JP2004289093A - ガラスセラミック多層配線基板の製造方法 - Google Patents

ガラスセラミック多層配線基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ガラスセラミック多層配線基板にチタン酸バリウム層を形成したとき、多層配線基板の変形が発生し、またチタン酸バリウムとガラスセラミックスの収縮挙動の差によってクラックが発生して、チタン酸バリウム層の特性を高精度に保つことができなかった。
【解決手段】チタン酸バリウムを含有する第1のグリーンシート2を第1の支持体1a上に形成して所定寸法に切断した後、第1のグリーンシート2を下面側にして第2のグリーンシート3上に配置し、この上に、ガラスセラミック・スラリーを第1のグリーンシート2と乾燥後の塗工厚みが同一になるようにその周りに塗工して第3のグリーンシート5を形成し、内側に第1のグリーンシート2が一体的に埋設された第4のグリーンシート6を得る。この第4のグリーンシート6を用いて多層配線基板を作製することにより、グリーンシート積層体10の変形等を防止することが可能となる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層の内部および表面の少なくとも一方にコンデンサを内蔵したガラスセラミック多層配線基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、携帯電子機器や携帯用情報端末等の分野では、半導体素子を実装した多層配線基板と共に、受動部品として抵抗体・コンデンサ・インダクタ等をプリント回路基板等の基板上に実装したモジュール基板が用いられてきた。
【0003】
しかし近年、このような携帯電子機器や携帯用情報端末等に用いられる部品の小型化・複合化・高性能化が強く求められており、半導体素子を実装する多層配線基板の内部に受動部品に相当する機能を有する電子回路素子を内蔵させて、半導体素子等と受動部品とを高密度で実装した部品の集積化の流れが進んでいる。これらの受動部品を多層配線基板の内部に取り組むことは、基板表面にこれら受動部品の実装スペースを確保する必要をなくし、また設計の自由度も増すため、多層配線基板の小型化に寄与できることとなる。
【0004】
例えば、ガラスセラミック多層配線基板に高容量なコンデンサを形成する場合には、チタン酸バリウム等の誘電率が高い無機物粉末から成る層(以下、チタン酸バリウム層という)をガラスセラミック多層配線基板内に局所的に形成する手法が提案されている。このような多層配線基板は従来、以下のようにして製作されていた。
【0005】
まず、セラミック粉末およびガラス粉末を含有するスラリーを成形して複数のグリーンシートを得て、次に、このグリーンシート上に下部電極層となる金属ペーストを印刷し、次に、この下部電極層上にスクリーン印刷にてチタン酸バリウム等から成る誘電体ペーストを印刷して誘電体層を形成し、さらにこの誘電体層上に金属ペーストを印刷して上部電極層を形成し、これらのグリーンシートを積層し、この積層体を焼成することで製作される。
【0006】
〔非特許文献1〕
上田達也,「低温焼成多層基板、内蔵コンデンサ用高誘電率材料とその応用」ファインセラミックス・レポート(Fine Ceramics Report),社団法人日本ファインセラミックス協会,1996年,第14巻,第8号,p.220〜222
〔非特許文献2〕
亀原伸男、丹羽紘一,「CR複合基板」,ニューセラミックス,1995年,第1号,p.39〜44
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のようにチタン酸バリウム層をスクリーン印刷して形成する場合には、チタン酸バリウム層がグリーンシートに対し局所的に凸部となるために、積層工程においてグリーンシート間の積層不良が発生したり、チタン酸バリウム層の上部に形成された絶縁層の各層が凸状に変形したりするという問題点があった。そのため、局所的に穴加工を施したグリーンシートを積層して凹部を形成したグリーンシート積層体を準備し、チタン酸バリウム・グリーンシートをこのグリーンシート積層体の凹部にはめ込むことが行なわれているが、この場合は、上記のような絶縁層の凸状の変形は発生しないが、高容量なコンデンサを形成するためにはチタン酸バリウム層は薄層である必要があり、従って、チタン酸バリウム・グリーンシートと同じく薄層(10〜30μm)のグリーンシートを加工する工程が必要となり、このような薄層のグリーンシートを高精度に、しかも高い歩留まりで加工することが困難であるという問題点があった。
【0008】
一般に、多層配線基板中に形成された受動素子の特性の精度は、導体パターンの位置精度や絶縁層の厚み精度に依存する。従って、受動素子の特性の高精度化には、グリーンシートの変形を抑え、各層間の位置精度を保つことが必要であるが、スクリーン印刷でチタン酸バリウム層を局所的に形成した場合は、チタン酸バリウム等から成る誘電体ペーストに含まれる溶剤の影響によりグリーンシートの変形が発生するため、十分な精度を確保することが困難であるという問題点があった。
【0009】
また、チタン酸バリウム・グリーンシートの下部とグリーンシートの上部との間の密着は積層時にプレス加重が加わることによって確保することができるが、側面にはプレス加重が加わらないことから、チタン酸バリウム・グリーンシートの側面とグリーンシートの凹部の側面との間の密着を確保することができないため、焼成工程において、チタン酸バリウム・グリーンシートとグリーンシートとの収縮挙動の差によってチタン酸バリウム層の側面とガラスセラミック絶縁層との側面間に剥離が発生したり、あるいはチタン酸バリウム層やガラスセラミック絶縁層にクラックが発生したりすることがあるという問題点があった。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、ガラスセラミック多層配線基板にチタン酸バリウム層を形成したときに発生するガラスセラミック多層配線基板の変形を抑制し、ガラスセラミック多層配線基板の各層に形成した導体パターンの位置精度や絶縁層の厚み精度を所望の精度に保ち、またチタン酸バリウム層とガラスセラミック絶縁層との収縮挙動の差によって発生するクラック等を抑制することができ、導体パターンの断線がなく、さらに、導体パターンおよびチタン酸バリウム層により基板中に形成された受動素子の特性の高精度化を達成することができるガラスセラミック多層配線基板の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法は、チタン酸バリウム,添加物および第1のバインダを含有する第1のグリーンシートを第1の支持体上に形成する工程と、ガラス粉末,セラミックフィラーおよび第2のバインダを含有する第2のグリーンシートを第2の支持体上に形成する工程と、前記第2のグリーンシートに導体ペーストを所定パターンに塗布する工程と、前記第1のグリーンシートを前記第1の支持体とともに所定寸法に切断する工程と、切断された前記第1のグリーンシートおよび前記第1の支持体を前記第1のグリーンシートを下側にして第2のグリーンシート上に載置する工程と、前記第1のグリーンシートおよび前記第1の支持体が載置された前記第2のグリーンシート上に前記ガラス粉末,前記セラミックフィラー,前記第2のバインダおよび溶剤を含有するスラリーを、前記第1のグリーンシートを取り囲むとともに乾燥後の塗工厚みが前記第1のグリーンシートと同じになるように塗工して第3のグリーンシートを形成する工程と、前記第1および第2の支持体を除去し、前記第3のグリーンシートの内側に前記第1のグリーンシートが一体的に埋設された第4のグリーンシートを得る工程と、ガラス粉末,セラミックフィラーおよび前記第2のバインダを含有する第5のグリーンシートを形成する工程と、前記第4および第5のグリーンシートに導体ペーストを所定パターンに塗布する工程と、前記導体ペーストが塗布された前記第4および第5のグリーンシートを所定枚数積層してグリーンシート積層体を作製する工程と、このグリーンシート積層体を焼成する工程とを具備することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法は、上記構成において、前記スラリーの前記溶剤が、前記第1のグリーンシートの前記第1のバインダのSP値に対してその差が2以下である第1の溶剤と、蒸気圧が50mmHg以上である第2の溶剤とを含むことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法は、上記構成において、前記チタン酸バリウムの粒径が0.05〜0.3μmであり、前記添加物が、軟化温度が450℃以上800℃以下であるガラス粉末を含むことを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法は、上記構成において、前記スラリーのチキソトロピー指数が1.3以上2.5以下であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法によれば、チタン酸バリウム,添加物および第1のバインダを含有する第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2のグリーンシートに、ガラス粉末,セラミックフィラー,第2のバインダおよび溶剤を含有するスラリーを、第1のグリーンシートを取り囲むとともに乾燥後の塗工厚みが第1のグリーンシートと同じになるように塗工して第3のグリーンシートを形成して、第3のグリーンシートの内側に第1のグリーンシートが一体的に埋設された第4のグリーンシートを得る工程を具備することから、チタン酸バリウム層は第4のグリーンシート内に、スラリーを塗工して形成した第3のグリーンシートと同じ厚みの層として一体的に埋設されているため、その第4のグリーンシート上に凸部が生じることがなく、グリーンシート積層体における積層不良の発生やチタン酸バリウム層の上部における各層の変形を防止することができる。
【0016】
また、第1の支持体および第1のグリーンシートが第1のグリーンシートを下側にして載置された第2のグリーンシート上にガラス粉末,セラミックフィラー,第2のバインダおよび溶剤を含有するスラリーを塗工するため、スラリー中の溶剤が第1のグリーンシートの表面を溶解し、第1のグリーンシートとスラリーによる層との界面にチタン酸バリウムとガラスおよびセラミックフィラーとの混合領域が形成される。その結果、第1のグリーンシートとスラリーを塗工して形成した第2のグリーンシートとの間の接着強度が十分に確保されて、かつ混合領域がチタン酸バリウム層とガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層との収縮挙動の緩和層として働くことから、チタン酸バリウム層とガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層との剥離や両層におけるクラックの発生を抑制することができ、多層配線基板の各層に形成した回路パターンの位置精度を高精度に保つことが可能となるため、多層配線基板の内部に形成した導体パターンおよびチタン酸バリウム層から成る受動素子の特性の高精度化が可能となる。また、チタン酸バリウム層とガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層との界面に欠陥がないため、信頼性に優れたガラスセラミック多層配線基板を得ることができる。
【0017】
また、本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法において、ガラス粉末,セラミックフィラー,第2のバインダおよび溶剤を含有するスラリーに用いる溶剤が第1のグリーンシートの第1のバインダのSP値に対してその差が2以下である第1の溶剤を含むようにしたときには、このスラリーと第1のグリーンシートとは良好な濡れを示し、その界面にチタン酸バリウムとガラス粉末およびセラミックフィラーとからなる混合領域を形成することが容易となる。さらに、このスラリーを塗工可能な粘度に調整する溶剤として、蒸気圧が50mmHg以上である第2の溶剤を使用することにより、このスラリーを塗工した後、短時間に乾燥させることが可能となるため、第2のグリーンシートの変形を抑制することができ、ガラスセラミック多層配線基板の各層に形成した回路パターンの位置精度を高精度に保つことが可能となり、ガラスセラミック多層配線基板の内部に形成した導体パターンおよびチタン酸バリウム層から成る受動素子の特性の高精度化が可能となる。
【0018】
また、本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法において、第1のグリーンシートを形成するためのチタン酸バリウムの粒径が0.05〜0.3μmであり、添加物が軟化温度が450℃以上800℃以下であるガラス粉末を含むものとしたときには、チタン酸バリウム層の焼結温度の低温化が可能となり、ガラス,セラミックフィラーおよび第2のバインダを含有する第2のグリーンシートとの同時焼成を好適に行なうことができる。
【0019】
さらに、本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法において、ガラス粉末,セラミックフィラー,第2のバインダおよび溶剤を含有するスラリーのチキソトロピー指数が1.3以上2.5以下であるものとしたときには、スラリーを第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2のグリーンシート上に塗工する際に、スラリーの粘度や降伏値を適度に低いものとし、スラリーをより一層、均一かつ滑らかに、かつ保形性を維持して成形することができるようになるため、第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2のグリーンシート上に塗工されたスラリーのレベリング性をより一層向上させることができ、塗工されたスラリーを乾燥して得られる第3のグリーンシートの平坦性をより一層向上することが可能となる。その結果、チタン酸バリウム層とガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層との剥離や両層におけるクラックの発生を抑制することが可能となり、また多層配線基板の各層に形成した回路パターンの位置精度を高精度に保つことが可能となるため、多層配線基板の内部に形成した導体パターンおよびチタン酸バリウム層から成る受動素子の特性の高精度化が可能となる。また、チタン酸バリウム層とガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層との界面に欠陥がないものとなるため、信頼性に優れたガラスセラミック多層配線基板を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1(a)〜(l)は、それぞれ本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法の実施の形態の一例を説明するための工程毎の断面図である。
【0022】
まず、図1(a)に示すように、チタン酸バリウム粉末および添加物を所定量秤量してチタン酸バリウム組成物を調製し、その組成物に第1のバインダ,溶剤等を加えた後、ドクターブレード法やリップコータ法により第1の支持体1a上に膜状に塗工して第1のグリーンシート2を準備する。
【0023】
ここで、チタン酸バリウム粉末の粒径は0.05〜0.3μmであり、その添加物が、軟化温度が450℃以上800℃以下であるガラス粉末であることが望ましい。チタン酸バリウム粉末の粒径が0.05μm未満である場合には、チタン酸バリウム粉末の分散が困難となりやすく、第1のグリーンシートの粉体充填率が下がるため、焼結性が劣化しやすい。他方、0.3μmを超えると、チタン酸バリウム粉末の比表面積が下がるため、同じく焼結性が劣化しやすい。例えば、チタン酸バリウム粉末には微粉でかつ結晶性が高い水熱合成によるチタン酸バリウム粉末を用いることができる。
【0024】
また、ガラス粉末としては、B−BaO−SrO−ZnO系、SiO−B−M系(MはLi,Na,Kを示す)、Bi−B系等のガラスを用いることができる。0.05〜0.3μmの微粉のチタン酸バリウム粉末と軟化温度が450℃以上800℃以下であるガラス粉末を用いることにより、少量のガラス粉末の添加で900℃〜1000℃にてチタン酸バリウム粉末を焼結させることができる。
【0025】
また、第1のバインダにはポリビニルブチラール系バインダやアクリル系バインダを用いることができる。また、その溶剤にはトルエンや高級アルコール等の有機溶剤や、その混合溶剤を用いることができる。
【0026】
次に、図1(b)に示すように、ガラス粉末およびセラミックフィラーを所定量秤量してガラスセラミック組成物を調製し、その組成物に第2の有機バインダ,溶剤等を加えた後、ドクターブレード法や圧延法等により第2の支持体1b上に膜状に塗工して第2のグリーンシート3を準備する。
【0027】
ここで、ガラス粉末としては、例えばSiO−B系,SiO−B−Al系,SiO−B−Al−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−Al−MO−MO系(但し、MおよびMは同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−B−Al−MO−MO系(但し、MおよびMは前記と同じである),SiO−B−M O系(但し、MはLi,NaまたはKを示す),SiO−B−Al−M O系(但し、Mは前記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等を用いることができる。
【0028】
また、セラミックフィラーとしては、例えばAl,SiO,ZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物や、TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等を用いることができる。
【0029】
ここで、第2のバインダにはアクリル系バインダ、例えば、メタクリル酸エステル共重合体やアクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等を用いることができる。また、その溶剤としてはトルエン,高級アルコール等の有機溶剤や、その混合溶剤を用いることができる。
【0030】
次に、図1(c)に示すように、Cu,Ag,Al,Au,Ni,PtおよびPdから選ばれる少なくとも1種以上の金属粉末を有機溶剤,バインダとともに混練して作製した導体ペーストを、第2のグリーンシート3上にスクリーン印刷等で塗布することで、配線導体4等となる導体パターンが形成される。
【0031】
例えば、配線導体4をCuで形成する場合であれば、Cuの粉末と有機バインダと有機溶剤とを含み、必要に応じてガラス等の無機成分を添加して混合して調製されるCuペーストを、スクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法を用いて第2のグリーンシート3上に所定パターンに塗布することによって配線導体4を形成する。
【0032】
次に、図1(d)に示すように、第1のグリーンシート2を支持体1aとともに所定の寸法に切断し、図1(e)に示すように、第1のグリーンシート2を下側にして第2のグリーンシート3上の所定の位置に載置する。ここで、第1のグリーンシート2を第2のグリーンシート3上に載置する際には、第1のグリーンシート2と第2のグリーンシート3との界面にエアーの残留が無いように、真空プレス等の手法を用いるのがよい。
【0033】
次に、図1(f)に示すように、ガラス粉末およびセラミックフィラーを所定量秤量してガラスセラミック組成物を調製し、その組成物に第2のバインダ,第1の溶剤,第2の溶剤等を加えてガラスセラミック・スラリーを得る。そして、例えばスロットコータ法を用いて第2のグリーンシート3上にガラスセラミック・スラリーを乾燥後の塗工厚みが第1のグリーンシート2と同一厚みになるように塗工して第3のグリーンシート5を得る。
【0034】
ここで、ガラス粉末およびセラミックフィラーを所定量秤量してガラスセラミック組成物を調製し、その組成物に第2のバインダ,第1の溶剤,第2の溶剤等を加えて得られたガラスセラミック・スラリーのチキソトロピー指数は1.3以上2.5以下とすることが好ましい。
【0035】
ここで、チキソトロピーとは高分子溶液等の分子分散系あるいは懸濁液やコロイド溶液等の微粒子分散系でみられるレオロジー特性のひとつであり、剪断速度に対する剪断応力の増加率が徐々に低下するような性質である。また、チキソトロピー指数とは粘弾性体に低剪断速度(5rpm/sec)を加えた場合の粘度を、粘弾性体に高剪断速度(200rpm/sec)を加えた場合の粘度で割った値である。
【0036】
本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法においては、ガラス粉末およびセラミックフィラーを所定量秤量してガラスセラミック組成物を調製し、その組成物に第2のバインダ,第1の溶剤,第2の溶剤等を加えて得られたガラスセラミック・スラリーのチキソトロピー指数を1.3以上2.5以下であるものとしたときには、ガラスセラミック・スラリーを第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2のグリーンシート上に塗工する際に、ガラスセラミック・スラリーの粘度や降伏値を適度に低いものとし、ガラスセラミック・スラリーをより一層、均一かつ滑らかに、かつ保形性を維持して、ガラスセラミック・スラリーを第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2のグリーンシート上に塗工することができるようになるため、第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2のグリーンシート上に塗工されたガラスセラミック・スラリーのレベリング性をより一層向上させることができ、塗工されたガラスセラミック・スラリーを乾燥して得られる第3のグリーンシートの平坦性をより一層向上することが可能となる。その結果、チタン酸バリウム層とガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層との剥離や両層におけるクラックの発生を抑制することが可能となる。
【0037】
チキソトロピー指数が1.3未満になると、ガラスセラミック・スラリーが流れやすくなる傾向があり、第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2のグリーンシート上に塗工したときにガラスセラミック・スラリーの保形性が低くなり、乾燥時に第3のグリーンシートの表面の平坦性が悪くなり、その結果、第チタン酸バリウム層とガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層との剥離や両層におけるクラックの発生を抑制することが困難となる傾向がある。
【0038】
他方、チキソトロピー指数が2.5を超えると、ガラスセラミック・スラリーを第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2のグリーンシート上に塗工する際に、ガラスセラミック・スラリーの粘度や降伏値が若干高くなりすぎて塗工しにくくなる傾向があり、第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2のグリーンシート上に塗工されたガラスセラミック・スラリーの平坦性を向上させることができなくなり、その結果、チタン酸バリウム層とガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層との剥離や両層におけるクラックの発生を抑制することが困難となる傾向がある。
【0039】
なお、ガラスセラミック・スラリーのチキソトロピー指数を1.3以上2.5以下とするには、有機溶剤の添加量を調整することによってガラスセラミック・スラリー中の固形分比率を調整する方法や、有機バインダの酸価および分子量を調整する方法、または分散剤の種類および添加量を調整するといった方法を用いることができる。
【0040】
例えば、有機溶剤の添加量を調整することによってガラスセラミック・スラリー中の固形分比率を調整する方法の場合であれば、有機溶剤の添加量を多くすることによりチキソトロピー指数を低く調整することができ、有機溶剤の添加量を少なくすることによりチキソトロピー指数を高く調整することができる。
【0041】
次いで、図1(g)に示すように、第1,第2の支持体1a,1bを除去し、第1のグリーンシート2をセラミック・スラリーを塗工して形成した第3のグリーンシートの内側に埋設した第4のグリーンシート6を準備する。
【0042】
ここで、第1のグリーンシート2で用いた第1のバインダがアクリル系バインダであるときには、第1の溶剤にαテルピネオールやDBP等の、第1のバインダとSP値(溶解度パラメータともいう)が近い溶剤を用いることができる。第1の溶剤のSP値と第1のバインダのSP値との差が2を超えると、第1のグリーンシート2とガラスセラミック・スラリーとの濡れ性が悪くなり、両者の界面での剥離が発生しやすくなる。
【0043】
また、第2の溶剤は、蒸気圧が50mmHg以上であることが望ましい。これは、第2の溶剤の蒸気圧が50mmHg未満の場合には、第2の溶剤が揮発しにくくなり、第2のグリーンシート3に浸透することとなり、第2のグリーンシート3を変形させやすくなるからである。
【0044】
また、第1および第2の支持体1a・1bの塗工側表面には、剥離が容易になるようにシリコーン等の離形剤を塗布しておくことが望ましい。
【0045】
また、第2のグリーンシート3上にガラスセラミック・スラリーを塗工する方法としては、スロットコート法が望ましい。スロットコート法では装置内の雰囲気環境を閉鎖系とすることができるため、ガラスセラミック・スラリーの溶剤に高蒸気圧の溶剤を用いた場合にもスラリーの粘度変化が小さく、塗工厚みの変動を抑えることができる。
【0046】
次に、図1(h)に示すように、ガラス粉末およびセラミックフィラーを所定量秤量してガラスセラミック組成物を調製し、その組成物に第2のバインダ,溶剤等を加えた後、ドクターブレード法や圧延法等により第3の支持体1c上に膜状に塗工して第5のグリーンシート7を準備する。ここで、第5のグリーンシート7は第2のグリーンシート3と同一のものを用いてもよい。
【0047】
次に、図1(i)に示すように、第4のグリーンシート6および第5のグリーンシート7にレーザ加工,マイクロドリルやパンチング等の機械的加工により所定の貫通孔8を形成し、次いで、図1(j)に示すように、その内部に導体ペーストを充填して、ビアホール導体9となるビアホール導体パターンを形成する。
【0048】
ビアホール導体9用の導体ペーストは、Cu,Ag,Al,Au,Ni,PtおよびPdから選ばれる少なくとも1種以上の金属粉末を有機溶剤,バインダとともに混練することにより作製され、例えば、Cuの粉末と有機バインダと有機溶剤とを含み、必要に応じてガラス等の無機成分を添加して混合して調製される。
【0049】
ビアホール導体9用の導体ペーストの貫通孔8内への充填は、貫通孔8の配置に合わせて開口を形成したスクリーン製版を用いるスクリーン印刷法により行なうことができる。
【0050】
次に、図1(k)に示すように、第4のグリーンシート6の表面に導体ペーストを印刷して配線導体4となる導体パターンを形成する。例えば配線導体4をCuで形成する場合であれば、図1(c)と同様に、Cuの粉末とバインダと有機溶剤とを含み、必要に応じてガラス等の無機成分を添加して混合して調製されるCuペーストを、スクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法を用いて第4のグリーンシート6上に所定パターンに塗布することにより形成する。
【0051】
次に、図1(l)に示すように、貫通孔8の形成や導体ペーストの印刷等の所定の加工を施した複数枚の第4および第5のセラミックグリーンシート6・7を積層して、グリーンシート積層体10を作製する。
【0052】
次に、このグリーンシート積層体10を400℃〜850℃の温度で加熱処理して、第4のグリーンシート6,第5のグリーンシート7,配線導体4およびビアホール導体9等の有機成分を分解除去した後、同時焼成することにより、チタン酸バリウムおよび添加物から成るチタン酸バリウム層をコンデンサの誘電体層として内蔵したガラスセラミック多層配線基板を作製することができる。
【0053】
【実施例】
以下、本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法を具体例によって詳細に説明する。
【0054】
本実施例では、図2に断面図で示すような、ガラスセラミック焼結体から成る絶縁層11の内部にAg−Pd合金層から成る配線導体層12を介して5mm角のチタン酸バリウム層13を有する評価基板を作製し、その寸法精度の検証を基板の表面の凹凸を測定することにより行なった。
【0055】
まず、ガラスとしてSiO−Al−MgO−B−ZnO系ガラス粉末を75質量%と、セラミックスのフィラー成分としてAl粉末を25質量%とを調合し、これに溶剤,バインダを加え十分混練してガラスセラミック・スラリーを作製した。次に、これをドクターブレード法にて第2の支持体であるPETフィルム上に塗工して、第2のグリーンシートであるガラスセラミック・グリーンシートを作製した。
【0056】
次に、前記ガラスセラミック・グリーンシート上にAg−Pd合金粉末(平均粒径1μm)にエチルセルロース系樹脂とαテルピネオールとを加えて適度な粘度となるように調整した導体ペーストをスクリーン印刷にて厚み5μmとなるように所定パターンに塗布して、配線導体層を形成した。
【0057】
次に、平均粒径0.1μmのチタン酸バリウム粉末90質量%と、軟化温度500℃のLi系ガラス粉末10質量%とを調合し、これに溶剤,バインダを加え十分混練してチタン酸バリウム・スラリーを作製した。次に、これをドクターブレード法にて第1の支持体であるPETフィルム上に塗工して、第1のグリーンシートであるチタン酸バリウム・グリーンシートを作製した。
【0058】
次に、第1の支持体であるPETフィルムとともにチタン酸バリウム・グリーンシートを5mm角に切断し、これをチタン酸バリウム・グリーンシートを下側にしてガラスセラミック・グリーンシートの所定の位置に配置した。その後、スロットコータにて乾燥後の厚みが20μmとなるように、ガラスとしてSiO−Al−MgO−B−ZnO系ガラス粉末を75質量%と、セラミックスのフィラー成分としてAl粉末を25質量%とを調合し、これにバインダ,αテルピネオールとメタノールとの混合溶剤を加え、十分混練し、ガラスセラミック・スラリーとした。
【0059】
また、有機溶剤の添加量を調整することによってガラスセラミック・スラリー中の固形分比率を調整する方法を用いて、αテルピネオールとメタノールとの混合溶剤の添加量を変えることによりチキソトロピー指数の調整を行なった。
【0060】
このガラスセラミック・スラリーを、ガラスセラミック・グリーンシート上に配置されたチタン酸バリウム・グリーンシートを取り囲むように塗工した。
【0061】
次に、この塗工したガラスセラミック・スラリーを乾燥した後、第1および第2の支持体であるPETフィルムを除去して、チタン酸バリウム・グリーンシートを内蔵した第4のグリーンシートとしてのガラスセラミック・グリーンシートを得た(試料1)。
【0062】
また、比較例として、ガラスセラミック・グリーンシート上にチタン酸バリウム層をスクリーン印刷にて形成したものを以下のようにして作製した。(試料2)
平均粒径が0.1μmのチタン酸バリウム粉末にLi系ガラス粉末を添加し、エチルセルロース系樹脂およびαテルピネオールを加えて適度な粘度となるように調整したチタン酸バリウム・ペーストを、ガラスセラミック・グリーンシート上にスクリーン印刷にて乾燥後の厚みが20μmとなるよう2回に分けて印刷し、チタン酸バリウム層を形成した。
【0063】
また、αテルピネオールとメタノールとの混合溶剤の添加量を変えてチキソトロピー指数を1.1としたガラスセラミック・スラリーを塗工したこと以外は試料1と同様にして、チタン酸バリウム・グリーンシートを内蔵した第4のグリーンシートとしてのガラスセラミック・グリーンシートを得た(試料3)。
【0064】
また、αテルピネオールとメタノールとの混合溶剤の添加量を変えてチキソトロピー指数を2としたガラスセラミック・スラリーを塗工したこと以外は試料1と同様にして、チタン酸バリウム・グリーンシートを内蔵した第4のグリーンシートとしてのガラスセラミック・グリーンシートを得た(試料4)。
【0065】
また、αテルピネオールとメタノールとの混合溶剤の添加量を変えてチキソトロピー指数を3としたガラスセラミック・スラリーを塗工したこと以外は試料1と同様にして、チタン酸バリウム・グリーンシートを内蔵した第4のグリーンシートとしてのガラスセラミック・グリーンシートを得た(試料5)。
【0066】
このようにして形成したチタン酸バリウム層を内蔵したガラスセラミック積層体上に、Ag−Pd合金粉末(平均粒径1μm)にエチルセルロース系バインダおよびαテルピネオールを加えて適度な粘度となるように調整した導体ペーストをスクリーン印刷にて厚み5μmとなるように塗布して、配線導体層11を形成した。
【0067】
これを所定の順序で所定枚数(この例では3枚)重ね合わせ、真空プレスにて積層して、チタン酸バリウム層を内蔵したグリーンシート積層体を得た。
【0068】
そして、以上の試料を900℃,1時間の条件で焼成することによって、チタン酸バリウム層を内蔵した評価基板である試料1〜5を作製した。
【0069】
このようにして作製した試料1および試料2の各5個ずつについて、その基板の表面の凹凸を表面粗さ計にて測定した。その結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
Figure 2004289093
【0071】
表1に示す結果から分かるように、本発明の実施例である試料1では、凸部が10μm以下となり、寸法精度に優れたガラスセラミック多層配線基板となることが確認された。なお、表1に示す結果においては、評価基板の表面のチタン酸バリウム層の上部における凸部の高さが10μm以下であるものを○で表し、10μmを超えるものを×で表した。
【0072】
また、上記のようにして作製した試料3〜5について、第3のグリーンシートの厚みばらつきの評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0073】
ここで、第3のグリーンシートの厚みばらつきは、測定点として第3のグリーンシートの成形幅方向に対して等間隔に20点を、成形流れ方向に対して長さ2000mmまでは100mm間隔で、それ以降は成形長さ5m・10m・50mに設定し、合計460点について、株式会社セイコーem社製フィルム厚み測定器(型式:ミリトロン1240型、測定精度:±0.1%)で厚みを測定し、3σ(標準偏差の3倍)が平均厚みの3%以内の試料を「○」とし、平均厚みの4.5%以内の試料を「△」とし、4.5%を超える試料を「×」として評価した。
【0074】
【表2】
Figure 2004289093
【0075】
表2に示す結果から分かるように、ガラスセラミック・スラリーのチキソトロピー指数を1.3以上2.5以下とした試料4は、第3のグリーンシートの厚みばらつきの評価結果が良好であり、ガラスセラミック・スラリーのレベリング性が良好で、厚みばらつきが小さく優れたものであった。
【0076】
これに対して、チキソトロピー指数を1.1とした試料3では、第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2のグリーンシート上に塗工されたガラスセラミック・スラリーの保形性が低下する傾向があり、乾燥時に表面に凹凸が生じやすく、厚み精度が劣化する傾向が見られた(表中の厚みばらつきの欄に△で示す)。
【0077】
また、チキソトロピー指数を3とした試料5では、第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2のグリーンシート上に塗工されたガラスセラミック・スラリーの成形性が低下し、表面に凹凸が生じて厚み精度が若干劣化する傾向が見られた(表中の厚みばらつきの欄に△で示す)。
【0078】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述の実施例では配線導体にAg−Pd合金を用いたが、配線導体にCu,Ag,Au等を用いてもよい。また、第1および第2の支持体にはPETフィルムを用いたが、成形紙等のグリーンシート成形時に使用できる各種の支持体を用いてもよい。
【0079】
【発明の効果】
本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法によれば、チタン酸バリウム,添加物および第1のバインダを含有する第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2のグリーンシートに、ガラス粉末,セラミックフィラー,第2のバインダおよび溶剤を含有するスラリーを、第1のグリーンシートを取り囲むとともに乾燥後の塗工厚みが第1のグリーンシートと同じになるように塗工して第3のグリーンシートを形成して、第3のグリーンシートの内側に第1のグリーンシートが一体的に埋設された第4のグリーンシートを得る工程を具備することから、チタン酸バリウム層は第4のグリーンシート内に、スラリーを塗工して形成した第3のグリーンシートと同じ厚みの層として一体的に埋設されているため、その第4のグリーンシート上に凸部が生じることがなく、グリーンシート積層体における積層不良の発生やチタン酸バリウム層の上部における各層の変形を防止することができる。
【0080】
また、第1の支持体および第1のグリーンシートが第1のグリーンシートを下側にして載置された第2のグリーンシート上にガラス粉末,セラミックフィラー,第2のバインダおよび溶剤を含有するスラリーを塗工するため、スラリー中の溶剤が第1のグリーンシートの表面を溶解し、第1のグリーンシートとスラリーによる層との界面にチタン酸バリウムとガラスおよびセラミックフィラーとの混合領域が形成される。その結果、第1のグリーンシートとスラリーを塗工して形成した第2のグリーンシートとの間の接着強度が十分に確保されて、かつ混合領域がチタン酸バリウム層とガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層との収縮挙動の緩和層として働くことから、チタン酸バリウム層とガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層との剥離や両層におけるクラックの発生を抑制することができ、多層配線基板の各層に形成した回路パターンの位置精度を高精度に保つことが可能となるため、多層配線基板の内部に形成した導体パターンおよびチタン酸バリウム層から成る受動素子の特性の高精度化が可能となる。また、チタン酸バリウム層とガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層との界面に欠陥がないため、信頼性に優れたガラスセラミック多層配線基板を得ることができる。
【0081】
また、本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法によれば、ガラス粉末,セラミックフィラー,第2のバインダおよび溶剤を含有するスラリーに用いる溶剤が第1のグリーンシートの第1のバインダのSP値に対しその差が2以下である溶剤を含むようにしたときには、このスラリーと第1のグリーンシートとは良好な濡れを示し、その界面にチタン酸バリウムとガラス粉末およびセラミックフィラーとからなる混合領域を形成することが容易となる。さらに、このスラリーを塗工可能な粘度に調整する溶剤として、蒸気圧が50mmHg以上である第2の溶剤を使用することにより、このスラリーを塗工した後、短時間に乾燥させることが可能となるため、第2のグリーンシートの変形を抑制することができ、ガラスセラミック多層配線基板の各層に形成した回路パターンの位置精度を高精度に保つことが可能となり、ガラスセラミック多層配線基板の内部に形成した導体パターンおよびチタン酸バリウム層から成る受動素子の特性の高精度化が可能となる。
【0082】
また、本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法によれば、第1のグリーンシートを形成するためのチタン酸バリウムの粒径が0.05〜0.3μmであり、添加物が軟化温度が450℃以上800℃以下であるガラス粉末を含むものとしたときには、チタン酸バリウム層の焼結温度の低温化が可能となり、ガラス,セラミックフィラーおよび第2のバインダを含有する第2のグリーンシートとの同時焼成を好適に行なうことができる。
【0083】
さらに、本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法によれば、スラリーのチキソトロピー指数が1.3以上2.5以下であるものとしたときには、スラリーを第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2のグリーンシート上に塗工する際に、スラリーの粘度や降伏値を適度に低いものとし、スラリーをより一層、均一かつ滑らかに、かつ保形性を維持して成形することができるようになるため、第1のグリーンシートおよび第1の支持体が載置された第2のグリーンシート上に塗工されたスラリーのレベリング性をより一層向上させることができ、塗工されたスラリーを乾燥して得られる第3のグリーンシートの平坦性をより一層向上することが可能となる。その結果、チタン酸バリウム層とガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層との剥離や両層におけるクラックの発生を抑制することが可能となり、また多層配線基板の各層に形成した回路パターンの位置精度を高精度に保つことが可能となるため、多層配線基板の内部に形成した導体パターンおよびチタン酸バリウム層から成る受動素子の特性の高精度化が可能となる。また、チタン酸バリウム層とガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層との界面に欠陥がないため、信頼性に優れたガラスセラミック多層配線基板を得ることができる。
【0084】
以上により、本発明によれば、ガラスセラミック多層配線基板にチタン酸バリウム層を形成したときに発生するガラスセラミック多層配線基板の変形を抑制し、ガラスセラミック多層配線基板の各層に形成した導体パターンの位置精度や絶縁層の厚み精度を所望の精度に保ち、またチタン酸バリウム層とガラスセラミック絶縁層との収縮挙動の差によって発生するクラック等を抑制することができ、導体パターンの断線がなく、さらに、導体パターンおよびチタン酸バリウム層により基板中に形成された受動素子の特性の高精度化を達成することができるガラスセラミック多層配線基板の製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(l)は、それぞれ本発明のガラスセラミック多層配線基板の製造方法の実施の形態の一例を説明するための工程毎の断面図である。
【図2】実施例で作製した試料である評価基板の断面図である。
【符号の説明】
1a・・・第1の支持体
1b・・・第2の支持体
1c・・・第3の支持体
2・・・・第1のグリーンシート
3・・・・第2のグリーンシート
4・・・・配線導体
5・・・・第3のグリーンシート
6・・・・第4のグリーンシート
7・・・・第5のグリーンシート
8・・・・貫通孔
9・・・・グリーンシート積層体
10・・・・グリーンシート積層体
11・・・・絶縁層
12・・・・配線導体層
13・・・・チタン酸バリウム層

Claims (4)

  1. チタン酸バリウム,添加物および第1のバインダを含有する第1のグリーンシートを第1の支持体上に形成する工程と、
    ガラス粉末,セラミックフィラーおよび第2のバインダを含有する第2のグリーンシートを第2の支持体上に形成する工程と、
    前記第2のグリーンシートに導体ペーストを所定パターンに塗布する工程と、
    前記第1のグリーンシートを前記第1の支持体とともに所定寸法に切断する工程と、
    切断された前記第1のグリーンシートおよび前記第1の支持体を前記第1のグリーンシートを下側にして第2のグリーンシート上に載置する工程と、
    前記第1のグリーンシートおよび前記第1の支持体が載置された前記第2のグリーンシート上に前記ガラス粉末,前記セラミックフィラー,この第2のバインダおよび溶剤を含有するスラリーを、前記第1のグリーンシートを取り囲むとともに乾燥後の塗工厚みが前記第1のグリーンシートと同じになるように塗工して第3のグリーンシートを形成する工程と、
    前記第1および第2の支持体を除去し、前記第3のグリーンシートの内側に前記第1のグリーンシートが一体的に埋設された第4のグリーンシートを得る工程と、
    ガラス粉末,セラミックフィラーおよび前記第2のバインダを含有する第5のグリーンシートを形成する工程と、
    前記第4および第5のグリーンシートに導体ペーストを所定パターンに塗布する工程と、
    前記導体ペーストが塗布された前記第4および第5のグリーンシートを所定枚数積層してグリーンシート積層体を作製する工程と、
    該グリーンシート積層体を焼成する工程と
    を具備することを特徴とするガラスセラミック多層配線基板の製造方法。
  2. 前記スラリーの前記溶剤が、前記第1のグリーンシートの前記第1のバインダのSP値に対してその差が2以下である第1の溶剤と、蒸気圧が50mmHg以上である第2の溶剤とを含むことを特徴とする請求項1記載のガラスセラミック多層配線基板の製造方法。
  3. 前記チタン酸バリウムの粒径が0.05〜0.3μmであり、前記添加物が、軟化温度が450℃以上800℃以下であるガラス粉末を含むことを特徴とする請求項1記載のガラスセラミック多層配線基板の製造方法。
  4. 前記スラリーのチキソトロピー指数が1.3以上2.5以下であることを特徴とする請求項1記載のガラスセラミック多層配線基板の製造方法。
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