本発明のコンデンサ内蔵配線基板およびその製造方法について以下に詳細に説明する。
図1は、本発明のコンデンサ内蔵配線基板の実施の形態の一例を示す断面図であり、コンデンサ部周辺を示すものである。図1において、1はガラス層、2は誘電体層、3は電極、4は絶縁基板、5は配線導体、6は貫通導体であり、絶縁基板4の内部に誘電体層2、この誘電体層2を覆うガラス層1およびこのガラス層1を介して誘電体層2を挟むように配置された電極3からなるコンデンサ部が形成されている。コンデンサ部の電極3は貫通導体6を介してコンデンサ内蔵基板の表面に形成された配線導体5に電気的に接続されている。
本発明のコンデンサ内蔵配線基板によれば、誘電体層2を取り囲むように誘電体層2と電極3との間に緻密なガラス層1が形成されていることから、誘電体層2の周囲を囲むように形成されたガラス層1によって外部から浸入した水分が誘電体層2の内部に到達することを防止することができるため、誘電体層2の内部まで水分が浸入することで誘電体層2の絶縁抵抗が劣化することを抑制することができ、絶縁信頼性の高いコンデンサを有するものとなる。なお、誘電体層2は、表面全体がガラス層1に覆われているほうがよい。
また、誘電体層2はペロブスカイト化合物から成っており、ガラス層1は誘電体層2のペロブスカイト化合物を構成する元素とおなじ元素を含有している。このことにより、誘
電体層2の周囲に誘電率が高く緻密なガラス層1が形成されているので、外部から浸入した水分が誘電体層2の内部に到達することを防止することができるとともに、大容量のコンデンサを内蔵した配線基板とすることができる。
本発明のコンデンサ内蔵配線基板は以下のようにして作製される。
まず、焼成により絶縁基板4となるガラスセラミックグリーンシートを準備する。ガラスセラミックグリーンシートは、ガラス粉末またはガラス粉末とセラミック粉末との混合物および樹脂バインダに、溶剤、必要に応じて所定量の可塑剤、分散剤を加えてボールミル法等の混合手段により混合することによりスラリーを得、これをPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の支持体上にドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等によりシート状に成形して乾燥することによって得る。
ガラス粉末としては、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同じまたは異なっており、Ca,Sr,Mg,BaまたはZnを示す)、SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は上記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は上記と同じである),Pb系,Bi系等のガラスの粉末が挙げられる。好ましくは、近年のガラスセラミック配線基板高強度の要求を満たすため、焼成の際にスピネル、ムライト、コージェライト、ディオプサイド、等の結晶を析出する結晶化ガラスであることが好ましい。
セラミック粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル、ムライト、コージェライト)等の粉末が挙げられる。
樹脂バインダとしては、従来からセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体で、具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラール系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。
溶剤としては、ガラス粉末とセラミック粉末、および樹脂バインダを分散させ、グリーンシート成形に適した粘度のスラリーが得られるように、例えば水または炭化水素類、エーテル類、エステル類、ケトン類、アルコール類等の有機溶剤が挙げられる。
次に、得られたガラスセラミックグリーンシートの表面に、電極ペースト、誘電体ペースト、ガラスペーストを印刷することによりガラス層1となるガラスペースト層に覆われた誘電体層2となる誘電体ペースト層が電極3となる電極ペースト層に挟まれたコンデンサ部を形成する。
このような構造のコンデンサ部は電極ペースト、ガラスペースト、誘電体ペースト、ガラスペースト、電極ペーストの順に印刷し、ガラスペースト層の印刷面積は誘電体ペースト層より大きくなるように、かつ電極ペースト層の印刷面積はガラスペースト層より小さくなるようにすることで形成することができる。
各ペーストは各々のペーストの主成分である導体材料粉末やガラス粉末あるいは誘電体粉末に樹脂バインダ、溶剤、必要に応じて分散剤等を加えて混合したものをボールミル、三本ロールミル、プラネタリーミキサー等の混練手段により均質に分散させることにより作製され、スクリーン印刷法やグラビア印刷法等により所定パターン形状に印刷される。
電極ペーストの主成分である導体材料粉末は、例えばAu,Ag,Cu,Pd,Pt等の1種または2種以上の金属が挙げられ、2種以上の場合の粉末は2種以上の金属粉末を混合したものでもよいし、合金化、コーティング等により作製された2種以上の金属を含む粉末であってもよい。焼成時に絶縁基板4の成分が拡散し、誘電体層2内に流入することにより誘電体層2の誘電率が減少することを抑えるために、電極ペーストの導体材料粉末は直径5μm以下の粒径の細かいものであることが好ましい。電極ペーストの導体材料粉末を細かくし、電極ペーストを低温で焼結させることによって、絶縁基板4の成分が誘電体層2内に流入することを焼結された緻密な電極によって防ぐことができる。
また、上記導体材料と絶縁基板4との収縮挙動を合わせるために必要に応じてガラスが添加される。ガラスとしてはガラスセラミックグリーンシートに含まれるものと同様のものが挙げられる。
電極ペーストに用いられる樹脂バインダおよび溶剤としては、ガラスセラミックグリーンシートとの同時焼成が可能であれば特に制限されるものではなく、例えばガラスセラミックグリーンシートに配合される樹脂バインダおよび溶剤と同様のものが使用可能である。樹脂バインダとしては、例えばアクリル系(アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体で、具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラール系、ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。溶剤としては、導体材料粉末および樹脂バインダを分散させ、適切な粘度の誘電体ペーストが得られるように、例えば炭化水素類,エーテル類,エステル類,ケトン類,アルコール類等の溶剤が挙げられる。また、分散をより良好なものとするために分散剤を添加してもよい。
樹脂バインダは導体材料粉末とガラス粉末とを合わせた粉末100質量部に対して5〜40質量部程度添加し、溶剤は導体材料粉末とガラス粉末とを合わせた粉末100質量部に対して1〜20質量部程度添加することにより、滲みが発生せずに電極ペースト層を形成できる程度の粘度に調整するとよい。
なお、電極3の形成と同時に電極3以外の配線導体5も電極3と同様にして形成される。配線導体5は電極3と同様の配線導体ペーストを同様の印刷方法により印刷することにより形成すればよい。コンデンサ内蔵配線基板の表面に位置する配線導体5は絶縁基板との接合強度を高めるためにガラス成分を含む配線導体ペーストを用いて形成するのが好ましい。
また、電極3と配線導体5との接続または配線導体5同士を接続するための貫通導体6も形成される。貫通導体6は、電極3および配線導体5を形成する前にパンチング加工やレーザー加工等によりガラスセラミックグリーンシートに形成した貫通孔に、貫通導体ペーストを印刷やプレス充填により埋め込む等の手段によって形成される。貫通導体ペーストは上記電極ペーストや配線導体ペーストと同様の導体材料粉末が使用可能であり、樹脂バインダや溶剤の量や種類を調節することにより充填に適した粘度に調整されたものが用いられる。また、貫通導体6と絶縁基板4との接着をよくするために必要に応じてガラス粉末やセラミック粉末が添加される。ガラス量が少ないと、貫通導体6と絶縁基板4の界面に隙間やボイドが発生し、基板強度の低下、配線導体5との断線等の不具合が生じる場合がある。ガラス粉末やセラミック粉末としては、ガラスセラミックグリーンシートに含まれるものと同様のものが挙げられる。
電極3および配線導体5の形成方法は、上記のような導体ペーストを印刷する方法以外に、めっき法や蒸着法等により所定パターン形状の金属膜を形成するようなグリーンシート上に直接形成する方法、あるいは印刷により所定パターン形状に形成した導体厚膜や所定パターン形状に加工した金属箔、めっき法や蒸着法等により形成した所定パターン形状の金属膜をグリーンシート上に転写する方法を用いてもよい。
誘電体層2となる誘電体ペーストの主成分である誘電体粉末としては、絶縁基板4となるガラスセラミックグリーンシートと同時焼成が可能であり、かつ、これよりも高い比誘電率を有するものが用いられる。コンデンサ部の小型化または高容量化を図るためには、比誘電率の高い、BaTiO3,SrTiO3,CaTiO3,MgTiO3,BaZrO3,PbTiO3,PbZO3等のペロブスカイト化合物の粉末を用いることが好ましい。これらのペロブスカイト化合物は、1種類でもよいし、2種類以上含むものでもよく、2種類以上の場合は、単に2種類の粉末を混合したものでもよいし、混合したものを仮焼するなどして複合ペロブスカイト形としたものでもよい。また、この誘電体粉末は、絶縁層のガラスセラミックとの同時焼結が容易となるように、平均粒径が0.3μm以下であることがより好ましい。
また、誘電体粉末がセラミックグリーンシートと同時焼成可能となるように焼結助剤が加えられ、焼結助剤としては、例えば、SiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−M1 2O系(但し、M1はLi,NaまたはKを示す)、SiO2−B2O3−Al2O3−M1 2O系(但し、M1は上記と同じである),Pb系,Bi系等のガラスを用いることができる。この焼結助剤の誘電体ペーストへの添加量は、誘電体粉末100質量部に対して、2〜10質量部であることが好ましい。焼結助剤の添加量が2質量部未満では、誘電体ペーストが焼結しにくく、焼結助剤の添加量が10質量部を超えると、誘電体層2の比誘電率が低下しやすい。
誘電体ペーストに用いられる樹脂バインダおよび溶剤としては、前述したような電極ペーストに用いられる樹脂バインダおよび溶剤と同様のものが挙げられ、チタン酸バリウム粉末およびガラス粉末を良好に分散させ、印刷による誘電体ペースト層の形成に適切な粘度の誘電体ペーストが得られるように適宜選択して用いればよい。また、電極ペーストと同様に分散をより良好なものとするために分散剤を添加してもよい。樹脂バインダはチタン酸バリウム粉末と焼結助剤粉末とを合わせた誘電体粉末100質量部に対して5〜40質量部程度添加し、溶剤は誘電体粉末100質量部に対して1〜20質量部程度添加するとよい。
誘電体層2の形成は、誘電体ペーストをスラリーとして用いてドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等の成型方法により誘電体グリーンシートを作製し、ガラスペーストの形成されたガラスセラミックグリーンシート上に積層する方法を用いてもよい。この場合のスラリーは、誘電体粉末と焼結助剤粉末との混合粉末100質量部に対して樹脂バインダを5〜40質量部程度添加し、溶剤は混合粉末100質量部に対して30〜100質量部程度添加するとよい。
ガラス層1となるガラスペーストの主成分であるガラス粉末としては、例えば、SiO2系,SiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−P2O5系,SiO2−P2O5−Al2O3系,SiO2−As2O5系,SiO2−As2O5−Al2O3系,SiO2−Sb2O5系,SiO2−Sb2O5−Al2O3系等のガラスの粉末を用いることができる。
ガラスペーストの主成分であるガラスは、誘電体層2のペロブスカイト化合物を構成する元素とおなじ元素を含有している。ガラスペーストの主成分であるガラスの構成元素がペロブスカイト構造を構成する元素を含んで構成されていることから、焼成時にガラス層1の成分がペロブスカイト構造である誘電体層2に流入しても、その結晶構造を変化させることがないため誘電体層2の誘電率が下がることを防ぐことができる。このようなガラス粉末はガラスを構成する網目形成酸化物と、ペロブスカイト化合物を構成する元素とを混合したものを溶融してガラス化させ、例えば回転ミル法やジェットミル法等の粉砕方法で粉砕することにより得ることができる。具体的には、SiO2系,SiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−P2O5系,SiO2−P2O5−Al2O3系,SiO2−As2O5系,SiO2−As2O5−Al2O3系,SiO2−Sb2O5系,SiO2−Sb2O5−Al2O3系等の酸化物と、上述したような、例えば、BaO,SrO,CaO,TiO2などのペロブスカイト化合物を構成する元素の酸化物とを混合して溶融することにより作製される。
ガラスペースト中のガラスにペロブスカイト化合物を構成する元素が含まれているかどうかは、必要に応じてガラスペーストを溶剤で薄める等して遠心分離器などの分離装置によりガラス粉末のみを取り出し、このガラス粉末を蛍光X線分析等で測定して確認することができる。
また、ガラスペーストの主成分のガラスは比誘電率の高いものが好ましい。ガラス層1の誘電率が高くなるので、ガラス層1が誘電体層2と電極3との間に介在することによりコンデンサの容量が低下することを抑制することができる。このようなガラスとしては、ペロブスカイト構造を構成する元素、例えばBaO(酸化バリウム)、TiO2(二酸化チタン)、Pb(鉛)、Co(コバルト)、W(タングステン)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Fe(鉄)、Zn(亜鉛)、Ni(ニッケル)、Zr(ジルコニア)等を含有するガラス組成物が挙げられる。
また、ガラスペーストの主成分のガラスは非晶質ガラスであることが好ましい。この場合、ガラスセラミックグリーンシートや誘電体ペースト層が焼結する間に全て結晶化せずに軟化した状態となることから、電極3とガラス層1との界面や、誘電体層2とガラス層1との界面にボイドが発生することが少なくなるため、大容量のコンデンサを内蔵した配線基板を得ることができる。このようなガラスとしては、ペロブスカイト構造を構成する元素の中で結晶化の核となりえない元素を含むガラス組成物、例えばBaO(酸化バリウム)、Pb(鉛)、Co(コバルト)、W(タングステン)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Fe(鉄)、Zn(亜鉛)、Ni(ニッケル)、Zr(ジルコニア)等を含有するガラス組成物が挙げられる。
ガラスペースト層が2μm〜15μmの厚みとなるように形成し、焼成して得られるガラス層1の厚みを1μm〜10μmとするのが好ましい。ガラスペースト層を2μm未満の厚みに形成してガラス層1の厚みが1μm未満となると、印刷により誘電体ペースト層を欠陥なく覆うことができなかったり、ガラス層1内に空隙が形成された場合にガラス層1を貫通した空隙となってしまったりするので、外部から浸入した水分が誘電体層2の内部に到達することを防止できなくなる恐れがあり、ガラス層1の厚みが10μmを超えると電極3間に形成された組成物の比誘電率が小さいものとなるので内蔵コンデンサの容量値が低下することとなり、大容量のコンデンサを内蔵した配線基板を得ることが困難となる。ただし、図1に示すように誘電体層2の側面が電極3よりはみ出して形成される場合は、誘電体層2よりさらに外側に形成されるガラス層1はコンデンサの容量値に寄与しないので10μmより厚くてもかまわない。また、図1に示すように誘電体層2の側面が電極3よりはみ出して形成される場合は、貫通導体6や電極3と絶縁基板4との界面を侵入経路とする水分の浸入は抑えられるので、誘電体層2の側面まで覆うようにガラス層1を形成しなくても良い。
ガラスペーストに用いられる樹脂バインダおよび溶剤としては、前述したような電極ペーストおよび誘電体ペーストに用いられる樹脂バインダおよび溶剤と同様のものが挙げられ、ガラス粉末を良好に分散させ、印刷によるガラスペースト層の形成に適切な粘度のガラスペーストが得られるように適宜選択して用いればよい。また、電極ペーストと同様に分散をより良好なものとするために分散剤を添加してもよい。樹脂バインダはガラス粉末100質量部に対して5〜40質量部程度添加し、溶剤はガラス粉末100質量部に対して1〜20質量部程度添加するとよい。
なお、図1には、上下の電極3の間に単層の誘電体層2が形成された構造を示しているが、所望の容量に応じて、複数の誘電体層2と複数の電極3とを交互に積層した構造としてもよい。例えば、最下層の電極ペースト層の一部がはみ出るようにずらして最下層の誘電体ペースト層を形成し、上面視でこのはみ出た部分に対向する部分が誘電体ペースト層からはみ出るように電極ペースト層を形成し、その上に最下層の誘電体ペースト層と重なるように誘電体ペースト層を形成し、最下層の電極ペースト層に重なるように電極ペースト層を形成してさらに同様にして誘電体ペースト層を形成するというようなことを繰り返すことで、複数の誘電体ペースト層と複数の電極ペースト層とが交互に積層され、上面視で対向する2端部において電極ペースト層が1層おきに接続された構造のコンデンサ部を形成することができる。この場合もガラス層1が誘電体層2と電極3との間に形成されるので、ガラスペースト層は電極ペースト層同士が接続される部分や誘電体ペースト同士が接続される部分以外で電極ペースト層と重なるようにガラスペーストを印刷して形成すれば良い。
次に、コンデンサ部が形成されたガラスセラミックグリーンシートを内層とするガラスセラミックグリーンシート積層体を作製する。コンデンサ部が形成されたガラスセラミックグリーンシートと、配線導体5や貫通導体6が形成された絶縁基板4となるガラスセラミックグリーンシートを位置合わせして積層し、圧着することにより行なわれる。圧着は3.0〜8.0MPa程度の圧力を加えて行ない、必要に応じて35〜80℃で加熱を行なう。ガラスセラミックグリーンシート同士の十分な接着性を得るために、溶剤と樹脂バインダを混合するなどして作製した接着剤を用いてもよい。
そして、ガラスセラミックグリーンシート積層体を焼成する。焼成は、100〜800℃の温度範囲で有機成分を分解、揮発させ、約800〜1000℃でガラスセラミックスを焼結させる。焼成雰囲気はセラミック粉末や導体材料により異なり、電極3や配線導体5の導体材料として酸化しやすいAg系の材料を用いる場合は、空気中で有機成分の分解、揮発からガラスセラミックスの焼結まで行ない、電極3や配線導体5の導体材料として酸化しやすいCu系の材料を用いる場合は、還元雰囲気中や非酸化性雰囲気中等で行ない、有機成分の除去を効果的に行なうために水蒸気等を含ませてもよい。
グリーンシート積層体の上下面にさらに拘束グリーンシートを積層して焼成し、焼成後に拘束シートを除去するようにすれば、より高寸法精度のコンデンサ内蔵ガラスセラミック多層基板を得ることが可能となる。拘束グリーンシートは、Al2O3等の難焼結性無機材料を主成分とするグリーンシートであり、ガラスセラミックスが焼結収縮する温度では焼結収縮しないものである。この拘束グリーンシートが積層された積層体は、収縮しない拘束グリーンシートにより積層平面方向(xy平面方向)の収縮が抑制され、積層方向(z方向)にのみ収縮するので、焼成収縮に伴う寸法ばらつきが抑制される。
また、拘束グリーンシートには難焼結性無機成分に加えて、焼成温度以下の軟化点を有するガラス成分、例えばグリーンシート中のガラスと同じガラスを含有させるとよい。焼成中にこのガラスが軟化してグリーンシートと結合することによりグリーンシートと拘束グリーンシートとの結合が強固なものとなり、より確実な拘束力が得られるからである。このときのガラス量は難焼結性無機成分とガラス成分を合わせた無機成分に対して0.5〜15質量%とすると拘束力が向上し、かつ拘束グリーンシートの焼成収縮が0.5%以下に抑えられる。
拘束シートを除去する方法としては、例えば研磨、ウォータージェット、ケミカルブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法)等が挙げられる。
焼成して得られたコンデンサ内蔵配線基板のガラス層1にペロブスカイト化合物を構成する元素が含まれているかどうか確認するには、コンデンサ内蔵配線基板を切断し、断面に現れたガラス層1の成分比を原子吸光、発光分析等で測定すればよい。具体的な方法としては、まず基板を切断し、断面を研磨するなどして内部に形成されたガラス層1を外部から観察可能な状態にした後に、例えばレーザーアブレーションシステム(LSX−200、CETAC Tachnologies社製)を用いてガラス部分の1μm程度の範囲内にレーザーを照射することによりガラス成分を蒸発させ、蒸発されたガラス成分にICP発光分光分析を行うことにより、ガラス層1に含まれる成分を測定する。
焼成後のコンデンサ内蔵配線基板は、その表面に露出した配線導体5の表面に、配線導体5の腐食防止のために、または半田や金属ワイヤ等の外部基板や電子部品との接続手段の良好な接続のために、NiやAuのめっきを施すとよい。
本発明のコンデンサ内蔵配線基板およびその製造方法の実施例を以下に詳細に説明する。
まず、ガラスとしてSiO2−CaO−MgO系ガラス(SiO250%、CaO25%、MgO25%)粉末60質量%と、セラミック粉末としてAl2O3粉末40質量%とを混合し、この混合した粉末100質量%に対して、樹脂バインダとしてアクリル樹脂12質量%、フタル酸系可塑剤6質量%および溶剤としてトルエン30質量%を加え、ボールミル法により混合しスラリーとし、このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ250μmの絶縁体層となるガラスセラミックグリーンシートを成形した。
まず、中層の絶縁体層となるガラスセラミックグリーンシート上に、電極ペーストをスクリーン印刷により塗布し、80℃の温風により乾燥することにより縦1.3mm×横1.3mm×厚み12μmの電極を形成した。電極ペーストは、Cu粉末98.0質量%とSiO2−B2O3系ガラス(SiO240%、B2O310%)粉末2.0質量%とを混合し、この混合粉末100質量%に対して樹脂バインダとしてアクリル樹脂10.9質量%、溶剤としてテルピネオール1.5質量%を加えて、攪拌脱泡機SNB−350(アイ・ケイ・エス社製)を用いて混練して作製した。
次に、電極上にガラスペーストをスクリーン印刷法により塗布し、80℃の温風により乾燥することにより縦1.9mm×横1.9mm×厚み13μmのガラス層を形成した。ガラスペーストは、ガラス粉末とSiO2−B2O3ガラス粉末(SiO240%、B2O310%)とからなる混合粉末100質量%に、樹脂バインダとしてアクリル樹脂30.0質量%、溶剤としてテルピネオール3.0質量%、ノニオン系分散剤3.0質量%を加えて攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールで十分に混練して作製した。
次に、ガラス層上に誘電体ペーストをスクリーン印刷法により塗布し、80℃の温風により乾燥することにより縦1.7mm×横1.7mm×厚み27μmの誘電体層を形成した。誘電体ペーストは、チタン酸バリウム粉末とSiO2−B2O3系ガラス粉末(SiO240%、B2O310%)とからなる混合粉末100質量%に、樹脂バインダとしてアクリル樹脂30.0質量%、溶剤としてテルピネオール3.0質量%、ノニオン系分散剤3.0質量%を加えて攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールで十分に混練して作製した。
次に、誘電体層上にガラスペーストを同様の方法でスクリーン印刷法により塗布し、80℃の温風により乾燥することにより縦1.9mm×横1.9mm×厚み13μmのガラス層を形成した。
そして、誘電体層上に電極ペーストを塗布し、80℃の温風により乾燥して縦1.3mm×横1.3mm×厚み12μmの上部の電極パターンを形成することによりコンデンサ部を形成した。
また、下層および上層の絶縁体層となるガラスセラミックグリーンシートに、金型によるうち抜き加工により直径0.2mmの貫通孔を形成し、貫通孔内部に貫通導体用の導体ペーストをスクリーン印刷により充填することにより貫通導体を形成した。貫通導体用の導体ペーストは、Cu粉末92.0質量%とSiO2−B2O3系ガラス粉末(SiO240%、B2O310%)8.0質量%とを混合し、この混合粉末100質量%に対して樹脂バインダとしてアクリル樹脂12.0質量%、溶剤としてテルピネオール1.0質量%を加えて、攪拌脱泡機SNB−350(アイ・ケイ・エス社製)を用いて混練して作製した。ガラスセラミックグリーンシート上に貫通導体が露出した部分に重ねて導体ペーストを塗布し、80℃の温風により乾燥して配線層を形成した。
次に、上層、中層および下層の絶縁体層となるガラスセラミックグリーンシートを積層し、5.6Paの圧力、55℃の温度で真空プレスすることによりガラスセラミックグリーンシート積層体を作製した。
最後に、ガラスセラミックグリーンシート積層体を60℃の温水に通したN2雰囲気中で700℃1時間脱バインダし、続いてN2雰囲気中で900℃、40分間焼成することによりコンデンサ内蔵配線基板を作製した。
また、比較例としてガラスペーストを塗布せずに作製したコンデンサ内蔵配線基板を作製した。
このようにして得られた実施例、および、比較例のコンデンサ内蔵配線基板における内蔵コンデンサの絶縁信頼性の評価を行った。
絶縁信頼性の評価は、温度85℃の温度負荷、および、湿度85%の湿度負荷を行い、負荷後、0時間、1000時間後の絶縁抵抗値の測定を行った。絶縁抵抗値の測定は、測定電圧5V、測定温度25℃の条件で、デジタルスーパーメグオームメーターDSM−8103(TOA社製)を用いて行い、電圧負荷後1分後の絶縁抵抗値を測定した。
内蔵コンデンサの容量値と絶縁抵抗値の測定結果を表1に示す。
ここで、絶縁抵抗信頼性の評価の指針として積層セラミックコンデンサの絶縁抵抗値に関する規格を目安とし、温度85℃の温度負荷、および、湿度85%の湿度負荷をかけたとき1000時間後の絶縁抵抗値が5.0×108Ω以上の場合は充分高い信頼性をもつ内蔵コンデンサであるとした。
実施例と比較例との比較から、誘電体層を取り囲むようにガラス層を形成して作製した実施例の内蔵コンデンサは充分高い信頼性をもつ内蔵コンデンサを形成することが可能であるが、ガラス層を形成せずに作製した比較例の内蔵コンデンサは絶縁信頼性の低い内蔵コンデンサとなっていることが分かる。これより、誘電体層を取り囲むようにガラス層を形成することにより充分高い信頼性をもつ内蔵コンデンサを得ることができた。