JP2004299153A - スタンパ及び転写装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】スタンパ表面の凸部の分布や基板のうねりに影響されずにスタンパの形状を精密に被転写物に転写することのできるスタンパ、及びこのスタンパを用いる転写装置を提供する。
【解決手段】スタンパ表面の凸部の分布や基板のうねりに影響されない精密な転写はスタンパ背面に弾性率分布を持つ緩衝材を形成したスタンパを使用することにより解決することができる。プレス装置を用いて基板上に微細構造体を形成するための表面に微細な凹凸が形成されたスタンパにおいて、前記スタンパは可撓性を有し、凹凸形成面の裏面に弾性率に面内分布を持つ緩衝材を形成していることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に微細パターンや構造体を形成するためのスタンパに関する。また、スタンパを用いた転写装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は、薄膜を装着させた基板上に有機樹脂を塗付し、スタンパを用いて有機樹脂の型押しを行うことにより、薄膜上にマスクパターンを形成するプロセスの概略である。薄膜103と有機樹脂層102を形成した基板101上に、スタンパ104を移動させてスタンパ104により未硬化の有機樹脂層102に均一に加圧押し付けを行うことによりその形状を有機樹脂層102に転写を行う。形状転写後に加熱や光照射などの方法で有機樹脂層102を硬化することによりその形状を保持することにより、エッチング用の保護マスクとなるマスクパターン105を形成する。このマスクパターン105を用いて薄膜103のエッチングを行い、マスクパターン105でマスクされている部分以外の薄膜を除去することによって薄膜をパターニングしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、スタンパの厚みムラやスタンパ裏面の凸部等があってもスタンパ表面の凹凸のみを転写する手法として以下のようなものがある。図4は、感光性樹脂112にベースプレート111を押し当てることによりスタンパ113の形状を該樹脂112に転写を行うプロセスの概略である。スタンパ113の背面に両面接着テープ116,弾性体115,ビニールシート114が挿入されている。スタンパの裏面に弾性体115を配置しているため、スタンパ113の厚みムラや裏面の凸部を吸収する効果がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−80530号公報([0023]〜[0028]段落,図1等)
【特許文献2】
特開平5−73968号公報([0011]段落,図1等)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術のうち、図3に示すシリコン基板上の樹脂への転写では、スタンパとして光透過性を有する有機樹脂やガラスなどからなる剛体を用いている。しかし、このようなスタンパの表面やシリコン基板の表面には数マイクロメートル単位での高さのうねりが存在する。この高さのうねりがマイクロメートルオーダー以下の微細な形状の精密な転写の妨げとなる問題があった。
【0006】
この問題は、スタンパをこの基板のうねりに沿うようなフレキシブル性を有する材質で作ることによって解決が可能であるが、このフレキシブルスタンパを基板に精密に沿わせるには緩衝材をスタンパ裏面に配置することが必要である。ここで上記の従来技術のうち、図4に示す感光性樹脂への転写プロセスで用いられる弾性体をこの緩衝材として用いることが考えられる。
【0007】
しかし、このようなフレキシブル性を有するスタンパを基板上の樹脂に押し込む際には、スタンパを基板に押し付ける時に樹脂に初めに触れるスタンパ表面の凸部を多く有する部分が、スタンパ表面の他の部分よりも樹脂から大きい抵抗を受けて撓み、樹脂にスタンパ表面の形状がうまく転写できなくなるという欠点がある。このような転写の不均一性は上記の従来技術のうち、図4に示す感光性樹脂への転写プロセスで用いられるようなスタンパの全面に同じ力を加える弾性体を用いることでは解決できなかった。
【0008】
本発明の目的は、スタンパ表面の凸部の分布や基板のうねりに影響されずにスタンパの形状を精密に被転写物に転写することのできるスタンパ、及びこのスタンパを用いる転写装置の提供である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
スタンパ表面の凸部の分布や基板のうねりに影響されない精密な転写はスタンパ背面に弾性率分布を持つ緩衝材を形成したスタンパを使用することにより解決することができる。
【0010】
第1の手段として、図1に示すようなスタンパの凸部の多い部位に対応する位置の弾性率が高くなるような分布を持つ緩衝材を裏打ちしたスタンパを用いる方法を提供する。この弾性率に分布を持たせた緩衝材により、軟化した有機樹脂層への押し当ての際にスタンパ表面の凸部の分布からなる有機樹脂層への押し込み抵抗の分布に対応する力を緩衝材より与えることができ、スタンパの形状を軟化した有機樹脂層に精密に転写することができる。
【0011】
また、第2の手段として図2に示すようにスタンパ表面の凸部の多い部位にあたる部位の厚みを薄くした緩衝材を裏打ちしたスタンパを用いる方法を提供する。この手法によっても第1の手段と同様に軟化した有機樹脂層への押し当ての際にスタンパ表面の凸部の分布からなる有機樹脂層への押し込み抵抗の分布に対応する力を緩衝材より与えることができ、スタンパの形状を軟化した有機樹脂層に精密に転写することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
以下、本発明の一実施例を説明する。図5は第1の手段による転写プロセスの実施例を示す構成図である。
【0013】
まず結晶方位(100)、直径150ミリメートルのシリコンウエハ基板201にスピンコート法によりPMMA(poly(methyl−methacrylate))よりなる有機樹脂層202を形成した。有機樹脂層202の厚さは1マイクロメートルであり、融点は約220℃である。
【0014】
本実施例で使用したスタンパ1を図1に示す。本スタンパ1はニッケル電鋳膜よりなるフレキシブルスタンパ層2、及び緩衝材3からなる。緩衝材3はスクリーン印刷法により弾性率が面内分布を持つようにパターニングされている。具体的には、フレキシブルスタンパ層2表面の凸部が多い部位2aに対応する部分を弾性率の高い部位3aに、フレキシブルスタンパ層2表面の凸部が少ない部位2bに対応する部分を弾性率の低い3bというようにフレキシブルスタンパ層2の凸部の密度に応じて弾性率が高い部位と低い部位にパターニングされている。
【0015】
このスタンパ1を図5に示すように有機樹脂層202の融点を超える温度で基板201に加圧した。この時、フレキシブルスタンパ層2の凸部の多い部位2aは軟化した有機樹脂層203からより大きい抵抗力を受ける。しかし、フレキシブルスタンパ層2の凸部の多い部位2aは緩衝材3の弾性率の高い部位3aより抵抗力に応じた力を受ける。これにより、フレキシブルスタンパ層2と緩衝材3は基板のうねり201aに沿って変形することが可能となる。本実施例では、フレキシブルスタンパ層2の裏面に、面内に異なる弾性率を有する緩衝材3を配置したスタンパ1を用いることにより、スタンパ1の形状を軟化した有機樹脂層に精密に転写することができた。
【0016】
なお、本実施例では結晶方位(100),直径150ミリメートルのシリコンウエハを基板201に用いたが、基板201はシリコンウエハに限らず例えばガラスなどの無機物,ポリカーボネイトなどの有機物、あるいはこれらの積層構造体でもよい。
【0017】
また、本実施例では、基板201の表面にPMMAよりなる有機樹脂層202を形成したが、有機樹脂層202はPMMAに限らず例えばシクロオレフィンポリマー,ポリスチレン,ポリカーボネイト,ポリプロピレンなどの有機物を主成分としてもよく、またシリカなどの無機物を主成分としてもよい。
【0018】
また、本実施例では、フレキシブルスタンパ層2にニッケル電鋳膜を用いたが、特に電鋳膜であったり、材質がニッケルである必要はなく、製法はスパッタリング法,真空蒸着法,化学気相蒸着法(CVD法),バルク材からのエッチング加工や切削加工などの機械的な加工などでも良い。また、材質も鉄や銅などといったニッケル以外の金属薄膜やpoly(dimethylsiloxane)(PDMS)などの有機物よりなるフレキシブル性を有するスタンパ層でもよい。また、この後述べる緩衝材層上に直接スタンパ構造を形成してもよい。また、このフレキシブルスタンパ層の強度を補って扱いを容易にするためにこのフレキシブルスタンパ層の背面にポリイミドなどの有機物や鉄や銅などの金属薄膜などよりなる裏打ちフィルムを挿入してもよい。また、軟化した有機樹脂層203がフレキシブルスタンパ層2に付着するのを防止するためにフレキシブルスタンパ層2表面にシリコーン,フッ素樹脂,ダイヤモンドライクカーボンなどよりなる無機物、および有機物離型層を形成すれば転写精度やスタンパ寿命の向上に寄与する。
【0019】
また、本実施例では緩衝材3としてシリコーン系緩衝材である弾性率の高いKJR9051(信越シリコーン,JIS−A硬度41)と弾性率の低いKJR9060(信越シリコーン,JIS−A硬度15)を使用したが、緩衝材3はこのようなシリコーン系の緩衝材に限らず、弾性率に差の有るフッ素系樹脂などの他の弾性を有する物質によって作成しても良い。また、この異なる弾性率の緩衝材のパターニングには、本実施例で行ったスクリーン印刷法以外にステンシル印刷法,インクジェット法などの手法を適用できる。また、弾性体として光反応性樹脂などの光重合反応を起こす物質を用いることにより部分的な光重合反応によって弾性率のパターニングを行うこともできる。また、密度の分布によって弾性率の分布を形成できるような発泡樹脂や発泡金属,スプリングなどを用いて弾性率の分布を形成してもよい。また、本実施例ではあらかじめ弾性率に分布を形成した緩衝材3を使用したがフレキシブルスタンパ層2が光透過性を有する場合はこのフレキシブルスタンパ層2をマスクとして用いる光重合反応などで緩衝材3をフレキシブルスタンパ層2の背面にセットした後に弾性率の分布をつける方法も取り得るのは明らかである。
【0020】
また、本実施例では転写温度を有機樹脂層202の融点以上としたが、有機樹脂層202が変形を起こすのに十分な程度まで軟化していれば転写温度を有機樹脂層202の融点以上とする必要が無いのは明らかである。
【0021】
(実施例2)
以下、本発明の他の一実施例を説明する。図6は第2の手段による転写プロセスの実施例を示す構成図である。
【0022】
まず、結晶方位(100),直径150ミリメートルのシリコンウエハ基板201にスピンコート法によりPMMAよりなる有機樹脂層202を形成した。有機樹脂層202の厚さは1マイクロメートルであり、融点は約220℃である。
【0023】
本実施例で使用したスタンパ11を図2に示す。本スタンパ11はニッケル電鋳膜よりなるフレキシブルスタンパ層12、及び緩衝材13からなる。緩衝材13は、フレキシブルスタンパ層12表面の凸部が多い部位12aに対応する部位を薄く、フレキシブルスタンパ層12表面の凸部が少ない部位12bに対応する部位を厚くなるようにフレキシブルスタンパ層2表面の凸部の密度に応じて緩衝材13の厚さがパターニングされている。
【0024】
このスタンパ11を図6に示すように有機樹脂層202の融点を超える温度で基板201に加圧した。フレキシブルスタンパ層12と緩衝材13は基板のうねり201aに沿って変形した。この時、フレキシブルスタンパ層12の凸部の多い部位12aは軟化した有機樹脂層203からより大きい抵抗力を受ける。しかしフレキシブルスタンパ層12の凸部の多い部位12aは薄い緩衝材13より抵抗力に応じた力を受ける。このためスタンパの形状を軟化した有機樹脂層に精密に転写することができた。
【0025】
なお、本実施例では結晶方位(100),直径150ミリメートルのシリコンウエハを基板201に用いたが、基板201はシリコンウエハに限らず例えばガラスなどの無機物,ポリカーボネイトなどの有機物、あるいはこれらの積層構造体でもよい。
【0026】
また、本実施例では、基板201の表面にPMMAよりなる有機樹脂層202を形成したが、有機樹脂層202はPMMAに限らず例えばシクロオレフィンポリマー,ポリスチレン,ポリカーボネイト,ポリプロピレンなどの有機物を主成分としてもよく、またシリカなどの無機物を主成分としてもよい。
【0027】
また、本実施例では、フレキシブルスタンパ層12にニッケル電鋳膜を用いたが、特に電鋳膜であったり、材質がニッケルである必要はなく、製法はスパッタリング法,真空蒸着法,CVD法,バルク材からのエッチング加工や切削加工などの機械的な加工などでも良い。また、材質も鉄や銅などといったニッケル以外の金属薄膜やPDMSなどの有機物よりなるフレキシブル性を有するスタンパ層でもよい。また、この後述べる緩衝材層上に直接スタンパ構造を形成してもよい。また、このフレキシブルスタンパ層の強度を補って扱いを容易にするためにこのフレキシブルスタンパ層12の背面にポリイミドなどの有機物や鉄や銅などの金属薄膜などよりなる裏打ちフィルムを挿入してもよい。また、軟化した有機樹脂層203がフレキシブルスタンパ層12に付着するのを防止するためにフレキシブルスタンパ層12表面にシリコーン,フッ素樹脂,ダイヤモンドライクカーボンなどよりなる無機物、および有機物離型層を形成すれば転写精度やスタンパ寿命の向上に寄与する。
【0028】
また、本実施例では緩衝材3としてシリコーン系緩衝材であるKJR9051(信越シリコーン,JIS−A硬度41)を使用したが、緩衝材3はこのようなシリコーン系の緩衝材に限らず、フッ素系樹脂などの弾性を有する樹脂や発砲金属などの非樹脂弾性体によって作成しても良い。また、緩衝材の厚みのパターニングには、本実施例で行ったスクリーン印刷法以外にステンシル印刷法,インクジェット法,部分的な切削・研磨のような機械加工などの手法を適用できる。また、フレキシブルスタンパ層12自身の厚み変化の利用によって厚みの分布を形成しても良い。
【0029】
また、本実施例では転写温度を有機樹脂層202の融点以上としたが、有機樹脂層202が変形を起こすのに十分な程度まで軟化していれば転写温度を有機樹脂層202の融点以上とする必要が無いのは明らかである。
【0030】
(本発明の適用例)
以下、本発明のスタンパを用いるナノプリントが好ましく適用される幾つかの分野を説明する。
【0031】
(実施例3:バイオチップ)
図8はバイオチップ900の概略図である。ガラス製の基板901には深さ3マイクロメーター,幅20マイクロメーターの流路902が形成されており、
DNA(デオキシリボ核酸),血液,蛋白質などが含まれる検体を導入孔903から導入し、流路902を流した後、排出孔904へ流す構造になっている。流路902には分子フィルター905が設置されている。分子フィルター905には直径250ナノメーターから300ナノメーター、高さ3マイクロメーターの突起物集合体100が形成されている。突起物集合体100の拡大図を図7に示す。
【0032】
図9は分子フィルター905が形成されている近傍の断面鳥瞰図である。基板901には流路902が形成されており、流路902の一部には突起物集合体100が形成されている。基板901は上部基板913によって蓋をされ、検体は流路902の内部を移動することになる。例えばDNAの鎖長解析の場合、
DNAを含む検体が流路902を電気泳動する際にDNAの鎖長に応じて分子フィルター905によってDNAが高分解に分離される。分子フィルター905を通過した検体は基板901の表面に実装された半導体レーザー906からのレーザー光が照射される。DNAが通過する際に光検出器907への入射光は約4%低下するため光検出器907からの出力信号によって検体中のDNAの鎖長を解析することができる。光検出器907で検出された信号は信号配線908を介して信号処理チップ909に入力される。信号処理チップ909には信号配線910が結線されており、信号配線910は出力パッド911に結線され、外部からの端子に接続される。なお、電源は基板901の表面に設置された電源パッド912から各部品へ供給した。
【0033】
図10に分子フィルター905の断面図を示す。本実施例の分子フィルター905は、凹部を有する基板901と、基板901の凹部に形成された複数の突起物と、基板の凹部を覆うように形成された上部基板913から構成されている。ここで、突起物の先端部は上部基板と接触するように形成されている。突起物集合体100の主な成分は有機物であるため、変形することが可能であり、よって上部基板913を流路902にかぶせる際に突起物集合体100が破損することはない。従って、上部基板913と突起物集合体100が密着させることが可能となる。このような構成とすることにより、検体が突起物100と上部基板913との隙間から漏れることがなく、高感度な分析が可能となる。実際にDNAの鎖長解析を実施した結果、ガラス製の突起物集合体100では塩基対の分解能が半値幅で10塩基対であったのに対し、有機物製の突起物集合体100では塩基対の分解能が半値幅で3塩基対に改善できることが分かった。本実施例の分子フィルターでは、突起物と上部基板が直接接触する構造としたが、例えば、上部基板に突起物と同じ材料の膜を形成し、突起物とこの膜が接触する構造とすれば密着性の向上を図ることができる。
【0034】
なお、本実施例では流路902は一本であったが、異なる大きさの突起物を設置した複数の流路902を配置することで同時に異なる分析を行うことも可能である。
【0035】
また、本実施例では検体としてDNAを調べたが、突起物集合体100の表面に糖鎖,蛋白質,抗原と反応する分子を予め修飾することで特定の糖鎖,蛋白質,抗原を分析してもよい。このように、突起物の表面に抗体を修飾させることで、免疫分析の感度を向上させることができる。例えば、図11に示すように突起物集合体にさまざまな種類のDNA断片、あるいはタンパク質306を付着させることが可能である。
【0036】
本発明をバイオチップに適用することにより、直径がナノスケールの有機材料製の分析用突起物を簡便に形成できる効果を得られる。また、モールド表面の凹凸や有機材料薄膜の粘度を制御することで有機材料製突起物の位置,直径,高さを制御できる効果も得られる。高感度の分析用マイクロチップを提供することができる。
【0037】
(実施例4:多層配線基板)
図12は多層配線基板を作製するための工程を説明する図である。まず図12(a)に示すように、シリコン酸化膜1002と銅配線1003とで構成された多層配線基板1001の表面にレジスト702を形成した後にスタンパ(図示省略)によるパターン転写を行う。次に、多層配線基板1001の露出領域703をCF/Hガスによってドライエッチングすると図12(b)に示すように多層配線基板1001表面の露出領域703が溝形状に加工される。次にレジスト702をRIEによりレジストエッチングして、段差の低い部分のレジストを除去することで図12(c)に示すように露出領域703が拡大して形成される。この状態から、先に形成した溝の深さが銅配線1003に到達するまで露出領域703のドライエッチングを行うと、図12(d)に示すような構造が得られ、次にレジスト702を除去することで図12(e)に示すような、表面に溝形状を有する多層配線基板1001が得られる。この状態から、多層配線基板1001の表面にスパッタにより金属膜を形成した後(図示省略)、電解メッキを行うことで図12(f)に示すように金属メッキ膜1004が形成される。その後、多層配線基板1001のシリコン酸化膜1002が露出するまで金属メッキ膜1004の研磨を行えば、図12(g)に示すように金属配線を表面に有する多層配線基板1001を得ることができる。
【0038】
また、多層配線基板を作製するための別な工程を説明する。図12(a)で示した状態から露出領域703のドライエッチングを行う際に、多層配線基板1001内部の銅配線1003に到達するまでエッチングすることで、図12(h)に示す構造が得られる。次にレジスト702をRIEによりエッチングして、段差の低い部分のレジストを除去することで図12(i)に示す構造が得られる。この状態から、多層配線基板1001の表面にスパッタによる金属膜1005を形成すると図12(j)の構造が得られる。次にレジスト702をリフトオフで除去することで、図12(k)に示す構造が得られる。次に、残った金属膜1005を用いて電解メッキを行うことで図12(l)に示した構造の多層配線基板1001を得ることができる。
【0039】
本発明を多層配線基板に適用することで、高い寸法精度を持つ配線を形成できる。
【0040】
(実施例5:磁気ディスク)
図13は本実施の形態による磁性記録媒体の全体図及び断面拡大図である。基板は微細な凹凸を有するガラスで構成される。基板上には、シード層,下地層,磁性層,保護層が形成されている。以下、図14を用いて、本実施の形態による磁性記録媒体の製造方法を説明する。図14にナノプリント法によるガラスへの凹凸形成方法を、半径方向に切った断面図で示す。まずガラス基板を準備する。本実施の形態ではソーダライムガラスを用いた。基板の材料については平坦性を有していれば特に限定されるものではなく、アルミノシリケートガラスなどの他のガラス基板材料やAlなどの金属基板を用いても良い。そして図14(a)のように樹脂膜を200nm厚みになるようにスピンコータを用いて形成した。ここで、樹脂としては、PMMAを用いた。
【0041】
一方、スタンパとしては、磁気記録媒体中央の穴に同心円状になるように溝を形成したSiウエハを用意する。溝寸法は幅88nm,深さ200nmとし、溝と溝の間隔は110nmとした。本スタンパの凹凸は非常に微細であるので、電子線ビームを用いたフォトリソグラフィで形成した。次に図14(b)のように250℃に加熱して樹脂粘度を下げた上で、スタンパをプレスする。スタンパを樹脂のガラス転移点以下の温度で剥離すると図14(c)のようなスタンパと凹凸が逆転したパターンが得られる。ナノプリント法を用いると、このように可視光波長よりも小さい微細な、一般の光リソグラフィの露光可能寸法限度を超えたパターン形成が可能である。さらに、ドライエッチングにより、樹脂パターン底部に残った残膜を除去することにより、図14(d)のようなパターンが形成される。この樹脂膜をマスクとして用いて、さらに基板を弗酸でエッチングすることにより、図14(e)のように基板を加工することができ、樹脂を剥離液で除去することにより、図14(f)のような幅110nm深さ150nmの溝を形成した。この後、ガラス基板上にNiPからなるシード層を無電解めっきで形成する。一般的な磁気ディスクは、NiP層を10μm以上の厚みで形成するが、本実施の形態では、ガラス基板に形成した微細な凹凸形状を上層にも反映させるため、100nmに留めた。さらに一般的に磁気記録媒体形成に用いられているスパッタ法を用いて、Cr下地層15nm,CoCrPt磁性層14nm,C保護層10nmを順次成膜することにより、本実施の形態の磁気記録媒体を作製した。本実施の形態の磁気記録媒体は磁性体が幅88nmの非磁性層壁によって半径方向に隔離される。このことによって、面内磁気異方性を高めることができた。なお、研磨テープによる同心円状のパターン形成(テクスチャリング)は、従来から知られているが、パターン間隔はミクロンスケールと大きく、高密度記録媒体には適用困難である。本実施例の磁気記録媒体はナノプリント法を用いた微細パターンで磁気異方性を確保し、400Gb/平方インチもの高密度記録を実現できた。なお、ナノプリントによるパターン形成は、円周方向に限るものではなく、半径方向に非磁性隔壁を形成することができる。さらに本実施の形態で述べた磁気異方性付与効果は、シード層,下地層,磁性層,保護層の材料によって特に限定されるものではない。
【0042】
(実施例6:光導波路)
本実施例では入射光の進行方向が変わる光デバイスを光情報処理装置に適用した一例を述べる。
【0043】
図15は作製した光回路500の概略構成図である。光回路500は縦30ミリメートル,横5ミリメートル,厚さ1ミリメートルの窒化アルミニウム製の基盤501の上に、インジウムリン系の半導体レーザーとドライバ回路からなる10個の発信ユニット502,光導波路503,光コネクタ504から構成されている。なお、10個の半導体レーザーの発信波長は50ナノメートルずつ異なっており、光回路500は光多重通信系のデバイスの基本部品である。
【0044】
図16は光導波路503内部での突起物406の概略レイアウト図である。発信ユニット502と光導波路503とのアライメント誤差を許容できるように、光導波路503の端部は幅20マイクロメーターのラッパ状になっており、フォトニックバンドギャップによって信号光が幅1マイクロメーターの領域に導かれる構造になっている。なお、突起物406は間隔0.5 マイクロメーターで配列したが、図6では簡略化し実際の本数よりも突起物406を少なく記載している。
【0045】
光回路500では10種類の異なる波長の信号光を重ね合わせて出力できるが、光の進行方向を変更できるために光回路500の横幅を5ミリメートルと非常に短くでき、光通信用デバイスを小型化できる効果がある。また、モールドのプレスによって突起物406を形成できるため、製造コストを下げられる効果も得られる。本実施例では、入力光を重ね合わせるデバイスであったが、光の経路を制御する全ての光デバイスに光導波路503が有用であることは明らかである。
【0046】
本発明を光導波路に適用することにより、有機物を主成分とする突起物を周期的に配列した構造体の中に信号光を進行させることで光の進行方向を変更できる効果を得られる。また、突起物をモールドのプレスという簡便な製造技術で形成できることから、低コストに光デバイスを製造できる効果を得られる。
【0047】
【発明の効果】
本発明では、大面積を有する基板にその基板が有するマイクロメートルオーダーの歪みや、スタンパ表面の凸部の分布により生じる有機樹脂層への抵抗力の分布に左右されず、曲面を有するスタンパ表面にも全域に均一に微細形状を転写する効果を有するスタンパ,装置,プロセスを提供できる。また、このスタンパを用いることで高感度の分析用バイオチップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にて提供するスタンパ構造。
【図2】本発明にて提供する別のスタンパ構造。
【図3】従来技術によるシリコン基板上に塗付した樹脂にスタンパを押し当てることによりスタンパの形状をシリコン基板上の樹脂に転写を行うプロセス。
【図4】従来技術によるスタンパの厚みムラやスタンパの裏面の凸部等があってもスタンパの形状を均一に転写する手法。
【図5】実施例1における転写方法を説明する図。
【図6】実施例2における転写方法を説明する図。
【図7】突起物集合体の走査型電子顕微鏡により拡大した図。
【図8】実施例3のバイオチップの概略図。
【図9】分子フィルター近傍の鳥瞰図。
【図10】分子フィルターの断面図。
【図11】突起物集合体の拡大図。
【図12】多層配線基板を作製するための工程を説明する図。
【図13】磁性記録媒体の全体図及び断面拡大図。
【図14】ナノプリント法によるガラスへの凹凸形成方法を、半径方向に切った断面図。
【図15】光回路の概略構成図。
【図16】光導波路内部での突起物のレイアウト図。
【符号の説明】
1…本発明の実施例で用いたスタンパ、2,12…フレキシブルスタンパ層、2a,12a…フレキシブルスタンパ層のうち凸部の多い部位、2b,12b…フレキシブルスタンパ層のうち凸部の少ない部位、3,13…緩衝材、3a…緩衝材のうち弾性率の高い部位、3b…緩衝材のうち弾性率の低い部位、11…本発明で提供する別の構成のスタンパ、100…突起物集合体、101…シリコン基板、102,202…有機樹脂層、103…薄膜、104,113…スタンパ、105…マスクパターン、111…ベースプレート、112…感光性樹脂、
114…ビニールシート、115…弾性体、116…両面接着テープ、117…スタンパ取り付け台、201,901…基板、201a…基板のうねり、203…軟化した有機樹脂層、204…スタンパの表面形状を転写した有機樹脂層、
306…DNA断片またはタンパク質、406…突起物、500…光回路、501…基盤、502…発信ユニット、503…光導波路、504…光コネクタ、702…レジスト、703…露出領域、900…バイオチップ、902…流路、903…導入孔、904…排出孔、905…分子フィルター、906…半導体レーザー、907…光検出器、908,910…信号配線、909…信号処理チップ、
911…出力パッド、912…電源パッド、913…上部基板、1001…多層配線基板、1002…シリコン酸化膜、1003…銅配線。

Claims (13)

  1. 表面に微細な凹凸が形成されたスタンパ層と、前記スタンパ層の凹凸が形成されていない側の面に配置された緩衝材とを有し、前記緩衝材が、面内で異なる弾性率を有していることを特徴とするスタンパ。
  2. プレス装置を用いて基板上に微細構造体を形成するための表面に微細な凹凸が形成されたスタンパにおいて、前記スタンパは可撓性を有し、凹凸形成面の裏面に弾性率に面内分布を持つ緩衝材を形成していることを特徴とするスタンパ。
  3. 請求項2において、前記緩衝材は2種類以上の弾性率の異なる材質よりなることを特徴とするスタンパ。
  4. 請求項3において、スクリーン印刷法,ステンシル印刷法,インクジェット印刷法により2種類以上の弾性率の異なる緩衝材を裏面に配置したことを特徴とするスタンパ。
  5. 請求項3において、光照射によって2種類以上の弾性率の異なる緩衝材を裏面に形成したことを特徴とするスタンパ。
  6. 請求項2において、凹凸形成面の凸部の密度に応じて前記緩衝材の弾性率が調整されていることを特徴とするスタンパ。
  7. 請求項2において、凹凸形成面の凸部の多い部位に対応する部分の弾性率が高くなるように前記緩衝材の弾性率が調整されていることを特徴とするスタンパ。
  8. 請求項1に記載のスタンパを使用することを特徴とする転写装置。
  9. プレス装置を用いて基板上に微細構造体を形成するための表面に微細な凹凸が形成されたスタンパにおいて、前記スタンパは可撓性を有し、凹凸形成面の裏面に厚さの異なる緩衝材を形成していることを特徴とするスタンパ。
  10. 請求項9において、スクリーン印刷法,ステンシル印刷法,インクジェット印刷法により厚さ面内分布を持つ緩衝材を裏面に配置させることを特徴とするスタンパ。
  11. 請求項9において、凹凸形成面の凸部の密度に応じて前記緩衝材の厚さが調整されていることを特徴とするスタンパ。
  12. 請求項9において、凹凸形成面の凸部の多い部位に対応する部分の緩衝材の厚みが薄くなるように、前記緩衝材の厚さが調整されていることを特徴とするスタンパ。
  13. 請求項9に記載のスタンパを使用することを特徴とする転写装置。
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