JP2005129772A - コンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】 コンデンサを構成する内層誘電体層の成分と、絶縁層の成分あるいは電極のガラス成分との相互拡散を抑制し、内蔵されたコンデンサの容量値の低下を防ぎ、またそのバラツキを抑制して、信頼性の高いコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板を提供すること。
【解決手段】 ガラスおよびフィラーを含有するガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層1が複数積層されて成る絶縁基体の内部にコンデンサが設けられており、コンデンサは、絶縁基体よりも高い誘電率を有する内層誘電体層2と内層誘電体層2を間に挟んで端面同士が対向する一対の貫通導体4とから成り、貫通導体4は、幅が150μm以上であるとともに貫通導体4を成す導体が金属粉末100質量部に対しガラスが5〜15質量部添加されている。
【選択図】 図1
【解決手段】 ガラスおよびフィラーを含有するガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層1が複数積層されて成る絶縁基体の内部にコンデンサが設けられており、コンデンサは、絶縁基体よりも高い誘電率を有する内層誘電体層2と内層誘電体層2を間に挟んで端面同士が対向する一対の貫通導体4とから成り、貫通導体4は、幅が150μm以上であるとともに貫通導体4を成す導体が金属粉末100質量部に対しガラスが5〜15質量部添加されている。
【選択図】 図1
Description
本発明はガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層の内部にコンデンサ部を内蔵させたコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板に関するものである。
近年、IT(Information Technology)産業の中核をなす半導体分野では、IC,LSI等の半導体素子の性能向上が著しく、大型コンピュータ,パーソナルコンピュータ,移動通信端末等に代表される情報処理装置の高速化,小型化,多機能化等を支えている。信号の伝達速度を上げるために、導体材料としては銀や銅等の低抵抗金属が使用され、これらと同時焼成が可能な低温焼結多層基板(ガラスセラミック基板)が開発された。さらに、コンデンサをガラスセラミック配線基板の内部に形成したコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板(以下、コンデンサ内蔵基板ともいう)も開発され、これを用いたモジュールも、小型化,高機能化,高容量化の一途をたどっている。
このようなコンデンサ内蔵基板は以下のようにして作製される。所定の回路配線が形成された絶縁体層となるガラスセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)に配線導体用ペーストをスクリーン印刷法等によって塗布することによりコンデンサの電極パターンを形成し、その上に誘電体ペーストをスクリーン印刷法により塗布したりグリーンシートを配置して誘電体層を形成し、さらに誘電体層上に配線導体用ペーストをスクリーン印刷法により塗布して電極パターンを形成した後、所定の回路配線が形成された絶縁体層となるグリーンシートを順次積層してグリーンシート積層体を作製し、しかる後、これを焼成することにより作製される。
特開平6−164150号公報
特開平8−32242号公報
上田達也,「低温焼成多層基板、内蔵コンデンサ用高誘電率材料とその応用」ファインセラミックスレポート,社団法人日本ファインセラミックス協会,1996年,第14巻,第8号,p.220〜222
亀原伸男、丹羽紘一,「CR複合基板」,ニューセラミックス,1995年,第1号,p.39〜44
しかしながら、絶縁層となるグリーンシートとコンデンサを成す誘電体層とを積層して同時焼成する場合、誘電体層の成分の一部が絶縁層に拡散し誘電体層の焼結が進みにくくなる。このため、コンデンサ内蔵基板内に形成したコンデンサの電気的な容量(静電容量)値が低下したり、その容量値のバラツキが大きくなったりするという問題点があった。
また、グリーンシート中のガラス成分が誘電体層中に拡散するという現象が発生するため、コンデンサ内蔵基板内に形成した誘電体層中のガラス成分が過剰となり、コンデンサの容量値が低下したり容量値のバラツキが大きくなったりするという問題点があった。
そこで、絶縁層と誘電体層との間に介在するコンデンサの電極の厚さを厚くし、絶縁層と誘電体層との間の相互拡散を防止するバリア層として機能させる構成が報告されている。電極用の導体として使用される銀,銅等の金属は、一般的に誘電体ペーストやグリーンシートよりも焼結開始温度が低く、緻密化も早い。絶縁層と誘電体層との間に電極となるこれらの導体が介在すると、絶縁層と誘電体層とが相互拡散する前に導体が焼結によって緻密化しているため、導体が相互拡散の防止層として機能する。
例えば特許文献1では、コンデンサの電極の厚みをその他の配線パターンよりも厚くし、4〜8μmの範囲としている。電極の厚みを8μm以下とするのは、電極を8μmよりも厚くすると基板の外形変形が生じるためとしている。しかしながら、この厚みでは絶縁層と誘電体層との距離が非常に近いために、ガラス成分が電極を越えて拡散してしまい、絶縁層と誘電体層との間の相互拡散を妨げるバリア層として機能しにくいという問題点があった。
また絶縁層と誘電体層との間に、誘電率劣化を抑えるための緩衝層を設ける構成が報告されている。例えば特許文献2では、鉛系ペロブスカイト化合物を含む誘電体層を、鉛系パイロクロア化合物と酸化物とを含む緩衝層で挟み、絶縁層から誘電体層への成分の拡散を防止している。また、この緩衝層は十分厚いので絶縁層と誘電体層との間の距離を大きくし、誘電体層へ侵入する絶縁層のガラス成分を抑えることが可能となる。しかし、緩衝層も焼結体であるので、金属層ほど著しい拡散防止効果はない。また、緩衝層自体の磁器強度が低いので、信頼性の高いコンデンサ内蔵基板を得ることが難しく、さらに緩衝層形成のためのペーストの調合や塗布等の新たな工程が増加するため、管理項目が増えて生産性が低下したり製造歩留りが低下する等の問題点があった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、絶縁層の成分、コンデンサを成す誘電体層の成分および電極のガラス成分が相互拡散を生じるのを抑制し、コンデンサ内蔵基板内に形成したコンデンサの容量値の低下を防ぎ、またそのバラツキを抑制することができて、信頼性の高いコンデンサ内蔵基板を提供することにある。
本発明のコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板は、ガラスおよびフィラーを含有するガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基体の内部にコンデンサが設けられており、該コンデンサは、前記絶縁基体よりも高い誘電率を有する内層誘電体層と該内層誘電体層を間に挟んで端面同士が対向する一対の貫通導体とから成り、該貫通導体は、幅が150μm以上であるとともに、前記貫通導体を成す導体が金属粉末100質量部に対しガラスが5〜15質量部添加されていることを特徴とするものである。
本発明のコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板は、内層誘電体層を挟んで対向配置される電極を、絶縁基体に設けられた貫通導体によって構成したことから、絶縁基体や内層誘電体層よりも早く緻密化した貫通導体は絶縁層や内層誘電体層からの成分の侵入を防ぎ、また貫通導体は絶縁層と同じ厚みを持つので、内層誘電体層と絶縁層との間の貫通導体を介しての距離を大きくし、内層誘電体層と絶縁層との間の貫通導体を介しての相互拡散を防止することが可能となる。このため、内層誘電体層の成分が絶縁層へ拡散しにくくなり、内層誘電体層本来の材料組成が維持されて内層誘電体層の焼結が正常に進むことになる。また、絶縁層のガラス成分が内層誘電体層へ侵入しなくなるため、内層誘電体層中のガラス成分が過剰にならず内層誘電体層は本来の誘電率を有することとなる。これにより、コンデンサ内蔵基板内に形成したコンデンサの容量値の低下を防ぎ、またそのバラツキを抑制することができる。
また、貫通導体は断面形状が円形で幅が150μm以上であることにより、グリーンシートが積層ズレを起こしてもコンデンサの有効面積に対する積層ズレの影響が小さいため、コンデンサの有効面積がほとんど減少せず、コンデンサの容量値が低下することがない。また、電極の端部での相互拡散の量もコンデンサ全体の面積に対して無視できる程度であるため、誘電率の低下も小さくてすみ、コンデンサの容量値が低下することがない。
また、貫通導体を成す導体は金属粉末100質量部に対しガラスが5〜15質量部添加されているため、絶縁基体であるガラスセラミックスから成る絶縁層と貫通導体を成す導体の収縮挙動が近くなり、また貫通導体と絶縁層との隙間を軟化した導体中のガラスが移動して埋めることができるので、貫通導体と絶縁層との間がクラックやボイドがないようにして強固に接合される。これにより、絶縁基体自体の抗折強度が高く、内蔵されたコンデンサの耐湿性や絶縁耐圧等の点で信頼性の高いコンデンサ内蔵基板を得ることができる。また、貫通導体のガラス成分が焼結過程で内層誘電体層に拡散することが少なく、内層誘電体層のガラス成分が本来の組成を保つことができて、容量値が高く維持されるとともに容量値のバラツキの小さいコンデンサを内蔵したコンデンサ内蔵基板を得ることができる。
本発明のコンデンサ内蔵基板について以下に詳細に説明する。図1は本発明のコンデンサ内蔵基板の実施の形態の一例を説明するための断面図である。本発明のコンデンサ内蔵基板10は、絶縁層1、内層誘電体層2、絶縁層1および内層誘電体層2を貫通する貫通導体3、コンデンサの電極(対向電極)となる一対の貫通導体4および配線導体5から基本的に構成される。
本発明のコンデンサ内蔵基板10における絶縁層1は、ガラスセラミック焼結体から成るものであり、ガラスと絶縁体粉末とから成る。このガラスとしては、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同じまたは異なっていて、Ca,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は上記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
また、絶縁体粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等が挙げられる。
ガラス粉末と絶縁体粉末とを混合する場合、その混合割合は質量比で40:60〜99:1であることが好ましい。
この絶縁層1の前駆体である絶縁体グリーンシートは、ガラス粉末および絶縁体粉末と、樹脂系バインダ,有機溶剤,可塑剤等とを混合してスラリーを作製し、そのスラリーに従来周知のドクターブレード法やカレンダロール法を採用することによって成形される。
このガラス粉末および絶縁体粉末に添加混合される樹脂バインダとしては、従来からセラミックグリーンシートに使用されているものが使用でき、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。
絶縁体グリーンシートを成形するためのスラリーに用いられる有機溶剤としては、ガラス粉末と絶縁体粉末と樹脂バインダを分散させ、絶縁体グリーンシートの成形に適した粘度のスラリーが得られるように、例えば炭化水素類,エーテル類,エステル類,ケトン類,アルコール類等の有機溶剤が挙げられる。
次に、焼成後の内層誘電体層2になる誘電体グリーンシートについて説明する。誘電体グリーンシートに用いられる誘電体粉末としては、コンデンサ内蔵基板に内蔵されるコンデンサの内層誘電体層2が形成されるように絶縁層1との同時焼成が可能で、絶縁層となる絶縁体粉末よりも高い誘電率を有するものがよい。例えば、誘電体粉末としては、チタン酸バリウム,チタン酸ストロンチウム,ジルコン酸バリウム,酸化チタン等の高誘電率のものが好ましい。この内層誘電体層2の前駆体である誘電体グリーンシートは、誘電体粉末と焼結助剤となるガラスや酸化物と、樹脂バインダ,有機溶剤,可塑剤等とを混合してスラリーとし、このスラリーを用いて従来周知のドクターブレード法やカレンダロール法を採用することによって成形する。
また、この誘電体グリーンシートに用いられる樹脂バインダ,有機溶剤としては、ガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層との同時焼成が可能であれば特に制限されるものではなく、例えば絶縁体グリーンシートに配合される樹脂バインダ,有機溶剤と同様のものが使用可能である。
以上のようにして作製した絶縁体グリーンシートおよび誘電体グリーンシートに、打ち抜き金型等により貫通孔を形成し、この貫通孔にタングステン,モリブデン,金,銀,銅等の金属粉末に収縮調整用のガラス粉末を加え、適当な樹脂バインダ,溶剤を添加混合した貫通導体用ペーストをスクリーン印刷等により充填して貫通導体3を形成する。また同様の方法で、絶縁体グリーンシートに、誘電体グリーンシートを挟んでコンデンサの対向電極となる貫通導体4を形成する。
また、貫通導体4は幅(断面形状が円形の場合直径)が150μm以上であるが、幅が150μm未満では、貫通導体4が形成されるグリーンシートを積層する際に積層ズレによってコンデンサの有効面積(内層誘電体層を挟んで上下の電極が重なる面積)が小さくなり、コンデンサの容量値が低下したり、容量値のバラツキが大きくなったりする。また、コンデンサの有効面積が小さいために、内層誘電体層2と絶縁層1とが直接接する電極(貫通導体4)の端部付近の相互拡散により誘電率が低下し、コンデンサの容量値が低下したり容量値のバラツキが大きくなったりする。
これに対して、本発明の貫通導体4は幅が150μm以上であることから、グリーンシートが積層ズレを起こしてもコンデンサの有効面積に対する積層ズレの影響が小さいため、コンデンサの有効面積がほとんど減少せず、コンデンサの容量値が低下することがない。また、電極の端部での相互拡散の量もコンデンサ全体の面積に対して無視できる程度であるため、内層誘電体層2の誘電率の低下も小さくてすみ、コンデンサの容量値が低下することがない。
従来のガラスセラミック基板に内蔵されるコンデンサの対向電極は、面積の広い配線導体よって印刷形成されていた。これは、絶縁基体の内部に形成された内層誘電体層2の誘電率が、絶縁層1に比べて大幅に高くなかったために、例えば10pF以上の容量値を得ようとした場合に断面積の小さい貫通導体4で内層誘電体層2を挟んだだけでは十分な容量値を得ることができなかったが、本発明においては、好ましくは絶縁層1と同時焼成が可能で誘電率の値が絶縁基体の100倍以上を示す誘電体材料を使用し、例えば貫通導体4の直径が300μmでも10pFが得られるようになっている。
例えば、絶縁基体が比誘電率10のSiO2−B2O3−Al2O3系ガラスとアルミナの混合物から成る場合、内層誘電体層2はBaTiO3(比誘電率1000),鉛系複合ペロブスカイト(PMN:Pb(Mg,Nb)O3,PZN:Pb(Zn,Nb)O3,PMW:Pb(Mg,W)O3等)(比誘電率3000以上)から成るようにする。
貫通導体4の幅は、コンデンサの静電容量を大きくする点で大きければ大きいほどよく、特に上限はないが、ガラスセラミック基板の寸法は小型化の傾向があり、絶縁層1と貫通導体4の熱膨張差による影響も無視できないことから、20mm以下とするのが好ましい。
また、本発明において、貫通導体4を成す導体は金属粉末100質量部に対しガラスが5〜15質量部である。ガラス成分が5質量部未満の場合、絶縁基体を構成するガラスセラミックの絶縁層1と貫通導体4との焼成による収縮挙動が合わず、また貫通導体4と絶縁層1との隙間を軟化した貫通導体4に含まれるガラスが移動して埋めることができないため、絶縁層1と貫通導体4との境界部にクラックやボイドが発生し、コンデンサ内蔵基板10の抗折強度が低くなるうえ、クラックやボイドから侵入した水分が内層誘電体層2まで到達してコンデンサが吸湿し、コンデンサの耐湿性や絶縁耐圧を劣化させてしまう。また、ガラスの量が15質量部より大きい場合、多量に存在する貫通導体4に含まれるガラスが内層誘電体層2に拡散して内層誘電体層2のガラス成分が過剰となり、コンデンサの容量値が低下したり容量値のバラツキが大きくなったりする。
したがって、本発明においては、貫通導体4に含まれるガラスが5〜15質量部であることから、絶縁層1と貫通導体4との収縮挙動が近くなり、また絶縁層1と貫通導体4との隙間を軟化した貫通導体4に含まれるガラスが移動して埋めることができるので、貫通導体4と絶縁層1との境界部はクラックやボイドがなく強固に接合される。これにより、コンデンサ内蔵基板自体の抗折強度が高くなり、内蔵されたコンデンサの耐湿性や絶縁耐圧等の点で信頼性の高いコンデンサ内蔵基板10を得ることができる。また、貫通導体4に含まれるガラスが焼結過程で内層誘電体層2に拡散することが少なくなり、内層誘電体層のガラスが本来の組成を保つことができて、容量値が高く維持されるとともに容量値のバラツキの小さいコンデンサを得ることができる。
次に、これらの絶縁体グリーンシートと誘電体グリーンシートとの表面に、タングステン,モリブデン,金,銀,銅等の金属粉末に適当な樹脂バインダ,溶剤を添加混合した配線導体用ペーストをスクリーン印刷法等により塗布印刷し、回路配線となる配線導体5を形成する。
次に、絶縁基体表面の配線導体5と絶縁基体内部の配線導体5とを導通させる貫通導体3、貫通導体4および配線導体5が形成される複数の絶縁体グリーンシートと、貫通導体3と配線導体5とが形成される誘電体グリ−ンシートとを重ねて、3〜20MPaの圧力および30〜80℃の温度で加熱圧着する等して積層体を作製する。このとき、絶縁体グリーンシートに形成された一対の貫通導体4が、内層誘電体層2を間に挟んで端面同士が対向するように配置される。
その後、例えば配線導体用ペーストの金属粉末がAg粉末である場合、大気中で800〜1000℃の温度で積層体を焼成することにより、本発明のコンデンサ内蔵基板が得られる。
なお、積層体を焼成する際に、絶縁体グリーンシートや誘電体グリーンシートが焼結する温度では実質的に焼結収縮しない無機成分、例えばアルミナから成る拘束グリーンシートを積層体の両面に積層して焼成すると、この拘束グリーンシートによって積層体の主面方向の焼成時の収縮が拘束されて抑制されるため、コンデンサ内蔵基板の寸法精度が向上し、内蔵されるコンデンサの容量値のバラツキを小さくすることが可能となる。また、このような方法で焼成した場合、厚み方向の焼成収縮が通常の方法で焼成した場合に比較して大きくなるので、内層誘電体層2の厚みをより薄くすることが可能となり、コンデンサの高容量化も容易となる。
さらに、コンデンサ内蔵基板の表面に位置する配線導体5には、その表面に電子部品を実装する際の半田濡れ性の向上や配線導体の腐食防止のために、ニッケル,銅,金等のめっきを施してもよい。
本発明の実施例について以下に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
絶縁層1となる絶縁体グリーンシートを得るために、ガラスとしてSiO2−CaO−MgO系ガラス粉末50質量部と、誘電体粉末としてAl2O3粉末50質量部とを混合し、これらの無機粉末100質量部に樹脂バインダとしてアクリル樹脂12質量部,フタル酸系可塑剤6質量部および溶剤としてトルエン30質量部を加え、ボールミル法により混合しスラリーとした。このスラリーを用いて、ドクターブレード法により厚さ200μmの絶縁体グリーンシートを成形した。
また同様の方法で内層誘電体層2となる誘電体グリーンシートを作製した。誘電体グリーンシートは、ガラスとBaTiO3粉末とから成り、ガラスとBaTiO3粉末との和を100質量部とし、樹脂バインダとしてアクリル樹脂12質量部,フタル酸系可塑剤6質量部および溶剤としてトルエン30質量部を加え、ボールミル法により混合しスラリーとした。このスラリーを用いて、ドクターブレード法により厚さ50μmの誘電体グリーンシートを成形した。
これらの絶縁体グリーンシートと誘電体グリーンシートに打ち抜き金型またはパンチングマシーンを用いて所定の位置に貫通孔を形成し、この貫通孔にスクリーン印刷法で貫通導体用ペーストを充填し貫通導体3,4とした。誘電体グリーンシートにはグリーンシートの層間の導通用の貫通導体3を形成し、貫通導体3とコンデンサの対向電極としての貫通導体4を形成した。貫通導体用ペーストとしては、銅の粉末(平均粒径3μm)100質量部に対して上記ガラスと同組成のガラス粉末を4〜16質量部を加え、さらにビヒクル成分として所定量のエチルセルロース系樹脂およびテルピネオールを加えて、3本ロールにより適度な粘度になるように混合したものを用いた。
次に、充填した貫通導体用ペースト中の有機溶剤の重量が減少するまで60℃の温風により乾燥させた。
次に、絶縁体グリーンシートの所定箇所に配線導体5となる配線導体用ペーストをスクリーン印刷法により約15μmの膜厚で塗布した。配線導体用ペーストとしては、銅の粉末(平均粒径3μm)100質量部に対して上記ガラスと同組成のガラス粉末2質量部を加え、さらにビヒクル成分として所定量のエチルセルロース系樹脂およびテルピネオールを加えて、3本ロールにより適度な粘度になるように混合したものを用いた。
次に、印刷した配線導体用ペースト中の有機溶剤の重量が減少するまで60℃の温風により乾燥させた。
なお、本実施例では、コンデンサの対向電極となる貫通導体4の断面形状および貫通導体3の断面形状は円形とした。また比較例として、図3に示すように、コンデンサの対向電極を、貫通導体4の端面に形成した円形の導体層6で形成した以外は上記実施例と同様にして作製したコンデンサ内蔵基板を作製した。
次に、貫通導体3,4や配線導体5となる配線導体用ペーストが形成された絶縁体グリーンシートと誘電体グリーンシートとを順次積層し、誘電体グリーンシートを挟んで導体層6となる導体パターンまたは貫通導体4がコンデンサの対向電極となるように配置した。
このようにして得られたグリーンシートの積層体を、500℃で3時間の樹脂バインダの燃焼行程と900℃で1時間のセラミックスの焼結工程とを含む工程を窒素雰囲気中で実施し、緻密なガラスセラミック焼結体から成る絶縁層1の内部や表面に同時焼成により形成された配線導体5および内層誘電体層2を配設して成るコンデンサ内蔵基板を作製した。
得られたコンデンサ内蔵基板中の内層誘電体層2について比誘電率を測定した。比誘電率の測定は、測定周波数1MHz、測定温度25℃でのコンデンサの静電容量をインピーダンスアナライザーを用いて測定し、内層誘電体層2の厚みとコンデンサの有効面積を測定して算出した。比誘電率が900以上の試料を良品とし、900未満の試料を不良品として評価した。
また、静電容量値のバラツキとして、各サンプルから50個の静電容量の測定結果の標準偏差(σ)を算出した。バラツキの判定として、3σが静電容量の平均値を100とした場合に20以下の場合を良品とし、20より大きい場合を不良品として評価した。
また、貫通導体4と絶縁層1との界面の観察を、各サンプルのコンデンサ部分を切り出して樹脂に埋め込み、貫通導体4と絶縁層1との界面が露出した切断面の方向にラップ研磨板によって回転研磨し、走査型顕微鏡にて1000倍で観察することによって行なった。貫通導体4と絶縁層1との界面が良好に接合しているものを良品とし、隙間やクラックが確認されたものを不良品とした。
測定結果をまとめて表1に示し、判定欄に以上の3つの項目を全て満たすものを良品として○で示し、一つでも満たさないものを不良品として×で示した。
表1より、No.1〜9はコンデンサの対向電極を貫通導体4のみで構成したものであり、図1に示す本発明の構成のものである。一方、No.10〜14は、コンデンサの対向電極を導体層6で形成し、これに直径50μmの小径の導通用の貫通導体3を組み合わせて形成して電気的接続を行なった、図3の従来構成のものである。
そして、本発明の構成であるNo.3,5,6,7,9は、いずれも比誘電率が900を超えており、静電容量の3σが20より小さく、貫通導体4と絶縁層1とが良好に接合した。
これに対して、従来の構成であるNo.10〜14は、比誘電率900以上を満たすものはなく、静電容量の3σが20より大きかった。
No.1,2は、貫通導体4の直径が小さいため、静電容量の3σが20より大きくなり、バラツキの大きなコンデンサとなった。
No.4は、貫通導体4のガラス成分が銅の粉末100質量部に対して4質量部であり、5質量部より小さいため、貫通導体4と絶縁層1との界面に隙間が観察された。
No.8は、貫通導体4のガラスが銅の粉末100質量部に対して16質量部であり、15質量部よりも大きいため、比誘電率が900を下回った。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更は可能である。例えば、上述の実施の形態では、ガラス粉末と誘電体粉末とを含むスラリーを層状に成形した誘電体グリーンシートを積層するグリーンシート積層法で内層誘電体層2を形成したが、図2に示すように、ガラス粉末と誘電体粉末とを含む誘電体ペーストをスクリーン印刷等で塗布して多層化する厚膜印刷法で内層誘電体層2を形成してもよい。
また、上述の実施の形態では、配線導体5は配線導体用ペーストをグリーンシートに塗布することにより形成したが、配線導体5のパターン形状の銅等から成る金属箔を転写して形成してもよい。配線導体5を金属箔を転写して形成すると、配線導体5の寸法精度をより向上させることができ、コンデンサの容量値のバラツキをより小さくすることができる。
1・・・絶縁層
2・・・内層誘電体層
3・・・貫通導体
4・・・貫通導体
5・・・配線導体
6・・・導体層
10・・・コンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板
2・・・内層誘電体層
3・・・貫通導体
4・・・貫通導体
5・・・配線導体
6・・・導体層
10・・・コンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板
Claims (1)
- ガラスおよびフィラーを含有するガラスセラミックス焼結体から成る絶縁層が複数積層されて成る絶縁基体の内部にコンデンサが設けられており、該コンデンサは、前記絶縁基体よりも高い誘電率を有する内層誘電体層と該内層誘電体層を間に挟んで端面同士が対向する一対の貫通導体とから成り、該貫通導体は、幅が150μm以上であるとともに、前記貫通導体を成す導体が金属粉末100質量部に対しガラスが5〜15質量部添加されていることを特徴とするコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板。
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