JP2004322712A - 車両用ブレーキ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】制御ユニットCは、挙動安定制御終了後に所定時間が経過するまでの非ブレーキ操作状態では、スリップ率にかかわらず減圧モードに入ることを回避する。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用ブレーキ装置に関し、特に、車輪ブレーキの作動に伴って車輪のスリップ率が高くなるのに応じた減圧モードを含む減圧、保持および増圧の各モードを切り換えて車輪のロック傾向を解消するアンチロックブレーキ制御と、非ブレーキ操作状態で前記車輪ブレーキにブレーキ力を発揮させることによる挙動安定制御とを行うことを可能とした車両用ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、非ブレーキ操作状態で挙動安定制御等の自動ブレーキ制御を行うようにした車両用ブレーキ装置が、たとえば下記特許文献1等で既に知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−142840号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、挙動安定制御を実行した直後には、挙動安定制御におけるブレーキ液圧増圧制御によって、車輪速度が推定車体速度から落ち込んでスリップ率が高くなることがあり、車輪速度を復帰させようとしてアンチロックブレーキ制御を開始してしまうことがあり、不所望に減圧モードに入ってしまうことがある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、挙動安定制御終了直後の非ブレーキ制御時に無駄なアンチロックブレーキ制御を開始してしまうことがないようにした車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、ブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧を液圧路に出力し得るマスタシリンダと、非ブレーキ操作時に前記液圧路に一定の液圧を付与し得る液圧発生手段と、各車輪毎の車輪ブレーキのブレーキ液圧を制御するようにして前記液圧路および前記車輪ブレーキ間に設けられる制御弁手段と、車輪ブレーキの作動に伴って車輪のスリップ率が高くなるのに応じた減圧モードを含む減圧、保持および増圧の各モードを切り換えて車輪のロック傾向を解消するアンチロックブレーキ制御ならびに非ブレーキ操作状態で前記車輪ブレーキにブレーキ力を発揮させることによる挙動安定制御を行うことを可能として前記液圧発生手段および前記制御弁手段の作動を制御する制御ユニットとを備える車両用ブレーキ装置において、前記制御ユニットは、前記挙動安定制御終了後に所定時間が経過するまでの非ブレーキ操作状態では、前記スリップ率にかかわらず前記減圧モードに入ることを回避することを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、挙動安定制御が終了してから所定時間が経過するまでの非ブレーキ操作時には、減圧モードに入ることはないので、挙動安定制御におけるブレーキ液圧増圧制御によって車輪速度が推定車体速度から落ち込んで実際のスリップ率が高くなっていたとしても、挙動安定制御の終了直後にアンチロックブレーキ制御の減圧モードが不所望に始まってしまうことを回避することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0009】
図1〜図5は本発明の一実施例を示すものであり、図1は車両用ブレーキ装置の液圧回路図、図2はブレーキ液圧制御装置の制御系を示す図、図3はアンチロックブレーキ制御の減圧モードに移行するか否かを判断する手順を示すフローチャート、図4は減圧モード移行時のタイミングチャート、図5はスリップ率の演算処理手順を示すフローチャートである。
【0010】
先ず図1において、タンデム型のマスタシリンダMは、車両運転者がブレーキペダルPに加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生する第1および第2出力ポート1A,1Bを備えており、左前輪用車輪ブレーキ2A、右後輪用車輪ブレーキ2B、右前輪用車輪ブレーキ2Cおよび左後輪用車輪ブレーキ2Dと、前記第1および第2出力ポート1A,1Bに個別に接続された第1および第2出力液圧路3A,3Bとの間に、ブレーキ液圧制御装置4が設けられる。
【0011】
ブレーキ液圧制御装置4は、第1および第2出力液圧路3A,3Bとの連通、遮断を切換可能な第1および第2液圧路20A,20Bと、非ブレーキ操作時に第1および第2液圧路20A,20Bに一定の液圧を付与し得る液圧発生手段GA,GBと、各車輪ブレーキ2A〜2Dのブレーキ液圧を個別に制御するようにして前記第1および第2液圧路20A,20Bおよび前記各車輪ブレーキ2A〜2D間に設けられる制御弁手段VA,VB,VC,VDと、第1および第2リザーバ8A,8Bとを備える。
【0012】
制御弁手段VA,VBは、第1出力液圧路3Aに対応した第1液圧路20Aならびに左前輪用車輪ブレーキ2Aおよび右後輪用車輪ブレーキ2B間にそれぞれ設けられる常開型電磁弁6A,6Bと、第1液圧路20A側へのブレーキ液の流通を許容するようにして前記常開型電磁弁6A,6Bに並列に接続されるチェック弁7A,7Bと、第1出力液圧路3Aに対応した第1リザーバ8Aならびに前記左前輪用車輪ブレーキ2Aおよび右後輪用車輪ブレーキ2B間にそれぞれ設けられる常閉型電磁弁9A,9Bとを備える。また制御弁手段VC,VDは、第2出力液圧路3Bに対応した第2液圧路20Bならびに右前輪用車輪ブレーキ2Cおよび左後輪用車輪ブレーキ2D間にそれぞれ設けられる常開型電磁弁6C,6Dと、第2液圧路20B側へのブレーキ液の流通を許容するようにして前記常開型電磁弁6C,6Dに並列に接続されるチェック弁7C,7Dと、第2出力液圧路3Bに対応した第2リザーバ8Bならびに前記右前輪用車輪ブレーキ2Cおよび左後輪用車輪ブレーキ2D間にそれぞれ設けられる常閉型電磁弁9C,9Dとを備える。
【0013】
前記液圧発生手段GA,GBは、第1および第2リザーバ8A,8Bに吸入部が接続されるとともに吐出部が第1および第2液圧路20A,20Bに接続される第1および第2ポンプ10A,10Bと、第1および第2出力液圧路3A,3Bならびに第1および第2ポンプ10A,10Bの吸入部間にそれぞれ介設される常閉型電磁弁12A,12Bと、第1および第2ポンプ10A,10Bの吐出部ならびに前記第1および第2液圧路20A,20B間にそれぞれ介設される第1および第2ダンパ13A,13Bと、第1および第2ポンプ10A,10Bならびに第1および第2ダンパ13A,13B間にそれぞれ設けられる第1および第2オリフィス14A,14Bと、各ポンプ10A,10B側へのブレーキ液の流通を許容するようにして第1および第2ポンプ10A,10Bならびに第1および第2リザーバ8A,8B間に介設されるチェック弁15A,15Bと、第1および第2出力液圧路3A,3Bならびに第1および第2液圧路20A,20B間にそれぞれ設けられるレギュレータ21A,21Bとを備え、両ポンプ10A,10Bは共通1個の電動モータ11で駆動される。
【0014】
常閉型電磁弁12A,12Bは、第1および第2ポンプ10A,10Bならびにチェック弁15A,15B間と、第1および第2出力液圧路3A,3Bとの間にそれぞれ設けられる。
【0015】
レギュレータ21A,21Bは、第1および第2出力液圧路3A,3Bならびに第1および第2液圧路20A,20B間に、常開型電磁弁5A,5Bと、一方向弁18A,18Bと、リリーフ弁19A,19Bとが並列に接続されて成るものである。
【0016】
一方向弁18A,18Bは、第1および第2出力液圧路3A,3B側からだけのブレーキ液の流通を許容するようにして常開型電磁弁5A,5Bに並列に接続される。またリリーフ弁19A,19Bは、第1および第2液圧路20A,20Bの液圧が所定値以上になるのに応じて開弁するようにして常開型電磁弁5A,5Bに並列に接続される。
【0017】
このようなレギュレータ21,21Bは、マスタシリンダMに通じる第1および第2出力液圧路3A,3Bおよび液圧路20A,20B間を常時は連通するものの、常閉型電磁弁12A,12Bの開弁時には第1および第2出力液圧路3A,3Bと第1および第2液圧路20A,20Bとの間を遮断しつつ第1および第2液圧路20A,20Bの液圧が所定値以上になるのに応じて第1および第2液圧路20A,20Bの液圧をマスタシリンダM側に逃がすように作動し、それにより第1および第2液圧路20A,20Bの液圧が一定となる。
【0018】
第2出力液圧路3Bには圧力センサ16が取付けられており、この圧力センサ16は、マスタシリンダMから液圧が出力されているか否か、すなわちブレーキペダルPが踏まれているか否かを検出するものであり、車両の挙動安定制御およびトラクション制御や、マスタシリンダMの出力液圧に応じた電動モータ11の回転数制御等に用いられる。
【0019】
ところで、上記ブレーキ液圧制御装置4において、各車輪がロックを生じる可能性のない通常ブレーキ時には、常開型電磁弁5A,5Bを消磁、開弁するとともに常閉型電磁弁12A,12Bを消磁、閉弁した状態で、各常開型電磁弁6A〜6Dが消磁、開弁状態とされるとともに各常閉型電磁弁9A〜9Dが消磁、閉弁状態とされる。これによりマスタシリンダMおよび各車輪ブレーキ2A〜2D間が連通されるとともに各車輪ブレーキ2A〜2Dおよびリザーバ8A,8B間が遮断される。したがってマスタシリンダMの第1出力ポート1Aから出力されるブレーキ液圧は常開型電磁弁5Aおよび常開型電磁弁6A,6Bを介して左前輪用車輪ブレーキ2Aおよび右後輪用車輪ブレーキ2Bに作用し、マスタシリンダMの第2出力ポート1Bから出力されるブレーキ液圧は常開型電磁弁5Bおよび常開型電磁弁6C,6Dを介して右前輪用車輪ブレーキ2Cおよび左後輪用車輪ブレーキ2Dに作用する。
【0020】
上記ブレーキ中に車輪がロック状態に入りそうになったときには、常開型電磁弁6A〜6Dのうちロック状態に入りそうになった車輪に対応する常開型電磁弁が励磁、閉弁されるとともに、常閉型電磁弁9A〜9Dのうち上記車輪に対応する常閉型電磁弁が励磁、開弁される。これによりロック状態に入りそうになった車輪に対応する部分でマスタシリンダMおよび車輪ブレーキ2A〜2D間が遮断されるとともに車輪ブレーキ2A〜2Dおよびリザーバ8A,8B間が連通される。したがってロック状態に入りそうになった車輪のブレーキ液圧の一部が第1リザーバ8Aまたは第2リザーバ8Bに吸収され、ロック状態に入りそうになった車輪のブレーキ液圧が減圧されることになる。
【0021】
またブレーキ液圧を一定に保持する際には、常開型電磁弁6A〜6Dが励磁、閉弁されるとともに常閉型電磁弁9A〜9Dが消磁、閉弁され、これにより車輪ブレーキ2A〜2DがマスタシリンダMおよびリザーバ8A,8Bから遮断される。
【0022】
さらにブレーキ液圧を増圧する際には、常開型電磁弁6A〜6Dが消磁、開弁状態とされるとともに、常閉型電磁弁9A〜9Dが消磁、閉弁され、これによりマスタシリンダMおよび車輪ブレーキ2A〜2D間が連通されるとともに車輪ブレーキ2A〜2Dおよびリザーバ8A,8B間が遮断される。
【0023】
このように常開型電磁弁5A,5Bを消磁、開弁するとともに常閉型電磁弁12A,12Bを消磁、閉弁した状態で、制御弁手段VA〜VDにおける常開型電磁弁6A〜6Dおよび常閉型電磁弁9A〜9Dの消磁・励磁を制御することにより、車輪をロックさせることなく、効率よく制動することができる。
【0024】
ところで、上述のようなアンチロックブレーキ制御中に、電動モータ11は回転作動し、この電動モータ11の作動に伴って第1および第2ポンプ10A,10Bが駆動されるので、第1および第2リザーバ8A,8Bに吸収されたブレーキ液は、第1および第2ポンプ10A,10Bに吸入され、次いで第1および第2ダンパ13A,13Bを経て第1および第2出力液圧路3A,3Bに還流される。このようなブレーキ液の還流によって、第1および第2リザーバ8A,8Bのブレーキ液の吸収によるブレーキペダルPの踏み込み量の増加を防ぐことができる。しかも第1および第2ポンプ10A,10Bの吐出圧の脈動は第1および第2ダンパ13A,13Bならびに第1および第2オリフィス14A,14Bの働きにより抑制され、上記還流によってブレーキペダルPの操作フィーリングが阻害されることはない。
【0025】
またブレーキ液圧制御装置4は、上述のアンチロックブレーキ制御に加えて、非ブレーキ操作状態でのトラクション制御や挙動安定制御等の自動ブレーキ制御を行うことができる。
【0026】
而して、たとえば挙動安定制御時には、レギュレータ21A,21Bの常開型電磁弁5A,5Bが励磁、閉弁されるとともに常閉型電磁弁12A,12Bが励磁、開弁され、さらに電動モータ11の作動により第1および第2ポンプ10A,10Bが駆動され、各常開型電磁弁6A〜6Dのうち制動したい車輪に対応する常開型電磁弁以外の常開型電磁弁が励磁、閉弁される。
【0027】
これにより両ポンプ10A,10Bは、マスタシリンダMのブレーキ液を第1および第2出力ポート1A,1Bから第1および第2出力液圧路3A,3B、常閉型電磁弁12A,12Bを介して吸入し、各車輪ブレーキ2A〜2Dのうち選択された車輪ブレーキに、常開型電磁弁6A〜6Dのうち開弁している常開型電磁弁を介してブレーキ液を供給し、ブレーキ液がマスタシリンダM側に逆流することは、常開型電磁弁5A,5Bが閉弁していることによって阻止される。
【0028】
このような挙動安定制御やトラクション制御時に、第1および第2ポンプ10A,10Bからの吐出液圧が作用する第1および第2液圧路20A,20Bの液圧が所定値以上になると、レギュレータ21A,21Bのリリーフ弁19A,19Bにより、過剰液圧分がマスタシリンダM側に逃がされることになり、ブレーキ液圧が作用している車輪ブレーキに過剰の液圧が作用することが回避される。
【0029】
しかも第1および第2液圧路20A,20Bと、第1および第2オリフィス14A,14Bとの間にダンパ13A,13Bが介設されているので、レギュレータ21A,21Bの作動によって液圧路20A,20Bに生じる脈動をダンパ13A,13Bで吸収することができ、レギュレータ21A,21Bの作動による脈動に起因した作動音の発生を抑えることができる。
【0030】
図2において、制御弁手段VA〜VDにおける常開型電磁弁6A〜6Dおよび常閉型電磁弁9A〜9Dと、液圧発生手段GA,GBにおける常閉型電磁弁12A,12Bおよびレギュレータ21A,21Bの常開型電磁弁5A,5Bと、電動モータ11とは、制御ユニットCで制御される。
【0031】
ところで、制御ユニットCは、車輪ブレーキ2A〜2Dの作動に伴って車輪のスリップ率が高くなったときには、アンチロックブレーキ制御の減圧モードに移行するようにして前記制御弁手段VA〜VDの作動を制御するのであるが、その減圧モードに移行するか否かは、図3で示す手順に従って判断する。
【0032】
図3のステップS1では、車輪減速度が0Gよりも大きいか否か、すなわち車輪速度が加速状態にあるか否かを判断し、車輪減速度が0G以下である減速中であると判断したときには、ステップS2において推定した車体速度が設定速度未満であるか否かを判定し、車体速度が設定速度以上であると判断したときには、ステップS3においてスリップ率が第1設定値以下であるか否かを判定する。而してスリップ率が第1設定値を超えていると判断したときには、ステップS4に進んで車輪減速度が設定減速度以上であるか否かを判断し、車輪減速度が設定減速度未満であったときにステップS5で減圧モードに移行する。
【0033】
また車輪減速度が0G以下かつ車体速度が設定速度以上であるもののスリップ率が第1設定値以下であるとステップS3で判断したとき、ならびに車輪減速度が0G以下かつ車体速度が設定速度以上であってスリップ率が第1設定値を超えているものの車輪減速度が設定減速度以上であるとステップS4で判断したときには、ステップS6に進む。このステップS6では、スリップ率が前記第1設定値よりも大きな第2設定値以下であるか否かを判断し、スリップ率が第2設定値を超えると判断したときにはステップS6からステップS5に進んで減圧モードに移行することになる。
【0034】
ここで、車輪速度および推定車体速度、車輪減速度、スリップ率が図4(b)、(c)、(d)で示すように変化したときを想定すると、上述の判断処理によって制御モードは図4(a)で示すように変化するものである。すなわち車輪減速度が0G以下かつ車体速度が設定速度以上であり、しかも車輪減速度が設定減速度未満の状態にあってスリップ率が第1設定値を超えた時刻t1で減圧モードに移行するが、車輪減速度が設定減速度以上となる時刻t2以降は、スリップ率が第2設定値を超えている限り減圧モードを持続することになり、車輪減速度が0Gよりも大きくなる時刻t3で減圧モードから保持モードに移行することになる。このように、スリップが深いことに起因して車輪速の復帰に時間がかかるときには減圧モードを延長することで、車輪速の速やかな復帰を促すことができる。
【0035】
ところで、制御ユニットCは、図5で示す手順に従ってスリップ率を演算するものであり、ステップS11では、スリップ率を演算式に従って演算する。ここで、スリップ率は{(車体速度−車輪速度−オフセット量)/車体速度}×100%として得られるものであり、前記オフセット量は、車体速度に応じて減圧モードに入るタイミングを変化させるために車体速度に応じて定められるオフセット量と、走行路面が悪路であるとこの車輪振動による不正減圧が生じることがないようにするために悪路であるか否かに応じて定まるオフセット量との合算値として定められている。
【0036】
ステップS12では、ブレーキ作動中か否かを、ブレーキスイッチによる検出または圧力センサ16の検出値が一定値以上であることをもって判定し、ブレーキ作動中であったときにはステップS13においてブレーキスイッチによるブレーキ操作がなされているか否かを判定する。
【0037】
ステップS13でブレーキ操作中であると判定したときにはステップS14に進んでスリップ率オフセットを「0」%に設定し、またステップS13で非ブレーキ操作中であると判定したときにはステップS15に進んでスリップ率オフセットを「10」%に設定し、ステップS16では、ステップS11での演算式による演算スリップ率からスリップ率オフセットを減算した値を新たなスリップ率として定める。
【0038】
すなわち非ブレーキ操作時には、微小スリップ率の発生によってもアンチロックブレーキ制御に入ることがないようにするために、スリップ率が10%低くオフセットされることになる。しかるに挙動安定制御を実行した直後には、挙動安定制御におけるブレーキ液圧増圧制御によって、車輪速度が推定車体速度から落ち込んでスリップ率が高くなることがあり、その場合、非ブレーキ操作状態であることによってスリップ率が10%低くオフセットされていても不所望にアンチロックブレーキ制御が開始される可能性がある。そこでステップS12において非ブレーキ作動中であると判定したときには、ステップS12からステップS17に進み、このステップS17では、挙動安定制御が終了してから所定時間が経過したか否かを判断する。而して所定時間が経過したときにはステップS17からステップS13に進むのであるが、所定時間が経過する前であると判定したときには、ステップS17からステップS18を経由してステップS16に進むことになり、ステップS18では、スリップ率オフセットを「51」%に設定する。
【0039】
すなわち挙動安定制御が終了してから所定時間が経過する迄の非ブレーキ操作時には、ステップS11での演算式による演算スリップ率から「51」%もの大きなスリップ率オフセットを減算した値を新たなスリップ率として定めることになり、新たなスリップ率が減圧モードに入る第1設定値または第2設定値を超えるほど大きくなる可能性はなく、この間は、減圧モードに入ることが回避されることになる。
【0040】
したがって挙動安定制御が終了してから所定時間が経過するまでの非ブレーキ操作時には、減圧モードに入ることはなく、挙動安定制御におけるブレーキ液圧増圧制御によって車輪速度が推定車体速度から落ち込んで実際のスリップ率が高くなっていたとしても、挙動安定制御の終了直後にアンチロックブレーキ制御の減圧モードが不所望に始まってしまうことを回避することができる。
【0041】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0042】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、挙動安定制御の終了直後にアンチロックブレーキ制御の減圧モードが不所望に始まってしまうことを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両用ブレーキ装置の液圧回路図である。
【図2】ブレーキ液圧制御装置の制御系を示す図である。
【図3】アンチロックブレーキ制御の減圧モードに移行するか否かを判断する手順を示すフローチャートである。
【図4】減圧モード移行時のタイミングチャートである。
【図5】スリップ率の演算処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
2A,2B,2C,2D・・・車輪ブレーキ
20A,20B・・・液圧路
C・・・制御ユニット
GA,GB・・・液圧発生手段
M・・・マスタシリンダ
VA,VB,VC,VD・・・制御弁手段
Claims (1)
- ブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧を液圧路(20A,20B)に出力し得るマスタシリンダ(M)と、非ブレーキ操作時に前記液圧路(20A,20B)に一定の液圧を付与し得る液圧発生手段(GA,GB)と、各車輪毎の車輪ブレーキ(2A,2B,2C,2D)のブレーキ液圧を制御するようにして前記液圧路(20A,20B)および前記車輪ブレーキ(2A〜2D)間に設けられる制御弁手段(VA,VB,VC,VD)と、車輪ブレーキ(2A〜2D)の作動に伴って車輪のスリップ率が高くなるのに応じた減圧モードを含む減圧、保持および増圧の各モードを切り換えて車輪のロック傾向を解消するアンチロックブレーキ制御ならびに非ブレーキ操作状態で前記車輪ブレーキ(2A〜2D)にブレーキ力を発揮させることによる挙動安定制御を行うことを可能として前記液圧発生手段(GA,GB)および前記制御弁手段(VA〜VD)の作動を制御する制御ユニット(C)とを備える車両用ブレーキ装置において、前記制御ユニット(C)は、前記挙動安定制御終了後に所定時間が経過するまでの非ブレーキ操作状態では、前記スリップ率にかかわらず前記減圧モードに入ることを回避することを特徴とする車両用ブレーキ装置。
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