JP2004155696A - 光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類の製造方法およびその中間体 - Google Patents
光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類の製造方法およびその中間体 Download PDFInfo
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Abstract
(式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、低級アルコキシ基等を表わす。*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類の製造方法を提供すること。
【解決手段】一般式(1)
(式中、R1およびR2は上記と同一の意味を表わす。)
で示される2−アミノ−2−フェニルエタノール類と光学活性ショウノウ−10−スルホン酸を溶媒中で反応させて、一般式(2)で示される光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類と光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩を形成させ、該ジアステレオマー塩のうちの一方のジアステレオマー塩を、他方のジアステレオマー塩と分離した後、分離したジアステレオマー塩をアルカリ処理することを特徴とする光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類の製造方法およびその中間体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般式(2)
(式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基またはトリフルオロメチルチオ基を表わす。*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類は、例えば医薬の合成中間体として有用な化合物である(例えば非特許文献1参照。)。
【0003】
かかる一般式(2)で示される光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類の製造方法としては、これまで不斉合成による製造方法(例えば非特許文献2参照。)が知られているが、高価な試剤や毒性を有し、取扱いに注意を要する試剤を用いている点で、工業的に有利な方法とは言えなかった。
【0004】
【非特許文献1】
J.Am.Chem.Soc.,2000,122,7416
【非特許文献2】
J.Am.Chem.Soc.,2001,123,1862
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況のもと、本発明者らは、工業的に有利な上記一般式(2)で示される光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類の製造方法について検討したところ、2−フェニルグリシン類から容易に誘導可能な一般式(1)で示される2−アミノ−2−フェニルエタノール類を、入手容易な光学活性ショウノウ−10−スルホン酸で光学分割することにより、光学純度よく光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類を得ることができることを見出し、本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、一般式(1)
(式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基またはトリフルオロメチルチオ基を表わす。)
で示される2−アミノ−2−フェニルエタノール類と光学活性ショウノウ−10−スルホン酸を溶媒中で反応させて、一般式(2)
(式中、R1およびR2は上記と同一の意味を表わし、*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類と光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩を形成させ、該ジアステレオマー塩のうちの一方のジアステレオマー塩を、他方のジアステレオマー塩と分離した後、分離したジアステレオマー塩をアルカリ処理することを特徴とする光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類の製造方法およびその中間体を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
一般式(1)
で示される2−アミノ−2−フェニルエタノール類(以下、2−アミノ−2−フェニルエタノール類(1)と略記する。)の式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基またはトリフルオロメチルチオ基を表わす。
【0008】
ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数1〜4の低級アルキル基が挙げられる。低級アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等の直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数1〜4の低級アルコキシ基が挙げられる。
【0009】
本発明に用いられる2−アミノ−2−フェニルエタノール類(1)は、通常ラセミ体であるが、いずれか一方の光学異性体が他方よりもやや過剰な光学純度の低い光学異性体の混合物であってもよい。
【0010】
2−アミノ−2−フェニルエタノール類(1)は、例えば対応する2−フェニルグリシン類を、水素化リチウムアルミニウム等の還元剤と反応させることにより、容易に製造することができる。2−フェニルグリシン類は、市販されているものを用いてもよいし、例えばベンズアルデヒド類とシアン化ナトリウム等のシアノ化合物と炭酸アンモニウムとを反応させ、次いで水酸化カリウム等のアルカリで処理する方法(例えば日本化学会編実験化学講座第四版22巻195頁等)により製造したものを用いてもよい。
【0011】
かかる2−アミノ−2−フェニルエタノール類(1)としては、例えば2−アミノ−2−(3,5−ジフルオロフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3,5−ジクロロフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3,5−ジブロモフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3−フルオロ−5−クロロフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3−ブロモ−5−フルオロフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3−クロロ−5−ヨードフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3−ブロモ−5−ヨードフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3,5−ジヨードフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3−フルオロ−5−メチルフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3−ブロモ−5−メチルフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3,5−ジメチルフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エタノール、
【0012】
2−アミノ−2−(3,5−ジメトキシフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3,5−ジエトキシフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3−ブロモ−5−メトキシフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3−ブロモ−5−トリフルオロメチルフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3−メチル−5−トリフルオロメチルフェニル)エタノール、2−アミノ−2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタノール、2−アミノ−2−(3−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)エタノール、2−アミノ−2−[3,5−ビス(トリフルオロメトキシ)フェニル]エタノール、2−アミノ−2−(3−メトキシ−5−ベンジルオキシフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(3,5−ジベンジルオキシフェニル)エタノール、2−アミノ−2−[3,5−ビス(トリフルオロメチルチオ)フェニル]エタノール等が挙げられる。
【0013】
光学活性ショウノウ−10−スルホン酸には、(1R)−(−)−ショウノウ−10−スルホン酸と(1S)−(+)−ショウノウ−10−スルホン酸の二種類の光学異性体が存在し、本発明には、そのいずれを用いてもよく、目的とする光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類に応じて、適宜選択すればよい。かかる光学活性ショウノウ−10−スルホン酸は、通常市販されているものを用いればよい。
【0014】
光学活性ショウノウ−10−スルホン酸の使用量は、2−アミノ−2−フェニルエタノール類(1)に対して、通常0.1〜1モル倍である。
【0015】
2−アミノ−2−フェニルエタノール類(1)と光学活性ショウノウ−10−スルホン酸の反応は、溶媒中で行われる。溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばtert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒、水等の単独または混合溶媒が挙げられる。かかる溶媒のなかでも、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびこれらと水との混合溶媒が好ましい。
【0016】
かかる溶媒の使用量は、2−アミノ−2−フェニルエタノール類(1)に対して、通常0.5〜100重量倍、好ましくは1〜50重量倍である。溶媒は、予め2−アミノ−2−フェニルエタノール類(1)および/または光学活性ショウノウ−10−スルホン酸に加えておいてもよい。
【0017】
2−アミノ−2−フェニルエタノール類(1)と光学活性ショウノウ−10−スルホン酸の反応は、通常2−アミノ−2−フェニルエタノール類(1)を溶媒に溶解させた溶液と、光学活性ショウノウ−10−スルホン酸を混合することにより実施される。その混合順序は特に制限されないが、通常は、2−アミノ−2−フェニルエタノール類(1)の溶媒溶液に、光学活性ショウノウ−10−スルホン酸が加えられる。光学活性ショウノウ−10−スルホン酸は、連続的に加えてもよいし、間欠的に加えてもよい。また、光学活性ショウノウ−10−スルホン酸は、そのまま用いてもよいし、溶媒溶液として用いてもよい。
【0018】
反応温度は、通常0℃以上、反応混合物の還流温度以下の範囲であればよい。
【0019】
反応終了後、一般式(2)
(式中、R1およびR2は上記と同一の意味を表わし、*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類(以下、光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類(2)と略記する。)は、光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とジアステレオマー塩を形成しており、該ジアステレオマー塩のうちの一方のジアステレオマー塩を、他方のジアステレオマー塩と分離し、分離したジアステレオマー塩をアルカリ処理することにより、光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類を得ることができる。
【0020】
一方のジアステレオマー塩を、他方のジアステレオマー塩と分離する手段としては、多くの場合、一方のジアステレオマー塩の一部が結晶として反応マス中に析出しているため、これを濾過処理する方法が挙げられる。一方のジアステレオマー塩の一部が結晶として析出している反応マスをそのまま濾過処理してもよいが、該反応マスを冷却するか、あるいは、濃縮することにより、さらに多くの該ジアステレオマー塩を晶出させて取り出すことが好ましい。条件によっては、該ジアステレオマー塩が反応マス中に完溶していることもあり、この場合には、反応マスを冷却するか、あるいは、濃縮することにより、一方のジアステレオマー塩を晶出させて取り出すことができる。
【0021】
かくして得られる光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類(2)と光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩としては、例えば2−アミノ−2−(3,5−ジフルオロフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3,5−ジクロロフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3,5−ジブロモフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3−フルオロ−5−クロロフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3−ブロモ−5−フルオロフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3−クロロ−5−ヨードフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3−ブロモ−5−ヨードフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3,5−ジヨードフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、
【0022】
2−アミノ−2−(3−フルオロ−5−メチルフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3−ブロモ−5−メチルフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3,5−ジメチルフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3,5−ジメトキシフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3,5−ジエトキシフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3−ブロモ−5−メトキシフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、
【0023】
2−アミノ−2−(3−ブロモ−5−トリフルオロメチルフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3−メチル−5−トリフルオロメチルフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−[3,5−ビス(トリフルオロメトキシ)フェニル]エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3−メトキシ−5−ベンジルオキシフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−(3,5−ジベンジルオキシフェニル)エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩、2−アミノ−2−[3,5−ビス(トリフルオロメチルチオ)フェニル]エタノールと光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩等が挙げられる。
【0024】
分離した光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類(2)と光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩は、目的に応じて、その両方をそれぞれアルカリ処理してもよいし、いずれか一方のジアステレオマー塩のみをアルカリ処理してもよい。また必要に応じて精製処理をおこなった後、アルカリ処理してもよい。一方のジアステレオマー塩を結晶として析出させ、他方のジアステレオマー塩と分離した場合には、該結晶を再結晶処理した後、アルカリ処理することが、光学純度のさらなる向上という点で、好ましい。一方のジアステレオマー塩を結晶化させて、濾過処理により、他方のジアステレオマー塩と分離した場合には、濾液中に他方のジアステレオマー塩が含まれているが、かかる濾液を、そのままアルカリ処理してもよいし、例えば濃縮処理等により、他方のジアステレオマー塩を取り出した後、アルカリ処理してもよい。
【0025】
アルカリ処理は、通常ジアステレオマー塩とアルカリを混合することにより行なわれ、混合温度は、通常0〜100℃の範囲である。用いられるアルカリとしては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられ、通常水溶液が用いられる。アルカリの水溶液を用いる場合のアルカリ濃度は、通常1〜50重量%、好ましくは2〜20重量%の範囲である。アルカリの使用量は、ジアステレオマー塩に対して、通常1〜5モル倍程度である。
【0026】
ジアステレオマー塩をアルカリ処理すると、通常光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類(2)は、該アルカリ処理マスから油層として分液あるいは固体として析出しており、これをそのまま分離して取り出してもよいし、また、該アルカリ処理マスに水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理して、得られた有機層から有機溶媒を留去して、光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類(2)を取り出してもよい。水に不溶の有機溶媒としては、例えばtert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられ、その使用量は、用いたジアステレオマー塩に対して、通常0.5〜50重量倍の範囲である。かかる水に不溶の有機溶媒は、ジアステレオマー塩をアルカリ処理する際に予め加えておいても何ら問題ない。
【0027】
このようにしてジアステレオマー塩を、アルカリ処理することにより、光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類(2)を取り出すことができる。
【0028】
また、用いた光学活性ショウノウ−10−スルホン酸は、例えば次のような操作により回収でき、回収した光学活性ショウノウ−10−スルホン酸は、2−アミノ−2−フェニルエタノール類(1)と光学活性ショウノウ−10−スルホン酸との反応に再利用できる。
【0029】
ジアステレオマー塩をアルカリ処理し、光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類(2)を取り出した後の処理マスを酸処理することにより、光学活性ショウノウ−10−スルホン酸を含む水溶液を得ることができ、該水溶液を、例えば濃縮処理、晶析処理等することにより、光学活性ショウノウ−10−スルホン酸を取り出すことができる。
【0030】
光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類(2)を取り出した後の処理マスの酸処理には、通常塩酸、硫酸等の鉱酸の水溶液が用いられ、その濃度は、通常1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%である。かかる酸は、処理マスのpHが通常2.5以下、好ましくは2以下となる量が用いられる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、得られた光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類の光学純度は、光学活性カラムを用いる高速液体クロマトグラフ分析法によって求めた。
【0032】
実施例1
2−アミノ−2−(3,5−ジメトキシフェニル)エタノール(ラセミ体)17gをイソプロパノール100mLに溶解し、内温70〜80℃に昇温した。これに、(1R)−(−)−ショウノウ−10−スルホン酸9gをイソプロパノール50mLに溶解させた溶液を加えた。その後、室温で一晩静置し、析出した光学活性2−アミノ−2−(3,5−ジメトキシフェニル)エタノールと(1R)−(−)−ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩を濾取し、氷水で冷やしたイソプロパノール20mLで洗浄した。得られたジアステレオマー塩に、イソプロパノール100mLおよび水3mLを加え、還流するまで昇温し、ジアステレオマー塩を溶解させた。その後、室温まで冷却し、析出したジアステレオマー塩を濾取し、氷水で冷やしたイソプロパノール20mLで洗浄した後、上記と同様に再結晶操作をもう一度繰り返し、無色針状晶のジアステレオマー塩5.2gを得た。
【0033】
融点 176〜178℃
元素分析値 C:56.0%、H:7.3%、N:3.3%(理論値 C:55.9%、H:7.3%、N:3.3%)
【0034】
上記で得た無色針状晶のジアステレオマー塩5.1gに、1モル/L水酸化ナトリウム水溶液15mL、水15mLおよびクロロホルム100mLを加え、室温で抽出処理し、有機層と水層に分離した。水層は、クロロホルム50mLを加え、抽出処理し、得られたクロロホルム層と先に得た有機層と混合し、水で洗浄した後、クロロホルムを留去して、(S)−2−アミノ−2−(3,5−ジメトキシフェニル)エタノール2.2gを得た。収率:13%、光学純度:S体比=99.82%。
【0035】
[α]D(c0.5,CH3OH) +12.4°
融点:126〜127℃
【0036】
1H−NMR(300MHz,CDCl3)スペクトル
δ(ppm);3.51〜3.57(1H,dd),3.70〜3.75(1H,dd),3.79(6H,s),3.92〜4.00(1H,m),6.36〜6.38(1H,t),6.48〜6.49(2H,d)
【0037】
元素分析値 C:60.9%、H:7.7%、N:7.1%(理論値 C:60.9%、H:7.7%、N:7.1%)
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、入手が容易な2−アミノ−2−フェニルエタノール類を光学活性ショウノウ−10−スルホン酸で光学分割することにより、高価な試剤や取扱いに注意を要する試剤を用いることなく、光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類を光学純度よく得ることができ、しかも用いた光学分割剤である光学活性ショウノウ−10−スルホン酸も回収、再使用できるため、工業的に有利である。
Claims (7)
- 一般式(1)
(式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基またはトリフルオロメチルチオ基を表わす。)
で示される2−アミノ−2−フェニルエタノール類と光学活性ショウノウ−10−スルホン酸を溶媒中で反応させて、一般式(2)
(式中、R1およびR2は上記と同一の意味を表わし、*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類と光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩を形成させ、該ジアステレオマー塩のうちの一方のジアステレオマー塩を、他方のジアステレオマー塩と分離した後、分離したジアステレオマー塩をアルカリ処理することを特徴とする光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類の製造方法。 - 一般式(2)で示される光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類と光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩のうちの一方のジアステレオマー塩を結晶化させ、他方のジアステレオマー塩と分離する請求項1に記載の光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類の製造方法。
- 結晶化させて分離した一方の一般式(2)で示される光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類と光学活性ショウノウ−10−スルホン酸とのジアステレオマー塩を再結晶処理した後、アルカリ処理する請求項2に記載の光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類の製造方法。
- 光学活性ショウノウ−10−スルホン酸の使用量が、一般式(1)で示される2−アミノ−2−フェニルエタノール類に対して、0.1〜1モル倍である請求項1に記載の光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類の製造方法。
- 溶媒が、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、水またはこれらの混合溶媒である請求項1に記載の光学活性2−アミノ−2−フェニルエタノール類の製造方法。
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