JP2004090627A - インクジェット記録シート用塗工液 - Google Patents
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Abstract
【構成】極性溶媒中にBET比表面積が220m2/g以上の沈降シリカ粒子及びバインダーを含有する極性溶媒よりなり、シリカ濃度が1.5重量%となるように希釈した該塗工液の透過率が20%以上であるインクジェット記録シート用塗工液であって、BET比表面積が220m2/g以上の沈降シリカの水性ケークであって、シリカ濃度5重量%の水性分散液となるようにイオン交換水で分散させたのちシリカ濃度が1.5重量%となるように希釈した該分散液の光散乱指数(n値)が2以上である沈降シリカケークとバインダーとを極性溶媒に分散させることによって得ることができる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、極性溶媒中に沈降シリカ及びバインダーを含有する新規なインクジェット記録シート用の塗工液(以下、単に塗工液とも云う。)に関する。詳しくは、一次粒子径が比較的小さい沈降シリカが極めて高分散した状態で含有された、透明性、安定性に優れた塗工液を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット用記録紙の塗工液には、インク吸収層を形成するために微粒子のシリカやアルミナ等の無機微粉体が使用される。特に近年では、市場から写真並みの画質が得られるインクジェット用記録紙が求められていることから、インク吸収層の透明性が重要な因子となっている。インク吸収層の透明性が高いほど、シートに打ち込まれたインク濃度の濃淡が鮮明になり、得られた画像に色の深みが感じられ、写真並みの画質を実現することが可能となる。
【0003】
インクジェット用記録紙のインク吸収層の透明性は、塗工液の透明性に関係しており、インク吸収層に使用する上記の無機酸化物微粒子の分散性が高いほど好ましい。
【0004】
分散性の高いシリカ粒子としては、珪酸ナトリウム溶液を原料とし、イオン交換樹脂等によって脱ナトリウム化し、アンモニア等によるpH調整で安定化するという工程で製造されるコロイダルシリカが代表的である。しかし、一般的にコロイダルシリカは、極性溶媒中において、該一次粒子が単分散した状態で存在するために、塗工液の原料として使用した場合、インク吸収層のインク吸収性が低い。
【0005】
上記インク吸収層のインク吸収性を高くするためには、極性溶媒中にシリカの一次粒子が凝集した状態で分散されることが必要である。上記凝集粒子を分散せしめたシリカ分散液として、四塩化珪素を酸水素火炎中で燃焼して製造する乾式シリカ、珪酸アルカリ水溶液と酸とを反応せしめてシリカ粒子を析出させる、いわゆる「沈澱法」により製造された沈降シリカ、あるいは、珪素のアルコキシドを原料としてアルカリ性もしくは酸性の含水溶媒中で加水分解して製造するゾル−ゲル法シリカ等を極性溶媒中で予備分散した後、高圧ホモジナイザーを用いて微粒化処理を行うことにより得られたシリカ分散液が知られており(例えば、特許文献1〜3参照)、前記塗工液の原料として好ましく使用されている。
【0006】
特に、上記沈澱法で製造される沈降シリカは、インク吸収性に優れているだけではなく、生産性にも優れるため塗工液の原料として期待されている。
【0007】
ところが、上記沈降シリカを使用して得られる分散液は、乾式シリカと比較してシリカ粒子が強い凝集構造をもつため、極性溶媒中において、乾式シリカ並みの微細な凝集粒子の状態まで高度に微粒化させることができず、これにより塗工液の透明性が低下するといった問題があった。この凝集の傾向は、シリカの一次粒子径が小さいほど、換言すれば、シリカの比表面積が大きいほど強いため、凝集粒子の凝集構造が硬くなり、微粒化の困難さが増加する。
【0008】
そのため、沈降シリカを使用して得られる塗工液は、その透明性において満足できるものではなく、かかる塗工液を使用して形成されるインク吸収層の透明性を低下させるという問題を有していた。
【0009】
上記沈降シリカの極性溶媒への分散性を改良して透明性の高い塗工液を得るため、沈殿法によって生成する沈降シリカを乾燥することなく湿潤状態のケークとして回収することにより凝集性を緩和し、該ケークの状態の沈降シリカ粒子を極性溶媒に分散させて分散性を改良しようとする試みが成され、提案されている。
【0010】
しかしながら、上記方法によっても、比表面積が大きい沈降シリカを対象とする場合には、沈降シリカが高度に分散した分散液を得るために、多大の時間と労力を必要とするばかりでなく、未だ、満足できる分散性を有する分散液が得られていないのが現状である。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−142827号公報
【特許文献2】
特開平10−181190号公報
【特許文献3】
特開2001−19421号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、比表面積が比較的大きい沈降シリカを高度に分散することにより、透明性が高く、且つ、安定性も良く、写真並みの画質が得られるインクジェット記録シートを得るために最適なインクジェット記録シート用塗工液を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、沈澱法によるシリカの生成反応を一定の条件に制限することによって、シリカ一次粒子径が微細であるにも拘わらず、凝集構造が弱く、小さい凝集粒子にまで容易に微粒化できるシリカケークが得られ、このシリカケークを極性溶媒中で分散せしめて塗工液を調製することにより、従来の沈降シリカでは達成し得なかった、沈降シリカが高度に分散した、透明性が高く、且つ、安定性も良好な塗工液の開発に成功し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、極性溶媒中にBET比表面積が220m2/g以上の沈降シリカ粒子及びバインダーを含有する極性溶媒よりなり、該塗工液をシリカ濃度が1.5重量%となるように希釈して測定される透過率が20%以上であることを特徴とするインクジェット記録シート用塗工液である。
【0015】
また、本発明は、前記分散が容易なシリカケークを使用して、上記塗工液を効率的に得るための塗工液の製造方法をも提供するものである。
【0016】
即ち、本発明によれば、BET比表面積が220m2/g以上の沈降シリカの水性ケークであって、シリカ濃度5重量%の水性分散液となるようにイオン交換水中で分散させた後、シリカ濃度が1.5重量%となるように希釈した該分散液の光散乱指数(n値)が2以上である沈降シリカケークとバインダーとを極性溶媒に分散させることを特徴とするインクジェット記録シート用塗工液の製造方法が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明において、沈降シリカは、沈殿法によって製造されるシリカを総称するものである。
【0018】
本発明において、沈降シリカは、BET比表面積が220m2/g以上、好ましくは、240〜400m2/gの範囲であり、さらに好ましくは、250〜350m2/gの範囲のものが使用される。即ち、BET比表面積が220m2/g未満の沈降シリカよりなるシリカケークは、分散は比較的容易であるものの、かかるBET比表面積に相当する粒子径では、後述する実施例にも示すように、得られる塗工液の透明性を十分改良することができず、透明性の高いインク吸収層を得ることが困難となる。
【0019】
尚、BET比表面積とは、S.Brunaure、P.H.Emmett、E.TellerによるJ.Am.Chem.Soc., 60, 309 (1938)に記載された多分子層吸着理論を応用して測定される比表面積であり、シリカの平均一次粒子径に相当すると考えられる。例えば、粉体工学会他編「改訂増補 粉体物性図説」(1985)にもあるように、一次粒子を球形と仮定すれば、比表面積と1次粒子の平均径には下記式(1)の関係があり、比表面積が大きいほど平均一次粒子径は微小となる。
【0020】
D=6/(S・ρ) (1)
(ここで、Dは平均一次粒子径、Sは比表面積、ρは粒子の密度を示す。)
また、本発明において用いられる極性溶媒は、シリカケークが分散するものであれば特に制限なく使用できる。代表的な極性溶媒を例示すれば、水;メタノール、エタノール、2−プロパノールのようなアルコール類;エーテル類;ケトン類が使用できる。上記溶媒を2種類以上混合した分散媒も使用可能である。一般的には、水が好適に使用される。
【0021】
本発明において、上記極性溶媒中に分散させる沈降シリカの濃度は、特に制限されないが、一般に、10〜40重量%、好ましくは、12〜30重量%となるように調整される。また、塗工時には、上記塗工液中の固形分濃度を、必要に応じて、5〜30重量%、好ましくは、5〜20重量%に希釈して使用される。
【0022】
更に、本発明において、バインダーは、塗工液の調製に使用される公知の各種のバインダーを用いることができる。代表的なバインダーを具体的に示せば、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ガゼイン、でんぷん、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。
【0023】
そのうち、分散適性、塗料安定性の観点からポリビニルアルコール又はその誘導体が最も有効に使用されている。上記のポリビニルアルコール誘導体としては、カチオン変性ポリビニルアルコール又はノニオン変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0024】
また、上記バインダーを2種類以上混合したバインダーも使用可能である。
【0025】
本発明において、沈降シリカに対するバインダーの配合割合は、公知の塗工液において一般に採用される割合が特に制限なく採用される。例えば、配合割合は、沈降シリカ100重量部に対して10〜100重量部、好ましくは、30〜60重量部である。
【0026】
本発明の塗工液の特徴は、上記した比較的大きいBET比表面積を有する沈降シリカを使用するにも拘わらず、そのシリカ粒子が極めて高度に分散していることにある。即ち、本発明の塗工液は、シリカ濃度が1.5重量%となるように希釈した液の透過率が20%以上、特に25%以上であることを最大の特徴とする。透過率は塗工液の透明性を表す指数であり、透過率が20%未満であると、該塗工液を塗布して得られたインク吸収層の透明性が低くなり、シートに打ち込まれたインクの濃淡が不鮮明になり、得られた画像の色に深みが感じられず、写真並みの画質を実現することが不可能となる。
【0027】
尚、本発明において、上記塗工液の透過率は、該塗工液と同種の極性溶媒を使用してシリカ濃度が1.5重量%となるように希釈した該液の測定波長589nm(NaD線)の吸光度(τ)を分光光度計により測定し、下記式(2)により透過率(T)を求めた値である。
【0028】
T(%)=10(2−τ) (2)
比表面積が220m2/g以上の沈降シリカ粒子を使用して得られる塗工液において、上記のように高い透明性は、従来の塗工液には例がなく、本発明によって達成された効果である。
【0029】
沈降シリカを分散した従来の塗工液が、上記透明性を達成することができない理由として、従来の沈降シリカは一次粒子径の粒度分布が広いため、強い凝集力を有する超微細一次粒子が多量に存在し、前記本発明の塗工液に特定される高度な分散状態まで沈降シリカを分散させることが実質的にできないためであると考えられる。
【0030】
これに対して、本発明の塗工液に使用する沈降シリカは、沈降シリカ粒子が生成する条件を後述するような条件とすることによって一次粒子の粒度分布が狭くなり、従って超微細一次粒子が少なく、前記の優れた分散性を有するものと推定される。
【0031】
本発明の塗工液において、他の構成は公知の構成が特に制限なく採用される。例えば、沈降シリカ粒子の保存安定性や分散性を向上させるために、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤や防カビ剤等を少量添加しても良い。
【0032】
また、極性溶媒中において、アニオン性を呈するシリカ粒子をカチオン性に変性する目的で、シリカケークとカチオン性樹脂とを極性溶媒中で混合及び分散を行い、カチオン変性した沈降シリカ分散液、すなわちカチオン性樹脂変性シリカ分散液を塗工液原料として使用しても良い。シリカ粒子をカチオン性樹脂によりカチオン性に変性することにより、該塗工液を塗工したインクジェット用記録シートのインクの定着性、耐水性、画像濃度を高めることができる。
【0033】
上記カチオン性樹脂としては、水に溶解した時、解離してカチオン性を呈する樹脂であれば、特に制限なく使用できる。第1〜3級アミン基、または、第4級アンモニウム塩基を有する樹脂が好適である。具体的なものを例示すると、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリアミンスルホン、ポリジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリジアルキルアミノエチルアクリレート、ポリジアルキルアミノエチルメタクリルアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ポリエポキシアミン、ポリアミドアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、ジシアンジアミドポリアルキル−ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の化合物及びこれらの塩酸塩、更にポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及びそのアクリルアミド等の共重合物、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリメタクリル酸エステルメチルクロライド4級塩等を挙げることができる。
【0034】
また、カチオン性樹脂の配合量は、沈降シリカ100重量部に対して、3〜50重量部、特に3〜15重量部が好ましい。かかるカチオン性樹脂の量が、シリカ100重量部に対して3重量部より少なくなるように調整した場合、シリカ粒子の表面電荷のバランスが不均一となり、該シリカ粒子が強固な凝集を起こし易くなる傾向にある。また、カチオン性樹脂の量がシリカ100重量部に対して50重量部より多くなるように調整した場合、粘度が高くなり、分散処理が困難となる場合がある。
【0035】
本発明の塗工液の製造方法は、特に制限されるものではないが、好適な方法として、BET比表面積が220m2/g以上の沈降シリカの水性ケークであって、シリカ濃度5重量%の水性分散液としたときの光散乱指数(n値)が2以上である沈降シリカケークとバインダーとを極性溶媒に分散させる方法が挙げられる。
【0036】
上記本発明の塗工液の製造方法は、塗工液を構成するシリカ粒子の極性溶媒への供給を、比較的大きいBET比表面積を有しながら、極性溶媒に分散した場合に極めて良好な分散性を示す、上記特定の沈降シリカケーク(以下、「特定ケーク」ともいう)によって行うことにある。
【0037】
以下、上記特定シリカケークについて説明する。
【0038】
即ち、特定シリカケークは、シリカ濃度5重量%となるように水に分散して得られる水性分散液をシリカ濃度1.5重量%となるように希釈した該分散液の光散乱指数(n値)が2以上、好ましくは、2.1以上、さらに好ましくは、2.2以上である。
【0039】
尚、上記n値は、分散液中のシリカの分散状態を表す指標であり、分散性が向上するに連れてこの値は大きくなる。従って、n値が大きいほど微細な分散状態であると考えられるので、シリカケークがもつ凝集構造の壊れ易さの指標となる。
【0040】
上記n値は、Journal of Ceramic Society ofJapan,101〔6〕,707−712(1993)に記載の方法に準じて測定した値である。即ち、市販の分光光度計を用いて、光の波長(λ)が460nm〜700nmの範囲の分散液のスペクトルを測定することにより、吸光度(τ)を求め、log(λ)に対してlog(τ)をプロットし、下記式(3)を用いて直線の傾き(−n)を最小二乗法で求める。
【0041】
τ=αλ−n (3)
(ここで、τは吸光度、αは定数、λは光の波長、そしてnは光散乱指数を示す。)
また、上記n値の測定において、沈降シリカの水性ケークより調製されるシリカ濃度5重量%の水性分散液は、該水性ケークに上記シリカ濃度となるようにイオン交換水を加え、プロペラミキサーで撹拌して予備分散を行い、得られたスラリーを、高圧ホモジナイザーを用いて処理圧力78MPaで一回処理して微粒化することにより得られたものである。
【0042】
本発明のシリカケークの他の構成は、特に制限されないが、水分含有率が83〜93重量%の範囲であることが、シリカ分散液を製造する場合、粉砕がよりし易いので好ましい。さらに好適には、85〜92重量%である。
【0043】
さらに、シリカケークを水に分散して5重量%の分散液とした際のpH値が、3〜7の範囲にあるものは、シリカケークの分散性をより向上することができ好ましい。より好適には、pHが3.5〜6.5である。
【0044】
上述したシリカケークの製造方法は特に制限されるものではないが、代表的な製造方法を例示すれば、下記の方法が挙げられる。
【0045】
即ち、反応液のpHを7.5〜11.5の範囲内で一定値に保持し、且つ反応温度を90℃以上に保持しながら、珪酸アルカリと鉱酸とを該反応液に同時に添加して沈降シリカを生成せしめ、該沈降シリカを上記反応液より湿潤状態で分離することからなる方法が挙げられる。
【0046】
上記シリカケークの製造方法において、珪酸アルカリとしては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等が使用できるが、工業用原料としては珪酸ナトリウムが一般的である。また、珪酸アルカリの化学式は、Mをアルカリ金属(NaやK)とすると、一般にM2O・xSiO2と表記される。xはSiO2/M2Oのモル比である。
【0047】
上記珪酸アルカリのSiO2/M2Oのモル比xは特に限定されないが、一般的には2〜4、好ましくは、3.0〜3.5のモル比のものが好適に使用できる。また、珪酸アルカリの使用時の濃度も特に限定されるものではなく、工業用として入手可能なものをそのまま反応液に添加することもできるし、適度に希釈して使用することも可能である。珪酸アルカリ中のSiO2濃度で50〜300g/Lが一般的な目安である。
【0048】
前記鉱酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等が使用できるが、工業用としては、一般に硫酸が使用される。鉱酸の濃度についても特に限定されず、工業用として入手可能なものをそのまま反応液に添加することもできるし、適度に希釈して使用することも可能である。
【0049】
また、上記珪酸アルカリと鉱酸との中和反応時の反応温度は90℃以上に保持することが好ましい。反応温度が90℃より低いと、得られる沈降シリカケークの分散性が低くなり、前述した分散性の指標(n値)が2より小さくなる。上記反応温度は特に、92〜98℃が実施する上では好適な温度範囲である。
【0050】
さらに、上記シリカケークの製造方法における沈降シリカの合成反応では、反応液のpHを7.5〜11.5の範囲内で一定値に保持することが重要である。pH値が大きく変動すると、やはり、得られる沈降シリカケークの分散性が劣ったものとなる。とはいえ、一定値とは、多少の変動は許容されるものであり、pHの変動幅は、±0.3以内が好ましく、±0.2以内がより好ましい。反応液のpH値が7.5を下回ると、反応液がゲル化しやすい等、反応が不安定になるし、11.5を超える条件は生産性が低下する。より好ましいpH値の範囲は、8〜11である。
【0051】
上記反応液のpHを一定値に保持する手段として、珪酸アルカリと鉱酸とを同時に反応液に添加する操作が採用される。
【0052】
所望のBET比表面積になるまで同時添加を実施した後は、反応液を安定化させるために、鉱酸のみを添加してpHを7以下、好ましくは2〜6にすることが望ましい。また、反応液の安定化には、珪酸アルカリと鉱酸の同時添加を一旦停止して反応液を一定時間撹拌したり、同時添加終了後に温度を保持したまま一定時間の撹拌を継続したりといった、いわゆる熟成の工程を施すことも可能である。
【0053】
また、シリカケークの製造方法における好適な態様としては、反応終了時の反応混合物中のシリカ固形分濃度を50g/L以下、好ましくは、35〜47g/Lに調整することが、得られる沈降シリカのBET比表面積を前記範囲に調整するために有効である。
【0054】
加えて、沈澱法による沈降シリカの製造方法において一般に実施されているように、反応液中に電解質、一般には硫酸ナトリウムを適宜添加することも何ら制限なく実施できる。
【0055】
上記の反応によって得られた反応液より、ろ過によって沈降シリカを分離し、必要に応じて、水洗し、脱水してシリカケークを得ることができる。
【0056】
上記ろ過、水洗、脱水には、フィルタープレス等の装置が一般に使用される。
【0057】
このようにして得られたシリカケークは、極性溶媒に対する分散性が極めて良好であり、簡単な分散操作によって沈降シリカが高度に分散した前記塗工液を得ることができる。
【0058】
本発明の塗工液の製造方法において、上述のシリカケークをバインダーとともに極性溶媒に分散させる方法は特に制限されない。
【0059】
一般には、特定シリカケークを極性溶媒に分散してシリカ分散液とした後、該シリカ分散液にバインダーを添加する方法が好適である。
【0060】
シリカ分散液の調製方法について代表的な方法を例示すれば、特定シリカケークと極性溶媒とを各々所定量ずつ配合した後、分散機を用いて、シリカケークを極性溶媒中において分散する方法、極性溶媒を分散槽に予め仕込んだ後、分散機を稼動させながら、徐々にシリカケークを投入し、分散する方法等を挙げることができる。また、必要に応じて、上記の手法を用いてシリカケークを極性溶媒中で分散した後に、分散液中のシリカ粒子を好適な範囲の平均粒子径まで更に微粒化するための高度な微粒化手段を施す方法が好適に採用される。
【0061】
上記の分散に用いる分散機は特に制限されないが、プロペラ羽根、タービン羽根、パドル翼を有する一般撹拌機、ディスパーミキサー等の高速回転遠心放射型撹拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー、ウルトラミキサー等の高速回転せん断型撹拌機、コロイドミル、プラネタリミキサーなどの分散機が挙げられる。
上記の分散機の中でも強力なせん断力を有する分散機が好適である。具体的には、高速せん断型撹拌機や、プロペラ羽根及びパドル翼に更に高速せん断型撹拌機を組み合わせた複合型分散機、プラネタリーミキサーと高速回転遠心放射型撹拌機又は高速回転せん断型撹拌機を組み合わせた複合型分散機等が挙げられる。
【0062】
また、前記高度な微粒化方法は特に制限されないが、ビーズミル、サンドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いた微粒化処理が挙げられる。中でも高圧ホモジナイザーを用いた微粒化処理が好ましい。
【0063】
このようにして得られた沈降シリカ分散液を適度な濃度とするため、極性溶媒により希釈する操作や各種の濃縮操作等を適宜実施することも何ら問題なく実施できる。
【0064】
上記の沈降シリカ分散液を濃縮する操作は、既知の濃縮方法を特に制限なく実施することができる。例えば、極性溶媒の沸点に昇温して行う蒸発濃縮法や減圧下で極性溶媒の沸点を下降せしめて行う減圧蒸発法、更には圧力をかけてポリスルホン、ポリアクリロニトリル、セルロース等の有機薄膜を用いて極性溶媒の除去を行う限外ろ過法などが挙げられる。
【0065】
また、上記沈降シリカを極性溶媒に分散せしめたシリカ分散液としては、極性溶媒中の沈降シリカの平均粒子径が300nm以下であり、且つ、粒子径500nm以上の凝集粒子の割合が5体積%であることが好ましい。
【0066】
尚、上記沈降シリカの粒子径は、極性溶媒中の凝集粒子の直径を光散乱回折式の粒度分布計で測定した値であり、その平均粒子径は、該凝集粒子について体積基準算術平均径D50を求めた値である。
【0067】
上記極性溶媒中の沈降シリカの平均粒子径が300nmを超える場合、得られる塗工液の透明性が低下する傾向にあり、また、粒子径500nm以上の凝集粒子の割合が5体積%を超える場合も塗工液の透明性が低下するばかりでなく、塗工液の安定性も低下する傾向にある。
【0068】
上述の製造方法で得られた沈降シリカ分散液とバインダーとを混合し、塗工液を製造する方法は、公知の方法が特に制限なく採用される。例えば、プロペラ翼、タービン翼を有する一般攪拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー等の高速回転せん断形攪拌機等を装着した混合槽中に沈降シリカ分散液とバインダーとを投入し、混合する方法が一般的である。
【0069】
更にカチオン性樹脂を含有する本発明の塗工液の製造においては、上述のシリカケーク、カチオン性樹脂及びバインダーを極性溶媒に分散すればよく、その方法は特に制限されない。
【0070】
一般には特定のシリカケークとカチオン性樹脂とを極性溶媒に分散してカチオン性樹脂変性シリカ分散液とした後、該カチオン性樹脂変性シリカ分散液にバインダーを添加する方法が好適である。
【0071】
カチオン性樹脂変性シリカ分散液の調製方法について代表的な方法を例示すれば、極性溶媒中に該シリカケークを分散した後に、カチオン性樹脂と混合して分散を行う方法、極性溶媒中にカチオン性樹脂を混合した後に、徐々に該シリカケークを投入し、シリカケークを分散しながら、シリカケークとカチオン性樹脂とを混合・分散する方法などが挙げられる。また、必要に応じて、上記の手法を用いてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を調製した後に、分散液中のシリカ粒子を好適な範囲の粒子径まで更に微粒化するための高度な微粒化手段を施す方法が好適に採用される。
【0072】
上記の分散に用いる分散機は特に制限されないが、前述の一般撹拌機、高速回転遠心放射型撹拌機、高速回転せん断型撹拌機、コロイドミル、プラネタリーミキサー、吸引式分散機などの分散機更に上記の分散機を組み合わせた複合型分散機が挙げられる。
【0073】
また、前記高度な微粒化方法は特に制限されないが、前述のビーズミル、サンドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いた微粒化処理が挙げられる。
【0074】
上述の製造方法で得られたカチオン性樹脂変性シリカ分散液とバインダーとを混合し、塗工液を製造する方法は、公知の方法が特に制限なく採用される。例えば、プロペラ翼、タービン翼を有する一般攪拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー等の高速回転せん断形攪拌機等を装着した混合槽中にカチオン性樹脂変性シリカ分散液とバインダーとを投入し、混合する方法が一般的である。
【0075】
上記塗工液の製造方法において、本発明の効果を著しく低下させない範囲で、公知の任意の添加剤を配合することができる。代表的な添加剤を例示すれば、カチオン性樹脂等の耐水性向上剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防カビ剤などを挙げることができる。
【0076】
上記の任意の添加剤の塗工液への添加方法は、前述した塗工液の製造方法において、特に制限なく、公知の方法で添加することができる。例えば、沈降シリカ分散液とバインダーとの混合後に添加・混合する方法、予めバインダーに添加・混合する方法、予め沈降シリカ分散液に添加・混合する方法等が挙げられる。また、前段階の沈降シリカ分散液の製造方法において、シリカケークを極性溶媒中に分散する際に予め添加しておいても良い。
【0077】
【実施例】
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。
【0078】
尚、シリカケークに関する測定方法は、以下の通りである。
【0079】
1.BET比表面積
シリカケークを乾燥器(120℃)に入れて乾燥した後、マイクロメリティクス社製のアサップ2010を使用して、窒素吸着量を測定し、相対圧0.2における1点法の値を採用した。
【0080】
2.シリカケークの水分含有率
シリカケークを105℃に保温した乾燥器中に2時間入れ、水分乾燥前後の重量から算出した。
【0081】
3.シリカ濃度5重量%分散液のpH測定
予め水分含有率を測定したシリカケークとイオン交換水とを、シリカ濃度が5重量%となるように配合し、プロペラミキサーで撹拌混合してスラリー化し、市販のpH計を使用して25℃における値を測定した。
【0082】
4.n値の測定
予め水分含有率を測定したシリカケークに、シリカ濃度が5重量%となるよう、イオン交換水を加え、プロペラミキサーで撹拌することにより予備混合を行い、スラリー化した。得られたスラリーを、高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製;ナノマイザー、LA−31)を用いて処理圧力78MPaで1回処理することにより、シリカ分散液を調製した。次にこのシリカ分散液の可視光吸収スペクトルを、分光光度計(日本分光製、Ubest−35型)を用いて測定した。まず、光路長10mmのセルを用い、参照セル及び試料セルにそれぞれイオン交換水を満たし、全波長範囲にわたってゼロ点校正を行った。次に、沈降シリカ分散液のシリカ濃度が1.5重量%となるようにイオン交換水で希釈し、試料セルに入れて、波長(λ)460〜760nmの吸光度(τ)を測定した。log(λ)及びlog(τ)をプロットし、前述した式(3)を用いて直線の傾き(−n)を最小二乗法で求めた。
【0083】
5.反応終了時の反応混合物中のシリカ固形分濃度
反応終了時の反応混合物100mLを採取し、No.5Aろ紙を用いてろ過し、ろ過残渣に純水1Lを加えて洗浄した。この残渣を乾燥器(120℃)で乾燥した後、重量を測定し、単位反応液量(1L)中のシリカ固形分重量(g)として表示した(単位:g/L)。
【0084】
また、シリカ分散液及び塗工液に関する測定方法は、以下の通りである。
【0085】
1.粒度分布及び平均粒子径の測定
光散乱回折式の粒度分布測定装置(コールター製、コールターLS−230)を用いて、シリカの屈折率1.458、分散媒として用いている水の屈折率1.332の条件で粒度分布を測定し、500nm以上の粒子の体積割合及び、体積基準算術平均径D50を算出した。この体積基準算術平均径を平均粒子径とした。
【0086】
塗工液に関する測定方法は、以下の通りである。
【0087】
2.塗工液の透明性
塗工液のシリカ濃度が1.5重量%となるようにイオン交換水で希釈し、該希釈された塗工液の吸光度(τ)を分光光度計(日本分光製、Ubest−35型)を用いて測定し、前述した式(2)より透過率(T)を算出した。本測定において、光路長は10mm、測定波長は589nm(NaD線)とした。
【0088】
3.塗工液の安定性
塗工液を5日間放置し、塗工液中の凝集物の発生の有無を目視により観察した。
【0089】
◎:凝集物の発生が認められない。
○:凝集物の発生がほとんど認められない。
△:凝集物の発生が僅かに認められる。
×:凝集物の発生が認められる。
【0090】
4.塗工層の透明性
塗工液をバーコーダーで塗工量が20g/m2になるようにPETシート(メリネックス705、アイ・シー・アイ・ジャパン製)の表面に塗布乾燥し、PETシート上に塗工層を作成した。得られたシートのヘーズをヘーズメーター(スガ試験機社製、カラーコンピューター)を用いて、JIS K 7136の測定方法に準じて測定を行い、塗工層の透明性を下記の基準で評価した。
【0091】
◎:ヘーズ 50%以下
○:ヘーズ 50%〜60%
△:ヘーズ 60%〜70%
×:ヘーズ 70%以上
シリカケークの製造方法は、以下の通りである。
【0092】
(シリカケークAの調製)
珪酸ナトリウム溶液(SiO2濃度10g/L、モル比x=3.4)6Lを反応槽に仕込み、プロペラ式撹拌翼で混合しながら、加熱して95℃とした。温度を95℃に保持したまま、撹拌下に、珪酸ナトリウム溶液(SiO2濃度180g/L、モル比x=3.4)を32mL/min、及び、硫酸(濃度221g/L)を12mL/minで同時に反応槽へ50分間にわたり添加した。この間、反応液のpHは10.2〜10.5であった。同時添加終了後、95℃を保持したまま40分間撹拌を継続した。続いて、上記の硫酸をpHが3.0となるまで添加して反応スラリーを得た。シリカ固形分濃度は、42g/Lであった。
【0093】
反応スラリーを減圧ろ過し、イオン交換水にて洗浄してシリカケークを得た。このシリカケークの物性を測定したところ、水分含有率が89.5重量%、5%分散液pHが5.1、n値は2.4であった。また、上記沈降シリカのBET比表面積は、276m2/gであった。
【0094】
(シリカケークBの調製)
反応液中へ添加した珪酸ナトリウム溶液をSiO2濃度270g/L、添加速度21mL/minとし、同時添加終了後に硫酸をpHが4.5となるまで添加した以外は、実施例1と同様の操作を実施した。
同時添加時のpHは10.4〜10.6であった。また、反応終了時のシリカ固形分濃度は、45g/Lであった。
【0095】
反応スラリーからろ過、洗浄して得られたシリカケークの物性は、水分含有率が89.0重量%、5%分散液pHが6.4、n値は2.5であった。また、上記沈降シリカのBET比表面積は、265m2/gであった。
【0096】
(シリカケークCの調製)
0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液5.9Lを反応槽に仕込み、プロペラ式撹拌翼で混合しながら、加熱して93℃とした。この初期反応液へ、珪酸ナトリウム溶液(SiO2濃度180g/L、モル比x=3.4)を42mL/min、及び、硫酸(濃度221g/L)を12mL/minで同時に反応槽へ40分間にわたり添加した。
【0097】
この間、反応液のpHは10.0〜10.2であった。同時添加終了後、93℃を保持したまま20分間撹拌を継続した。続いて、上記の硫酸をpHが3.4となるまで添加して反応スラリーを得た。シリカ固形分濃度は、36g/Lであった。
【0098】
反応スラリーを減圧ろ過し、イオン交換水にて洗浄してシリカケークを得た。このシリカケークの物性を測定したところ、水分含有率が89.6重量%、5%分散液のpHが4.6、n値は2.9であった。また、上記沈降シリカのBET比表面積は、316m2/gであった。
【0099】
(シリカケークDの調製)
水6.3Lを反応槽に仕込み、プロペラ式撹拌翼で混合しながら、加熱して93℃とした。この初期反応液へ、珪酸ナトリウム溶液(SiO2濃度270g/L、モル比x=3.4)を37mL/min、及び、硫酸(濃度221g/L)を21mL/minで同時に反応槽へ30分間にわたり添加した。
【0100】
この間、反応液のpHは9.3〜9.6であった。同時添加終了後、93℃を保持したまま10分間撹拌を継続した。続いて、上記の硫酸をpHが3.1となるまで添加して反応スラリーを得た。シリカ固形分濃度は、37g/Lであった。
【0101】
反応スラリーを減圧ろ過し、イオン交換水にて洗浄してシリカケークを得た。このシリカケークの物性を測定したところ、水分含有率が91.6重量%、5%分散液のpHが3.6、n値は2.9であった。また、上記沈降シリカのBET比表面積は、337m2/gであった。
【0102】
(シリカケークEの調製)
水6.2Lを反応槽に仕込み、プロペラ式撹拌翼で混合しながら、加熱して94℃とした。この初期反応液へ、珪酸ナトリウム溶液(SiO2濃度270g/L、モル比x=3.4)を19mL/min、及び、硫酸(濃度221g/L)を9.7mL/minで同時に反応槽へ60分間にわたり添加した。
【0103】
この間、反応液のpHは9.5〜9.8であった。同時添加終了後、94℃を保持したまま30分間撹拌を継続した。続いて、上記の硫酸をpHが3.2となるまで添加して反応スラリーを得た。シリカ固形分濃度は、38g/Lであった。
【0104】
反応スラリーを減圧ろ過し、イオン交換水にて洗浄してシリカケークを得た。このシリカケークの物性を測定したところ、水分含有率が88.6重量%、5%分散液のpHが4.9、n値は2.4であった。また、上記沈降シリカのBET比表面積は、257m2/gであった。
【0105】
(シリカケークFの調製)
珪酸ナトリウム溶液(SiO2濃度50g/L、モル比x=3.2)8L、及び硫酸ナトリウム92gを反応槽中に仕込み、撹拌下に、温度を40℃として、硫酸(221g/L)を31mL/minで15分間添加した。次いで、反応液を撹拌下に温度を95℃まで昇温した。95℃に保持した状態で、上記の硫酸を5.1mL/minで反応混合物のpHが5.5になるまで加えた。生成した沈降シリカは実施例1と同様の操作でろ過、洗浄した。
【0106】
得られたシリカケークの物性は、水分含有量が88.9重量%、5%分散液pHが6.0、n値は1.6であった。また、上記沈降シリカのBET比表面積は、280m2/gであった。
【0107】
(シリケカークGの調製)
珪酸ナトリウム溶液(SiO2濃度10g/L、モル比x=3.4)2.2Lを反応槽に仕込み、反応温度を87℃に保持した。この中へ珪酸ナトリウム溶液(SiO2濃度90g/L、モル比x=3.4)を38mL/min、及び、硫酸(濃度221g/L)を6.5mL/minで同時に反応槽へ110分間にわたり添加した。この間、反応液のpHは10.0〜10.3であった。同時添加終了後、87℃を保持したまま10分間撹拌を継続し、引き続いて、上記の硫酸をpHが3.5となるまで添加して反応スラリーを得た。シリカ固形分濃度は、5.5%であった。
【0108】
反応スラリーをろ過、洗浄して得られたシリカケークの物性を測定したところ、水分含有量が87.3重量%、5%分散液pHが5.4、n値は0.9であった。また、上記沈降シリカのBET比表面積は、197m2/gであった。
【0109】
(シリカケークHの調製)
珪酸ナトリウム溶液(SiO2濃度10g/L、モル比x=3.4)2.5Lを反応槽に仕込み、反応温度を80℃に保持した。この中へ珪酸ナトリウム溶液(SiO2濃度90g/L、モル比x=3.4)を40mL/min、及び、硫酸(濃度221g/L)を6.8mL/minで同時に反応槽へ115分間にわたり添加した。この間、反応液のpHは10.1〜10.5であった。同時添加終了後、80℃を保持したまま10分間撹拌を継続し、引き続いて、上記の硫酸をpHが3.4となるまで添加して反応スラリーを得た。シリカ固形分濃度は、55g/Lであった。
【0110】
反応スラリーをろ過、洗浄して得られたシリカケークの物性を測定したところ、水分含有量が86.5重量%、5%分散液のpHが6.0、n値は1.2であった。また、上記沈降シリカのBET比表面積は、244m2/gであった。
【0111】
実施例1
シリカケークAをコロイドミル(PUC社製、コロイドミルK60)により、スラリー化した後、所定量のイオン交換水を用いて希釈し、シリカ濃度10重量%のシリカスラリーを得た。このシリカスラリーを高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製、ナノマイザーLA−31)を用いて処理圧力78MPaで微粒化処理を行い、沈降シリカ分散液を得た。この沈降シリカ分散液50gと10重量%のポリビニルアルコール水溶液(クラレ製、PVA117)25gとをプロペラミキサーで撹拌・混合し、塗工液を得た。得られた沈降シリカ分散液の物性を表1に、塗工液の物性を表2に示した。
【0112】
実施例2
シリカケークをシリカケークBとした以外は、実施例1と同様にして沈降シリカ分散液及び塗工液を得た。得られた沈降シリカ分散液の物性を表1に、塗工液の物性を表2に示した。
【0113】
実施例3
シリカケークをシリカケークCとした以外は、実施例1と同様にして沈降シリカ分散液及び塗工液を得た。得られた沈降シリカ分散液の物性を表1に、塗工液の物性を表2に示した。
【0114】
実施例4
シリカケークをシリカケークDとした以外は、実施例1と同様にして沈降シリカ分散液及び塗工液を得た。得られた沈降シリカ分散液の物性を表1に、塗工液の物性を表2に示した。
【0115】
実施例5
シリカケークをシリカケークEとした以外は、実施例1と同様にして沈降シリカ分散液及び塗工液を得た。得られた沈降シリカ分散液の物性を表1に、塗工液の物性を表2に示した。
【0116】
比較例1
シリカケークをシリカケークFとした以外は、実施例1と同様にして沈降シリカ分散液及び塗工液を得た。得られた沈降シリカ分散液の物性を表1に、塗工液の物性を表2に示した。
【0117】
比較例2
シリカケークをシリカケークGとした以外は、実施例1と同様にして沈降シリカ分散液及び塗工液を得た。得られた沈降シリカ分散液の物性を表1に、塗工液の物性を表2に示した。
【0118】
比較例3
シリカケークをシリカケークHとした以外は、実施例1と同様にして沈降シリカ分散液及び塗工液を得た。得られた沈降シリカ分散液の物性を表1に、塗工液の物性を表2に示した。
【0119】
比較例4
シリカケークAを120℃に保持した乾燥器に20時間置いて乾燥後、さらに室内に24時間放置した。これをコーヒーミルで粉砕して、水分を6.1重量%含有するシリカ粉末を得た。このシリカ粉末107gをイオン交換水893g中に徐々に添加しながら、ホモジナイザー(イカ製、ホモジナイザーT−25)で分散してシリカ濃度10重量%のシリカスラリーを得た。このシリカスラリーを高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製、ナノマイザーLA−31)を用いて処理圧力78MPaで微粒化処理を行い、沈降シリカ分散液を得た。この沈降シリカ分散液50gと10重量%のポリビニルアルコール水溶液(クラレ製、PVA117)25gとをプロペラミキサーで撹拌・混合し、塗工液を得た。得られた沈降シリカ分散液の物性を表1に、塗工液の物性を表2に示した。
【0120】
実施例6
シリカケークAをコロイドミル(PUC社製、コロイドミルK60)により、スラリー化した後、所定量のイオン交換水を用いて希釈し、シリカ濃度10重量%のシリカスラリーを得た。このシリカスラリー500gとジアリルメチルアミン塩酸塩重合物を20重量%の濃度で含有するカチオン性樹脂水溶液12.5gとを混合し、ウルトラミキサー(みづほ工業製、ウルトラミキサーLR−2)を用いて混合することにより、予備混合液を得た。この予備混合液を高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製、ナノマイザーLA−31)を用いて処理圧力78MPaで微粒化処理を行い、沈降シリカ分散液を得た。この沈降シリカ分散液50gと10重量%のポリビニルアルコール水溶液(クラレ製、PVA117)25gとをプロペラミキサーで撹拌・混合し、塗工液を得た。得られた沈降シリカ分散液の物性を表1に、塗工液の物性を表2に示した。
【0121】
実施例7
シリカケークをシリカケークBとした以外は、実施例6と同様にして沈降シリカ分散液及び塗工液を得た。得られた沈降シリカ分散液の物性を表1に、塗工液の物性を表2に示した。
【0122】
比較例5
シリカケークをシリカケークFとした以外は、実施例6と同様にして沈降シリカ分散液及び塗工液を得た。得られた沈降シリカ分散液の物性を表1に、塗工液の物性を表2に示した。
【0123】
比較例6
シリカケークをシリカケークGとした以外は、実施例6と同様にして沈降シリカ分散液及び塗工液を得た。得られた沈降シリカ分散液の物性を表1に、塗工液の物性を表2に示した。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
【発明の効果】
以上のように、BET比表面積が220m2/g以上の沈降シリカの水性ケークであって、シリカ濃度5重量%の水性分散液となるようにイオン交換水中で分散させたのちシリカ濃度が1.5重量%となるように希釈した該分散液の光散乱指数(n値)が2以上である沈降シリカケークを用いて製造したインクジェット記録シート用塗工液は、シリカ濃度1.5重量%になるように希釈した該分散液の透過率が20%以上であるような透明性の高い該塗工液であり、この該塗工液を用いて作成した塗工層は、従来の塗工液と比較して、透明性が高いことから、写真画質を得るのに最適なインクジェット記録シートを製造することが可能となる。尚、本発明の塗工液を用いて製造されるインクジェット記録シートの支持体は、特に限定されず、透明又は不透明支持体が使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等のプラスチックフィルム類、上質紙、アート紙、ポリエチレンラミネート紙などの紙類、合成紙などが適宜使用することができる。
Claims (4)
- 極性溶媒中にBET比表面積が220m2/g以上の沈降シリカ粒子及びバインダーを含有する極性溶媒よりなるインクジェット記録シート用塗工液であって、該塗工液をシリカ濃度が1.5重量%となるように希釈して測定される透過率が20%以上であることを特徴とするインクジェット記録シート用塗工液。
- 更にカチオン性樹脂を含有する請求項1記載のインクジェット記録シート用塗工液。
- BET比表面積が220m2/g以上の沈降シリカの水性ケークであって、シリカ濃度5重量%の水性分散液となるようにイオン交換水で分散させた後、シリカ濃度が1.5重量%となるように希釈した該分散液の光散乱指数(n値)が2以上である沈降シリカケークとバインダーとを極性溶媒に分散させることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録シート用塗工液の製造方法。
- BET比表面積が220m2/g以上の沈降シリカの水性ケークであって、シリカ濃度5重量%の水性分散液となるようにイオン交換水に分散させた後、シリカ濃度が1.5重量%となるように希釈した該分散液の光散乱指数(n値)が2以上である沈降シリカケーク、カチオン性樹脂及びバインダーを極性溶媒に分散させることを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録シート用塗工液の製造方法。
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JP2008221540A (ja) * | 2007-03-09 | 2008-09-25 | San Nopco Ltd | 水性インク受容層形成用組成物及びこの製造方法 |
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2003
- 2003-07-04 JP JP2003192185A patent/JP2004090627A/ja active Pending
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