JP4437602B2 - ガスバリア性フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高湿度下でも優れたガスバリア性を保持することができ、かつ透明性に優れたガスバリア性フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムは、良好な加工適性、優れた機械強度、透明性、製袋性等の二次加工性等により、包装用フィルムとして汎用されている。
【0003】
また、ガスバリア性(特に酸素バリア性)等の機能を付与させる目的で、上記した熱可塑性樹脂フィルムのフィルム表面に、塩化ビニリデン系樹脂やポリビニルアルコール系樹脂等のガスバリア性を有する樹脂層を積層することが行われている。
【0004】
しかしながら、塩化ビニリデン系樹脂はガスバリア性には優れるものの、塩素系樹脂であるため焼却性や廃棄性に関してデメリットがある。また、ポリビニルアルコール系樹脂は、乾燥状態での酸素バリア性が合成樹脂中、最も優れているものの、高湿度下では吸湿により、酸素バリア性が極端に低下するという問題がある。
【0005】
このため、架橋や変性処理をしたり、他化合物と複合したりする工夫がなされている。例えば、特開昭56−4563号公報には、熱可塑性樹脂フィルム上に、シリカ/ポリビニルアルコール系複合ポリマーからなる被覆層を設けたガスバリア性フィルムが開示されている。また、特開平9−39166号公報には、被膜の形成過程において、140℃以上、熱可塑性樹脂基材の融点以下の温度で乾燥または熱処理を行う、熱可塑性樹脂基材の少なくとも片面上に水溶性高分子および金属微粒子を含んでなる被膜を形成したフィルムが開示されている。
【0006】
しかしながら、特開昭56−4563号公報に記載のフィルムは、実質的にシリカゾルとポリビニルアルコールなどの水溶性高分子との混合物からなる被膜で形成されているので、高湿度下、特に90%RH以上におけるガスバリア性に関しては未だ改良の余地があり、さらに高湿度下でのガスバリア性を改良するためにシリカゾルの配合比を多くするとフィルムの透明性が悪化するという問題があった。また、特開平9−39166号公報に記載のフィルムも、実質的にシリカゾルとポリビニルアルコールなどの水溶性高分子との混合物からなる被膜で形成されているので前記と同様の問題があり、また140℃以上、熱可塑性樹脂基材の融点以下の温度で乾燥または熱処理する必要があることから、熱可塑性樹脂基材の種類によっては、基材の耐熱性不足の問題点があった。
【0007】
そこで本発明者らは、すでに、上記した問題点を改善した、熱可塑性樹脂フィルムと特定の高分子ガスバリア層との積層フィルムを提案している(特願2000−101654号)。
【0008】
上記特願2000−101654号に記載の製造方法は、高湿度下でのガスバリア性が優れたガスバリア性フィルムを製造することができるが、製造条件等に制限があった。すなわち、高分子ガスバリア層を形成するための触媒量が十分でないと、塗工液の調整に時間を要し、かつ、塗工液の寿命が短くなる傾向にあり、実用上使用しにくいものとなる。一方、触媒量を多くすると、上記問題は改善できるものの、高湿度下でも優れたガスバリア性を発揮させるためには、乾燥温度をより高く設定する必要があり、ポリプロピレンフィルム等の融点の低い熱可塑性樹脂基材では、乾燥時にしわが発生し易くなる傾向にある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、ポリプロピレンフィルム等の融点の低い熱可塑性樹脂基材においても、高湿度下でも優れたガスバリア性を有し、かつ透明性に優れたガスバリア性フィルムの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。
【0011】
その結果、ポリビニルアルコール系樹脂、ケイ素アルコキシド、低級アルコール、水およびケイ素アルコキシド加水分解触媒を混合してケイ素アルコキシドを加水分解した後に、ケイ素アルコキシド加水分解触媒を除去してなる塗工液を、熱可塑性樹脂基材に塗工し、乾燥する方法により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
ポリビニルアルコール系樹脂、ケイ素アルコキシド、低級アルコール、水、およびケイ素アルコキシド加水分解触媒を、ポリビニルアルコール系樹脂/ケイ素アルコキシドの重量部比が100/300〜100/600となるように混合してケイ素アルコキシドを加水分解した後に、ケイ素アルコキシド加水分解触媒を除去してなる塗工液を、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面上に塗工し、乾燥することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂フィルムは、特に限定ないが包装用途に用いることを勘案すると透明性を有するフィルムが好ましい。また、熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上のα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとの1種または2種以上のランダムまたはブロック共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上のα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体、1−ブテン単独重合体、アイオノマー樹脂、さらにこれら重合体の混合物などのポリオレフィン系樹脂;石油樹脂、テルペン樹脂などの炭化水素系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロンMXDなどポリアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン、アクリロニトリル系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの水素結合性樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリケトン樹脂;ポリメチレンオキシド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらは一種または二種以上を混合して用いることができる。
【0014】
その中でも透明性、機械的強度、包装適性などが優れるポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、水素結合性樹脂、ポリカーボネート樹脂などが好ましい。
【0015】
さらには、ポリオレフィン系樹脂が、より低温で処理できる本発明の方法に適しているので、特に好ましい。
【0016】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂フィルムの製造方法としては、公知の方法が制限なく使用できる。具体的には、溶液キャスト法,Tダイ法,チューブラー法、カレンダー法など公知の方法が採用される。また、機械物性等を勘案すると、上記熱可塑性樹脂フィルムは延伸処理を施すことが好ましい。延伸方法は、公知の方法が何ら制限なく採用でき、例えば、ロール一軸延伸、圧延、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、チューブラー延伸等が挙げられ、これらの延伸方法の中で、厚薄精度や機械物性等を勘案すると、逐次二軸延伸、同時二軸延伸が好ましい。
【0017】
また、熱可塑性樹脂フィルムの厚みとしては、特に制限されず、用いる用途等を勘案して適宜選択すればよく、一般的には1〜500μmの範囲から適宜選択される。その中でも、延伸加工性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、製袋加工性等を勘案すると5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。
【0018】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂フィルムには、必要に応じて帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、滑剤、紫外線吸収剤、滑り性付与およびアンチブロッキング性付与を目的とした界面活性剤等の公知の添加剤を、本発明の効果を阻害しない程度配合してもよい。
【0019】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂フィルムは、包装用途、特にガスバリアフィルムとして好適に使用されることを勘案すると、透明であることが好ましい。具体的には、ヘイズ値が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0020】
本発明で用いられる塗工液は、ポリビニルアルコール系樹脂、ケイ素アルコキシド、低級アルコール、水、およびケイ素アルコキシド加水分解触媒を混合してケイ素アルコキシドを加水分解することにより得られる。
【0021】
上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、けん化度75モル%以上のポリビニルアルコール、ビニルアルコール単位が60モル%以上であるエチレン−ビニルアルコール共重合体等の共重合ポリビニルアルコール等が好ましく用いられる。その中でも、けん化度75モル%以上のポリビニルアルコールが、得られるフィルムの透明性や高湿度下でのガスバリア性が良好なことからより好ましく用いられる。また、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記ポリビニルアルコール系樹脂は、シリル基やアセトアセチル基等で変性されていてもよい。
【0022】
また、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、ガスバリア性や加工性を勘案すると、100〜5,000であることが好ましく、300〜3,000であることがより好ましい。
【0023】
上記ケイ素アルコキシドとしては、加水分解により重縮合物が形成可能であれば特に制限されない。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリプロポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、1−アミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチルアミノメチルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等の加水分解重縮合物が形成可能なケイ素アルコキシドが挙げられる。
【0024】
上記低級アルコールとしては、炭素数が1〜3のアルコール、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、またはイソプロピルアルコールである。また、上記水は特に制限されず、工業用に用いられている水を用いればよい。
【0025】
上記ケイ素アルコキシド加水分解触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、有機リン酸、蟻酸、酢酸、無水酢酸、クロロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、イタコン酸、シュウ酸、粘液酸、尿酸、バルビツル酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸、酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。
【0026】
その中でも、得られる塗工液の寿命や触媒除去処理の簡便さ等を勘案すると、酸性陽イオン交換樹脂が好適である。
【0027】
本発明において、塗工液中の上記各成分の配合割合は、以下のとおりである。
【0028】
本発明において、塗工液中におけるポリビニルアルコール系樹脂とケイ素アルコキシドとの混合割合は、ポリビニルアルコール系樹脂/ケイ素アルコキシドの重量部比が、100重量部/300〜600重量部であり、100重量部/400〜550重量部であることが、高湿度下でも極めて良好な高いガスバリア性を発揮するために好ましい。
【0029】
塗工液中のポリビニルアルコール系樹脂とケイ素アルコキシドとの配合割合において、ケイ素アルコキシド重量比が300重量部より少ない場合、塗工液を乾燥して得られる高分子ガスバリア層の厚みが厚くなっても、高湿度下でのガスバリア性が不十分で、本発明で規定するガスバリア性フィルムを得ることができない。また、ケイ素アルコキシド重量比が600重量部より多い場合、該高分子ガスバリア層自体が脆くなるため、フィルム屈曲によりクラックが発生し易くなる。
【0030】
また、塗工液中における水/アルコールの混合割合は、重量比で99/1〜20/80の範囲から適宜選択される。
【0031】
水/アルコールと、ポリビニルアルコール系樹脂/ケイ素アルコキシドとの混合割合は、ポリビニルアルコール系樹脂が水/アルコール混合物に溶解し得る濃度、すなわち、水/アルコール混合物に対するポリビニルアルコール系樹脂の濃度が0.1〜20%となるように、ポリビニルアルコール系樹脂/ケイ素アルコキシドの混合量を適宜決定すればよく、より好ましくは水/アルコール混合物に対するポリビニルアルコール系樹脂の濃度が1〜10%となる範囲から、ポリビニルアルコール系樹脂/ケイ素アルコキシドの混合量を採用すればよい。
【0032】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂、ケイ素アルコキシド、低級アルコール、水、およびケイ素アルコキシド加水分解触媒を混合してケイ素アルコキシドを加水分解し、ケイ素アルコキシド加水分解触媒を除去する方法は、特に制限されない。
【0033】
例えば、所定量のポリビニルアルコール系樹脂、ケイ素アルコキシド、および水と低級アルコールとの混合溶液を混合して攪拌により分散させた後に、ケイ素アルコキシド加水分解触媒を混合し、ケイ素アルコキシドを加水分解させた後に、ケイ素アルコキシド加水分解触媒を系外に除去する方法;ケイ素アルコキシド、水およびケイ素アルコキシド加水分解触媒を混合し、予めケイ素アルコキシドを加水分解させ、ケイ素アルコキシド加水分解触媒を系外に除去した後に、ポリビニルアルコール系樹脂を混合する方法;ケイ素アルコキシド、水およびケイ素アルコキシド加水分解触媒を混合し、予めケイ素アルコキシドを加水分解させた後に、ポリビニルアルコール系樹脂を混合し、ケイ素アルコキシド加水分解触媒を系外に除去する方法;等が挙げられる。
【0034】
この際、ケイ素アルコキシドの加水分解は、相分離していた液相が均一相になるまで加水分解を行えば、部分的な加水分解でも、完全な加水分解でもよい。
【0035】
また、ケイ素アルコキシド加水分解触媒を系外に除去する方法としては、ケイ素アルコキシド加水分解触媒として水素イオン化した酸性陽イオン交換樹脂を用いた場合では、ろ過により系外に除去する方法が好ましく採用される。また、無機酸や有機酸を用いた場合では、該無機酸あるいは該有機酸に由来する陰イオン成分を水酸基イオン化した塩基性陰イオン交換樹脂により水酸基イオンへイオン交換し、ろ過により系外に除去する方法が好ましく採用される。
【0036】
中でも、ケイ素アルコキシド加水分解触媒として水素イオン化した酸性陽イオン交換樹脂を用い、ろ過により触媒を系外に除去する方法がより好適である。
【0037】
本発明において、塗工液中から上記ケイ素アルコキシド加水分解触媒を除去せずに用いた場合、塗工液が使用する前にゲル化して実質上使用できなくなったり、乾燥温度をより高く設定しないと高湿度下でも優れたガスバリア性を発揮できないため、ポリプロピレンフィルム等の融点の低い熱可塑性樹脂基材では、乾燥時にしわが発生し易くなり、また、得られる高分子ガスバリア層が着色するので好ましくない。
【0038】
また上記塗工液には、本発明の効果を阻害しないかぎり、上記以外の成分を配合してもよい。
【0039】
例えば、熱可塑性樹脂フィルムへのコート適性を高めるため、塗工液の安定性が阻害されない範囲で、他の水溶性有機化合物を添加してもよい。具体的には、溶媒として使用される上記低級アルコール以外に、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のグリコール誘導体;グリセリン、ワックス類等の多価アルコール類;ジオキサン、トリオキサン等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン等のケトン類;水溶性イソシアネート、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂等の水溶性アンカーコート剤が挙げられる。
【0040】
また、無機微粒子、無機系層状化合物等の無機化合物や架橋剤を添加してもよい。無機化合物を具体的に例示すると、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子、モンモリロナイト、カオリナイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ディッカイト、ナクライト、アンチゴライト、バイロフィライト、ヘクトライト、バイデライト、マーガライト、タルク、テトラシリリックマイカ、白雲母、金雲母、緑泥石等の無機層状化合物が挙げられる。無機層状化合物の多くは天然の鉱物として産するが、化学合成法によって製造されたものも制限なく使用できる。また、架橋剤を具体的に例示すると、ウレタン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。
【0041】
上記塗工液は、上記成分がそれぞれお互いに分散・混合された状態であっても、さらに一部架橋された状態であってもよい。
【0042】
本発明において、上記塗工液の塗工方法としては、特に制限されないが、高速での薄膜塗工可能な、溶液または溶媒分散コーティング法が好ましい。これらコーティング法を具体的に例示すると、コート液を、グラビアコート、リバースコート、スプレーコート、キッスコート、ダイコート、メタリングバーコート、チャンバードクター併用グラビアコート、カーテンコート等により熱可塑性樹脂フィルム表面にコートする方法が好適である。
【0043】
本発明において、上記塗工液の塗工量は特に制限されないが、ガスバリア性を勘案すると、上記塗工液を乾燥して得られる高分子ガスバリア層の厚みが0.1μm以上、特に0.3μm以上となるよう塗工量を決定することが好ましい。また、経済性、二次加工性等を勘案すると、該高分子ガスバリア層の厚みが10μm以下、特に6μm以下となるよう塗工量を決定することが好ましい。塗工量は、上記塗工液中の固形分濃度により適宜調整できる。
【0044】
本発明において、熱可塑性樹脂フィルム上の塗工液を乾燥する方法としては、公知の乾燥方法が特に制限なく使用できる。具体的には、熱ロール接触法、熱媒(空気、オイル等)接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等の1種または2種以上が挙げられる。これらの中で、フィルム外観等の仕上がりや乾燥効率等を勘案すると、加熱空気接触法や赤外線加熱法が好ましい。
【0045】
前記塗工液の乾燥条件は特に制限されないが、ガスバリア性の発現や乾燥効率等を勘案すると、特に、熱可塑性樹脂フィルムの融点未満の温度範囲において、80℃以上の温度を採用することが好ましい。また、上記乾燥温度としては、100℃以上がより好ましく、特に120℃以上がさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂フィルムの融点より10℃低い温度以下がより好ましく、特に15℃低い温度以下がさらに好ましい。
【0046】
上記乾燥時間は、バリア性や乾燥効率等を勘案すると、5秒〜10分であることが好ましく、10秒〜5分であることがより好ましい。
【0047】
また、上記乾燥の前後に、必要に応じて、紫外線、X線、電子線等の高エネルギー線照射を施してもよい。
【0048】
本発明において、高分子ガスバリア層と熱可塑性樹脂フィルムとの接着性をより向上せしめ、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性、耐久性をより向上させるために、高分子ガスバリア層を積層する熱可塑性樹脂フィルムの表面に、表面処理を施すことが好適である。
【0049】
表面処理としては、公知の表面処理方法が何ら制限なく採用できる。例えば、大気中コロナ放電処理、窒素ガス中コロナ放電処理、炭酸ガス中コロナ放電処理、フレームプラズマ処理、紫外線処理、オゾン処理、電子線処理、励起不活性ガスによるプラズマ処理等の表面処理方法を挙げることができる。また、これらの表面処理の併用処理をしてもよい。
【0050】
また、本発明において、上記した公知の表面処理を施した熱可塑性樹脂フィルムと前記高分子ガスバリア層との間にアンカーコート層を介して、高分子ガスバリア層と熱可塑性フィルム間の接着強度を一層向上させることもできる。
【0051】
上記アンカーコート層の形成に使用されるアンカーコート剤としては、公知のものが特に制限されず使用できる。例えば、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系等のアンカーコート剤が挙げられる。
【0052】
さらに、本発明において、印刷層および/またはヒートシール性等を付与する目的で、市販のポリオレフィン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体等のシーラント層等を積層してもよい。
【0053】
本発明の製造方法により得られたガスバリア性フィルムの用途は、特に制限されないが、乾燥食品包装用やカステラ、生菓子等の高水分活性食品包装用として幅広い水分活性の食品包装用フィルムとして好適である。
【0054】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例におけるフィルム物性等については下記の方法により行った。
【0055】
(1)透明性(ヘイズ)
JIS K6714に準拠して測定した。
【0056】
(2)酸素バリア性(酸素透過率)
JIS K7126 B法に準じて、酸素透過率測定装置(Mocon社製;OX−TRAN100)を用いて測定した。測定条件は、23℃、湿度90%RHで行った。
【0057】
(3)コーティング
暁機械社製テストコーターを用い、幅30cmの基材フィルムに以下の条件でコーティングおよび乾燥させて高分子ガスバリア層を形成させた。
乾燥方法;ガイドロールアーチ型熱風ジェットノズル吹付式
コート方式;グラビア方式
乾燥炉長;6m
コート速度;10m/分
【0058】
(4)耐クラック性
ゲルボフレックステスターを用い、(3)で得られたフィルムを23℃で50回の繰り返し屈曲を行い、JIS K7126 B法に準じて、酸素透過率測定装置(Mocon社製;OX−TRAN100)で酸素透過率を測定し、耐クラック性を評価した。酸素透過率の測定条件は、23℃、湿度90%RHで行った。
【0059】
(5)フィルムしわ
(3)で得られたフィルムのしわの状況を下記の基準に従い評価した。
○:しわがほとんどみられない。
△:少しのしわが見られる。
×:かなりのしわが見られる。
【0060】
(6)フィルムしわ
(3)で得られたフィルムの色相を目視で評価した。
【0061】
実施例1
水70重量部:エタノール30重量部の混合溶液に、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、ゴーセノールNL−05)を濃度が5%となるように溶解させ、5%ポリビニルアルコール溶液を得た。該ポリビニルアルコール溶液100重量部にテトラエトキシシラン26重量部とビーズ状の水素イオン化した酸性陽イオン交換樹脂を加え、室温下1時間攪拌した。該溶液から陽イオン交換樹脂をろ過により除去して、塗工液を調整した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコール/テトラエトキシシランの重量部比は、100重量部/520重量部であり、塗工液の寿命(ゲル化して塗工液として使用できなくなるまでの時間)は、室温下24時間以上であった。
【0062】
得られた塗工液を、厚み20μmの窒素中コロナ放電処理した二軸延伸ポリプロピレンフィルムの処理面に、乾燥後の高分子ガスバリア層厚みが1.0μmになるようにコーティングし、120℃で熱風乾燥してガスバリア性フィルムを得た。
得られたフィルムの透明性、ガスバリア性能としての酸素透過率、高分子ガスバリア層の接着性、そしてフィルムしわの状況を評価し、表1にその結果を示した。
なお、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの基材単独での酸素透過率は、1800(ml/m2・day・atm)(90%RH)である。
【0063】
実施例2
5%ポリビニルアルコール溶液100重量部にテトラエトキシシラン22重量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして塗工液を調整した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコールとテトラエトキシシランの重量部比は、ポリビニルアルコール/テトラエトキシシラン=100重量部/440重量部であり、塗工液の寿命は、室温下24時間以上であった。
実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0064】
実施例3
5%ポリビニルアルコール溶液100重量部にテトラエトキシシラン20重量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして塗工液を調整した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコールとテトラエトキシシランの重量部比は、ポリビニルアルコール/テトラエトキシシラン=100重量部/400重量部であり、塗工液の寿命は、室温下24時間以上であった。
実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0065】
実施例4
5%ポリビニルアルコール溶液100重量部にテトラエトキシシラン17.4重量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして塗工液を調整した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコールとテトラエトキシシランの重量部比は、ポリビニルアルコール/テトラエトキシシラン=100重量部/350重量部であり、塗工液の寿命は、室温下24時間以上であった。
実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0066】
実施例5
5%ポリビニルアルコール溶液100重量部にテトラエトキシシラン15重量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして塗工液を調整した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコールとテトラエトキシシランの重量部比は、ポリビニルアルコール/テトラエトキシシラン=100重量部/300重量部であり、塗工液の寿命は、室温下24時間以上であった。
実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0067】
実施例6
実施例1と同様にして塗工液を得、該塗工液の乾燥後の高分子ガスバリア層厚みが3.0μmになるようにコーティングしたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0068】
実施例7
水70重量部:エタノール30重量部の混合溶液に、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、ゴーセノールNL−05)を濃度5%となるように溶解させ、5%ポリビニルアルコール溶液を得た。
ヘクトライト(コープケミカル製、ルーセンタイトSWN)を水に1.3%となるように溶解させ、1.3%ヘクトライト水溶液を得た。該ポリビニルアルコール溶液100重量部に該ヘクトライト水溶液66.5重量部、エタノール33.5重量部およびテトラエトキシシラン25重量部を混合し、該混合液にビーズ状の水素イオン化した酸性陽イオン交換樹脂を加え、室温下1時間攪拌した。陽イオン交換樹脂をろ過し、塗工液を調整した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコール/テトラエトキシシランの重量部比は、100重量部/500重量部であり、塗工液の寿命は、室温下24時間以上であった。
実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0069】
実施例8
実施例1で得られたガスバリア性フィルムの塗工面に、ドライラミネート用接着剤(東洋モートン社製、TM329/CAT−8B 100重量部/100重量部を、酢酸エチル溶剤にて、不揮発分が10%となるよう調整)をバーコーターにより乾燥重量が2g/m2となるようにハンドコートし、90℃で2分間乾燥させた後、該ドライラミネート用接着剤面に、40μmの無延伸ポリエチレンフィルムをラミネートして無延伸ポリエチレンフィルムを積層したフィルムを得た。得られたフィルムのフィルム物性を表1に示した。
なお、無延伸ポリエチレンフィルム単独での酸素透過率は、3200(ml/m2・day・atm)(90%RH)である。
【0070】
実施例9
水70重量部、エタノール30重量部の混合溶液に、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、ゴーセノールNL−05)を濃度5%となるように溶解させ、5%ポリビニルアルコール溶液を得た。該ポリビニルアルコール溶液100重量部にテトラエトキシシラン26重量部と2N−塩酸1.0重量部を加え、室温下1時間攪拌した。さらに、本溶液中にビーズ状の水酸基イオン化した陰イオン交換樹脂を加え室温下4分攪拌後、陰イオン交換樹脂をろ過し、塗工液を調整した他は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。塗工液の寿命は、室温下12時間であった。
得られたフィルムの高分子ガスバリア層は透明であった。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0071】
比較例1
水70重量部:エタノール30重量部の混合溶液に、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、ゴーセノールNL−05)を濃度が5%となるように溶解させ、5%ポリビニルアルコール溶液を得た。該ポリビニルアルコール溶液100重量部にテトラエトキシシラン26重量部と酢酸6.0重量部を加え、室温下2時間攪拌した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコール/テトラエトキシシランの重量部比は、100重量部/520重量部であり、塗工液の寿命は、室温下24時間以上であった。
実施例1と同様にしてフィルムを得た。フィルムの物性を表1に示した。
【0072】
比較例2
塗工液の乾燥条件を135℃とした以外は比較例1と同様にして本発明のガスバリア性フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0073】
比較例3
水70重量部:エタノール30重量部の混合溶液に、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、ゴーセノールNL−05)を濃度が5%となるように溶解させ、5%ポリビニルアルコール溶液を得た。該ポリビニルアルコール溶液100重量部にテトラエトキシシラン26重量部と酢酸1.2重量部を加え、室温下6時間攪拌した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコール/テトラエトキシシランの重量部比は、100重量部/520重量部であり、塗工液の寿命は、室温下12時間以下であった。実施例1と同様にしてフィルムを得た。フィルムの物性を表1に示した。
【0074】
比較例4
酢酸6.0重量部の代りに2N−塩酸1.0重量部を加え、室温下1時間攪拌したこと以外は、比較例1と同様にしてフィルムを得た。塗工液の寿命は、室温下24時間以上であった。得られたフィルムの高分子ガスバリア層は黄色に着色していた。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0075】
【表1】
Figure 0004437602
【0076】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、得られる高分子ガスバリア層は、(1)ポリビニルアルコール系樹脂とケイ素アルコキシドの部分加水分解重縮合物との混合物、(2)ポリビニルアルコール系樹脂と該部分加水分解重縮合物との反応生成物、または(3)ポリビニルアルコール系樹脂、該部分加水分解重縮合物および該反応生成物との混合物のいずれか1種からなる層となり、高湿度下でも優れたガスバリア性を有し、かつ透明性に優れたガスバリア性フィルムを得ることができる。
また、本発明の製造方法は、ポリプロピレンフィルム等の融点の低い熱可塑性樹脂基材において、特に好適に適用できる。
したがって、本発明のガスバリア性フィルムは、幅広い水分活性の食品包装用フィルムとして有用である。

Claims (1)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂、ケイ素アルコキシド、低級アルコール、水、およびケイ素アルコキシド加水分解触媒を、ポリビニルアルコール系樹脂/ケイ素アルコキシドの重量部比が100/300〜100/600となるように混合してケイ素アルコキシドを加水分解した後に、ケイ素アルコキシド加水分解触媒を除去した塗工液を、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面上に塗工し、乾燥することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
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