JP4090374B2 - ナノプリント装置、及び微細構造転写方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱・加圧機構を有するスタンパを用い、基板上に微細構造体を形成するナノプリント転写法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路は微細化,集積化が進んでおり、その微細加工を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィ装置の高精度化が進められてきた。しかし、加工方法が光露光の光源の波長に近づき、リソグラフィ技術も限界に近づいてきた。そのため、さらなる微細化,高精度化を進めるために、リソグラフィ技術に代わり、荷電粒子線装置の一種である電子線描画装置が用いられるようになった。
【0003】
電子線を用いたパターン形成は、i線、エキシマレーザー等の光源を用いたパターン形成における一括露光方法とは異なり、マスクパターンを描画していく方法をとるため、描画するパターンが多ければ多いほど露光(描画)時間がかかり、パターン形成に時間がかかることが欠点とされている。そのため、256メガ、1ギガ、4ギガと、集積度が飛躍的に高まるにつれ、その分パターン形成時間も飛躍的に長くなることになり、スループットが著しく劣ることが懸念される。そこで、電子ビーム描画装置の高速化のために、各種形状のマスクを組み合わせそれらに一括して電子ビームを照射して複雑な形状の電子ビームを形成する一括図形照射法の開発が進められている。この結果、パターンの微細化が進められる一方で、電子線描画装置を大型化せざるを得ないほか、マスク位置をより高精度に制御する機構が必要になるなど、装置コストが高くなるという欠点があった。
【0004】
これに対し、微細なパターン形成を低コストで行うための技術が下記特許文献1及び2、非特許文献1などにおいて開示されている。これは、基板上に形成したいパターンと同じパターンの凹凸を有するスタンパを、被転写基板表面に形成されたレジスト膜層に対して型押しすることで所定のパターンを転写するものであり、特に特許文献2記載や非特許文献1のナノインプリント技術によれば、シリコンウエハをスタンパとして用い、25ナノメートル以下の微細構造を転写により形成可能であるとしている。
【0005】
【特許文献1】
米国特許5,259,926号公報
【特許文献2】
米国特許5,772,905号公報
【非特許文献1】
S.Y.Chou et al.,Appl.Phys.Lett.,vol.67,p.3314(1995)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、微細パターンを形成可能とされるインプリント技術によっても、スタンパ凹凸部に完全に樹脂を充填させるために、スタンパをかなりの圧力で加圧し且つ樹脂がスタンパ凹部に流動するまで加圧時間を保持しなくてはならなかった。
以上の技術課題に鑑み、本発明は、半導体デバイスなどの製造工程において、微細な形状の構造体を形成するためのパターン転写技術であるナノプリント法において、低圧で短時間に転写を行うことを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、樹脂に超音波振動を印加することで溶融粘度が低下すると考え、本発明に至った。
即ち、第1に、本発明は、ナノプリント装置の発明であり、基板上に微細構造を形成するために、基板と、表面に微細な凹凸が形成されたスタンパを、加熱・加圧するナノプリント装置において、前記ナノプリント装置は、前記スタンパを超音波で振動させる超音波発生機構を有することである。
【0008】
第2に、本発明は、パターン転写方法の発明であり、ナノプリント装置を用い、基板上に微細構造を形成するためのナノプリント用スタンパを用いるパターン転写方法において、前記スタンパに、超音波振動を印加することを特徴とする。ここで、樹脂基板または基板上の樹脂膜を成型させる方法としては、超音波を印加しながら▲1▼樹脂基板または基板上の樹脂膜を、加熱して成型させる、▲2▼樹脂基板または基板上の樹脂膜を加圧成型後に、光硬化させる、▲3▼透明スタンパ上から光を照射して、樹脂基板または基板上の樹脂膜を光硬化させる、から選択されることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
先ず、図1を参照しながら、ナノプリント方法について説明する。シリコン基板等の表面に微小なパターンを有するスタンパ(スタンパ)を作製する。これとは別の基板上に高分子膜を設ける(図(a))。図示しない加熱・加圧機構を有するプレス装置を用い、該高分子のガラス転移温度(Tg)以上の温度で、所定の圧力でスタンパ(スタンパ)を高分子膜上にプレスする(図(b))。冷却・硬化させる(図(c))。スタンパと基板を剥離して、スタンパの微細なパターンを基板上の高分子膜に転写する(図(d))。また、加熱硬化する工程の変わりに、光硬化性の樹脂を用い、成型後に、樹脂に光を照射し、樹脂を硬化させても良い。更に、ガラス等の光透過性のスタンパを用い、プレス後に、該光り透過性のスタンパの上方より光を照射して、樹脂を光硬化させてもよい。
【0010】
ナノプリント方法によれば、▲1▼集積化された極微細パターンを効率良く転写できる、▲2▼装置コストがやすい、▲3▼複雑な形状に対応できピラー形成なども可能である、等の特徴がある。
ナノプリント法の応用分野については、▲1▼DNAチップや免疫分析チップ等の各種バイオデバイス、特に使い捨てのDNAチップ等、▲2▼半導体多層配線、▲3▼プリント基板やRF MEMS、▲4▼光または磁気ストレージ、▲5▼導波路、回折格子、マイクロレンズ、偏光素子等の光デバイス、フォトニック結晶、▲6▼シート、▲7▼LCDディスプレイ、▲8▼FEDディスプレイ、等広く挙げられる。本発明はこれらの分野に好ましく適用される。
【0011】
本発明において、ナノプリントとは、数100μmから数nm程度の範囲の転写を言う。
本発明において、プレス装置は特に限定されないが、加熱・加圧機構を有するものや、光透過性スタンパの上方より光を照射できる機構を有するものが、パターン転写を効率良く行う上で好ましい。
【0012】
本発明において、スタンパは、転写されるべき微細なパターンを有するものであり、スタンパに該パターンを形成する方法は特に制限されない。例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等、所望する加工精度に応じて、選択される。スタンパの材料としては、シリコンウエハ、各種金属材料、ガラス、セラミック、プラスチック等、強度と要求される精度の加工性を有するものであれば良い。具体的には、Si、SiC、SiN、多結晶Si、ガラス、Ni、Cr、Cu、及びこれらを1種以上含むものが好ましく例示される。
【0013】
本発明において、基板となる材料は特に限定されないが、所定の強度を有するものであれば良い。具体的には、シリコン、各種金属材料、ガラス、セラミック、プラスチック、等が好ましく例示される。
【0014】
本発明において、微細な構造が転写される樹脂膜は特に限定されないが、所望する加工精度に応じて、選択される。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ガラス強化ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性ポリマー、フッ素樹脂、ポリアレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアミドビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール等の熱硬化性樹脂、及びこれらを2種以上ブレンドした材料を用いることが可能である。
【0015】
【実施例及び比較例】
本発明の実施例である、超音波振動機構がついたナノプリント装置および微細構造転写方法ついて、図2を用いて説明する。図2は概念図であり、パターン形状は単純化しかつ大きめに書かれていることを断っておく。
[実施例1:超音波振動機構がついたナノプリント装置]
はじめに装置の概要について説明する。まず、図2中、1は装置本体のフレームであり、2はヘッド水平化機構であり、ヘッドがステージと常に平行に接するように調整する働きを有する。3は超音波振動機構付ヘッドで6inchφの加圧面積を持ち、ヘッド水平化機構2を介してフレームに固定されている。この超音波振動機構付ヘッド3これに接続された超音波発振回路により周波数、パワー、発信時間をコントロールすることができる。また、4はサンプルを搭載するステージで6inchφの円形であり、このステージは外部のコントローラにより加熱、冷却が可能で温度コントロールすることができる。また、基板を固定するための真空チャックも表面に形成されている。このステージ4は支持体5を介してステージ加圧機構6と接続されており、微細な構造が形成されたスタンパ7およびサンプル8を加圧する。ステージ加圧機構6は空気圧により最大7000kgfの推力を発生する。この推力は外部コントローラにより圧縮圧力および時間をコントロールすることができる。また、本装置のステージ4および超音波発振機構付ヘッドは真空チャンバ9内に収められている。真空チャンバ9はSUS製で2つの部分から構成されており、サンプル出し入れ時、真空チャンバ開閉機構10により開閉することができる。また、真空チャンバは真空ポンプに接続されており、0.1torr以下に減圧することが可能である。
【0016】
[実施例2:微細構造転写方法]
次に、上記装置を用い微細構造を転写する方法について具体的に説明する。はじめに被転写体であるサンプルはポリスチレン679(エー・アンド・エムポリスチレン製)をエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに10%溶解させたワニスを作成した後、厚さ0.5mmの5inch Si基板上にスピン塗布し、90℃/5分プリベークして500nm厚のポリスチレン層が形成されたサンプル7を作成し、これをステージ4中心部にセッティングした。
【0017】
次に、Ni電鋳法により作成されたパターン形成エリアが4inchφ、外形8inchφ、厚さ100μmの表面にnmオーダーの微細な凹凸が形成されたNiスタンパ7をステージ4上に置かれたサンプル8上にセットした。今回はサンプルをセットした後、スタンパをサンプル上にセットしたが、あらかじめ、スタンパとサンプルを別の場所で位置合わせをした後、本装置のステージ上に搭載してもかまわない。また、あらかじめ、スタンパを本装置の超音波発信機構付きヘッドに固定し、サンプルのみをステージ上にセットする場合もある。また、必要に応じてサンプルの下にサンプルとスタンパを均一に加圧するための緩衝材を敷いてもよい。
【0018】
次に、真空チャンバ9を閉じロータリーポンプにてチャンバ内部の圧力が0.1torr以下まで脱気した。次にサンプルを200℃まで加熱した後、2MPa加圧した。次に出力200W、28kHzで上下振幅1μmの超音波振動を30秒印加した。次に、ステージ4を冷却し100℃まで強制冷却した後、チャンバを大気開放した。次に、サンプル8をステージ4に真空チャックにより固定し、スタンパ7をヘッド3に固定し、0.1mm/sの速度でステージを下げることによりスタンパ7とサンプル8とを剥離した。
【0019】
以上のプロセスによりサンプル表面にスタンパのパターンを転写した。この転写されたパターンをSEMにより観察したところスタンパの形状が精度よく転写されていた。また、転写工程にスタンパを超音波振動させることにより樹脂の溶融粘度が低下し、スタンパ微細パターン内部に効率よく充填されるため、低圧で短時間で微細構造を転写できた。
【0020】
尚、本実施例は加熱溶融させた後、スタンパを加圧させパターンを転写するタイプのナノプリント装置であったが、上記Niスタンパの代わりに石英のような光透過性のスタンパを用い、光感光性の液状樹脂を基板上に塗布後、室温で超音波振動を加えながら加圧し露光硬化してパターンを形成することもできる。
【0021】
[比較例]
実施例1のナノプリント装置を用い、実施例2と同様のサンプルを用い以下のプロセスでパターンの転写を行った。
サンプルセットの後、真空チャンバ9を閉じロータリーポンプにてチャンバ内部の圧力が0.1torr以下まで脱気した。次にサンプルを200℃まで加熱した後、超音波を印加せず30秒間2MPa加圧した。次に、ステージ4を冷却し100℃まで強制冷却した後、チャンバを大気開放した。次に、サンプル8をステージ4に真空チャックにより固定し、スタンパ7をヘッド3に固定し、0.1mm/sの速度でステージを下げることによりスタンパ7とサンプル8とを剥離した。
本比較例によるナノプリントサンプルをSEMにて観察したところ、樹脂がまだよくスタンパ内部に充填されなかったためパターンの欠陥が目立った。
【0022】
【本発明の適用例】
以下、本発明の剥離機構付きスタンパを用いるナノプリントが好ましく適用される幾つかの分野を説明する。
[実施例3:バイオ(免疫)チップ]
図3はバイオチップ900の概略図である。ガラス製の基板901には深さ3マイクロメーター,幅20マイクロメーターの流路902が形成されており、DNA(デオキシリボ核酸),血液,蛋白質などが含まれる検体を導入孔903から導入し、流路902を流した後、排出孔904へ流す構造になっている。流路902には分子フィルター905が設置されている。分子フィルター905には直径250ナノメーターから300ナノメーター,高さ3マイクロメーターの突起物集合体100が形成されている。
【0023】
図4は分子フィルター905が形成されている近傍の断面鳥瞰図である。基板901には流路902が形成されており、流路902の一部には突起物集合体100が形成されている。基板901は上部基板1001によって蓋をされ、検体は流路902の内部を移動することになる。例えばDNAの鎖長解析の場合、DNAを含む検体が流路902を電気泳動する際にDNAの鎖長に応じて分子フィルター905によってDNAが高分解に分離される。分子フィルター905を通過した検体は基板901の表面に実装された半導体レーザー906からのレーザー光が照射される。DNAが通過する際に光検出器907への入射光は約4%低下するため光検出器907からの出力信号によって検体中のDNAの鎖長を解析することができる。光検出器907で検出された信号は信号配線908を介して信号処理チップ909に入力される。信号処理チップ909には信号配線910が結線されており、信号配線910は出力パッド911に結線され、外部からの端子に接続される。なお、電源は基板901の表面に設置された電源パッド912から各部品へ供給した。
【0024】
図5に分子フィルター905の断面図を示す。本実施例の分子フィルター905は、凹部を有する基板901と、基板901の凹部に形成された複数の突起物と、基板の凹部を覆うように形成された上部基板1001から構成されている。ここで、突起物の先端部は上部基板と接触するように形成されている。突起物集合体100の主な成分は有機物であるため、変形することが可能であり、よって上部基板1001を流路902にかぶせる際に突起物集合体100が破損することはない。従って、上部基板1001と突起物集合体100を密着させることが可能となる。このような構成とすることにより、検体が突起物と上部基板1001との隙間から漏れることがなく、高感度な分析が可能となる。実際にDNAの鎖長解析を実施した結果、ガラス製の突起物集合体100では塩基対の分解能が半値幅で10塩基対であったのに対し、有機物製の突起物集合体100では塩基対の分解能が半値幅で3塩基対に改善できることが分かった。本実施例の分子フィルターでは、突起物と上部基板が直接接触する構造としたが、例えば、上部基板に突起物と同じ材料の膜を形成し、突起物とこの膜が接触する構造とすれば密着性の向上を図ることができる。
なお、本実施例では流路902は一本であったが、異なる大きさの突起物を設置した複数の流路902を配置することで同時に異なる分析を行うことも可能である。
【0025】
また、本実施例では検体としてDNAを調べたが、突起物集合体100の表面に糖鎖,蛋白質,抗原と反応する分子を予め修飾することで特定の糖鎖,蛋白質,抗原を分析してもよい。このように、突起物の表面に抗体を修飾させることで、免疫分析の感度を向上させることができる。
【0026】
本発明をバイオチップに適用することにより、直径がナノスケールの有機材料製の分析用突起物を簡便に形成できる効果を得られる。また、モールド表面の凹凸や有機材料薄膜の粘度を制御することで有機材料製突起物の位置,直径,高さを制御できる効果も得られる。高感度の分析用マイクロチップを提供することができる。
【0027】
[実施例4:多層配線基板]
図6は多層配線基板を作製するための工程を説明する図である。まず図6(a)に示すように、シリコン酸化膜1002と銅配線1003とで構成された多層配線基板1001の表面にレジスト702を形成した後にスタンパ(図示省略)によるパターン転写を行なう。次に、多層配線基板1001の露出領域703をCF4/H2ガスによってドライエッチングすると図6(b)に示すように多層配線基板1001表面の露出領域703が溝形状に加工される。次にレジスト702をRIEによりレジストエッチングして、段差の低い部分のレジストを除去することで図6(c)に示すように露出領域703が拡大して形成される。この状態から、先に形成した溝の深さが銅配線1003に到達するまで露出領域703のドライエッチングを行うと、図6(d)に示すような構造が得られ、次にレジスト702を除去することで図6(e)に示すような、表面に溝形状を有する多層配線基板1001が得られる。この状態から、多層配線基板1001の表面にスパッタにより金属膜を形成した後(図示省略)、電解メッキを行なうことで図6(f)に示すように金属メッキ膜1004が形成される。その後、多層配線基板1001のシリコン酸化膜1002が露出するまで金属メッキ膜1004の研磨を行なえば、図6(g)に示すように金属配線を表面に有する多層配線基板1001を得ることができる。
【0028】
また、多層配線基板を作製するための別な工程を説明する。図6(a)で示した状態から露出領域703のドライエッチングを行なう際に、多層配線基板1001内部の銅配線1003に到達するまでエッチングすることで、図6(h)に示す構造が得られる。次にレジスト702をRIEによりエッチングして、段差の低い部分のレジストを除去することで図6(i)に示す構造が得られる。この状態から、多層配線基板1001の表面にスパッタによる金属膜1005を形成すると図6(j)の構造が得られる。次にレジスト702をリフトオフで除去することで、図6(k)に示す構造が得られる。次に、残った金属膜1005を用いて無電解メッキを行なうことで図6(l)に示した構造の多層配線基板1001を得ることができる。
本発明を多層配線基板に適用することで、高い寸法精度を持つ配線を形成できる。
【0029】
[実施例5:磁気ディスク]
図7は本実施例による磁性記録媒体の全体図及び断面拡大図である。基板は微細な凹凸を有するガラスで構成される。基板上には、シード層、下地層、磁性層、保護層が形成されている。以下、図8を用いて、本実施例による磁性記録媒体の製造方法を説明する。図8にナノプリント法によるガラスへの凹凸形成方法を、半径方向に切った断面図で示す。まずガラス基板を準備する。本実施の形態ではソーダライムガラスを用いた。基板の材料については平坦性を有していれば特に限定されるものではなく、アルミノシリケートガラスなどの他のガラス基板材料やAlなどの金属基板を用いても良い。そして図8(a)のように樹脂膜を200nm厚みになるようにスピンコータを用いて形成した。ここで樹脂としては、PMMA(ポリメチルメタクリレート)を用いた。
【0030】
一方、金型としては、磁気記録媒体中央の穴に同心円状になるように溝を形成したSiウエハを用意する。溝寸法は幅88nm、深さ200nmとし、溝と溝の間隔は110nmとした。本金型の凹凸は非常に微細であるので、電子線ビームを用いたフォトリソグラフィで形成した。次に図8(b)のように250℃に加熱して樹脂粘度を下げた上で、金型をプレスする。金型を樹脂のガラス転移点以下の温度で離型すると図8(c)のような金型と凹凸が逆転したパターンが得られる。ナノプリント法を用いると、このように、可視光波長よりも小さい微細な、一般の光リソグラフィの露光可能寸法限界を超えたパターン形成が可能である。さらに、ドライエッチングにより、樹脂パターン底部に残った残膜を除去することにより、図8(d)のようなパターンが形成される。この樹脂膜をマスクとして用いて、さらに基板を弗酸でエッチングすることにより、図8(e)のように基板を加工することができ、樹脂を剥離液で除去することにより、図8(f)のような幅110nm深さ150nmの溝を形成した。この後、ガラス基板上にNiPからなるシード層を無電解めっきで形成する。一般的な磁気ディスクは、NiP層を10μm以上の厚みで形成するが、本実施の形態では、ガラス基板に形成した微細な凹凸形状を上層にも反映させるため、100nmに留めた。さらに一般的に磁気記録媒体形成に用いられているスパッタ法を用いて、Cr下地層15nm、CoCrPt磁性層14nm、C保護層10nmを順次成膜することにより、本実施の形態の磁気記録媒体を作製した。本実施の形態の磁気記録媒体は磁性体が幅88nmの非磁性層壁によって半径方向に隔離される。このことによって、面内磁気異方性を高めることができた。なお、研磨テープによる同心円状のパターン形成(テクスチャリング)は、従来から知られているが、パターン間隔はミクロンスケールと大きく、高密度記録媒体には適用困難である。本実施例の磁気記録媒体はナノプリント法を用いた微細パターンで磁気異方性を確保し、400Gb/平方インチもの高密度記録を実現できた。なお、ナノプリントによるパターン形成は、円周方向に限るものではなく、半径方向に非磁性隔壁を形成することができる。さらに本実施の形態で述べた磁気異方性付与効果は、シード層、下地層、磁性層、保護層の材料によって特に限定されるものではない。
【0031】
[実施例6:光導波路]
本実施例では入射光の進行方向が変わる光デバイスを光情報処理装置に適用した一例を述べる。
図9は作製した光回路500の概略構成図である。光回路500は縦30ミリメートル,横5ミリメートル,厚さ1ミリメートルの窒化アルミニウム製の基盤501の上に、インジウムリン系の半導体レーザーとドライバ回路からなる10個の発信ユニット502,光導波路503,光コネクタ504から構成されている。なお、10個の半導体レーザーの発信波長は50ナノメートルずつ異なっており、光回路500は光多重通信系のデバイスの基本部品である。
【0032】
図10は光導波路503内部での突起物406の概略レイアウト図である。発信ユニット502と光導波路503とのアライメント誤差を許容できるように、光導波路503の端部は幅20マイクロメーターのラッパ状になっており、フォトニックバンドギャップによって信号光が幅1マイクロメーターの領域に導かれる構造になっている。なお、突起物406は間隔0.5 マイクロメーターで配列したが、図21では簡略化し実際の本数よりも突起物406を少なく記載している。
【0033】
光回路500では10種類の異なる波長の信号光を重ね合わせて出力できるが、光の進行方向を変更できるために光回路500の横幅を5ミリメートルと非常に短くでき、光通信用デバイスを小型化できる効果がある。また、モールドのプレスによって突起物406を形成できるため、製造コストを下げられる効果も得られる。本実施例では、入力光を重ね合わせるデバイスであったが、光の経路を制御する全ての光デバイスに光導波路503が有用であることは明らかである。
【0034】
本発明を光導波路に適用することにより、有機物を主成分とする突起物を周期的に配列した構造体の中に信号光を進行させることで光の進行方向を変更できる効果を得られる。また、突起物をモールドのプレスという簡便な製造技術で形成できることから、低コストに光デバイスを製造できる効果を得られる。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、スタンパに超音波発生機構を設けることで、プレス圧力の低圧化と加圧時間の短縮しパターン転写を高精度に行うことを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】ナノプリントの各工程を示す模式図。
【図2】超音波振動機構がついたナノプリント装置。
【図3】バイオチップの概略図。
【図4】分子フィルターが形成されている近傍の断面鳥瞰図。
【図5】分子フィルターの断面図。
【図6】多層配線基板を作製するための工程を説明する図。
【図7】磁性記録媒体の全体図及び断面拡大図。
【図8】ナノプリント法によるガラスへの凹凸形成方法を、半径方向に切った断面図。
【図9】光回路500の概略構成図。
【図10】光導波路内部での突起物の概略レイアウト図。
【符号の説明】
1:フレーム、2:ヘッド水平化機構、3:ヘッド、4:ステージ、5:支持体、6:ステージ加圧機構、7:スタンパ、8:サンプル、9:真空チャンバ、10:真空チャンバ開閉機構。
Claims (2)
- 基板上の樹脂膜表面上に微細構造を形成するために、樹脂膜と、表面に微細な凹凸が形成されたスタンパを、加熱・加圧し、前記スタンパの凹部に樹脂を充填し基板上の樹脂膜表面に微細構造を転写するナノプリント装置において、前記ナノプリント装置は、前記樹脂膜のガラス転移温度以上の温度に前記樹脂膜を加熱、加圧する加熱・加圧機構と、前記樹脂膜と前記スタンパの加熱・加圧時に前記スタンパを超音波で振動させる超音波発生機構とを有し、前記超音波発生機構によって発生される超音波振動は前記スタンパの縦方向であることを特徴とするナノプリント装置。
- ナノプリント装置を用い、基板上の樹脂膜表面上に微細構造を形成するパターン転写方法において、前記樹脂膜のガラス転移温度以上の温度に前記樹脂膜を加熱する工程と、表面に微細な凹凸が形成されたスタンパを前記樹脂膜上に加圧し、前記樹脂膜と前記スタンパの加熱・加圧時に前記スタンパに超音波振動を印加することで前記スタンパの凹部に樹脂を充填する工程を有し、前記超音波振動は前記スタンパの縦方向であることを特徴とするパターン転写方法。
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