JP2004320418A - 高周波電源装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】増幅器を破損することなく、従来より大きい高周波出力を負荷に供給することができる高周波電源装置を提供する。
【解決手段】増幅部の半導体増幅素子のジャンクション温度を演算するジャンクション温度演算部18と、演算されたジャンクション温度演算値が予め設定されたジャンクション温度設定値を超えたときにジャンクション温度演算値がジャンクション温度設定値に等しくなるまで直流電源部13から増幅部12に供給する直流電源電圧を低下させる制御を行い、ジャンクション温度演算値がジャンクション温度設定値以下のときには直流電源部13から増幅部12に供給する直流電源電圧を適値に保つ制御を行う第1の制御部19と、増幅部から負荷に供給される高周波出力を高周波出力設定値に近づけるように増幅部12の出力を制御する第2の制御部とを設けた。
【選択図】 図1
【解決手段】増幅部の半導体増幅素子のジャンクション温度を演算するジャンクション温度演算部18と、演算されたジャンクション温度演算値が予め設定されたジャンクション温度設定値を超えたときにジャンクション温度演算値がジャンクション温度設定値に等しくなるまで直流電源部13から増幅部12に供給する直流電源電圧を低下させる制御を行い、ジャンクション温度演算値がジャンクション温度設定値以下のときには直流電源部13から増幅部12に供給する直流電源電圧を適値に保つ制御を行う第1の制御部19と、増幅部から負荷に供給される高周波出力を高周波出力設定値に近づけるように増幅部12の出力を制御する第2の制御部とを設けた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、負荷に高周波電力を供給する高周波電源装置に関し、特に、プラズマ発生装置やレーザ発振装置などの電源として用いるのに好適な高周波電源装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造プロセス用プラズマ発生装置やレーザ加工プロセス用レーザ発振装置等の電源として用いる高周波電源装置は、基本的には、図13に示したように、所定の周波数の高周波信号を出力する発振部1と、この発振部の出力を増幅する増幅部2と、増幅部2に直流電源電圧Vdcを供給する直流電源部3と、増幅部2が出力する高周波出力を検出する高周波出力検出部4と、高周波出力検出部4により検出される高周波出力を高周波出力設定値に保つように制御する制御部5とにより構成され、増幅部2の出力が負荷6に供給される。
【0003】
発振部1は、所定の周波数の高周波信号を発生する発振器と、必要に応じて該発振器の出力を増幅する増幅器とにより構成され、増幅部2は、電力増幅器2aにより構成される。
【0004】
制御部5は、高周波出力設定値と高周波出力検出部4により検出された高周波出力とを入力として、増幅部2から負荷6に与えられる高周波出力が、高周波出力設定値に等しくなるように直流電源部3の出力電圧を制御したり、発振部1の出力を制御したり、増幅部2のゲインを制御したりする。
【0005】
高周波電源装置からプラズマ発生装置やレーザ発振装置などに電力を供給する場合、高周波電源装置の出力インピーダンスと負荷インピーダンス(電源装置の出力端から負荷側を見たインピーダンス)との整合がとれているときには、電源装置から出力された進行波電力がすべて負荷に吸収されるが、電源装置の出力インピーダンスと負荷インピーダンスとの整合がとれていないときには、負荷で反射が生じ、負荷側から電源装置側に反射波電力が流れる。
【0006】
一般に高周波電源装置の負荷インピーダンスは一定ではなく、変動するのが普通であるため、反射波電力が生じるのを避けられない。反射波電力が生じた場合には、進行波電力から反射波電力を差引いたものが有効電力となる。
【0007】
通常、制御部5は、進行波電力または有効電力のいずれかを設定値に保つように制御する。即ち、進行波電力または有効電力のいずれかに対して設定値を定めて、出力に含まれる進行波電力または有効電力を当該設定値に保つように制御する。本明細書において、高周波出力設定値に保つように制御する高周波出力は、進行波電力でもよく、有効電力でもよい。
【0008】
図13に示すような基本構成を有する従来の高周波電源装置は、例えば特許文献1ないし4に示されている。
【0009】
上記のように、高周波電源装置の出力インピーダンスと負荷インピーダンスとの整合がとれていない場合には、負荷で反射が生じ、負荷側から電源装置側に流れる反射波電力が生じる。反射波電力が増大すると増幅器が破損するため、プラズマ発生装置等の電源として用いる高周波電源装置においては、特許文献1や特許文献2に示されているように、反射波電力に対して増幅器を破損するおそれがない大きさの保護設定値を定めて、負荷から電源装置側への反射波電力が保護設定値を超えないように、電源装置から負荷に供給する高周波出力(進行波電力または有効電力)を制限する制御を行わせて、増幅器を反射波電力から保護するようにしていた。
【0010】
上記のような電源装置においては、反射波電力が保護設定値以下であれば電源装置から高周波出力設定値に等しい高周波出力(進行波電力または有効電力)を得ることができるが、反射波電力が保護設定値を超えたときには、電源装置から得ることができる高周波出力が高周波出力設定値よりも小さい値に制限される。
このような制御を行う従来の高周波電源装置においては、以下に示すような問題があった。
【0011】
a.電源装置の出力端子間に接続される負荷のインピーダンスが変化する場合、反射係数の大きさが同じであっても、反射係数の位相角が変化すると、最大高周波出力(電源装置から出力することができる進行波電力または有効電力の最大値)が変化する。そのため、反射係数の大きさが同じであっても、負荷インピーダンスの変化により反射係数の位相角が変化すると最大高周波出力が変化し、反射係数の位相角が特定の値を示す負荷インピーダンスに対して最大高周波出力が著しく小さくなる。
【0012】
b.反射係数の位相角が特定の値を示す負荷に対して電源装置の最大高周波出力を大きくしようとすると、増幅器で生じる損失が大きくなって、増幅器に設けられている半導体増幅素子のジャンクション温度が許容値を超え、該半導体増幅素子が破損するおそれがある。
【0013】
上記のような従来の高周波電源装置が有する問題点を、具体例を用いて更に詳細に説明する。
【0014】
図14は、図13に示した電源装置で用いる電力増幅器2aの回路構成例を示したものである。図14に示した増幅器は、周知のプッシュプル式増幅器で、一次コイルW11と中間タップ付きの二次コイルW12とを備えた入力トランスTaと、ソースが共通接続されて接地された1対のnチャンネル型電界効果トランジスタFETa及びFETbと、FETaのゲートとトランスTaの二次コイルW12の一端との間、及びFETbのゲートと二次コイルW12の他端との間にそれぞれ接続された抵抗Ra及びRbと、二次コイルW12の中間タップに抵抗Rcを通して正極端子が接続され、負極端子が接地されたバイアス電源Baと、トランスTaの二次コイルW12の一端と接地間及び他端と接地間にそれぞれ接続された抵抗Rd及びReと、FETaのドレインとFETbのドレインとの間に接続された中間タップ付きのコイルLaと、コイルLaの中間タップと接地間に、負極端子を接地側に向けて接続されて電源電圧Vdcを出力する直流電源Bbと、コイルLaの両端に一次コイルW21が接続された出力トランスTbとを備えており、出力トランスTbの二次コイルW22の両端に負荷6が接続されている。FETa及びFETbは、ヒートシンクに取り付けられている。
【0015】
ここで、発振器から入力される入力電圧Vinの周波数及び電源装置の出力周波数を10MHz、直流電源電圧Vdcを200[V]、整合時の負荷インピーダンスを50Ω(純抵抗)とする。またバイアス電源BaからFETa及びFETbのゲートにバイアス電圧Vbを与えてB級動作を行わせるものとする。
【0016】
図16(A)ないし(E)はそれぞれ、図14に示した増幅器を動作させたときの各FETのドレインソース間電圧Vds、ドレイン電流Id 、増幅器の出力電圧Vout 、出力電流Iout 及びFETの損失Vds×Id のシミュレーション波形を時間tに対して示したものである。このときの負荷は50Ω(純抵抗)で、増幅器の出力インピーダンスと整合している。また、負荷に供給される高周波出力(進行波電力)は約1200Wであり、各FETで生じる損失(平均値)は200Wである。
【0017】
図16は、負荷インピーダンスが電源装置の出力インピーダンスに整合している場合であるが、負荷インピーダンスが整合していない場合には、電源装置(増幅器)から出力させることができる最大高周波出力(進行波電力)が負荷インピーダンスによって大きく変る。
【0018】
表1は、反射係数の大きさが0.714(定在波比SWR=6:1)で、反射係数の位相角が0度,−45度,−90度,−135度,−180度,−225度,−270度及び−315度となる8種類の負荷を図14に示した増幅器に接続したときに、各負荷に対して増幅器から出力することができる進行波電力の最大値、負荷からの反射波電力、各FETの損失、FETとの接触面のヒートシンク温度及びFETのジャンクション温度を示している。
【0019】
なおこの場合、増幅器に供給する直流電源電圧Vdcは200[V]、FETの損失の許容値は300W、FETのジャンクション温度の定格値は150℃、FETの熱抵抗は0.2℃/W、FETを冷却するヒートシンクの周囲温度は45℃、ヒートシンクの熱抵抗は0.15℃/Wである。
【0020】
【表1】
表1に示した例において、位相角が0度の負荷及び−45度の負荷を接続したときには、FETのジャンクション温度Tjが定格値150℃に等しくなるまで入力信号Vinを増大させると、増幅器がB級動作から外れることが明らかになった。表1において、位相角が0度及び−45度の負荷をそれぞれ接続したときのジャンクション温度118.5℃及び125.5℃は、B級動作領域における最高ジャンクション温度を示しており、位相角が0度及び−45度の負荷をそれぞれ接続したときの進行波電力の最大値、反射波電力、FETの損失、FETaとの接触面のヒートシンク温度は、FETのジャンクション温度が最高温度118.5℃及び125.5℃に達したときの値を示している。他の6つの負荷については、ジャンクション温度Tjが定格値150℃のときの値を示している。なお表1に示したジャンクション温度は、ヒートシンクを空冷するものとして、計算により求めた値である。
【0021】
表1から、反射係数の大きさが同じ負荷であっても、負荷インピーダンスの位相角により増幅器から負荷に供給し得る最大高周波出力(最大進行波電力)が大きく異なることが分かる。負荷が8.3Ωのときに増幅器が出力し得る最大高周波出力は、負荷が49+j101Ωのときの1/5以下となる。
【0022】
次に、図17(A)ないし(E)はそれぞれ、インピーダンスが9.7−j20Ωの負荷が接続されたときのFETのドレイン電圧Vds、ドレイン電流Id 、増幅器の出力電圧Vout 、出力電流Iout 、及びFETaの損失Vds×Id を示している。このときのFETの損失(平均値)は約300[W]、ジャンクション温度Tjは150℃である。
【0023】
この場合、電源装置の高周波出力を更に大きくするために、入力信号Vinを大きくすると、FETの損失は更に大きくなる。
【0024】
図18は、入力信号Vinを大きくして各FETの損失(平均値)を約500[W]としたときの各部の電圧、電流波形を示している。このときのFETのジャンクション温度は約220℃、増幅器が出力する進行波電力は約260[W]である。このように、入力信号Vinを大きくすると、増幅器が出力し得る進行波電力が大きくなるが、FETで生じる損失も大きくなり、FETのジャンクション温度が許容温度を超えて破損する可能性がある。
【0025】
上記の説明では、一組の増幅器により増幅部を構成するとしたが、図15に示すように、増幅部を複数の増幅器により構成する場合もある。この例では、図示しない直流電源部の出力電圧Vdcを電源電圧として動作する複数の増幅器2a1〜2a4と、図示しない発振部から与えられる高周波信号Vinを増幅器2a1〜2a4に分配して入力するパワー分配器2bと、増幅器2a1〜2a4の出力を合成して負荷6に与えるパワー合成器2cとにより増幅部2が構成されている。
【0026】
このように、増幅部が複数の増幅器により構成される場合も、上記と同様のことが言え、高周波電源に接続する負荷の反射係数が同じであっても、反射係数の位相角が異なると、負荷インピーダンスの値によって高周波電源装置から負荷に供給される最大高周波出力(最大進行波電力)の大きさが大きく異なる。
【0027】
上記のような高周波電源装置において、反射波電力に対して保護設定値を設定して、反射波電力が保護設定値を超えないように増幅部の出力を制御するようにした場合には、反射波電力の保護設定値は、一番厳しい負荷の時の値に制限される。表1に示した例では、負荷インピーダンスが8.3Ωのときの反射波電力23[W]を保護設定値とする必要がある。その場合、FETのジャンクション温度が150℃のときに反射波電力が23[W]であるため、反射波電力の保護設定値は23[W]未満にする必要がある。この場合、保護設定値を固定値とすると、他の負荷に対しても反射波電力の保護設定値は23[W]未満になるため、電源装置から出力し得る高周波電力(進行波電力)は大きく(45[W]以下に)制限される。
【0028】
また特許文献3や特許文献4に示されているように、増幅器で発生している損失を求めて、この損失を、増幅器が破損しない範囲の最大値付近の値に定めた損失設定値以下に保つように増幅器の出力を制御するようにした高周波電源装置も知られている。
【0029】
このような制御が行われる高周波電源装置においては、増幅器で生じる損失が損失設定値を超える負荷インピーダンスが接続されたときに、増幅器で生じる損失を損失設定値まで下げるように増幅器の出力を低下させる保護制御が行われるため、電源装置の出力(進行波電力または有効電力)が制限される。
【0030】
【特許文献1】
特公平5−76045号公報
【0031】
【特許文献2】
特開2001−244754号公報
【0032】
【特許文献3】
特開平11−233294号公報
【0033】
【特許文献4】
特開2001−35699号公報
【0034】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の高周波電源装置においては、反射波電力により増幅器で発生する損失が増大して、増幅器が破損するおそれが生じたときに、増幅器の出力を低下させることにより、増幅器の保護を図っていたため、増幅器を保護する制御が行われたときに電源出力(進行波電力または有効電力)が設定値よりもかなり低い値に制限されるという問題があった。
【0035】
本発明の目的は、増幅器に設けられている半導体増幅素子のジャンクション温度が高くなる負荷が接続されたときに、半導体増幅素子を破損することなく、従来よりも大きい高周波出力(進行波電力または有効電力)を負荷に供給することができるようにした高周波電源装置を提供することにある。
【0036】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高周波信号を出力する発振部と、発振部の出力を増幅して負荷に高周波出力を供給する増幅部と、増幅部に直流電源電圧を供給する直流電源部とを備えた高周波電源装置を対象とする。
【0037】
本発明においては、増幅部に設けられている半導体増幅素子のジャンクション温度を演算するジャンクション温度演算部と、ジャンクション温度演算部により演算されたジャンクション温度演算値が予め設定されたジャンクション温度設定値を超えたときにジャンクション温度演算値がジャンクション温度設定値に等しくなるまで直流電源部から増幅部に供給する直流電源電圧を低下させる制御を行い、ジャンクション温度演算値がジャンクション温度設定値以下のときには直流電源部から増幅部に供給する直流電源電圧を適値に設定された直流電圧設定値に保つ制御を行う第1の制御部と、増幅部から負荷に供給される高周波出力を高周波出力設定値に近づけるように発振部または増幅部の出力を制御する第2の制御部とを設けた。
【0038】
半導体増幅素子のジャンクション温度は、後述するように、ヒートシンクの周囲温度、ヒートシンクの熱抵抗、ヒートシンクの半導体増幅素子が接触している部分の温度、半導体増幅素子で生じている損失、半導体増幅素子の熱抵抗などから演算することができる。
【0039】
上記ジャンクション温度設定値は、半導体増幅素子のジャンクション温度の許容最大値以下に設定する。
【0040】
第2の制御部が制御する高周波出力は、進行波電力でもよく、有効電力(負荷での消費電力)(=進行波電力−反射波電力)でもよい。
【0041】
上記の電源装置において、半導体増幅素子のジャンクション温度がジャンクション温度設定値を超えると、第1の制御部が直流電源電圧を低下させるように制御するため、増幅部の出力が低下し、半導体増幅素子で生じる損失も減少していき、そのジャンクション温度が低下していく。このとき第2の制御部は、増幅部から負荷に与えられる高周波出力を高周波出力設定値に近づけるように発振部または増幅部を制御して、増幅部の出力を増加させるため、増幅部の出力の低下が抑えられる。第2の制御部が増幅器の出力を増加させると、半導体増幅素子で生じる損失が増加しようとするが、第1の制御部がこの損失の増加を抑えて、半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値に保つ。直流電源電圧を低下さて半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値に保つ第1の制御部による制御と、増幅部の出力を増加させる第2の制御部による制御とがバランスしたところで、第1の制御部及び第2の制御部による制御動作が止り、高周波出力が安定する。
【0042】
このように、本発明においては、半導体増幅素子のジャンクション温度がジャンクション温度設定値を超えたことが検出されたときに、直流電源電圧を低下させて半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値まで低下させる制御を行うと同時に、高周波出力を設定値に向けて上昇させる制御を行うので、増幅部で大きな損失が生じる負荷が接続されたときに、半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値以下に抑えつつ負荷に供給し得る高周波電力(進行波電力または有効電力)を従来よりも大きくすることができる。
【0043】
また半導体増幅素子のジャンクション温度は常にジャンクション温度設定値(許容最高温度)以下に制限されるため、半導体増幅素子が破損するのを防ぐことができる。
【0044】
上記のように、本発明においては、増幅部に設けられている半導体増幅素子のジャンクション温度がジャンクション温度設定値を超えたときに増幅部の直流電源電圧を低下させる制御を行うが、増幅部を安定に動作させるため、直流電源電圧の許容変動範囲(増幅部の安定な動作を確保する上で許容される変動範囲)の下限値よりも低い値まで直流電源電圧を低下させるのは好ましくない。
【0045】
従って本発明の好ましい態様では、ジャンクション温度演算部により演算されたジャンクション温度演算値が予め設定された第1のジャンクション温度設定値以下のときに直流電源部から増幅部に供給される直流電源電圧を適値に設定された直流電圧設定値に保つ制御を行い、ジャンクション温度演算値が第1のジャンクション温度設定値を超えているときにはジャンクション温度演算値を第1のジャンクション温度設定値に等しくするべく、直流電源部の出力電圧を予め定めた下限値を下回らない範囲で低下させる制御を行う第1の制御部と、直流電源電圧が下限値よりも大きいときには高周波出力検出部により検出される増幅部の高周波出力を高周波出力設定値に近づけるように発振部または増幅部の出力を制御し、直流電源電圧が下限値以下になったときには、ジャンクション温度演算値を第1のジャンクション温度設定値に等しいかまたは第1のジャンクション温度設定値よりも僅かに高い値に設定された第2のジャンクション温度設定値に等しくするように発振部または増幅部の出力を制御する第2の制御部とを設ける。
【0046】
上記第1のジャンクション温度設定値及び第2のジャンクション温度設定値は、半導体増幅素子のジャンクション温度の許容最大値以下に設定される。
【0047】
上記直流電圧設定値は、高周波出力の波形を歪ませない範囲で増幅部の効率を最大にする値に設定するのが好ましい。
【0048】
上記のように、直流電源電圧に対して下限値を設定して、第1の制御部により直流電源電圧が下限値を下回らない範囲で直流電源電圧を低下させる制御を行い、直流電源電圧が下限値以下になったときに、第2の制御部により、ジャンクション温度演算値を第1のジャンクション温度設定値に等しいかまたは第1のジャンクション温度設定値よりも僅かに高い値に設定された第2のジャンクション温度設定値に等しくするように、発振部または増幅部の出力を制御するように構成すると、直流電源電圧を下限値以下に低下させることなく半導体増幅素子のジャンクション温度を許容最大値以下に制限する制御を行わせることができるため、増幅部の安定な動作を保証することができる。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0050】
[第1の実施形態]
図1は本発明に係わる高周波電源装置の構成例を示したもので、同図において11は所定の周波数の高周波信号を発生する発振部、12は発振部11の出力を増幅する増幅部、13は増幅部12に直流電源電圧を与える直流電源部、14は増幅部12の高周波出力を検出する高周波出力検出部であり、増幅部12の出力が高周波出力検出部14を通して負荷16に供給されている。
【0051】
また17は直流電源部13から増幅部12に与えられる直流電源電圧Vdcを検出する直流出力検出部、18は増幅部に設けられている半導体増幅素子(この例ではFET)のジャンクション温度を演算するジャンクション温度演算部で、この演算部には、直流出力検出部17の出力と、高周波出力検出部14の出力と、半導体増幅素子を冷却するヒートシンクの半導体増幅素子と接触する部分の温度を検出する温度センサ15の出力とが入力されている。
【0052】
19はジャンクション温度演算部18により演算されるジャンクション温度に応じて直流電源部13を制御する第1の制御部、20は増幅部12から負荷16に供給される高周波出力を高周波出力設定値に近づけるように発振部11または増幅部12を制御する第2の制御部である。
【0053】
発振部11は、発振器と必要に応じて発振器の出力を増幅する増幅器とにより構成され、増幅部12は電力増幅器により構成される。増幅部12は、図13に示した例と同じように単一の増幅器からなっていてもよく、図15に示したように複数の増幅器からなっていてもよい。増幅器としては、図14に示した構成を有するものを用いることができる。
【0054】
なお増幅器の回路構成は図14に示したものに限られるものではなく、発振部11の出力を増幅し得る周波数特性を有する電力増幅回路であればいかなるものでもよい。
【0055】
高周波出力検出部14は、増幅部12の出力情報を検出する部分である。出力情報を検出する方法としては、増幅部12の出力電圧Vout [V]と出力電流Iout [A]とから進行波電力Pfと、反射波電力Pr[W]とを求める方法と、出力電圧Vout [V]、出力電流Iout [A]及びこれらの位相差θから、負荷16に与えられる高周波有効出力電力(負荷で消費された電力)PL =Vout ×Iout ×cosθ[W]を求める方法とがある。
【0056】
高周波有効出力電力PL と進行波電力Pfと反射波電力Prとの間には、PL =Pf−Pr[W]の関係がある。
【0057】
直流出力検出部17は、直流電源部13の出力電圧Vdc[V]と出力電流Id c[A]とを検出し、これらを用いて直流出力検出部17から増幅部12に与えられる直流電力Pdc=Vdc×Idc[W]を求める。
【0058】
ジャンクション温度演算部18は、温度センサ15により検出されたヒートシンクの温度(ヒートシンクの半導体増幅素子が接触する部分の温度)Th[℃]と、増幅部に設けられている各半導体増幅素子の損失Ploss1[W]と、半導体増幅素子とヒートシンクとの間の熱抵抗Rjh[℃/W]とから下記の式により半導体増幅素子のジャンクション温度Tjを演算する。
【0059】
Tj=Th+Ploss1×Rjh …(1)
ヒートシンクを空冷する場合には、ヒートシンクの周囲温度をTha、ヒートシンクの熱抵抗をRhとすると、下記の式により半導体増幅素子のジャンクション温度を演算することもできる。
【0060】
Tj=Tha+Ploss1×Rh+Ploss1×Rjh …(2)
またヒートシンクを水冷する場合には、水温をTwとすると、下記の式により半導体増幅素子のジャンクション温度を演算することができる。
【0061】
Tj=Tw+Ploss1×Rh+Ploss1×Rjh …(3)
本実施形態では半導体増幅素子としてFETを用いているが、バイポーラトランジスタやIGBTなどの他の半導体増幅素子を用いる場合にも、上記の各式により半導体増幅素子のジャンクション温度を演算することができる。
【0062】
上記のように、半導体増幅素子のジャンクション温度を演算するには、各半導体増幅素子の損失Ploss1を求める必要がある。各半導体増幅素子の損失Ploss1を求める方法には、下記の(a)の方法のように、直接Ploss1を求める方法と、下記の(b)または(c)の方法のように、増幅部の損失Plossを求めてから損失Ploss1を求める方法とがある。
【0063】
(a)増幅部に設けられている半導体増幅素子を流れる電流と半導体増幅素子の両端にかかる電圧とを掛け算し、積分して増幅部の電力損失を求める。
【0064】
(b)直流出力検出部17により検出された直流電力Pdc=Vdc×Idcから高周波出力検出部で検出した高周波有効出力電力(負荷で消費された電力)PL =Vout ×Iout ×cosθを引き算して増幅部の電力損失Plossを求め、半導体増幅素子1個当たりの損失Ploss1(平均値)を演算する。ここでθは、VoutとIoutとの位相差である。
【0065】
(c)増幅部に供給する直流電力Pdcから、高周波電源装置が出力する進行波電力Pfを引き算して求めた答えに電源に戻る反射波電力Prを加算して電力損失Ploss(=Pdc−Pf+Pr)を求め、半導体増幅素子1個当たりの損失Ploss1(平均値)を演算する。
【0066】
上記のようにして求めた損失Ploss1を用いて、前記(1)ないし(3)式のいずれかにより各半導体増幅素子のジャンクション温度を演算する。
【0067】
なお増幅部が複数の半導体増幅素子により構成されていて、半導体増幅素子のジャンクション温度が素子により大きく異なるおそれがある場合には、各半導体増幅素子を流れる電流と各半導体増幅素子に印加されている電圧とを掛け算することにより各半導体素子の電力損失を求めて、各半導体素子の損失から各半導体素子のジャンクション温度を個別に演算し、演算されたジャンクション温度のうちの最大値を、増幅部を構成する半導体増幅素子のジャンクション温度とするのが好ましい。
【0068】
また増幅部を構成する複数の半導体増幅素子のジャンクション温度が大きく異なる場合に、ジャンクション温度が最も高くなる半導体増幅素子が予め分かっている場合には、その半導体増幅素子を流れる電流とその半導体増幅素子に印加される電圧とからその半導体増幅素子の損失を演算して、この損失から前記(1)式ないし(3)式のいずれかを用いて求めたジャンクション温度を、増幅部12の半導体増幅素子のジャンクション温度とするようにしてもよい。
【0069】
第1の制御部19は、ジャンクション温度演算部18により演算されたジャンクション温度演算値Tjと、直流出力検出部17により検出された直流電源電圧Vdcと、ジャンクション温度設定値Tjsetとを入力として、ジャンクション温度演算部18により演算されたジャンクション温度演算値Tjが予め設定されたジャンクション温度設定値Tjsetを超えたときにジャンクション温度演算値Tjがジャンクション温度設定値Tjsetに等しくなるまで直流電源部13から増幅部12に供給する直流電源電圧Vdcを低下させる制御を行い、ジャンクション温度演算値Tjがジャンクション温度設定値Tjset以下のときには直流電源部13から増幅部12に供給する直流電源電圧Vdcを適値に設定された直流電圧設定値Vdcsetに保つ制御を行う。
【0070】
なお直流電源電圧Vdcに対して設定する直流電圧設定値Vdcsetは、固定値でも可変値でもよいが、増幅部12を効率よく動作させるのに適した値に設定される。増幅部12を効率よく動作させるのに適した直流電源電圧Vdcは、電源装置の出力Pout の設定値(高周波出力設定値)Pfsetの大きさにより異なるので、高周波出力設定値Pfsetの大きさに応じて増幅部12の効率η(=Pout /Pdc)を最大にするように、設定値Pfsetに応じて直流電圧設定値Vdcsetを変化させるようにするのが好ましい。このように、出力設定値に応じて増幅部の直流電源電圧を制御する方法は、特開2001−197749号に示されているように既に公知である。
【0071】
また第2の制御部20は、高周波出力検出部14により検出された高周波出力Pfと、高周波出力設定値Pfsetとを入力として、増幅部12から負荷16に供給される高周波出力を高周波出力設定値Pfsetに近づけるように発振部11または増幅部12の出力を制御するように構成される。
【0072】
図1に示した電源装置において、増幅部の半導体増幅素子のジャンクション温度演算値がジャンクション温度設定値Tjsetを超えると、第1の制御部19が直流電源13から増幅部12に与えられる直流電源電圧Vdcを低下させるように制御するため、増幅部12の出力が低下し、増幅部12の半導体増幅素子で生じる損失が減少して、該半導体増幅素子のジャンクション温度が低下していく。このとき第2の制御部20は、増幅部12から負荷16に与える高周波出力(進行波電力または有効電力)を高周波出力設定値(進行波電力の設定値または有効電力の設定値)に近づけるように発振部11または増幅部12を制御して、増幅部12の出力を増加させるため、増幅部12の出力の低下が抑えられる。第2の制御部が増幅部の出力を増加させると、増幅部で生じる損失が増加して半導体増幅素子のジャンクション温度が上昇しようとするが、第1の制御部がこの損失の増加を抑えて、半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値Tjsetに保つ。
【0073】
直流電源電圧Vdcを低下さて半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値Tjsetに保つ第1の制御部19による制御と、増幅部の出力を増加させる第2の制御部20による制御とがバランスしたところで、第1の制御部及び第2の制御部による制御動作が止り、高周波出力が安定する。
【0074】
このように、本発明においては、増幅部12の半導体増幅素子のジャンクション温度演算値Tjがジャンクション温度設定値Tjsetを超えたことが検出されたときに、直流電源電圧を低下させて半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値まで減少させる制御を行うと同時に、高周波出力を設定値に向けて上昇させる制御を行うので、増幅部で大きな損失が生じる負荷が接続されたときに、該増幅部の半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値に抑えつつ負荷に供給し得る高周波電力(進行波電力または有効電力)を従来よりも大きくすることができる。
【0075】
また増幅部の半導体増幅素子のジャンクション温度は常にジャンクション温度設定値Tjsetに制限されるため、増幅部12の半導体増幅素子が破損するのを防ぐことができる。
【0076】
ここで、図1に示した電源装置において、図14に示す一組の増幅器2aを用いて増幅部12を構成した場合について行ったシミュレーションの結果を示す。制御の対象とする高周波出力は進行波電力でも有効電力(負荷で消費される電力)でもよいが、ここでは、進行波電力を制御の対象とする高周波出力として、該高周波出力を高周波出力設定値に等しくするように制御するものとする。
【0077】
図14に示した増幅回路において、FETa及びFETbのジャンクション温度設定値Tjsetを150[℃]とした場合に、表1に示した例と同じ負荷に供給できる最大高周波出力(最大進行波電力)の大きさを求めた結果を下記の表2に示す。
【0078】
【表2】
従来の電源装置では、表1に示したように、負荷インピーダンスが16.2−j47.3Ω,9.7−j20Ω,8.3Ω,9.7+j20Ω,16.2+j47.3Ω,49+j101Ωのときにそれぞれ130[W],65[W],45[W],52[W],86[W]及び240[W]の高周波出力電力(この例では進行波電力)しか得ることができなかったが、本発明によれば、表2に示したように、330[W],550[W],410[W],360[W],234[W]及び360[W]の高周波出力を得ることができ、高周波出力を従来よりも大幅に増加させることができる。
【0079】
図2(A)ないし(E)は、9.7−j20Ωの負荷を接続したときのFETaのドレイン電圧Vds、ドレイン電流Id 、増幅部の高周波出力電圧Vout 、高周波出力電流Iout及び損失Vds×Id のシミュレーション波形を時間tに対して示したものである。図2(E)に示したように、FETaの損失は約300[W](平均値)に保たれている。
【0080】
上記のように、本発明においては、増幅部の増幅素子とて用いられている半導体増幅素子のジャンクション温度がジャンクション温度設定値Tjsetを超えたことが検出されたときに、直流電源電圧を低下させて半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値まで低下させる制御を行うと同時に、高周波出力Pfを設定値Pfsetに向けて上昇させる制御を行うので、増幅部12で大きな損失が生じる負荷16が接続されたときに、該増幅部の半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値以下に抑えつつ負荷16に供給し得る高周波電力(進行波電力または有効電力)を従来よりも大きくすることができる。また半導体増幅素子のジャンクション温度は常にジャンクション温度設定値Tjset以下に制限されるため、半導体増幅素子が破損するのを防ぐことができる。
【0081】
[第2の実施形態]
上記のように、本発明においては、増幅部の半導体増幅素子のジャンクション温度がジャンクション温度設定値Tjsetを超えたときに増幅部に与えられる直流電源電圧Vdcを低下させる制御を行うが、増幅部を安定に動作させるため、直流電源電圧の許容変動範囲(増幅部の安定な動作を確保する上で許容される変動範囲)の下限値よりも低い値まで直流電源電圧を低下させることは避けることが好ましい。
【0082】
図3は、直流電源電圧が下限値VLsetよりも低くなるのを防ぐようにする場合の本発明の実施形態を示したものである。図3に示した実施形態では、第1の制御部19´に、ジャンクション温度演算部18の出力及び直流出力検出部17の出力とともに、直流電圧設定値Vdcsetと第1のジャンクション温度設定値Tj1setと直流電源電圧の下限値VLsetとが入力され、第2の制御部20´には、高周波出力検出部14の出力Pfと、高周波出力設定値Pfsetと、第2のジャンクション温度設定値Tj2setと、ジャンクション温度演算部18により演算されたジャンクション温度演算値Tjとが入力されるとともに、直流電源部13の出力電圧が下限値VLsetよりも大きいのか、下限値VLset以下であるのかを示す信号が第1の制御部19´から与えられる。
【0083】
図3に示した第1の制御部19´は、ジャンクション温度演算部により演算されたジャンクション温度演算値Tjが予め設定された第1のジャンクション温度設定値Tj1set以下のときに直流電源部13から増幅部12に供給される直流電源電圧Vdcを適値に設定された直流電圧設定値Vdcsetに保つ制御を行い、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1set を超えているときにはジャンクション温度演算値Tjを第1のジャンクション温度設定値Tj1set に等しくするべく、直流電源部13の出力電圧を予め定めた下限値VLsetを下回らない範囲で低下させる制御を行うように構成される。
【0084】
また第2の制御部20´は、直流電源電圧Vdcが下限値VLset以上よりも大きいときには高周波出力検出部14により検出される増幅部12の高周波出力を高周波出力設定値Pfsetに近づけるように発振部11または増幅部12の出力を制御し、直流電源電圧Vdcが下限値VLset以下になったときには、ジャンクション温度演算値Tjを第1のジャンクション温度設定値Tj1setに等しいかまたは第1のジャンクション温度設定値Tj1setよりも僅かに高い値に設定された第2のジャンクション温度設定値Tj2setに等しくするように発振部11または増幅部12の出力を制御するように構成される。
【0085】
第1のジャンクション温度設定値Tj1set 及び第2のジャンクション温度設定値Tj2set (≧Tj1set )は、増幅部を構成する半導体増幅素子のジャンクション温度の最大許容値以下に設定される。その他の点は図1に示した実施形態と同様である。
【0086】
図3に示した実施形態において、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1set を超えていないときには、第1の制御部19´が、直流電源部の出力電圧Vdcを適値に設定された直流電圧設定値Vdcsetに保つように制御する。またジャンクション温度演算部18により演算されたジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1set を超えたときには、第1の制御部19´が下限値VLsetを下まわらない範囲で直流電源部13の出力電圧を低下させるように制御して増幅部12の出力を低下させ、ジャンクション温度演算値Tjを減少させる。
【0087】
第2の制御部20´は、直流電源部の出力電圧(直流電源電圧)Vdcが下限値VLsetよりも大きいときに、高周波出力検出部14により検出される増幅部12の高周波出力Pfを高周波出力設定値Pfsetに近づけるように発振部11または増幅部12の出力を制御し、直流電源電圧が下限値VLset以下になったときに、ジャンクション温度演算値Tjを第2のジャンクション温度設定値Tj2set に等しくするように発振部11または増幅部12の出力を制御する。
【0088】
上記のように、図3に示した実施形態では、半導体増幅素子のジャンクション温度が第1のジャンクション温度設定値を超えたときに、第1の制御部19´が直流電源部の出力電圧を下限値を下まわらない範囲で低下させて増幅部の出力を低下させるように制御するので、増幅部の安定な動作を損なうことなく、半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値に抑制する制御を行わせることができる。
【0089】
また直流電源電圧が下限値よりも大きいときには、第2の制御部20´が高周波出力を設定値に近づけるように制御するため、増幅部で大きな損失が生じる負荷が接続されたときに、半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値に抑えつつ負荷に供給し得る高周波電力(進行波電力または有効電力)を従来よりも大きくすることができる。
【0090】
更に、直流電源電圧が下限値以下になろうとしたときには、第2の制御部がジャンクション温度演算値Tjを、第1のジャンクション温度設定値に等しいか、または該第1のジャンクション温度設定値よりも僅かに大きく設定された第2のジャンクション温度設定値Tj2set に等しくするように発振部11または増幅部12の出力を制御して、第1の制御部による直流電源電圧の制御(直流電源電圧を低下させる制御)を停止させるため、直流電源部の出力が下限値を下回って、増幅部の動作が不安定になるのを防ぐことができる。
【0091】
図1及び図3に示した実施形態において、発振部11は、所定の周波数の高周波出力を発生する公知の回路により構成することができ、直流電源部13は、出力電圧値を制御する機能を有する各種の直流電源回路により構成することができる。またジャンクション温度演算部18は、アナログ演算回路またはコンピュータにより実現することができる。
【0092】
図1に示した実施形態及び図3に示した実施形態において、第1の制御部19,19´と、第2の制御部20,20´とは、ハードウェア回路により構成することもでき、コンピュータに所定のプログラムを実行させることによりソフトウェア的に構成することもできる。
【0093】
[各部の具体的構成例]
以下、図3に示した実施形態を例にとって、直流電源部13の具体的な構成例と、第1の制御部19´及び第2の制御部20´の具体的構成例を説明する。
【0094】
(1)直流電源部の構成例
図4ないし図6は、本発明に係わる高周波電源装置で用いることができる直流電源部13の具体的な構成例を示したもので、これらの図に示された直流電源部13は、商用電源から得られる交流電圧Vacを直流電圧に変換する整流回路と、この整流回路の出力を交流電圧に変換するインバータ回路と、このインバータ回路の交流出力を直流出力に変換するコンバータ回路とにより構成されている。
【0095】
図4は、プッシュプル方式のインバータ回路を用いた直流電源部13を示したもので、この直流電源部13は、ダイオードDa ないしDd のブリッジ回路からなる全波整流回路21と、チョークコイルL1 と平滑用コンデンサC1 とからなる平滑回路22と、NPNトランジスタTR1 及びTR2 とトランスT1 とからなるプッシュプル方式のインバータ回路23と、整流回路21から与えられる直流電圧を交流電圧に変換するようにトランジスタTR1 及びTR2 をオンオフ制御するインバータ制御部24と、ダイオードDe 及びDf とチョークコイルL2 と平滑用コンデンサC2 とからなっていて、インバータ回路23から得られる交流出力を直流出力に変換するコンバータ回路25とにより構成されている。
【0096】
図4に示した直流電源部において、インバータ制御部24は、第1の制御部19´から与えられる制御信号VCT1 に応じて、トランジスタTR1 及びTR2 をPWM制御またはPFM制御し、PWM制御またはPFM制御された交流電圧をトランスT1 から出力する。この交流電圧は、ダイオードDe 及びDf により整流され、チョークコイルL2 及びコンデンサC2 により平滑されて直流電圧Vdcとして増幅部12に与えられる。第1の制御部19´は、直流出力検出部17により検出される直流電圧Vdcの大きさを指示値Vdccに等しくするように、上記制御信号VCT1 を発生するため、直流電源部13から出力される直流電圧Vdcが指示値Vdccに等しくなるように制御される。
【0097】
図5は、ブリッジ方式のインバータ回路を用いた直流電源部13を示したもので、この直流電源部13は、図4に示された直流電源部で用いられているものと同様の整流回路21及び平滑回路22と、トランジスタTRu,TRv,TRx及びTRyとこれらのトランジスタのコレクタエミッタ間に接続された帰還用ダイオードDu,Dv,Dx及びDyとトランスT1 とからなる公知のブリッジ形インバータ回路27と、インバータ回路27を制御するインバータ制御部24とにより、図4に示された直流電源部で用いられたものと同様のコンバータ回路25とにより構成されている。
【0098】
図5に示された直流電源部13においては、インバータ制御部24がインバータ回路27のブリッジの対角位置にあるトランジスタを交互にオン状態にすることにより整流回路21から与えられる直流電圧を交流電圧に変換する。インバータ制御部24はまた、インバータ回路27のブリッジの上辺を構成するトランジスタまたはブリッジの下辺を構成するトランジスタのうち、オン期間にあるトランジスタを第1の制御部19´から与えられる制御信号VCT1 に応じて、PWM制御またはPMF制御し、PWM制御またはPFM制御された交流電圧をトランスT1 から出力する。この交流電圧は、ダイオードDe 及びDf により整流され、チョークコイルL2 及びコンデンサC2 により平滑されて直流電圧Vdcとして増幅部12に与えられる。第1の制御部19´は、直流出力検出部17により検出される直流電圧Vdcの大きさを指示値Vdccに等しくするように、制御信号VCT1 を発生するため、直流電源部13から出力される直流電圧Vdcが指示値Vdccに等しくなるように制御される。
【0099】
また図6は、ハーフブリッジ方式のインバータ回路を用いた直流電源部13を示したもので、この直流電源部13は、図5に示された直流電源部で用いられた平滑回路22に代えて、チョークコイルL1 とコンデンサC11及びC12からなる平滑回路22´が用いられている点、及びトランジスタTRu及びTRxと帰還ダイオードDu及びDxとトランスT1 とからなるハーフブリッジ式のインバータ回路28が用いられている点を除き、図5に示された直流電源部と同様に構成されている。
【0100】
図6に示された直流電源部において、インバータ制御部24は、第1の制御部19´から与えられる制御信号VCT1 に応じてトランジスタをPWM制御またはPFM制御し、PWM制御またはPFM制御された交流電圧をトランスT1 から出力する。この交流電圧は、ダイオードDe 及びDf により整流され、チョークコイルL2 及びコンデンサC2 により平滑されて直流電圧Vdcとして増幅部12に与えられる。第1の制御部19´は、直流出力検出部17により検出される直流電圧Vdcの大きさを指示値Vdccに等しくするように、上記制御信号VCT1を発生させるため、直流電源部13から出力される直流電圧Vdcが指示値Vdccに等しくなるように制御される。
【0101】
図4ないし図6に示した例では、商用電源から与えられる単相交流電圧Vacを直流電圧Vdcに変換するようにしているが、図4ないし図6に示された整流回路21を図7に示した3相全波整流回路21´で置き換えることにより、3相交流電圧Vacを直流電圧Vdcに変換するように直流電源部13を構成することもできる。
【0102】
なお図4ないし図6に示した例においては、インバータ回路を構成するスイッチ素子としてNPNトランジスタを用いたが、他の電力用半導体増幅素子、例えば、FETやIGBT等をスイッチ素子として用いて、インバータ回路を構成するようにしてもよい。
【0103】
(2)第1の制御部19´の構成例
図8は第1の制御部19´をハードウェア回路により構成した例を示している。図8においては、図3に示した直流電圧Vdcの検出信号、直流電圧設定値Vdcset、第1のジャンクション温度設定値Tj1set、ジャンクション温度演算値Tj等がすべて電圧信号の形で第1の制御部19´に入力される。図8においては、直流電圧Vdc、直流電圧設定値Vdcset、ジャンクション温度演算値Tj等を与える電圧信号をそれぞれの符号の前にSをつけることにより表している。
【0104】
即ち、図8において、SVdcは、直流出力検出部17が出力する直流電圧検出信号で、直流電源部13が出力する直流電圧Vdcに比例している電圧信号である。またSVLsetは直流電圧Vdcの下限値を与える下限電圧値設定信号、SVdcsetは直流電圧Vdcの設定値を与える直流電圧設定信号、STj1setは第1のジャンクション温度設定値Tj1setを与える第1のジャンクション温度設定信号(電圧信号)、STjはジャンクション温度演算部18が演算したジャンクション温度演算値を与えるジャンクション温度演算値信号である。
【0105】
図8に示した例では、演算増幅器IC1と抵抗R1 ないしR3 により、ジャンクション温度演算値信号STjの極性をプラスからマイナスに反転する極性反転回路30が構成され、演算増幅器IC2と、抵抗R4ないしR7と、ダイオードD1及びD2とにより、第1のジャンクション温度設定信号STj1setと極性が反転されたジャンクション温度演算値信号STjとを入力として、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさが第1のジャンクション温度設定信号STj1setの大きさに等しくなるように制御信号を出力する第1の誤差増幅回路31が構成されている。この第1の誤差増幅回路31の出力信号は、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさが第1のジャンクション温度設定信号STj1setの大きさ以下のときに0Vとなり、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさが第1のジャンクション温度設定信号STj1setの大きさを超えたときにプラスの電圧値を示す。
【0106】
また演算増幅器IC3と、抵抗R8ないしR11とにより、直流電圧設定信号SVdcsetと誤差増幅回路31の出力とを入力として、直流電圧設定信号SVdcsetから誤差増幅回路31の出力電圧を減算した電圧を、半導体増幅素子のジャンクション温度を第1のジャンクション温度設定値以下に制限するために必要な直流出力電圧の目標値を与える目標直流電圧信号SVdcoとして出力する減算回路32が構成されている。
【0107】
更に、演算増幅器IC4と、抵抗R12と、ダイオードD3とにより、減算回路32から出力される目標直流電圧信号SVdcoが直流電圧Vdcの下限値を与える下限電圧値設定信号SVLsetよりも大きいときに減算回路32から出力される目標直流電圧信号SVdco に等しい電圧信号を、直流電源部13から出力させる直流電圧の指示値Vdccを示す直流電圧指示値信号SVdcc として出力し、減算回路32から出力される目標直流電圧信号SVdco が下限電圧値設定信号SVLset以下のときには下限電圧値設定信号SVLsetを、直流電源部13から出力させる直流電圧の指示値Vdccを示す直流電圧指示値信号SVdcc として出力する直流電圧指示値信号出力回路33が構成されている。
【0108】
また演算増幅器IC5と抵抗R13ないしR15とにより、直流電圧検出信号SVdcの極性をプラスからマイナスに反転させる極性反転回路34が構成され、演算増幅器IC6と抵抗R16ないしR19とにより、直流電圧指示値信号SVdcc と、極性反転回路34の出力とを入力として、直流電圧検出信号SVdcの大きさが直流電圧指示値信号SVdcc の大きさに等しくなるように制御信号VCT1を出力する第2の誤差増幅回路35が構成されている。
【0109】
直流電源部13のインバータ制御部24は、上記制御信号VCT1を入力として、PWM制御またはPFM制御により、インバータ回路のトランジスタをオンオフさせて、直流電源部13の出力電圧の値を直流電圧指示信号SVdcc により与えられる直流電圧の指示値に一致させる。
【0110】
また図8において、IC7及びIC8はコンパレータ(電圧比較器)で、これらのコンパレータと抵抗R20及びR21とにより、下限電圧値設定信号SVLsetと減算回路32から与えられる目標直流電圧信号SVdco とを比較して、これらの信号の大小関係に応じてコンパレータIC7及びIC8からレベルが異なる第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2を出力する比較回路36が構成されている。
【0111】
比較回路36は、目標直流電圧信号SVdco が下限電圧値設定信号SVLsetよりも大きいとき(半導体増幅素子のジャンクション温度を第1のジャンクション温度設定値以下に制限するために必要な直流電源部の出力電圧の目標値が直流電源部の下限値よりも大きいとき)に第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2をそれぞれ高レベル及び零レベルにし、目標直流電圧信号SVdco が下限電圧設定信号SVLset以下のとき(半導体増幅素子のジャンクション温度を第1のジャンクション温度設定値以下に制限するために必要な直流電源部の出力電圧の目標値が直流電源部の下限値以下のとき)に、第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2をそれぞれ零レベル及び高レベルにする。これらの制御信号VSW1及びVSW2は第2の制御部20´に与えられる。第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2は、直流電源電圧が下限値よりも大きいか、或いは下限値以下かの情報を第2の制御部20´に与えるために用いられる。
【0112】
(3)第2の制御部20´の構成例
図9は第2の制御部20´の構成例を示している。図9において、SPfは高周波出力検出部14から得られる高周波出力検出信号、SPfsetは高周波出力Pfの設定値を与える高周波出力設定信号、STj2setは、第2のジャンクション温度設定値Tj2setを与える第2のジャンクション温度設定信号、STjはジャンクション温度演算部18により演算されたジャンクション温度演算値を示すジャンクション温度演算値信号である。
【0113】
図9に示した第2の制御部においては、演算増幅器IC101と抵抗R101ないしR103とにより、ジャンクション温度演算値信号STjの極性をプラスからマイナスに変換する極性反転回路41が構成され、演算増幅器IC102と抵抗R104ないしR107と、ダイオードD101及びD102とにより、極性反転回路41の出力と、第2のジャンクション温度設定信号STj2setとを入力として、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさが第2のジャンクション温度設定信号STj2setの大きさに等しくなるように制御信号を出力する誤差増幅回路42が構成されている。
【0114】
誤差増幅回路42の出力は、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさが第2のジャンクション温度設定信号STj2setの大きさよりも小さいときに0Vとなり、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさが第2のジャンクション温度設定信号STj2setの大きさを超えたときにプラスの電圧値を示す。
【0115】
IC107及びIC108はそれぞれ第1及び第2のアナログスイッチで、これらのアナログスイッチはそれぞれの制御端子に高レベルの制御信号が与えられたときにオン状態になる。
【0116】
目標直流電圧信号SVdcoが下限電圧設定信号SVLset以下のとき(半導体増幅素子のジャンクション温度を第1のジャンクション温度設定値以下に制限するために必要な直流電源部の出力電圧の目標値が直流電源部の下限値以下のとき)、即ち第1の制御部19´から与えられる第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2がそれぞれ零レベル及び高レベルであるときに、第1のアナログスイッチ107がオン状態になり、第2のアナログスイッチIC108がオフ状態になる。
【0117】
また目標直流電圧信号SVdcoが下限電圧設定信号SVLsetよりも大きいとき(半導体増幅素子のジャンクション温度を第1のジャンクション温度設定値以下に制限するために必要な直流電源部の出力電圧の目標値が直流電源部の下限値よりも大きいとき)、即ち第1の制御部19´から与えられる第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2がそれぞれ高レベル及び零レベルであるときに、第1のアナログスイッチ107がオフ状態になり、第2のアナログスイッチIC108がオン状態になる。
【0118】
また図9に示した第2の制御部においては、演算増幅器IC103と抵抗R108ないしR111とにより、増幅部12から出力する高周波出力(進行波電力)の設定信号SPfsetとアナログスイッチIC107またはIC108の出力とを入力として、高周波出力設定信号SPfsetからアナログスイッチIC107またはIC108の出力信号を減算した信号を、目標高周波出力信号SPfoとして出力する目標高周波出力信号発生回路43が構成されている。
【0119】
ジャンクション温度演算値信号STj(半導体増幅素子のジャンクション温度)の大きさが第2のジャンクション温度設定信号STj2setの大きさ以下であるときには、目標直流電圧信号SVdco が下限電圧設定信号SVLset以上になっていて、第1の制御部19´から与えられる第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2がそれぞれ高レベル及び零レベルになっているため、アナログスイッチIC108がオン状態になり、IC107がオフ状態になる。このとき目標高周波出力信号発生回路43は、高周波出力設定信号SPfsetに等しい電圧信号を目標高周波出力信号SPfoとして出力する。
【0120】
これに対し、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさが第2のジャンクション温度設定信号STj2setの大きさよりも大きいときには、目標直流電圧信号SVdco が下限電圧設定信号SVLsetよりも低くなり、第1の制御部19´から与えられる第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2がそれぞれ零レベル及び高レベルになるため、第1のアナログスイッチ107がオン状態になり、第2のアナログスイッチIC108がオフ状態になる。このとき目標高周波出力信号発生回路43は、高周波出力設定信号SPfsetから誤差増幅回路42の出力を減算した信号を目標高周波出力信号SPfoとして出力する。
【0121】
また演算増幅器IC104と、抵抗R112ないしR114とにより、高周波出力検出部14から得られる高周波出力検出信号SPfの極性をプラスからマイナスに反転する極性反転回路44が構成され、演算増幅器IC105及びIC106と、抵抗R115ないし抵抗R121とにより、目標高周波出力信号発生回路43の出力と極性反転回路44の出力とを入力として、高周波出力検出信号SPfの大きさが目標高周波出力信号SPfoの大きさに等しくなるように制御信号VCT2を出力する誤差増幅回路45が構成されている。制御信号VCT2の値は、目標高周波出力信号SPfoと高周波出力検出信号SPfとの偏差を零にするために増幅部12のアンプに入力する信号の大きさに乗じる係数に相当する値を有するもので、上記制御信号VCT2を発振部11の出力に乗じるか、または増幅部12内のアンプの入力信号に乗じることにより、目標高周波出力信号SPfoと高周波出力検出信号SPfとの偏差を零にするように増幅部12の出力を制御することができるようになっている。
【0122】
上記のように第2の制御部20´が構成される場合、図3に示された増幅部12は、例えば図10に示すように、出力制御部12Aと、ドライバアンプ12Bと、パワーアンプ12Cとにより構成され、第2の制御部20´の誤差増幅回路45から得られる制御信号VCT2が、発振部11の出力Voscとともに出力制御部12Aに入力される。
【0123】
出力制御部12Aは、乗算器、ダブルバランスドミキサまたはデュアルゲートFETを使用したミキサ回路等からなっていて、発振部11が出力する特定の周波数の信号Voscと制御信号VCT2とを掛け合わせることにより、目標高周波出力信号SPfoと高周波出力検出信号SPfとの偏差を零にするようにドライバアンプ12Bに入力する信号の大きさを調整する。このように制御信号により大きさが調整された信号がドライバアンプ12Bにより増幅され、ドライバアンプ12Bの出力がパワーアンプ12Cにより電力増幅されて、目標高周波出力信号SPfoにより与えられる目標値に等しい高周波出力として負荷16に供給される。
【0124】
(4)第1及び第2の制御部を図8及び図9のように構成した場合の動作
第1の制御部19´及び第2の制御部20´をそれぞれ図8及び図9に示すように構成した場合の動作は次の通りである。
【0125】
図3に示したジャンクション温度演算部18が演算したジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1set以下であるときには、図8の第1の誤差増幅回路31の出力信号が0Vであるため、減算回路32は、直流電圧設定信号SVdcsetに等しい大きさの電圧信号を目標直流電圧信号SVdcoとして出力する。このとき目標直流電圧信号SVdcoの大きさが直流電圧Vdcの下限電圧値設定信号SVLsetよりも大きいとすると、直流電圧指示値信号出力回路33は、直流電圧設定信号SVdcsetに等しい電圧信号を直流電圧指示値信号SVdccとして出力し、誤差増幅回路35は、直流電圧検出信号SVdcの大きさが直流電圧設定信号SVdcsetの大きさに等しくなるように制御信号VCT1を出力する。直流電源部のインバータ制御部24は、この制御信号の大きさに応じて、コンバータ回路25に与える交流電圧の平均値を調整するため、直流電源部13の出力電圧は、直流電圧設定信号SVdcsetにより設定された電圧に保持される。
【0126】
またジャンクション温度演算部18が演算したジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setを超えたときには、図8の第1の誤差増幅回路31が、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさを第1のジャンクション温度設定信号STj1setの大きさに等しくするように制御信号を出力する。減算回路32は、直流電圧設定信号SVdcsetから誤差増幅回路31が出力する制御信号を減算して得た電圧信号を、直流出力電圧の目標値を与える目標直流電圧信号SVdco として出力する。このとき目標直流電圧信号SVdcoの大きさが直流電圧Vdcの下限電圧値設定信号SVLsetよりも大きいとすると、直流電圧指示値信号出力回路33は、目標直流電圧信号SVdcoに等しい電圧信号を直流電圧指示値信号SVdccとして出力し、誤差増幅回路35は、直流電圧検出信号SVdcの大きさを目標直流電圧信号SVdcoの大きさに等しくするように制御信号VCT1を出力する。直流電源部のインバータ制御部24は、この制御信号VCT1の大きさに応じて、コンバータ回路25に与える交流電圧の平均値を調整するため、直流電源部13の出力電圧は、直流電圧設定信号SVdcsetにより設定された電圧よりも、誤差増幅回路31の出力に相当する電圧分だけ低い値に調整される。
【0127】
このようにしてジャンクション温度演算部により演算されたジャンクション温度演算値の上昇に伴って、直流電源部の出力電圧を低下させる制御を行った結果、直流電源部の出力電圧が下限値を下回ったときには、直流電圧指示値信号出力回路33が、下限電圧値設定信号SVLsetを直流電圧指示値信号SVdccとして出力するため、直流電源部の出力電圧は、誤差増幅回路35により、下限電圧値設定信号SVLsetによって設定された下限値に保たれる。
【0128】
上記のように、図8に示した第1の制御部19´は、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1set を超えないときに、直流電源部の出力電圧Vdcを適値に設定された直流電圧設定値Vdcsetに保つように制御する。またジャンクション温度演算部18により演算された損失Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1set を超えたときには、下限値VLsetを下まわらない範囲で直流電源部13の出力電圧を低下させるように制御して増幅部12の出力を低下させ、ジャンクション温度演算値(半導体増幅素子のジャンクション温度)Tjを減少させる。
【0129】
また図9に示した第2の制御部20´においては、直流電源部の出力の目標値Vdcoが直流電圧Vdcの下限値VLsetよりも大きいときに、アナログスイッチIC108がオン状態になり、アナログスイッチIC107がオフ状態になるため、目標高周波出力信号発生回路43が、高周波出力設定信号SPfsetに等しい電圧信号を目標高周波出力信号SPfoとして出力する。このとき誤差増幅回路45は、高周波出力設定信号SPfsetに等しい目標高周波出力信号SPfoと高周波出力検出信号SPfとの偏差を零にするために増幅部12のアンプの入力信号に乗じる係数値に相当する大きさの電圧信号を制御信号VCT2として出力し、この制御信号により増幅部12の出力が調整されるため、増幅部12から負荷に与えられる高周波出力が高周波出力設定信号により設定された大きさに近づくように調整される。
【0130】
これに対し、直流電源部の出力の目標値Vdcoが下限値VLset以下になっているときには、アナログスイッチIC107がオン状態になり、アナログスイッチIC108がオフ状態になるため、目標高周波出力信号発生回路43は、高周波出力設定信号SPfsetから誤差増幅回路42の出力を減算した信号を目標高周波出力信号SPfoとして出力する。これにより、増幅部の半導体増幅素子のジャンクション温度を第2のジャンクション温度設定値Tj2setに制限するように高周波出力の目標値が変更される。誤差増幅回路45は、この目標高周波出力信号SPfoと高周波出力検出信号SPfとの偏差を零にするために増幅部12のアンプの入力信号に乗じる係数値に相当する大きさの電圧信号を制御信号VCT2として出力し、この制御信号により増幅部12の出力が調整されるため、増幅部12の出力は、該半導体増幅素子のジャンクション温度を第2のジャンクション温度設定値に等しくするように調整される。
【0131】
上記のように、図9に示した第2の制御部20´は、高周波出力検出部14により検出される増幅部12の高周波出力Pfが高周波出力設定値Pfsetからずれたときに、直流電源部13の出力電圧が下限値よりも大きければ、該高周波出力Pfを高周波出力設定値Pfsetに戻すように増幅部12の出力を制御し、直流電源部13の出力電圧が下限値以下になったときには、ジャンクション温度演算値Tjを第1のジャンクション温度設定値Tj1set に等しいか、または該第1のジャンクション温度設定値Tj1set よりも僅かに高い値に設定された第2のジャンクション温度設定値Tj2set に等しくするように増幅部12の出力を制御する。
【0132】
(5)第1の制御部19及び第2の制御部20の構成例
図1に示した高周波電源装置に設ける第1の制御部19は、図8に示した回路から比較回路36を取り除いた回路により構成することができる。
【0133】
また図1に示した高周波電源装置に設ける第2の制御部20は、図9に示した目標高周波出力信号発生回路43と、極性反転回路44と、誤差増幅回路45とにより構成することができる。
【0134】
(6)第1の制御部19´の他の構成例
図3に示した第1の制御部19´は、ソフトウェア的に構成することもできる。図11は、第1の制御部19´を実現するために、コンピュータに実行させるプログラムのアルゴリズムを示したフローチャートである。図11において、Vdcは直流電源部の出力電圧(直流電源電圧)を示し、Vdcsetは直流電源部の出力電圧の設定値(直流電圧設定値)を示している。またVLsetは直流電源電圧の下限値の設定値を示し、Tjはジャンクション温度演算値を示している。更にTj1setは第1のジャンクション温度設定値、Vdc1は直流電源部の通常時の出力電圧の初期値を示し、ΔVは固定値である微小電圧設定値を示している。
【0135】
図11のアルゴリズムによる場合には、先ずステップ1において直流電圧設定値Vdcsetを初期値Vdc1として直流電源部13を起動させるための処理を行い、ステップ2において直流電源部が直流電源電圧Vdcの出力を開始するのを待つ。直流電源電圧Vdcの出力が開始されたと判定されたときにステップ3に進んで直流電源電圧Vdcが設定値Vdcsetに等しくなるのを待ち、直流電源電圧Vdcが設定値に等しくなったと判定されたときにステップ4に進んで増幅部12が高周波出力の発生を開始するのを待つ。
【0136】
ステップ4で高周波出力が開始されたと判定されたときに、ステップ5に進んでジャンクション温度演算値Tjと第1のジャンクション温度設定値Tj1setとを比較する。最初は、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setよりも低いため、次いでステップ6に進んで直流電圧設定値の更新値A=Vdcset+ΔVの演算を行い、ステップ7で直流電圧設定値の更新値Aが直流電圧設定値の初期値Vdc1よりも高いか否かを判定する。起動時に最初にステップ7が実行されたときには、更新値Aが初期値Vdc1よりも高いためステップ8に進む。ステップ8では初期値Vdc1を直流電圧設定値Vdcsetとして直流電源部の出力電圧を設定値Vdcsetに向けて上昇させるための処理を行う。その後ステップ9において直流電源部の出力電圧Vdcが設定値Vdcsetに等しくなるのを待ち、直流電源部の出力電圧Vdcが設定値Vdcset(=Vdc1)に等しくなったと判定されたときにステップ5に戻って再度ジャンクション温度演算値Tjと第1のジャンクション温度設定値Tj1setとを比較する。
【0137】
ステップ7において、直流電圧設定値の更新値Aが初期値Vdc1以下であると判定されたときには、ステップ10に進んで更新値Aを直流電圧設定値Vdcsetとして直流電源部の出力電圧を設定値Vdcsetに向けて変化させる処理を行い、ステップ9で直流電源電圧Vdcが設定値Vdcsetに等しくなるのを待つ。ステップ9で直流電源電圧Vdcが設定値Vdcset(=Vdc1)に等しくなったと判定されたときにステップ5に戻って再度ジャンクション温度演算値Tjと第1のジャンクション温度設定値Tj1setとを比較する。
【0138】
ステップ5においてジャンクション温度演算値Tjを第1のジャンクション温度設定値Tj1setと比較した結果、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setを超えていると判定されたときには、ステップ11に進んで直流電圧設定値の更新値A=Vdcset−ΔVの演算を行った後ステップ12に進み、直流電圧設定値の更新値Aが下限値の設定値VLsetよりも低いか否かを判定する。その結果Aが下限値の設定値VLsetよりも低いと判定されたときに、ステップ13に進んで下限値の設定値VLsetを直流電圧設定値Vdcsetとして直流電源部の出力電圧を設定値Vdcsetに向けて変化させる処理を行った後ステップ9に移行する。またステップ12で更新値Aが下限値VLsetよりも高いと判定されたときにはステップ14に進んで更新値Aを直流電圧設定値Vdcsetとして、直流電源部の出力電圧を設定値Vdcsetに向けて変化させる処理を行った後ステップ9に移行する。ステップ9では直流電源電圧Vdcが設定値Vdcsetに等しくなるのを待ち、直流電源電圧Vdcが設定値Vdcsetに等しくなったときにステップ5に戻る。
【0139】
ステップ5においてジャンクション温度演算値Tjを第1のジャンクション温度設定値Tj1setと比較した結果、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setに等しいと判定されたときには、直流電圧設定値の更新値Aの演算を行うことなく、更新値Aが下限値VLsetよりも低いか否かの判定を行うステップ12に移行する。
【0140】
図11のアルゴリズムによる場合、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setよりも低いときには、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setに等しくなるまで、ステップ5,6,7,8及び9が繰り返されるため、直流電源部の出力電圧は、設定値Vdcsetに等しくなるまで上昇させられ、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setに等しくなったときにその上昇が止まる。またジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setを超えたときには、ステップ5,11,12,14及び9が繰り返されるため、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setに等しくなるまで直流電源電圧が低下させられる。直流電源電圧が下限値の設定値VLsetよりも低くなったときには、ステップ13が実行されて、直流電源電圧が下限値に保持されるため、直流電源電圧が下限値よりも低くなって増幅部12の動作が不安定になるのが防止される。
【0141】
(7)第2の制御部20´の他の構成例
図3に示した第1の制御部20´もソフトウェア的に構成することができる。図12は、第2の制御部20´を実現するために、コンピュータに実行させるプログラムのアルゴリズムを示したフローチャートである。図12において、Pfsetは、増幅部12が出力する高周波電力(進行波電力)の設定値であり、Pf1はキーボードなどを通して外部から与えられる高周波電力の設定入力値である。またPfは高周波出力検出部14により検出される高周波電力出力値であり、Vdcは直流出力検出部17により検出される直流電源電圧である。またVLsetは直流電源電圧Vdcの下限値、Tjはジャンクション温度演算値、Tj2setは第2のジャンクション温度設定値、ΔPは固定値である微小なパワー設定値である。
【0142】
図12のアルゴリズムによる場合には、ステップ1において直流電源電圧Vdcの出力が開始されたか否かの判定を行い、直流電源電圧の出力が開始されたときにステップ2に進んで高周波電力設定入力値Pf1を高周波電力設定値Pfsetとする。次いでステップ3において増幅部12が高周波電力の出力を開始したか否かを判定し、高周波電力の出力が開始されたときにステップ4に移行する。ステップ4では、直流電源電圧Vdcが下限値VLset以下であるか否かを判定し、直流電源電圧Vdcが下限値VLset以下でない場合には、ステップ5に移行して高周波電力設定入力値Pf1を高周波電力設定値Pfsetとして増幅部12の出力を高周波電力設定値Pfsetに等しくするための処理を行う。次いでステップ6において高周波電力出力値Pfが設定値Pfsetに等しくなるのを待ち、高周波電力出力値Pfが設定値Pfsetに等しくなったと判定されたときにステップ4に戻る。
【0143】
ステップ4において、直流電源電圧Vdcが下限値VLset以下であると判定されたときには、ステップ7に移行してジャンクション温度演算値Tjを第2のジャンクション温度設定値Tj2setと比較する。その結果、ジャンクション温度演算値Tjが第2のジャンクション温度設定値Tj2setよりも低いと判定されたときには、ステップ8に移行して高周波電力設定値Pfsetに微小パワー設定値ΔPを加算したもの(Pfset+ΔP)を新たな高周波出力設定値Pfsetとして増幅部の出力を高周波出力設定値に等しくするための処理を行った後、ステップ7に戻る。ステップ7及び8を繰り返した結果、ステップ7において、ジャンクション温度演算値Tjが第2のジャンクション温度設定値Tj2setに等しくなったと判定されたときにステップ4に戻る。
【0144】
ステップ7においてジャンクション温度演算値Tjが第2のジャンクション温度設定値Tj2setよりも高い判定されたときには、ステップ9に移行して高周波電力設定値Pfsetから微小パワー設定値ΔPを減じたもの(Pfset−ΔP)を新たな高周波電力設定値Pfsetとして増幅部の出力を高周波電力設定値に等しくするための処理を行った後ステップ7に戻る。ステップ7及びステップ9が繰り返されることにより、ステップ7でジャンクション温度演算値Tjが第2のジャンクション温度設定値Tj2setに等しいと判定されたときにステップ4に戻る。
【0145】
上記のように、図12に示したアルゴリズムによる場合には、直流電源電圧Vdcが下限値VLsetよりも大きいときに増幅部12が出力する高周波電力が高周波電力設定入力Pf1に等しくなるように増幅部12の出力が制御される。また直流電源電圧Vdcが下限値VLset以下のときには、ジャンクション温度演算値Tjが第2のジャンクション温度設定値Tj2setに等しくなるように増幅部の出力が制御される。
【0146】
[変形例]
上記の例では、直流電源電圧が下限値以上であるときに高周波出力検出部により検出される増幅部の高周波出力を高周波出力設定値に近づけるように増幅部の出力を制御するようにしたが、増幅部の出力を制御する代わりに発振部の出力を制御するようにしてもよい。
【0147】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、半導体増幅素子のジャンクション温度がジャンクション温度設定値を超えたことが検出されたときに、第1の制御部により直流電源電圧を低下させて損失をジャンクション温度設定値まで減少させる制御を行うと同時に、第2の制御部により高周波出力を設定値に向けて上昇させる制御を行うようにしたので、増幅部で大きな損失が生じる負荷が接続されたときに、該損失をジャンクション温度設定値に抑えつつ負荷に供給し得る高周波電力(進行波電力または有効電力)を従来よりも大きくすることができる。
【0148】
また本発明によれば、半導体増幅素子のジャンクション温度を常にジャンクション温度設定値に制限することができるため、増幅部を構成する半導体増幅素子が破損するのを防ぐことができる。
【0149】
更に本発明において、直流電源電圧に対して下限値を設定して第1の制御部により直流電源電圧が下限値を下回らない範囲で直流電源電圧を低下させる制御を行い、直流電源電圧が下限値以下になったときに、第2の制御部により、ジャンクション温度演算値を第1のジャンクション温度設定値に等しいかまたは第1のジャンクション温度設定値よりも僅かに高い値に設定された第2のジャンクション温度設定値に等しくするように発振部または増幅部の出力を制御するように構成した場合には、直流電源電圧を下限値以下に低下させることなく半導体増幅素子のジャンクション温度を制限する制御を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を示したブロック図である。
【図2】図14に示す一組の増幅器を用いて増幅部を構成した図1の高周波電源装置に特定の負荷を接続したときの増幅部のFETのドレイン電圧Vds、ドレイン電流Id 、増幅部の高周波出力電圧Vout 、高周波出力電流Iout及び損失Vds×Idのシミュレーション波形を示した波形図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の構成を示したブロック図である。
【図4】本発明に係わる高周波電源装置で用いる直流電源部の一構成例を示した回路図である。
【図5】本発明に係わる高周波電源装置で用いる直流電源部の他の構成例を示した回路図である。
【図6】本発明に係わる高周波電源装置で用いる直流電源部の更に他の構成例を示した回路図である。
【図7】図4ないし図6に示した直流電源部で用いることができる入力段の整流回路の他の構成例を示した回路図である。
【図8】図3の実施形態に設ける第1の制御部をハードウェア回路で実現する場合の回路構成を示した回路図である。
【図9】図3の実施形態に設ける第2の制御部をハードウェア回路で実現する場合の回路構成を示した回路図である。
【図10】図1及び図3に示した実施形態に設ける増幅部の構成例を示したブロック図である。
【図11】図3の実施形態に設ける第1の制御部をソフトウェア的に実現する場合にコンピュータに実行させるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図12】図3の実施形態に設ける第2の制御部をソフトウェア的に実現する場合にコンピュータに実行させるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図13】従来の高周波電源の基本的な構成を示した回路図である。
【図14】高周波電源で用いられる増幅器の構成例を示した回路図である。
【図15】高周波電源で用いられる増幅器の他の構成例を示した回路図である。
【図16】図14に示した増幅器を動作させたときのFETのドレインソース間電圧Vds、ドレイン電流Id 、増幅器の出力電圧Vout 、出力電流Iout 及びFETの損失Vds×Id のシミュレーション波形を示した波形図である。
【図17】図14に示した増幅器に特定の負荷が接続されたときのFETのドレイン電圧Vds、ドレイン電流Id 、増幅器の出力電圧Vout 、出力電流Iout 及びFETの損失Vds×Id のシミュレーション波形を時間に対して示した波形図である。
【図18】図14に示した増幅器に特定の負荷が接続されたときに入力信号を大きくしてFETの損失(平均値)を約500[W]としたときのFETのドレインソース間電圧Vds、ドレイン電流Id 、増幅器の出力電圧Vout 、出力電流Iout 及びFETの損失Vds×Id のシミュレーション波形を示した波形図である。
【符号の説明】
11…発振部、12…増幅部、13…直流電源部、14…高周波出力検出部、16…負荷、17…直流出力検出部、18…ジャンクション温度演算部、19,19´…第1の制御部、20,20´…第2の制御部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、負荷に高周波電力を供給する高周波電源装置に関し、特に、プラズマ発生装置やレーザ発振装置などの電源として用いるのに好適な高周波電源装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造プロセス用プラズマ発生装置やレーザ加工プロセス用レーザ発振装置等の電源として用いる高周波電源装置は、基本的には、図13に示したように、所定の周波数の高周波信号を出力する発振部1と、この発振部の出力を増幅する増幅部2と、増幅部2に直流電源電圧Vdcを供給する直流電源部3と、増幅部2が出力する高周波出力を検出する高周波出力検出部4と、高周波出力検出部4により検出される高周波出力を高周波出力設定値に保つように制御する制御部5とにより構成され、増幅部2の出力が負荷6に供給される。
【0003】
発振部1は、所定の周波数の高周波信号を発生する発振器と、必要に応じて該発振器の出力を増幅する増幅器とにより構成され、増幅部2は、電力増幅器2aにより構成される。
【0004】
制御部5は、高周波出力設定値と高周波出力検出部4により検出された高周波出力とを入力として、増幅部2から負荷6に与えられる高周波出力が、高周波出力設定値に等しくなるように直流電源部3の出力電圧を制御したり、発振部1の出力を制御したり、増幅部2のゲインを制御したりする。
【0005】
高周波電源装置からプラズマ発生装置やレーザ発振装置などに電力を供給する場合、高周波電源装置の出力インピーダンスと負荷インピーダンス(電源装置の出力端から負荷側を見たインピーダンス)との整合がとれているときには、電源装置から出力された進行波電力がすべて負荷に吸収されるが、電源装置の出力インピーダンスと負荷インピーダンスとの整合がとれていないときには、負荷で反射が生じ、負荷側から電源装置側に反射波電力が流れる。
【0006】
一般に高周波電源装置の負荷インピーダンスは一定ではなく、変動するのが普通であるため、反射波電力が生じるのを避けられない。反射波電力が生じた場合には、進行波電力から反射波電力を差引いたものが有効電力となる。
【0007】
通常、制御部5は、進行波電力または有効電力のいずれかを設定値に保つように制御する。即ち、進行波電力または有効電力のいずれかに対して設定値を定めて、出力に含まれる進行波電力または有効電力を当該設定値に保つように制御する。本明細書において、高周波出力設定値に保つように制御する高周波出力は、進行波電力でもよく、有効電力でもよい。
【0008】
図13に示すような基本構成を有する従来の高周波電源装置は、例えば特許文献1ないし4に示されている。
【0009】
上記のように、高周波電源装置の出力インピーダンスと負荷インピーダンスとの整合がとれていない場合には、負荷で反射が生じ、負荷側から電源装置側に流れる反射波電力が生じる。反射波電力が増大すると増幅器が破損するため、プラズマ発生装置等の電源として用いる高周波電源装置においては、特許文献1や特許文献2に示されているように、反射波電力に対して増幅器を破損するおそれがない大きさの保護設定値を定めて、負荷から電源装置側への反射波電力が保護設定値を超えないように、電源装置から負荷に供給する高周波出力(進行波電力または有効電力)を制限する制御を行わせて、増幅器を反射波電力から保護するようにしていた。
【0010】
上記のような電源装置においては、反射波電力が保護設定値以下であれば電源装置から高周波出力設定値に等しい高周波出力(進行波電力または有効電力)を得ることができるが、反射波電力が保護設定値を超えたときには、電源装置から得ることができる高周波出力が高周波出力設定値よりも小さい値に制限される。
このような制御を行う従来の高周波電源装置においては、以下に示すような問題があった。
【0011】
a.電源装置の出力端子間に接続される負荷のインピーダンスが変化する場合、反射係数の大きさが同じであっても、反射係数の位相角が変化すると、最大高周波出力(電源装置から出力することができる進行波電力または有効電力の最大値)が変化する。そのため、反射係数の大きさが同じであっても、負荷インピーダンスの変化により反射係数の位相角が変化すると最大高周波出力が変化し、反射係数の位相角が特定の値を示す負荷インピーダンスに対して最大高周波出力が著しく小さくなる。
【0012】
b.反射係数の位相角が特定の値を示す負荷に対して電源装置の最大高周波出力を大きくしようとすると、増幅器で生じる損失が大きくなって、増幅器に設けられている半導体増幅素子のジャンクション温度が許容値を超え、該半導体増幅素子が破損するおそれがある。
【0013】
上記のような従来の高周波電源装置が有する問題点を、具体例を用いて更に詳細に説明する。
【0014】
図14は、図13に示した電源装置で用いる電力増幅器2aの回路構成例を示したものである。図14に示した増幅器は、周知のプッシュプル式増幅器で、一次コイルW11と中間タップ付きの二次コイルW12とを備えた入力トランスTaと、ソースが共通接続されて接地された1対のnチャンネル型電界効果トランジスタFETa及びFETbと、FETaのゲートとトランスTaの二次コイルW12の一端との間、及びFETbのゲートと二次コイルW12の他端との間にそれぞれ接続された抵抗Ra及びRbと、二次コイルW12の中間タップに抵抗Rcを通して正極端子が接続され、負極端子が接地されたバイアス電源Baと、トランスTaの二次コイルW12の一端と接地間及び他端と接地間にそれぞれ接続された抵抗Rd及びReと、FETaのドレインとFETbのドレインとの間に接続された中間タップ付きのコイルLaと、コイルLaの中間タップと接地間に、負極端子を接地側に向けて接続されて電源電圧Vdcを出力する直流電源Bbと、コイルLaの両端に一次コイルW21が接続された出力トランスTbとを備えており、出力トランスTbの二次コイルW22の両端に負荷6が接続されている。FETa及びFETbは、ヒートシンクに取り付けられている。
【0015】
ここで、発振器から入力される入力電圧Vinの周波数及び電源装置の出力周波数を10MHz、直流電源電圧Vdcを200[V]、整合時の負荷インピーダンスを50Ω(純抵抗)とする。またバイアス電源BaからFETa及びFETbのゲートにバイアス電圧Vbを与えてB級動作を行わせるものとする。
【0016】
図16(A)ないし(E)はそれぞれ、図14に示した増幅器を動作させたときの各FETのドレインソース間電圧Vds、ドレイン電流Id 、増幅器の出力電圧Vout 、出力電流Iout 及びFETの損失Vds×Id のシミュレーション波形を時間tに対して示したものである。このときの負荷は50Ω(純抵抗)で、増幅器の出力インピーダンスと整合している。また、負荷に供給される高周波出力(進行波電力)は約1200Wであり、各FETで生じる損失(平均値)は200Wである。
【0017】
図16は、負荷インピーダンスが電源装置の出力インピーダンスに整合している場合であるが、負荷インピーダンスが整合していない場合には、電源装置(増幅器)から出力させることができる最大高周波出力(進行波電力)が負荷インピーダンスによって大きく変る。
【0018】
表1は、反射係数の大きさが0.714(定在波比SWR=6:1)で、反射係数の位相角が0度,−45度,−90度,−135度,−180度,−225度,−270度及び−315度となる8種類の負荷を図14に示した増幅器に接続したときに、各負荷に対して増幅器から出力することができる進行波電力の最大値、負荷からの反射波電力、各FETの損失、FETとの接触面のヒートシンク温度及びFETのジャンクション温度を示している。
【0019】
なおこの場合、増幅器に供給する直流電源電圧Vdcは200[V]、FETの損失の許容値は300W、FETのジャンクション温度の定格値は150℃、FETの熱抵抗は0.2℃/W、FETを冷却するヒートシンクの周囲温度は45℃、ヒートシンクの熱抵抗は0.15℃/Wである。
【0020】
【表1】
表1に示した例において、位相角が0度の負荷及び−45度の負荷を接続したときには、FETのジャンクション温度Tjが定格値150℃に等しくなるまで入力信号Vinを増大させると、増幅器がB級動作から外れることが明らかになった。表1において、位相角が0度及び−45度の負荷をそれぞれ接続したときのジャンクション温度118.5℃及び125.5℃は、B級動作領域における最高ジャンクション温度を示しており、位相角が0度及び−45度の負荷をそれぞれ接続したときの進行波電力の最大値、反射波電力、FETの損失、FETaとの接触面のヒートシンク温度は、FETのジャンクション温度が最高温度118.5℃及び125.5℃に達したときの値を示している。他の6つの負荷については、ジャンクション温度Tjが定格値150℃のときの値を示している。なお表1に示したジャンクション温度は、ヒートシンクを空冷するものとして、計算により求めた値である。
【0021】
表1から、反射係数の大きさが同じ負荷であっても、負荷インピーダンスの位相角により増幅器から負荷に供給し得る最大高周波出力(最大進行波電力)が大きく異なることが分かる。負荷が8.3Ωのときに増幅器が出力し得る最大高周波出力は、負荷が49+j101Ωのときの1/5以下となる。
【0022】
次に、図17(A)ないし(E)はそれぞれ、インピーダンスが9.7−j20Ωの負荷が接続されたときのFETのドレイン電圧Vds、ドレイン電流Id 、増幅器の出力電圧Vout 、出力電流Iout 、及びFETaの損失Vds×Id を示している。このときのFETの損失(平均値)は約300[W]、ジャンクション温度Tjは150℃である。
【0023】
この場合、電源装置の高周波出力を更に大きくするために、入力信号Vinを大きくすると、FETの損失は更に大きくなる。
【0024】
図18は、入力信号Vinを大きくして各FETの損失(平均値)を約500[W]としたときの各部の電圧、電流波形を示している。このときのFETのジャンクション温度は約220℃、増幅器が出力する進行波電力は約260[W]である。このように、入力信号Vinを大きくすると、増幅器が出力し得る進行波電力が大きくなるが、FETで生じる損失も大きくなり、FETのジャンクション温度が許容温度を超えて破損する可能性がある。
【0025】
上記の説明では、一組の増幅器により増幅部を構成するとしたが、図15に示すように、増幅部を複数の増幅器により構成する場合もある。この例では、図示しない直流電源部の出力電圧Vdcを電源電圧として動作する複数の増幅器2a1〜2a4と、図示しない発振部から与えられる高周波信号Vinを増幅器2a1〜2a4に分配して入力するパワー分配器2bと、増幅器2a1〜2a4の出力を合成して負荷6に与えるパワー合成器2cとにより増幅部2が構成されている。
【0026】
このように、増幅部が複数の増幅器により構成される場合も、上記と同様のことが言え、高周波電源に接続する負荷の反射係数が同じであっても、反射係数の位相角が異なると、負荷インピーダンスの値によって高周波電源装置から負荷に供給される最大高周波出力(最大進行波電力)の大きさが大きく異なる。
【0027】
上記のような高周波電源装置において、反射波電力に対して保護設定値を設定して、反射波電力が保護設定値を超えないように増幅部の出力を制御するようにした場合には、反射波電力の保護設定値は、一番厳しい負荷の時の値に制限される。表1に示した例では、負荷インピーダンスが8.3Ωのときの反射波電力23[W]を保護設定値とする必要がある。その場合、FETのジャンクション温度が150℃のときに反射波電力が23[W]であるため、反射波電力の保護設定値は23[W]未満にする必要がある。この場合、保護設定値を固定値とすると、他の負荷に対しても反射波電力の保護設定値は23[W]未満になるため、電源装置から出力し得る高周波電力(進行波電力)は大きく(45[W]以下に)制限される。
【0028】
また特許文献3や特許文献4に示されているように、増幅器で発生している損失を求めて、この損失を、増幅器が破損しない範囲の最大値付近の値に定めた損失設定値以下に保つように増幅器の出力を制御するようにした高周波電源装置も知られている。
【0029】
このような制御が行われる高周波電源装置においては、増幅器で生じる損失が損失設定値を超える負荷インピーダンスが接続されたときに、増幅器で生じる損失を損失設定値まで下げるように増幅器の出力を低下させる保護制御が行われるため、電源装置の出力(進行波電力または有効電力)が制限される。
【0030】
【特許文献1】
特公平5−76045号公報
【0031】
【特許文献2】
特開2001−244754号公報
【0032】
【特許文献3】
特開平11−233294号公報
【0033】
【特許文献4】
特開2001−35699号公報
【0034】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の高周波電源装置においては、反射波電力により増幅器で発生する損失が増大して、増幅器が破損するおそれが生じたときに、増幅器の出力を低下させることにより、増幅器の保護を図っていたため、増幅器を保護する制御が行われたときに電源出力(進行波電力または有効電力)が設定値よりもかなり低い値に制限されるという問題があった。
【0035】
本発明の目的は、増幅器に設けられている半導体増幅素子のジャンクション温度が高くなる負荷が接続されたときに、半導体増幅素子を破損することなく、従来よりも大きい高周波出力(進行波電力または有効電力)を負荷に供給することができるようにした高周波電源装置を提供することにある。
【0036】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高周波信号を出力する発振部と、発振部の出力を増幅して負荷に高周波出力を供給する増幅部と、増幅部に直流電源電圧を供給する直流電源部とを備えた高周波電源装置を対象とする。
【0037】
本発明においては、増幅部に設けられている半導体増幅素子のジャンクション温度を演算するジャンクション温度演算部と、ジャンクション温度演算部により演算されたジャンクション温度演算値が予め設定されたジャンクション温度設定値を超えたときにジャンクション温度演算値がジャンクション温度設定値に等しくなるまで直流電源部から増幅部に供給する直流電源電圧を低下させる制御を行い、ジャンクション温度演算値がジャンクション温度設定値以下のときには直流電源部から増幅部に供給する直流電源電圧を適値に設定された直流電圧設定値に保つ制御を行う第1の制御部と、増幅部から負荷に供給される高周波出力を高周波出力設定値に近づけるように発振部または増幅部の出力を制御する第2の制御部とを設けた。
【0038】
半導体増幅素子のジャンクション温度は、後述するように、ヒートシンクの周囲温度、ヒートシンクの熱抵抗、ヒートシンクの半導体増幅素子が接触している部分の温度、半導体増幅素子で生じている損失、半導体増幅素子の熱抵抗などから演算することができる。
【0039】
上記ジャンクション温度設定値は、半導体増幅素子のジャンクション温度の許容最大値以下に設定する。
【0040】
第2の制御部が制御する高周波出力は、進行波電力でもよく、有効電力(負荷での消費電力)(=進行波電力−反射波電力)でもよい。
【0041】
上記の電源装置において、半導体増幅素子のジャンクション温度がジャンクション温度設定値を超えると、第1の制御部が直流電源電圧を低下させるように制御するため、増幅部の出力が低下し、半導体増幅素子で生じる損失も減少していき、そのジャンクション温度が低下していく。このとき第2の制御部は、増幅部から負荷に与えられる高周波出力を高周波出力設定値に近づけるように発振部または増幅部を制御して、増幅部の出力を増加させるため、増幅部の出力の低下が抑えられる。第2の制御部が増幅器の出力を増加させると、半導体増幅素子で生じる損失が増加しようとするが、第1の制御部がこの損失の増加を抑えて、半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値に保つ。直流電源電圧を低下さて半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値に保つ第1の制御部による制御と、増幅部の出力を増加させる第2の制御部による制御とがバランスしたところで、第1の制御部及び第2の制御部による制御動作が止り、高周波出力が安定する。
【0042】
このように、本発明においては、半導体増幅素子のジャンクション温度がジャンクション温度設定値を超えたことが検出されたときに、直流電源電圧を低下させて半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値まで低下させる制御を行うと同時に、高周波出力を設定値に向けて上昇させる制御を行うので、増幅部で大きな損失が生じる負荷が接続されたときに、半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値以下に抑えつつ負荷に供給し得る高周波電力(進行波電力または有効電力)を従来よりも大きくすることができる。
【0043】
また半導体増幅素子のジャンクション温度は常にジャンクション温度設定値(許容最高温度)以下に制限されるため、半導体増幅素子が破損するのを防ぐことができる。
【0044】
上記のように、本発明においては、増幅部に設けられている半導体増幅素子のジャンクション温度がジャンクション温度設定値を超えたときに増幅部の直流電源電圧を低下させる制御を行うが、増幅部を安定に動作させるため、直流電源電圧の許容変動範囲(増幅部の安定な動作を確保する上で許容される変動範囲)の下限値よりも低い値まで直流電源電圧を低下させるのは好ましくない。
【0045】
従って本発明の好ましい態様では、ジャンクション温度演算部により演算されたジャンクション温度演算値が予め設定された第1のジャンクション温度設定値以下のときに直流電源部から増幅部に供給される直流電源電圧を適値に設定された直流電圧設定値に保つ制御を行い、ジャンクション温度演算値が第1のジャンクション温度設定値を超えているときにはジャンクション温度演算値を第1のジャンクション温度設定値に等しくするべく、直流電源部の出力電圧を予め定めた下限値を下回らない範囲で低下させる制御を行う第1の制御部と、直流電源電圧が下限値よりも大きいときには高周波出力検出部により検出される増幅部の高周波出力を高周波出力設定値に近づけるように発振部または増幅部の出力を制御し、直流電源電圧が下限値以下になったときには、ジャンクション温度演算値を第1のジャンクション温度設定値に等しいかまたは第1のジャンクション温度設定値よりも僅かに高い値に設定された第2のジャンクション温度設定値に等しくするように発振部または増幅部の出力を制御する第2の制御部とを設ける。
【0046】
上記第1のジャンクション温度設定値及び第2のジャンクション温度設定値は、半導体増幅素子のジャンクション温度の許容最大値以下に設定される。
【0047】
上記直流電圧設定値は、高周波出力の波形を歪ませない範囲で増幅部の効率を最大にする値に設定するのが好ましい。
【0048】
上記のように、直流電源電圧に対して下限値を設定して、第1の制御部により直流電源電圧が下限値を下回らない範囲で直流電源電圧を低下させる制御を行い、直流電源電圧が下限値以下になったときに、第2の制御部により、ジャンクション温度演算値を第1のジャンクション温度設定値に等しいかまたは第1のジャンクション温度設定値よりも僅かに高い値に設定された第2のジャンクション温度設定値に等しくするように、発振部または増幅部の出力を制御するように構成すると、直流電源電圧を下限値以下に低下させることなく半導体増幅素子のジャンクション温度を許容最大値以下に制限する制御を行わせることができるため、増幅部の安定な動作を保証することができる。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0050】
[第1の実施形態]
図1は本発明に係わる高周波電源装置の構成例を示したもので、同図において11は所定の周波数の高周波信号を発生する発振部、12は発振部11の出力を増幅する増幅部、13は増幅部12に直流電源電圧を与える直流電源部、14は増幅部12の高周波出力を検出する高周波出力検出部であり、増幅部12の出力が高周波出力検出部14を通して負荷16に供給されている。
【0051】
また17は直流電源部13から増幅部12に与えられる直流電源電圧Vdcを検出する直流出力検出部、18は増幅部に設けられている半導体増幅素子(この例ではFET)のジャンクション温度を演算するジャンクション温度演算部で、この演算部には、直流出力検出部17の出力と、高周波出力検出部14の出力と、半導体増幅素子を冷却するヒートシンクの半導体増幅素子と接触する部分の温度を検出する温度センサ15の出力とが入力されている。
【0052】
19はジャンクション温度演算部18により演算されるジャンクション温度に応じて直流電源部13を制御する第1の制御部、20は増幅部12から負荷16に供給される高周波出力を高周波出力設定値に近づけるように発振部11または増幅部12を制御する第2の制御部である。
【0053】
発振部11は、発振器と必要に応じて発振器の出力を増幅する増幅器とにより構成され、増幅部12は電力増幅器により構成される。増幅部12は、図13に示した例と同じように単一の増幅器からなっていてもよく、図15に示したように複数の増幅器からなっていてもよい。増幅器としては、図14に示した構成を有するものを用いることができる。
【0054】
なお増幅器の回路構成は図14に示したものに限られるものではなく、発振部11の出力を増幅し得る周波数特性を有する電力増幅回路であればいかなるものでもよい。
【0055】
高周波出力検出部14は、増幅部12の出力情報を検出する部分である。出力情報を検出する方法としては、増幅部12の出力電圧Vout [V]と出力電流Iout [A]とから進行波電力Pfと、反射波電力Pr[W]とを求める方法と、出力電圧Vout [V]、出力電流Iout [A]及びこれらの位相差θから、負荷16に与えられる高周波有効出力電力(負荷で消費された電力)PL =Vout ×Iout ×cosθ[W]を求める方法とがある。
【0056】
高周波有効出力電力PL と進行波電力Pfと反射波電力Prとの間には、PL =Pf−Pr[W]の関係がある。
【0057】
直流出力検出部17は、直流電源部13の出力電圧Vdc[V]と出力電流Id c[A]とを検出し、これらを用いて直流出力検出部17から増幅部12に与えられる直流電力Pdc=Vdc×Idc[W]を求める。
【0058】
ジャンクション温度演算部18は、温度センサ15により検出されたヒートシンクの温度(ヒートシンクの半導体増幅素子が接触する部分の温度)Th[℃]と、増幅部に設けられている各半導体増幅素子の損失Ploss1[W]と、半導体増幅素子とヒートシンクとの間の熱抵抗Rjh[℃/W]とから下記の式により半導体増幅素子のジャンクション温度Tjを演算する。
【0059】
Tj=Th+Ploss1×Rjh …(1)
ヒートシンクを空冷する場合には、ヒートシンクの周囲温度をTha、ヒートシンクの熱抵抗をRhとすると、下記の式により半導体増幅素子のジャンクション温度を演算することもできる。
【0060】
Tj=Tha+Ploss1×Rh+Ploss1×Rjh …(2)
またヒートシンクを水冷する場合には、水温をTwとすると、下記の式により半導体増幅素子のジャンクション温度を演算することができる。
【0061】
Tj=Tw+Ploss1×Rh+Ploss1×Rjh …(3)
本実施形態では半導体増幅素子としてFETを用いているが、バイポーラトランジスタやIGBTなどの他の半導体増幅素子を用いる場合にも、上記の各式により半導体増幅素子のジャンクション温度を演算することができる。
【0062】
上記のように、半導体増幅素子のジャンクション温度を演算するには、各半導体増幅素子の損失Ploss1を求める必要がある。各半導体増幅素子の損失Ploss1を求める方法には、下記の(a)の方法のように、直接Ploss1を求める方法と、下記の(b)または(c)の方法のように、増幅部の損失Plossを求めてから損失Ploss1を求める方法とがある。
【0063】
(a)増幅部に設けられている半導体増幅素子を流れる電流と半導体増幅素子の両端にかかる電圧とを掛け算し、積分して増幅部の電力損失を求める。
【0064】
(b)直流出力検出部17により検出された直流電力Pdc=Vdc×Idcから高周波出力検出部で検出した高周波有効出力電力(負荷で消費された電力)PL =Vout ×Iout ×cosθを引き算して増幅部の電力損失Plossを求め、半導体増幅素子1個当たりの損失Ploss1(平均値)を演算する。ここでθは、VoutとIoutとの位相差である。
【0065】
(c)増幅部に供給する直流電力Pdcから、高周波電源装置が出力する進行波電力Pfを引き算して求めた答えに電源に戻る反射波電力Prを加算して電力損失Ploss(=Pdc−Pf+Pr)を求め、半導体増幅素子1個当たりの損失Ploss1(平均値)を演算する。
【0066】
上記のようにして求めた損失Ploss1を用いて、前記(1)ないし(3)式のいずれかにより各半導体増幅素子のジャンクション温度を演算する。
【0067】
なお増幅部が複数の半導体増幅素子により構成されていて、半導体増幅素子のジャンクション温度が素子により大きく異なるおそれがある場合には、各半導体増幅素子を流れる電流と各半導体増幅素子に印加されている電圧とを掛け算することにより各半導体素子の電力損失を求めて、各半導体素子の損失から各半導体素子のジャンクション温度を個別に演算し、演算されたジャンクション温度のうちの最大値を、増幅部を構成する半導体増幅素子のジャンクション温度とするのが好ましい。
【0068】
また増幅部を構成する複数の半導体増幅素子のジャンクション温度が大きく異なる場合に、ジャンクション温度が最も高くなる半導体増幅素子が予め分かっている場合には、その半導体増幅素子を流れる電流とその半導体増幅素子に印加される電圧とからその半導体増幅素子の損失を演算して、この損失から前記(1)式ないし(3)式のいずれかを用いて求めたジャンクション温度を、増幅部12の半導体増幅素子のジャンクション温度とするようにしてもよい。
【0069】
第1の制御部19は、ジャンクション温度演算部18により演算されたジャンクション温度演算値Tjと、直流出力検出部17により検出された直流電源電圧Vdcと、ジャンクション温度設定値Tjsetとを入力として、ジャンクション温度演算部18により演算されたジャンクション温度演算値Tjが予め設定されたジャンクション温度設定値Tjsetを超えたときにジャンクション温度演算値Tjがジャンクション温度設定値Tjsetに等しくなるまで直流電源部13から増幅部12に供給する直流電源電圧Vdcを低下させる制御を行い、ジャンクション温度演算値Tjがジャンクション温度設定値Tjset以下のときには直流電源部13から増幅部12に供給する直流電源電圧Vdcを適値に設定された直流電圧設定値Vdcsetに保つ制御を行う。
【0070】
なお直流電源電圧Vdcに対して設定する直流電圧設定値Vdcsetは、固定値でも可変値でもよいが、増幅部12を効率よく動作させるのに適した値に設定される。増幅部12を効率よく動作させるのに適した直流電源電圧Vdcは、電源装置の出力Pout の設定値(高周波出力設定値)Pfsetの大きさにより異なるので、高周波出力設定値Pfsetの大きさに応じて増幅部12の効率η(=Pout /Pdc)を最大にするように、設定値Pfsetに応じて直流電圧設定値Vdcsetを変化させるようにするのが好ましい。このように、出力設定値に応じて増幅部の直流電源電圧を制御する方法は、特開2001−197749号に示されているように既に公知である。
【0071】
また第2の制御部20は、高周波出力検出部14により検出された高周波出力Pfと、高周波出力設定値Pfsetとを入力として、増幅部12から負荷16に供給される高周波出力を高周波出力設定値Pfsetに近づけるように発振部11または増幅部12の出力を制御するように構成される。
【0072】
図1に示した電源装置において、増幅部の半導体増幅素子のジャンクション温度演算値がジャンクション温度設定値Tjsetを超えると、第1の制御部19が直流電源13から増幅部12に与えられる直流電源電圧Vdcを低下させるように制御するため、増幅部12の出力が低下し、増幅部12の半導体増幅素子で生じる損失が減少して、該半導体増幅素子のジャンクション温度が低下していく。このとき第2の制御部20は、増幅部12から負荷16に与える高周波出力(進行波電力または有効電力)を高周波出力設定値(進行波電力の設定値または有効電力の設定値)に近づけるように発振部11または増幅部12を制御して、増幅部12の出力を増加させるため、増幅部12の出力の低下が抑えられる。第2の制御部が増幅部の出力を増加させると、増幅部で生じる損失が増加して半導体増幅素子のジャンクション温度が上昇しようとするが、第1の制御部がこの損失の増加を抑えて、半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値Tjsetに保つ。
【0073】
直流電源電圧Vdcを低下さて半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値Tjsetに保つ第1の制御部19による制御と、増幅部の出力を増加させる第2の制御部20による制御とがバランスしたところで、第1の制御部及び第2の制御部による制御動作が止り、高周波出力が安定する。
【0074】
このように、本発明においては、増幅部12の半導体増幅素子のジャンクション温度演算値Tjがジャンクション温度設定値Tjsetを超えたことが検出されたときに、直流電源電圧を低下させて半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値まで減少させる制御を行うと同時に、高周波出力を設定値に向けて上昇させる制御を行うので、増幅部で大きな損失が生じる負荷が接続されたときに、該増幅部の半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値に抑えつつ負荷に供給し得る高周波電力(進行波電力または有効電力)を従来よりも大きくすることができる。
【0075】
また増幅部の半導体増幅素子のジャンクション温度は常にジャンクション温度設定値Tjsetに制限されるため、増幅部12の半導体増幅素子が破損するのを防ぐことができる。
【0076】
ここで、図1に示した電源装置において、図14に示す一組の増幅器2aを用いて増幅部12を構成した場合について行ったシミュレーションの結果を示す。制御の対象とする高周波出力は進行波電力でも有効電力(負荷で消費される電力)でもよいが、ここでは、進行波電力を制御の対象とする高周波出力として、該高周波出力を高周波出力設定値に等しくするように制御するものとする。
【0077】
図14に示した増幅回路において、FETa及びFETbのジャンクション温度設定値Tjsetを150[℃]とした場合に、表1に示した例と同じ負荷に供給できる最大高周波出力(最大進行波電力)の大きさを求めた結果を下記の表2に示す。
【0078】
【表2】
従来の電源装置では、表1に示したように、負荷インピーダンスが16.2−j47.3Ω,9.7−j20Ω,8.3Ω,9.7+j20Ω,16.2+j47.3Ω,49+j101Ωのときにそれぞれ130[W],65[W],45[W],52[W],86[W]及び240[W]の高周波出力電力(この例では進行波電力)しか得ることができなかったが、本発明によれば、表2に示したように、330[W],550[W],410[W],360[W],234[W]及び360[W]の高周波出力を得ることができ、高周波出力を従来よりも大幅に増加させることができる。
【0079】
図2(A)ないし(E)は、9.7−j20Ωの負荷を接続したときのFETaのドレイン電圧Vds、ドレイン電流Id 、増幅部の高周波出力電圧Vout 、高周波出力電流Iout及び損失Vds×Id のシミュレーション波形を時間tに対して示したものである。図2(E)に示したように、FETaの損失は約300[W](平均値)に保たれている。
【0080】
上記のように、本発明においては、増幅部の増幅素子とて用いられている半導体増幅素子のジャンクション温度がジャンクション温度設定値Tjsetを超えたことが検出されたときに、直流電源電圧を低下させて半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値まで低下させる制御を行うと同時に、高周波出力Pfを設定値Pfsetに向けて上昇させる制御を行うので、増幅部12で大きな損失が生じる負荷16が接続されたときに、該増幅部の半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値以下に抑えつつ負荷16に供給し得る高周波電力(進行波電力または有効電力)を従来よりも大きくすることができる。また半導体増幅素子のジャンクション温度は常にジャンクション温度設定値Tjset以下に制限されるため、半導体増幅素子が破損するのを防ぐことができる。
【0081】
[第2の実施形態]
上記のように、本発明においては、増幅部の半導体増幅素子のジャンクション温度がジャンクション温度設定値Tjsetを超えたときに増幅部に与えられる直流電源電圧Vdcを低下させる制御を行うが、増幅部を安定に動作させるため、直流電源電圧の許容変動範囲(増幅部の安定な動作を確保する上で許容される変動範囲)の下限値よりも低い値まで直流電源電圧を低下させることは避けることが好ましい。
【0082】
図3は、直流電源電圧が下限値VLsetよりも低くなるのを防ぐようにする場合の本発明の実施形態を示したものである。図3に示した実施形態では、第1の制御部19´に、ジャンクション温度演算部18の出力及び直流出力検出部17の出力とともに、直流電圧設定値Vdcsetと第1のジャンクション温度設定値Tj1setと直流電源電圧の下限値VLsetとが入力され、第2の制御部20´には、高周波出力検出部14の出力Pfと、高周波出力設定値Pfsetと、第2のジャンクション温度設定値Tj2setと、ジャンクション温度演算部18により演算されたジャンクション温度演算値Tjとが入力されるとともに、直流電源部13の出力電圧が下限値VLsetよりも大きいのか、下限値VLset以下であるのかを示す信号が第1の制御部19´から与えられる。
【0083】
図3に示した第1の制御部19´は、ジャンクション温度演算部により演算されたジャンクション温度演算値Tjが予め設定された第1のジャンクション温度設定値Tj1set以下のときに直流電源部13から増幅部12に供給される直流電源電圧Vdcを適値に設定された直流電圧設定値Vdcsetに保つ制御を行い、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1set を超えているときにはジャンクション温度演算値Tjを第1のジャンクション温度設定値Tj1set に等しくするべく、直流電源部13の出力電圧を予め定めた下限値VLsetを下回らない範囲で低下させる制御を行うように構成される。
【0084】
また第2の制御部20´は、直流電源電圧Vdcが下限値VLset以上よりも大きいときには高周波出力検出部14により検出される増幅部12の高周波出力を高周波出力設定値Pfsetに近づけるように発振部11または増幅部12の出力を制御し、直流電源電圧Vdcが下限値VLset以下になったときには、ジャンクション温度演算値Tjを第1のジャンクション温度設定値Tj1setに等しいかまたは第1のジャンクション温度設定値Tj1setよりも僅かに高い値に設定された第2のジャンクション温度設定値Tj2setに等しくするように発振部11または増幅部12の出力を制御するように構成される。
【0085】
第1のジャンクション温度設定値Tj1set 及び第2のジャンクション温度設定値Tj2set (≧Tj1set )は、増幅部を構成する半導体増幅素子のジャンクション温度の最大許容値以下に設定される。その他の点は図1に示した実施形態と同様である。
【0086】
図3に示した実施形態において、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1set を超えていないときには、第1の制御部19´が、直流電源部の出力電圧Vdcを適値に設定された直流電圧設定値Vdcsetに保つように制御する。またジャンクション温度演算部18により演算されたジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1set を超えたときには、第1の制御部19´が下限値VLsetを下まわらない範囲で直流電源部13の出力電圧を低下させるように制御して増幅部12の出力を低下させ、ジャンクション温度演算値Tjを減少させる。
【0087】
第2の制御部20´は、直流電源部の出力電圧(直流電源電圧)Vdcが下限値VLsetよりも大きいときに、高周波出力検出部14により検出される増幅部12の高周波出力Pfを高周波出力設定値Pfsetに近づけるように発振部11または増幅部12の出力を制御し、直流電源電圧が下限値VLset以下になったときに、ジャンクション温度演算値Tjを第2のジャンクション温度設定値Tj2set に等しくするように発振部11または増幅部12の出力を制御する。
【0088】
上記のように、図3に示した実施形態では、半導体増幅素子のジャンクション温度が第1のジャンクション温度設定値を超えたときに、第1の制御部19´が直流電源部の出力電圧を下限値を下まわらない範囲で低下させて増幅部の出力を低下させるように制御するので、増幅部の安定な動作を損なうことなく、半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値に抑制する制御を行わせることができる。
【0089】
また直流電源電圧が下限値よりも大きいときには、第2の制御部20´が高周波出力を設定値に近づけるように制御するため、増幅部で大きな損失が生じる負荷が接続されたときに、半導体増幅素子のジャンクション温度をジャンクション温度設定値に抑えつつ負荷に供給し得る高周波電力(進行波電力または有効電力)を従来よりも大きくすることができる。
【0090】
更に、直流電源電圧が下限値以下になろうとしたときには、第2の制御部がジャンクション温度演算値Tjを、第1のジャンクション温度設定値に等しいか、または該第1のジャンクション温度設定値よりも僅かに大きく設定された第2のジャンクション温度設定値Tj2set に等しくするように発振部11または増幅部12の出力を制御して、第1の制御部による直流電源電圧の制御(直流電源電圧を低下させる制御)を停止させるため、直流電源部の出力が下限値を下回って、増幅部の動作が不安定になるのを防ぐことができる。
【0091】
図1及び図3に示した実施形態において、発振部11は、所定の周波数の高周波出力を発生する公知の回路により構成することができ、直流電源部13は、出力電圧値を制御する機能を有する各種の直流電源回路により構成することができる。またジャンクション温度演算部18は、アナログ演算回路またはコンピュータにより実現することができる。
【0092】
図1に示した実施形態及び図3に示した実施形態において、第1の制御部19,19´と、第2の制御部20,20´とは、ハードウェア回路により構成することもでき、コンピュータに所定のプログラムを実行させることによりソフトウェア的に構成することもできる。
【0093】
[各部の具体的構成例]
以下、図3に示した実施形態を例にとって、直流電源部13の具体的な構成例と、第1の制御部19´及び第2の制御部20´の具体的構成例を説明する。
【0094】
(1)直流電源部の構成例
図4ないし図6は、本発明に係わる高周波電源装置で用いることができる直流電源部13の具体的な構成例を示したもので、これらの図に示された直流電源部13は、商用電源から得られる交流電圧Vacを直流電圧に変換する整流回路と、この整流回路の出力を交流電圧に変換するインバータ回路と、このインバータ回路の交流出力を直流出力に変換するコンバータ回路とにより構成されている。
【0095】
図4は、プッシュプル方式のインバータ回路を用いた直流電源部13を示したもので、この直流電源部13は、ダイオードDa ないしDd のブリッジ回路からなる全波整流回路21と、チョークコイルL1 と平滑用コンデンサC1 とからなる平滑回路22と、NPNトランジスタTR1 及びTR2 とトランスT1 とからなるプッシュプル方式のインバータ回路23と、整流回路21から与えられる直流電圧を交流電圧に変換するようにトランジスタTR1 及びTR2 をオンオフ制御するインバータ制御部24と、ダイオードDe 及びDf とチョークコイルL2 と平滑用コンデンサC2 とからなっていて、インバータ回路23から得られる交流出力を直流出力に変換するコンバータ回路25とにより構成されている。
【0096】
図4に示した直流電源部において、インバータ制御部24は、第1の制御部19´から与えられる制御信号VCT1 に応じて、トランジスタTR1 及びTR2 をPWM制御またはPFM制御し、PWM制御またはPFM制御された交流電圧をトランスT1 から出力する。この交流電圧は、ダイオードDe 及びDf により整流され、チョークコイルL2 及びコンデンサC2 により平滑されて直流電圧Vdcとして増幅部12に与えられる。第1の制御部19´は、直流出力検出部17により検出される直流電圧Vdcの大きさを指示値Vdccに等しくするように、上記制御信号VCT1 を発生するため、直流電源部13から出力される直流電圧Vdcが指示値Vdccに等しくなるように制御される。
【0097】
図5は、ブリッジ方式のインバータ回路を用いた直流電源部13を示したもので、この直流電源部13は、図4に示された直流電源部で用いられているものと同様の整流回路21及び平滑回路22と、トランジスタTRu,TRv,TRx及びTRyとこれらのトランジスタのコレクタエミッタ間に接続された帰還用ダイオードDu,Dv,Dx及びDyとトランスT1 とからなる公知のブリッジ形インバータ回路27と、インバータ回路27を制御するインバータ制御部24とにより、図4に示された直流電源部で用いられたものと同様のコンバータ回路25とにより構成されている。
【0098】
図5に示された直流電源部13においては、インバータ制御部24がインバータ回路27のブリッジの対角位置にあるトランジスタを交互にオン状態にすることにより整流回路21から与えられる直流電圧を交流電圧に変換する。インバータ制御部24はまた、インバータ回路27のブリッジの上辺を構成するトランジスタまたはブリッジの下辺を構成するトランジスタのうち、オン期間にあるトランジスタを第1の制御部19´から与えられる制御信号VCT1 に応じて、PWM制御またはPMF制御し、PWM制御またはPFM制御された交流電圧をトランスT1 から出力する。この交流電圧は、ダイオードDe 及びDf により整流され、チョークコイルL2 及びコンデンサC2 により平滑されて直流電圧Vdcとして増幅部12に与えられる。第1の制御部19´は、直流出力検出部17により検出される直流電圧Vdcの大きさを指示値Vdccに等しくするように、制御信号VCT1 を発生するため、直流電源部13から出力される直流電圧Vdcが指示値Vdccに等しくなるように制御される。
【0099】
また図6は、ハーフブリッジ方式のインバータ回路を用いた直流電源部13を示したもので、この直流電源部13は、図5に示された直流電源部で用いられた平滑回路22に代えて、チョークコイルL1 とコンデンサC11及びC12からなる平滑回路22´が用いられている点、及びトランジスタTRu及びTRxと帰還ダイオードDu及びDxとトランスT1 とからなるハーフブリッジ式のインバータ回路28が用いられている点を除き、図5に示された直流電源部と同様に構成されている。
【0100】
図6に示された直流電源部において、インバータ制御部24は、第1の制御部19´から与えられる制御信号VCT1 に応じてトランジスタをPWM制御またはPFM制御し、PWM制御またはPFM制御された交流電圧をトランスT1 から出力する。この交流電圧は、ダイオードDe 及びDf により整流され、チョークコイルL2 及びコンデンサC2 により平滑されて直流電圧Vdcとして増幅部12に与えられる。第1の制御部19´は、直流出力検出部17により検出される直流電圧Vdcの大きさを指示値Vdccに等しくするように、上記制御信号VCT1を発生させるため、直流電源部13から出力される直流電圧Vdcが指示値Vdccに等しくなるように制御される。
【0101】
図4ないし図6に示した例では、商用電源から与えられる単相交流電圧Vacを直流電圧Vdcに変換するようにしているが、図4ないし図6に示された整流回路21を図7に示した3相全波整流回路21´で置き換えることにより、3相交流電圧Vacを直流電圧Vdcに変換するように直流電源部13を構成することもできる。
【0102】
なお図4ないし図6に示した例においては、インバータ回路を構成するスイッチ素子としてNPNトランジスタを用いたが、他の電力用半導体増幅素子、例えば、FETやIGBT等をスイッチ素子として用いて、インバータ回路を構成するようにしてもよい。
【0103】
(2)第1の制御部19´の構成例
図8は第1の制御部19´をハードウェア回路により構成した例を示している。図8においては、図3に示した直流電圧Vdcの検出信号、直流電圧設定値Vdcset、第1のジャンクション温度設定値Tj1set、ジャンクション温度演算値Tj等がすべて電圧信号の形で第1の制御部19´に入力される。図8においては、直流電圧Vdc、直流電圧設定値Vdcset、ジャンクション温度演算値Tj等を与える電圧信号をそれぞれの符号の前にSをつけることにより表している。
【0104】
即ち、図8において、SVdcは、直流出力検出部17が出力する直流電圧検出信号で、直流電源部13が出力する直流電圧Vdcに比例している電圧信号である。またSVLsetは直流電圧Vdcの下限値を与える下限電圧値設定信号、SVdcsetは直流電圧Vdcの設定値を与える直流電圧設定信号、STj1setは第1のジャンクション温度設定値Tj1setを与える第1のジャンクション温度設定信号(電圧信号)、STjはジャンクション温度演算部18が演算したジャンクション温度演算値を与えるジャンクション温度演算値信号である。
【0105】
図8に示した例では、演算増幅器IC1と抵抗R1 ないしR3 により、ジャンクション温度演算値信号STjの極性をプラスからマイナスに反転する極性反転回路30が構成され、演算増幅器IC2と、抵抗R4ないしR7と、ダイオードD1及びD2とにより、第1のジャンクション温度設定信号STj1setと極性が反転されたジャンクション温度演算値信号STjとを入力として、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさが第1のジャンクション温度設定信号STj1setの大きさに等しくなるように制御信号を出力する第1の誤差増幅回路31が構成されている。この第1の誤差増幅回路31の出力信号は、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさが第1のジャンクション温度設定信号STj1setの大きさ以下のときに0Vとなり、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさが第1のジャンクション温度設定信号STj1setの大きさを超えたときにプラスの電圧値を示す。
【0106】
また演算増幅器IC3と、抵抗R8ないしR11とにより、直流電圧設定信号SVdcsetと誤差増幅回路31の出力とを入力として、直流電圧設定信号SVdcsetから誤差増幅回路31の出力電圧を減算した電圧を、半導体増幅素子のジャンクション温度を第1のジャンクション温度設定値以下に制限するために必要な直流出力電圧の目標値を与える目標直流電圧信号SVdcoとして出力する減算回路32が構成されている。
【0107】
更に、演算増幅器IC4と、抵抗R12と、ダイオードD3とにより、減算回路32から出力される目標直流電圧信号SVdcoが直流電圧Vdcの下限値を与える下限電圧値設定信号SVLsetよりも大きいときに減算回路32から出力される目標直流電圧信号SVdco に等しい電圧信号を、直流電源部13から出力させる直流電圧の指示値Vdccを示す直流電圧指示値信号SVdcc として出力し、減算回路32から出力される目標直流電圧信号SVdco が下限電圧値設定信号SVLset以下のときには下限電圧値設定信号SVLsetを、直流電源部13から出力させる直流電圧の指示値Vdccを示す直流電圧指示値信号SVdcc として出力する直流電圧指示値信号出力回路33が構成されている。
【0108】
また演算増幅器IC5と抵抗R13ないしR15とにより、直流電圧検出信号SVdcの極性をプラスからマイナスに反転させる極性反転回路34が構成され、演算増幅器IC6と抵抗R16ないしR19とにより、直流電圧指示値信号SVdcc と、極性反転回路34の出力とを入力として、直流電圧検出信号SVdcの大きさが直流電圧指示値信号SVdcc の大きさに等しくなるように制御信号VCT1を出力する第2の誤差増幅回路35が構成されている。
【0109】
直流電源部13のインバータ制御部24は、上記制御信号VCT1を入力として、PWM制御またはPFM制御により、インバータ回路のトランジスタをオンオフさせて、直流電源部13の出力電圧の値を直流電圧指示信号SVdcc により与えられる直流電圧の指示値に一致させる。
【0110】
また図8において、IC7及びIC8はコンパレータ(電圧比較器)で、これらのコンパレータと抵抗R20及びR21とにより、下限電圧値設定信号SVLsetと減算回路32から与えられる目標直流電圧信号SVdco とを比較して、これらの信号の大小関係に応じてコンパレータIC7及びIC8からレベルが異なる第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2を出力する比較回路36が構成されている。
【0111】
比較回路36は、目標直流電圧信号SVdco が下限電圧値設定信号SVLsetよりも大きいとき(半導体増幅素子のジャンクション温度を第1のジャンクション温度設定値以下に制限するために必要な直流電源部の出力電圧の目標値が直流電源部の下限値よりも大きいとき)に第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2をそれぞれ高レベル及び零レベルにし、目標直流電圧信号SVdco が下限電圧設定信号SVLset以下のとき(半導体増幅素子のジャンクション温度を第1のジャンクション温度設定値以下に制限するために必要な直流電源部の出力電圧の目標値が直流電源部の下限値以下のとき)に、第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2をそれぞれ零レベル及び高レベルにする。これらの制御信号VSW1及びVSW2は第2の制御部20´に与えられる。第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2は、直流電源電圧が下限値よりも大きいか、或いは下限値以下かの情報を第2の制御部20´に与えるために用いられる。
【0112】
(3)第2の制御部20´の構成例
図9は第2の制御部20´の構成例を示している。図9において、SPfは高周波出力検出部14から得られる高周波出力検出信号、SPfsetは高周波出力Pfの設定値を与える高周波出力設定信号、STj2setは、第2のジャンクション温度設定値Tj2setを与える第2のジャンクション温度設定信号、STjはジャンクション温度演算部18により演算されたジャンクション温度演算値を示すジャンクション温度演算値信号である。
【0113】
図9に示した第2の制御部においては、演算増幅器IC101と抵抗R101ないしR103とにより、ジャンクション温度演算値信号STjの極性をプラスからマイナスに変換する極性反転回路41が構成され、演算増幅器IC102と抵抗R104ないしR107と、ダイオードD101及びD102とにより、極性反転回路41の出力と、第2のジャンクション温度設定信号STj2setとを入力として、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさが第2のジャンクション温度設定信号STj2setの大きさに等しくなるように制御信号を出力する誤差増幅回路42が構成されている。
【0114】
誤差増幅回路42の出力は、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさが第2のジャンクション温度設定信号STj2setの大きさよりも小さいときに0Vとなり、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさが第2のジャンクション温度設定信号STj2setの大きさを超えたときにプラスの電圧値を示す。
【0115】
IC107及びIC108はそれぞれ第1及び第2のアナログスイッチで、これらのアナログスイッチはそれぞれの制御端子に高レベルの制御信号が与えられたときにオン状態になる。
【0116】
目標直流電圧信号SVdcoが下限電圧設定信号SVLset以下のとき(半導体増幅素子のジャンクション温度を第1のジャンクション温度設定値以下に制限するために必要な直流電源部の出力電圧の目標値が直流電源部の下限値以下のとき)、即ち第1の制御部19´から与えられる第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2がそれぞれ零レベル及び高レベルであるときに、第1のアナログスイッチ107がオン状態になり、第2のアナログスイッチIC108がオフ状態になる。
【0117】
また目標直流電圧信号SVdcoが下限電圧設定信号SVLsetよりも大きいとき(半導体増幅素子のジャンクション温度を第1のジャンクション温度設定値以下に制限するために必要な直流電源部の出力電圧の目標値が直流電源部の下限値よりも大きいとき)、即ち第1の制御部19´から与えられる第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2がそれぞれ高レベル及び零レベルであるときに、第1のアナログスイッチ107がオフ状態になり、第2のアナログスイッチIC108がオン状態になる。
【0118】
また図9に示した第2の制御部においては、演算増幅器IC103と抵抗R108ないしR111とにより、増幅部12から出力する高周波出力(進行波電力)の設定信号SPfsetとアナログスイッチIC107またはIC108の出力とを入力として、高周波出力設定信号SPfsetからアナログスイッチIC107またはIC108の出力信号を減算した信号を、目標高周波出力信号SPfoとして出力する目標高周波出力信号発生回路43が構成されている。
【0119】
ジャンクション温度演算値信号STj(半導体増幅素子のジャンクション温度)の大きさが第2のジャンクション温度設定信号STj2setの大きさ以下であるときには、目標直流電圧信号SVdco が下限電圧設定信号SVLset以上になっていて、第1の制御部19´から与えられる第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2がそれぞれ高レベル及び零レベルになっているため、アナログスイッチIC108がオン状態になり、IC107がオフ状態になる。このとき目標高周波出力信号発生回路43は、高周波出力設定信号SPfsetに等しい電圧信号を目標高周波出力信号SPfoとして出力する。
【0120】
これに対し、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさが第2のジャンクション温度設定信号STj2setの大きさよりも大きいときには、目標直流電圧信号SVdco が下限電圧設定信号SVLsetよりも低くなり、第1の制御部19´から与えられる第1の制御信号VSW1及び第2の制御信号VSW2がそれぞれ零レベル及び高レベルになるため、第1のアナログスイッチ107がオン状態になり、第2のアナログスイッチIC108がオフ状態になる。このとき目標高周波出力信号発生回路43は、高周波出力設定信号SPfsetから誤差増幅回路42の出力を減算した信号を目標高周波出力信号SPfoとして出力する。
【0121】
また演算増幅器IC104と、抵抗R112ないしR114とにより、高周波出力検出部14から得られる高周波出力検出信号SPfの極性をプラスからマイナスに反転する極性反転回路44が構成され、演算増幅器IC105及びIC106と、抵抗R115ないし抵抗R121とにより、目標高周波出力信号発生回路43の出力と極性反転回路44の出力とを入力として、高周波出力検出信号SPfの大きさが目標高周波出力信号SPfoの大きさに等しくなるように制御信号VCT2を出力する誤差増幅回路45が構成されている。制御信号VCT2の値は、目標高周波出力信号SPfoと高周波出力検出信号SPfとの偏差を零にするために増幅部12のアンプに入力する信号の大きさに乗じる係数に相当する値を有するもので、上記制御信号VCT2を発振部11の出力に乗じるか、または増幅部12内のアンプの入力信号に乗じることにより、目標高周波出力信号SPfoと高周波出力検出信号SPfとの偏差を零にするように増幅部12の出力を制御することができるようになっている。
【0122】
上記のように第2の制御部20´が構成される場合、図3に示された増幅部12は、例えば図10に示すように、出力制御部12Aと、ドライバアンプ12Bと、パワーアンプ12Cとにより構成され、第2の制御部20´の誤差増幅回路45から得られる制御信号VCT2が、発振部11の出力Voscとともに出力制御部12Aに入力される。
【0123】
出力制御部12Aは、乗算器、ダブルバランスドミキサまたはデュアルゲートFETを使用したミキサ回路等からなっていて、発振部11が出力する特定の周波数の信号Voscと制御信号VCT2とを掛け合わせることにより、目標高周波出力信号SPfoと高周波出力検出信号SPfとの偏差を零にするようにドライバアンプ12Bに入力する信号の大きさを調整する。このように制御信号により大きさが調整された信号がドライバアンプ12Bにより増幅され、ドライバアンプ12Bの出力がパワーアンプ12Cにより電力増幅されて、目標高周波出力信号SPfoにより与えられる目標値に等しい高周波出力として負荷16に供給される。
【0124】
(4)第1及び第2の制御部を図8及び図9のように構成した場合の動作
第1の制御部19´及び第2の制御部20´をそれぞれ図8及び図9に示すように構成した場合の動作は次の通りである。
【0125】
図3に示したジャンクション温度演算部18が演算したジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1set以下であるときには、図8の第1の誤差増幅回路31の出力信号が0Vであるため、減算回路32は、直流電圧設定信号SVdcsetに等しい大きさの電圧信号を目標直流電圧信号SVdcoとして出力する。このとき目標直流電圧信号SVdcoの大きさが直流電圧Vdcの下限電圧値設定信号SVLsetよりも大きいとすると、直流電圧指示値信号出力回路33は、直流電圧設定信号SVdcsetに等しい電圧信号を直流電圧指示値信号SVdccとして出力し、誤差増幅回路35は、直流電圧検出信号SVdcの大きさが直流電圧設定信号SVdcsetの大きさに等しくなるように制御信号VCT1を出力する。直流電源部のインバータ制御部24は、この制御信号の大きさに応じて、コンバータ回路25に与える交流電圧の平均値を調整するため、直流電源部13の出力電圧は、直流電圧設定信号SVdcsetにより設定された電圧に保持される。
【0126】
またジャンクション温度演算部18が演算したジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setを超えたときには、図8の第1の誤差増幅回路31が、ジャンクション温度演算値信号STjの大きさを第1のジャンクション温度設定信号STj1setの大きさに等しくするように制御信号を出力する。減算回路32は、直流電圧設定信号SVdcsetから誤差増幅回路31が出力する制御信号を減算して得た電圧信号を、直流出力電圧の目標値を与える目標直流電圧信号SVdco として出力する。このとき目標直流電圧信号SVdcoの大きさが直流電圧Vdcの下限電圧値設定信号SVLsetよりも大きいとすると、直流電圧指示値信号出力回路33は、目標直流電圧信号SVdcoに等しい電圧信号を直流電圧指示値信号SVdccとして出力し、誤差増幅回路35は、直流電圧検出信号SVdcの大きさを目標直流電圧信号SVdcoの大きさに等しくするように制御信号VCT1を出力する。直流電源部のインバータ制御部24は、この制御信号VCT1の大きさに応じて、コンバータ回路25に与える交流電圧の平均値を調整するため、直流電源部13の出力電圧は、直流電圧設定信号SVdcsetにより設定された電圧よりも、誤差増幅回路31の出力に相当する電圧分だけ低い値に調整される。
【0127】
このようにしてジャンクション温度演算部により演算されたジャンクション温度演算値の上昇に伴って、直流電源部の出力電圧を低下させる制御を行った結果、直流電源部の出力電圧が下限値を下回ったときには、直流電圧指示値信号出力回路33が、下限電圧値設定信号SVLsetを直流電圧指示値信号SVdccとして出力するため、直流電源部の出力電圧は、誤差増幅回路35により、下限電圧値設定信号SVLsetによって設定された下限値に保たれる。
【0128】
上記のように、図8に示した第1の制御部19´は、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1set を超えないときに、直流電源部の出力電圧Vdcを適値に設定された直流電圧設定値Vdcsetに保つように制御する。またジャンクション温度演算部18により演算された損失Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1set を超えたときには、下限値VLsetを下まわらない範囲で直流電源部13の出力電圧を低下させるように制御して増幅部12の出力を低下させ、ジャンクション温度演算値(半導体増幅素子のジャンクション温度)Tjを減少させる。
【0129】
また図9に示した第2の制御部20´においては、直流電源部の出力の目標値Vdcoが直流電圧Vdcの下限値VLsetよりも大きいときに、アナログスイッチIC108がオン状態になり、アナログスイッチIC107がオフ状態になるため、目標高周波出力信号発生回路43が、高周波出力設定信号SPfsetに等しい電圧信号を目標高周波出力信号SPfoとして出力する。このとき誤差増幅回路45は、高周波出力設定信号SPfsetに等しい目標高周波出力信号SPfoと高周波出力検出信号SPfとの偏差を零にするために増幅部12のアンプの入力信号に乗じる係数値に相当する大きさの電圧信号を制御信号VCT2として出力し、この制御信号により増幅部12の出力が調整されるため、増幅部12から負荷に与えられる高周波出力が高周波出力設定信号により設定された大きさに近づくように調整される。
【0130】
これに対し、直流電源部の出力の目標値Vdcoが下限値VLset以下になっているときには、アナログスイッチIC107がオン状態になり、アナログスイッチIC108がオフ状態になるため、目標高周波出力信号発生回路43は、高周波出力設定信号SPfsetから誤差増幅回路42の出力を減算した信号を目標高周波出力信号SPfoとして出力する。これにより、増幅部の半導体増幅素子のジャンクション温度を第2のジャンクション温度設定値Tj2setに制限するように高周波出力の目標値が変更される。誤差増幅回路45は、この目標高周波出力信号SPfoと高周波出力検出信号SPfとの偏差を零にするために増幅部12のアンプの入力信号に乗じる係数値に相当する大きさの電圧信号を制御信号VCT2として出力し、この制御信号により増幅部12の出力が調整されるため、増幅部12の出力は、該半導体増幅素子のジャンクション温度を第2のジャンクション温度設定値に等しくするように調整される。
【0131】
上記のように、図9に示した第2の制御部20´は、高周波出力検出部14により検出される増幅部12の高周波出力Pfが高周波出力設定値Pfsetからずれたときに、直流電源部13の出力電圧が下限値よりも大きければ、該高周波出力Pfを高周波出力設定値Pfsetに戻すように増幅部12の出力を制御し、直流電源部13の出力電圧が下限値以下になったときには、ジャンクション温度演算値Tjを第1のジャンクション温度設定値Tj1set に等しいか、または該第1のジャンクション温度設定値Tj1set よりも僅かに高い値に設定された第2のジャンクション温度設定値Tj2set に等しくするように増幅部12の出力を制御する。
【0132】
(5)第1の制御部19及び第2の制御部20の構成例
図1に示した高周波電源装置に設ける第1の制御部19は、図8に示した回路から比較回路36を取り除いた回路により構成することができる。
【0133】
また図1に示した高周波電源装置に設ける第2の制御部20は、図9に示した目標高周波出力信号発生回路43と、極性反転回路44と、誤差増幅回路45とにより構成することができる。
【0134】
(6)第1の制御部19´の他の構成例
図3に示した第1の制御部19´は、ソフトウェア的に構成することもできる。図11は、第1の制御部19´を実現するために、コンピュータに実行させるプログラムのアルゴリズムを示したフローチャートである。図11において、Vdcは直流電源部の出力電圧(直流電源電圧)を示し、Vdcsetは直流電源部の出力電圧の設定値(直流電圧設定値)を示している。またVLsetは直流電源電圧の下限値の設定値を示し、Tjはジャンクション温度演算値を示している。更にTj1setは第1のジャンクション温度設定値、Vdc1は直流電源部の通常時の出力電圧の初期値を示し、ΔVは固定値である微小電圧設定値を示している。
【0135】
図11のアルゴリズムによる場合には、先ずステップ1において直流電圧設定値Vdcsetを初期値Vdc1として直流電源部13を起動させるための処理を行い、ステップ2において直流電源部が直流電源電圧Vdcの出力を開始するのを待つ。直流電源電圧Vdcの出力が開始されたと判定されたときにステップ3に進んで直流電源電圧Vdcが設定値Vdcsetに等しくなるのを待ち、直流電源電圧Vdcが設定値に等しくなったと判定されたときにステップ4に進んで増幅部12が高周波出力の発生を開始するのを待つ。
【0136】
ステップ4で高周波出力が開始されたと判定されたときに、ステップ5に進んでジャンクション温度演算値Tjと第1のジャンクション温度設定値Tj1setとを比較する。最初は、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setよりも低いため、次いでステップ6に進んで直流電圧設定値の更新値A=Vdcset+ΔVの演算を行い、ステップ7で直流電圧設定値の更新値Aが直流電圧設定値の初期値Vdc1よりも高いか否かを判定する。起動時に最初にステップ7が実行されたときには、更新値Aが初期値Vdc1よりも高いためステップ8に進む。ステップ8では初期値Vdc1を直流電圧設定値Vdcsetとして直流電源部の出力電圧を設定値Vdcsetに向けて上昇させるための処理を行う。その後ステップ9において直流電源部の出力電圧Vdcが設定値Vdcsetに等しくなるのを待ち、直流電源部の出力電圧Vdcが設定値Vdcset(=Vdc1)に等しくなったと判定されたときにステップ5に戻って再度ジャンクション温度演算値Tjと第1のジャンクション温度設定値Tj1setとを比較する。
【0137】
ステップ7において、直流電圧設定値の更新値Aが初期値Vdc1以下であると判定されたときには、ステップ10に進んで更新値Aを直流電圧設定値Vdcsetとして直流電源部の出力電圧を設定値Vdcsetに向けて変化させる処理を行い、ステップ9で直流電源電圧Vdcが設定値Vdcsetに等しくなるのを待つ。ステップ9で直流電源電圧Vdcが設定値Vdcset(=Vdc1)に等しくなったと判定されたときにステップ5に戻って再度ジャンクション温度演算値Tjと第1のジャンクション温度設定値Tj1setとを比較する。
【0138】
ステップ5においてジャンクション温度演算値Tjを第1のジャンクション温度設定値Tj1setと比較した結果、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setを超えていると判定されたときには、ステップ11に進んで直流電圧設定値の更新値A=Vdcset−ΔVの演算を行った後ステップ12に進み、直流電圧設定値の更新値Aが下限値の設定値VLsetよりも低いか否かを判定する。その結果Aが下限値の設定値VLsetよりも低いと判定されたときに、ステップ13に進んで下限値の設定値VLsetを直流電圧設定値Vdcsetとして直流電源部の出力電圧を設定値Vdcsetに向けて変化させる処理を行った後ステップ9に移行する。またステップ12で更新値Aが下限値VLsetよりも高いと判定されたときにはステップ14に進んで更新値Aを直流電圧設定値Vdcsetとして、直流電源部の出力電圧を設定値Vdcsetに向けて変化させる処理を行った後ステップ9に移行する。ステップ9では直流電源電圧Vdcが設定値Vdcsetに等しくなるのを待ち、直流電源電圧Vdcが設定値Vdcsetに等しくなったときにステップ5に戻る。
【0139】
ステップ5においてジャンクション温度演算値Tjを第1のジャンクション温度設定値Tj1setと比較した結果、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setに等しいと判定されたときには、直流電圧設定値の更新値Aの演算を行うことなく、更新値Aが下限値VLsetよりも低いか否かの判定を行うステップ12に移行する。
【0140】
図11のアルゴリズムによる場合、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setよりも低いときには、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setに等しくなるまで、ステップ5,6,7,8及び9が繰り返されるため、直流電源部の出力電圧は、設定値Vdcsetに等しくなるまで上昇させられ、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setに等しくなったときにその上昇が止まる。またジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setを超えたときには、ステップ5,11,12,14及び9が繰り返されるため、ジャンクション温度演算値Tjが第1のジャンクション温度設定値Tj1setに等しくなるまで直流電源電圧が低下させられる。直流電源電圧が下限値の設定値VLsetよりも低くなったときには、ステップ13が実行されて、直流電源電圧が下限値に保持されるため、直流電源電圧が下限値よりも低くなって増幅部12の動作が不安定になるのが防止される。
【0141】
(7)第2の制御部20´の他の構成例
図3に示した第1の制御部20´もソフトウェア的に構成することができる。図12は、第2の制御部20´を実現するために、コンピュータに実行させるプログラムのアルゴリズムを示したフローチャートである。図12において、Pfsetは、増幅部12が出力する高周波電力(進行波電力)の設定値であり、Pf1はキーボードなどを通して外部から与えられる高周波電力の設定入力値である。またPfは高周波出力検出部14により検出される高周波電力出力値であり、Vdcは直流出力検出部17により検出される直流電源電圧である。またVLsetは直流電源電圧Vdcの下限値、Tjはジャンクション温度演算値、Tj2setは第2のジャンクション温度設定値、ΔPは固定値である微小なパワー設定値である。
【0142】
図12のアルゴリズムによる場合には、ステップ1において直流電源電圧Vdcの出力が開始されたか否かの判定を行い、直流電源電圧の出力が開始されたときにステップ2に進んで高周波電力設定入力値Pf1を高周波電力設定値Pfsetとする。次いでステップ3において増幅部12が高周波電力の出力を開始したか否かを判定し、高周波電力の出力が開始されたときにステップ4に移行する。ステップ4では、直流電源電圧Vdcが下限値VLset以下であるか否かを判定し、直流電源電圧Vdcが下限値VLset以下でない場合には、ステップ5に移行して高周波電力設定入力値Pf1を高周波電力設定値Pfsetとして増幅部12の出力を高周波電力設定値Pfsetに等しくするための処理を行う。次いでステップ6において高周波電力出力値Pfが設定値Pfsetに等しくなるのを待ち、高周波電力出力値Pfが設定値Pfsetに等しくなったと判定されたときにステップ4に戻る。
【0143】
ステップ4において、直流電源電圧Vdcが下限値VLset以下であると判定されたときには、ステップ7に移行してジャンクション温度演算値Tjを第2のジャンクション温度設定値Tj2setと比較する。その結果、ジャンクション温度演算値Tjが第2のジャンクション温度設定値Tj2setよりも低いと判定されたときには、ステップ8に移行して高周波電力設定値Pfsetに微小パワー設定値ΔPを加算したもの(Pfset+ΔP)を新たな高周波出力設定値Pfsetとして増幅部の出力を高周波出力設定値に等しくするための処理を行った後、ステップ7に戻る。ステップ7及び8を繰り返した結果、ステップ7において、ジャンクション温度演算値Tjが第2のジャンクション温度設定値Tj2setに等しくなったと判定されたときにステップ4に戻る。
【0144】
ステップ7においてジャンクション温度演算値Tjが第2のジャンクション温度設定値Tj2setよりも高い判定されたときには、ステップ9に移行して高周波電力設定値Pfsetから微小パワー設定値ΔPを減じたもの(Pfset−ΔP)を新たな高周波電力設定値Pfsetとして増幅部の出力を高周波電力設定値に等しくするための処理を行った後ステップ7に戻る。ステップ7及びステップ9が繰り返されることにより、ステップ7でジャンクション温度演算値Tjが第2のジャンクション温度設定値Tj2setに等しいと判定されたときにステップ4に戻る。
【0145】
上記のように、図12に示したアルゴリズムによる場合には、直流電源電圧Vdcが下限値VLsetよりも大きいときに増幅部12が出力する高周波電力が高周波電力設定入力Pf1に等しくなるように増幅部12の出力が制御される。また直流電源電圧Vdcが下限値VLset以下のときには、ジャンクション温度演算値Tjが第2のジャンクション温度設定値Tj2setに等しくなるように増幅部の出力が制御される。
【0146】
[変形例]
上記の例では、直流電源電圧が下限値以上であるときに高周波出力検出部により検出される増幅部の高周波出力を高周波出力設定値に近づけるように増幅部の出力を制御するようにしたが、増幅部の出力を制御する代わりに発振部の出力を制御するようにしてもよい。
【0147】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、半導体増幅素子のジャンクション温度がジャンクション温度設定値を超えたことが検出されたときに、第1の制御部により直流電源電圧を低下させて損失をジャンクション温度設定値まで減少させる制御を行うと同時に、第2の制御部により高周波出力を設定値に向けて上昇させる制御を行うようにしたので、増幅部で大きな損失が生じる負荷が接続されたときに、該損失をジャンクション温度設定値に抑えつつ負荷に供給し得る高周波電力(進行波電力または有効電力)を従来よりも大きくすることができる。
【0148】
また本発明によれば、半導体増幅素子のジャンクション温度を常にジャンクション温度設定値に制限することができるため、増幅部を構成する半導体増幅素子が破損するのを防ぐことができる。
【0149】
更に本発明において、直流電源電圧に対して下限値を設定して第1の制御部により直流電源電圧が下限値を下回らない範囲で直流電源電圧を低下させる制御を行い、直流電源電圧が下限値以下になったときに、第2の制御部により、ジャンクション温度演算値を第1のジャンクション温度設定値に等しいかまたは第1のジャンクション温度設定値よりも僅かに高い値に設定された第2のジャンクション温度設定値に等しくするように発振部または増幅部の出力を制御するように構成した場合には、直流電源電圧を下限値以下に低下させることなく半導体増幅素子のジャンクション温度を制限する制御を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を示したブロック図である。
【図2】図14に示す一組の増幅器を用いて増幅部を構成した図1の高周波電源装置に特定の負荷を接続したときの増幅部のFETのドレイン電圧Vds、ドレイン電流Id 、増幅部の高周波出力電圧Vout 、高周波出力電流Iout及び損失Vds×Idのシミュレーション波形を示した波形図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の構成を示したブロック図である。
【図4】本発明に係わる高周波電源装置で用いる直流電源部の一構成例を示した回路図である。
【図5】本発明に係わる高周波電源装置で用いる直流電源部の他の構成例を示した回路図である。
【図6】本発明に係わる高周波電源装置で用いる直流電源部の更に他の構成例を示した回路図である。
【図7】図4ないし図6に示した直流電源部で用いることができる入力段の整流回路の他の構成例を示した回路図である。
【図8】図3の実施形態に設ける第1の制御部をハードウェア回路で実現する場合の回路構成を示した回路図である。
【図9】図3の実施形態に設ける第2の制御部をハードウェア回路で実現する場合の回路構成を示した回路図である。
【図10】図1及び図3に示した実施形態に設ける増幅部の構成例を示したブロック図である。
【図11】図3の実施形態に設ける第1の制御部をソフトウェア的に実現する場合にコンピュータに実行させるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図12】図3の実施形態に設ける第2の制御部をソフトウェア的に実現する場合にコンピュータに実行させるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図13】従来の高周波電源の基本的な構成を示した回路図である。
【図14】高周波電源で用いられる増幅器の構成例を示した回路図である。
【図15】高周波電源で用いられる増幅器の他の構成例を示した回路図である。
【図16】図14に示した増幅器を動作させたときのFETのドレインソース間電圧Vds、ドレイン電流Id 、増幅器の出力電圧Vout 、出力電流Iout 及びFETの損失Vds×Id のシミュレーション波形を示した波形図である。
【図17】図14に示した増幅器に特定の負荷が接続されたときのFETのドレイン電圧Vds、ドレイン電流Id 、増幅器の出力電圧Vout 、出力電流Iout 及びFETの損失Vds×Id のシミュレーション波形を時間に対して示した波形図である。
【図18】図14に示した増幅器に特定の負荷が接続されたときに入力信号を大きくしてFETの損失(平均値)を約500[W]としたときのFETのドレインソース間電圧Vds、ドレイン電流Id 、増幅器の出力電圧Vout 、出力電流Iout 及びFETの損失Vds×Id のシミュレーション波形を示した波形図である。
【符号の説明】
11…発振部、12…増幅部、13…直流電源部、14…高周波出力検出部、16…負荷、17…直流出力検出部、18…ジャンクション温度演算部、19,19´…第1の制御部、20,20´…第2の制御部。
Claims (5)
- 高周波信号を出力する発振部と、前記発振部の出力を増幅して負荷に高周波出力を供給する増幅部と、前記増幅部に直流電源電圧を供給する直流電源部とを備えた高周波電源装置において、
前記増幅部に設けられている半導体増幅素子のジャンクション温度を演算するジャンクション温度演算部と、
前記ジャンクション温度演算部により演算されたジャンクション温度演算値が予め設定されたジャンクション温度設定値を超えたときに前記ジャンクション温度演算値が前記ジャンクション温度設定値に等しくなるまで前記直流電源部から前記増幅部に供給する直流電源電圧を低下させる制御を行い、前記ジャンクション温度演算値が前記ジャンクション温度設定値以下のときには前記直流電源部から前記増幅部に供給する直流電源電圧を適値に設定された直流電圧設定値に保つ制御を行う第1の制御部と、
前記増幅部から負荷に供給される高周波出力を高周波出力設定値に近づけるように前記発振部または増幅部の出力を制御する第2の制御部と、
を備えてなる高周波電源装置。 - 高周波信号を出力する発振部と、前記発振部の出力を増幅して負荷に高周波出力を供給する増幅部と、前記増幅部に直流電源電圧を供給する直流電源部とを備えた高周波電源装置において、
前記増幅部に設けられている半導体増幅素子のジャンクション温度を演算するジャンクション温度演算部と、
前記ジャンクション温度演算部により演算されたジャンクション温度演算値が予め設定された第1のジャンクション温度設定値以下のときに前記直流電源部から増幅部に供給される直流電源電圧を適値に設定された直流電圧設定値に保つ制御を行い、前記ジャンクション温度演算値が前記第1のジャンクション温度設定値を超えているときには前記ジャンクション温度演算値を前記第1のジャンクション温度設定値に等しくするべく、前記直流電源部の出力電圧を予め定めた下限値を下回らない範囲で低下させる制御を行う第1の制御部と、
前記直流電源電圧が前記下限値よりも大きいときには高周波出力検出部により検出される前記増幅部の高周波出力を高周波出力設定値に近づけるように前記発振部または前記増幅部の出力を制御し、前記直流電源電圧が前記下限値以下になったときには、前記ジャンクション温度演算値を前記第1のジャンクション温度設定値に等しいかまたは前記第1のジャンクション温度設定値よりも僅かに高い値に設定された第2のジャンクション温度設定値に等しくするように前記発振部または前記増幅部の出力を制御する第2の制御部と、
を具備してなる高周波電源装置。 - 前記ジャンクション温度設定値は、前記半導体増幅素子のジャンクション温度の許容最大値以下に設定されている請求項1に記載の高周波電源装置。
- 前記第1のジャンクション温度設定値及び第2のジャンクション温度設定値は、前記半導体増幅素子のジャンクション温度の許容最大値以下に設定されている請求項2に記載の高周波電源装置。
- 前記直流電圧設定値は、前記高周波出力の波形を歪ませない範囲で前記増幅部の効率を最大にする値に設定されている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の高周波電源装置。
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