JP2009148903A - 水圧転写体の製造方法及びこれに用いる転写用治具 - Google Patents

水圧転写体の製造方法及びこれに用いる転写用治具 Download PDF

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Abstract

【課題】水中の残滓を精度よく取り除くことができるとともに、作業性を向上することができ、かつ、品質の優れた水圧転写体を製造することが可能な水圧転写体の製造方法及びこれに用いる転写用治具を提供することにある。
【解決手段】被転写体Wの被転写面WSを水圧転写フィルムに押し付ける方向の、該被転写面WSの後方側に、転写に使用されなかった該水圧転写フィルムの残滓を付着させるための付着部材3を設けておき、前記転写とともに、前記付着部材3に前記残滓を付着させた後、前記被転写体Wの前記被転写面WS側から前記付着部材3側へ向け洗浄を行い、前記被転写体Wに転写された前記水圧転写フィルムの支持体フィルムを洗い流すとともに、前記付着部材3に付着した前記残滓を除去することを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、水圧転写フィルムを水槽の水面に浮かべた状態で、被転写体を前記水圧転写フィルムに押し付け該被転写体に転写させる水圧転写体の製造方法及びこれに用いる転写用治具に関する。
水圧転写法は、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと意匠性を付与する転写層とを有する水圧転写フィルムを、支持体フィルムを下方にして水面に浮かべ、上方より通常活性化剤と呼ばれる有機溶剤を噴霧して転写層を柔軟化(活性化)させた後、被転写体となる成形体をその上方から押し付けながら水中に沈めることにより、水圧によって転写層を前記被転写体に密着させて転写する方法である。
この水圧転写法によれば、意匠性を付与する転写層の絵柄を選択することにより、金属、あるいはプラスチック等からなる複雑な三次元立体形状を有する成形体に、任意の前記絵柄を均一に綺麗に付与することができる。
また近年では、トップコート層となるUV(紫外線)硬化性樹脂層と装飾層とが一体となった転写層を有する水圧転写フィルムが開発されており(例えば、特許文献1参照)、1回の転写工程で、被転写体にUV硬化性樹脂からなるトップコート層と装飾層とを付与することができる。
水圧転写方法においては、転写の際、すなわち被転写体と水圧転写フィルムとを水中に沈める際、被転写体の被転写面に転写層が密着して転写されるとともに、該水圧転写フィルムの一部が転写されずに水中に残存し、浮遊あるいは沈降する。このような残存物(以下「残滓」と称する)は、水面あるいは水中に滓として残るため、以後の転写工程において、被転写体の被転写面に付着し、得られる水圧転写体の大きな欠陥の原因となる。
これに対して、付着した残滓をサンドペーパーのサンディング等により除去した後、必要に応じて補修を施し、トップコートをスプレー塗装するといった方法が取られているが、作業工程が非常に煩雑となる。一方、特許文献1に記載のようなトップコート層付きの水圧転写フィルムを使用した場合には、表面に付着した残滓が、UV照射前の未硬化のトップコート層に食い込み痕跡を残してしまい、外観上の不良を発生しやすい。
そこで、水中の残滓を除去する方法として、例えば、被転写体を水圧転写フィルムに押しつけた後に、転写に使われなかった残存支持体フィルムや残存転写層を付着させるための付着部材を被転写体を保持する保持部材に設けて水没させる方法(例えば特許文献2参照)や、水中の底面に残滓を堆積させるためのシート部材を設置し随時回収する方法(例えば特許文献3参照)が知られている。
特開2005−132015号公報 特開2006−123462号公報 特開2006−123266号公報
しかしながら、残滓を付着させるために付着部材を水没させる方法は、数回使用するだけで付着部材を形成する網目状のメッシュあるいは不織布等に多くの残滓が堆積してしまい、転写時にこれら残滓が該付着部材から脱落して、得られる水圧転写体に付着することがあるため、頻繁に交換する必要があった。そして、この交換に際しては付着部材を被転写体の保持部材から取り外す必要があるが、これに非常に手間がかかり、作業性を妨げるとともに、交換に要する費用が嵩むという問題があった。従って、交換に要する作業工程、時間及び費用をいかに低減できるかということが課題とされていた。
また、水中の底面に残滓を堆積させるためのシート部材を設置し随時回収する方法は、水中に浮遊する微小な残滓を取り除く効果が充分であるとは言えず、これら浮遊する残滓が被転写体に付着し品質に影響を及ぼすことがあった。そのため、製造される水圧転写体のさらなる品質向上が望まれていた。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、水中の残滓を精度よく取り除くことができるとともに、作業性を向上することができ、かつ、品質の優れた水圧転写体を製造することが可能な水圧転写体の製造方法及びこれに用いる転写用治具を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。すなわち本発明は、水溶性または水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと、有機溶剤に溶解可能な転写層と、を有する水圧転写フィルムを水槽の水面に浮かべた状態で、被転写体の被転写面を前記水圧転写フィルムに押し付け、前記転写層を前記被転写体に転写させる水圧転写体の製造方法であって、前記被転写体の前記被転写面を前記水圧転写フィルムに押し付ける方向の、該被転写面の後方側に、前記転写に使用されなかった該水圧転写フィルムの残滓を付着させるための付着部材を設けておき、前記転写とともに、前記付着部材に前記残滓を付着させた後、前記被転写体の前記被転写面側から前記付着部材側へ向け洗浄を行い、前記被転写体に転写された前記水圧転写フィルムの前記支持体フィルムを洗い流すとともに、前記付着部材に付着した前記残滓を除去することを特徴とする。
この発明における水圧転写体の製造方法によれば、水槽の水面に浮かぶ水圧転写フィルムに向け被転写体の被転写面を押し付けるようにして転写が行われ、その後に、転写されずに残った水圧転写フィルムの残滓が付着部材によって除去される。
従って、転写工程において、該転写と残滓の除去との両工程が連続するようにして行われるので、作業性が向上するとともに、これら残滓により被転写体の被転写面に異物が付着し転写不良が発生することを防止できる。
また、転写工程後の洗浄工程において、被転写体の被転写面側から付着部材側へ向け洗浄が行われる。すなわち、例えば、被転写体が上方、付着部材が下方にくるように配置し、かつ、被転写体の上面部分に被転写面がくるように配置して、被転写面のさらに上方よりこの被転写面へ向けシャワー等で水洗いを行うことにより、被転写体の被転写面に転写された水圧転写フィルムの支持体フィルムを洗浄するとともに、付着部材に付着した残滓を除去できる。よって従来のように、付着部材を交換する手間が必要なく、作業性が飛躍的に向上するとともに、コスト低減効果を奏功する。
また、この洗浄の際、付着部材は被転写体の被転写面の後方に配置されているため、被転写面に付着部材から洗い流された残滓が付着する虞がない。従って、製造される水圧転写体の品質が良好に確保されるようになっている。
また、本発明によれば、洗浄工程以降の乾燥・塗装・硬化工程においても、これら被転写体、保持部材及び付着部材を一体の状態のままとして作業することができるので、さらなる作業性の向上及び水圧転写体の品質の向上が期待できる。
また、本発明の水圧転写体の製造方法において、被転写体を保持して水圧転写フィルムに押し付け転写するための転写用治具を設けておき、この転写用治具に付着部材を設けておくとともに、該付着部材の残滓が付着される部分の垂直投影面積を、被転写体の被転写面の垂直投影面積以上となるように形成し、転写の際、水中に沈めた被転写体を水槽から引き上げるにあたり、付着部材を通過させた残滓除去部分を通すようにして、後方の被転写体の被転写面を引き上げることとしてもよい。
本発明によれば、転写用治具には付着部材が設けられており、この付着部材の残滓が付着される部分の垂直投影面積を、被転写体の被転写面の垂直投影面積以上となるように形成しているので、被転写体を水槽内から上昇させ引き上げる際、先に付着部材が水中及び水面の残滓を付着させながら除去するようにして通過した残滓除去部分を、この付着部材よりも、上昇する方向の後方に配置されるとともに垂直投影面積の小さな被転写体の被転写面が通過するようになっているので、被転写面に残滓が付着することが良好に防止されるようになっている。従って、より品質の優れた水圧転写体を製造することが可能である。
また、本発明の水圧転写体の製造方法において、付着部材を網目状に形成するとともに、その網目の大きさを、目開きで1mm以上10mm以下に設定することとしてもよい。これによれば、転写の際に、この付着部材により良好に水槽内の残滓を掬い取ることができるとともに、転写後の洗浄工程においては、被転写体の被転写面に転写された水圧転写フィルムの支持体フィルムを洗い流す際、付着部材に付着した水圧転写フィルムの残滓も良好に洗い流すことができるようになっている。そして、この付着部材を次回の転写工程に用いた際には、例えばこの付着部材から除去しきれなかった残滓が水槽内に浮遊し、被転写体の被転写面に付着するようなことがなく、水圧転写体の品質がより向上される。
ここで、付着部材の網目の目開きを1mmより小さく設定した場合には、洗浄工程で残滓が網目を通り抜けにくくなって良好にこれら残滓を除去することが難しくなり、この付着部材を次回の転写工程に使用した際に水槽内に残滓が浮遊し、被転写体の被転写面に付着して品質を低下させることがある。また、目開きを10mmを超えて設定した場合には、付着部材が水槽内の残滓を良好に掬い取ることができず、被転写体の被転写面に残滓が付着して、品質を低下させることがある。従って、付着部材の網目の目開きは、1mm以上10mm以下の範囲内に設定されることが好ましい。
また、本発明は、水溶性または水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと、有機溶剤に溶解可能な転写層と、を有する水圧転写フィルムを水槽の水面に浮かべた状態で、被転写体の被転写面を前記水圧転写フィルムに押し付け、前記転写層を前記被転写体に転写させる水圧転写体の製造に用いられる転写用治具であって、前記被転写体を保持する保持部材と、前記転写に使用されなかった前記水圧転写フィルムの残滓を付着させるための付着部材と、を有し、前記付着部材が、前記被転写体の前記被転写面を前記水圧転写フィルムに押し付ける方向の、該被転写面の後方側に配置されるとともに、前記残滓を付着させる部分の垂直投影面積が、前記被転写体の前記被転写面の垂直投影面積以上となるように形成されていることを特徴とする。
また、本発明の転写用治具において、前記付着部材が、網目状に形成されているとともに、その網目の大きさが、目開きで1mm以上10mm以下に設定されていることとしてもよい。
本発明によれば、前述した効果を奏功するとともに、この転写用治具には、被転写体を保持するための保持部材が設けられており、この保持部材により被転写体を水圧転写フィルムに押し付け転写させる。また、この転写用治具には付着部材が設けられており、この付着部材に転写に使われなかった水圧転写フィルムの残滓を付着させるようにして水槽内から掬い取るようになっている。従って、この転写用治具はこれら保持部材及び付着部材を一体として備えているので、部品点数を最小限に抑えることができるとともに、これらを水槽内に水没、上昇させるための機構を同一に構成でき、その設備費用が低減される。
本発明に係る水圧転写体の製造方法及びこれに用いる転写用治具によれば、転写の際、該転写に使われなかった水圧転写フィルムの残滓を付着部材が精度よく除去するとともに、その残滓除去部分を被転写体の被転写面が通過するので、品質の優れた水圧転写体を製造することができる。また転写後には洗浄工程が設けられており、この洗浄が被転写体の被転写面側から付着部材側へ向け行われるので、被転写体に転写された水圧転写フィルムの支持体フィルムを洗い流すとともに、付着部材に付着した残滓を除去することができ、よって作業性が飛躍的に向上される。
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る保持部材を示す側面図、図2は図1の保持部材を示す正面図、図3は本発明の一実施形態に係る転写用治具を示す側面図、図4は図3の転写用治具を下方より見た状態を示す下面図である。また、図5〜図8は本発明の一実施形態に係る水圧転写体の製造における転写工程を示す説明図、図9は本発明の一実施形態に係る水圧転写体の製造における洗浄工程以降の工程を示す説明図である。
図1に示すように、本実施形態の水圧転写体の製造に用いられる被転写体Wは、その下面側部分に、転写により装飾が施される被転写面WSを配置している。また、被転写体Wの上端部分には、該上端部分から上方に向け突出した平板状の被保持部WHが備えられている。そして、この被転写体Wを保持する保持部材2が、該被転写体Wの上方に配置されているとともに、その直方体状の本体部2aの下端部分には被転写体Wの被保持部WHを保持するための2つのクランプ部2bが、該本体部2aの長手方向に離して下方に延びて配設されている。
図2に示すように、これらクランプ部2bは、夫々対向配置される平板状及び波状のクリップを有しており、被転写体Wの被保持部WHをこれらクリップで両側から挟みこんで拘持するようにして構成されている。すなわち、被転写体Wは、その被保持部WHを上方に向け配置した状態で、該被保持部WHをこのクランプ部2bの下方より上方へ向け差し込むことにより、保持部材2によって保持されるようになっている。また逆に、この保持された状態から、被転写体Wを下方へ向け引っ張ることにより、該保持部材2から取り外すことができるようになっている。
また、保持部材2の上端部分には、該上端部分から上方に向け突出した平板状の取り付け部2cが設けられており、この取り付け部2cを用いて、保持部材2を後述する付着部材3に取り付けられるようになっている。
また、図3、図4に示すように、水圧転写体の製造に用いられる転写用治具10は、複数の保持部材2と、これら保持部材2を支持するための付着部材3と、を有している。この付着部材3は、平面視矩形枠状もしくは平面視梯子状に形成されるフレーム部3aと、このフレーム部3aの上面全体を覆うようにして張り巡らされる網部3bと、を備えている。フレーム部3aは、その平面視の短手方向に複数の桟部3cを架け渡すようにして設けている。そして、これら桟部3cの下面部分には、保持部材2の取り付け部2cをネジ留めもしくは溶接等により固定しており、これら保持部材2を垂下させるようにして支持している。
また、網部3bは、平網状に形成されており、その網の夫々の正方形状の升目を形成するようにして隣り合う素線同士の内側部分の幅寸法(以下「目開き」と省略する)が、1mm以上10mm以下の範囲となるように設定されている。
また、図3において、この付着部材3の上端部分には、該上端部分から上方に向け突出するようにして平板状の把持部3dが設けられており、この把持部3dを転写ロボットの不図示のアーム部に把持させるようになっている。
この転写ロボットのアーム部は、転写用治具10の把持部3dを把持した状態で、転写用治具10を、把持部3d近傍を中心とし付着部材3の長手方向の両端部を回転運動させるようにして回動させることができるようになっている。すなわち、図3において、例えば把持部3dの孔部を中心として、転写用治具10全体が回動可能なように構成されている。そして、これら転写用治具10及び転写ロボットを備える転写システム20が構成されている。
なお、転写ロボットのアーム部が、転写用治具10の付着部材3の端部を支持するように形成し、該端部近傍を中心に転写用治具10全体を回動するように装置を構成しても構わない。
また、このアーム部を不図示の制御部と電気的に接続して制御可能に構成すれば、前記回動を自動化でき、より作業性が向上する。
次に、このように構成される転写用治具10を用いて水圧転写体を製造する方法について説明する。
本実施形態の水圧転写体の製造は、水圧転写フィルムを被転写体Wの被転写面WSに転写する転写工程と、該転写工程により被転写面WSに転写された水圧転写フィルムのうち、支持体フィルムを洗浄し洗い流すための洗浄工程と、を有している。さらに、洗浄工程の後には、乾燥工程、塗装工程及び硬化工程が行われる。
(転写工程1)
まず、転写工程について説明する。この転写工程は、水槽内に水圧転写フィルムを転写可能な状態に準備する転写工程1と、被転写体を水圧転写フィルムに押し付けるようにして水中へ沈めた後、水中に沈めた状態から再び水上へと引き上げる転写工程2と、から構成されている。
また、被転写体Wの被転写面WSに転写するための水圧転写フィルムとしては、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと、該支持体フィルム上に設けられるとともに有機溶剤に溶解可能な転写層と、を有するものを用いることができる。さらに、この転写層としては、トップコート層となる硬化性樹脂層と、意匠性を付与する装飾層とが一体となったものを用いることができる。
そして、転写を行うための水槽内に水を張り、その水面にこの水圧転写フィルムを浮かべるが、この際、水圧転写フィルムを、上面が転写層、下面が支持体フィルムとなるようにして配置する。ここで、転写層が硬化性樹脂層と装飾層との2層からなる場合には、該転写層の下方に硬化性樹脂層、上方に装飾層がくるようにして配置する。
このようにして水圧転写フィルムを水槽内の水面に浮かべると、水圧転写フィルムの下面に配置される支持体フィルムは水槽内の水により溶解、もしくは膨潤される。そして、この状態で、水圧転写フィルムの上方より、該水圧転写フィルムの上面に配置される転写層に向け活性化剤を満遍なく塗布または噴霧すると、該転写層全体が活性化され、被転写体Wへの転写準備がなされた状態となる。なお、転写層の活性化は水圧転写フィルムを水槽内の水面に浮かべる前に行っても構わない。
(転写工程1 水圧転写フィルム)
ここで、転写工程1に用いる水圧転写フィルムについて、さらに詳しく説明する。
本実施形態で使用する水圧転写フィルムは公知のものであり、特に限定はなく、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン等の水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルム上に、印刷等の方法で印刷インキや塗料を単層または複数層重ね刷りさせて得た装飾層を有するものや、該装飾層に重ねるようにして、さらに活性エネルギー線硬化性樹脂層を設けた所謂トップコート層付きのものであっても構わない。
(転写工程1 水)
水槽内の水としては、例えば水道水、蒸留水、イオン交換水などが用いられる。また、水圧転写フィルムの支持体フィルムに合わせて、水にホウ酸等の無機塩類やアルコール類を10%以内の範囲で溶解させたものを用いても構わない。そして、この水は、支持体フィルムを溶解または膨潤させる役割の他、被転写体Wに転写層を転写する際に、水圧転写フィルムを被転写体Wの被転写面WSの三次元曲面に密着させる水圧媒体として働くようになっている。
(転写工程1 活性化)
水圧転写フィルムの転写層は、有機溶剤、あるいは活性エネルギー線硬化性組成物や熱硬化性組成物等の活性化剤を塗布または散布することにより活性化され、十分に可溶化もしくは柔軟化される。ここで言う活性化とは、転写層に活性化剤を塗布または散布することにより、転写層を完全には溶解せずに可溶化させ、転写層に柔軟性を付与して、転写層の被転写体Wへの追従性と密着性とを向上させることを意味する。この活性化は、転写層を水圧転写用フィルムから被転写体Wへ転写する際に、これらの転写層が柔軟化され、被転写体Wの被転写面WSの三次元曲面へ十分に追従できる程度に行われればよい。
(転写工程1 活性化剤)
活性化のための活性化剤としては、公知のものが使用でき、例えば、硬化性樹脂層と装飾層とを可溶化させ柔軟性を付与する有機溶剤、あるいは低粘度のラジカル重合性組成物が用いられる。中でも、取り扱いが容易であることから、有機溶剤を使用することが好ましい。
具体的には、有機溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、カルビトール、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ソルフィットアセテート等及びそれらの混合物が挙げられる。
低粘度のラジカル重合性組成物としては、光重合性プレポリマー、光重合性モノマー、及び光重合開始剤を必須成分とするもので、公知のものを使用することができる。また、粘度を調整する目的で有機溶剤を適宜添加しても構わない。
また、この活性化剤中に印刷インキまたは塗料と成形品との密着性を高めるために、若干の樹脂成分を含ませてもよい。例えば、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂といった、インキのバインダーに類似の構造のものを1〜10%含ませることによって密着性が高まることがある。
(転写工程2)
次いで、図5に示すように、転写工程1を施され、水槽11の水面に浮かべられた水圧転写フィルム12の上方より、被転写体Wを保持する転写用治具10を水中へと沈めていく。
ここで、説明の便宜上、図に示すように、付着部材3には1つの保持部材2が取り付けられているものとし、この保持部材2が被転写体Wを保持した状態とされている。また、付着部材3の長手方向の端部には、該付着部材3を把持するようにして転写ロボットのアーム部4が備えられており、このアーム部4により転写用治具10が支持されているとともに、前記端部を中心に回動可能とされて、転写システム20が構成されている。また、このアーム部4は、不図示の制御部により制御可能に構成されており、前記回動を自動化することができるようになっている。
図5において、転写ロボットのアーム部4は、被転写体Wの被転写面WSを水圧転写フィルム12に対し傾斜させるようにして、転写用治具10を支持している。そして、この状態のまま、図の矢印の方向に被転写体Wを移動させつつ水中へと沈めていく。この際、被転写体Wは、その被転写面WSを水圧転写フィルム12の表面に押し付けられながら該水圧転写フィルム12とともに水中へと沈められていき、水圧によって水圧転写フィルム12の転写層を被転写面WSへと密着させられることにより、転写が行われるようになっている。
図6において、水中に沈められた被転写体Wの被転写面WSには水圧転写フィルム12が転写された状態となっており、また、転写に使われなかった水圧転写フィルム12は水面にシート状のまま残されたり、水面及び水中に破片状になって存在したりしている。これら転写に使われなかった水圧転写フィルム12は所謂残滓であり、これら残滓を次の転写までに除去する必要がある。
被転写体Wを保持する保持部材2の上方には付着部材3が設けられており、被転写体Wを水圧転写フィルム12に押し付け水中へと沈めていくと、被転写体Wに遅れて続くようにしてこの付着部材3も水中へと沈められていく。ここで、一部の前記残滓はこの付着部材3の網部3bに付着される。
次いで、図7に示すように、転写ロボットのアーム部4の先端の把持部分を操作して、転写用治具10を、前記傾斜を水平に戻す方向へと回動させ、さらに水平状態から回動させ続けて前記傾斜と逆向きになるようにして傾斜させる。
また、水面に残された水圧転写フィルム12のシート状や破片状の残滓は、ノズル等を用いて吸い取り、ある程度除去しておく。ここで、除去しきれなかった水圧転写フィルム12の残滓は、図7に示すように水槽11内の水面や水中に取り残された状態となっている。
次いで、図8に示すようにして、被転写体Wを水中から上昇させて、水槽11から引き上げる。この際、被転写体Wの上方に配置される付着部材3が、水中及び水面に存在する水圧転写フィルム12の残滓を網部3bで掬い取るようにしながら、上昇されるようになっている。図8において、Sで示される部分は、この上昇によって付着部材3の網部3bが通過し残滓を除去した水面の残滓除去部分を示しており、その部分の面積は、水面に対し傾斜されている転写用治具10の網部3bをこの水面に投影した垂直投影面積となっている。
また、この付着部材3に続くようにして水中から上方へと引き上げられる被転写体Wの被転写面WSのこの水面に対する垂直投影面積は、網部3bの垂直投影面積以下となるように設定されている。すなわち、この残滓除去部分Sの範囲の内側を、被転写体Wの被転写面WSが通過するようにして上昇させることができるようになっている。
このようにして被転写体Wを引き上げた後、この被転写体Wは、その被転写面WSに転写された水圧転写フィルム12を洗浄するための洗浄工程へと送られる。
(洗浄工程)
洗浄工程は、転写後の被転写体Wから、水圧転写フィルム12の支持体フィルムを除去する工程である。図9に示すように、まず、転写工程から送られてきた転写用治具10を、その保持する被転写体Wの被転写面WSが上方にくるようにして、前述の転写工程と反転させるようにして配置する。ここで、被転写面WSの上方には、洗浄ノズル5が設けられており、この洗浄ノズル5から、シャワー状の水流が放水されるようになっている。
そして、この状態のまま洗浄ノズル5から水流を放水し、被転写体Wの被転写面WSの水圧転写フィルム12を洗浄する。この水流の水圧は、水圧転写フィルム12の支持体フィルムを洗い流せる程度の強さであればよく、被転写面WSの形状や大きさによって適宜設定される。この水流により、被転写面WSに転写された水圧転写フィルム12の表面の支持体フィルムは溶解もしくは剥離されて、この水圧転写フィルム12から除去される。
ここで、被転写体Wは、転写用治具10の保持部材2に保持された状態のまま洗浄されるようになっているので、洗浄ノズル5の水流は、被転写体Wの下方に配置される付着部材3に対しても同時に放水されており、これにより、付着部材3に付着している転写に使用されなかった水圧転写フィルム12の残滓を洗い流す。
(乾燥工程)
被転写体Wは、このようにして水洗いされて洗浄された後、乾燥される。この乾燥工程は、加熱乾燥を用いれば比較的短時間で行うことができ、作業性を向上することができるが、その乾燥温度については、被転写体Wが耐熱温度の低いプラスチック等の場合には被転写体Wの熱変形を引き起こさないように、基材の耐熱温度を超えない範囲に設定する必要がある。また、この乾燥工程には、オーブンや乾燥炉を使用することができる。
(塗装工程)
乾燥工程の後は、スプレー塗装、刷毛塗装、カーテンコター等で、被転写面WSに活性エネルギー線または加熱により硬化可能な硬化性樹脂組成物を形成する塗装工程を用いてもよい。特にスプレー塗装は、被転写面WSの様々な形状に対し、簡便に外観の良好な塗膜を形成することができるので、好適に用いることができる。具体的には、スプレーガンやリシンガン等の機械装置を用い、公知の表面保護用の塗料を塗装すればよい。
また、水圧転写フィルム12の転写層として、トップコート層となる硬化性樹脂層と、意匠性を付与する装飾層とが一体となったものを用いた場合には、この硬化性樹脂はインキ層(装飾層)への密着性を充分に有しているので、該硬化性樹脂を適正な粘度に希釈して用いることもできる。
(硬化工程)
次いで、このようにして被転写体Wの被転写面WSの表面に形成された硬化性樹脂を、活性エネルギー線または加熱により硬化させる。このとき使用する活性エネルギー線としては、可視光線や紫外線を使用するのが好ましい。特に紫外線が好適であり、この場合には、前記硬化性樹脂層としてUV硬化性樹脂が用いられる。また、紫外線源としては、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が用いられる。また、加熱により硬化させる場合には、加熱源として、熱風、近赤外線など公知の熱源が適用可能である。
以上の工程が行われた後、図9に示すように、被転写体Wが転写用治具10の保持部材2から取り外される。この後、転写用治具10は、別の被転写体Wをその保持部材2に再び保持するとともに、繰り返し水圧転写体の製造に用いられるようになっている。
以上説明したように、本実施形態に係る水圧転写体の製造方法によれば、被転写体Wの被転写面WSを水圧転写フィルム12に押し付ける方向の被転写面WSの後方側に、水圧転写フィルム12の転写に使われなかった残滓を付着させる付着部材3を設けており、この付着部材3が転写の際に残滓を付着させるとともに、これら残滓を水槽11内から除去するようになっている。
従って、転写工程において、転写と残滓の除去との両工程が連続して行われることとなり、作業性が向上するとともに、これら残滓により被転写体Wの被転写面WSに異物が付着し転写不良が発生することを防止することができるようになっている。
また、転写工程後の洗浄工程において、被転写体W、該被転写体Wを保持する保持部材2及び該保持部材2に取り付けられる付着部材3の配置を、これらが一体の状態のまま上下反転させて、この被転写体Wに転写された水圧転写フィルム12の支持体フィルムを上方よりシャワー等で水洗いして洗浄するとともに、付着部材3に付着した残滓を除去することができるようになっている。すなわち、従来のように、付着部材3を被転写体Wの保持部材2から都度取り外して交換する必要がなく、より作業性が向上するとともに、コスト低減の効果を奏功する。
また、この際、付着部材3は被転写体Wの被転写面WSの下方に配置されているため、被転写面WSに付着部材3から洗い流された残滓が付着する虞がない。従って、製造される水圧転写体の品質が良好に確保されるようになっている。
また、これによれば、洗浄工程以降の乾燥・塗装・硬化工程においても、これら被転写体W、保持部材2及び付着部材3を一体の状態のまま作業することができるので、さらなる作業性の向上及び水圧転写体の品質の向上が期待できる。
また、被転写体Wを保持するとともに水圧転写フィルム12に押し付け転写するための転写用治具10には、付着部材3が設けられており、この付着部材3の残滓が付着される網部3bの水面に投影される垂直投影面積が、被転写体Wの被転写面WSの垂直投影面積以上となるように設定されている。
従って、被転写体Wを水槽11内から上方へと上昇させる際、先に付着部材3が水中及び水面の残滓を付着させながら除去するようにして通過した残滓除去部分を、この付着部材3よりも垂直投影面積の小さな被転写体Wの被転写面WSが通過するようになっているので、引き上げ時においても被転写面WSに残滓が付着することが良好に防止されるようになっている。よって、より品質の優れた水圧転写体を製造することが可能である。
また、この転写用治具10には、被転写体Wを保持する保持部材2が設けられており、この保持部材2により被転写体Wを水圧転写フィルム12に押し付け転写させるとともに、この転写用治具10には付着部材3が設けられており、この付着部材3に転写に使われなかった水圧転写フィルム12の残滓を付着させるようにして水槽11内から掬い取るようになっている。従って、これら保持部材2及び付着部材3を一体として構成することができるので、部品点数を最小限に抑えることができるとともに、これらを水槽11内に水没、上昇させるための機構を同一に構成でき、その設備費用が低減される。
また、本実施形態では、付着部材3の網部3bを平網状に形成するとともに、その網目の大きさを、目開きで1mm以上10mm以下に設定することとしたので、転写の際に、この付着部材3により良好に水槽11内の残滓を掬い取ることができるとともに、転写後の洗浄工程においては、被転写体Wの被転写面WSに転写された水圧転写フィルム12の支持体フィルムを洗い流す際、付着部材3に付着した水圧転写フィルム12の残滓も良好に洗い流すことができるようになっている。
なお、残滓を洗い流すとは、転写工程で付着部材に膜が張ってしまい、網目を詰まらせてしまうようなことがないことを示しており、実質的に網目の目開きが維持されていればよく、後述の洗浄工程後、網目の素線に強固に付着した残滓が若干量残っていても構わない。このような素線に強固に付着した残滓は、転写回数を重ねる毎に徐徐に蓄積され、やがて後述の洗浄工程において水が網目を通り抜けにくくなるため(網目詰まり)、そのときには網部3bを交換することが好ましい。
そして、この付着部材3を次回の転写工程に用いた際には、例えばこの付着部材3から除去しきれなかった残滓が水槽11内に浮遊し、被転写体Wの被転写面WSに付着するようなことがなく、水圧転写体の品質がより向上される。
ここで、付着部材3の網部3bの目開きを1mmより小さく設定した場合には、洗浄工程で水が網目を通り抜けにくくなって良好にこれら残滓を除去することが難しくなり、この付着部材3を次回の転写工程に使用した際に、水槽11内に残滓が浮遊し、被転写体Wの被転写面WSに付着して品質を低下させる虞がある。
また、目開きを10mmを超えて設定した場合には、付着部材3の網部3bで水槽11内の残滓を良好に掬い取ることができず、被転写体Wの被転写面WSに残滓が付着して、品質を低下させる虞がある。従って、付着部材3の網部3bの目開きは、1mm以上10mm以下の範囲内に設定されることが好ましい。
また、本実施形態では、転写用治具10を支持するアーム部4を有する転写ロボットを備えてなる転写システム20が構成されているので、この転写ロボットによって、転写用治具10を支持する角度(傾斜)を自由に設定できるようになっている。従って、被転写体Wの被転写面WSの形状や配置に合わせて、被転写体Wを保持する転写用治具10を水槽11内に水没させたり上昇させたりする角度を自由に設定することができ、より精度の高い転写を行うことができるとともに、作業性が向上される。また、この転写ロボットを制御部に電気的に接続して制御可能に構成することによって、さらなる作業性の向上が期待できる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本実施形態では、保持部材2のクランプ部2bを対向配置される平板状及び波状の夫々のクリップを有するとともに、被転写体Wの被保持部WHをこれらクリップで両側から挟みこんで拘持するようにして形成するとしたが、これに限らず、クランプ部2bを捻りバネを用いた構成や、それ以外の構成としても構わない。また、フレーム部3aの形状も平面視矩形枠状もしくは平面視梯子状に限定されることなく、保持部材2の形状や個数に応じた任意の形状で構わない。
また、本実施形態において、付着部材3の網部3bは、フレーム部3aの上面全体を覆うようにして張り巡らされるとして説明したが、これに限らず、フレーム部3aの下面全体を覆うようにして配設しても構わない。また付着部材3の網部3bは、フレーム部3aの上面或いは下面全体を覆う必要はなく、前述の通り、付着部材3の網部3bの水面に投影される垂直投影面積が、被転写体Wの被転写面WSの垂直投影面積以上となるように設定されていればよい。
すなわち、例えば、付着部材3の上面或いは下面を部分的に覆うようにして網部3bを間隔を開けて複数設けるとともに、これら網部3bが、該付着部材3に垂設される夫々の被転写体Wの被転写面WSの位置に各々対応するように配置されていることとしても構わない。
或いは、比較的小さな付着部材3を用い、該付着部材3を間隔を開けて複数配設するとともに夫々の付着部材3に被転写体Wを1つずつ垂設して、夫々の付着部材3の網部3bが各々の被転写体Wの被転写面WSに対応するようにしてもよい。
また、付着部材3は、その網部3bを脱着可能なように形成しても構わない。すなわち、付着部材3は、例えば、保持部材2を支持するフレーム3aと、該フレーム3aと略同形状に形成されるとともに網部3bを張り巡らせてなる他のフレームと、を備え、これら両フレームを脱着可能に形成してもよい。この場合、網部3bが劣化もしくは経時による網目詰まり等を生じた際の該網部3bの交換作業が容易となるので好ましい。また両フレームの脱着方式はスライド方式やねじ止め方式等、任意の固定可能な方式であれば構わない。
また、本実施形態では、網部3bは、平網状に形成されており、その網の夫々の正方形状の升目を形成するようにして隣り合う素線同士の内側部分の幅寸法(目開き)が、1mm以上10mm以下の範囲に設定されているとして説明したが、網部3bの網形状や目開きはこれに限定されるものではなく、例えば三角形状の網目や菱形状の網目を有するものを用いても構わず、また、網部3bとして網状のものを用いずに、細かいスリット状や複数の丸孔を有するパンチング状のシート等を用いても構わない。
また、本実施形態では、被転写体Wを水槽11の水面に配置される水圧転写フィルム12に対して傾斜させた状態で水中に沈めていくとともに、上昇させる際にも傾斜させた状態で引き上げることとして説明したが、これに限られず、被転写体Wの被転写面WSを水圧転写フィルム12に対して平行(すなわち水平)な状態として水中に沈めたり、水中から引き上げたりしても構わない。ただし、水槽11の水から受ける抵抗を鑑みると、本実施形態のように傾斜させてこれらを行うことが好ましい。また、その傾斜については、被転写体W及び被転写面WSに合わせて随時設定されることがより好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1として、付着部材3の網部3bが正方形状の升目を有する平網により形成されるとともに、その仕様が、ステンレス製、18メッシュ、目開き1.12mmのものを用意した。そして、この網部3bを用いて、本実施形態における水圧転写体の製造を行い、付着部材3による水中の残滓の回収状況、被転写体Wの被転写面WSへの残滓の付着及び付着部材3に付着した残滓の洗浄による除去の状況を確認した。結果を表1として示す。
[実施例2]
実施例2として、付着部材3の網部3bが正方形状の升目を有する平網により形成されるとともに、その仕様が、ステンレス製、10メッシュ、目開き2.11mmのものを用意した。それ以外は、実施例1と同様の条件として確認を行った。
[実施例3]
実施例3として、付着部材3の網部3bが正方形状の升目を有するラッセル網により形成されるとともに、その仕様が、ポリエチレン製、目開き2mmのものを用意した。それ以外は、実施例1と同様の条件として確認を行った。
[実施例4]
実施例4として、付着部材3の網部3bが正方形状の升目を有するラッセル網により形成されるとともに、その仕様が、ポリエチレン製、目開き9mmのものを用意した。それ以外は、実施例1と同様の条件として確認を行った。
[比較例1]
また、比較例1として、付着部材3の網部3bが不織布により形成されるとともに、その仕様が、日本バイリーン株式会社製浄水器用フィルターOR−125(ポリオレフィン製、厚さ3.3mm)、通気性92cm/S(フラジール法、ΔP=125Pa、12.7mmHO)、目開き1mm未満(不織布のため目開きの数値化不可能)のものを用意した。それ以外は、実施例1と同様の条件として確認を行った。
[比較例2]
比較例2として、付着部材3の網部3bが正方形状の升目を有する平網により形成されるとともに、その仕様が、ステンレス製、24メッシュ、目開き0.66mmのものを用意した。それ以外は、実施例1と同様の条件として確認を行った。
Figure 2009148903
表1に示す通り、実施例1〜4においては、転写工程の際、付着部材3によって水槽11内の水圧転写フィルム12の残滓を良好に付着させて回収することができ、水槽11内の水質が確保された。また、洗浄工程の際には、付着部材3に付着された残滓が洗浄により充分に除去されることがわかった。
一方、比較例1では、転写工程において水槽11内の残滓を良好に回収することはできるものの、洗浄工程の際、洗浄ノズル5の水洗いのみでは付着部材3に付着した残滓を充分に洗い流すことができなかった。また、この付着部材3を次の水圧転写体の製造に繰り返し使用したところ、3回目のサイクルにおいて、前記残滓により水槽11内の水質が悪化させられるという問題が発生した。
また、比較例2も、転写工程において水槽11内の残滓を良好に回収することはできるものの、やはり洗浄工程の際、洗浄ノズル5の水洗いのみでは付着部材3に付着した残滓を充分に洗い流すことができなかった。そして、付着部材3に残存した残滓が乾燥された状態において、これら残滓が簡単に脱落しやすい状態であった。
本発明の一実施形態に係る保持部材を示す側面図である。 本発明の一実施形態に係る保持部材を示す正面図である。 本発明の一実施形態に係る転写用治具を示す側面図である。 図3の転写用治具を下方より見た状態を示す下面図である。 本発明の一実施形態に係る水圧転写体の製造における転写工程を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る水圧転写体の製造における転写工程を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る水圧転写体の製造における転写工程を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る水圧転写体の製造における転写工程を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る水圧転写体の製造における洗浄工程以降の工程を示す説明図である。
符号の説明
2 保持部材
3 付着部材
3b 網部
10 転写用治具
11 水槽
12 水圧転写フィルム
S 残滓除去部分(付着部材の垂直投影面積)
W 被転写体
WS 被転写面

Claims (5)

  1. 水溶性または水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと、有機溶剤に溶解可能な転写層と、を有する水圧転写フィルムを水槽の水面に浮かべた状態で、被転写体の被転写面を前記水圧転写フィルムに押し付け、前記転写層を前記被転写体に転写させる水圧転写体の製造方法であって、
    前記被転写体の前記被転写面を前記水圧転写フィルムに押し付ける方向の、該被転写面の後方側に、前記転写に使用されなかった該水圧転写フィルムの残滓を付着させるための付着部材を設けておき、
    前記転写とともに、前記付着部材に前記残滓を付着させた後、
    前記被転写体の前記被転写面側から前記付着部材側へ向け洗浄を行い、
    前記被転写体に転写された前記水圧転写フィルムの前記支持体フィルムを洗い流すとともに、前記付着部材に付着した前記残滓を除去することを特徴とする水圧転写体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の水圧転写体の製造方法であって、
    前記被転写体を保持して前記水圧転写フィルムに押し付け転写するための転写用治具を設けておき、
    前記転写用治具に前記付着部材を設けておくとともに、該付着部材の前記残滓が付着される部分の垂直投影面積を、前記被転写体の前記被転写面の垂直投影面積以上となるように形成し、
    前記転写の際、水中に沈めた前記被転写体を前記水槽から引き上げるにあたり、前記付着部材を通過させた残滓除去部分を通すようにして、後方の該被転写体の前記被転写面を引き上げることを特徴とする水圧転写体の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の水圧転写体の製造方法であって、
    前記付着部材を網目状に形成するとともに、その網目の大きさを、目開きで1mm以上10mm以下に設定することを特徴とする水圧転写体の製造方法。
  4. 水溶性または水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと、有機溶剤に溶解可能な転写層と、を有する水圧転写フィルムを水槽の水面に浮かべた状態で、被転写体の被転写面を前記水圧転写フィルムに押し付け、前記転写層を前記被転写体に転写させる水圧転写体の製造に用いられる転写用治具であって、
    前記被転写体を保持する保持部材と、
    前記転写に使用されなかった前記水圧転写フィルムの残滓を付着させるための付着部材と、を有し、
    前記付着部材が、前記被転写体の前記被転写面を前記水圧転写フィルムに押し付ける方向の、該被転写面の後方側に配置されるとともに、前記残滓を付着させる部分の垂直投影面積が、前記被転写体の前記被転写面の垂直投影面積以上となるように形成されていることを特徴とする転写用治具。
  5. 請求項4に記載の転写用治具であって、
    前記付着部材が、網目状に形成されているとともに、その網目の大きさが、目開きで1mm以上10mm以下に設定されていることを特徴とする転写用治具。

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2012147530A1 (ja) * 2011-04-27 2012-11-01 株式会社タイカ 液圧転写方法
JP2013036083A (ja) * 2011-08-08 2013-02-21 Kakihara Kogyo Kk めっき補助具及びこれを用いためっき方法

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