JP2004322319A - 熱転写受像シート - Google Patents
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Abstract
【課題】シールタイプの熱転写受像シートで、芳香性を十分に有し、熱転写画像の形成領域が狭められることなく、染料層を有した熱転写シートとの熱融着や、熱転写画像に滲み等を防止した、商品性の高い熱転写受像シートを提供する。
【解決手段】少なくとも、受容層、基材、粘着剤層がこの順に積層されたシール部と、離型シートから構成され、該離型シートの離型面とシール部の粘着剤層が剥離可能に貼合されたもので、該離型シートの離型面と反対側の面に芳香成分を含有している。これにより、熱転写受像シートに熱転写画像を形成後に、画像上やシールを貼り付けた物品のシール部周辺に離型シートの離型面と反対側を擦り付けて、芳香性を発現させることができる。したがって、受容層に始めから芳香成分を含有させていないので、熱転写シートと受容層との画像形成時の熱融着を防止し、熱転写画像が経時変化により滲んだりすることがない。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも、受容層、基材、粘着剤層がこの順に積層されたシール部と、離型シートから構成され、該離型シートの離型面とシール部の粘着剤層が剥離可能に貼合されたもので、該離型シートの離型面と反対側の面に芳香成分を含有している。これにより、熱転写受像シートに熱転写画像を形成後に、画像上やシールを貼り付けた物品のシール部周辺に離型シートの離型面と反対側を擦り付けて、芳香性を発現させることができる。したがって、受容層に始めから芳香成分を含有させていないので、熱転写シートと受容層との画像形成時の熱融着を防止し、熱転写画像が経時変化により滲んだりすることがない。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シールタイプの熱転写受像シートに関する。更に詳しくは、シールタイプの熱転写受像シートにおいて、芳香性を十分に有し、熱転写画像の形成領域が狭められることなく、染料層を有した熱転写シートとの熱融着や、熱転写画像に滲み等を防止した、商品性の高い熱転写受像シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、熱転写方式を用いて被転写体に文字や画像を形成することが行われている。熱転写方式としては、感熱昇華型転写方式と感熱溶融型転写方式が広く用いられている。このうち、感熱昇華型転写方式は、昇華性染料を色材とし、それを画像情報に応じて、発熱制御されたサーマルヘッドやレーザー光等の加熱デバイスを用いて、熱転写シート上の昇華性染料層中の染料を熱転写受像シート等の被転写体に移行させて画像を形成させる方式である。
【0003】
この感熱昇華型転写方式は、極めて短時間の加熱によってドット単位で染料の移行量を制御できる。このように形成された画像は、使用する色材が染料であることから非常に鮮明であり、且つ透明性に優れているため、得られる画像は中間調の再現性や階調性に優れ、極めて高精細な画像を得ることができる。このため、フルカラー銀塩写真に匹敵する高品質の画像を得ることができる。
【0004】
マルチメディアに関連した様々なハードおよびソフトの発達により、この熱転写方式は、コンピューターグラフィックス、衛星通信による静止画像そしてCDROMその他に代表されるデジタル画像およびビデオ等のアナログ画像のフルカラーハードコピーシステムとして、その市場を拡大している。
【0005】
この熱転写方式による熱転写受像シートの具体的な用途は、多岐にわたっている。代表的なものとしては、印刷の校正刷り、画像の出力、CAD/CAMなどの設計およびデザインなどの出力、CTスキャンや内視鏡カメラなどの各種医療用分析機器、測定機器の出力用途そしてインスタント写真の代替として、また身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類への顔写真などの出力、さらに遊園地、ゲームセンター、博物館、水族館などのアミューズメント施設における合成写真、記念写真、絵ハガキとしての用途などをあげることができる。
【0006】
さらに、上記のような用途の多様化に伴い、任意の対象物に貼り付けられるもので、例えば、画像が形成される受容層と基材が、粘着剤層を介して、離型シートと剥離可能な構成の熱転写受像シートが使用されている。いわゆる、ラベルやシールタイプと言われているものである。この熱転写受像シートは、受容層に所望の画像を形成後、該受容層を有する基材を剥離して任意の対象物に貼着する用途のものである。
【0007】
また、上記のシールタイプの熱転写受像シートで、金属蒸着や着色印刷が施されたフィルムや、ホログラム、レインボー等に代表される装飾効果の高いフィルムを使用したラベルも使用されている。
このような意匠性が高いものだけでなく、例えば特許文献1に記載されているように、昇華型熱転写受像シートの受容層上に芳香成分を含有する芳香成分含有印刷層を設けたり、少なくとも受容層及び基材を含む複数の構成成分からなる昇華型熱転写受像シートで、その構成成分の何れかに芳香成分が含まれていることが開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−187368号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、芳香性を有する熱転写受像シートが示されているが、受容層上に芳香成分含有層を設ける場合、受容層の熱転写画像形成領域が狭められるという問題があり、中間層、貼り合わせ基材の接着剤層、シールタイプの熱転写受像シートの粘着剤層に芳香成分を含有させる場合では、熱転写受像シートの最表面に芳香成分が無いため、芳香性が乏しいという問題がある。
さらに、熱転写受像シートの受容層に芳香成分を含有させる場合では、芳香性を高くするために、芳香成分を受容層中に高い比率で含有させる必要が生じ、それが昇華性染料を含有する染料層を有した熱転写シートと受容層との画像形成時の離型性が不足して、両者が熱融着したり、熱転写画像が経時変化により滲んだりするという問題がある。
【0010】
したがって、本発明は上記従来技術の問題点を解決し、シールタイプの熱転写受像シートにおいて、芳香性を十分に有し、熱転写画像の形成領域が狭められることなく、染料層を有した熱転写シートとの熱融着や、熱転写画像に滲み等を防止した、商品性の高い熱転写受像シートを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の熱転写受像シートは、請求項1として、少なくとも、受容層、基材、粘着剤層がこの順に積層されたシール部と、離型シートからなり、該離型シートの離型面とシール部の粘着剤層が剥離可能に貼合された熱転写受像シートにおいて、該離型シートの離型面と反対側の面に芳香成分を含有していることを特徴とする。
また、前記の芳香成分が、芳香物質を内包させたマイクロカプセルであることを特徴とする。このマイクロカプセルを使用すれば、熱転写受像シートの製造中から芳香を発生することなく、熱転写画像形成後、シール部を任意の物品に貼付して、離型シートのマイクロカプセルを物と擦り付けて、カプセルの壁膜を破壊して、カプセル内の香料により芳香を放出させることができ、ユーザーが必要な時に、自由に擦って芳香を楽しむことが可能となる。
【0012】
本発明の熱転写受像シートは、少なくとも、受容層、基材、粘着剤層がこの順に積層されたシール部と、離型シートから構成され、該離型シートの離型面とシール部の粘着剤層が剥離可能に貼合されたもので、該離型シートの離型面と反対側の面に芳香成分を含有している。これにより、熱転写受像シートに熱転写画像を形成後に、画像上やシールを貼り付けた物品のシール部周辺に熱転写受像シートの離型シートの離型面と反対側を擦り付けて、芳香性を発現させることができる。したがって、受容層に始めから芳香成分を含有させていないので、染料層を有した熱転写シートと受容層との画像形成時の離型性が不足して、両者が熱融着したり、熱転写画像が経時変化により滲んだりすることなく、芳香性が高く、商品性の高い熱転写受像シートが得られる。芳香成分を含有するものが離型シートであり、この離型シートは受容層に熱転写画像を形成後、シール部を物品に貼付して、廃棄するものであり、離型シートを折ったり、取り扱いを粗雑にしても構わなく、ユーザーが自由に擦って芳香を楽しむことが可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面を使用して説明する。
図1は、本発明の熱転写受像シートの一つの実施形態であり、基材1の一方の面に受容層2が設けられ、基材1の他方の面に粘着剤層3、離型シート4が積層されている。その離型シート4と粘着剤層3は剥離可能に貼合されていて、受容層2、基材1、粘着剤層3の順に積層された部分がシール部5として、任意の物品に貼付することができる。また、離型シート4の粘着剤層3と接する側と反対側の全面に芳香成分含有層6を設けた形態である。
【0014】
図2は、本発明の熱転写受像シートの他の実施形態であり、基材1の一方の面に中間層7、受容層2が設けられ、基材1の他方の面に粘着剤層3、離型シート4が積層されている。その離型シート4と粘着剤層3は剥離可能に貼合されていて、受容層2、中間層7、基材1、粘着剤層3の順に積層された部分がシール部5として、任意の物品に貼付することができる。離型シート4は、離型シート基材41と離型層42から構成され、離型層42と粘着剤層3との間で剥離する。また離型シート4において、離型シート4の粘着剤層3と接する側と反対側の面に、芳香成分含有層6と裏面印刷層8が設けられている形態である。この形態では、芳香成分含有層6と裏面印刷層8が重複せずに、別々の領域に形成されているが、それに限らず両者が重なり合ってもよい。
【0015】
以下、本発明の熱転写受像シートを構成する各層について詳細に説明する。
(基材)
基材1は、受容層を保持するという役割を有するとともに、熱転写時には熱が加えられるため、加熱された状態でも取り扱い上支障がない程度の機械強度を有し、さらに基材の受容層の設けられる側と反対側に粘着剤層を保持し、任意の物品にシールとして貼付する際に、シール部の基材として機能する。
【0016】
このような基材の材料は特に限定されず、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、またはサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打ち用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネイト、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニールアルコール、ポリビニールブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の各種プラスチックフィルム又はシートが使用でき、特に限定されない。
【0017】
また、上記合成紙またはプラスチックフィルムのうち、内部にミクロボイドを有するものを用いることができる。ミクロボイドを有するプラスチックフィルム又は合成紙としては、ポリオレフィン、特にポリプロピレンを主体として、それに無機顔料を添加したものを製膜・延伸することにより形成されるが、無機顔料及び/又はポリプロピレンと非相溶なポリマ−をブレンドし、これらを発泡開始剤として用い、このコンパウンドを延伸、成膜したプラスチックフィルム又は合成紙が好ましい。上述のプラスチックフィルムや合成紙は、それ自体が、ミクロボイドを含む層の単層であっても良いし、複数の層構成であっても良い。複数の層構成の場合には、その構成する全ての層にミクロボイドを含有しても良いし、ミクロボイドが存在しない層が存在しても良い。そして、このプラスチックフィルムや合成紙には、必要に応じて、隠ぺい剤として、白色顔料を混入させても良い。また、白色性を増すために、蛍光増白剤等の添加剤を加えることができる。さらに、光沢性・平滑性を与えるために、表面にスキン層を設けても良い。プラスチックフィルムや合成紙は、30〜80μmの厚さが好ましい。
【0018】
また、上記基材の任意の組み合わせによる積層体も使用できる。代表的な積層体の例として、セルロース繊維紙と合成紙、或いはセルロース繊維紙とプラスチックフィルム又はシートの積層合成紙が挙げられる。このような積層合成紙は2層体でもよいが、基材の風合いや質感を出す為に、両面に合成紙やプラスチックフィルムを貼合した3層体もしくは3層以上の積層体であってもかまわない。これらの基材の厚みは任意でよく、通常10〜300μm程度の厚みが一般的である。
また、上記の如き基材は、その表面に形成する層との密着力が乏しい場合にはその表面に各種プライマー処理やコロナ放電処理を施すのが好ましい。
【0019】
(受容層)
上記の基材の上に形成される受容層2は、基材の上に直接または、プライマー層を介して、形成することができる。受容層は、熱溶融転写記録と昇華転写記録の各記録方式の違いにより、受容層の構成が異なる。また、熱溶融転写記録では受容層を設けずに、基材に直接、熱転写シートから着色転写層を熱転写することも可能である。熱溶融転写記録と昇華転写記録の受容層は、加熱により熱転写シートから転写される色材を受容する働きを有するもので、特に昇華性染料の場合には、それを受容し、発色させると同時に、一旦受容した染料を再昇華させないことが望まれる。
【0020】
受容層は、一般に熱可塑性樹脂を主体として構成される。受容層を形成する材料としては、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられ、中でも特に好ましいものはポリエステル系樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体及びそれらの混合物である。
【0021】
画像形成時において、着色転写層を有する熱転写シートと、熱転写受像シートの受容層との融着若しくは印画感度の低下等を防ぐ目的で、昇華転写記録では、受容層に離型剤を混合することができる。混合して使用する好ましい離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられるが、中でもシリコーンオイルが望ましい。そのシリコーンオイルとしては、エポキシ変性、ビニル変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシ・ポリエーテル変性、ポリエーテル変性等の変性シリコーンオイルが望ましい。
【0022】
離型剤は1種若しくは2種以上のものが使用される。また、離型剤の添加量は受容層形成用樹脂100質量部に対し、0.5〜30質量部が好ましい。この添加量の範囲を満たさない場合は、昇華型熱転写シートと熱転写受像シートの受容層との融着若しくは印画感度の低下等の問題が生じる場合がある。このような離型剤を受容層に添加することによって、転写後の受容層の表面に離型剤がブリードアウトして離型層が形成される。また、これらの離型剤は受容層に添加せず、受容層上に別途塗工してもよい。受容層は、基材の上に上記の如き樹脂に離型剤等の必要な添加剤を加えたものを適当な有機溶剤に溶解したり、或いは有機溶剤や水に分散した分散体を適当な塗布方法で塗布及び乾燥することによって形成される。上記受容層の形成に際しては、受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を更に高める目的で、白色顔料や蛍光増白剤等を添加することができる。以上のように形成される受容層は任意の厚さでよいが、一般的には塗工量で1〜50g/m2(固形分)程度である。また、このような受容層は連続被覆であるのが好ましいが、樹脂エマルジョン若しくは水溶性樹脂や樹脂分散液を使用して、不連続の被覆として形成してもよい。
【0023】
(中間層)
前記基材と前記受容層との間には、基材と受容層との接着性、受容層の白色度、クッション性、隠蔽性、帯電防止性、カール防止性等の付与を目的とし、従来から公知のあらゆる中間層7を設けることができる。
この中間層に用いるバインダー樹脂としては、例えばポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のうち、活性水素を有するものについては、さらにそれらのイソシアネート硬化物をバインダーとすることもできる。
【0024】
また、白色性、隠蔽性を付与する為に酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のフィラーを添加することが好ましい。
さらに、白色性を高める為に、スチルベン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物等を蛍光増白剤として添加したり、印画物の耐光性を高める為に、ベンゾフェノン系化合物等を紫外線吸収剤あるいは酸化防止剤として添加したり、あるいは帯電防止性を付与する為に、カチオン系アクリル樹脂、ポリアニリン樹脂、各種導電性フィラー等を添加することができる。
【0025】
(粘着剤層)
本発明において使用する粘着剤層3は、従来から公知である溶剤系及び水系のいずれの粘着剤を用いて形成することができる。粘着剤として、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン樹脂や、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムなどが挙げられる。粘着剤層の塗工量は、約8〜30g/m2(固形分)が一般的であり、従来公知の方法、すなわち、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の方法で、塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する。
【0026】
また粘着剤層の粘着力は、離型シートと粘着剤層との剥離強度で、JIS Z0237準拠の180°による剥離方法において、0.98〜16.7Nの範囲、好ましくは4.9〜13.7Nの範囲にすることが望ましい。以上の如き粘着剤の種類や、塗工量は、離型シート上に粘着剤層を形成する際に、その剥離強度が前記範囲になるように、選択して使用することが好ましい。離型シートと、少なくとも受容層と基材を粘着剤層により積層する方法としては、例えば、ドライラミネーション、ノンソルベント(ホットメルト)ラミネーション、ECラミネーション方法等の公知の積層方法が使用できるが、好ましい方法はドライラミネーション及びノンソルベントラミネーション方法である。
【0027】
(離型シート)
離型シート4は、本発明の熱転写受像シートのシール部の粘着剤層を剥離可能に保護するものであり、各種紙類、プラスックフィルム類等に剥離処理を施したものであり、通常は、離型シート基材41と離型層42とからなり、従来公知の各種離型シートが使用できる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリカーボネートフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム等の各種フィルムが挙げられる。
【0028】
また、離型シートとして、剥離処理が施された基材内部にミクロボイドを有するプラスチックフィルムを用いると、そのクッション性によって、画像濃度や印字感度を向上させることができ、好ましい。通常、このミクロボイドを有するプラスチックフィルムを離型シート基材として、これに剥離処理を施した離型層を形成する。ミクロボイドを有するプラスチックフィルムは、フィルム形成樹脂中に微細空孔の核となる無機または有機フィラーや、フィルム形成樹脂と相溶性の低い樹脂等を混合したものをシート状に成膜し、1軸延伸または多軸延伸処理を施すことにより、内部に微細空孔を形成したものである。
【0029】
離型シートの剥離処理は、剥離効果のある樹脂や剥離剤を塗布する等、特に限定されない。例えば、離型層42としては、シリコーンワックス等の各種ワックス類、シリーコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等から構成することが挙げられる。離型層の厚みは、塗工量で0.05〜5g/m2(固形分)程度あれば十分である。
本発明で使用する離型シートは20μm〜130μm程度の厚みのものが好ましく、離型シートが薄すぎると得られる熱転写受像シートのいわゆるコシがなくなり、熱転写プリンターで搬送できなかったり、熱転写受像シートにシワが発生したりする。一方、離型シートが厚すぎると、得られる熱転写受像シートが厚くなりすぎ、熱転写プリンターで搬送駆動させる力が大きくなりすぎて、プリンターに故障が生じたり、正常に搬送できなかったりする。
【0030】
(芳香成分含有層)
本発明の熱転写受像シートの離型シートでは、離型シートの粘着剤層との離型面と反対側の面に芳香成分を含有していることが特徴である。
離型シートに対し、芳香成分を含有させる方法は、離型シート基材に芳香成分を含浸させたり、離型シート基材の離型面と反対側に芳香成分を含有させた塗工液を用いて印刷したりすることができる。
本発明では、離型シート基材の離型面と反対側に芳香成分含有層6を、基材全面または部分的に印刷形成することが、実用上好ましい。
【0031】
本発明で使用する芳香成分としては、ラベンダー、ジャスミン、バラ等の花弁、ハッカ等のハーブ類の植物体、ヒノキ、ヒバ、コウヤマキ等の樹木から水蒸気蒸留法、溶媒抽出法、油脂吸着法、超臨海ガス抽出法などの公知技術により抽出した天然香料や、シクロヘキセン誘導体のダマスゴン系香料等の出発原料から製造された各種合成香料、及び天然香料、合成香料の多成分を混合、調整して、希望する芳香が得られる調合香料等の従来から知られた香料が挙げられ、適宜自由に選択することができる。
【0032】
上記のような各種の香料を、溶剤、水等の溶媒に直接添加して使用することが可能ではあるが、香料をマイクロカプセル内に内包させたものが、実用上好ましい。マイクロカプセルの材質としては、内包する香料の種類によって選定することが望ましいが、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類、酸アミド類、アルコール類、ワックス類等カプセル化できる材質であれば利用できる。
また、密閉型のマイクロカプセルだけではなく、使用中に徐々に芳香を放つ多孔質型マイクロカプセルであってもよい。その多孔質型マイクロカプセルの例として、サイクロデキストリンによりカプセルを構成した場合、サイクロデキストリンはデンプンのサイクロデキストリン合成酵素の作用で生成する、グルコース単位が環状的に結合した環状オリゴ糖であり、環を巻いた中央に形成された空洞内に、香料のゲスト分子を入れ込んだ包接機能を有し、外から水分を吸収して、包接していた香料を放出する性質をもったものである。
【0033】
上記に挙げたようなマイクロカプセルは、粒子径では平均径で0.01〜100μm程度のものが使用でき、塗工液を構成する樹脂に対して、樹脂100質量部に対し、10〜200質量部の割合で配合することが好ましい。このように作成した塗工液を、グラビアダイレクトコート、グラビアリバースコート、ナイフコート、エアコート、ロールコート等の方法で離型シートの全面に塗工したり、またグラビア印刷、凸版印刷等の方法で、離型シートに部分的(パターン状)に印刷して、芳香成分含有層を形成することができる。また、芳香成分含有層をパターン状で離型シートに印刷する場合、互いに異なる芳香を有するマイクロカプセルを使用した2種以上の芳香成分含有層用塗工液を用意して、同一離型シートの異なる領域にパターンで重複せずに、区分けして印刷することも可能である。このような芳香成分含有層は塗工量で、10〜1000g/m2(固形分)程度で形成する。
【0034】
(裏面印刷層)
本発明の熱転写受像シートでは、離型シートの離型面と反対側に裏面印刷層8を形成することができる。裏面印刷層は、例えば、宣伝用のロゴマークや各種模様等を形成したり、「この面を擦ると、・・の香りが出てきますので、お楽しみ下さい。」等、本発明の香り付き熱転写受像シートの取り扱い方法を説明する文章を印刷することができる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、文中に部または%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
(実施例1)
基材として、東レ株式会社製のE−60(50μm)の内部にミクロボイドを有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、その基材の片面に、下記組成の受容層を、乾燥時4.0g/m2になる割合で塗布し、形成した。
(受容層用塗工液組成)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 40部
(電気化学工業株式会社製、#1000A)
ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製、バイロン600) 40部
塩化ビニル・スチレン・アクリル共重合体 20部
(電気化学工業株式会社製、デンカラック#400A)
ビニル変性シリコーン 10部
(信越化学工業株式会社製、X−62−1212)
触媒(信越化学工業株式会社製、CAT−PLR−5) 5部
触媒(信越化学工業株式会社製、CAT−PL−50T) 6部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 400部
【0036】
上記基材の受容層の設けられている側と反対側の面に、下記組成の粘着剤層を乾燥時15g/m2になる割合で塗布し、形成し、その粘着剤層面と、下記に示す離型シート(離型層)を対向させてラミネートして、実施例1の熱転写受像シートを作製した。
(粘着剤層用塗工液組成)
アクリル共重合体 48部
(綜研化学(株)製、SKダイン1310L)
エポキシ樹脂(綜研化学(株)製、硬化剤E−AX) 0.36部
酢酸エチル 51.64部
【0037】
離型シート;離型シート基材として表面コロナ処理の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムで、基材内部にミクロボイドを有するフィルムである、東洋紡績(株)製、クリスパーG1212、厚み100μmを用い、該基材上に、下記組成の離型層をセル版を用いたグラビア印刷により乾燥状態で0.15g/m2の塗工量で形成し、乾燥フードの前で表面が平らなスムージングロールを離型層塗工面に当てた。さらに、上記の離型シートの離型層を形成した面と反対側の全面に、下記組成の芳香成分含有層をグラビアコーティングにより、乾燥時20g/m2の塗工量で形成した。
【0038】
(離型層用塗工液組成)
付加反応型シリコーン(KS−778、信越化学工業(株)製) 32部
触媒(CAT−PL−8、信越化学工業(株)製) 0.32部
トルエン 67.68部
【0039】
(芳香成分含有層用塗工液)
天然ラベンダー香料25部、カプリン酸ステアリル75部からなる香料成分100部に対して、イソシアネート樹脂10部を溶解し、60℃の5%ポリビニルアルコール水溶液に乳化し、外径が30μmになるよう攪拌し、次いで90℃に昇温して3時間反応させた。反応後、遠心分離により芳香性マイクロカプセルを単離した。前記芳香性マイクロカプセル33部にエチレンー酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン67部を加え、芳香成分含有層用塗工液を得た。
【0040】
(実施例2)
実施例1で使用したものと同様の基材上に、下記組成の中間層を、乾燥時2.0g/m2になる割合で塗布し、形成し、さらに、その中間層の上に、実施例1で使用した受容層用塗工液により、乾燥時4.0g/m2になる割合で塗布し、受容層を形成した。
(中間層用塗工液組成)
ポリウレタン樹脂 50部
(日本ポリウレタン工業(株)製、ニッポラン5199)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 40部
【0041】
上記基材の受容層の設けられている側と反対側の面に、実施例1と同様に粘着剤層を乾燥時15g/m2になる割合で塗布し、形成し、その粘着剤層面と、下記に示す離型シート(離型層)を対向させてラミネートして、実施例2の熱転写受像シートを作製した。
【0042】
離型シート;離型シート基材として、実施例1で使用したものと同様の東洋紡績(株)製、クリスパーG1212、厚み100μmを用い、該基材上に、実施例1の場合と同様にして、離型層を乾燥状態で0.15g/m2の塗工量で形成し、乾燥フードの前で表面が平らなスムージングロールを離型層塗工面に当てた。さらに、上記の離型シートの離型層を形成した面と反対面に、下記組成の裏面印刷層をグラビア印刷により、熱転写プリンターで記録する際のシート形態の熱転写受像シートの対向する両サイドの端に、図2に示すような配置で、「この面(中央部)を擦ると、レモンの香りが出てきますので、お楽しみ下さい。」と印刷した。また、上記離型シートの離型層を形成した面と反対面に、下記組成の芳香成分含有層をグラビア印刷により、乾燥時20g/m2の塗工量で、図2に示すような配置で、形成した。
【0043】
(裏面印刷層用塗工液組成)
カーボンブラック 8.0部
ウレタン樹脂(日本ポリウレタン株式会社製、HMS−20) 15.0部
メチルエチケトン 38.5部
トルエン 38.5部
【0044】
(芳香成分含有層用塗工液)
レモンオイル50部、ミリスチルアルコール50部からなる香料成分100部に対してエポキシ樹脂5部を溶解し、60℃の10%ゼラチン水溶液に乳化し、外径が5μmになるよう調整攪拌し、アミン系硬化剤2.5部を加え、80℃にて3時間反応させて得た芳香性マイクロカプセルを遠心分離により単離し、前記芳香性マイクロカプセル33部にエチレンー酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン67部を加え、芳香成分含有層用塗工液を得た。
【0045】
上記に作成した実施例1、2の熱転写受像シートと、市販の昇華性熱転写シートを、それぞれの受容層と染料層を重ね合わせ、熱転写シートの裏面からサーマルヘッドで加熱し、テストパターンの熱転写画像を形成した。印字条件は、線密度が300dpiのサーマルヘッドを搭載した256階調制御が可能な熱転写プリンターを使用し、パルス幅が1ms、記録周期が2.0ms/line、記録エネルギーが3.0j/cm2で、画像を形成する。
【0046】
(評価結果)
上記の熱転写画像の形成された実施例の熱転写受像シートを使用して、離型シートを剥がして、手帳にシール部を貼り付け、そしてシール部の周辺で、離型シートの芳香成分含有層と手帳(シール部の貼付面)を擦り付けると、実施例1ではラベンダーの香りが発生し、また実施例2では離型シートに印刷してある注意書きの通りレモンの香りが発生して、非常に楽しめるものであった。
【0047】
【発明の効果】
以上の如き本発明によれば、少なくとも、受容層、基材、粘着剤層がこの順に積層されたシール部と、離型シートから構成され、該離型シートの離型面とシール部の粘着剤層が剥離可能に貼合された熱転写受像シートにおいて、該離型シートの離型面と反対側の面に芳香成分を含有している。これにより、熱転写受像シートに熱転写画像を形成後に、画像上やシールを貼り付けた物品のシール部周辺に熱転写受像シートの離型シートの離型面と反対側を擦り付けて、芳香性を発現させることができる。したがって、受容層に始めから芳香成分を含有させていないので、染料層を有した熱転写シートと受容層との画像形成時の離型性が不足して、両者が熱融着したり、熱転写画像が経時変化により滲んだりすることなく、芳香性が高く、商品性の高い熱転写受像シートが得られる。芳香成分を含有するものが離型シートであり、この離型シートは受容層に熱転写画像を形成後、シール部を物品に貼付して、廃棄するものであり、離型シートを折ったり、取り扱いを粗雑にしても構わなく、ユーザーが自由に擦って芳香を楽しむことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱転写受像シートである一つの実施形態を示す。
【図2】本発明の熱転写受像シートである他の実施形態を示す。
【符号の説明】
1 基材
2 受容層
3 粘着剤層
4 離型シート
5 シール部
6 芳香成分含有層
7 中間層
8 裏面印刷層
41 離型シート基材
42 離型層
【発明の属する技術分野】
本発明は、シールタイプの熱転写受像シートに関する。更に詳しくは、シールタイプの熱転写受像シートにおいて、芳香性を十分に有し、熱転写画像の形成領域が狭められることなく、染料層を有した熱転写シートとの熱融着や、熱転写画像に滲み等を防止した、商品性の高い熱転写受像シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、熱転写方式を用いて被転写体に文字や画像を形成することが行われている。熱転写方式としては、感熱昇華型転写方式と感熱溶融型転写方式が広く用いられている。このうち、感熱昇華型転写方式は、昇華性染料を色材とし、それを画像情報に応じて、発熱制御されたサーマルヘッドやレーザー光等の加熱デバイスを用いて、熱転写シート上の昇華性染料層中の染料を熱転写受像シート等の被転写体に移行させて画像を形成させる方式である。
【0003】
この感熱昇華型転写方式は、極めて短時間の加熱によってドット単位で染料の移行量を制御できる。このように形成された画像は、使用する色材が染料であることから非常に鮮明であり、且つ透明性に優れているため、得られる画像は中間調の再現性や階調性に優れ、極めて高精細な画像を得ることができる。このため、フルカラー銀塩写真に匹敵する高品質の画像を得ることができる。
【0004】
マルチメディアに関連した様々なハードおよびソフトの発達により、この熱転写方式は、コンピューターグラフィックス、衛星通信による静止画像そしてCDROMその他に代表されるデジタル画像およびビデオ等のアナログ画像のフルカラーハードコピーシステムとして、その市場を拡大している。
【0005】
この熱転写方式による熱転写受像シートの具体的な用途は、多岐にわたっている。代表的なものとしては、印刷の校正刷り、画像の出力、CAD/CAMなどの設計およびデザインなどの出力、CTスキャンや内視鏡カメラなどの各種医療用分析機器、測定機器の出力用途そしてインスタント写真の代替として、また身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類への顔写真などの出力、さらに遊園地、ゲームセンター、博物館、水族館などのアミューズメント施設における合成写真、記念写真、絵ハガキとしての用途などをあげることができる。
【0006】
さらに、上記のような用途の多様化に伴い、任意の対象物に貼り付けられるもので、例えば、画像が形成される受容層と基材が、粘着剤層を介して、離型シートと剥離可能な構成の熱転写受像シートが使用されている。いわゆる、ラベルやシールタイプと言われているものである。この熱転写受像シートは、受容層に所望の画像を形成後、該受容層を有する基材を剥離して任意の対象物に貼着する用途のものである。
【0007】
また、上記のシールタイプの熱転写受像シートで、金属蒸着や着色印刷が施されたフィルムや、ホログラム、レインボー等に代表される装飾効果の高いフィルムを使用したラベルも使用されている。
このような意匠性が高いものだけでなく、例えば特許文献1に記載されているように、昇華型熱転写受像シートの受容層上に芳香成分を含有する芳香成分含有印刷層を設けたり、少なくとも受容層及び基材を含む複数の構成成分からなる昇華型熱転写受像シートで、その構成成分の何れかに芳香成分が含まれていることが開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−187368号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、芳香性を有する熱転写受像シートが示されているが、受容層上に芳香成分含有層を設ける場合、受容層の熱転写画像形成領域が狭められるという問題があり、中間層、貼り合わせ基材の接着剤層、シールタイプの熱転写受像シートの粘着剤層に芳香成分を含有させる場合では、熱転写受像シートの最表面に芳香成分が無いため、芳香性が乏しいという問題がある。
さらに、熱転写受像シートの受容層に芳香成分を含有させる場合では、芳香性を高くするために、芳香成分を受容層中に高い比率で含有させる必要が生じ、それが昇華性染料を含有する染料層を有した熱転写シートと受容層との画像形成時の離型性が不足して、両者が熱融着したり、熱転写画像が経時変化により滲んだりするという問題がある。
【0010】
したがって、本発明は上記従来技術の問題点を解決し、シールタイプの熱転写受像シートにおいて、芳香性を十分に有し、熱転写画像の形成領域が狭められることなく、染料層を有した熱転写シートとの熱融着や、熱転写画像に滲み等を防止した、商品性の高い熱転写受像シートを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の熱転写受像シートは、請求項1として、少なくとも、受容層、基材、粘着剤層がこの順に積層されたシール部と、離型シートからなり、該離型シートの離型面とシール部の粘着剤層が剥離可能に貼合された熱転写受像シートにおいて、該離型シートの離型面と反対側の面に芳香成分を含有していることを特徴とする。
また、前記の芳香成分が、芳香物質を内包させたマイクロカプセルであることを特徴とする。このマイクロカプセルを使用すれば、熱転写受像シートの製造中から芳香を発生することなく、熱転写画像形成後、シール部を任意の物品に貼付して、離型シートのマイクロカプセルを物と擦り付けて、カプセルの壁膜を破壊して、カプセル内の香料により芳香を放出させることができ、ユーザーが必要な時に、自由に擦って芳香を楽しむことが可能となる。
【0012】
本発明の熱転写受像シートは、少なくとも、受容層、基材、粘着剤層がこの順に積層されたシール部と、離型シートから構成され、該離型シートの離型面とシール部の粘着剤層が剥離可能に貼合されたもので、該離型シートの離型面と反対側の面に芳香成分を含有している。これにより、熱転写受像シートに熱転写画像を形成後に、画像上やシールを貼り付けた物品のシール部周辺に熱転写受像シートの離型シートの離型面と反対側を擦り付けて、芳香性を発現させることができる。したがって、受容層に始めから芳香成分を含有させていないので、染料層を有した熱転写シートと受容層との画像形成時の離型性が不足して、両者が熱融着したり、熱転写画像が経時変化により滲んだりすることなく、芳香性が高く、商品性の高い熱転写受像シートが得られる。芳香成分を含有するものが離型シートであり、この離型シートは受容層に熱転写画像を形成後、シール部を物品に貼付して、廃棄するものであり、離型シートを折ったり、取り扱いを粗雑にしても構わなく、ユーザーが自由に擦って芳香を楽しむことが可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面を使用して説明する。
図1は、本発明の熱転写受像シートの一つの実施形態であり、基材1の一方の面に受容層2が設けられ、基材1の他方の面に粘着剤層3、離型シート4が積層されている。その離型シート4と粘着剤層3は剥離可能に貼合されていて、受容層2、基材1、粘着剤層3の順に積層された部分がシール部5として、任意の物品に貼付することができる。また、離型シート4の粘着剤層3と接する側と反対側の全面に芳香成分含有層6を設けた形態である。
【0014】
図2は、本発明の熱転写受像シートの他の実施形態であり、基材1の一方の面に中間層7、受容層2が設けられ、基材1の他方の面に粘着剤層3、離型シート4が積層されている。その離型シート4と粘着剤層3は剥離可能に貼合されていて、受容層2、中間層7、基材1、粘着剤層3の順に積層された部分がシール部5として、任意の物品に貼付することができる。離型シート4は、離型シート基材41と離型層42から構成され、離型層42と粘着剤層3との間で剥離する。また離型シート4において、離型シート4の粘着剤層3と接する側と反対側の面に、芳香成分含有層6と裏面印刷層8が設けられている形態である。この形態では、芳香成分含有層6と裏面印刷層8が重複せずに、別々の領域に形成されているが、それに限らず両者が重なり合ってもよい。
【0015】
以下、本発明の熱転写受像シートを構成する各層について詳細に説明する。
(基材)
基材1は、受容層を保持するという役割を有するとともに、熱転写時には熱が加えられるため、加熱された状態でも取り扱い上支障がない程度の機械強度を有し、さらに基材の受容層の設けられる側と反対側に粘着剤層を保持し、任意の物品にシールとして貼付する際に、シール部の基材として機能する。
【0016】
このような基材の材料は特に限定されず、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、またはサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打ち用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネイト、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニールアルコール、ポリビニールブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の各種プラスチックフィルム又はシートが使用でき、特に限定されない。
【0017】
また、上記合成紙またはプラスチックフィルムのうち、内部にミクロボイドを有するものを用いることができる。ミクロボイドを有するプラスチックフィルム又は合成紙としては、ポリオレフィン、特にポリプロピレンを主体として、それに無機顔料を添加したものを製膜・延伸することにより形成されるが、無機顔料及び/又はポリプロピレンと非相溶なポリマ−をブレンドし、これらを発泡開始剤として用い、このコンパウンドを延伸、成膜したプラスチックフィルム又は合成紙が好ましい。上述のプラスチックフィルムや合成紙は、それ自体が、ミクロボイドを含む層の単層であっても良いし、複数の層構成であっても良い。複数の層構成の場合には、その構成する全ての層にミクロボイドを含有しても良いし、ミクロボイドが存在しない層が存在しても良い。そして、このプラスチックフィルムや合成紙には、必要に応じて、隠ぺい剤として、白色顔料を混入させても良い。また、白色性を増すために、蛍光増白剤等の添加剤を加えることができる。さらに、光沢性・平滑性を与えるために、表面にスキン層を設けても良い。プラスチックフィルムや合成紙は、30〜80μmの厚さが好ましい。
【0018】
また、上記基材の任意の組み合わせによる積層体も使用できる。代表的な積層体の例として、セルロース繊維紙と合成紙、或いはセルロース繊維紙とプラスチックフィルム又はシートの積層合成紙が挙げられる。このような積層合成紙は2層体でもよいが、基材の風合いや質感を出す為に、両面に合成紙やプラスチックフィルムを貼合した3層体もしくは3層以上の積層体であってもかまわない。これらの基材の厚みは任意でよく、通常10〜300μm程度の厚みが一般的である。
また、上記の如き基材は、その表面に形成する層との密着力が乏しい場合にはその表面に各種プライマー処理やコロナ放電処理を施すのが好ましい。
【0019】
(受容層)
上記の基材の上に形成される受容層2は、基材の上に直接または、プライマー層を介して、形成することができる。受容層は、熱溶融転写記録と昇華転写記録の各記録方式の違いにより、受容層の構成が異なる。また、熱溶融転写記録では受容層を設けずに、基材に直接、熱転写シートから着色転写層を熱転写することも可能である。熱溶融転写記録と昇華転写記録の受容層は、加熱により熱転写シートから転写される色材を受容する働きを有するもので、特に昇華性染料の場合には、それを受容し、発色させると同時に、一旦受容した染料を再昇華させないことが望まれる。
【0020】
受容層は、一般に熱可塑性樹脂を主体として構成される。受容層を形成する材料としては、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられ、中でも特に好ましいものはポリエステル系樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体及びそれらの混合物である。
【0021】
画像形成時において、着色転写層を有する熱転写シートと、熱転写受像シートの受容層との融着若しくは印画感度の低下等を防ぐ目的で、昇華転写記録では、受容層に離型剤を混合することができる。混合して使用する好ましい離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられるが、中でもシリコーンオイルが望ましい。そのシリコーンオイルとしては、エポキシ変性、ビニル変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシ・ポリエーテル変性、ポリエーテル変性等の変性シリコーンオイルが望ましい。
【0022】
離型剤は1種若しくは2種以上のものが使用される。また、離型剤の添加量は受容層形成用樹脂100質量部に対し、0.5〜30質量部が好ましい。この添加量の範囲を満たさない場合は、昇華型熱転写シートと熱転写受像シートの受容層との融着若しくは印画感度の低下等の問題が生じる場合がある。このような離型剤を受容層に添加することによって、転写後の受容層の表面に離型剤がブリードアウトして離型層が形成される。また、これらの離型剤は受容層に添加せず、受容層上に別途塗工してもよい。受容層は、基材の上に上記の如き樹脂に離型剤等の必要な添加剤を加えたものを適当な有機溶剤に溶解したり、或いは有機溶剤や水に分散した分散体を適当な塗布方法で塗布及び乾燥することによって形成される。上記受容層の形成に際しては、受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を更に高める目的で、白色顔料や蛍光増白剤等を添加することができる。以上のように形成される受容層は任意の厚さでよいが、一般的には塗工量で1〜50g/m2(固形分)程度である。また、このような受容層は連続被覆であるのが好ましいが、樹脂エマルジョン若しくは水溶性樹脂や樹脂分散液を使用して、不連続の被覆として形成してもよい。
【0023】
(中間層)
前記基材と前記受容層との間には、基材と受容層との接着性、受容層の白色度、クッション性、隠蔽性、帯電防止性、カール防止性等の付与を目的とし、従来から公知のあらゆる中間層7を設けることができる。
この中間層に用いるバインダー樹脂としては、例えばポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のうち、活性水素を有するものについては、さらにそれらのイソシアネート硬化物をバインダーとすることもできる。
【0024】
また、白色性、隠蔽性を付与する為に酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のフィラーを添加することが好ましい。
さらに、白色性を高める為に、スチルベン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物等を蛍光増白剤として添加したり、印画物の耐光性を高める為に、ベンゾフェノン系化合物等を紫外線吸収剤あるいは酸化防止剤として添加したり、あるいは帯電防止性を付与する為に、カチオン系アクリル樹脂、ポリアニリン樹脂、各種導電性フィラー等を添加することができる。
【0025】
(粘着剤層)
本発明において使用する粘着剤層3は、従来から公知である溶剤系及び水系のいずれの粘着剤を用いて形成することができる。粘着剤として、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン樹脂や、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムなどが挙げられる。粘着剤層の塗工量は、約8〜30g/m2(固形分)が一般的であり、従来公知の方法、すなわち、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の方法で、塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する。
【0026】
また粘着剤層の粘着力は、離型シートと粘着剤層との剥離強度で、JIS Z0237準拠の180°による剥離方法において、0.98〜16.7Nの範囲、好ましくは4.9〜13.7Nの範囲にすることが望ましい。以上の如き粘着剤の種類や、塗工量は、離型シート上に粘着剤層を形成する際に、その剥離強度が前記範囲になるように、選択して使用することが好ましい。離型シートと、少なくとも受容層と基材を粘着剤層により積層する方法としては、例えば、ドライラミネーション、ノンソルベント(ホットメルト)ラミネーション、ECラミネーション方法等の公知の積層方法が使用できるが、好ましい方法はドライラミネーション及びノンソルベントラミネーション方法である。
【0027】
(離型シート)
離型シート4は、本発明の熱転写受像シートのシール部の粘着剤層を剥離可能に保護するものであり、各種紙類、プラスックフィルム類等に剥離処理を施したものであり、通常は、離型シート基材41と離型層42とからなり、従来公知の各種離型シートが使用できる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリカーボネートフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム等の各種フィルムが挙げられる。
【0028】
また、離型シートとして、剥離処理が施された基材内部にミクロボイドを有するプラスチックフィルムを用いると、そのクッション性によって、画像濃度や印字感度を向上させることができ、好ましい。通常、このミクロボイドを有するプラスチックフィルムを離型シート基材として、これに剥離処理を施した離型層を形成する。ミクロボイドを有するプラスチックフィルムは、フィルム形成樹脂中に微細空孔の核となる無機または有機フィラーや、フィルム形成樹脂と相溶性の低い樹脂等を混合したものをシート状に成膜し、1軸延伸または多軸延伸処理を施すことにより、内部に微細空孔を形成したものである。
【0029】
離型シートの剥離処理は、剥離効果のある樹脂や剥離剤を塗布する等、特に限定されない。例えば、離型層42としては、シリコーンワックス等の各種ワックス類、シリーコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等から構成することが挙げられる。離型層の厚みは、塗工量で0.05〜5g/m2(固形分)程度あれば十分である。
本発明で使用する離型シートは20μm〜130μm程度の厚みのものが好ましく、離型シートが薄すぎると得られる熱転写受像シートのいわゆるコシがなくなり、熱転写プリンターで搬送できなかったり、熱転写受像シートにシワが発生したりする。一方、離型シートが厚すぎると、得られる熱転写受像シートが厚くなりすぎ、熱転写プリンターで搬送駆動させる力が大きくなりすぎて、プリンターに故障が生じたり、正常に搬送できなかったりする。
【0030】
(芳香成分含有層)
本発明の熱転写受像シートの離型シートでは、離型シートの粘着剤層との離型面と反対側の面に芳香成分を含有していることが特徴である。
離型シートに対し、芳香成分を含有させる方法は、離型シート基材に芳香成分を含浸させたり、離型シート基材の離型面と反対側に芳香成分を含有させた塗工液を用いて印刷したりすることができる。
本発明では、離型シート基材の離型面と反対側に芳香成分含有層6を、基材全面または部分的に印刷形成することが、実用上好ましい。
【0031】
本発明で使用する芳香成分としては、ラベンダー、ジャスミン、バラ等の花弁、ハッカ等のハーブ類の植物体、ヒノキ、ヒバ、コウヤマキ等の樹木から水蒸気蒸留法、溶媒抽出法、油脂吸着法、超臨海ガス抽出法などの公知技術により抽出した天然香料や、シクロヘキセン誘導体のダマスゴン系香料等の出発原料から製造された各種合成香料、及び天然香料、合成香料の多成分を混合、調整して、希望する芳香が得られる調合香料等の従来から知られた香料が挙げられ、適宜自由に選択することができる。
【0032】
上記のような各種の香料を、溶剤、水等の溶媒に直接添加して使用することが可能ではあるが、香料をマイクロカプセル内に内包させたものが、実用上好ましい。マイクロカプセルの材質としては、内包する香料の種類によって選定することが望ましいが、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類、酸アミド類、アルコール類、ワックス類等カプセル化できる材質であれば利用できる。
また、密閉型のマイクロカプセルだけではなく、使用中に徐々に芳香を放つ多孔質型マイクロカプセルであってもよい。その多孔質型マイクロカプセルの例として、サイクロデキストリンによりカプセルを構成した場合、サイクロデキストリンはデンプンのサイクロデキストリン合成酵素の作用で生成する、グルコース単位が環状的に結合した環状オリゴ糖であり、環を巻いた中央に形成された空洞内に、香料のゲスト分子を入れ込んだ包接機能を有し、外から水分を吸収して、包接していた香料を放出する性質をもったものである。
【0033】
上記に挙げたようなマイクロカプセルは、粒子径では平均径で0.01〜100μm程度のものが使用でき、塗工液を構成する樹脂に対して、樹脂100質量部に対し、10〜200質量部の割合で配合することが好ましい。このように作成した塗工液を、グラビアダイレクトコート、グラビアリバースコート、ナイフコート、エアコート、ロールコート等の方法で離型シートの全面に塗工したり、またグラビア印刷、凸版印刷等の方法で、離型シートに部分的(パターン状)に印刷して、芳香成分含有層を形成することができる。また、芳香成分含有層をパターン状で離型シートに印刷する場合、互いに異なる芳香を有するマイクロカプセルを使用した2種以上の芳香成分含有層用塗工液を用意して、同一離型シートの異なる領域にパターンで重複せずに、区分けして印刷することも可能である。このような芳香成分含有層は塗工量で、10〜1000g/m2(固形分)程度で形成する。
【0034】
(裏面印刷層)
本発明の熱転写受像シートでは、離型シートの離型面と反対側に裏面印刷層8を形成することができる。裏面印刷層は、例えば、宣伝用のロゴマークや各種模様等を形成したり、「この面を擦ると、・・の香りが出てきますので、お楽しみ下さい。」等、本発明の香り付き熱転写受像シートの取り扱い方法を説明する文章を印刷することができる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、文中に部または%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
(実施例1)
基材として、東レ株式会社製のE−60(50μm)の内部にミクロボイドを有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、その基材の片面に、下記組成の受容層を、乾燥時4.0g/m2になる割合で塗布し、形成した。
(受容層用塗工液組成)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 40部
(電気化学工業株式会社製、#1000A)
ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製、バイロン600) 40部
塩化ビニル・スチレン・アクリル共重合体 20部
(電気化学工業株式会社製、デンカラック#400A)
ビニル変性シリコーン 10部
(信越化学工業株式会社製、X−62−1212)
触媒(信越化学工業株式会社製、CAT−PLR−5) 5部
触媒(信越化学工業株式会社製、CAT−PL−50T) 6部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 400部
【0036】
上記基材の受容層の設けられている側と反対側の面に、下記組成の粘着剤層を乾燥時15g/m2になる割合で塗布し、形成し、その粘着剤層面と、下記に示す離型シート(離型層)を対向させてラミネートして、実施例1の熱転写受像シートを作製した。
(粘着剤層用塗工液組成)
アクリル共重合体 48部
(綜研化学(株)製、SKダイン1310L)
エポキシ樹脂(綜研化学(株)製、硬化剤E−AX) 0.36部
酢酸エチル 51.64部
【0037】
離型シート;離型シート基材として表面コロナ処理の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムで、基材内部にミクロボイドを有するフィルムである、東洋紡績(株)製、クリスパーG1212、厚み100μmを用い、該基材上に、下記組成の離型層をセル版を用いたグラビア印刷により乾燥状態で0.15g/m2の塗工量で形成し、乾燥フードの前で表面が平らなスムージングロールを離型層塗工面に当てた。さらに、上記の離型シートの離型層を形成した面と反対側の全面に、下記組成の芳香成分含有層をグラビアコーティングにより、乾燥時20g/m2の塗工量で形成した。
【0038】
(離型層用塗工液組成)
付加反応型シリコーン(KS−778、信越化学工業(株)製) 32部
触媒(CAT−PL−8、信越化学工業(株)製) 0.32部
トルエン 67.68部
【0039】
(芳香成分含有層用塗工液)
天然ラベンダー香料25部、カプリン酸ステアリル75部からなる香料成分100部に対して、イソシアネート樹脂10部を溶解し、60℃の5%ポリビニルアルコール水溶液に乳化し、外径が30μmになるよう攪拌し、次いで90℃に昇温して3時間反応させた。反応後、遠心分離により芳香性マイクロカプセルを単離した。前記芳香性マイクロカプセル33部にエチレンー酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン67部を加え、芳香成分含有層用塗工液を得た。
【0040】
(実施例2)
実施例1で使用したものと同様の基材上に、下記組成の中間層を、乾燥時2.0g/m2になる割合で塗布し、形成し、さらに、その中間層の上に、実施例1で使用した受容層用塗工液により、乾燥時4.0g/m2になる割合で塗布し、受容層を形成した。
(中間層用塗工液組成)
ポリウレタン樹脂 50部
(日本ポリウレタン工業(株)製、ニッポラン5199)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 40部
【0041】
上記基材の受容層の設けられている側と反対側の面に、実施例1と同様に粘着剤層を乾燥時15g/m2になる割合で塗布し、形成し、その粘着剤層面と、下記に示す離型シート(離型層)を対向させてラミネートして、実施例2の熱転写受像シートを作製した。
【0042】
離型シート;離型シート基材として、実施例1で使用したものと同様の東洋紡績(株)製、クリスパーG1212、厚み100μmを用い、該基材上に、実施例1の場合と同様にして、離型層を乾燥状態で0.15g/m2の塗工量で形成し、乾燥フードの前で表面が平らなスムージングロールを離型層塗工面に当てた。さらに、上記の離型シートの離型層を形成した面と反対面に、下記組成の裏面印刷層をグラビア印刷により、熱転写プリンターで記録する際のシート形態の熱転写受像シートの対向する両サイドの端に、図2に示すような配置で、「この面(中央部)を擦ると、レモンの香りが出てきますので、お楽しみ下さい。」と印刷した。また、上記離型シートの離型層を形成した面と反対面に、下記組成の芳香成分含有層をグラビア印刷により、乾燥時20g/m2の塗工量で、図2に示すような配置で、形成した。
【0043】
(裏面印刷層用塗工液組成)
カーボンブラック 8.0部
ウレタン樹脂(日本ポリウレタン株式会社製、HMS−20) 15.0部
メチルエチケトン 38.5部
トルエン 38.5部
【0044】
(芳香成分含有層用塗工液)
レモンオイル50部、ミリスチルアルコール50部からなる香料成分100部に対してエポキシ樹脂5部を溶解し、60℃の10%ゼラチン水溶液に乳化し、外径が5μmになるよう調整攪拌し、アミン系硬化剤2.5部を加え、80℃にて3時間反応させて得た芳香性マイクロカプセルを遠心分離により単離し、前記芳香性マイクロカプセル33部にエチレンー酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン67部を加え、芳香成分含有層用塗工液を得た。
【0045】
上記に作成した実施例1、2の熱転写受像シートと、市販の昇華性熱転写シートを、それぞれの受容層と染料層を重ね合わせ、熱転写シートの裏面からサーマルヘッドで加熱し、テストパターンの熱転写画像を形成した。印字条件は、線密度が300dpiのサーマルヘッドを搭載した256階調制御が可能な熱転写プリンターを使用し、パルス幅が1ms、記録周期が2.0ms/line、記録エネルギーが3.0j/cm2で、画像を形成する。
【0046】
(評価結果)
上記の熱転写画像の形成された実施例の熱転写受像シートを使用して、離型シートを剥がして、手帳にシール部を貼り付け、そしてシール部の周辺で、離型シートの芳香成分含有層と手帳(シール部の貼付面)を擦り付けると、実施例1ではラベンダーの香りが発生し、また実施例2では離型シートに印刷してある注意書きの通りレモンの香りが発生して、非常に楽しめるものであった。
【0047】
【発明の効果】
以上の如き本発明によれば、少なくとも、受容層、基材、粘着剤層がこの順に積層されたシール部と、離型シートから構成され、該離型シートの離型面とシール部の粘着剤層が剥離可能に貼合された熱転写受像シートにおいて、該離型シートの離型面と反対側の面に芳香成分を含有している。これにより、熱転写受像シートに熱転写画像を形成後に、画像上やシールを貼り付けた物品のシール部周辺に熱転写受像シートの離型シートの離型面と反対側を擦り付けて、芳香性を発現させることができる。したがって、受容層に始めから芳香成分を含有させていないので、染料層を有した熱転写シートと受容層との画像形成時の離型性が不足して、両者が熱融着したり、熱転写画像が経時変化により滲んだりすることなく、芳香性が高く、商品性の高い熱転写受像シートが得られる。芳香成分を含有するものが離型シートであり、この離型シートは受容層に熱転写画像を形成後、シール部を物品に貼付して、廃棄するものであり、離型シートを折ったり、取り扱いを粗雑にしても構わなく、ユーザーが自由に擦って芳香を楽しむことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱転写受像シートである一つの実施形態を示す。
【図2】本発明の熱転写受像シートである他の実施形態を示す。
【符号の説明】
1 基材
2 受容層
3 粘着剤層
4 離型シート
5 シール部
6 芳香成分含有層
7 中間層
8 裏面印刷層
41 離型シート基材
42 離型層
Claims (2)
- 少なくとも、受容層、基材、粘着剤層がこの順に積層されたシール部と、離型シートからなり、該離型シートの離型面とシール部の粘着剤層が剥離可能に貼合された熱転写受像シートにおいて、該離型シートの離型面と反対側の面に芳香成分を含有していることを特徴とする熱転写受像シート。
- 前記の芳香成分が、芳香物質を内包させたマイクロカプセルであることを特徴とする請求項1に記載する熱転写受像シート。
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JP2003115848A JP2004322319A (ja) | 2003-04-21 | 2003-04-21 | 熱転写受像シート |
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WO2015052821A1 (ja) * | 2013-10-07 | 2015-04-16 | リンテック株式会社 | 印刷用コート剤及び印刷用コートフィルム |
-
2003
- 2003-04-21 JP JP2003115848A patent/JP2004322319A/ja not_active Withdrawn
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---|---|---|---|---|
WO2015052821A1 (ja) * | 2013-10-07 | 2015-04-16 | リンテック株式会社 | 印刷用コート剤及び印刷用コートフィルム |
JP5844010B2 (ja) * | 2013-10-07 | 2016-01-13 | リンテック株式会社 | 印刷用コート剤及び印刷用コートフィルムの製造方法 |
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