JP2004338255A - ポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents

ポリイミドフィルムの製造方法 Download PDF

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Toyoaki Ishiwatari
豊明 石渡
Tsutomu Nakamura
勤 中村
Tsutomu Nakagami
勉 中上
Toru Sawaki
透 佐脇
Shinya Tange
真也 丹下
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Abstract

【課題】機械特性の改善されたポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】ジアミン成分、テトラカルボン酸成分、および溶媒とからなるポリアミック酸溶液に、
(1)無水酢酸と有機アミン化合物を連続またはバッチで添加し、
(2)次いで得られた溶液を水の濃度1〜4000ppmの雰囲気下にて、支持体上に流延してフィルムを得、
(3)得られた流延フィルムを支持体とともに加熱して、ポリアミック酸の少なくとも一部がポリイミドもしくはポリイソイミドに変換されたゲル状フィルムを得、
(4)得られたゲル状フィルムを支持体から分離して必要に応じ洗浄した後、同時二軸延伸または逐次ニ軸延伸し、
(5)得られた二軸延伸フィルムを、必要に応じ洗浄して溶媒を除去した後、熱処理に付して二軸配向ポリイミドフィルムを形成する、
ことを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高度に機械特性の改善されたポリイミドフィルムの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、特定の条件下で、支持体上に流延したフィルムを反応凝固し、さらに延伸してフィルムを得るポリイミドフィルムの製造方法およびそれから得られる二軸延伸フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
全芳香族ポリイミドはその優れた耐熱性や機械物性から幅広く工業的に利用され、特にそのフィルムは電子実装用途をはじめとする薄層電子部品の基材として重要な位置を占めるにいたっている。近年電子部品の小型化への強い要請から、より厚さの薄いポリイミドフィルムが要求されているが、厚みの減少にともない高い剛性を有することがフィルムの実用上あるいはハンドリング上不可欠の条件となる。全芳香族ポリイミドフィルムは剛直な構造を有するものの、例えば全芳香族ポリアミドフィルムと比較して必ずしも高ヤング率が実現されているとはいえず、市販される最高のヤング率のポリイミドフィルムでさえたかだか9GPaのレベルにとどまるのが現状である。
【0003】
全芳香族ポリイミドフィルムで高ヤング率を実現する方法として、(1)ポリイミドを構成する分子骨格を剛直かつ直線性の高い化学構造とすること、(2)ポリイミドを物理的な方法で分子配向させること、が考えられる。(1)の化学構造としては酸成分としてピロメリット酸あるいは3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、アミン成分としてパラフェニレンジアミン、ベンジジンあるいはそれらの核置換体のさまざまな組合せで素材検討がなされてきた。このなかでポリパラフェニレンピロメリットイミドは最も理論弾性率が高く(例えば、非特許文献1参照)かつ原料が安価であることから高ヤング率フィルム素材として最も期待される素材である。しかしそのポテンシャルにもかかわらず、ポリパラフェニレンピロメリットイミドフィルムとしては極めて脆いものしか得られない、またバランスのとれた高ヤング率フィルムとしても実現にいたっていないなどの問題があった。
【0004】
この問題を解決する方法として、パラフェニレンジアミンとピロメリット酸無水物の反応で得られたポリアミック酸溶液を化学環化することによる方法が提案されたが、この方法で得られたポリパラフェニレンピロメリットイミドフィルムのヤング率は高々8.5GPaにすぎなかった(特許文献1)。また、核置換パラフェニレンジアミンとピロメリット酸無水物の反応で得られたポリアミド酸溶液に無水酢酸を大量に添加したドープを流延し、低温で減圧下に乾燥したのち熱処理することにより、ヤング率20.1GPaのフィルムが得られることが記載されているが、この方法は低温で数時間の乾燥処理を必要とすることから工業的には非現実的な技術であり、またこの技術をポリパラフェニレンピロメリットイミドに適用した場合には機械測定すら不可能な脆弱なフィルムしか得られないことが記載されており、その効果は限定されたものであった(特許文献2)。
【0005】
したがって、剛直な芳香族ポリイミドに広く適用可能な高ヤング率フィルムの実現技術は未完成であり、特に高ヤング率かつ実用的な靭性を有するポリパラフェニレンピロメリットイミドフィルムは知られていなかったが、これらを解決する方法として、我々はキャストしたゲル状フィルムを脱水反応剤である無水酢酸と脱水反応触媒である有機アミン化合物と溶媒からなるイソイミド化溶液中に浸漬し、次に膨潤状態で二軸延伸してイミド化する製造方法、いわゆる湿式製膜法を開示した(特許文献3)。
【0006】
また、キャストして得られたゲル状フィルムを乾式製膜法によりドラムまたはエンドレスベルト上で溶媒を飛ばしながら固化させた後、膨潤状態で二軸延伸してイミド化する製造方法が開示されているが(特許文献4)、本乾式製膜方法を剛直な芳香族ポリイミド、特にポリパラフェニレンピロメリットイミドフィルムに用いると、脆弱なフィルムしか得られない。あるいは、イソイミド化反応を十分行わせるため大過剰の脱水反応剤と脱水反応触媒をポリアミック酸溶液中に混入しなくてはならないなどの問題が残され、現状では剛直なポリイミド製造に広く適用可能な湿式製膜法より工業化に有利な乾式製膜方法は知られていなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平1−282219号公報(第1−3項)
【0008】
【特許文献2】
特開平6−172529号公報(第1−5項)
【0009】
【特許文献3】
WO01/81456号 20ページ
【0010】
【特許文献4】
特開平5−237928号公報(第1−7項)
【0011】
【非特許文献1】
田代ら著 「繊維学会誌43巻」 1987年、78項
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、機械的性質、特にヤング率の改善されたポリイミドフィルムを製造する製造方法を提供することにある。また、本発明の更なる課題は、支持体上に流延されたポリアミック酸溶液の安定したゲル化を行うことが可能である乾式製膜製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、構成する分子骨格が剛直かつ直線性の高い化学構造であるポリイミドを用いて、機械的性質、特にヤング率が改善されたポリイミドフィルムを製造する乾式製膜製造方法および、安定して支持体上に流延されたポリアミック酸溶液のゲル化を行うことが可能である乾式製膜製造方法について鋭意検討した結果、以下方法で製造することにより実現できることを見出し本発明に至った。
【0014】
即ち本発明はジアミン成分、テトラカルボン酸成分、および溶媒とからなるポリアミック酸溶液に、
(1)無水酢酸と有機アミン化合物を連続またはバッチで添加し、
(2)次いで得られた溶液を水の濃度1〜4000ppmの雰囲気下にて、支持体上に流延してフィルムを得、
(3)得られた流延フィルムを支持体とともに加熱して、ポリアミック酸の少なくとも一部がポリイミドもしくはポリイソイミドに変換されたゲル状フィルムを得、
(4)得られたゲル状フィルムを支持体から分離して必要に応じ洗浄した後、同時二軸延伸または逐次ニ軸延伸し、
(5)得られた二軸延伸フィルムを、必要に応じ洗浄して溶媒を除去した後、熱処理に付して二軸配向ポリイミドフィルムを形成する、
ことを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法である。
【0015】
また本発明はp−フェニレンジアミン成分が30モル%以上、p−フェニレンジアミンとは異なる芳香族ジアミン成分が0モル%以上70モル%以下からなるジアミン成分と、ピロメリット酸成分が80モル%を超え、ピロメリット酸とは異なる芳香族テトラカルボン酸成分が0モル%以上20モル%未満からなるテトラカルボン酸成分とからなる上記に記載の方法で得られるポリイミドフィルムである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の方法について詳述する。
本発明のポリイミドを構成するジアミン成分はp−フェニレンジアミンおよびそれとは異なる芳香族ジアミンである。
【0017】
p−フェニレンジアミンと異なる芳香族ジアミン成分としては、例えばm−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノアントラセン、2,7−ジアミノアントラセン、1,8−ジアミノアントラセン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノ(m−キシレン)、2,5−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,5−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノトルエンベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルチオエ−テル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、1,4−ビス(3−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニルチオエ−テル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルチオエ−テル)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェニル)アミンビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミンビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミンビス(4−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、1,1−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エ−テル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジブロモ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等およびそれらのハロゲン原子あるいはアルキル基による芳香核置換体が挙げられる。
【0018】
ジアミン成分は、p−フェニレンジアミン単独からなるかあるいはp−フェニレンジアミンおよび上記の如きそれと異なる芳香族ジアミンとの組合せからなる。後者の組合せの場合、p−フェニレンジアミンは、全ジアミン成分に基づき、30モル%以上、好ましくは90モル%を超える割合すなわちそれと異なる芳香族ジアミンが70モル%以下、好ましくは10モル%未満からなる。
【0019】
また、本発明のポリイミドを構成するテトラカルボン酸成分は、ピロメリット酸およびそれと異なる芳香族テトラカルボン酸である。
【0020】
ピロメリット酸と異なる芳香族テトラカルボン酸成分としては、例えば1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,6,7−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,9,10−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エ−テル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エ−テル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ピリジン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物等が挙げられる。
【0021】
テトラカルボン酸成分は、ピロメリット酸単独からなるかあるいはピロメリット酸および上記の如きそれと異なる芳香族テトラカルボン酸との組合せからなる。後者の組合せの場合、ピロメリット酸は、全テトラカルボン酸成分に基づき、80モル%を超える割合、好ましくは90モル%を超える割合すなわちそれと異なる芳香族テトラカルボン酸が20モル%未満、好ましくは10モル%未満からなる。
【0022】
p−フェニレンジアミン成分が100モル%からなるジアミン成分と、ピロメリット酸成分100モル%からなるポリイミドからなるフィルムは、より好ましいヤング率を発現する。
【0023】
ポリイミドフィルムのポリイミドのイミド基分率は95%以上が好ましい。イミド基分率が95%未満ではポリイミドフィルムの耐加水分解性が低下する。なお、イミド基分率は実施例において定義されている。
【0024】
本発明のポリイミドフィルムはこれまでにない高いヤング率と、ヤング率のフィルム面内におけるバランスに優れるという実用的に優れた特性を有する。すなわちヤング率がいずれも5GPaを超える直交する二方向がフィルム面内に存在する。好ましくはヤング率が8GPaを超え、さらに好ましくは10GPaを超える直交する二方向がフィルム面内に存在する。
【0025】
以下工程を詳述する。
まず工程(0)として、ジアミン成分、テトラカルボン酸成分、および溶媒とからなるポリアミック酸溶液を調整する。ジアミン成分を構成するp−フェニレンジアミンと異なる芳香族ジアミンおよびピロメリット酸と異なる芳香族テトラカルボン酸としては、ポリイミドについて前記したと同じ具体例を挙げることができる。ポリアミック酸のジアミン成分は、p−フェニレンジアミン単独からなるかあるいはp−フェニレンジアミンおよび上記の如きそれと異なる芳香族ジアミンとの組合せからなる。後者の組合せの場合、p−フェニレンジアミンは、全ジアミン成分に基づき、30モル%を超える割合、好ましくは90モル%を超える割合、すなわちそれと異なる芳香族ジアミンが70モル%以下、好ましくは10モル%未満からなる。
【0026】
また、ポリアミック酸のテトラカルボン酸成分は、ピロメリット酸単独からなるかあるいはピロメリット酸および上記の如きそれと異なる芳香族テトラカルボン酸との組合せからなる。後者の組合せの場合、ピロメリット酸は、全テトラカルボン酸成分に基づき、80モル%を超える割合、好ましくは90モル%を超える割合すなわちそれと異なる芳香族テトラカルボン酸が20モル%未満、好ましくは10モル%未満からなる。
【0027】
また、ポリアミック酸の製造方法は特に限定せず、製造には従来公知の方法を用いることができるが、これらのジアミンと酸無水物は、ジアミン対酸無水物のモル比として好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05、更に好ましくは0.97〜1.03で用いることが好ましい。
【0028】
このポリアミック酸の末端は封止されることが好ましい。末端封止剤を用いて封止する場合、その末端封止剤としては、例えば無水フタル酸およびその置換体、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびその置換体、無水コハク酸およびその置換体、アミン成分としてはアニリンおよびその置換体が挙げられる。
【0029】
溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよび1,3−ジメチルイミダゾリジノンからなる群から選ばれる少なくとも一種が用いられる。これらの溶媒は、単独であるいは2種以上組合せて使用することができる。また、用いられる溶媒は可能な限り乾燥されていることが好ましい。溶媒中に水分が多く含まれている場合、所望の重合度のポリアミック酸を得ることが困難となる場合がある。具体的には、溶媒に含まれる水分率として0.1〜1000ppmであることが好ましい。好ましくは500ppm以下であり、更に好ましくは100ppm以下であり、50ppmであることが特に好ましい。溶媒に含まれる水分率が0.1ppm未満の場合、このような水分率を維持管理するには設備的負荷が大きくなる。
【0030】
工程(0)によれば、好ましくは、固形分濃度0.5〜30重量%、より好ましくは2〜15重量%のポリアミック酸溶液が調製される。
【0031】
次いで、工程(1)において、上記工程(0)で調製した溶液中にイソイミド化溶液である無水酢酸および有機アミン化合物を連続またはバッチで添加混合する。無水酢酸は脱水反応剤として用いられる。有機アミン化合物は無水酢酸とポリアミック酸の反応触媒として働くものであり、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチレンジアミンといった三級脂肪族アミン;N,N−ジメチルアニリン、1,8−ビス(N,N−ジメチルアミノ)ナフタレンの如き芳香族アミン、ピリジンおよびその誘導体、ピコリンおよびその誘導体ールチジン、キノリン、イソキノリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、N,N−ジメチルアミノピリジンの如き複素環式化合物を用いることができる。このなかで経済性からはピリジンおよびピコリンが好ましい。またトリエチレンジアミンおよびN,N−ジメチルアミノピリジンは無水酢酸との組合せにおいて、極めて高いイミド基分率が実現可能であり、水に対する耐性の高いゲルフィルムを与えることから好ましく用いられる。添加量は、無水酢酸がポリアミック酸繰り返し単位1モルに対して1〜30倍モル、好ましくは1〜15倍モル、さらに好ましくは2〜10倍モル、有機アミン化合物がポリアミック酸繰り返し単位1モルに対して0.01〜25倍モル、好ましくは0.01〜8倍モル、さらに好ましくは0.04〜10倍モルである。添加の順番は特に規定しないが、有機アミン化合物、無水酢酸の順で行うことが好ましい。添加方法としては、ニ−ダ−などの回転式混合機、スタティックミキサ−などの静的混合機により連続的に添加混合する方法や混合釜内でアンカ−翼、ヘリカルリボン翼などによりバッチで添加混合する方法があげられる。有機アミン化合物の添加混合温度は、特に限定されるものではないが、混練性とポリアミック酸の化学的安定性の観点から−30〜100℃が好ましい範囲として例示される。より好ましくは、−25〜80℃であり、更に好ましくは、−20〜60℃である。無水酢酸の添加混合温度についても、同様に特に限定されるものではないが、混練性とポリアミック酸の化学的安定性の観点から−30〜60℃が好ましい範囲として例示される。より好ましくは、−25〜40℃であり、更に好ましくは、−20〜20℃である。また、無水酢酸および有機アミン化合物混合後は、安定した送液を確保するために速やかに支持体上に流延することが好ましく、また、ポリアミック酸の閉環反応による著しい粘度増加が原因で起こる配管内での閉塞および流延時の閉塞・流延不良を防ぐために溶液温度を室温以下にすることが好ましく、−20〜0℃に保つことがさらに好ましい。また、用いられる有機アミン化合物は、脱水乾燥されたものが好ましい。有機アミン化合物中に多くの水分を含んでいると、ポリアミック酸が加水分解を起こしたり、均質なゲルフィルムを得ることが困難となる場合がある。具体的には、有機アミン化合物中に含まれる水分率として0.1〜3000ppmであることが好ましい。より好ましくは1000ppm以下であり、更に好ましくは500ppmであり、100ppm以下が特に好ましい。有機アミン化合物中の水分率の下限が実質的に0.1ppm程度である。水分率が0.1ppm未満の場合、このような水分率の維持管理をするには、設備的負担が大きく、コスト高となり好ましくない。
【0032】
次いで、工程(2)において、上記工程(1)で調製した溶液を、水の濃度1〜2000ppmの雰囲気下にて、支持体上に流延してフィルムを得て、得られた流延フィルムを支持体と一緒に工程(3)に送る。
【0033】
支持体上に流延する製膜方法としては、ダイ押し出しによる工法、アプリケ−タ−を用いたキャスティング、コ−タ−を用いる方法などが例示される。ポリアミック酸の流延に際して支持体として金属性のベルト、キャスティングドラムなどを用いることができる。またポリエステルやポリプロピレンのような有機高分子フィルム上に流延しそのまま工程(3)の反応凝固槽に送ることもできる。流延する際のポリアミック酸溶液の温度は−30〜40℃の範囲であることが好ましい。−30℃未満の場合、ポリアミック酸の粘性が著しく高くなったり、溶液が固化したりする為に、著しく成形加工性が低下したり、流延できなくなる場合がある。40℃より高い場合、ポリアミック酸溶液の化学的安定性が失われ、流延前に一部ゲル化したり、成型加工性が低下したりして、流延できなくなる場合がある。好ましくは、−25〜30℃であり、更に好ましくは−20〜20℃の範囲である。−15〜15℃の範囲が特に好ましい。更に工程(2)は水の濃度1〜4000ppmの低湿度雰囲気下で行うことが必要である。水分濃度が4000ppmより高い場合、支持体上に流延されたフィルム中のポリアミック酸が加水分解を受けたり、後の工程(3)における化学イミド化反応が十分進まなくなり、製膜性に劣るゲルフィルや非常に脆いゲルフィルムしか得られなくなる。特に、流延温度が0℃以下といった低温の場合、水分がフィルム表面に氷結し、表面性に劣るフィルムとなる場合がある。より好ましくは2000ppm以下であり、更に好ましくは1000ppm以下である。500ppm以下が特に好ましい。一方、水の濃度の下限は実質的に1ppm程度である。1ppmより低い湿度条件を維持管理しようとすると、設備設計・設備的負荷などの観点から、コスト高となり好ましくない。用いられる水の濃度1〜4000ppmの気体としては、乾燥窒素または乾燥空気などが挙げられる。より具体的に好ましい形態としては、フィルム・エンドレスベルト等支持体搬送装置と温度制御可能なダイを備えた槽内の気体が槽外に漏れることを防ぐ機構を施した流延槽にて、−30〜40℃に温度制御されたポリアミック酸溶液を温度管理しながら、搬送される支持体上へ連続的にダイ押し出しを行うことが例示され、更にこの際の流延槽内を水の濃度1〜4000ppmの雰囲気下として流延を行う形態を例示することができる。流延槽内の気体が槽外に漏れることを防ぐ機構として、例えば、流延槽内と槽外の間に、フィルム面に垂直に気体を吹付ける気体カ−テンを設置する方法が挙げられるが、水の濃度1〜4000ppmの気体を該流延槽内に向かって流し、かつ該気体が該流延槽内に流入する前に排気する方法が好ましい。
【0034】
工程(3)では、フィルムを支持体とともに加熱してポリアミック酸の少なくとも一部がポリイミドもしくはポリイソイミドに変換されたゲル状フィルムを得る。より具体的に好ましい形態としては、フィルムを支持体とともに槽内の気体が槽外に漏れることを防ぐ機構を施した反応凝固槽に導入し、水の濃度1〜2000ppmの雰囲気下で行う形態を例示することができる。反応凝固槽内の気体が槽外に漏れることを防ぐ機構として、例えば、反応凝固槽内と槽外の間に、フィルム面に垂直に気体を吹付ける気体カ−テンを設置する方法やフィルム上限面に接触するようにロールやプレ−トを設置する方法が挙げられるが、水の濃度1〜2000ppmの気体を該反応凝固槽内に向かって流し、かつ該気体が該反応凝固槽内に流入する前に排気する方法が好ましい。水の濃度1〜2000ppmの気体としては乾燥窒素または乾燥空気などがあげられる。また、水の濃度2000ppm以上の外気が該反応凝固槽内に混入しないために、反応凝固槽およびシール槽は外気から遮断されることがより好ましい。外気から遮断する方法としては、水の濃度1〜2000ppmの気体を槽から外気側に流出させる方法やフィルムを水以外の溶媒の封入された液封槽を通すことにより溶媒により外気と隔離する方法などが挙げられる。反応凝固槽内は水の濃度1〜2000ppmの雰囲気にすることが好ましい。反応凝固槽内が水の濃度が2000ppmより高い雰囲気となると化学イミド化反応が十分進まなくなり、得られるフィルムは脆くなる。逆に水の濃度を1ppm以下にするには、設備負荷が大きくなり好ましくない。より好ましくは、1000pppm以下であり、更に好ましくは水の濃度300ppm以下である。反応凝固槽内温度が好ましくは20〜150℃で加熱してポリアミック酸の少なくとも一部がポリイミドもしくはポリイソイミドに変換されたゲル状フィルムを得る。反応凝固槽内温度が20℃より低いとポリアミック酸のポリイミド化またはポリイソイミド化反応が非常に遅くなるため反応を進めるためには反応凝固槽を非常に長くする必要があるため実用的ではない。また、150℃より高いと設備負荷が増すだけでなく、無水酢酸および有機アミン化合物の蒸発が顕著になるため無水酢酸および有機アミン化合物が反応に十分寄与できなくなることがある。より好ましい反応凝固槽内温度は、30〜130℃であり、更に好ましくは40〜120℃である。
【0035】
また、本工程で得られるゲル状フィルムのイソイミド基分率は0%を超え80%以下であるとき高い延伸倍率が得られ好ましく、さらに好ましくは、3%以上50%以下である。イソイミド基分率が0%では十分な延伸を行うことができず、イソイミド基分率が80%を超えると自己支持性が悪くなりかつ延伸による配向効果が小さくなる。
【0036】
工程(4)では、工程(3)で得られた未延伸ゲル状フィルムを支持体から分離したのち二軸延伸に付す。二軸延伸は、未延伸フィルムを支持体から分離したのち、洗浄してから行っても、未洗浄のまま行ってもよい。洗浄には、例えば工程(0)で用いられた溶媒と同様の溶媒が用いられる。
【0037】
延伸は、縦横それぞれの方向に1.1〜6.0倍の倍率で行うことができる。延伸温度は、特に限定するものではないが、溶剤が揮発し延伸性が低下しない程度であればよく、例えば−20℃〜+80℃が好ましい。なお、延伸は逐次あるいは同時二軸延伸のいずれの方式で行ってもよい。延伸は溶剤中、空気中、不活性雰囲気中、また低温加熱した状態でもよい。
【0038】
工程(4)で二軸延伸に付すゲル状フィルムは100〜5000%の膨潤度を持つことが好ましい。これにより高い延伸倍率が得られる。100%以下では延伸性が不十分となり延伸過程でフィルムが破断し易く、5000%以上ではゲルの強度が低下しハンドリングが困難となる。
【0039】
最後に、工程(5)では、工程(4)で得られた二軸延伸フィルムを熱処理に付して二軸配向ポリイミドフィルムを形成する。
【0040】
熱処理方法としては熱風加熱、真空加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱の他、熱板を用いた接触・非接触加熱、ホットロールを用いた接触加熱などが例示できる。
【0041】
この熱処理は定長ないし緊張下で少なくとも2段階で、最初に60〜300℃、より好ましくは100〜250℃、最後に300〜550℃、より実施する。これにより配向緩好ましくは450〜550℃の温度で段階的に温度を上げて和を抑制して95%を超えるイミド基分率を実現しうる。
【0042】
なお、熱処理前に二軸延伸フィルムを洗浄して溶媒を除去することができる。洗浄には、溶媒を溶解しうる例えばイソプロパノールの如き低級アルコール、オクチルアルコールの如き高級アルコール、トルエン、キシレンの如き芳香族炭化水素、ジオキシサンの如きエ−テル系溶媒およびアセトン、メチルエチルケトンの如きケトン系溶媒等を挙げることができる。
【0043】
上記の如くして得られた二軸配向ポリイミドフィルムは分子鎖がフィルム面内に強く配向し、面内のバランスに優れた高ヤング率ポリイミドフィルムとなり面内の直交するニ方向に測定したヤング率の値が5GPa、好ましくは8GPa、さらに好ましくは10GPaを超え、かつ延伸配向により特殊な微細構造が形成されることにより強度の改善されたフィルムである。このような高ヤング率ポリイミドフィルムは剛性の高さから厚みが10μm以下の薄いフィルムであっても電子用途、例えば銅薄が積層された電気配線板の支持体などに好適に用いることができる。またフレキシブル回路基板、TAB(テ−プオ−トメイテッドボンディング)用テ−プ、LOC(リ−ドオンチップ)用テ−プの支持体としても用いることができる。また磁気記録テ−プのベ−スフィルムとして用いることができる。
【0044】
【発明の効果】
本発明によりポリイミドフィルム製造における流延工程での流延フィルムへの水分影響を最小限にすることが可能となり、反応ゲル化不良といった異常発生を抑制し、安定してポリイミドフィルムを製造することができる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明方法をさらに詳しく具体的に説明する。ただしこれらの実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0046】
[分析方法]
1)ポリアミド酸の対数粘度
NMP中ポリマー濃度0.5g/100mlを35℃で測定した。
【0047】
2)膨潤度
膨潤した状態と乾燥した状態の重量の比から算出した。すなわち、乾燥状態の重さをW1、膨潤時の重さをW2とした場合
膨潤度=( W2 / W1 − 1) × 100
として算出した。
【0048】
3)強伸度
測定は50mm×10mmのサンプルを用い、引張り速度5mm/minで行いオリエンテックUCT−1Tによって測定を行った。
【0049】
4)イソイミド基分率およびイミド基分率
フ−リエ変換赤外分光計(Nicolet Magna 750)を使用し、吸収法により測定したピ−ク強度比から以下のように決定した。
イソイミド基分率(%)=(A920/A1024)/11.3 × 100
920:サンプルの920cm−1イソイミド結合由来ピ−クの吸収強度
1024:サンプルの1024cm−1ベンゼン環由来ピ−クの吸収強度
イミド基分率(%)=(A720/A1024)/5.1 × 100
1370:サンプルの720cm−1イミド結合由来ピ−クの吸収強度
1510:サンプルの1024cm−1ベンゼン環由来ピ−クの吸収強度
【0050】
[実施例1]
−15℃に冷却した反応容器に、窒素雰囲気下モレキュラ−シ−ブスで水分率32ppmに脱水しN−メチル−2−ピロリドン(NMP)20Lを入れ、さらにパラフェニレンジアミン(水分率は3370ppm)276gを加え完全に溶解した後、無水ピロメリット酸二無水物557gを添加し1時間反応させ、さらに約5℃で2時間反応をさせた後、無水フタル酸0.76gを添加して反応を終了させた。得られたポリアミック酸溶液の対数粘度は4.10であった。次にこのアミック酸溶液をギアポンプにより26.8 ml/分で−10℃に冷却された配管内を送液し、反応容器とTダイ間の送液配管途中に設置したエレメント数48段のφ6.5のスタティックミキサ−に対して反応容器側を0段、Tダイ側を48段として、0段目にピリジン(水分率19ppm)を1.1ml/分で添加し、次いで24段目に無水酢酸を1.9ml/分で添加混合し(モル比:ドープ中ポリアミック酸繰り返し単位/無酢/ピリジン=1/6/4)、−10℃の本混合液を、水の濃度40ppm、窒素雰囲気の流延槽内にてリップ開度1500μ、幅320mmのTダイより、PETフィルム上に流延しフィルムを得た。
【0051】
次に本フィルムをPETフィルムとともに0.05m/分で反応凝固槽内に導入した。反応凝固槽内温度は40℃であり、水の濃度40ppmの乾燥窒素を反応凝固槽の両端外側から反応凝固槽両端に取り付けた該乾燥窒素の吹込み距離が7.5cmの排気口に向かって同一の流速で、かつ、フィルム垂直面内での平均流速が20cm/秒で流した。該乾燥窒素流速と吹込み距離の積は150cm/秒である。また、反応時間は30分である。得られたゲル状フィルムのイソイミド基分率は95%であり、イミド基は検出できなかった。
【0052】
次に得られたゲルフィルムの両端をチャックで固定し、室温(25℃)下、二軸方向に各1.8倍に5mm/秒の速度で同時ニ軸延伸した。延伸開始時のゲルフィルムの膨潤度は1110%であった。
【0053】
延伸後のゲルフィルムを枠固定し160℃で30分乾燥し、次いで450℃まで段階的に温度を上げ熱処理を行い、ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの厚みは15μm、面内の直交する二方向に測定した引張り弾性率は17.9GPaおよび16.0GPa、引張り強度は0.39GPaおよび0.35GPa、伸度は5.1%および4.9%であった。また、厚み方向の屈折率nz=1.573、密度は1.508g/cmであった。またイミド基分率は100%であった。結果を表1にも示す。
【0054】
[実施例2]
流延槽内および反応凝固槽内の気体を水の濃度40ppmの窒素から水の濃度1020ppmの乾燥空気へと変更した以外は実施例1と全く同様の方法でポリイミドフィルムを製造得た。結果を表1に示す。
【0055】
[比較例1]
流延槽内の気体を水の濃度40ppmの窒素から水の濃度5060ppmの空気とする以外は実施例1と全く同様の方法でポリイミドフィルムを製造した。ただし、本条件では流延槽内で流延されたポリアミック酸溶液に氷結が発生し、表面性の劣るゲルフィルムとなった。更に、流延槽内および反応凝固槽での水の混入により、反応凝固槽内でのイミド化反応が不十分となり、後工程の乾燥中・熱処理中にフィルムが破断してポリイミドフィルムを得ることはできなかった。
【0056】
[実施例3]
ピリジンを4.4ml/分で添加し、無水酢酸を3.8ml/分で添加混合(モル比:ドープ中ポリアミック酸繰り返し単位/無酢/ピリジン=1/12/16)すること以外は実施例1と全く同様の方法でポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例4]
Tダイの温度を制御することにより、流延時のポリアミック酸溶液の温度を20℃にすること以外は実施例1と全く同様の方法でポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0058】
[実施例5]
リップ開度を350μ、延伸倍率を1.6倍にすること以外は実施例1と全く同様の方法でポリイミドフィルムを得た。延伸開始時のゲルフィルムの膨潤度は1150%であった。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例6]
反応凝固槽内温度を90℃にすること、リップ開度を350μにすることおよび反応凝固槽長さを1/3にし、PETフィルムの搬送速度を0.1m/分にして反応時間を5分にすること以外は実施例1と全く同様の方法でポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例7]
反応凝固槽内温度を140℃にし、ピリジンを5.4ml/分で添加し、無水酢酸を8.2ml/分で添加混合(モル比:ドープ/無酢/ピリジン=1/25/20)すること、および反応凝固槽長さを1/3にし、PETフィルムの搬送速度を0.5ml/分にして反応時間を1分にすること以外は実施例1と全く同様の方法でポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
Figure 2004338255

Claims (10)

  1. ジアミン成分、テトラカルボン酸成分、および溶媒とからなるポリアミック酸溶液に、
    (1)無水酢酸と有機アミン化合物を連続またはバッチで添加し、
    (2)次いで得られた溶液を水の濃度1〜4000ppmの雰囲気下にて、支持体上に流延してフィルムを得、
    (3)得られた流延フィルムを支持体とともに加熱して、ポリアミック酸の少なくとも一部がポリイミドもしくはポリイソイミドに変換されたゲル状フィルムを得、
    (4)得られたゲル状フィルムを支持体から分離して必要に応じ洗浄した後、同時二軸延伸または逐次ニ軸延伸し、
    (5)得られた二軸延伸フィルムを、必要に応じ洗浄して溶媒を除去した後、熱処理に付して二軸配向ポリイミドフィルムを形成する、
    ことを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
  2. 工程(1)におけるポリアミック酸溶液への添加順序が、まず、有機アミン化合物を添加・混合し、次いで無水酢酸を添加・混合する順序である請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  3. 工程(2)において流延する際の溶液の温度が−30〜40℃の範囲であることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
  4. 工程(3)において、フィルムを支持体とともに槽内の気体が槽外に漏れることを防ぐ機構を施した反応凝固槽に導入し、水の濃度1〜2000ppmの雰囲気下加熱してポリアミック酸の少なくとも一部がポリイミドもしくはポリイソイミドに変換されたゲル状フィルムを得ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  5. 工程(3)における該反応凝固槽内の温度が20〜150℃である請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  6. 用いられる溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよび1,3−ジメチルイミダゾリジノンからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜5のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  7. 用いられる溶媒に含まれる水分率が0.1〜1000ppmの範囲である請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  8. 工程(1)において用いられる有機アミン化合物中に含まれる水分率が0.1〜3000ppmの範囲である請求項1〜7のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  9. p−フェニレンジアミン成分が30モル%以上、p−フェニレンジアミンとは異なる芳香族ジアミン成分が0モル%以上70モル%以下からなるジアミン成分と、ピロメリット酸成分が80モル%を超え、ピロメリット酸とは異なる芳香族テトラカルボン酸成分が0モル%以上20モル%未満からなるテトラカルボン酸成分とからなり請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法で得られるポリイミドフィルム。
  10. フィルム面内の直行する二方向のヤング率が5GPaを超える請求項9に記載のポリイミドフィルム。
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