JP2004051604A - 光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類の製造方法およびその中間体 - Google Patents
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Abstract
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、低級アルキル基等を表わす。)
で示される光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類の製造方法を提供すること。
【解決手段】一般式(1)
で示される2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類と、一般式(2)
(式中、R5は、水素原子等を表わす。*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性タートラニル酸類を、溶媒中で反応させて、ジアステレオマー塩を得、該ジアステレオマー塩をアルカリ処理することを特徴とする光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類の製造方法およびその中間体に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールに代表される一般式(3)
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を表わす。*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類は、医薬中間体、農薬中間体、光学活性化試剤、不斉合成触媒の中間体等として有用な化合物である(例えばEur.J.Org.Chem.,1937(2001)、J.Org.Chem.,63,2742(1998)等)。
【0003】
かかる一般式(3)で示される光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類の製造方法としては、これまで不斉合成による製造方法(J.Org.Chem.,63,2742(1988))や2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類のラセミ体と光学活性マンデル酸誘導体と反応させて、アミド体に変換した後、該アミド体をクロマト分離し、加水分解する方法(Eur.J.Org.Chem.,1937(2001))が知られている。しかしながら、前者の不斉合成による方法は、取扱いに注意を要する試剤や高価な試剤を用いている点や反応工程数が多いという点で、後者の方法は、煩雑なクロマト分離を行う必要があるという点で、いずれも工業的に有利な方法とは言えなかった。
【0004】
一方、2−ナフチルグリシン類を還元することにより、容易に一般式(1)
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を表わす。)
で示される2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類を製造することができるため、一般式(1)で示される2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類を効率よく光学分割する方法は、一般式(3)で示される光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類の工業的に有利な方法となり得ると考えられるが、これまで、一般式(1)で示される2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類を光学分割し、一般式(3)で示される光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類を製造する方法は知られていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況のもと、本発明者らは、工業的に有利な一般式(3)で示される光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類の製造方法について検討したところ、一般式(1)で示される2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類類を入手容易な光学活性タートラニル酸に代表される光学活性タートラニル酸類で光学分割することにより、収率よく、また光学純度よく光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類を得ることができることを見出し、本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、一般式(1)
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を表わす。)
で示される2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類と、一般式(2)
(式中、R5は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を表わす。*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性タートラニル酸類を、溶媒中で反応させて、一般式(3)
(式中、R1、R2、R3およびR4は上記と同一の意味を表わし、*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類と一般式(2)で示される光学活性タートラニル酸類とのジアステレオマー塩を得、該ジアステレオマー塩をアルカリ処理することを特徴とする光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類の製造方法およびその中間体を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
一般式(1)
で示される2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(以下、2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)と略記する。)の式中、R1、R2、R3、およびR4はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を表わす。
【0008】
ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数1〜4の低級アルキル基が挙げられる。低級アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等の直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数1〜4の低級アルコキシ基が挙げられる。
【0009】
本発明に用いられる2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)は、通常ラセミ体であるが、いずれか一方の光学異性体が他方よりもやや過剰な光学純度の低い光学異性体の混合物であってもよい。
【0010】
2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)は、例えば対応する2−ナフチルグリシン類を、水素化リチウムアルミニウム等の還元剤と反応させることにより、容易に製造することができる。2−ナフチルグリシン類は、市販されているものを用いてもよいし、例えば2−ナフチルアルデヒド類とシアン化ナトリウム等のシアノ化合物と炭酸アンモニウムとを反応させ、次いで水酸化カリウム等のアルカリで処理することにより製造したものを用いてもよい。
【0011】
かかる2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)としては、例えば2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール、2−アミノ−2−(6−クロロ−2−ナフチル)エタノール、2−アミノ−2−(1−ブロモ−2−ナフチル)エタノール、2−アミノ−2−(7−メチル−2−ナフチル)エタノール、2−アミノ−2−(1−n−プロピル−2−ナフチル)エタノール、2−アミノ−2−(6−メトキシ−2−ナフチル)エタノール、2−アミノ−2−(3,8−ジメトキシ−2−ナフチル)エタノール等が挙げられる。
【0012】
一般式(2)
で示される光学活性タートラニル酸類(以下、光学活性タートラニル酸類(2)と略記する。)の式中、R5は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を表わし、*は、不斉炭素原子を表わす。ハロゲン原子、低級アルキル基および低級アルコキシ基としては、上記したものと同様のものが挙げられる。
【0013】
かかる光学活性タートラニル酸類(2)としては、例えば光学活性タートラニル酸、光学活性p−クロロタートラニル酸、光学活性o−クロロタートラニル酸、光学活性m−クロロタートラニル酸、光学活性o−ブロモタートラニル酸、光学活性o−ニトロタートラニル酸、光学活性m−ニトロタートラニル酸、光学活性p−ニトロタートラニル酸、光学活性o−メチルタートラニル酸、光学活性m−メチルタートラニル酸、光学活性p−メチルタートラニル酸、光学活性o−エチルタートラニル酸、光学活性p−エチルタートラニル酸、光学活性o−(n−プロピル)タートラニル酸、光学活性p−(n−プロピル)タートラニル酸、光学活性p−イソプロピルタートラニル酸、光学活性p−(n−ブチル)タートラニル酸、光学活性p−(sec−ブチル)タートラニル酸、光学活性p−(tert−ブチル)タートラニル酸、光学活性o−メトキシタートラニル酸、光学活性m−メトキシタートラニル酸、光学活性p−メトキシタートラニル酸、光学活性o−エトキシタートラニル酸、光学活性p−エトキシタートラニル酸、光学活性m−イソプロポキシタートラニル酸、光学活性p−イソプロポキシタートラニル酸、光学活性p−(n−ブトキシ)タートラニル酸等が挙げられる。
【0014】
かかる光学活性タートラニル酸は、例えば光学活性酒石酸と無水酢酸を反応させ、次いでアニリン誘導体と反応させ、加水分解する方法等公知の方法に準じて製造することができる(例えば特開平10−218847号公報等)。
【0015】
かかる光学活性タートラニル酸類には、(2R,3R)体と(2S,3S)体の二種類の光学異性体が存在し、本発明には、そのいずれを用いてもよく、目的とする光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類に応じて、適宜選択すればよい。
【0016】
光学活性タートラニル酸類(2)の使用量は、2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)に対して、通常0.1〜1モル倍である。
【0017】
2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)と光学活性タートラニル酸類(2)の反応は、溶媒中で行われる。溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒、水等の単独または混合溶媒が挙げられる。かかる溶媒のなかでも、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびこれらと水との混合溶媒が好ましい。
【0018】
かかる溶媒の使用量は、2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)に対して、通常0.5〜100重量倍、好ましくは1〜50重量倍である。溶媒は、予め2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)もしくは光学活性タートラニル酸類(2)に加えておいてもよい。
【0019】
2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)と光学活性タートラニル酸類(2)の反応は、通常2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)を溶媒に溶解させた溶液と、光学活性タートラニル酸類(2)を混合することにより実施される。その混合順序は特に制限されないが、通常は、2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)の溶媒溶液に、光学活性タートラニル酸類(2)が加えられる。光学活性タートラニル酸類(2)は、連続的に加えてもよいし、間欠的に加えてもよい。また、光学活性タートラニル酸類(2)は、そのまま用いてもよいし、溶媒溶液として用いてもよい。
【0020】
反応温度は、通常0℃以上、反応混合物の還流温度以下の範囲であればよい。
【0021】
反応終了後、一般式(3)
(式中、R1、R2、R3およびR4は上記と同一の意味を表わし、*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(以下、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(3)と略記する。)は、光学活性タートラニル酸類(2)とジアステレオマー塩を形成しており、通常一方のジアステレオマー塩の一部が反応マス中に晶出している。これをそのまま取り出してもよいが、該反応マスを冷却するか、あるいは、濃縮することにより、さらに多くの該ジアステレオマー塩を晶出させて取り出すことが好ましい。条件によっては、該ジアステレオマー塩が反応マス中に完溶していることもあり、この場合には、反応マスを冷却するか、あるいは、濃縮することにより、該ジアステレオマー塩を晶出させて取り出すことができる。
【0022】
晶出させた一方の光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(3)と光学活性タートラニル酸類(2)とのジアステレオマー塩は、通常の濾過操作によって容易に取り出すことができる。
【0023】
かくして得られる光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(3)と光学活性タートラニル酸類(2)とのジアステレオマー塩としては、例えば光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性タートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性p−クロロタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性m−クロロタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性o−クロロタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ブロモ−2−ナフチル)エタノールと光学活性タートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ブロモ−2−ナフチル)エタノールと光学活性p−クロロタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(6−クロロ−2−ナフチル)エタノールと光学活性タートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(6−クロロ−2−ナフチル)エタノールと光学活性p−クロロタートラニル酸とのジアステレオマー塩、
【0024】
光学活性2−アミノ−2−(7−メチル−2−ナフチル)エタノールと光学活性タートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(7−メチル−2−ナフチル)エタノールと光学活性p−クロロタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−[1−(n−プロピル)−2−ナフチル]エタノールと光学活性タートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−[1−(n−プロピル)−2−ナフチル]エタノールと光学活性p−クロロタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(6−メトキシ−2−ナフチル)エタノールと光学活性タートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(6−メトキシ−2−ナフチル)エタノールと光学活性p−クロロタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(3,8−ジメトキシ−2−ナフチル)エタノールと光学活性タートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(3,8−ジメトキシ−2−ナフチル)エタノールと光学活性p−クロロタートラニル酸とのジアステレオマー塩、
【0025】
光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性o−ニトロタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性m−ニトロタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性p−ニトロタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性o−メチルタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性m−メチルタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性p−メチルタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性o−エチルタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性m−エチルタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性p−エチルタートラニル酸とのジアステレオマー塩、
【0026】
光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性o−イソプロピルタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性m−イソプロピルタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性p−イソプロピルタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性p−(n−ブチル)タートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性p−(sec−ブチル)タートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性p−(tert−ブチル)タートラニル酸とのジアステレオマー塩、
【0027】
光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性o−メトキシタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性m−メトキシタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性p−メトキシタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性o−エトキシタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性p−エトキシタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性m−イソプロポキシタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性p−イソプロポキシタートラニル酸とのジアステレオマー塩、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと光学活性p−(n−ブトキシ)タートラニル酸とのジアステレオマー塩等が挙げられる。
【0028】
かくして得られる光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(3)と光学活性タートラニル酸類(2)とのジアステレオマー塩は、そのまま、あるいは、例えば洗浄、再結晶等によりさらに精製した後、アルカリ処理することにより、容易に光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(3)に導くことができる。
【0029】
アルカリ処理は、通常ジアステレオマー塩とアルカリを混合することにより行なわれ、混合温度は、通常0〜100℃の範囲である。用いられるアルカリとしては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられ、通常水溶液が用いられる。アルカリの水溶液を用いる場合のアルカリ濃度は、通常1〜50重量%、好ましくは3〜20重量%の範囲である。アルカリの使用量は、ジアステレオマー塩に対して、通常1〜5モル倍程度である。
【0030】
ジアステレオマー塩をアルカリ処理すると、通常光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(3)は、該アルカリ処理マスから油層として分液あるいは固体として析出しており、これをそのまま分離して取り出してもよいし、また、該アルカリ処理マスに水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理して、得られた有機層から有機溶媒を留去して、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(3)を取り出してもよい。水に不溶の有機溶媒としては、例えばジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられ、その使用量は、用いたジアステレオマー塩に対して、通常0.5〜30重量倍の範囲である。かかる水に不溶の有機溶媒は、ジアステレオマー塩をアルカリ処理する際に予め加えておいても何ら問題ない。
【0031】
また、ジアステレオマー塩を予め酸処理した後、アルカリ処理することにより、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(3)を取り出すこともできる。ジアステレオマー塩を予め酸処理すると、光学活性タートラニル酸類(2)が遊離するため、遊離した光学活性タートラニル酸類(2)を分離した後にアルカリ処理することが好ましい。
【0032】
酸処理は、通常ジアステレオマー塩と酸の水溶液を混合することにより行われ、混合温度は通常0〜100℃である。
【0033】
用いられる酸としては、通常塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸の水溶液が挙げられ、その濃度は、通常1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%である。また、かかる酸の使用量は、ジアステレオマー塩に対して通常1〜5モル倍、好ましくは1〜2モル倍である。
【0034】
遊離した光学活性タートラニル酸類(2)の分離方法としては、例えばジアステレオマー塩を予め酸処理したマスに、水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理する方法等が挙げられる。水に不溶の有機溶媒としては、前記したものと同様のものが挙げられ、その使用量は、用いたジアステレオマー塩に対して、通常0.5〜20重量倍である。かかる水に不溶の有機溶媒は、ジアステレオマー塩を酸処理する際に予め加えておいても何ら問題ない。
【0035】
また、遊離した光学活性タートラニル酸類(2)の結晶の一部もしくは全部が酸処理マス中に析出している場合には、これをそのまま、あるいは、必要に応じてさらに冷却した後、濾過処理することにより、遊離した光学活性タートラニル酸類(2)を分離することもできる。
【0036】
酸処理に次いで行なうアルカリ処理では、通常水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液が用いられ、その濃度は、通常1〜50重量%、好ましくは5〜20重量%である。かかるアルカリは、通常処理マスのpHの値が10以上となる量が用いられる。また、処理温度は通常0〜100℃である。
【0037】
ジアステレオマー塩を予め酸処理した後に、アルカリ処理すると、通常光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(3)は、該アルカリ処理マスから油層として分液あるいは固体として析出しており、該油層あるいは該固体をそのまま分離して取り出してもよい。また、該アルカリ処理マスに水に不溶の有機溶媒を加え抽出処理し、得られる有機層から有機溶媒を留去して、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(3)を取り出してもよい。水に不溶の有機溶媒としては、前記したものと同様のものが挙げられ、その使用量は、処理に用いたジアステレオマー塩に対して通常0.5〜70重量倍の範囲である。かかる水に不溶の有機溶媒は、アルカリ処理を行なう際に予め加えておいても何ら問題ない。
【0038】
このようにしてジアステレオマー塩を、アルカリ処理、あるいは、予め酸処理した後、アルカリ処理することにより、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(3)を取り出すことができる。
【0039】
また、用いた光学活性タートラニル酸類(2)は、例えば次のような操作により容易に回収でき、回収した光学活性タートラニル酸類(2)は、2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)と光学活性タートラニル酸類(2)との反応に再利用できる。
【0040】
ジアステレオマー塩を予め酸処理することなく、アルカリ処理した場合には、光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(3)を取り出した後の処理マスを酸処理することにより、光学活性タートラニル酸類(2)を回収することができる。
【0041】
光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(3)を取り出した後の処理マスの酸処理には、通常塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸水溶液が用いられ、その濃度は、通常1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%である。かかる酸は、処理マスのpHが通常2.5以下、好ましくは2以下となる量が用いられる。
【0042】
光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(3)を取り出した後の処理マスを酸処理すると、通常光学活性タートラニル酸類(2)の一部もしくは全部が該酸処理マス中に晶出しており、該酸処理マスをそのまま、あるいは、必要に応じてさらに冷却した後、濾過処理することにより、光学活性タートラニル酸類(2)を回収することができる。また、該酸処理マスに水に不溶の有機溶媒を加え抽出処理して、得られる有機層から有機溶媒を留去して、光学活性タートラニル酸類(2)を回収することもできる。水に不溶の有機溶媒としては、前記したものと同様のものが挙げられ、かかる水に不溶の有機溶媒は、酸処理の際に予め加えておいてもよい。水に不溶の有機溶媒として、2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)と光学活性タートラニル酸類(2)との反応に用いられる溶媒を用いた場合には、抽出処理により得られる光学活性タートラニル酸類(2)を含む有機層をそのまま2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)と光学活性タートラニル酸類(2)との反応に再使用することができる。
【0043】
ジアステレオマー塩を予め酸処理した後にアルカリ処理した場合には、通常酸処理して得られる酸処理マス中に、光学活性タートラニル酸類(2)の一部もしくは全部が晶出しており、該酸処理マスをそのまま、あるいは、必要に応じてさらに冷却した後、濾過処理することにより、光学活性タートラニル酸類(2)を回収することができる。また、該酸処理マスに水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理して、得られる有機層から有機溶媒を留去して、光学活性タートラニル酸類(2)を回収することもできる。水に不溶の有機溶媒としては、前記したものと同様のものが挙げられ、かかる水に不溶の有機溶媒は、酸処理の際に予め加えておいてもよい。水に不溶の有機溶媒として、2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)と光学活性タートラニル酸類(2)との反応に用いられる溶媒を用いた場合には、抽出処理により得られる光学活性タートラニル酸類(2)を含む有機層をそのまま2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)と光学活性タートラニル酸類(2)との反応に再使用することができる。
【0044】
一方、ジアステレオマー塩を形成した光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類と対掌体の関係にある他方の光学活性体は、ジアステレオマー塩を濾過操作により取り出した後の濾液に含まれている。場合によっては、該濾液から溶媒を留去することにより光学純度よく他方の光学活性体を得ることができるが、通常濾液には、晶出せず溶媒に溶け込んだジアステレオマー塩、未反応の2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)や光学活性タートラニル酸類(2)等が含まれているため、かかる濾液をアルカリ処理して得られる油層、もしくは、予め酸処理した後にアルカリ処理して得られる油層から有機溶媒を留去することにより、光学純度のやや低い2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類として回収することができる。
【0045】
2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類(1)と光学活性タートラニル酸類(2)との反応を2−プロパノール等の親水性溶媒中で行った場合には、ジアステレオマー塩を取り出した後の濾液を濃縮し、得られる濃縮残渣をアルカリ処理あるいは予め酸処理した後にアルカリ処理することが好ましい。かかるアルカリ処理あるいは予め酸処理した後のアルカリ処理は、前記したジアステレオマー塩から光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類を取り出す方法に準じておこなわれる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、得られた光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類の光学純度は、光学活性カラムを用いる高速液体クロマトグラフ分析法によって求めた。
【0047】
実施例1
2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール(ラセミ体)22.4gを2−プロパノール300mLに溶解し、内温60〜70℃に昇温した。これに、(2R,3R)−タートラニル酸12.1gを2−プロパノール200mLに溶解させた溶液を加えた。その後、室温で一晩静置し、析出した光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノールと(2R,3R)−タートラニル酸とのジアステレオマー塩を濾取し、氷水で冷やした2−プロパノール50mLで洗浄した。得られたジアステレオマー塩に、2−プロパノール480mLおよび水320mLを加え、還流するまで昇温し、ジアステレオマー塩を溶解させた。その後、室温まで冷却し、析出したジアステレオマー塩を濾取した。濾取したジアステレオマー塩を、氷水で冷やした2−プロパノール100mLで洗浄した後、上記と同様に再結晶操作をもう一度繰り返し、無色鱗片状晶のジアステレオマー塩15.5gを得た。
【0048】
融点 201〜202℃。
元素分析値 C:63.8%、H:5.8%、N:6.6%(理論値 C:64.1%、H:5.9%、N:6.8%)。
【0049】
無色鱗片状晶のジアステレオマー塩14.5gに、1モル/L水酸化ナトリウム水溶液50mL、水50mLおよびクロロホルム500mLを加え、室温で抽出処理し、クロロホルム層と水層を分離した。クロロホルム層を水で洗浄した後、クロロホルムを留去して、(S)−2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール6.5gを得た。収率:29%、光学純度:S体比=99.98%。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類を光学活性タートラニル酸類で光学分割することにより、目的とする光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類を収率よく、また光学純度よく得ることができ、しかも用いた光学分割剤である光学活性タートラニル酸類も容易に回収、再使用できるため、工業的に有利である。
Claims (7)
- 一般式(1)
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を表わす。)
で示される2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類と、一般式(2)
(式中、R5は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を表わす。*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性タートラニル酸類を、溶媒中で反応させて、一般式(3)
(式中、R1、R2、R3およびR4は上記と同一の意味を表わし、*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類と一般式(2)で示される光学活性タートラニル酸類とのジアステレオマー塩を得、該ジアステレオマー塩をアルカリ処理することを特徴とする光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類の製造方法。 - 一般式(3)で示される光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類と一般式(2)で示される光学活性タートラニル酸類とのジアステレオマー塩を再結晶処理した後、該ジアステレオマー塩をアルカリ処理することを特徴とする請求項1に記載の光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類の製造方法。
- 一般式(3)で示される光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類と一般式(2)で示される光学活性タートラニル酸類とのジアステレオマー塩を予め酸処理した後、アルカリ処理する請求項1または2に記載の光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類の製造方法。
- 一般式(2)で示される光学活性タートラニル酸類の使用量が、一般式(1)で示される2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類に対して、0.1〜1モル倍である請求項1に記載の光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類の製造方法。
- 溶媒が、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、水またはこれらの混合溶媒である請求項1に記載の光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類の製造方法。
- 一般式(1)
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を表わす。)
で示される2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類と、一般式(2)
(式中、R5は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、低級アルキル基または低級アルコキシ基を表わす。*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性タートラニル酸類を、溶媒中で反応させることを特徴とする一般式(3)
(式中、R1、R2、R3およびR4は上記と同一の意味を表わし、*は、不斉炭素原子を表わす。)
で示される光学活性2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール類と一般式(2)で示される光学活性タートラニル酸類とのジアステレオマー塩の製造方法。
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WO2011024691A1 (ja) * | 2009-08-25 | 2011-03-03 | 住友化学株式会社 | 光学活性な1-アミノ-2-エテニルシクロプロパンカルボン酸エチルの製造方法 |
-
2002
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