JP2004339163A - 光学活性ナフチルアルコール類、その製造方法およびその中間体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一般式(1)
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表わし、R5は炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基または置換されていてもよいアラルキル基を表わす。ここで、R5が炭素数1〜6のアルキル基を表わす場合は、同じ炭素原子に結合する二つのR5が結合してその結合炭素原子とともに環を形成してもよい。*は不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性ナフチルアルコール類。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性ナフチルアルコール類、その製造方法およびその中間体に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学活性なアミノアルコールは、例えば不斉シクロプロパン化反応の触媒の配位子として有用な光学活性なビスオキサゾリン化合物の合成原料として有用である(例えば特許文献1、非特許文献1参照。)。これまで知られている光学活性なビスオキサゾリン化合物を配位子とした触媒を用いた場合、ジアステレオ選択性(トランス体/シス体比)やエナンチオ選択性は比較的良好であるものの、目的とする光学活性なシクロプロパン化合物の収率が80%程度であり、工業的な観点からは、ジアステレオ選択性(トランス体/シス体比)やエナンチオ選択性が良好で、しかもさらに収率よく光学活性なシクロプロパン化合物を得ることが可能な、より高性能の触媒あるいは配位子が望まれていた。そのためには、その合成原料となる新規な光学活性なアミノアルコールの開発が重要であった。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−171874号公報
【非特許文献1】
Tetrahedron Lett.,32,7373(1991)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況のもと、本発明者らは、ジアステレオ選択性(トランス体/シス体比)やエナンチオ選択性が良好で、さらに収率よく光学活性なシクロプロパン化合物を製造することができる不斉銅触媒の配位子に誘導可能な光学活性アミノアルコールを開発すべく鋭意検討したところ、ナフチルグリシン類から合成されるアミノ基が結合した炭素原子にナフチル基を有する新規な光学活性ナフチルアルコール類が、4位にナフチル基を有する光学活性ビスオキサゾリン化合物に容易に誘導可能であり、4位にナフチル基を有する光学活性ビスオキサゾリン化合物が不斉銅触媒の配位子として有効であることを見出し、本発明に至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、一般式(1)
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表わし、R5は炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基または置換されていてもよいアラルキル基を表わす。ここで、R5が炭素数1〜6のアルキル基を表わす場合は、同じ炭素原子に結合する二つのR5が結合してその結合炭素原子とともに環を形成してもよい。*は不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性ナフチルアルコール類、その製造方法およびその中間体を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の新規な化合物である一般式(1)
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表わし、R5は炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基または置換されていてもよいアラルキル基を表わす。ここで、R5が炭素数1〜6のアルキル基を表わす場合は、同じ炭素原子に結合する二つのR5が結合してその結合炭素原子とともに環を形成してもよい。*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性ナフチルアルコール類(以下、光学活性ナフチルアルコール類(1)と略記する。)について説明する。
【0007】
炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基等の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基等の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシ基が挙げられる。
【0008】
置換されていてもよいフェニル基としては、例えば無置換のフェニル基、例えば3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基等の前記炭素数1〜6のアルキル基で置換されたフェニル基、例えば2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基等の前記炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されたフェニル基等が挙げられる。置換されていてもよいアラルキル基としては、例えば前記置換されていてもよいフェニル基やナフチル基等のアリール基と前記炭素数1〜6のアルキル基とから構成された、例えばベンジル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0009】
また、R5が炭素数1〜6のアルキル基を表わす場合であって、同じ炭素原子に結合する二つのR5が結合してその結合炭素原子とともに環を形成するときの環としては、例えばシクロプロパン環、シクロペンタン環、シクロヘプタン環等の炭素数3〜7の環が挙げられる。
【0010】
かかる光学活性ナフチルアルコール類(1)としては、例えば(R)−1−アミノ−1−(1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(4−フルオロ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メチル−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(4−メチル−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(2−メトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(2−エトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(4−メトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(2,4−ジメトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(7−メチル−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(1−n−プロピル−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、
【0011】
(R)−1−アミノ−1−(6−メトキシ−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、(R)−1−アミノ−1−(3,8−ジメトキシ−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール等および前記各化合物の2−メチル−2−プロパノール部分が、2−エチル−2−ブタノール、2−n−プロピル−2−ペンタノール、2−n−ブチル−2−ヘキサノール、2−イソブチル−4−メチル−2−ペンタノール、2−n−ペンチル−2−ヘプタノール、2−ベンジル−3−フェニル−2−プロパノール、2−(3−メチルベンジル)−3−(3−メチルフェニル)−2−プロパノール、2−(2−メチルベンジル)−3−(2−メチルフェニル)−2−プロパノール、2−(4−メチルベンジル)−3−(4−メチルフェニル)−2−プロパノール、2−(2−メトキシベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)−2−プロパノール、2−(3−メトキシベンジル)−3−(3−メトキシフェニル)−2−プロパノール、2−(4−メトキシベンジル)−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロパノール、2−(1−ナフチルメチル)−3−(1−ナフチル)−2−プロパノール、2−(2−ナフチルメチル)−3−(2−ナフチル)−2−プロパノール等に代わった化合物等が挙げられる。
【0012】
また、例えば(R)−2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジフェニルエタノール、(R)−2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(3−メチルフェニル)エタノール、(R)−2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(4−メチルフェニル)エタノール、(R)−2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(2−メトキシフェニル)エタノール、(R)−2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(3−メトキシフェニル)エタノール、(R)−2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(4−メトキシフェニル)エタノール、1−[(R)−アミノ−(1−ナフチル)メチル]シクロプロパノール、1−[(R)−アミノ−(1−ナフチル)メチル]シクロペンタノール、1−[(R)−アミノ−(1−ナフチル)メチル]シクロヘプタノール等および前記各化合物のアミノ基が結合した炭素原子に結合している1−ナフチル基が、例えば4−フルオロ−1−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、2−エトキシ−1−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、2,4−ジメトキシ−1−ナフチル基、2−ナフチル基、7−メチル−2−ナフチル基、1−n−プロピル−2−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、3,8−ジメトキシ−2−ナフチル基等に代わった化合物等も挙げられる。
【0013】
さらに、前記各化合物の立体配置(R)が(S)に代わった化合物も挙げられる。
【0014】
かかる光学活性ナフチルアルコール類(1)は、一般式(2)
(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるナフチルアルコール類(以下、ナフチルアルコール類(2)と略記する。)を、光学活性N−ホルミルフェニルアラニンで光学分割することにより製造することができる。
【0015】
かかるナフチルアルコール類(2)としては、例えば1−アミノ−1−(1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−アミノ−1−(4−フルオロ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−アミノ−1−(2−メチル−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−アミノ−1−(4−メチル−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−アミノ−1−(2−メトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−アミノ−1−(2−エトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−アミノ−1−(4−メトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−アミノ−1−(2,4−ジメトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−アミノ−1−(2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−アミノ−1−(7−メチル−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−アミノ−1−(1−n−プロピル−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、
【0016】
1−アミノ−1−(6−メトキシ−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−アミノ−1−(3,8−ジメトキシ−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール等および前記各化合物の2−メチル−2−プロパノール部分が、2−エチル−2−ブタノール、2−n−プロピル−2−ペンタノール、2−n−ブチル−2−ヘキサノール、2−イソブチル−4−メチル−2−ペンタノール、2−n−ペンチル−2−ヘプタノール、2−ベンジル−3−フェニル−2−プロパノール、2−(3−メチルベンジル)−3−(3−メチルフェニル)−2−プロパノール、2−(2−メチルベンジル)−3−(2−メチルフェニル)−2−プロパノール、2−(4−メチルベンジル)−3−(4−メチルフェニル)−2−プロパノール、2−(2−メトキシベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)−2−プロパノール、2−(3−メトキシベンジル)−3−(3−メトキシフェニル)−2−プロパノール、2−(4−メトキシベンジル)−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロパノール、2−(1−ナフチルメチル)−3−(1−ナフチル)−2−プロパノール、2−(2−ナフチルメチル)−3−(2−ナフチル)−2−プロパノール等に代わった化合物が挙げられる。
【0017】
また、例えば2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジフェニルエタノール、2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(3−メチルフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(4−メチルフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(2−メトキシフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(3−メトキシフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(4−メトキシフェニル)エタノール、1−[(アミノ)−(1−ナフチル)メチル]シクロプロパノール、1−[(アミノ)−(1−ナフチル)メチル]シクロペンタノール、1−[(アミノ)−(1−ナフチル)メチル]シクロヘプタノール等および前記各化合物のアミノ基が結合した炭素原子に結合している1−ナフチル基が、例えば4−フルオロ−1−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、2−エトキシ−1−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、2,4−ジメトキシ−1−ナフチル基、2−ナフチル基、7−メチル−2−ナフチル基、1−n−プロピル−2−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、3,8−ジメトキシ−2−ナフチル基等に代わった化合物等も挙げられる。
【0018】
かかるナフチルアルコール類(2)としては、通常ラセミ体が用いられるが、二つの光学異性体のうちのいずれか一方が他方よりもやや過剰な光学純度の低い光学異性体の混合物を用いてもよい。
【0019】
光学活性N−ホルミルフェニルアラニンは、R体とS体の二種類の光学異性体が存在するが、目的とする光学活性ナフチルアルコール類に応じて、適宜選択すればよい。その使用量は、ナフチルアルコール類(2)に対して、通常0.1〜1モル倍である。
【0020】
ナフチルアルコール類(2)と光学活性N−ホルミルフェニルアラニンの反応は、通常溶媒中でその両者を混合させることにより実施され、その混合順序は特に制限されないが、ナフチルアルコール類(2)の溶媒溶液に、光学活性N−ホルミルフェニルアラニンを加えることが好ましい。光学活性N−ホルミルフェニルアラニンは、連続的に加えてもよいし、間欠的に加えてもよい。また、光学活性N−ホルミルフェニルアラニンは、そのまま用いてもよいし、溶媒溶液として用いてもよい。
【0021】
溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒、水等の単独または混合溶媒が挙げられる。かかる溶媒のなかでも、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびこれらと水との混合溶媒が好ましい。かかる溶媒の使用量は、ナフチルアルコール類(2)に対して、通常0.5〜100重量倍、好ましくは1〜50重量倍である。溶媒は、予めナフチルアルコール類(2)もしくは光学活性N−ホルミルフェニルアラニンに加えておいてもよい。
【0022】
反応温度は、通常0℃〜反応液の還流温度の範囲である。
【0023】
反応終了後、光学活性ナフチルアルコール類(1)は、光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとジアステレオマー塩(以下、ジアステレオマー塩と略記する。)を形成しており、通常一方のジアステレオマー塩の一部が反応マス中に晶出している。これをそのまま取り出してもよいが、該反応マスを冷却するか、あるいは、濃縮することにより、さらに多くの該ジアステレオマー塩を晶出させて取り出すことが好ましい。条件によっては、該ジアステレオマー塩が反応マス中に完溶していることもあり、この場合には、反応マスを冷却するか、あるいは、濃縮することにより、該ジアステレオマー塩を晶出させて取り出すことができる。晶出させた一方のジアステレオマー塩は、通常の濾過操作によって容易に取り出すことができる。また、取り出したジアステレオマー塩は、例えば再結晶処理して、さらに精製してもよい。
【0024】
かくして得られるジアステレオマー塩としては、例えば光学活性1−アミノ−1−(1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性1−アミノ−1−(4−フルオロ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性1−アミノ−1−(2−メチル−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性1−アミノ−1−(4−メチル−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性1−アミノ−1−(2−メトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性1−アミノ−1−(2−エトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性1−アミノ−1−(4−メトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性1−アミノ−1−(2,4−ジメトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、
【0025】
光学活性1−アミノ−1−(2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性1−アミノ−1−(7−メチル−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性1−アミノ−1−(1−n−プロピル−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、
【0026】
光学活性1−アミノ−1−(6−メトキシ−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性1−アミノ−1−(3,8−ジメトキシ−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩等および前記各ジアステレオマー塩の2−メチル−2−プロパノール部分が、2−エチル−2−ブタノール、2−n−プロピル−2−ペンタノール、2−n−ブチル−2−ヘキサノール、2−イソブチル−4−メチル−2−ペンタノール、2−n−ペンチル−2−ヘプタノール、2−ベンジル−3−フェニル−2−プロパノール、2−(3−メチルベンジル)−3−(3−メチルフェニル)−2−プロパノール、2−(2−メチルベンジル)−3−(2−メチルフェニル)−2−プロパノール、2−(4−メチルベンジル)−3−(4−メチルフェニル)−2−プロパノール、2−(2−メトキシベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)−2−プロパノール、2−(3−メトキシベンジル)−3−(3−メトキシフェニル)−2−プロパノール、2−(4−メトキシベンジル)−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロパノール、2−(1−ナフチルメチル)−3−(1−ナフチル)−2−プロパノール、2−(2−ナフチルメチル)−3−(2−ナフチル)−2−プロパノール等に代わった各ジアステレオマー塩が挙げられる。
【0027】
また、例えば光学活性2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジフェニルエタノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(3−メチルフェニル)エタノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(4−メチルフェニル)エタノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(2−メトキシフェニル)エタノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(3−メトキシフェニル)エタノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(4−メトキシフェニル)エタノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性1−[(アミノ)−(1−ナフチル)メチル]シクロプロパノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性1−[(アミノ)−(1−ナフチル)メチル]シクロペンタノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩、光学活性1−[(アミノ)−(1−ナフチル)メチル]シクロヘプタノールと光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩等および前記各ジアステレオマー塩を構成する光学活性ナフチルアルコール類のアミノ基が結合した炭素原子に結合している1−ナフチル基が、例えば4−フルオロ−1−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、2−エトキシ−1−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、2,4−ジメトキシ−1−ナフチル基、2−ナフチル基、7−メチル−2−ナフチル基、1−n−プロピル−2−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、3,8−ジメトキシ−2−ナフチル基等に代わった化合物等も挙げられる。
【0028】
かくして得られるジアステレオマー塩は、そのまま、あるいは、例えば洗浄、再結晶等によりさらに精製した後、アルカリ処理することにより、容易に光学活性ナフチルアルコール類(1)に導くことができる。
【0029】
アルカリ処理は、通常ジアステレオマー塩とアルカリを混合することにより行なわれ、混合温度は、通常0〜100℃の範囲である。用いられるアルカリとしては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられ、通常水溶液が用いられる。アルカリの水溶液を用いる場合のアルカリ濃度は、通常1〜50重量%、好ましくは3〜20重量%の範囲である。アルカリの使用量は、ジアステレオマー塩に対して、通常1〜5モル倍程度である。
【0030】
ジアステレオマー塩をアルカリ処理すると、通常光学活性ナフチルアルコール類(1)は、該アルカリ処理マスから油層として分液あるいは固体として析出しており、これをそのまま分離して取り出してもよいし、また、該アルカリ処理マスに水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理して、得られた有機層から有機溶媒を留去して、光学活性ナフチルアルコール類(1)を取り出してもよい。水に不溶の有機溶媒としては、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられ、その使用量は、用いたジアステレオマー塩に対して、通常0.5〜50重量倍の範囲である。かかる水に不溶の有機溶媒は、ジアステレオマー塩をアルカリ処理する際に予め加えておいてもよい。
【0031】
また、ジアステレオマー塩を予め酸処理した後、アルカリ処理することにより、光学活性ナフチルアルコール類(1)を取り出すこともできる。ジアステレオマー塩を予め酸処理すると、光学活性N−ホルミルフェニルアラニンが遊離するため、遊離した光学活性N−ホルミルフェニルアラニンを分離した後にアルカリ処理することが好ましい。
【0032】
酸処理は、通常ジアステレオマー塩と酸の水溶液を混合することにより行われ、混合温度は通常0〜100℃である。用いられる酸としては、通常塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸の水溶液が挙げられ、その濃度は、通常1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%である。また、かかる酸の使用量は、ジアステレオマー塩に対して通常1〜5モル倍、好ましくは1〜2モル倍である。
【0033】
遊離した光学活性N−ホルミルフェニルアラニンの分離方法としては、例えばジアステレオマー塩を予め酸処理したマスに、水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理する方法等が挙げられる。水に不溶の有機溶媒としては、前記したものと同様のものが挙げられ、その使用量は、用いたジアステレオマー塩に対して、通常0.5〜20重量倍である。かかる水に不溶の有機溶媒は、ジアステレオマー塩を酸処理する際に予め加えておいても何ら問題ない。
【0034】
また、遊離した光学活性N−ホルミルフェニルアラニンの結晶の一部もしくは全部が酸処理マス中に析出している場合には、これをそのまま、あるいは、必要に応じてさらに冷却した後、濾過処理することにより、遊離した光学活性N−ホルミルフェニルアラニンを分離することもできる。
【0035】
酸処理に次いで行なうアルカリ処理では、通常水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液が用いられ、その濃度は、通常1〜50重量%、好ましくは5〜20重量%である。かかるアルカリは、通常処理マスのpHの値が10以上となる量が用いられる。また、処理温度は通常0〜100℃である。
【0036】
ジアステレオマー塩を予め酸処理した後に、アルカリ処理すると、通常光学活性ナフチルアルコール類(1)は、該アルカリ処理マスから油層として分液あるいは固体として析出しており、該油層あるいは該固体をそのまま分離して取り出してもよい。また、該アルカリ処理マスに水に不溶の有機溶媒を加え抽出処理し、得られる有機層から有機溶媒を留去して、光学活性ナフチルアルコール類(1)を取り出してもよい。水に不溶の有機溶媒としては、前記したものと同様のものが挙げられ、その使用量は、処理に用いたジアステレオマー塩に対して通常0.5〜50重量倍の範囲である。かかる水に不溶の有機溶媒は、アルカリ処理を行なう際に予め加えておいてもよい。
【0037】
なお、用いた光学活性N−ホルミルフェニルアラニンは容易に回収でき、回収した光学活性N−ホルミルフェニルアラニンは、ナフチルアルコール類(2)と光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとの反応に再利用できる。ジアステレオマー塩を予め酸処理することなく、アルカリ処理した場合には、光学活性ナフチルアルコール類(1)を取り出した後の処理マスを酸処理することにより、光学活性N−ホルミルフェニルアラニンを回収することができる。ジアステレオマー塩を予め酸処理した後にアルカリ処理した場合には、通常酸処理して得られる酸処理マス中に、光学活性N−ホルミルフェニルアラニンの一部もしくは全部が晶出しており、該酸処理マスをそのまま、あるいは、必要に応じてさらに冷却した後、濾過処理することにより、光学活性N−ホルミルフェニルアラニンを回収することができる。また、該酸処理マスに水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理して、得られる有機層から有機溶媒を留去して、光学活性N−ホルミルフェニルアラニンを回収することもできる。水に不溶の有機溶媒としては、前記したものと同様のものが挙げられ、かかる水に不溶の有機溶媒は、酸処理の際に予め加えておいてもよい。
【0038】
ナフチルアルコール類(2)は、以下の(A)〜(D)工程を含む方法により製造することができる。
(A)一般式(3)
(式中、R1、R2、R3およびR4は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるナフチルグリシン類(以下、ナフチルグリシン類(3)と略記する。)と塩素化剤と一般式(4)
(式中、R6は炭素数1〜6のアルキル基を表わす。)
で示されるアルコール類(以下、アルコール類(4)と略記する。)を反応させて、一般式(5)
(式中、R1、R2、R3、R4およびR6は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるアミノ酸エステル塩酸塩(以下、アミノ酸エステル塩酸塩(5)と略記する。)を得る工程、
(B)前記工程(A)で得られたアミノ酸エステル塩酸塩(5)と、一般式(6)
(式中、nは、1、2または3を表わす。)
で示される化合物(以下、化合物(6)と略記する。)もしくは一般式(7)
(式中、nは、上記と同一の意味を表わし、Xは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表わす。)
で示される化合物(以下、化合物(7)と略記する。)を、第三級アミンの存在下に反応させて、一般式(8)
(式中、R1、R2、R3、R4、R6およびnは上記と同一の意味を表わす。)
で示される化合物(以下、化合物(8)と略記する。)を得る工程。
(C)前記工程(B)で得られた化合物(8)と一般式(9)
(式中、R7は炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよいフェニル基を表わし、X’は、ハロゲン原子を表わす。)
で示される化合物(以下、化合物(9)と略記する。)もしくは一般式(10)
(式中、R8は、炭素数2〜6のアルキレン基を表わし、X’は、上記と同一の意味を表わす。)
で示される化合物(以下、化合物(10)と略記する。)を反応させて、一般式(11)
(式中、R1、R2、R3、R4およびnは上記と同一の意味を表わし、R5は炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基または置換されていてもよいアリール基を表わす。ここで、R5が炭素数1〜6のアルキル基を表わす場合は、同じ炭素原子に結合する二つのR5が結合してその結合炭素原子とともに環を形成してもよい。)
で示される化合物(以下、化合物(11)と略記する。)を得る工程。
(D)前記工程(C)で得られた化合物(11)に塩基を作用させて、ナフチルアルコール類(2)を得る工程。
【0039】
まず工程(A)について説明する。工程(A)は、ナフチルグリシン類(3)と塩素化剤を、アルコール類(4)の共存下に反応させて、アミノ酸エステル塩酸塩(5)を得る工程である。
【0040】
ナフチルグリシン類(3)としては、例えば1−ナフチルグリシン、2−メチル−1−ナフチルグリシン、4−メチル−1−ナフチルグリシン、2−メトキシ−1−ナフチルグリシン、2−エトキシ−1−ナフチルグリシン、4−メトキシ−1−ナフチルグリシン、2,4−ジメトキシ−1−ナフチルグリシン、2−ナフチルグリシン、7−メチル−2−ナフチルグリシン、1−n−プロピル−2−ナフチルグリシン、6−メトキシ−2−ナフチルグリシン、3,8−ジメトキシ−2−ナフチルグリシン等が挙げられる。
【0041】
かかるナフチルグリシン類(3)は、例えば市販のものを用いてもよいし、例えばナフチルアルデヒド類とシアン化ナトリウム等のシアノ化合物と炭酸アンモニウムとを反応させ、次いで水酸化カリウム等のアルカリで処理する方法(例えば日本化学会編実験化学講座第四版22巻195頁等)により製造したものを用いてもよい。
【0042】
塩素化剤としては、例えば塩化チオニル、塩化カルボニル等が挙げられ、その使用量は、ナフチルグリシン類(3)に対して、通常1モル倍以上、好ましくは1.1モル倍以上であり、その上限は特にないが、あまり多すぎても経済的に不利になりやすいため、実用的には、2モル倍以下である。
【0043】
アルコール類(4)の式中、R6は炭素数1〜6のアルキル基を表わし、上記したものと同様のものが挙げられる。かかるアルコール類(4)としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール等が挙げられる。
【0044】
アルコール類(4)の使用量は、通常ナフチルグリシン類(3)に対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特に制限されず、例えば溶媒を兼ねて大過剰量用いてもよい。
【0045】
ナフチルグリシン類(3)と塩素化剤とアルコール類(4)の反応は、通常その三者を混合させることにより実施され、その混合順序は特に制限されない。また、反応は、通常溶媒中で実施され、溶媒としては、例えばヘキサン、へプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒等の単独または混合溶媒が挙げられる。また、前記のとおりアルコール類(4)を溶媒として用いてもよい。溶媒の使用量は、反応マスが攪拌可能な量であればよく、ナフチルグリシン類(3)に対して、通常1重量倍以上であり、その上限は特に制限されない。
【0046】
反応温度は、通常0℃〜反応液の還流温度、好ましくは10〜60℃である。
【0047】
反応終了後、例えば反応液を、例えば濃縮処理、晶析処理等することにより、アミノ酸エステル塩酸塩(5)を取り出すことができる。また、場合によっては、生成したアミノ酸エステル塩酸塩(5)の全部もしくは一部が反応液中に析出していることがあり、その場合には、例えば該反応液をそのままもしくは一部濃縮処理し、必要に応じて冷却処理した後、濾過処理することにより、アミノ酸エステル塩酸塩(5)を取り出すこともできる。取り出したアミノ酸エステル塩酸塩(5)は、そのまま次工程(B)に用いてもよいが、未反応のアルコール類(4)や未反応の塩素化剤を含んでいることが多いため、例えば前記エーテル系溶媒等のアミノ酸エステル塩酸塩(5)を溶解しにくい溶媒で洗浄処理した後、次工程(B)に用いることが好ましい。
【0048】
かくして得られるアミノ酸エステル塩酸塩(5)としては、例えば1−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩、2−メチル−1−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩、4−メチル−1−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩、2−メトキシ−1−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩、2−エトキシ−1−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩、4−メトキシ−1−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩、2,4−ジメトキシ−1−ナフチルグリシンメチルエステル塩酸塩、2−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩、7−メチル−2−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩、1−n−プロピル−2−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩、6−メトキシ−2−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩、3,8−ジメトキシ−2−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩等および前記各化合物のメチルエステルが、例えばエチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、sec−ブチルエステル等に代わった化合物等が挙げられる。
【0049】
続いて工程(B)について説明する。工程(B)は、前記工程(A)で得られたアミノ酸エステル塩酸塩(5)と、化合物(6)もしくは化合物(7)を、第三級アミンの存在下に反応させて、化合物(8)を得る工程である。
【0050】
化合物(6)の式中、nは、1、2または3を表わす。かかる化合物(6)としては、トリフルオロ酢酸無水物、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピオン酸無水物、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブタン酸無水物が挙げられる。また、化合物(7)の式中、Xは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表わし、かかる化合物(7)としては、例えばトリフルオロ酢酸塩化物、トリフルオロ酢酸臭化物、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピオン酸塩化物、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブタン酸塩化物等が挙げられる。かかる化合物(6)もしくは化合物(7)は、例えば市販されているものが用いられる。
【0051】
化合物(6)もしくは化合物(7)の使用量は、アミノ酸エステル塩酸塩(5)に対して、通常0.8〜2モル倍以上、好ましくは1〜1.5モル倍である。
【0052】
第三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジイシプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン等が挙げられる。その使用量は、アミノ酸エステル塩酸塩(5)に対して、通常1.5〜3モル倍、好ましくは1.8〜2.5モル倍である。
【0053】
アミノ酸エステル塩酸塩(5)と化合物(6)もしくは化合物(7)の反応は、通常その両者を混合させることにより実施され、その混合順序は特に制限されない。かかる反応は、通常溶媒中で行われ、溶媒としては、例えば前記脂肪族炭化水素系溶媒、前記芳香族炭化水素系溶媒、前記ハロゲン化炭化水素系溶媒、前記エーテル系溶媒、前記エステル系溶媒、前記ニトリル系溶媒等の単独または混合溶媒が挙げられる。その使用量は、反応液が攪拌可能な量であればよく、アミノ酸エステル塩酸塩(5)に対して、通常1重量倍以上である。
【0054】
反応温度は、通常0℃以下、好ましくは−20〜−50℃である。
【0055】
反応終了後、例えば反応液と水を混合し、必要に応じて水に不溶の有機溶媒を加えて、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、化合物(8)を取り出すことができる。取り出した化合物(8)は、そのまま次工程(C)に用いてもよいし、例えば再結晶、カラムクロマトグラフィ等の通常の精製手段により、さらに精製した後、用いてもよい。
【0056】
かくして得られる化合物(8)としては、例えばN−(トリフルオロアセチル)−1−ナフチルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−メチル−1−ナフチルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−4−メチル−1−ナフチルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−メトキシ−1−ナフチルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−エトキシ−1−ナフチルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−4−メトキシ−1−ナフチルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2,4−ジメトキシ−1−ナフチルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−2−ナフチルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−7−メチル−2−ナフチルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−1−n−プロピル−2−ナフチルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−6−メトキシ−2−ナフチルグリシン メチルエステル、N−(トリフルオロアセチル)−3,8−ジメトキシ−2−ナフチルグリシン メチルエステル等および前記各化合物のメチルエステルが、例えばエチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、sec−ブチルエステル等に代わった化合物、前記各化合物のアミノ基上の置換基であるトリフルオロアセチル基が、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピオニル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチリル基に代わった化合物等が挙げられる。
【0057】
続いて工程(C)について説明する。工程(C)は、前記工程(B)で得られた化合物(8)と化合物(9)もしくは化合物(10)を反応させて、化合物(11)を得る工程である。
【0058】
化合物(9)の式中、R7は炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよいフェニル基を表わし、X’は、ハロゲン原子を表わす。炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいフェニル基としては、上記したものと同様のものが挙げられ、ハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子等が挙げられる。化合物(10)の式中、R8は炭素数2〜6のアルキレン基を表わし、例えばエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0059】
かかる化合物(9)もしくは化合物(10)としては、例えばメチルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、エチルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、n−プロピルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、n−ブチルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、イソブチルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、n−ペンチルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、n−ヘキシルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、ベンジルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、2−メチルベンジルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、4−メチルベンジルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、2−メトキシベンジルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、3−メトキシベンジルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、4−メトキシベンジルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、1−ナフチルメチルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、2−ナフチルメチルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、フェニルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、3−メチルフェニルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、4−メチルフェニルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、2−メトキシフェニルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、3−メトキシフェニルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、4−メトキシフェニルマグネシウムクロリド(またはブロミド)、エチレンジマグネシウムクロリド(またはブロミド)、テトラメチレンジマグネシウムクロリド(またはブロミド)、ヘキサメチレンジマグネシウムクロリド(またはブロミド)等が挙げられる。かかる化合物(9)もしくは化合物(10)は、市販のものを用いてもよいし、対応するハロゲン化物と金属マグネシウムを反応させて製造したものを用いてもよい。
【0060】
化合物(9)を用いる場合のその使用量は、化合物(8)に対して、通常2〜3モル倍、好ましくは2.1〜2.7モル倍である。化合物(10)を用いる場合のその使用量は、化合物(8)に対して、通常1〜1.5モル倍、好ましくは1.1〜1.4モル倍である。
【0061】
化合物(8)と化合物(9)もしくは化合物(10)の反応は、通常溶媒中で、その両者を混合することにより実施され、混合順序は特に制限されない。溶媒としては、例えばジエチルエーテル等の前記エーテル系溶媒等が挙げられ、その使用量は、化合物(8)に対して、通常1〜50重量倍、好ましくは3〜20重量倍である。なお、必要に応じて、例えばトルエン等の前記芳香族炭化水素系溶媒等を混合してもよい。
【0062】
反応温度は、通常−20℃〜反応液の還流温度の範囲であり、好ましくは−10〜30℃の範囲である。
【0063】
反応終了後、例えば反応液と、例えば塩酸、硫酸、燐酸等の鉱酸の水溶液を混合し、抽出処理して、得られる有機層を濃縮処理することにより、化合物(11)を取り出すことができる。取り出した化合物(11)は、そのまま次工程(D)に用いてもよいし、例えば再結晶、カラムクロマトグラフィ等の通常の精製手段により、さらに精製した後、次工程(D)に用いてもよい。
【0064】
かくして得られる化合物(11)としては、例えば1−(トリフルオロアセチルアミノ)−(1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(4−フルオロ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メチル−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(4−メチル−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−メトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−エトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(4−メトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2,4−ジメトキシ−1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(7−メチル−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、
【0065】
1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(1−n−プロピル−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(6−メトキシ−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(3,8−ジメトキシ−2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール等および前記各化合物の2−メチル−2−プロパノール部分が、例えば2−エチル−2−ブタノール、2−n−プロピル−2−ペンタノール、2−n−ブチル−2−ヘキサノール、2−イソブチル−4−メチル−2−ペンタノール、2−n−ペンチル−2−ヘプタノール、2−ベンジル−3−フェニル−2−プロパノール、2−(3−メチルベンジル)−3−(3−メチルフェニル)−2−プロパノール、2−(2−メチルベンジル)−3−(2−メチルフェニル)−2−プロパノール、2−(4−メチルベンジル)−3−(4−メチルフェニル)−2−プロパノール、2−(2−メトキシベンジル)−3−(2−メトキシフェニル)−2−プロパノール、2−(3−メトキシベンジル)−3−(3−メトキシフェニル)−2−プロパノール、2−(4−メトキシベンジル)−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロパノール、2−(1−ナフチルメチル)−3−(1−ナフチル)−2−プロパノール、2−(2−ナフチルメチル)−3−(2−ナフチル)−2−プロパノール等に代わった化合物、前記各化合物のトリフルオロアセチルアミノ基が、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピオニルアミノ基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチリルアミノ基に代わった化合物等が挙げられる。
【0066】
また、例えば2−(トリフルオロアセチルアミノ)−2−(1−ナフチル)−1,1−ジフェニルエタノール、2−(トリフルオロアセチルアミノ)−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(3−メチルフェニル)エタノール、2−(トリフルオロアセチルアミノ)−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(4−メチルフェニル)エタノール、2−(トリフルオロアセチルアミノ)−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(2−メトキシフェニル)エタノール、2−(トリフルオロアセチルアミノ)−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(3−メトキシフェニル)エタノール、2−(トリフルオロアセチルアミノ)−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ(4−メトキシフェニル)エタノール、1−[(トリフルオロアセチルアミノ)−(1−ナフチル)メチル]シクロプロパノール、1−[(トリフルオロアセチルアミノ)−(1−ナフチル)メチル]シクロペンタノール、1−[(トリフルオロアセチルアミノ)−(1−ナフチル)メチル]シクロヘプタノール等および前記各化合物のトリフルオロアセチルアミノ基が結合した炭素原子に結合している1−ナフチル基が、例えば4−フルオロ−1−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、2−エトキシ−1−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、2,4−ジメトキシ−1−ナフチル基、2−ナフチル基、7−メチル−2−ナフチル基、1−n−プロピル−2−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、3,8−ジメトキシ−2−ナフチル基等に代わった化合物等も挙げられる。
【0067】
最後に、工程(D)について説明する。工程(D)は、前記工程(C)で得られた化合物(11)に塩基を作用させて、ナフチルアルコール類(2)を得る工程である。
【0068】
塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられ、通常その水溶液が用いられる。かかる塩基の使用量は、化合物(11)に対して、通常1〜3モル倍であり、好ましくは1.2〜2.5モル倍である。
【0069】
化合物(11)と塩基の反応は、通常溶媒中で行われ、溶媒としては、例えば前記アルコール系溶媒、水、前記アルコール系溶媒と水の混合溶媒等が挙げられる。その使用量は、化合物(11)に対して、通常2〜30重量倍、好ましくは3〜15重量倍である。
【0070】
反応温度は、通常0℃〜反応液の還流温度の範囲であり、好ましくは10〜60℃の範囲である。
【0071】
反応終了後、例えば反応液を、濃縮処理した後、水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、ナフチルアルコール類(2)を取り出すことができる。水に不溶の有機溶媒としては、上記したものと同様のものが挙げられる。取り出したナフチルアルコール類(2)は、例えば再結晶、カラムクロマトグラフィ等の通常の精製手段により、さらに精製してもよい。
【0072】
なお、本発明の光学活性ナフチルアルコール類(1)は、例えば下記スキームに示すように、光学活性なジアミド化合物を経由し、光学活性なビスオキサゾリン化合物に誘導することができる。
【0073】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、得られた光学活性ナフチルアルコール類(1)の光学純度は、光学活性カラムを用いる高速液体クロマトグラフ分析法によって求めた。
【0074】
実施例1
1−アミノ−1−(1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール23.3gをイソプロパノール410mLに溶解し、内温60〜70℃に昇温した。これに、N−ホルミル−L−フェニルアラニン8.4gをイソプロパノール410mLに溶解させた溶液を加えた。その後、室温で一晩静置し、析出した光学活性1−アミノ−1−(1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールとN−ホルミル−L−フェニルアラニンとからなるジアステレオマー塩を濾取した。濾取したジアステレオマー塩を、冷イソプロパノール50mLで洗浄して、ジアステレオマー塩を得た。該ジアステレオマー塩に、イソプロパノール750mLと水40mLを加え、還流するまで昇温し、ジアステレオマー塩を溶解させた。その後、室温まで冷却し、析出したジアステレオマー塩を濾取した。濾取したジアステレオマー塩を、冷イソプロパノール50mLで洗浄して、白色結晶のジアステレオマー塩14.2gを得た。
【0075】
ジアステレオマー塩の融点 186〜188℃。元素分析値 C:69.8%、H:7.0%、N:6.7%(理論値 C:70.6%、H:6.9%、N:6.9%)。
【0076】
得られたジアステレオマー塩13.8gに、1モル/L水酸化ナトリウム水溶液60mL、水80mLおよびクロロホルム300mLを加え、室温で抽出処理し、有機層と水層とに分離した。得られた有機層を水で洗浄した後、濃縮処理して、(S)−1−アミノ−1−(1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール5.6gを得た(収率:24%)。光学純度:S体比=99.95%。
【0077】
(S)−1−アミノ−1−(1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールの[α]D(c0.5,CH3OH) +60.4°。融点 86〜87℃。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);1.07(3H,s),1.29(3H,s),1.50〜2.16(2H,br),2.16〜3.22(1H,br),4.83(1H,s),7.46〜8.19(7H,m)
元素分析値 C:77.8%、H:7.9%、N:6.4%(理論値 C:78.1%、H:8.0%、N:6.5%)
【0078】
実施例2
1−アミノ−1−(2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール24.0gをイソプロパノール410mLに溶解し、内温40℃に昇温した。これに、N−ホルミル−L−フェニルアラニン8.3gをイソプロパノール410mLに溶解させた溶液を加えた。その後、室温で一晩静置し、析出した光学活性1−アミノ−1−(2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールとN−ホルミル−L−フェニルアラニンとからなるジアステレオマー塩を濾取した。濾取したジアステレオマー塩を、冷イソプロパノール50mLで洗浄して、ジアステレオマー塩を得た。該ジアステレオマー塩に、イソプロパノール750mLと水45mLを加え、還流するまで昇温し、ジアステレオマー塩を溶解させた。その後、室温まで冷却し、析出したジアステレオマー塩を濾取した。濾取したジアステレオマー塩を、冷イソプロパノール50mLで洗浄して、白色結晶のジアステレオマー塩12.4gを得た。
【0079】
ジアステレオマー塩の融点 193〜195℃。元素分析値 C:70.4%、H:6.9%、N:6.8%(理論値 C:70.6%、H:6.9%、N:6.9%)。
【0080】
得られたジアステレオマー塩11.9gに、1モル/L水酸化ナトリウム水溶液35mL、水100mLおよびクロロホルム300mLを加え、室温で抽出処理し、有機層と水層とに分離した。得られた有機層を水で洗浄した後、濃縮処理して、(S)−1−アミノ−1−(2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール6.2gを得た(収率:26%)。光学純度:S体比=99.89%。
【0081】
(S)−1−アミノ−1−(2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールの[α]D(c0.5,CH3OH) +14.1°。融点 77〜78℃。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);1.09(3H,s),1.26(3H,s),1.47〜2.35(2H,br),2.35〜3.20(1H,br),3.97(1H,s),7.44〜7.83(7H,m)
元素分析値 C:78.0%、H:8.0%、N:6.4%(理論値 C:78.1%、H:8.0%、N:6.5%)
【0082】
実施例3
1−ナフチルグリシン(ラセミ体)50.3gとメタノール(脱水品)200mLの混合物中に、塩化チオニル33mLを、内温35℃で1時間かけて滴下し、さらに同温度で3時間攪拌、反応させた。反応液を濃縮処理し、得られた濃縮残渣にジエチルエーテル200mLを加え、混合した後、結晶を濾取し、ジエチルエーテル50mLで洗浄処理した。濾取した結晶を、減圧条件下、内温50℃で乾燥させ、黄土色の1−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩61.9gを得た(収率:98%)。
【0083】
上記で得た1−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩61.9gとジクロロメタン390mLの混合物に、内温−40〜−50℃でトリエチルアミン72mLを滴下した後、トリフルオロ酢酸無水物38mLを、内温−45〜−50℃で1時間かけて滴下した。さらに同温度で1時間攪拌、反応させた後、0℃まで自然昇温させた。反応液に、冷水280mLと濃塩酸10mLの混合液を加え、ジクロロメタン1100mLで抽出処理した。得られた有機層を冷水280mLで洗浄処理した。得られた有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥処理した後、濃縮処理し、析出した結晶を濾過した。結晶を冷ジクロロメタンで洗浄した後、減圧条件下、内温60℃で乾燥処理し、白色のN−(トリフルオロアセチル)−1−ナフチルグリシン メチルエステル51.7gを得た(収率:68%)。
【0084】
N−(トリフルオロアセチル)−1−ナフチルグリシン メチルエステルの融点
183〜184℃。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);3.76(3H,s),6.31(1H,d),7.30〜7.40(1H,br),7.46〜8.10(7H,m)
【0085】
メチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(3モル/L)180mLに、テトラヒドロフラン(脱水品)360mLを加えた溶液を、内温0〜5℃に冷却し、同温度で、上記で得たN−(トリフルオロアセチル)−1−ナフチルグリシン メチルエステル33.7gとテトラヒドロフラン(脱水品)170mLの混合溶液を、30分間かけて滴下した後、室温まで自然昇温させ、同温度で2.5時間攪拌、反応させた。反応液を、氷900gと濃塩酸200mLの混合物中に、内温5℃以下を保ちながら加えた後、冷トルエン800mLで抽出処理した。得られた水層を、冷トルエン800mLで抽出処理し、得られた有機層を、先に得られた有機層と合わせ、冷水400mLで洗浄処理した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥処理した後、濃縮処理し、得られた濃縮残渣を、減圧条件下、室温で乾燥処理して、淡黄色粘性油状の1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール36.0gを得た。
【0086】
1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールの1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);0.98(3H,s),1.47(3H,s),5.83(1H,d),7.46〜7.89(7H,m),8.18(1H,d)
【0087】
上記で得た1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール36.0gに、イソプロパノール180mLとエタノール180mLを加え、さらに22重量%水酸化カリウム水溶液63gを室温で30分間かけて滴下した後、内温50℃まで昇温し、同温度で2時間攪拌、反応させた。反応液を濃縮処理し、得られた濃縮残渣に、クロロホルム500mLと水180mLを加え、抽出処理した。得られた有機層を、水100mLで洗浄処理し、得られた有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥処理した後、濃縮処理し、得られた濃縮残渣を、減圧条件下、内温30℃で乾燥処理し、褐色粘性油状の1−アミノ−1−(1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール28.0gを得た。
【0088】
1−アミノ−1−(1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールの1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);1.07(3H,s),1.29(3H,s),1.48〜2.94(3H,br),4.83(1H,s),7.46〜8.19(7H,m)
【0089】
実施例4
2−ナフチルグリシン(ラセミ体)50.3gとメタノール(脱水品)200mLの混合物中に、塩化チオニル33mLを、内温35℃で1時間かけて滴下し、さらに同温度で3時間攪拌、反応させた。反応液を濃縮処理し、得られた濃縮残渣に、ジエチルエーテル200mLを加えた後、結晶を濾取した。濾取した結晶をジエチルエーテル50mLで洗浄した後、減圧条件下、内温50℃で乾燥処理し、白色の2−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩59.0gを得た(収率:94%)。
【0090】
上記で得た2−ナフチルグリシン メチルエステル塩酸塩59.0gとジクロロメタン1180mLの混合物を冷却し、内温−35〜−38℃でトリエチルアミン69mLを滴下した後、トリフルオロ酢酸無水物38mLを、内温−40〜−42℃で70分間かけて滴下した。さらに同温度で1時間攪拌、反応させた後、0℃まで自然昇温させた。反応液に、冷水280mLと濃塩酸4mLの混合液を加え、冷ジクロロメタン500mLで抽出処理した。得られた有機層を、冷水280mLで洗浄処理した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥処理した後、濃縮処理し、析出した結晶を濾取した。濾取した結晶を冷ジクロロメタン/n−ヘキサン=1/1(体積比)混合液で洗浄した後、減圧条件下、内温60℃で乾燥処理し、白色のN−(トリフルオロアセチル)−2−ナフチルグリシンメチルエステル55.5gを得た(収率:76%)。
【0091】
N−(トリフルオロアセチル)−2−ナフチルグリシン メチルエステルの1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);3.77(3H,s),5.72(1H,d),7.41〜7.88(8H,m)
【0092】
メチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(3モル/L)200mLにテトラヒドロフラン(脱水品)390mLを加えた溶液を、内温0〜5℃に冷却し、同温度で、上記で得たN−(トリフルオロアセチル)−2−ナフチルグリシン メチルエステル37.0gとテトラヒドロフラン(脱水品)190mLの混合溶液を、30分間かけて滴下した後、室温まで自然昇温させ、同温度で2.5時間攪拌、反応させた。反応液を、氷900gと濃塩酸220mLの混合液中に、内温5℃以下を保ちながら加えた後、冷トルエン800mLで抽出処理した。得られた水層を、冷トルエン800mLで抽出処理し、得られた有機層を、先に得られた有機層と合わせ、冷水400mLで洗浄処理した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥処理した後、濃縮処理し、得られた濃縮残渣を、減圧条件下、内温35℃で乾燥処理して、1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールの黄白色固体36.0gを得た。
【0093】
1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールの1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);1.09(3H,s),1.42(3H,s),4.95(1H,d),7.43〜7.85(8H,m)
【0094】
上記で得た1−(トリフルオロアセチルアミノ)−1−(2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール36.0gに、イソプロパノール170mLとエタノール170mLを加えた後、22重量%水酸化カリウム水溶液56gを、室温で30分間かけて滴下した。その後、内温50℃まで昇温し、同温度で2時間攪拌、反応させた。反応液を濃縮処理し、得られた濃縮残渣に、クロロホルム320mLと水160mLを加え、抽出処理した。得られた有機層を、水80mLで洗浄処理し、得られた有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥処理した後、濃縮処理し、得られた濃縮残渣を、減圧条件下、内温30℃で乾燥処理して、1−アミノ−1−(2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールの褐色固体24.3gを得た(収率97%)。
【0095】
1−アミノ−1−(2−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノールの1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);1.08(3H,s),1.26(3H,s),1.46〜3.05(3H,br),3.96(1H,s),7.42〜7.84(7H,m)
【0096】
参考例1
窒素雰囲気下、(S)−1−アミノ−1−(1−ナフチル)−2−メチル−2−プロパノール2g、トリエチルアミン1.1gおよびジクロロメタン17mLを混合した後、内温−10℃に冷却した。ジメチルマロン酸ジクロリド0.8gを3分間かけて滴下し、室温まで昇温し、そのまま6時間攪拌、反応させた。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水20mLを加え、分液処理し、得られた有機層を水25mLで3回洗浄した後、濃縮処理した。得られた濃縮残渣を、内温40℃で減圧下に乾燥処理し、N,N’−ビス[(1S)−(1−ナフチル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル]−2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジアミド2.5gを得た。
【0097】
N,N’−ビス[(1S)−(1−ナフチル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル]−2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジアミドの1H−NMR(300MHz,CD3OD,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);0.90(6H,s),1.36(6H,s),1.46(6H,s),4.85(4H,s),5.47(2H,s),7.10〜8.30(14H,m)
【0098】
得られたN,N’−ビス[(1S)−(1−ナフチル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル]−2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジアミド1.8gとキシレン90mLを混合し、内温130℃で1時間攪拌した後、チタンテトライソプロポキシド97mgを加え、同温度で48時間攪拌、反応させた。反応終了後、反応液を濃縮処理し、得られた濃縮残渣をカラムクロマトグラフィ(中性アルミナ、ヘキサン/酢酸エチル=10/1(体積比))により精製処理し、白色粉末の2,2−ビス[2−[(4S)−(1−ナフチル)−5,5−ジメチルオキサゾリン]]プロパン1.4gを得た。
【0099】
2,2−ビス[2−[(4S)−(1−ナフチル)−5,5−ジメチルオキサゾリン]]プロパンの1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS基準)スペクトル
δ(ppm);0.81(6H,s),1.78(6H,s),1.81(6H,s),5.85(2H,s),7.39〜7.95(14H,m)
【0100】
窒素置換した50mLシュレンク管に、トリフルオロメタンスルホン酸銅18mg、上記で得た2,2−ビス[2−[(4S)−(1−ナフチル)−5,5−ジメチルオキサゾリン]]プロパン27mgおよびジクロロエタン5mLを加えた後、室温で10分攪拌し、不斉銅触媒を調製した。その後、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン7.8gを加え、内温40℃に調整し、ジアゾ酢酸エチル1.1gを2時間かけて滴下し、さらに同温度で30分間攪拌、反応させた。反応液をガスクロマトグラフィにより分析したところ、2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸エチルの収率は、93%であり(ジアゾ酢酸エチル基準)、トランス体/シス体=69/31であった。また、液体クロマトグラフィにより光学純度を分析したところ、トランス体の光学純度は82%e.e.、シス体の光学純度は8%e.e.であった。なお、トランス体とは、シクロプロパン環平面に対して、1位のエステル基と3位の2−メチル−1−プロペニル基とが、反対側にあるものをいい、シス体とは、シクロプロパン環平面に対して、1位のエステル基と3位の2−メチル−1−プロペニル基とが、同一側にあるものをいう。
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、不斉シクロプロパン化反応の触媒の配位子として有用な光学活性ナフチルアルコール類が、入手が容易なナフチルグリシン類から、収率良く、また光学純度よく得ることができる。本発明の光学活性ナフチルアルコール類から容易に誘導される光学活性ビスオキサゾリン化合物を、不斉シクロプロパン化反応の触媒の配位子として用いると、目的とするシクロプロパン化合物をより収率よく得ることができるため、工業的に有利である。
Claims (5)
- 一般式(2)
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表わし、R5は炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基または置換されていてもよいアラルキル基を表わす。ここで、R5が炭素数1〜6のアルキル基を表わす場合は、同じ炭素原子に結合する二つのR5が結合してその結合炭素原子とともに環を形成してもよい。)
で示されるナフチルアルコール類と光学活性N−ホルミルフェニルアラニンを、溶媒中で反応させて、一般式(1)
(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は上記と同一の意味を表わし、*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性ナフチルアルコール類と光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩を形成させ、該ジアステレオマー塩のうちの一方のジアステレオマー塩を、他方のジアステレオマー塩と分離した後、分離したジアステレオマー塩をアルカリ処理することを特徴とする光学活性ナフチルアルコール類の製造方法。 - 一般式(1)で示される光学活性ナフチルアルコール類と光学活性N−ホルミルフェニルアラニンとのジアステレオマー塩。
- 下記(A)〜(D)工程を含むことを特徴とするナフチルアルコール類の製造方法。
(A)一般式(3)
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表わす。)
で示されるナフチルグリシン類と塩素化剤と一般式(4)
(式中、R6は炭素数1〜6のアルキル基を表わす。)
で示されるアルコール類を反応させて、一般式(5)
(式中、R1、R2、R3、R4およびR6は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるアミノ酸エステル塩酸塩を得る工程。
(B)前記工程(A)で得られた一般式(5)で示されるアミノ酸エステル塩酸塩と、一般式(6)
(式中、nは、1、2または3を表わす。)
で示される化合物もしくは一般式(7)
(式中、nは、上記と同一の意味を表わし、Xは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表わす。)
で示される化合物を、第三級アミンの存在下に反応させて、一般式(8)
(式中、R1、R2、R3、R4、R6およびnは上記と同一の意味を表わす。)
で示される化合物を得る工程。
(C)前記工程(B)で得られた一般式(8)で示される化合物と一般式(9)
(式中、R7は炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよいフェニル基を表わし、X’は、ハロゲン原子を表わす。)
で示される化合物もしくは一般式(10)
(式中、R8は、炭素数2〜6のアルキレン基を表わし、X’は、上記と同一の意味を表わす。)
で示される化合物を反応させて、一般式(11)
(式中、R1、R2、R3、R4およびnは上記と同一の意味を表わし、R5は炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基または置換されていてもよいアリール基を表わす。ここで、R5が炭素数1〜6のアルキル基を表わす場合は、同じ炭素原子に結合する二つのR5が結合してその結合炭素原子とともに環を形成してもよい。)
で示される化合物を得る工程。
(D)前記工程(C)で得られた一般式(11)で示される化合物に塩基を作用させて、一般式(2)
(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるナフチルアルコール類を得る工程。 - 一般式(11)で示される化合物。
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