JP3877971B2 - 変性乾式シリカ分散液の製造方法 - Google Patents

変性乾式シリカ分散液の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、極性溶媒中に乾式シリカ及び対アニオンとしてハロゲンイオンを持つカチオン性樹脂を分散した変性乾式シリカ分散液の新規な製造方法に関する。詳しくは、ガスバリア性、耐食性、親水性、光沢性、吸液性等を付与するためのコーティング組成物を製造する際、バインダーとして添加される水溶性樹脂水溶液との混合における凝集物の生成が抑制され、安定してコーティング組成物を製造することが可能な変性乾式シリカ分散液を効率よく製造するための製造方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリカを極性溶媒中に分散させて使用されるコーティング組成物は、ガスバリア性、耐食性或いはその他の特性を付与するために有用なコーティング組成物として知られている。例えば、本出願人は特開平2000−233478号公報において、シリカとポリビニルアルコール系重合体からなるガスバリア性フィルムを提案している。
【0003】
また、特開平11−192675号公報には、水溶性高分子と、該シリカとして乾式シリカからなるガスバリアーコート剤が、平滑で透明性の高いコーティング層を得るためのコーティング組成物として示されている。
【0004】
しかしながら、該乾式シリカを分散液中に高濃度で存在せしめると、シリカの分散安定性が低下し、これを使用してコーティング組成物を製造する際に、コーティング層における所期の効果を十分達成することが困難となるという問題があった。
【0005】
上記問題に対して、該乾式シリカ分散液に第4級アンモニウム塩基等のカチオン性基を含むカチオン性樹脂を配合して変性乾式シリカ分散液とすることにより、該分散液の安定性を改良する方法が提案されている。
【0006】
この変性乾式シリカ分散液の製造において使用されるカチオン性樹脂は、該変性乾式シリカ分散液のゲル化を防止するために、極性溶媒に溶解した際のpHが比較的低い、ハロゲン化物が使用されることが多い。
【0007】
ところで、コーティング組成物の製造に際し、コーティング機能を付与するためのバインダーとして、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリアルコール、でんぷん類、ビニル系共重合体等の水溶性樹脂が配合される。
【0008】
しかしながら、シリカとして乾式シリカを用いて得られた変性乾式シリカ分散液を、前記バインダーと混合してコーティング組成物を製造した場合、得られるコーティング組成物中に凝集物が生成するという現象が起こる。
【0009】
特に、変性乾式シリカ分散液を構成する乾式シリカとして比表面積の高い乾式シリカを用いたり、該乾式シリカ分散液中で乾式シリカを高度に分散させた場合には、かかる凝集物が多量に生成する傾向にあった。
【0010】
そして、かかる凝集物が生成した場合、コーティング組成物の透明性や安定性が著しく低下し、該コーティング組成物によって形成される種々のコーティング層の商品価値を著しく損なうという問題を有する。
【0011】
また、該コーティング組成物の物性についても再現性が乏しくなり、コーティング組成物の塗工条件にも悪影響を与えるため、一定の特性を持ったコーティング層を安定して形成することが困難となっていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、バインダーとの混合によりコーティング組成物を製造する際、凝集物を生じ難く、透明性の高いコーティング組成物を再現性良く製造することが可能な、変性乾式シリカ分散液の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点について鋭意研究を重ねた。その結果、シリカ分散液のシリカ源として乾式シリカを用いた場合には、沈降法シリカ、ゾルゲル法シリカ、コロイダルシリカ等の、所謂、湿式シリカを用いた場合に比較して、該分散液中にケイ酸モノマー及び低分子量ポリケイ酸として溶存しているケイ酸(以下、単に溶存ケイ酸ともいう)の濃度が極めて高く、このような溶存ケイ酸の濃度が高い変性乾式シリカ分散液を用いてコーティング組成物を製造した場合には、該コーティング組成物中に凝集物が生成し易いという知見を得た。
【0014】
また、カチオン性樹脂として、対アニオンにハロゲンイオンを持つ樹脂を使用した場合に、上記傾向が極めて高いという知見を得た。
【0015】
かかる知見に基づいて更に研究を重ねた結果、該変性乾式シリカ分散液の製造方法において、上記カチオン性樹脂の対アニオンとして存在するハロゲンイオンを特定のイオンにイオン交換することによって、溶存ケイ酸の濃度の低減が図れ、バインダーとの混合時に凝集物が生成し難い変性乾式シリカ分散液を得ることができると共に、ハロゲンイオンの量の低下により、該変性乾式シリカ分散液を使用して調製されるコーティング組成物及びこれにより形成されるコーティング層の耐候性が向上することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、極性溶媒、乾式シリカ及び対アニオンとしてハロゲンイオンを持つカチオン性樹脂より変性乾式シリカ分散液を製造する方法において、該ハロゲンイオンの一部を水酸イオン及び弱酸の共役塩基よりなる群より選ばれる少なくとも一種のアニオンにイオン交換するイオン交換工程を含むことを特徴とする変性乾式シリカ分散液の製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる乾式シリカは、四塩化珪素などのシラン系ガスを酸水素炎中で燃焼させて得られるものであり、「ヒュームドシリカ」とも称されている。一般に、乾式シリカは、BET法による比表面積が30〜500m2/gの範囲のものが入手可能であり、本発明において好適に使用できる。
【0018】
特に、比表面積が50〜500m2/gの範囲の乾式シリカを用いることによって、透明性等の特性が向上したコーティング層を形性可能なコーティング組成物を得ることができ好ましい。
【0019】
また、本発明において用いられる乾式シリカは、平均一次粒子径が5〜60nmの範囲で、且つ平均凝集粒子径が10〜1000nmの範囲であることが好ましい。即ち、上記乾式シリカの平均一次粒子径が5nmよりも小さい場合は乾式シリカ分散液中で不安定であり、60nmよりも大きい場合は、変性乾式シリカ分散液によるコーティング組成物を使用して形成されるコーティング層の透明性等の特性が低下する場合がある。
【0020】
また、上記乾式シリカの平均凝集粒子径が10nmよりも小さい場合は、変性乾式シリカ分散液の粘度が高くなり過ぎ、これを使用したコーティング組成物の製造時に扱い難い場合がある。また、平均粒子径が1000nmよりも大きい場合は、変性乾式シリカ分散液或いはコーティング組成物においてシリカが沈降して相分離し易くなる場合があり、また、該コーティング組成物によって形成されるコーティング層の透明性も低下する。
【0021】
本発明において用いられるカチオン性樹脂は、水に溶解したときに解離してカチオン性を呈し、且つ対アニオンとしてハロゲンイオンを持つ樹脂を対象とする。
【0022】
その中でも、第1〜4級アンモニウム塩基を有する樹脂が好適に使用できる。具体的なものを例示すると、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリアミンスルホン、ポリジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリジアルキルアミノエチルアクリレート、ポリジアルキルアミノエチルメタクリルアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ポリエポキシアミン、ポリアミドアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、ジシアンジアミドポリアルキル−ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルメチルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウム及びそのアクリルアミド等の共重合物等のハロゲン化物を挙げることができる。
【0023】
上記ハロゲン化物としては、塩化物、臭化物、沃化物が挙げられるが、塩化物が一般的である。
【0024】
また、本発明において用いられる極性溶媒は、シリカ及びカチオン性樹脂が分散し易い極性溶媒が特に制限なく使用される。そのうち、極性溶媒として水が最も好ましい。勿論、水以外にもメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エーテル類、ケトン類などの極性溶媒が使用できる。また、水と上記極性溶媒との混合溶媒も使用することができ、この場合、乾式シリカの分散性をより向上せしめることが可能である。
【0025】
本発明において、得られる変性乾式シリカ分散液におけるシリカ粒子の安定性や分散性を向上させるために、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤等を少量添加してもよい。
【0026】
本発明において、乾式シリカの使用量は、変性乾式シリカ分散液中のシリカの濃度が10〜40重量%、好ましくは10〜25重量%の範囲となる量が好ましい。
【0027】
即ち、シリカ分散液中のシリカの濃度が40重量%より多い場合、カチオン性樹脂との混合が困難となる。また、10重量%より少ない場合は、該分散液の貯蔵および輸送に関るコストが高くなるため、工業的ではない。
【0028】
また、カチオン性樹脂の使用量は乾式シリカ100重量部に対して、1〜50重量部、特に、3〜10重量部が好ましい。上記変性乾式シリカ分散液中のカチオン性樹脂の量が、シリカ100重量部に対して1重量部より少ないと、シリカ粒子の表面電荷のバランスが不均一となり、シリカ粒子が強固な凝集を起こし易くなる傾向がある。また、カチオン性樹脂の量がシリカ100重量部に対して50重量部を超える場合は、粘度が高くなり過ぎ、分散処理が困難になる場合がある。
【0029】
本発明において、変性乾式シリカ分散液は、極性溶媒、乾式シリカ及び対アニオンとしてハロゲンイオンを持つカチオン性樹脂を原料として製造される。
【0030】
先ず、乾式シリカは粉末状のものを用いても良いし、予め水などの極性溶媒中に微分散した乾式シリカのスラリーを用いても良い。また、カチオン性樹脂は、予め極性溶媒に溶解した溶液として使用することが好ましい。
【0031】
分散方法としては、極性溶媒、乾式シリカ及びカチオン性樹脂を混合した後、ホモジナイザー等のタービン・ステータ型高速回転式攪拌分散機、コロイドミル、超音波乳化機、高圧ホモジナイザーなどの分散機を用いて混合し、微分散せしめる方法が挙げられる。
【0032】
本発明の方法により得られる変性乾式シリカ分散液は、シリカ濃度1.5重量%における光散乱指数(以下、単にn値ともいう)が2.0以上に調整されたものが、乾式シリカの分散性に優れ、かかる変性乾式シリカ分散液を用いることによって、均一で透明性の高いコーティング組成物を製造することができるため好ましい。
【0033】
上記したn値は、分散液中のシリカの分散状態を表す指標であり、分散性が向上するにつれてこの値は大きくなる。
【0034】
なお、n値は、Journal of Ceramic Society of Japan,101〔6〕,707−712(1993)に記載の方法に準じて測定した値である。
【0035】
即ち、市販の分光光度計を用いて、光の波長(λ)が460nm〜700nmの範囲の分散液のスペクトルを測定することにより、吸光度(τ)を求め、log(λ)に対してlog(τ)をプロットし、下記式(1)を用いて直線の傾き(−n)を最小二乗法で求める。
【0036】
τ=αλ−n (1)
(ここで、τは吸光度、αは定数、λは光の波長、そしてnは光散乱指数を示す。)
本発明において、上記のような、n値が2.0以上であるシリカが高度に分散した乾式シリカ分散液を効率よく製造するためには、前記分散機の中でも、高圧ホモジナイザーが最も好適である。
【0037】
上記高圧ホモジナイザーの代表例を具体的に例示すると、ナノマイザー製の商品名;ナノマイザー、マイクロフルイディクス製の商品名;マイクロフルイダイザー、及びスギノマシン製のアルティマイザーなどを挙げることができる。
【0038】
上記の高圧ホモジナイザーを用いて、極性溶媒とシリカとカチオン性樹脂とを混合した混合溶液を、処理圧力300kgf/cm2以上で対向衝突させるか、或いはオリフィスの入口側と出口側の差圧が300kgf/cm2以上の条件でオリフィスを通過させることによって前記好適な範囲の平均凝集粒子径やn値を持った変性乾式シリカ分散液を再現性良く得ることができる。
【0039】
本発明において、上記方法によって得られる変性乾式シリカ分散液の粘度は、乾式シリカの比表面積および濃度、或いはカチオン性樹脂の種類や添加量によって変動するが、一般に50〜500mPa・sである。
【0040】
本発明において重要な要件は、上述した変性乾式シリカ分散液を製造する方法において、該ハロゲンイオンの一部を水酸イオン及び弱酸の共役塩基よりなる群より選ばれる少なくとも一種のアニオンにイオン交換するイオン交換工程を含むことにある。
【0041】
前記したように、本発明者らは、変性乾式シリカ分散液のシリカ源として乾式シリカを用いた場合には、湿式シリカを用いた場合に比較して、溶存ケイ酸の濃度が極めて高いという知見を得た。また、上記溶存ケイ酸の濃度は、使用するカチオン性樹脂が対アニオンとしてハロゲンイオンを持つ場合、また、シリカ分散液に用いるシリカの純度が高いほど、該分散液中の溶存ケイ酸の濃度が高くなる傾向が見られた。
【0042】
即ち、上記カチオン性樹脂の使用により分散液のpHが低下し、しかも、乾式シリカを使用した変性乾式シリカ分散液は溶存ケイ酸の濃度が予想外に高く、通常約300ppmを超え、場合によっては、400ppmをも超えるのである。
【0043】
そして、上述したような、溶存ケイ酸の濃度が高い変性乾式シリカ分散液を用いてコーティング組成物を製造した場合、得られるコーティング組成物中には多量の凝集物が生成するという現象が見られるのである。
【0044】
本発明においては、上記変性乾式シリカ分散液の製造方法において、変性乾式シリカ分散液中に存在するハロゲンイオンの一部をイオン交換して水酸イオン及び弱酸の共役塩基よりなる群より選ばれる少なくとも一種のアニオンにイオン交換することにより、ケイ酸濃度の著しい低減を図ることができ、ひいては、安定したコーティング組成物を得ることができると共に、ハロゲンイオンの減少により、該変性乾式シリカ分散液を使用して調製されるコーティング組成物及びこれにより形成されるコーティング層の耐候性が向上することができる。
【0045】
ここで、変性乾式シリカ分散液中に含まれる溶存ケイ酸の濃度が低いほど、該分散液を用いて得られるコーティング組成物が安定となる理由については定かでないが、次のように考えられる。
【0046】
即ち、The Chemistry of Silica,Wiley,New York,1979,p.54に記載されているように、シリカ分散液中に溶解する溶存ケイ酸の濃度と、該分散液中のシリカの表面エネルギーとの間には正の相関があることが知られている。従って、溶存ケイ酸の濃度が高い場合には、シリカの表面エネルギーが高く、シリカ表面の反応性が高いと解釈できる。シリカ表面の反応性が高い場合には、シリカがバインダー等の添加剤と強く相互作用する。
【0047】
従って、溶存ケイ酸の含有量が大きく、即ちシリカ表面の反応性が高い変性乾式シリカ分散液の場合、コーティング組成物を製造する際、得られるコーティング組成物中に多量の凝集物が生成するという問題が生じるものと推定している。
【0048】
本発明において、該ハロゲンイオンの一部を水酸イオン及び弱酸の共役塩基よりなる群より選ばれる少なくとも一種のアニオンにイオン交換するイオン交換工程は、その目的を達成できる範囲で、前述した変性乾式シリカ分散液の製造工程の何処に設けても良い。
【0049】
例えば、極性溶媒、乾式シリカ及びカチオン性樹脂により調製された変性乾式シリカ分散液をイオン交換工程に供してイオン交換を行う態様、カチオン性樹脂を予め極性溶媒に溶解したカチオン樹脂溶液をイオン交換工程に供してイオン交換を行った後、乾式シリカ及び必要に応じて極性溶媒と混合して変性乾式シリカ分散液を得る態様などが挙げられる。
【0050】
上述の態様のうち、カチオン性樹脂を予め極性溶媒に溶解したカチオン樹脂溶液をイオン交換工程に供してイオン交換を行う態様は、イオン交換における処理液量が少なく、また、イオン交換の効率が良く、更に、イオン交換樹脂との分離が容易であるため、本発明において推奨される。
【0051】
上記イオン交換工程において、陰イオン交換樹脂としては、水酸基型強塩基性陰イオン交換樹脂またはこれを弱酸で処理して弱酸の共役塩基型とした強塩基性陰イオン交換樹脂等が好適に使用できる。
【0052】
具体的には、スチレン−ジビニルベンゼン共重合物を母体とし、イオン交換基が第4級アンモニウム基である樹脂であり、該第4級アンモニウム基の対イオンとして水酸イオン(OH)、酢酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオン等を有するイオン交換樹脂等が挙げられる。
【0053】
また、陰イオン交換樹脂との接触操作は、公知の方法により行うことができる。例えば、粒状のイオン交換樹脂より成る充填層に変性乾式シリカ分散液を通過せしめる方法、槽中で変性乾式シリカ分散液と粒状のイオン交換樹脂とを混合後、該イオン交換樹脂を分離する方法などが一般的である。
【0054】
該イオン交換操作を行う際の温度は、特に制限されないが、一般的に温度が高い方が処理効率は向上する。
【0055】
また、該陰イオン交換樹脂との接触操作において、イオン交換するほど溶存ケイ酸の濃度を低減することができ、本発明の効果は増大するが、過度にイオン交換を行うと、該分散液の粘度が上昇したり、ゲル化したりする場合があるため、予め実験によって最適なイオン交換量を求めることが好ましい。
【0056】
一般に、ハロゲンイオンと前記他のアニオンとがイオン交換されると、変性乾式シリカ分散液或いはカチオン樹脂溶液のpHは上昇する傾向にあり、この変化により変換の程度を推測することができる。本発明のイオン交換工程において、変性乾式シリカ分散液を処理する場合、かかるpHが0.1以上、好ましくは0.2〜1の幅で上昇するようにイオン交換を行うことが好ましい。また、カチオン性樹脂溶液を処理する場合、かかるpHが1以上、好ましくは、2〜6の幅で上昇するようにイオン交換することが好ましい。
【0057】
前記陰イオン交換樹脂との接触処理により、変性乾式シリカ分散液中の溶存ケイ酸濃度が低下する機構は、明らかではないが、本発明者らは、下記のように推定している。即ち、該分散液中に含まれるカチオン性樹脂の多くは、カチオン性基の対イオンとしてハロゲン化物イオン等の強酸の共役塩基を有するが、これら対イオンの一部または全部を水酸化物イオンまたは酢酸イオン等の弱酸の共役塩基にイオン交換することによって、効果的に溶存ケイ酸の濃度を低減することができる。
【0058】
上述した、陰イオン交換樹脂との接触処理により、変性乾式シリカ分散液中の溶存ケイ酸濃度を低下せしめる方法は、製造直後の変性乾式シリカ分散液を極めて短時間の接触で安定化することができるという特徴を有する。
【0059】
以上のように、本発明の方法により、溶存するケイ酸イオン及びハロゲンイオン濃度が低減された変性乾式シリカ分散液を得ることができるが、該変性乾式シリカ分散液中の25℃における溶存ケイ酸の含有量が、200ppm以下であることが、該変性乾式シリカ分散液をバインダーと混合することによりコーティング組成物を製造する際の凝集物の生成を防止するために好ましい。
【0060】
本発明において、変性乾式シリカ分散液中に含まれる溶存ケイ酸の濃度は、Journal of Colloid and Interface Science,75〔1〕,138−148(1980)に記載のケイモリブデン酸法により測定することができる。
【0061】
即ち、該分散液を酸性条件下でモリブデン酸と混合し、溶存ケイ酸とモリブデン酸との反応によって生じるケイモリブデン酸を、吸光光度法によって定量する。ただし、凝集したシリカ等による光の散乱が測定に影響する場合には、あらかじめ遠心分離や濾過によって凝集したシリカ等を液中から除いてから上記測定を行う。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明の製造方法により得られる変性乾式シリカ分散液は、コーティング組成物を製造する際の凝集物の生成を極めて低レベルに抑制することが可能であり、ガスバリア性、耐食性、親水性、光沢性、吸液性等を付与するためのコーティング組成物の製造において、透明性、均質性に優れた安定なコーティング組成物を得ることができる。
【0063】
上記コーティング組成物の具体的用途としては、ガスバリア用コーティング組成物、防錆用コーティング組成物、インジェット記録紙用のコーティング組成物などが挙げられる。
【0064】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0065】
なお、以下の方法によって、乾式シリカ分散液中に含まれる溶存ケイ酸濃度の測定、該分散液のn値の測定、および該分散液のコーティング組成物調製時の安定性試験を行った。
【0066】
(1)乾式シリカ分散液中に含まれる溶存ケイ酸濃度の測定
10gの七モリブデン酸六アンモニウム四水和物、および4.7gの28%アンモニア水をイオン交換水に溶解し、全量を100mLにしてモリブデン酸溶液を調製した。2.0gの1.5N硫酸、6.5gのイオン交換水、および0.50gの乾式シリカ分散液を混合し、混合後直ちに遠心分離して懸濁物を除いた。遠心分離後の上澄み9.0gに対して1.0gの割合でモリブデン酸溶液を加え、25℃で5分間反応させた後に410nmにおける吸光度を測定した。この吸光度から溶存ケイ酸濃度を算出した。なお、溶存ケイ酸濃度は、溶存ケイ酸濃度が既知の試料を測定して得られる検量線から求めた。
【0067】
(2)乾式シリカ分散液のn値の測定
乾式シリカ分散液をシリカ濃度が1.5重量%になるようにイオン交換水で希釈し、光の波長(λ)が460〜700nmの範囲における、該希釈された分散液の吸光度(τ)を測定した。log(λ)に対してlog(τ)をプロットし、直線の傾き(−n)を最小二乗法で求めた。
【0068】
(3)乾式シリカ分散液からなるコーティング組成物の安定性試験
固形分換算で100重量部のシリカを含む乾式シリカ分散液と、固形分換算で6.0重量部のメチルセルロースを含むメチルセルロース溶液とを混合してコーティング組成物を調製した(バインダー混合工程)。得られたコーティング組成物を、シリカの濃度が1.0重量%となるようにイオン交換水を用いて希釈し、該希釈されたコーティング組成物の透過率を測定した。本測定において、光路長は10mm、測定波長は700nmとした。また、コーティング組成物の物性の再現性を評価するため、同様の試験を10回行った際の標準偏差を求めた。
【0069】
実施例1および比較例1
比表面積が300m2/gのヒュームドシリカ(トクヤマ製、レオロシールQS−30)を用い、上記シリカが20重量%になるようにイオン交換水と混合し、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−50)で分散処理してシリカ分散液を得た。以後、この液を分散液−Aと表す。
【0070】
次に、固形分換算で100重量部のシリカを含む上記分散液−Aと、固形分換算で3.0重量部のジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物を含むカチオン性樹脂溶液とを混合し、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−50)で分散処理して予備混合を行った。両者を混合するとゲル化が起こったが、強攪拌することによって流動性のあるスラリー状になった。以後、この液を分散液−Bと表す。
【0071】
この分散液−Bを高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製、ナノマイザー、LA−31)を用いて処理圧力800kgf/cm2でオリフィスを1回通過させることにより変性乾式シリカ分散液を得た。(比較例1)
得られた変性乾式シリカ分散液と、OH基型の強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合し、プロペラミキサーで10分間攪拌した後にイオン交換樹脂を除去して変性乾式シリカ分散液を得た。
【0072】
尚、上記処理により、変性乾式シリカ分散液のpHは、2.8から3.8に上昇した。(実施例1)
実施例2
比表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(トクヤマ製、レオロシールQS−102)を用い、上記シリカが20重量%になるようにイオン交換水と混合し、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−50)で分散処理してシリカ分散液を得た。
【0073】
一方、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物を含むカチオン性樹脂水溶液を酢酸基型の強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合し、プロペラミキサーで10分間攪拌した後にイオン交換樹脂を除去してイオン交換されたカチオン性樹脂水溶液を得た。
【0074】
尚、上記イオン交換により、カチオン性樹脂水溶液のpHは、2.9から6.5に上昇した。
【0075】
次いで、固形分換算で100重量部のシリカを含む上記分散液−Aと、固形分換算で3.0重量部のイオン交換されたカチオン性樹脂溶液とを混合し、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−50)で分散処理して予備混合を行った。
【0076】
予備分散液を高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製、ナノマイザー、LA−31)を用いて処理圧力800kgf/cm2でオリフィスを1回通過させることにより変性乾式シリカ分散液を得た。
【0077】
実施例3
実施例2において、100重量部の乾式シリカに対して、5重量部の割合でカチオン性樹脂を混合した以外は、同様にして変性乾式シリカ分散液を得た。
【0078】
実施例4
実施例2において、乾式シリカの濃度を15重量%とした以外は、同様にして変性乾式シリカ分散液を得た。
【0079】
【表1】
Figure 0003877971
【0080】
実施例で得られた変性乾式シリカ分散液は、溶存ケイ酸の濃度が低く、該分散液とメチルセルロースの溶液を混合してコーティング組成物を調製した場合には、凝集物は見られず、均質で透明性の高いコーティング組成物が得られた。
【0081】
また、上記コーティング組成物及びこれにより形成されるコーティング層は、耐候性試験において高い結果を示した。
【0082】
一方、比較例で得られた変性乾式シリカ分散液は、溶存ケイ酸の濃度が高く、該分散液とメチルセルロースの溶液を混合してコーティング組成物を調製した場合には、該コーティング組成物中に多量の凝集物が生成し、得られたコーティング組成物は白濁していた。

Claims (5)

  1. 極性溶媒、乾式シリカ及び対アニオンとしてハロゲンイオンを持つカチオン性樹脂より変性乾式シリカ分散液を製造する方法において、該ハロゲンイオンの一部を、陰イオン交換樹脂と接触させることにより、水酸イオン及び弱酸の共役塩基よりなる群より選ばれる少なくとも一種のアニオンにイオン交換するイオン交換工程を含むことを特徴とする変性乾式シリカ分散液の製造方法。
  2. 乾式シリカが、50m/g以上のBET法によって測定される比表面積を有する請求項1記載の変性乾式シリカ分散液の製造方法。
  3. シリカ濃度1.5重量%における光散乱指数が2.0以上となるように分散を行う請求項1記載の変性乾式シリカ分散液の製造方法。
  4. 極性溶媒、乾式シリカ及びカチオン性樹脂により調製された変性乾式シリカ分散液を前記イオン交換工程に供してイオン交換を行う請求項1〜3のいずれかに記載の変性乾式シリカ分散液の製造方法。
  5. カチオン性樹脂を予め極性溶媒に溶解したカチオン樹脂溶液を前記イオン交換工程に供してイオン交換を行った後、乾式シリカ及び必要に応じて極性溶媒と混合して変性乾式シリカ分散液を得る請求項1〜3のいずれかに記載の変性乾式シリカ分散液の製造方法。
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