JP2004324843A - 針状ころ軸受用の保持器及び針状ころ軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】外輪案内でありながら、十分な潤滑性を確保できる針状ころ軸受用の保持器及び針状ころ軸受を提供する。
【解決手段】柱部12bの案内面12dに孔12eを形成したので、孔12eを介して潤滑油が内径側から外径側へと供給され(F3)、案内面12dと遊星歯車12cの内周面との潤滑を実現するので、これらの磨耗を効果的に抑制できる。又、孔12eを設けることで、保持器12が軽量化されるため、より高回転化に対応できるなどの副次的効果もある。
【選択図】 図7
【解決手段】柱部12bの案内面12dに孔12eを形成したので、孔12eを介して潤滑油が内径側から外径側へと供給され(F3)、案内面12dと遊星歯車12cの内周面との潤滑を実現するので、これらの磨耗を効果的に抑制できる。又、孔12eを設けることで、保持器12が軽量化されるため、より高回転化に対応できるなどの副次的効果もある。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、針状ころ軸受用の保持器及び針状ころに関し、特に潤滑性を向上させることができる針状ころ軸受用の保持器及び針状ころ軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両等に搭載されている自動変速機において、一般的には遊星歯車機構が用いられている。ここで、針状ころ軸受は、細径のころを用いていることから、内輪外径と外輪内径との差が小さいスペースにも収めることができるので、遊星歯車機構の遊星歯車を回転自在に支持するために用いると、それを搭載した自動変速機のコンパクト化に寄与するので好ましいといえる(特許文献1参照)。
【特許文献1】
特開2002−349647号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年は、燃費の向上などを目的として、自動変速機においても多段化される傾向がある。しかるに、現在は4速が主流である自動変速機を、例えば5速或いは6速に多段化しようとすると、動力を伝達する遊星歯車機構の遊星歯車の自転速度及び公転速度が増大するということがある。このような仕様の変化に伴い、保持器を用いないいわゆる総ころと呼ばれる従来の針状ころ軸受に対し、より低摩擦且つ潤滑性に優れた保持器付きの針状ころ軸受が開発されている。
【0004】
ここで、保持器付き針状ころ軸受においては、保持器を、外輪内周に接触させる外輪案内にするか、内輪外周に接触させる内輪案内にするか、外輪にも内輪にも接触させないころ案内にするかという問題がある。しかるに遊星歯車は、自転及び公転運動をするので、これを支持する針状ころ軸受の保持器には公転により遠心力が生じる。従って、ころ案内であると、保持器に作用した遠心力をころで受けることになり、ころの自転及び公転を阻害し、接触面ですべりが生じるため引きずりトルクが大となる。また、内輪案内であると、保持器に作用した遠心力を内輪(ここではピニオンシャフト)で支持するため、保持器の公転運動(ここでいう公転運動はプラネタリシャフト回りの保持器の自転)を阻害する。従って、本用途においては、外輪案内の保持器が好適であるといえる。
【0005】
ところが、外輪案内の場合、保持器外周と外輪(ここでは遊星歯車)内周とが接触しつつ案内を達成するので、それらの接触部には、保持器に作用した遠心力が作用し、相対すべり運動が生じるため、それに起因した摩擦、摩耗が発生する。この現象は、自転及び公転を伴う遊星歯車に特有のものである。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、外輪案内でありながら、十分な潤滑性を確保できる針状ころ軸受用の保持器及び針状ころ軸受を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の針状ころ軸受用の保持器は、
一対の環状部と、前記環状部を連結する複数の柱部とよりなり、外輪案内で用いられる針状ころ軸受用の保持器において、
前記柱部において、内径側から外径側の案内面へ貫通する孔が形成されていることを特徴とする。
【0008】
【作用】
本発明の針状ころ軸受用の保持器は、一対の環状部と、前記環状部を連結する複数の柱部とよりなり、外輪案内で用いられる針状ころ軸受用の保持器において、前記柱部において、内径側から外径側の案内面へ貫通する孔が形成されているので、前記保持器の内径側に供給された潤滑油を、前記孔を介して前記案内面に供給できるので、前記保持器に作用した遠心力が作用して外輪に対し相対すべり運動が生じた場合でも、摩耗の発生を顕著に抑制できる。又、前記孔を設けることで、保持器が軽量化されるため、より高回転化に対応できるなどの副次的効果もある。尚、外輪案内とは、前記保持器を外輪に当接させることで保持器の位置決めを行わせることをいう。
【0009】
更に、上記針状ころ軸受用の保持器を用いた針状ころ軸受は、遊星歯車機構において遊星歯車を支持するために用いられると、より磨耗低減効果を発揮できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本実施の形態にかかる針状ころ軸受を含む車両の自動変速機1の断面図である。図1において、エンジンのクランクシャフト2から出力されるトルクは、トルクコンバータ3を介して伝達され、更に複数列組み合わせれた遊星歯車機構4,5,6等を介して複数段に減速され、その後デファレンシャルギヤ7及びドライブシャフト8を介して、不図示の車輪に出力されるようになっている。
【0011】
図2は、遊星歯車機構4(5,6も原則的に同じ)の分解図である。図2において、遊星歯車機構4は、内歯を有するリングギヤ4aと、外歯を有する太陽ギヤ4bと、リングギヤ4a及び太陽ギヤ4bに噛合する3つの遊星歯車4cと、3つのピニオンシャフト4eにより遊星歯車4cを回転自在に支持すると共に、自らも回転可能なキャリヤ4dとを有する。
【0012】
遊星歯車機構4の作動原理を図3に示す。まず、1速の場合、図3(a)に示すように、太陽歯車4bをドライブ側とし、遊星歯車4c(キャリヤ)をドリブン側とし、リングギヤ4aを固定することで、大きな減速比が得られる。次に、2速の場合、図3(b)に示すように、太陽歯車4bを固定し、遊星歯車4c(キャリヤ)をドリブン側とし、リングギヤ4aをドライブ側とすることで、中程度の減速比が得られる。更に、3速の場合、図3(c)に示すように、太陽歯車4bを固定し、遊星歯車4c(キャリヤ)をドライブ側とし、リングギヤ4aをドリブン側とすることで、小さな減速比が得られる。尚、後退の場合、図3(d)に示すように、太陽歯車4bをドリブン側とし、遊星歯車4c(キャリヤ)を固定し、リングギヤ4aをドライブ側とすることで、入力に対して出力を逆転させることができる。なお、以上は遊星歯車機構4の動作の一例を示すものであり、必ずしもかかる動作に限られることはない。
【0013】
図4は、本実施の形態の針状ころ軸受を遊星歯車機構に組み込んだ状態で示す図である。図4に示すように、針状ころ軸受10は、ピニオンシャフト(内輪)4eと遊星歯車(外輪)4cとの間に配置され、遊星歯車4cを回転自在に支持している。針状ころ軸受10は、複数のころ11と、それらを保持する保持器12とからなっている。ピニオンシャフト4e内には、図4で右方から軸線に沿って延在し、かつ中央で外周面に抜ける油路4fが形成されている。保持器12は外輪案内で用いられる。
【0014】
図5は、針状ころ軸受の保持器の斜視図であり、図6は、針状ころ軸受の保持器の断面図である。図に示すように、保持器12は、一対の環状部12aを複数の柱部12bで連結した構成を有している。隣接する柱部12bの間が、ころ11(図4)を保持するポケットとなる。各柱部12bは、軸線方向中央において縮径した(即ち保持器12の軸線に近接した)縮径部12cを有しており、縮径部12cの軸線方向両側で拡径している外周面を、案内面12dとしている。このような形状を有する保持器12をM型保持器と呼ぶ。
【0015】
本実施の形態では、一つおきの(全てでも良く複数おきでもよいが、等間隔が望ましい)柱部12bの案内面12dには、環状部12aに近い位置に、内径側から外径側へ(加工方向を意図するものではなく、単に貫通しているの意味)と貫通した孔12eが形成されている。
【0016】
本実施の形態の動作を、針状ころ軸受内の潤滑油の流れを示す図7を参照して説明する。図3に示すように、遊星歯車4cはピニオンシャフト4eの周囲を自転し、且つ太陽歯車4bの周囲を公転する。従って、針状ころ軸受10は、それに伴い複雑な方向の力を受ける。ここで、ピニオンシャフト4eの油路4fを介して外部より供給された潤滑油の流れの一部は、図7に示すように、針状ころ軸受10の軸線方向両側に向かい、保持器12の環状部12aの内周とピニオンシャフト4eの外周との間を通過して外部へと流出する(F1)。更に、潤滑油の別な一部は、柱部12bところ11のスキマを抜けて、ころ11の外周面を潤滑する(F2)。
【0017】
ここで、従来技術のように保持器12に孔12eが形成されていないとすると、図7に示すように、保持器12の柱部12bの案内面12dと、これに当接する遊星歯車4cの内周面との間には潤滑油が供給されにくいため、それらの磨耗の増大が懸念される。これに対し、本実施の形態によれば、柱部12bの案内面12dに孔12eを形成したので、孔12eを介して潤滑油が内径側から外径側へと供給され(F3)、案内面12dと遊星歯車12cの内周面との潤滑を実現するので、これらの磨耗を効果的に抑制できる。又、孔12eを設けることで、保持器12が軽量化されるため、より高回転化に対応できるなどの副次的効果もある。尚、孔12eの数、位置、形状、断面積等は、針状ころ軸受10の仕様により適宜決定すればよいが、例えば孔12eの総面積を、保持器12の環状部12aの内周とピニオンシャフト4eの外周との間の総面積に対して、より大きくするなどすれば、より高い潤滑効果が期待できる。
【0018】
図8は、別な実施の形態の保持器を含む針状ころ軸受10’の断面図である。本実施の形態の保持器12’は、図4〜6に示す保持器に対して形状が異なる。より具体的には、保持器12’は、環状部12a’の厚みと、柱部12b’の厚みが同じであり、いわゆる波形保持器と呼ばれるものである。本実施の形態においても、保持器12bの案内面12d’に、内径側から外径側へ貫通する孔12e’が形成されているので、上述の実施の形態と同様の作用効果が発揮される。
【0019】
以上、本発明を実施例を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【0020】
【発明の効果】
本発明の針状ころ軸受用の保持器は、一対の環状部と、前記環状部を連結する複数の柱部とよりなり、外輪案内で用いられる針状ころ軸受用の保持器において、前記柱部において、内径側から外径側の案内面へ貫通する孔が形成されているので、前記保持器の内径側に供給された潤滑油を、前記孔を介して前記案内面に供給できるので、前記保持器に作用した遠心力が作用して外輪に対し相対すべり運動が生じた場合でも、摩耗の発生を顕著に抑制できる。又、前記孔を設けることで、保持器が軽量化されるため、より高回転化に対応できるなどの副次的効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかる針状ころ軸受を含む車両の自動変速機の断面図である。
【図2】遊星歯車機構4の分解図である。
【図3】遊星歯車機構の作動原理を示す図である。
【図4】本実施の形態の針状ころ軸受を遊星歯車機構に組み込んだ状態で示す図である。
【図5】針状ころ軸受の保持器の斜視図である。
【図6】針状ころ軸受の保持器の断面図である。
【図7】針状ころ軸受内の潤滑油の流れを示す図である。
【図8】別な実施の形態の保持器を含む針状ころ軸受10’の断面図である。
【符号の説明】
1 自動変速機
4〜6 遊星歯車機構
10、10’ 針状ころ軸受
11 ころ
12,12’ 保持器
【発明の属する技術分野】
本発明は、針状ころ軸受用の保持器及び針状ころに関し、特に潤滑性を向上させることができる針状ころ軸受用の保持器及び針状ころ軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両等に搭載されている自動変速機において、一般的には遊星歯車機構が用いられている。ここで、針状ころ軸受は、細径のころを用いていることから、内輪外径と外輪内径との差が小さいスペースにも収めることができるので、遊星歯車機構の遊星歯車を回転自在に支持するために用いると、それを搭載した自動変速機のコンパクト化に寄与するので好ましいといえる(特許文献1参照)。
【特許文献1】
特開2002−349647号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年は、燃費の向上などを目的として、自動変速機においても多段化される傾向がある。しかるに、現在は4速が主流である自動変速機を、例えば5速或いは6速に多段化しようとすると、動力を伝達する遊星歯車機構の遊星歯車の自転速度及び公転速度が増大するということがある。このような仕様の変化に伴い、保持器を用いないいわゆる総ころと呼ばれる従来の針状ころ軸受に対し、より低摩擦且つ潤滑性に優れた保持器付きの針状ころ軸受が開発されている。
【0004】
ここで、保持器付き針状ころ軸受においては、保持器を、外輪内周に接触させる外輪案内にするか、内輪外周に接触させる内輪案内にするか、外輪にも内輪にも接触させないころ案内にするかという問題がある。しかるに遊星歯車は、自転及び公転運動をするので、これを支持する針状ころ軸受の保持器には公転により遠心力が生じる。従って、ころ案内であると、保持器に作用した遠心力をころで受けることになり、ころの自転及び公転を阻害し、接触面ですべりが生じるため引きずりトルクが大となる。また、内輪案内であると、保持器に作用した遠心力を内輪(ここではピニオンシャフト)で支持するため、保持器の公転運動(ここでいう公転運動はプラネタリシャフト回りの保持器の自転)を阻害する。従って、本用途においては、外輪案内の保持器が好適であるといえる。
【0005】
ところが、外輪案内の場合、保持器外周と外輪(ここでは遊星歯車)内周とが接触しつつ案内を達成するので、それらの接触部には、保持器に作用した遠心力が作用し、相対すべり運動が生じるため、それに起因した摩擦、摩耗が発生する。この現象は、自転及び公転を伴う遊星歯車に特有のものである。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、外輪案内でありながら、十分な潤滑性を確保できる針状ころ軸受用の保持器及び針状ころ軸受を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の針状ころ軸受用の保持器は、
一対の環状部と、前記環状部を連結する複数の柱部とよりなり、外輪案内で用いられる針状ころ軸受用の保持器において、
前記柱部において、内径側から外径側の案内面へ貫通する孔が形成されていることを特徴とする。
【0008】
【作用】
本発明の針状ころ軸受用の保持器は、一対の環状部と、前記環状部を連結する複数の柱部とよりなり、外輪案内で用いられる針状ころ軸受用の保持器において、前記柱部において、内径側から外径側の案内面へ貫通する孔が形成されているので、前記保持器の内径側に供給された潤滑油を、前記孔を介して前記案内面に供給できるので、前記保持器に作用した遠心力が作用して外輪に対し相対すべり運動が生じた場合でも、摩耗の発生を顕著に抑制できる。又、前記孔を設けることで、保持器が軽量化されるため、より高回転化に対応できるなどの副次的効果もある。尚、外輪案内とは、前記保持器を外輪に当接させることで保持器の位置決めを行わせることをいう。
【0009】
更に、上記針状ころ軸受用の保持器を用いた針状ころ軸受は、遊星歯車機構において遊星歯車を支持するために用いられると、より磨耗低減効果を発揮できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本実施の形態にかかる針状ころ軸受を含む車両の自動変速機1の断面図である。図1において、エンジンのクランクシャフト2から出力されるトルクは、トルクコンバータ3を介して伝達され、更に複数列組み合わせれた遊星歯車機構4,5,6等を介して複数段に減速され、その後デファレンシャルギヤ7及びドライブシャフト8を介して、不図示の車輪に出力されるようになっている。
【0011】
図2は、遊星歯車機構4(5,6も原則的に同じ)の分解図である。図2において、遊星歯車機構4は、内歯を有するリングギヤ4aと、外歯を有する太陽ギヤ4bと、リングギヤ4a及び太陽ギヤ4bに噛合する3つの遊星歯車4cと、3つのピニオンシャフト4eにより遊星歯車4cを回転自在に支持すると共に、自らも回転可能なキャリヤ4dとを有する。
【0012】
遊星歯車機構4の作動原理を図3に示す。まず、1速の場合、図3(a)に示すように、太陽歯車4bをドライブ側とし、遊星歯車4c(キャリヤ)をドリブン側とし、リングギヤ4aを固定することで、大きな減速比が得られる。次に、2速の場合、図3(b)に示すように、太陽歯車4bを固定し、遊星歯車4c(キャリヤ)をドリブン側とし、リングギヤ4aをドライブ側とすることで、中程度の減速比が得られる。更に、3速の場合、図3(c)に示すように、太陽歯車4bを固定し、遊星歯車4c(キャリヤ)をドライブ側とし、リングギヤ4aをドリブン側とすることで、小さな減速比が得られる。尚、後退の場合、図3(d)に示すように、太陽歯車4bをドリブン側とし、遊星歯車4c(キャリヤ)を固定し、リングギヤ4aをドライブ側とすることで、入力に対して出力を逆転させることができる。なお、以上は遊星歯車機構4の動作の一例を示すものであり、必ずしもかかる動作に限られることはない。
【0013】
図4は、本実施の形態の針状ころ軸受を遊星歯車機構に組み込んだ状態で示す図である。図4に示すように、針状ころ軸受10は、ピニオンシャフト(内輪)4eと遊星歯車(外輪)4cとの間に配置され、遊星歯車4cを回転自在に支持している。針状ころ軸受10は、複数のころ11と、それらを保持する保持器12とからなっている。ピニオンシャフト4e内には、図4で右方から軸線に沿って延在し、かつ中央で外周面に抜ける油路4fが形成されている。保持器12は外輪案内で用いられる。
【0014】
図5は、針状ころ軸受の保持器の斜視図であり、図6は、針状ころ軸受の保持器の断面図である。図に示すように、保持器12は、一対の環状部12aを複数の柱部12bで連結した構成を有している。隣接する柱部12bの間が、ころ11(図4)を保持するポケットとなる。各柱部12bは、軸線方向中央において縮径した(即ち保持器12の軸線に近接した)縮径部12cを有しており、縮径部12cの軸線方向両側で拡径している外周面を、案内面12dとしている。このような形状を有する保持器12をM型保持器と呼ぶ。
【0015】
本実施の形態では、一つおきの(全てでも良く複数おきでもよいが、等間隔が望ましい)柱部12bの案内面12dには、環状部12aに近い位置に、内径側から外径側へ(加工方向を意図するものではなく、単に貫通しているの意味)と貫通した孔12eが形成されている。
【0016】
本実施の形態の動作を、針状ころ軸受内の潤滑油の流れを示す図7を参照して説明する。図3に示すように、遊星歯車4cはピニオンシャフト4eの周囲を自転し、且つ太陽歯車4bの周囲を公転する。従って、針状ころ軸受10は、それに伴い複雑な方向の力を受ける。ここで、ピニオンシャフト4eの油路4fを介して外部より供給された潤滑油の流れの一部は、図7に示すように、針状ころ軸受10の軸線方向両側に向かい、保持器12の環状部12aの内周とピニオンシャフト4eの外周との間を通過して外部へと流出する(F1)。更に、潤滑油の別な一部は、柱部12bところ11のスキマを抜けて、ころ11の外周面を潤滑する(F2)。
【0017】
ここで、従来技術のように保持器12に孔12eが形成されていないとすると、図7に示すように、保持器12の柱部12bの案内面12dと、これに当接する遊星歯車4cの内周面との間には潤滑油が供給されにくいため、それらの磨耗の増大が懸念される。これに対し、本実施の形態によれば、柱部12bの案内面12dに孔12eを形成したので、孔12eを介して潤滑油が内径側から外径側へと供給され(F3)、案内面12dと遊星歯車12cの内周面との潤滑を実現するので、これらの磨耗を効果的に抑制できる。又、孔12eを設けることで、保持器12が軽量化されるため、より高回転化に対応できるなどの副次的効果もある。尚、孔12eの数、位置、形状、断面積等は、針状ころ軸受10の仕様により適宜決定すればよいが、例えば孔12eの総面積を、保持器12の環状部12aの内周とピニオンシャフト4eの外周との間の総面積に対して、より大きくするなどすれば、より高い潤滑効果が期待できる。
【0018】
図8は、別な実施の形態の保持器を含む針状ころ軸受10’の断面図である。本実施の形態の保持器12’は、図4〜6に示す保持器に対して形状が異なる。より具体的には、保持器12’は、環状部12a’の厚みと、柱部12b’の厚みが同じであり、いわゆる波形保持器と呼ばれるものである。本実施の形態においても、保持器12bの案内面12d’に、内径側から外径側へ貫通する孔12e’が形成されているので、上述の実施の形態と同様の作用効果が発揮される。
【0019】
以上、本発明を実施例を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【0020】
【発明の効果】
本発明の針状ころ軸受用の保持器は、一対の環状部と、前記環状部を連結する複数の柱部とよりなり、外輪案内で用いられる針状ころ軸受用の保持器において、前記柱部において、内径側から外径側の案内面へ貫通する孔が形成されているので、前記保持器の内径側に供給された潤滑油を、前記孔を介して前記案内面に供給できるので、前記保持器に作用した遠心力が作用して外輪に対し相対すべり運動が生じた場合でも、摩耗の発生を顕著に抑制できる。又、前記孔を設けることで、保持器が軽量化されるため、より高回転化に対応できるなどの副次的効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかる針状ころ軸受を含む車両の自動変速機の断面図である。
【図2】遊星歯車機構4の分解図である。
【図3】遊星歯車機構の作動原理を示す図である。
【図4】本実施の形態の針状ころ軸受を遊星歯車機構に組み込んだ状態で示す図である。
【図5】針状ころ軸受の保持器の斜視図である。
【図6】針状ころ軸受の保持器の断面図である。
【図7】針状ころ軸受内の潤滑油の流れを示す図である。
【図8】別な実施の形態の保持器を含む針状ころ軸受10’の断面図である。
【符号の説明】
1 自動変速機
4〜6 遊星歯車機構
10、10’ 針状ころ軸受
11 ころ
12,12’ 保持器
Claims (3)
- 一対の環状部と、前記環状部を連結する複数の柱部とよりなり、外輪案内で用いられる針状ころ軸受用の保持器において、
前記柱部において、内径側から外径側の案内面へ貫通する孔が形成されていることを特徴とする針状ころ軸受用の保持器。 - 請求項1に記載の針状ころ軸受用の保持器を用いたことを特徴とする針状ころ軸受。
- 遊星歯車機構において遊星歯車を支持するために用いられることを特徴とする請求項2に記載の針状ころ軸受。
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