JP2004002159A - シリカ粉体、シリカ分散物、シリカ分散物の製造方法、インクジェット記録用紙及びインクジェット記録用紙の製造方法 - Google Patents
シリカ粉体、シリカ分散物、シリカ分散物の製造方法、インクジェット記録用紙及びインクジェット記録用紙の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】ひび割れが少なく、且つ、生産性を向上させることができるシリカ粉体およびシリカ分散物を用いるインクジェット記録用紙の製造方法、その製造方法で得られるインクジェット記録用紙及び該シリカ分散物の製造方法の提供。
【解決手段】シリカの孤立シラノール基比率が1.0〜4.5であることを特徴とするシリカ粉体。
【選択図】 なし
【解決手段】シリカの孤立シラノール基比率が1.0〜4.5であることを特徴とするシリカ粉体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)に用いるシリカ粉体、シリカ分散物、シリカ分散物の製造方法、該シリカ分散物を用いるインクジェット記録用紙の製造方法及びインクジェット記録用紙に関し、更に詳しくはひび割れが少なく、生産性に優れたインクジェット記録用紙の製造方法及び該製造方法で製造されたインクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録用紙に付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有しており、近年急速に普及してきている。一方、写真等の高画質印刷にも用いられており、記録用紙としてインク吸収量が多く、記録用紙上に異物、クラック(ひび割れ)等の故障が無く、且つ、生産性が向上した記録用紙及び該記録用紙の製造方法が要求されている。
【0003】
これらの要求を解決するために、従来から非常に多くの技術が提案されている。
【0004】
例えば、特開昭52−53012号に記載されている低サイズ原紙に表面加工用の塗料を湿潤させた記録用紙、特開昭55−5830号に記載されている支持体表面にインク吸収性の塗層を設けた記録用紙、特開昭56−157号に記載されている顔料として非膠質シリカ粉末を含有する記録用紙、特開昭57−107878号に記載されている無機顔料と有機顔料を併用した記録用紙、特開昭58−110287号に記載されている2つの空孔分布ピークを有する記録用紙、特開昭62−111782号に記載されている上下2層の多孔質層からなる記録用紙、特開昭59−68292号、同59−123696号及び同60−18383号などに記載されている不定形亀裂を有する記録用紙、特開昭61−135786号、同61−148092号及び同62−149475号等に記載されている微粉末層を有する記録用紙、特開昭63−252779号、特開平1−108083号、同2−136279号、同3−65376号及び同3−27976号等に記載されている特定の物性値を有する顔料や微粒子シリカを含有する記録用紙、特開昭57−14091号、同60−219083号、同60−210984号、同61−20797号、同61−188183号、特開平5−278324号、同6−92011号、同6−183134号、同7−137431号、同7−276789号等に記載されているコロイド状シリカ等の微粒子シリカを含有する記録用紙及び特開平2−276671号、同3−67684号、同3−215082号、同3−251488号、同4−67986号、同4−263983号及び同5−16517号等に記載されているアルミナ水和物微粒子を含有する記録用紙等が多数提案されているが、いまだ満足するものはない。
【0005】
また、生産性向上を狙った無機顔料分散物の製造方法(例えば、特許文献1を参照)、インクジェット記録用紙のひび割れ等の塗布故障の減少と生産性向上を狙った記載(例えば特許文献2及び3を参照)があるが、やはり、いまだ満足をするものではない。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−19421号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2000−27093号公報
【0008】
【特許文献3】
特開2002−2094号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ひび割れが少なく、且つ、生産性を向上させることができるシリカ粉体、シリカ分散物を用いるインクジェット記録用紙の製造方法、その製造方法で得られるインクジェット記録用紙及び該シリカ分散物の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0011】
1.シリカの孤立シラノール基比率が1.0〜4.5であることを特徴とするシリカ粉体。
【0012】
2.前記シリカが気相法シリカであることを特徴とする前記1に記載のシリカ粉体。
【0013】
3.気相法シリカの含水率が1.5〜5.0%であることを特徴とする気相法シリカ粉体。
【0014】
4.含水率が0.1〜1.0%である気相法シリカに水蒸気を吹き付けて得られることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載のシリカ粉体。
【0015】
5.シリカの1次粒径が3〜100nmであることを特徴とする前記1〜4の何れか1項に記載のシリカ粉体。
【0016】
6.前記シリカ粉体を水性媒体中に分散して得られることを特徴とするシリカ分散物。
【0017】
7.シリカを19〜35%含有することを特徴とする前記6に記載のシリカ分散物。
【0018】
8.前記6又7に記載のシリカ分散物中のシリカをサンドミルを用いて分散させて製造することを特徴とするシリカ分散物の製造方法。
【0019】
9.前記6又7に記載のシリカ分散物を支持体上に塗布して得られることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0020】
10.前記 8に記載のシリカ分散物の製造方法で得られたシリカ分散物を支持体上に塗布することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
【0021】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明のインクジェット記録用紙は、シリカ分散物を支持体上に塗布し、空隙層を有する塗膜を形成させたものである。
【0022】
シリカはその製造方法によって気相法シリカと湿式法シリカに大別でき、さらに湿式法シリカはゲル法で製造されたシリカ(以下、ゲル法シリカと称す)と沈降法で製造されたシリカ(以下、沈降法シリカと称す)に細分化される。
気相法シリカは、四塩化珪素を酸素と水素で燃焼して作られる。気相法シリカは、比較的光沢が出しやすく、空隙を形成しやすい反面、見かけ比重が小さく、球状粒子が網目状に凝集しやすいため、高濃度で水分散するのが困難であるのに加え、分散液の経時安定性が低く、塗膜にしたときにクラック(ひび割れ)が発生しやすい欠点を有している。
【0023】
これに対し、ゲル法シリカは例えば、高純度珪砂を原料としたケイ酸ソーダと硫酸を混合しケイ酸ゾルを生成する。ケイ酸ゾルは、次第に重合し、1次粒子を形成し、更に三次元的に凝集体を形成し、ゲル化する。このシリカを気流粉砕等の一般的な方法で粉砕して微粉化する。すなわちゲル法では、酸性サイドで反応重合させ、ゲル状になるまで静置し、水洗して乾燥しゲル法シリカを得る。沈降法シリカは、アルカリサイドで反応重合させ、そのまま、沈降させ乾燥して得ることができる。これら湿式法シリカは、水性媒体中に分散しやすく高濃度の分散物が得られる利点がある。
【0024】
しかしながら、光沢が出にくく、空隙が形成しにくく、きちんと粉砕分散しないと分散不良を起こしやすく、ひび割れが発生しやすくなる欠点を有している。
【0025】
気相法、湿式法シリカとも、用いることができるが、高空隙率を得ることができる気相法シリカが好ましく用いることができる。
【0026】
本発明において、気相法シリカの1次粒子平均粒径は3〜100nmが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0027】
本発明に好ましく用いられる気相法シリカは大きな比表面積を有することが好ましい。具体的には、BET値が150〜400m2/gが好ましく、200〜350m2がより好ましい。
【0028】
最も好ましく用いられる、1次粒子の平均粒径が4〜20nmである気相法により合成された微粒子シリカとしては、例えば、日本アエロジル社のアエロジルが市販されている。
【0029】
しかしながら、これらの市販されている気相法シリカは、高濃度で分散すると急激に粘度が上昇し、更に、分散不良を起こしやすくなり粗大粒子が増加し、ひび割れの原因となり、空隙、ひび割れ及び生産性の全てを満足させるのが難しい現状である。
【0030】
これらの問題に関して、本発明者らは鋭意検討の結果、シリカ表面の孤立シラノール基比率に着目し、孤立シラノール基の比率が多いと、シリカ同士の結合が強くなり、更に、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを添加したときには、水溶性ポリマーとの水素結合力が強くなり分散液の粘度が高くなることで、分散不良が起きやすくなり、粗大粒子が多くなり、インクジェット記録用紙のひび割れを起こす原因になると推定し、水性媒体と分散する前のシリカ粉体の孤立シラノール基比率を1.0〜4.5にすることにより、本発明の目的を達成できることを見いだした。
【0031】
本発明でいう孤立シラノール基比率は、FT−IRを用いて求める。
シリカを120℃、24hr(時間)乾燥し、乾燥させたシリカのFT−IR測定を行う。
【0032】
赤外吸光分光計を用い2枚のKRS−5の間にシリカをおき、透過法により、1000〜4000cm−1の測定を行う。測定装置の例として、FT−IR−4100manufactured by JASCD Corporationが挙げられる。図1に示されるような吸収スペクトルにおいて、−Si−OHに由来する3750cm−1のピーク1付近の3760cm−1の谷と−Si−O−Si−に由来する1870cm−1のピーク2付近の2120cm−1の谷を結びピーク1のベースラインとし、ピーク2付近の2120cm−1の谷と1500cm−1の谷を結びピーク2のベースラインとする。それぞれのピークの吸光度とベースラインの吸光度の差をそれぞれの吸光度として計算する。
【0033】
尚、図1はシリカの赤外分光吸収スペクトルの一例を示す概略図である。
−Si−OHに起因する3750cm−1の吸光度、−Si−O−Si−に起因する1870cm−1の吸光度を求め、以下の式で求められる値を孤立シラノール基比率とした。
【0034】
孤立シラノール基比率(以下、IR比ともいう)=(3750cm−1の吸光度/1870cm−1の吸光度)
本発明の孤立シラノール基比率は、後述するシリカの含水率を変化させることで調整することができる。
【0035】
一般に市販されている気相法シリカの含水率は1.0%以下であり、多くは0.1〜0.9%である。また、孤立シラノール基比率は5.0〜7.0である。
【0036】
従って、本発明においては、本発明の気相法シリカの含水率の範囲にするためには、前記気相法シリカに水蒸気を吹き付けることで含水率を調整することが好ましい。
【0037】
水蒸気を吹き付ける方法は、気相法シリカを搬送しながら連続的に水蒸気を吹き付ける方法、気相法シリカを密閉容器に投入しエアレーションしながら、水蒸気を吹き付ける方法がある。
【0038】
湿式シリカの場合は、元々含水率として、5%以上あるため、孤立シラノール基比率を本発明範囲にするには、シリカ粉体を加熱・乾燥する必要があり、しかもわれわれの検討では300℃以上の温度が必要となり多大な労力がかかり、気相法シリカより調整しにくい。もちろん、本発明範囲内の条件であれば湿式シリカも用いることはできる。
【0039】
本発明の気相法シリカの含水率は1.5〜5.0%であり、1.5%未満では分散液の粘度が上昇し、後工程のハンドリングに、悪影響を及ぼし、5%を超えると気相法シリカ同士が凝集し分散しにくくなる。
【0040】
気相法シリカの含水率は以下の式で求めることができる。
120℃、24時間乾燥した後の気相法シリカの質量B、乾燥前の気相法シリカの質量をAとしたとき、
気相法シリカの含水率(%)=((A−B)/A)×100
気相法シリカの分散には、高圧ホモジナイザー、高速撹拌分散機、サンドミル、超音波分散機等を用いることが出来るが、本発明においてはサンドミルが好ましい。
【0041】
サンドミルに用いるビーズは1.0mm以下のジルコニアビーズが好ましく、更に好ましくは0.5mm以下である。
【0042】
サンドミルで分散する前に、高速撹拌分散機、ピンミキサー等で予備分散することがより好ましい。
【0043】
気相法シリカ分散液を作る際、気相法シリカ及び水性媒体を所望比率で分散するが、気相法シリカの質量濃度は以下の式で求められ、5〜40%であることが好ましい。特に好ましくは19〜35%である。質量濃度が5%未満であると生産効率が劣り、大量の分散液を必要とし、且つ、分散性が劣る方向になる。また、質量濃度が40%を超えると、分散液の粘度が高くなり、後工程の操作に負荷がかかり、生産性が落ちる。
【0044】
質量濃度(%)=(気相法シリカ質量/(気相法シリカ質量+水性媒体質量))×100で求めた値である。
【0045】
分散時の温度を上げすぎると、凝集が進行するため、分散工程での温度は、50℃以下が好ましい。
【0046】
前記水性媒体は、カチオン性ポリマーが含有されていることが気相法シリカの分散性の観点から好ましい。更に、硬膜剤も含有していることが好ましい。
【0047】
上記カチオン性ポリマーは、第4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく、特に好ましくは第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体または他の共重合し得る1または2以上のモノマーとの共重合体である。
【0048】
第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの例としては例えば以下の例を挙げることが出来る。
【0049】
【化1】
【0050】
【化2】
【0051】
上記第4級アンモニウム塩基と共重合し得るモノマーはエチレン性不飽和基を有する化合物であり、例えば以下の具体例を挙げることが出来る。
【0052】
【化3】
【0053】
特に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが共重合体である場合、カチオン性モノマーの比率は10モル%以上が好ましく、より好ましくは20モル%以上、特に好ましくは30モル%以上である。
【0054】
第4級アンモニウム塩基を有するモノマーは単一でも2種類以上であっても良い。
【0055】
以下に本発明に好ましく用いられるカチオン性ポリマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
【化4】
【0057】
【化5】
【0058】
【化6】
【0059】
【化7】
【0060】
上記第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーは第4級アンモニウム塩基のために水溶性が一般に高いが、共重合する第4級アンモニウム塩基を含まないモノマーの組成や比率によっては水に充分に溶解しないことがあるが、水混和性有機溶媒と水との混合溶媒に溶解させることにより溶解し得るもので有れば本発明に使用できる。
【0061】
ここで水混和性有機溶媒とは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類など、水に対して通常10%以上溶解し得る有機溶媒を言う。この場合、有機溶媒の使用量は水の使用量以下であることが好ましい。
【0062】
カチオン性ポリマーは数平均分子量が10万以下であることがより好ましい。ここで数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められたポリエチレングリコール値に換算した値である。
【0063】
数平均分子量が10万を越える場合には、カチオン性ポリマーの溶液を表面がアニオン性である気相法シリカを含有する分散液に添加した際に凝集物の発生が激しく、またその後分散処理を施しても均一な分散液に成りにくく粗大粒子が多数存在して均一な分散液に成りにくい。このようなカチオン性ポリマーと気相法シリカを含有する複合微粒子分散液を使用してインクジェット記録用紙を作製した場合、高い光沢性が得られにくい。特に好ましい数平均分子量は5万以下である。数平均分子量の下限は染料の耐水性の点から通常2000以上である。
【0064】
上記気相法シリカとカチオン性ポリマーの比率は、気相法シリカの種類や粒径、あるいはカチオン性ポリマーの種類や数平均分子量で変わり得る。
【0065】
本発明において、上記比率は気相法シリカの表面がカチオン性に置き換わって安定化させることが好ましく、1:0.01〜1:1であることが好ましい。
【0066】
上記の分散液を調製する際には、各種の添加剤を添加して調製することが出来る。
【0067】
例えば、ノニオン性またはカチオン性の各種の界面活性剤(アニオン性界面活性剤は凝集物を形成するために好ましくない)、消泡剤、ノニオン性の親水性ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、各種の糖類、ゼラチン、プルラン等)、ノニオン性またはカチオン性のラテックス分散液、水混和性有機溶媒(酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、アセトンなど)、無機塩類、pH調整剤など、必要に応じて適宜使用することが出来る。
【0068】
特に水混和性有機溶媒は、気相法シリカとカチオン性ポリマーを混合した際の微小なダマの形成が抑制されるために好ましい。そのような水混和性有機溶媒は分散液中に好ましくは0.1〜20質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%使用される。
【0069】
カチオン性分散液を調製する際のpHは気相法シリカの種類やカチオン性ポリマーの種類、各種の添加剤等により広範に変化し得るが、一般的にはpHが1〜8であり、特に2〜7が好ましい。
【0070】
次に、本発明に好ましく用いられる水溶性ポリマーとしては、例えばゼラチン(酸処理ゼラチンが好ましい)、ポリビニルピロリドン(平均分子量が約20万以上が好ましい)、プルラン、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、カチオン変性ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(平均分子量が10万以上が好ましい)、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、水溶性ポリビニルブチラールを挙げることができ、これらの水溶性ポリマーは単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0071】
特に好ましい水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0072】
本発明に好ましく用いられるポリビニルアルコールは平均重合度が300〜4000のものであり、特に平均分子量が1000以上のものが得られる皮膜の脆弱性が良好であることから好ましい。
【0073】
また、ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜100%のものが特に好ましい。
【0074】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールは、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0075】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルジメチル(3−メタクリルアミド)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0076】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%が好ましく、より好ましくは0.2〜5モル%である。
【0077】
カチオン変性ポリビニルアルコールの重合度は500〜4000が好ましく、更に1000〜4000が好ましい。
【0078】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールのケン化度は通常60〜100モル%、好ましくは70〜99モル%である。
【0079】
本発明の好ましい態様として、気相法シリカ微粒子を1次粒子として使用し、水溶性ポリマーとしてポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを用いる場合が挙げられる。この場合、気相法シリカ微粒子表面のシラノール基とビニルアルコールの水酸基が弱い水素結合を行い、軟凝集体が形成されて空隙率が高く成りやすい。上記水溶性ポリマーは、溶解性を上げる為、100〜150℃で溶解するのが好ましい。
【0080】
本発明のインクジェット記録用紙の支持体としては、従来インクジェット用記録用紙として公知の紙支持体、プラスチック支持体(透明支持体)、複合支持体など適宜使用できるが、より高い濃度で鮮明な画像を得るためには支持体中にインク液が浸透しない疎水性支持体を用いるのが好ましい。
【0081】
透明支持体としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料からなるフィルム等が挙げられ、中でもOHPとして使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、10〜200μmが好ましい。透明支持体のインク受容層側およびバッキング層側には公知の下引き層を設けることが、インク受容層やバック層と支持体の接着性の観点から好ましい。
【0082】
また、透明である必要のない場合に用いる支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレート(PET)に白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0083】
支持体上に塗布する方法は公知の方法から適宜選択して行うことが出来る。好ましい方法は、塗布液を支持体上に塗設して乾燥して得られる。この場合、2層以上を同時に塗布することもでき、特に全ての親水性バインダー層を1回の塗布で済ます同時塗布が好ましい。
【0084】
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号公報記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0085】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中で「%」は特に断りのない限り絶乾質量%を示す。
【0086】
〈気相法シリカ(S−1〜S−8)の作製〉
市販気相法シリカ(日本アエロジル製:A300)を、密閉容器にいれ、水蒸気を吹きつけ、量、時間を変化させ、容器内の圧力を1.96Pa以下に保ち、表1に示すようなIR比、含水率になるようにS−1〜S−8を作製した。
【0087】
IR比、気相法シリカの含水率は前記詳細な説明で記載した方法で求めた。
〈気相法シリカ分散物(D−1〜D−13)の作製〉
S−1〜S−8を用いて、気相法シリカ濃度、分散方法を変化させてD−1〜D−13の気相法シリカ分散物を得た。(気相法シリカ濃度、分散方法は表1に示す)なお、気相法シリカ分散物に、以下の添加剤を添加した。
【0088】
気相法シリカの質量に対する比率
P−9 12%
ホウ酸 1.6%
ホウ砂 1.6%
エタノール 7%
気相法シリカの分散方法は、予備分散としてフロージェットミキサー(粉研製)を用いてS−1〜S−8全て予備分散を行った。周速は30m/secで行った。その後、本分散として高圧ホモジナイザー(以下、MGともいう)とサンドミル(以下、SMともいう)を用いた。
【0089】
高圧ホモジナイザーは、350kg/cm2で6回分散した。サンドミルは0.3mmのジルコニアビーズを用いて、充填率80%で3min分散した。
【0090】
〈気相法シリカ分散物の評価〉
気相法シリカ分散物D−1〜D−13を40℃に保ち、B型粘度計で粘度を測定した。
【0091】
〈塗布液1〜13、記録用紙1〜13作製〉
気相法シリカ分散物(D−1〜D−13)に、水溶性ポリマー(クラレ製:PVA235)を気相法シリカ質量に対して20%を添加して、気相法シリカ濃度が18%になるように塗布液1〜13を作製した。塗布液の温度は40℃になるように調整した。
【0092】
その後、塗布液を1L/minでスライドホッパー塗布機に供給し下記支持体上に塗布し記録用紙1〜13を得た。
【0093】
(支持体)
支持体は両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚みが220μmでインク吸収層面のポリエチレン中にはポリエチレンに対して13質量%のアナターゼ型酸化チタンを含有)を用い、200μmの厚さで塗布した。塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒間冷却した後、25℃の風(相対湿度が15%)で60秒間、45℃の風(相対湿度が25%)で60秒間、50℃の風(相対湿度が25%)で60秒間順次乾燥し、20〜25℃、相対湿度が40〜60%の雰囲気下で、2分間調湿した。
【0094】
〈記録用紙の評価〉
(ひび割れの評価)
塗布面の0.3m2当たりのひび割れ点数を目視でカウントした。ひび割れ点数は、通常10点以下であれば実用上問題ない。
【0095】
【表1】
【0096】
表1から明らかなように、本発明の試料は、比較の試料に比して、ひび割れが少ないインクジェット記録用紙であることが分かる。
【0097】
また、本発明のインクジェット記録用紙の製造方法は、分散物の粘度が低く、後工程のハンドリングも良好で生産性が向上し、且つ、該製造方法で得られたインクジェット記録用紙はひび割れが少なく優れていることが確認できた。
【0098】
【発明の効果】
実施例で実証した如く、本発明によるシリカ粉体およびシリカ分散物から得られるインクジェット記録用紙はひび割れが少なく、且つ、該シリカ分散物を用いるインクジェット記録用紙の製造方法は生産性が向上し、優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリカの赤外分光吸収スペクトルの一例である概略図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)に用いるシリカ粉体、シリカ分散物、シリカ分散物の製造方法、該シリカ分散物を用いるインクジェット記録用紙の製造方法及びインクジェット記録用紙に関し、更に詳しくはひび割れが少なく、生産性に優れたインクジェット記録用紙の製造方法及び該製造方法で製造されたインクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録用紙に付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有しており、近年急速に普及してきている。一方、写真等の高画質印刷にも用いられており、記録用紙としてインク吸収量が多く、記録用紙上に異物、クラック(ひび割れ)等の故障が無く、且つ、生産性が向上した記録用紙及び該記録用紙の製造方法が要求されている。
【0003】
これらの要求を解決するために、従来から非常に多くの技術が提案されている。
【0004】
例えば、特開昭52−53012号に記載されている低サイズ原紙に表面加工用の塗料を湿潤させた記録用紙、特開昭55−5830号に記載されている支持体表面にインク吸収性の塗層を設けた記録用紙、特開昭56−157号に記載されている顔料として非膠質シリカ粉末を含有する記録用紙、特開昭57−107878号に記載されている無機顔料と有機顔料を併用した記録用紙、特開昭58−110287号に記載されている2つの空孔分布ピークを有する記録用紙、特開昭62−111782号に記載されている上下2層の多孔質層からなる記録用紙、特開昭59−68292号、同59−123696号及び同60−18383号などに記載されている不定形亀裂を有する記録用紙、特開昭61−135786号、同61−148092号及び同62−149475号等に記載されている微粉末層を有する記録用紙、特開昭63−252779号、特開平1−108083号、同2−136279号、同3−65376号及び同3−27976号等に記載されている特定の物性値を有する顔料や微粒子シリカを含有する記録用紙、特開昭57−14091号、同60−219083号、同60−210984号、同61−20797号、同61−188183号、特開平5−278324号、同6−92011号、同6−183134号、同7−137431号、同7−276789号等に記載されているコロイド状シリカ等の微粒子シリカを含有する記録用紙及び特開平2−276671号、同3−67684号、同3−215082号、同3−251488号、同4−67986号、同4−263983号及び同5−16517号等に記載されているアルミナ水和物微粒子を含有する記録用紙等が多数提案されているが、いまだ満足するものはない。
【0005】
また、生産性向上を狙った無機顔料分散物の製造方法(例えば、特許文献1を参照)、インクジェット記録用紙のひび割れ等の塗布故障の減少と生産性向上を狙った記載(例えば特許文献2及び3を参照)があるが、やはり、いまだ満足をするものではない。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−19421号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2000−27093号公報
【0008】
【特許文献3】
特開2002−2094号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ひび割れが少なく、且つ、生産性を向上させることができるシリカ粉体、シリカ分散物を用いるインクジェット記録用紙の製造方法、その製造方法で得られるインクジェット記録用紙及び該シリカ分散物の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0011】
1.シリカの孤立シラノール基比率が1.0〜4.5であることを特徴とするシリカ粉体。
【0012】
2.前記シリカが気相法シリカであることを特徴とする前記1に記載のシリカ粉体。
【0013】
3.気相法シリカの含水率が1.5〜5.0%であることを特徴とする気相法シリカ粉体。
【0014】
4.含水率が0.1〜1.0%である気相法シリカに水蒸気を吹き付けて得られることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載のシリカ粉体。
【0015】
5.シリカの1次粒径が3〜100nmであることを特徴とする前記1〜4の何れか1項に記載のシリカ粉体。
【0016】
6.前記シリカ粉体を水性媒体中に分散して得られることを特徴とするシリカ分散物。
【0017】
7.シリカを19〜35%含有することを特徴とする前記6に記載のシリカ分散物。
【0018】
8.前記6又7に記載のシリカ分散物中のシリカをサンドミルを用いて分散させて製造することを特徴とするシリカ分散物の製造方法。
【0019】
9.前記6又7に記載のシリカ分散物を支持体上に塗布して得られることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0020】
10.前記 8に記載のシリカ分散物の製造方法で得られたシリカ分散物を支持体上に塗布することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
【0021】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明のインクジェット記録用紙は、シリカ分散物を支持体上に塗布し、空隙層を有する塗膜を形成させたものである。
【0022】
シリカはその製造方法によって気相法シリカと湿式法シリカに大別でき、さらに湿式法シリカはゲル法で製造されたシリカ(以下、ゲル法シリカと称す)と沈降法で製造されたシリカ(以下、沈降法シリカと称す)に細分化される。
気相法シリカは、四塩化珪素を酸素と水素で燃焼して作られる。気相法シリカは、比較的光沢が出しやすく、空隙を形成しやすい反面、見かけ比重が小さく、球状粒子が網目状に凝集しやすいため、高濃度で水分散するのが困難であるのに加え、分散液の経時安定性が低く、塗膜にしたときにクラック(ひび割れ)が発生しやすい欠点を有している。
【0023】
これに対し、ゲル法シリカは例えば、高純度珪砂を原料としたケイ酸ソーダと硫酸を混合しケイ酸ゾルを生成する。ケイ酸ゾルは、次第に重合し、1次粒子を形成し、更に三次元的に凝集体を形成し、ゲル化する。このシリカを気流粉砕等の一般的な方法で粉砕して微粉化する。すなわちゲル法では、酸性サイドで反応重合させ、ゲル状になるまで静置し、水洗して乾燥しゲル法シリカを得る。沈降法シリカは、アルカリサイドで反応重合させ、そのまま、沈降させ乾燥して得ることができる。これら湿式法シリカは、水性媒体中に分散しやすく高濃度の分散物が得られる利点がある。
【0024】
しかしながら、光沢が出にくく、空隙が形成しにくく、きちんと粉砕分散しないと分散不良を起こしやすく、ひび割れが発生しやすくなる欠点を有している。
【0025】
気相法、湿式法シリカとも、用いることができるが、高空隙率を得ることができる気相法シリカが好ましく用いることができる。
【0026】
本発明において、気相法シリカの1次粒子平均粒径は3〜100nmが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0027】
本発明に好ましく用いられる気相法シリカは大きな比表面積を有することが好ましい。具体的には、BET値が150〜400m2/gが好ましく、200〜350m2がより好ましい。
【0028】
最も好ましく用いられる、1次粒子の平均粒径が4〜20nmである気相法により合成された微粒子シリカとしては、例えば、日本アエロジル社のアエロジルが市販されている。
【0029】
しかしながら、これらの市販されている気相法シリカは、高濃度で分散すると急激に粘度が上昇し、更に、分散不良を起こしやすくなり粗大粒子が増加し、ひび割れの原因となり、空隙、ひび割れ及び生産性の全てを満足させるのが難しい現状である。
【0030】
これらの問題に関して、本発明者らは鋭意検討の結果、シリカ表面の孤立シラノール基比率に着目し、孤立シラノール基の比率が多いと、シリカ同士の結合が強くなり、更に、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを添加したときには、水溶性ポリマーとの水素結合力が強くなり分散液の粘度が高くなることで、分散不良が起きやすくなり、粗大粒子が多くなり、インクジェット記録用紙のひび割れを起こす原因になると推定し、水性媒体と分散する前のシリカ粉体の孤立シラノール基比率を1.0〜4.5にすることにより、本発明の目的を達成できることを見いだした。
【0031】
本発明でいう孤立シラノール基比率は、FT−IRを用いて求める。
シリカを120℃、24hr(時間)乾燥し、乾燥させたシリカのFT−IR測定を行う。
【0032】
赤外吸光分光計を用い2枚のKRS−5の間にシリカをおき、透過法により、1000〜4000cm−1の測定を行う。測定装置の例として、FT−IR−4100manufactured by JASCD Corporationが挙げられる。図1に示されるような吸収スペクトルにおいて、−Si−OHに由来する3750cm−1のピーク1付近の3760cm−1の谷と−Si−O−Si−に由来する1870cm−1のピーク2付近の2120cm−1の谷を結びピーク1のベースラインとし、ピーク2付近の2120cm−1の谷と1500cm−1の谷を結びピーク2のベースラインとする。それぞれのピークの吸光度とベースラインの吸光度の差をそれぞれの吸光度として計算する。
【0033】
尚、図1はシリカの赤外分光吸収スペクトルの一例を示す概略図である。
−Si−OHに起因する3750cm−1の吸光度、−Si−O−Si−に起因する1870cm−1の吸光度を求め、以下の式で求められる値を孤立シラノール基比率とした。
【0034】
孤立シラノール基比率(以下、IR比ともいう)=(3750cm−1の吸光度/1870cm−1の吸光度)
本発明の孤立シラノール基比率は、後述するシリカの含水率を変化させることで調整することができる。
【0035】
一般に市販されている気相法シリカの含水率は1.0%以下であり、多くは0.1〜0.9%である。また、孤立シラノール基比率は5.0〜7.0である。
【0036】
従って、本発明においては、本発明の気相法シリカの含水率の範囲にするためには、前記気相法シリカに水蒸気を吹き付けることで含水率を調整することが好ましい。
【0037】
水蒸気を吹き付ける方法は、気相法シリカを搬送しながら連続的に水蒸気を吹き付ける方法、気相法シリカを密閉容器に投入しエアレーションしながら、水蒸気を吹き付ける方法がある。
【0038】
湿式シリカの場合は、元々含水率として、5%以上あるため、孤立シラノール基比率を本発明範囲にするには、シリカ粉体を加熱・乾燥する必要があり、しかもわれわれの検討では300℃以上の温度が必要となり多大な労力がかかり、気相法シリカより調整しにくい。もちろん、本発明範囲内の条件であれば湿式シリカも用いることはできる。
【0039】
本発明の気相法シリカの含水率は1.5〜5.0%であり、1.5%未満では分散液の粘度が上昇し、後工程のハンドリングに、悪影響を及ぼし、5%を超えると気相法シリカ同士が凝集し分散しにくくなる。
【0040】
気相法シリカの含水率は以下の式で求めることができる。
120℃、24時間乾燥した後の気相法シリカの質量B、乾燥前の気相法シリカの質量をAとしたとき、
気相法シリカの含水率(%)=((A−B)/A)×100
気相法シリカの分散には、高圧ホモジナイザー、高速撹拌分散機、サンドミル、超音波分散機等を用いることが出来るが、本発明においてはサンドミルが好ましい。
【0041】
サンドミルに用いるビーズは1.0mm以下のジルコニアビーズが好ましく、更に好ましくは0.5mm以下である。
【0042】
サンドミルで分散する前に、高速撹拌分散機、ピンミキサー等で予備分散することがより好ましい。
【0043】
気相法シリカ分散液を作る際、気相法シリカ及び水性媒体を所望比率で分散するが、気相法シリカの質量濃度は以下の式で求められ、5〜40%であることが好ましい。特に好ましくは19〜35%である。質量濃度が5%未満であると生産効率が劣り、大量の分散液を必要とし、且つ、分散性が劣る方向になる。また、質量濃度が40%を超えると、分散液の粘度が高くなり、後工程の操作に負荷がかかり、生産性が落ちる。
【0044】
質量濃度(%)=(気相法シリカ質量/(気相法シリカ質量+水性媒体質量))×100で求めた値である。
【0045】
分散時の温度を上げすぎると、凝集が進行するため、分散工程での温度は、50℃以下が好ましい。
【0046】
前記水性媒体は、カチオン性ポリマーが含有されていることが気相法シリカの分散性の観点から好ましい。更に、硬膜剤も含有していることが好ましい。
【0047】
上記カチオン性ポリマーは、第4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく、特に好ましくは第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体または他の共重合し得る1または2以上のモノマーとの共重合体である。
【0048】
第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの例としては例えば以下の例を挙げることが出来る。
【0049】
【化1】
【0050】
【化2】
【0051】
上記第4級アンモニウム塩基と共重合し得るモノマーはエチレン性不飽和基を有する化合物であり、例えば以下の具体例を挙げることが出来る。
【0052】
【化3】
【0053】
特に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが共重合体である場合、カチオン性モノマーの比率は10モル%以上が好ましく、より好ましくは20モル%以上、特に好ましくは30モル%以上である。
【0054】
第4級アンモニウム塩基を有するモノマーは単一でも2種類以上であっても良い。
【0055】
以下に本発明に好ましく用いられるカチオン性ポリマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
【化4】
【0057】
【化5】
【0058】
【化6】
【0059】
【化7】
【0060】
上記第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーは第4級アンモニウム塩基のために水溶性が一般に高いが、共重合する第4級アンモニウム塩基を含まないモノマーの組成や比率によっては水に充分に溶解しないことがあるが、水混和性有機溶媒と水との混合溶媒に溶解させることにより溶解し得るもので有れば本発明に使用できる。
【0061】
ここで水混和性有機溶媒とは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類など、水に対して通常10%以上溶解し得る有機溶媒を言う。この場合、有機溶媒の使用量は水の使用量以下であることが好ましい。
【0062】
カチオン性ポリマーは数平均分子量が10万以下であることがより好ましい。ここで数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められたポリエチレングリコール値に換算した値である。
【0063】
数平均分子量が10万を越える場合には、カチオン性ポリマーの溶液を表面がアニオン性である気相法シリカを含有する分散液に添加した際に凝集物の発生が激しく、またその後分散処理を施しても均一な分散液に成りにくく粗大粒子が多数存在して均一な分散液に成りにくい。このようなカチオン性ポリマーと気相法シリカを含有する複合微粒子分散液を使用してインクジェット記録用紙を作製した場合、高い光沢性が得られにくい。特に好ましい数平均分子量は5万以下である。数平均分子量の下限は染料の耐水性の点から通常2000以上である。
【0064】
上記気相法シリカとカチオン性ポリマーの比率は、気相法シリカの種類や粒径、あるいはカチオン性ポリマーの種類や数平均分子量で変わり得る。
【0065】
本発明において、上記比率は気相法シリカの表面がカチオン性に置き換わって安定化させることが好ましく、1:0.01〜1:1であることが好ましい。
【0066】
上記の分散液を調製する際には、各種の添加剤を添加して調製することが出来る。
【0067】
例えば、ノニオン性またはカチオン性の各種の界面活性剤(アニオン性界面活性剤は凝集物を形成するために好ましくない)、消泡剤、ノニオン性の親水性ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、各種の糖類、ゼラチン、プルラン等)、ノニオン性またはカチオン性のラテックス分散液、水混和性有機溶媒(酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、アセトンなど)、無機塩類、pH調整剤など、必要に応じて適宜使用することが出来る。
【0068】
特に水混和性有機溶媒は、気相法シリカとカチオン性ポリマーを混合した際の微小なダマの形成が抑制されるために好ましい。そのような水混和性有機溶媒は分散液中に好ましくは0.1〜20質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%使用される。
【0069】
カチオン性分散液を調製する際のpHは気相法シリカの種類やカチオン性ポリマーの種類、各種の添加剤等により広範に変化し得るが、一般的にはpHが1〜8であり、特に2〜7が好ましい。
【0070】
次に、本発明に好ましく用いられる水溶性ポリマーとしては、例えばゼラチン(酸処理ゼラチンが好ましい)、ポリビニルピロリドン(平均分子量が約20万以上が好ましい)、プルラン、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、カチオン変性ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(平均分子量が10万以上が好ましい)、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、水溶性ポリビニルブチラールを挙げることができ、これらの水溶性ポリマーは単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0071】
特に好ましい水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0072】
本発明に好ましく用いられるポリビニルアルコールは平均重合度が300〜4000のものであり、特に平均分子量が1000以上のものが得られる皮膜の脆弱性が良好であることから好ましい。
【0073】
また、ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜100%のものが特に好ましい。
【0074】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールは、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0075】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルジメチル(3−メタクリルアミド)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0076】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%が好ましく、より好ましくは0.2〜5モル%である。
【0077】
カチオン変性ポリビニルアルコールの重合度は500〜4000が好ましく、更に1000〜4000が好ましい。
【0078】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールのケン化度は通常60〜100モル%、好ましくは70〜99モル%である。
【0079】
本発明の好ましい態様として、気相法シリカ微粒子を1次粒子として使用し、水溶性ポリマーとしてポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを用いる場合が挙げられる。この場合、気相法シリカ微粒子表面のシラノール基とビニルアルコールの水酸基が弱い水素結合を行い、軟凝集体が形成されて空隙率が高く成りやすい。上記水溶性ポリマーは、溶解性を上げる為、100〜150℃で溶解するのが好ましい。
【0080】
本発明のインクジェット記録用紙の支持体としては、従来インクジェット用記録用紙として公知の紙支持体、プラスチック支持体(透明支持体)、複合支持体など適宜使用できるが、より高い濃度で鮮明な画像を得るためには支持体中にインク液が浸透しない疎水性支持体を用いるのが好ましい。
【0081】
透明支持体としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料からなるフィルム等が挙げられ、中でもOHPとして使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、10〜200μmが好ましい。透明支持体のインク受容層側およびバッキング層側には公知の下引き層を設けることが、インク受容層やバック層と支持体の接着性の観点から好ましい。
【0082】
また、透明である必要のない場合に用いる支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレート(PET)に白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0083】
支持体上に塗布する方法は公知の方法から適宜選択して行うことが出来る。好ましい方法は、塗布液を支持体上に塗設して乾燥して得られる。この場合、2層以上を同時に塗布することもでき、特に全ての親水性バインダー層を1回の塗布で済ます同時塗布が好ましい。
【0084】
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号公報記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0085】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中で「%」は特に断りのない限り絶乾質量%を示す。
【0086】
〈気相法シリカ(S−1〜S−8)の作製〉
市販気相法シリカ(日本アエロジル製:A300)を、密閉容器にいれ、水蒸気を吹きつけ、量、時間を変化させ、容器内の圧力を1.96Pa以下に保ち、表1に示すようなIR比、含水率になるようにS−1〜S−8を作製した。
【0087】
IR比、気相法シリカの含水率は前記詳細な説明で記載した方法で求めた。
〈気相法シリカ分散物(D−1〜D−13)の作製〉
S−1〜S−8を用いて、気相法シリカ濃度、分散方法を変化させてD−1〜D−13の気相法シリカ分散物を得た。(気相法シリカ濃度、分散方法は表1に示す)なお、気相法シリカ分散物に、以下の添加剤を添加した。
【0088】
気相法シリカの質量に対する比率
P−9 12%
ホウ酸 1.6%
ホウ砂 1.6%
エタノール 7%
気相法シリカの分散方法は、予備分散としてフロージェットミキサー(粉研製)を用いてS−1〜S−8全て予備分散を行った。周速は30m/secで行った。その後、本分散として高圧ホモジナイザー(以下、MGともいう)とサンドミル(以下、SMともいう)を用いた。
【0089】
高圧ホモジナイザーは、350kg/cm2で6回分散した。サンドミルは0.3mmのジルコニアビーズを用いて、充填率80%で3min分散した。
【0090】
〈気相法シリカ分散物の評価〉
気相法シリカ分散物D−1〜D−13を40℃に保ち、B型粘度計で粘度を測定した。
【0091】
〈塗布液1〜13、記録用紙1〜13作製〉
気相法シリカ分散物(D−1〜D−13)に、水溶性ポリマー(クラレ製:PVA235)を気相法シリカ質量に対して20%を添加して、気相法シリカ濃度が18%になるように塗布液1〜13を作製した。塗布液の温度は40℃になるように調整した。
【0092】
その後、塗布液を1L/minでスライドホッパー塗布機に供給し下記支持体上に塗布し記録用紙1〜13を得た。
【0093】
(支持体)
支持体は両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚みが220μmでインク吸収層面のポリエチレン中にはポリエチレンに対して13質量%のアナターゼ型酸化チタンを含有)を用い、200μmの厚さで塗布した。塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒間冷却した後、25℃の風(相対湿度が15%)で60秒間、45℃の風(相対湿度が25%)で60秒間、50℃の風(相対湿度が25%)で60秒間順次乾燥し、20〜25℃、相対湿度が40〜60%の雰囲気下で、2分間調湿した。
【0094】
〈記録用紙の評価〉
(ひび割れの評価)
塗布面の0.3m2当たりのひび割れ点数を目視でカウントした。ひび割れ点数は、通常10点以下であれば実用上問題ない。
【0095】
【表1】
【0096】
表1から明らかなように、本発明の試料は、比較の試料に比して、ひび割れが少ないインクジェット記録用紙であることが分かる。
【0097】
また、本発明のインクジェット記録用紙の製造方法は、分散物の粘度が低く、後工程のハンドリングも良好で生産性が向上し、且つ、該製造方法で得られたインクジェット記録用紙はひび割れが少なく優れていることが確認できた。
【0098】
【発明の効果】
実施例で実証した如く、本発明によるシリカ粉体およびシリカ分散物から得られるインクジェット記録用紙はひび割れが少なく、且つ、該シリカ分散物を用いるインクジェット記録用紙の製造方法は生産性が向上し、優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリカの赤外分光吸収スペクトルの一例である概略図である。
Claims (10)
- シリカの孤立シラノール基比率が1.0〜4.5であることを特徴とするシリカ粉体。
- 前記シリカが気相法シリカであることを特徴とする請求項1に記載のシリカ粉体。
- 前記気相法シリカの含水率が1.5〜5.0%であることを特徴とする請求項2に記載のシリカ粉体。
- 含水率が0.1〜1.0%である気相法シリカに水蒸気を吹き付けて得られることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のシリカ粉体。
- シリカの1次粒径が3〜100nmであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のシリカ粉体。
- 前記シリカ粉体を水性媒体中に分散して得られることを特徴とするシリカ分散物。
- シリカを19〜35%含有することを特徴とする請求項6に記載のシリカ分散物。
- 請求項6又7に記載のシリカ分散物中のシリカをサンドミルを用いて分散させて製造することを特徴とするシリカ分散物の製造方法。
- 請求項6又7に記載のシリカ分散物を支持体上に塗布して得られることを特徴とするインクジェット記録用紙。
- 請求項8に記載のシリカ分散物の製造方法で得られたシリカ分散物を支持体上に塗布することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
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Cited By (3)
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JP2012240900A (ja) * | 2011-05-24 | 2012-12-10 | Denki Kagaku Kogyo Kk | 球状シリカ粉末、及びそれ用いたスラリー、樹脂組成物 |
JP2016506441A (ja) * | 2012-12-20 | 2016-03-03 | ナノグラム・コーポレイションNanoGram Corporation | 超低濃度金属汚染物質を有するシリコン/ゲルマニウム系ナノ粒子ペースト |
WO2023182511A1 (ja) * | 2022-03-25 | 2023-09-28 | 日鉄ケミカル&マテリアル株式会社 | 球状結晶質シリカ粒子およびその製造方法、並びに、それを含む樹脂複合組成物および樹脂複合体 |
-
2003
- 2003-03-25 JP JP2003081955A patent/JP2004002159A/ja active Pending
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