JP2004331479A - 湿式シリカ分散液及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】極性溶媒中に湿式シリカ粒子を22重量%以上含有し、pHが3〜5の範囲であるシリカスラリーを湿式メディア型粉砕機によって、湿式シリカ粒子を0.5μm未満に微粒化することにより得られる、シリカ濃度が22重量%であり、且つ、シリカ粒子の平均粒子径が0.5μm未満であり、該分散液のpHが3〜5の範囲であることを特徴とする湿式シリカ分散液。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、湿式シリカを使用したコーティング剤、半導体ウェハーの研磨剤、エマルジョンの安定剤等の調製に有用な湿式シリカ分散液に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリカ分散液は、インクジェット用記録シートをはじめ、フィルム・樹脂・ガラス・金属等にガスバリア性、耐食性、親水性、光沢性、吸液性、絶縁性等を付与するための各種コーティング剤の原料として使用されており、中でも乾式シリカ及び湿式シリカを極性溶媒中に分散したシリカ分散液が好ましく使用されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
このなかで、四塩化珪素などのシラン系ガスを酸水素炎中で燃焼して得られる乾式シリカは、極性溶媒中において分散性に優れているため、分散液を製造する際、乾式シリカの平均粒子径をサブミクロンオーダーまで微粒化しやすい。シリカ分散液を用いて製造されるコーティング層表面は、シリカ分散液中のシリカ粒子の平均粒子径が小さいほど、平滑性に優れて光沢性が高くなるため、極性溶媒中に乾式シリカを分散した乾式シリカ分散液は、光沢性を重視するコーティング剤の原料として好ましく使用されている。なお、平均粒子径とは、シリカの一次粒子が集まって形成されるシリカ凝集粒子の平均凝集粒子径を指している。
【0004】
しかしながら、乾式シリカは、吸液性が湿式シリカと比較して低いという問題に加え、コーティング剤製造時にシリカ分散液と混合するポリビニルアルコールやゼラチン等の有機系バインダーに対する安定性も低く、バインダーの選択の幅が狭くなるという問題が見られるようになってきた。
【0005】
これに対し、珪酸ソーダと鉱酸の反応で析出させて得られる湿式シリカは、乾式シリカと比較して吸液性が高く、コーティング剤製造時に添加される有機系バインダーによるゲル化等の現象が起こりにくく、バインダーの選択の幅が広いという利点がある。
【0006】
しかしながら、湿式シリカは、乾式シリカと比較して粒子同士の凝集性が強いため、極性溶媒中で大きな凝集粒子を形成しやすく、溶媒中に分散しても分散液中の平均粒子径が大きくなる傾向がある。したがって、乾式シリカ分散液を原料としたコーティング剤から得られたコーティング層と比較すると、湿式シリカ分散液を原料としたコーティング層は、光沢性が劣るという問題を有している。
【0007】
近年、各分野において、前述の光沢性、吸液性がいずれも優れているコーティング層を得ることができるコーティング剤に使用可能なシリカ分散液が望まれるようになってきた。
【0008】
一方、コーティング剤のコーティング工程の効率化も重要視されてきている。その中で、一回の塗工で十分な厚みのコーティング層が得ること、及びコーティング後に乾燥する際のエネルギー効率の向上が重要な課題となっている。このため、コーティング剤中のシリカ濃度を高くできる、シリカ濃度の高いシリカ分散液の開発が急務となっている。
【0009】
しかしながら、乾式シリカ分散液は、極性溶媒中のシリカ濃度が20重量%よりも高い場合、極性溶媒中に分散してしばらく放置すると分散液全体がゲル化するといった問題を有している。シリカ分散液が数時間でゲル化してしまうと、コーティング剤を製造するための以降に続く製造工程に進めなくなるので好ましくない。
【0010】
乾式シリカ分散液において、シリカ濃度が高い条件下でも保存安定性を良くするために、カチオン性樹脂などの分散剤を添加したシリカ分散液も提案されている(例えば特許文献4〜6参照)。しかし、カチオン性樹脂の種類によっては、コーティング剤として使用するときに混合する前述の有機系バインダーとの混合相性が合わずシリカ粒子が凝集する場合があるなど、カチオン性樹脂や有機系バインダーの選択の幅が狭くなるという問題がある。
【0011】
一方、湿式シリカ分散液では、分散液のpHを9〜11の範囲になるように調整したアルカリ性の湿式シリカ分散液が提案されているが(例えば特許文献2参照)、シリカ粒子の溶解や、コーティング剤の添加剤として使用するカチオン性樹脂及び、バインダーとして使用するポリビニルアルコール等との混合相性に問題を生じ、ゲル化などの現象が発生したり、添加したカチオン性樹脂のカチオン性が消失するなどの問題を生じる。
【0012】
【特許文献1】
特開昭59−185690号公報
【特許文献2】
特開平5−170424号公報
【特許文献3】
特開平8−38998号公報
【特許文献4】
特開平11−321079号公報
【特許文献5】
特開2000−239536号公報
【特許文献6】
特開2001−19421号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、各種のコーティング剤の原料として使用したときに、吸液性が高く、光沢性の高いコーティング層を得ることが可能であって、且つ、分散液のpHが酸性領域にあり、シリカ濃度が高い湿式シリカ分散液及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、極性溶媒中に湿式シリカを分散したpH3〜5の湿式シリカスラリーを湿式メディア型粉砕機を使用して、極性溶媒中の湿式シリカ粒子を微粒化することによって、シリカ粒子の平均粒子径が小さく、且つ、分散液中のシリカ濃度が22重量%以上であっても、カチオン性樹脂等の分散剤を添加していないにも関わらず、保存安定性に優れている湿式シリカ分散液が得られ、この湿式シリカ分散液を原料としたコーティング剤をコーティングしたコーティング層は吸液性、光沢性が共に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、極性溶媒中に湿式シリカを分散せしめた分散液であって、該分散液中のシリカ濃度が22重量%以上であり、且つ、シリカ粒子の平均粒子径が0.5μm未満であり、該分散液のpHが3〜5の範囲であることを特徴とする湿式シリカ分散液及び、極性溶媒中に湿式シリカ粒子を22重量%以上含有し、pHが3〜5の範囲であるシリカスラリーを湿式メディア型粉砕機によって、極性溶媒中の湿式シリカ粒子を0.5μm未満まで微粒化することを特徴とする湿式シリカ分散液の製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる湿式シリカは、前述したように、珪酸ソーダを鉱酸で中和することによって溶液中でシリカを析出させて得られる、「ホワイトカーボン」とも称されている湿式シリカ粉である。また、中和反応後に濾過や洗浄を行った後の乾燥工程を施さない湿式シリカケークも、乾燥工程を施した湿式シリカ粉と比較して凝集粒子が軟らかいため、分散性が良く、湿式シリカとして好ましく使用される。しかし、湿式シリカケークは比表面積が高くなるほど湿式シリカケーク中の水分含有率も高くなるので、シリカ分散液中のシリカ濃度を高め、且つ、分散性を良くするために、湿式シリカ粉と湿式シリカケークとを混合して湿式シリカとして用いても良い。
【0017】
本発明においては、湿式シリカ分散液中のシリカの平均粒子径は、0.5μm未満とすることが必要である。
【0018】
シリカの平均粒子径が0.5μm以上であると、塗工液の原料とした場合、塗工層の表面の平滑性が得られないだけではなく、光の乱反射が発生し、光沢が不足するといった問題を生じる。
【0019】
本発明において、平均粒子径とは、湿式シリカ分散液中のシリカ凝集粒子の平均粒子径を指しており、光散乱回折式の粒度分布計で測定した時の体積基準算術平均径D50のことである。
【0020】
本発明において用いられる極性溶媒は、湿式シリカが分散し易い極性溶媒であれば特に制限はない。かかる極性溶媒としては、水が最も好ましい。勿論、水以外にもメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エーテル類、ケトン類などの極性溶媒が使用でき、また、水と上記極性との混合溶媒も好適に使用できる。
【0021】
また、シリカ分散液における黴の発生を防ぐ目的で、本発明の効果を損なわない範囲で、防黴剤を少量添加しても良い。
【0022】
本発明において、湿式シリカ分散液中のシリカ濃度は22重量%以上である。
【0023】
該シリカ分散液中のシリカ濃度が低くなると、前述したように、(1)コーティング剤調製後のコーティング工程において一回のコーティングで十分な厚みのコーティング層が形成することが困難になる、(2)コーティング後乾燥する際のエネルギー効率の悪くなる、などの問題があるため好ましくない。また、シリカ濃度が低いと物流コストの面からも問題がある。
【0024】
本発明において、湿式シリカ分散液のpHは、3〜5の範囲であることが重要である。
【0025】
pHが3未満の湿式シリカ分散液は保存安定性が悪くなり、pHが5超〜7の湿式シリカ分散液は、製造途中にゲル化する場合があるので好ましくない。
【0026】
本発明において、極性溶媒中に湿式シリカを含有するシリカスラリーを微粒化して湿式シリカ分散液を製造する方法は、極性溶媒中に所定シリカ濃度になるように湿式シリカを分散し、湿式シリカスラリーを得る分散工程と、湿式シリカスラリー中のシリカ粒子を平均粒子径0.5μm以下まで微粒化して湿式シリカ分散液を得る微粒化工程を連続的に行う方法が好適に採用される。
【0027】
極性溶媒中において、シリカ濃度が22重量%以上である湿式シリカ分散液を製造するには、微粒化工程前の湿式シリカスラリーのpHが3〜5の範囲に調整されていることが重要である。
【0028】
pHが5超〜7の湿式シリカスラリーを、平均粒子径が0.5μm未満になるように微粒化処理を行うと、原因については不明であるが、該シリカスラリーの粘度が急上昇し、微粒化が不可能なほど強固にゲル化する場合がある。
【0029】
また、極性溶媒中において、シリカ濃度が22重量%以上、且つ、スラリーのpHを3未満である湿式シリカスラリーを、平均粒子径が0.5μm未満になるように微粒化して得られた湿式シリカ分散液は、保存安定性が悪くなるため好ましくない。
【0030】
本発明において、シリカ濃度22重量%以上の湿式シリカスラリーのpHを3〜5の範囲に調整する方法は特に制限されない。具体的には極性溶媒に予め硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸を添加してpH調整を行った後、該極性溶媒に湿式シリカを分散する方法、極性溶媒に湿式シリカと鉱酸を同時に添加して、pH調整を行いながら、該極性溶媒に湿式シリカを分散する方法を挙げることができる。
【0031】
また、pHが3未満、或いは5超の湿式シリカスラリーを、微粒化する前にpHが3〜5の範囲になるように再調整する方法もあるが、2段階でpHを調整する必要があったり、製造途中でゲル化するなどの問題が発生する場合があるので好ましくない。
【0032】
上記の分散工程に用いる分散機は特に制限されないが、プロペラ羽根、タービン羽根、パドル翼等を有する一般攪拌機、ディスパーミキサー等の高速回転遠心放射型攪拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー、ウルトラミキサー等の高速回転せん断型攪拌機、コロイドミル、プラネタリーミキサー、吸引式分散機などの分散機、更に上記の高速回転せん断型撹拌機とプロペラ羽根及びパドル翼を組み合わせた複合型分散機、プラネタリーミキサーと高速回転遠心放射型撹拌機又は高速回転せん断型撹拌機を組み合わせた複合型分散機等が挙げられる。
【0033】
本発明において、極性溶媒中に湿式シリカを分散し、湿式シリカスラリーを得る分散工程における液温度(以下、単に分散温度と言う。)は、スラリー粘度の急上昇やゲル化などが無く、スラリー粘度を低い値で一定に保つことができるので、20℃から40℃の温度範囲で制御すること好ましい。
【0034】
更に本発明においては、分散工程で得た湿式シリカスラリーを目的の平均粒子径になるまで微粒化する微粒化工程を経て湿式シリカ分散液を製造するが、分散工程で得られる湿式シリカスラリーの粘度が低いと微粒化工程における運転条件が緩和されるので好ましい。
【0035】
分散温度を20℃から40℃の温度範囲に制御する方式は特に制限されないが、20℃から40℃の温度範囲において任意の一定温度となるように制御することが好ましい。
【0036】
本発明においては、分散工程で得られた湿式シリカスラリーは、次いで、微粒化工程を行うことにより、シリカ粒子の平均粒子径が小さく、分散性、安定性の優れた湿式シリカ分散液を製造するが、該微粒化工程には湿式メディア型粉砕機を用いる。
【0037】
湿式メディア型粉砕機とは、平均粒径0.05〜3mmφ程度のビーズを粉砕メディアとして用いる粉砕機であり、代表例を具体的に例示すると、ニッカトー製の商品名;ポットミル、井上製作所製の商品名;マイテイーミル、アイメックス製の商品名;ビスコミル、アシザワ製の商品名;アジテータミル、コトブキ技研工業製の商品名;スーパーアペックスミル、ウルトラアペックスミル及びウイリー・エ・バッコーフェン製の商品名;ダイノーミルなどを挙げることができる。
【0038】
極性溶媒中の湿式シリカ粒子の平均粒子径を0.5μm未満まで微粒化するのに使用できる微粒化装置としては、湿式メディア型粉砕機の他にも、超音波分散機や高圧ホモジナイザーなどがあるが、超音波分散機は大量製造には向いておらず、また、高圧ホモジナイザーは目的の粒子径になるまで処理するのに、処理時間がかかり、生産性が悪くなるので好ましくない。
【0039】
湿式シリカのように凝集粒子の硬い無機酸化物を微粒化する場合には、粉砕メディア相互と被粉砕物との衝撃作用で微粒化する原理を採用している湿式メディア型粉砕機が適している。
【0040】
本発明において、湿式メディア型粉砕機の接液部は、ジルコニア又はアルミナを主成分とするセラミック、或いはポリウレタン系又はポリエチレン系の樹脂などのシリカに対して磨耗性の高い素材が好ましい。また、使用される粉砕メディアは、公知の粉砕用メディアを用いることができるが、中でも硬度の観点からジルコニアビーズが好ましい。
【0041】
本発明において、湿式シリカスラリーを目的の粒子径になるまで微粒化する微粒化工程における液温度(以下、単に微粒化温度と言う。)は、微粒化中に分散液の凝集やゲル化が無いうえ、微粒化後の湿式シリカ分散液の粘度が低くなるので、40℃以下の温度範囲で制御することが好ましい。湿式シリカ分散液の粘度が低いほど、コーティング剤を製造するための以降に続く製造工程において、ハンドリング性が向上するので非常に好ましい。
【0042】
微粒化温度を40℃以下に制御する方式は特に制限されないが、40℃以下の温度で任意の一定温度となるように制御することが好ましい。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
【0044】
なお、以下の方法によってシリカケークの調製、シリカ分散液の物性測定、及びシリカ分散液を原料にして調製したコーティング剤の性能評価を行った。
【0045】
(1)シリカケークの調製
(1−1)シリカケークAの調製
市販の珪酸ソーダと純水を反応槽中に珪酸ソーダの濃度が5重量%となるように投入した。反応槽の温度を40℃として、22重量%硫酸を用いて中和反応(中和率50%まで)を行った後、反応液の温度を95℃とした。この反応液に中和率が100%になるまで上記硫酸を加えた。生成したシリカに濾過、洗浄操作を繰り返し、シリカケークA(シリカ含有量15重量%)を得た。このシリカケークAを乾燥させたシリカの比表面積は280m2/gである。
【0046】
(1−2)シリカケークBの調製
市販の珪酸ソーダと純水を反応槽中に珪酸ソーダの濃度が5重量%となるように投入した。反応槽の温度を40℃として、22重量%硫酸を用いて中和反応(中和率25%まで)を行った後、反応液の温度を95℃とした。この反応液に中和率が100%になるまで上記硫酸を加えた。生成したシリカに濾過、洗浄操作を繰り返し、シリカケークB(シリカ含有量18重量%)を得た。このシリカケークBを乾燥させたシリカの比表面積は200m2/gである。
【0047】
(2)シリカ分散液の物性測定
(2−1)シリカ濃度
シリカ分散液10gを秤量瓶に採取し、100℃の乾燥機で24時間乾燥を行い、乾燥前後の重量からシリカ分散液のシリカ濃度を算出した。
【0048】
(2−2)粘度測定
シリカ分散液300gを500ml容器に採取し、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−25)を用いて、20,000rpmで5分間攪拌した。次に30℃の恒温槽に10分間つけた後、B型粘度計(トキメック製、BL)を用いて60rpmの条件でシリカ分散液の粘度を測定した。
【0049】
(2−3)pH測定
シリカスラリー又はシリカ分散液300gを500ml容器に採取し、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−25)を用いて、20,000rpmで5分間攪拌した。次に30℃の恒温槽に10分間つけた後、pHメーター(堀場製作所、F−22)を用いて、シリカスラリー及びシリカ分散液のpHを測定した。
【0050】
(2−4)平均粒子径の測定
シリカ分散液の濃度が10重量%となるように、該分散液をイオン交換水で希釈した後、光散乱回折式の粒度分布測定装置(コールター製、コールターLS−230)を用いて、体積基準算術平均径D50を測定し、この値を平均粒子径として採用した。
なお、測定に際しては、水(分散媒)の屈折率1.332及びシリカの屈折率1.458をパラメーターとして入力した。
【0051】
(2−5)保存安定性
シリカ分散液の保存安定性は、シリカ分散液製造3日後に平均粒子径を測定し、製造直後に測定した平均粒子径との比(r)を下記式により算出し、評価した。
r=製造3日後の平均粒子径/製造直後の平均粒子径
◎:r=1.0〜1.5
○:r=1.5〜2.0
△:r=2.0〜3.0
×:r=3.0以上
【0052】
(3)コーティング剤の性能評価
(3−1)コーティング層の作成方法
シリカ分散液と10重量%のポリビニルアルコール水溶液(クラレ製、PVA117)をシリカ:ポリビニルアルコール固形分比=2:1になるようにプロペラミキサーで撹拌、混合し、コーティング剤を得た。このコーティング剤をフィルムコーター(テスター産業製、PI−1210 Film Coater)を用いて、コーテング層のウエット膜厚が110μmとなるようにPETシート(アイ・シー・アイ・ジャパン製、メリネックス705)の表面にコーティングした後、乾燥してPETシート上にコーティング層を作成した。
【0053】
(3−2)コーティング層の光沢性
コーティング層の85°鏡面光沢を変角光度計(スガ試験社製、UGV−5D)を用いて、JIS Z 8741の測定方法に準じて測定を行い、コーティング層の光沢性を下記の基準で評価した。
◎:85°鏡面光沢 80以上
○:85°鏡面光沢 75〜80
△:85°鏡面光沢 70〜75
×:85°鏡面光沢 70以下
【0054】
(3−3)コーティング層の吸液性
インクジェットプリンタ(エプソン製、PM700C)を用いてマゼンダインクでベタ印刷を行い、印字直後から5秒毎に印刷した印字面に市販の上質紙を貼り合わせ、上質紙にインクが転写しなくなるまでの時間の測定を行い、コーティング層の吸液性を下記の基準で評価した。
◎:10秒以内
○:15〜20秒
△:25〜30秒
×:35秒以上
【0055】
実施例1
イオン交換水1,500gに、シリカスラリーのpHが4.5になるようにpH調整剤として2N硫酸を添加した後、比表面積280m2/gの湿式シリカ粉(トクヤマ製、ファインシールX−37B)500gを徐々に添加しながら、液温度を30℃に維持して、ウルトラミキサー(みづほ工業製、ウルトラミキサーLR−2)で分散することにより、pHが4.5のシリカスラリーを得た。このシリカスラリーを湿式メディア型粉砕機(コトブキ技研工業製、スーパーアペックスミルSAM−1)を用いて、ビーズ径0.3mmφ、滞留時間10分、ローター周速10m/sec、微粒化温度30℃の条件で微粒化処理することにより、シリカ分散液を得た。得られたシリカ分散液の物性及びコーティング層の評価を表1に示した。
【0056】
実施例2
分散工程中において、シリカスラリーのpHが4.5で一定となるように湿式シリカ粉と2N硫酸を同時に徐々に添加する以外は、実施例1と同様にしてシリカ分散液を得た。得られたシリカ分散液の物性及びコーティング層の評価を表1に示した。
【0057】
実施例3
湿式メディア型粉砕機のビーズ径を0.1mmφとする以外は実施例1と同様にしてシリカ分散液を得た。得られたシリカ分散液の物性及びコーティング層の評価を表1に示した。
【0058】
実施例4
湿式シリカ粉として、比表面積が200m2/gの湿式シリカ粉(トクヤマ製、ファインシールT−32)を用いる以外は実施例1と同様にしてシリカ分散液を得た。得られたシリカ分散液の物性及びコーティング層の評価を表1に示した。
【0059】
実施例5
シリカスラリーのpHが3.5となるようにpH調整剤として2N硫酸を添加する以外は、実施例1と同様にしてpH3.5のシリカスラリーを得た。得られたシリカスラリーを実施例1と同様の条件で微粒化処理することによりシリカ分散液を得た。得られたシリカ分散液の物性及びコーティング層の評価を表1に示した。
【0060】
実施例6
イオン交換水80gに、シリカスラリーのpHが4.5となるようにpH調整剤として2N硫酸を添加した後、液温度を30℃に維持して、シリカケークA1,670gを徐々に添加し、続いて比表面積280m2/gの湿式シリカ粉(トクヤマ製、ファインシールX−37B)250gを徐々に添加しながら、ウルトラミキサー(みづほ工業製、ウルトラミキサーLR−2)で分散することにより、pHが4.5のシリカスラリーを得た。このシリカスラリーを湿式メディア型粉砕機(コトブキ技研工業製、スーパーアペックスミルSAM−1)を用いて、ビーズ径0.3mmφ、滞留時間10分、ローター周速10m/sec、微粒化温度30℃の条件で微粒化処理することにより、シリカ分散液を得た。得られたシリカ分散液の物性及びコーティング層の評価を表1に示した。
【0061】
実施例7
イオン交換水360gに、シリカスラリーのpHが4.5となるようにpH調整剤として2N硫酸を添加した後、液温度を30℃に維持して、シリカケークB1,390gを徐々に添加し、続いて比表面積200m2/gの湿式シリカ粉(トクヤマ製、ファインシールT−32)250gを徐々に添加しながら、ウルトラミキサー(みづほ工業製、ウルトラミキサーLR−2)で分散することにより、pHが4.5のシリカスラリーを得た。このシリカスラリーを湿式メディア型粉砕機(コトブキ技研工業製、スーパーアペックスミルSAM−1)を用いて、ビーズ径0.3mmφ、滞留時間10分、ローター周速10m/sec、微粒化温度30℃の条件で微粒化処理することにより、シリカ分散液を得た。得られたシリカ分散液の物性及びコーティング層の評価を表1に示した。
【0062】
比較例1
pH調整剤を添加しない以外は、実施例1と同様にして、シリカスラリーを得た。シリカスラリーのpHは5.8であった。このシリカスラリーを実施例1と同じ条件で微粒化処理することを試みたが、滞留時間4分の段階で分散液が強固にゲル化し、引き続き微粒化処理を行うことが不可能となった。
【0063】
比較例2
イオン交換水1,500gに、シリカスラリーのpHが2.5となるようにpH調整剤として2N硫酸を添加した後、比表面積280m2/gの湿式シリカ粉(トクヤマ製、ファインシールX−37B)500gを徐々に添加しながら、液温度を30℃に維持して、ウルトラミキサー(みづほ工業製、ウルトラミキサーLR−2)で分散することにより、pHが2.5の湿式シリカスラリーを得た。このシリカスラリーを湿式メディア型粉砕機(コトブキ技研工業製、スーパーアペックスミルSAM−1)を用いて、ビーズ径0.3mmφ、滞留時間10分、ローター周速10m/sec、微粒化温度30℃の条件で微粒化処理することにより、シリカ分散液を得た。得られたシリカ分散液の物性及びコーティング層の評価を表1に示した。
【0064】
比較例3
イオン交換水1,500gに、比表面積300m2/gの乾式シリカ粉(トクヤマ製、レオロシールQS30)500gを徐々に添加しながら、液温度を30℃に維持して、ウルトラミキサー(みづほ工業製、ウルトラミキサーLR−2)で分散することにより、pHが4.2のシリカスラリーを得た。このシリカスラリーを湿式メディア型粉砕機(コトブキ技研工業製、スーパーアペックスミルSAM−1)を用いて、ビーズ径0.3mmφ、滞留時間10分、ローター周速10m/sec、微粒化温度30℃の条件で微粒化処理することにより、シリカ分散液を得た。得られたシリカ分散液の物性を表1に示した。
【0065】
比較例4
イオン交換水1,800gに、比表面積比表面積300m2/gの乾式シリカ粉(トクヤマ製、レオロシールQS30)200gを徐々に添加しながら、液温度を30℃に維持して、ウルトラミキサー(みづほ工業製、ウルトラミキサーLR−2)で分散することにより、pHが4.5のシリカスラリーを得た。このシリカスラリーを湿式メディア型粉砕機(コトブキ技研工業製、スーパーアペックスミルSAM−1)を用いて、ビーズ径0.3mmφ、滞留時間10分、ローター周速10m/sec、微粒化温度30℃の条件で微粒化処理することにより、シリカ分散液を得た。得られたシリカ分散液の物性を表1に示した。
【0066】
【表1】
実施例1〜7で得られたシリカ分散液は、分散液中のシリカ濃度が22重量%以上、且つ、平均粒子径が0.5μm未満でありながら、保存安定性も優れていた。
【0067】
pHが5超〜7のシリカ分散液は、微粒化工程中に分散液がゲル化して得られなかった(比較例1)。比較例2で得られたpHが3未満のシリカ分散液は、得られたシリカ分散液の保存安定性が悪かった。
【0068】
また、比較例3で得られたシリカ濃度20重量%の乾式シリカ分散液は、保存安定性が極端に悪く、製造後2時間でゲル化し、製造3日後の平均粒子径を測定することができなかった。
【0069】
また、実施例1〜7で得られた湿式シリカ分散液を用いて調製したコーティング剤をコーティングしたコーティング層はいずれも光沢性、吸液性共に優れていた。
【0070】
比較例3、4で得られた乾式シリカ分散液は、コーティング剤のバインダーとして混合したポリビニルアルコールとの相性が悪く、混合直後にゲル化を起こし、コーティング剤を調製することができなかった。
【0071】
【発明の効果】
以上の説明で理解されるように、本発明の湿式シリカ分散液は、シリカ濃度が22重量%であり、シリカ粒子の平均粒子径が0.5μm未満であり、且つ、カチオン性樹脂などの分散剤を添加していないのにも関わらず、保存安定性が優れているために、インクジェット用記録紙の塗工液原料をはじめ、各種のコーティング剤の原料として好適に使用することができる。
Claims (5)
- 極性溶媒中に湿式シリカを分散した分散液であって、該分散液中のシリカ濃度が22重量%以上であり、且つ、シリカ粒子の平均粒子径が0.5μm未満であり、該分散液のpHが3〜5の範囲であることを特徴とする湿式シリカ分散液。
- 極性溶媒中に湿式シリカ粒子を22重量%以上含有し、pHが3〜5の範囲であるシリカスラリーを湿式メディア型粉砕機によって、極性溶媒中の湿式シリカ粒子を0.5μm未満まで微粒化することを特徴とする請求項1記載の湿式シリカ分散液の製造方法。
- シリカスラリーのpHが3〜5の範囲となるように予め極性溶媒に鉱酸を添加してpH調整した後、極性溶媒中に湿式シリカを分散して、pHが3〜5の範囲のシリカスラリーとすることを特徴とする請求項2記載の湿式シリカ分散液の製造方法。
- シリカスラリーのpHが3〜5の範囲となるように極性溶媒に鉱酸と湿式シリカを同時に添加して、pH調整を行いながら、該極性溶媒に湿式シリカを分散して、pHが3〜5の範囲のシリカスラリーとすることを特徴とする請求項2記載の湿式シリカ分散液の製造方法。
- シリカケークを極性溶媒に分散した後に、湿式シリカ粉を添加し、混合してシリカスラリーとすることを特徴とする請求項2〜4記載の湿式シリカ分散液の製造方法。
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