nO40]・xH2O
ケイモリブドタングステン酸 H4[SiMonW12−nO40]・xH2O
リンモリブドタングステン酸 H3[PMonW12−nO40]・xH2O
(式中、nは1〜11の整数であり、xは1以上の整数である)
などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0052】
より具体的には、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、ホウタングステン酸を挙げることができる。さらに好ましくはケイタングステン酸、リンタングステン酸である。
【0053】
さらに(b)群化合物の一つであるヘテロポリ酸の塩は、二種以上の無機酸素酸が縮合して生成した酸の水素原子の一部、又は全部を置換した金属塩あるいはオニウム塩である。ヘテロポリ酸の水素原子を置換した金属は、周期律表における1族元素、2族元素、11族元素、及び13族元素よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の元素であり、又、ヘテロポリ酸のオニウム塩としては、アンモニウムやアミン類とのアンモニウム塩などが例示される。これらヘテロポリ酸の中でも、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、バリウム、銅、金、及びガリウムの金属塩が特に好ましい。
【0054】
(a)パラジウムと、(b)ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物の比率としては、質量比にして、(a):(b)=1:0.01〜900が好ましく、より好ましくは(a):(b)=1:0.2〜100の比率である。
【0055】
(a)パラジウムと、(b)ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物を含むことを特徴とする触媒には、さらに第三の元素を含有していてもかまわない。具体的には、例えばモリブデン、タングステン、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、セレン、テルル、クロム、マンガン、レニウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、ニッケル、金、及び亜鉛等を挙げることができる。これらは、その元素そのものであっても、その元素を含む化合物であっても良い。また、それぞれ単独であっても、二種以上が含まれていてもかまわない。
【0056】
(a)パラジウムと第三の元素の比率としては、質量比にして、(a)パラジウム:第三の元素=1:0.001〜50が好ましく、より好ましくは(a)パラジウム:第三の元素=1:0.01〜4の比率である。
【0057】
(a)パラジウム、及び(b)ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物を含むことを特徴とする触媒(A)の形態は、公知のいかなる物も使用可能である。好ましくは担持型である。
【0058】
ここで用いられる担体に特に制限はない。一般に担体として用いられている多孔質物質であれば良い。好ましくはシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、珪藻土、モンモリロナイト又はチタニア等が挙げられ、より好ましくはシリカである。また担体の形状には特に制限はない。具体的には、粉末状、球状、ペレット状等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
さらに、用いられる担体の粒子直径に特に制限はない。好ましくは、1mm〜10mmの範囲であるのが好ましく、より好ましくは3mm〜8mmである。管状反応器に触媒を充填して反応を行う場合、粒子直径が1mmより小さいとガスを流通させるときに大きな圧力損失が生じ、有効にガス循環ができなくなる恐れがある。また粒子直径が10mmより大きいと、触媒内部まで反応ガスが拡散できなくなり、有効に触媒反応が進まなくなる恐れがある。担体の細孔構造は、その細孔直径が1nm〜1000nmにあることが好ましく、2nm〜800nmの間がより好ましい。
【0060】
(a)パラジウムと、担体の質量比は、(a)パラジウム:担体=1:10〜1000が好ましく、より好ましくは(a)パラジウム:担体=1:20〜200の比率である。
【0061】
(a)パラジウム、及び(b)ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物の担体への担持の方法には、特に制限はない。いかなる方法で行っても良く、例えば金属パラジウムに転化可能なパラジウム化合物を担持する場合は、水またはアセトンなどの適当な溶媒、塩酸、硝酸、酢酸などの無機酸または有機酸、或いはそれらの溶液に該パラジウム化合物を溶解し、これに担体を含浸した後、乾燥するなどの方法で担体に担持する事が可能である。
【0062】
本発明(I)の第一工程において、酢酸を製造する際の反応温度には特に制限はない。好ましくは、100℃〜300℃であり、更に好ましくは、120℃〜250℃である。また、反応圧力は設備の点から0.0MPa(ゲージ圧)〜3.0MPa(ゲージ圧)であることが実用上有利であるが特に制限はない。より好ましくは、0.1MPa(ゲージ圧)〜1.5MPa(ゲージ圧)の範囲である。
【0063】
本発明(I)の第一工程において用いる反応原料ガスは、エチレンと酸素を含み、更に必要に応じて窒素、二酸化炭素、または、希ガスなどを稀釈剤として使用することができる。反応原料ガスに対して、エチレンは5vol%〜80vol%、好ましくは8vol%〜50vol%の割合となる量で、酸素は1vol%〜15vol%、好ましくは3vol%〜12vol%の割合となる量で酢酸生成反応器に供給する。また、触媒によっては、水を反応ガス中に存在させることにより、酢酸生成活性の向上および触媒の活性維持に効果がある。この場合、水蒸気は反応ガス中に1vol%〜50vol%の範囲で含まれることが好適であり、好ましくは5vol%〜40vol%である。
【0064】
反応原料ガスについては、標準状態において、空間速度10hr−1〜15000hr−1、特に、300hr−1〜8000hr−1で触媒(A)に通すのが好ましい。
【0065】
(a)パラジウム、及び(b)ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物を含むことを特徴とする触媒、該触媒を用いた低級脂肪族カルボン酸、特に酢酸を得る方法に関しては、詳しくは特開平7−89896号公報、特開平9−67298号公報、特開平11−347412号公報等にその記載がある。
【0066】
酢酸の製造方法としてのメタノールと一酸化炭素との反応では、その酢酸製造用触媒に塩素又は沃素等のハロゲン化物を使用するため、生成酢酸中にハロゲン化物が含まれる。当該ハロゲン化物は少量でも酢酸アリル製造用触媒に対して阻害効果を有することから、酢酸アリル製造用の酢酸として用いるには精製工程にて該ハロゲン化物を十分に除去することが必要である。精製方法としては、例えば、活性炭を用いた方法(特開2001−187342号公報)や精留塔を用いた方法(特公昭60−54294号公報)等を上げることができる。しかし、これらの精製を行うことにより酢酸の歩留まりが低下し、これが酢酸の製造コストを引き上げることになり、ひいてはアリルアルコールの製造コストの上昇に繋がることになる。
【0067】
しかし、本発明(I)の第一工程の酢酸の製造方法によれば、生成酢酸中にハロゲン化物が含まれることはなく、このためハロゲン化物を除去する精製工程は必要ない。よって酢酸アリル製造用原料として用いる酢酸を、より安価に製造し、ひいてはアリルアルコールの製造コストをより小さくすることができる。もちろん、引き続き行われる第二工程との間に、ハロゲン化物を除去することを目的とする精製工程、或いはそれ以外を目的とする精製工程があっても構わない。
【0068】
次に本発明(I)の第二工程について説明する。
第二工程は触媒(B)の存在下、第一工程で得た酢酸とプロピレン及び酸素を反応させて酢酸アリルを得る工程である。
【0069】
第二工程に用いる酢酸は、触媒(B)の存在下でエチレンと酸素との反応により得られた実質的にハロゲン化物を含有しない酢酸であれば特に制限はない。
【0070】
また、第二工程で用いるプロピレンとしては特に制限はない。プロパン、エタン等の低級飽和炭化水素が混入していても差し支えない。好ましくは、高純度のプロピレンを用いることができる。
【0071】
さらに、酸素にも特に制限はない。窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈されたもの、例えば、空気の形として供給できるが、反応ガスを循環させる場合には、一般には高純度、好適には99%以上の純度の酸素を用いる方が有利である。
【0072】
第二工程に用いる触媒(B)としては、プロピレンと酢酸と酸素とを反応させて酢酸アリルを得る能力があればいかなるものでもかまわない。好ましくは、
(c)パラジウム、
(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物、
及び
(e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物
を含有することを特徴とする触媒である。
【0073】
(c)パラジウムとしては、いずれの価数を持つものでも構わないが、好ましくは金属パラジウムである。ここで言う「金属パラジウム」とは、0価の価数を持つものである。金属パラジウムは、通常、2価及び/又は4価のパラジウムイオンを、還元剤であるヒドラジン、水素等を用いて、還元することで得ることができる。この際、全てのパラジウムが、金属状態でなくても構わない。
【0074】
(c)パラジウムの原料には特に制限はない。金属パラジウムを用いることはもちろん、金属パラジウムに転化可能なパラジウム塩を用いることも可能である。金属パラジウムに転化可能なパラジウム塩の例としては、塩化パラジウム、塩化ナトリウムパラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウムなどがあるがこれに限定されるものではない。
【0075】
また、(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物としては、これらの元素の硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物などの可溶性塩を使用することができる。一般には、入手しやすく、水溶性に優れている塩化物が望ましい。好ましい元素としては「銅」が挙げられる。
【0076】
特に、(c)パラジウム、及び(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物の比率としては、モル比にして(c)パラジウム:(d)=1:0.05〜10が好ましく、より好ましくは(c)パラジウム:(d)=1:0.1〜5の比率である。
【0077】
さらに、(e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物としては、好ましくはアルカリ金属酢酸塩であり、より具体的にはリチウム、ナトリウム、及びカリウムの酢酸塩を挙げることができる。より好ましくは酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムであり、もっとも好ましくは酢酸カリウムである。
【0078】
アルカリ金属酢酸塩の担持量については特に制限はなく、希望する担持量とするために、アルカリ金属の酢酸塩を、例えば、水溶液または酢酸の溶液として供給ガスに添加することなどのような方法によって反応器中に加えても良い。
【0079】
(c)パラジウム、(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物、及び(e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の酢酸塩を含有することを特徴とする触媒(B)の形態には特に制限はなく、公知のいかなる物も使用可能である。好ましくは担持型である。
【0080】
ここで用いられる担体に特に制限はない。一般に担体として用いられている多孔質物質であれば良い。好ましくはシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、珪藻土、モンモリロナイト又はチタニア等が挙げられ、より好ましくはシリカである。また担体の形状には特に制限はない。具体的には、粉末状、球状、ペレット状等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
担体と(c)パラジウムの比率としては、質量比にして、担体:(c)パラジウム=1:0.1〜5.0の比率が好ましく、より好ましくは、担体:(c)パラジウム=1:0.3〜1.0の比率である。
【0082】
さらに、用いられる担体の粒子直径に特に制限はない。好ましくは、1mm〜10mmの範囲であるのが好ましく、より好ましくは3mm〜8mmである。管状反応器に触媒を充填して反応を行う場合、粒子直径が1mmより小さいとガスを流通させるときに大きな圧力損失が生じ、有効にガス循環ができなくなる恐れがある。また粒子直径が10mmより大きいと、触媒内部まで反応ガスが拡散できなくなり、有効に触媒反応が進まなくなる恐れがある。担体の細孔構造は、その細孔直径が1nm〜1000nmにあることが好ましく、2nm〜800nmの間がより好ましい。
【0083】
(c)パラジウム、(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物、及び(e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の酢酸塩の担体への担持の方法には、特に制限はない。いかなる方法で行っても良い。
【0084】
具体的には例えば、パラジウム塩及び(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物の水溶液を担体に含浸させた後、アルカリ金属塩の水溶液で処理する。触媒液が含浸された担体を乾燥することなくアルカリ処理をする。アルカリ金属塩水溶液による処理時間は、触媒液が含浸された担体に含まれる触媒成分の塩が水に不溶な化合物に完全に変換されるのに必要な時間であり通常20時間で十分である。
【0085】
次に、触媒担体の表面層に沈殿された触媒成分金属の水酸化物を還元剤で処理する。還元は通常、例えば、ヒドラジンまたはホルマリンのような還元剤の添加により、液相において行われる。その後、塩素イオンが検出されなくなるまで水洗し、乾燥後、アルカリ金属酢酸塩を担持し、さらに乾燥する。以上のような方法で担持する事が可能である。もちろんこれに限定されるわけではない。
【0086】
触媒(B)の存在下に、酢酸、プロピレン及び酸素との反応を行う際の反応形式には特に制限はなく、従来公知の反応形式を選ぶことができる。一般には用いる触媒に最適な方法があり、その形式で行うことが好ましい。具体的には、例えば触媒(B)に、(c)パラジウム、(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物及び(e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の酢酸塩を含有することを特徴とする触媒を用いる場合は、当該触媒(B)を反応器に充填した固定床流通反応を採用することが実用上有利である。
【0087】
反応器の材質については特に制限はないが、好ましくは耐食性を有する材料で構成された反応器である。
【0088】
第二工程において、酢酸アリルを製造する際の反応温度に特に制限はない。好ましくは、100℃〜300℃であり、更に好ましくは、120℃〜250℃である。また、反応圧力は設備の点から0.0MPa(ゲージ圧)〜3.0MPa(ゲージ圧)であることが実用上有利であるが特に制限はない。より好ましくは、0.1MPa(ゲージ圧)〜1.5MPa(ゲージ圧)の範囲である。
【0089】
第二工程において用いる反応原料ガスは、酢酸、プロピレン及び酸素とを含み、更に必要に応じて窒素、二酸化炭素、または、希ガスなどを稀釈剤として使用することができる。反応原料ガス全量に対して、酢酸は4vol%〜20vol%、好ましくは6vol%〜10vol%の割合となる量で、プロピレンは5vol%〜50vol%、好ましくは10vol%〜40vol%の割合となる量で、また酸素は3vol%〜15vol%、好ましくは5vol%〜10vol%の割合となる量で、、酢酸アリル生成反応器に供給する。
【0090】
特に、酢酸、プロピレン、酸素の比率としては、モル比にして酢酸:プロピレン:酸素=1:0.25〜13:0.15〜4の比率が好ましく、より好ましくは、酢酸:プロピレン:酸素=1:1〜7:0.5〜2の比率である。
【0091】
反応原料ガスについては、標準状態において、空間速度10hr−1〜15000hr−1、特に、300hr−1〜8000hr−1で触媒(B)に通すのが好ましい。
【0092】
次に本発明(I)の第三工程について説明する。
第三工程は、第二工程で得た酢酸アリルを加水分解してアリルアルコールを得る工程である。
【0093】
本発明の第三工程で用いる酢酸アリルは、第二工程から得られた酢酸アリルであれば特に限定されるものでは無く、また、第二工程から得られた酢酸アリルが他の不純物を含んでいても構わない。第二工程から得られた酢酸アリルが、第二工程の原料化合物である酢酸を含んでいても、或は、酢酸アリルを公知の方法により分離精製して第三工程を行っても構わない。さらに、酢酸アリルの加水分解反応により、アリルアルコール及び酢酸を得る方法は何ら制限されるものでは無く、従来公知の方法を用いて加水分解反応を行うことが出来る。
【0094】
第三工程の加水分解反応の圧力は何ら制限されるものではないが、例えば0.0MPaG〜1.0MPaG範囲で行うことが可能である。更に、第三工程の加水分解反応はどのような反応温度で行っても良いが、十分な反応速度を得るために好ましくは20℃〜300℃、より好ましくは50℃〜250℃の範囲を例示することが出来る。
【0095】
本発明の第三工程の反応形式は特に限定されず、気相反応、液相反応、液固反応などあらゆる反応形式で行うことが可能であり、好ましい反応形式として、気相反応又は液相反応を例示することが出来る。
【0096】
第三工程の原料化合物である酢酸アリル及び水と加水分解反応の生成物であるアリルアルコール及び酢酸には反応平衡があり、十分な酢酸アリル転化率を得る為に、第二工程から得られた酢酸アリルへ水を添加して加水分解反応を行うことが好ましい。添加する水の量は特に制限されないが、第三工程における好ましい原料中の水の濃度は1.0質量%〜60質量%、より好ましくは5質量%〜40質量%である。また、一般に知られている方法を用いて、反応の平衡が生成物側へ有利になる様に生成物を随時反応系外に除去しながら反応を行うことが好ましい。生成物を反応系外に除去する方法は特に限定されないが、例えばアリルアルコールと共沸混合物を形成する成分を添加し反応中に蒸留を行いながらアリルアルコールを反応系外に除去する方法を挙げることが出来る。
【0097】
本発明の第三工程では、原料化合物である酢酸アリル及び水と、生成物である酢酸及びアリルアルコールのみで酢酸アリル加水分解反応を行うことが可能であり、又、公知のエステル加水分解触媒存在下で反応を行っても良く何ら制限されるものではないが、十分な反応速度を得る為に、公知のエステル加水分解触媒存在下で酢酸アリル加水分解を行うことが好ましい。
【0098】
本発明で用いることが可能なエステル加水分解触媒として、酸性物質、及びアルカリ性物質を例示することが出来るが、これに限定されるものでは無い。好ましい酸性物質として、有機酸、無機酸、固体酸、及びそれらの塩を例示することができ、具体的には例えば有機酸として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、シュウ酸、酪酸、テレフタル酸、及びフマル酸等、無機酸として、ヘテロポリ酸、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、臭化水素酸、及びフッ化水素酸等、固体酸として、シリカアルミナ、シリカチタニア、シリカマグネシア、酸性陽イオン交換樹脂等、又、それらの塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩を挙げることができる。
【0099】
一方、酢酸アリル加水分解反応の触媒として使用することが可能な塩基性物質は特に限定されないが、好ましい塩基性物質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及びアルカリ性陰イオン交換樹脂等を例示することが出来る。酸性物質の場合と同様にこれらの塩基性物質はそれぞれ単独で使用しても、少なくとも2種類以上を混合して用いても良いことは言うまでもない。
【0100】
本発明の第三工程では、加水分解触媒とアリルアルコールを任意の方法を用いて分離することが可能であり特に制限されるものではないが、例えば加水分解触媒として硫酸の様な均一系触媒を用いた場合、均一反応混合物からアリルアルコールと硫酸を分離する必要があり大きなエネルギーが必要である。
【0101】
酸性イオン交換樹脂に代表される固体触媒による不均一触媒反応では、濾過等の簡便な方法により反応混合物から触媒とアリルアルコールを分離することが可能であり、酢酸アリル加水分解触媒としてより好ましい。又、固体酸性物質酸性陽イオン交換樹脂は、酸性度が大きく酢酸アリル加水分解速度が良好であるといった特徴に加えて触媒寿命が長く本発明の第三工程における加水分解触媒として最も好ましい。
【0102】
用いることができる酸性陽イオン交換樹脂として、例えばスチレンとジビニルベンゼンのスルフォン化した共重合体を挙げることができる。これに制限されるものでは無いが、強酸性を示す陽イオン交換樹脂を用いることが望ましい。
【0103】
本発明の第三工程において酸性陽イオン交換樹脂を加水分解触媒として使用する際の反応装置は特に制限されるものでは無い。第三工程における加水分解反応の反応装置が固定床型反応装置の場合、酸性陽イオン交換樹脂は反応器に保持されたまま、反応装置出口から酸性陽イオン交換樹脂を含まない反応混合物が容易に得ることができる点から、固定床流通型反応装置が好ましい。
【0104】
酸性陽イオン交換樹脂を加水分解触媒とした固定床流通型反応装置によるアリルアルコールの製造方法は何ら制限されるものでは無く、酢酸アリル及び水を含んだ液体を固定床流通型反応器の上部から下降流で反応器内を通過させても、或は酢酸アリル及び水を含んだ液体を固定床流通型反応器の下部から上昇流で反応器内を通過させても構わない。一般には、酢酸アリル及び水を含んだ液体を反応器の上部から下降流で反応器内を通過させる方法が、反応混合物が自重で反応器内を通過することができ、反応器の下部から上昇流で反応器内を通過させる方法でに対してポンプ等の動力を必要としないため好ましい。
【0105】
しかし、酢酸アリルと水を含む反応原料を下降流により反応器内に通過させる方法の場合、その条件によってはイオン交換樹脂の凝集、反応原料の偏流などによる反応速度の低下、あるいは反応器内の圧力損失の増加などの現象が起こる恐れがある。これらの現象を抑制、解消する簡便な方法としては、一時的に酢酸アリルと水を含む反応液を反応器の下部から上昇流により反応器内に通過させることが有効であり好ましい。
【0106】
また、2基以上の反応器を並列して使用することは、連続的に一定量のアリルアルコールを得ることができる点からより好ましい。
【0107】
次に本発明(II)について説明する。
本発明(II)は、本発明(I)のアリルアルコールの製造方法により製造されたことを特徴とするアリルアルコールである。
【0108】
本発明(I)のアリルアルコールは、触媒(A)の存在下にエチレンと酸素との直接反応により得られた実質的にハロゲン化物の存在しない酢酸を原料として用いる製造方法により得られる物である。
【0109】
触媒(A)の存在下にエチレンと酸素とを反応させて得た酢酸は、従来のメタノールと一酸化炭素との反応による方法と異なり、原料、あるいは、触媒系から直接酢酸にハロゲン化物が持ち込まれることがない。
【0110】
この酢酸を原料として得た酢酸アリルを使用し、加水分解反応によりアリルアルコールを製造することにより、ハロゲン化物による酢酸アリル製造用触媒(B)の劣化を抑え、生産性を向上するとともに、ひいては、該触媒寿命を延ばし、かつ該アリルアルコール製造プロセスをより長期に安定して運転することができる。
【0111】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細な説明行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0112】
反応器出口ガスの分析は、以下の方法を用いて行った。
1.プロピレン
分析は絶対検量線法を用い、分析は流出ガスを50ml採取し、ガスクロマトグラフィーに付属した1mlのガスサンプラーに全量流し、以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:島津ガスクロマトグラフ用ガスサンプラー(MGS−4;計量管1.5ml)付ガスクロマトグラフィー(島津製作所製GC−7B)
カラム:パックドカラムUnibeads IS 長さ3m
キャリアーガス:ヘリウム(流量35ml/min)
温度条件:検出器温度が100℃及び気化室温度が140℃、カラム温度は140℃で一定
検出器:TCD(He圧125kPaG、Current 125mA)
【0113】
2.酸素
分析は絶対検量線法を用い、分析は流出ガスを50ml採取し、ガスクロマトグラフィーに付属した1mlのガスサンプラーに全量流し、以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:島津ガスクロマトグラフ用ガスサンプラー(MGS−4;計量管1ml)付ガスクロマトグラフィー(島津製作所製GC−14B)
カラム:MS−5A IS 60/80mesh(3mmφ×3m)
キャリアーガス:ヘリウム(流量20ml/min)
温度条件:検出器及び気化室温度が110℃、カラム温度は70℃一定
検出器:TCD(He圧70kPaG、Current 100mA)
【0114】
3.酢酸
分析は内部標準法を用い、反応液10mlに対し、内部標準として1,4−ジオキサンを1ml添加したものを分析液として、その内の0.2μlを注入して行った。
ガスクロマトグラフィー:島津製作所GC−14B
カラム:パックドカラムThermon3000(長さ3m、内径0.3mm)
キャリアーガス:窒素(流量20ml/min)
温度条件:検出器及び気化室温度は180℃で一定とし、カラム温度は分析開始から6分間は50℃に保持し、その後10℃/minの昇温速度で150℃まで昇温し、150℃で10分間保持
検出器:FID(H2圧40kPaG、空気圧100kPaG)
【0115】
4.酢酸アリル
分析は内部標準法を用い、反応液25gに対し、内部標準として酢酸ペンチルを1g添加したものを分析液として、その内の0.3μlを注入して行った。
ガスクロマトグラフィー:島津製作所GC−9A
カラム:キャピラリーカラムTC−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.5μm)
キャリアーガス:窒素(流量30ml/min)
温度条件:検出器及び気化室温度は200℃で一定とし、カラム温度は分析開始から2分間は45℃に保持し、その後4℃/minの昇温速度で130℃まで昇温し、130℃で15分間保持し、その後25℃/minの昇温速度で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持
検出器:FID(H2圧60kPaG、空気圧100kPaG)
【0116】
5.アリルアルコール
分析は内部標準法を用い、反応液10mlに対し、内部標準として酢酸n−アミンを200μl添加したものを分析液として、その内の0.1μlを注入して行った。
ガスクロマトグラフィー:島津製作所GC−14B
カラム:キャピラリーカラムTC−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.5μm)
キャリアーガス:窒素(流量2.0ml/min)
温度条件:検出器及び気化室温度は200℃で一定とし、カラム温度は分析開始から5分間は45℃に保持し、その後7℃/minの昇温速度で130℃まで昇温し、130℃で13分間保持
検出器:FID(H2圧98kPaG、空気圧98kPaG)
【0117】
酢酸製造用触媒(A)の製造方法
テトラクロロパラジウム酸ナトリウム2.81g、塩化金酸1.05g、及び塩化亜鉛0.1402gを計りとり、ここに純水を加えて溶解し45mlとし、水溶液(1)を調製した。シリカ担体(ズードヘミー社製KA−1担体、5mmφ)69.6gを水溶液(1)を調製したビーカーに加え、水溶液(1)の全量をシリカ担体に吸水した。
【0118】
別のビーカーにメタケイ酸ナトリウム8.00gを計り取り、ここに純水100gを加え溶解し水溶液(2)を調製した。水溶液(1)を吸収したシリカ担体を、水溶液(2)を調製したビーカーに加え、室温下で20時間静置した。次いでこれに、撹拌しつつ室温下で徐々にヒドラジン一水和物8.00gを加えた。ヒドラジン1水和物を添加した後4時間撹拌した。その後触媒を濾取し40時間、純水を流通させ洗浄した後、空気気流下110℃で4時間乾燥した。
【0119】
次に、亜テルル酸ナトリウム0.266gを計り取り、ここに純水45gを加えて水溶液(3)を調製した。上記金属パラジウム担持触媒を水溶液(3)に加え水溶液(3)の全量を吸収させた。その後、空気気流下110℃4時間乾燥して、テルル添加金属パラジウム担持触媒を得た。
【0120】
更に別のビーカーに、ケイタングステン酸26水和物23.98gを計り取り、ここに純水を加え溶解し45mlとし、水溶液(4)を調製した。酸性溶液で洗浄した金属パラジウム担持触媒を、水溶液(4)を調製したビーカーに加え、水溶液(4)の全量を吸収した。その後、空気気流下110℃で4時間乾燥して、酢酸製造用触媒(A)を得た。
【0121】
酢酸アリル製造用触媒(B)の製造方法
テトラクロロパラジウム酸ナトリウム(Na2PdCl4)0.912gと塩化銅(CuCl2)0.104gを含有する水溶液36ml(担体の吸水量の90%相当)に、粒径5mmのシリカ担体100mlを加え、溶液を完全に含浸させた。次にこれを水酸化ナトリウム(NaOH)0.519gを含有する水溶液80ml(担体の吸水量の2倍相当)に添加し、室温で20時間、アルカリ処理した後、ヒドラジンヒドラートを加えて還元処理した。還元後、触媒を塩素イオンが認められなくなるまで水洗し、次いで110℃で4時間乾燥後、酢酸カリウム(KOAc)3gを含有する水溶液36ml中に投入し、全容液を吸収させた後、再び110℃で20時間乾燥して酢酸アリル製造用触媒(B)を得た。
【0122】
アリルアルコール製造用触媒(C)
酢酸アリルの加水分解には強酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ:AMBERLYT31WET)を使用した。
【0123】
実施例1
酢酸製造用触媒(A)の製造方法で得た酢酸製造用触媒(A)66m3を充填した酢酸製造用反応器に、エチレン4,390kg/hr、酸素5,319kg/hrを反応温度184℃、反応圧力0.79MPaG、酢酸製造用反応器入口での水濃度30.4vol%、空間速度1,961hr−1の条件下で流通して反応を行った。酢酸製造用反応器の出口ガスの流量は以下の通りであった。
エチレン 9,800kg/hr
酸素 6,838kg/hr
酢酸 8,866kg/hr
水 31,792kg/hr
この酢酸製造用反応器出口ガスから気液分離器によりエチレン、酸素、炭酸ガスを非凝縮性物質として分離し、残った凝集性物質である酢酸、水及びその他を蒸留及び抽出操作により、最終的に酢酸純度99.9質量%の反応液(1)を8,875kg/hrで得た。
【0124】
次に、酢酸アリル製造用触媒(B)の製造方法で得た酢酸アリル製造用触媒(B)30m3を充填した酢酸アリル製造用反応器に、反応液(1)6,746kg/hr、プロピレン26,074kg/hr、酸素4,889kg/hrを反応温度158.8℃、反応圧力0.75MPaG、酢酸アリル反応器入口での水濃度14.0vol%、空間速度1,507hr−1の条件下で流通して反応を行った。酢酸アリル製造用反応器の出口ガスの流量は以下の通りであった。
プロピレン 22,736kg/hr
酸素 3,103kg/hr
酢酸アリル 7,745kg/hr
酢酸 2,226kg/hr
水 6,649kg/hr
この酢酸アリル製造用反応器出口ガスから気液分離器によりプロピレン、酸素を非凝縮性物質として分離し、残った凝集性物質である酢酸、水、酢酸アリル及びその他を含む凝縮液(1)を16,620kg/hrで得た。
【0125】
さらに、アリルアルコール製造用イオン交換樹脂(C)15m3を充填したアリルアルコール製造用反応器に、凝縮液(1)13,277kg/hrを反応温度80℃、反応圧力0.5MPaG、空間速度100hr−1の条件下で流通して反応を行った。アリルアルコール製造用反応器の出口液の流量は以下の通りであった。
アリルアルコール 2,139kg/hr
酢酸アリル 2,499kg/hr
酢酸 4,995kg/hr
水 3,990kg/hr
【0126】
比較例1
特公昭60−54294号公報の例1及び例2に記載の酢酸の精製方法を用いて、酢酸中の沃素濃度が20ppb以下の酢酸純度99.9%以上の反応液(2)を20.34kg/hrで得た。
【0127】
次に、酢酸アリル製造用触媒(B)の製造方法で得た酢酸アリル製造用触媒(B)0.05m3を充填した酢酸アリル製造用反応器に、実施例1に記載の酢酸アリル製造方法の反応ガス組成が同一となるように反応液(2)10.37kg/hr、プロピレン43.46kg/hr、酸素8.15kg/hrを反応温度158.8℃、反応圧力0.75MPaG、酢酸アリル反応器入口での水濃度14.0vol%、空間速度1,507hr−1の条件下で流通して反応を行った。酢酸アリル製造用反応器の出口ガスの流量は以下の通りであった。
プロピレン 38.28kg/hr
酸素 5.25kg/hr
酢酸アリル 11.93kg/hr
水 10.93kg/hr
酢酸 3.42kg/hr
この酢酸アリル製造用反応器出口ガスから気液分離器によりプロピレン、酸素を非凝縮性物質として分離し、残った凝集性物質である酢酸、水、酢酸アリル及びその他を含む凝縮液(1)を26.28kg/hrで得た。
【0128】
さらに、アリルアルコール製造用イオン交換樹脂(C)0.02m3を充填したアリルアルコール製造用反応器に、実施例1に記載のアリルアルコール製造方法と同じ反応条件となるように凝縮液(1)17.71kg/hrを反応温度80℃、反応圧力0.5MPaG、空間速度100hr−1の条件下で流通して反応を行った。アリルアルコール製造用反応器の出口液の流量は以下の通りであった。
アリルアルコール 2.84kg/hr
酢酸アリル 3.13kg/hr
酢酸 5.25kg/hr
水 6.48kg/hr
酢酸アリル製造用の酢酸原料として、実施例1に記載の反応液(1)と比較例1に記載の反応液(2)を用いた場合の酢酸アリル製造用触媒(B)1m3当たりの酢酸アリル製造量を比較する。反応液(1)を用いた場合は258.2kg/m3hrであり、反応液(2)を用いた場合は238.6kg/m3hrであった。本発明により製造した反応液(1)を酢酸アリル製造用の酢酸原料に用いることで、酢酸アリル製造用触媒(B)の1m3当たりの酢酸製造量が約19.6kg/m3hr向上することを確認した。さらに、実施例1に記載の凝縮液(1)と比較例1に記載の凝縮液(2)を用いた場合において、酢酸アリルからアリルアルコールへの転化率を比較する。凝縮液(1)を用いた場合は27.6%であり、凝縮液(2)を用いた場合は23.8%であった。本発明により、未反応の酢酸アリルを減少する事ができた。つまり、アリルアルコールを効率的に得ることができることを確認した。
【0129】
【発明の効果】
本発明、すなわち実質的にハロゲン化物を含有しない酢酸を得、これを原料としてプロピレンと酸素と酢酸との反応から得た酢酸アリルを加水分解することによりアリルアルコールを得る製造方法により、酢酸アリル製造用触媒の活性を長く維持し生産性を向上することが可能になることは明らかであり、また、アリルアルコールを効率的に得ることが可能になることは明らかである。また、酢酸アリル製造用触媒の触媒毒となるハロゲン化物を実質的に含まない酢酸を原料として用いることから、当該プロセスを安定して維持することが可能となることも明らかである。
Claims (24)
- 以下の第一工程〜第三工程を有することを特徴とするアリルアルコールの製造方法。
第一工程:触媒(A)の存在下、エチレンと酸素を反応させて酢酸を得る工程
第二工程:触媒(B)の存在下、第一工程で得た酢酸とプロピレン及び酸素を反応させて酢酸アリルを得る工程
第三工程:第二工程で得た酢酸アリルを加水分解反応によりアリルアルコールを得る工程 - 第一工程及び/又は第二工程が気相反応であることを特徴とする請求項1に記載のアリルアルコールの製造方法。
- 触媒(A)が
(a)パラジウム
及び
(b)ヘテロポリ酸及び/又はその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物
を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。 - (b)ヘテロポリ酸及び/又はその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種以上の化合物が、タングステン系ヘテロポリ酸及び/又はその塩であることを特徴とする請求項3に記載のアリルアルコールの製造方法。
- タングステン系ヘテロポリ酸が、ケイタングステン酸、ホウタングステン酸及びリンタングステン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項4に記載のアリルアルコールの製造方法。
- タングステン系ヘテロポリ酸塩が、ケイタングステン酸、ホウタングステン酸及びリンタングステン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、銅塩及びガリウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項4又は請求項5のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
- 第一工程の温度が、100℃〜300℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
- 第一工程の圧力が、0.0MPa(ゲージ圧)〜3.0MPa(ゲージ圧)の範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
- 水の存在下に第一工程を行うことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
- 水の濃度が、第一工程の原料ガスの総量に対して1容量%〜50容量%の範囲であることを特徴とする請求項9に記載のアリルアルコールの製造方法。
- 触媒(B)が
(c)パラジウム、
(d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物、
及び
(e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物
を含むことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。 - (d)銅、鉛、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物が、銅を有する化合物であることを特徴とする請求項11に記載のアリルアルコールの製造方法。
- (e)アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物が、酢酸カリウムであることを特徴とする請求項11又は請求項12のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
- 第二工程の温度が、100℃〜300℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
- 第二工程の圧力が、0.0MPa(ゲージ圧)〜3.0MPa(ゲージ圧)の範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
- 第三工程が液相反応であることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
- 第三工程の温度が、20℃〜300℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項16のいずれかに記載のアリルアルコール製造方法。
- 第三工程の加水分解触媒が、酸触媒であることを特徴とする請求項1〜請求項17のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
- 酸触媒が酸性陽イオン交換樹脂あることを特徴とする請求項18に記載のアリルアルコールの製造方法。
- 第三工程の圧力が、0.0MPa(ゲージ圧)〜1.0MPa(ゲージ圧)の範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項19のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
- 第三工程において、加水分解反応と生成物の蒸留による分離とを同時に行うことを特徴とする請求項1〜請求項20のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
- 第三工程を行う反応器が、固定床流通型反応器であることを特徴とする請求項1〜請求項21のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法。
- 固定床流通型反応器において、酢酸アリルと水を含む反応液を反応器の上部から下降流により反応器内を通過させることを特徴とする請求項22に記載のアリルアルコールの製造方法。
- 請求項1〜請求項23のいずれかに記載のアリルアルコールの製造方法により製造されたことを特徴とするアリルアルコール。
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- 2002-06-06 JP JP2002165475A patent/JP2004010532A/ja active Pending
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