JP3782976B2 - ポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリイミドフィルムの効率的かつプロセスコストを低減する製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
全芳香族ポリイミドはその優れた耐熱性や機械物性から幅広く工業的に利用され、特にそのフィルムは電子実装用途をはじめとする薄層電子部品の基材として重要な位置を占めるにいたっている。近年電子部品の小型化への強い要請から、より厚さの薄いポリイミドフィルムが要求されているが、厚みの減少にともない高い剛性を有することがフィルムの実用上あるいはハンドリング上不可欠の条件となる。これら課題に対し特開昭63−297029号公報にはイミド化剤を含有する芳香族ポリアミック酸の有機極性溶媒溶液を閉環イミド化すると同時に成形して得られた20〜85重量%の揮発分を含有している自己支持性成形体を1.3倍以上延伸することにより力学的性質を改善する方法が提案されている。また特開昭44−20878号公報にはイミド単位対先駆体単位の比が少なくとも30:70であるポリアミック酸/イミドゲルフィルムを揮発含有物を有せしめながら20〜550℃で少なくとも一方向に、少なくとも約5%延伸する方法が示されている。また最近、ポリイミドを延伸配向させる方法として、前駆体アミド酸を特定の方法で化学処理することによって調製されたゲル体が室温付近の低温で高い延伸性を有することから、このゲル体を膨潤状態で延伸後熱処理することでヤング率の大幅に改善されたポリイミドフィルムが得られることが明らかにされている。
【0003】
しかし、これらの延伸後フィルムは高度に溶媒膨潤しているため、溶剤脱離、乾燥、熱処理の工程については定長もしくは緊張下で実施しなければならず、非拘束下においては収縮が起こり、それによるフィルムの脆化、低モジュラス化が発生する。したがって従来はゲル体を延伸した後から熱処理が完了するまで両軸方向の把持が実施されており、工業的にはクリップやピンタイプのテンターによる連続把持機構を有する設備で実施されており、しかも熱処理温度が300℃以上、好ましくは400℃以上であることから非常に高額な設備が要求されている。この問題解決には未だ至っていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
発明が解決しようとする課題は面内の機械的性質のバランスのとれた高ヤング率ポリイミドフィルムを安価な設備で得ることができる製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
ポリアミック酸と有機アミン化合物と脱水縮合剤を主成分とする溶液から得たゲル状フィルムを少なくとも一方向に延伸後、拘束下で乾燥し、フィルムに残存する溶媒量がポリマー重量に対し10%以下にすることにより、非拘束下での熱処理における寸法変化低減し配向緩和を抑制することによるモジュラス低下を制限しながら、プロセスコストを低減させる製造方法を見出した。
【0006】
すなわち本発明はポリアミック酸と有機アミン化合物と脱水縮合剤を主成分とする溶液から得たゲル状フィルムを少なくとも一方向に延伸し、拘束下でフィルムに残存する溶媒量がポリマー重量に対し10%以下となるまで乾燥した後、非拘束下で熱処理することを特徴とするポリパラフェニレンピロメリットイミド系フィルムの製造方法である。
【0007】
発明の好ましい様態を以下に示す。本発明の適応するポリイミドフィルムについて先ず説明する。
【0008】
本発明の方法で得られるポリパラフェニレンピロメリットイミド系フィルムはp−フェニレンジアミン成分が80モル%を超え100モル%以下そしてp−フェニレンジアミンとは異なる芳香族ジアミン成分が0モル%以上20モル%未満からなるジアミン成分と、ピロメリット酸が80モル%を超えそしてピロメリット酸とは異なる芳香族テトラカルボン酸成分が0モル%以上20モル%未満からなるテトラカルボン酸成分とから実質的になるポリイミドからなる。
【0009】
ポリイミドを構成するジアミン成分は、p−フェニレンジアミン単独、あるいはp−フェニレンジアミンおよびそれと異なる芳香族ジアミンとの組合せからなる。
【0010】
p−フェニレンジアミンと異なる芳香族ジアミン成分としては、例えばm−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノアントラセン、2,7−ジアミノアントラセン、1,8−ジアミノアントラセン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノ(m−キシレン)、2,5−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,5−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノトルエンベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、1,4−ビス(3−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェニル)アミンビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミンビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミンビス(4−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、1,1−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジブロモ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等およびそれらのハロゲン原子あるいはアルキル基による芳香核置換体が挙げられる。
【0011】
ジアミン成分において、p−フェニレンジアミンおよびそれと異なる芳香族ジアミンとの組合せの場合、p−フェニレンジアミンは、全ジアミン成分に基づき、80モル%を超える割合、好ましくは90モル%を超える割合すなわちそれと異なる芳香族ジアミンが20モル%未満、好ましくは10モル%未満からなる。
【0012】
また、ポリイミドを構成するテトラカルボン酸成分は、ピロメリット酸単独、あるいはピロメリット酸およびそれと異なる芳香族テトラカルボン酸との組合せからなる。
【0013】
ピロメリット酸と異なる芳香族テトラカルボン酸成分としては、例えば1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,6,7−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,9,10−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ピリジン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物等が挙げられる。
【0014】
テトラカルボン酸成分において、ピロメリット酸およびそれと異なる芳香族テトラカルボン酸との組合せの場合、ピロメリット酸は、全テトラカルボン酸成分に基づき、80モル%を超える割合、好ましくは90モル%を超える割合すなわちそれと異なる芳香族テトラカルボン酸が20モル%未満、好ましくは10モル%未満からなる。
【0015】
ジアミン成分がp−フェニレンジアミン単独であり、テトラカルボン酸成分がピロメリット酸単独であるポリイミドからなり本発明方法で得られるフィルムは、より好ましいヤング率を発現する。
【0016】
本発明で用いられる脱水縮合剤としてはジシクロヘキシルカルボジイミド、もしくは無水酢酸、無水プロピオン酸、無水吉草酸、無水安息香酸、トリフルオロ酢酸二無水物のごとき酸無水物と有機アミン化合物を溶解してなる溶液などが好ましく挙げられる。
上記フィルムに対し製造方法を詳述する。本発明の製造法は下記の工程(1)〜(5)からなる。
【0017】
(1)p−フェニレンジアミン成分が80モル%を超え100モル%以下であるジアミン成分と、ピロメリット酸が80モル%を超え100モル%以下であるテトラカルボン酸成分とから実質的になるポリアミック酸と、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよび1,3−ジメチルイミダゾリジノンよりなる群(A)から選ばれる少なくとも一種からなる溶媒とからなる溶液を調整し、
【0018】
(2)上記(A)から選ばれる少なくとも一種の溶媒にジシクロヘキシルカルボジイミドもしくは無水酢酸と有機アミン化合物を溶解してなる溶液中に、上記工程(1)で調製した溶液を支持体上に流延して得られたフィルムを該支持体と一緒に浸漬してゲル状フィルムを形成し、もしくはあらかじめ上記工程(1)で調製した溶液に無水酢酸と有機アミン化合物を混合し支持体上に流延してゲル状フィルムを形成し、
【0019】
(3)得られたゲル状フィルムを支持体から分離し、必要に応じ洗浄した後、二軸延伸し、次いで
【0020】
(4)得られた二軸延伸フィルムを、拘束下でフィルムに残存する溶媒量がポリマー重量に対し10%以下となるまで乾燥し、
【0021】
(5)非拘束下で熱処理に付して二軸配向ポリイミドフィルムを形成する。
【0022】
工程(1)では、ポリアミック酸の溶媒中溶液が調製される。ポリアミック酸は、上記の如きジアミン成分とテトラカルボン酸成分からなる。ジアミン成分を構成するp−フェニレンジアミンと異なる芳香族ジアミンおよびピロメリット酸と異なる芳香族テトラカルボン酸としては、ポリイミドについて前記したと同じ具体例を挙げることができる。ポリアミック酸のジアミン成分は、p−フェニレンジアミン単独からなるかあるいはp−フェニレンジアミンおよび上記の如きそれと異なる芳香族ジアミンとの組合せからなる。後者の組合せの場合、p−フェニレンジアミンは、全ジアミン成分に基づき、80モル%を超える割合、好ましくは90モル%を超える割合すなわちそれと異なる芳香族ジアミンが20モル%未満、好ましくは10モル%未満からなる。
【0023】
また、ポリアミック酸のテトラカルボン酸成分は、ピロメリット酸単独からなるかあるいはピロメリット酸および上記の如きそれと異なる芳香族テトラカルボン酸との組合せからなる。後者の組合せの場合、ピロメリット酸は、全テトラカルボン酸成分に基づき、80モル%を超える割合、好ましくは90モル%を超える割合すなわちそれと異なる芳香族テトラカルボン酸が20モル%未満、好ましくは10モル%未満からなる。
【0024】
また、ポリアミック酸を製造する際、これらのジアミンと酸無水物は、ジアミン対酸無水物のモル比として好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05で、用いることが好ましい。
【0025】
このポリアミック酸の末端は封止されることが好ましい。末端封止剤を用いて封止する場合、その末端封止剤としては、例えば無水フタル酸およびその置換体、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびその置換体、無水コハク酸およびその置換体、アミン成分としてはアニリンおよびその置換体が挙げられる。
【0026】
溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよび1,3−ジメチルイミダゾリジノンが用いられる。これらの溶媒は、単独であるいは2種以上組合せて使用することができる。
【0027】
工程(1)によれば、好ましくは、固形分濃度0.5〜30重量%、より好ましくは2〜15重量%のポリアミック酸の溶媒中溶液が調製される。
【0028】
次いで、工程(2)において、上記工程(1)で調製した溶液を支持体上に流延して得られたフィルムを支持体と一緒に、反応凝固溶液中に浸漬する。
【0029】
上記工程(1)で得られた溶液を支持体上に流延するには、一般に知られている湿式ならびに乾湿式成形方法等のいかなる製膜方法を用いてもよい。この製膜方法としてはダイ押し出しによる工法、アプリケーターを用いたキャスティング、コーターを用いる方法などが例示される。ポリアミック酸の流延に際して支持体として金属性のベルト、キャステイングドラムなどを用いることができる。またポリエステルやポリプロピレンのような有機高分子フィルム上に流延しそのまま縮合剤溶液に導入することもできる。これらの工程は低湿度雰囲気下で行うことが好ましい。浸漬溶液は工程(1)で用いたと同じ溶媒から選ばれる溶媒の少なくとも1種にジシクロヘキシルカルボジイミドもしくは無水酢酸と有機アミン化合物を溶解せしめて調製される。
【0030】
浸漬溶液中のヘキシルカルボジイミドもしくは無水酢酸と有機アミン化合物の濃度は特定するものではないが、反応を十分に進行させるためには、好ましくは0.5重量%以上99重量%以下である。また反応温度は、特に規定するものではないが、浸漬溶液の凝固点以上、沸点以下の温度を用いることができる。用いられる有機アミン化合物は無水酢酸とポリアミック酸の反応触媒として働くものであり、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチレンジアミンといった三級脂肪族アミン;N,N−ジメチルアニリン、1,8−ビス(N,N−ジメチルアミノ)ナフタレンの如き芳香族アミン、ピリジンおよびその誘導体、ピコリンおよびその誘導体、ルチジン、キノリン、イソキノリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、N,N−ジメチルアミノピリジンの如き複素環式化合物を用いることができる。このなかで経済性からはピリジンおよびピコリンが好ましい。またトリエチレンジアミンおよびN,N−ジメチルアミノピリジンは無水酢酸との組合せにおいて、極めて高いイミド基分率が実現可能であり、水に対する耐性の高いゲルフィルムを与えることから好ましく用いられる。この際有機アミン化合物の無水酢酸に対する量としては特に既定するものではないが、0.5モル%以上より好ましくは10モル%以上である。
【0031】
またあらかじめ上記工程(1)で得られた溶液中に無水酢酸と有機アミン化合物を溶解した溶液を上述製膜方法を用いて実施しても構わない。有機アミン化合物に関しては上述同様である。この場合の無水酢酸と有機アミン化合物の濃度は特定するものではないが、反応を十分に進行させるためにはポリアミック酸のアミド基に対し、当モル以上が好ましい。また反応温度は、特に規定するものではないが、浸漬溶液の凝固点以上、沸点以下の温度を用いることができる。
【0032】
工程(3)では、工程(2)で得られた未延伸ゲル状フィルムを支持体から分離したのち二軸延伸に付す。二軸延伸は、未延伸フィルムを支持体から分離したのち、洗浄してから行っても、未洗浄のまま行ってもよい。洗浄には、例えば工程(1)で用いられた溶媒と同様の溶媒が用いられる。
【0033】
延伸は、縦横それぞれの方向に1.1〜6.0倍の倍率で行うことができる。延伸温度は、特に限定するものではないが、溶剤が揮発し延伸性が低下しない程度であればよく、例えば−20℃〜+80℃が好ましい。なお、延伸は逐次あるいは同時二軸延伸のいずれの方式で行ってもよい。延伸は溶剤中、空気中、不活性雰囲気中、また低温加熱した状態でもよい。
【0034】
工程(3)で二軸延伸に付すゲル状フィルムは300〜5,000%の膨潤度を持つことが好ましい。これにより高い延伸倍率が得られる。300%以下では延伸性が不十分であり、5,000%以上ではゲルの強度が低下しハンドリングが困難となる。
【0035】
工程(4)では、工程(3)で得られた二軸延伸フィルムを拘束下でフィルムに残存する溶媒量がポリマー重量に対し10%以下となるまで乾燥する。乾燥方法としては熱風加熱、真空加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱の他、熱板、ホットロールを用いた接触による加熱などが例示できる。この際段階的に温度をあげることでイミド化を進行させることが好ましい。
【0036】
この乾燥は定長ないし緊張下に室温以上の温度で実施することが好ましい。生産性を考慮した場合より高温であるほうが好ましいが、フィルム表面性を向上させる点では250℃以下がより好ましい。時間は特に限定しないがフィルム中残存溶媒量が10重量%以下を達成する必要がある。この場合寸法変化をさらに下げる方法としてフィルム中残存溶媒量5重量%以下がさらに好ましい。このときフィルム中残存溶媒量が10重量%より大きくなると配向緩和が大きくなり、実用に耐える弾性率を達成することが難しい。
【0037】
最後に、工程(5)では、工程(4)で得られた乾燥フィルムを非拘束下で熱処理に付して二軸配向ポリイミドフィルムを形成する。
【0038】
熱処理方法としては熱風加熱、真空加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱の他、熱板、ホットロールを用いた接触による加熱などが例示できる。この際段階的に温度をあげることでイミド化を進行させることが好ましい。
【0039】
この熱処理は非拘束下で250℃以上、好ましくは300〜550℃の温度で実施することが好ましい。250℃以上の非拘束下における熱処理前後の寸法変化が5%以下となるようにフィルムを得ることが配向緩和を抑制することによるモジュラス低下を制限しながら、プロセスコストを低減させるのに好ましい。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明方法をさらに詳しく具体的に説明する。ただしこれらの実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0041】
なおポリアミック酸の対数粘度は、NMP中ポリマー濃度0.5g/100mlで35℃で測定したものである。また膨潤度は膨潤した状態と乾燥した状態の重量の比から算出した。すなわち、乾燥状態の重さをW1、膨潤時の重さをW2とした場合
膨潤度=(W2 / W1 − 1) × 100
として算出した。また強伸度測定は50mm×10mmのサンプルを用い、引張り速度5mm/minで行いオリエンテックUCT−1Tによって測定を行ったものである。
【0042】
寸法変化(収縮率)については乾燥後フィルムの縦DM1、横DT1の寸法を測定し、熱処理後の同一位置の縦DM2、横DT2を測定し、以下の計算式で算出した。
収縮率=(1−(DM2×DT2)/(DM1×DM2))×100
フィルム中残存溶媒量についてはTGAによる100℃以上300℃以下の範囲における重量減少率をポリマー対比で算出した。
【0043】
[実施例1]
温度計・攪拌装置および原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下モレキュラーシーブスで脱水したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)910mlを入れ、さらにパラフェニルジアミン19.9gを加えた後に完全に溶解し、その後、氷浴下冷却した。この冷却したジアミン溶液に無水ピロメリット酸二無水物40.1gを添加し一時間反応させ、さらに室温下2時間反応後、アニリン0.011gを添加しさらに30分反応させた。得られたポリアミック酸溶液の対数粘度は4.12であった。このポリアミック酸溶液を、ガラス基板上に厚み1.0mmのドクターブレードを用いてキャストし、NMP800ml、無水酢酸600mlおよびピリジン300mlからなる脱水縮合浴に導入し10分間浸漬してゲル化させた。その後ガラス基板から剥離しゲル状フィルムを得た。このゲル状フィルムのイミド基分率は43%およびイソイミド基分率は35%であった。
【0044】
得られたゲルフィルムをNMPに室温下15分浸漬させた後、両端をチャックで固定し、室温下2軸方向に各1.9倍に5mm/secの速度で同時ニ軸延伸した。延伸開始時のゲルフィルムの膨潤度は1,810%であった。
【0045】
延伸後のゲルフィルムを枠固定し熱風送風式オーブンを用い160℃から200℃に段階的に温度を上昇し、10min間乾燥した。このときの乾燥後フィルム中の残存溶媒量は1.5%であった。ついで枠を外して熱風循環式オーブンを用い450℃で熱処理を行い、ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの厚みは9μm、面内の直交する二方向に測定した引張り弾性率は17.5GPaおよび15.8GPa、引張り強度は0.38GPaおよび0.34GPa、伸度は5.5%および5.3%であった。また、厚み方向の屈折率nz=1.583、密度は1.512g/cm3であった。乾燥後から熱処理後フィルムの寸法変化率は面積比で3.2%であった。
【0046】
[比較例]
実施例1と同様にゲル状フィルムを得た。延伸後のゲルフィルムを枠固定し熱風循環式オーブンを用い160℃から450℃に段階的に温度を上昇し乾燥および熱処理を行い、ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの厚みは9μm、面内の直交する二方向に測定した引張り弾性率は17.9GPaおよび16.0GPa、引張り強度は0.39GPaおよび0.35GPa、伸度は5.1%および4.9%であった。また、厚み方向の屈折率nz=1.573、密度は1.508g/cm3であった。
【0047】
【発明の効果】
この発明により面内の機械的性質のバランスのとれた高ヤング率ポリイミドフィルムを安価な設備で実現する製造方法が可能となり、電子用途、例えば銅薄が積層された電気配線板の支持体などに好適なポリイミドフィルムを製造することができる。

Claims (2)

  1. ポリアミック酸と有機アミン化合物と脱水縮合剤を主成分とする溶液から得たゲル状フィルムを少なくとも一方向に延伸し、拘束下でフィルムに残存する溶媒量がポリマー重量に対し10%以下となるまで乾燥した後、非拘束下で熱処理することを特徴とするポリパラフェニレンピロメリットイミド系フィルムの製造方法。
  2. 250℃以上の非拘束下における熱処理前後の寸法変化が5%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリパラフェニレンピロメリットイミド系フィルムの製造方法。
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