JP4350581B2 - 転写方法 - Google Patents

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Description

本発明は、各種の成形体等の表面に対して、液圧を利用して塗膜層を転写形成する転写方法に関するものである。
従来の転写方法の技術としては、水溶性フィルムに塗膜層が形成されている転写シートを水面に浮かべて水溶性フィルムを溶解または膨潤する工程と、転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程と、被転写体を転写シートの上から転写槽に浸漬して転写シートを転写する工程と、水溶性フィルムを水洗除去する工程と、塗膜を転写した被転写体を乾燥する工程と、被転写体に転写した塗膜を硬化する工程とからなる液圧による転写方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、活性剤の塗布方法として、複数個の噴出口よりなるノズルから、0.05〜0.2MPaの空気圧をかけて、活性剤を刷毛状に垂れ流しつつ、ノズルを転写シート上を移動させることで、活性剤を転写シートに塗布する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このような活性剤の塗布方法は、スプレーノズルや超音波ノズルなどの活性剤を霧状にして塗布する方法に比較して、塗膜層への活性剤の浸透性が高い。このため、塗膜層の厚み方向にも、均一に溶解が行なわれ、写像性の高い転写塗膜が得られる。
また、活性剤塗布後に、塗膜層が溶解して、水面で転写シートが拡がることによって発生する絵柄の切れや歪に対しては、水面に浮かべた転写シートの外周に枠体を設けることで、転写シートの拡がりを抑制する方法が提案されている。
特開平1−22378号公報 特開2003−236422号公報
しかしながら、このような従来の構成の液圧による転写方法では、水溶性フィルムを溶解または膨潤する工程で、転写シートが長時間曝露状態で放置されるため、その間に埃や塵が転写シート上に堆積してブツ不良の原因となる。また、転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程においても、転写シートが長時間曝露状態で放置されるため、その間に埃や塵が転写シート上に堆積し、ブツ不良の原因となる。このブツ不良の抑制方法として、大規模なクリーンルーム内で転写作業することも考えられるが、建設費用や管理維持の点で課題となる。
また、活性剤を塗布後に転写シート上に、クリーンエアー等をダウンブローすると、転写シート表面の活性剤が揮発して転写シート表面が乾燥状態になり、転写塗膜の密着性と写像性が低下する。さらに、未硬化状態の塗膜層は、弾性率が低く、水溶性フィルムを洗浄除去する際にシャワーノズルを用いると、噴出量のバラツキによって発生する高水圧部分で塗膜層の表面が損傷し、写像性低下の原因となるという課題があった。
さらに、前述した従来の構成による活性剤の塗布方法では、活性剤への付加圧力が高く、転写シートが部分的に破断するため、塗装法などにより表面保護層を修復する必要がある。また、従来の構成による絵柄の切れや歪の抑制方法では、転写シートの外周に設けた枠体に転写シートが付着するため、連続使用に際しては、毎回、枠体のメンテナンス作業が必要となるという課題があった。
本発明は、前記従来技術の課題を解決することに指向するものであり、転写塗膜の密着性および写像性が高く、ブツ不良、表面の破断、絵柄の切れ、絵柄の歪などの外観不良のない、意匠性の高い塗膜を得ることができ、塗装法などによる表面保護層の修復工程がなく、また転写シートを活性化する工程で枠体を必要としない液圧による転写方法を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載される転写方法は、基材層(水溶性または水膨潤性フィルム)と塗膜層からなる転写シートを転写槽の水面に浮かべて膨潤する工程と、転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程と、被転写体を転写シートの上から転写槽に浸漬して転写シートを転写する工程と、基材層を水洗除去する工程と、塗膜を転写した被転写体を乾燥する工程と、被転写体に転写した塗膜を硬化する工程とからなる転写方法であって、転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程において、ノズルを複数個備えるノズルヘッドから、0.008〜0.040MPaの圧力で圧送された活性剤を吐出し、ノズルヘッドを転写シート上で移動させて転写シートに活性剤を塗布する工程を含むことによって、表面破断のない液圧による転写塗膜が、塗装法などによる修正工程なしで得ることができる。
また、請求項に記載される転写方法は、転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程において、転写シートに活性剤を塗布した後で、転写シートの上方に覆いを配置することによって、埃や塵が転写シート上に堆積することを抑制でき、ブツ不良を防止し、また活性剤の揮発を抑え転写シート表面の乾燥が抑制されるため、転写シートを被転写体に転写する工程も、転写シート表面の高い活性状態が保たれ、転写シートと被転写体との高い密着強度を得ると共に、被転写体表面に写像性の高い塗膜を形成できる。
また、請求項に記載される転写方法は、転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程において、活性剤を転写シートの外周端を除いた内部に塗布することによって、活性剤の塗布後に塗膜層が溶解して、水面で転写シートが拡がる現象を抑制でき、転写シートの活性化工程で枠体を使用せず、絵柄の切れや歪の発生を抑制できる。
また、請求項に記載される転写方法は、転写シートに活性剤を塗布する工程において、孔の長さが0.05mm以上、0.3mm以下、孔直径が0.02mm以上、0.15mm以下のノズルが複数個設けられるノズルヘッドを用いて塗布する。
以上説明したように、本発明によれば、転写塗膜の密着性および写像性が高く、ブツ不良、表面の破断、絵柄の切れ、絵柄の歪などの外観不良のない、意匠性の高い塗膜を得ることができ、塗装法などによる表面保護層の修復工程がなく、転写シートを活性化する工程で枠体を必要とせずに、絵柄の切れや歪の発生を抑制できるという効果を奏する。
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
まず、本発明の第1の液圧による転写方法は、水溶性または水膨潤性フィルムと水溶性または水膨潤性フィルムに形成されている塗膜層からなる転写シートを転写槽の水面に浮かべ、水溶性または水膨潤性フィルムを溶解または膨潤する工程と、転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程と、被転写体を転写シートの上から転写槽に浸漬して転写シートを転写する工程と、水溶性または水膨潤性フィルムを水洗除去する工程と、塗膜を転写した被転写体を乾燥する工程と、被転写体に転写した塗膜を硬化する工程からなる転写方法であって、転写シートを転写槽の水面に浮かべ、水溶性または水膨潤性フィルムを溶解または膨潤する工程において、転写シートを転写槽の水面に浮かべた後で、転写シートの上方に覆いを配置することを特徴とする。
この覆いを配置する方法として、手作業や水平ロボットなどにより覆いを移動する方法のほかに、あらかじめ転写槽上方の任意の位置に覆いを設けておき、転写シートを転写槽の水面に浮かべた後で、水流などによって覆いの下方に移動させても良い。覆いの形状は、特に限定されるものではなく板状、フィルム状、ブロック状のいずれでも良い。また、覆いに使用する材質も、特に限定されるものではなく金属、樹脂、セラミックス、紙やそれらを少なくとも1種類は含む複合体でも良い。転写シートと覆いとの距離は、3mmより小さくなると転写シートと覆いとの接触が懸念され、また、50mmよりも大きくなると、ブツ不良防止の効果が低減するため、3〜50mmが好ましい。
また、第1の転写方法の転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程は、転写シートに活性剤を塗布した後で、転写シートの上方に覆いを配置することを特徴とする。この覆いを配置する方法は、覆いの形状、材質は、転写シートを転写槽の水面に浮かべ、水溶性または水膨潤性フィルムを溶解または膨潤する工程と同一であっても、同一でなくてもかまわない。そして、転写シートと覆いとの距離は、3mmより小さくなると転写シートと覆いとの接触が懸念され、また、50mmよりも大きくなると、ブツ不良防止の効果が低減する。また、10mmよりも大きくなると、溶剤の揮発を抑制する効果が低減するため、転写シートと覆いとの距離は、3〜50mmが好ましく、3〜10mmがさらに好ましい。
また、第1の転写方法では、水溶性または水膨潤性フィルムを水洗除去する工程において、被転写体の表面に当たる水の運動エネルギーが0.68kg・m/s以下であることを特徴とする。被転写体の表面に当たる水の運動エネルギーが0.68kg・m/sよりも大きくなると、水圧による塗膜層表面の損傷が発生し、写像性が低下する。
また、第1の転写方法の水溶性または水膨潤性フィルムを水洗除去する工程は、スリットノズルより水を噴出することを特徴とする。スリットノズルのスリット幅は、0.1〜1.0mmが好ましい。スリット幅が0.1mmよりも小さくなると、水の噴出量バラツキが発生しやすくなり、1.0mmより大きくなると、水量が大きくなり、塗膜表面を損傷しやすくなる。
また、第1の転写方法の水溶性または水膨潤性フィルムに形成されている塗膜層は、着色層と表面保護層からなることが好ましい。このような構成にすることで、着色層と表面保護層が一括で転写でき、表面保護層を形成するための塗装工程が不要となる。また、転写シートを転写槽の水面に浮かべ、水溶性または水膨潤性フィルムを溶解または膨潤する工程で、転写シートの上方に覆いを配置することで、ブツ不良を防止している。このため、塗装工程なしで被転写体表面に着色層と表面保護層が形成できる。
また、第1の転写方法の水溶性または水膨潤性フィルムに形成されている塗膜層が電離放射線硬化型樹脂からなることが好ましい。一般的に熱硬化型樹脂では、硬化温度が塗膜の軟化温度以上に設定されており、硬化工程で塗膜が軟化するため、塗膜表面に埃や塵が付着し、ブツ不良が発生する。これに対して電離放射線硬化型樹脂では、硬化工程での塗膜の軟化がほとんどなく、硬化時間も短時間であるため、ブツ不良は発生しにくい。
次に、本発明の第2の液圧による転写方法は、水溶性または水膨潤性フィルムと水溶性または水膨潤性フィルムに形成されている塗膜層からなる転写シートを転写槽の水面に浮かべ、水溶性または水膨潤性フィルムを溶解または膨潤する工程と、転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程と、被転写体を転写シートの上から転写槽に浸漬して転写シートを転写する工程と、水溶性または水膨潤性フィルムを水洗除去する工程と、塗膜を転写した被転写体を乾燥する工程と、被転写体に転写した塗膜を硬化する工程とからなる転写方法であって、転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程において、孔の長さが0.05〜0.3mm、孔直径が0.02〜0.15mmの複数個の噴出口よりなるノズルから、0.008〜0.040MPaの空気圧をかけて、活性剤を刷毛状に垂れ流しつつ、ノズルを転写シート上を移動させることを特徴とする。
転写シートを活性化する工程において、孔の長さが0.05mmよりも小さくなると、活性剤の垂れが発生し、0.3mmよりも大きくなると、噴出量バラツキが大きくなる。また、孔直径が0.02mmよりも小さくなると、噴出量バラツキが大きくなり、0.15mmよりも大きいと、活性剤の垂れが発生する。また、空気圧が0.008MPaより小さいと噴出量バラツキが大きくなり、0.040MPaより大きいと、塗布圧力による塗膜表面の損傷が発生しやすくなる。
また、第2の転写方法では、転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程において、活性剤は転写シートの外周端を除いた内部に塗布することを特徴とする。活性剤が転写シートの外周端を除いた内部に塗布する方法としては、転写シート上を移動するノズルの位置と活性剤の噴出タイミングを制御する方法が好ましい。このような方法にすることで、シャッターや遮蔽板なしで、転写シートの外周端における、活性剤の未塗布状態が実現できる。
また、ノズルヘッドの下部にシャッターを設けて、噴出された活性剤の遮断タイミングを制御する方法、または活性剤の塗布前に転写シートの外周端の上方に遮蔽板を設ける方法によっても、転写シートの外周端における、活性剤の未塗布状態が実現できる。
活性剤を塗布しない外周端の幅については、幅が狭すぎると、活性剤の塗布後に、塗膜層が溶解して、水面で転写シートが拡がる現象を抑制する効果が小さくなるため、活性剤を塗布しない外周端の幅は5mm以上が好ましい。
また、第2の転写方法においては、活性化する工程の活性剤を塗布する方法以外は、前述した第1の転写方法において説明した各工程を同様に行っている。
図1は本発明の実施の形態1における液圧による転写方法で形成した転写シートの断面図である。図1に示すように転写シート1は、厚さ40μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムからなる転写シート基材2の片面に、アクリルウレタン系オリゴマー100重量部とアクリル系モノマー15重量部とイソプロピルアルコール20重量部との混合物によるコーティング剤をロールコート法によって塗工し、80℃の熱風で乾燥して、電離放射線硬化型樹脂による約30μmの表面保護層3を形成した。
次いで、表面保護層3の表面に、抽象柄の着色層4を印刷することにより、塗膜層5を形成し、この塗膜層5が電離放射線硬化型樹脂からなる転写シート1を得た。
図2は本実施の形態1における液圧による転写方法の工程を示す断面図である。図2(a)〜(k)を参照しながら液圧による転写方法の工程を説明する。
図2(a)は、水温30℃の水10を満たした転写槽11を示しており、図2(b)に示すように転写槽11の水面に、転写シート1における着色層4が上面となるようにして浮かべた。
その直後に図2(c)に示すように、板厚約1mmのアルミニウム板(以下、アルミ板という)12を転写槽11の枠の上に設置することで、転写シート1の上方を覆った。なお、このときのアルミ板12と転写シート1の距離が、5〜10mmになるように、転写槽11の水10の量は、あらかじめ調整しておいた。
転写シート1を水面に浮かべ、120秒経過後に、図2(d)に示すようにアルミ板12を除去し、次に図2(e)に示すように、スプレーノズル13から、酢酸ブチルとイソプロピルアルコールとブチルカルビトールアセテートとエチルセロソルブとトルエンとの混合溶剤からなる活性剤14を噴出し、転写シート1の着色層4に約28g/mの活性剤14を塗布した。
活性剤14を塗布した直後に、図2(f)に示すように、板厚約1mmのアルミ板12を覆いとして転写槽11の枠の上に設置することで、転写シート1の上方を覆った。なお、図2(c)と同様にアルミ板12と転写シート1の距離が、5〜10mmになるように、転写槽11の水10の量は、あらかじめ調整しておいた。
次いで、図2(g)に示すように、被転写物である板厚5mmのABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)樹脂板15をアルミ板12の上方に配置し、5mm/秒の速度で降下させた。図2(h)に示すように、ABS樹脂板15とアルミ板12が接触しないように、ABS樹脂板15とアルミ板12の距離が10mmになったときにアルミ板12を除去した。図2(i)に示すように、さらにABS樹脂板15を降下させ、転写シート1をABS樹脂板15の表面に延展、密着させた。
次いで、水中から、表面に転写シート1が延展、密着しているABS樹脂板15を引き出し、図2(j)に示すように、スリット幅0.6mm、長さ200mmのスリットノズル16より25℃の清水17を噴出し、転写シート1におけるポリビニルアルコール樹脂フィルムからなる転写シート基材2を液圧により水洗除去した。
(表1)は、スリットノズル16から噴出する清水17の流水量と、スリットノズル16とABS樹脂板15の距離を任意に設定したときの、ABS樹脂板15の表面に当たる清水17の運動エネルギーの計算値と、水圧による塗膜表面の損傷状態の観察結果である。
Figure 0004350581
なお、運動エネルギーは計算式(数1)
Figure 0004350581
m:1秒間の噴出流水量(kg/s)
v:流速(m/s)
g:重力加速度(m/s
h:スリットノズルとABS樹脂板の距離(m)
により算出した。
また、流速vは、ノズル開口面積:0.6×200×10−6 (m)、および1秒間の噴出体積:m×10−3 (m/s)から以下の計算式(数2)
Figure 0004350581
により算出した。
清水17の運動エネルギーが、0.68kg・m/sより大きくなると、塗膜の表面に損傷が発生し写像性が低下したため、0.68kg・m/s以下の条件で洗浄したサンプルを次工程に用いた。
洗浄後に乾燥することにより、塗膜層が電離放射線硬化型樹脂からなる液圧転写板18を得た。
次いで、出力80mW/cmのオゾン有タイプの高圧水銀灯の下を、液圧転写板18における電離放射線硬化型樹脂の塗膜層が照射面となるようにして通過させ、10秒間の電離放射線の照射を行ない、塗膜層を硬化させた。
得られた液圧転写板18の表面の写像性をスガ試験機株式会社製の写像性測定機ICM−1T(光学クシ1mm幅、45°反射)で測定した。今回測定した写像性測定機では、写像性の測定結果が0から100までの数値で表示され、写像性が高いほどこの数値が大きくなる。測定結果の数値は63を示した。
また、大きさ150×200mmの液圧転写板18の10枚について、ブツ不良の発生状況について確認した結果、ブツ不良の発生はなかった。
ここで、本実施の形態1の液圧による転写方法に対する比較例として、図3に示す従来の転写方法を参照しながら説明する。図3(a)〜(g)は従来の液圧による転写方法を示す工程の断面図である。
図3(a)は、水温30℃の水10を満たした転写槽11を示しており、図3(b)に示すように転写槽11の水面に、転写シート1における着色層4が上面となるようにして浮かべた。
転写シート1を水面に浮かべ、120秒経過後に、図3(c)に示すように、スプレーノズル13から、酢酸ブチルとイソプロピルアルコールとブチルカルビトールアセテートとエチルセロソルブとトルエンとの混合溶剤からなる活性剤14を噴出し、転写シート1の着色層4に約28g/mの活性剤を塗布した。
次いで、図3(d),(e)に示すように、被転写物である板厚5mmのABS樹脂板15を転写シート1の上方に配置し、5mm/秒の速度で降下させることにより、転写シート1をABS樹脂板15の表面に延展、密着させた。
次いで、水中から、表面に転写シート1が延展、密着しているABS樹脂板15を引き出し、図3(f)に示すように、シャワーノズル19により25℃の清水17を噴出し、転写シート1におけるポリビニルアルコール樹脂フィルムからなる転写シート基材2を除去した。
さらに乾燥することにより、塗膜層が電離放射線硬化型樹脂からなる液圧転写板18を得た。
次いで、出力80mW/cmのオゾン有タイプの高圧水銀灯の下を、液圧転写板18における電離放射線硬化型樹脂の塗膜層が照射面となるようにして通過させ、10秒間の電離放射線の照射を行ない、塗膜層を硬化させた。
得られた液圧転写板18の表面の写像性をスガ試験機株式会社製の写像性測定機ICM−1T(光学クシ1mm幅、45°反射)で測定した結果、数値は32を示した。
また、大きさ150×200mmの液圧転写板18の10枚について、ブツ不良の発生状況について確認した結果、25点のブツ不良が発生していた。
次に、本発明の実施の形態2において、前述の実施の形態1と同様の転写シートを用い、また液圧による転写方法については、活性剤の塗布方法以外は、前述の実施の形態1と同様であるため、ここでは活性剤の塗布方法以外の工程については説明を省略する。図4は本実施の形態2における転写方法で活性剤の塗布方法を示す断面図であり、活性剤の塗布方法について、図4を参照しながら説明する。
図4において、21は内面凹部22につながった貫通孔23を有するノズルブロック、24は複数個の噴出口25が開けられたノズルプレート、26はノズルブロック21の内面凹部22とノズルプレート24の複数個の噴出口25が対向するようにノズルブロック21とノズルプレート24を重ね合わせ固着したとき、ノズルブロック21とノズルプレート24の外周部間に介在させるパッキングである。なお、内面凹部22には、活性剤14が充填されている。
水温30℃の水10を満たした転写槽11の水面に着色層4が上面となるようにして転写シート1が浮かべてある。
ノズルブロック21の内面凹部22に充填されている活性剤14に空気圧をかけて、複数個の噴出口25から活性剤14を刷毛状に垂れ流しつつ、ノズルブロック21を転写シート1上で移動させることにより、30g/mの活性剤14を転写シート1上に塗布した。
ノズルプレート24の孔の長さ、噴出口25の孔直径と活性剤14に付加する空気圧を変動させて、活性剤の液垂れの有無、活性剤14の噴出量バラツキの有無および塗膜表面の損傷の有無を目視観察した結果を(表2)および(表3)に示した。
Figure 0004350581
(表2)は、活性剤14に付加する空気圧を一定にして(0.03MPa一定)、孔の長さと噴出口25の孔直径を変動させたときの結果である。孔の長さが0.05mmよりも小さくなると、活性剤の液垂れが発生し、0.3mmよりも大きくなると、噴出量バラツキが大きくなった。また、孔直径が0.02mmより小さくなると、噴出量バラツキが大きくなり、0.15mmよりも大きいと、活性剤の液垂れが発生した。
Figure 0004350581
(表3)は、噴出口25の孔直径を一定にして(φ:0.07mm一定)、孔の長さと活性剤14に付加する空気圧を変動させたときの結果である。空気圧が0.008MPaより小さいと噴出量バラツキが発生し、0.02MPaより大きいと、塗布圧力による塗膜表面の損傷が発生した。
孔の長さが0.1mm、孔直径が0.07mmのノズルプレート24を用いて、活性剤14に0.03MPaの空気圧をかけて、液圧転写板18を作製した。その際、転写シート1の外周端の10mm以上に活性剤14が塗布されないよう、活性剤14の塗布タイミングを制御した。
この液圧による転写方法での転写板表面の写像性を、スガ試験機株式会社製の写像性測定機ICM−1T(光学クシ1mm幅、45°反射)で測定した結果、数値は69を示した。
また、大きさ150×200mmの液圧転写板18の10枚について、ブツ不良および塗膜層の表面破断および絵柄の切れや歪みの発生状況を確認した結果、ブツ不良および塗膜層の表面破断および絵柄の切れや歪みの発生はなかった。
本発明に係る転写方法は、転写塗膜の密着性および写像性が高く、ブツ不良、表面の破断、絵柄の切れ、絵柄の歪などの外観不良のない、意匠性の高い塗膜を得られ、各種の成形体等の表面に対して、塗膜層を転写形成する方法として有用である。
本発明の実施の形態1における液圧による転写方法で形成した転写シートの断面図 本実施の形態1における液圧による転写方法の工程(a)〜(k)を示す断面図 本実施の形態1の比較例である従来の液圧による転写方法の工程(a)〜(g)を示す断面図 本発明の実施の形態2における転写方法で活性剤の塗布方法を示す断面図
符号の説明
1 転写シート
2 転写シート基材
3 表面保護層
4 着色層
10 水
11 転写槽
12 アルミ板
13 スプレーノズル
14 活性剤
15 ABS樹脂板
16 スリットノズル
17 清水
18 液圧転写板
19 シャワーノズル
21 ノズルブロック
22 内面凹部
23 貫通孔
24 ノズルプレート
25 噴出口
26 パッキング

Claims (4)

  1. 基材層と塗膜層からなる転写シートを転写槽の水面に浮かべて膨潤する工程と、前記転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程と、被転写体を転写シートの上から転写槽に浸漬して転写シートを転写する工程と、前記基材層を水洗除去する工程と、前記塗膜を転写した被転写体を乾燥する工程と、被転写体に転写した塗膜を硬化する工程とからなる転写方法であって、
    前記転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程において、ノズルを複数個備えるノズルヘッドから、0.008〜0.040MPaの圧力で圧送された前記活性剤を吐出し、前記ノズルヘッドを転写シート上で移動させて前記転写シートに活性剤を塗布する工程を含むことを特徴とする転写方法。
  2. 記転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程において、前記転写シートに活性剤を塗布した後で、前記転写シートの上方に覆いを配置することを特徴とする請求項1記載の転写方法。
  3. 前記転写シートに活性剤を塗布して活性化する工程において、前記活性剤を前記転写シートの外周端を除いた内部に塗布することを特徴とする請求項1または2記載の転写方法。
  4. 前記転写シートに活性剤を塗布する工程において、孔の長さが0.05mm以上、0.3mm以下、孔直径が0.02mm以上、0.15mm以下のノズルが複数個設けられるノズルヘッドを用いて塗布することを特徴とする請求項記載の転写方法。
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