JP2000255401A - ブレーキシステム - Google Patents

ブレーキシステム

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JP2000255401A
JP2000255401A JP11055147A JP5514799A JP2000255401A JP 2000255401 A JP2000255401 A JP 2000255401A JP 11055147 A JP11055147 A JP 11055147A JP 5514799 A JP5514799 A JP 5514799A JP 2000255401 A JP2000255401 A JP 2000255401A
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brake
pressure
braking force
control device
hydraulic
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JP11055147A
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English (en)
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Eiji Nakamura
栄治 中村
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 できる限り消費電力が小さくて済むブレーキ
システムを得る。 【解決手段】 ブレーキペダルの踏込みにより要求され
ている増圧勾配が設定勾配より小さい場合(S4がN
O)には、駆動電力の小さい高圧ポンプのみが運転され
(S5)、設定勾配より大きい場合(S4がYES)に
は、低圧ポンプのみ(S13)、または低圧ポンプと高
圧ポンプとの両方(S13およびS15)が運転される
ようにする。また、ブレーキペダルの踏力が小さい場合
(S7がNO)には、前輪ブレーキの増圧用電磁制御弁
のみが開かれ(S10およびS12)、踏力が大きい場
合(S7がYES)には、前輪ブレーキと後輪ブレーキ
との両方の増圧用電磁制御弁が開かれるようにする(S
9およびS10)。さらに、増圧用電磁制御弁は、増圧
時に全開されるのではなく、要求増圧勾配に見合った開
度で開かれるようにする(S9またはS10)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブレーキシステム
における消費電力の節減に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ブレーキシステムの中には、例えば、特
開平10−100884号公報,特開平9−10986
2号公報等に記載されているように、ブレーキ操作部材
と、少なくとも1個のブレーキと、電力により作動し、
ブレーキ操作部材の操作に応じて、上記少なくとも1個
のブレーキの制動力を制御する制動力制御装置とを含む
ものがある。また、上記少なくとも1個のブレーキの制
動力を複数の制動力制御装置により制御するものものあ
る。この種のブレーキシステムにおいて、従来は、ブレ
ーキの制御のために消費される電力の節減には特別関心
が払われていなかった。しかし、装置の駆動のために消
費されるエネルギが大きいことは勿論であるが、制動の
ためにも相当なエネルギが必要であるから、ブレーキ制
御のために消費される電力の節減にも関心が払われるべ
きである。特に、ブレーキシステムが自動車用である場
合には、バッテリやオルタネータを小形化する上でも電
力の節減は重要な問題であり、電動モータにより駆動さ
れる電気自動車や、電動モータとエンジンとの両方によ
り駆動されるハイブリッド車においては一層重要であ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効
果】本発明は、以上の事情を背景とし、電力の消費が少
なくて済むブレーキシステムを得ることを課題としてな
されたものであり、本発明によって、下記各態様のブレ
ーキシステムが得られる。各態様は請求項と同様に、項
に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番
号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発
明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技
術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載の
ものに限定されると解釈されるべきではない。 (1)ブレーキ操作部材と、少なくとも1個のブレーキ
と、電力により作動し、前記ブレーキ操作部材の操作に
応じて、前記少なくとも1個のブレーキの制動力を制御
する制動力制御装置とを含むブレーキシステムにおい
て、前記制動力制御装置を、前記ブレーキ操作部材の操
作量に応じた制動効果を複数の態様で発生可能なものと
し、かつ、それら複数の態様のうち制動力制御装置への
供給電力が小さくて済む態様を選択して制動力制御装置
への電力供給を行う電力供給制御装置を設けたことを特
徴とするブレーキシステム(請求項1)。ブレーキは、
液圧により作動する液圧ブレーキでも、電動モータ等の
電動アクチュエータにより作動する電動ブレーキでもよ
い。ブレーキが液圧ブレーキである場合には、制動力制
御装置が液圧制御装置となり、電力供給制御装置が液圧
制動装置への電力供給を制御する装置となる。ブレーキ
が電動ブレーキである場合には、電動アクチュエータ制
御装置が制動力制御装置と電力供給制御装置とを兼ねる
ことが多い。いずれにしても、制動力制御装置は、ブレ
ーキ操作部材の制動操作により要求される同じ制動効果
を、複数の態様で発生可能なものとされ、電力供給制御
装置は、それら複数の態様のうちで供給電力が小さくて
済む態様を選択し、その選択態様に応じて電力を供給す
るものとされる。したがって、例えば、液圧ブレーキに
対して1個のポンプが設けられ、ブレーキ操作部材の操
作量(操作力や操作ストローク)に応じてポンプの駆動
電流が制御され、それによってポンプの吐出液圧が制御
されて、液圧ブレーキの制動力が制御されるのみのブレ
ーキシステムや、ブレーキ操作部材の操作量に応じて電
動ブレーキの電動アクチュエータへの供給電流が制御さ
れ、電動ブレーキの制動力が制御されるのみのブレーキ
システムのように、一つの制動効果を一つの態様でしか
発生できないブレーキシステムは、本発明に係るブレー
キシステムには当たらない。なお、作動状況を連続的に
変え得る制動力制御装置は、制動効果を無限に多くの態
様で発生可能なものと見なすこととする。 (2)当該ブレーキシステムが、車両の前輪の回転を抑
制する前輪ブレーキおよび後輪の回転を抑制する後輪ブ
レーキと、前輪ブレーキの制動力を制御する前輪制動力
制御装置および後輪ブレーキの制動力を制御する後輪制
動力制御装置とを含み、前記電力供給制御装置が、前記
要求制動効果が小さい場合には、前輪制動力制御装置と
後輪制動力制御装置との一方に電力を供給し、要求制動
効果が大きい場合には前輪制動力制御装置と後輪制動力
制御装置との両方に電力を供給する選択的電力供給部を
含む (1)項に記載のブレーキシステム(請求項2)。前
輪ブレーキと後輪ブレーキとを備えた車両用ブレーキシ
ステムにおいて、車両を減速させる必要が生じた場合
に、その減速度が比較的小さければ、前輪ブレーキと後
輪ブレーキとのいずれか一方のみを作動させても必要な
減速度を発生させることができる。勿論、前輪ブレーキ
と後輪ブレーキとを共に作動させて必要な減速度を得る
ことも可能なのであるが、その場合には一方のみを作動
させて同じ減速度を得る場合に比較して消費電力が大き
くなるのが普通である。したがって、要求減速度,要求
制動力等の要求制動効果が、例えば設定制動効果以下の
場合には、前輪ブレーキと後輪ブレーキとのいずれか一
方のみを作動させ、設定制動効果より大きい場合には、
前輪ブレーキと後輪ブレーキとを共に作動させることと
すれば、消費電力を節減しつつ必要な制動効果を確保す
ることができる。特に、自動車用のブレーキシステムに
おいては、比較的小さい減速度を発生させればよいこと
が多く、多くの場合に前輪ブレーキと後輪ブレーキとの
いずれか一方のみを作動させればよいため、大きな電力
節減効果が得られる。自動車が電動モータにより駆動さ
れる電気自動車や、電動モータとエンジンとの両方によ
り駆動されるハイブリッド車である場合には、消費電力
の節減が特に強く求められるため、本発明が特に有効で
ある。なお、前輪ブレーキと後輪ブレーキとのいずれか
一方のみが作動させられる場合に、例えば回生制動が行
われない側の車輪のブレーキ等、常に決まった方のブレ
ーキが作動させられるようにすることも可能であるが、
作動させるブレーキを予め定められた規則に基づいて自
動的に決定する作動ブレーキ決定手段を設ける等によ
り、前輪ブレーキと後輪ブレーキとがほぼ均等に作動さ
せられるようにすることも可能である。 (3)前記選択的電力供給部が、前記要求制動効果が小
さい場合には、前輪制動力制御装置に電力を供給し、後
輪制動力制御装置には電力を供給しないものである (2)
項に記載のブレーキシステム。制動に伴って前輪側への
荷重移動が発生するため、一般に前輪ブレーキの方が後
輪ブレーキより大きな制動効果を生じさせ得る。したが
って、一方のブレーキを作動させる場合には前輪ブレー
キが選ばれるようにしておけば、多くの場合後輪ブレー
キを作動させる必要がない。 (4)前記前輪ブレーキおよび後輪ブレーキが共に動力
液圧源の液圧に基づいて作動する液圧ブレーキであり、
前記前輪制動力制御装置および後輪制動力制御装置が、
前輪ブレーキおよび後輪ブレーキの液圧をそれぞれ増大
させる増圧バルブと減少させる減圧バルブとを含み、か
つ、後輪ブレーキ用の減圧バルブが常開弁である (3)項
に記載のブレーキシステム。後輪ブレーキ用の減圧バル
ブを常開弁とすれば、制動終了後に動力液圧源の残圧を
解消することが容易となるが、後輪ブレーキを作動させ
るためには必ず減圧バルブに電力を供給して閉状態とす
ることが必要である。そのため、電力節減上、後輪ブレ
ーキはなるべく作動させない方がよい。 (5)前記前輪ブレーキと後輪ブレーキとの少なくとも
一方が液圧により作動する液圧ブレーキであり、前記前
輪制動力制御装置および後輪制動力制御装置のうち液圧
ブレーキに対応するものが、駆動電力が互いに異なる複
数のポンプを含み、前記電力供給制御装置が、前記ブレ
ーキ操作部材の操作により要求される制動力の大きさと
増大勾配との少なくとも一方に基づいて前記複数のポン
プのうち駆動電力を供給するものを決定する選択的ポン
プ駆動部を含む (1)項ないし (4)項のいずれか1つに記
載のブレーキシステム(請求項3)。例えば、複数のポ
ンプをそれぞれ吐出能力に余裕のある状態で運転するよ
り、なるべく少数のポンプを能力一杯で運転する方が消
費電力が小さくて済む場合が多い。また、複数のポンプ
が低圧ポンプと高圧ポンプとである場合、一般に高圧ポ
ンプの方が最大吐出流量が小さくされ、駆動電力が小さ
くて済むことが多い。そこで、ブレーキ操作部材の操作
状態で決まる要求増圧勾配が小さければ、要求液圧が小
さくても高圧ポンプが運転されるようにする方が消費電
力が小さくて済む。選択的ポンプ駆動部は、例えばこれ
らの事情に基づいて予め設定される規則に従って、複数
のポンプのうち駆動電力を供給するものを決定するもの
とされる。 (6)前記前輪ブレーキと後輪ブレーキとの少なくとも
一方が液圧により作動する液圧ブレーキであり、前記前
輪制動力制御装置および後輪制動力制御装置のうち液圧
ブレーキに対応するものが、開度に応じた流量でブレー
キ液が液圧ブレーキに流入することを許容する開度制御
可能増圧弁を含み、前記電力供給制御装置が、前記ブレ
ーキ操作部材の操作により要求される制動力の増大勾配
が小さい場合に大きい場合に比較して、前記開度制御可
能増圧弁への供給電力を小さくする制動力勾配対応電力
制御部を含む (1)項ないし (5)項のいずれか1つに記載
のブレーキシステム。液圧ブレーキの液圧を増大させる
必要がある場合に、開度制御可能増圧弁を全開にしてブ
レーキ液を液圧ブレーキに流入させることも可能である
が、要求される制動力の増大勾配が小さい場合には、開
度制御可能増圧弁を小さい開度で開かせれば十分であ
り、そうすれば開度制御可能増圧弁への供給電力が小さ
くて済む。 (7)前記前輪ブレーキと後輪ブレーキとの少なくとも
一方が液圧により作動する液圧ブレーキであり、前記前
輪制動力制御装置および後輪制動力制御装置のうち液圧
ブレーキに対応するものが、吐出流量が可変のポンプ装
置と、そのポンプ装置から吐出されたブレーキ液の前記
液圧ブレーキへの流入を制御することにより液圧ブレー
キの増圧を制御する増圧制御弁装置とを含み、前記電力
供給制御装置が、前記ポンプ装置と増圧制御弁装置とへ
の供給電力の和が小さくなるようにポンプ装置と増圧制
御弁装置とへの供給電力の配分を制御する電力配分制御
部を含む (1)項ないし (6)項のいずれか1つに記載のブ
レーキシステム(請求項4)。吐出流量が可変のポンプ
装置と増圧制御弁装置とを含むブレーキシステムにおい
ては、液圧ブレーキの液圧増大を、ポンプ装置の制御に
よっても増圧制御弁装置の制御によっても制御すること
ができる。そして、ポンプ装置の制御にも増圧制御弁装
置の制御にも電力が必要であるため、電力節減上、これ
らの制御に必要な電力の和ができる限り小さくなるよう
に、ポンプ装置と増圧制御弁装置とへの供給電力の配分
を制御することが望ましい。例えば、増圧制御弁装置を
構成する増圧用電磁制御弁のソレノイドへの励磁電流を
大きくして、増圧用電磁制御弁を全開にし、ポンプ装置
への供給電流を小さくするより、増圧用電磁制御弁のソ
レノイドへの励磁電流を小さくして、増圧用電磁制御弁
の開度を必要最小限にし、代わりにポンプ装置への供給
電流を大きくする方が、同じ増圧速度を小さい電力で達
成することができる場合が多い。 (8)ブレーキ操作部材と、少なくとも1個のブレーキ
と、電力により作動し、前記ブレーキ操作部材の操作に
応じて、前記少なくとも1個のブレーキの制動力を制御
する複数の制動力制御装置とを含むブレーキシステムに
おいて、前記ブレーキ操作部材の操作により要求される
制動効果が得られる範囲内において、前記複数の制動力
制御装置への供給電力の和が小さくなるように複数の制
動力制御装置への電力供給を制御する電力供給制御装置
を設けたことを特徴とするブレーキシステム(請求項
5)。複数の制動力制御装置は、少なくとも1個のブレ
ーキの各々に対して複数ずつ設けられるものでもよく、
複数のブレーキの各々に対応して1個ずつ設けられるも
のでもよい。前者の一例が (7)項に記載の態様であり、
後者の一例が (2)項に記載の態様である。本ブレーキシ
ステムにおいては、複数の制動力制御装置への電力供給
が電力供給制御装置により制御されることによって、消
費電力が節減される。
【0004】
【発明の実施の形態】本発明の一実施形態である液圧ブ
レーキシステムを図1ないし図5に基づいて説明する。
図1において、符号10および12はそれぞれ左前輪お
よび右前輪を示し、符号14および16はそれぞれ左後
輪および右後輪を示す。前輪10,12には、ブレーキ
シリンダとしてのフロントホイールシリンダ(ホイール
シリンダを必要に応じてW/Cと略記する)20,22
を備えた液圧ブレーキが前輪ブレーキとして設けられて
おり、フロントW/C20,22に液圧が供給されるこ
とにより作動して、前輪10,12に制動トルクを加え
る。後輪14,16にも同様に、ブレーキシリンダとし
てのリヤW/C24,26を備えた液圧ブレーキが後輪
ブレーキとして設けられている。フロントW/C20,
22には、マニュアル液圧源30の液圧と動力液圧源3
2の液圧とが択一的に供給され、リヤW/C24,26
には必ず動力液圧源32の液圧が供給される。
【0005】マニュアル液圧源30は、ブレーキ操作部
材としてのブレーキペダル36の操作力(踏力と称す
る)に対応した液圧を発生させるマスタシリンダ(必要
に応じてM/Cと略記する)38を備えている。M/C
38はタンデム式であり、2つの独立した加圧室に同じ
大きさの液圧を発生させる。M/C38にはマスタリザ
ーバ39が設けられている。ブレーキペダル36がブレ
ーキ非作用位置にあり、M/C38内の加圧ピストンが
後退端位置にある状態では、M/C38の2つの加圧室
はマスタリザーバ39と連通しており、加圧ピストンが
後退端位置から僅かに前進させられると、加圧室がマス
タリザーバ39から遮断される。一方の加圧室は液通路
40によりフロントW/C20、他方の加圧室は液通路
42によりフロントW/C22に接続されている。液通
路40,42にはそれぞれ常開の電磁開閉弁から成るマ
スタシリンダカット弁(M/Cカット弁)44,46が
設けられており、それらM/Cカット弁44,46より
フロントW/C20,22側の液圧はW/C液圧センサ
50,52により検出され、M/C38側の液圧はM/
C液圧センサ54により検出される。
【0006】ブレーキペダル36とM/C38との間に
はストロークシミュレータ55が配設されるとともに、
液通路42のM/Cカット弁46よりM/C38側の部
分にもストロークシミュレータ56が接続されており、
かつ、ブレーキペダル36の踏込ストロークがストロー
クセンサ58によって検出される。上記ストロークシミ
ュレータ55は、スプリング等の弾性部材を備え、弾性
部材の弾性変形によりブレーキペダル36のM/C38
に対する所定量の相対移動を許容する純機械的なもので
あり、ストロークシミュレータ56は、M/Cカット弁
44,46が閉じられた状態で液圧を増大させつつ作動
液を収容することによりM/C38からの作動液の排出
を許容するものであって、2つのストロークシミュレー
タ55,56が共同して、動力液圧源32を有しない通
常の液圧ブレーキ装置におけるブレーキ操作に似た感触
を運転者に与えるものである。
【0007】動力液圧源32は、それぞれ電動モータ6
0,62により駆動される低圧ポンプ64および高圧ポ
ンプ66を備えている。低圧ポンプ64および高圧ポン
プ66は共にギヤポンプとされており、高圧ポンプ66
は、低圧ポンプ64よりも最大吐出液圧が高く、かつ、
最大吐出流量が小さいものとされている。そのため、同
じ液圧を発生させるには、高圧ポンプ66の方が低圧ポ
ンプ64より駆動電力が小さくて済む。
【0008】低圧ポンプ64および高圧ポンプ66の各
吐出側であって、低圧ポンプ64から吐出された作動液
をW/C20〜26に供給する液通路と、高圧ポンプ6
6から吐出された作動液をW/C20〜26に供給する
液通路とが合流する部分よりも、低圧ポンプ64側およ
び高圧ポンプ66側にそれぞれ、逆止弁68,70が設
けられている。逆止弁68は、高圧ポンプ66の作動時
に、低圧ポンプ64に高圧ポンプ66の高い吐出液圧が
作用することを防止し、ギヤポンプである低圧ポンプ6
4から作動液が漏れることを防止し、高圧ポンプ66か
ら吐出された高圧の作動液によって低圧ポンプ64が逆
転させられることを防止する役割を果たす。高圧ポンプ
66から吐出される高圧の作動液によって低圧ポンプ6
4が逆転させられ、作動液がマスタリザーバ39へ戻る
ことを防止するために、電動モータ60に保持トルクを
加えておかなくてもよいのである。また、逆止弁70
は、ギヤポンプである高圧ポンプ66から作動液が漏れ
ることを防止するとともに、低圧ポンプ64のみが作動
する際に、低圧ポンプ64の吐出液圧に基づいて高圧ポ
ンプ66が逆方向に回転させられ、作動液がマスタリザ
ーバ39へ戻ることを防止する。低圧ポンプ64の作動
時であって高圧ポンプ66の非作動時に、高圧ポンプ6
6を駆動する電動モータ62に保持トルクを加えておか
なくても、高圧ポンプ66の逆回転を防止することがで
きるのである。
【0009】動力液圧源32の液圧は液通路72により
W/C20〜26に供給され、ポンプ液圧センサ74に
より検出される。なお、動力液圧源32には、図示を省
略するが、高圧ポンプ66に対して、それに予定されて
いる最大吐出液圧をリリーフ圧とするリリーフ弁が設け
られている。前記逆止弁70は、万一、このリリーフ弁
が異物を噛み込む等により閉じなくなった場合に、ブレ
ーキ液がマスタリザーバ39へ漏れてしまうことを防止
する機能も果たす。以上の説明から明らかなように、本
実施形態においては、動力液圧源32は、電動モータ6
0,62,低圧ポンプ64,高圧ポンプ66および逆止
弁68,70と、図示しないリリーフ弁とから成るポン
プ装置によって構成されているのである。ポンプ装置の
吐出液圧が動力液圧源32の液圧であり、ポンプ装置の
吐出液圧を検出するポンプ液圧センサ74が動力液圧源
液圧検出装置を構成している。ポンプ装置の吐出液圧を
P で表すが、この吐出液圧PP は、動力液圧源32の
液圧でもあるのである。なお、低圧ポンプ64,高圧ポ
ンプ66の少なくとも一方がプランジャポンプ等、吐出
弁を備えたものである場合には、逆止弁68,70の少
なくとも一方を省略してもよい。
【0010】フロントW/C20,22にそれぞれ対応
して、増圧用電磁制御弁76と減圧用電磁制御弁78、
増圧用電磁制御弁80と減圧用電磁制御弁82が設けら
れている。これらは図2に概略的に示す構造を有し、共
に常閉のシート弁である。リヤW/C24,26に対応
して増圧用電磁制御弁84と減圧用電磁制御弁86、増
圧用電磁制御弁88と減圧用電磁制御弁90が設けられ
ている。図3に示すように、増圧用電磁制御弁84,8
8は常閉のシート弁であるが、減圧用電磁制御弁86,
90は常開のシート弁である。これらの構造は後に詳述
する。リヤW/C24,26の液圧はそれぞれW/C液
圧センサ92,94により検出される。
【0011】前輪10,12側の前記増圧用電磁制御弁
76および減圧用電磁制御弁78は図2に概略的に示す
構造を有している。増圧用電磁制御弁76は、弁座13
0とそれに対して着座,離間可能な弁子132とから成
るシート弁134を備え、弁子132は、付勢装置とし
てのばね136により着座方向に付勢されている。弁子
132と一体的に可動コア138が設けられており、こ
れに対向して固定コア140が設けられている。これら
両コア138,140は上記ばね136により互いに離
間させられているが、コイル142に電流が供給される
ことにより磁化され、可動コア138が固定コア140
側に吸引される。それにより、弁子132が弁座130
から離間させられ、シート弁134が開かれる。増圧用
電磁制御弁76は、それ自身の前後の液圧差が弁子13
2を弁座130から離間させる向きに作用する向きで動
力液圧源32とフロントW/C20とに接続されてい
る。したがって、弁子132は、シート弁134前後の
液圧差に基づく差圧作用力と、可動コア138,固定コ
ア140およびコイル142から成るソレノイド144
の電磁駆動力との和が、ばね136の付勢力と釣り合う
位置で停止することとなり、コイル142への供給電流
の制御による電磁駆動力の制御によって、シート弁13
4の開度を制御することができる。増圧用電磁制御弁7
6の開度を制御することができるのであり、それによっ
て作動液の流量、すなわちフロントW/C20の増圧勾
配(すなわち増圧速度)を制御することができる。ま
た、動力液圧源32の液圧とフロントW/C20の液圧
との差が小さくなり、差圧作用力と電磁駆動力との和が
ばね136の付勢力より僅かに小さくなれば、弁子13
2が弁座に130に着座してシート弁134が閉じるた
め、コイル142への供給電流の制御により動力液圧源
32の液圧とフロントW/C20の液圧との差を制御す
ることができる。
【0012】減圧用電磁制御弁78の構造は増圧用電磁
制御弁76と同じであるため、互いに対応する構成要素
を同一の符号で示し、説明を省略する。ただし、減圧用
電磁制御弁78は、フロントW/C20の液圧とマスタ
リザーバ39の液圧との差に基づく差圧作用力が、弁子
132を弁座130から離間させる向きに作用する向き
で、フロントW/C20とマスタリザーバ39とに液通
路40と液通路146とにより接続されている。したが
って、コイル142への供給電流の制御により、フロン
トW/C20の減圧速度およびフロントW/C20とマ
スタリザーバ39との差圧を制御することができる。マ
スタリザーバ39の液圧は実質的に大気圧と見なし得る
ため、フロントW/C20とマスタリザーバ39との差
圧の制御は、そのままフロントW/C20の液圧制御と
なる。
【0013】リヤW/C24,26側の増圧用電磁制御
弁84,88は上記フロントW/C20,22側の増圧
用電磁制御弁76,80と同じであるため、図3におい
て、互いに対応する構成要素を同一の符号で示し、説明
を省略する。それに対し、減圧用電磁制御弁86,90
は常開のシート弁であり、構造がやや異なる。弁座13
0,弁子132から成るシート弁134を備えることは
同じであるが、弁子130はばね150により弁座13
0から離間する向きに付勢されている。シート弁134
は、リヤW/C24とマスタリザーバ39との差圧に基
づく差圧作用力が弁子132を弁座130から離間させ
る向きに作用する向きで配設されている。弁子132の
後端部は固定コア152の中央に形成された貫通穴を貫
通して延びており、固定コア152から突出させられる
とともに、可動コア154と一体的に設けられている。
コイル156に電流が供給されれば、固定コア152お
よび可動コア154が磁化され、可動コア154が固定
コア152側に吸引されることにより、弁子132に電
磁駆動力が付与される。固定コア152,可動コア15
4およびコイル156から成るソレノイド158の電磁
駆動力が、上記差圧作用力に抗して弁子132を弁座1
30に着座させる向きに作用するのである。なお、ばね
150の付勢力は、差圧作用力も電磁駆動力も作用しな
い状態で弁子132を弁座130から離間した状態に保
ち得る大きさであればよく、弁子132に作用する力の
釣合を考える際には無視して差し支えない。
【0014】以上説明した各構成要素は図4に示す制御
装置170に接続されている。制御装置170は液圧制
御コンピュータ172を備え、この液圧制御コンピュー
タ172は、PU(プロセッシングユニット)174,
ROM176,RAM178,I/Oポート180を備
えている。I/Oポート180には、前記ストロークセ
ンサ58を始めとする各種検出器が接続されるととも
に、前記電動モータ60を始めとする各種アクチュエー
タが、それぞれ駆動回路184を介して接続されてい
る。これら駆動回路184と液圧制御コンピュータ17
2とにより制御装置170が構成されているのである。
I/Oポート180には、車輪スリップ状態監視コンピ
ュータ186が接続されており、ROM176には、図
示および説明を省略するメインルーチンを始めとする他
の制御プログラムと共に、図5のフローチャートで表さ
れる通常液圧制御ルーチンが格納されている。PU17
4は、ストロークセンサ58を始めとする各種検出器か
らの情報に基づいて、RAM178を利用して、通常液
圧制御ルーチンを実行し、W/C20〜26の液圧を制
御するとともに、車輪スリップ状態監視コンピュータ1
86からの情報等に基づき、制動時における車輪の過大
なスリップを防止するアンチロック制御、加速時におけ
る車輪の過大なスリップを防止するトラクション制御、
車両の操縦安定性を確保するために液圧ブレーキシステ
ムを作動させるビークルスタビリティ制御等をも行う。
なお付言すれば、液圧制御コンピュータ172と車輪ス
リップ状態監視コンピュータ186とを1つのコンピュ
ータで構成することも可能である。例えば、上記メイン
ルーチン,通常液圧制御ルーチン等の制御プログラムを
実行するコンピュータのROMに、車輪スリップ状態監
視プログラムをも格納し、時分割で実行させるのであ
る。
【0015】上記アンチロック制御,トラクション制
御,ビークルスタビリティ制御等は本発明を理解する上
で必要がないため説明を省略し、以下、通常液圧制御ル
ーチンの実行によるW/C20〜26の液圧制御を説明
する。通常液圧制御ルーチンは例えば5msec毎のように
一定微小時間毎に1回実行される。まず、ステップ1
(以下S1と記載する。他のステップについても同様)
において、W/C液圧の目標値が演算される。この演算
は、原則的にはW/C液圧の目標値がM/C液圧センサ
54により検出されるM/C液圧(ブレーキペダル36
の踏力に対応する)に比例するように行われるが、ブレ
ーキペダル36の踏込操作に対してM/C液圧の上昇が
遅れるため、ストロークセンサ58により検出されるブ
レーキペダル36の踏込ストロークも考慮して行われ
る。本実施形態においては、W/C液圧の目標値である
目標W/C液圧PWCNMがM/C液圧PMCと踏込ストロー
クSとの間にPWCNM=γ(t)・PMC+δ(t)・Sの
関係が成り立つように決定される。ここにおいて、係数
γ(t)はブレーキペダル36の踏込開始からの経過時
間tが増大するほど大きくなり、係数δ(t)は経過時
間tが増大するほど小さくなるものである。ただし、上
記式に限らず、一般的にPWCNM=f(t,S,PMC)の
関数に基づいて決定されるようにすることができる。
【0016】S1においては、上記のように、ブレーキ
ペダル36の操作状態に応じた目標W/C液圧PWCNM
演算されるのであるが、後述のように、本液圧ブレーキ
システムは、ブレーキペダル36の踏力(M/C液圧P
MC)が小さく、要求されている減速度が小さい場合に
は、前輪ブレーキのみが作動させられ、大きな減速度が
要求されている場合には、前輪ブレーキと後輪ブレーキ
との両方が作動させられるように構成されているため、
目標W/C液圧PWCNMの演算が、前輪ブレーキのみが作
動させられる場合には、前輪ブレーキのみにより要求減
速度が達成されるように行われ、前輪ブレーキと後輪ブ
レーキとの両方が作動させられる場合には、両方のブレ
ーキにより要求減速度が達成されるように行われる。そ
のために、前輪ブレーキのみが作動させられる状態であ
るか、前輪ブレーキと後輪ブレーキとの両方が作動させ
られる状態であるかを表す作動態様フラグがRAM17
8に設けられており、この作動態様フラグが図示しない
メインルーチンの初期設定において、前輪ブレーキのみ
が作動させられる状態であることを表す「0」に設定さ
れるとともに、後述のS7の判定結果がYESの場合に
は前輪ブレーキと後輪ブレーキとの両方が作動させられ
る状態であることを表す「1」に設定され、NOの場合
には「0」に戻される。S1においては、この作動態様
フラグの値が「0」であるか「1」であるかに基づい
て、目標W/C液圧PWCNMの演算が行われる。ブレーキ
ペダル36の踏力は、踏込開始当初は必ず小さいため、
まず前輪ブレーキの作動が開始され、その後踏力が設定
踏力を越えれば、後輪ブレーキの作動も開始されること
となる。この場合には、S1においては、当初前輪ブレ
ーキのみで要求減速度が達成されるように目標W/C液
圧PWCNMが演算され、後に、前輪ブレーキと後輪ブレー
キとの両方で要求減速度が達成されるように目標W/C
液圧PWCNMが演算されることになる。しかも、本実施形
態においては、前輪ブレーキと後輪ブレーキとの両方が
作動させられる場合には、フロントW/C20,22の
液圧とリヤW/C24,26の液圧とが実質的に等しく
なるように制御されるため、踏力が設定踏力を越えた時
点でフロントW/C20,22の目標W/C液圧PWCNM
が急減させられることになる。しかし、後輪ブレーキに
より得られる減速度は前輪ブレーキにより得られる減速
度より相当小さく、また、ブレーキペダル36がほぼ一
定の速度で踏み込まれて、踏力が設定踏力を越える場合
には、フロントW/C20,22の液圧に制御遅れが生
じているため、上記フロントW/C20,22の目標W
/C液圧PWCNMの急減に起因する実際の減速度の変化
は、運転者に違和感を与えるほど大きくはならないのが
普通である。
【0017】S2において、実際のW/C液圧である実
W/C液圧PWCACの上記目標W/C液圧PWCNMに対する
偏差が演算される。通常制動時においては、前輪ブレー
キのみが作動させられる場合にはフロントW/C20,
22同士の実W/C液圧PWC AC、前輪ブレーキと後輪ブ
レーキとが共に作動させられる場合にはW/C20〜2
6の実W/C液圧PWCACは本来互いに等しいはずである
が、実際には増圧用電磁制御弁76等の個体差によっ
て、W/C20〜26の実W/C液圧PWCACには微小な
ばらつきが生じる。そのため、S2においては、すべて
のW/C20〜26の実W/C液圧PWCACの目標W/C
液圧PWCNMに対する偏差が求められる。そして、S3に
おいて、上記偏差のいずれかがW/C液圧の増大を必要
とするものであるか否か、すなわち、いずれかのW/C
の実W/C液圧PWCACが目標W/C液圧PWCNMより小さ
いか否かが判定される。判定の結果がYES、すなわち
1輪以上のW/Cにおいて増圧の必要があると判定され
た場合には、S4において、要求増圧勾配が大きいか否
かが判定される。すなわち、S1において今回演算され
た目標W/C液圧PWCNMから前回演算された目標W/C
液圧PWCNMを差し引いた差である要求増圧勾配が設定増
圧勾配(前輪ブレーキのみが作動させられる場合と、前
輪ブレーキと後輪ブレーキとが共に作動させられる場合
とでは異なる値に設定される)より大きいか否かの判定
が行われるのである。
【0018】判定の結果がNO、すなわち要求増圧勾配
が小さい場合には、S5において高圧ポンプ66の運転
が行われる。高圧ポンプ66を駆動する電動モータ62
に、前記目標W/C液圧PWCNMおよび上記要求増圧勾配
を達成するに適した電流が供給されて、高圧ポンプ66
が適切な駆動力で駆動されるのである。なお、電動モー
タ62への供給電流と、高圧ポンプ66により実現され
る吐出液圧および増圧勾配との関係が予め実験により調
べられてテーブル化され、ROM176に格納されてお
り、電動モータ62への供給電流は、このポンプ性能テ
ーブルに基づくフィードフォワード制御と、ポンプ液圧
センサ74の検出結果に基づくフィードバック制御とに
より制御される。続いて、S6において、低圧ポンプ6
4の運転が停止される。電動モータ60への供給電流が
停止されるのであり、それによって、それまで低圧ポン
プ64が運転されていた場合には停止させられ、運転さ
れていなかった場合には停止し続けさせられる。
【0019】その後、S7において、M/C液圧センサ
54により検出されたM/C液圧が設定M/C液圧より
大きいか否かにより、ブレーキペダル36の踏力が設定
踏力より大きいか否かが判定される。設定M/C液圧
は、それに見合う減速度を前輪ブレーキのみで発生可能
である限界の液圧に設定されており、S7の判定結果が
YESであれば、S8において、前述のように作動態様
フラグが前輪ブレーキと後輪ブレーキとが共に作動させ
られることを表す「1」に設定され、S9において、リ
ヤW/C24,26に対応する増圧用電磁制御弁84,
88の開度が決定される。前記要求増圧勾配を達成する
に適した開度が決定されるのであり、その開度に対応す
る電流が増圧用電磁制御弁84,88のソレノイド14
4に供給される。なお、増圧用電磁制御弁84,88の
実際の開度は、ソレノイド144への供給電流のみでは
なく、増圧用電磁制御弁84,88の前後の液圧差の影
響も受けるが、ここで供給される電流は、増圧用電磁制
御弁84,88の前後の液圧差を0であると仮定した場
合に、上記決定された開度が得られる電流である。この
電流の供給によって、リヤW/C24,26にブレーキ
液が供給され、後輪ブレーキが作動させられる。また、
S10において、フロントW/C20,22に対応する
増圧用電磁制御弁76,80の開度が決定され、その開
度に対応する電流がソレノイド144に供給されて、前
輪ブレーキが作動させられる。増圧用電磁制御弁76,
80の開度の決定と、ソレノイド144への電流の供給
は後輪ブレーキの場合と同様に行われる。
【0020】このように、ブレーキペダル36の踏力が
設定踏力より大きい場合には、後輪ブレーキと前輪ブレ
ーキとの両方が作動させられるのであるが、ブレーキペ
ダル36の踏力が設定踏力より小さい場合にはS7の判
定結果がNOとなり、S11において、作動態様フラグ
が前輪ブレーキのみが作動させられることを表す「0」
に設定され、S12において、リヤW/C24,26に
対応する増圧用電磁制御弁84,88が閉じられる。そ
の後、S10において前輪ブレーキが作動させられるの
であるが、上記のように増圧用電磁制御弁84,88が
閉じられているため、後輪ブレーキは作動させられず、
前輪ブレーキのみが作動させられることとなる。
【0021】前記S4の判定結果がYESの場合、すな
わち要求増圧勾配が大きい場合には、S13において低
圧ポンプ64が運転される。この低圧ポンプ64の運転
も前記高圧ポンプ66の運転と同様に行われるが、低圧
ポンプ64の運転では不足の場合、すなわち、実現され
た増圧勾配が要求増圧勾配より小さい場合、または目標
W/C液圧が低圧ポンプ64の最大吐出液圧より大きい
場合には、S14の判定がYESとなり、S15におい
て高圧ポンプ66の運転が行われる。低圧ポンプ64と
高圧ポンプ66との両方が運転され、大きな増圧勾配ま
たは大きな吐出液圧が得られるようにされるのである。
ただし、S13において低圧ポンプ64の運転が開始さ
れた直後にS14の判定が行われれば、未だ低圧ポンプ
64が定常運転状態に達していないため、S14の判定
が必ずYESになり、高圧ポンプ66の運転が開始され
てしまう。したがって、S14の判定は、S13におい
て低圧ポンプ64の運転が開始された後、定常運転状態
になるのに十分な時間が経過した後にのみ行われ、それ
以前は必ずS16へ移行するようにされている。S16
においては、高圧ポンプ66の運転が停止させられる。
低圧ポンプ64のみの運転で要求増圧勾配および要求液
圧が満たされる場合には、高圧ポンプ66は運転されな
いのである。
【0022】また、前記S3の判定結果がNO、すなわ
ちフロントW/C20,22およびリヤW/C24,2
6のいずれにおいても増圧の必要がない場合には、S1
7において、高圧ポンプ66,低圧ポンプ64のうち、
その時点に運転されているものの電動モータ60,62
の電流が、ポンプ液圧センサ74により検出される液圧
が、その時点における目標W/C液圧PWCNMより予め定
められた一定量だけ高い液圧となるように制御される。
続いて、S18において、すべての増圧用電磁制御弁7
6,80,84,88が閉じられ、S19において、減
圧用電磁制御弁78,82,86,90のうち、減圧が
必要なものは開かれ、保持が必要なものは閉じられる。
この制御により、フロントW/C20,22およびリヤ
W/C24,26の各液圧が、ブレーキペダル36の踏
込操作状況によって決まる減速度が実現される大きさに
それぞれ制御される。
【0023】このように、本液圧ブレーキシステムにお
いては、要求増圧勾配が大きい場合には、消費電力の大
きい低圧ポンプ64が運転されるが、要求増圧勾配が小
さい場合には、消費電力の小さい高圧ポンプ66が運転
されるため、ポンプ装置により構成される動力液圧源3
2の制御に要する電力が可及的に小さくて済む。また、
要求減速度が大きい場合には、前輪ブレーキと後輪ブレ
ーキとの両方が作動させられるのであるが、要求減速度
が小さい場合には、前輪ブレーキのみが作動させられる
ため、常に前輪ブレーキと後輪ブレーキとの両方が作動
させられる場合に比較して、増圧用および減圧用の電磁
制御弁76ないし90の制御に要する電力が小さくて済
む。特に、後輪ブレーキ用の減圧用電磁制御弁86,9
0は常開弁であるため、後輪ブレーキを作動させるため
には減圧用電磁制御弁86,90のソレノイド158に
励磁電流を供給し続けることが必要であり、消費電力が
大きいが、後輪ブレーキは特に大きな減速度が要求され
た場合にのみ作動させられるようになっているため、消
費電力が小さくて済む。さらに、増圧制御時に、増圧用
電磁制御弁76,80,84,88は、要求増圧勾配に
応じた開度で開かれるようになっているため、増圧制御
時には常に全開とされる場合に比較して、制御用電力が
小さくて済む。
【0024】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、増圧用電磁制御弁76,80および減圧
用電磁制御弁78,82が前輪制動力制御装置を構成
し、増圧用電磁制御弁84,88および減圧用電磁制御
弁86,90が後輪制動力制御装置を構成し、液圧制御
コンピュータ172のS7ないしS12を実行する部分
が選択的電力供給部を構成している。また、低圧ポンプ
64と高圧ポンプ66とが駆動電力が互いに異なる複数
のポンプを構成し、液圧制御コンピュータ172のS4
ないしS6およびS13ないしS16を実行する部分が
選択的ポンプ駆動部を構成している。そして、上記前輪
制動力制御装置および後輪制動力制御装置が、電動モー
タ60,62およびそれらを駆動する駆動回路184と
共に制動力制御装置を構成し、上記選択的電力供給部お
よび選択的ポンプ駆動部が電力供給制御装置を構成して
いる。
【0025】さらに、低圧ポンプ64および高圧ポンプ
66が吐出流量が可変のポンプ装置を構成し、増圧用電
磁制御弁76,80,84,88が増圧制御弁装置を構
成し、液圧制御コンピュータ172の図5の通常液圧制
御ルーチンを実行する部分が電力配分制御部を構成して
いる。また、上記吐出流量が可変のポンプ装置と、増圧
制御弁装置とが複数の制動力制御装置を構成し、液圧制
御コンピュータ172の図5の通常液圧制御ルーチンを
実行する部分が電力供給制御装置を構成している。
【0026】なお付言すれば、上記実施形態において
は、当初前輪ブレーキのみが作動させられ、後にブレー
キペダル36の踏力が設定踏力より大きくなった場合
に、後輪ブレーキが追加的に作動させられるのである
が、その場合に、単独で要求減速度を実現していた前輪
ブレーキの目標W/C液圧(目標制動力)が一旦小さく
されて、前輪ブレーキと後輪ブレーキとが同じW/C液
圧で作動させられることにより共同で要求減速度を実現
するようにされていた。しかし、前輪ブレーキはそれま
での制動力を維持し、後輪制動力が単純に付加され、0
から徐々に大きくされるようにすることも可能である。
後輪制動力を0から徐々に大きくすることは、動力液圧
源32の液圧を一定に保ち、増圧用電磁制御弁84,8
8を制御することにより実現し得る。
【0027】また、上記実施形態においては、ポンプ装
置により構成される動力液圧源32の制御に要する電力
が可及的に小さくて済むようにする対策と、要求減速度
が小さい場合には前輪ブレーキのみが作動させられるよ
うにすることによって消費電力が小さくて済むようにす
る対策と、増圧制御時に増圧用電磁制御弁76,80,
84,88を不必要に大きく開弁させないようにするこ
とによって消費電力が小さくて済むようにする対策との
3つがすべて講じられていたが、図6,図7および図8
にそれぞれ示す制御ルーチンにより、3つの対策の各々
が独立に講じられるようにすることも可能である。ま
た、制御ルーチンの図示は省略するが、上記3つの対策
の任意の2つが組み合わされて実施されるようにするこ
とも可能である。
【0028】図6のポンプ装置制御ルーチンでは、S2
0においてストロークセンサ58からブレーキペダル3
6の踏込みストロークが読み込まれ(M/C液圧センサ
54からM/C液圧が読み込まれてもよい)、その踏込
みストロークが増大中であるか否かによってS21にお
いて増圧が必要か否かの判定が行われる。増圧が必要で
あれば、S22において、前回の踏込みストロークと今
回の踏込みストロークとの差が第1設定差以下であるか
否かにより、要求増圧勾配が小さいか否かの判定が行わ
れ、判定がYESであれば、S23で高圧ポンプ66が
運転される。判定がNOであればS24において、前回
の踏込みストロークと今回の踏込みストロークとの差が
第1設定差より大きい第2設定差以下であるか否かによ
り、要求増圧勾配が中程度であるか否かの判定が行わ
れ、判定がYESであれば、S25において低圧ポンプ
64が運転されるが、判定がNOであれば、要求増圧勾
配が大きいということであるから、S26において高圧
ポンプ66と低圧ポンプ64との両方が運転される。ま
た、S25の実行後に、S27において踏込みストロー
クが設定ストローク以上であるか否かにより、踏込みス
トロークが大きいか否かの判定が行われ、判定がYES
であれば、S28で高圧ポンプ66が追加的に運転され
て、高圧のブレーキ液がW/C20〜26に供給可能と
される。前記S21の判定がNOであれば、S29にお
いてその時点で運転されている高圧ポンプ66,低圧ポ
ンプ64の吐出液圧が維持される。
【0029】図7の前後輪ブレーキ制御ルーチンでは、
S31において、ブレーキペダル36の踏力が読み込ま
れる。踏力はM/C液圧センサ54の検出結果から換算
されてもよく、ブレーキペダル36に取り付けられた踏
力センサから読み込まれてもよい。踏力の代わりに、ス
トロークセンサ58からストロークが読み込まれるよう
にすることも可能である。続いてS32において、読み
込まれた踏力(またはストローク)から要求減速度が演
算され、S33において要求減速度が設定減速度より大
きいか否かが判定される。判定の結果がYESの場合に
は、S34で前輪ブレーキと後輪ブレーキとの両方が作
動させられ、NOの場合には、S35で前輪ブレーキの
みが作動させられる。前輪ブレーキ,後輪ブレーキは共
に液圧ブレーキでもよく、少なくとも一方が電動ブレー
キとされてもよい。
【0030】図8の電磁制御弁制御ルーチンにおいて
は、S41でブレーキペダル36の踏力が読み込まれ、
S42で増圧が必要であるか否かが判定される。判定が
YESであれば、S43において、踏力の変化速度に基
づいて増圧用電磁制御弁76,80,84,88の開度
が決定され、判定がNOであれば、S44で減圧が必要
であるか否かが判定される。判定がYESであれば、S
45において、踏力の変化速度に基づいて減圧用電磁制
御弁78,82,86,90の開度が決定され、判定が
NOであれば、S46において、増圧用電磁制御弁7
6,80,84,88および減圧用電磁制御弁78,8
2,86,90が共に閉じられる。本実施形態において
は、ブレーキペダル36の操作に応じて増圧用,減圧用
の電磁制御弁が一斉に制御されるが、M/C液圧センサ
54,W/C液圧センサ50,52,92,94の検出
結果に基づいて各々独立に制御されるようにすることも
可能である。
【0031】また、前記実施形態は、本発明が液圧ブレ
ーキシステムに適用された場合の一例であるが、本発明
はこれ以外の態様で液圧ブレーキシステムに適用するこ
とは勿論、電動モータ等の電動アクチュエータにより作
動する電動ブレーキを備えたブレーキシステムに適用す
ることも可能である。その最も単純な一例は、要求減速
度が小さい場合には、前輪ブレーキの電動アクチュエー
タと後輪ブレーキの電動アクチュエータとのいずれか一
方のみが作動させられ、要求減速度が大きい場合には、
前輪ブレーキと後輪ブレーキとの両方の電動アクチュエ
ータが作動させられるブレーキシステムである。
【0032】その他、いちいち例示することはしない
が、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段
および効果〕の項に記載された態様を始め、当業者の知
識に基づいて種々の変形,改良を加えた態様で本発明を
実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である液圧ブレーキシステ
ムを示す系統図である。
【図2】上記液圧ブレーキシステムにおいて、前輪につ
いて設けられた増圧用電磁制御弁および減圧用電磁制御
弁を示す正面図(一部断面)である。
【図3】上記液圧ブレーキシステムにおいて、後輪につ
いて設けられた増圧用電磁制御弁および減圧用電磁制御
弁を示す正面図(一部断面)である。
【図4】上記液圧ブレーキシステムに設けられた制御装
置のうち、本発明に関連の深い部分を概略的に示すブロ
ック図である。
【図5】上記液圧ブレーキシステムの通常液圧制御ルー
チンを示すフロチャートである。
【図6】本発明の別の実施形態である液圧ブレーキシス
テムのポンプ装置制御ルーチンを示すフロチャートであ
る。
【図7】本発明のさらに別の実施形態である液圧ブレー
キシステムの前後輪ブレーキ制御ルーチンを示すフロチ
ャートである。
【図8】本発明のさらに別の実施形態である液圧ブレー
キシステムの電磁制御弁制御ルーチンを示すフロチャー
トである。
【符号の説明】
10:左前輪 12:右前輪 14:左後輪 1
6:右後輪 20,22:フロントホイールシリンダ
24,26:リヤホイールシリンダ 36:ブレ
ーキペダル 50,52,90,92:ホイールシリ
ンダ液圧センサ 54:マスタシリンダ液圧センサ 58:ストローク
センサ 60,62:電動モータ 64:低圧ポン
プ 66:高圧ポンプ 74:ポンプ液圧センサ
76,80,84,88:増圧用電磁制御弁 7
8,82,86,90:減圧用電磁制御弁 170:
制御装置 172:液圧制御コンピュータ

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ブレーキ操作部材と、 少なくとも1個のブレーキと、 電力により作動し、前記ブレーキ操作部材の操作に応じ
    て、前記少なくとも1個のブレーキの制動力を制御する
    制動力制御装置とを含むブレーキシステムにおいて、 前記制動力制御装置を、前記ブレーキ操作部材の操作量
    に応じた制動効果を複数の態様で発生可能なものとし、
    かつ、それら複数の態様のうち制動力制御装置への供給
    電力が小さくて済む態様を選択して制動力制御装置への
    電力供給を行う電力供給制御装置を設けたことを特徴と
    するブレーキシステム。
  2. 【請求項2】 当該ブレーキシステムが、車両の前輪の
    回転を抑制する前輪ブレーキおよび後輪の回転を抑制す
    る後輪ブレーキと、前輪ブレーキの制動力を制御する前
    輪制動力制御装置および後輪ブレーキの制動力を制御す
    る後輪制動力制御装置とを含み、前記電力供給制御装置
    が、前記要求制動効果が小さい場合には、前輪制動力制
    御装置と後輪制動力制御装置との一方に電力を供給し、
    要求制動効果が大きい場合には前輪制動力制御装置と後
    輪制動力制御装置との両方に電力を供給する選択的電力
    供給部を含むことを特徴とする請求項1に記載のブレー
    キシステム。
  3. 【請求項3】 前記前輪ブレーキと後輪ブレーキとの少
    なくとも一方が液圧により作動する液圧ブレーキであ
    り、前記前輪制動力制御装置および後輪制動力制御装置
    のうち液圧ブレーキに対応するものが、駆動電力が互い
    に異なる複数のポンプを含み、前記電力供給制御装置
    が、前記ブレーキ操作部材の操作により要求される制動
    力の大きさと増大勾配との少なくとも一方に基づいて前
    記複数のポンプのうち駆動電力を供給するものを決定す
    る選択的ポンプ駆動部を含むことを特徴とする請求項1
    または2に記載のブレーキシステム。
  4. 【請求項4】 前記前輪ブレーキと後輪ブレーキとの少
    なくとも一方が液圧により作動する液圧ブレーキであ
    り、前記前輪制動力制御装置および後輪制動力制御装置
    のうち液圧ブレーキに対応するものが、吐出流量が可変
    のポンプ装置と、そのポンプ装置から吐出されたブレー
    キ液の前記液圧ブレーキへの流入を制御することにより
    液圧ブレーキの増圧を制御する増圧制御弁装置とを含
    み、前記電力供給制御装置が、前記ポンプ装置と増圧制
    御弁装置とへの供給電力の和が小さくなるようにポンプ
    装置と増圧制御弁装置とへの供給電力の配分を制御する
    電力配分制御部を含むことを特徴とする請求項1ないし
    3のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
  5. 【請求項5】 ブレーキ操作部材と、 少なくとも1個のブレーキと、 電力により作動し、前記ブレーキ操作部材の操作に応じ
    て、前記少なくとも1個のブレーキの制動力を制御する
    複数の制動力制御装置とを含むブレーキシステムにおい
    て、 前記ブレーキ操作部材の操作により要求される制動効果
    が得られる範囲内において、前記複数の制動力制御装置
    への供給電力の和が小さくなるように複数の制動力制御
    装置への電力供給を制御する電力供給制御装置を設けた
    ことを特徴とするブレーキシステム。
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