JP2001247028A - ブレーキ液圧制御装置のホイールシリンダの増圧方法及びブレーキ液圧制御装置 - Google Patents

ブレーキ液圧制御装置のホイールシリンダの増圧方法及びブレーキ液圧制御装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 車両の走行路面及びブレーキペダルの踏力に
適したABS制御性能を得ることができるブレーキ液圧
制御装置のホイールシリンダの増圧方法及びブレーキ液
圧制御装置を提供する。 【解決手段】マスタシリンダ11aから各ホイールシリ
ンダ液圧Pwcに対するパルス増圧の増圧出力時間t
を、その時のマスタシリンダ液圧Pmcと各ホイールシ
リンダ液圧Pwcとの差圧ΔP(=Pmc−Pwc)に
基づいて補正する。また、各ホイールシリンダ液圧Pw
cを、推定車体速度Vsoにより求められた推定車体減
速度DVsoに基づいて演算する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両のブレーキ液
圧制御装置に係り、詳しくは好適なアンチスキッド制御
(ABS制御)を行うことができるブレーキ液圧制御装
置のホイールシリンダの増圧方法及びブレーキ液圧制御
装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両のブレーキ液圧制御装置としては、
急制動時に車輪がロックしないように、各車輪のホイー
ルシリンダに付与するブレーキ液圧を減圧、増圧、ある
いは圧力保持することにより、路面と車輪との間の摩擦
係数が最大となるように制動力を制御するアンチスキッ
ド制御装置(ABS制御装置)を備えたものが普及して
いる。
【0003】このようなアンチスキッド制御装置では、
車輪加速度(車輪減速度)が所定の閾値以上であるかど
うか、車輪速度と車体速度に基づいて求められるスリッ
プ率が閾値以上であるかどうか等を監視して車輪のロッ
クを検出し、アンチスキッド制御が開始される。
【0004】従来、このアンチスキッド制御における各
車輪のホイールシリンダにかかるブレーキ液圧(Pw
c)を増圧する場合には、そのパルス増圧時間t0がブ
レーキペダルにより駆動されるマスタシリンダの発生液
圧(Pmc)の大きさによって補正している。つまり、
従来では、マスタシリンダの発生液圧(Pmc)の大き
さによってパルス増圧時間t0を補正することでブレー
キペダル踏力変化に応じた増圧量を提供して安定したA
BS制御性能を確保している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記マスタ
シリンダの発生液圧(Pmc)はブレーキペダル踏力に
比例している。これに対して、各車輪のホイールシリン
ダにかかるブレーキ液圧(Pwc)は、その時に各車輪
に作用している摩擦力(つまり路面の摩擦係数μ)によ
って異なっている。その摩擦力(つまり路面の摩擦係数
μ)が大きければ大きいほど各車輪のホイールシリンダ
にかかるブレーキ液圧(Pwc)は大きくなり、つまり
正比例関係となっている。
【0006】一方、ホイールシリンダにかかるブレーキ
液圧の増圧スピード(増圧勾配)は、マスタシリンダか
ら増圧するときにおけるマスタシリンダの発生液圧(P
mc)と各車輪のホイールシリンダにかかるブレーキ液
圧(Pwc)との差圧(Pmc−Pwc=ΔP)により
決定される。従って、各車輪に作用している摩擦力(つ
まり路面の摩擦係数μ)によって、差圧(Pmc−Pw
c=ΔP)が変わり、増圧勾配も変わることになる。つ
まり、増圧勾配は、高μ路面の時に小さくなり(Pwc
が大きくなるため)、低μ路面の時に大きくなる(Pw
cが小さくなるため)。
【0007】その結果、マスタシリンダの発生液圧(P
mc)に基づいて補正された増圧出力時間t0にてパル
ス増圧すると、各車輪のホイールシリンダに対する増圧
量(ΔP・t0)は、高μ路面の時に不足したり低μ路
面の時にオーバしたりする不都合が生じる。これは、必
ずしも車両の走行路面、ブレーキペダルの踏力に適した
ABS制御性能は得られない問題点となった。
【0008】本発明は上記問題点を解消するためになさ
れたものであって、その目的は、車両の走行路面及びブ
レーキペダルの踏力に適したABS制御性能を得ること
ができるブレーキ液圧制御装置のホイールシリンダの増
圧方法及びブレーキ液圧制御装置を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに、請求項1に記載の発明は、液圧発生装置から供給
されるブレーキ液を液圧制御装置を介して複数の車輪に
それぞれ設けたホイールシリンダに供給して車輪に制動
力を付与するブレーキ液圧制御装置のホイールシリンダ
の増圧方法において、前記液圧制御装置にて各ホイール
シリンダを増圧する際、液圧発生装置から供給されるブ
レーキ液に発生する液圧とホイールシリンダにかかるブ
レーキ液圧の差圧に基づいて増圧制御するようにしたこ
とを要旨とする。
【0010】請求項2に記載の発明は、車両の各車輪に
装着され前記車輪に制動力を付与するホイールシリンダ
と、前記ホイールシリンダにブレーキ液圧を供給する液
圧発生装置と、前記液圧発生装置の発生液圧を検出する
液圧検出手段と、前記液圧発生装置と前記ホイールシリ
ンダとの間に配設され前記ホイールシリンダにかかるブ
レーキ液圧を制御する液圧制御装置と、前記各車輪の車
輪速度を検出する車輪速度検出手段と、前記車輪速度検
出手段の出力信号から車輪速度を演算する車輪速度演算
手段と、前記車輪速度から前記各車輪の車輪加速度を演
算する車輪加速度演算手段と、前記液圧検出手段の出力
信号から車体減速度を演算する推定車体減速度演算手段
と、前記車輪速度と車体減速度とに基づいて車体速度を
演算する推定車体速度演算手段と、前記車輪速度と車輪
加速度と推定車体速度とに応じて前記液圧制御装置を駆
動して制動力を制御する制動力制御手段とを備え、前記
制動力制御手段が車輪加速度が所定のしきい値以上であ
るかどうか、車輪速度と推定車体速度とに基づいて求め
られるスリップ率が所定のしきい値以上であるかどうか
を判断して液圧制御装置に対して減圧、パルス増圧、保
持の制御モードを指示することによってアンチスキッド
制御が行われるブレーキ液圧制御装置において、前記ホ
イールシリンダにかかるブレーキ液圧をパルス増圧する
増圧出力時間を、液圧発生装置の発生液圧とホイールシ
リンダにかかるブレーキ液圧との差圧によって補正する
ようにしたことを要旨とする。
【0011】請求項3に記載の発明は、請求項2に記載
のブレーキ液圧制御装置において、前記ホイールシリン
ダにかかるブレーキ液圧は、前記推定車体速度から求め
られる推定車体減速度に基づいて演算されるようにした
ことを要旨とする。
【0012】請求項4に記載の発明は、請求項2又は3
に記載のブレーキ液圧制御装置において、前記車輪速度
に基づいて第1推定車体速度を演算し、前回の推定車体
速度の演算値と前記推定車体減速度と1演算処理サイク
ルの時間との積を減じた値を第2推定車体速度とし、前
記第1推定車体速度が前記第2推定車体速度より大きい
場合は、前記第1推定車体速度を前記推定車体速度と
し、前記第1推定車体速度が前記第2推定車体速度より
小さいが等しい場合は、前記第2推定車体速度を前記推
定車体速度としたことを要旨とする。
【0013】(作用)請求項1に記載の発明の構成によ
れば、液圧制御装置にて各ホイールシリンダを増圧する
際、液圧発生装置から供給されるブレーキ液に発生する
液圧のみに基づいて増圧制御する従来技術に比べて、高
μ路面と低μ路面によるホイールシリンダにかかるブレ
ーキ液圧の変動に起因するホイールシリンダにかかるブ
レーキ液圧に対する増圧量が高μ路面の時に不足したり
低μ路面の時にオーバしたりするといった不都合の発生
を防止することができる。その結果、車両の走行路面及
びブレーキペダルの踏力に適したABS制御性能を得る
ことができる。
【0014】請求項2に記載の発明の構成によれば、ホ
イールシリンダにかかるブレーキ液圧に対する増圧量、
つまり液圧発生装置の発生液圧とホイールシリンダにか
かるブレーキ液圧との差圧と増圧出力時間との積は、車
両の走行路面及びブレーキペダルの踏力に適した値とな
るように補正することができる。その結果、ホイールシ
リンダにかかるブレーキ液圧の増圧量が高μ路面の時に
不足したり低μ路面の時にオーバしたりするといった不
都合の発生を防止することができ、車両の走行路面及び
ブレーキペダルの踏力に適したABS制御性能を得るこ
とができる。
【0015】請求項3に記載の発明の構成によれば、請
求項2に記載の発明の作用に加えて、ホイールシリンダ
にかかるブレーキ液圧は、推定車体速度から求められる
推定車体減速度に基づいて演算されるため、ホイールシ
リンダにかかるブレーキ液圧を直接検出するための検出
センサ等の検出手段を各車輪に設ける必要がなくなり、
ブレーキ液圧制御装置のコストアップを抑制することが
できる。
【0016】請求項4に記載の発明の構成によれば、請
求項2及び3に記載の発明の作用に加えて、4輪駆動車
両での各車輪の干渉による推定車体速度の過小推定が防
止され、推定車体速度と車輪速度とから推定されるスリ
ップ率が実際より小さく推定されることも防止される。
すなわち、4輪の車輪速度が同時に低下すると、それに
伴って推定車体速度も低下してしまい、その結果、車体
速度と車輪速度との差がないと判断されてアンチスキッ
ド制御の開始が遅れることを防止でき、低μ路での緩制
動時の4輪同時ロックを防止できる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した車両の
ブレーキ液圧制御装置の一実施形態を図面に従って説明
する。
【0018】図1は本実施形態のブレーキ液圧制御装置
の回路説明図である。図1に示すように、ブレーキ液圧
制御装置10は、マスタシリンダ11a及びブースタ1
1bから構成された液圧発生装置11と、各車輪(右前
輪FR、左前輪FL、右後輪RR及び左後輪RL)にそ
れぞれ配設されたホイールシリンダ12a〜12dと、
前記液圧発生装置11とホイールシリンダ12a〜12
d間に液圧路を介して接続された液圧制御装置としての
アクチュエータ13と、該アクチュエータ13を制御す
る制動力制御手段としての電子制御装置14とを備えて
いる。
【0019】前記液圧発生装置11は、ブレーキスイッ
チ15を設けたブレーキペダル16により駆動されてい
る。液圧発生装置11は、ブレーキペダル16が踏まれ
ることによって動作し液圧路に液圧を発生するようにな
っている。
【0020】前記アクチュエータ13は、図1に示すよ
うに、マスタシリンダ11aの一方の出力ポートとホイ
ールシリンダ12a,12dの各々とを接続する液圧路
に電磁弁17a〜17dが配設され、これらの電磁弁1
7a〜17dとマスタシリンダ11aとの間にポンプ1
8が配設されている。同様に、マスタシリンダ11aの
他方の出力ポートとホイールシリンダ12b,12cの
各々とを接続する液圧路に電磁弁17e〜17hが配設
され、これらの電磁弁17e〜17hとマスタシリンダ
11aとの間にポンプ19が配設されている。前記ポン
プ18,19は、電動モータ20によって駆動され、上
記の液圧路に所定の圧力に昇圧されたブレーキ液圧を供
給するようになっている。
【0021】前記電磁弁17a,17cは、常開型の電
磁弁であり、その排出側液圧路がそれぞれ右前輪のホイ
ールシリンダ12aと左後輪のホイールシリンダ12d
に接続されている。また、前記電磁弁17e,17g
は、常開型の電磁弁であり、その排出側液圧路がそれぞ
れ左前輪のホイールシリンダ12bと右後輪のホイール
シリンダ12cに接続されている。
【0022】前記電磁弁17b,17dは、常閉型の電
磁弁であり、その排出側液圧路がリザーバ21を介して
前記ポンプ18に接続されている。同様に、前記電磁弁
17f,17hは、常閉型の電磁弁であり、その排出側
液圧路がリザーバ22を介して前記ポンプ19に接続さ
れている。前記リザーバ21,22は、各々ピストンと
スプリングとを備え、前記電磁弁17b,17d,17
f,17hから排出側液圧路を介して環流されるブレー
キ液を収容するとともに、ポンプ18,19の作動時に
ブレーキ液を供給する。
【0023】前記電磁弁17a〜17hは、2ポート2
位置電磁弁であり、ソレノイド非通電時(以下、オフと
称する)において、各ホイールシリンダ12a〜12d
を前記液圧発生装置11及びポンプ18,19と連通さ
せるようになっている。
【0024】また、前記電磁弁17a〜17hは、ソレ
ノイド通電時(以下、オンと称する)において、各ホイ
ールシリンダ12a〜12dを前記液圧発生装置11及
びポンプ18,19と遮断させるとともに、前記リザー
バ21,22と連通させるようになっている。なお、図
1に示すように、液圧路には複数の逆止弁Bが設けら
れ、それらの逆止弁Bはホイールシリンダ12a〜12
d及びリザーバ21,22側から液圧発生装置11側へ
のブレーキ液の流通のみを許容するようになっている。
【0025】そして、電磁弁17a〜17hのソレノイ
ドを前記電子制御装置14にてオン、オフすることによ
ってホイールシリンダ12a〜12dのブレーキ液圧を
増圧、保持、減圧の状態にすることが可能となる。すな
わち、電磁弁17a〜17hのソレノイドがオフされた
ときには、ホイールシリンダ12a〜12dに液圧発生
装置11及びポンプ18,19からブレーキ液圧が供給
されて増圧される。一方、電磁弁17a〜17hのソレ
ノイドがオンされたときには、ホイールシリンダ12a
〜12dがリザーバ21,22に連通されて減圧され
る。また、電磁弁17a,17c,17e,17gのソ
レノイドがオフされ、電磁弁17b,17d,17f,
17hのソレノイドがオンされたときには、ブレーキ液
圧が保持される。従って、各電磁弁17a〜17hのソ
レノイドへの通電時間を電子制御装置14にて調整する
ことにより、増圧と保持を組み合わせたパルス増圧や、
減圧と保持を組み合わせたパルス減圧を行うことがで
き、緩やかにブレーキ液圧を増圧又は減圧するように制
御することが可能となる。
【0026】前記電子制御装置14は、図2に示すよう
に、バスを介して相互に接続されたCPU23、ROM
24、RAM25、タイマ(TMR)26、入力ポート
27及び出力ポート28からなるマイクロコンピュータ
29を備えている。前記入力ポート27は、増幅回路3
0a〜30gを介して、各車輪FR,FL,RR,RL
に設けられた車輪速度検出手段としての車輪速度センサ
31a〜31dと、前記ブレーキスイッチ15及びマス
タシリンダ11a側の液圧路に設けられた液圧検出手段
としての液圧検出センサ32,33と接続されている
(図1に参照)。一方、前記出力ポート28は、駆動回
路34aを介して前記電動モータ20と接続され(図1
に参照)、駆動回路34b〜34iを介して前記電磁弁
17a〜17hと接続されている。また、前記ROM2
4は、アンチスキッド制御(以下、ABS制御という)
のプログラムを記憶し、CPU23は、図示しないイグ
ニッションスイッチがオンになったときにプログラムを
実行し、RAM25は、プログラムの実行に必要な変数
データを一時的に記憶するようになっている。そして、
本実施形態では、電子制御装置14は、前記車輪速度セ
ンサ31a〜31dと、ブレーキスイッチ15及び液圧
検出センサ32,33からの出力信号に基づいて前記電
動モータ20と電磁弁17a〜17hを制御している。
【0027】なお、本実施形態では、車両のエンジンが
かけられる(つまりイグニッションスイッチがオンされ
る)と、電子制御装置14のCPU23は、プログラム
を実行し、次のような処理がエンジンが停止される(つ
まりイグニッションスイッチがオフされる)まで繰り返
し行うようになっている。図3はその処理のフローチャ
ートである。
【0028】図3に示すように、イグニッションスイッ
チがオンされるとき処理がスタートされる。そして、ま
ず最初にステップ101でマイクロコンピュータ29が
初期化され、各種の演算値、制御の基準車速となる推定
車体速度Vso、車輪速度Vw及び車輪加速度DVw等
の初期設定が行われる。
【0029】次に、ステップ102においては、車輪速
度センサ31a〜31dからの出力信号により各車輪F
R,FL,RR,RLの車輪速度Vwを演算しその演算
値を前記RAM25に記憶させる。続いてステップ10
3においては、ステップ102で演算された各車輪F
R,FL,RR,RLの車輪速度Vwの演算値に基づい
て各車輪FR,FL,RR,RLの車輪加速度DVwを
演算しその演算値をRAM25に記憶させる。
【0030】次のステップ104では、ABS制御中か
どうかを判断し、制御中の場合には後述するステップ1
06へジャンプし、制御中でない(制御前)場合にはス
テップ105に進む。ステップ105では、各車輪F
R,FL,RR,RLに対してABS制御を開始させる
(つまりABS制御の開始条件が成立する)かどうかを
判断する。ABS制御の開始条件が成立する(つまり各
車輪FR,FL,RR,RLに対してABS制御を開始
させる)場合には、ステップ106へ進む。ABS制御
の開始条件が成立しない場合には、ステップ112へジ
ャンプする。なお、車両の発進段階又は正常走行中にお
いてブレーキペダルが踏まれていないときにステップ1
04及びステップ105の条件が揃えていないため、前
記の処理はステップ104及びステップ105からステ
ップ106へ進まずステップ112へジャンプする。
【0031】ステップ112では、4つの車輪に対して
同じ処理を完了したかどうかを判断する。なお、ここで
言う処理は、4つの車輪に対する車輪速度Vw及び車輪
加速度DVwの演算処理である。そして、すべての車輪
に対する処理が完了していない場合には、ステップ10
2に戻って処理しなかった車輪に対して同じ処理を繰り
返す。また、すべての車輪に対する処理が完了した場合
には、ステップ113で前記液圧検出センサ32,33
にてマスタシリンダ11aの発生液圧(以下、マスタシ
リンダ液圧という)Pmcを検出する。
【0032】次にステップ114で後述演算方法にてA
BS制御の開始条件及び基準となる推定車体速度Vso
を演算する。そして、ステップ115においてはこの推
定車体速度Vsoを微分することによって推定車体減速
度DVsoを演算する。その後、1演算処理サイクルが
終了し再びステップ102に戻って次の演算処理サイク
ルを開始する。
【0033】また、車両の正常走行中においてブレーキ
ペダルが踏まれ、ステップ105には、前回目(例えば
第n−1回目、nは自然数である)の演算処理サイクル
におけるステップ115で演算した推定車体速度Vso
に基づいて求めたABS制御の開始条件が成立すると判
断された場合ステップ106へ進む。そして、ステップ
106では、前記車輪加速度DVwが所定のしきい値以
上であるかどうか、車輪速度Vwと推定車体速度Vso
とに基づいて求められるスリップ率が所定のしきい値以
上であるかどうかによって車輪毎に各ホイールシリンダ
12a〜12dに対する制御モードの選択を行う。つま
り、その時の各車輪FL,FR,RL,RRの車輪加速
度DVw及び車輪速度Vwによって、個々車輪FL,F
R,RL,RRのホイールシリンダ12a〜12dに対
する制御モードを選択するようになる。しかも、選択さ
れた個々車輪FL,FR,RL,RRの制御モードに基
づいて後述するように個々車輪FL,FR,RL,RR
のホイールシリンダ12a〜12dに対して減圧、パル
ス増圧又は保持の出力処理の行う。例えば、右前輪FR
の車輪加速度DVw及び車輪速度Vwによって右前輪F
Rの制御モードが減圧モードに選択された場合、その後
の制御処理が右前輪FRのホイールシリンダ12aに対
して減圧出力させるように行う。同様に、右後輪RRの
車輪加速度DVw及び車輪速度Vwによって右後輪RR
の制御モードがパルス増圧モードに選択された場合、そ
の後の制御処理が右後輪RRのホイールシリンダ12c
に対してパルス増圧出力させるように行う。
【0034】そして、ステップ107においては、ステ
ップ106で車輪毎に選択された制御モードが減圧モー
ドであるかどうかについて判断し、選択された制御モー
ドが減圧モードである場合には、ステップ108で減圧
出力処理を行う。また、減圧モードでない場合には、ス
テップ109でパルス増圧モードであるかどうかを判断
し、パルス増圧モードである場合には、後述する増圧出
力時間の補正方法で補正した増圧時間にてステップ11
0においてパルス増圧出力処理を行い、パルス増圧モー
ドでない場合には、ステップ111でパルス保持出力処
理を行う。ステップ108,ステップ110及びステッ
プ111での処理が終わったらステップ112へ進む。
ステップ112では、4つの車輪FL,FR,RL,R
Rに対してすべての処理を完了したかどうかを判断す
る。なお、ここで言う処理は、4つの車輪FL,FR,
RL,RRに対する減圧、増圧、保持等の出力処理であ
る。そして、ステップ112以降の処理は上記で説明し
たとおりに行う。
【0035】上記推定車体速度Vsoは、図4のフロー
チャートで示す方法に従って求められる。詳述すると、
まずステップ201において、演算処理サイクル(本実
施形態では1演算処理サイクルが6ms)毎に各車輪F
L,FR,RL,RRの車輪速度の中から最大の車輪速
度を求め、その最大の車輪速度を4輪による推定車体速
度Vwo(n)すなわち第1推定車体速度とする。ここ
で、(n)あるいは後述の(n−1)は添字で、演算処
理サイクルが第n回目あるいは第n−1回目であること
を表わし、nは自然数である。次に、ステップ202に
おいては前記ステップ113で検出したマスタシリンダ
液圧Pmcに基づいて推定車体減速度αDWを演算す
る。図5に示すように、推定車体減速度αDWはマスタ
シリンダ液圧Pmcの関数としてマイクロコンピュータ
29内にマップで与えられている。本実施形態では、マ
スタシリンダ液圧Pmc=0(Mpa)では推定車体減
速度αDW=0.1であり、0<Pmc<10(Mp
a)ではPmcとαDWとは正比例関係であり、Pmc
≧10(Mpa)ではαDW=1.1となりつまり一定
である。
【0036】そして、次に、ステップ203で推定車体
速度の下限値すなわち第2推定車体速度を演算する。こ
こでは、前回の演算処理サイクル時の推定車体速度Vs
(n -1)から前記ステップ202の演算結果であるαD
Wと1演算処理サイクルの時間tとの積を減じた値(つ
まり、Vso(n-1)−αDW・t)を演算値とする。次
に、ステップ204において、ステップ201で求めた
今回の4輪による推定車体速度すなわち第1推定車体速
度Vwo(n)と、ステップ203で求めた推定車体速度
の下限値すなわち第2推定車体速度Vso(n-1)−αD
W・tとの大小比較を行い、第1推定車体速度Vwo
(n)が第2推定車体速度Vso(n-1)−αDW・tより大
きければステップ205に進み、その第1推定車体速度
Vwo(n)を今回の演算処理サイクルの推定車体速度V
soとする。すなわち、Vso=Vwo(n)とする。一
方、ステップ204での比較結果として、第1推定車体
速度Vwo(n)が第2推定車体速度Vso(n-1)−αDW
・tより小さいか等しければステップ206に進み、そ
の第2推定車体速度Vso(n-1)−αDW・tを今回の
演算処理サイクルの推定車体速度Vsoとする。すなわ
ち、Vso=Vso(n -1)−αDW・tとする。
【0037】また、上記ステップ110で行うパルス増
圧の増圧出力時間tは、図6のフローチャートで示す方
法に従って補正する。詳述すると、まずステップ301
においては、前回のステップ115で求められた推定車
体減速度DVsoに基づいて各ホイールシリンダ12a
〜12dにかかるブレーキ液圧(以下、ホイールシリン
ダ液圧)Pwcを演算する。図7に示すように、推定車
体減速度DVsoはホイールシリンダ液圧Pwcの関数
としてマイクロコンピュータ29内にマップで与えられ
ている。本実施形態では、ホイールシリンダ液圧Pwc
=0(Mpa)では推定車体減速度DVso=0であ
り、0<Pwc<10(Mpa)ではPwcとDVso
とは正比例関係であり、Pwc≧10(Mpa)ではD
Vso=1となりつまり一定である。
【0038】そして、次にステップ302においては、
前回のステップ113で検出されたマスタシリンダ液圧
Pmcと上記ステップ301で求められたホイールシリ
ンダ液圧Pwcとの差圧ΔP(=Pmc−Pwc)が1
0Mpaより大きいかどうかについて判断する。Pmc
−Pwc>10Mpaである場合には、ステップ303
でパルス増圧の増圧出力時間tを3msにし、Pmc−
Pwc>10Mpaでない場合には、ステップ304で
パルス増圧の増圧出力時間tを9−0.6×(Pmc−
Pwc)にする。このようなパルス増圧の増圧出力時間
tとPmc−Pwcとの関係を図8に示している。つま
り、パルス増圧の増圧出力時間tは差圧ΔP(=Pmc
−Pwc)の関数としてマイクロコンピュータ29内に
マップで与えられている。
【0039】以上詳述したように、本実施形態によれ
ば、以下に示す効果が得られるようになる。 (1)本実施形態では、マスタシリンダ11aから各車
輪FR,FL,RR,RLのホイールシリンダ液圧Pw
cに対するパルス増圧の増圧出力時間tを、その時のマ
スタシリンダ液圧Pmcと各ホイールシリンダ液圧Pw
cとの差圧ΔP(=Pmc−Pwc)に基づいて補正す
るようにした。
【0040】従って、差圧ΔP(=Pmc−Pwc)に
基づいて補正した増圧出力時間tにてパルス増圧するた
め、各ホイールシリンダ液圧Pwcに対するパルス増圧
の増圧量(ΔP・t)は、車両の走行路面及びブレーキ
ペダルの踏力に適した値となるように補正することがで
きる。その結果、ホイールシリンダにかかる液圧の増圧
量が高μ路面の時に不足したり低μ路面の時にオーバし
たりするといった不都合の発生を防止することができ、
車両の走行路面及びブレーキペダルの踏力に適したAB
S制御性能を得ることができる。
【0041】(2)本実施形態では、各ホイールシリン
ダ液圧Pwcを、推定車体速度Vsoにより求められた
推定車体減速度DVsoに基づいて演算するようにし
た。従って、ホイールシリンダ液圧Pwcを直接検出す
るための検出センサを各車輪FR,FL,RR,RLに
設ける必要がなくなり、ブレーキ液圧制御装置10のコ
ストアップを抑制することができる。
【0042】(3)本実施形態では、それぞれ第1推定
車体速度Vwo(n)と第2推定車体速度Vso(n-1)−α
DW・tを演算し、第1推定車体速度Vwo(n)が第2
推定車体速度Vso(n-1)−αDW・tより大きい場合
は、その第1推定車体速度Vwo(n)を推定車体速度V
soとし、その第1推定車体速度Vwo(n)が前記第2
推定車体速度演算Vso(n-1)−αDW・tより小さい
が等しい場合は、その第2推定車体速度Vso(n-1)
αDW・tを推定車体速度Vsoとした。
【0043】従って、4輪駆動車両での各車輪の干渉に
よる推定車体速度Vsoの過小推定が防止され、推定車
体速度Vsoと車輪速度Vwとから推定されるスリップ
率が実際より小さく推定されることも防止される。すな
わち、4輪(車輪FR,FL,RR,RL)の車輪速度
Vwが同時に低下すると、それに伴って推定車体速度V
soも低下してしまうため、車体速度Vsoと車輪速度
Vwとの差がないと判断されてアンチスキッド制御の開
始が遅れることを防止でき、低μ路での緩制動時の4輪
(車輪FR,FL,RR,RL)同時ロックを防止でき
る。
【0044】なお、本発明の実施の形態は上記実施形態
に限定されるものではなく、次のように変更してもよ
い。 ○上記実施形態では、各ホイールシリンダ液圧Pwc
を、推定車体速度Vsoにより求められた推定車体減速
度DVsoに基づいて演算するようにしたが、各ホイー
ルシリンダ12a〜12dに検出センサ(図示せず)を
設け、その検出センサから直接検出した液圧値を各ホイ
ールシリンダ液圧Pwcに用いて実施してもよい。この
場合、上記実施形態の効果(1)及び(3)に加えて、
各ホイールシリンダ液圧Pwcに対するパルス増圧の増
圧出力時間tをより正確に補正することができる。
【0045】○上記実施形態では、各ホイールシリンダ
液圧Pwcを演算するための車体減速度は、推定車体速
度Vsoにより求められた推定車体減速度DVsoを用
いて実施したが、車両の車体に加速度センサ(Gセン
サ)を設け、その加速度センサから検出した値を車体減
速度に用いて実施してもよい。この場合、上記実施形態
の効果(1)〜(3)とほぼ同じ効果を得ることができ
る。
【0046】次に、以上の実施形態及び別例から把握す
ることができる請求項以外の技術的思想を、その効果と
ともに以下に記載する。 (イ)請求項2に記載のブレーキ液圧制御装置におい
て、前記各ホイールシリンダに液圧検出センサを設け、
前記液圧検出センサから検出した液圧値を前記ホイール
シリンダにかかるブレーキ液圧にしたことを特徴とする
ブレーキ液圧制御装置。
【0047】従って、請求項2に記載のブレーキ液圧制
御装置の効果に加えて、ホイールシリンダにかかるブレ
ーキ液圧に対するパルス増圧の増圧出力時間をより正確
に補正することができる。
【0048】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1に記載の
発明によれば、車両の走行路面及びブレーキペダルの踏
力に適したABS制御性能を得ることができる。
【0049】請求項2に記載の発明によれば、車両の走
行路面及びブレーキペダルの踏力に適したABS制御性
能を得ることができる。請求項3に記載の発明によれ
ば、請求項2に記載の発明の効果に加えて、ブレーキ液
圧制御装置のコストアップを抑制することができる。
【0050】請求項4に記載の発明によれば、請求項2
及び3に記載の発明の効果に加えて、車体速度と車輪速
度との差がないと判断されてアンチスキッド制御の開始
が遅れることを防止でき、低μ路での緩制動時の4輪同
時ロックを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るブレーキ液圧制御装置の全体構成
図。
【図2】図1の電子制御装置の構成を示すブロック図。
【図3】アンチスキッド制御の概要を示すフローチャー
ト。
【図4】図3に示される推定車体速度演算の詳細を示す
フローチャート。
【図5】図4に示される推定車体減速度αDW演算に用
いられるマスタシリンダの発生液圧Pmcと推定車体減
速度αDWとの関係を与えるグラフ。
【図6】図3に示されるパルス増圧の増圧出力時間を演
算するフローチャート。
【図7】図6に示されるホイールシリンダ液圧Pwc演
算に用いられるホイールシリンダ液圧Pwcと推定車体
減速度DVsoとの関係を与えるグラフ。
【図8】差圧とパルス増圧の増圧出力時間との関係を与
えるグラフ。
【符号の説明】
10…ブレーキ液圧制御装置、11…液圧発生装置、1
2a〜12d…ホイールシリンダ、13…液圧制御装置
としてのアクチュエータ、14…制動力制御手段として
の電子制御装置、31a〜31d…車輪速度検出手段と
しての車輪速度センサ、32,33…液圧検出手段とし
ての液圧検出センサ。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液圧発生装置から供給されるブレーキ液
    を液圧制御装置を介して複数の車輪にそれぞれ設けたホ
    イールシリンダに供給して車輪に制動力を付与するブレ
    ーキ液圧制御装置のホイールシリンダの増圧方法におい
    て、 前記液圧制御装置にて各ホイールシリンダを増圧する
    際、液圧発生装置から供給されるブレーキ液に発生する
    液圧とホイールシリンダにかかるブレーキ液圧の差圧に
    基づいて増圧制御するようにしたことを特徴とするブレ
    ーキ液圧制御装置のホイールシリンダの増圧方法。
  2. 【請求項2】 車両の各車輪に装着され前記車輪に制動
    力を付与するホイールシリンダと、 前記ホイールシリンダにブレーキ液圧を供給する液圧発
    生装置と、 前記液圧発生装置の発生液圧を検出する液圧検出手段
    と、 前記液圧発生装置と前記ホイールシリンダとの間に配設
    され前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧を制御
    する液圧制御装置と、 前記各車輪の車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、 前記車輪速度検出手段の出力信号から車輪速度を演算す
    る車輪速度演算手段と、 前記車輪速度から前記各車輪の車輪加速度を演算する車
    輪加速度演算手段と、 前記液圧検出手段の出力信号から車体減速度を演算する
    推定車体減速度演算手段と、 前記車輪速度と車体減速度とに基づいて車体速度を演算
    する推定車体速度演算手段と、 前記車輪速度と車輪加速度と推定車体速度とに応じて前
    記液圧制御装置を駆動して制動力を制御する制動力制御
    手段とを備え、 前記制動力制御手段が車輪加速度が所定のしきい値以上
    であるかどうか、車輪速度と推定車体速度とに基づいて
    求められるスリップ率が所定のしきい値以上であるかど
    うかを判断して液圧制御装置に対して減圧、パルス増
    圧、保持の制御モードを指示することによってアンチス
    キッド制御が行われるブレーキ液圧制御装置において、 前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧をパルス増
    圧する増圧出力時間を、液圧発生装置の発生液圧とホイ
    ールシリンダにかかるブレーキ液圧との差圧によって補
    正するようにしたことを特徴とするブレーキ液圧制御装
    置。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載のブレーキ液圧制御装置
    において、 前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧は、前記推
    定車体速度から求められる推定車体減速度に基づいて演
    算されるようにしたことを特徴とするブレーキ液圧制御
    装置。
  4. 【請求項4】 請求項2又は3に記載のブレーキ液圧制
    御装置において、 前記車輪速度に基づいて第1推定車体速度を演算し、前
    回の推定車体速度の演算値と前記推定車体減速度と1演
    算処理サイクルの時間との積を減じた値を第2推定車体
    速度とし、前記第1推定車体速度が前記第2推定車体速
    度より大きい場合は、前記第1推定車体速度を前記推定
    車体速度とし、前記第1推定車体速度が前記第2推定車
    体速度より小さいが等しい場合は、前記第2推定車体速
    度を前記推定車体速度としたことを特徴とするブレーキ
    液圧制御装置。
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