JP2004322585A - 水圧転写体の製造方法およびその設備 - Google Patents
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Abstract
【課題】被転写体の表面を傷つけることなくその表面を洗浄する水圧転写体の製造方法およびその設備を提供すること。
【解決手段】水圧転写体の製造設備であって、洗浄装置30は、水圧転写装置から水圧転写フィルム2が付着したまま移設される被転写体3を収容して、洗浄用の水4と接触させる洗浄用水槽31と、洗浄用水槽31内に収容された被転写体3と接触させる水流を洗浄用水槽31内に形成する水流発生手段31Aとを有することを特徴とする。
【選択図】 図4
【解決手段】水圧転写体の製造設備であって、洗浄装置30は、水圧転写装置から水圧転写フィルム2が付着したまま移設される被転写体3を収容して、洗浄用の水4と接触させる洗浄用水槽31と、洗浄用水槽31内に収容された被転写体3と接触させる水流を洗浄用水槽31内に形成する水流発生手段31Aとを有することを特徴とする。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、水圧転写体の製造方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
水圧転写体の製造装置は、水圧転写装置に設けられ水圧転写フィルムを水面上に浮かべた水槽内に曲面等の3次元形状面を表面に有する被転写体を浸水あるいは水没させ、水圧転写フィルムを被転写体の転写部位に水圧によって付着させた後、その被転写体の表面を洗浄する装置である。
ここで、水圧転写フィルムは、水溶性あるいは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと、その支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性物質からなる転写層とを有している。支持体フィルムとしては、例えばPVA(ポリビニルアルコール)等があり、また、転写層としては、例えば印刷インキ皮膜または塗装皮膜等がある。
【0003】
また、水圧転写フィルムにおいて、その転写層が、活性エネルギー線照射あるいは加熱の少なくとも一種で硬化可能な硬化性樹脂層を有する水圧転写フィルムがあり、その水圧転写フィルムについては、特にトップコート付水圧転写フィルムと呼んでいる。ここで、硬化性樹脂層としては、例えば下記の(1)〜(6)が挙げられる。
(1)活性エネルギー線硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(2)活性エネルギー線硬化性樹脂と非重合性の熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(3)熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(4)熱硬化性樹脂と非重合性の熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(5)活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(6)活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂および非重合性の熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
【0004】
この水圧転写体の製造装置を用いて、水圧転写フィルムを付着された被転写体の表面を洗浄する場合、高圧の温水スプレー等の噴霧手段を用いて、その温水の噴き付け力によって、被転写体の表面に残存するPVAを剥離させて除去している。
従来の水圧転写体の製造方法として、例えば特許文献1においては、水圧転写用シートにおける基材フィルム、すなわち、水溶性もしくは水膨潤性を有し、かつ吸水して膨潤延展する性質を有する基材フィルムを、水を用いてシャワー洗浄するのが最も好ましい方法であり、これにより、被転写体の表面に付着した基材フィルムを完全に除去し得るとともに、転写の際に生ずる汚れも洗浄し得るとされている。また、このときに利用する水の温度は、利用した転写用シートにおける基材フィルムの材質等によっても異なるが、一般的には摂氏15〜60度程度が適当であり、また洗浄時間は1〜10分程度で十分であるとされている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−39998号公報(第5頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の水圧転写体の製造方法においては、高圧の温水スプレー等の噴霧手段を用いた場合、その噴霧手段から噴射された温水の噴き付け力によって、被転写体の表面に付着された水圧転写フィルムに残存するPVAを剥離させて除去するのみならず、被転写体に転写された転写層の表面を傷つけてしまうとともに、その表面に洗浄した形跡が残存してしまうという問題があった。特に、この水圧転写フィルムにトップコート層を含む場合にはこの問題が顕著であり、高圧の温水スプレー等の噴霧手段から噴射された温水の噴き付け力によって、被転写体に転写されたトップコート層が荒らされ、そのトップコート層の光沢を著しく低下させてしまうということが問題となっていた。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、被転写体の表面を傷つけることなくその表面を洗浄する水圧転写体の製造方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明は、水圧転写体の製造方法であって、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性の転写層とを有する水圧転写フィルムを前記転写層を上にして水に浮かべ、前記水圧転写フィルムに被転写体を押し付け、有機溶剤によって活性化させておいた前記転写層を前記被転写体に転写した後、前記水圧転写フィルムが付着したままの前記被転写体に、水流を水中で当てて、前記水圧転写フィルムから前記支持体フィルムを除去することを特徴とする。
【0009】
また、水圧転写体の製造設備であって、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性の転写層とを有する水圧転写フィルムを前記転写層を上にして水に浮かべる水圧転写用水槽を備え、該水圧転写用水槽内で前記水圧転写フィルムに被転写体を押し付けて前記被転写体に前記水圧転写フィルムを転写する水圧転写装置と、前記転写層の転写が完了した前記被転写体を水洗して前記被転写体に付着している前記水圧転写フィルムから前記支持体フィルムを除去する洗浄装置とを有し、前記洗浄装置が、前記水圧転写装置から前記水圧転写フィルムが付着したまま移設される前記被転写体を収容して、洗浄用の水と接触させる洗浄用水槽と、該洗浄用水槽内に収容された前記被転写体と接触させる水流を前記洗浄用水槽内に形成する水流発生手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、水圧転写フィルムを転写層を上にして水に浮かべ、水圧転写フィルムに被転写体を押し付け、有機溶剤によって活性化させておいた転写層を被転写体に転写した後、水圧転写フィルムが付着したままの被転写体に、摂氏25〜40度の水流を水中で当てて、水圧転写フィルムから支持体フィルムを除去することにより、支持体フィルムに対して過剰な水圧をかけることなく、被転写体に付着された支持体フィルムを洗い流すため、被転写体に転写された転写層を傷つけることがない。また、設定された水温については、それらの範囲より高温あるいは低温である場合、水圧転写フィルムから支持体フィルムを除去しても、被転写体に転写された転写層に十分な光沢が得られず、また、その転写層に対して欠陥を生じやすい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
水圧転写体の製造装置は、水圧転写装置10と、洗浄装置30とを備えている。
水圧転写装置10は、図1〜図3に示すように、(水圧転写用)水圧転写用水槽11と、昇降装置12と、バキューム装置20,20Aとを備えている。
【0012】
水圧転写用水槽11には、例えば摂氏30度の水1が貯溜されており、その水面には膜状に形成された水圧転写フィルム2が図示しないフィルム引き込み装置によって引き込まれ、水上に浮かべて設置される。この水圧転写フィルム2は、水溶性あるいは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルム、例えばPVA(ポリビニルアルコール)2aと、有機溶剤に溶解可能な疎水性物質からなる転写層、例えばインキ皮膜2bとを有している。水圧転写フィルム2は、下部にPVA2aが配置され、上部にインキ皮膜2bが配置されている。それらPVA2aとインキ皮膜2bとの間には、活性化エネルギー線照射あるいは加熱の少なくとも一種で硬化可能なトップコート層、例えば熱硬化性樹脂2cが介在されている。なお、この水圧転写フィルム2には、熱硬化性樹脂2cが含まれていない場合もある。
【0013】
昇降装置12は、昇降ユニット13と、保持部14と、吸引部15,16とを備え、水圧転写用水槽11の上方に設けられている。
昇降ユニット13は、昇降装置12の昇降駆動部(図示略)によって昇降される。
保持部14は、昇降ユニット13の下部に複数配置され、被転写部位3aを含む被転写体3を保持するようになっている。
【0014】
吸引部15は、図2(a)に示すように、ホース23Aを介してバキューム装置本体22Aと接続されており、バキューム装置20Aの駆動部24Aが駆動して発生する吸引力によって吸引口15aから水1に浮遊する物体を吸引できるようになっている。
吸引部16は、昇降ユニット13の側面から突出されたアーム部16bの先端に取り付けられている。ここではアーム部16b自体を、バキューム装置20Aと吸引部16との間の吸引用配管の一部として機能させているが、これに限定されず、別途ホース等を設けてもよい。
【0015】
バキューム装置20は、図2(b)に示すように、吸引部21と、バキューム装置本体22と、ホース23と、駆動部24とを備えている。
吸引部21は、水圧転写用水槽11の周縁部に設けられ、その吸引口21aが水面の位置となるように、水面に対して上下あるいは左右方向に移動可能となるように複数配置されている。
【0016】
バキューム装置本体22は、その内部に不織布袋25を備え、吸引部21とバキューム装置本体22とを接続するホース23が取り付けられている。
駆動部24は、バキューム装置本体22の下部に設けられ、図示しない電源を入れて稼働させると吸引力を発生させ、吸引部21から吸引した物体をホース23および不織布袋25を通過させてバキューム装置本体22内に吸引させるようになっている。
また、水圧転写装置10には、制御部50が設けられている。この制御部50は、昇降装置12およびバキューム装置本体22に接続されており、これら昇降装置12およびバキューム装置本体22の駆動を制御するものである。
【0017】
洗浄装置30は、図4に示すように、洗浄用水槽31と、水流発生手段としての水噴射装置31Aと、昇降装置36とを備えている。
洗浄用水槽31には、摂氏25度の洗浄用の水4が貯溜されている。この洗浄用水槽31には、図示しない水交換手段が設けられ、その水交換手段によって洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4が交換可能となっている。
【0018】
水噴射装置31Aは、エダクタ(ノズル)32と、ポンプ33とを備えている。
エダクタ32は、洗浄用水槽31の一方の端部31a側に設置され、その先端が洗浄用水槽31の内側を向くように配置されている。
ポンプ33は、洗浄用水槽31の外部に設けられ、ホース34を介してエダクタ32に接続され、ホース35を介して洗浄用水槽31の他方の端部31bに接続されており、洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4が循環するようになっている。
図4においては、単独のエダクタ32の設置例を記載したが、複数のエダクタ32を設けることができる。また、複数のエダクタ32を設置した方が、洗浄効率及び洗浄設計の自由度が広がるため、エダクタ32を単独に設置するより好ましい。例えば複数の設置例として、図5に示すような設置例を挙げることができる。
【0019】
昇降装置36は、昇降ユニット37と、保持部38とを備え、洗浄用水槽31の上方に設けられている。
昇降ユニット37は、昇降装置36の昇降駆動部(図示略)によって昇降される。
保持部38は、昇降ユニット37の下部に複数配置され、被転写部位3aを含む被転写体3を保持するようになっている。
【0020】
この水圧転写体の製造設備を用いる場合、水圧転写装置10を用いて、その水圧転写装置10に設けられた昇降ユニット13に保持された被転写体3を、水圧転写用水槽11内に貯溜された水1に着水させ、被転写体3に水圧転写フィルム2を付着させて転写を行った後、その昇降ユニット13を、被転写体3を保持したまま引き上げて洗浄装置30の上方まで移動させ、被転写体3を洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の洗浄用の水4に着水させ、エダクタ32を用いてその被転写体3に水流を当てて、被転写体3に付着された水圧転写フィルム2に含まれるPVA2aを除去する。
【0021】
すなわち、水圧転写用水槽11内に貯溜された水1の表面に、水圧転写フィルム2を設置する。このとき、水1と水圧転写フィルム2との間に気泡を含まないように静かに着水させながら水圧転写フィルム2をその水面上に設置する。
水圧転写フィルム2が水面上に設置されると、水圧転写フィルム2の下面側に具備されたPVA2aは、水膨潤性を有していることから水1を吸着して軟化する。一方、水圧転写フィルム2の上面側に具備されたインキ皮膜2bは、疎水性を有していることから、硬化した状態を保持している。PVA2aは、水温が摂氏30度の場合、2分程度で軟化する。
【0022】
PVA2aが軟化した後、図示しないノズルを水圧転写フィルム2の表面の上方で左右に移動させながら、活性剤である有機溶剤を水圧転写フィルム2の表面の隅々まで均一に噴霧して、水圧転写フィルム2の表面を活性化させる。このとき、水圧転写フィルム2の上面側に具備されたインキ皮膜2bが噴霧された有機溶剤によって活性化されて軟化する。
【0023】
その後、水圧転写用水槽11の上方に設けられた昇降ユニット13に保持された被転写体3を昇降ユニット13によって下方に移動させてその被転写体3を水圧転写フィルム2に接触させ、そのまま昇降ユニット13を下方に移動させることによって被転写体3を水圧転写フィルム2に押し付けて被転写体3を水没させて、被転写体3の表面に水圧転写フィルム2を付着させる。このとき、水圧転写フィルム2と被転写体3との間に気泡が入らないように被転写体3を沈下させる。また、昇降ユニット13に設けられた吸引部15の吸引口15aが水面の位置となるまで、昇降ユニット13を下方に移動させる。
【0024】
図3に示すように、被転写体3を水没させると、被転写体3のうち少なくとも水圧転写フィルム2に含まれるインキ皮膜2bおよびトップコート層2cが転写される被転写部位3aに水圧転写フィルム2が付着し、水圧転写フィルム2の一部は被転写部位3aに付着されずに残存フィルム2’となって水圧転写フィルム2からトリミングされる。この残存フィルム2’は、被転写体3の被転写部位3aに水圧転写フィルム2が付着した後には被転写体3に対して不用の物体となって水面上に浮かんで、残存フィルム2’に含まれているPVA2a’が溶解するとともに膨潤して、時間の経過とともに沈降する。
【0025】
水圧転写フィルム2の一部が被転写体3の被転写部位3aに付着されずに残存フィルム2’となって水圧転写フィルム2からトリミングされた後、残存フィルム2’に含まれるPVA2a’が浮遊して拡散する前に、吸引部15,16,21それぞれを備えたバキューム装置20,20Aを作動させ、水圧転写用水槽11内に貯溜された水1の表面に浮遊する残存フィルム2’をそれぞれの吸引部15,16,21から吸引して、その残存フィルム2’を水面から除去する。ここで、例えばバキューム装置20の駆動部24を作動させて残存フィルム2’が吸引部21から吸引されると、ホース23を通過して不織布袋25に蓄積されて塊状になるとともに、その残存フィルム2’と同時に吸引された水がホース23を通過した後不織布袋25を通過して、バキューム装置本体22に蓄積されることとなる。
【0026】
昇降ユニット13が下方に移動することによって被転写体3を水没させた後、被転写体3の被転写部位3aから水圧転写フィルム2がトリミングされ、トリミングが終了した時点を基準として、その被転写体3が水没したことを検出する信号が図示しない検出装置によって制御部50に入力されると、残存フィルム2’が溶解するとともに膨潤して沈降する前に、この制御部50からバキューム装置本体22に対して吸引開始の指令が出力され、バキューム装置本体22による吸引が開始されることとなる。
【0027】
吸引部15,16,21によって残存フィルム2’が除去された後、被転写体3が昇降ユニット13によって保持されたまま水圧転写用水槽11から引き上げられる。このとき、被転写体3の被転写部位3aに付着した水圧転写フィルム2の表面には、PVA2aが膨潤して付着した状態を維持している。
【0028】
そして、図6に示すように、被転写体3を保持した昇降ユニット13を洗浄装置30の上方まで移動して、その昇降ユニット13によって保持されている被転写体3を洗浄装置30に設けられた昇降ユニット37に保持させ、その昇降ユニット37によって被転写体3が保持されたまま、昇降ユニット37を下方に移動させ、被転写体3を洗浄用水槽31内に収容しながら被転写体3の被転写部位3aを洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4に着水させて、被転写体3の被転写部位3aが洗浄用の水4に接触している状態にする。
その後、被転写部位3aに付着しているPVA2aを膨潤させるために、被転写体3の被転写部位3aを洗浄用の水4に着水させた状態を2分間維持する。このとき、PVA2aが時間の経過とともに膨潤し続けた後、洗浄用の水4内で溶解を開始する。
【0029】
被転写体3の被転写部位3aを洗浄用の水4に着水させ2分間維持した後、水噴射装置31Aに設けられたポンプ33を駆動させ、そのポンプ33でホース34を介してエダクタ32に摂氏25度の水を送り出し、洗浄用水槽31内でエダクタ32から水を噴射させて洗浄用の水4に水流を形成し、被転写部位3aにその水流を当てる。その水流を形成するために、ホース35を介してポンプ33に水を引き込む。
【0030】
ここで、この水流は、水圧転写フィルム2が付着されたままの被転写体3を収容した洗浄用水槽31内に貯溜されている洗浄用の水4を洗浄用水槽31内で移動あるいは循環させることによって形成されるものである。この洗浄用の水4の移動あるいは循環には、渦流を発生させるものあるいは層流が形成されるもの等、様々なものが含まれる。
また、エダクタ32が洗浄用水槽31の一方の端部31a側に設置され、その先端が洗浄用水槽31の内側を向くように配置されているため、被転写体3に対してマイルドで、間接的な噴射流を与えることができる。
【0031】
ポンプ33を駆動させることによって生じた水流によって、被転写体3に付着された水圧転写フィルム2に含まれるPVA2aが洗い流され、そのPVA2aが被転写部位3aから除去される。このPVA2aが被転写体3から除去されることによって、インキ皮膜2bおよびトップコート層2cが被転写部位3aに付着された水圧転写体が得られる。
【0032】
また、洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4にPVA2aが溶解することで、洗浄用の水4のPVA濃度が一定値以上となった場合、洗浄用水槽31に設けられた水交換手段によって、洗浄用の水4の一部を排除するとともに、新たに清浄水を洗浄用水槽31内に注入して置換させる。これによって洗浄用の水4のPVA濃度を一定値以下にする。水交換手段としては、洗浄用水槽31内に設置したセンサ(図示略)によって検出したPVA濃度の検出値に基づいて駆動されて、洗浄用水槽31への注水を自動的に行う構成を採用することができる。
【0033】
この場合、水圧転写フィルム2が付着したままの状態で、水圧転写用水槽11から洗浄用水槽31に移設して収容した被転写体3に、摂氏25度の水流を水中で当てて、水圧転写フィルム2からPVA2aを除去することにより、PVA2aに対して過剰な水圧をかけることなく、被転写体3に付着されたPVA2aを洗い流すため、被転写体3に転写されたインキ皮膜2bおよびトップコート層2cを傷つけることがない。
【0034】
また、洗浄用の水4が接し25度に設定されていることにより、水圧転写フィルム2からPVA2aを除去しても、被転写体3に転写されたインキ皮膜2bおよびトップコート層2cには十分な光沢が得られ、また、そのインキ皮膜2bおよびトップコート層2cに対して欠陥を生じない。
【0035】
また、被転写体3を洗浄用水槽31内に着水させた後、2分程度経過後に被転写体3に付着されたPVA2aが膨潤が支配的な状態から、溶解が支配的な状態になるため、2分程度経過後に洗浄用水槽31内に洗浄用の水4を移動させあるいは循環させながら水流を形成することにより、PVA2aが洗浄用の水4に溶解されながら被転写体3から容易に除去されることとなる。
【0036】
また、洗浄用の水4を移動させあるいは循環させながら水流を形成する際、被転写体3から離隔させて配置したエダクタ32を用いることにより、洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4に被転写体3から離隔させた位置から対流を生じさせることで全体として洗浄用の水4が移動され循環されるため、被転写体3の被転写部位3aに付着されたPVA2aが全体を一様に除去されることとなる。
【0037】
また、洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4のPVA濃度が一定値以上となった場合、洗浄用の水4に対して新たに清浄水を洗浄用水槽31内に注入して置換させることにより、洗浄用の水4のPVA濃度が一定値以下になるため、洗浄用の水4の水質悪化を防止することとなるとともに、被転写体3に付着されたPVA2aが洗浄用の水4に溶解しやすくなる。
【0038】
上記の構成によれば、PVA2aに対して過剰な水圧をかけることなく、被転写体3に付着されたPVA2aを洗い流すので、被転写体3に転写されたインキ皮膜2bおよびトップコート層2cを傷つけることなくその被転写体3の被転写部位3aからPVA2aを除去する水圧転写体の製造方法およびその装置を提供することができる。
また、トップコート層2cを有する水圧転写フィルム2においては、この水圧転写体の製造方法およびその装置を提供することで、トップコート層2cとして必要とされる表面の光沢を保護することができる点および表面に欠陥を有しない点で特に有効である。
【0039】
また、トップコート層2cは、被転写体3に転写した時点では未硬化状態であり、PVA2aを除去した後硬化させる。このため、PVA2aを除去した際に傷つけられやすくなっている。更にトップコート層2cの表面の光沢や表面欠陥を防ぐために、トップコート層2cを被転写体3に転写した後、PVA2aを除去する前に活性エネルギー線により部分硬化させることができる。
トップコート層2cを完全硬化させると、含有している有機溶剤が除去し難くなるため、洗浄工程により表面に欠陥を受けない程度に部分硬化させることが好ましい。
【0040】
なお、上記実施の形態において、水圧転写装置10は、洗浄装置30としての機能を兼ね備えて同一の水圧転写用水槽11としてもよい。この場合、水圧転写用水槽11にはエダクタ32が設けられ、ホース34,35を介してポンプ33が設けられる。ただし、昇降ユニット13に保持された被転写体3に水圧転写フィルム2を転写させてから水圧転写フィルム2からPVA2aを除去するまでの時間が限られており、水温を変化させる時間を有しないため、水圧転写用水槽11内に貯溜された水1の水温を、転写時と洗浄時とで同一の温度としなければならない。
【0041】
また、上記実施の形態において、エダクタ32は、ポンプ33によって引き込まれた水を高圧で噴射させるため、水噴射装置としての機能を備えているほか、洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4を移動あるいは循環させて水流を形成する水移動装置としての機能を兼ね備えている。ここで、洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4に対して、必ずしも水噴射装置としての機能と水移動装置としての機能を兼ね備えなくてもよいため、このエダクタ32を、水噴射装置として別のノズルに置き換えてもよく、あるいは水を移動あるいは循環させる水移動装置に置き換えてもよい。このような装置に置き換えた場合においても、洗浄用の水4に水流を形成して被転写体3に付着されたPVA2aを洗い流すという効果は変わらない。
【0042】
また、上記実施の形態において、被転写体3を着水させた後、エダクタ32を作動させて水流を形成するまでの時間を2分としているが、被転写体3に付着されたPVA2aが膨潤してから溶解するまでの時間はおよそ2〜3分であることから、エダクタ32を作動させて水流を形成するまでの時間を最大3分までとしてもよい。
【0043】
【実施例】
上記実施の形態において、洗浄用水槽31内の洗浄用の水4の水温を摂氏25度に設定しているが、摂氏40度まで設定可能である。以下に、実際に行った洗浄装置30の洗浄温度と洗浄時間に対する評価を[表1]に示し、各実施例について説明する。
ここで、以下のいずれの場合においても、水圧転写用水槽11に貯溜された水1の水面上に浮かべられた水圧転写フィルム2を膨潤させるときの水圧転写用水槽11内に貯溜された水1の水温を摂氏30度、水圧転写フィルム2を膨潤させる時間を2分、被転写体3に水圧転写フィルム2を転写する時間を15秒とする。
【表1】
【0044】
(実施例1)洗浄装置30に貯溜された洗浄用の水4の水温を摂氏25度とした場合
水圧転写フィルム2が被転写体3に転写されるとともに被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aを、エダクタ32によって洗浄用の水4に水流を形成しながら洗浄して除去する際、その洗浄時間を10分としたとき、被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aが完全に除去されるとともに、インキ皮膜2bおよびトップコート層2cの光沢が保持され、かつインキ皮膜2bおよびトップコート層2cに欠陥を生じなかった。したがって、この設定で洗浄装置を機能させることができる。
【0045】
(実施例2)洗浄装置30に貯溜された洗浄用の水4の水温を摂氏30度とした場合
水圧転写フィルム2が被転写体3に転写されるとともに被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aを、エダクタ32によって洗浄用の水4に水流を形成しながら洗浄して除去する際、その洗浄時間を7分としたとき、被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aが完全に除去されるとともに、インキ皮膜2bおよびトップコート層2cの光沢が保持され、かつインキ皮膜2bおよびトップコート層2cに欠陥を生じなかった。したがって、この設定で洗浄装置を機能させることができる。
【0046】
(実施例3)洗浄装置30に貯溜された洗浄用の水4の水温を摂氏30度として予備洗浄を2分間行った後、洗浄用の水4の水温を摂氏25度とした場合
水圧転写フィルム2が被転写体3に転写されるとともに被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aを、エダクタ32によって洗浄用の水4に水流を形成しながら洗浄して除去する際、その洗浄時間を5分としたとき、被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aが完全に除去されるとともに、インキ皮膜2bおよびトップコート層2cの光沢が保持され、かつインキ皮膜2bおよびトップコート層2cに欠陥を生じなかった。したがって、この設定で洗浄装置を機能させることができる。
【0047】
(実施例4)洗浄装置30に貯溜された洗浄用の水4の水温を摂氏40度とした場合
水圧転写フィルム2が被転写体3に転写されるとともに被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aを、エダクタ32によって洗浄用の水4に水流を形成しながら洗浄して除去する際、その洗浄時間を5分としたとき、被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aが完全に除去されるが、インキ皮膜2bおよびトップコート層2cの光沢が低下し、かつインキ皮膜2bおよびトップコート層2cに欠陥を生じた。したがって、この設定で洗浄装置を機能させることができない。
【0048】
(比較例1)洗浄装置30に貯溜された洗浄用の水4の水温を摂氏50度とした場合
水圧転写フィルム2が被転写体3に転写されるとともに被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aを、エダクタ32によって洗浄用の水4に水流を形成しながら洗浄して除去する際、その洗浄時間を3分としたとき、被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aが完全に除去されるが、インキ皮膜2bおよびトップコート層2cの光沢が低下し、かつインキ皮膜2bおよびトップコート層2cに欠陥を生じた。したがって、この設定で洗浄装置を機能させることができない。
【0049】
(比較例2)洗浄装置30に貯溜された洗浄用の水4の水温を摂氏25度とし、水流を形成しない場合
水圧転写フィルム2が被転写体3に転写されるとともに被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aを、洗浄用の水4に水流を形成しずに除去する際、その洗浄時間を20分としたとき、被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aが除去されなかった。したがって、この設定で洗浄装置を機能させることができない。
【0050】
(比較例3)洗浄装置30に貯溜された洗浄用の水4の水温を摂氏30度とし、スプレーを用いて洗浄した場合
水圧転写フィルム2が被転写体3に転写されるとともに被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aを、エダクタ32によって洗浄用の水4に水流を形成しながら洗浄して除去する際、その洗浄時間を3分としたとき、被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aが完全に除去されるが、インキ皮膜2bおよびトップコート層2cの光沢が著しく低下し、かつインキ皮膜2bおよびトップコート層2cに欠陥を生じた。したがって、この設定で洗浄装置を機能させることができない。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したこの発明の水圧転写装置においては、以下の効果を奏する。
本発明によれば、支持体フィルムに対して過剰な水圧をかけることなく、被転写体に付着された支持体フィルムを洗い流すので、被転写体に転写された転写層およびトップコート層を傷つけることなくその被転写体の転写部位から支持体フィルムを除去する水圧転写体の製造方法およびその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における実施の形態に係る水圧転写装置の断面図である。
【図2】本発明における実施の形態に係る吸引部の接続を説明する図である。
【図3】本発明における実施の形態に係る水圧転写装置の断面図である。
【図4】本発明における実施の形態に係る洗浄装置の断面図である。
【図5】本発明における実施の形態に係る洗浄装置の断面図であり、図4とは別の設置例である。
【図6】本発明における実施の形態に係る水圧転写装置および洗浄装置の概念図である。
【符号の説明】
1 水
2 水圧転写フィルム
3 被転写体
4 洗浄用の水
10 水圧転写装置
11 水圧転写用水槽
12 昇降装置
30 洗浄装置
31 洗浄用水槽
31A 水噴射装置(水流発生手段)
32 エダクタ(ノズル)
33 ポンプ
【発明の属する技術分野】
この発明は、水圧転写体の製造方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
水圧転写体の製造装置は、水圧転写装置に設けられ水圧転写フィルムを水面上に浮かべた水槽内に曲面等の3次元形状面を表面に有する被転写体を浸水あるいは水没させ、水圧転写フィルムを被転写体の転写部位に水圧によって付着させた後、その被転写体の表面を洗浄する装置である。
ここで、水圧転写フィルムは、水溶性あるいは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと、その支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性物質からなる転写層とを有している。支持体フィルムとしては、例えばPVA(ポリビニルアルコール)等があり、また、転写層としては、例えば印刷インキ皮膜または塗装皮膜等がある。
【0003】
また、水圧転写フィルムにおいて、その転写層が、活性エネルギー線照射あるいは加熱の少なくとも一種で硬化可能な硬化性樹脂層を有する水圧転写フィルムがあり、その水圧転写フィルムについては、特にトップコート付水圧転写フィルムと呼んでいる。ここで、硬化性樹脂層としては、例えば下記の(1)〜(6)が挙げられる。
(1)活性エネルギー線硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(2)活性エネルギー線硬化性樹脂と非重合性の熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(3)熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(4)熱硬化性樹脂と非重合性の熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(5)活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(6)活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂および非重合性の熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
【0004】
この水圧転写体の製造装置を用いて、水圧転写フィルムを付着された被転写体の表面を洗浄する場合、高圧の温水スプレー等の噴霧手段を用いて、その温水の噴き付け力によって、被転写体の表面に残存するPVAを剥離させて除去している。
従来の水圧転写体の製造方法として、例えば特許文献1においては、水圧転写用シートにおける基材フィルム、すなわち、水溶性もしくは水膨潤性を有し、かつ吸水して膨潤延展する性質を有する基材フィルムを、水を用いてシャワー洗浄するのが最も好ましい方法であり、これにより、被転写体の表面に付着した基材フィルムを完全に除去し得るとともに、転写の際に生ずる汚れも洗浄し得るとされている。また、このときに利用する水の温度は、利用した転写用シートにおける基材フィルムの材質等によっても異なるが、一般的には摂氏15〜60度程度が適当であり、また洗浄時間は1〜10分程度で十分であるとされている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−39998号公報(第5頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の水圧転写体の製造方法においては、高圧の温水スプレー等の噴霧手段を用いた場合、その噴霧手段から噴射された温水の噴き付け力によって、被転写体の表面に付着された水圧転写フィルムに残存するPVAを剥離させて除去するのみならず、被転写体に転写された転写層の表面を傷つけてしまうとともに、その表面に洗浄した形跡が残存してしまうという問題があった。特に、この水圧転写フィルムにトップコート層を含む場合にはこの問題が顕著であり、高圧の温水スプレー等の噴霧手段から噴射された温水の噴き付け力によって、被転写体に転写されたトップコート層が荒らされ、そのトップコート層の光沢を著しく低下させてしまうということが問題となっていた。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、被転写体の表面を傷つけることなくその表面を洗浄する水圧転写体の製造方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明は、水圧転写体の製造方法であって、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性の転写層とを有する水圧転写フィルムを前記転写層を上にして水に浮かべ、前記水圧転写フィルムに被転写体を押し付け、有機溶剤によって活性化させておいた前記転写層を前記被転写体に転写した後、前記水圧転写フィルムが付着したままの前記被転写体に、水流を水中で当てて、前記水圧転写フィルムから前記支持体フィルムを除去することを特徴とする。
【0009】
また、水圧転写体の製造設備であって、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性の転写層とを有する水圧転写フィルムを前記転写層を上にして水に浮かべる水圧転写用水槽を備え、該水圧転写用水槽内で前記水圧転写フィルムに被転写体を押し付けて前記被転写体に前記水圧転写フィルムを転写する水圧転写装置と、前記転写層の転写が完了した前記被転写体を水洗して前記被転写体に付着している前記水圧転写フィルムから前記支持体フィルムを除去する洗浄装置とを有し、前記洗浄装置が、前記水圧転写装置から前記水圧転写フィルムが付着したまま移設される前記被転写体を収容して、洗浄用の水と接触させる洗浄用水槽と、該洗浄用水槽内に収容された前記被転写体と接触させる水流を前記洗浄用水槽内に形成する水流発生手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、水圧転写フィルムを転写層を上にして水に浮かべ、水圧転写フィルムに被転写体を押し付け、有機溶剤によって活性化させておいた転写層を被転写体に転写した後、水圧転写フィルムが付着したままの被転写体に、摂氏25〜40度の水流を水中で当てて、水圧転写フィルムから支持体フィルムを除去することにより、支持体フィルムに対して過剰な水圧をかけることなく、被転写体に付着された支持体フィルムを洗い流すため、被転写体に転写された転写層を傷つけることがない。また、設定された水温については、それらの範囲より高温あるいは低温である場合、水圧転写フィルムから支持体フィルムを除去しても、被転写体に転写された転写層に十分な光沢が得られず、また、その転写層に対して欠陥を生じやすい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
水圧転写体の製造装置は、水圧転写装置10と、洗浄装置30とを備えている。
水圧転写装置10は、図1〜図3に示すように、(水圧転写用)水圧転写用水槽11と、昇降装置12と、バキューム装置20,20Aとを備えている。
【0012】
水圧転写用水槽11には、例えば摂氏30度の水1が貯溜されており、その水面には膜状に形成された水圧転写フィルム2が図示しないフィルム引き込み装置によって引き込まれ、水上に浮かべて設置される。この水圧転写フィルム2は、水溶性あるいは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルム、例えばPVA(ポリビニルアルコール)2aと、有機溶剤に溶解可能な疎水性物質からなる転写層、例えばインキ皮膜2bとを有している。水圧転写フィルム2は、下部にPVA2aが配置され、上部にインキ皮膜2bが配置されている。それらPVA2aとインキ皮膜2bとの間には、活性化エネルギー線照射あるいは加熱の少なくとも一種で硬化可能なトップコート層、例えば熱硬化性樹脂2cが介在されている。なお、この水圧転写フィルム2には、熱硬化性樹脂2cが含まれていない場合もある。
【0013】
昇降装置12は、昇降ユニット13と、保持部14と、吸引部15,16とを備え、水圧転写用水槽11の上方に設けられている。
昇降ユニット13は、昇降装置12の昇降駆動部(図示略)によって昇降される。
保持部14は、昇降ユニット13の下部に複数配置され、被転写部位3aを含む被転写体3を保持するようになっている。
【0014】
吸引部15は、図2(a)に示すように、ホース23Aを介してバキューム装置本体22Aと接続されており、バキューム装置20Aの駆動部24Aが駆動して発生する吸引力によって吸引口15aから水1に浮遊する物体を吸引できるようになっている。
吸引部16は、昇降ユニット13の側面から突出されたアーム部16bの先端に取り付けられている。ここではアーム部16b自体を、バキューム装置20Aと吸引部16との間の吸引用配管の一部として機能させているが、これに限定されず、別途ホース等を設けてもよい。
【0015】
バキューム装置20は、図2(b)に示すように、吸引部21と、バキューム装置本体22と、ホース23と、駆動部24とを備えている。
吸引部21は、水圧転写用水槽11の周縁部に設けられ、その吸引口21aが水面の位置となるように、水面に対して上下あるいは左右方向に移動可能となるように複数配置されている。
【0016】
バキューム装置本体22は、その内部に不織布袋25を備え、吸引部21とバキューム装置本体22とを接続するホース23が取り付けられている。
駆動部24は、バキューム装置本体22の下部に設けられ、図示しない電源を入れて稼働させると吸引力を発生させ、吸引部21から吸引した物体をホース23および不織布袋25を通過させてバキューム装置本体22内に吸引させるようになっている。
また、水圧転写装置10には、制御部50が設けられている。この制御部50は、昇降装置12およびバキューム装置本体22に接続されており、これら昇降装置12およびバキューム装置本体22の駆動を制御するものである。
【0017】
洗浄装置30は、図4に示すように、洗浄用水槽31と、水流発生手段としての水噴射装置31Aと、昇降装置36とを備えている。
洗浄用水槽31には、摂氏25度の洗浄用の水4が貯溜されている。この洗浄用水槽31には、図示しない水交換手段が設けられ、その水交換手段によって洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4が交換可能となっている。
【0018】
水噴射装置31Aは、エダクタ(ノズル)32と、ポンプ33とを備えている。
エダクタ32は、洗浄用水槽31の一方の端部31a側に設置され、その先端が洗浄用水槽31の内側を向くように配置されている。
ポンプ33は、洗浄用水槽31の外部に設けられ、ホース34を介してエダクタ32に接続され、ホース35を介して洗浄用水槽31の他方の端部31bに接続されており、洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4が循環するようになっている。
図4においては、単独のエダクタ32の設置例を記載したが、複数のエダクタ32を設けることができる。また、複数のエダクタ32を設置した方が、洗浄効率及び洗浄設計の自由度が広がるため、エダクタ32を単独に設置するより好ましい。例えば複数の設置例として、図5に示すような設置例を挙げることができる。
【0019】
昇降装置36は、昇降ユニット37と、保持部38とを備え、洗浄用水槽31の上方に設けられている。
昇降ユニット37は、昇降装置36の昇降駆動部(図示略)によって昇降される。
保持部38は、昇降ユニット37の下部に複数配置され、被転写部位3aを含む被転写体3を保持するようになっている。
【0020】
この水圧転写体の製造設備を用いる場合、水圧転写装置10を用いて、その水圧転写装置10に設けられた昇降ユニット13に保持された被転写体3を、水圧転写用水槽11内に貯溜された水1に着水させ、被転写体3に水圧転写フィルム2を付着させて転写を行った後、その昇降ユニット13を、被転写体3を保持したまま引き上げて洗浄装置30の上方まで移動させ、被転写体3を洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の洗浄用の水4に着水させ、エダクタ32を用いてその被転写体3に水流を当てて、被転写体3に付着された水圧転写フィルム2に含まれるPVA2aを除去する。
【0021】
すなわち、水圧転写用水槽11内に貯溜された水1の表面に、水圧転写フィルム2を設置する。このとき、水1と水圧転写フィルム2との間に気泡を含まないように静かに着水させながら水圧転写フィルム2をその水面上に設置する。
水圧転写フィルム2が水面上に設置されると、水圧転写フィルム2の下面側に具備されたPVA2aは、水膨潤性を有していることから水1を吸着して軟化する。一方、水圧転写フィルム2の上面側に具備されたインキ皮膜2bは、疎水性を有していることから、硬化した状態を保持している。PVA2aは、水温が摂氏30度の場合、2分程度で軟化する。
【0022】
PVA2aが軟化した後、図示しないノズルを水圧転写フィルム2の表面の上方で左右に移動させながら、活性剤である有機溶剤を水圧転写フィルム2の表面の隅々まで均一に噴霧して、水圧転写フィルム2の表面を活性化させる。このとき、水圧転写フィルム2の上面側に具備されたインキ皮膜2bが噴霧された有機溶剤によって活性化されて軟化する。
【0023】
その後、水圧転写用水槽11の上方に設けられた昇降ユニット13に保持された被転写体3を昇降ユニット13によって下方に移動させてその被転写体3を水圧転写フィルム2に接触させ、そのまま昇降ユニット13を下方に移動させることによって被転写体3を水圧転写フィルム2に押し付けて被転写体3を水没させて、被転写体3の表面に水圧転写フィルム2を付着させる。このとき、水圧転写フィルム2と被転写体3との間に気泡が入らないように被転写体3を沈下させる。また、昇降ユニット13に設けられた吸引部15の吸引口15aが水面の位置となるまで、昇降ユニット13を下方に移動させる。
【0024】
図3に示すように、被転写体3を水没させると、被転写体3のうち少なくとも水圧転写フィルム2に含まれるインキ皮膜2bおよびトップコート層2cが転写される被転写部位3aに水圧転写フィルム2が付着し、水圧転写フィルム2の一部は被転写部位3aに付着されずに残存フィルム2’となって水圧転写フィルム2からトリミングされる。この残存フィルム2’は、被転写体3の被転写部位3aに水圧転写フィルム2が付着した後には被転写体3に対して不用の物体となって水面上に浮かんで、残存フィルム2’に含まれているPVA2a’が溶解するとともに膨潤して、時間の経過とともに沈降する。
【0025】
水圧転写フィルム2の一部が被転写体3の被転写部位3aに付着されずに残存フィルム2’となって水圧転写フィルム2からトリミングされた後、残存フィルム2’に含まれるPVA2a’が浮遊して拡散する前に、吸引部15,16,21それぞれを備えたバキューム装置20,20Aを作動させ、水圧転写用水槽11内に貯溜された水1の表面に浮遊する残存フィルム2’をそれぞれの吸引部15,16,21から吸引して、その残存フィルム2’を水面から除去する。ここで、例えばバキューム装置20の駆動部24を作動させて残存フィルム2’が吸引部21から吸引されると、ホース23を通過して不織布袋25に蓄積されて塊状になるとともに、その残存フィルム2’と同時に吸引された水がホース23を通過した後不織布袋25を通過して、バキューム装置本体22に蓄積されることとなる。
【0026】
昇降ユニット13が下方に移動することによって被転写体3を水没させた後、被転写体3の被転写部位3aから水圧転写フィルム2がトリミングされ、トリミングが終了した時点を基準として、その被転写体3が水没したことを検出する信号が図示しない検出装置によって制御部50に入力されると、残存フィルム2’が溶解するとともに膨潤して沈降する前に、この制御部50からバキューム装置本体22に対して吸引開始の指令が出力され、バキューム装置本体22による吸引が開始されることとなる。
【0027】
吸引部15,16,21によって残存フィルム2’が除去された後、被転写体3が昇降ユニット13によって保持されたまま水圧転写用水槽11から引き上げられる。このとき、被転写体3の被転写部位3aに付着した水圧転写フィルム2の表面には、PVA2aが膨潤して付着した状態を維持している。
【0028】
そして、図6に示すように、被転写体3を保持した昇降ユニット13を洗浄装置30の上方まで移動して、その昇降ユニット13によって保持されている被転写体3を洗浄装置30に設けられた昇降ユニット37に保持させ、その昇降ユニット37によって被転写体3が保持されたまま、昇降ユニット37を下方に移動させ、被転写体3を洗浄用水槽31内に収容しながら被転写体3の被転写部位3aを洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4に着水させて、被転写体3の被転写部位3aが洗浄用の水4に接触している状態にする。
その後、被転写部位3aに付着しているPVA2aを膨潤させるために、被転写体3の被転写部位3aを洗浄用の水4に着水させた状態を2分間維持する。このとき、PVA2aが時間の経過とともに膨潤し続けた後、洗浄用の水4内で溶解を開始する。
【0029】
被転写体3の被転写部位3aを洗浄用の水4に着水させ2分間維持した後、水噴射装置31Aに設けられたポンプ33を駆動させ、そのポンプ33でホース34を介してエダクタ32に摂氏25度の水を送り出し、洗浄用水槽31内でエダクタ32から水を噴射させて洗浄用の水4に水流を形成し、被転写部位3aにその水流を当てる。その水流を形成するために、ホース35を介してポンプ33に水を引き込む。
【0030】
ここで、この水流は、水圧転写フィルム2が付着されたままの被転写体3を収容した洗浄用水槽31内に貯溜されている洗浄用の水4を洗浄用水槽31内で移動あるいは循環させることによって形成されるものである。この洗浄用の水4の移動あるいは循環には、渦流を発生させるものあるいは層流が形成されるもの等、様々なものが含まれる。
また、エダクタ32が洗浄用水槽31の一方の端部31a側に設置され、その先端が洗浄用水槽31の内側を向くように配置されているため、被転写体3に対してマイルドで、間接的な噴射流を与えることができる。
【0031】
ポンプ33を駆動させることによって生じた水流によって、被転写体3に付着された水圧転写フィルム2に含まれるPVA2aが洗い流され、そのPVA2aが被転写部位3aから除去される。このPVA2aが被転写体3から除去されることによって、インキ皮膜2bおよびトップコート層2cが被転写部位3aに付着された水圧転写体が得られる。
【0032】
また、洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4にPVA2aが溶解することで、洗浄用の水4のPVA濃度が一定値以上となった場合、洗浄用水槽31に設けられた水交換手段によって、洗浄用の水4の一部を排除するとともに、新たに清浄水を洗浄用水槽31内に注入して置換させる。これによって洗浄用の水4のPVA濃度を一定値以下にする。水交換手段としては、洗浄用水槽31内に設置したセンサ(図示略)によって検出したPVA濃度の検出値に基づいて駆動されて、洗浄用水槽31への注水を自動的に行う構成を採用することができる。
【0033】
この場合、水圧転写フィルム2が付着したままの状態で、水圧転写用水槽11から洗浄用水槽31に移設して収容した被転写体3に、摂氏25度の水流を水中で当てて、水圧転写フィルム2からPVA2aを除去することにより、PVA2aに対して過剰な水圧をかけることなく、被転写体3に付着されたPVA2aを洗い流すため、被転写体3に転写されたインキ皮膜2bおよびトップコート層2cを傷つけることがない。
【0034】
また、洗浄用の水4が接し25度に設定されていることにより、水圧転写フィルム2からPVA2aを除去しても、被転写体3に転写されたインキ皮膜2bおよびトップコート層2cには十分な光沢が得られ、また、そのインキ皮膜2bおよびトップコート層2cに対して欠陥を生じない。
【0035】
また、被転写体3を洗浄用水槽31内に着水させた後、2分程度経過後に被転写体3に付着されたPVA2aが膨潤が支配的な状態から、溶解が支配的な状態になるため、2分程度経過後に洗浄用水槽31内に洗浄用の水4を移動させあるいは循環させながら水流を形成することにより、PVA2aが洗浄用の水4に溶解されながら被転写体3から容易に除去されることとなる。
【0036】
また、洗浄用の水4を移動させあるいは循環させながら水流を形成する際、被転写体3から離隔させて配置したエダクタ32を用いることにより、洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4に被転写体3から離隔させた位置から対流を生じさせることで全体として洗浄用の水4が移動され循環されるため、被転写体3の被転写部位3aに付着されたPVA2aが全体を一様に除去されることとなる。
【0037】
また、洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4のPVA濃度が一定値以上となった場合、洗浄用の水4に対して新たに清浄水を洗浄用水槽31内に注入して置換させることにより、洗浄用の水4のPVA濃度が一定値以下になるため、洗浄用の水4の水質悪化を防止することとなるとともに、被転写体3に付着されたPVA2aが洗浄用の水4に溶解しやすくなる。
【0038】
上記の構成によれば、PVA2aに対して過剰な水圧をかけることなく、被転写体3に付着されたPVA2aを洗い流すので、被転写体3に転写されたインキ皮膜2bおよびトップコート層2cを傷つけることなくその被転写体3の被転写部位3aからPVA2aを除去する水圧転写体の製造方法およびその装置を提供することができる。
また、トップコート層2cを有する水圧転写フィルム2においては、この水圧転写体の製造方法およびその装置を提供することで、トップコート層2cとして必要とされる表面の光沢を保護することができる点および表面に欠陥を有しない点で特に有効である。
【0039】
また、トップコート層2cは、被転写体3に転写した時点では未硬化状態であり、PVA2aを除去した後硬化させる。このため、PVA2aを除去した際に傷つけられやすくなっている。更にトップコート層2cの表面の光沢や表面欠陥を防ぐために、トップコート層2cを被転写体3に転写した後、PVA2aを除去する前に活性エネルギー線により部分硬化させることができる。
トップコート層2cを完全硬化させると、含有している有機溶剤が除去し難くなるため、洗浄工程により表面に欠陥を受けない程度に部分硬化させることが好ましい。
【0040】
なお、上記実施の形態において、水圧転写装置10は、洗浄装置30としての機能を兼ね備えて同一の水圧転写用水槽11としてもよい。この場合、水圧転写用水槽11にはエダクタ32が設けられ、ホース34,35を介してポンプ33が設けられる。ただし、昇降ユニット13に保持された被転写体3に水圧転写フィルム2を転写させてから水圧転写フィルム2からPVA2aを除去するまでの時間が限られており、水温を変化させる時間を有しないため、水圧転写用水槽11内に貯溜された水1の水温を、転写時と洗浄時とで同一の温度としなければならない。
【0041】
また、上記実施の形態において、エダクタ32は、ポンプ33によって引き込まれた水を高圧で噴射させるため、水噴射装置としての機能を備えているほか、洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4を移動あるいは循環させて水流を形成する水移動装置としての機能を兼ね備えている。ここで、洗浄用水槽31内に貯溜された洗浄用の水4に対して、必ずしも水噴射装置としての機能と水移動装置としての機能を兼ね備えなくてもよいため、このエダクタ32を、水噴射装置として別のノズルに置き換えてもよく、あるいは水を移動あるいは循環させる水移動装置に置き換えてもよい。このような装置に置き換えた場合においても、洗浄用の水4に水流を形成して被転写体3に付着されたPVA2aを洗い流すという効果は変わらない。
【0042】
また、上記実施の形態において、被転写体3を着水させた後、エダクタ32を作動させて水流を形成するまでの時間を2分としているが、被転写体3に付着されたPVA2aが膨潤してから溶解するまでの時間はおよそ2〜3分であることから、エダクタ32を作動させて水流を形成するまでの時間を最大3分までとしてもよい。
【0043】
【実施例】
上記実施の形態において、洗浄用水槽31内の洗浄用の水4の水温を摂氏25度に設定しているが、摂氏40度まで設定可能である。以下に、実際に行った洗浄装置30の洗浄温度と洗浄時間に対する評価を[表1]に示し、各実施例について説明する。
ここで、以下のいずれの場合においても、水圧転写用水槽11に貯溜された水1の水面上に浮かべられた水圧転写フィルム2を膨潤させるときの水圧転写用水槽11内に貯溜された水1の水温を摂氏30度、水圧転写フィルム2を膨潤させる時間を2分、被転写体3に水圧転写フィルム2を転写する時間を15秒とする。
【表1】
【0044】
(実施例1)洗浄装置30に貯溜された洗浄用の水4の水温を摂氏25度とした場合
水圧転写フィルム2が被転写体3に転写されるとともに被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aを、エダクタ32によって洗浄用の水4に水流を形成しながら洗浄して除去する際、その洗浄時間を10分としたとき、被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aが完全に除去されるとともに、インキ皮膜2bおよびトップコート層2cの光沢が保持され、かつインキ皮膜2bおよびトップコート層2cに欠陥を生じなかった。したがって、この設定で洗浄装置を機能させることができる。
【0045】
(実施例2)洗浄装置30に貯溜された洗浄用の水4の水温を摂氏30度とした場合
水圧転写フィルム2が被転写体3に転写されるとともに被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aを、エダクタ32によって洗浄用の水4に水流を形成しながら洗浄して除去する際、その洗浄時間を7分としたとき、被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aが完全に除去されるとともに、インキ皮膜2bおよびトップコート層2cの光沢が保持され、かつインキ皮膜2bおよびトップコート層2cに欠陥を生じなかった。したがって、この設定で洗浄装置を機能させることができる。
【0046】
(実施例3)洗浄装置30に貯溜された洗浄用の水4の水温を摂氏30度として予備洗浄を2分間行った後、洗浄用の水4の水温を摂氏25度とした場合
水圧転写フィルム2が被転写体3に転写されるとともに被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aを、エダクタ32によって洗浄用の水4に水流を形成しながら洗浄して除去する際、その洗浄時間を5分としたとき、被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aが完全に除去されるとともに、インキ皮膜2bおよびトップコート層2cの光沢が保持され、かつインキ皮膜2bおよびトップコート層2cに欠陥を生じなかった。したがって、この設定で洗浄装置を機能させることができる。
【0047】
(実施例4)洗浄装置30に貯溜された洗浄用の水4の水温を摂氏40度とした場合
水圧転写フィルム2が被転写体3に転写されるとともに被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aを、エダクタ32によって洗浄用の水4に水流を形成しながら洗浄して除去する際、その洗浄時間を5分としたとき、被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aが完全に除去されるが、インキ皮膜2bおよびトップコート層2cの光沢が低下し、かつインキ皮膜2bおよびトップコート層2cに欠陥を生じた。したがって、この設定で洗浄装置を機能させることができない。
【0048】
(比較例1)洗浄装置30に貯溜された洗浄用の水4の水温を摂氏50度とした場合
水圧転写フィルム2が被転写体3に転写されるとともに被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aを、エダクタ32によって洗浄用の水4に水流を形成しながら洗浄して除去する際、その洗浄時間を3分としたとき、被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aが完全に除去されるが、インキ皮膜2bおよびトップコート層2cの光沢が低下し、かつインキ皮膜2bおよびトップコート層2cに欠陥を生じた。したがって、この設定で洗浄装置を機能させることができない。
【0049】
(比較例2)洗浄装置30に貯溜された洗浄用の水4の水温を摂氏25度とし、水流を形成しない場合
水圧転写フィルム2が被転写体3に転写されるとともに被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aを、洗浄用の水4に水流を形成しずに除去する際、その洗浄時間を20分としたとき、被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aが除去されなかった。したがって、この設定で洗浄装置を機能させることができない。
【0050】
(比較例3)洗浄装置30に貯溜された洗浄用の水4の水温を摂氏30度とし、スプレーを用いて洗浄した場合
水圧転写フィルム2が被転写体3に転写されるとともに被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aを、エダクタ32によって洗浄用の水4に水流を形成しながら洗浄して除去する際、その洗浄時間を3分としたとき、被転写体3の被転写部位3aに付着したPVA2aが完全に除去されるが、インキ皮膜2bおよびトップコート層2cの光沢が著しく低下し、かつインキ皮膜2bおよびトップコート層2cに欠陥を生じた。したがって、この設定で洗浄装置を機能させることができない。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したこの発明の水圧転写装置においては、以下の効果を奏する。
本発明によれば、支持体フィルムに対して過剰な水圧をかけることなく、被転写体に付着された支持体フィルムを洗い流すので、被転写体に転写された転写層およびトップコート層を傷つけることなくその被転写体の転写部位から支持体フィルムを除去する水圧転写体の製造方法およびその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における実施の形態に係る水圧転写装置の断面図である。
【図2】本発明における実施の形態に係る吸引部の接続を説明する図である。
【図3】本発明における実施の形態に係る水圧転写装置の断面図である。
【図4】本発明における実施の形態に係る洗浄装置の断面図である。
【図5】本発明における実施の形態に係る洗浄装置の断面図であり、図4とは別の設置例である。
【図6】本発明における実施の形態に係る水圧転写装置および洗浄装置の概念図である。
【符号の説明】
1 水
2 水圧転写フィルム
3 被転写体
4 洗浄用の水
10 水圧転写装置
11 水圧転写用水槽
12 昇降装置
30 洗浄装置
31 洗浄用水槽
31A 水噴射装置(水流発生手段)
32 エダクタ(ノズル)
33 ポンプ
Claims (12)
- 水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性の転写層とを有する水圧転写フィルムを前記転写層を上にして水に浮かべ、前記水圧転写フィルムに被転写体を押し付け、有機溶剤によって活性化させておいた前記転写層を前記被転写体に転写した後、前記水圧転写フィルムが付着したままの前記被転写体に、水流を水中で当てて、前記水圧転写フィルムから前記支持体フィルムを除去することを特徴とする水圧転写体の製造方法。
- 前記水の温度が、摂氏25〜40度である請求項1に記載の水圧転写体の製造方法。
- 前記転写層が、前記支持体フィルム上に、有機溶剤に溶解可能な硬化性樹脂層を積層させるか、または該硬化性樹脂層とその上に更に有機溶剤に溶解可能な印刷インキ皮膜または塗料皮膜から成る装飾層とをこの順に積層させた水圧転写フィルムである請求項1または2に記載の水圧転写体の製造方法。
- 前記転写層を転写した後、前記支持体フィルムを除去する前に活性エネルギー線により部分硬化させる請求項3に記載の水圧転写体の製造方法。
- 前記水圧転写フィルムが付着したままの前記被転写体の支持体フィルム部を、水に接した状態を2〜3分維持してから前記水流を当てる請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の水圧転写体の製造方法。
- 前記水流が、前記被転写体に前記転写層を転写した後に、前記水圧転写フィルムが付いたままの前記被転写体を収容した洗浄用水槽に貯溜されている洗浄用の水を前記洗浄用水槽内で移動あるいは循環させることによって形成される請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の水圧転写体の製造方法。
- 前記被転写体に前記転写層を転写した後に、前記水圧転写フィルムが付着されたままの前記被転写体に水流を当てる処理を、洗浄用の水中にて、前記被転写体から離隔させて配置したノズルからの水の噴射によって行う請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の水圧転写体の製造方法。
- 水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に溶解可能な疎水性の転写層とを有する水圧転写フィルムを前記転写層を上にして水に浮かべる水圧転写用水槽を備え、該水圧転写用水槽内で前記水圧転写フィルムに被転写体を押し付けて前記被転写体に前記水圧転写フィルムを転写する水圧転写装置と、前記転写層の転写が完了した前記被転写体を水洗して前記被転写体に付着している前記水圧転写フィルムから前記支持体フィルムを除去する洗浄装置とを有し、
前記洗浄装置が、前記水圧転写装置から前記水圧転写フィルムが付着したまま移設される前記被転写体を収容して、洗浄用の水と接触させる洗浄用水槽と、該洗浄用水槽内に収容された前記被転写体と接触させる水流を前記洗浄用水槽内に形成する水流発生手段とを有することを特徴とする水圧転写体の製造設備。 - 前記水の温度が、摂氏25〜40度である請求項8に記載の水圧転写体の製造設備。
- 前記水流発生手段は、前記洗浄用水槽内の洗浄用の水を前記洗浄用水槽内にて移動あるいは循環させることで、前記洗浄用水槽内に水流を形成する水移動装置である請求項8または9に記載の水圧転写体の製造設備。
- 前記水流発生手段は、前記洗浄用水槽内に配置した被転写体から離隔させた位置に配置されたノズルから前記被転写体に向けて水を噴射する水噴射装置である請求項8または9に記載の水圧転写体の製造設備。
- 前記洗浄用水槽は、該洗浄用水槽に移設された前記被転写体のうち少なくとも前記水圧転写フィルムの転写層が付着された部位である被転写部位を前記洗浄用水槽内に貯溜される洗浄用の水によって水没させることができるようになっており、前記洗浄用水槽に移設された前記被転写体の前記被転写部位を前記洗浄用水槽内に貯溜された水の中に置いた状態を2〜3分維持した後に、前記水流発生手段によって前記洗浄用水槽内に水流が形成されるようになっている請求項6〜11のいずれか一項に記載の水圧転写体の製造設備。
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JP2003123649A JP2004322585A (ja) | 2003-04-28 | 2003-04-28 | 水圧転写体の製造方法およびその設備 |
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JP2013216006A (ja) * | 2012-04-10 | 2013-10-24 | Sharp Corp | 水圧転写用フィルムおよびその製造方法 |
JP5955443B1 (ja) * | 2015-09-30 | 2016-07-20 | 住友化学株式会社 | フィルム製造方法及びフィルム製造装置 |
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- 2003-04-28 JP JP2003123649A patent/JP2004322585A/ja not_active Withdrawn
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