JP3854879B2 - カチオン性シリカ微粒子凝集体分散液の製造方法及び記録用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カチオン性シリカ微粒子凝集体がコロイド状に分散した分散液の製造方法に関する。さらに詳しくは、乾燥すると多孔質で透明度が高い塗膜を形成するので、インク吸収性、印字濃度、印字耐水性に優れたインクジェット記録シートを製造するのに好適なカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液の製造方法に関する。本発明は、又、このようにして製造されたカチオン性シリカ微粒子分散液を用いたインクジェット記録用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録方式は高画質化及び高速印字化が急速に進み、広く普及している。インクジェット記録用シートの製造に際しては、高いインク吸収性を持たせるために、主に無機顔料をバインダーと共にインク受理層として塗工することが公知である。無機顔料の中でもシリカは、好適な顔料として広く使用されている。
【0003】
さらに、写真画質を得るためのインクジェット記録シートでは、高いインク吸収性に加えて、高い発色濃度と写真調の風合いを得るためにできるだけ透明で高光沢なインク受理層が求められる。このような受理層を形成するために、コロイド状のシリカ微粒子が好適に用いられる。
【0004】
コロイド状のシリカ微粒子としては、コロイダルシリカが広く知られているが、そのほとんどが真球状粒子であり、各1次粒子が凝集することなく単分散している。このため、乾燥状態では粒子が密に充填され、粒子間の空隙が非常に少ない。従って、単分散コロイダルシリカを使用して得た塗膜は、インクジェット印刷におけるインク吸収性に劣り、インク受理層としては不適である。
【0005】
一方、上記の単分散コロイダルシリカを連結させて、非球状の形に凝集させる方法は公知であり、特開平1−317115号公報、特開平4−65314号公報、特開平4−187512号公報、特開平7−118008号公報、特開平10−166715号公報などに記載されているように、活性珪酸に2価以上の水溶性塩を添加して加熱熟成することにより細長い鎖状に連結凝集したコロイダルシリカを得ることができる。
【0006】
上記の鎖状に連結凝集させたコロイダルシリカは、単分散型の一般的なコロイダルシリカと比較すると、乾燥状態では粒子間空隙が大きく、より多孔質な塗膜を得ることができる。しかし、インクジェット記録におけるインク受理層として適用するにはインク吸収容量がまだ十分ではなく、より多孔質な凝集構造を持つコロイド状のシリカ微粒子が求められている。
【0007】
上記の要請に鑑みて、本発明者らは、シリカの1次粒子が3次元的に凝集して形成された微細な2次粒子が水中にコロイド状に分散したものであって、乾燥によって多孔質でかつ透明度の高い塗膜を形成できるシリカ微粒子凝集体分散液及びその製造方法を発明し、特開平2001−354408号公報において開示した。この発明によるシリカ微粒子凝集体分散液を乾燥させて得られる塗膜は、多量のインクを吸収することができ、かつ透明度が高く高光沢であることから、前記の写真画質を得ることができるインクジェット記録シートの製造において、インク受理層として好適に用いることができる。
【0008】
上記の特開平2001−354408号公報にて開示されたシリカ微粒子凝集体分散液製造方法においては、合成条件を変えることで、粒子径、比表面積、細孔容積などの粒子物性において多様な種類のコロイド状シリカ微粒子凝集体を合成することができる。このため、それら粒子物性の異なるシリカ微粒子凝集体分散液を使用して作成した塗膜も、それぞれインク吸収性、透明度等において多様である。
【0009】
しかしながらインクジェット記録シートの製造においては、インク中のアニオン性染料を定着させ、印字部の耐水性を得るためにシリカ微粒子をカチオン性に変性することが必要である。例えば特開平10−181190号公報、特開平10−181191号公報、特開2000−94830号公報、特開2000−239536号公報にはシリカ微粒子とカチオン性ポリマーを混合し、増粘した混合物に対し、機械的に強いシェアを加えて再分散させることを特徴とするカチオン性シリカ微粒子の製造方法が開示されている。
【0010】
また、シリカ表面を金属酸化物または金属水酸化物で被覆する方法で表面をカチオン変成する技術も公知であり、例えば米国特許第3,007,878号、特許第2677646号公報、特開昭62−286787号公報にはコロイダルシリカをアルミニウム化合物で処理してカチオン変成する方法が開示されている。さらにカチオン性のシランカップリング剤で処理してカチオン変成する方法も公知である。例えば特許第2668379号公報、特開平1−258980号公報には1〜3級アミン又は4級化アンモニウム塩基を分子構造内に有するシランカップリング剤で処理することが開示されている。
【0011】
これらのカチオン化方法の中では、シリカ微粒子とカチオン性ポリマーを混合後、機械的シェアを与えて再分散させる方法が、印字部の耐水性や印字物の色調が良好で最も好ましい。しかしながら、シリカ微粒子分散液をこの方法でカチオン化すると、特に濃縮した状態では、カチオン性ポリマーを混合すると、液全体が強固な凝集を起こし、強い機械的シェアを加えても分散が困難であり、しかも分散処理後のチキソトロピー性が強く、短時間でゲル化しやすい問題があった。
【0012】
また、特開平2001−354408号公報によるシリカ微粒子凝集体分散液の場合、ほぼ同等の粒子物性を持つシリカ微粒子分散液を使用して同一条件でカチオン性ポリマーの混合分散によるカチオン化を行なった場合でも、シリカ微粒子凝集体分散液製造条件のわずかな違いで、乾燥塗膜の透明度において大きな差が発現する場合があり、その原因は不明であった。塗膜透明度が低下するとインクジェット印刷においては印字濃度を低下させることとなり、改善が求められていた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、シリカ微粒子凝集体のカチオン性ポリマーによるカチオン化時に起こる強い増粘トラブルを解消し、またカチオン化されたシリカ微粒子凝集体分散液の不安定性を改良するだけでなく、塗膜の透明度が高く、インクジェット記録シート製造に好適なカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液を製造できる方法を提供することにある。
本発明は、又、このカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液を用いたインクジェット記録用シートを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下のような方法で上記の目的を達成できることを見出した。本発明は、以下の各態様を含む。
【0015】
(1)熱水に活性ケイ酸水溶液を滴下するか又は活性ケイ酸水溶液を加熱してシリカ微粒子凝集体分散液を生成させ、分散液が沈殿を生じる前、もしくはゲル化する前にアルカリを添加してシリカ微粒子凝集体を安定化し、該安定状態を保ちながら活性ケイ酸水溶液を少量づつ添加してシリカ微粒子凝集体を成長させたのち、水素型陽イオン交換樹脂によって前記アルカリを除去することにより酸性、好ましくはpH2〜5とした後、カチオン性ポリマーを添加、好ましくは混合、分散することを特徴とするカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液の製造方法。
【0016】
(2)安定状態を保ちながら活性ケイ酸を添加する速度がシリカ微粒子凝集体に含まれるSiO21モルあたりSiO2に換算して0.001〜0.1モル/分の速度で添加する(1)記載のカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液の製造方法。
【0017】
(3)前記成長を行う前のシリカ微粒子凝集体の窒素吸着法による比表面積が300m2/g〜1000m2/g、かつ細孔径が100nm以下の範囲の細孔容積が0.2ml/g〜2.0ml/gであることを特徴とする(1)または(2)に記載のカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液の製造方法。
【0018】
(4)前記成長後のシリカ微粒子凝集体の窒素吸着法による比表面積が50m2/g〜400m2/g、平均2次粒子径が20nm〜800nm、かつ細孔径が100nm以下の範囲の細孔容積が0.4ml/g〜2.0ml/gであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液の製造方法。
【0019】
(5)平均2次粒子径が20〜8000nmであり、好ましくは20〜2000nm、より好ましくは20〜1000nmであり、アルカリ性であるシリカ微粒子凝集体分散液を水素型陽イオン交換樹脂で処理して酸性、好ましくはpH2〜5とした後、カチオン性ポリマーを添加、好ましくは混合、分散することを特徴とするカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液の製造方法。
【0020】
(6)窒素吸着法による比表面積が50m2/g〜400m2/g、平均2次粒子径(シリカ微粒子凝集体径)が20〜800nm、かつ細孔径が100nm以下の範囲の細孔容積が0.4〜2.0ml/gであり、アルカリ性であるシリカ微粒子凝集体分散液を水素型陽イオン交換樹脂で処理して酸性、好ましくはpH2〜5とした後、カチオン性ポリマーを添加、好ましくは混合、分散することを特徴とするカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液の製造方法。
【0021】
(7)(1)〜(6)のいずれか1に記載された方法によって製造されたカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液。
(8)(7)記載のカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液を含有する塗工液が支持体に塗工されたインクジェット記録用シート。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明はシリカ微粒子凝集体分散液を陽イオン交換樹脂で処理して酸性、好ましくはpH2〜5とした後、カチオン性ポリマーを添加、好ましくは混合、分散することを特徴とする。シリカ微粒子凝集体分散液は、最初に極微なシリカの1次粒子が凝集して形成された2次凝集粒子がコロイド状に分散した液を調製してシード液(種液)とし(シード液調製工程)、次にシード液にアルカリを添加して2次凝集の進行を止めて安定化させ、該安定状態を保持しながら1次粒子を成長させて製造する(成長工程)。
かかる後、調製されたシリカ微粒子凝集体分散液を水素型陽イオン交換樹脂に接触させて、酸性のシリカ微粒子凝集体分散液とする(陽イオン交換工程)。最後にカチオン性ポリマーを添加混合させてカチオン性のシリカ微粒子を分散させ、カチオン性のシリカ微粒子凝集体分散液を得る(カチオン性ポリマー混合分散工程)。
上記の各工程をそれぞれ、シード液調製工程、成長工程、陽イオン交換工程、カチオン性ポリマー混合分散工程と呼ぶこととし、各工程を以下に順に説明する。
【0024】
まず、シード液調製工程について詳細に説明する。
【0025】
本発明におけるシード液とは、極微なシリカの1次粒子が凝集して形成された2次凝集粒子がコロイド状に分散した液であり、2次凝集粒子の物性としては、窒素吸着法による比表面積が300m2/g〜1000m2/g、かつ細孔径が100nm以下の範囲の細孔容積が0.2ml/g〜2.0ml/g、好ましくは0.4ml/g〜2.0ml/gであることが望ましい。細孔容積がこの範囲にあると最終的に得られるシリカ微粒子の細孔容積およびその分散液を使用した塗膜のインク吸収性が良好となり、インク受理層として用いるのに好ましいものとなる。
【0026】
シード液を調製するための原料として、本発明では活性ケイ酸水溶液を使用する。活性ケイ酸水溶液は、例えばアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を水素型陽イオン交換樹脂でイオン交換処理して得られる酸性のケイ酸水溶液があげられる。
【0027】
アルカリ金属ケイ酸塩としては、市販工業製品として入手できるもので良く、SiO2/Na2Oモル比として2〜4程度のナトリウム水ガラスを用いるのが好ましい。
【0028】
活性ケイ酸水溶液としてはSiO2濃度として1〜6重量%が好ましく、より好ましくは2〜5重量%、かつpH2〜4であることが望ましい。SiO2濃度がこの範囲内にあると、イオン交換樹脂カラム塔内で処理が良好となり、生産効率が向上する。また、活性ケイ酸のpHが上記範囲内にあると活性ケイ酸水溶液が短時間にゲル化することができる。
【0029】
上記の活性ケイ酸水溶液を原料としてシード液を製造するが、その方法としては2種類が挙げられ、その第一の方法は、加熱した水(熱水)に活性ケイ酸水溶液を少量ずつ添加する方法である。
【0030】
活性ケイ酸水溶液が添加される水の加熱温度は、60℃以上、好ましくは80℃以上であるのがよい。圧力を大気圧以上かける場合には100℃以上にすることも可能である。温度が低いほど活性ケイ酸の縮合速度が遅く、シード液の製造効率を低下させる。また、水のpHは2〜8、より好ましくは4〜7である。この範囲のpHの水を用いると、活性ケイ酸の縮合によって生じる1次粒子の2次凝集が良好に進行し、シード液として使用した場合に十分な細孔容積をもったシリカ微粒子が得られる。
【0031】
活性ケイ酸水溶液の熱水への添加方法に特に制限はないが、一定速度で連続添加を行うことが好ましい。
【0032】
活性ケイ酸が熱水中で縮合することによって、まず微細なシリカの1次粒子が生成し、次にそれらが凝集することによってシリカの2次凝集粒子が生成する。1次粒子の凝集の進行は溶液のSiO2濃度及びpH、加熱時間に大きく依存する。すなわち、熱水中に添加される活性ケイ酸量が増加し、シリカの等電点(約pH2.2)に向けて溶液のpHが減少していくに従って、また活性ケイ酸水溶液の添加開始時間からの加熱時間が長くなるに従い、2次凝集が進行する。従って、添加する活性ケイ酸水溶液と熱水の仕込比や活性ケイ酸水溶液の熱水への添加速度は、これらの傾向を踏まえた上で最適値に設定されるのがよい。
【0033】
2次凝集の進行過程は、反応溶液の濁度の変化、または粘度の変化として容易に視認できる。2次凝集が進行するに従い、透明な反応溶液は次第に青みを帯びてくる。さらに凝集が進行するに従って溶液の濁度および、粘度が上昇する。
【0034】
また、2次凝集が進行するほどシード液として使用したときに同一条件で成長させた場合、最終的なシリカ微粒子凝集体の平均2次粒子径(シリカ微粒子凝集体径)が大粒径となり、細孔容積が増大する傾向にある。シード液中の2次凝集粒子の平均2次粒子径は、好ましくは5nm〜2000nmであり、さらに好ましくは10nm〜800nmである。平均2次粒子径が2000nm以上であっても、成長工程で添加されるアルカリや攪拌による機械的力によって2次粒子径が小さくなることがあり、必ずしも平均2次粒子径を2000nm以下にする必要はない。
【0035】
しかしシード液での2次凝集が過度に進行した場合は溶液のゲル化、2次凝集粒子の沈殿を招く恐れがあり、後の成長工程でアルカリを添加してもコロイドとして安定化し難くなる恐れもある。
【0036】
シード液を製造する第2の方法は、活性ケイ酸水溶液を加熱する方法である。活性ケイ酸水溶液としてはSiO2濃度として1〜6重量%が好ましく、より好ましくは2〜5重量%かつpH2〜4である活性ケイ酸水溶液が望ましい。
【0037】
活性ケイ酸水溶液の加熱温度は40℃以上が望ましい。このような温度を採用するとケイ酸の縮合速度が良好となり、シード液の製造効率を低下させる恐れがない。圧力を大気圧以上かける場合には100℃以上にすることも可能である。
【0038】
本方法では、シリカ1次粒子の2次凝集の進行は活性ケイ酸水溶液のSiO2濃度及び加熱温度に大きく依存する。すなわち、活性ケイ酸水溶液の濃度が高く、加熱温度が高いほど、2次凝集が速く進行する。2次凝集が進行するほどシード液として使用したときに、同一条件で成長させた場合、平均2次粒子径が大粒径となり、細孔容積が増大する傾向にある。シード液中の2次凝集粒子の平均2次粒子径は、好ましくは5nm〜2000nmであり、さらに好ましくは10nm〜800nmである。平均2次粒子径が2000nm以上であっても、成長工程で添加されるアルカリや攪拌による機械的力によって2次粒子径が小さくなることがあり、必ずしも平均2次粒子径を2000nm以下にする必要はない。
【0039】
しかし2次凝集が過度に進行した場合は溶液のゲル化を招き、後の成長工程でアルカリを添加しても2次凝集粒子をコロイドとして安定化させることが難しくなる恐れがある。
【0040】
以上、上記第1及び2の方法によりシード液を製造することができるが、第1及び第2の方法の組合せによる製造も可能であり、例えば活性ケイ酸水溶液を加熱し、同時にそれに活性ケイ酸水溶液を滴下していく方法も可能である。また、シード液製造中に沈殿またはゲル化を生じた場合、強い機械的シェアによって再分散させてシード液とすることは可能であるが、工程数が増え、製造コストが増大するので、沈殿またはゲル化を生じる前に次の成長工程に移行するのが好ましい。
【0041】
次に、成長工程について詳細に説明する。成長工程はシリカ微粒子凝集体を形成する一次粒子の直径を大きくする工程である。
【0042】
シード液は、製造直後の状態では酸性の溶液であり好ましくはpH4以下である。加熱を終了しても短時間のうちにゲル化し、不安定である。このため、アルカリを添加してシード液をアルカリ性雰囲気とし、シード液中に含まれるシリカの2次凝集粒子をコロイドとして安定化させる。成長工程は、この安定状態を保ちながら行う。さらに、このアルカリは本成長工程において、2次凝集粒子を構成するシリカ1次粒子を成長させるための触媒としても作用する。
【0043】
使用するアルカリとしては特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属元素の水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、アンモニア、第4級アンモニウムハイドロオキサイド、アミン類などの窒素化合物を挙げることができ、これらのアルカリを単独で、または混合して用いる。
【0044】
アルカリの添加量については特に限定されないが、シード液のpHを6.5以上、より好ましくはpH7以上かつ11以下にするために必要なアルカリ量が望ましい。より詳しくはシード液に含まれるシリカ(SiO2)1モルに対して0.001〜1.0モル、より好ましくは、0.01〜0.1モルのアルカリ量とすることが望ましい。
シード液のpHがこの範囲内であるとケイ酸の縮合反応が良好となり、成長操作時の製造効率が向上する。
【0045】
アルカリの添加方法は、シード液に一時に添加する方法、あるいは成長工程時においてシード液に添加していく活性ケイ酸水溶液と共に少量ずつ添加する方法、又は活性ケイ酸水溶液に混合して少量ずつ添加する方法、及びこれらの組み合わせから成る方法をとることができる。活性ケイ酸水溶液にアルカリを混合してシード液に添加する場合には、活性ケイ酸水溶液のpHが7以上となるアルカリ量を混合することが望ましい。活性ケイ酸水溶液のpHが7未満となる場合、活性ケイ酸水溶液が短時間のうちにゲル化することがある。
【0046】
アルカリ添加後はシリカ微粒子凝集体が再分散し、二次粒子径がやや小さくなることがある。
本成長工程では、シード液を60℃以上、好ましくは80℃以上に加温することが望ましい。この温度範囲にすると、ケイ酸の縮合速度が良好となり、製造効率が良好となる。
【0047】
加温されたシード液に対して、2次凝集粒子を構成する各1次粒子を成長させるために活性ケイ酸水溶液を少量ずつ添加する。成長工程において添加された活性ケイ酸は、シード液中のシリカ2次凝集粒子を構成する各1次粒子に対して重合し、1次粒子の粒子径を増大させる。1次粒子径が大きいことは比表面積が小さいことを意味する。本発明では1次粒子の平均粒子径の尺度として比表面積を採用した。成長工程において比表面積が低下することにより、すなわち1次粒子径が増大することにより、バインダーと混合して塗膜を作成した場合に、乾燥工程における塗膜のひび割れを防止でき、実用に耐えうるシリカ微粒子凝集体分散液となる。本発明における比表面積の好ましい範囲は、50m2/g〜400m2/gである。
尚、凝集していない真球状シリカ粒子の場合、一次粒子径(nm)=2720/比表面積(g/m2)の関係が成立するが、凝集粒子の場合でも近似的にはこの関係が成立する。
【0048】
活性ケイ酸水溶液の添加量は、使用するシード液中のシリカ微粒子の比表面積(1次粒子径)に依存し、所望の比表面積まで1次粒径を成長させるために必要なSiO2固形分量に相当する活性ケイ酸水溶液を添加する。添加する活性ケイ酸水溶液は、シード液への添加前に縮合が進行しないように、60℃以下、好ましくは40℃以下の温度で添加することが望ましい。
【0049】
活性ケイ酸水溶液の添加方法に特に制限はないが、一定速度で連続添加を行うことが好ましい。また、活性ケイ酸水溶液の添加中は、溶液のpH低下を防止するために、必要量のアルカリを随時添加してもよい。
【0050】
活性ケイ酸水溶液の加温されたシード液への添加速度はシード液中のシード粒子凝集物に含まれるSiO21モルあたりSiO2に換算して0.001〜0.1モル/分の速度で滴下することが望ましい。このような速度で滴下すると、新たな単分散した1次粒子の生成を抑制することができ、細孔容積の低下を抑制することができる。
【0051】
活性ケイ酸水溶液の添加終了後は、そのまま冷却しても十分安定であるが、ケイ酸の縮合を完結させるためにも好ましくは0.5〜4時間、70℃以上の温度で更に加熱処理することが好ましい。
【0052】
成長工程終了後のシリカ微粒子凝集体は、細孔径が100nm以下の範囲の細孔容積が0.4ml/g〜2.0ml/gであることが好ましい。0.4ml/g以上の細孔容積では、これを利用した塗膜のインク吸収性に優れる。細孔容積が2.0ml/g以下では塗膜の機械的強度に優れ塗工時にひび割れが生じたり、塗膜に傷が付くことが少ない。
【0053】
成長操作後のシリカ微粒子の平均2次粒子径は20nm〜800nmであることが好ましい。この範囲にすると、光の散乱が少なく、また塗膜の平滑性が高くなり、インク受容層に用いた場合、印字濃度や光沢が良好となる。成長工程においてシリカの沈殿を生じた場合には、強い機械的シェアを加えて上記粒子径範囲内に再分散させることもできる。
【0054】
次に、陽イオン交換工程について詳細に説明する。
【0055】
成長工程で得られるシリカ微粒子凝集体分散液は、同工程で添加されたアルカリを含んでおり、pHは通常7以上のアルカリ性である。この状態でカチオン性ポリマーを混合し、カチオン性シリカ微粒子凝集体分散液を製造しようとすると、前記したように液全体が強固な凝集を起こし、強い機械的シェアを加えても分散が困難であり、しかも分散処理後のチキソトロピー性が強く、短時間でゲル化しやすい問題があった。また、同等の粒子物性を持つシリカ微粒子凝集体分散液を使用して同一条件でカチオン化を行なった場合でも、シリカ微粒子凝集体分散液製造条件のわずかな違いで、乾燥塗膜の透明度において大きな差が発現する場合があり、その原因は不明であった。本発明者らの鋭意検討の結果、成長工程で添加されたアルカリが残存しているとこれらの問題を引き起こすことを見出した。
【0056】
さらにかかる問題は、成長工程が終了したシリカ微粒子凝集体分散液に酸を添加してアルカリを中和するのではなく、水素型陽イオン交換樹脂に接触させてアルカリを除去することにより解決できることを見出した。
【0057】
陽イオン交換工程には、シード液調製工程において活性ケイ酸水溶液を調製するために使用する水素型陽イオン交換樹脂を好適に用いることができる。ここで使用される水素型陽イオン交換樹脂は、特に限定されるものではなく、市販のスチレン系、フェノール系の強酸性水素型陽イオン交換樹脂、あるいはアクリル酸系、メタクリル酸系の弱酸性水素型陽イオン交換樹脂等を使用することができる。また、その形状もビーズ状、繊維状、クロス状等、種々のものを使用することができる。
また、これら水素型陽イオン交換樹脂に対するシリカ微粒子凝集体分散液の通液方法もなんら限定されるものではなく、例えばカラムに上記水素型陽イオン交換樹脂を充填して通液する方法や、水ガラスと水素型陽イオン交換樹脂をバッチ方式で処理するなどの周知の方法を用いることができる。尚、使用済みの水素型陽イオン交換樹脂は通常の方法、即ち、塩酸、硫酸、硝酸等の酸を使用して水素型に再生することができる。
【0058】
陽イオン交換工程は、成長工程後の希シリカ凝集体微粒子分散液をエバポレーター、限外ろ過等で濃縮し、濃縮されたシリカ微粒子凝集体分散液に対して行ってもよい。しかし、濃縮されたシリカ微粒子凝集体分散液を用いる場合はシリカ固形分の収率低下が生じるため、成長工程終了後の希シリカ微粒子凝集体分散液に対して行うことが好ましい。
【0059】
陽イオン交換を行う程度としては、シリカ微粒子凝集体分散液が酸性になるまで行ない、好ましくはpHが2〜5になるまで行なう。より好ましくは2〜4になるまで行うと、次工程でのカチオン性ポリマーを混合分散した後の液安定性が良好となり、好適である。
【0060】
陽イオン交換工程終了後は、シリカ微粒子凝集体分散液を所望の濃度までエバポレーター、限外ろ過等で濃縮することが好ましい。
【0061】
最後に、カチオン性ポリマー混合分散工程について詳細に説明する。
【0062】
陽イオン交換工程により得たシリカ微粒子凝集体分散液をそのままインクジェット受理層に使用した場合、インク中のアニオン性直接染料を定着することができず、印字耐水性が得られない。このためカチオン性ポリマーを当該シリカ微粒子凝集体分散液中に添加し、混合し、分散するのがよい。
【0063】
添加するカチオン性ポリマーの例としては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート塩酸塩、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩酸塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド四級化物、ビニルイミダゾリウムメトクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、メチルジアリルアミン塩酸塩、モノアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン塩酸塩等の重合物又は共重合物が挙げられる。その他、ポリエチレンイミン塩酸塩、ジシアンジアミド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、2級アミン・エピクロロヒドリン付加重合物、ポリエポキシアミンなどのカチオン性を有する構造を含む重合物も例示されるが、これらに限定されるものではない。このようなカチオン性ポリマーとしては水溶性のものが好ましい。
【0064】
カチオン性ポリマーのシリカ微粒子凝集体分散液に添加する部数は、シリカ固形分100重量部あたりカチオン性ポリマー固形分1〜30重量部添加することが好ましい。これよりも少ない場合には分散が困難となる恐れがあり、これよりも多い場合にはインク受理層に用いた時のインク吸収性が低下する恐れがある。
【0065】
カチオン性ポリマーを混合した後の分散方法としては、機械的手段を用いることもでき、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、高速回転ミル、ローラーミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌ミル、ジェットミル、サンドグラインダー等の機械的手法が挙げられ、これらの手段を組み合わせても良い。
【0066】
これらの中でも特に高圧ホモジナイザーを使用した場合、粉砕・分散処理が高効率で行われ、連続式であることから大量の試料を処理することも可能であり、好適である。分散圧力は100kg/cm2以上が好ましい。分散は繰り返すことができるが、生産効率の点から1〜3回が好ましい。
【0067】
本発明は、窒素吸着法による比表面積が50m2/g〜400m2/g、平均2次粒子径(シリカ微粒子凝集体径)が20〜800nm、かつ細孔径が100nm以下の範囲の細孔容積が0.4〜2.0ml/gであり、アルカリ性であるシリカ微粒子凝集体分散液を水素型陽イオン交換樹脂で処理して酸性とし、好ましくはpH2〜5とした後、カチオン性ポリマーを混合、分散する態様を含む。
【0068】
一般にコロイド状のシリカ微粒子分散液はアルカリ性で安定化されている場合が多く、アルカリ(例えばNH4OH,NaOH等)を含有する場合が多い。アルカリ性ではシリカ微粒子表面のシラノール基解離度が高く、シリカ微粒子のアニオン性が非常に強いものとなる。従ってカチオン性ポリマーとの相互作用が非常に強固となって、カチオン性ポリマー混合分散後の液安定性が大きく損なわれることとなる。また、乾燥塗膜を作成した場合、アルカリが含まれると塗膜中のシリカ以外の不純物量が多い為か塗膜の透明度が低下し、インクジェット記録した場合の記録濃度が低下する問題があった。これらの液安定性、及び塗膜の透明度低下の問題は本発明により不純物であるアルカリを陽イオン交換によって除くと改良されることが明らかになった。
【0069】
窒素吸着法による比表面積が50m2/g〜400m2/g、平均2次粒子径(シリカ微粒子凝集体径)が20〜800nm、かつ細孔径が100nm以下の範囲の細孔容積が0.4〜2.0ml/gであり、アルカリ性であるシリカ微粒子凝集体分散液の製造方法としては、前記の活性ケイ酸から製造する方法が塗膜の透明度、印字濃度の点で最も好ましいが、これに限定されず、ミクロンオーダーの粒子径の大きな無定形シリカを粉砕することによって製造することもできるし、粉砕しなくとも、その粒径が該当するものでも良い。
【0070】
ミクロンオーダーの粒子径の大きな無定形合成シリカを機械的手段で湿式粉砕処理する方法は、コロイド状のシリカ微粒子の分散液を得る方法として公知である。例えば特開平9−286165号公報には、無定型合成シリカに機械的手段で強い力を加えることにより、粒子径がサブミクロンのコロイド状シリカ微粒子を製造する方法が開示されている。
【0071】
ミクロンオーダーの粒子径の大きな合成無定形シリカは、主に湿式法で製造され、さらに湿式法による無定型合成シリカは沈降法によるシリカとゲル法によるシリカに分類される。沈降法はケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を段階的に加え、沈降したシリカをろ過して製造されるものであり、ゲル法はケイ酸アルカリ溶液に鉱酸を混合し、ゲル化させたのち、洗浄及び粉砕して得られるものである。
例えば、特開昭55−116613号公報には、ケイ酸アルカリ水溶液に対して2段に分けて酸添加を行い、反応後の溶液をろ過してシリカの湿潤ケークを得、該湿潤ケークにせん断力又は振動を与えてスラリーとした後、噴霧乾燥することによって細孔容積が比較的大きい無定形合成シリカを得る方法が開示されている。
【0072】
本発明のカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液を用いてインクジェット記録シートを製造するにあたって特に制限はないが、以下に説明する。カチオン性シリカ微粒子凝集体分散液以外の主要材料はバインダーであり、その他の副次的な材料を添加する事もできる。
【0073】
バインダーとしては水溶性樹脂を用いる事ができ、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリロイルモルホリン、水溶性ポリビニルアセタール、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリ−N−ビニルホルムアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、でんぷんなどを例示することができ、単独で、或いは混合して配合することができる。特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0074】
また水性樹脂エマルジョンをバインダーとして用いても良い。例えばスチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリウレタン系ラテックス、ポリエステル系ラテックスなど、一般に用いられている水性エマルジョンを使用する事ができる。
【0075】
バインダーの配合量はシリカ微粒子凝集体固形分に対し5〜100重量%程度であり、10重量%〜50重量%が好ましい。
【0076】
副次的な材料として、消泡剤を混合して塗工時の作業性を向上させたり、基材の濡れ性を良くして均一な塗工層を得るために界面活性剤を配合することもできるし、塗工シートの貼りつき防止や通紙性向上のため、デンプン粒子や合成樹脂粒子を混合しても良い。また、透明性や表面光沢の調整のために、各種顔料を添加することもできるし、また印字画像の保存性向上のため、紫外線吸収剤や光安定化剤などの耐光性向上剤を添加することもできる。
【0077】
支持体としては、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、板紙、合成樹脂ラミネート紙、金属蒸着紙、合成紙、白色フィルム等、塗工基材として一般的に用いられるシートを利用することが出来るが、これらに限定されるものではない。これらの支持体に下塗りをして塗工層を設けてから使用しても構わない。中でも、合成樹脂ラミネート紙、金属蒸着紙、合成紙、白色フィルム等、表面が平滑で比較的吸液性の低い基材シートを用いた場合は、高光沢の塗工層が得られるため好適である。フィルム転写法やキャスト塗工などの手段を用い更に高光沢の塗工層を得ることもできる。これらの支持体はその表面に形成する塗工層との接着力が不十分な場合には下塗り層を設けたり、コロナ放電処理やプラズマ処理や熱炎処理などの各種の易接着処理を施すことができる。支持体の厚さは用途によって大きく異なるが、インクジェット記録シートを作製する場合は、プリンターの通紙性を考慮し、50〜500μmが好ましい。
【0078】
塗工装置としては、公知の塗布装置、例えばバーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーターなどを用いることができるが、これらに限らない。
【0079】
塗工量は塗工シートの用途によっても大きく異なるため特に限定するものではないが、乾燥後の全層の総塗工量は重量として1〜80g/m2程度が好ましく、さらに好ましくは3〜60g/m2程度である。この範囲の塗工量とするとインクの吸収が十分となり、カールの発生もしにくくなる。
【0080】
インク受容層を複数層設けることもできる。その場合、本発明のシリカ微粒子凝集体分散液が乾燥時にひび割れにくく、一回の塗工当たりの塗工量を大きくすることができる特徴があるので、基材シートに近いインク吸収層に本シリカ微粒子凝集体を用い、インク中の溶媒を吸収させる役割を負わせる使い方もできる。即ち、支持体上に本発明のシリカ微粒子凝集体含有層を設け、更にその上に光沢発現層を設けることもできる。
【0081】
【実施例】
尚、以下に本発明の更に詳しい説明を実施例により行うが、実施例および比較例に記載した試験項目の測定方法は次の通りである。
【0082】
(シリカ微粒子凝集体の平均2次粒子径測定方法)
動的光散乱法によるレーザー粒度分布計〔大塚電子株式会社製、商標LPA3000/3100〕を用いて成長工程終了後のシリカ微粒子凝集体分散液を十分に蒸留水で希釈した状態で測定した。平均2次粒子径はキュムラント法を用いた解析から算出される値を用いた。
【0083】
(シリカ微粒子凝集体の比表面積、細孔容積測定法)
成長工程終了後のシリカ微粒子凝集体分散液を105℃にて乾燥し、得られた粉体試料の比表面積、細孔容積を、ガス吸着法比表面積・細孔分布測定装置〔Coulter社製SA3100型〕を用い、前処理として200℃で2時間真空脱気した後に測定した。吸着ガスとしては窒素を用いた。比表面積はBET法により求めた値を使用し、細孔容積は細孔径100nm以下の細孔の全細孔容積の値を使用した。
【0084】
(カチオン性シリカ微粒子凝集体分散液の粘度測定方法)
固形分濃度10重量%のカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液50gを50ml容器に採取し、B型粘度計〔東京計器株(株)製、DVL−B〕を用い、回転数60rpmの条件で1分間測定行い、25℃における粘度を測定した。
【0085】
(カチオン性シリカ微粒子凝集体塗膜の作成法)
濃度10重量%のカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液に対し、完全けん化ポリビニルアルコール(株)クラレ製、商品名:PVA−140H〕の6重量%水溶液をカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液に含まれる固形分100重量部に対して20固形分重量部混合した塗料を作成した。この塗料を厚さ100μmの透明ポリエチレンテレフタラートフィルム〔東レ(株)製、商品名:ルミラー100−Q80D〕上に乾燥重量で塗工量が5g/m2及び20g/m2になるようにバー塗工した。塗工量が5g/m2のシートは100℃で乾燥を行い、塗工量20g/m2のシートは40℃の温度で乾燥を行った。
塗工量5g/m2のシートに対しては、ヘイズの評価を行った。また、塗工量20g/m2のシートに対しては、インクジェットプリンターで印字を行い、印字濃度の評価を行った。
【0086】
(カチオン性シリカ微粒子凝集体塗膜のヘイズ測定法)
カチオン性シリカ微粒子凝集体塗膜(塗工量5g/m2)のヘイズをJIS規格K7105に従って測定した。
【0087】
(カチオン性シリカ微粒子凝集体塗膜の印字濃度評価法)
カチオン性シリカ微粒子凝集体塗膜(塗工量20g/m2)にインクジェットプリンター〔セイコーエプソン(株)製、PM−900C〕を用い、PM写真用紙推奨設定印刷モードで、100%ブラックのベタ印字(30mm×30mm)を行った。
【0088】
印字濃度は、上記ブラックベタ印字部分の印字濃度をマクベス反射濃度計(Macbeth、RD−920)を用いて測定した。
【0089】
実施例1
(活性ケイ酸水溶液の調製)
SiO2濃度30重量%、SiO2/Na2Oモル比3.1のケイ酸ソーダ溶液〔(株)トクヤマ製、三号珪酸ソーダ〕に蒸留水を混合し、SiO2濃度4.0重量%の希ケイ酸ソーダ水溶液を調製した。この水溶液を、強酸性水素型陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、ダイヤイオンSK−1BH)が充填されたカラムに通じて活性ケイ酸水溶液を調製した。
得られた活性ケイ酸水溶液中のSiO2濃度は4.0重量%、pHは2.8であった。
【0090】
(シード液調製工程)
還流器、攪拌機、温度計を備えた5リットルのガラス製反応容器中で、400gの蒸留水を95℃に加温した。この熱水を95℃に保ちながら、上記の活性ケイ酸水溶液を8.0g/分の速度で合計816g添加し、シード液を調製した。このシード液中のシリカ微粒子凝集体の物性を表1に示す。
【0091】
(成長工程)
上記のガラス製反応容器中で、1216gの上記シード液に対し水酸化カリウムを0.012モル添加し安定化させ、100℃に加温した。この安定化されたシード液に対して、上記の活性ケイ酸水溶液を8.0g/分の速度で合計584g添加した。活性ケイ酸の添加終了後、そのまま溶液を95℃に保って1時間加熱放置し、pH8.6の希シリカ微粒子凝集体分散液を得た。このシリカ微粒子凝集体分散液に含まれるシリカ微粒子凝集体の性状を表1に示す。
【0092】
(陽イオン交換工程)
上記の希シリカ微粒子凝集体分散液を活性ケイ酸水溶液の調製に使用した水素型陽イオン交換樹脂充填カラムに通じて、水酸化カリウムを除去し、pH3.2とした。かかる後エバポレーターにて濃縮し、濃度10重量%の酸性シリカ微粒子凝集体分散液(pH2.8)を得た。
【0093】
(カチオン性ポリマー混合分散工程)
上記のシリカ微粒子凝集体分散液100重量部に対して、強攪拌条件下で、カチオン性ポリマーとしてジアリルジメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体〔日東紡績(株)製、商品名:PAS−J−81〕の10重量%水溶液を10重量部加えた。混合直後に粘度が上昇したが、流動性は失われなかった。
次に、該混合物を、超高圧ホモジナイザー〔みづほ工業(株)製、マイクロフルイダイザーM110−E/H型〕を用いて処理圧力500kg/cm2で2回処理し、濃度10重量%のコロイド状カチオン性シリカ微粒子凝集体分散液(pH2.7)を得た。
該カチオン性シリカ微粒子凝集体分散液は1週間後も大きく増粘することはなかった。
【0094】
(カチオン性シリカ微粒子凝集体塗膜の作成と評価)
上記のカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液を用いて、カチオン性シリカ微粒子凝集体塗膜を作成し、塗膜透明性(ヘイズ)、および印字濃度の評価を行い、結果を表2に示した。
【0095】
比較例1
実施例1の成長工程後の希シリカ微粒子凝集体分散液を、陽イオン交換を行わずに塩酸を添加することでpHを3.2とし、エバポレーターにて濃縮し、濃度10重量%の酸性シリカ微粒子凝集体分散液(pH2.8)を得た。この酸性シリカ微粒子分散液に実施例1と同じカチオン性ポリマー混合分散工程を実施して、カチオン性シリカ微粒子凝集体分散液(pH2.7)を得た。この塗膜の塗膜透明性(ヘイズ)および印字濃度の評価を行い、結果を表2に示したが、実施例1よりヘイズが高く、印字濃度が劣った。
【0096】
比較例2
実施例1の成長工程後の希シリカ微粒子凝集体分散液を、陽イオン交換を行わずにそのままエバポレーターにて濃縮し、濃度10重量%のシリカ微粒子凝集体分散液(pH8.6)を得た。このシリカ微粒子凝集体分散液に実施例1と同じ方法でカチオン性ポリマーを混合したところ、混合物全体が固化してしまった。該混合物を実施例1と同じ超高圧ホモジナイザーを用いて処理圧力500kg/cm2で2回処理し、濃度10重量%のカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液(pH5.8)を得た。このカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液は表2に示すように調整直後から粘度が高く、数時間後にはゲル化してしまったので、塗膜の評価は行なえなかった。
【0097】
実施例2
(シード液調製工程)
還流器、攪拌機、温度計を備えた5リットルのガラス製反応容器中で、実施例1と同じ活性ケイ酸水溶液400gを2℃/分の速度で100℃まで昇温し、その後40分間100℃で保持し、シード液を調製した。このシード液中のシリカ微粒子凝集体の物性を表1に示す。
【0098】
(成長工程)
400gの上記シード液に対しアンモニアを0.1モル添加して安定化させ、100℃に加温した。このシード液に対して、活性ケイ酸水溶液を1.5g/分の速度で合計600g添加した。活性ケイ酸の添加終了後、そのまま溶液を100℃に保って3時間加熱還流を行い、pH7.6の希シリカ微粒子凝集体分散液を得た。このシリカ微粒子凝集体分散液に含まれるシリカ微粒子凝集体の性状を表1に示す。
【0099】
(陽イオン交換工程)
実施例1と同様に水素型陽イオン交換樹脂充填カラムを通して、アンモニアを除去し、pH3.4とした。次にエバポレーターで濃縮し、濃度10重量%の酸性シリカ微粒子凝集体分散液(pH3.3)とした。
【0100】
(カチオン性ポリマー混合分散工程)
上記の酸性シリカ微粒子分散液100重量部に対して、強攪拌条件下で、カチオン性ポリマーとしてポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド〔(株)センカ製、商品名:CP103〕の10重量%水溶液を10重量部加えた。混合直後に粘度が上昇したが、流動性は失われなかった。次に、該混合物を超高圧ホモジナイザー〔みづほ工業(株)製、マイクロフルイダイザーM110−E/H型〕を用いて処理圧力500kg/cm2で2回処理し、濃度10重量%のコロイド状カチオン性シリカ微粒子凝集体分散液(pH3.1)を得た。該カチオン性シリカ微粒子凝集体分散液は、1週間後も大きく増粘することはなかった。
(カチオン性シリカ微粒子凝集体塗膜の作成と評価)
上記のカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液を用いて、カチオン性シリカ微粒子凝集体塗膜を作成し、塗膜透明性(ヘイズ)および印字濃度の評価を行い、結果を表2に示した。
【0101】
比較例3
実施例2の成長工程後の希シリカ微粒子凝集体分散液を、陽イオン交換を行わずに塩酸を添加することでpHを3.4とし、エバポレーターにて濃縮し、濃度10重量%の酸性シリカ微粒子凝集体分散液(pH3.3)を得た。この酸性シリカ微粒子分散液に実施例2と同じカチオン性ポリマー混合分散工程を実施して、カチオン性シリカ微粒子凝集体分散液(pH3.1)を得た。この塗膜の塗膜透明性(ヘイズ)および印字濃度の評価を行い、結果を表2に示したが、実施例2よりもヘイズが高く、印字濃度が劣った。
【0102】
比較例4
実施例2の成長工程後の希シリカ微粒子凝集体分散液を、陽イオン交換を行わずにそのままエバポレーターにて濃縮し、濃度10重量%のシリカ微粒子凝集体分散液(pH7.0)を得た。このシリカ微粒子凝集体分散液に実施例2と同じ方法でカチオン性ポリマーを混合したところ、混合物全体が固化してしまった。該混合物を実施例2と同じ超高圧ホモジナイザーを用いて処理圧力500kg/cm2で2回処理し、濃度10重量%のカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液(pH5.9)を得た。このカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液は表2に示すように調製直後から粘度が高く、数時間後にゲル化してしまったので、塗膜の評価は行えなかった。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【発明の効果】
本発明によれば、アルカリで安定化されたシリカ微粒子凝集体分散液から陽イオン交換によって不純物であるアルカリを除去することにより、酸性のシリカ微粒子凝集体分散液を得、カチオン性ポリマーによるカチオン化時に起こる強い増粘トラブルを解消でき、またカチオン化されたシリカ微粒子凝集体分散液の不安定性を改良できる。しかも本発明により製造されたカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液は不純物であるアルカリを実質的に含まないため、塗膜の透明度が高く、高い印字濃度が得られるのでインクジェット記録シート製造に好適である。
Claims (8)
- 熱水に活性ケイ酸水溶液を滴下するか又は活性ケイ酸水溶液を加熱してシリカ微粒子凝集体分散液を生成させ、分散液が沈殿を生じる前、もしくはゲル化する前にアルカリを添加してシリカ微粒子凝集体を安定化し、該安定状態を保ちながら活性ケイ酸水溶液を添加してシリカ微粒子凝集体を成長させたのち、水素型陽イオン交換樹脂によって前記アルカリを除去することにより酸性とした後、カチオン性ポリマーを添加することを特徴とするカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液の製造方法。
- 安定状態を保ちながら活性ケイ酸を添加する速度が、シリカ微粒子凝集体に含まれるSiO21モルあたりSiO2に換算して0.001〜0.1モル/分である請求項1記載の製造方法。
- 前記成長を行う前のシリカ微粒子凝集体の窒素吸着法による比表面積が、300m2/g〜1000m2/g、かつ細孔径が100nm以下の範囲の細孔容積が0.2ml/g〜2.0ml/gである請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記成長後のシリカ微粒子凝集体の窒素吸着法による比表面積が、50m2/g〜400m2/g、平均2次粒子径が20nm〜800nm、かつ細孔径が100nm以下の範囲の細孔容積が0.4ml/g〜2.0ml/gである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 平均2次粒子径が20〜8000nmであり、アルカリ性であるシリカ微粒子凝集体分散液を水素型陽イオン交換樹脂で処理して酸性とした後、カチオン性ポリマーを添加することを特徴とするカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液の製造方法。
- 窒素吸着法による比表面積が、50m2/g〜400m2/g、平均2次粒子径が20〜800nm、かつ細孔径が100nm以下の範囲の細孔容積が0.4〜2.0ml/gであり、アルカリ性であるシリカ微粒子凝集体分散液を、水素型陽イオン交換樹脂で処理して酸性とした後、カチオン性ポリマーを添加することを特徴とするカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載された方法によって製造されたカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液。
- 請求項7記載のカチオン性シリカ微粒子凝集体分散液を含有する塗工液が支持体に塗工されたインクジェット記録用シート。
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