JP2004306602A - 物品の水圧転写方法および水圧転写体の製造方法 - Google Patents

物品の水圧転写方法および水圧転写体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 水圧転写フィルムを水圧転写体に転写させた後水槽内に浮遊した残存フィルムを除去して、水圧転写体への残存フィルムの付着を防止し、かつ水槽内の水質悪化を防止する物品の水圧転写方法を提供すること。
【解決手段】 物品の水圧転写方法であって、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルム2aと支持体フィルム2a上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性の転写層2bとを有する水圧転写フィルム2を、転写層2bを上にして水槽11に貯溜された水1に浮かべ、有機溶剤により転写層2bを活性化し、転写層2bが転写される物品である被転写体3を上から水圧転写フィルム2に押し付けて、被転写体3のうち、水圧転写フィルム2の転写層2bを転写させる転写部位3aを含む部分を水槽11内の水中に水没させた後、被転写体3を水上に引き上げる前に、水槽11内に残存している残存フィルムを除去することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

この発明は、物品の水圧転写方法および被転写体の製造方法に関する。
水圧転写装置は、曲面等の3次元形状面を表面に有する被転写体を、水圧転写フィルムを水面上に浮かべた水槽内に浸水あるいは水没させ、水圧転写フィルムを被転写体の転写部位に水圧によって付着させて転写する装置である。
ここで、水圧転写フィルムは、水溶性あるいは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと、その支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性物質からなる転写層とを有している。支持体フィルムとしては、例えばPVA(ポリビニルアルコール)等があり、また、転写層としては、例えば印刷インキ皮膜または塗装皮膜等がある。
また、水圧転写フィルムにおいて、その転写層が、活性エネルギー線照射あるいは加熱の少なくとも一種で硬化可能な硬化性樹脂層を有する水圧転写フィルムがあり、その水圧転写フィルムについては、特にトップコート付水圧転写フィルムと呼んでいる。ここで、硬化性樹脂層としては、例えば下記の(1)〜(6)が挙げられる。
(1)活性エネルギー線硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(2)活性エネルギー線硬化性樹脂と非重合性の熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(3)熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(4)熱硬化性樹脂と非重合性の熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(5)活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(6)活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂および非重合性の熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
この水圧転写装置を用いて、転写層が転写される物品である被転写体に水圧転写フィルムを付着させて転写する場合、水圧転写フィルムの転写層を転写させる転写部位を含む部分を水槽内の水中に水没させると、その転写部位に水圧転写フィルムが付着されるとともに、水圧転写フィルムの一部が転写部位に付着されずに水槽内に浮遊あるいは沈降して残存フィルムとして残存する。この残存フィルムは、転写部位に水圧転写フィルムを付着させた後、水槽から除去される。
従来の物品の水圧転写方法としては、例えば、転写槽と接続して浄化槽を設け、転写槽と浄化槽の間に高さの低い仕切り板を配置し、浄化槽から転写槽へ給水パイプを接続し、その中間にポンプを設けた水圧転写装置において、浄化槽の水をポンプによって転写槽へ供給すると、転写槽の水が溢れて仕切り板を越えて浄化槽へ水が流れ込むとともに水面に浮かぶ塗料カスが流れ込んで、その塗料カスが浄化槽に集められるという方法がある(特許文献1参照)。
特開平4−43100号公報(第4頁、第4図)
水槽内に残存する残存フィルムは、被転写体の転写部位に水圧転写フィルムが付着した直後には水槽内で浮かんでいるが、時間が経過するとともに膨潤して水槽内に沈降する。このことは、トップコート付水圧転写フィルムにおいて顕著である。このトップコート付水圧転写フィルムは、硬化性樹脂層が含まれていることで通常のフィルムに比べて2〜20倍程度の膜厚を有しており、かつ被転写体に転写される際に多量の有機溶剤を必要とするため、この転写後にその一部が残存して残存フィルムとして水槽内を汚染しやすくなっている。
さらに、水槽内に沈降した残存フィルムは、時間が経過するとともに溶解して比重が軽くなるため、水槽内で再び浮上する。水槽内に浮かんでいる残存フィルムについてはある程度除去できるが、水槽内に沈降している残存フィルムを除去することができないという問題があった。
上記従来の物品の水圧転写方法においては、水圧転写フィルムを水槽に貯溜された水の水面に浮かべ、有機溶剤により転写層を活性化し、転写層が転写される物品である被転写体を上から水圧転写フィルムに押し付けて、転写部位を含む部分を水槽内の水中に水没させて被転写体に水圧転写フィルムを付着させると、被転写体に付着されなかった水圧転写フィルムの一部が残存フィルムとして水槽内に浮遊する。これを残存したまま、水没させた被転写体を水上に引き上げると、その水の流れによって、水上に浮遊していた残存フィルムを一部水中に巻きこんだり、非転写物表面に付着して転写欠陥となったり、多方向へ拡散せしめたりする。さらに、水中に巻きこまれた残存フィルムの水溶性支持体部分が膨潤して沈降したり、拡散した残存フィルムが、フィルムガイドや水槽側壁に付着する。沈降や、付着した残存フィルムは、除去に多くの労力を必要とし、作業効率を低下させる問題があった。
一方、浮遊する残存フィルムは、水流等によって流しあるいは転写フィルムガイドが移動して、ろ過槽まで導き、下流に設けた網や不織布でろ過することによってろ過されるものの、ろ過槽に流れ込む水によって、ろ過された残存フィルムの水溶性支持体が溶解し、水槽内のPVAなどの水溶性支持体の濃度が高まる問題があった。
また、沈降している残存フィルムを除去せずに放置しておくと、時間が経過するとともに水槽内で再び浮上するため、水圧転写装置において被転写体に水圧転写フィルムを付着させて転写する工程を連続して行う場合、残存フィルムに溶剤が含まれていることにより、新たに水没される被転写体の転写部位に残存フィルムが付着するため、被転写体に転写された転写層に欠陥を生じさせてしまうという問題があった。
さらに、沈降している残存フィルムを除去せずに放置しておくことで、水槽内のPVAの濃度が高くなるため、水質が悪化してしまうという問題があった。
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、水圧転写フィルムを被転写体に付着させた後水槽内に浮遊した残存フィルムを除去して、被転写体への残存フィルムの付着を防止し、かつ水槽内の水質悪化を防止する物品の水圧転写方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明は、物品の水圧転写方法であって、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性の転写層とを有する水圧転写フィルムを、前記転写層を上にして水槽に貯溜された水に浮かべ、有機溶剤により前記転写層を活性化し、前記転写層が転写される物品である被転写体を上から前記水圧転写フィルムに押し付けて、前記被転写体のうち、前記水圧転写フィルムの転写層を転写させる転写部位を含む部分を前記水槽内の水中に水没させた後、前記被転写体を水上に引き上げる前に、前記水槽内に残存している残存フィルムを除去することを特徴とする。
本発明によれば、水圧転写フィルムを水槽に貯溜された水の水面に浮かべ、有機溶剤により転写層を活性化し、転写層が転写される物品である被転写体を上から水圧転写フィルムに押し付けて、転写部位を含む部分を水槽内の水中に水没させて被転写体に水圧転写フィルムを付着させると、水圧転写フィルムに含まれる支持体フィルムが溶解するとともに、被転写体に付着されなかった水圧転写フィルムの一部が残存フィルムとして水槽内に浮遊する。これを水没させた被転写体を水上に引き上げる前に残存フィルムを除去することにより、残存フィルムが水槽内で浮かんでいる状態で除去されるため、水槽内に沈降した後時間が経過すると再浮上して被転写体に付着するような残存フィルムが水槽内に蓄積されることがない。また、残存フィルムが水槽内に蓄積されないことによって、その残存フィルムに含まれる支持体フィルムが溶解して、支持体フィルムに含まれる溶剤の濃度を高くすることが回避される。
さらに、転写層が有機溶剤に溶解可能な活性エネルギー線硬化性樹脂層を含んだ水圧転写用フィルムの場合、残存フィルムの除去をする前に、残存フィルムに対し活性エネルギー線を照射すると、残存フィルムを除去しやすくなり、生産性を向上することができる。
本発明によれば、水槽内に残存している残存フィルムを被転写体を水上に引き上げる前に除去することにより、残存フィルムが水槽内で浮かんでいる状態で除去され、また、残存フィルムが水槽内に蓄積されないことによって、その残存フィルムが溶解して支持体フィルムに含まれる溶剤の濃度を高くすることが回避されるので、水圧転写体への残存フィルムの付着を防止し、かつ水槽内の水質悪化を防止することができる。さらに、残存フィルムの除去をする前に、残存フィルムに対し活性エネルギー線を照射すると、残存フィルムを除去しやすくなり、生産性を向上することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1および図2は、本発明における第1の実施の形態を示す図であって、本発明を適用した物品の水圧転写方法を示す図である。
水圧転写装置10は、水槽11と、昇降装置12と、吸引手段としてのバキューム装置20,20Aとを備えている。
水槽11には、例えば摂氏30度の水1が貯溜されており、その水面には膜状に形成された水圧転写フィルム2が図示しないフィルム引き込み装置によって引き込まれ、水上に浮かべて設置される。この水圧転写フィルム2は、水溶性あるいは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルム、例えばPVA(ポリビニルアルコール)2aと、有機溶剤に溶解可能な疎水性物質からなる転写層、例えばインキ皮膜2bとを有している。水圧転写フィルム2は、下部にPVA2aが配置され、上部にインキ皮膜2bが配置されている。それらPVA2aとインキ皮膜2bとの間には、活性エネルギー線照射あるいは加熱の少なくとも一種で硬化可能な硬化性樹脂層、例えば活性エネルギー線硬化性樹脂2cが介在されている。なお、この水圧転写フィルム2には、活性エネルギー線硬化性樹脂2cが含まれていない場合もある。
昇降装置12は、昇降ユニット13と、保持部14と、吸引部15,16とを備え、水槽11の上方に設けられている。
昇降ユニット13は、昇降装置12の昇降駆動部(図示略)によって昇降される。
保持部14は、昇降ユニット13の下部に複数配置され、転写部位3aを含む被転写体3を保持するようになっている。
吸引部15は、図2(a)に示すように、ホース23Aを介してバキューム装置本体22Aと接続されており、バキューム装置20Aの駆動部24Aが駆動して発生する吸引力によって吸引口15aから水1に浮遊する物体を吸引できるようになっている。
吸引部16は、昇降ユニット13の側面から突出されたアーム部16bの先端に取り付けられている。ここではアーム部16b自体を、バキューム装置20Aと吸引部16との間の吸引用配管の一部として機能させているが、これに限定されず、別途ホース等を設けてもよい。
バキューム装置20は、図2(b)に示すように、吸引部21と、バキューム装置本体22と、ホース23と、駆動部24とを備えている。
吸引部21は、水槽11の周縁部に設けられ、その吸引口21aが水面の位置となるように、水面に対して上下あるいは左右方向に移動可能となるように複数配置されている。
バキューム装置本体22は、その内部に不織布袋25を備え、吸引部21とバキューム装置本体22とを接続するホース23が取り付けられている。
駆動部25は、バキューム装置本体22の下部に設けられ、図示しない電源を入れて稼働させると吸引力を発生させ、吸引部21から吸引した物体をホース23および不織布袋25を通過させてバキューム装置本体22内に吸引させるようになっている。
また、水圧転写装置10には、制御部50が設けられている。この制御部50は、昇降装置12およびバキューム装置本体22に接続されており、これら昇降装置12およびバキューム装置本体22の駆動を制御するものである。
この水圧転写装置10を用いて被転写体3に水圧転写フィルム2を付着させて転写を行う際、水圧転写フィルム2の一部が被転写体3の転写部位3aに付着されずに、残存フィルムとして水槽11内に貯溜されている水1の水面に浮かんでいる。この残存フィルムは時間の経過とともに膨潤して沈降するため、残存フィルムを除去する場合、その残存フィルムが沈降する前に吸引によって除去する。
すなわち、水槽11内に貯溜された水1の表面に、水圧転写フィルム2を設置する。このとき、水1と水圧転写フィルム2との間に気泡を含まないように静かに着水させながら水圧転写フィルム2をその水面上に設置する。
水圧転写フィルム2が水面上に設置されると、水圧転写フィルム2の下面側に具備されたPVA2aは、水膨潤性を有していることから水1を吸着して軟化する。一方、水圧転写フィルム2の上面側に具備されたインキ皮膜2bは、疎水性を有していることから、固体状態を保持している。PVA2aは、水温が摂氏30度の場合、2分程度で軟化する。
PVA2aが軟化した後、図示しないノズルを水圧転写フィルム2の表面の上方で左右に移動させながら、活性剤である有機溶剤を水圧転写フィルム2の表面の隅々まで均一に噴霧して、水圧転写フィルム2の表面を活性化させる。このとき、水圧転写フィルム2の上面側に具備されたインキ皮膜2bが噴霧された有機溶剤によって活性化されて軟化する。
その後、水槽11の上方に設けられた昇降装置12に保持された被転写体3を昇降装置12によって下方に移動させてその被転写体3を水圧転写フィルム2に接触させ、そのまま昇降装置12を下方に移動させることによって被転写体3を水圧転写フィルム2に押し付けて被転写体3を沈下させて、被転写体3の表面に水圧転写フィルム2を付着させる。このとき、水圧転写フィルム2と被転写体3との間に気泡が入らないように被転写体3を沈下させる。また、昇降装置12に設けられた吸引部15の吸引口15aが水面の位置となるまで、昇降装置12を下方に移動させる。
図3に示すように、被転写体3を沈下させると、被転写体3の転写部位3aに水圧転写フィルム2が付着し、水圧転写フィルム2の一部は転写部位3aに付着されずに残存フィルム2’となって水圧転写フィルム2からトリミングされる。この残存フィルム2’は、被転写体3の転写部位3aに水圧転写フィルム2が付着した後には被転写体3に対して不用の物体となって水面上に浮かんで、残存フィルム2’に含まれているPVA2a’が溶解するとともに膨潤して、沈降しやすくなる。
水圧転写フィルム2の一部が被転写体3の転写部位3aに付着されずに残存フィルム2’となって水圧転写フィルム2からトリミングされた直後、残存フィルム2’に含まれるPVA2a’が溶解するとともに膨潤して沈降する前に、吸引部15,16,21それぞれを備えたバキューム装置を作動させ、水槽11内に貯溜された水1の表面に浮遊する残存フィルム2’をそれぞれの吸引部15,16,21から吸引して、その残存フィルム2’を水面から除去する。ここで、例えばバキューム装置20の駆動部24を作動させて残存フィルム2’が吸引部21から吸引されると、ホース23を通過して不織布袋25に蓄積されて塊状になるとともに、その残存フィルム2’と同時に吸引された水がホース23を通過した後不織布袋25を通過して、バキューム装置本体22に蓄積されることとなる。
また、水圧転写フィルム2の転写層が活性エネルギー線硬化性樹脂2cを含有している場合、残存フィルム2’は、水で膨潤した水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルム上に、活性剤を含んで膨潤した転写層が積層された状態になっており、これらの成分が水面上に次々と溶出していく。このため、吸引除去は残存フィルム2’が溶出する前、またはできるだけ溶出する初期の段階で行う必要がある。しかしながら、溶出の速さ・程度はフィルムと転写基材の大きさ、形によっても左右される。したがって、できるだけ効率的に吸引除去するためには、吸引除去前に残存フィルムの溶出を固定化するために活性エネルギー線を照射することが有用な手段である。つまり、水圧転写フィルム2の一部が被転写体3の転写部位3aに付着されずに残存フィルム2’となって水圧転写フィルム2からトリミングされた直後に残存フィルム2’に活性エネルギー線を照射すると、残存フィルム2’は硬化し、残存フィルムの水面上への溶出を抑制し、続いて、吸引部15,16,21を作動させることにより吸引除去しやすくなる。
活性エネルギー線を残存フィルム2’に方法には何ら制限はないが、
1)水面に向かってフィルム上に直接、活性エネルギー線を照射する方法、
2)転写水槽の底面または側面の全面または一部に活性エネルギー線を透過する材質を用い、転写水槽の内部に活性エネルギー線を照射する方法、
3)水中に向かって活性エネルギー線を照射し、転写水槽床面に敷いた鏡で反射させる方法
等が挙げられる。
印刷インキ皮膜または塗料皮膜越しに活性エネルギー線硬化性樹脂層に到達する活性エネルギー線量を制御する方法よりも、水中を透過して到達する活性エネルギー線量を制御する方法の方が容易であることから、2)の転写水槽の底面または側面の全面または一部に活性エネルギー線を透過する材質を用い、転写水槽の内部に活性エネルギー線を照射する方法、または、3)の水中に向かって活性エネルギー線を照射し、転写水槽床面に敷いた鏡で反射させる方法が好ましい。
活性エネルギー線の照射量は、活性剤を含んでいる残存フィルム2’の水面上への溶出を抑制することが出来る照射量、すなわち、活性エネルギー線硬化性樹脂層の最終硬化に必要なエネルギーの0.01%以上であればよい。
また、被転写体3にも活性エネルギー線が照射されてしまうことを考慮すると、活性エネルギー線硬化性樹脂層の最終硬化する活性エネルギー線量を照射してもよい。ただし、活性剤を含んだ活性エネルギー線硬化性樹脂層が一気に硬化すると、硬化性樹脂層の表面に凹凸が生じたり、クラックが生じやすい。このため、活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線硬化性樹脂層の表面に凹凸を生じず、かつ支持体フィルムを水洗などで除去により水洗い痕ができない程度の硬化度に抑えることが好ましい。この観点から活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線硬化性樹脂層の最終硬化に必要な活性エネルギー線照射量の40%以下が好ましく、より好ましくは0.1〜25%以下である。すなわち、この段階での硬化はいわゆる半硬化の状態であることが好ましく、この後、水圧転写体から支持体フィルムを除去し、該水圧転写体を乾燥させて活性剤を除去した後、さらに、前記水圧転写体に活性エネルギー線を照射して、水圧転写体の活性エネルギー線硬化性樹脂層を完全に硬化させる。
したがって、残存フィルム2’を除去するためには、活性エネルギー線硬化性樹脂層が完全に硬化するのに必要なエネルギーの0.1〜25%を照射することが最も好ましい。ここでいう、最終硬化とは、活性エネルギー線硬化性樹脂層が所望の物性値(例えば鉛筆硬度F)に達する最低限の照射による硬化レベルを示すものであり、反応性基が完全に消失するレベルを示すものではない。
昇降装置12が下方に移動することによって被転写体3を水没させたとき、その被転写体3が水没したことを検出する信号が図示しない検出装置によって制御部50に入力されると、残存フィルム2’が溶解するとともに沈降する前に、この制御部50からバキューム装置本体22に対して吸引開始の指令が出力され、バキューム装置本体22による吸引が開始されることとなる。
吸引部15,16,21によって残存フィルム2’が除去された後、被転写体3が昇降装置12によって保持されたまま水槽11から引き上げられる。このとき、被転写体3の転写部位3aに付着した水圧転写フィルム2の表面には、PVA2aが膨潤して付着した状態を維持している。
このような水圧転写方法によって水中から引き上げられた被転写体3に付着しているPVA2aを除去して、インキ皮膜2bが被転写体3の転写部位3aに付着されて一体化された水圧転写体が得られる。
この場合、水槽11内に残存している残存フィルム2’をその残存フィルム2’に含まれるPVA2a’が溶解を開始するとともに膨潤して沈降する前に除去することにより、残存フィルム2’が水槽11内で浮かんでいる状態で除去されるため、水槽11内に沈降した後時間が経過すると再浮上して被転写体3の転写部位3aに付着するような残存フィルム2’が水槽11内に蓄積されない。また、残存フィルム2’が水槽11内に蓄積されないため、その残存フィルム2’が溶解してPVA2aの濃度を高くすることが回避される。
上記の構成によれば、残存フィルム2’に含まれるPVA2a’が溶解するとともに膨潤して沈降する前に水槽11内に残存している残存フィルム2’を吸引部15,16,21から吸引して除去することにより、残存フィルム2’が水槽11内に蓄積されないので、被転写体3への残存フィルム2’の付着を防止することができる。また、残存フィルム2’が水槽11内に蓄積されないため、その残存フィルム2’が溶解してPVA2aの濃度を高くすることが回避されるので、被転写体3に対する残存フィルム2’の付着を防止することができ、かつ水槽11内の水質の悪化を防止することができる。
図4は、この発明における第2の実施の形態を示す図であって、この発明を適用した水圧転写装置を示す図である。
上記第1の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
水槽11の周縁部には、吸引手段としての吸着装置30が複数配置されている。この吸着装置30は、吸着体31と、アーム32と、駆動部33とを備えており、駆動部33を作動させることによって吸着体31がアーム32を介して水面上で移動自在となるようになっている。
また、昇降装置12は、昇降ユニット13と、保持部14と、吸着装置40とを備え、水槽11の上方に設けられている。
吸着装置40は、吸着体41と、アーム42と、駆動部43とを備えており、駆動部43を作動させることによって吸着体41が昇降ユニット13に取り付けられたアーム42を介して水面上で移動自在となるようになっている。
制御部50は、昇降装置12の駆動によって、被転写体3の転写部位3aが水没された後、吸引装置30,40を駆動させて、残存フィルム2’の除去作業を開始させる機能を有する。制御部50が吸引装置30,40の駆動を制御することにより、残存フィルム2’の除去作業は、残存フィルム2’のPVA2aの沈降までに完了されるようになっている。
この水圧転写装置10を用いて被転写体3の転写部位3aに水圧転写フィルム2を付着させて転写する工程は、上記第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。ここでは、時間の経過とともにPVA2a’が溶解して膨潤する残存フィルム2’が沈降する前に吸着装置30,40によって吸引して残存フィルム2’を除去する工程について説明する。
すなわち、被転写体3を沈下させると、被転写体3の転写部位3aに水圧転写フィルム2が付着され、水圧転写フィルム2の一部は被転写体3に付着されずに残存フィルム2’となって水圧転写フィルム2からトリミングされる。この残存フィルム2’は、被転写体3の転写部位3aに水圧転写フィルム2が付着された後には被転写体3に対して不用の物体となって水面上に浮かんで、残存フィルム2’に含まれているPVA2aが溶解するとともに膨潤して、時間の経過とともに沈降しやすくなる。
水圧転写フィルム2の一部が被転写体3に付着されずに残存フィルム2’となって水圧転写フィルム2からトリミングされた直後、残存フィルム2’に含まれるPVA2a’が溶解するとともに膨潤して沈降する前に、吸着装置30,40にそれぞれ備えられた駆動部33,43をそれぞれ作動させ、水槽11内に貯溜された水1の水面に浮かぶ残存フィルム2’の位置にアーム32,42を介して吸着体31,41を水面上で移動させ、それら吸着体31,41に残存フィルム2’を接触させることで吸引して、その残存フィルム2’を水面から除去する。残存フィルム2’が吸着体31,41に吸引されると、その残存フィルム2’が水槽11内に拡散されずに吸着体31,41に吸引されたままとなる。
昇降装置12が下方に移動することによって被転写体3を水没させたとき、その被転写体3が水没したことを検出する信号が図示しない検出装置によって制御部50に入力されると、残存フィルム2’が溶解するとともに膨潤して沈降する前に、この制御部50から吸着装置30,40に対して吸引開始の指令が出力され、吸着体31,41による吸引が開始されることとなる。
吸着体31,41によって残存フィルム2’が除去された後、被転写体3が昇降装置12によって保持されたまま水槽11から引き上げられる。このとき、被転写体3の転写部位3aに付着した水圧転写フィルム2の表面には、PVA2aが膨潤して付着した状態を維持している。
このような水圧転写方法によって水中から引き上げられた被転写体3に付着しているPVA2aを除去して、インキ皮膜2bが被転写体3の転写部位3aに付着されて一体化された水圧転写体が得られる。
この場合、水槽11内に残存している残存フィルム2’をその残存フィルム2’に含まれるPVA2a’が溶解するとともに膨潤して沈降する前に吸着体31,41によって吸引して水面上から除去することにより、残存フィルム2’が水槽11内で浮遊している状態で除去されるため、水槽11内に沈降した後時間が経過すると再浮上して被転写体3に付着するような残存フィルム2’が水槽11内に蓄積されない。また、残存フィルム2’が水槽11内に蓄積されないため、その残存フィルム2’に含まれるPVA2a’が溶解して水槽11内のPVAの濃度を高くすることが回避される。
したがって、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
なお、上記第1の実施の形態において、吸引部15,16,21は、上記の位置に配置されているものに限らず、残存フィルム2’に含まれるPVA2a’が沈降する前に、その残存フィルム2’を除去する際に有効な位置に配置されていればよい。
また、上記第2の実施の形態において、吸着体31は、上記の位置に配置されているものに限らず、残存フィルム2’に含まれるPVA2a’が沈降する前に、その残存フィルム2’を除去する際に有効な位置に配置されていればよい。
また、吸引手段として、水圧転写装置にバキューム装置と吸着体との両方を設置してもよい。この構成において、残存フィルム2’に含まれるPVA2a’が沈降する前に、その残存フィルム2’を吸引による除去と吸着による除去との双方が可能である。
以下、本発明を実施例により説明する。特に断わりのない限り「部」、「%」は質量基準である。
(参考例1)活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製
トリメチロールプロパン2モル当量とヘキサメチレンジイソシアネート5モル当量とヒドロキシエチルメタクリレート4モル当量を60℃で反応して得られる平均4官能ウレタンアクリレート65部とロームアンドハース社製のアクリル樹脂、商品名パラロイドA−11(Tg100℃、質量平均分子量125,000)35部とチバガイギー社製光重合開始剤イルガキュア184(アセトフェノン系光重合開始剤)を全樹脂量に対して3%を有機溶剤(酢酸エチル:メチルエチルケトン1:1)に溶解し、固形分量が40質量%になるように調製して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A1を得た。
(参考例2)水圧転写用フィルムB1の作製
東洋紡株式会社製の無延伸ポリプロピレンフィルム(30μm)に、大日本インキ製ウレタンインキ(商品名:ユニビアA)を用い、グラビア4色印刷機で木目柄(厚さ3μm)を印刷して印刷フィルムCを得た。
トーセロ株式会社製のポリビニルアルコールフィルム(厚さ30μm)に参考例1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A1をグラビアコーターで固形分膜厚20μmになるように塗布した。60℃で2分乾燥した後、このフィルムのトップコート層と印刷フィルムCの印刷インキ層を合わせて、60℃で加熱ラミネートし、ラミネートしたフィルムを巻き取って保管した。水圧転写に際して、得られたフィルムからポリプロピレンフィルムを剥離し、トップコート層と装飾層を有する水圧転写用フィルムB1を得た。
(実施例1)
残存フィルム吸引ノズルを付したステンレス製の水槽に28℃の温水を入れ、水圧転写用フィルムB1の硬化樹脂層側を上面にして水に浮かべた。2分秒後、活性剤(キシレン:MIBK:酢酸ブチル:イソプロパノール=5:2:2:1)を40g/m噴霧し、ABS製自動車内装パネルを残存フィルム吸引ノズルつき挿入機に設置し、水圧転写用フィルムの硬化樹脂層面に押しつけながら水中へ沈めて、硬化樹脂層からなる転写層をABS製自動車内装パネルに水圧転写した。(フィルム面積の70%を転写)
得られた被転写体を水から引き上げることなく、被転写物が全面水没すると同時に、挿入機に設置された吸引機と、水槽左右に設置した吸引機が同時に作動を開始し、15秒の吸引で残存フィルム回収した。回収できなかったフィルムは、転写フィルムの約3%であった。
被転写物は、吸引終了後に、水上に引き上げられ、わずかに残った残存フィルムは、水面を平行移動する吸引ノズルによって除去した。回収した残存フィルムから算出した除去率は約99%であった。転写終了から、次のフィルムを養生させる間での時間は、45秒であった。
高圧水銀ランプを3秒間点灯し6mJ/cmの照射量の紫外線を被転写体に照射した。この被転写体を水から引き上げ、水で洗浄することによりPVAフィルムを除去した後、70℃で30分乾燥し、さらに200mJ/cmの照射量でUV照射を2回行い、硬化性樹脂層(トップコート層)を完全硬化させた。表面平滑性と光沢に優れた成形品を得た。カス付着による欠陥は0〜1個/mであった。また、転写前に溶解したフィルムを1%、回収できなかったフィルムカスを1%と見積もると、1回転写当たりのPVA濃度増加量は約0.8gと計算され、1.5mの水槽容量に対しては、0.05ppm/mの濃度増加となることがわかった。
(実施例2)
実施例1と同様の方法で水圧転写を行なった後、得られた被転写体を水から引き上げることなく、被転写物が全面水没すると同時に、高圧水銀ランプを水中に向けて5秒間点灯し、水槽床面に敷いた鏡で反射させることにより、3〜6mJ/cmの照射量の紫外線を被転写体及び転写されずに周囲に残ったフィルムに照射した。続いて、挿入機に設置された吸引機と、水槽左右に設置した吸引機が同時に作動を開始し、15秒の吸引で残存フィルム回収した。回収した残存フィルムから算出した除去率は約99%であった。転写終了から、次のフィルムを養生させる間での時間は、30秒であった。
この被転写体を水から引き上げ、水で洗浄することによりPVAフィルムを除去した後、70℃で30分乾燥し、さらに200mJ/cmの照射量でUV照射を2回行い、硬化性樹脂層(トップコート層)を完全硬化させた。表面平滑性と光沢に優れた成形品を得た。カス付着による欠陥は0〜1個/mであった。また、転写前に溶解したフィルムを1%、回収できなかったフィルムカスを1%と見積もると、1回転写当たりのPVA濃度増加量は約0.8gと計算され、1.5mの水槽容量に対しては、0.05ppm/mの濃度増加となることがわかった。
(比較例1)
残存フィルム濾過槽を付したステンレス製の水槽に28℃の温水を入れ、実施例1と同様に水圧転写した。
得られた被転写体をそのまま水から引き上げ、被転写物を引き上げてから、水槽内のガイドを移動させ、残存フィルムを下流の濾過槽まで移動させた。
被転写物は、実施例1と同様に後処理され、表面平滑性と光沢に優れた成形品を得たが、残存フィルムが数多く付着し、カス付着による欠陥は約50〜100個/mであった。転写終了から、次のフィルムを養生させる間での時間は、沈降したものを無視すれば3分であった。
残存フィルムは、一部ガイドに付着したり沈降して、濾過槽でろ過できた量から、回収除去できなかった比率は転写フィルムに対して約10%であった。10%のフィルムは水槽内でPVAが完全溶解し、ろ過槽内のPVAもやがて完全溶解すると仮定すれば、この転写では1mあたり30%のフィルムのPVAが水槽内に溶解すると考えられ、これによる濃度上昇は、0.78ppm/mと算出された。
(比較例2)
実施例1と同様の残存フィルム吸引ノズルを付したステンレス製の水槽に28℃の温水を入れ、実施例1と同様な手法で水圧転写した。
得られた被転写体を水から引き上げた後に、挿入機に設置された吸引機と、水槽左右に設置した吸引機が同時に作動を開始し、15秒の吸引で残存フィルム回収した。回収できなかったフィルムは、転写フィルムの約7%であった。
被転写物は、吸引終了後に、水上に引き上げられ、わずかに残った残存フィルムは、水面を平行移動する吸引ノズルによって除去したが、数%のフィルムが沈降し、回収不可能となった。回収した残存フィルムから算出した除去率は約95%であった。転写終了から、次のフィルムを養生させるまでの時間は、1分40秒であった。
高圧水銀ランプを3秒間点灯し6mJ/cmの照射量の紫外線を被転写体に照射した。この被転写体を水から引き上げ、水で洗浄することによりPVAフィルムを除去した後、70℃で30分乾燥し、さらに200mJ/cmの照射量でUV照射を2回行い、硬化性樹脂層(トップコート層)を完全硬化させた。表面平滑性と光沢に優れた成形品を得た。カス付着による欠陥は5〜10個/mであった。また、転写前に溶解したフィルムを1%、回収できなかったフィルムカスを5%と見積もると、1回転写当たりのPVA濃度増加量は約2.4gと計算され、1.5mの水槽容量に対しては、0.15ppm/mの濃度増加となることがわかった。
Figure 2004306602
本発明における第1の実施の形態に係る水圧転写装置の断面図である。 本発明における第1の実施の形態に係る吸引部の接続を説明する図である。 本発明における第1の実施の形態に係る水圧転写装置の断面図である。 本発明における第2の実施の形態に係る水圧転写装置の断面図である。
符号の説明
1 水
2 水圧転写フィルム
3 水圧転写体
10 水圧転写装置
11 水槽
12 昇降装置
15 吸引部
16 吸引部
20 バキューム装置
20A バキューム装置
21 吸引部
30 吸着装置
31 吸着体
40 吸着装置
41 吸着体

Claims (7)

  1. 水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性の転写層とを有する水圧転写フィルムを、前記転写層を上にして水槽に貯溜された水に浮かべ、有機溶剤により前記転写層を活性化し、前記転写層が転写される物品である被転写体を上から前記水圧転写フィルムに押し付けて、前記被転写体のうち、前記水圧転写フィルムの転写層を転写させる転写部位を含む部分を前記水槽内の水中に水没させた後、前記被転写体を水上に引き上げる前に、前記水槽内に残存している残存フィルムを除去することを特徴とする物品の水圧転写方法。
  2. 前記転写層が、前記支持体上に、有機溶剤に溶解可能な硬化性樹脂層を積層させるか、または該硬化性樹脂層とその上に更に有機溶剤に溶解可能な印刷インキ皮膜または塗料皮膜から成る装飾層とをこの順に積層させた請求項1記載の水圧転写用フィルム。
  3. 前記除去が、吸引手段による吸引である請求項1または2に記載の物品の水圧転写方法。
  4. 前記吸引手段が、バキューム装置である請求項3に記載の物品の水圧転写方法。
  5. 前記吸引手段が、吸着体である請求項3に記載の物品の水圧転写方法。
  6. 前記除去をする前に、残存フィルムに対し活性エネルギー線を照射する請求項2から5のいずれか一項に記載の水圧転写方法。
  7. 請求項1〜6の物品の水圧転写方法によって水中から引き上げた被転写体に付着している支持体フィルムを除去して、前記転写層が前記転写部位に付着されて一体化された水圧転写体を得ることを特徴とする水圧転写体の製造方法。

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