JP2004292583A - ガスバリアコート剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガスバリア層として、ポリビニルアルコール系樹脂を使用し、90%RHを越えるような高湿度下でも極めて優れたガスバリア性を示し、且つ、シール層を設けた場合のボイル後のガスバリア性に優れ、さらには、ガスバリア層に着色がなくフィルム外観にも優れるガスバリア層を形成し得るガスバリアコート剤及び該ガスバリアコート剤の評価方法を提供すること。
【解決手段】珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水性溶液よりなるガスバリアコート剤であって、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が0.9以上であるガスバリアコート剤。
【選択図】 なし
【解決手段】珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水性溶液よりなるガスバリアコート剤であって、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が0.9以上であるガスバリアコート剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はガスバリア性に優れたガスバリア層を形成するガスバリアコート剤及び該ガスバリアコート剤の評価方法に関する。詳しくは、高湿度下での極めて優れたガスバリア性、更には熱水中でのボイル処理後も優れたガスバリア性を保持することができるガスバリア層を形成するガスバリアコート剤及び該ガスバリアコート剤の評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムは、優れた透明性、機械強度、加工適性、製袋性等の二次加工性等により、包装用フィルムとして汎用されている。
【0003】
上記熱可塑性樹脂フィルムに酸素バリア性等のガスバリア性機能を付与させる目的で、該熱可塑性樹脂フィルムのフィルム表面に塩化ビニリデン系樹脂や、ポリビニルアルコール系樹脂等のガスバリア性を有する樹脂からなる層を積層することが行われている。
【0004】
しかし、塩化ビニリデン系樹脂はガスバリア性には優れるものの、塩素系樹脂であるため焼却性や廃棄性に関してデメリットがある。また、ポリビニルアルコール系樹脂は、乾燥状態での酸素バリア性は優れているものの、高湿度下での酸素バリア性が、吸湿により極端に低下するという問題がある。
【0005】
このため、架橋や変性処理をしたり、他の化合物と複合したりする工夫がなされている。例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂フィルム上に、シリカ/ポリビニルアルコール系複合ポリマーからなる被覆層を設けたガスバリア性フィルムが開示されている。また、特許文献2には、熱可塑性樹脂フィルム上に金属アルコキシドあるいは金属アルコキシドの加水分解物と、ポリビニルアルコールなど水酸基を有する水溶性樹脂との複合物からなる被膜を設けたガスバリア性フィルムが開示されている。
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1及び特許文献2に記載のガスバリア性フィルムは、高湿度下での酸素バリア性が吸湿により極端に低下するという問題の改善が図れるものの、特に90%RHを越えるような高湿度下では、そのガスバリア効果は十分でないのが現状であった。
【0007】
また、上記複合物からなるガスバリア層において更にガスバリア性能を改良したフィルムとして、特許文献3には、熱可塑性樹脂フィルム上にポリビニルアルコールなど水酸基を有する水溶性樹脂、無機層状化合物及び金属アルコキシドの加水分解物よりなる複合物からなる被膜を設けたガスバリア性フィルムも開示されているが、かかるガスバリア性フィルムにおいても、高湿度下でのガスバリア性、更には、熱水中でのボイル後におけるガスバリア性について、未だ改善の余地があった。
【0008】
また、ガスバリアコート剤の性能を評価する手段としては、実際にガスバリアコート剤を基材上に塗布してガスバリア層を形成させてガスバリア性フィルムとし、そのガスバリア性や熱水中でのボイル後におけるガスバリア性を評価する方法が行われる。しかしながら、そのような方法は煩雑であり、かつ評価結果が確定するまでに1日〜数日間を要するという問題があるため、ガスバリアコート剤が十分な性能を有しているか否かをガスバリア性フィルムとすることなく迅速に評価する方法が求められていた。また、ガスバリアコート剤の簡易的な性能評価法として、pH、粘度などの測定が用いられる場合もあるが、これらの測定値に有意差が認められないガスバリアコート剤であっても、該ガスバリアコート剤から形成されるガスバリア層のガスバリア性に顕著な違いがある場合があることから、これらの方法はガスバリアコート剤の性能を評価するには不十分であった。
【0009】
【特許文献1】
特開昭56−4563号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開平6−192454号公報(請求項1−3)
【特許文献3】
特開2000−43219号公報(請求項1−6)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、90%RHを越えるような高湿度下でも極めて優れたガスバリア性を示し、且つ、ボイル後のガスバリア性にも優れたガスバリア層を形成するガスバリアコート剤及び該ガスバリアコート剤の性能を容易に評価することができるガスバリアコート剤の評価方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水性溶液よりなるガスバリアコート剤であって、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が0.9以上であるガスバリアコート剤を、熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層上に塗布して形成して得られるガスバリア層は、高湿度下で極めて優れた酸素バリア性を示し、更には熱水中でのボイル処理後も優れたガスバリア性を保持することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水性溶液よりなるガスバリアコート剤であって、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が0.9以上であることを特徴とするガスバリアコート剤、及びポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)により、ガスバリアコート剤を評価することを特徴とするガスバリアコート剤の評価方法を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のガスバリアコート剤は、珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水性溶液より構成される。
【0014】
本発明においては、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が0.9以上であることが重要であり、より好ましくは1.1以上、さらに好ましくは1.3以上である。WS1/WPの値が小さくなると高湿度下でのガスバリア性、更には熱水中でのボイル処理後のガスバリア性が悪化し、特にWS1/WPの値が0.9未満のガスバリアコート剤では著しく悪化する。
【0015】
また、本発明のガスバリアコート剤においては、さらにポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)が0.4以上であることが、高湿度下および熱水中でのボイル処理後の優れたガスバリア性の保持の点から好ましく、0.5以上がより好ましく、0.6以上がさらに好ましい。
【0016】
ここで、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)は、ガスバリアコート剤を調製する際に配合したポリビニルアルコール系樹脂の重量である。分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)、分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)、および特定分子量以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)は以下の方法で求められる値であり、SiO2換算値である。また、本発明における珪素アルコキシド縮合物の分子量は、トリメチルシリル誘導体化された珪素アルコキシド縮合物の分子量である。
【0017】
はじめに、ガスバリアコート剤に含まれる珪素アルコキシド縮合物をトリメチルシリル誘導体化する。誘導体化には、公知の方法(例えばC.W.Lentz, Inorg.Chem., 3,574−579 1964記載の方法や、I.Hasegawa et al,Bull.Chem.Soc.Jpn.,59,2279−2283 1986記載の方法等)を用いることができる。この操作の結果、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の溶液(A)が得られる。
【0018】
次に、溶液(A)に含まれる誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量分布を求めるが、分子量650以上の領域における分子量分布はゲル浸透クロマトグラフィーにより求め、分子量650以下の領域においては別途ガスクロマトグラフ/質量分析計により求めて、両者の結果を合算することで、全分子量領域における分子量分布を求める。このような方法により分子量分布を求める理由は、ゲル浸透クロマトグラフィーの一般的な測定条件では分子量数百以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物を定量することが困難であり、ガスクロマトグラフ/質量分析計では分子量数百以上の珪素アルコキシド縮合物の定量が困難であるためである。
【0019】
分子量分布の測定について詳述すれば、まずゲル浸透クロマトグラフィーにより、上記の溶液(A)を分析し、得られたクロマトグラムより、分子量650以上の領域における誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の全ピーク面積(PA)および積分分子量分布曲線(FA)を算出する。積分分子量分布曲線とは、横軸が分子量の常用対数、縦軸がその分子量に対する累積重量分率である分子量分布曲線である。クロマトグラムを積分分子量分布曲線に換算する方法としては、分子量標準にポリスチレンを用いて、一般的なゲル浸透クロマトグラフィー測定において行われる方法により保持時間を分子量に換算し、さらに、公知の方法(例えば森定雄、「サイズ排除クロマトグラフィー」、共立出版株式会社、1991のp49−62に記載の方法)や、市販の高速液体クロマトグラフ装置に付属する解析ソフトウェアなどを用いて積分分子量分布曲線に換算する。ゲル浸透クロマトグラフィーの測定条件としては、例えば移動相にテトラヒドロフラン、検出器に示差屈折率検出器を用いればよい。
【0020】
次に、分子量650以上の珪素アルコキシド縮合物を既知量(WB)含む標準溶液(B)を、上記の方法にてトリメチルシリル誘導体化し、上記と同様にしてゲル浸透クロマトグラフィーで分析し、既知量(WB)の珪素アルコキシド縮合物に対応する全ピーク面積(PB)を得る。この結果より、クロマトグラムの全ピーク面積と珪素アルコキシド縮合物量の換算係数(WB/PB)を得る。標準溶液(B)に含まれる珪素アルコキシド縮合物は、本発明によるガスバリアコート剤を構成する珪素アルコキシド縮合物と同種のものを用いることが好ましい。また、標準溶液(B)の調製方法は、含まれる珪素アルコキシド縮合物の種類により適当な方法を用いればよいが、たとえば既知量(WB)のテトラエトキシシランを水70重量部:エタノール30重量部の混合溶媒に加え、24時間攪拌して、既知量(WB)のテトラエトキシシランを全て分子量650以上の縮合物とすることにより調製できる。
【0021】
次に、上記で求めた溶液(A)中の分子量650以上の領域における誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の全ピーク面積(PA)に、クロマトグラムの全ピーク面積と珪素アルコキシド縮合物量の換算係数(WB/PB)を乗じることで、溶液(A)中の分子量650以上の領域における誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WA)を算出する。さらに、上記により求めた積分分子量分布曲線(FA)の縦軸にWAを乗じることで、分子量650以上の領域における、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量と、その分子量に対する累積重量との関係を示す曲線(FB)を得る。
【0022】
次に、溶液Aに含まれる分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)を求めるが、その手順は以下のとおりである。
【0023】
ガスクロマトグラフ/質量分析計により、溶液(A)を分析し、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の質量スペクトルおよびクロマトグラムを得る。ガスクロマトグラフ/質量分析計の測定条件は、一般的な条件を用いることができる。質量スペクトルより、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量(MC)を得る。また、クロマトグラムにおける誘導体化した珪素アルコキシド縮合物のピーク面積を、既知量の標準物質をガスクロマトグラフ/質量分析計で分析して得られるピーク面積から作成した検量線により、溶液(A)中でのモル数(C)に換算する。ただし、MCが650以上のピークについては無視する。また、検量線用の標準物質としては、分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物に類似した構造をもつ化合物、たとえばテトラキス(トリメチルシリルオキシ)シランなどを用いるのが好適である。このモル数(C)に、上記分子量(MC)を乗じることにより、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)を得る。クロマトグラム上に複数種の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物のピークが現れる場合は、分子量650以下の全ての珪素アルコキシド縮合物のピークについて、上記の方法によりそれぞれの種の存在量を求めて合計し、分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)とする。
【0024】
次に、上記により求めた、分子量650以上の領域における誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量とその分子量に対する累積重量との関係を示す曲線(FB)に、分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)を加算し、さらに縦軸の珪素アルコキシド縮合物量をSiO2重量に換算することで、全分子量領域における、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量と、その分子量に対するSiO2換算での累積重量との関係を示す曲線(FC)を得る。この曲線(FC)の横軸は分子量の常用対数であり、縦軸の値はその分子量に対する誘導体化した珪素アルコキシド縮合物のSiO2換算での累積重量、即ちその分子量以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)を表す。この曲線より、分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)を求める。
上記により求めた分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)を、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)で除することで、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)を算出することができる。
【0025】
また、同様にして、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)や、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する特定分子量以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)の割合(WS/WP)を求めることができる。
【0026】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する特定分子量(MS)以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)の割合(WS/WP)は、MSが100〜10000という比較的小さな分子量範囲において、より高いことが好ましい。
【0027】
このことから、分子量10000以下という比較的小さな分子量の珪素アルコキシド縮合物がポリビニルアルコール系樹脂量に対して一定割合以上存在する本発明のガスバリアコート剤では、小さな分散粒子径をもつ珪素アルコキシド縮合物が良好に分散したガスバリア層が形成されると考えられる。
【0028】
すなわち、正確な理由は不明であるが、珪素アルコキシド縮合物の分散粒子径が小さく、かつ良好な分散状態であることが、高湿度下で極めて優れた酸素バリア性を示し、更には熱水中でのボイル処理後も優れたガスバリア性を保持するために好ましい。
【0029】
本発明のガスバリアコート剤の一構成成分であるポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルアルコール系重合体及びその誘導体が使用される。例えば、けん化度75モル%以上のポリビニルアルコール、全水酸基の40モル%以下がアセタール化されているポリビニルアルコール、アルコール可溶変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール単位が60モル%以上であるエチレン−ビニルアルコール共重合体等の共重合ポリビニルアルコール等が好ましく用いられる。その中でも、けん化度75モル%以上のポリビニルアルコールが得られるフィルムの透明性や高湿度下でのガスバリア性が良好なことからより好ましく用いられる。
【0030】
また、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、加工性を勘案すると、300〜5000であることが好ましく、500〜3500であることがより好ましい。
【0031】
本発明のガスバリアコート剤の一構成成分である珪素アルコキシドの加水分解物には、珪素アルコキシドのアルコキシ基の一部又は全部の加水分解による生成物、珪素アルコキシドの重縮合体、該重縮合体のアルコキシ基の一部又は全部の加水分解による生成物、およびそれらの種々の混合物が包含される。
【0032】
上記珪素アルコキシドとしては、加水分解物が形成可能であれば特に制約されない。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリプロポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、1−アミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチルアミノメチルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等の加水分解物が形成可能な珪素アルコキシドが挙げられる。
【0033】
珪素アルコキシド重縮合体や該重縮合体のアルコキシ基の一部又は全部の加水分解による生成物には、上記珪素アルコキシドの加水分解とともに起こる、脱水及び/又は脱アルコールによる重縮合反応の結果として形成されるものが包含される。
【0034】
上記ガスバリアコート剤において、珪素アルコキシドの加水分解物は、珪素アルコキシド由来の珪素がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、SiO2換算で90〜500重量部、好ましくは、100〜350重量部、より好ましくは、100〜250重量部、となるように存在せしめることが優れたガスバリア性を示し、且つ、シール層を設けた場合のボイル後のガスバリア性に優れた性能を発揮するために好ましい。
【0035】
本発明のガスバリアコート剤の一構成成分である層状珪酸塩としては、公知のものが特に制限なく使用される。例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、有機ベントナイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、クリソタイル、リザーダイト、アンチゴライト、ペコラアイト、ネポーアイト、グリーナライト、カリオピライト、アメサイト、Alリザーダイト、バーチェリン、ブリンドリアイト、ケリアイト、クロンステダイト、パイロフィライト、タルク、ケロライト、ウイレムスアイト、ピメライト、ミネソタアイト、雲母、白雲母、フェンジャイト、イライト、セリサイト、海緑石、セラドナイト、トベライト、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、緑泥石、バーミキュライト等が挙げられる。これらの多くは天然の鉱物として産するが、化学合成法によって製造されたものでも良い。
【0036】
そのうち、モンモリロナイトを使用して得られたガスバリア性フィルムが、ガスバリア性に優れ、好適である。
【0037】
本発明のガスバリアコート剤において、層状珪酸塩は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、10〜150重量部、好ましくは、20〜100重量部となるように存在せしめることが、優れたガスバリア性を示し、且つ,シール層を設けた場合のボイル後のガスバリア性に優れた性能を発揮するために好ましい。
【0038】
本発明のガスバリアコート剤は、水単独、或いは水と相溶性があり且つ乾燥が容易な有機溶媒と水との混合溶媒を溶媒とする水性溶液である。この中でも、ガスバリアコート剤を容易に製造すること、及び基材層との積層を勘案すると、水/低級アルコール混合溶媒を用いることが好適である。
【0039】
上記低級アルコールとしては、炭素数が1〜3のアルコール、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、またはイソプロピルアルコールが好適である。
【0040】
また、上記の場合、水/アルコールの混合割合は、重量比で99/1〜20/80の範囲から適宜選択される。
【0041】
本発明のガスバリアコート剤において、前記ポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、0.1〜20重量%となるように決定すればよく、より好ましくは、溶媒に対するポリビニルアルコール系樹脂の濃度が1〜10重量%となる範囲から決定される。
【0042】
また、本発明のガスバリアコート剤の成分は、珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩及びポリビニルアルコール系樹脂よりなるものであれば特に制限されないが、ガスバリア層の形成時のクラック発生を防止し、また、使用時におけるフィルムの変形時においてもガスバリア層のクラック発生を防止するため、上記成分の他に、ポリエチレンオキシドを配合することが好ましい。該ポリエチレンオキシドとしては、平均分子量の高いものほどその効果が高く、平均分子量10万以上が好ましく、平均分子量50万以上がより好ましく、平均分子量200万以上のものが更に好ましく使用される。
【0043】
なお、該ポリエチレンオキシドの分子鎖末端は、水酸基でもあるいは化学修飾されていても何ら制限されないが、通常は、両末端が水酸基であるものが好ましく採用される。
【0044】
上記ポリエチレンオキシドは、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部、好ましくは、0.5〜2重量部の割合で配合することが好ましい。
【0045】
また、本発明のガスバリアコート剤の成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を配合してもよい。
【0046】
例えば、ウレタン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤等の架橋剤、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等のカップリング剤、水性イソシアネート、水性ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン、水性エポキシエステル等の水溶性アンカーコート剤、アルミ系有機化合物、ジルコニア系有機化合物等が挙げられる。
【0047】
本発明のガスバリアコート剤は、pHが1〜5、好ましくは2〜4に調整されたポリビニルアルコール系樹脂の水性溶液に分散された層状珪酸塩の存在下に、珪素アルコキシドを加水分解して得ることが、高湿度下で極めて優れた酸素バリア性を示し、更には熱水中でのボイル処理後も優れたガスバリア性を保持するために好ましい。
【0048】
本発明のガスバリアコート剤は、層状珪酸塩を分散したポリビニルアルコール系樹脂の水性溶液中で珪素アルコキシドの一部又は全部を加水分解し、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が0.9以上となるように製造される。
【0049】
本発明のガスバリアコート剤の好適な調整方法について詳述すれば、先ず、層状珪酸塩を予め分散したポリビニルアルコール系樹脂の水性溶液を、公知の微分散装置、例えば、超音波分散、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ホモミキサー、ウルトラミキサー、ディスパーミキサー、貫通型高圧分散装置、衝突型高圧分散装置、多孔型高圧分散装置、だまとり型高圧分散装置、(衝突+貫通)型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー等によって分散化する。
【0050】
上記公知の微分散装置の中でも、特に、ホモミキサー、ウルトラミキサー、ディスパーミキサー、貫通型高圧分散装置、衝突型高圧分散装置、多孔型高圧分散装置、だまとり型高圧分散装置、(衝突+貫通)型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー等が層状珪酸塩を良好な分散状態とするために好ましい。
【0051】
予めポリビニルアルコール系樹脂を分散する水性溶液は、水単独、或いは水と相溶性があり且つ乾燥が容易な有機溶媒と水との混合溶液である。この中でも、ガスバリアコート剤を容易に製造すること、及び基材層との積層を勘案すると、水/低級アルコール混合溶媒を用いることが好適である。
【0052】
上記低級アルコールとしては、炭素数が1〜3のアルコール、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、またはイソプロピルアルコールが好適である。
【0053】
また、上記の場合、水/アルコールの混合割合は、重量比で99/1〜20/80の範囲から適宜選択される。
【0054】
上記層状珪酸塩を分散したポリビニルアルコール系樹脂の水性溶液のpHを前記範囲に調整する方法は、層状珪酸塩中の交換性イオンをプロトン化する方法が層状珪酸塩の層間に珪素アルコキシド及び/又はその加水分解物を高濃度で存在せしめ、層状珪酸塩の層間を十分広げるために有効であり、本発明において好適に採用される。このプロトン化は、陽イオン交換樹脂やイオン交換膜によるイオン交換が好適である。
【0055】
例えば、陽イオン交換樹脂を使用したプロトン化は、層状珪酸塩を含む溶液をポリスチレン・スルホン酸型の強酸性イオン交換樹脂等の陽イオン交換樹脂と接触させる態様が挙げられる。
【0056】
また、イオン交換膜を使用したプロトン化は、陰極と陽極との間に陽イオン交換膜及びルーズ構造であることが好ましい陰イオン交換膜を交互に配列して陰極の存在する陰極室、陽極の存在する陽極室、及びその間に複数の隔室を形成した電気透析槽を構成し、陽極側に陰イオン交換膜を陰極側に陽イオン交換膜を有する室に層状珪酸塩を含む溶液を、該室と隣接する室に酸を供給しながら電気透析する方法、陰極と陽極との間に陽イオン交換膜及びバイポーラ膜を交互に配列して陰極の存在する陰極室、陽極の存在する陽極室、及びその間に複数の隔室を形成した電気透析槽を構成し、陽極側にバイポーラ膜を陰極側に陽イオン交換膜を有する室に層状珪酸塩を含む溶液を、該室と隣接する室に、希薄アルカリ水溶液であることが好ましい、電解質溶液を供給しながら電気透析する方法等が挙げられる。
【0057】
次いで、pHを前記範囲に調整され、層状珪酸塩を分散したポリビニルアルコール系樹脂の水性溶液に、珪素アルコキシドを添加し、かかる分散された層状珪酸塩の存在下に加水分解を行うことが好ましい。
【0058】
かかる該層状珪酸塩を分散して含有するポリビニルアルコール系樹脂の水性溶液中における珪素アルコキシドの加水分解は、上記水性溶液のpHを1〜5、好ましくは2〜4に調整しながら、加水分解触媒の存在下に実施される。層状珪酸塩中の交換性イオンを陽イオン交換樹脂やイオン交換膜によるイオン交換にてプロトン化し、上記pHの範囲に調整した場合、該プロトン化した層状珪酸塩自体も加水分解触媒としての役割を果たすことができることから、例えば、珪素アルコキシドの加水分解前に陽イオン交換樹脂をろ過等の方法によって系外に除去した場合でも珪素アルコキシドを加水分解することが可能である。
【0059】
上記加水分解触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、有機リン酸、蟻酸、酢酸、無水酢酸、クロロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、粘液酸、2,4−ジエチルグルタル酸、アクリル酸、メタクリル酸、グルタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、桂皮酸、尿酸、バルビツル酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸、酸性陽イオン交換樹脂、プロトン化した層状珪酸塩が挙げられる。
【0060】
その中でも、pH調整の容易さや触媒除去処理の簡便さや更に得られるガスバリア層の透明性等を勘案すると、酸性陽イオン交換樹脂、プロトン化した層状珪酸塩が好適である。
【0061】
なお、本発明のガスバリアコート剤において、必要に応じてガスバリア層に添加されるポリエチレンオキシドは、上記製造工程の何処で添加してもよい。例えば、層状珪酸塩を分散せしめた後、珪素アルコキシドの加水分解前に添加してもよいし、珪素アルコキシドを加水分解後に添加してもよい。
【0062】
上記製造方法における各成分の割合は、前記ガスバリアコート剤で示した割合となるように決定される。
【0063】
上記の製造方法において、ガスバリアコート剤の安定性、得られるガスバリア層の着色、高湿度下での良好なガスバリア性の発現等を勘案すると、珪素アルコキシドを加水分解する前あるいは後、プロトン化した層状珪酸塩を除くpH調整に使用した加水分解触媒を系外に除去することが好適である。
【0064】
本発明において、珪素アルコキシドを加水分解する前あるいは後、プロトン化した層状珪酸塩を除く加水分解触媒を系外に除去する方法は、特に制限されない。
【0065】
例えば、イオン交換樹脂の場合、ろ過等の物理的方法によって除去することが可能である。また、無機酸や有機酸を用いた場合では、該無機酸あるいは該有機酸に由来する陰イオン成分を水酸基イオン化した塩基性陰イオン交換樹脂により水酸基イオンとイオン交換し、ろ過により系外に除去する方法が好ましく採用される。
【0066】
本発明において、珪素アルコキシドの加水分解は、相分離していた液相が均一相になるまで行うことが好ましく、この場合、部分的に加水分解した状態、完全に加水分解した状態、また、珪素アルコキシド同士の重縮合反応が進行した状態でもよい。
【0067】
前記加水分解において、その時間は、加水分解の程度を決定する一因となるものであるが、相分離していた液相が均一相になれば良く、一般に、上記pHに調整後、常温では、1〜24時間、好ましくは、2〜18時間、さらに好ましくは2〜12時間が好適である。加水分解の時間は短い方が、高湿度下での極めて優れたガスバリア性や熱水中でのボイル処理後にも優れたガスバリア性を保持する上で好ましい。
【0068】
本発明のガスバリアコート剤は、最終的にpHが1〜5の範囲内に調整されることが、ガスバリアコート剤のゲル化防止、ガスバリア層を形成後のクラック防止、更に、高湿度下での良好なガスバリア性や熱水中でのボイル処理後にも優れたガスバリア性を発揮する上で好ましい。
【0069】
本発明のガスバリアコート剤を熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層に塗布し乾燥してガスバリア層を形成することによって、ガスバリア性フィルムを得ることができる。
【0070】
高湿度下でのガスバリア性やボイル処理後のガスバリア性は、上記珪素アルコキシドの加水分解時間やガスバリアコート剤のpHの他に、ガスバリアコート剤の保管条件(温度・時間)によって大きく影響を受けることから、本発明のガスバリアコート剤を熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層に塗布する前に、前記の方法によりポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)を測定し、その値が0.9以上であるか否かにより、該ガスバリアコート剤が良品であるか否かを判定することが好ましい。
【0071】
本発明のガスバリアコート剤を熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層に塗布し乾燥してガスバリア層を形成することによって得られるガスバリア性フィルムにおいて、基材層の材質は、熱可塑性樹脂よりなるものであれば、特に限定されないが包装用途に用いることを勘案すると透明性を有するフィルムが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種又は2種以上のα−オレフィンとのランダム又はブロック共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとの1種又は2種以上のランダム又はブロック共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外の1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種又は2種以上のα−オレフィンとのランダム又はブロック共重合体、1−ブテン単独重合体、アイオノマー樹脂、さらにこれら重合体の混合物などのポリオレフィン系樹脂;石油樹脂、テルペン樹脂などの炭化水素系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロンMXDなどポリアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン,アクリロニトリル系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリケトン樹脂;ポリメチレンオキシド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0072】
その中でも、上記樹脂単独でフィルム化したものでガスバリア性に優れるものは高価であり、工業的な実施においては、透明性、機械的強度、包装適性なども優れるポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン、アクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが好ましく、更に好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂である。
【0073】
上記熱可塑性樹脂フィルムの製造方法としては、公知の方法が制限なく使用できる。具体的には、溶液キャスト法,Tダイ法,チューブラー法、カレンダー法など公知の方法が採用される。また、機械物性等を勘案すると、上記熱可塑性樹脂フィルムは延伸処理を施すことが好ましい。延伸方法は、公知の方法が何ら制限なく採用でき、例えば、ロール一軸延伸、圧延、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、チューブラー延伸等が挙げられ、これらの延伸方法の中で、厚薄精度や機械物性等を勘案すると、逐次二軸延伸、同時二軸延伸が好ましい。
【0074】
また、熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、特に制限されず、用いる用途等を勘案して適宜選択すればよく、1〜200μmの範囲から適宜選択される。その中でも、延伸加工性、ガスバリア性、製袋加工性等を勘案すると5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。
【0075】
更に、上記熱可塑性樹脂フィルムには、必要に応じて帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、滑剤、紫外線吸収剤、滑り性付与及びアンチブロッキング性付与を目的とした界面活性剤等の公知の添加剤を、本発明の効果を阻害しない程度配合してもよい。
【0076】
上記熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層は、包装用途、特にガスバリア性フィルムとして好適に使用されることを勘案すると、透明であることが好ましい。具体的には、ヘイズ値が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0077】
ガスバリア層の厚みは、特に制限されるものではないが、ガスバリア性の発現、取扱い時のクラックの発生防止などを勘案すれば、0.1〜10μmが一般的であり、特に、0.5〜3μmが好ましい。
【0078】
ガスバリア性フィルムの厚みは、特に制限されるものではないが、5〜200μmが一般的であり、特に、10〜100μmが好ましい。
【0079】
本発明のガスバリアコート剤を熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層に塗布し乾燥してガスバリア層を形成することで得られるガスバリア性フィルムの製造方法において、ガスバリア層と基材層との積層は、本発明のガスバリアコート剤を基材層上に塗工して乾燥する方法によって行われる。
【0080】
本発明のガスバリアコート剤の塗工方法としては、特に制限されないが、高速での薄膜塗工可能な、溶液又は溶媒分散コーティング法が好ましい。これらコーティング法を具体的に例示すると、ロールコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、キスコーティング、ダイコーティング、ロッドコーティング、バーコーティング、チャンバードクター併用グラビアコーティング、カーテンコーティング等により、ガスバリアコート剤を熱可塑性樹脂フィルム表面にコートする方法が好適である。
【0081】
本発明において、基材層上のガスバリアコート剤を乾燥する方法としては、公知の乾燥方法が特に制限なく使用できる。具体的には、熱ロール接触法、熱媒(空気、オイル等)接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの中で、フィルム外観等の仕上がりや乾燥効率等を勘案すると、加熱空気接触法や赤外線加熱法が好ましい。
【0082】
上記ガスバリアコート剤の乾燥条件は特に制限されないが、ガスバリア性の発現や乾燥効率等を勘案すると、特に、60℃以上、基材の融点未満の温度範囲を採用することが好ましい。また、上記乾燥温度としては、80℃以上がより好ましく、特に90℃以上が更に好ましい。また、基材層の融点より10℃低い温度以下がより好ましく、特に15℃低い温度以下が更に好ましい。
【0083】
上記乾燥時間は、バリア性や乾燥効率等を勘案すると、5秒〜10分であることが好ましく、10秒〜5分であることがより好ましい。
【0084】
上記乾燥の前後に、必要に応じて、紫外線、X線、電子線等の高エネルギー線照射を施してもよい。また、高湿度下でのガスバリア性を更に向上させることを勘案すると、上記乾燥後、ガスバリア層に直接コロナ放電処理やフレームプラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0085】
本発明においては、基材層上に前記ガスバリアコート剤を塗工し、上記温度で乾燥してガスバリア層を形成させた後、更にエージング処理を施す方法が、より優れたガスバリア性を与えるガスバリア性フィルムを得るために有効である。
【0086】
上記エージング処理は、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性、特に90%RHを越えるような高湿度下でのガスバリア性の向上、更には熱水中でのボイル処理後に優れたガスバリア性の発揮に効果がある。エージングの条件は、適宜決定すればよく、特に制約されないものの、通常は、エージングによる基材層のしわ・たるみ等のダメージの発生しない条件範囲で決定される。例えば、熱可塑性樹脂フィルムが二軸延伸ポリプロピレンフィルムの場合、温度30℃〜50℃および相対湿度30%RH〜100%RHの範囲から選択され、温度40℃〜50℃、相対湿度40%RH〜90%RHの雰囲気でエージング処理を施すことがより好ましい。温度および相対湿度は、エージングによる基材層のしわ・たるみ等のダメージの発生しない限度内であれば、できるだけ高く設定することが、エージングに要する日数を低減し得ることから好ましい。
【0087】
エージングに要する日数は、適宜決定すればよく、生産性等を勘案すると例えば1日〜10日の範囲となるよう上記温度および相対湿度を設定すればよい。
【0088】
上記条件によるエージング処理を行う方法としては特に制限されない。好適な方法を例示すれば、上記基材層上にガスバリアコート剤を塗工・乾燥したフィルムを、温度、相対湿度を設定した恒温恒湿室等でエージング処理する方法を挙げることができる。また、フィルムをロール状に巻き取る場合、巻取り張力を低くしガスバリア性フィルム同士に空隙を設けたうえで恒温恒湿室でエージング処理する方法や、ロール状に巻き取る際に該ガスバリア層へ水蒸気を噴霧しエージング処理する方法等を用いてもよい。
【0089】
本発明において、基材層とガスバリア層との接着性をより向上せしめ、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性、耐久性をより向上させるために、ガスバリア層を積層する基材層の表面に、表面処理を施すことが好適である。
【0090】
かかる表面処理としては、公知の表面処理方法が何ら制限なく採用できる。例えば、大気中コロナ放電処理、窒素ガス中コロナ放電処理、炭酸ガス中コロナ放電処理、フレームプラズマ処理、紫外線処理、オゾン処理、電子線処理、励起不活性ガスによるプラズマ処理等の表面処理方法を挙げることができる。また、これらの表面処理の併用処理をしてもよい。
【0091】
また、前記基材層とガスバリア層との接着強度をより向上させることを勘案すると、その層間にアンカーコート層を設ける方法が好ましく採用される。
【0092】
上記アンカーコート層の形成に使用されるアンカーコート剤としては、公知のものが特に制限されず使用できる。例えば、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系等のアンカーコート剤が挙げられる。
【0093】
更に、本発明のガスバリアコート剤を熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層に塗布し乾燥してガスバリア層を形成することを特徴とするガスバリア性フィルムにおいて、上記方法によって得られるガスバリア層の外層に、ヒートシール性、耐熱水性等を付与する目的で、市販のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体等のシーラント層等を積層してもよい。
【0094】
また、本発明の品質評価方法によれば、製造した、珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水性溶液よりなるガスバリアコート剤が十分な性能を有しているか否かをガスバリア性フィルムとすることなく評価することができる。
【0095】
即ち、前記方法に従って測定したポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が小さいとガスバリア性フィルムとしたときの高湿度下や熱水中でのボイル処理後のガスバリア性に劣り、WS1/WPが大きいと高湿度下および熱水中でのボイル処理後のガスバリア性が良好であると判断できる。更に、本発明の品質評価方法においては、分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)をも併用することで品質評価の確度を向上させることができる。WS1/WPが大きく、且つWS2/WPも大きいと高湿度下および熱水中でのボイル処理後のガスバリア性がより良好であると判断できる。ガスバリアコート剤を評価する指標としては、WS1/WPが0.9以上であるか否かを指標とすることが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が0.9以上であるとき、良品であると判定することができる。分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を併用する場合には、WS1/WPが0.9以上であり、且つWS2/WPが0.4以上であるか否かを指標とすることが好ましい。
【0096】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明によれば、ガスバリア層としてポリビニルアルコール系樹脂と珪素アルコキシド加水分解物及び層状珪酸塩を含むガスバリア性フィルムにおいて、従来では達成が不可能であった、極めて高いガスバリア性を有するガスバリア層を形成するガスバリアコート剤を提供することが可能である。
【0097】
また、上記極めて優れたガスバリア性は、ガスバリア層にシール層を積層した態様において、熱水中に放置後でも、優れたガスバリア性を維持することが可能であり、従来、ガスバリア層として使用されていた塩化ビニリデンコートフィルムに匹敵する特性をポリビニルアルコール系樹脂を使用したガスバリア層で達成することを可能とした。
【0098】
従って、本発明により得られるガスバリア性フィルムの用途は、スナック等の乾燥食品を始めとし、珍味、生麺、生菓子等の中間水分食品や佃煮、惣菜、漬物、かまぼこ、ハム、ソーセージ等の高水物食品のガスバリア性フィルムとして幅広い用途に対して有用である。
【0099】
また、本発明によれば、ガスバリアコート剤を塗布してガスバリア性フィルムとすることなくガスバリアコート剤のガスバリア性能を評価することができる。従って、迅速かつ簡便にガスバリアコート剤の性能を評価することが可能となり、ガスバリアコート剤の製造工程管理や、品質管理など、迅速な性能評価が求められる場合に特に有用である。
【0100】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例におけるフィルム物性およびコート剤物性については下記の方法により行った。
【0101】
(1)高湿度下のガスバリア性(酸素透過度)
JIS K7126 B法に準じて、酸素透過度測定装置(Mocon社製;OX−TRAN100)を用いて高湿度下の酸素透過度を測定した。測定条件は、ガス流量20ml/minとし、温度23℃、基材層側の湿度を90%RH、ガスバリア層側の湿度を90%RHとした。湿度は日立計測器サービス(株)製
精密湿度調整システム RH−3S型にて調湿した。
【0102】
(2)ボイル後のガスバリア性(酸素透過度)
シール層を積層したガスバリア性フィルム単体を90℃に保った熱水中に30分間浸漬して熱水処理を施した。熱水処理は、熱水処理中にフィルムが浮かないようフィルム端部を内径18cmのステンレス製リング状型枠に固定して行った。熱水処理後、直ちにフィルムを水で洗浄し、10分以内にガスバリア性フィルムを酸素透過度測定装置にセットした。
【0103】
酸素透過度測定は、JIS K7126 B法に準じて、酸素透過度測定装置(Mocon社製;OX−TRAN100)を用いて測定した。測定条件は、ガス流量20ml/minとし、温度23℃にて、基材層側の湿度を90%RH、シール層側の湿度を90%RHとした。湿度は日立計測器サービス(株)製 精密湿度調整システム RH−3S型にて調湿した。熱水処理したガスバリア性フィルムをセットし10分後に酸素透過度測定を開始し、測定開始から1時間後の酸素透過度をボイル後のガスバリア性として評価した。
【0104】
(3)ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)、および分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)
【0105】
1)珪素アルコキシド加水分解縮合物のトリメチルシリル誘導体化
以下の手順によった。(I.Hasegawa et al,Bull.Chem.Soc.Jpn.,59,2279−2283 1986記載の方法に準じた。)
1.濃塩酸6mL、水5mL、2−プロパノール12mL、ヘキサメチルジシロキサン8mLを混合し、1時間攪拌した。
2.ガスバリアコート剤1mLを上記混合溶液に加え、さらに1時間攪拌した。
3.静置後、上澄み液をゲル浸透クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフ/質量分析計にて分析した。
【0106】
2)ゲル浸透クロマトグラフィー
島津製作所製の高速液体クロマトグラフLC−10を用い、以下の条件で測定を行った。
カラム:下記の3本のカラムを直列に接続して用いた。
▲1▼東ソー社製 TSK−GEL α−M
長さ30cm、内径7.8mm
▲2▼東ソー社製 TSK−GEL G2000H6
長さ30cm、内径7.5mm
▲3▼昭和電工社製 Shodex KF−800D
長さ10cm、内径8.0mm
カラム温度:25℃
移動相:テトラヒドロフラン
移動相流量:1mL/min.
試料量 :50μL
検出器:示差屈折率検出器
分子量較正:ポリスチレン標準
検量用標準溶液:水70重量部:エタノール30重量部の混合溶媒に、テトラエトキシシランを既知量(WB)加え、24時間攪拌することで、既知量(WB)のテトラエトキシシランを全て分子量650以上の縮合物としたものを使用した。
【0107】
分子量650以上の領域における積分分子量分布曲線算出手順:
1.上記測定条件により、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物のクロマトグラムを得た。
2.1.で得られるクロマトグラムにおける保持時間をポリスチレン換算分子量に換算した。
3.2.で得られるクロマトグラムより、分子量650以上の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の全ピーク面積(PA)を得た。
4.2.で得られるクロマトグラムにおける分子量650以上の領域を、島津製作所製高速液体クロマトグラフ装置LC−10付属の解析ソフトウェアにより積分分子量分布曲線に換算した。
5.検量用標準溶液を、1)の方法にてトリメチルシリル誘導体化して、ゲル浸透クロマトグラフィーで分析し、全ピーク面積(PB)を得た。
6.PBを検量用標準溶液中のテトラエトキシシラン縮合物量(WB)で除して、クロマトグラムの全ピーク面積と珪素アルコキシド縮合物量の換算係数(WB/PB)を得た。
7.3.で求めた溶液(A)中の分子量650以上の領域における誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の全ピーク面積(PA)に、6.で求めたクロマトグラムの全ピーク面積と珪素アルコキシド縮合物量の換算係数(WB/PB)を乗じることで、溶液(A)中の分子量650以上の領域における誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WA)を算出した。
8.4.で求めた積分分子量分布曲線の縦軸にWAを乗じ、分子量650以上の領域における、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量と、その分子量に対する累積重量との関係を示す曲線(FB)を得た。
【0108】
3)ガスクロマトグラフ/質量分析計
日本電子製のガスクロマトグラフ/質量分析計GC−MATEを用い、以下の条件で測定を行った。
カラム:J&W社製 DB−1
長さ30m、内径0.25mm、フィルム厚0.25μm
カラム温度:80℃(5分)→昇温速度10℃/分→300℃(20分)
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:1mL/分
試料量 :1μL
注入口温度:300℃
検量用標準物質:テトラキス(トリメチルシリルオキシ)シラン
【0109】
分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)算出手順:
1.上記測定条件により、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の質量スペクトルおよびクロマトグラムを得た。
2.質量スペクトルより、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量(MC)を得た。
3.既知量のテトラキス(トリメチルシリルオキシ)シランをテトラヒドロフランに溶解させて調整した標準溶液を用いて、検量線(ピーク面積対モル数)を作成した。
4.1.で得られたクロマトグラム上における、分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物のピーク面積を、3.の検量線よりモル数(C)に換算した。
5.4.で得られたモル数(C)に、その分子量(MC)を乗じ、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)を得た。なお、クロマトグラム上に複数種の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物のピークが現れる場合は、分子量650以下の全ての珪素アルコキシド縮合物のピークについて、上記の方法によりそれぞれの種の存在量を求めて合計し、分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)とした。
【0110】
4)ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)、および分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)の算出
ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)としては、ガスバリアコート剤を調製する際に配合したポリビニルアルコール系樹脂の重量を用いた。
また、分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)、および分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)の算出は、次の手順で行った。
【0111】
1.2)で求めた、分子量650以上の領域における誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量とその分子量に対する累積重量との関係を示す曲線(FB)に、3)で求めた、分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)を加算した。
2.1.で得られた曲線において、縦軸の珪素アルコキシド縮合物量をSiO2重量に換算することで、全分子量領域における、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量と、その分子量に対するSiO2換算での累積重量との関係を示す曲線(FC)を得た。なお、この曲線(FC)の横軸は分子量の常用対数であり、縦軸の値はその分子量に対する誘導体化した珪素アルコキシド縮合物のSiO2換算での累積重量、即ちその分子量以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)を表す。
【0112】
3.2.で得られた曲線(FC)より、分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)を求めた。
4.3.で求めたWS1を、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)で除することで、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)を算出した。
5.2.で得られた曲線(FC)より、分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)を求めた。
6.5.で求めたWS2を、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)で除することで、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を算出した。
【0113】
実施例1
水70重量部:エタノール30重量部の混合溶媒に、平均重合度1700・鹸化率98%以上のポリビニルアルコールを濃度が6.7重量%となるように70℃にて溶解させ、ポリビニルアルコールの6.7重量%溶液(A液と略記)を得た。
【0114】
水70重量部:エタノール30重量部の混合溶媒に、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(クニミネ工業(株)製、クニピアG)を濃度が3.3重量%となるように加え、60℃にて攪拌しながら分散させ、層状珪酸塩の3.3重量%分散溶液(B液と略記)を得た。
【0115】
上記A液とB液を重量比1/1の割合で混合した溶液を衝突型高圧分散装置((株)スギノマシン製、HJP−25005)により微分散化処理を施し、ポリビニルアルコール3.3重量%・層状珪酸塩1.7重量%の微分散溶液を得た。該微分散溶液にビーズ状の水素イオン化した強酸性イオン交換樹脂を加え、pH=2.4に調整した。該pH調整した微分散溶液にテトラエトキシシランをポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で225重量部となるよう加え、室温下、約2時間攪拌しテトラエトキシシランの加水分解を行った。その後、イオン交換樹脂や埃等の異物をろ過により除去し、ガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤のpHは2.4であった。
【0116】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0117】
厚み20μmのコロナ放電処理した二軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ放電処理面に、アンカーコート剤(東洋モートン(株)製、AD335AE/CAT10L=10重量部/1.4重量部を、酢酸エチル/トルエン=1重量部/1重量部の混合溶剤にて、不揮発分が6重量%となるよう調整)をアンカーコート層の乾燥重量が0.3g/m2となるようバーコーターにてコーティングし、100℃で1分熱風乾燥してアンカーコート剤を塗工した二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0118】
該アンカーコート剤を塗工した二軸延伸ポリプロピレンフィルムのアンカーコート層へ、上記で得られたガスバリアコート剤を、乾燥後のガスバリア層厚みが1.0μmになるようにベーカー式アプリケーターにてコーティングし、100℃で2分熱風乾燥した。次いで、得られたコートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。
【0119】
さらに、得られたガスバリア性フィルムのガスバリア層に、ドライラミネート用接着剤(東洋モートン(株)製、TM329/CAT−8B=1重量部/1重量部を、酢酸エチル溶剤にて、不揮発分が10重量%となるよう調整)を乾燥重量が2g/m2となるようにコーティングし、90℃で2分間乾燥させた後、該ドライラミネート用接着剤面に、シール層として40μmの無延伸ポリエチレンフィルムをラミネートして無延伸ポリエチレンフィルムを積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0120】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0121】
実施例2
実施例1においてテトラエトキシシランをポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で150重量部となるよう加えた以外は、実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。
【0122】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0123】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0124】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0125】
実施例3
実施例1においてテトラエトキシシランをポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で100重量部となるよう加えた以外は、実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。
【0126】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0127】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0128】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0129】
実施例4
実施例1において得られたガスバリアコート剤を23℃にて48時間保存し、該保存後のガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0130】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0131】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0132】
実施例5
実施例2において得られたガスバリアコート剤を23℃にて48時間保存し、該保存後のガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。また、図1に、全分子量領域における、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量と、その分子量に対するSiO2換算での累積重量との関係を示す曲線(FC)の縦軸を、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)で除して得られた、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する特定分子量(MS)以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)の割合(WS/WP)とした曲線を示した。
【0133】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0134】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0135】
実施例6
実施例1においてA液とB液を重量比2/1の割合で混合し、テトラエトキシシランをポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で150重量部となるよう加えた以外は、実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。該ガスバリアコート剤中のポリビニルアルコール/層状珪酸塩の重量部比は100/25である。
【0136】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0137】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0138】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0139】
実施例7
実施例1においてA液とB液を重量比1/1.7の割合で混合し、テトラエトキシシランをポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で150重量部となるよう加えた以外は、実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。該ガスバリアコート剤中のポリビニルアルコール/層状珪酸塩の重量部比は100/83である。
【0140】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0141】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0142】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0143】
実施例8
実施例1においてA液とB液を重量比1/2.5の割合で混合し、テトラエトキシシランをポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で150重量部となるよう加えた以外は、実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。該ガスバリアコート剤中のポリビニルアルコール/層状珪酸塩の重量部比は100/125である。
【0144】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0145】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。
【0146】
さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0147】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0148】
実施例9
実施例1においてテトラエトキシシランをポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で320重量部となるよう加えた以外は、実施例1と同様にしてガスバリアコート剤及びガスバリア性フィルムを得た。
【0149】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0150】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0151】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0152】
実施例10
実施例1においてポリビニルアルコール・層状珪酸塩の微分散溶液に平均分子量400万のポリエチレングリコールをポリビニルアルコール100重量部に対し1重量部加えた以外は、実施例1と同様にしてガスバリアコート剤及びガスバリア性フィルムを得た。
【0153】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0154】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0155】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0156】
実施例11
厚み12μmのコロナ放電処理した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ放電処理面に、アンカーコート剤(東洋モートン(株)製、AD335AE/CAT10L=10重量部/1重量部を、酢酸エチル/トルエン=1重量部/1重量部の混合溶剤にて、不揮発分が6重量%となるよう調整)をアンカーコート層の乾燥重量が0.3g/m2となるようバーコーターにてコーティングし、100℃で1分熱風乾燥してアンカーコート剤を塗工した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0157】
該アンカーコート剤を塗工した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのアンカーコート層へ、実施例1で得られたガスバリアコート剤を乾燥後のガスバリア層厚みが1.0μmになるようにベーカー式アプリケーターにてコーティングし、100℃で2分熱風乾燥して、コートフィルムを得た。次いで、得られたコートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0158】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0159】
実施例12
厚み15μmのコロナ放電処理した二軸延伸ナイロンフィルムのコロナ放電処理面に、アンカーコート剤(三井武田ケミカル(株)製、A3210/A3070=3重量部/1重量部を、酢酸エチルにて、不揮発分が6重量%となるよう調整)をアンカーコート層の乾燥重量が0.3g/m2となるようバーコーターにてコーティングし、100℃で1分熱風乾燥してアンカーコート剤を塗工した二軸延伸ナイロンフィルムを得た。
【0160】
該アンカーコート剤を塗工した二軸延伸ナイロンフィルムのアンカーコート層へ、実施例1で得られたガスバリアコート剤を乾燥後のガスバリア層厚みが2.0μmになるようにベーカー式アプリケーターにてコーティングし、100℃で2分熱風乾燥して、コートフィルムを得た。次いで、得られたコートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0161】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0162】
比較例1
実施例2において得られたガスバリアコート剤を23℃にて72時間保存し、該保存後のガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。また、図1に、全分子量領域における、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量と、その分子量に対するSiO2換算での累積重量との関係を示す曲線(FC)の縦軸を、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)で除して得られた、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する特定分子量(MS)以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)の割合(WS/WP)とした曲線を示した。
【0163】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0164】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0165】
比較例2
実施例2において得られたガスバリアコート剤を40℃にて24時間保存し、該保存後のガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0166】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0167】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0168】
比較例3
テトラエトキシシラン100重量部に1N−塩酸40重量部を加え、室温下1時間攪拌し、テトラエトキシシランを加水分解させ、テトラエトキシシラン加水分解溶液を得た。実施例1で得られたポリビニルアルコール・層状珪酸塩の微分散溶液に該テトラエトキシシラン加水分解溶液をポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で127重量部となるように加え、ポリビニルアルコール・層状珪酸塩・テトラエトキシシラン加水分解物の混合溶液からなるガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤のpHは1.7であった。
【0169】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0170】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0171】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0172】
【表1】
【0173】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例5および比較例1で得られたガスバリアコート剤の、珪素アルコキシド縮合物の分子量(MS)と、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する特定分子量(MS)以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)の割合(WS/WP)との関係を示す図。
【発明の属する技術分野】
本発明はガスバリア性に優れたガスバリア層を形成するガスバリアコート剤及び該ガスバリアコート剤の評価方法に関する。詳しくは、高湿度下での極めて優れたガスバリア性、更には熱水中でのボイル処理後も優れたガスバリア性を保持することができるガスバリア層を形成するガスバリアコート剤及び該ガスバリアコート剤の評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムは、優れた透明性、機械強度、加工適性、製袋性等の二次加工性等により、包装用フィルムとして汎用されている。
【0003】
上記熱可塑性樹脂フィルムに酸素バリア性等のガスバリア性機能を付与させる目的で、該熱可塑性樹脂フィルムのフィルム表面に塩化ビニリデン系樹脂や、ポリビニルアルコール系樹脂等のガスバリア性を有する樹脂からなる層を積層することが行われている。
【0004】
しかし、塩化ビニリデン系樹脂はガスバリア性には優れるものの、塩素系樹脂であるため焼却性や廃棄性に関してデメリットがある。また、ポリビニルアルコール系樹脂は、乾燥状態での酸素バリア性は優れているものの、高湿度下での酸素バリア性が、吸湿により極端に低下するという問題がある。
【0005】
このため、架橋や変性処理をしたり、他の化合物と複合したりする工夫がなされている。例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂フィルム上に、シリカ/ポリビニルアルコール系複合ポリマーからなる被覆層を設けたガスバリア性フィルムが開示されている。また、特許文献2には、熱可塑性樹脂フィルム上に金属アルコキシドあるいは金属アルコキシドの加水分解物と、ポリビニルアルコールなど水酸基を有する水溶性樹脂との複合物からなる被膜を設けたガスバリア性フィルムが開示されている。
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1及び特許文献2に記載のガスバリア性フィルムは、高湿度下での酸素バリア性が吸湿により極端に低下するという問題の改善が図れるものの、特に90%RHを越えるような高湿度下では、そのガスバリア効果は十分でないのが現状であった。
【0007】
また、上記複合物からなるガスバリア層において更にガスバリア性能を改良したフィルムとして、特許文献3には、熱可塑性樹脂フィルム上にポリビニルアルコールなど水酸基を有する水溶性樹脂、無機層状化合物及び金属アルコキシドの加水分解物よりなる複合物からなる被膜を設けたガスバリア性フィルムも開示されているが、かかるガスバリア性フィルムにおいても、高湿度下でのガスバリア性、更には、熱水中でのボイル後におけるガスバリア性について、未だ改善の余地があった。
【0008】
また、ガスバリアコート剤の性能を評価する手段としては、実際にガスバリアコート剤を基材上に塗布してガスバリア層を形成させてガスバリア性フィルムとし、そのガスバリア性や熱水中でのボイル後におけるガスバリア性を評価する方法が行われる。しかしながら、そのような方法は煩雑であり、かつ評価結果が確定するまでに1日〜数日間を要するという問題があるため、ガスバリアコート剤が十分な性能を有しているか否かをガスバリア性フィルムとすることなく迅速に評価する方法が求められていた。また、ガスバリアコート剤の簡易的な性能評価法として、pH、粘度などの測定が用いられる場合もあるが、これらの測定値に有意差が認められないガスバリアコート剤であっても、該ガスバリアコート剤から形成されるガスバリア層のガスバリア性に顕著な違いがある場合があることから、これらの方法はガスバリアコート剤の性能を評価するには不十分であった。
【0009】
【特許文献1】
特開昭56−4563号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開平6−192454号公報(請求項1−3)
【特許文献3】
特開2000−43219号公報(請求項1−6)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、90%RHを越えるような高湿度下でも極めて優れたガスバリア性を示し、且つ、ボイル後のガスバリア性にも優れたガスバリア層を形成するガスバリアコート剤及び該ガスバリアコート剤の性能を容易に評価することができるガスバリアコート剤の評価方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水性溶液よりなるガスバリアコート剤であって、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が0.9以上であるガスバリアコート剤を、熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層上に塗布して形成して得られるガスバリア層は、高湿度下で極めて優れた酸素バリア性を示し、更には熱水中でのボイル処理後も優れたガスバリア性を保持することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水性溶液よりなるガスバリアコート剤であって、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が0.9以上であることを特徴とするガスバリアコート剤、及びポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)により、ガスバリアコート剤を評価することを特徴とするガスバリアコート剤の評価方法を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のガスバリアコート剤は、珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水性溶液より構成される。
【0014】
本発明においては、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が0.9以上であることが重要であり、より好ましくは1.1以上、さらに好ましくは1.3以上である。WS1/WPの値が小さくなると高湿度下でのガスバリア性、更には熱水中でのボイル処理後のガスバリア性が悪化し、特にWS1/WPの値が0.9未満のガスバリアコート剤では著しく悪化する。
【0015】
また、本発明のガスバリアコート剤においては、さらにポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)が0.4以上であることが、高湿度下および熱水中でのボイル処理後の優れたガスバリア性の保持の点から好ましく、0.5以上がより好ましく、0.6以上がさらに好ましい。
【0016】
ここで、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)は、ガスバリアコート剤を調製する際に配合したポリビニルアルコール系樹脂の重量である。分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)、分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)、および特定分子量以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)は以下の方法で求められる値であり、SiO2換算値である。また、本発明における珪素アルコキシド縮合物の分子量は、トリメチルシリル誘導体化された珪素アルコキシド縮合物の分子量である。
【0017】
はじめに、ガスバリアコート剤に含まれる珪素アルコキシド縮合物をトリメチルシリル誘導体化する。誘導体化には、公知の方法(例えばC.W.Lentz, Inorg.Chem., 3,574−579 1964記載の方法や、I.Hasegawa et al,Bull.Chem.Soc.Jpn.,59,2279−2283 1986記載の方法等)を用いることができる。この操作の結果、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の溶液(A)が得られる。
【0018】
次に、溶液(A)に含まれる誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量分布を求めるが、分子量650以上の領域における分子量分布はゲル浸透クロマトグラフィーにより求め、分子量650以下の領域においては別途ガスクロマトグラフ/質量分析計により求めて、両者の結果を合算することで、全分子量領域における分子量分布を求める。このような方法により分子量分布を求める理由は、ゲル浸透クロマトグラフィーの一般的な測定条件では分子量数百以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物を定量することが困難であり、ガスクロマトグラフ/質量分析計では分子量数百以上の珪素アルコキシド縮合物の定量が困難であるためである。
【0019】
分子量分布の測定について詳述すれば、まずゲル浸透クロマトグラフィーにより、上記の溶液(A)を分析し、得られたクロマトグラムより、分子量650以上の領域における誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の全ピーク面積(PA)および積分分子量分布曲線(FA)を算出する。積分分子量分布曲線とは、横軸が分子量の常用対数、縦軸がその分子量に対する累積重量分率である分子量分布曲線である。クロマトグラムを積分分子量分布曲線に換算する方法としては、分子量標準にポリスチレンを用いて、一般的なゲル浸透クロマトグラフィー測定において行われる方法により保持時間を分子量に換算し、さらに、公知の方法(例えば森定雄、「サイズ排除クロマトグラフィー」、共立出版株式会社、1991のp49−62に記載の方法)や、市販の高速液体クロマトグラフ装置に付属する解析ソフトウェアなどを用いて積分分子量分布曲線に換算する。ゲル浸透クロマトグラフィーの測定条件としては、例えば移動相にテトラヒドロフラン、検出器に示差屈折率検出器を用いればよい。
【0020】
次に、分子量650以上の珪素アルコキシド縮合物を既知量(WB)含む標準溶液(B)を、上記の方法にてトリメチルシリル誘導体化し、上記と同様にしてゲル浸透クロマトグラフィーで分析し、既知量(WB)の珪素アルコキシド縮合物に対応する全ピーク面積(PB)を得る。この結果より、クロマトグラムの全ピーク面積と珪素アルコキシド縮合物量の換算係数(WB/PB)を得る。標準溶液(B)に含まれる珪素アルコキシド縮合物は、本発明によるガスバリアコート剤を構成する珪素アルコキシド縮合物と同種のものを用いることが好ましい。また、標準溶液(B)の調製方法は、含まれる珪素アルコキシド縮合物の種類により適当な方法を用いればよいが、たとえば既知量(WB)のテトラエトキシシランを水70重量部:エタノール30重量部の混合溶媒に加え、24時間攪拌して、既知量(WB)のテトラエトキシシランを全て分子量650以上の縮合物とすることにより調製できる。
【0021】
次に、上記で求めた溶液(A)中の分子量650以上の領域における誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の全ピーク面積(PA)に、クロマトグラムの全ピーク面積と珪素アルコキシド縮合物量の換算係数(WB/PB)を乗じることで、溶液(A)中の分子量650以上の領域における誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WA)を算出する。さらに、上記により求めた積分分子量分布曲線(FA)の縦軸にWAを乗じることで、分子量650以上の領域における、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量と、その分子量に対する累積重量との関係を示す曲線(FB)を得る。
【0022】
次に、溶液Aに含まれる分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)を求めるが、その手順は以下のとおりである。
【0023】
ガスクロマトグラフ/質量分析計により、溶液(A)を分析し、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の質量スペクトルおよびクロマトグラムを得る。ガスクロマトグラフ/質量分析計の測定条件は、一般的な条件を用いることができる。質量スペクトルより、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量(MC)を得る。また、クロマトグラムにおける誘導体化した珪素アルコキシド縮合物のピーク面積を、既知量の標準物質をガスクロマトグラフ/質量分析計で分析して得られるピーク面積から作成した検量線により、溶液(A)中でのモル数(C)に換算する。ただし、MCが650以上のピークについては無視する。また、検量線用の標準物質としては、分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物に類似した構造をもつ化合物、たとえばテトラキス(トリメチルシリルオキシ)シランなどを用いるのが好適である。このモル数(C)に、上記分子量(MC)を乗じることにより、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)を得る。クロマトグラム上に複数種の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物のピークが現れる場合は、分子量650以下の全ての珪素アルコキシド縮合物のピークについて、上記の方法によりそれぞれの種の存在量を求めて合計し、分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)とする。
【0024】
次に、上記により求めた、分子量650以上の領域における誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量とその分子量に対する累積重量との関係を示す曲線(FB)に、分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)を加算し、さらに縦軸の珪素アルコキシド縮合物量をSiO2重量に換算することで、全分子量領域における、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量と、その分子量に対するSiO2換算での累積重量との関係を示す曲線(FC)を得る。この曲線(FC)の横軸は分子量の常用対数であり、縦軸の値はその分子量に対する誘導体化した珪素アルコキシド縮合物のSiO2換算での累積重量、即ちその分子量以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)を表す。この曲線より、分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)を求める。
上記により求めた分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)を、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)で除することで、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)を算出することができる。
【0025】
また、同様にして、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)や、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する特定分子量以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)の割合(WS/WP)を求めることができる。
【0026】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する特定分子量(MS)以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)の割合(WS/WP)は、MSが100〜10000という比較的小さな分子量範囲において、より高いことが好ましい。
【0027】
このことから、分子量10000以下という比較的小さな分子量の珪素アルコキシド縮合物がポリビニルアルコール系樹脂量に対して一定割合以上存在する本発明のガスバリアコート剤では、小さな分散粒子径をもつ珪素アルコキシド縮合物が良好に分散したガスバリア層が形成されると考えられる。
【0028】
すなわち、正確な理由は不明であるが、珪素アルコキシド縮合物の分散粒子径が小さく、かつ良好な分散状態であることが、高湿度下で極めて優れた酸素バリア性を示し、更には熱水中でのボイル処理後も優れたガスバリア性を保持するために好ましい。
【0029】
本発明のガスバリアコート剤の一構成成分であるポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルアルコール系重合体及びその誘導体が使用される。例えば、けん化度75モル%以上のポリビニルアルコール、全水酸基の40モル%以下がアセタール化されているポリビニルアルコール、アルコール可溶変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール単位が60モル%以上であるエチレン−ビニルアルコール共重合体等の共重合ポリビニルアルコール等が好ましく用いられる。その中でも、けん化度75モル%以上のポリビニルアルコールが得られるフィルムの透明性や高湿度下でのガスバリア性が良好なことからより好ましく用いられる。
【0030】
また、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、加工性を勘案すると、300〜5000であることが好ましく、500〜3500であることがより好ましい。
【0031】
本発明のガスバリアコート剤の一構成成分である珪素アルコキシドの加水分解物には、珪素アルコキシドのアルコキシ基の一部又は全部の加水分解による生成物、珪素アルコキシドの重縮合体、該重縮合体のアルコキシ基の一部又は全部の加水分解による生成物、およびそれらの種々の混合物が包含される。
【0032】
上記珪素アルコキシドとしては、加水分解物が形成可能であれば特に制約されない。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリプロポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、1−アミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチルアミノメチルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等の加水分解物が形成可能な珪素アルコキシドが挙げられる。
【0033】
珪素アルコキシド重縮合体や該重縮合体のアルコキシ基の一部又は全部の加水分解による生成物には、上記珪素アルコキシドの加水分解とともに起こる、脱水及び/又は脱アルコールによる重縮合反応の結果として形成されるものが包含される。
【0034】
上記ガスバリアコート剤において、珪素アルコキシドの加水分解物は、珪素アルコキシド由来の珪素がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、SiO2換算で90〜500重量部、好ましくは、100〜350重量部、より好ましくは、100〜250重量部、となるように存在せしめることが優れたガスバリア性を示し、且つ、シール層を設けた場合のボイル後のガスバリア性に優れた性能を発揮するために好ましい。
【0035】
本発明のガスバリアコート剤の一構成成分である層状珪酸塩としては、公知のものが特に制限なく使用される。例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、有機ベントナイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、クリソタイル、リザーダイト、アンチゴライト、ペコラアイト、ネポーアイト、グリーナライト、カリオピライト、アメサイト、Alリザーダイト、バーチェリン、ブリンドリアイト、ケリアイト、クロンステダイト、パイロフィライト、タルク、ケロライト、ウイレムスアイト、ピメライト、ミネソタアイト、雲母、白雲母、フェンジャイト、イライト、セリサイト、海緑石、セラドナイト、トベライト、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、緑泥石、バーミキュライト等が挙げられる。これらの多くは天然の鉱物として産するが、化学合成法によって製造されたものでも良い。
【0036】
そのうち、モンモリロナイトを使用して得られたガスバリア性フィルムが、ガスバリア性に優れ、好適である。
【0037】
本発明のガスバリアコート剤において、層状珪酸塩は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、10〜150重量部、好ましくは、20〜100重量部となるように存在せしめることが、優れたガスバリア性を示し、且つ,シール層を設けた場合のボイル後のガスバリア性に優れた性能を発揮するために好ましい。
【0038】
本発明のガスバリアコート剤は、水単独、或いは水と相溶性があり且つ乾燥が容易な有機溶媒と水との混合溶媒を溶媒とする水性溶液である。この中でも、ガスバリアコート剤を容易に製造すること、及び基材層との積層を勘案すると、水/低級アルコール混合溶媒を用いることが好適である。
【0039】
上記低級アルコールとしては、炭素数が1〜3のアルコール、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、またはイソプロピルアルコールが好適である。
【0040】
また、上記の場合、水/アルコールの混合割合は、重量比で99/1〜20/80の範囲から適宜選択される。
【0041】
本発明のガスバリアコート剤において、前記ポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、0.1〜20重量%となるように決定すればよく、より好ましくは、溶媒に対するポリビニルアルコール系樹脂の濃度が1〜10重量%となる範囲から決定される。
【0042】
また、本発明のガスバリアコート剤の成分は、珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩及びポリビニルアルコール系樹脂よりなるものであれば特に制限されないが、ガスバリア層の形成時のクラック発生を防止し、また、使用時におけるフィルムの変形時においてもガスバリア層のクラック発生を防止するため、上記成分の他に、ポリエチレンオキシドを配合することが好ましい。該ポリエチレンオキシドとしては、平均分子量の高いものほどその効果が高く、平均分子量10万以上が好ましく、平均分子量50万以上がより好ましく、平均分子量200万以上のものが更に好ましく使用される。
【0043】
なお、該ポリエチレンオキシドの分子鎖末端は、水酸基でもあるいは化学修飾されていても何ら制限されないが、通常は、両末端が水酸基であるものが好ましく採用される。
【0044】
上記ポリエチレンオキシドは、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部、好ましくは、0.5〜2重量部の割合で配合することが好ましい。
【0045】
また、本発明のガスバリアコート剤の成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を配合してもよい。
【0046】
例えば、ウレタン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤等の架橋剤、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等のカップリング剤、水性イソシアネート、水性ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン、水性エポキシエステル等の水溶性アンカーコート剤、アルミ系有機化合物、ジルコニア系有機化合物等が挙げられる。
【0047】
本発明のガスバリアコート剤は、pHが1〜5、好ましくは2〜4に調整されたポリビニルアルコール系樹脂の水性溶液に分散された層状珪酸塩の存在下に、珪素アルコキシドを加水分解して得ることが、高湿度下で極めて優れた酸素バリア性を示し、更には熱水中でのボイル処理後も優れたガスバリア性を保持するために好ましい。
【0048】
本発明のガスバリアコート剤は、層状珪酸塩を分散したポリビニルアルコール系樹脂の水性溶液中で珪素アルコキシドの一部又は全部を加水分解し、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が0.9以上となるように製造される。
【0049】
本発明のガスバリアコート剤の好適な調整方法について詳述すれば、先ず、層状珪酸塩を予め分散したポリビニルアルコール系樹脂の水性溶液を、公知の微分散装置、例えば、超音波分散、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ホモミキサー、ウルトラミキサー、ディスパーミキサー、貫通型高圧分散装置、衝突型高圧分散装置、多孔型高圧分散装置、だまとり型高圧分散装置、(衝突+貫通)型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー等によって分散化する。
【0050】
上記公知の微分散装置の中でも、特に、ホモミキサー、ウルトラミキサー、ディスパーミキサー、貫通型高圧分散装置、衝突型高圧分散装置、多孔型高圧分散装置、だまとり型高圧分散装置、(衝突+貫通)型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー等が層状珪酸塩を良好な分散状態とするために好ましい。
【0051】
予めポリビニルアルコール系樹脂を分散する水性溶液は、水単独、或いは水と相溶性があり且つ乾燥が容易な有機溶媒と水との混合溶液である。この中でも、ガスバリアコート剤を容易に製造すること、及び基材層との積層を勘案すると、水/低級アルコール混合溶媒を用いることが好適である。
【0052】
上記低級アルコールとしては、炭素数が1〜3のアルコール、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、またはイソプロピルアルコールが好適である。
【0053】
また、上記の場合、水/アルコールの混合割合は、重量比で99/1〜20/80の範囲から適宜選択される。
【0054】
上記層状珪酸塩を分散したポリビニルアルコール系樹脂の水性溶液のpHを前記範囲に調整する方法は、層状珪酸塩中の交換性イオンをプロトン化する方法が層状珪酸塩の層間に珪素アルコキシド及び/又はその加水分解物を高濃度で存在せしめ、層状珪酸塩の層間を十分広げるために有効であり、本発明において好適に採用される。このプロトン化は、陽イオン交換樹脂やイオン交換膜によるイオン交換が好適である。
【0055】
例えば、陽イオン交換樹脂を使用したプロトン化は、層状珪酸塩を含む溶液をポリスチレン・スルホン酸型の強酸性イオン交換樹脂等の陽イオン交換樹脂と接触させる態様が挙げられる。
【0056】
また、イオン交換膜を使用したプロトン化は、陰極と陽極との間に陽イオン交換膜及びルーズ構造であることが好ましい陰イオン交換膜を交互に配列して陰極の存在する陰極室、陽極の存在する陽極室、及びその間に複数の隔室を形成した電気透析槽を構成し、陽極側に陰イオン交換膜を陰極側に陽イオン交換膜を有する室に層状珪酸塩を含む溶液を、該室と隣接する室に酸を供給しながら電気透析する方法、陰極と陽極との間に陽イオン交換膜及びバイポーラ膜を交互に配列して陰極の存在する陰極室、陽極の存在する陽極室、及びその間に複数の隔室を形成した電気透析槽を構成し、陽極側にバイポーラ膜を陰極側に陽イオン交換膜を有する室に層状珪酸塩を含む溶液を、該室と隣接する室に、希薄アルカリ水溶液であることが好ましい、電解質溶液を供給しながら電気透析する方法等が挙げられる。
【0057】
次いで、pHを前記範囲に調整され、層状珪酸塩を分散したポリビニルアルコール系樹脂の水性溶液に、珪素アルコキシドを添加し、かかる分散された層状珪酸塩の存在下に加水分解を行うことが好ましい。
【0058】
かかる該層状珪酸塩を分散して含有するポリビニルアルコール系樹脂の水性溶液中における珪素アルコキシドの加水分解は、上記水性溶液のpHを1〜5、好ましくは2〜4に調整しながら、加水分解触媒の存在下に実施される。層状珪酸塩中の交換性イオンを陽イオン交換樹脂やイオン交換膜によるイオン交換にてプロトン化し、上記pHの範囲に調整した場合、該プロトン化した層状珪酸塩自体も加水分解触媒としての役割を果たすことができることから、例えば、珪素アルコキシドの加水分解前に陽イオン交換樹脂をろ過等の方法によって系外に除去した場合でも珪素アルコキシドを加水分解することが可能である。
【0059】
上記加水分解触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、有機リン酸、蟻酸、酢酸、無水酢酸、クロロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、粘液酸、2,4−ジエチルグルタル酸、アクリル酸、メタクリル酸、グルタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、桂皮酸、尿酸、バルビツル酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸、酸性陽イオン交換樹脂、プロトン化した層状珪酸塩が挙げられる。
【0060】
その中でも、pH調整の容易さや触媒除去処理の簡便さや更に得られるガスバリア層の透明性等を勘案すると、酸性陽イオン交換樹脂、プロトン化した層状珪酸塩が好適である。
【0061】
なお、本発明のガスバリアコート剤において、必要に応じてガスバリア層に添加されるポリエチレンオキシドは、上記製造工程の何処で添加してもよい。例えば、層状珪酸塩を分散せしめた後、珪素アルコキシドの加水分解前に添加してもよいし、珪素アルコキシドを加水分解後に添加してもよい。
【0062】
上記製造方法における各成分の割合は、前記ガスバリアコート剤で示した割合となるように決定される。
【0063】
上記の製造方法において、ガスバリアコート剤の安定性、得られるガスバリア層の着色、高湿度下での良好なガスバリア性の発現等を勘案すると、珪素アルコキシドを加水分解する前あるいは後、プロトン化した層状珪酸塩を除くpH調整に使用した加水分解触媒を系外に除去することが好適である。
【0064】
本発明において、珪素アルコキシドを加水分解する前あるいは後、プロトン化した層状珪酸塩を除く加水分解触媒を系外に除去する方法は、特に制限されない。
【0065】
例えば、イオン交換樹脂の場合、ろ過等の物理的方法によって除去することが可能である。また、無機酸や有機酸を用いた場合では、該無機酸あるいは該有機酸に由来する陰イオン成分を水酸基イオン化した塩基性陰イオン交換樹脂により水酸基イオンとイオン交換し、ろ過により系外に除去する方法が好ましく採用される。
【0066】
本発明において、珪素アルコキシドの加水分解は、相分離していた液相が均一相になるまで行うことが好ましく、この場合、部分的に加水分解した状態、完全に加水分解した状態、また、珪素アルコキシド同士の重縮合反応が進行した状態でもよい。
【0067】
前記加水分解において、その時間は、加水分解の程度を決定する一因となるものであるが、相分離していた液相が均一相になれば良く、一般に、上記pHに調整後、常温では、1〜24時間、好ましくは、2〜18時間、さらに好ましくは2〜12時間が好適である。加水分解の時間は短い方が、高湿度下での極めて優れたガスバリア性や熱水中でのボイル処理後にも優れたガスバリア性を保持する上で好ましい。
【0068】
本発明のガスバリアコート剤は、最終的にpHが1〜5の範囲内に調整されることが、ガスバリアコート剤のゲル化防止、ガスバリア層を形成後のクラック防止、更に、高湿度下での良好なガスバリア性や熱水中でのボイル処理後にも優れたガスバリア性を発揮する上で好ましい。
【0069】
本発明のガスバリアコート剤を熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層に塗布し乾燥してガスバリア層を形成することによって、ガスバリア性フィルムを得ることができる。
【0070】
高湿度下でのガスバリア性やボイル処理後のガスバリア性は、上記珪素アルコキシドの加水分解時間やガスバリアコート剤のpHの他に、ガスバリアコート剤の保管条件(温度・時間)によって大きく影響を受けることから、本発明のガスバリアコート剤を熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層に塗布する前に、前記の方法によりポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)を測定し、その値が0.9以上であるか否かにより、該ガスバリアコート剤が良品であるか否かを判定することが好ましい。
【0071】
本発明のガスバリアコート剤を熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層に塗布し乾燥してガスバリア層を形成することによって得られるガスバリア性フィルムにおいて、基材層の材質は、熱可塑性樹脂よりなるものであれば、特に限定されないが包装用途に用いることを勘案すると透明性を有するフィルムが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種又は2種以上のα−オレフィンとのランダム又はブロック共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとの1種又は2種以上のランダム又はブロック共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外の1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種又は2種以上のα−オレフィンとのランダム又はブロック共重合体、1−ブテン単独重合体、アイオノマー樹脂、さらにこれら重合体の混合物などのポリオレフィン系樹脂;石油樹脂、テルペン樹脂などの炭化水素系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロンMXDなどポリアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン,アクリロニトリル系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリケトン樹脂;ポリメチレンオキシド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0072】
その中でも、上記樹脂単独でフィルム化したものでガスバリア性に優れるものは高価であり、工業的な実施においては、透明性、機械的強度、包装適性なども優れるポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン、アクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが好ましく、更に好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂である。
【0073】
上記熱可塑性樹脂フィルムの製造方法としては、公知の方法が制限なく使用できる。具体的には、溶液キャスト法,Tダイ法,チューブラー法、カレンダー法など公知の方法が採用される。また、機械物性等を勘案すると、上記熱可塑性樹脂フィルムは延伸処理を施すことが好ましい。延伸方法は、公知の方法が何ら制限なく採用でき、例えば、ロール一軸延伸、圧延、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、チューブラー延伸等が挙げられ、これらの延伸方法の中で、厚薄精度や機械物性等を勘案すると、逐次二軸延伸、同時二軸延伸が好ましい。
【0074】
また、熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、特に制限されず、用いる用途等を勘案して適宜選択すればよく、1〜200μmの範囲から適宜選択される。その中でも、延伸加工性、ガスバリア性、製袋加工性等を勘案すると5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。
【0075】
更に、上記熱可塑性樹脂フィルムには、必要に応じて帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、滑剤、紫外線吸収剤、滑り性付与及びアンチブロッキング性付与を目的とした界面活性剤等の公知の添加剤を、本発明の効果を阻害しない程度配合してもよい。
【0076】
上記熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層は、包装用途、特にガスバリア性フィルムとして好適に使用されることを勘案すると、透明であることが好ましい。具体的には、ヘイズ値が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0077】
ガスバリア層の厚みは、特に制限されるものではないが、ガスバリア性の発現、取扱い時のクラックの発生防止などを勘案すれば、0.1〜10μmが一般的であり、特に、0.5〜3μmが好ましい。
【0078】
ガスバリア性フィルムの厚みは、特に制限されるものではないが、5〜200μmが一般的であり、特に、10〜100μmが好ましい。
【0079】
本発明のガスバリアコート剤を熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層に塗布し乾燥してガスバリア層を形成することで得られるガスバリア性フィルムの製造方法において、ガスバリア層と基材層との積層は、本発明のガスバリアコート剤を基材層上に塗工して乾燥する方法によって行われる。
【0080】
本発明のガスバリアコート剤の塗工方法としては、特に制限されないが、高速での薄膜塗工可能な、溶液又は溶媒分散コーティング法が好ましい。これらコーティング法を具体的に例示すると、ロールコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、キスコーティング、ダイコーティング、ロッドコーティング、バーコーティング、チャンバードクター併用グラビアコーティング、カーテンコーティング等により、ガスバリアコート剤を熱可塑性樹脂フィルム表面にコートする方法が好適である。
【0081】
本発明において、基材層上のガスバリアコート剤を乾燥する方法としては、公知の乾燥方法が特に制限なく使用できる。具体的には、熱ロール接触法、熱媒(空気、オイル等)接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの中で、フィルム外観等の仕上がりや乾燥効率等を勘案すると、加熱空気接触法や赤外線加熱法が好ましい。
【0082】
上記ガスバリアコート剤の乾燥条件は特に制限されないが、ガスバリア性の発現や乾燥効率等を勘案すると、特に、60℃以上、基材の融点未満の温度範囲を採用することが好ましい。また、上記乾燥温度としては、80℃以上がより好ましく、特に90℃以上が更に好ましい。また、基材層の融点より10℃低い温度以下がより好ましく、特に15℃低い温度以下が更に好ましい。
【0083】
上記乾燥時間は、バリア性や乾燥効率等を勘案すると、5秒〜10分であることが好ましく、10秒〜5分であることがより好ましい。
【0084】
上記乾燥の前後に、必要に応じて、紫外線、X線、電子線等の高エネルギー線照射を施してもよい。また、高湿度下でのガスバリア性を更に向上させることを勘案すると、上記乾燥後、ガスバリア層に直接コロナ放電処理やフレームプラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0085】
本発明においては、基材層上に前記ガスバリアコート剤を塗工し、上記温度で乾燥してガスバリア層を形成させた後、更にエージング処理を施す方法が、より優れたガスバリア性を与えるガスバリア性フィルムを得るために有効である。
【0086】
上記エージング処理は、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性、特に90%RHを越えるような高湿度下でのガスバリア性の向上、更には熱水中でのボイル処理後に優れたガスバリア性の発揮に効果がある。エージングの条件は、適宜決定すればよく、特に制約されないものの、通常は、エージングによる基材層のしわ・たるみ等のダメージの発生しない条件範囲で決定される。例えば、熱可塑性樹脂フィルムが二軸延伸ポリプロピレンフィルムの場合、温度30℃〜50℃および相対湿度30%RH〜100%RHの範囲から選択され、温度40℃〜50℃、相対湿度40%RH〜90%RHの雰囲気でエージング処理を施すことがより好ましい。温度および相対湿度は、エージングによる基材層のしわ・たるみ等のダメージの発生しない限度内であれば、できるだけ高く設定することが、エージングに要する日数を低減し得ることから好ましい。
【0087】
エージングに要する日数は、適宜決定すればよく、生産性等を勘案すると例えば1日〜10日の範囲となるよう上記温度および相対湿度を設定すればよい。
【0088】
上記条件によるエージング処理を行う方法としては特に制限されない。好適な方法を例示すれば、上記基材層上にガスバリアコート剤を塗工・乾燥したフィルムを、温度、相対湿度を設定した恒温恒湿室等でエージング処理する方法を挙げることができる。また、フィルムをロール状に巻き取る場合、巻取り張力を低くしガスバリア性フィルム同士に空隙を設けたうえで恒温恒湿室でエージング処理する方法や、ロール状に巻き取る際に該ガスバリア層へ水蒸気を噴霧しエージング処理する方法等を用いてもよい。
【0089】
本発明において、基材層とガスバリア層との接着性をより向上せしめ、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性、耐久性をより向上させるために、ガスバリア層を積層する基材層の表面に、表面処理を施すことが好適である。
【0090】
かかる表面処理としては、公知の表面処理方法が何ら制限なく採用できる。例えば、大気中コロナ放電処理、窒素ガス中コロナ放電処理、炭酸ガス中コロナ放電処理、フレームプラズマ処理、紫外線処理、オゾン処理、電子線処理、励起不活性ガスによるプラズマ処理等の表面処理方法を挙げることができる。また、これらの表面処理の併用処理をしてもよい。
【0091】
また、前記基材層とガスバリア層との接着強度をより向上させることを勘案すると、その層間にアンカーコート層を設ける方法が好ましく採用される。
【0092】
上記アンカーコート層の形成に使用されるアンカーコート剤としては、公知のものが特に制限されず使用できる。例えば、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系等のアンカーコート剤が挙げられる。
【0093】
更に、本発明のガスバリアコート剤を熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層に塗布し乾燥してガスバリア層を形成することを特徴とするガスバリア性フィルムにおいて、上記方法によって得られるガスバリア層の外層に、ヒートシール性、耐熱水性等を付与する目的で、市販のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体等のシーラント層等を積層してもよい。
【0094】
また、本発明の品質評価方法によれば、製造した、珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水性溶液よりなるガスバリアコート剤が十分な性能を有しているか否かをガスバリア性フィルムとすることなく評価することができる。
【0095】
即ち、前記方法に従って測定したポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が小さいとガスバリア性フィルムとしたときの高湿度下や熱水中でのボイル処理後のガスバリア性に劣り、WS1/WPが大きいと高湿度下および熱水中でのボイル処理後のガスバリア性が良好であると判断できる。更に、本発明の品質評価方法においては、分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)をも併用することで品質評価の確度を向上させることができる。WS1/WPが大きく、且つWS2/WPも大きいと高湿度下および熱水中でのボイル処理後のガスバリア性がより良好であると判断できる。ガスバリアコート剤を評価する指標としては、WS1/WPが0.9以上であるか否かを指標とすることが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が0.9以上であるとき、良品であると判定することができる。分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を併用する場合には、WS1/WPが0.9以上であり、且つWS2/WPが0.4以上であるか否かを指標とすることが好ましい。
【0096】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明によれば、ガスバリア層としてポリビニルアルコール系樹脂と珪素アルコキシド加水分解物及び層状珪酸塩を含むガスバリア性フィルムにおいて、従来では達成が不可能であった、極めて高いガスバリア性を有するガスバリア層を形成するガスバリアコート剤を提供することが可能である。
【0097】
また、上記極めて優れたガスバリア性は、ガスバリア層にシール層を積層した態様において、熱水中に放置後でも、優れたガスバリア性を維持することが可能であり、従来、ガスバリア層として使用されていた塩化ビニリデンコートフィルムに匹敵する特性をポリビニルアルコール系樹脂を使用したガスバリア層で達成することを可能とした。
【0098】
従って、本発明により得られるガスバリア性フィルムの用途は、スナック等の乾燥食品を始めとし、珍味、生麺、生菓子等の中間水分食品や佃煮、惣菜、漬物、かまぼこ、ハム、ソーセージ等の高水物食品のガスバリア性フィルムとして幅広い用途に対して有用である。
【0099】
また、本発明によれば、ガスバリアコート剤を塗布してガスバリア性フィルムとすることなくガスバリアコート剤のガスバリア性能を評価することができる。従って、迅速かつ簡便にガスバリアコート剤の性能を評価することが可能となり、ガスバリアコート剤の製造工程管理や、品質管理など、迅速な性能評価が求められる場合に特に有用である。
【0100】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例におけるフィルム物性およびコート剤物性については下記の方法により行った。
【0101】
(1)高湿度下のガスバリア性(酸素透過度)
JIS K7126 B法に準じて、酸素透過度測定装置(Mocon社製;OX−TRAN100)を用いて高湿度下の酸素透過度を測定した。測定条件は、ガス流量20ml/minとし、温度23℃、基材層側の湿度を90%RH、ガスバリア層側の湿度を90%RHとした。湿度は日立計測器サービス(株)製
精密湿度調整システム RH−3S型にて調湿した。
【0102】
(2)ボイル後のガスバリア性(酸素透過度)
シール層を積層したガスバリア性フィルム単体を90℃に保った熱水中に30分間浸漬して熱水処理を施した。熱水処理は、熱水処理中にフィルムが浮かないようフィルム端部を内径18cmのステンレス製リング状型枠に固定して行った。熱水処理後、直ちにフィルムを水で洗浄し、10分以内にガスバリア性フィルムを酸素透過度測定装置にセットした。
【0103】
酸素透過度測定は、JIS K7126 B法に準じて、酸素透過度測定装置(Mocon社製;OX−TRAN100)を用いて測定した。測定条件は、ガス流量20ml/minとし、温度23℃にて、基材層側の湿度を90%RH、シール層側の湿度を90%RHとした。湿度は日立計測器サービス(株)製 精密湿度調整システム RH−3S型にて調湿した。熱水処理したガスバリア性フィルムをセットし10分後に酸素透過度測定を開始し、測定開始から1時間後の酸素透過度をボイル後のガスバリア性として評価した。
【0104】
(3)ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)、および分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)
【0105】
1)珪素アルコキシド加水分解縮合物のトリメチルシリル誘導体化
以下の手順によった。(I.Hasegawa et al,Bull.Chem.Soc.Jpn.,59,2279−2283 1986記載の方法に準じた。)
1.濃塩酸6mL、水5mL、2−プロパノール12mL、ヘキサメチルジシロキサン8mLを混合し、1時間攪拌した。
2.ガスバリアコート剤1mLを上記混合溶液に加え、さらに1時間攪拌した。
3.静置後、上澄み液をゲル浸透クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフ/質量分析計にて分析した。
【0106】
2)ゲル浸透クロマトグラフィー
島津製作所製の高速液体クロマトグラフLC−10を用い、以下の条件で測定を行った。
カラム:下記の3本のカラムを直列に接続して用いた。
▲1▼東ソー社製 TSK−GEL α−M
長さ30cm、内径7.8mm
▲2▼東ソー社製 TSK−GEL G2000H6
長さ30cm、内径7.5mm
▲3▼昭和電工社製 Shodex KF−800D
長さ10cm、内径8.0mm
カラム温度:25℃
移動相:テトラヒドロフラン
移動相流量:1mL/min.
試料量 :50μL
検出器:示差屈折率検出器
分子量較正:ポリスチレン標準
検量用標準溶液:水70重量部:エタノール30重量部の混合溶媒に、テトラエトキシシランを既知量(WB)加え、24時間攪拌することで、既知量(WB)のテトラエトキシシランを全て分子量650以上の縮合物としたものを使用した。
【0107】
分子量650以上の領域における積分分子量分布曲線算出手順:
1.上記測定条件により、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物のクロマトグラムを得た。
2.1.で得られるクロマトグラムにおける保持時間をポリスチレン換算分子量に換算した。
3.2.で得られるクロマトグラムより、分子量650以上の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の全ピーク面積(PA)を得た。
4.2.で得られるクロマトグラムにおける分子量650以上の領域を、島津製作所製高速液体クロマトグラフ装置LC−10付属の解析ソフトウェアにより積分分子量分布曲線に換算した。
5.検量用標準溶液を、1)の方法にてトリメチルシリル誘導体化して、ゲル浸透クロマトグラフィーで分析し、全ピーク面積(PB)を得た。
6.PBを検量用標準溶液中のテトラエトキシシラン縮合物量(WB)で除して、クロマトグラムの全ピーク面積と珪素アルコキシド縮合物量の換算係数(WB/PB)を得た。
7.3.で求めた溶液(A)中の分子量650以上の領域における誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の全ピーク面積(PA)に、6.で求めたクロマトグラムの全ピーク面積と珪素アルコキシド縮合物量の換算係数(WB/PB)を乗じることで、溶液(A)中の分子量650以上の領域における誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WA)を算出した。
8.4.で求めた積分分子量分布曲線の縦軸にWAを乗じ、分子量650以上の領域における、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量と、その分子量に対する累積重量との関係を示す曲線(FB)を得た。
【0108】
3)ガスクロマトグラフ/質量分析計
日本電子製のガスクロマトグラフ/質量分析計GC−MATEを用い、以下の条件で測定を行った。
カラム:J&W社製 DB−1
長さ30m、内径0.25mm、フィルム厚0.25μm
カラム温度:80℃(5分)→昇温速度10℃/分→300℃(20分)
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:1mL/分
試料量 :1μL
注入口温度:300℃
検量用標準物質:テトラキス(トリメチルシリルオキシ)シラン
【0109】
分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)算出手順:
1.上記測定条件により、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の質量スペクトルおよびクロマトグラムを得た。
2.質量スペクトルより、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量(MC)を得た。
3.既知量のテトラキス(トリメチルシリルオキシ)シランをテトラヒドロフランに溶解させて調整した標準溶液を用いて、検量線(ピーク面積対モル数)を作成した。
4.1.で得られたクロマトグラム上における、分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物のピーク面積を、3.の検量線よりモル数(C)に換算した。
5.4.で得られたモル数(C)に、その分子量(MC)を乗じ、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)を得た。なお、クロマトグラム上に複数種の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物のピークが現れる場合は、分子量650以下の全ての珪素アルコキシド縮合物のピークについて、上記の方法によりそれぞれの種の存在量を求めて合計し、分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)とした。
【0110】
4)ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)、および分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)の算出
ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)としては、ガスバリアコート剤を調製する際に配合したポリビニルアルコール系樹脂の重量を用いた。
また、分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)、および分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)の算出は、次の手順で行った。
【0111】
1.2)で求めた、分子量650以上の領域における誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量とその分子量に対する累積重量との関係を示す曲線(FB)に、3)で求めた、分子量650以下の誘導体化した珪素アルコキシド縮合物量(WC)を加算した。
2.1.で得られた曲線において、縦軸の珪素アルコキシド縮合物量をSiO2重量に換算することで、全分子量領域における、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量と、その分子量に対するSiO2換算での累積重量との関係を示す曲線(FC)を得た。なお、この曲線(FC)の横軸は分子量の常用対数であり、縦軸の値はその分子量に対する誘導体化した珪素アルコキシド縮合物のSiO2換算での累積重量、即ちその分子量以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)を表す。
【0112】
3.2.で得られた曲線(FC)より、分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)を求めた。
4.3.で求めたWS1を、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)で除することで、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)を算出した。
5.2.で得られた曲線(FC)より、分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)を求めた。
6.5.で求めたWS2を、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)で除することで、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を算出した。
【0113】
実施例1
水70重量部:エタノール30重量部の混合溶媒に、平均重合度1700・鹸化率98%以上のポリビニルアルコールを濃度が6.7重量%となるように70℃にて溶解させ、ポリビニルアルコールの6.7重量%溶液(A液と略記)を得た。
【0114】
水70重量部:エタノール30重量部の混合溶媒に、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(クニミネ工業(株)製、クニピアG)を濃度が3.3重量%となるように加え、60℃にて攪拌しながら分散させ、層状珪酸塩の3.3重量%分散溶液(B液と略記)を得た。
【0115】
上記A液とB液を重量比1/1の割合で混合した溶液を衝突型高圧分散装置((株)スギノマシン製、HJP−25005)により微分散化処理を施し、ポリビニルアルコール3.3重量%・層状珪酸塩1.7重量%の微分散溶液を得た。該微分散溶液にビーズ状の水素イオン化した強酸性イオン交換樹脂を加え、pH=2.4に調整した。該pH調整した微分散溶液にテトラエトキシシランをポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で225重量部となるよう加え、室温下、約2時間攪拌しテトラエトキシシランの加水分解を行った。その後、イオン交換樹脂や埃等の異物をろ過により除去し、ガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤のpHは2.4であった。
【0116】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0117】
厚み20μmのコロナ放電処理した二軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ放電処理面に、アンカーコート剤(東洋モートン(株)製、AD335AE/CAT10L=10重量部/1.4重量部を、酢酸エチル/トルエン=1重量部/1重量部の混合溶剤にて、不揮発分が6重量%となるよう調整)をアンカーコート層の乾燥重量が0.3g/m2となるようバーコーターにてコーティングし、100℃で1分熱風乾燥してアンカーコート剤を塗工した二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0118】
該アンカーコート剤を塗工した二軸延伸ポリプロピレンフィルムのアンカーコート層へ、上記で得られたガスバリアコート剤を、乾燥後のガスバリア層厚みが1.0μmになるようにベーカー式アプリケーターにてコーティングし、100℃で2分熱風乾燥した。次いで、得られたコートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。
【0119】
さらに、得られたガスバリア性フィルムのガスバリア層に、ドライラミネート用接着剤(東洋モートン(株)製、TM329/CAT−8B=1重量部/1重量部を、酢酸エチル溶剤にて、不揮発分が10重量%となるよう調整)を乾燥重量が2g/m2となるようにコーティングし、90℃で2分間乾燥させた後、該ドライラミネート用接着剤面に、シール層として40μmの無延伸ポリエチレンフィルムをラミネートして無延伸ポリエチレンフィルムを積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0120】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0121】
実施例2
実施例1においてテトラエトキシシランをポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で150重量部となるよう加えた以外は、実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。
【0122】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0123】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0124】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0125】
実施例3
実施例1においてテトラエトキシシランをポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で100重量部となるよう加えた以外は、実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。
【0126】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0127】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0128】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0129】
実施例4
実施例1において得られたガスバリアコート剤を23℃にて48時間保存し、該保存後のガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0130】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0131】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0132】
実施例5
実施例2において得られたガスバリアコート剤を23℃にて48時間保存し、該保存後のガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。また、図1に、全分子量領域における、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量と、その分子量に対するSiO2換算での累積重量との関係を示す曲線(FC)の縦軸を、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)で除して得られた、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する特定分子量(MS)以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)の割合(WS/WP)とした曲線を示した。
【0133】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0134】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0135】
実施例6
実施例1においてA液とB液を重量比2/1の割合で混合し、テトラエトキシシランをポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で150重量部となるよう加えた以外は、実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。該ガスバリアコート剤中のポリビニルアルコール/層状珪酸塩の重量部比は100/25である。
【0136】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0137】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0138】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0139】
実施例7
実施例1においてA液とB液を重量比1/1.7の割合で混合し、テトラエトキシシランをポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で150重量部となるよう加えた以外は、実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。該ガスバリアコート剤中のポリビニルアルコール/層状珪酸塩の重量部比は100/83である。
【0140】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0141】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0142】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0143】
実施例8
実施例1においてA液とB液を重量比1/2.5の割合で混合し、テトラエトキシシランをポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で150重量部となるよう加えた以外は、実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。該ガスバリアコート剤中のポリビニルアルコール/層状珪酸塩の重量部比は100/125である。
【0144】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0145】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。
【0146】
さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0147】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0148】
実施例9
実施例1においてテトラエトキシシランをポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で320重量部となるよう加えた以外は、実施例1と同様にしてガスバリアコート剤及びガスバリア性フィルムを得た。
【0149】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0150】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0151】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0152】
実施例10
実施例1においてポリビニルアルコール・層状珪酸塩の微分散溶液に平均分子量400万のポリエチレングリコールをポリビニルアルコール100重量部に対し1重量部加えた以外は、実施例1と同様にしてガスバリアコート剤及びガスバリア性フィルムを得た。
【0153】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0154】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0155】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0156】
実施例11
厚み12μmのコロナ放電処理した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ放電処理面に、アンカーコート剤(東洋モートン(株)製、AD335AE/CAT10L=10重量部/1重量部を、酢酸エチル/トルエン=1重量部/1重量部の混合溶剤にて、不揮発分が6重量%となるよう調整)をアンカーコート層の乾燥重量が0.3g/m2となるようバーコーターにてコーティングし、100℃で1分熱風乾燥してアンカーコート剤を塗工した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0157】
該アンカーコート剤を塗工した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのアンカーコート層へ、実施例1で得られたガスバリアコート剤を乾燥後のガスバリア層厚みが1.0μmになるようにベーカー式アプリケーターにてコーティングし、100℃で2分熱風乾燥して、コートフィルムを得た。次いで、得られたコートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0158】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0159】
実施例12
厚み15μmのコロナ放電処理した二軸延伸ナイロンフィルムのコロナ放電処理面に、アンカーコート剤(三井武田ケミカル(株)製、A3210/A3070=3重量部/1重量部を、酢酸エチルにて、不揮発分が6重量%となるよう調整)をアンカーコート層の乾燥重量が0.3g/m2となるようバーコーターにてコーティングし、100℃で1分熱風乾燥してアンカーコート剤を塗工した二軸延伸ナイロンフィルムを得た。
【0160】
該アンカーコート剤を塗工した二軸延伸ナイロンフィルムのアンカーコート層へ、実施例1で得られたガスバリアコート剤を乾燥後のガスバリア層厚みが2.0μmになるようにベーカー式アプリケーターにてコーティングし、100℃で2分熱風乾燥して、コートフィルムを得た。次いで、得られたコートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0161】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0162】
比較例1
実施例2において得られたガスバリアコート剤を23℃にて72時間保存し、該保存後のガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。また、図1に、全分子量領域における、誘導体化した珪素アルコキシド縮合物の分子量と、その分子量に対するSiO2換算での累積重量との関係を示す曲線(FC)の縦軸を、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)で除して得られた、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する特定分子量(MS)以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)の割合(WS/WP)とした曲線を示した。
【0163】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0164】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0165】
比較例2
実施例2において得られたガスバリアコート剤を40℃にて24時間保存し、該保存後のガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0166】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0167】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0168】
比較例3
テトラエトキシシラン100重量部に1N−塩酸40重量部を加え、室温下1時間攪拌し、テトラエトキシシランを加水分解させ、テトラエトキシシラン加水分解溶液を得た。実施例1で得られたポリビニルアルコール・層状珪酸塩の微分散溶液に該テトラエトキシシラン加水分解溶液をポリビニルアルコール100重量部に対し、珪素アルコキシド由来の珪素量(SiO2換算)で127重量部となるように加え、ポリビニルアルコール・層状珪酸塩・テトラエトキシシラン加水分解物の混合溶液からなるガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤のpHは1.7であった。
【0169】
得られたガスバリアコート剤のポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)およびポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量3200以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS2)の割合(WS2/WP)を測定し、表1に示した。
【0170】
実施例1と同様にしてコートフィルムを得た後、該コートフィルムを相対湿度40%RHで、50℃×2日間のエージング処理を施し、ガスバリア性フィルムを得た。さらに、実施例1と同様にしてシール層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
【0171】
得られたガスバリア性フィルムの高湿度下のガスバリア性、シール層を積層したガスバリア性フィルムのボイル後のガスバリア性を評価し、その結果を表2に示した。
【0172】
【表1】
【0173】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例5および比較例1で得られたガスバリアコート剤の、珪素アルコキシド縮合物の分子量(MS)と、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する特定分子量(MS)以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS)の割合(WS/WP)との関係を示す図。
Claims (7)
- 珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水性溶液よりなるガスバリアコート剤であって、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)が0.9以上であるガスバリアコート剤。
- ガスバリアコート剤が、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、珪素アルコキシド由来の珪素を、SiO2換算で90〜500重量部、層状珪酸塩を10〜150重量部含有する請求項1記載のガスバリアコート剤。
- 層状珪酸塩を分散したポリビニルアルコール系樹脂の水性溶液中で珪素アルコキシドの一部又は全部を加水分解し、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)を0.9以上とすることを特徴とする珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水性溶液よりなるガスバリアコート剤の製造方法。
- ガスバリアコート剤が、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、珪素アルコキシド由来の珪素を、SiO2換算で90〜500重量部、層状珪酸塩を10〜150重量部含有するガスバリアコート剤である請求項3記載のガスバリアコート剤の製造方法。
- 請求項1記載のガスバリアコート剤を熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材層に塗布し乾燥してガスバリア層を形成することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
- 珪素アルコキシドの加水分解物、層状珪酸塩、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水性溶液よりなるガスバリアコート剤において、ポリビニルアルコール系樹脂量(WP)に対する分子量10000以下の珪素アルコキシド縮合物量(WS1)の割合(WS1/WP)により、ガスバリアコート剤を評価することを特徴とするガスバリアコート剤の評価方法。
- ガスバリアコート剤が、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、珪素アルコキシド由来の珪素を、SiO2換算で90〜500重量部、層状珪酸塩を10〜150重量部含有するガスバリアコート剤である請求項6のいずれかに記載のガスバリアコート剤の品質評価方法。
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2003
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