JP4214039B2 - コンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板 - Google Patents

コンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板 Download PDF

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Description

本発明はガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層の内部にコンデンサ部を内蔵したコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板に関する。
従来、携帯電子機器や携帯用情報端末等の分野では、半導体素子を実装した多層配線基板とともに、受動部品として抵抗体,コンデンサ,インダクタ等をプリント回路基板等の基板上に実装したモジュール基板が用いられてきた。
しかし近年、このような携帯電子機器や携帯用情報端末等に用いられる部品の小型化、複合化、高性能化が強く求められており、半導体素子を実装する多層配線基板の内部に受動部品に相当する機能を有する電子回路素子を内蔵させて、半導体素子等と受動部品とを高密度で実装した部品の集積化が進んでいる。これらの受動部品を多層配線基板の内部に取り込むことは、多層配線基板の表面にこれら受動部品の実装スペースを確保する必要をなくし、また設計の自由度も増すため、多層配線基板の小型化に寄与することとなる。
例えば、コンデンサを内蔵したガラスセラミック多層配線基板を形成する場合、絶縁層を形成するガラスセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)に誘電体ペーストを部分的に塗布して誘電体層を形成し、その後、所望の導体パターンを形成したグリーンシートと、誘電体層を形成したグリーンシートとを積層して、誘電体層および導体パターンをグリーンシートと同時に焼成することで形成することができる。
このようにして形成されたコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板(以下、コンデンサ内蔵基板ともいう)の構造は、図3に示すように、絶縁層1の層間に配設されたコンデンサ部2を備えており、コンデンサ部2はCu,Ag粉末の焼結体からなる電極層3と、チタン酸バリウム粉末等の誘電体粉末の焼結体からなる誘電体層4とから成る。
上田達也,「低温焼成多層基板、内蔵コンデンサ用高誘電率材料とその応用」ファインセラミックスレポート(Fine Ceramic Report),社団法人日本ファインセラミックス協会,1996年,第14巻,第8号,p.220〜222 亀原伸男、丹羽紘一,「CR複合基板」,ニューセラミックス,1995年,第1号,p.39〜44
しかし、上記従来のコンデンサ内蔵基板においては、金属粉末の焼結体からなる電極層3を介してグリーンシートと誘電体層4を同時焼成する場合、金属粉末が緻密化するまでの温度領域において電極層3には多数空隙が存在し、その空隙から誘電体層4中の成分が絶縁層1あるいは電極層3に拡散する。その結果、誘電体層4の焼結が進まずコンデンサ部2の電気的な容量値が低下したり、その容量値のバラツキが大きくなるという問題点があった。
また、金属粉末の焼結体からなる電極層3を介してグリーンシートと誘電体層4を同時焼成する場合、金属粉末が緻密化するまでの温度領域において電極層3には多数の空隙が存在し、その空隙からグリーンシート中のガラス成分が誘電体層4中に拡散するという現象が発生する。そのため、誘電体層4中のガラス成分が過剰となり、コンデンサ部2の容量値が低下したり、その容量値のバラツキが大きくなるという問題点があった。
本発明は、上記問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、電極層を介してグリーンシートと誘電体層を同時焼成する際、誘電体層中の成分と、絶縁層中の成分との相互拡散を抑制し、コンデンサ部の容量の低下を防ぎ、またそのバラツキを抑制することができるコンデンサ内蔵基板を提供することにある。
本発明のコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板は、以下の構成を有する。
本発明のコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板は、ガラスおよびフィラーを含有するガラスセラミック焼結体から成る絶縁基体の内部に、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体層と電極層とを有するコンデンサ部が形成されたコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層基板であって、前記の電極層は、開孔を有する金属箔と、該金属箔の前記の誘電体層と反対側の表面に形成された、前記の金属箔と同じ金属から成る金属粉末およびガラス粉末の焼結体とを有する。前記のガラス粉末は、該金属粉末100質量部に対して10質量部以下である。前記の金属箔は、面積が0.0025〜0.023mm である複数の開孔を有し、前記の電極層の面積に対する前記の複数の開孔の合計面積の割合は、5〜10%であり、前記の開孔は、前記の電極層全体に分布している。
本発明のコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板において、好ましくは、前記の電極層において前記の金属箔がAg箔またはCu箔から成り、前記の電極層の厚みが3〜15μmである。
また、本発明のコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板において、好ましくは、前記の誘電体層は、前記のチタン酸バリウム粉末にB ,SiO ,CaO,BaOおよびZnOを含むガラス粉末とCuO粉末とを前記のチタン酸バリウム粉末100質量部に対してそれぞれ2〜10質量部添加した焼結体から成る。
本発明のコンデンサ内蔵基板は、コンデンサ部を形成する電極層に金属箔を使用したことから、金属箔を使用した領域では、すべての温度領域において金属粉末の焼結体のような空隙は存在しないこととなる。従って、同時焼成中に発生していた絶縁層と誘電体層との相互拡散を抑制することができる。従って、コンデンサ部を形成する誘電体層の誘電体成分(ガラス成分)が絶縁層および電極層に流出して誘電体層の焼結不足が発生したり、絶縁層のガラス成分が誘電体層中に侵入して誘電体層のガラス成分が過剰となることを抑制することができる。
その結果、コンデンサ内蔵基板内に形成したコンデンサ部の容量低下やその容量値のバラツキを大幅に抑制することができる。
また本発明のコンデンサ内蔵基板は、好ましくは、電極層に面積が0.0025〜0.023mmの開孔が5〜10%の合計の面積比で全体に分布するように形成された金属箔を用いることから、誘電体層と絶縁層を同時焼成する際の樹脂バインダの脱脂工程(燃焼工程)において、焼結前に誘電体層中に含まれる有機樹脂バインダを効率的に除去することが可能となる。
また、電極層は、金属箔の誘電体層と反対側の主面に形成された、金属箔と同じ金属から成る金属粉末および金属粉末100質量部に対して10質量部以下のガラス粉末の焼結体が設けられていることから、金属箔の開孔を通して発生する絶縁層と誘電体層との間の相互拡散を十分小さいものとすることができる。その結果、容量の大きい(電極面積の大きい)コンデンサ部であっても、脱脂不良による金属箔の膨れや誘電体層の焼結不良のないコンデンサ部となる。その結果、コンデンサ内蔵基板の内部に形成したコンデンサ部の容量値低下や容量値のバラツキを大幅に抑制することができる。
さらに本発明のコンデンサ内蔵基板は、好ましくは、電極層は、金属箔がAg箔またはCu箔から成り、厚みが3〜15μmであることから、コンデンサ部で発生する抵抗(等価抵抗)を小さくすることができる。
さらに本発明のコンデンサ内蔵基板は、好ましくは、誘電体層は、チタン酸バリウム粉末にB,SiO,CaO,BaOおよびZnOを含むガラス粉末とCuO粉末とをチタン酸バリウム粉末100質量部に対してそれぞれ2〜10質量部添加した焼結体から成ることから、誘電体層は900〜1000℃の温度領域でより緻密な焼結体となるため、絶縁層と誘電体層との間の相互拡散をより効果的に防止することが可能となる。
本発明のコンデンサ内蔵基板を図面に基づいて以下に詳細に説明する。図1は本発明のコンデンサ内蔵基板の実施の形態の一例を示す断面図である。本実施の形態によるコンデンサ内蔵基板10は、複数の積層された絶縁層11と、誘電体層12およびその上下に配設された電極層13a,13bからなるコンデンサ部14と、電極層13a,13bにそれぞれ電気的に接続された貫通導体15と、コンデンサ内蔵基板10の表面等に形成された配線層16とを有している。図1の例では、貫通導体15はコンデンサ内蔵基板10の表面に形成された配線層16に接続されているが、貫通導体15に接続されない配線層16が形成されていてもよい。
図2は、本実施の形態によるコンデンサ内蔵基板のコンデンサ部14を拡大した拡大断面図である。電極層(上部電極層)13a、電極層(下部電極層)13bは、それぞれ金属箔からなる金属箔電極層13a,13bと焼結体(メタライズ層)からなる焼結体電極層13a,13bから形成されている。
本実施の形態による絶縁層11は、ガラス成分とセラミック粉末(セラミックフィラー)との焼結体から成る。このガラス成分としては、例えばSiO−B系,SiO−B−Al系,SiO−B−Al−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−Al−MO−MO系(但し、MおよびMは同じまたは異なっていて、Ca,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−B−Al−MO−MO系(但し、MおよびMは上記と同じである),SiO−B−M O系(但し、MはLi,NaまたはKを示す),SiO−B−Al−M O系(但し、Mは上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
また、セラミック粉末としては、例えばAl,SiO,ZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等が挙げられる。
この絶縁層11の焼成前の生シートであるグリーンシートは、ガラス粉末およびセラミック粉末と、有機樹脂バインダ,有機溶剤,可塑剤等とを添加混合してスラリーとするとともに、そのスラリーにドクターブレード法やカレンダロール法を採用することによって成形する。
このガラス粉末およびセラミック粉末に添加混合される有機樹脂バインダとしては、従来からセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラール系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。
グリーンシートを成形するためのスラリーに用いられる有機溶剤としては、その有機溶剤とガラス粉末とセラミック粉末と有機樹脂バインダとを混練してグリーンシート成形に適した粘度のスラリーが得られるように、例えば炭化水素類,エーテル類,エステル類,ケトン類,アルコール類等から成るものが挙げられる。
以上のようにして作製したグリーンシートに、必要に応じて金型加工やレーザ加工,マイクロドリルやパンチング等の機械的加工により貫通孔を形成する。この貫通孔に、Ag,Cu,Ag−Pt,Ag−Pd等の金属粉末とガラス粉末とに適当な有機バインダ,溶剤を添加混合した貫通導体用ペーストを、スクリーン印刷等により充填して、貫通導体15を形成する。
また、これらのグリーンシートの表面に、Ag,Cu,Ag−Pt,Ag−Pd等の金属粉末とガラス粉末に適当な有機樹脂バインダ,溶剤を添加混合した配線導体用ペーストを、スクリーン印刷等により塗布し、配線層16を形成してもよい。
次に、グリーンシート上に形成するコンデンサ部14について説明する。コンデンサ部14は誘電体層12とその上下に配設された一対の上部電極層13a,下部電極層13bから形成される。
上部電極層13aは、ポリエチレンテレフタレート等の有機樹脂フィルムからなるキャリアフィルムと一体化された金属箔に所望の形状のレジストを設けてエッチングすることにより形成することができる。電極層13aを金属箔で形成することにより、同時焼成中の誘電体層12と絶縁層11との間の相互拡散を抑制し、コンデンサ内蔵基板10内に形成したコンデンサ部14の容量値低下や容量値のバラツキを大幅に抑制することができる。
また、本実施の形態において好ましくは、上部電極層13aは、面積が0.0025〜0.023mmの開孔が5〜10%の合計の面積比で全体に分布するように形成された金属箔電極層13aと、その誘電体層12と反対側の主面に形成された、金属箔電極層13aと同じ金属から成る金属粉末およびその金属粉末100質量部に対して10質量部以下のガラス粉末の焼結体電極層13aとから成るのがよい。
金属箔電極層13aに形成された開孔は、金属箔に所望の形状のレジストを設けてエッチングすることにより形成することができる。また、焼結体電極層13aは、金属箔上に金属箔と同じ金属から成る金属粉末とガラス粉末に適当な有機樹脂バインダ,溶剤を添加混合した焼結体電極用ペーストを、スクリーン印刷法等によって塗布して形成することができる。金属箔電極層13aに断面積が0.0025〜0.023mmの開孔を5〜10%の合計の面積比で全体に分布するように設けたことにより、誘電体層12と絶縁層11を同時焼成する際の有機樹脂バインダの脱脂工程(燃焼工程)において、誘電体層12に含まれる有機樹脂バインダを効率的に除去することができる。
さらに、金属箔電極層13aの誘電体層12と反対側の主面に焼結体電極層13aを設けたことにより、金属箔電極層13aの開孔を通して発生する絶縁層11と誘電体層12との相互拡散を十分小さいものとすることができる。その結果、脱脂不良による金属箔電極層13aの膨れや誘電体層12の焼結不良のないコンデンサ部14を形成できる。その結果、コンデンサ内蔵基板10内に形成したコンデンサ部14の容量値低下や容量値のバラツキを大幅に抑制することができる。
金属箔電極層13aの開孔が0.0025mmより小さい場合、焼結体電極層用ペーストが開孔に侵入せず、開孔が空隙となるため、誘電体層12と絶縁層11の同時焼成時に焼結体電極層13aに膨れが発生することがある。
金属箔電極層13aの開孔が0.023mmより大きい場合、絶縁層11と誘電体層12との間の相互拡散の影響により、誘電体層12の焼結が進行しない部分が発生し、ガラスセラミック焼結体から成る絶縁層11内部に形成したコンデンサ部14の絶縁耐圧が低下する場合がある。
さらに、金属箔電極層13aの開孔の金属箔電極層13aの主面に対する合計の面積比が5%より小さい場合、焼結前の誘電体層12に含まれる有機樹脂バインダの脱脂が十分進まない結果、金属箔電極層13aに部分的な膨れが発生したり、誘電体層12と金属箔電極層13aとの間に剥離が発生することがある。
金属箔電極層13aの開孔の金属箔電極層13aの主面に対する合計の面積比が10%を超える場合、絶縁層11と誘電体層12との間の相互拡散が発生し、誘電体層12の焼結が十分に進行せず、ガラスセラミック焼結体から成る絶縁層11内部に形成したコンデンサ部14の容量値が低下する場合がある。
また、本実施の形態において好ましくは、金属箔電極層13aは、金属箔がAg箔またはCu箔から成り、厚みが3〜15μmであることがよい。これにより、絶縁層11内部に形成したコンデンサ部14の等価抵抗を十分小さくすることができる。電極層13aの厚みが3μmより小さい場合、金属箔を所望の形状に加工する際に金属箔に破れや変形が発生する場合がある。上部電極層13aの厚みが15μmを超える場合、配線導体16と上部電極層13aを電気的に接続する貫通導体15を形成するための貫通孔加工時に微細な貫通孔の加工を施すことが困難になり易い。
上部電極層13aを形成した後、上部電極層13aを形成したキャリアフィルム上に絶縁層11を形成するグリーンシートのスラリーをスロットコーター等により塗布し、その後乾燥してキャリアフィルムを除去することにより、上部電極層13aをグリーンシート上に形成することができる。
また、下部電極層13bは上部電極層13aと同じの方法、構成で形成することができる。
誘電体層12は、上部電極層13aまたは下部電極層13bの上に、チタン酸バリウム粉末とガラス粉末に適当な有機樹脂バインダ,溶剤を添加混合したチタン酸バリウムペーストをスクリーン印刷法等で塗布して形成することができる。この誘電体層12は、チタン酸バリウム粉末にB,SiO,CaO,BaOおよびZnOを含むガラス粉末とCuO粉末とをそれぞれチタン酸バリウム粉末100質量部に対して2〜10質量部添加した焼結体から成ることが好ましい。これにより、900〜1000℃の温度領域でより緻密な焼結体を形成することができるため、コンデンサ内蔵基板10内に形成したコンデンサ部14の容量値が大きくなり、またその容量値のバラツキを小さくすることができる。
さらに、誘電体層12を形成したグリーンシートを3〜20MPaの圧力と50〜80℃の温度で加熱圧着して積層体を作製する。
その後、例えば配線層16等の金属粉末がAg粉末である場合は大気中で900〜1000℃の温度で、配線層16等の金属粉末がCu粉末である場合は窒素雰囲気下で積層体を焼成することにより、コンデンサ内蔵基板10が得られる。ここで、積層体を焼成する際に、グリーンシートが焼結する温度では実質的に焼結収縮しない無機成分、例えばアルミナから成る拘束グリーンシートを積層体の両面に積層して焼成すると、拘束グリーンシートによって積層体の主面方向の焼成時の収縮が拘束されて抑制されるために、電極層13に金属箔電極層13aを設けることが可能となる。
さらに、コンデンサ内蔵基板10の表面に位置する配線層16には、その表面に電子部品を実装する際の半田濡れ性の向上や配線層16の腐食防止のために、ニッケル,銅,金等のめっき層を施してもよい。
本発明のコンデンサ内蔵基板の実施例を以下に説明する。
コンデンサ内蔵基板のコンデンサ部の電極層を形成するため、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなるキャリアフィルム上に蒸着法によってAg膜を0.3μm厚みで形成し、ドライフィルムレジストをAg膜上に圧着した。その後、露光、現像をして電極層を形成する部分にドライフィルムレジストの窓部を形成し、電解Agメッキ液(よう化カリウム、メタンスルホン酸Ag、HBPSA系(3Hydroxi Butiliden P−Sulfanicasid)を用いて、窓部にAgメッキ膜を形成した。
次に、ドライフィルムレジストを除去した後、希硝酸で蒸着膜を除去してAg箔電極層を形成した。さらに、Ag箔電極層上に焼結体電極層ペーストをスクリーン印刷法で塗布したもの、あるいは比較例としてAg箔電極層がなく焼結体層のみをキャリアフィルム上に印刷したサンプルを用意した。焼結体電極層ペーストは、Ag粉末95質量部とガラス粉末5質量部との混合物にアクリル樹脂12質量部と有機溶剤としてα−テルピネオール6質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合したものを用いた。
コンデンサ内蔵基板の絶縁層となるグリーンシートを得るために、ガラスとしてSiO−CaO−MgO系ガラス粉末50質量部と、セラミックフィラーとしてAl粉末50質量部とを混合し、この無機粉末100質量部に有機樹脂バインダとしてアクリル系樹脂12質量部,フタル酸系可塑剤6質量部および溶剤としてトルエン30質量部を加え、ボールミル法により混合しスラリーとした。このスラリーをスロットコート法を用いて電極層を形成したキャリアフィルム上に塗布して、厚み300μmの電極層を形成したグリーンシートを成形した。
次に、電極層を形成したグリーンシートにパンチングマシーンを用いて所定位置に貫通孔を形成し、この貫通孔にスクリーン印刷法で貫通導体用ペーストを充填した。貫通導体用ペーストとしては、Ag粉末(平均粒径3μm)100質量部に対してガラス粉末10質量部を加え、さらに有機樹脂バインダ成分として所定量のアクリル系樹脂およびテルピネオールを加えて、攪拌脱泡機により十分に混合したものを用いた。
次に、電極層を形成したグリーンシートの非電極層側の主面に配線層用のペーストをスクリーン印刷法で塗布し、70℃で30分乾燥して、配線層のパターン(容量の測定用パターン)を形成した。配線層用ペーストとしては、Ag粉末100質量部に対してガラス粉末10質量部を加え、さらに有機樹脂バインダ成分として所定量のアクリル系樹脂およびテルピネオールを加えて、攪拌脱泡機により十分に混合したものを用いた。
次に、電極層のパターン上に、誘電体層用ペーストをスクリーン印刷法で塗布し、70℃で30分乾燥して、誘電体層のパターンを形成した。誘電体層用ペーストとしては、チタン酸バリウム粉末と、それに対して5質量部のB,SiO,CaO,BaO,ZnOを含むガラス粉末と、5質量部の酸化銅との混合物からなり、さらにこの混合物を100質量部としたとき、これにアクリル樹脂12質量部と有機溶剤としてα−テルピネオール5質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールで十分に混練したものを用いた。
次に、電極層、誘電体層を形成した2枚のグリーンシートを位置合わせして5MPaの圧力と50℃の温度で真空加熱圧着して積層体を作製した。
次に、この積層体を、500℃で3時間の有機樹脂バインダの燃焼行程と、900℃で1時間のセラミックスの焼結工程とからなる焼成工程で焼成し、緻密なガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層の内部に同時焼成により誘電体層を配設して成るコンデンサ内蔵基板を得た。各試料の詳細に関しては表1〜表3に示す。また各試料の誘電体層の厚みを測定した結果、誘電体層の平均厚みは15〜18μmであった。
得られたコンデンサ内蔵基板について、そのコンデンサ部の電気的な容量を測定した。容量の測定は、測定周波数1MHz、測定温度25℃の条件で、インピーダンス測定器(型式:4294Aプレシジョン インピーダンス アナライザ、測定精度:±0.08%、アジレントテクノロジー株式会社製)を用いて測定した。
Figure 0004214039
表1は、Ag箔電極層を10μmで形成した試料2と、従来構成であるAg焼結体電極層にて形成した試料1の比誘電率εを比較した結果である。電極層の面積は、試料1,2ともに2mm角のものを用いた。また、比誘電率は、得られた容量をC、誘電体層の厚みをd、コンデンサ部の主面(電極層の主面)の面積をS、真空誘電率をεとしたとき、ε=C×d/εSから求めた値であり、誘電体層用の誘電体材料を単独で焼成した場合の比誘電率は1100〜1200であった。そして、比誘電率が1000を超え、かつ絶縁抵抗値が1011Ωを超えるものを○、比誘電率が800〜1000あるいは絶縁抵抗値が1010〜1011Ωのものを△、比誘電率が800より小さい、あるいは絶縁抵抗値が1010より小さいものを×とした。表1の結果から、電極層が金属箔電極層からなる場合(試料2)、良好な結果が得られることが判明した。
表2は、Ag箔電極層を5μm、Agメタライズ層から成る焼結体電極層を5μm形成したとき、Ag箔電極層の開孔の断面積と、電極層の主面の面積に対する開孔の合計の面積比(開孔率)との関係を示した結果である。判定基準は表1と同様の基準を用いた。表2の結果から、Ag箔電極層の開孔率が15%となると、比誘電率が800〜1000となることが判明した。この原因として、Ag箔電極層の開孔を通しての絶縁層を形成するガラス成分と誘電体層に添加したガラス成分との相互拡散が発生し、誘電体層の焼結が十分に進まない、あるいは誘電体層中のガラス成分の量が過剰になるためと考えられる。
また、電極層の主面の面積が4mm角で電極層の開孔率が3%より小さい場合、比誘電率が800〜1000となった。この原因は、コンデンサ内蔵基板の断面観察の結果、Ag箔電極層の膨れや誘電体層とAg箔電極層との剥離が発生し、実質的な電極層の主面の面積が小さくなったためと判明した。Ag箔電極層の膨れや誘電体層とAg箔電極層との剥離が発生するメカニズムとしては、焼結前の誘電体層に含まれる有機樹脂バインダ成分が脱脂工程でガス化し、Ag箔電極層と誘電体層との間に剥離を生じさせるためと考えられる。
また、Ag箔電極層の開孔部を0.03mm角で形成した場合においても、比誘電率が低いものが存在した。この原因は、コンデンサ内蔵基板の断面観察の結果、開孔の面積が0.03mm角の場合、Agメタライズ層と成る焼結体ペーストが開孔に侵入せず、開孔が空洞となること、さらに開孔の空洞部周辺においてAg箔電極層と誘電体層に剥離が発生して実質的な電極層の主面の面積が小さくなるためであることが判明した。さらに0.2mm角で形成した場合においても抵抗値が1011に達しないものが存在した。これはAg箔の開孔を通しての誘電体層と絶縁層間の相互拡散が発生し部分的に誘電体層の焼結が阻害されるためと考えられる。
Figure 0004214039
表3は、Ag箔電極層とAgメタライズ層から成る焼結体層の厚みを種々変えたとき、電極層の加工後のAg箔電極部の破れやしわ状の変形の有無、および穴加工性の結果を示したものである。Ag箔電極層の破れやしわ状の変形の有無は、双眼顕微鏡を用いて倍率40倍で観察を行い、破れやしわ状の変形が観察されないものを○、破れやしわ状の変形が観察されたものを×とした。また、穴加工については、正常に加工できたものを○、穴加工ができなかったものを×とした。
本発明のコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。 図1のコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板の要部拡大断面図である。 従来のコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板の断面図である。
符号の説明
1・・・絶縁層
2・・・コンデンサ部
3・・・電極層
4・・・誘電体層
10・・・コンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板
12・・・誘電体層
13a,13b・・・電極層
14・・・コンデンサ部
15・・・貫通導体
16・・・配線層

Claims (3)

  1. ガラスおよびフィラーを含有するガラスセラミック焼結体から成る絶縁基体の内部に、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体層と電極層とを有するコンデンサ部が形成されたコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層基板であって、
    前記電極層は、開孔を有する金属箔と、該金属箔の前記誘電体層と反対側の表面に形成された、前記金属箔と同じ金属から成る金属粉末およびガラス粉末の焼結体とを有し、
    前記ガラス粉末は、該金属粉末100質量部に対して10質量部以下であり、
    前記金属箔は、面積が0.0025〜0.023mm である複数の開孔を有し、前記電極層の面積に対する前記複数の開孔の合計面積の割合は、5〜10%であり、前記開孔は、前記電極層全体に分布しているコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板。
  2. 前記電極層において前記金属箔がAg箔またはCu箔から成り、前記電極層の厚みが3〜15μmである請求項1に記載のコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板。
  3. 前記誘電体層は、前記チタン酸バリウム粉末にB,SiO,CaO,BaOおよびZnOを含むガラス粉末とCuO粉末とを前記チタン酸バリウム粉末100質量部に対してそれぞれ2〜10質量部添加した焼結体から成る請求項1または請求項2に記載のコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板。
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