JP5110420B2 - Ag粉末、導体ペースト及び多層セラミック基板とその製造方法 - Google Patents

Ag粉末、導体ペースト及び多層セラミック基板とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、多層セラミック基板とその製造方法に関し、その多層セラミック基板の製造に用いるのに適したAg粉末並びに導体ペーストに関するものである。特に、低温焼成が可能な無収縮プロセスによって製造される多層セラミック基板に関するものである。
今日、多層セラミック基板は、携帯電話等の移動体通信端末機器の分野などにおいて、アンテナスイッチモジュール、PAモジュール基板、フィルタ、チップアンテナ、各種パッケージ部品等の種々の電子部品を構成するために広く用いられている。
多層セラミック基板は、複数の積層されたセラミック層を備えており、基板内部にはセラミック層に形成した内部電極と、内部電極間を接続するようにセラミック層を貫通させたビアホール電極と、基板の外表面上に形成した外部電極が形成されている。通常、多層セラミック基板は、半導体チップやその他のチップ部品を基板上に搭載し、これをマザー基板上に表面実装して用いられる。このとき、より多機能化、高密度化、高性能化するためには、上記した配線電極を高密度に配置することが有効である。
しかしながら、多層セラミック基板を得るためには、必ず焼結工程を経なければならず、この焼結工程においてセラミックスは焼結による収縮が約10〜25%程度生じる。このような大きな収縮があると集合基板に作りこむことが出来る製品基板の取れ数が少なくなり、効率的ではない。また、収縮は多層セラミック基板全体において均一に生じるものではなく反りや歪みがもたらされる。このような反りや歪みは、特性上、また実装作業上に支障をきたすばかりでなく、電極の高密度化を阻害してしまう。従って、焼結による収縮率を1%以下として、収縮ばらつきを小さくし、反りを抑えることが求められている。
そこで、多層セラミック基板を製造するにあたって、焼成工程において多層セラミック基板のX-Y面方向での収縮を実質的に生じさせないことを意図した、いわゆる無収縮プロセスが提案されている。特に、近年では電極ペースト材料としてAg系の低抵抗材を用いることから800〜1000℃程度の低温で焼成することが行われる。そのため、専ら1000℃以下の温度で同時焼成が可能なLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)材、とりわけガラスとアルミナ、ムライト、コージェライト等のセラミックス粉末と有機バインダ及び可塑剤からなるガラスセラミックグリーンシートを用いて、これを無収縮で一体焼成するプロセス、いわゆる無収縮プロセスが提案されている。例えば、特許文献1(特許第2554415号公報)、特許文献2(特許第3335970号公報)に無収縮プロセスに関する記載がある。
上記無収縮プロセスに関し、用いるAg導体材料として、特許文献3(特開2000-285731)には平均粒径3〜10μmのAg粉末が導体粉末全体の95重量%以上からなる導体粉末と有機ビヒクルとを含みガラスフリットを含まない導体ペーストが提示されている。
また、特許文献4(特開平9-69687)には、ビア形成用の導電ペーストとして、Ag粉末と共にフレーク状フィラーを用いることが提示されている。
また、特許文献5(特開2002-26528)では、収縮工法において製造される多層セラミック基板に用いる内部電極および/または表面電極用の導電性ペーストに関し、その導電性ペーストの収縮カーブをシート積層体の収縮カーブと一致させることにより、多層セラミック基板の反りや変形を抑制することが開示されている。
また、特許文献6(特開2004-319706)では、セラミックグリーンシートと導体ペーストとの焼成収縮開始温度及び/又は焼成収縮率の差を特定の範囲とすることにより、焼成後、ビア導体と焼結体との間に隙間が生じること、及びビア導体の周縁において焼結体にクラックが生じること、が抑制される導体ペースト、並びに特定の構成の基板用未焼成セラミックシートを積層し、焼成してなる多層基板、及び収縮抑制用未焼成セラミックシートを用いる多層基板の製造方法が開示されている。
特許第2554415号公報 特許第3335970号公報 特開2000−285731号公報 特開平9−69687号公報 特開2002−26528号公報 特開2004−319706号公報
上記特許文献3と特許文献4及び特許文献6の導体ペーストによれば、ビア導体と基板との間に空隙・隙間・クラックが見当たらないとされているが、多層セラミック基板の高温高湿度雰囲気下で配線間に電圧を負荷した信頼性試験までは考慮されておらず、高温高湿度雰囲気下、負荷試験での信頼性が確保されてはいない。高温高湿試験としては85℃、85%RHの雰囲気下で3〜100Vを負荷することが一般的である。高温高湿負荷試験では、導体や基板に水蒸気が入る隙間が問題となる。とりわけ導体と基板間の微細な隙間が問題となる。ビア導体や配線導体と基板との間に微細な隙間があると水蒸気が入り込み、電界の下でAg等の金属成分がマイグレーションし、配線間の絶縁不良を引き起こす問題を生じる。多層セラミック基板の高温高湿負荷試験での信頼性が確保できない場合は、多層セラミック基板あるいはそれを用いたモジュール等を樹脂でモールドする、金属ケース等で気密封止するなどの対策手段があるが材料・工程が増大するという問題がある。
本発明の課題は、反りが小さく、しかも高温高湿負荷試験において不良の発生しない高信頼の多層セラミック基板を提供するものであり、またその多層セラミック基板の製造に適した導体ペースト、並びにそれに適したAg粉末を提供することにある。とりわけ、無収縮で焼結する方法に適した多層セラミック基板用導体ペースト、並びにそれに適したAg粉末を提供することにある。
上記課題の解決のため、本発明者は、多層セラミック基板を構成するセラミック材料と導体材料の焼結収縮挙動に注目し、種々のセラミック材料と導体材料の焼結収縮挙動とそれらの材料を用いた多層セラミック基板の微細構造・高温高湿負荷信頼性試験を行った。その結果、導体材料とセラミック材料の焼結挙動を近づけることが従来の考え方であったが、それらの焼結挙動が多少ずれていても問題がなく、重要なのは焼成工程の最高温度で保持する時の挙動であることが分かった。すなわち、焼成工程の最高温度で保持する時、
導体材料の収縮量を小さくすることが、高温高湿負荷試験で高い信頼性を得るのに効果的であることを見出したものである。そして、それに適したAg粉末や導体ペーストがあることを見出したものである。
先ず、本発明は、平均粒径が3.0μm未満のAg粉末であり、前記Ag粉末を大気中で850℃から1000℃までの間の温度に加熱し、2時間保持した後の前記Ag粉末中の酸素含有量が100ppm以上であることを特徴とする多層セラミック基板に用いる導体ペースト用のAg粉末である。
本発明のAg粉末は、セラミック材料と同時焼成されるが、その時の最高温度は、ほぼ850℃から1000℃の間である。この焼成工程の最高温度で保持する時、ビア導体材料の収縮量が小さくなることに、本発明のAg粉末は有効に作用することを見出した。特に、Ag粉末を大気中で850℃から1000℃までの間の温度に加熱し、2時間保持した後の前記Ag粉末中の酸素含有量が100ppm以上であることにより、セラミック材料と同時焼成されたとき、その最高温度の保持の間にも、Ag導体中に酸素が所定量含有されており、この酸素を所定量含有することが、下記するビア導体材料(Agを主体とし、Pdを含有する導電材料)を焼成工程の最高温度で保持する時、収縮量が小さくなることに有効に作用しているものと考えられる。尚、熱処理後の酸素含有量が100ppmより小さい場合は、収縮挙動を抑制する効果が薄れるため好ましくない。また、この酸素含有量は多すぎると導体の抵抗値を増大させる原因となるので、1000ppm以下くらいが好ましいと考えられる。
また、Ag粉末の加熱前の酸素含有量は300ppm〜2000ppmであることが好ましい。300ppmより少ない場合はビア導体の収縮量が大きく、2000ppmより多い場合は導体の抵抗値が増大し易い。
尚、平均粒径が3.0μmより大きい場合には微細印刷に難が生じる。
また、本発明の導体ペーストは、平均粒径が3.0μm未満のAg粉末であり、前記Ag粉末を大気中で850℃から1000℃までの間の温度に加熱し、2時間保持した後の前記Ag粉末中の酸素含有量が100ppm以上であるAg粉末を用いた導体ペーストであり、導体材料中の含有量として、前記Ag粉末が88〜94質量%、Pd粉末が0.1質量%以上3質量%未満含有されており、前記Ag粉末及びPd粉末の総量が88.1〜95質量%であることを特徴とする。
この導体ペーストによれば、上記したAg粉末中の酸素含有量による収縮抑制効果と共に、さらにPd粉末の作用を複合的に得ることができる。即ち、Pdの添加により焼成工程の最高温度で保持する時、ビア導体材料の収縮量が小さくなり、ビアの壁面となっているセラミック材料とビアの内部の導体材料が隙間なく密着し、水蒸気の入り込まない構造とすることができるのである。ここで、Ag粉末が88質量%よりも少ないと、導体ペーストの収縮量が大きく、また、94質量%より多いと粘度が高くなりペースト化が困難となる。Pd粉末が0.1質量%より少ない場合、添加効果はなく、3質量%以上の場合、導体材料の良好な導電性を損なうので、好ましくない。
また、本発明の多層セラミック基板用の導体ペーストは、ガラス成分を含まないことが好ましい。ガラス成分は、導体の抵抗率を大きくするため、多層セラミック基板として用いる際の製品特性において好ましくない場合がある。特に、高周波での用途においては、所望の製品特性を得ることが難しくなる。
本発明の導体ペーストは、最高温度を900℃とし、最高温度での保持時間を30分とし、昇温速度を10℃/分とした条件で、導体ペーストの焼結収縮挙動を熱機械分析装置(TMA:Thermo−Mechanical Analysis)で評価したとき、前記最高温度での保持時間の間において、保持開始からの導体ペーストの収縮量が5%以下であることを特徴とする多層セラミック基板用の導体ペーストである。
これらの導体材料の焼結収縮挙動は熱機械分析装置(TMA)で測定できる。そして収縮量とは、図1に示すようにTMA測定で焼成前寸法を基準としたときに、焼結温度に到達した点aから焼結温度保持完了の点b1又はb2又はb3までの寸法の変化量である。なお、TMA測定をした際の焼成前寸法は、導体ペーストの溶剤がほぼ除去され、導体の収縮も開始していない、200℃における寸法を用いた。尚、点b3のように、焼結温度保持後の寸法が焼結温度開始時点の寸法よりも大きい場合には、収縮量としてはマイナスの値となる。本発明において収縮量が5%以下とは、焼結温度保持後の寸法が焼結温度開始時点の寸法よりも大きい点b3(マイナスの収縮量)を有しているものであってもよい。このような寸法変化がある場合、収縮挙動から膨張挙動に転じる変化点cを有している。尚、このように最高温度での保持時間の間に収縮挙動から膨張挙動に転じる導体ペーストであっても本発明と同様の効果が得られることも見出している。この発明については別途出願している。
前記Ag粉末が88〜94質量%、Pd粉末が0.1質量%以上、3質量%未満含有されており、前記Ag粉末及びPd粉末の総量が88.1〜95質量%であることが好ましい。さらに、前記Ag粉末中の酸素含有量が100ppm以上であることが好ましい。
本発明の導体ペーストによれば、セラミック材料と同時焼成されるが、その時の最高温度はほぼ850℃から1000℃の間であり、この焼成工程の最高温度で保持する時、導体ペーストの収縮量を小さくすることでビアの壁面となっているセラミック材料とビアの内部の導体材料が隙間なく密着し、水蒸気の入り込まない構造とすることができる。ビア導体材料の収縮量は、焼成前の寸法に対して5%以下であるが、この収縮量が5%より大きい場合には、ビア導体とセラミック体との密着性が水蒸気の通過を抑止するには不十分となる。セラミックスはAgとの同時焼結のためそれらの金属の融点以下で緻密化することが必要である。特にAgを導体材料とする場合には900℃以下の焼成で緻密化(焼結)することが好ましい。
また本発明は、内部に回路用の導体パターン及びビア導体を適宜形成した多層セラミック基板において、前記ビア導体はAgを主体とし、Pdを含有する金属導電体であり、前記金属導電体中の酸素含有量が100ppm以上である多層セラミック基板である。
本発明によれば、ビア導体として、Agを主体とする金属導電体であり、前記金属導電体中の酸素含有量が100ppm以上であること、およびPd粉末の作用により多層セラミック基板の焼成工程の最高温度で保持する時、ビア導体材料が、収縮量が小さくなり、ビアの壁面となっているセラミック材料とビアの内部の導体材料が隙間なく密着し、水蒸気の入り込まない構造とすることができる。また、ビア導体の金属導電体中の酸素含有量は、多すぎると導体の抵抗値を増大させる原因となるので、1000ppm以下くらいが好ましいと考えられる。
また、本発明の多層セラミック基板において、前記ビア導体用の導体ペーストとして、上記した本発明の導体ペーストを用いることが好ましい。そして、本発明の多層セラミック基板において、前記ビア導体の直径が、焼成後の大きさで150μm以下であることが好ましい。
本発明の多層セラミック基板の製造方法は、セラミックグリーンシートを複数枚積層し焼成して得られ、内部に回路用の導体パターン及びビア導体が形成されている多層セラミック基板の製造方法において、ビア導体として、前記の導体ペーストを用いることを特徴とする。さらに別の本発明の多層セラミック基板の製造方法は、セラミックグリーンシートに適宜内部回路用の導体パターン及び/又はビア導体を形成し、これらセラミックグリーンシートを複数枚積層し、前記セラミックグリーンシートの積層体の焼結温度では焼結しない無機粒子と有機物とを含有する難焼結性拘束層を、前記セラミックグリーンシートの積層体の上面及び/又は下面に密着するように設けた後、焼成し、その後前記難焼結性拘束層を除去して多層セラミック基板を製造する方法において、前記ビア導体用として、上記した本発明の導体ペーストを用いたものである。
前記焼成の温度は900℃以下であることが好ましい。
無収縮プロセスにおいては、焼結時、X-Y面方向での収縮を抑制しているので、Z方向には、大きく収縮する。一方、ビアの径方向は、セラミックグリーンシートに形成したビア孔の大きさ(直径)よりも、焼結後のセラミック材におけるビア孔の大きさ(直径)が拡大する場合がある。このように、収縮プロセスとは異なる動きがビア孔部分で起きている。このような無収縮プロセスにおいて、本発明のビア導体は、非常に好ましいものである。つまり、焼成後の大きさで150μm以下であっても、X-Y面方向に拡大するビア孔に対して、本発明のビア導体は、焼成工程の最高温度で保持する時、収縮量が小さいものであり、収縮量の大きいビア導体に比べ、ビアの壁面となっているセラミック材料とビアの内部の導体材料が隙間なく密着し、水蒸気の入り込まない構造とすることができ、ビア導体の充填性を向上させることができる。
本発明の導体ペーストを用いると、ビア導体材料が焼成工程における最高温度保持中における収縮量が小さいことでビア導体のビア孔への充填性が向上し、セラミック材料とビア導体との間に水蒸気の侵入を妨げることが可能となり、高温高湿負荷試験において不良の発生しない高品質の多層セラミック基板を得ることができる。また、その導体ペーストに適したAg粉末を提供することができる。
また、無収縮プロセスを用い、X-Y面方向の高い寸法精度と反りの小さな多層セラミック基板を得ることができる。
本発明では、多層セラミック基板を構成するセラミック材料と導体材料の焼結収縮挙動に注目した。焼結収縮挙動は熱機械分析装置(TMA:Thermo-Mechanical Analysis)で測定できる。これはセラミック材料、導体材料の昇温・降温過程における伸び縮みを検出棒の変位から測定する方法である。セラミック材料の測定試料には圧粉体やシート積層・圧着体、導体材料の測定試料には圧粉体やペースト乾燥体が用いられる。TMA装置に対応した試料形状とされる。
本発明者は種々のセラミック材料と導体材料のTMAによる焼結収縮挙動とそれらの材料を用いた多層セラミック基板の微細構造・高温高湿負荷信頼性試験を行った。導体材料とセラミック材料の焼結挙動を近づけることが従来技術ではあるが、それらの焼結挙動が多少ずれていても問題がなく、重要なのは焼成工程の最高温度で保持する時の挙動であることが分かった。すなわち、焼成工程の最高温度で保持する時、セラミック材は収縮の継続ないし停止の挙動を示すが、ビア導体材料がセラミック材料の挙動とは異なり、最高温度で保持する間のビア導体材料の収縮量が小さいこと、具体的には、最高温度を900℃とし、最高温度での保持時間を30分とし、昇温速度を10℃/分とした条件で、前記最高温度での保持時間の間において、前記導体ペーストの収縮量が5%以下であることが、高温高湿負荷試験で高い信頼性を得るのに効果的であることを見出した。
セラミック材料と導体材料単独の焼結収縮挙動は上記したTMAの測定データで把握できる。セラミック材料と導体材料を同時焼成したときの挙動を調べるには、多層基板サンプルを種々の焼成温度で取り出し、セラミック材料と導体材料の同時焼成断面を観察することが一法である。導体材料の焼結開始温度がセラミック材料の焼結開始温度より約200℃低い場合でも、セラミック材料の収縮開始温度の700℃で取り出した多層セラミック基板サンプルの断面観察では、セラミック材料と導体材料の間に焼結挙動のミスマッチに起因すると見なされる顕著なボイドは見られなかった。TMAの測定データでセラミック材料と導体材料単独の焼結収縮挙動が類似しているものを用いた多層セラミック基板の焼成終了後のセラミック材料と導体材料の同時焼成サンプル断面を観察した結果、導体材料とセラミック材料との間に隙間のあるもの、ないもの様々であった。とりわけ、焼成工程の最高温度で保持した時、収縮量が小さい導体材料を用いた多層セラミック基板では、導体材料とセラミック体との間が隙間なく密着していた。この高い密着性が高温高湿負荷試験においても水蒸気の浸入を阻止し、高い信頼性が得られる原因と考えられる。
本発明の多層セラミック基板は、低温焼結セラミック材料を用いた基体用グリーンシートを積層した未焼成多層セラミック基板の上面及び/又は下面に密着するように前記低温焼結セラミック材料の焼結温度では焼結しない無機材料を主成分とする無機組成物を塗布または重ね合わせて拘束層となし、当該拘束層を備えた未焼成多層セラミック基板を焼結した後、前記拘束層を除去してなる多層セラミック基板、いわゆる無収縮多層セラミック基板の製法において、ビア導体材料として前記未焼成多層セラミック基板の焼結工程における焼結温度保持中の収縮量が小さい導体材料を用い得ることができる。
ビア導体材料の膨張量は、TMA測定で焼成前の寸法の10%以内であることが好ましい。また、焼結温度保持中の収縮量は5%以下であることが好ましい。この発明における収縮量は、前述したように図1に示すようにTMA測定で焼成前寸法を基準としたときに、焼結温度に到達した点から焼結温度保持完了までの寸法の変化量である。なお、TMA測定をした際の焼成前寸法は、導体ペーストの溶剤がほぼ除去され、導体の収縮も開始していない、200℃における寸法を用いた。焼結温度保持後の寸法が焼結温度開始時点の寸法よりも大きい場合には、膨張していることになり、ここでは、収縮量として、マイナスの値となる。つまり、収縮量が5%以下とは、膨張することを含むものである。
多層セラミック基板に用いる導体材料としては、電気抵抗が小さく大気中で焼成できるAgが好ましい。未焼成多層セラミック基板の焼成工程は、バインダ除去とセラミック材の緻密化(焼結)の2つの目的がある。バインダはポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂などが使用され、それらの分解温度は300℃から500℃である。セラミックスはAgとの同時焼結のためそれらの金属の融点以下で緻密化することが必要である。特にAgを導体材料とする場合には950℃以下、好ましくは900℃以下の焼成で緻密化(焼結)することが好ましい。
上述したように、セラミックスの焼結収縮挙動はTMA測定で把握できる。TMA測定ではサンプルが小であること、セラミック材料か導体のいずれか単体であること、昇温速度を便宜上例えば10℃/分のように設定するので、実際の多層基板とサイズ・構成が全く異なることと昇温も通常前記よりも小さな速度で行うのでTMA焼結挙動と多層基板の焼結挙動の相違は起こり得る。ここでは、単純化のため昇温速度を10℃/分としたTMAの焼結収縮カーブに基づいて考える。
一般に、TMAの焼結収縮カーブにおいて、セラミックス材料は700℃以上で収縮開始することが好ましい。温度に対して収縮率が最も変化する温度(以下、収縮最大速度温度と称す。)が800℃から900℃であることが好ましい。効率的な多層セラミック基板の緻密化(焼結)のためには、上記収縮最大速度温度付近の温度で、一定時間保持され、その後冷却される焼成工程が施される。ここでは緻密化のための温度で保持する熱処理を、焼結工程と称す。焼結工程の温度を高めに設定すれば、保持時間は比較的短く設定でき、焼結工程の温度を低めに設定すれば、保持時間は比較的長く設定する。焼結工程の保持時間は30分以上が好ましい。保持時間をより長くすることは、多層セラミック基板の焼結後の均一性を良くすることに効果がある。焼結工程の保持の間にセラミック材料は焼結収縮を続けるあるいは焼結収縮が停止する。図2に示すようにこの焼結工程の保持の間に、導体材料の収縮量が小さいことが要点である。
すなわち、収縮量が小さいことによってビアの壁面となっているセラミック材料とビアの内部の導体材料が隙間なく密着し、水蒸気の入り込まない構造となる。尚、保持過程において、収縮挙動から膨張挙動に転じる場合があるが、この場合の変化点cからの膨張量が10%より大きい場合には、セラミック体にクラックを生じさせる問題がある。また、収縮量が5%より大きい場合には、ビア導体とセラミック体との密着性が水蒸気の通過を抑止するには不十分となる。これらの導体材料の焼結収縮挙動はTMA測定で把握される。
セラミックグリーンシートへのビア導体の印刷では、Agを主成分とし、Pdを含有する導体粉末とバインダと溶剤からなるペーストを用いる。導体粉末に、平均粒径が3.0μm未満のAg粉末であり、前記Ag粉末を大気中で850℃から1000℃までの間の温度に加熱し、2時間保持した後の前記Ag粉末中の酸素含有量が100ppm以上であるAg粉末を用いる。酸素含有量が100ppmより少ない場合は、収縮から膨張に変化する挙動が起こり難い。尚、酸素含有量が1000ppmより多い場合は導体の抵抗値が大きくなり易いので、1000ppm以下が好ましい。また平均粒径が3.0μm以上の場合には微細印刷に難が生じる。
本発明において、Ag粉末に含まれる酸素含有量は、黒鉛坩堝を用いた化学分析法で定量される。Ag粉末の酸素分析で検出された酸素の存在状態はよくわからないが、Ag2Oとしてあるいは粒子に含有されるガス(空気)として存在すると考えられる。市販購入材のAg粉末を大気中で900℃の温度で熱処理した後、酸素含有量を測ると熱処理前に比べて酸素含有量が減少することが認められる。900℃で熱処理した場合にはAg粉末の種類によって、熱処理前の値の1/100から1/2となる。酸化銀は200℃以上の高温で分解することが知られているので、上記熱処理で減少量の多いAg粉末には酸素は酸化銀として含有されているものと推定される。種々の実験の結果、上記熱処理で酸素含有量の減少の少ない導体材料が、TMA測定で、焼結工程における焼結温度保持中に収縮から膨張に変化する挙動をとりやすいことが分かった。
前記Ag粉末に、導体材料中の含有量としてPd粉末を0.1〜3wt%添加した導体粉末を用いた多層セラミック基板は高温高湿負荷試験においてより高い信頼性を得ることができる。Pd粉末の添加量が0.1wt%より少ない場合、Agの収縮を抑制することができず、収縮量が大きくなり、セラミック材料とビアの内部の導体材料が隙間が発生する。3wt%よりも多い場合、導体材料の良好な導電性を損なうので、好ましくない。Pd粉末を0.1〜3wt%添加した場合、焼結工程における焼結温度保持中の収縮量を小さく制御できる。
前記導体材料は、ビア導体のみならず内層パターン導体にも使用される。内層パターン導体として低抵抗な導体が要求される場合にも適用できる。従って、導体ペーストの粘度特性と印刷条件を適正化することにより、ビア導体と内層パターン導体を同時に印刷することができ、工程の削減となる。
前記低温焼結セラミック材料は高周波部品用途には、誘電特性の優れた材料が用いられる。高周波誘電特性の優れた材料として、主成分がAl,Si,Sr,Tiの酸化物で構成され、Al,Si,Sr,TiをそれぞれAl、SiO、SrO、TiOに換算し合計100質量%としたとき、Al換算で10〜60質量%、SiO換算で25〜60質量%、SrO換算で7.5〜50質量%、TiO換算で20質量%以下のAl,Si,Sr,Tiを含有し、前記合計100質量%に対し副成分として、Bi換算で0.1〜10質量%のBiを含有した組成物が好ましい。
上記セラミック材料のグリーンシートは原料の酸化物、炭酸塩等の混合物を仮焼きし、仮焼後に微粉砕粒子となし、当該微粉砕粒子に有機バインダ、可塑剤、溶剤を加えた仮焼複合物の微粉砕粒子を含むスラリーから製造される。
以下、図面を参照して本発明の実施態様を説明する。
図3は、本発明に係る多層セラミック基板の製造方法の各プロセスにおける断面図である。図4は、本発明に係る多層セラミック基板の製造方法における分割前の集合基板を示す斜視図である。
以下、本発明の多層セラミック基板について製造方法を追いながら詳細に説明する。
[基体用グリーンシートの材料]
基体用グリーンシートは、低温焼結セラミック材料からなり、重要な要素であるので以下に詳細に説明する。
その組成は、主成分がAl,Si,Sr又はAl,Si,Sr,Tiの酸化物で構成され、それぞれAl換算で10〜60質量%、SiO換算で25〜60質量%、SrO換算で10〜50質量%、TiO換算で20質量%以下(0を含む)からなり、前記主成分100質量%に対し副成分として、Bi換算で0.1〜10質量%のBiを含有している。900℃以下の温度でも焼成できる材料である。これにより、銀や銅、金といった高い導電率を有する金属材料を電極用導体として用いて一体焼結を行うことができる。
[基体用グリーンシートの作製]
以上の主成分及び副成分から出発原料を選択し、原材料となる酸化物粉あるいは炭酸塩化合物粉をそれぞれ秤量する。
これらの粉末をポリエチレン製のボールミルに投入し、更に酸化ジルコニウム製のメディアボールと純水を投入して20時間湿式混合を行う。混合スラリーを加熱乾燥し水分を蒸発させた後ライカイ機で解砕し、アルミナ製のるつぼに入れて、700〜850℃、例えば800℃で2時間仮焼する。仮焼粉末を前述のボールミルに投入し20〜40時間湿式粉砕を行い、乾燥させ平均粒径0.6〜2μm、例えば1μmの微粉砕粒子とする。
仮焼物を微粉砕化した粒子はセラミックス粒子にガラスが部分的あるいは全体的に被覆された粒子となっている。得られた仮焼粉末に、エタノール、ブタノール、有機バインダとしてポリビニルブチラール樹脂(添加量は仮焼粉重量100部に対して15重量部)、可塑剤としてブチルフタリルグリコール酸ブチル(略称:BPBG、添加量は仮焼粉重量100部に対して7.5重量部)をボールミルで混合してスラリーを作製した。尚、有機バインダとしては、例えばポリメタクリル樹脂等を、可塑剤としては、例えばジ−n−ブチルフタレートを、溶剤としては、例えばトルエン、イソプロピルアルコールのようなアルコール類を用いることもできる。
次いで、このスラリーを減圧下で脱泡及び一部の溶剤の蒸発を行い、約10Pa・sの粘度になるように調整した。粘度調整後、ドクターブレード法によって有機フィルム(ポリエチレンテレフタレートPET)上でシート状に成形し、乾燥させて、0.15mm厚みのセラミックグリーンシートを得た。セラミックグリーンシートは有機フィルムごと180mm角に切断した。
[未焼成多層セラミック基板の作製]
上記のセラミックグリーンシート1a、1b、1cを乾燥雰囲気中で保存したり、適当な加熱や温風によって十分に乾燥処理を行った後に直径60μmのビアホールを設け、このビアホールにAgを主体とする導体ペーストを充填しビア導体3を形成し、さらにAgを主体とする導体ペーストを用いて内部電極パターン2を印刷形成し、乾燥させて回路を構成する電極パターンを形成する。この際、ビア穴埋めと内部電極パターンを同時に印刷することも可能である。
また上面、下面に位置するグリーンシート1a、1cには外部電極4の電極パターン又は外部端子電極6の電極パターンを形成する。また、適宜オーバーコート材5を形成する。これらのグリーンシートを1枚ずつ仮圧着しながら複数枚、例えば10枚重ねた。仮圧着条件は、温度が60℃、圧力は2.9MPaで行い、さらにこの後、熱圧着して未焼成多層セラミック基板7を得た。このときの熱圧着条件は、温度が85℃、圧力は11MPaで行った。なお、上記した外部電極4の電極パターンは熱圧着の後に形成しても良い。その後、製品の個片サイズである10×15mm角に分割溝12を入れた。分割溝入れはグリーン体にナイフ刃を押し当て、深さを0.1mmとした。なお、ナイフ刃の厚さは0.15mmを用いた。分割溝の断面形状は底辺約0.15mm、深さ約0.1mmのほぼ二等辺三角形となっていた。
[拘束層材料]
拘束層8,9は、上述した低温焼結セラミック材料の焼結温度では焼結しない無機材料からなるものである。この無機材料としては、例えばアルミナ粉末またはジルコニア粉末等が用いられる。
[未焼成多層セラミック基板への拘束層の形成]
拘束材料から拘束用グリーンシートを予め作製し、基体用グリーンシートの上に所望厚さになるまで拘束用グリーンシートを重ね合わせる。
ここで、拘束層8,9の厚みは片面で50μm以上であることが必要である。この理由は、厚みにより拘束力を制御できるもので、50μm未満の場合は、拘束力が不足し、ガラスセラミックス材料のX-Y収縮を抑制しがたい。50μm以上ある場合はガラスセラミックス材料のX-Y収縮を1%以下に抑制できる。拘束層の最大厚さの制限は拘束効果に関しては特にないが、除去する際に過大な厚さの場合、工程上の障害となる。より適当な厚さ範囲は100μm〜300μmである。
拘束用グリーンシートを重ね合わせた後は熱圧着を行う。熱圧着条件は、温度が85℃、圧力は11MPaで行った。
[拘束層を備えた未焼成多層セラミック基板の本焼結]
拘束層8,9を上面、下面に設けた未焼成多層セラミック基板10の焼結はバッチ炉において大気中で行い、500℃で4時間保持して脱バインダを行った後、850〜900℃で2時間保持し、焼結を行う。昇温速度は3℃/分で、冷却は炉内自然冷却とする。
[拘束層の除去]
焼結後、表面に付着している拘束層のアルミナ粒子を除去する。これは焼成後の基板を超音波洗浄槽の水の中に入れて超音波を駆動することにより行う。それによりAgパッドの上にNiめっき、Auめっき等のメタライズが形成できる。メタライズは公知の無電解めっきが適用できる。
[多層セラミック基板の分割]
基板上面のメタライズ電極の上にスクリーン印刷ではんだパターンを形成する。そして、個々の半導体素子、チッブ素子等の部品を搭載し、リフローにより接続する。ワイヤボンディング用半導体素子はその後ワイヤボンディング接続を行う。その後、集合基板から分割溝12に沿って破断することにより小片の多層セラミック基板11が得られる。
低温焼結セラミック材料の代表組成として主成分がAl,Si,Sr、Tiの酸化物で構成され、それぞれAl換算で48質量%、SiO換算で38質量%、SrO換算で10質量%、TiO換算で4質量%であり、さらに主成分100質量%に対して、副成分として、Bi、Na、K、がBi換算で2.5質量%、NaO換算で2質量%、KO換算で0.5質量%、更に、CuがCuO換算で0.3質量%、MnがMnO換算で0.5質量%となる組成に出発原料を秤量した。この際、純度99.9%、平均粒径0.5μmのAl粉末、純度99.9%以上、平均粒径0.5μm以下のSiO粉末、純度99.9%、平均粒径0.5μmのSrCO粉末、純度99.9%、平均粒径0.5〜5μmのBi粉末、NaCO粉末、KCO粉末、CuO粉末、MnO粉末を用いた。
次に、上記した多層セラミック基板の製造方法に沿って製造を行った。ビア導体材料について表1に示すペーストを用いた。ペーストは導体粉末とビヒクルとの混錬物で、導体粉末であるAg粉末の特性とPd粉末の添加については表1に記載した。尚、表1のPd含有量は、導体材料中のPdの含有量である。ビヒクルは有機バインダとしてのエチルセルロースを有機溶剤としてのαテルピネオールに溶かしたもので、エチルセルロース量を5〜10質量%溶解したものを用いた。導体粉末とビヒクルを乳鉢と乳棒で予備混合した後、3本ロールで混錬することによりペーストを作製した。導体粉末量は85〜94質量%未満とし、ペーストの粘度が印刷に適した200〜300Pa・s(10rpm)となるように適当なエチルセルロース含有量のビヒクルを用いた。
ここで、仮焼きの温度は800℃×2時間、微粉砕粒子の平均粒径は1μmとし、拘束層用のアルミナ粒子の平均粒径は0.5μm、拘束層の厚みは約200μm、低温焼結材シートの積層数は10、本焼結は900℃×2時間とした。その他の条件は上記した例に沿って行った。また、分割溝は上記と同様に形成した。焼結後、表面の拘束層のアルミナ層を超音波洗浄によって除去し、最上層に形成されている電極パターンの特定の位置間距離を3次元座標測定器により測定したX-Y座標から算出し、拘束層印刷前に測定した同じ位置間の距離から収縮率とそのばらつきを評価した。1基板試料につき16方向の収縮率を評価した。またZ座標の高低差を反りとし、小個片当たりの反り量を評価した。
本発明による多層セラミック基板は、X-Y方向収縮率が1%以下、収縮率ばらつき3σが0.07%以下、反りは30μmに収めることが出来ている。
別途、上記拘束層が形成されていない未焼成セラミック多層基板の導体ペースト形成のない低温焼結セラミック材料だけからなる部分を4mm角の大きさで切り出し、セラミック材のTMA試料とした。一方、導体ペーストのTMA試料は次のように作製した。導体ペーストをポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に載せ、0.5mmのスペーサを介してローラで引き伸ばし、80℃で1時間乾燥させ、厚さ0.3〜0.5mmのAg導体膜を作製した。Ag導体膜を4mm角の大きさで切り出し、導体材料のTMA試料とした。
市販の厚さ約0.7mmのアルミナ基板を準備し、それを5mm角に切断した。セラミック材料と導体材料の焼結収縮カーブは、上記試料を5mm角のアルミナ基板で挟み、熱機械特性分析(TMA)装置のサンプル位置に置いた。標準試料にはアルミナ棒を使用した。
TMAの温度プロファイルは室温から900℃まで10℃/分の速度で昇温し、900℃で30分保持し、その後ヒータ電源を切断し、自然冷却とした。
TMA測定カーブの代表例を図2に、評価結果を表1に記した。図2では、表1のNo.15の導体の焼結収縮挙動と、実施例1の低温焼結セラミック材料の焼結収縮挙動を示す。表1では、900℃でも保持温度中での膨張挙動の有無と収縮量を示している。尚、膨張量は参照までに示しているが、これらの膨張量、収縮量は、200℃における寸法に対する比率で膨張率、収縮率と同意である。図1に示したように収縮量は(a−b1)、(a−b2) (a−b3)の寸法変化率の%値であり、膨張量は(b2−c)、(b3−c)の寸法変化率の%値である。
導体ペーストに使用したAg粉末については、アルミナ基板の上にAg粉末を盛り、石英管を用いた管状式電気炉により空気雰囲気下で熱処理を行った。室温から5℃/分の速度で昇温し、900℃で2時間保持し、自然冷却した。
熱処理前、熱処理後Ag粉末中に含まれる酸素量を化学分析法により測定し、熱処理前の酸素含有量と、熱処理後の酸素含有量を表1に記載した。また、このAg粉末の平均粒径も表1に記載した。
作製した多層セラミック基板についてはコンデンサの対極となる端子間に4V印加し、85℃、85%相対湿度の高温高湿槽に500〜1000時間入れて、端子間のリーク電流を測定した。正常電流値は0.01μA以下であり、電流値が0.01μAを超えた場合をリーク発生、すなわち不良とした。この多層セラミック基板の負荷試験判定の評価結果を表1に併記する。サンプル数は各50個とした。
尚、試料番号に*印のないものが本発明の実施例であり、試料番号に*の付記したものは本発明の範囲外の比較例である。
Figure 0005110420
表1の結果より、ペースト8、9のように熱処理後の酸素含有量が100ppmよりも少ないAg粉を用いた場合、高温高湿負荷試験で著しい劣化がみられた。この導体ペーストを用いた多層セラミック基板の断面観察では、導体材料とセラミック体の間に非常に大きな空隙が発生しており、導体材料にはNiの析出がみられ、めっき液が侵入したものと確認された。また、ペースト1、10、12のように、熱処理後の酸素含有量が100ppmよりも多いAg粉のみを用いた場合も、高温高湿負荷試験の1000時間において、絶縁不良が発生した。この場合、収縮量が5%以上生じておりPdの添加効果が現れていないことが要因に挙げられる。また、ペースト17〜20は、いずれも高温高湿負荷試験で劣化がみられた。ペースト17は、Ag粉末の含有量が少なく収縮量が大きいため、ビア導体とセラミックの間に隙間が発生した。ペースト18は、逆にAg含有量が多く、ペースト粘度が非常に高くなり、印刷時のビア孔へのペーストの充填性が不十分であった。ペースト19、20はAg粒径が3μmよりも大きく、直径60μmの小径ビア孔への充填性が不十分であった。
ペースト13〜16のようにビア導体材料が、最高温度における保持時間の間の収縮量が5%以下と小さい場合には、高温高湿負荷試験で高い信頼性を得るのに効果的であることが認められる。
また、ペースト2〜7、11、16のようにビア導体材料が、セラミック材料の挙動とは異なり、収縮から膨張に転じる挙動を有している場合でも、900℃で30分保持した時間内に導体ペーストの収縮量が5%以下である結果が得られており、この場合に高温高湿負荷試験で高い信頼性を得るのに効果的であることが認められる。尚、収縮量のマイナス表示は焼結温度保持後の寸法が焼結温度開始時点の寸法よりも大きくなっていることを示しており、マイナス側の数値(膨張方向)は5%以上でも問題ない。
一方、収縮から膨張挙動に移行した後の膨張量は、TMA測定で収縮が開始していない200℃の寸法を基準として、その10%以内であり、この膨張量が好ましいものと考えられる。
これらの導体材料を用いた多層セラミック基板の断面観察では、導体材料とセラミック体との間が隙間なく密着していることが認められた。この高い密着性が、表1に示す多層セラミック基板の負荷試験不良率に表されているように、高温高湿負荷試験においても水蒸気の浸入を阻止し、高い信頼性が得られる原因と考えられる。
また、表1より、導体粉末に平均粒径3.0μm未満で酸素含有量が大気中900℃、2時間保持の熱処理後100ppm以上であるAg粉を用いて、さらにPd粉末を導体材料中の含有量として0.1〜3wt%添加した導体材料を用いた多層セラミック基板は、焼成工程の最高温度で保持した時、収縮挙動から膨張挙動に転じる挙動を示しやすく、高温高湿負荷試験1000時間においてもリーク不良がなく、高い信頼性を得ることができると考えている。この高い密着性が高温高湿負荷試験においても水蒸気の浸入を阻止し、高い信頼性が得られる原因と考えられる。
本発明により、基板の反りも小さく、しかも高温高湿負荷試験において不良の発生しない高信頼の多層セラミック基板が得られる。また、多層セラミック基板のX-Y方向の収縮ばらつきが抑制され、高寸法精度の多層セラミック基板が得られる。そして本発明の多層セラミック基板は携帯電話等の移動体通信端末機器の分野などにおいて、アンテナスイッチモジュール、PAモジュール基板、フィルタ、チップアンテナ、各種パッケージ部品等の種々の電子部品に利用することができる。
本発明に係る導体ペーストの焼結収縮挙動の例を示すグラフである。 本発明に係る導体ペーストと低温焼結セラミック材料の焼結収縮挙動の例を示すグラフである。 本発明に係る多層セラミック基板の製造方法の各プロセスにおける断面図である。 本発明に係る多層セラミック基板の製造方法における分割前の集合基板を示す斜視図である。
符号の説明
1a,1b,1c:セラミックグリーンシート
2:導体パターン
3:ビア導体
4:外部電極
5:オーバーコート材
6:外部端子電極
7:未焼結多層セラミック体
8,9:拘束層(拘束用グリーンシート)
11:多層セラミック基板
12:分割溝

Claims (5)

  1. Ag粉末が88〜94質量%、Pd粉末が0.1質量%以上、3質量%未満含有されており、前記Ag粉末及びPd粉末の総量が88.1〜95質量%であり、
    最高温度を900℃とし、最高温度での保持時間を30分とし、昇温速度を10℃/分とした条件で、導体ペーストの焼結収縮挙動を熱機械分析装置で評価したとき、前記最高温度での保持時間の間において、保持開始からの導体ペーストの収縮量が5%以下である、
    900℃以下で焼成される多層セラミック基板用の導体ペースト。
  2. Ag粉末が88〜94質量%、Pd粉末が0.1質量%以上、3質量%未満含有されており、前記Ag粉末及びPd粉末の総量が88.1〜95質量%であるとともに、
    前記Ag粉末中の酸素含有量が100ppm以上であり、
    前記Ag粉末の平均粒径が3.0μm未満であり、
    最高温度を900℃とし、最高温度での保持時間を30分とし、昇温速度を10℃/分とした条件で、導体ペーストの焼結収縮挙動を熱機械分析装置で評価したとき、前記最高温度での保持時間の間において、保持開始からの導体ペーストの収縮量が5%以下である、
    900℃以下で焼成される多層セラミック基板用の導体ペースト。
  3. セラミックグリーンシートを複数枚積層し焼成して得られ、内部に回路用の導体パターン及びビア導体が形成されている多層セラミック基板の製造方法において、
    ビア導体として、請求項1または2に記載の導体ペーストを用いたことを特徴とする多層セラミック基板の製造方法。
  4. セラミックグリーンシートに適宜内部回路用の導体パターン及び/又はビア導体を形成し、これらセラミックグリーンシートを複数枚積層し、前記セラミックグリーンシートの積層体の焼結温度では焼結しない無機粒子と有機物とを含有する難焼結性拘束層を、前記セラミックグリーンシートの積層体の上面及び/又は下面に密着するように設けた後、焼成を行い、その後前記難焼結性拘束層を除去して多層セラミック基板を製造する方法において、ビア導体として、請求項1または2に記載の導体ペーストを用いたことを特徴とする多層セラミック基板の製造方法。
  5. 前記焼成の温度が900℃以下であることを特徴とする請求項3または4に記載の多層セラミック基板の製造方法。
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